第2回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」議事録

日時

令和6年8月1日(木)15時00分~17時00分

場所

東京都千代田区平河町2丁目4-2 
全国都市会館 第2会議室

議題

ヒアリング(1回目)

  •  周産期医療や母子保健事業の提供側からのヒアリング

議事

議事内容
○柴田保険局保険課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第2回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただき、ありがとうございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。
アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承くださいますようお願いいたします。
まず、構成員の出席状況について御報告します。
本日は、末松構成員、寺尾構成員より御欠席の御連絡をいただいております。
また、新居構成員はオンラインでの御参加と承っております。
次に、このたび、事務局に交代がございましたので、お手元にお配りしております。座席表をもって紹介に代えさせていただきます。
それでは、会議冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、カメラの方は御退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○柴田課長補佐 以降の議事運営につきましては、座長にお願いいたします。
○田邊座長 早速でございますけれども、議事のほうに入ってまいりたいと存じます。
まずは、事務局から資料の確認と参考人の御紹介をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。
傍聴の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
本日の資料は、資料1といたしまして、前田構成員提出資料。
資料2といたしまして、亀井構成員、細野構成員からの提出資料。
資料3といたしまして、井本構成員からの提出資料。
資料4といたしまして、髙田構成員からの提出資料。
また、参考資料として、第1回検討会における主な意見をまとめたものを御用意してございます。
このうち、資料2の亀井構成員の提出資料でございますが、資料に差し替えがあると承っております。御発表の際は投影される資料を御覧いただければと思います。
以上でございます。
過不足、落丁等がございましたら、事務局にお申しつけください。
また、本日は、参考人として公益社団法人日本小児科医会会長の伊藤様、一般社団法人日本助産学会理事長の片岡様、オンラインで公益社団法人日本産婦人科医会常務理事の宮﨑様、一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク代表理事の佐藤様、また、末松構成員の代理出席として鈴鹿市子ども政策部長の坂本様、寺尾構成員の代理出席として府中町福祉保健部長の中本様、以上の6名に御出席をいただいております。
以上の参考人の先生方におかれましては、議論の中で、座長から発言を促された際に、指名を受けて御発言いただくようお願いいたします。
事務局からは以上です。
○田邊座長 それでは、議事の進行に入ってまいりたいと思います。
議題「ヒアリング(1回目)」といたしまして、周産期医療や母子保健事業の提供側からのヒアリングを実施いたします。
まず資料1、資料2のヒアリングを行い、質疑応答、意見交換の時間を設けさせていただきたいと思います。その後、資料3、資料4のヒアリングを行い、同様に質疑応答、意見交換の時間を設けたいと存じます。その後に、全体を通しました議論をする時間というのも若干持ちたいと思います。
各資料につきましては、発表時間は15分以内でお願い申し上げます。意見交換の時間を十分確保できるように御協力をお願い申し上げます。
それでは、早速でございますけれども、資料1の前田構成員からの提出資料から報告をお願いいたします。
では、よろしくお願いいたします。
○前田構成員 では、構成員の前田でございます。日本産婦人科医会を代表して参りました。
私はこの後お話しする亀井構成員と同様で産婦人科医でございますが、私は開業医の立場から、恐らく亀井先生は高次の医療機関の医師の立場からのお話が中心になると思います。
資料が多くございますので、はしょって参りたいと思います。
まず、分娩費の保険化は何のために行われるのかということで、めくっていただきまして、少子化対策の一環として行われるような報道があります。実際、その目的で行われているのだと思います。少子化対策というのは、まず患者さん、妊婦さんたちがお産のときに負担する費用が安くなる。それが少子化対策につながるということだと思います。
実際にそれが本当に安くなるのでしょうかということです。保険化された場合に、従来の方法ですと7割が保険から負担され、3割が自己負担になりますし、先日の御説明によりますと、10割給付ということもあり得るということでございますが、いずれにしても、出産育児一時金が今50万円支払われている中で、同じ保険財源からまた分娩費が払われるということは考えにくいことでございますので、恐らく出産育児一時金と健康保険から出されるお金を合わせて今の金額相当になるのだろうと思われます。ということは、患者さんのほうの負担額はそんなに減らないのではないかということを危惧しております。
報道されている正常分娩の保険化の利点としては、まず、患者さんの経済的負担が減少し、少子化対策となるということですが、これは今お話ししたような事情で本当に減るのかどうか、それが疑問でございます。
それから、全国一律のサービスが定額で保証されるという報道がございますが、定額になりまして、それは確かに定額になるのでしょうけれども、その場合のサービスの質はやはりどうしても変わらざるを得ないのではないかということ。
それから、分娩費の上昇を抑制できるという報道がございますが、今、適切な計算に基づいて分娩費が設定されておりますので、これがもし下げられるとなると、出産の施設が経済的な負担から撤退することが大いに考えられるということです。
保険化の問題点をまとめますと、結局、妊婦の経済的負担は減少しない。多くの産科医療機関が減収となり、そして、サービスや医療安全にかける費用を削らざるを得ない。また、産科医療機関が減少し、結局、妊婦さんの産科医療機関選択の幅が狭まり、医療機関へのアクセスが悪くなる。さらには、世界に誇る日本の周産期医療の成績が悪化することも考えられますし、産科を選択する若手医師が減少するだろうと思われます。
続きまして、正常分娩というのは、皆さん正常分娩とおっしゃるけれども、正常分娩の成り立ちというのはあまり御存じない方も多いかと思いますので、釈迦に説法ではございますが、一応正常分娩に関してまとめてまいりました。
まず、分娩というのは陣痛が発来して起こるわけですが、中には破水から始まるものもございます。3分の1程度の分娩で破水から先に始まります。そういったときに、まず破水であるのかどうか。それから、陣痛が本当に来ているのかどうかというのは、口で言うのは簡単ですが、非常に難しいことでございまして、そういったところに助産師あるいは医師の高度な判断が必要となります。そして、ハイリスクとかローリスクとかという言葉がよく使われますが、ハイリスク妊婦が正常分娩となることもありますし、ローリスクの妊婦さんが異常分娩にならざるを得ないことも間々あるわけです。ですから、分娩が開始されますと、助産師、医師が四六時中児の監視、そして、母親の監視を行うわけです。
前期破水の場合の対応としては、満期産と早産では若干違いまして、早産の場合には、特に児が小さい場合には体外で生活しても大丈夫なのかというのを見極めながら児の娩出時間を決めますし、満期産の場合には、自然に置いておいて陣痛が来るのか、あるいは積極的に介入して早く産ませるべきか、感染や赤ちゃんのウェルビーイングの観点からしっかり決める。それも非常に高度な判断でございます。
また、陣痛発来から分娩が始まった場合も、陣痛には有効な陣痛と、それから、微弱陣痛あるいは前駆陣痛というのがございまして、これは非常に判断が難しいです。妊婦さんたちはもう自分は陣痛が来ていると思っているけれども、はたから見ていると陣痛でないケースは幾らでもあるわけですし、それはやはりプロフェッショナルでないと見極めることができません。
また、お産の最中に回旋という現象が起こります。これは一般の方に説明するのは難しい概念ですが、赤ちゃんの頭がスクリューのように回りながら出てくると思ってもらえばいいのですが、それがうまくいかないとお産に至りません。そういったことを四六時中やはり監視する必要があります。
それに、母児に異常がないかどうかを絶えず見ているわけです。特に胎児心拍数モニタリングというのがございまして、これは分娩監視装置というものを使って赤ちゃんの心拍をずっと監視するわけです。なぜ監視するかといいますと、赤ちゃんの心拍を見ることで、赤ちゃんが低酸素血症になっていないかとか酸血症になっていないかとかというのを四六時中監視するわけです。
昔はいざしらず、今の分娩は四六時中ほぼ全ての妊婦さんにフルモニタリングをしております。ということは、ずっとそれを見張っている医師または助産師または看護師がいるわけです。
そして、突然赤ちゃんの調子が悪くなることは非常に多くありますので、そういったときには、胎児機能不全といいまして、急遽帝王切開ないし異常分娩として急速な遂娩を行うことが必要になります。
急速遂娩に切り替える異常というのを書きましたけれども、お母さんがけいれんを起こした、血圧が高くなった、出血がひどい、胎盤がはがれてしまった、赤ちゃんの調子が悪くなってしまった、お母さんが偶発的に脳血管障害を起こした等、それから、分娩が進まなくなってしまって母体の疲労が著しいとか、そういった場合もやはり急速な遂娩に切り替えることがありまして、これは異常分娩になります。
正常分娩と異常分娩は紙一重ということになります。そのため、異常分娩に切り替える準備を常日頃からやっておりますし、また、それに備えていろいろなシミュレーション教育も行いますし、人間の待機も求めるわけです。
それから、陣痛促進薬というのがございまして、これは陣痛を強くする薬ですが、ゼロから陣痛を起こすために使う場合もありますし、途中で使う場合もありますが、これは使い始めますと24時間中リスクがあるということで、さらにより一層の監視が必要になります。
健康保険上は、こういう陣痛促進薬の使用を正常分娩と扱うか、異常分娩で扱うかは基本的に医学的な必要性で判断をされますし、陣痛促進薬を使用しても、分娩になったときに、それが正常な分娩であれば保険は適用外でございます。
異常分娩は帝王切開、鉗子・吸引分娩、骨盤牽出術をいいますが、健康保険上はこれらを異常分娩として取り扱います。そして、保険の給付にはなりませんが、ただ、異常分娩に至るまでの過程でしっかりした助産やしっかりした医療が行われておりますので、それに備えて、分娩介助料という中に少し費用の上乗せをいただいているというのが現状でございます。
胎児娩出時にはいろいろな医療行為が行われますが、例えば会陰切開というのがございます。これは会陰部を切開して早く児が出るようにするわけですが、中には会陰切開をしないで頑張ってお産をするケースもございます。
現状では、会陰切開というものには保険点数が定められていますが、これは保険算定をしないという約束事がございまして、普通の分娩ではそういう保険の算定は行わないということになっているわけでございます。
