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- 第7回厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会 議事録
第7回厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会 議事録
健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課
日時
令和6年6月18日(火)14:00~16:00
場所
航空会館 ビジネスフォーラム7階
(東京都港区新橋1-18-1)
(東京都港区新橋1-18-1)
議題
- (1)エイズ対策及び性感染症対策の現状について
- (2)後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の改定について
- (3)その他
議事
- 議事内容
- ○エイズ対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第7回「厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会」を開催いたします。
委員の皆様、参考人の皆様におかれましては、御多忙にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日、議事進行を務めさせていただきますエイズ感染症対策課の杉原と申します。よろしくお願いいたします。
本日の議事は公開となりますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては、あらかじめ御理解と御協力のほど、お願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除きまして、写真撮影、ビデオ撮影、録音等をすることはできませんので、御留意ください。
本日は、ウェブと会場のハイブリッドで開催することとしております。ウェブにより参加されている方は、御発言される場合は、まず挙手機能を用いて挙手いただくか、チャットに発言される旨のコメントを記載いただき、委員長から御指名されてから御発言いただくようお願いいたします。なお、ウェブ会議ですのでタイムラグが生じますが、御了承願います。会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合には、あらかじめお知らせしております番号までお電話いただきますようお願いいたします。
続きまして、今回、小委員会のほうですけれども、委員長の交代がございました。厚生科学審議会感染症部会運営細則の第3条に基づきまして、脇田部会長より俣野委員の御指名をいただいておりますので、御報告いたします。
委員長より一言御挨拶をお願いいたします。
○俣野委員長 国立感染症研究所副所長の俣野でございます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
○エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
次に、委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、味澤委員、川名委員、渡瀬委員、高久参考人より御欠席の連絡をいただいております。また、今村委員、宮田委員より少し遅れて御出席されるという御連絡をいただいております。
また、本日、大雨の関係で、参考人としてお呼びしております白阪様におかれましては、少し遅れて出席されるというお話をいただいております。御出席いただいております参考人といたしまして、後藤様、花井様、生島様、岩橋様、松下様、山岸様、岩田様に御参加いただいております。
それでは、現時点でウェブ参加を含めまして、委員の皆様、12名中7名に御出席いただいておりますので、定数以上の委員に御出席いただいているということで、会議が成立したことを御報告いたします。
申し訳ございませんが、冒頭の頭撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力お願いいたします。なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので、御留意ください。
それでは、議事に入る前に資料等の確認をさせていただきます。まず、議事次第と委員・参考人名簿、座席図のほか、資料1から資料5、参考資料1から参考資料5、机上のみ配付の資料として改正案のたたき台を御用意しております。不足の資料がございましたら、事務局のほうにお申し出ください。改正案のたたき台ですが、会議終了後、回収させていただきますので、お持ち帰りされることのないようにお願いいたします。
以降の議事運営につきましては、俣野委員長にお願いいたします。
○俣野委員長 改めまして、小委員会の議事運営を託されました俣野でございます。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、本日の議題を確認いたします。本日の議題ですが、議題1「エイズ対策及び性感染症対策の現状について」、議題2「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の改定について」、議題3「その他」としております。
次に、議事の流れといたしまして、議題1及び議題2を関連して一括議題とし、資料1を事務局から、資料2を白阪参考人から、資料3を松下参考人から、資料4を岩田参考人から御説明いただいた後、資料5「次期エイズ予防指針の構成」の改正案を御説明いただき、御欠席の委員の皆様の御意見を事務局から伝達後、皆様に御審議いただきたいと思います。
本日は、会議時間として2時間をいただいておりますが、皆様におかれましては、円滑な議事進行に御協力をお願いいたします。
それでは、議題1、議題2を併せまして議事に入りたいと思います。
まず、資料1「次期エイズ予防指針の改正に向けた検討」につきまして事務局より5分程度で説明をお願いいたします。
○エイズ対策推進室長補佐 事務局のエイズ対策推進室の芦澤です。資料1を御覧ください。
次、お願いいたします。目次になります。
次、お願いいたします。
次、お願いいたします。まず、日本の発生動向についてですけれども、HIVは、近年は新規感染者数が減少傾向にありましたけれども、昨年、2023年は、速報値でありますけれども、増加に転じたと。コロナ禍で検査件数が減っていて、その後、回復傾向にあることが要因として考えられてはいますけれども、今後注視が必要とされております。
次、お願いいたします。国内では、男性、同性間性的接触。また、若年者で多い傾向にあります。
次、お願いいたします。エイズ対策の現状ですけれども、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針は、感染症法に基づいて作成し、公表するものとされておりまして、厚生科学審議会の意見をあらかじめ聴かなければならないと定められています。直近改正は、平成30年1月18日でありまして、7つの項目に分けられております。
次、お願いいたします。まず、第一の原因の究明ですけれども、ここは感染者等の情報の収集、発生動向の収集というところで、国や自治体の連携を図に示しております。
次、お願いいたします。また、発生の予防及びまん延の防止というところで、性感染症対策でありましたり、個別施策層への対策ということに力を入れております。
次、お願いいたします。また、普及啓発イベントでありましたり、一番右のポスターコンクールを毎年行っておりますけれども、こういったことで普及啓発を行っております。
次、お願いいたします。また、先ほど申し上げました保健所の検査件数、コロナ禍で落ち込んでいたものが回復傾向にあるのかなと考えられますけれども、保健所の検査は無料・匿名で行う体制を整えております。
次、お願いいたします。また、第三の医療の提供ですけれども、こちらは国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センター(ACC)がエイズ医療提供体制の頂点と書いてありますけれども、その下で全国8ブロックについて、1ブロックで複数箇所ある地域もありますので、14施設の地方ブロック拠点病院が設けられています。各都道府県1か所以上の中核拠点病院。また、地域において診療を中心的に担ってもらう拠点病院というふうに定められております。
次、お願いいたします。第四の研究開発につきましても、厚労科研、また基礎的な分野においてもAMEDで多くの研究者の先生方に行っていただいております。
次、お願いいたします。第五の国際的な連携につきましても、日本からもグローバルファンド等への拠出など貢献しておりますし、人権の尊重におきましては、先ほど申し上げましたように、検査の普及週間などを通じて普及啓発に取り組んでいるところです。保健所で無料匿名検査も行っております。
また、第七の施策の評価に関しましては、施策のモニタリングの重要性というところを多くの方々から御意見いただいているところになります。
次、お願いいたします。
次、お願いいたします。指針改正までの流れですけれども、前回は4回の小委員会を経て感染症部会で審議を行いました。今回、当事者団体の方々と計3回の打合せ会を行いまして、そういう御議論を踏まえて、本日、小委員会開催の運びとなっております。今後、意見がまとまり次第、感染症部会で審議していくということで予定しております。
次、お願いいたします。
次、お願いいたします。指針の案についてですけれども、まず、全体の構成につきまして、ここにお示ししていますように、ヘルスケア、医療の提供や人権の尊重が直接予防につながるというところもありますので、偏見・差別なく適切かつ必要な医療を受けることが確保されなければいけないという観点が重要というところで、既存の指針の第六にありました人権の尊重を第一に持ってこようということを御意見としていただいておりまして、検討しているところであります。
次、お願いいたします。それぞれの個別論点を挙げさせていただきました。
まず、1つ目のHIV流行終結に向けた目標設定というところで、UNAIDSの国際的な目標、2030年までの流行終息に向けた目標がうたわれています。理念的な目標として「偏見・差別、新規感染症、エイズ関連死をなくす」こと。また、数値目標として、難しいところはありますけれども、UNAIDSで提唱されているケアカスケード、第1に感染していることを自覚する、分かること。第2に治療を受けること。第三にきちんとウイルス量がコントロールされているということ。この一連のプロセスの95-95-95という目標を記載してはどうかという御意見をいただいているところです。
また、2番目のU=Uですけれども、Undetectable=Untransmittableということで、ウイルス量を一定基準未満に抑えれば、他者に感染することはないというエビデンスも言われていますし、インパクトのあるメッセージになるということで、ぜひいろいろと盛り込んでいくことを御意見いただいているところです。
3番目の偏見や差別の撤廃ですけれども、これもHIVということで、診療の拒否でありましたり、医療サービスの拒否があってはならないといったことを打ち出していければと考えております。
次、お願いいたします。4番目の個別施策層への対策ですけれども、既存の指針ではMSM、性風俗産業の従事者、また薬物乱用・依存者というところが記載されております。個別施策層というのが施策の実施において特別な配慮を必要とする人ということで記載されていますけれども、今の感染動向・実態を把握することも必要じゃないかという対象も含めて、広い意味でそういった方も含めていこうということで、トランスジェンダーや受刑者、外国人という対象者の方々も含めるのかどうかという御意見をいただいているところであります。
5番目の曝露前予防、PrEPですけれども、これも特に海外ではエビデンス、有効性が言われているところでありますけれども、そういった取組を推進していくとともに、課題も一緒に考えていく必要がある。コンドームの使用の低下による性感染症の懸念・可能性が言われておりますし、副作用といったところの健康被害の可能性もありますので、医療でのフォローというのも必要というところを盛り込む必要があるのではということで御意見いただいております。