また、血液ガス分析とか胎盤の病理検査、それから、生まれた赤ちゃんの酸素飽和度のモニタリングといったことも正常分娩では行われていますが、ほとんどのケースでは今それは保険適用になっておりませんので、それも費用に含まれてくることになります。
産褥にはメンタルヘルスなどが非常に重要になりますので、助産師さんの活躍の場が多く、これは現在保険点数ではほとんど処置されておりません。また、妊婦さんたちの産後の経過も同じくしっかりと管理する必要がありますが、ほとんど手当が行われておりません。
時間がなくなってきたので少しはしょりますが、結局、正常分娩が保険になじまない背景には、分娩は全て様子が異なって、分娩開始の様子も異なる。所要時間も様々であるということ。それから、分娩過程の中に保険適用とならない医療行為が数多く含まれていて、これが保険適用になった場合にどういうふうに評価するのかということが分からないということ。そして、助産に関しては、今の入院基本料、特に有床診療所の入院基本料では、とてもそれは賄えないだろうということでございます。
正常分娩の保険化で医療機関が減少するという話をしましたが、まず、現在2022年から23年までのシミュレーションをしますと、4万579件の分娩が減りまして、これを有床診療所の分娩の割合で計算しますと、産科の有床診療所は1施設当たり844万円の減収をこの1年でしているわけです。これはあくまで平均ですから、もっと激しく減少しているところがございます。
さらに、最近ではコスト感が昔の分娩と全く違いまして、職員の数、職員の人件費、有資格者を雇用しなくてはいけないという背景、建築費といったものから、現在の産科の開業医のコストは崖っぷちでございます。
そういった中で、さらに分娩が減り、そして、さらに保険化という明らかに減収に導くような施策が行われますと、産科の有床診療所は減ります。
静岡県で産科有床診療所向けのアンケートを行いましたところ、本当に保険化されたら18%は分娩をやめる、37%は点数によっては分娩をやめると答えておりますし、大阪府の保険医協会のアンケートでは、有床診療所産科病院の68%が分娩を継続できない、総合病院の35%が分娩を継続できないと答えております。
急いで参りますが、結局、分娩をやめた施設はその後何をしているかというと、過去の事例を見ますと、外来をやるか、産科に携わるかというと、ほとんど産科に携わらない生き方をしていらっしゃるのです。ですから、これで分娩をやめる施設が減ると、では妊婦検診はやってもらえるのか、産後ケアはやってもらえるのかといったことに関しては、どうもやってもらえないのではないかということがありまして、結局、周産期の人手が減るということになります。
また、正常分娩が保険化された場合に生じる疑念としては、現在行われている異常分娩の中で自費の部分はどうなるのだろうということがまず出てまいります。正常分娩は全て保険化された場合に、異常分娩の自費の部分はどうなるのか。
それから、赤ちゃんを患者さんとして数えた場合に、1人1床という扱いにしますと、診療所では明らかなオーバーベッドが生じます。19床あるところで18人入院していると、赤ちゃんを入れると36人入院していることになりますので、これは明らかに医療法に違反することになりますので、それは非常に困ったことだなと思っております。
また、入院基本料は、先ほど申し上げたように、病院と診療所の入院基本料は全く違って、有床診療所の入院基本料は非常に安く上げられておりますので、それも非常に困った問題だと思います。
ほかにも具体的なものはいっぱいありますが、今日は時間もございませんのでこの程度にしておきまして、結局、過去の審議会等で丁寧な議論を積み重ねて現在の分娩費の在り方が定められている歴史がございます。これを少子化対策という美名の下にあまりに拙速に制度変更することには反対であります。
また、妊婦の分娩時の費用負担を軽減することには非常に賛成でございますが、それには医療安全をしっかり確保すること、そして、妊婦の産みやすい環境、特に御近所でちゃんと産めるという環境が守られることが絶対条件であります。
この意味において、今の施策をそのまま進めますと、少なくとも地元での分娩施設がどんどん減っていく。特に地方ではそうですね。そのような懸念がございます。
ぜひ長い間周産期医療に携わってきた医師、助産師、看護師、メディカルスタッフ、行政の方々の努力で達成された日本の周産期成績をこれ以上崩すことのないように、丁寧な議論を今後お願いしたいと考えております。
以上でございます。
○田邊座長 前田構成員、御報告どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、資料2の亀井構成員、細野構成員からの資料に関しまして報告をお願いしたいと存じます。
では、よろしくお願いいたします。
○亀井構成員 学術団体として産婦人科学会を代表しまして意見を申し述べます。
初めに、資料の一部修正があることを御容赦ください。
これは世界の妊産婦死亡率と新生児の周産期死亡率の比較ですが、我が国では、小規模分散型の周産期医療体制でも、世界で最も安全な周産期医療体制を維持していることがお分かりいただけるかと思います。
この世界で最も安全な周産期医療体制の提供と維持のために、これまで我々学会と産婦人科医会は、ほかの診療科も巻き込んで、厚労省の協力も得ながら、様々な事業を次々と立ち上げてまいりました。
この世界トップクラスの安全な分娩を提供できる環境の維持のため、我々産婦人科医は日常診療の中で妊娠経過中・分娩進行中に急変することがあったとしても、迅速に対応できる体制を確立するために多くの人的あるいは物的な投資を行ってきています。
通常の分娩では、産科医1人と助産師、看護師各1人で十分対応できますが、急変時には応援の産科医ばかりでなく、新生児科医、麻酔科医、さらには看護スタッフの応援が必須となりますので、これらの人材を24時間常に確保して待機してもらう必要が生じています。
我々学会では、これら表面に現れにくい医療安全に関わる経費を含めて、2022年、1年間の分娩について、1分娩に関わる必要経費の試算を行いました。
具体的な算出方法につきましては、配付資料の後半にある参考資料を御覧ください。
昨年夏に全国全ての大学病院にアンケートを送付し、77%の84病院から回答をいただきました。うち81病院、74%の施設からの回答を集計した結果をお示ししたいと思います。
その結果、1分娩当たりの経費は平均約142万円であり、昨年増額された出産育児一時金50万円を大きく上回る額でございました。また、施設当たりの分娩数は平均約500でした。
分娩数ごとに比較をしますと、分娩数400未満の大学病院では約155万円だったのに比べ、分娩数が多くなれば次第に必要経費は低下し、800分娩以上の施設では117万円となりました。
分娩数と1分娩当たりの必要経費をグラフにしますと、分娩数が多くなるほど1分娩当たりの経費が有意に減少することが分かりますので、集約化自体は医療経済的には非常に有効な手法であるということは推測されます。
地域別に比較をすると、東京23区の政令指定都市にある大学病院では、地方の大学病院に比較してやや単価が低い傾向がございました。
同様に、同じアンケートを通称MFICU、周産期医療連絡協議会を通じまして、全国の総合周産期母子医療センターに実施しましたところ、やはり大学病院と同様に取扱分娩数が多くなるほど出産に関わる経費は減少する傾向がありましたが、いずれの施設も出産育児一時金50万円を大きく上回る結果でございました。
ここで、分娩に関わる費用について小括を申し上げます。平均額は約140万円、地域によって1分娩当たりに費用の差がございました。分娩数が少ない施設ほど、1分娩当たりの費用は高額となる傾向がございました。
2024年から働き方改革が始まりました。この中では、2035年度末までに時間外労働を年960時間以内にすることが求められています。これは我々産婦人科医も例外ではございません。
そこで、周産期医療における人的資源についても考察をしてみました。これは年代別の日本産婦人科学会の会員数の年齢別分布を示したものですが、約12年余り前、2011年には産婦人科医は圧倒的に男性でしたが、11年になりますと、40歳を境にして女性医師と男性医師の比率が逆転し始めました。10年後の21年には、さらにこの傾向が顕著となり、60歳以上の学会員は全体の40%近くを占め、特に地方ではこれら高齢の産婦人科医師が地域医療を支えてくれています。彼ら高齢の産婦人科医師は今後10年以内に引退すると思われ、減少による診療のパワーダウンは必至と思われます。
産婦人科診療の我々の現場では、働き方改革への対策として、タスク・シフトなどにより時間外労働時間の削減に取り組んでまいりました。このままのペースで削減が進めば、2035年のA水準を遵守できるかと思われますが、一方で、当直回数は月8回前後で他の診療科に比べて最も多く、顕著な減少傾向はありません。
御覧のように、出生数の減少に伴い、分娩取扱医療機関も減少傾向が続いています。一方で、我が国の産婦人科医師数は近年徐々に増加し、生殖可能年齢の女性人口に対する産婦人科医師数もこの30年足らずの間に1.4倍になり、見かけ上は分娩を担当する医師数は増え、業務が軽減されているかのように思われます。しかし、実際には育児中の医師が多く、当直できる人員が不足しているということが当直回数が減らない大きな原因となっていると思われます。結局、この当直回数の維持がハードルとなり、現場の努力だけでは時間外労働の規制遵守には早晩限界が来るのではないかと我々は危惧しております。
第8次医療計画の中では、基幹施設を中心とした集約化・重点化を進め、ローリスクの分娩は妊婦健診、産前・産後ケアあるいはオープン・セミオープンシステムなど、様々な形で周囲の産科医療機関に依頼をしたり、あるいは助産師へのタスク・シフトを進めるとしています。
また、ハイリスク妊産婦については、基幹施設へのアクセス対策を講じることも提唱されています。
さらに、医療圏についても、集約化・重点化を進めながら、医療圏にこだわらず柔軟に運用し、必要な医療体制を確保するように見直されてきました。この方針に基づき、例えば愛媛県では、6つある2次医療圏を各基幹病院の所在地から4か所の周産期医療圏に分けまして、1時間以内に基幹病院に到着できるような医療体制を構築し、さらに基幹病院ごとに施設間の機能分担を行い、ゾーンディフェンスを行いながら、隣接する香川県あるいは高知県とも医療圏を越えた連携を模索しているという話でございました。
ここから資料が追加になります。
しかし、隣県の高知県の周産期医療体制はさらに危機的な状況で、愛媛県が考えているような高次医療圏を超えた医療連携の実施が困難な状況が出てまいりました。
これは昨日高知県産婦人科医会の坂元会長からいただいた資料ですが、高知県では、2006年には6,000件余りの分娩に対し、分娩取扱施設が助産所も含め20施設ございましたが、この18年間に出生数は42%も減少し、分娩取扱施設も20施設からまずは9施設となり、医師の離職に伴う医師不足のため、今年度あるいは来年度にかけてさらに2施設の取扱い中止があるという話を伺いました。
昨年、我々の学会で愛媛大学の杉山教授らが全国国立大学を対象に働き方に関するアンケート調査を実施しましたところ、国立大学の多くではタスク・シフトが進まず、大学の業務の3本柱のうち、診療の負担が非常に大きく、国からの運営交付金も年々削除される中で、教育あるいは研究に割ける時間がどんどん削られているということでした。
国が提唱する医療制度の改善には、今後まだ相当の時間が必要であると思われますが、このような状況でさらに出産育児一時金の減額となれば、医療体制の崩壊に拍車をかけるのではないかと我々は危惧してございます。
昨年の順天堂大学の板倉教授の厚生労働科研では、世界トップレベルの周産期医療体制をこのまま維持しつつ、働き方改革のA水準を遵守するために総合周産期母子医療センターでどの程度の人員の増員が今後必要となるかということを試算しております。その結果、集約化によって分娩数・母体搬送数が仮に1.5倍となるならば、現在既にA水準をクリアしている施設でも3人から4人の増員が、より時間外労働時間が多いB水準、C水準の施設では7人以上の増員が必要となると試算されました。果たしてこれから10年余りの間でこれだけの産婦人科医の増員が可能であるのかどうか。また、急な患者の増加に伴いまして病床数を確保できるのか、大きな不安が我々にはあります。
以上、人的資源についてまとめますと、特に地方では重点化・集約化のスキームがまだ十分でない中で、保険適用化による急激な体制の変化に対応できるだけの準備が不十分であると思います。特に多忙な上に診療に忙殺される地方の大学では、若い医師が自ら希望して勤めることなど到底期待できないと思います。残念なことに、先ほどお話しした四国4県では、本年2024年度の新規に産婦人科医を目指そうと志してくれる若手医師は4県全体でわずか2名でした。これらの地域では、医師の高齢化も相まって、今後さらに基幹施設でも人員の不足が危惧されるようです。
我々産婦人科学会が危惧することは、正常分娩の保険適用化に伴いまして、一次施設が分娩の取扱いを短期間で中止し、これに伴って行き場のなくなったローリスクの妊産婦さんが我々の施設に押し寄せてくるために、周産期医療センターでは病床の確保が困難になり、医師も働き方改革が足かせとなり離職につながり、結局、国が目指しておられるような安全な周産期医療の継続が困難となり、崩壊していくのではないかということです。
最後になりますが、我々産科婦人科学会は、妊産婦さんの経済的負担が軽減され、分娩数が増加するということにつながるのであれば、積極的に分娩の費用の保険適用化には同意いたします。医療安全の確保のために高額な経費を必要とするということを全ての方に御理解いただきたいと思っております。現状の質の高い周産期医療の提供の継続のために継続的な支援を国には望みます。緩徐な集約化に関しては我々は受容できますけれども、急速な分娩取扱施設の減少、医療崩壊につながりかねないような拙速な分娩費用の保険適用化ということになるならば、到底受け入れることはできません。出産費用の保険適用は、我々にとっては出産数のV字回復につながる特効薬ではなく、むしろ産科医療施設を廃業に追いやる毒薬にしかならないのではないかと考えております。
我々産婦人科医は金に目のくらんだ女性の敵ではなく、これまでもこれからも女性と赤ちゃんに寄り添うような専門家集団であり続けたいと思います。妊産婦当事者の方々が医療提供体制・医療安全の崩壊の危機をどう思っておられるのか、再考いただく機会があればと思っております。
最後になりますが、国には妊婦健診から出産、産後健診までの安心・安全な周産期医療体制の設計図についてしっかりとお考えいただきたいと思います。ありがとうございました。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、資料2に関しまして、引き続き細野構成員のほうから。
○細野構成員 時間としては何分いただけますか。
○田邊座長 時間としては、15分マイナスだから、5分がリミットです。
○細野構成員 分かりました。
それでは、小児科側の立場として、この分娩の保険化についてお話しさせていただければと思います。
では、次の資料をお願いいたします。
ここに示しているのは、我々小児科医が分娩、周産期医療にどう関わっているかということですけれども、先ほど来、日本の医療水準は世界最高レベルということが繰り返されていますが、早産の規定で下限を妊娠週数22週で扱っているというのは、諸外国の中でも日本も含め数か国しかないというようなところで我々はやっているわけです。
我々が実際に関わっているのは分娩のところだけではなくて、それ以前のところですね。例えば胎児の異常があった場合、消化管の閉鎖とか先天性の心疾患、水頭症、脊髄髄膜瘤などの胎児の異常があった場合に、実際にはその場にお母さんもいらっしゃらないし、もともと生まれていない胎児というところに関して、産婦人科の先生、各関連の先生方と議論をして、そういう時間を設けてやっているわけです。
ただ、ここのところは何も我々小児科医としては評価されないということで、もともと胎児に関しては胎児カルテという概念はありますけれども、まだまだ多くの施設では胎児カルテを作って胎児異常について特別に書き込むというようなこともなされていないという現状でございます。
一方、そういった胎児異常があった場合に、ご両親は非常に不安を持つわけです。そういったご両親に対して、我々は産婦人科の先生とともにご両親の下に行って、どういう経過をたどるか、生まれた後どういう治療が必要かということを事前にお話をしたりという時間も設けているわけです。
そういったところから、今度は新生児が生まれてきて、分娩に立ち会う場合もありますし、異常分娩でなければ立ち会わずにということもありますし、先ほど来お話があったように、ローリスクであっても急にハイリスクに変わることもありますので、常時待機しているというような状態になります。
その後は、正常新生児であっても、新生児室のお子さんに関して、小児科医がいる病院であれば、毎日新生児チェックをするというような形になります。
ここのところが今後どういった形で保険化になっていくのか、また、保険化をしないで今までどおりの形で加算を取っていくのかというところがあるかと思います。
次のページをお願いいたします。
予定の立ち会い、ハイリスク分娩、あと、緊急の立ち会いで胎児仮死・新生児仮死という形になってきますけれども、例えば仮死の状態で生まれたお子さん、胎児仮死という状態で我々は立ち会って、実際に生まれたお子さんを蘇生するという形で、ただ、蘇生がうまくいってしまうと、実際には新生児仮死というものは、Apgarスコアという次のページに行っていただければ分かりますけれども、こういった5項目で評価をして、1分時の値で新生児仮死があったかどうかということを判断するわけです。
新生児仮死があった場合には、保険で仮死蘇生が認められて、いろいろな消耗物品や何かを取れるわけですけれども、新生児仮死というのは仮死1分の値で我々は蘇生をするのではなくて、実際に生まれてきた瞬間からこの子は状態が悪いという判断をすれば、蘇生に入るわけです。蘇生がうまくいけば、1分以内に仮死状態ではなくなって正常のお子さんになるということで、そうなると、新生児仮死という診断がつかなくなってしまう。だから、しっかりやればやるほど物品等の消耗品や何かの払いが取れないという形になるわけです。
次をお願いいたします。
そういったことで、蘇生に関して我々は常に立ち会えるわけではないので、一般の開業の先生方にはこういった新生児蘇生法の普及事業の講習会を受けていただいて、安心・安全なお産を確保しているという形になります。
次をお願いいたします。
こういったことで、実際には85%のお子さんは30秒以内に泣いてくれますけれども、逆に15%のお子さんは蘇生が必要だということで、一般の開業医の先生のところで半分以上のお産、分娩がありますので、先生方、看護師さんたちにこういった蘇生技術を学んでいただいているという形になります。
次をお願いいたします。
または、今度は集約化されてくると、搬送時間が長くなりますので、お母さんがもし陣痛がついてしまって搬送した場合、途中で生まれてしまうというようなことが出てくる可能性もありますので、我々は今の時点から救急隊向けにも新生児の蘇生を学んでいただく講習会を開いているということで、そういったこともやっているわけでございます。
次をお願いいたします。
あとは、今、我々小児科医は予防医学等もやっています。スクリーニングというのは予防医学のところに入ってくるのですけれども、ただ、ここのところは逆に保険診療には現在なっていない。一部補助金事業にはなってきていますけれども、例えば今後入ってくる心疾患のスクリーニングや何かもパルスオキシメーターを使いますので、そういった費用が取れるかどうかということになってくるかと思います。
次をお願いいたします。
重要なビタミンK欠乏性出血症、頭蓋内出血を起こすということは非常に問題なので、今、予防的に自費で投与しているわけです。こういったことを防ぐために逆に御両親が負担をかけているという形になりますし、コロナ後、妊婦さんの外出が減ってビタミンD不足になっているということで、骨も脆弱になっているというようなことがあるわけです。
次をお願いいたします。
あとは、ほとんどの新生児は、NICU(新生児集中治療室)に入っていきますけれども、軽微な疾患、ほとんどは適応障害という形で黄疸とか初期の低血糖、初期嘔吐、こういったお子さんが出てくるわけです。こういったお子さんは、NICUに入れば保険診療になるわけですけれども、これを全例NICUで受けるということも無理ですし、母児分離の観点、あと、すぐ軽快するということもありますので、一般診療所で診ていただいている。
先ほど前田構成員がおっしゃったとおり、これは病床の兼ね合いもありますし、保険診療で病床を考えると、小児科病棟でも7対1看護になってきますので、そこに人員の配置が本来必要になってきますし、そういったことは今後どうするのかということが当然出てくるわけでございます。
保育園のことで考えると、0歳児では保育士は一人3人までしか見られないということになっていますので、保育園のほうが医療的にはより低いというような状態になっています。
次をお願いいたします。
そういったことから、最後のまとめまで行っていただいて結構ですけれども、安心・安全なお産に対する質の高い医療のためには、小児科医が陰でいろいろなことをやっているということをぜひ御理解いただいて、そのことに対して正当な評価をしていただきたいというのが我々のお願いということになります。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、今御報告のございました資料1、資料2に関しまして、御意見、御質問等がございましたら挙手にてお願い申し上げます。
では、佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 ありがとうございます。
健康保険組合連合会の佐野でございます。
ただいま3人の先生から周産期医療提供体制の重要性や大変さ、また、産科医療を取り巻く厳しい状況を伺って、よく理解できました。
一方で、前回も申し上げたのですが、当然この周産期医療については極めて重要な社会インフラだと思いますので、保険適用の議論とは別に、国が責任を持って提供体制の確保に向けて検討すべき課題であると思っております。
また、本日のように、ぜひとも我々医療保険者の考えを述べる機会も設けていただきたいと思いますし、我々の考え方についてはその際に改めて申し上げたいと思っておりますが、本日のお話を踏まえて、気になる点を3点申し上げたいと思います。1点は質問でございます。
まず1点目は、前田構成員の資料に、保険適用について拙速に制度変更をすることに反対とございますが、本件については数多くの課題があるということは我々も重々認識しております。そうであればこそ、最初から賛成ありき、反対ありきということで議論をスタートするべきではないのではないかと考えております。
それから、2点目は質問でございます。前田構成員の資料に正常分娩が保険になじまない背景が示されておりますが、正常分娩は保険適用にはなじまないとして、自由診療でなければならないとお考えになっておられるのか、ここはお考えをお聞かせいただきたいと思います。