また、医療体制についてですけれども、こちらも繰り返しになりますけれども、HIVということで、診療の拒否であったり、消極的になってはならないという点。また、地域での医療連携体制といったところも盛り込んでいければと考えております。
最後のページ、お願いいたします。郵送検査に関して既存の指針にも触れられているのですけれども、利便性のある検査体制ということで、もちろんこれはユーザーにとっても、今回コロナ禍では保健所の逼迫が露呈したところもありますのでその面でも、特にユーザーにとって利便性のある検査の記載。また、個別施策層の方々にも届くようなというところを見ております。
最後の予防指針に基づいたモニタリングですけれども、これも施策を打ち出して、その評価というものをきっちりしていく必要があるということで、必要性について盛り込むということ。また、感染者等が主体的に関与していくGreater Involvement of People Living with HIV(GIPA)についての記載も検討しているところです。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございました。
続きまして、もともとの予定では資料2の説明を白阪参考人よりお願いする予定でございましたが、大雨で新幹線の遅延のため到着が遅れられるということで、1つ飛ばさせていただきまして、資料3「エイズ予防指針に基づく対策の推進のための研究~次世代のエイズ予防指針に求められる取り組みとは?~」というタイトルで、松下参考人より5分程度で説明をお願いいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○松下参考人 俣野先生、御紹介ありがとうございました。松下でございます。5分程度、少し早口になりますけれども、聞き取ってください。書いてありますので。
ここにいるような、私を含めて、基礎・臨床・社会の先生方に代表になっていただきまして、御紹介があったとおり、主にモニタリングを中心にやってまいりました。
スライド、お願いします。これがもともとの計画で、一番上の目的に書いておりますように、各種施策。この予防指針は大きな指針ですから、これを基にして施策が行われるという仕組みになっております。ですから、その施策がどのぐらい行われているかということを経年的に評価するというミッションがございまして、厚労省のほうからこういうことが言われましたので、それの受け皿になっていることでございまして、進捗状況を把握して課題を抽出する。一貫したエイズ対策を推進することを目的にしました。
これは実はその前のタームからやっておりまして、その中で優先順位の高い黄色のところですけれども、早期診断治療開始のための仕組みは十分ではない。それに対する取組が十分ではない。それから、Late Presenter、これはなかなか定義が難しいのですけれども、発症して来る方、あるいはいろいろな症状があってからしか検査を受けない方々。こういう人たちがもっと早く検査を受けて治療を受ければ新規感染が減るのですけれども、そういうことが十分に行われていないことに対する対策はどうか。3番目がPrEPを含めたコンビネーション予防。これは最近の数年間で出てきたことでございますけれども、これがどのぐらいプロモートされているかということが1つのモニタリングの目標でございました。
その次に書いておりますのが、今日の私の講演の内容ですけれども、今、御紹介がございましたけれども、我が国のエピデミオロジカルな現状が示唆することは何かということです。
それから、その後の3つは研究でございまして、椎野先生がやられました伝播クラスタ解析によって何が分かってきたかということ。3番目には、塚田先生が取り組んでこられた、都道府県を対象にした経年的モニタリングで何が分かったかということ。最後は、塩野先生が取り組んでこられた一般の方々を対象にしたウェブのモニタリングの調査をやりまして、それで分かってきたこと。
それから、毎年、日本エイズ学会では、このテーマに関しまして大きなシンポジウムをやりまして、いろいろな意見があるのです。それをしゃべると、それだけで1時間ぐらいかかりますので、そのエッセンスを御紹介します。
スライド、お願いします。先ほどもありましたけれども、四半期ごとのHIVで見つかる方、エイズで見つかる方、左上のスライドですけれども、こういったものが公表されているわけで、そういった意味では、矢印で示します赤のラインはエイズで見つかる方ですけれども、少し減っているけれども、あまり減っていない。
エイズ率がその下のグラフです。ですから、30%から減っていないことが分かるわけです。すなわち「いきなりエイズ」が30%のままだということは、基本的にはHIV感染者自身のポピュレーション、感染した方々というのは、それほど大きくは減少していない。しかしながら、見つかっていないのは検査の問題があるからだということが考えられるわけであります。ですから、検査控えというのと、もう一つは検査機会が減っていたということが問題なわけです。
スライド、お願いします。これはPDFになっているからですね。下のほうのスライドは、これもこの前、厚労省から162回の動向委員会で発表された資料ですけれども、検査は少し持ち直しているのです。しかしながら、まだまだ検査体制も相談体制も十分な状態にはなっておりませんで、実際、コロナの流行で、保健所はすごく大事なのだけれども、保健所だけでは検査体制は不十分であるということが本当に明らかになったということが、このデータで分かります。ですから、保健所の検査体制を維持しながら、多様な検査機会の提供が課題でございます。
これは実はシンポジウムでも、拠点病院で検査を受ける方、それから一般のクリニック検査が増えたのですけれども、クリニック検査で受ける方、保健所に行く方、郵送検査を受ける方はそれぞれ違うのだということを、岡山の和田先生がおっしゃっていまして、現場の方々は多様な検査が必要であることを実感しているということでありまして、それについては、残念ながら今のところ日本の検査体制の中では、いろいろな制約があってうまくいっていないというのが現状でございます。
スライド、お願いします。少し難しいのですけれども、感染した方々から薬剤耐性のウイルスのシークエンスをしまして、それで見ますと、非常に近縁のウイルスが分かります。右上の系統樹解析をすると、それでどのぐらい近いか遠いかが分かる。と同時に、感染してからどのぐらいの期間で診断を受けたというのが分かるということです。実は、このクラスタがありまして、大きなクラスタ、まさに戦略研究のときにだんだん減ってきて、最近は減っているグループがあります。
しかしながら、ずっと増えているTC2というクラスタがありまして、そこで見たときは20%が1年ほどで検査を受けている。要するに、早期診断ができている方々もあるのです。しかしながら、遅い方々もあるというので、今、そういう意味では部分的には成功している取組があるけれども、8割方はそういうふうになっていないという問題がございます。
それから、最近は発熱外来で見つかってくる方も、右上は沖縄の例ですけれども、急性感染で見つかる方、アウトブレイクの方が関東地方とか沖縄で見つかっている。こういうことが基礎研究から分かります。こういうことのモニタリングをどういうふうにコミュニティの皆さんとシェアして生かしていくかということが、今、問われています。
スライド、お願いします。これは小さいので、読んでいただくと結構ですけれども、都道府県の普及啓発事業・検査相談体制は、コロナ禍で非常に難しくて、影響を受けていました。各都道府県ではそれぞれ工夫しながら啓発事業をやりました。しかしながら、この後の研究ですけれども、一般の方々の知識は全然アップデートされてこなかった。一般の方々に正しい知識の普及啓発というのはあるのですけれども、今のようなやり方では、それはなかなか広がっていかないというのが1つ問題です。
それから、医療連携体制では、実は歯科の医療は少しよくなりました。これは都道府県単位で歯科医師会の先生方が本当に頑張って、普通に治療できるようになってきたのですけれども、まだ半数くらいで、東京ではまだ十分でないという意見もありますけれども、よくなりました。それに引換え、透析医療とか福祉サービスはなかなかよくなっていないという現状が見えてまいりました。
それから、エイズ対策推進体制も、GIPAの原則というのがありましたけれども、当事者の方々を入れたものは4割弱だったということで、6割以上のところではそれが守られていないという現状があります。
スライド、お願いします。それから、一般成人調査です。2万人くらいの大規模な調査になりました。コロナ禍で正しい普及啓発は不十分だったということと、検査はコロナ禍にもあまり減っていなかったということがあって、郵送検査、自己検査は既に大分行われていることが分かっておりまして、個別施策層ではPrEPの経験もMSMで10%、セックスワーカーが15%ある。この中で、男性同性愛の方が5.8%いらっしゃるということと、女性でもお金をもらって性行為をした経験がある方が5%ほどいらっしゃることが分かりまして、いわゆる性感染症の危険性が高い方々が同じぐらいの数いらっしゃって、もしかしたらPrEPの対象になるのは200万人くらいいるのではないかというような、オーバーエスティメイトじゃないかという話もありますけれども、結果になってきているわけです。
スライド、お願いします。塩野先生の細かな検討によりますと、MSMの現状では、コミュニティセンターの利用が2割から3割。ですから、ここにも代表が見えていますけれども、今の新規感染の多くはコミュニティの外側で起こっている。ですから、コミュニティの活動をどのようにして広げていくかというエンパワーメントが今、必要とされていて、そのためには人員とお金が必要でしょうけれども、これまでの施策をずっと続けていくだけでは、そこのところまでなかなか至らないだろうということです。U=Uの認知も、コミュニティセンターのない地域では低いことが分かっております。
それから、先ほどもお話がありましたコンドームの使用率ですけれども、一番高いときは50%ぐらいまで到達したと報告されましたが、今は2割ぐらいになっているということが調査で分かってきているわけであります。
PrEPは10%ですね。
それから、先ほどありましたセックスワークの女性ですけれども、御存じのとおり、ITの活用が広がったことがあって、どうもセックスワーカーの方々が増えていらっしゃるのではないか。こういう方のPrEPのニーズも増えていて、HIV検査は実はかなりの方が受けていらっしゃるということが、これでも分かってまいったところでございます。
最後のスライド、お願いします。シンポジウムでは様々な議論をしたわけですが、早期診断・早期治療開始のための仕組みづくりが不十分であるので、これは日本エイズ学会のほうでもまた考えなければいけないことでありますし、早期にARTを開始しますと、海外では診断即治療というのがスタンダードになってきていまして、そういったことをどういうふうにプロモートするかが予防指針では書かれていて、それをどう実際にやっていくかということが課題だということです。
それから、発症、Late Presenterもまさにそうで、利便性を持った敷居の低い検査を導入するということと、Late Presenterになる方々がどういう方々かを理解することが必要で、そういったメンタルサポートの研究が不足しているという実態があります。
それから、PrEP導入を含む。今年は、PrEP元年です。コンビネーションHIV予防は、コミュニティレッドで進めていければいいと思っておるところです。
もう一つは、拠点病院を中心とした医療体制の見直しが意見として随分出まして、ここにちょっと書いていますけれども、受け皿として包括医療、高齢になったHIVの受け皿がどうだということで、医療だけでなく、介護や生活のサポートが必要、福祉サービスとの連携が必要、いろいろなことが言われているのですけれども、これは自立支援医療が非常によかったのだけれども、これが足かせになっているということを何人もの先生方から意見をいただいているところでございます。ですから、これは予防指針だけで決められることではなくて、検査もそうですけれども、その周辺の決まりごと、法律あるいは仕組みに少し意見を言っていかなければならないというふうに考えるところでございます。