それから、3点目は、亀井先生の資料に1分娩当たりの費用として約140万円という数字が示されておりますが、これはまさに大学病院におけるハイリスクの妊娠、分娩も含めた調査結果ではないかと思います。一方で、本日の前田構成員の資料もそうですし、先般の医療保険部会で示された出産費用の平均値というのは48.2万円という数字がございまして、140万円と48.2万円ではあまりにも差が大きいと思います。分娩の費用構造ですとか地域差等については、データですとかエビデンス等に基づいてきちんと分析をした上で議論が必要と考えますので、ここは厚生労働省においてもしっかり検討の上、整理をしていただきたいと思います。
また、今後議論を行うに当たっては、こういった見える化は極めて重要だと思います。その上で、保険適用範囲や負担の在り方、また、異常分娩の定義の明確化等、様々な論点について議論をして、さらには妊婦の方の経済的負担の軽減にいかにつなげていくかということが極めて重要だと考えております。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
1点、回答を求めているかどうか分かりませんけれども、自由診療が不可欠だとお考えかというような部分がございましたが、取りあえずの回答等がございましたらよろしくお願いいたします。
○前田構成員 御質問ありがとうございます。
正常分娩に限らず、分娩を行うというのは、分娩に対する費用がいかほどかかるかという問題だけではなくて、医療を提供している側の存続の問題というのがあると私は思っています。少なくとも地方圏で分娩を提供するというのは、基本的には収益が全く上がらない。そういった業界でございます。その中で、例えば物価の変動ですとか、分娩の減少といったことが起きたときに、従来の保険診療の枠組みの中では救済措置は後手後手に回りますし、実際問題としてそれでは賄いきれないような形になります。だからといって値上げをしていいというものでもありませんけれども、自費診療のほうがそういったものに関する融通が利くと私は考えております。
実際に今、シミュレーションでどれぐらいの人件費のどれぐらいの業種がどれぐらいの時間分娩に関わってお産が完成するのかといった調査が行われておりますけれども、それだけではやはり無理なのですよね。例えば高知県の中村市というところがありますが、今は四万十市といいますが、そういったところの医療機関では月に10件程度の分娩をしておりますけれども、月に10件程度の分娩をするに当たっても、看護師、助産師をそろえると、完全に分娩では食べていけないような費用構成になってしまうわけです。これは分娩1件当たりどれぐらい費用がかかっているかという問題ではなくて、その医療機関が成り立たなくなるわけですよね。それを何とか地域の援助とか医師の工夫で行っているわけですけれども、そういった部分を守るのは今の健康保険の仕組みではやっていけない。
分娩というのは極めて文化的なものですので、自分の町で産めて当たり前なのですよ。これが当たり前だと思わないようでは、分娩を語る資格はないと僕は思います。
ですから、そういった意味では、保険収載するということは硬直した費用がはっきり定められて、そして、何かあったときにはもちろん救済措置が行われますけれども、1年も2年もたってからようやく救済されるような形しか取れませんので、それでは分娩施設が守れない。そういう意味で保険適用にはなじまないと申し上げております。
以上です。
○田邊座長 佐野構成員、よろしゅうございますか。
○佐野構成員 いずれにしても今後議論していただければと思いますので、納得したという意味ではなくて、参考にしていきたいと思います。ありがとうございました。
○田邊座長 ほかはいかがでございましょうか。
では、今村構成員、よろしくお願いします。
○今村構成員 奈良医大の今村です。
亀井先生と前田先生に御意見を伺いたいのですけれども、私、日頃医療の将来推計などをやっている立場から、産婦人科の先生方がどれだけ大変な状況かというのはそれなりに理解しているつもりです。それに対して、今、少子化が劇的に進んでおりまして、ここ5年で見ても2割近く減っているという状況の中で、一番影響を受けるのは婚姻数だと思うのですけれども、婚姻数がまたさらに減っているので、ここ5年ぐらいの傾向で見たときには、恐らくお産の数もかなり減っていくだろうというのは多分動かし難い状況になってきていると思います。
それだけお産が減っていく中で、どんなふうにそれぞれのお立場から今後進めていくべきかというお考えを聞ければと思います。今回は保険適用というエポックでありますけれども、そういうことがなかったとしても、なかなか追い込まれた状況が発生していると思いますので、このままいくと存続できないところはたくさん出てくると思いますし、そういったところに対しての対応についてのお考えを教えていただければと思います。
○田邊座長 では、どちらからかな。
○今村構成員 どちらからでも結構です。
○亀井構成員 亀井から回答を申し上げます。
学会としましては、先ほども少しお話ししましたけれども、第8次医療計画の中でも言われておりますような集約化・重点化は恐らく避けては通れないと我々も考えてございます。ただ、今回の保険適用化が進んだ場合に、先ほども申し上げましたけれども、出産育児一時金が減額されてしまうとかということで、一次施設が次々と消えていくというようなことになった場合には、集約化・重点化がきちんと進む前に、特に地方では医療の崩壊が起きるのではないか。そのことを我々学会としては非常に心配しておりまして、結論から申しますと集約化・重点化しかないと我々も思っておりますけれども、あまりに早い拙速な結論は出さないでいただきたいというのが我々学会の立場でございます。
○田邊座長 では、よろしくお願いします。
○前田構成員 では、前田のほうから意見を申し上げたいと思いますが、まず、最終的には日本の妊婦の皆さんがどういった施設でお産をしたいか、どういった環境でお産をしたいかということに尽きると思うのです。今、亀井構成員がおっしゃったように、もし現状のままであれば重点化は避けて通れないと思います。そうした場合に、例えば先ほどから高知県ばかり出して恐縮ですけれども、高知県では高知市で全県のお産を賄おう、静岡県では静岡市と浜松市と沼津市だけで全県のお産を賄おう。そういった環境で果たしてよろしいのかどうか。もしそれがよろしくないのであれば、保険財源以外の財源から公的な援助が必要だと思います。恐らく今の小規模な施設では、このままいくと、今村構成員のおっしゃるとおり、保険化されなくても経営は成り立たなくなると思います。
ですから、そういった観点で、まず日本の分娩という環境を国が、そして、国民の皆さんがしっかり理解した上で、どのように持っていきたいのかを議論するべきであって、そのときにやはり我が町で産める環境を残してほしいとおっしゃるのであれば、こういった小規模施設に対して公的資金の導入は避けて通れないのではないか。保険財源は限界がございますので、それ以外の財源を利用するしかないと私は思います。
それと、助産所にしてもそうですけれども、開業医にしてもそうなのですが、利点は、例えば開業医の場合には医師1人当たりの分娩数がすごく数が稼げるのです。総合病院、高次施設は、統計を取ると明らかなのですけれども、医師1人当たりの分娩数がすごく少なくなります。ということは、産婦人科医が少なくなった暁には、助産所や小さな規模の開業医でお産を稼がないと、結局、高次施設の病院の先生方の過重労働につながりますので、そういった仕組みも守るということは私は大事なのではないかなと思っております。
3つ目は、やはりどうしてもインフラの整備をしてもらわないと、先ほどのような一点集中型の重点化を目指すのであれば、道路は避けて通れないですよね。静岡県には伊豆下田地区に1件の開業医と1件の助産所がありますが、次の高次施設まで交通機関で1時間半かかりますので、陸つなぎではあるのだけれども、本当に陸の孤島になっています。そういったところはほかの都道府県でいっぱいあると思いますので、そういったところも守れるような施策はぜひお願いしたいと思っております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかに
では、今村構成員、再度何かあれば。
○今村構成員 お答えありがとうございました。
確かに進める集約化を進めると問題が多いというのは理解しています。ただ、最終的にはやはり集約化というのは避けて通れないかなと考えています。実際に医師の偏在の計算をしていても、今産婦人科医が不足している県では、10年後、15年後には半分ぐらいの子供さんになられる。どちらかというと上3分の1になってしまうというような計算になってしまうので、10年ぐらいのスパンで劇的に変化する中でこの施策はやはり考えるべきだと考えます。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
家保構成員、よろしくお願いします。
○家保構成員 全国衛生部長会長の家保です。
同時に先ほどから話題に出ている高知県の保健医療担当理事ということで、若干高知の状況を申し上げますと、やはり一番のネックは産婦人科医師の減少ということです。今まで頑張っていただいていた高齢の先生方が病気とかいろいろな事情でリタイアされる、併せて、四国全体でも産婦人科医の若手の参入が少ないということで、結果的に今の状況になっていますので、今、県としては、地元の高知大学、それから、県産婦人科医会、県産科婦人科学会のほうとも連携して、基幹病院と合わさって協議しながら進めていって、対応策を何とか考えていきたいと思っております。
地方の行政、都道府県の立場としましては、保険適用云々よりはまずは産婦人科の医療をどう確保するのかということが一番の課題ですので、まずは、全国的に言えば産婦人科医を増やすような仕組みというか支援をぜひとも国を挙げてやっていただきたい。それがない限り、先ほど前田構成員がおっしゃったように、分娩を確保したい市町村なり県が公費を入れてでも産婦人科医を確保しようと思っても、それに従事してくださる産婦人科医がいなければ全く絵に描いた餅になりますので、まずそこに取り組みいただき、かつその方々が地方でもきちんと勤務できるような仕組みをぜひともつくっていただきたいと思います。
産婦人科以外の診療科で僻地のほうになりますと、医療機関、民間医療機関がなければ、国保の直診というような格好で公費を入れて医療を確保しようというところもありますので、一定の規模、産婦人科医の先生方が従事される規模は考えないといけませんが、公費を考えてでも地元住民のためにやろうというのは自治体の考え方としてはあるかなと思っております。
質問なのですけれども、令和2年度の医療施設統計で分娩の施設やどこで何人従事されているかという情報が出ておりました。先ほど前田構成員がおっしゃったように、一般診療所では全国で大体1,100施設、その常勤医師数が2,175人、だから、一施設あたり医師2人、助産師さんは6,000人強ですので5.7人。それで、出産数が施設統計から分かりませんので、人口動態統計で見ると、1施設当たり大体350人ぐらい、毎日1人生まれているというような状況です。お二人の先生方で365日それをやり遂げるというのは正直大変だろうなと思いますし、本来でしたらどれぐらいの人員が欲しいのか、助産師さんなどもどれぐらいいればいいのかご教授ください。
併せて、働き方改革で一般の勤務医は労働者になりますが、開設者の方は労働基準法の監督外です。ただ、従事されている方は、やはり医療安全の観点から言うと、基準時間をできるだけ守るということが望ましいのは当然のことですので、そういう観点からも、本来どれぐらいのことがあるべきなのかなというのを現場をやられている先生方のほうからお聞かせいただければと思います。