以上です。ありがとうございます。
○俣野委員長 どうもありがとうございました。
次は、資料4「学校における性に関する指導について~エイズ及び性感染症を中心に~」というタイトルで、岩田参考人、10分程度で説明をお願いいたします。
○岩田参考人 文部科学省初等中等教育局の健康教育調査官の岩田と申します。よろしくお願いいたします。
私からは、今、お話いただいたとおり、学校における性に関する指導について概要と、それからちょっと具体の事例を交えて、今どういうことが行われているかというお話しをさせていただきたいと思います。
1枚めくっていただいて、お話しする内容はこの2点についてでございます。
次、お願いします。
その次、お願いします。1点目は、学習指導要領と保健の学習ということで、まず学習指導要領とはよくお聞きになる言葉だと思います。何かということでございます。分かりやすく書くと、そこに記載しているとおりでございますが、全国、どの地域でも一定の水準の教育を受けられるように、学校教育法に基づき定めた基準のことを学習指導要領と言っております。この中では、それぞれの教科等の目標ですとか大まかな内容を定めております。また、これとは別に、学校教育法施行規則の中で、どの教科に何時間ぐらい使うといったことも定めております。こういったものを基にして、各学校で教育課程、いわゆるカリキュラムと言いますが、そういうものを校長先生の責任の下、各学校で編成しているというつくりになってございます。
次、お願いいたします。現行の学習指導要領は、小中学校においては平成29年に、高等学校においては平成30年に改訂・告示されておりますが、その理念としまして、左上にありますとおり「生きる力 学びの、その先へ」とあります。少し見にくいのですが、右側はパンフレットの一部ですが、「これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。」こういった願いの下、生きる力を育んでいきましょうということが基本の理念となっております。
次、お願いいたします。では、生きる力というのは一体何かと申しますと、端的に申し上げると上の3つ。「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」のことを指しております。では、学習指導要領が変わって何が変わったのということですが、まずは、右に何ができるようになるかという吹き出しをつけているのですが、ここは全て新しくしたということではなくて、改めて知識及び技能、そして思考力、判断力、表現力等、学びに向かう力、人間性等の3つの柱に整理をし直したと捉えていただいて結構かと思います。
では、その力を身につける課程をどうしようか。つまり、どのように学ぶか。これは主体的・対話的で深い学びの視点で授業を変えていきましょう。そういう授業をしていきましょうということが理念になっております。
そして、何を学ぶか。これは次のページ、お願いいたします。簡潔に申し上げると、この表のようになっておりまして、逆台形のような形になっているのですが、一番下が小学校、真ん中が中学校、上が高等学校。小学校3年生以上では、身近な生活における健康・安全に関する基礎的な内容をより実践的に学んでいます。キーワードは、身近な生活、実践的にといったところでしょうか。
真ん中の中学校は、身近な生活から個人生活。この個人というのは、自分だけではなく、あらゆる他者を含む個人生活を、公的機関等が出している資料のエビデンス等に基づいて、より科学的な視点で学んでおります。
そして、一番上の高等学校は、個人及び社会生活における健康・安全に関する内容。こちら、総合的に。中学校との違いは、その社会生活という言葉が入っていることでございまして、社会的な対策は、行政の取組とか施策とか、そういったものも全部含んでおります。
それを左側の吹き出しにある、全て合わせた、小学校は全部で24時間程度、中学校は48時間程度といった時間を扱ってございます。
次、お願いします。少し細かく見ていくと、このような内容があります。同じような内容を繰り返し学んでいるということではなくて、それぞれ、今、申し上げたとおり体系的に学んでおり、独立で何か学ぶというよりは、系統的に必ずつながって学んでいるという整理をしております。
次、お願いいたします。それでは、性に関する指導、エイズ及び性感染症を中心に少し詳細、御説明申し上げたいと思います。
次、お願いいたします。これは先ほどの表の内容の項目を文字で洗い出した一覧表と捉えていただきたいのですが、赤枠で囲っている部分が性に関する指導の部分でございます。
さらに、次のページ、お願いいたします。この赤枠で囲っている部分をさらに詳細に見たところですが、こちらがエイズ及び性感染症を扱っているところでございます。中学校3年生において、感染症の予防という学習でエイズ及び性感染症。そして、高等学校においても、現代の感染症とその予防といった内容のところで取り扱います。
詳細を見てまいりたいと思います。次、お願いいたします。まず、中学校第3学年、健康な生活と疾病の予防、感染症の予防というところで、エイズ及び性感染症の予防を必ず取り扱います。それがいわゆる学習指導要領の解説というところから抜き出した部分でございますが、まずは、エイズ及び性感染症の疾病概念や感染経路について理解できるようにする。
また、感染リスクを軽減する効果的な予防方法を身に付ける必要があることについても理解できるようにする。この理解できるようにするというのは、しっかりメインで扱うと捉えていただいて差し支えないかなと思っております。例えばというところで、エイズの病原体はHIVであり、その主な感染経路は性的接触であることから、性的接触をしないこと、コンドームを使うことなどが有効であることにも触れるようにしております。「触れるようにする」は「理解できるようにする」と、最後の動詞が違うのですけれども、これがメインの学習活動、つまりコンドームの使い方を1時間いっぱいということはありませんけれども、先ほど申し上げた内容と併せて触れるように、教科書にも記載されておりますので、必ず触れられているという状況です。
なお、赤書きのところは、特に性に関する指導においては、指導上の留意事項ということで、発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることというのは、必ず記載している留意事項でございます。
次のページ、お願いいたします。こちらは高等学校でございます。同じように感染症に係る内容で取り扱いますが、中段下から、衛生的な環境の整備や検疫、正しい情報の発信、予防接種の普及云々。先ほど申し上げたとおり、高等学校はこのような社会的な対策の内容について学習いたします。その際、エイズ及び性感染症についても、その原因、及び予防のための個人の行動選択や社会の対策について理解できるようにするとしているところでございます。
ここからは、一体どんな授業が行われているのかという具体を簡単に御説明申し上げます。次、お願いいたします。こちらは中学校3年生の学習の事例、北九州市で行われた事例でございます。まず、病気Xは何でしょうといったところから授業が始まっていて、これは梅毒感染者の増加を示すグラフですが、こういったところから子供の興味・関心を引くような手立てを先生は講じているところです。つまり、最初から一方的に先生が説明するということではなくて、こういった資料に基づいて、子供が自ら課題を発見するような手立てを講じているところでございます。
次、お願いいたします。こういった導入を経て、性感染症に感染するリスクを減らすためにはどうすればよいか考えようという「めあて」に向かって学習が始まります。
次、お願いいたします。先ほど申し上げたとおり、感染経路は性的接触によってという部分を、先生がいろいろな手立てを講じて分かりやすく教えている場面でございます。
ただ、先生が一方的に話すだけではなく、次、お願いいたします。学んだことを近くの友達同士で少しディスカッションして、何でこんなに増えているのだろうといったようなことについて、この生徒さんは、自分は検査をしなくてもいいと思って放置するからじゃないかといったことを言っている場面でございます。
次、お願いいたします。また、中学校ですので、先ほど科学的にというふうに申し上げましたが、例えば厚労省から出されている、性的接触のつながりといった資料がここにありますけれども、こういった資料を参考に、あるいは自分で1人1台の端末が渡っていますので、そういうのに基づいて調べたりしながら、それぞれの生徒が課題を解決するための、つまり予防するために大切なことを考えているという場面になります。
次、お願いいたします。それだけで終わらず、4人か5人程度のグループでディスカッションあるいはブレインストーミングのようなことをしながら、予防の方法をそれぞれ出し合い、学びを深めている場面です。
次、お願いいたします。こういった経緯を踏まえて、黒板に板書されているような、複数の人と関係を持たない、ワクチンを打つ、コンドームをつけるなどの具体的な対処方法が出されているところです。
次、お願いいたします。こういった学習を経て、班や自分で学んだことをこのように1台端末でまとめるなどし、次、お願いいたします。最後にまとめとして、例えばこの生徒さんは、相手から菌をもらわないために、コンドームをつけるといった、この後、自分の生活で生かしていきたいようなことを考え、終わったという事例でございます。
次からは資料でございますので、今の動画も掲載されているページがあるので、必要に応じて参考にしていただければと思います。
私からは以上です。
○俣野委員長 ありがとうございました。
続きまして、最後に、資料5「次期エイズ予防指針の構成案」につきまして事務局より5分程度で説明をお願いいたします。
○エイズ対策推進室長補佐 事務局の芦澤です。
資料5を御覧ください。「次期エイズ予防指針の構成案」ということでお示ししております。冒頭でも御説明しましたとおり、まず、構成についてですけれども、人権の尊重が第六であったところから第一に持ってくることを1つの案として提示しております。内容ですけれども、前文にこれまでいただいた御意見を反映して、例えばU=Uでありましたり、人権の尊重、キーポピュレーション、個別施策層、HIV流行終息に向けた目標ということで、既に書いてある内容もありますけれども、新規に記載する内容も考えております。
また、人権の尊重のところでは、繰り返しになりますけれども、偏見・差別。HIVということで診療を拒否されるようなことがないこと。また、LGBT理解増進法を踏まえた変更ということで、ジェンダーアイデンティティーの多様性といったところに関しても触れることを検討しているところであります。
また、U=Uは、先ほど申し上げましたように、随所で関連してくるところに盛り込むことを検討しているのと、PrEPに関しても予防のところですけれども、同時に医療でのフォローが必要というところで、医療の提供のところ。また、もともと書かれてあります研究開発のところも引き続き考えております。
また、第七の施策の評価のところに関しても、モニタリングのことについて強調するとともに、GIPAの原則について記載を検討しております。
事前に皆様に案をお送りさせていただきました。今回、こちらにお越しいただいている方には机上資料としても配付しておりますけれども、その中の7ページで赤字になっている部分があります。その部分は、お送りした後、見直して一部修正したところがありますので、御確認いただければと思います。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございました。
そうしましたら、白阪参考人は間に合わないようですので、このまま進めさせていただきます。
続きまして、御欠席の委員の中で、川名委員より御意見をいただいていると伺っております。お願いいたします。
○エイズ対策推進室長補佐 川名委員よりコメントいただいておりますので、事務局より代読いたします。