以上です。
○田邊座長 お願いいたします。
○前田構成員 ありがとうございます。
産科の開業医の2.7人はほとんどが親子なのです。ですから、現実にはお父様と息子さんがやっていらっしゃる。あるいは時々きょうだいでやっていらっしゃる方がいますが、そういった方は働き方改革に抵触しませんので、2人で牛馬のように働いておられます。
人を雇った場合には、今回の改定で、今まではイーブンイーブンで2日に1回当直をしていたところ、恐らく雇われている先生は週に1回しか夜勤ができなくなる。勤務にした場合はちょっと話が違うと思いますが、大体皆さん宿直許可を取っていますので、そうすると、週に1回の当直と月に1回の日直ができるという計算になりますと、院長がまだまだばりばり働くところでしたら1人でもいいのかもしれませんが、実際には4人ぐらいないとなかなか厳しいのかなと思います。
ちなみに、私のところは分娩数が500でございますが、医師は私一人で、その代わり非常勤の人間を13人ばかり雇っております。ただ、常勤換算にすると、やはり3.7ぐらいになります。
そういう感じでようやく回っているというのが現状でございまして、蛇足ですが、やはり責任者の医師は、こういう会議に出ておりましても、絶えず分娩監視装置のモニターを持っております。それぐらいしないと怖くてお産は見られないということで、今の世の中の若いお医者さんたちの発想から言うと、そもそも分娩を見るという四六時中縛られる仕事はほとんど人気がないのです。その人気がないところにさらに全然収益が上がらないようなことになりますと、幾ら医者を増やそうとしてもまず乗ってこないでしょうね。ですから、何かのインセンティブがないと、こういうお産の世界というのは医師は定着しないのではないかなと思います。
助産師さんたちはまだ医者より少し頑張ろうという気があって、お産を取る気がございますが、それでも今の若い助産師さんたちの様子を見ていますと、やはり世代は変わっております。昔のように献身的に奉仕するという助産師さんばかりではございませんので、そういう世の中の変化もうまく活用していかないと、なかなかお産を守ることはできないのではないかと思います。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
恐らくいろいろお聞きしたいことは多々あるかと思いますけれども、次のヒアリングもございますので、一旦このところで打ち切らせていただきまして、追加の質問等は最後の全体の議論のところで若干時間を取りたいと思いますので、そちらのほうでお願いいたします。
それでは、続きまして、資料3、資料4のヒアリングに移ってまいりたいと存じます。
まずは、資料3の井本構成員からの御報告をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○井本構成員 日本看護協会常任理事の井本でございます。
本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
私からは、妊娠・出産・産後における助産師によるケアということでお話をさせていただきたいと思います。
看護系団体が2団体御説明しますので、日本看護協会について御紹介をさせていただきます。
日本看護協会は、保健師、助産師、看護師、准看護師の資格を持つ個人が自主的に加入して運営する日本最大の看護職能団体で、現在約75万人の看護職が加入しております。そのうち助産師会員は2万7000人、助産師会員の主な所属先は病院・診療所です。
妊娠・出産・産後には、保健師、助産師、看護師等の看護職が関わっていることは言うまでもございませんが、本日は、その中でも出産への関わりが強い助産師が提供するケアについてお話をさせていただきます。また、私どもは、本会会員が多く勤めている病院・診療所における助産師のケアを中心に御説明させていただきます。
1ページ目に本日お話ししたい内容を5点お示ししております。
助産師の法律上の定義については、参考資料として25ページにお示ししておりますが、助産師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産または妊婦、褥婦もしくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいいます。
2ページでございます。まず、助産師の役割、活動を説明する前に、助産師の役割を果たす上で重要な人々の健康課題を確認させていただきたいと思います。この図にお示ししておりますように、人々は生まれてその人生を全うするまでの一連の過程において様々な健康課題を抱えることが分かっており、図の中の2つ目の外円で示した人を産み育てる過程においても、社会の様々な問題が影響し、健康課題を抱えることが分かっております。よって、人々が長く健康に生活するためには、健康課題のリスクを少なくすることがとても重要です。
3ページでございます。こういった点に関して、助産師には、全てのライフステージにある女性やその家族に対して、生涯を通して多様なニーズに応えるため、必要な健康支援活動を行う役割・責務がございます。
先ほど助産師はどこで働いているのかというようなことに関連した質問もあったように感じておりますが、下の図を見ていただきますと、2002年と2022年を比較して、診療所で働く助産師も増えておりまして、その他の行政等で働く助産師も広がりを見せています。
4ページを御覧ください。これは、妊娠前から育児期を中心とした助産師の支援に焦点を当てて、人々の生活圏にある医療機関や助産所、行政機関、その他地域における様々な場で、妊娠前から子育て期まで助産師が妊産褥婦に提供しているケアの内容を一覧に示しました。
助産師は、妊娠前の相談から、妊娠をきっかけに、こども家庭センターなどの行政機関や、妊娠から分娩までは医療機関や助産所、そして、産後は住み慣れた地域での新生児訪問や産後ケア事業を通して切れ目ない支援を提供しております。
ここからは少し具体的に、切れ目ない支援、そして、多様なニーズに対応するために実施している取組を2例ほど御紹介したいと思います。
まず、プレコンセプションケアでございます。こちらは「男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うように促すこと」と定義されておりますが、助産師は、県の教育委員会との連携や県の委託事業として、幼稚園児から高校生までを対象とした「いのちの教育」の出前授業や、性と健康の相談支援センター事業を通しての健康相談に対応しております。このような実践を通して、幼少期からの性教育等で保護者を通して顔の見える関係づくりや、妊娠などに不安や課題を持つ女性との関係づくりにつながっており、やがて妊娠というタイミングでの切れ目ない支援につなげているところです。
次に、6ページ、バースプランの定義は、「妊婦やその家族が出産やその後の育児について希望や要望をケアの提供者と共有し、相互の理解のプロセスを図るものをいう」となっており、バースレビューは、「産婦が自分の出産体験について助産師とともに想起すること」をいいます。
こういったことをするとどういった効果があるかというのを下の囲みの中に書いておりますが、産後2~3日目を目安に、助産師とともに出産体験を想起することが母親の自己肯定感や自尊心の回復につながると言われており、また、出産体験の意味づけの支援を行うことによって、児への愛着行動が阻害されることなく、今課題となっております、産後のメンタルヘルス不調を予防できる可能性があるとされており、私たちは大切にしております。
助産師は、これら以外にも様々な機会を通して継続ケアや妊産婦の要望への対応、安心できるコミュニケーションを取ることで、妊産婦の満足度が高くなるような支援を意識しているところです。
次の7ページ、医療機関における出産時の助産師のケアにお話を移していきます。先ほど前田構成員が、正常分娩やその他分娩時に起こる様々な対応を細かく御説明していただいておりますが、分娩時は刻一刻と状態が変化するので、各期に必要とされる観察や判断ができるよう、我々助産師は教育を受けてきております。
本会が実施した調査によると、分娩第1期から4期までの全17項目について、あらかじめ医師との連携により相談内容を決めて対応していることも含め、助産師がケアを提供していることが分かっております。
次の8ページには、一般的な出産の経過を示させていただきました。先ほど来何度も話題になっておりますが、出産は非常に個別性が高く、進み方は人それぞれ、進行状態は刻一刻、時には瞬時に変化します。助産師は、変化する母体と胎児の健康状態を随時観察し、判断を行い、産痛緩和や栄養補給など必要な支援と、先ほど御紹介したようなバースプランに沿って産婦自身の力を引き出し、個別的なケアを提供するようにしております。同時に、ガイドライン等を遵守し、安心・安全な出産に向けてケアを提供しているところでございます。
全期を通じて、不安や恐怖、ストレスを最小限に保ちながら、より快適に過ごせるよう支援をしつつ、妊産婦とその家族が主体的に出産に臨み、出産が充実した体験として認識され、育児が開始できるよう、ケアを医師とともに構築しているところでございます。
次の9ページでございます。ここからは、各期ごとに特徴的なケアを細かく示させていただきました。
少し細かくなりますけれども、分娩第1期からお話をしたいと思います。分娩第1期の所要時間は、産婦によって最も個人差が出ます。先ほど個人差が大きいという話があったと思います。我々は、ガイドラインに基づき、妊産婦が持つリスクに応じて、胎児の健康状態と陣痛の観察、評価を行う。これはかなり連続的に行っているということも話題にあったと思います。
出産の始まりは人それぞれで、陣痛間隔が10分から始まる人もいれば、そうでない人もいる。自覚したときには5分を切っていたのだということを話す産婦もいるぐらいです。どのような状態が見られたら入院が必要なのか、相談してほしいのかなど、細かいことを妊産婦さんの背景に合わせて、妊産婦さんの背景というのはどれぐらい病院に来る距離が必要なのか、そういったことも含めて、出産前に伝えることも助産師の重要な役割の一つだと考えているところです。
資料の青枠に示しているのは、助産師たちが産婦と接しながら観察していることを示しています。産婦に寄り添いながら、緑枠に示したような生活援助も提供しつつ、産婦からの主訴や身体情報から分娩進行状態を評価し、正常な経過をたどっているかを評価しています。
同時に、赤枠に挙げたように、正常からの逸脱が見られる場合には、直ちに医師に報告し、必要なケアを引き続き行っています。当然、異常に転じたからといって助産師のケアが中断されたり、助産師が全く関わらない状況になることはございません。
次の10ページですけれども、分娩第2期は、子宮口が10センチ開大してから児娩出までの時間をいい、この時期は陣痛による痛みが極限に達すること以外にも、母体、胎児の変化が起こりやすい時期でもございます。よって、助産師は胎児の健康状態と頭の下がり具合等の判断を行い、児の出生のタイミングを予測し、万全な体制を準備していくことになります。児の娩出直前になると、産婦は痛みなど身体的変化から自身をコントロールすることが難しくなる場合もありますが、産婦自身が満足できる出産だったと感じられるような援助を継続して続けます。
11ページですけれども、分娩第3期は、児の娩出から胎盤の娩出までの時間をいいます。産婦、新生児の健康状態を評価しながら、胎盤娩出が順調に経過しているか、出血量は正常かなど、短い時間に非常に多くの情報を収集し、評価しています。加えて、母子の状態に応じて愛着形成、育児のスタートを切れるよう、早期母子接触等の支援も開始します。