全体を通して、現状に即した改定案となっていると考えました。特にジェンダーアイデンティティーの多様性に対応していること、U=Uの感染予防策を進めること、検査体制として郵送検査の可能性(課題はあるが)を引き続き検討されることについて、より深く言及されていると感じました。
産婦人科の立場からは、女性HIV感染者が増えてこないこと、母子感染症予防が確立してきたことから、現状での大きな課題はないと考えております。
性感染症学会の立場からは、CSWを中心にアクセスしやすい検査体制を引き続き普及させる仕組みの構築が待たれます。
以上です。
ということでいただいております。
○俣野委員長 ありがとうございます。
それでは、この後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の改正案につきまして、事務局からの説明も踏まえまして、指針の構成ごとに御審議いただきたいと思います。
まずは、前文について御意見をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特に、机上配付されている改正案等も踏まえて、ぜひ御意見等いただければと思います。
岩橋参考人、お願いいたします。
○岩橋参考人 ありがとうございます。
4ページのエイズ施策の鍵となる人々、キーポピュレーションというところの表現についてです。今回、事前に意見交換会が行われまして、案として出てきたもののかなりの部分が意見交換会の中のものが反映されていて、とてもありがたいなと。また、今回の会議にも参考人として多くの方が参加している。とてもありがたいなと思っているのですけれどもね。
こうしたキーポピュレーションという概念については、WHOもUNAIDSもハイリスクポピュレーションの言い換えではなくて、このエイズ対策を中心的に、あるいは主体的に対策していくのは当事者たちなのだというような意味も含めて、キーポピュレーションというような言葉が入っていると思います。ここに中心的に携わるというような表現がぜひ追加されるといいなと思っています。その意味は、今回みたいに、コミュニティの人たちも予防指針の検討とか施策の検討のところに必ず入るというような形のものを継続していただきたいなと思っています。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございます。このエイズ施策の鍵となるというところに加えて、もう少し突っ込んだ記載がいただければなという内容でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
松下参考人、お願いいたします。
○松下参考人 今の御意見は、実は亡くなられた樽井先生がシンポジウムでおっしゃっていたことなのですね。当事者のための指針になってほしいということがあって、当事者の方々が積極的に参加していただいて、実際の指針に生かされることが大事だと思います。
私の質問は、U=Uを、ウイルス量を一定基準未満に抑え続けられるというふうに数字を出さなかった理由を聞きたいということです。世界的には、たしか200コピーというふうに言われていたと思うのですけれども、これはいろいろな意見があるからでしょうか、どうなのでしょうか。先生、何か分かっていますか、こういうふうに数字にしなかった理由。
○俣野委員長 完全には把握できていない。1つは、分かりやすくするという意見もあったと理解しておりますが、多分、これで本当に分かりやすくなるのかという御意見もきっとあるのではないかと思います。事務局のほう、いかがですか。
○エイズ対策推進室長 こちらも打合せの中でも御議論いただいたところだと思いますけれども、具体的な数字を記載するか、それとも分かりやすく記載するかというところで、今回、このような記載を事務局案としてはつくったところではあるのですけれども、こちらについて、もし御意見がございましたら、いただけますと幸いです。
○松下参考人 WHOの基準、言っているのは200じゃなかったですか。空中なので、200なのだと思った記憶がちょっとだけあります。ですから、どこに合わせるかということなのですが、数値がないと一定基準って何なのと必ず批判されるのではないかと、ちょっと思ったところです。
○俣野委員長 今の御意見に関して、ほかの委員あるいは参考人の方々、ぜひよろしくお願いいたします。
○花井参考人 国際的には、結局PCRのスペックに依存していることによって、そう言っていると思います。日本の場合は20ですか、かなり高性能なものを使われているので、ほとんどの患者さんはなっているので、国内の指針ということであれば、日本の基準で低いほうに合わせるというのも1つの案かと。つまり、国際的にそれが普及すれば、多分そういう数字になるのではないかなというふうに思うのですけれども、どうですか。
だから、数字があったほうが分かりやすいのであれば、より低い、日本で治療を継続的に受けている患者さんのウイルス量というものがそのレベルにあるということは、実態としてはそうなので、そのことを打ち出して20と言ってしまうのも1つかと思いますし、そういう数字が出ることによって、ちょっとウイルスが出たり、いろいろなところで一喜一憂する水準の患者さんもいるので、あえて触れないというのもあると思いますけれども、特に数字を入れるべきということではないけれども、合わせるなら低いほうに合わせるのも1つのアイデアというふうに考えます。
○松下参考人 エビデンスがあるかどうかということだと思うのです。ですから、たしかゲイの方々の臨床試験のエビデンスでは、おっしゃるとおりで、PCRのスペックが200コピーなので、200コピー未満になったのです。ただ、そういう意味では、200コピーまでは許容範囲である可能性もある。だから、日本だと200コピーぐらいで出てしまえば治療失敗と言ってしまうかもしれない。
田沼先生、どうぞ。私が司会したらいけない。
○田沼委員 あくまで打合せ会で出た議論の再提示ですけれども、たしか200というのはもうちょっと高くても大丈夫なのではないかというような科学的なエビデンスも出つつあるので、だから、そこには触れないというようなお話だったかなというふうに記憶しております。
○松下参考人 そうすると、はっきりしない、1000コピーでもいいのか。一定の基準未満というのは何なのというのが、こういう指針だから、外から見て文句が出ないと言ったら変ですけれども、そういった意味ではエビデンスベーストに書いたほうがいいのではないかと僕は思った次第です。だから、WHOかUNAIDSか、どっちかが言っているのがたしか200です。そうすると、それが引用できる。
○横幕委員 まずここの部分だけ意見申し上げますが、U=Uの記載を正確にすべきです。どういった時にU=Uなのか、という記載が抜けているので議論が生じる可能性があります。他者に感染させることはないというのが一般生活の場ということであれば、これは治療していようがしていまいがその通りである。性的接触によって感染しないことを伝えるのがU=Uが表すところだったと思います。この部分で一般生活を送って感染しないということを強調するのであれば、あえてここでU=Uを論じるべきではないと思います。
それが前段にあって、さらに性的接触によっても感染することがないという知見が蓄積されたことを理由にU=Uについての記載を追加するのであれば、明確にその対象とする感染の契機を正確に記載すべきです。ウイルス量については、田沼先生からおっしゃられたように、新たなエビデンスが蓄積されつつあることもあり、もう少し緩くてもいいのではと思います。現実に20コピー/mLと明示してしまいますと、正直、診療現場は非常に困ります。また、20コピー/mL未満に抑えていないとばく露時に危険じゃないかということを医療現場でもよく言われます。後々の議論ですけれども、診療現場ではきちんと標準予防策、プラス感染経路予防策を取っていれば、治療の有無に関係なく大丈夫です。このように、記載の内容については、少しデリケートなところがあります。低い部分に合わせるよりは、ここに論じようとするところに合わせて記載していただきたいと思います。
○俣野委員長 ほか、いかがでしょうか。
今の議論の中で、横幕委員から、U=Uのところの記載について、一般生活あるいは性的接触等のことも含めて、もう少し詳細な記載をしたほうがいいのではないかということですけれども、それについて、まず皆さん、いかがでしょうか。私も今、読んでみて、ちょっとそうかなと思いますし。
その上で、松下参考人から最初に御指摘ありました数値的なところについても、非常に重要なポイントかと思うのですけれども、これは例えば一定基準という記載にしておいて、Q&Aみたいなことをする方法はあり得るのですか。
○エイズ対策推進室長 これは告示なので、記載上、Q&Aみたいな形を取るのは難しいのではないかと思います。
○俣野委員長 そうすると、この数値に関しては、こういうきっちりした数値を書かない方法か、書くのであればどういう数値にするか、2点に問題があると思うのですけれども、繰り返しで恐縮ですけれども、U=Uについて、もう少し詳しい記載をした上で、数値の問題について、もう一度、今、申し上げた2点について御意見いただければと思いますが、いかがでしょう。
○エイズ対策推進室長 事務局ですけれども、こちら前文ということもあるので、メッセージとして伝える意味合いもありますので、どのようなメッセージが伝わりやすいかという観点でも御議論いただきたいところでございます。
○俣野委員長 前文ではありますけれども、U=Uに関して、もう少し詳細について加えていただいたほうがいいかと思いますが、その数値に関しましては、今日、ここで最終決定というわけではないにしろ、もし記載するとした場合、どういう数値がいいだろうかに関して、もう一度御意見だけ伺っておければと思いますが、いかがでしょうか。
はい。
○花井参考人 横幕先生の意見を聞いて、小さいほうに合わせたら200で。あと、もう一つ、横幕先生がおっしゃるとおり、一般生活ではうつりませんよ。セックスでも、このような場合はうつりません。このような場合は数値を入れるか否かですけれども、そういう意味で言うと、陰性期間が半年という期間もあったんじゃないかと思います。だから、それ以下になったら即座にU=Uではないということになっているので、前文にそこまで細やかにやるかということで、印象としては200でいいと思うのですが、どこかに※印で書いておくとか、そういうほうが。一般生活ではうつらない。セックスでうつらない。これがメッセージとしては一番分かりやすい。
○俣野委員長 はい。
○エイズ対策推進室長 事務局ですけれども、実はこれは第三の発生の予防及びまん延の防止、12ページ目になるのですけれども、こちらの基本的考え方のところで、予防に関する基本的な考え方ということを記載しておりまして、こちらにもU=Uの記載を今回新たに含めることを考えているところでして、こちらに詳しめに記載する。前文のほうはより概念に近いので、概念的な記載にとどめるというような感じも考えられますでしょうか。
○俣野委員長 はい。
○生島参考人 治療したくてもできない人が国内にいるので、U=Uで全体が、埋まってしまうと、治療を受けられない人の存在がいづらい状況になるので、日常生活でうつらないということと、治療することで性感染症でもうつらないという二段構え、花井さん、横幕先生がおっしゃったようなところを、あちこちにそういう構造にしていただいたほうがいいかなと思いました。
○俣野委員長 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょう。
白阪参考人。
○白阪参考人 遅れてすみませんでした。
数字をあえて入れるかどうかということは置いておいて、その数字については、多分お話に出ていると思いますが、U=Uの科学的エビデンスという意味では200(コピー/mL)という基準で大規模臨床研究が進められましたので、もし数字を入れるのだったら200が適切だと思います。もう既にお話があったかもしれません。
○俣野委員長 ありがとうございます。
そうしましたら、前文においては、このU=Uについて、一般生活ではうつらない話と、性的接触でうつらない話と、この2点は簡潔に書いていただいて、それでウイルス量については、前文ではこのまま一定基準等という記載で、例えばどのぐらいの期間、どのぐらいの量と書くと詳しくなるというのもあると思いますので、現時点ではそういうふうにさせていただきたいと思います。
それで、御指摘いただいた部分に関して、予防のところのU=Uの記載でもう少し詳しく、この後、議論も出てくるかもしれませんけれども、そういうふうにさせていただければと思います。非常に貴重な御指摘ありがとうございました。
ほかに、この前文について、いかがでしょうか。
横幕委員、お願いいたします。
○横幕委員 2点あります。
まず、3ページ目です。新規の感染者等は2016年をピークに減少傾向にあるとの記載されているところです。動向委員会で減少とはなかなか明示せずにきていると思いますが、今回指針に厚生労働省として減少傾向にあると書き込むという意思、意図を確認したいと思います。
あと、5ページの黄色のハイライト部分の「また、これらの取組によりUNAIDSの」以下です。UNAIDSの取組は重要ですし、それを日本でも進めていくということは大変意義がありますし、国民に訴えていくところでもそこをうまく使っていくというのは必要で有用と思います。ただ、ここの書き込みについては、UNAIDSの国際的な目標を達成するためにこの指針があるのではないと思っています。我が国の施策の中で、差別・偏見、新規感染者、エイズ関連死をなくすのであって、ここは別にUNAIDSの目標、特段2030年までにとは書かなくてもよいのではないかと思います。
その理由ですが、まず1つは、2030年までにということを明確に書いてしまうことによって、特に新規感染者ゼロについては、様々な施策、法律的なことも含めてやることが大幅に増えるでしょう。あと、これを受けて、保健所等がいろいろと施策を考えて頭をひねることになるわけですが、担当者が悩む姿が目に浮かびます。行政には頑張ってほしい、我々も頑張りたいというのはあるのですけれども、数値目標として一人歩きするのを少し危惧します。
差別・偏見の対処は、今回、項立てでも一番上にするという方向が示されていますが、医療現場からしても、感染者の方から日頃の状況を聞いていても大事にすべきです。新規感染者をゼロにするというところについては、この指針の中にある研究開発、新薬、治癒を目指した取組とかワクチンの取組ですとか、それを担保する上でも大事です。エイズ関連死をなくすということは、早期の検査、受検勧奨という施策を進めるうえでは大事だと思います。これらは今まで日本でもやってきたこと以外の何物でもありません。別にUNAIDSの目標を達成するためではなくて、これまでと変わらず、我が国のエイズ対策では、こういった将来的な目標を達成するために予防指針を改正する、というシンプルな書き込みでよいのではと個人的には思います。
学術的に、治癒する薬がない、ワクチンがない、いわゆる潜伏期がある感染症で、新規感染をゼロにするという取組がどういったものになるかということを考えると、明確に幾らUNAIDSが理念としてうたっていたとしても、そこまで書き込まないほうがよいのではないかと思います。いかがでしょうか。
○俣野委員長 今、2点御指摘ありました。すみません、1点目のほう、もう一度御説明いただいていいですか。
○横幕委員 動向委員会でも、厚生労働省も明確に減少していると言ってこなかったところだと思うのです。新規感染者の発生が減少傾向にあるとしてきた中で、指針に今回減少と明示するのかというところです。
○俣野委員長 白阪参考人。
○白阪参考人 ありがとうございます。
第161回エイズ動向委員会の委員長コメントで令和4年のまとめとして、「6年連続での減少」という文言を使っています。
“これまでは減少傾向”というのは、今後は予断を許しませんが、少なくとも“これまでは”ということでは、そうだと考えます。
○俣野委員長 ほか、いかがでしょうか。
例えば、正確性を若干増すために、報告数という言葉にしますか。それでも減少傾向という言葉を使うかどうかということもあると思いますけれどもね。
○横幕委員 減少と明示することで施策が後退する、重要度が下がることを危惧する声は各方面、あるかと思います。あくまで我が国のこれまでの施策が有効であったからこその減少というニュアンスにし、しかも、さらに強化すべきだということを込めてのこの文言であればいいと思います、しかしながら、もうこれは解決されつつある問題なのだと、少し対策を緩めていいのだというふうに取られること、そのようにこの部分だけが一人歩きしないかというところを危惧します。
○俣野委員長 いかがでしょうか。私自身もそういうところの趣旨は非常に思いがある人間ではありますが、この後に、簡単に言うと、エイズで分かる人が3割というところを強調して、さらなる施策が重要という文面ではあります。ただ、横幕委員の御指摘もごもっともですが、若干そこのニュアンスを変えるような御提案とか御意見ございますでしょうか。
○エイズ対策推進室長 事務局ですけれども、こちらの記載の報告の仕方が、あくまで「あるが」ということで逆説的に接続しておりますので、それが前提、こういったことがあっても、いまだにこういった状況が続いているという意味であって、そこは減少傾向にあることを、御指摘されたようなことがないような表現ぶりをしたというつもりでございます。
あと、先ほどございました国際目標に関しては、我々もSDGsに向けた取組をこれまでも続けていまして、UNAIDSの目標というものに関しても、国際目標としてはずっと掲げて取組を行ってきているものではございますので、国の施策として整合性がないわけではないというところが第1点ございます。そういった意味で、国際目標があった上での国内目標という点はありますので、そういった理念目標を掲げることに関しては、何ら間違っている方向性ではないというふうに考えていますが、その点に関して何か留意すべき点とかございましたら、いただけますと幸いです。
○俣野委員長 田沼委員、お願いします。
○田沼委員 今の御発言に沿った形になるのですけれども、あくまでもUNAIDSというよりは、国連が掲げているのは公衆衛生上の脅威としてのエイズの流行終結であって、95-95-95というのは、例えばKPIのような、そのときの数値目標だと思うのですね。なので、確かにこの文章を少し修正したほうが誤解はなくなるのかもしれませんけれども、その点はちょっと踏まえた内容にしていただいたほうがいいかなと思います。
○俣野委員長 それでは、このUNAIDS関連の横幕委員の御意見について、白阪先生、お願いいたします。
○白阪参考人 今、田沼委員が言われたように、公衆衛生上の脅威という捉え方があるのですが、その一方で、現在、既に2~3万人の感染者、エイズ患者さんがおられるということも忘れてはいけない。文章には書かないでも、水面下ではそういう意識を持たないといけないので、そういう意味でもこれぐらいの表現のほうがいいのではないかなと思いますし、先ほど事務局が言われたように、UNAIDSの目標があって国の目標がある。どっちが先、後ということではないと思いますけれども、この併記はいいかなと考えます。その後については、またこの後、議論があるかと思いますので、そのときにお話ししたいと思います。
○俣野委員長 はい。
○感染症対策課長 今の部分、横幕委員からの御指摘も踏まえつつ、ケアカスケードの95-95-95というのを書くのは多分必要だと思うのですけれども、例えば直接的に国際的な目標を達成するためではなくて、UNAIDSの国際的な目標に合わせ、我が国においてもみたいな形で、我が国としても実質的にはこれが必要だと思っているから書いたのだという形で、若干そういう文言修正するというのも1つの手かなと思いました。
○俣野委員長 ありがとうございます。
私も同じ意見で、恐らくこれは出だしの1行目のUNAIDSは抜いて、これらの取組により、我が国において偏見・差別、新規感染者、エイズ関連死をなくすことを、2030年と書かないで、まず目標に位置づける。それで、具体的には2030年までのHIV流行終えんを目指しているUNAIDSのケアカスケード等の達成を目指すというような流れではいかがでしょうか。そういうことを踏まえて事務局のほうで案をつくっていただいて、会議の終了後、検討させていただくということでお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
先ほどちょっと飛ばさせていただいた資料2の説明を白阪参考人のほうからお願いできますでしょうか。
○白阪参考人 遅れまして申し訳ございません。
では、資料のほうを御覧ください。資料2-1でございます。これは、私どもが厚生労働省から預かった研究の一環としてさせていただいた「エイズ予防指針に基づく対策の評価と推進のための研究」の検討会議で得られた主な意見。これは分担として四本先生が中心となってまとめていただいたものです。
めくっていただいて、1枚目が先ほどの話にも出ましたUNAIDSの2025年エイズターゲットということで、UNAIDSの目標についてまとめてあるもので、この中でケアカスケード。これまでは90-90-90だったのが95-95-95、プラスその他の95、3つ加わって、治療を良くするだけではなくて、ここに書いてある総合的なアプローチで、よりよい成果を上げたいということです。
右のほうに、2023年にエイズ終結への道というのも出しておられます。そういうのを参考にしながら考えたわけですが、次のページは、私が行いました研究班の分担研究者の一覧で、次がこの指針についての検討を行った委員の方々です。御覧のとおり、各分野で専門的な御活動をされている方々に御発言いただきましたし、また、次のページでは、9回の検討会の様子を書いております。御覧のとおり、上記のメンバーだけではなくて、その他それぞれの専門の方々をお招きしていろいろな御意見をいただきました。今日は省略しておりますが、それぞれの回で予防指針のテーマごとに文言を1つずつ洗って、その評価と現在の課題を出させていただきました。
めくっていただきますと、先ほど議論のありました1番目は、U=Uについて、今までなかった考え方ですが、これは科学的にも既に証明されたものです。これは英語ですので、ちょっとなじみにくいかと思いますが、ここはそういう議論もありましたけれども、U=Uという表現が非常に分かりやすい。だから、それについて説明は必要なのですが、英語では、Undetectable=Untransmittableということで、この頭文字を取ってU=U。つまり、治療状況のいい方は、性行為でもうつらないということを意味している。先ほど議論がありましたように、U=Uにならなければ駄目だということでは決してありません。U=Uになれば感染もしないよという意味でございます。
これに該当するものとして、下にU=Uを反映できるのではないかということで提案させていただいております。
次が曝露前予防、PrEPというのも海外で10年以上前から行われておりますので、それについて国内でどうかという現状と、その必要性等を検討したものでございます。
次が複合的予防。今、お話ししたように、HIVの治療薬を用いることでHIV感染を予防できるということが科学的にも証明されているのですが、それだけでいいかというと、必ずしもそれだけではなくて、従来のコンドームあるいは性行為をしないという選択肢もあるわけですので、複合的な予防が必要じゃないかということで、ここにまとめてございます。
次がHIV陽性者の参画ということで、1行目、これまでの予防指針改正の会議では、HIV陽性者が委員として御意見をいただくなど、HIV陽性者の意見を尊重しておられましたけれども、平成30年改正では発言の機会が減ったように見受けられました。今回の改正の会議でも、今回がまさにそうですが、意見を聴くだけでなく、決定する場においてHIV陽性者の参加をぜひ進めていただきたい。これはUNAIDSのGIPAの原則というのがあるのですが、当事者に入っていただいて御意見を求めることが、いろいろな意味で非常によいということでもあり、そのほうが効率的であるということでございまして、GIPAの原則を出させていただきました。
次は、④課題解決の実現を支える社会環境要因としてのenablerという概念が最近いろいろな国際的な会議で出てきておりまして、課題解決のためには社会環境の要因を整えることも非常に大事であるということでございます。これはこういう指針の中に文言としてはなかなか入れにくいのですが、考え方として、感染予防の行動が取りやすい環境整備など、HIV予防という健康問題に関して、個人レベルだけでなく社会環境要因にも着目して整備することが必要であることを前文にお書きいただくのはどうかということを、下のようなものから抽出して出しております。