出産から2時間までを分娩第4期といいますが、この時期には母子それぞれの状態を注意深く観察し、母児同室が可能かどうか判断しています。
以上、分娩期は個別の高い様々な変化が起こるので、助産師は医師に常時報告を行いながら、安全でかつ満足度の高い出産体験となるよう、ケアを提供し続けています。
ここで、出産のための入院や出産そのもののタイミングについて、次の資料で補足しておきたいと思います。12ページの資料は、出産のための入院が24時間にわたることが調査結果で示されているものです。
また、次の13ページを開けていただきますと、出産そのもののタイミングも産婦の約半数は夜勤帯に出産しているという報告でございます。この調査においては、少数定数配置となっているケア人員の夜勤帯については、分娩担当者が分娩時のケアに専念できるような体制が必要だということも示されているところです。
では、次の14ページからは、産後のケアにお話を移していきたいと思います。
経膣分娩の場合は、おおよそ4~5日、帝王切開の場合は約1週間程度入院することが多いということが分かっております。助産師は、母子の健康状態の評価だけではなく、退院後、自宅でスムーズな育児をスタートできるよう、入院期間中に育児支援などを行っています。
次の15ページをお開けいただきまして、産後の母体の体は、妊娠前の状態に戻ったり、母乳が分泌されるようになるなど、様々な変化が生じます。また、ホルモンバランスの急激な変化によって、皆様も御存じだと思うのですが、精神的な不調が起こりやすい時期でもあることが分かっております。助産師は、母の心身の状態を観察、評価しながら、退院後に必要な育児の技術などが習得できるよう、生活支援も含めて昼夜問わず支援を行っているところです。
次の16ページになりますが、先ほど細野構成員からもお話がありましたが、助産師は新生児が子宮外生活にスムーズに適用できるように必要な観察ケアも行っています。昨今はハイリスク新生児も増加しており、異常を早期発見し、それに対応するための処置なども実施しており、ケア量が増加しております。
また、次の17ページでございますが、助産師はハイリスクの状態にある女性の疾患や病態、心理・社会的側面を理解した上で、時には施設内外の多職種との連携も取りながら、妊娠期から子育て期にわたり必要なケアを提供しているところです。
ここまで分娩時の助産師のケアについて述べてきましたが、ここからは少し提供体制について説明をさせていただきたいと思っております。
1点目は、医療機関と書いておりますが、病院における産科混合病棟の課題になります。少子化に伴い、産科関連病棟の多くが複数他科との混合病棟となっており、本会の調査では、産科の妊産婦さんと他科患者さんを同時に受け持つ状況が生じていることが分かっております。
次の19ページを御覧ください。刻々と変化する状態に関して綿密な観察や対応が求められる状況において、分娩進行中の産婦と他科患者を受け持つ状況は双方にとって安全とは言い難い状況があります。
この状況を改善するために、本会は産科区域の特定を推奨してきました。この理由は、下の図に示しているように、区域特定があることでケアを中断する割合が少ないということが分かっているからです。
ほかにも、次の20ページでございますが、切れ目ない支援と多様なニーズに対応する体制として国が推進する院内助産・助産師外来、こちらは医師とのタスク・シフト/シェアの推進事項にも入っておりますが、これにも推進に力を入れているところです。
また、次の21ページでございますけれども、こちらは院内助産・助産師外来を利用した妊産褥婦からの生の声でございます。こちらを見ていただくと、出産時にそばにいたことが心強く安心できた、もしくは継続的にケアを受けられたなど、満足度の高い出産に導く関連要因が示されている、そういった評価が妊産婦からもあるということがお分かりいただけると思います。
次の22ページをおめくりください。ほかにも、産後ケア事業について、産後ケアの実施施設の6割が医療機関で実施しているということが分かっております。
次の23ページでございます。そして、これまで説明してきた産科区域の特定ですとか、院内助産・助産師外来の推進、産後ケア事業は国が示す方針にも明示されていることから、今後も推進が必要だと考えております。
最後のまとめとなります。妊産婦に安全・安心なケアを提供するために、24時間体制を置きながら、正常からハイリスク妊産褥婦に対応できるよう整備をしています。また、分娩に寄り添いながら、異常な経過に転じないように観察や判断、ケアを提供しているという状況があります。加えて、産後入院の数日間で妊産婦と家族が退院後の育児をスムーズにスタートできるよう、メンタルヘルスの支援も含めた支援を届けているところです。
今後も、妊産婦が24時間365日ケアニーズに沿った支援の提供を受けられることができる体制の整備が重要であると考えております。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
引き続き、資料4の髙田構成員からの報告をお願いいたします。
○髙田構成員 日本助産師会会長の髙田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
資料を御覧いただきながらお願いいたします。
まず、日本助産師会の紹介をさせていただきます。本会は助産師のみの職能団体でございまして、会員は大きく分けて就業形態別で、分娩を取り扱っている助産師の院長並びにその従事者の助産師、分娩を取り扱っておらず、産後ケアや新生児訪問のみで助産所を開設している助産師、そして、病院や診療所に勤務している助産師が構成員であります。
もちろん、看護協会と日本助産師会の2つの職能団体に入っている会員もおります。
看護協会との違いとすれば、会員の中に助産所を開業している助産師の加入率が高いところでございます。
話に入る前に、石川県の能登半島沖地震の活動について、本会の石川県助産師会の報告を少しさせてください。発災から7か月たって、今も景色が1月から変わらず、新生児を連れて帰れない方々もいらっしゃるという報告を受けております。その中で、石川県では、災害活動をする際に、支援メンバーとして、開業しているからこそ自治体や他団体からの信頼、信用があり、地域で、そして、病院との連携が、助産師としての責任を持ってケアできると報告を受けております。
こういったこともあって、本日は「妊娠から産後まで 地域の妊産婦を支える助産師のケア」と題してプレゼンテーションをいたします。
めくっていただきまして、本日プレゼンテーションでお伝えしたいことはそこに書いてあるとおりでございます。
では、最初に助産師、助産所についてです。
このスライドの左側の助産師については、先ほど看護協会のほうで御説明がありましたので、割愛させていただきます。
右のほうの助産所についてでは、助産所の定義は医療法に位置づけられております。さらに、助産所の開設者は、嘱託する医師及び病院または診療所を定めておかなければならないと定められています。
次のスライドの資料に行きますが、助産師及び助産所数についてです。
左の図にありますように、2022年、働いている助産師は3万8063人で、そのうち助産所で働いている助産師は黄色のハイライトの部分になりますが、2,445名、徐々に増加しております。
右の図の棒グラフのほうは助産所の数で、2017年に一旦減少しましたが、そこから徐々に増加しております。2022年で分娩を取り扱っている助産所は全国に338件ございます。そこでの出生数は、折れ線のグラフのほうで、2022年で4,055人です。出生率の低下とともに助産所での出生数も低下していましたが、2019年頃よりほぼ横ばいになっております。
次の6ページのスライドを御覧ください。先ほど看護協会の説明にもありましたように、私たち助産師は妊娠・出産・育児を中心にしつつも、生涯にわたって女性が健康な状態でいられるようなケアを行っていると示させていただいた図でございます。
では、次の8ページを御覧ください。ここからは、地域での助産師の活動と役割に焦点を当ててお話をさせていただきます。
このスライドは、女性やその家族が住み慣れた地域において、地域の状況を把握した助産師がどのような活動を行っているかを表しております。
上段は母子保健の関連で、例えば新生児訪問や、若年妊娠や社会的なリスクの高い妊産婦さんへの養育支援訪問事業を、成熟期には出産準備教室や子育て教室の開催、産後ケア事業や伴走型支援などを行っています。
下段の女性の健康では性教育や不妊・不育へのケア、また、近年、精神疾患を合併して医療を必要とする母親などに対して助産師が訪問看護として対応し始めております。
次のスライドをお願いします。このような活動につきましては、日本助産師会の各都道府県助産師会全てに子育て女性健康支援センターを設置しておりまして、そこで活動していることも多々ございます。また、地域では自治体とのつながりが強く、ここに例として東京都と神奈川県の委託事業を出させていただきました。
次のスライドをお願いいたします。では、次から分娩取扱いを行っている助産所のケアの実際を説明したいと思います。
助産所での妊産婦等への支援の特徴は、真ん中に書いてありますように、リラックスできる雰囲気のある家庭的な環境で、助産師が継続的に妊産婦を支援することにあります。切れ目のない支援という言葉がございますが、全く切れていないというようなことになります。
継続的にということは、妊婦健診から分娩、産後のケアの特徴を示しておりますので、それぞれ御説明したいと思います。
次のスライドにつきましては、助産所は妊娠期から育児期まで継続して母子を支えるということを図で示させていただいております。妊婦は、この助産師と産むと助産師を選択し、選択された助産師は助産所で妊娠期から妊婦の状況を把握し、その妊婦に合ったケア方法は何かということを分析しながら、正常経過をたどるように継続して妊産婦と家族のそばで見守りつつ、ケアをしていきます。
次のスライドをお願いします。このスライドは、年間分娩件数60件、産後ケアも行っているやや大きめの規模の助産院の分娩のある日のスケジュール例になっております。この日の日中は助産師Aさん、Cさん、Dさんが3名が勤務しており、助産師Aは主に外来を、助産師Cは主に産婦さんを、助産師Dは主に産後ケアを担当しております。
ちょうど午後、ブルーの四角にありますように分娩となりまして、ガイドラインでは分娩時は助産師2名以上で対応するということにしております。この日は産後ケアの助産師も加わって、3名で関わったというようなスケジュールの例でございます。
次のスライドをお願いします。では、助産所で提供されているケア内容を御説明したいと思います。ケアの内容について、分娩時の経過等について様々御説明もございましたので、少し割愛させていただくところもございます。
まずは妊娠期になります。助産所での妊婦健康診査は、母体と胎児が正常な経過かどうかを助産師が判断すると同時に、女性が自分の状態を理解し、次の健診までセルフケアができるよう、ゆっくり大体1時間かけて行うのが特徴です。
胎児の状態確認は、設備している胎児心拍モニターや超音波断層撮影も活用し、正常範囲であることを確認しております。
育児相談は出生直後の授乳支援に始まり、退院してからも子供の成長に合わせて時々立ち寄ったりしながら、相談をして帰るなどもあります。その後、妊娠、出産まで続いて、次の出産に至ることもあります。
助産師は24時間365日分娩待機もありまして、電話対応もしていますので、妊娠・出産にかかわらず、思春期から更年期までの相談活動も行っております。看護/助産学生の指導まで、後輩の育成についても対応しているところです。