また、薬物使用者に関しては、健康課題の対象として取組及び関係施策との連携を強化することが重要であることを、例えば第二、第三に記載されてはどうかという提案もさせていただきました。
次が一般医療/福祉従事者の研修でございますが、現状の急性期を中心とした拠点病院による医療体制では高齢化、合併症対策などの点から限界に達している。これは数的なものとか、拠点病院と一般病院/診療所との地域連携強化が長期療養・在宅療養支援のためにも喫緊の課題であるという御意見がございました。
それから、HIV陽性者が医療従事者等による診療拒否の経験がいまだに少なくない。これはこの委員会の中でちょっと驚いたのですが、今でもあるようで、そういうことをなくすためにも、自治体による一般医療/福祉従事者を対象とした定期的な研修が望まれるという意見が出ました。
研修医教育のための臨床研修ガイドラインにも具体的に記載される。これは厚労省だけてはなくて、文科省といいますか、大学関係の教育、大学病院等の教育でも、そういうふうな立場からの取組をぜひ御検討いただきたいということでございます。
次、6番目が青少年に対する教育で、青少年は特に対策が必要な集団であるということで、個別施策層、これまでMSMの方々を中心にやってきて、非常に効果もありましたし、その必要性はもちろんでございますが、青少年。これは因果関係を証明するのは難しいのですが、最近、梅毒が増えていることを考えますと、その対象は若い方で、これまでのHIV感染のリスクにある方々とまた違う集団のようにも思われます。青少年にも特に対策が必要であるということをもう一回思い返す必要があるのではないか。
そういうことで、性行動を開始される前から、性的指向と性自認の多様性を肯定的に学ぶ機会は最近非常に進んでおりますが、それと同時に、HIVを含む性感染症の感染予防対策を学校保健教育において行う必要があるのではないかと考えられるというのが意見としてございました。そのために関係省庁との連携が必要ではないかということでございます。そのエビデンスとして、下の11が挙がっております。
情報共有の会議の定期開催は、こういう委員会等で、あるいは厚労省でも非常に熱心に取り組んでいただいているわけですが、それが果たして自治体にちゃんと伝わっているかということを時々疑問に思うような御意見もありまして、国及び自治体がエイズ対策の実施状況を共有できる会議の定期開催。これは以前、厚労省で重点都道府県会議というものがなされておられましたけれども、それがコロナの影響もあったでしょうが、最近ないようですので、そういうふうなもの。あるいは、近隣自治体間での情報共有や連携が望まれるという意見がありました。
厚労科研等の成果については、HIV陽性者やコミュニティも参加できる報告会をお願いしたい。
次は、多様な検査の選択肢。これは郵送検査等のお話。
それから、次が早期治療導入での検討。これは免疫機能障害に関わることですので、要点だけを挙げております。
その次が資料2-2でございますが、これはこの研究班が3年間行いました研究を基に提言としてまとめたものでございます。時間がございませんので、後で御覧いただければと思います。1から9の9点をまとめております。どうもありがとうございました。
○俣野委員長 ありがとうございます。
それでは、また議論を続けたいと思いますが、前文のところ、比較的時間を取らせていただきましたが、時間も限られております。御意見いただいて、その後、十分な議論というよりは、それを伺って、後でという形で進めさせていただきたいと思います。
まだ前文のほうですか。では、お願いいたします。
○後藤参考人 よろしくお願いします。
前文の文言のところになってしまうのですが、3ページの真ん中辺の「医療や福祉の現場においては」と黄色くなっているところの最後のほうに、偏見、差別なく適切かつ必要な医療を受けることが確保されなければならない。頭出しは「医療や福祉の現場においては」と書いてあるので、最後のところも医療だけではなくて福祉も入れていただければと思いますというところと。
あと、先ほどから出ていてるGIPA原則です。我々当事者団体も含めて参画していくというところ。指針においては第七のところで少し書かれているのですが、理念的なところとして前文にも少し入れていただけるとありがたいかなと思っております。どういうふうに入れるかは考えて、もしくは事務局のほうで考えていただければと思うのですが、そういう形で前文にも我々当事者が、先ほど横幕先生が2030年までという具体的に入れると、保健所とか医療現場が大変だというような御意見もありましたけれども、それは我々も一緒に責任を負っていく覚悟という形で意見を述べさせていただいているので、前文にもしっかりと記載していただいて、我々も終息に向けて取り組んでいくのだというところが指針の中で示されているとありがたいかなと思いますので、よろしくお願いいたします。
○俣野委員長 後藤参考人、ありがとうございました。
それでは、次に進ませていただきます。次は、第一の人権の尊重の項目でございます。御意見等いただければと思います。
岩橋参考人、お願いいたします。
○岩橋参考人 ありがとうございます。
7ページの一番最初のところについてですけれども、今回、厚生労働省からお示しいただいたものについて修正が入っていたのですが、もともとのものが差別を解消することで差別解消を実現するとなっていたので、あくまでソーシャルイネイブラーの考え方というのは、エイズ対策を阻害する要因として差別・偏見があるので、それを取り除くことによって医療やケアにつながれるということの目的であるということ、改めて確認したいところかなと思っています。今、紙でお示ししていただいている方向性については、同意しているところになります。
これに関して2点ありまして、1点目は、今の紙のものでお示しいただいているものの中に、受検行動と医療へのアクセスだけではなくて、予防あるいは予防行動というのが追加できないかというようなところになります。予防行動についても、そうしたソーシャルイネイブラーが影響を与えるものになるので、そこをしっかり入れられないかというところが1点と。
もう一点は、性の多様性に関して、この予防指針の中で言及されていることは非常に大事なことだなと思っているのですが、最初のお話のとおり、これはあくまでエイズ施策、エイズ対策を阻害する要因としての様々な差別・偏見というところとずれないように、少し表現のところをもう一度確認していただけるといいのかなと思っています。現場の保健師さん等々が見たときに困ってしまって、エイズから離れてしまってLGBT理解のみに関しての研修会の実施とか、そういう話にずれないかなというところが少し危惧しているところになります。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございました。
ほか、いかがでしょうか。
花井様、お願いいたします。
○花井参考人 今さらなのですけれども、今のところ、結構重要な言及で、UNAIDSサークルの95のところはそうですけれども、左側の10%。レトリックは今、言った話なのですね。メディカルな対応だけでは難しくて、最終的には性的少数者やコマーシャルセックスワーカー等々に対する偏見・差別が施策の足を引っ張って、うまくいかないのだという構造なので、本当はLGBTに対する理解の増進ではなくて、そもそも下手すればHIVに対する偏見・差別よりも、そちらの偏見・差別のほうが大きいかもしれないので、それを理解の増進というふうにしてしまっているから、今の論理構造がちょっと破綻しているのですね。
UNAIDSについても、いわゆるメディカルな部分の目標値を中心に据えているので、それはそれでいいのだけれども、そこのレトリックなのか論理構造なのか知らないですが、そこはちょっと曖昧になっていることは間違いなくて。だから、LGBTQ、プラス、コマーシャルセックスワーカーとかドラッグユーザーという人に対する偏見・差別は実は存在するので、それが理解増進という話になっているので、UNAIDSのいいところ取りして、本来の趣旨とはずれて使っている。なので、そこをどこでどう整理するか、文章を考えるのは非常に難しいのですけれども、どこかで偏見・差別。これだとHIVには偏見・差別はあるけれども、LGBTQに対しては理解が増進すればいいと書いてあるのですね。
実は、UNAIDSが言っているのはそうじゃなくて、インターセクショナルなスティグマというものが公衆衛生上の施策の足を引っ張っているということの構造を示しているので、そういう意味では、その構造はこの指針にはきれいに反映していないのですね。事務局も大変だと思うのですけれども、どこかで今おっしゃられたようなことを明確にしておく必要があるかなとは思いました。先生方、何かいい案があったら教えてほしいのですが。
○俣野委員長 ありがとうございます。
今の点等に関して、ほかの委員とか参考人の方々、ございますでしょうか。
はい。
○白阪参考人 私のほうは、先ほどUNAIDSのお考えということの御発言がありましたが、先ほど前文の中で、この委員会としてはUNAIDSに沿うのだけれども、日本は日本でというふうに私は理解しました。同じように、LGBT法案、これも私、熟知しているわけではないのですが、そういう流れもくんでの書きぶりかなと思いますので、今、花井委員の言われたことも考慮に入れていただくとはいえ、これはこれで私はいいのではないかなというふうに考えます。偏見・差別の撤廃と言うと、偏見・差別があることにもなりますので、その辺の表現が難しいかなと思って聞いておりました。ここは可能なら事務局にもお願い戴けたらと思います。
○俣野委員長 なかなか難しいかもしれないのですけれども、最終的にというか、一番先には、まずエイズへの偏見・差別をなくす方向のテーマの中で書いていただくことになると思うのですけれども、事務局のほうに検討していただいて、またメールベースあるいは次のところで御議論いただくこととさせていただきます。
ほか、いかがでしょうか。
そうしましたら、次に進ませていただきます。次が第二の原因の究明のところとなります。御意見、御質問等いただければと思います。時間の関係もありますので、場合によっては後でちょっと戻るかもしれませんけれども、第二のところは、このまま特にないということで、次に進ませていただきます。次は、第三 発生の予防及びまん延の防止について御意見、御質問をお願いいたします。先ほどちょっと出ておりましたU=Uのことでも結構でございますが、いかがでしょうか。
横幕委員、お願いいたします。
○横幕委員 まず、U=Uの記載については、他者に感染する経路を限定する、明確にしていただきたいです。
あと、13ページの黄色のハイライトの真ん中辺りですけれども、「行動変容を促すナッジ理論等」とありますが、これは一般的に使われる言葉でしょうか。誰もがナッジ理論という文言をみて内容を理解できることかを少し教えていただきたいです。
3点目ですけれども、15ページの医療従事者等に対する教育というところです。「医療従事者・介護従事者等は、U=Uを理解し、普遍的な」とあるのですけれども、前文のところでも申し上げましたけれども、医療現場での感染対策は標準予防策、プラス感染経路別対策で、治療のありなしにかかわらず全く問題ありません。U=Uは、あくまで患者の指導等についての内容です。医療従事者・介護従事者が何のためにU=Uを理解しなければいけないかというと、長期療養支援とか患者指導等になると思います。記載するのであれば、何のためにU=Uを理解しなければならないかと書いておいていただくとよりいいかと思います。
恐らく問題ないと思うのですけれども、治療していないと医療機関では完全な医療を提供できないよと読まれてしまうのを少し危惧します。何のためにというのを書いていただければと思います。
あと、前回指針のときの一般教育現場を一番にしていただきましたけれども、これは非常に重要だと思っております。個別施策層の方がその下になっている点について、順番と重要性の関係は分かりませんけれども、教育機関等での普及啓発は重要です。この位置づけというのはそのままにしていただきたいなと考えます。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
最初のU=Uに関しては、前文のところでも1回議論が出ましたけれども、ここはかなり記載を増やして詳細に書いていただくようにしたいと思います。
野津委員、お願いいたします。
○野津委員 2の教育機関等での普及啓発のところに関わっての意見でございます。現行のものも非常によく書けておりますし、その上で、今回、ジェンダーアイデンティティーが加筆されたという点においては、大変適切だと思っております。ただし、あえてその上で申し上げる意見としましては、もう少し教育機関での啓発が進むような書き込みができないかというような印象を持ちます。現行の学習指導要領の内容の取扱いで、学校や地域の実情に応じて、保健・医療機関関係の参画を推進することということが加筆されております。これは教科としての保健の指導において、保健・医療機関関係の参画を促すものです。
この点に関わっては、例えばがんについては、がんの専門医、そしてがん患者、がんの経験者というような方々がこうしたところに参画できるような方向で、そうした人材の確保として、外部講師の育成に取組まれていると思います。
それから、薬物乱用防止などにおきましても、薬剤師さんなどを対象にしながら、薬物乱用防止教室の講師を主としながらも、こうしたところでの活動ができる方が育成されているわけですが、性に関しては、そうしたことが不十分ですので、どこかで示すことが望まれると思います。
例えば「対象者に応じた効果的な教育資材の開発等により」という文言がございます。この「等」ということで、いろいろなことが含まれていると思いますが、ここに外部講師となるような「指導者の確保」ということを明記できれば良いと思います。
もう一点、下のほうの「特性に応じた教育等を行う必要がある」において、「青少年を取り巻く環境」を特に意識しますと、「状況」を加筆して「特性や状況に応じた」にしてはどうかと思います。
いずれにしましても、啓発ということを強くうたう今回の改定ですので、子供たちの学校教育においてもその方向性を後押しできるように示すことが望まれると思います。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
今村先生、お願いいたします。
○今村委員 今村です。
15ページ、お願いできますでしょうか。ここの3番の医療従事者等に対する教育のところですが、文章は少しだけ修正が必要かなと思います。「医療従事者や介護従事者等は」の後に「U=Uを理解し」というのが入ってしまっているのですが、一旦ここからは抜いて。というのは、普遍的な感染対策と標準予防策等により、全ての医療機関及び介護施設等で診れるというのは、U=Uとは関係なく対応すべきことなのですが、U=Uが前提となると、お薬を飲めなくなってしまったら診療できないという話になってしまいます。
この記載については「最新の正しい知識の習得が」の前に「U=U」を入れればどうかと思います。「U=Uなど最新の正しい知識の習得が十分でないこと等により」というという表現にする方がいいのかなと思いました。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
横幕委員、今の点は。
○横幕委員 そのとおりだと思います。
○俣野委員長 はい。
山岸参考人。
○山岸参考人 感染研、山岸です。
感染研では、性感染症の情報発信等にも関わっています。自分からも医療従事者等に対する教育に関してですけれども、保健所の機能とか保健所の役割もその後に書いてありますが、保健師さんの教育というものも予算が取れない中で何とかやっていらっしゃると聞いていますので、「等」の中に落とし込まれているかもしれませんけれども、「等」の後には介護従事者も書いてありますので、ここに書いていただくと、教育のほうがいろいろ充実してくると思いますので、御検討をお願いいたします。
○俣野委員長 ありがとうございます。
お願いいたします。
○横田委員 初めて参加させていただくのですが、香川県にあります香川大学医学部附属病院で感染症を行っております横田と申します。
3番の医療従事者等に対する教育のところですけれども、中段のブロックより下のところに「エイズ治療・研究開発センターのほうが治療のブロック拠点等に対して、エイズ診療に関する最新の知識の普及・啓蒙・教育を継続する必要がある」という文言がございますが、私、地方におりますけれども、都市部と体制や知識にかなり差があるというのが現状でして、地域の診療体制の確立及び地域の事情に合った教育の提供、保健所も含めてですけれども、そういうニュアンスを何らかの形で反映させていただくと地方は非常に助かります。
もう先生方にお話しすることではないのですけれども、地方というのはエイズ発症して来られる方がとても多いのです。発生数も少ないように見えるのですが、見落としている事例もあると思いますので、地域を鑑みて教育や対策を少し御検討いただけるとありがたいです。
以上です。
○俣野委員長 横田委員、ありがとうございます。
では、生島様、お願いします。
○生島参考人 PrEPの部分について、13ページです。少しコメントさせていただきたいのですけれども、「リスクの高い人たちに対する」というふうにハイリスク層に限定した書き方なのですけれども、世界的には飲みたい人が使えるみたいな方向性であると思うので、これでいいかどうかは一応御検討いただきたいというのが1つ。
それから、PrEPの推進を目指すのであれば、ここの書きぶりにもう少し一歩先のものが必要かなと思っています。PrEPに関する大規模調査を3回ほどやってみて、現在、アクティブなMSMの10%ぐらいがPrEPを使っている。先ほどの塩野さんのデータでも同様の結果でしたけれども、そのうちの76%ぐらいは国内・国外のオンラインからPrEPを入手しています。そのうちの半分ぐらいは医師の処方・見守りなしで、その背景にあるのは価格なのです。値段が安い方法を追求するとオンライン、医者経由じゃない入手ルートに行ってしまっているというのが現状かなと思うので、今後、予防薬が初めて日本で承認されるということが予定されているので、その価格に関して、なるべく安い価格で、所得が低い人でも利用できるような環境を目指すべきではないかと個人的には思っています。
具体的な案としては、公的な補助は難しいとしても、何らか個人を支援する仕組みがあったらいいのではないかというのと、製薬メーカーさんがなるべく安い価格で販売していただけるかどうかというのと。1つ、行政機関がもしかしたらできるかなと思うのは、国内で活動するジェネリックメーカーさんでも、抗HIV薬の品目を国際的には持っているメーカーさんもあるので、公的なルートでジェネリックが入手できるというふうな環境ができたら、見守りなしの流通ルートというのは少し変わるのではないかなと思っているので、全てここに書いてほしいというわけではないですけれども、利用者を支援するような環境整備みたいなことが書かれるといいのではないかなとちょっと思っております。
去年の2月ぐらいに厚生局が様々なジェネリック薬をストップしたことが一度あるのですけれども、秋に認可されると同じようなことがまた起きるのではないかと思っていて、自分のお金で10%ぐらいの人が飲んでいるという状況が壊れてしまうのはとても残念なことなので、個人を支援するという形で環境を支援するというようなことが書かれるといいなと思ったので、ちょっとコメントさせていただきました。
○俣野委員長 ありがとうございます。
では、岩橋様、お願いいたします。
○岩橋参考人 今、生島さんの言及のあったPrEPのところについてですけれども、まず、適応を限定するというところについては、必要かどうかということをぜひ御検討いただきたいのと。
あと、基本的なところですけれども、感染の危険性という言い方は避けなければいけないと思いますので、表現は気をつけていただきたいなと思います。薬事承認に関連して、普及に誰が責任を持つのかという大きな問題はあると思うのですけれども、それが難しかったとしても、安全にアクセスできるように実装をどう進めるかということを言及いただければなというふうに思っているのが1点目です。
それから、2点目ですけれども、横幕先生も言及されていましたけれども、13ページの行動科学のナッジ理論を触れるというのは、もしかしたら性感染症の予防指針のほうと合わせているのかなと思いながら聞いているのですが、ちょっとほかの議論に比べて粒度が細かいかなというふうに思っているところが2点目です。
最後に3点目ですけれども、14ページの個別施策層に対する普及啓発と、特に16ページの3番の検査・相談の保健所等における検査・相談体制のところに「NGO等との連携」というふうにありますけれども、この「等」の中に多分入っているのではないかなと思うのですが、各地のコミュニティセンターは非常にこの役割を果たしているので、「NGO・コミュニティセンター」という表現にできないかというところを御検討いただきたいなと思っています。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
田沼委員、お願いいたします。
○田沼委員 4月から大学で行動変容並びに医療倫理について教鞭に立っております。その観点から、先ほど岩橋先生からも出たナッジ理論について少し言及させていただくと、いわゆるリバタリアン・パターナリズムというか、少し無意識のところに働きかけるというところがナッジ理論、ありますので、個人的には健康施策に活用することは反対ではないのですけれども、感染症対策においては倫理的な観点から慎重であるべきかなと思います。全て否定するわけではないですけれども、確かに粒度が高いというところは言えるかなと思います。
以上です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
はい。
○渡會委員 東京医療保健大学の渡會でございます。
保健所に勤務していた経験がございますが、新型コロナウイルスの関係でHIVの対策がかなり逼迫したといった何年間かでございました。そちらのほうで保健所の保健師・医師が保健医療科学院等で以前は研修を大変受けておりましたが、そういった機会も減ってしまったり、あとHIVの検査の縮小なども行われておりますので、早くそれが復帰できるような後押しが少しあればと思っております。よろしくお願いいたします。
○俣野委員長 ありがとうございます。
時間の関係で次に進みますが、先ほど教育のところに関して、もっと体制がというのがありましたが、この会議の後でももし何か御提案とかありましたら、ぜひ御意見いただければと思います。時間の関係上、次に進ませていただきます。次が第四 医療の提供について御意見等いかがでしょうか。よろしいですか。
ちょっと急いでしまって恐縮ですけれども、次へ進ませていただきます。また何か後でありましたらよろしくお願いいたします。次、第五の研究開発の推進について御意見お願いいたします。
はい。
○白阪参考人 もう新規感染者が減る傾向にあるとか、2030年を目指して流行を抑えるとか、そういう話題が出てくると、えてして先ほどからも意見ありましたが、研究はもう要らないのではないかみたいな間違った見解が決して出ないように。エイズはまだ治りませんし、いろいろな社会構造的な研究も非常に重要ですし、何より基礎研究が非常に大事な分野ですので、ぜひ研究費は死守していただく、あるいはできれば増やしていただく必要性があるということは強く言っていただきたいと思います。
○俣野委員長 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。できましたら、もう少し強調するような文章を入れさせていただきます。
次が第六 国際的な連携について御意見、お願いいたします。
お願いいたします。
○田沼委員 研究と同様に、この点、国際連携、日本が果たしてきた国際協力、世界のエイズ対策への貢献というのは非常に大きなことがあります。流行が終結してくると手を緩めてしまいがちになるというような状況もありますので、ぜひここはしっかりと進めていくというような形でしていただければと思います。