次のページを御覧ください。このスライドは介助時のケアの実際です。助産所では、家庭的でプライバシーに配慮できる環境、例えばリラックスできる環境は、音や光に配慮し、周りにいてほしい人だけがいる。そういう安心した環境を提供し、その人が持っている力を信じ、産婦側も力を最大限発揮できるように、状況やその人に合ったことを分析した上で支援を行っております。
分娩進行中は、産婦が不安や孤独を感じることがないよう、常に家族や助産師が見守り付き添います。決して独りぼっちにはいたしません。夫や上の子も重要なキーパーソンですので、家族が主体的に出産に向き合い、新しい家族関係がスタートできるように見守り、支援をします。
分娩時は急変することがありますので、細かな変化の観察は重要です。そのため、正常からの逸脱、もしくはそれが予想される場合には、助産業務ガイドラインに沿って適切に先生方がいらっしゃる高次医療機関施設と連携して搬送するようにしております。
次のスライドは、産後などのケアの実際です。新生児は慎重な観察の下にケアを行い、必要時、例えば黄疸が強いなどがあった場合も、適切に医療連携をしております。家庭的な環境の中で、基本的な育児技術をその人に合わせて個別に指導しております。自宅に帰っても安心して赤ちゃんのいる生活ができるように、お母さんの力を信じて、時間をかけて見守っております。妊娠中から経過をずっと知っている専門家だからこそ、いつでも相談できる場所として心の拠り所となっておるところです。
では、18ページを御覧ください。次は、助産師のケアと安全性の件です。
助産所では医師はいませんから、出産の現場における助産所の使命は、低リスク妊産婦を安全に管理し、女性が満足できる出産をサポートすることになります。そのためには、最初に申し上げたように、分娩を取り扱う助産所の嘱託医・嘱託医療機関との連携体制を整えております。
また、妊娠、出産から産後のケアの提供におきましては、助産業務ガイドライン及び産婦人科診療ガイドラインを遵守しております。この助産業務ガイドラインは、助産所で出産できる低リスクの妊婦さんとはどのような方かを決めた妊婦管理適応リストと、分娩急変したときの対応の決めごとがきめ細かく含まれております。
このほか、妊婦自身の自己研さんとして、緊急時の対応ができるために新生児蘇生法は全員受けておりますし、母体救命システムの講習についても順次進めております。
続きまして、次のページにありますように、このような仕組みやガイドラインを遵守いたしまして、助産所での妊娠・分娩経過の転送・搬送の割合を2つの調査から出させていただいております。いずれも妊娠期にガイドライン適応外になるなどして病院や診療所に転院するのは7~10%程度で、分娩中や分娩後に医療が必要になるのは3.8~9%、新生児の搬送はいずれの調査も3%程度です。
分娩中の搬送は緊急だけではなくて、分娩経過が長引いたり、破水後陣痛が来ないなど、医療が必要な人たちの搬送も含まれております。
続きまして、次のページは、このような妊婦さんや新生児の安全を守っていくために、日本助産師会としては、助産所の安全性の維持とケアの質の向上のために安全管理評価基準を設け、助産所の安全管理評価も毎年行っております。
この表にあるように、妊婦監視装置や酸素ボンベやマスクなどの機器を整備し、安全確保・質の向上の取組も行っております。
ローリスクの妊婦を対象とした病院と助産所の出産に関するアウトカムの比較調査では、有意な差があったのは1,000mL以上の出血というところで、ほかの項目に差はなかったという結果が出ております。この出血のことに関しましては、分娩後に子宮収縮剤を投与しないという助産所の対応が影響しているのだと考えております。
続きまして、さらに助産所では、国際的にも明確になっておりますエビデンスに基づくケアを行っております。
左にあるのはWHOから出ておりますポジティブな出産体験のための分娩期ケアであり、国際的な研究の下でのケアのエビデンスが書かれています。
また、右はWHOから出されています母乳栄養のためのエビデンスです。「The Ten Steps to Successful Breastfeeding」です。具体的な内容はスライドを御覧いただきたいと思います。
では、続きまして、助産所のケアの評価と満足度についてです。このスライドは、産後の女性を対象とした調査結果です。産後の満足度は100点満点中平均98.1点、助産師の支援に対する満足度は100点満点中平均99.2点、その下の図におきましても、出産場所が安心できたのは97.4%と助産所で分娩した妊産婦の満足度は非常に高いことを表しております。
続きまして、助産所で出産された方の意見を披露いたします。
妊娠中から出産、産後まで心と体に寄り添ってくれて、初めての出産でしたが、安心してお産に臨むことができました。
一番下のところは、夫と長男も一緒に立ち会うことができ、一緒に乗り越えた。新しい命を一緒に迎えられたことがとてもうれしかった。
その右ですけれども、温かくて優しくて、絶対に必要な場所です。またここに戻ってきたいと思える場所だとおっしゃられていました。
最後にまとめを申し上げたいと思います。
妊娠・出産・産後における母子と家族のポジティブな出産・子育て体験を支える助産師の継続ケアの拡充に向けて、1つ目には、助産所は家庭的な環境の中で、安心してきめの細かい、一人一人に合わせた妊娠期から育児期までの継続的な助産ケアを行うことが可能でございます。
2つ目は、助産所は必要な医療機器や設備を備え、エビデンスに基づいた助産ケアを行える実践能力と環境を整備し、緊急時の連携体制を確保しております。
3つ目は、助産所は女性とその子供の心身の健康に焦点を当てた、困ったときに相談できる、ふと一休みに立ち寄れる場所として、地域でいつでも開かれております。
4つ目には、女性と共にある者、mid-wifeというのはwith wifeという言葉でございまして、私たち助産師は女性やその家族の生活に寄り添い、継続して関わることで、その地域の保健、医療、福祉、教育の包括的な支援のリエゾン、いわゆるかけ橋になることができると考えております。日本助産師会は、会員の助産師と一丸となって、全ての母子と家族に切れ目のない支援の実現とポジティブな出産・子育て体験を届けるために今後とも取り組んでまいりたいと考えております。
御清聴ありがとうございました。
○田邊座長 御報告ありがとうございました。
それでは、資料3、資料4につきまして、御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いいたします。
では、松野構成員、よろしくお願いします。
○松野構成員 連合の松野です。
御説明ありがとうございました。
私も出産のときに助産師の方々に心身ともにケアしていただいたことを思い出しました。特に初めての出産では、多くの妊産婦の方が不安を抱えていらっしゃることと思います。そうした中で、産婦人科の先生方はもちろん、妊産婦に寄り添った支援を行う助産師の方々のお仕事が非常に重要だと考えております。
先ほど時間の関係で、前田構成員と亀井構成員にも質問することができなかったので、別途質問させていただきますが、まずは、産婦人科医のお二人と助産師のお二人に共通する質問を1つさせていただければと思います。もし共通の見解でございましたら、代表の方にお答えいただければと思います。
井本構成員の資料3の24ページに入院の期間が書いてあります。そこには4~7日程度と書いてございますけれども、病院や助産所であらかじめ決められている入院日数も様々だと思います。多分地域や施設によっても違うと思いますが、通常何日ぐらいなのか、また、日数が短くなったり、長くなったりする場合はどのような場合なのか教えていただければと思います。
○田邊座長 では、御回答をよろしくお願いします。
○前田構成員 では、一人ずつ。
診療所では、施設によって多分考え方は違うと思いますが、例えば私どものところでは、一応規定の入院日数は決まっております。経産婦さんが産後4日目、そして、初産婦さんは5日目、帝王切開の方は6日目です。
ただし、妊婦さんの希望があるときには当然延長もしますし、逆に産んだ翌日に帰りたい方もいらっしゃいます。それは、上のお子さんが家で母を求めて、とてもほかの人間では対応できないときとか、そういう融通の利かせ方はしています。
ただ、早く帰った方はいろいろなケアがどうしても落ちますので、事情の許す限り来院していただいて、諸検査をする。赤ちゃんの検査は産後4日目、5日目でないとできない検査があったり、4~5日はフォローアップしなくてはいけない検査があったりしますので、そういったものは退院してからやっていただくようにしています。
あとは、やはりグリーフケアなど、早産で亡くなってしまったとかといった方の場合には、なかなか入院しているのがつらい方もおられますので、そういう精神的な面でも早く帰りたい方が出てまいりますので、それはできるだけ寄り添うように考えています。
そんなところでしょうか。では、ほかの構成員の方。
○亀井構成員 学会でございます。
私どもの資料の参考資料を42ページに添付してございます。これは2018年の段階の国保中央会のデータなのですけれども、日本は非常に正常分娩に伴う入院日数というのは長うございまして、欧米ですと大体2日から3日程度なのですけれども、我が国は大体5日、6日程度。
ただ、前田先生がおっしゃっておられるように、だんだんその日数も次第に短くはなってございまして、現状、多くの大学病院、周産期母子医療センターもやはり4日とか5日程度ではないかなと思います。
帝王切開に関してはおおむね1週間後と考えていただいていいのかと思います。あとは御希望によって多少短く長くということになろうかと思います。
○井本構成員 日本看護協会の井本でございます。
ほぼ前田構成員と亀井構成員がおっしゃったとおりで、4~7日とは、本会で調査を取ると大体この辺りのレンジになるということで書きましたが、やはり第1子との関係で早く帰りたいという方もおられますし、様々な状況で帰りたいという方がおられたり、こちらが気がかりな産後の様子から、お母さんと家族と相談して少し長く入院するというような場合、あとは、身体的状況によって医師の判断により入院を長くする場合があるというところでございます。
いずれにしても、早く退院した場合には、当然産後ですので、早期の場合は1日もしくは2日単位で、何かしらのアウトリーチで訪問するなり来ていただくなりということが手厚く必要な状況でございます。
以上です。
○髙田構成員 日本助産師会の助産所開業の場合も大体4日から6日ということで、皆さんがおっしゃられたように、その条件としては、まずは御希望ということと、赤ちゃんの様子を見た上でということが基本になってくると思います。
先ほどからもあるように、助産所の場合は上の子供も一緒に入院することもありますし、御家族も一緒に入院しているということもありますので、そういった意味で、上の子のためにだけではなくて、お母さんの安静のために復古状態でしっかり休んだ上で、帰ったらまた次のいろいろな事情もあるでしょうから、母親の休息というような復古状態のことや進行性変化のこと、母乳の支援だったりというようなことがある程度見えた段階でお帰りいただくことがあります。できるだけゆっくりというような方向で考えているところではあります。
もう一つは、御本人の関係で早くに帰りたいという人の場合には、助産所の場合は訪問をさせていただいております。
以上です。
○田邊座長 よろしゅうございますか。
○松野構成員 はい。丁寧な御説明をありがとうございました。
○田邊座長 ほかはいかがでございましょうか。何か御質問等があれば。
では、よろしくお願いします。
○中西構成員 たまごクラブの中西です。