あとは、ドナーとしての国際協力のみならず、国際的な協調という点も必要であります。先ほどKPIとしての95-95-95が出ましたけれども、国際的な文脈を捉えた国内の対策への反映というところも、できたらどこかで入れていただければなと思うのですが、ただ、これまでの細かい論点の中できちんと言及されているので、ここを変える必要はないかなと思います。コメントでした。
○俣野委員長 ありがとうございます。
ほか、よろしいでしょうか。
続きまして、最後の項目になります。第七 施策の評価及び関係機関との連携について、いかがでしょうか。
はい。
○松下参考人 私どもの研究班では、この施策の評価をやってきまして、予防指針にはこういうふうに理想的なことがいっぱい書いてありますけれども、実際、都道府県に投げられると、できない県がたくさんあるわけです。そういうところにどういうふうな指導をするかとか、どうフィードバックしていくかということについては全くできていないので、モニタリングしても、それがどういうふうに施策に生かされていくかという次の問題があると思います。ですから、モニタリングしてもいいのですけれども、モニタリングをどう生かすかですね。そこのところがもう一つの課題である。
GIPAの原則も、すぐに分かるのですけれども、だからといって、どこが何をどういうふうにそこに指導していくかということは、今のところできていないから、それを例えば厚労省が指導するかどうかというようなことがもしあれば書くことになるかと思いますが、結局、モニタリングしてもそれで終わりになっているのが現状です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
横幕先生、お願いいたします。
○横幕委員 こだわっていて申し訳ないのですけれども、29ページの「2030年までのHIV流行終息に向けて」の2030年までのところは、ぜひ御検討いただきたい。後藤参考人のほうから相当な覚悟をというお話もありました。確かにできればすばらしいと思うのですが、HIV感染症/AIDSが現在すさまじい公衆衛生上の脅威かというとそうでもないでしょう。また、本当に2030年までにやるのであれば公衆衛生学的な介入が必要で、行政も人権的なものも含めて措置が必要な施策を立てざるを得ないのではないかという気もします。新規感染者が減少傾向にあるということを厚生労働省のほうでもきちんと明示し、今までの施策が正しかったという文脈で予防指針を立てていくのであれば、あえてここの部分、2030年という明示せず、将来のずっと据えるべき目標としての書き込みにしていただきたいと思います。
○俣野委員長 白阪先生。
○白阪参考人 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私は、はっきり目標を書いていいと思います。これは目標ですので、目標を達成しないという意味ではもちろんありませんが、それぐらいの覚悟をという御発言も先ほどありましたので、私個人は入れていただきたいと思っております。これはここの委員会で決めていただいたらいいことですけれども、個人的にもそう思います。
○俣野委員長 先ほど申し上げたように、白阪先生おっしゃることも確かにそうだと思うのですが、横幕先生がおっしゃることもごもっともな部分があって、我が国がまず目指すのは、偏見・差別、新規感染者、エイズ関連死をなくすということを目標とするという文章には、取りあえず2030年を避けさせていただいて、UNAIDSが2030年までのHIV流行終息を目指して、それでケアカスケードというものを打ち立てている。その95-95-95の目標の達成を我々も目指すというような、すみません、ちょっと玉虫色ですが、そういう書き方はいかがでしょうかと思っているのですが。
横幕委員。
○横幕委員 私も白阪参考人がおっしゃったように、目標として掲げるのは本当に意義深いことだと思います。しかしながら、行政の方とお話しをしていると、この指針の書き込みを基に施策を考えていくところがあって、書いてあるからやらなければいけないぐらいの考えをされる担当者もいらっしゃいます。法律があるので大丈夫だと思うのですけれども、少し介入的な、無理な計画等を立てて、今いらっしゃる感染者の方ですとか、そういった方たちが少し生きづらくなるような環境を生じさせないかということを危惧します。将来的な目標として掲げるという俣野委員長のお考えですが、私もそのようにしていただきたいと考えております。
○俣野委員長 事務局ともう一遍調整して記載させていただいて、また御意見を伺うという形にしたいと思いますが、野津委員、お願いいたします。
○野津委員 私は、書けるものなら書いたほうがいいという意見でございます。こうしたものを明確に示して、その達成を目指すことがやはり望まれるということで発言させていただきます。
○俣野委員長 はい。
○松下参考人 今、お話になったように、あくまで目標ということで書いていいのではないかと思うのですね。ですから、90-90-90がコロナのために達成できなかった。このことでUNAIDSの事務局長のウィニーさんもがっかりして、しかもそのときはワクチン差別があるということをおっしゃって、Lancetがアナウンスされて、僕は会ったことがありますけれども、すごくいい方なのですけれども、すごくアグレッシブなコメントをされる女性なのですが、非常にしなやかな、いい方です。UNAIDSはアグレッシブなのです。理想を掲げて、それに突き進んでいこうということでお金を集めなければいけないとか、いろいろあるからなのですけれどもね。
一方、日本の行政の方々は、確かに横幕先生がおっしゃるように、このために全部をやれない、予算もない中ですごく大変な目に遭う方々も出てくるということがあるから、目標ということで書かれることでいいのではないかとちょっと思います。ただし、高い目標を持つことが、それに向けてやっているということを示すという意味では大事なので、書くこと自身には僕は賛成です。ただ、これは達成されなければならないと言われると、90-90-90、駄目だったじゃないのと言われるし、今日、検査の彼も聞いていると思うけれども、検査の後の10%が非常に難しいというのが、この前の学会でも言われた。そこが非常に重要な点なのだけれども、それに向けて努力することが必要だということを明確に示すことが必要だと思います。
○俣野委員長 ありがとうございます。
1つ、95-95-95の目標の達成を目指すという記載はしっかり書いていいと思います。
あと、今の議論とちょっとずれるのですけれども、この前も申し上げたように、この文章をちゃんと正確に読むとそういう危惧はないのですが、HIV流行の終息とかいう言葉を使うと、感染している方がそのときもたくさん残っているので、その方々が取り残されるような気持ちにはならないように書く必要があるかなというのが。これは流行と書いてあるので、ちゃんと読めば本当は分かる部分があるのですか。したがって、こういう文章を書いたところの近くに、包括的な医療体制をしっかりするという文章か何かがあったほうがいいのではないかという気持ちを私は持っていて、そこもちょっと相談させていただこうと思っております。
はい。
○松下参考人 先ほどの医療の提供のところが意見を言えなかったところがあって、言うならば、そこが今のポイントですね。既に感染している方々の問題点をここにも大分書いてあって、高齢化のことが一番あるのですけれども、それと、医療だけではなくて、福祉とか介護サービスなどの拡充も必要である。要するに、感染した人が安心して生活できるようにすべきであるということを1つは入れたほうがいい。
それで、先ほどちょっとコメントしましたけれども、これも学会で問題になったのは自立支援医療の課題なのです。これはそれぞれの地方に投げられているところがあって、高齢化して、いろいろな合併症を持った方々がいろいろな医療を在宅で、いろいろなところで受けたいときに、自立支援が足かせになっているという意見がいっぱい来ています。これはこの中に書き込めるかどうか分かりませんが、全部都道府県に投げられているので、都道府県の方々が非常に困っている。現場の医療事情者が困っている1つの課題だと思いますので、ここを何か配慮していただけるような表現がもう一つあればいいかなと思います。要するに、指定医療機関が指定されてしまうものだから、在宅で近くのいろいろな医療機関にかかることができないという問題が今あるということだそうです。
○俣野委員長 ありがとうございます。
花井さん、お願いいたします。
○花井参考人 時間がないところで。
先ほどの松下先生のモニタリングの結果、どうするのだという議論ですけれども、31ページにかなり書き込んでいるのですけれども、国は評価をすると書いてあるのですね。評価はGIPA原則に基づいて、ちゃんと考えて評価しますよと。この評価結果を情報提供する。関係者間の意見交換を踏まえた改善策を検討しとなっているわけですね。となるとこの記述は腰が引けているわけです。だから、改善策は提案しなければいけないのですね。本当は、評価は政策評価なので、例えば何々県でこうやったら費用対効果が高くて、こっちはやったけれども、いまいちだったと。そうしたら、こっちの費用対効果が高い事業をフォーマット化して、国がこういうフォーマットをやれば費用対効果が高いよとやるとか。
というのを指標に基づいてやるのが理想なのですけれども、現状の体制でもそこまでやるべきなのです。だけれども、検討になるとちょっと緩いので、せめて改善策を提案していくぐらいにして、国はうまくいった自治体があったら、大してコストもかからず、これができて、これだけ改善した。それを事業フォーマット化して、ほかの自治体に教えて、これだったらできるでしょうということをやっていくのが最初の議論で考えたことなので、そういう意味では、ここは「検討・提案」ぐらいにしたらいかがかと思います。もっと踏み込んで書いていただけるなら、それが理想です。
○俣野委員長 ありがとうございます。
もう前文から7番までも含めてという点と、ちょっと時間になっておりますので、さらに議題「その他」ということで、そのほかのことでもよろしいですので。
お願いいたします。
○宮田委員 すみません、次の予定があるので、もう失礼させていただきますが、皆さんの議論はかなり正鵠を得ておりまして、文章表現というのは結構重要だなと思います。(通信不良)私、実はジャーナリストの立場として、この新しい指針というのは非常に重要だと思うので、関係各方面にどうやってこれを周知、そして御理解いただけるかということに関しても十分配慮するということをお願いしたいと思います。
以上です。失礼させていただきます。
○俣野委員長 貴重な御意見ありがとうございます。
ほか、よろしいでしょうか。
私の不手際もあって、時間が押してしまって大変申し訳ございません。今日、意見を十分表明できなかった方々、メール等でも結構ですので、御意見いただければと思います。基本的には、次回の委員会で最終的にこの小委員会から出す内容を固めていく方向とさせていただきたいと思っていますので、それまでに事務局のほうから修正等、またお伝えさせていただきたいと思います。
以上となりますが、事務局にお返ししてよろしいでしょうか。
○エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
委員長からいただきましたとおり、修正しまして、そのバージョンでまた確認いただいて、最終的に反映できたもので、次回議論させていただければと考えております。
本日は、ぎりぎりになってしまいまして、少し時間を超過しておりますけれども、委員の皆様、そして参考人の皆様、御参加いただきまして、どうもありがとうございました。いただきました御意見を踏まえまして、修正を進めさせていただきたいと思っております。
その前に議題3ですが、特に大丈夫そうですか。
○俣野委員長 議題3はまとめて。
○エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
そうしましたら、改正案のたたき台については、机上に置いたままお帰りください。
この後、当方で記者ブリーフィングとして議事の概要を説明させていただきたいと思っております。
次回の開催につきましては、事務局から改めて御連絡させていただきます。
本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、どうもありがとうございました。