感想レベルの発言で申し訳ないのですけれども、今日お話をいろいろ伺っていて、すごく問題がいっぱいあるのだなということがとにかくはっきりしたと思いました。マスコミの報道では26年から保険適用が決まったことのような言い方をよくされていると思うのですが、これだけの問題を26年から適用にまで持っていくのは結構大変ではないのかなという気がしまして、これについては絶対に26年適用とか、何か締め切りが決まっているものなのでしょうかというのが気になったといいますか、思ったのですけれども。
○田邊座長 では、事務局、よろしくお願いします。
○佐藤保険局保険課長 保険課長でございます。
2026年度を目途に保険適用の導入を含めて、出産と産前・産後のケアも含めてですけれども、それに関わる支援策のさらなる強化について検討を行うというのが閣議決定の書き方になっておりますので、2026年度からやるということをその文書で決めているというわけではございません。その意味で、この検討会はそういった面で御議論いただきたいという趣旨でございます。
以上でございます。
○中西構成員 ありがとうございます。
○田邊座長 ほかはいかがでございましょうか。
濵口構成員、どうぞ。
○濵口構成員 濵口です。
今日は医療提供側からのヒアリングということで、聞くところによると、次回が妊産婦さん当事者からのヒアリング、そして、その次に保険者側からのヒアリングということを聞いておるところでございます。
今日、医療提供側の5団体からいろいろな御説明がありました。私も産婦人科医師でございますが、各団体からのお話を聞いていると、いかに日本の妊産婦さんが非常にきめ細かいケアと、そして、きめの細かいメディカルケアを受けて、しかも、それが世界一安全な日本という国であるということは間違いないわけです。10万人当たり妊産婦さんの死亡率は3.2ということで、これは世界一でございます。これを今、堅持しているというのは、ここに来られている医療提供者側の方々がこの安全を守っているということは間違いのない事実だろうと思います。
その上で、いろいろ考えていかなければいけない中で、もう一つ、今の日本の妊婦さんというのは、具体的には出産に関わる費用を考えながら、自分が望む土地でお産をしたい。そして、自分が望むサービスを受けたい。そういったことで分娩施設を選んでいるというのが現実、事実でございます。
その上で、医療機関というのは、先ほどから安全の話もしていますけれども、やはり人材というのは絶対に必要なわけです。医師にしても、助産師にしても、看護師にしても、この人材を確保するということに大変な努力が要るというのは医療機関として間違いないわけで、さらに初経産の違いだとか、あるいは個人差の他、先ほどから助産師会あるいは看護協会からお話がありますように、現在の妊産婦さんの多様性のあるニーズにも応えなくてはいけない。こういった内容を踏まえて出産というものを考えているというのが、今日、私も当事者でありながら、もう一回確認をできたところでございます。
そういった意味で、今後この検討会の中で本当に丁寧に少しずつしっかりと議論していかないと、少なくとも今言ったような安全だとか、妊産婦さんが取り残されるような制度設計になるような形で終わってはいけないと私は感じておりますので、今後、当事者あるいは保険者からヒアリングがあると思いますので、その中でまたしっかりとお話をして、また意見をしていきたいと考えております。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、家保構成員、よろしくお願いします。
○家保構成員 ありがとうございます。家保です。
1点、国、それから、看護協会のほうにお聞きしたいのですけれども、医師の業務の削減も兼ねて、院内助産を非常に増やそうということで、現在、病院については15%という状況です。ただ、細かく見ていきますと、6つの県では実施ゼロ、それから、都道府県内で10か所以上の院内助産をやっているところは東京、愛知、大阪の3つだけです。実施率については、県内で50%が2県ありまして栃木県と山梨県です。地域によって、各都道府県の考え方、病院の考え方は様々だと思いますけれども、やはり実施できれば、非常に病院の勤務で産婦人科医の先生が大変なところを少しでも負担が減ると思いますけれども、どういうふうな考え方で今後進めていかれるのか。それから、山縣副座長は山梨にずっとおられたので、その辺、半分、50%になったのは、どういうような取組があったのかというのを教えていただけるとありがたいと思います。
以上です。
○山縣副座長 山縣です。
私は正確には答えられませんが、やはりどういう体制が妊婦さんにとっていいのかということをベースに考えて院内助産が始まったと聞いています。そこでどういうふうにそれを活用するかということについて、経験を積みながら、院内助産と産科の連携で現在があるのではないかと思います。
以上です。
○井本構成員 日本看護協会としては、国が推進して以降、産科の先生方、産婦人科医会や学会の先生方などとも御相談しながらガイドラインをつくっておりまして、それに沿って推進しています。特に最近の調査においては、やはり県等の自治体側の協力があると随分推進ができるのだというようなことが出ております。
されど、やはり院内助産を実施するには、助産師の数ですとか、産科医師との協働というところに関して施設としてどう考えていくかというようなことも大変重要なポイントですので、日本看護協会としては、この3年間ぐらいはそういったことをどう考えて推進していくのかというイベントを開催したりして周知などをしております。
具体的には、こういった体制がどういったものなのかというのをやはりしっかり産科医師と一緒に認識していくフェーズが必要なのではないかなと考えているところです。
○家保構成員 ありがとうございました。
ゼロの県がいっぱいあるというのはあまりどうかなとは思いますので、先進的なところが県内1か所でも県内でも進めば他の施設にも広がると思いますし、そういうところの情報をぜひとも、国もそうですし、看護協会からも各都道府県に流していただければありがたいと思います。当然、県内では、産婦人科医会の先生方や産科婦人科学会の先生方とよく協議しながら進めていきたいと思います。
以上です。
○田邊座長 どうぞ。
○前田構成員 産婦人科医会の前田でございます。
先日、田倉班の研究の中でこの院内助産という言葉が出たときに、産婦人科の医師の業界の中では、院内助産という言葉に対して誤解が結構あったという事実が判明しました。これは、井本構成員とそのときに同じ班におりましたので、要するに院内助産という定義も看護協会さんはたしか一度改定されているのですよね。昔は医師が全くタッチしないようなイメージで産婦人科医は捉えていたところ、今は助産師と医師が共同して分娩に取り組むということを院内助産の定義としております。
これは推測にすぎませんが、恐らくゼロの県というのはその誤解がまだ解けていない県ではないかと推測いたします。ですから、数字はまだファジーなものがありまして、その誤解が取れた暁に正しい数字が明らかになるのではないかなと考えております。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかに。
では、松野構成員、よろしくお願いします。
○松野構成員 すでに全体の話になっていると思いますが、前田構成員と亀井構成員にそれぞれ質問がございますので、少し戻って質問させてください。
まず、前田構成員の資料1の22ページに。「保険適用とならない診療行為が数多く」あり、「多くの医療機関で持ち出しとなっている」、「分娩料や介助料に転嫁せざるを得ない」とありますけれども、これは具体的にどのような行為が当たるのでしょうか、というのがまず1つ目です。
それから、亀井構成員への質問なのですけれども、参考資料にあるということなのですが、手元の資料2の8ページの1分娩当たりの費用についてです。費用の中央値が130万以上と、前回の検討会の資料にあった全施設の平均出産費用48万と比べて大変高く感じられます。これは大学病院がハイリスク妊産婦の対応を行うことからだと受け止めておりますけれども、具体的にどのような費用が入って高くなっているのか教えていただければ幸いです。現状を知るという意味でよろしくお願いいたします。
○田邊座長 では、よろしくお願いします。
○前田構成員 では、前田のほうから。
まず異常分娩に関しましては、保険適用になっておりますシーンというのは、最後の児の娩出のところだけなのです。ですから、例えば本来正常分娩になるべくずっと十何時間、あるいは中には1日、2日とかけてずっと見ていた方が、最後に吸引分娩になりますと、その部分は保険適用になりまして、それ以前の部分は健康保険では評価されないということになります。その部分の費用というのは、現在は分娩介助料という扱いで算出されております。
分娩介助料や分娩料に転嫁せざるを得ないものというのは、一番代表的なものは分娩監視装置の装着、読影判断、そういったものは今まず全く医療保険の点数には反映されませんで、唯一、胎児機能不全という病名がついた場合に健康保険の適用になります。ですから、そういったもの。それから、妊婦さんの精神的なケアですとかメンタルヘルスケアといった助産行為も全く医療のコストの中に含まれておりませんので、そういったものも分娩介助料に転嫁せざるを得ないということになります。
そのほか、例えば生まれて赤ちゃんが最初に酸素飽和度のチェックをしたり、血液ガスのチェックをしたり、これは医療行為ですが、これもほとんどというか、よほど特別な病名がつかない限りコストには反映されません。ただ、分娩の費用の内訳の中にそれを取る項目はないのです。ですから、結局それは分娩介助料、分娩料の中に転嫁せざるを得ないということになります。
ほかにもいろいろありますが、主立ったところはそういったところでございます。
○亀井構成員 御質問ありがとうございます。
試算の方法に関しましては、先ほどの私どもの準備した資料の45ページ以降に詳細を記載してございますので、御覧いただければいいかと思いますけれども、48万円との違いは、恐らく人件費の問題として、例えば新生児科医であるとか、麻酔科医であるとか、この辺りの待機の時間も含めての費用でございますので、先ほどから何度も申し上げておりますように、待機していること自体に費用がかかっておりまして、そこの部分を48万円のときは一切考慮していないのです。だから、特に大学とか総合病院では、本当の価格はこの程度かかるのだと御理解いただければと思っております。
以上です。
○田邊座長 よろしゅうございますか。
○松野構成員 ありがとうございます。今後の参考にさせていただければと思います。
○田邊座長 ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、時間がまいりましたので、この限りとしたいと存じます。
今日は様々な御意見を頂戴いたしました。事務局におかれましては、次回以降の議論に向けて御準備いただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
これをもちまして、本日の議事は終了といたします。
今後の予定につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
次回も引き続きヒアリングを実施することを考えております。正式な議題、日程につきましては、改めて御連絡をさしあげます。
○田邊座長 ありがとうございました。
これをもちまして第2回の検討会を終了いたします。
本日は、大変お忙しい中お集まりいただきまして、また、非常に中身のある報告をいただき、それに対する質疑応答をできました。御礼申し上げます。
では、これで散会いたします。