薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和5年度第4回運営委員会議事録

日時

令和6年3月13日(水)16:00~18:00

場所

Web併用形式
日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階 8E会議室

出席者

出席委員(6名):五十音順、敬称略 ◎委員長
日本赤十字社:敬称略 
事務局:

議題

  1. 1. 感染症定期報告について
  2. 2. 血液製剤に関する感染症報告事例等について
  3. 3. 各調査会の概要について
  4. 4. その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

議事内容
○鈴木課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより「血液事業部会令和5年度第4回運営委員会」を開催いたします。本日は、お忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度は、御参加いただく方の利便性等の観点からWeb併用での審議とさせていただきます。なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 次に、会議における委員の御出席についてですが、委員6名全員に御出席いただいていることを御報告いたします。また、本日は日本赤十字社血液事業本部より佐竹血液事業経営会議委員、後藤技術部次長、中村経営企画部献血推進課課長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様におかれましては、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の御確認をお願いいたします。タブレット上に、「1 議事次第」から「10 資料4」までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
 本日はWeb併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問がございましたら、挙手等によりお示しいただきますようお願いいたします。座長から順に発言者を御指名いただきます。指名された方はマイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を御発言ください。ノイズを減らすため、御発言が終わりましたら、マイクをミュートに戻していただきますようお願いいたします。
 なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は委員長からお願いをする場合がございます。その場合には、記入されたメッセージに応じて、委員長より発言者を御指名いただきます。Web参加の皆様におかれましては、議事進行中に会場の音声が聞こえづらい状況が続き、審議参加に支障を来す場合には、チャット等でお知らせいただくようお願い申し上げます。
 では、まもなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは、以降の進行を﨑委員長にお願いいたします。
○田野﨑委員長 皆さん、こんにちは。本日もよろしくお願いいたします。これまでの説明について、何か御意見や御質問などがありましたら、お願いします。よろしいですか。
 それでは、議事に入りたいと思います。議題1「感染症定期報告」について、事務局より資料の御説明をお願いいたします。
○鈴木課長補佐 事務局の鈴木です。資料1-1を御覧ください。「感染症定期報告(研究報告概要一覧表)」を御説明いたします。1ページです。今回、お示しさせていただいているのは、令和5年9月~11月までの3か月間に御報告いただいた感染症定期報告に含まれる研究報告(論文等)について、重複している部分を除いたまとめの7つとなっております。本体につきましては、委員配布のみとしておりますが、資料1-2に全文を掲載しております。
 1つ目は、雑誌「Transfusion」よりTransfusion-transmitted HBV infection with isolated anti-HBs-positive bloodということで、本日は日赤より御出席の佐竹先生方による論文です。こちらは令和3年度6月の第1回運営委員会において、事案について御報告しまして、同年7月第2回及び第3回安全技術調査会において、遡及調査ガイドライン改訂を御議論の上、同年9月にガイドライン改訂となった症例を踏まえてということで、症例報告の論文となっております。HBs抗体のみ陽性血液の輸血HBV感染の可能性については、積極的サーベイランスが必要であるということで、まとめていただいております。
 続いて、2つ目と3つ目の文献についてです。こちらはエムポックスということで、2つ目も雑誌「Transfusion」よりAbsence of detectable monkeypox virus DNA in 11,000 English blood nations during the 2022 outbreakということで、具体的には1万896人のドネーションサンプルから454のミニプールが作製されておりまして、こちらにPCRによりエムポックスの検出がなかったという報告となっております。比較して、こちらの3つ目のほうですが、こちらは日本からPrevalence of Asymptomatic Mpox among Men Who Have Sex with Men,Japanということで、MSMの方を対象に1,346名にエムポックスPCRを実施されたという論文の報告になっております。
 続きまして、2ページです。こちらは4つ目です。感染研から日本における梅毒増加の報告です。これは献血時の問診において、梅毒の感染歴や性的接触を確認し、梅毒トレポネーマ検査を実施することで、日本においては安全性を確保しているということを我々としては認識しております。増加について今後も注視していきたいと思っております。
 5つ目の文献です。こちらは、上海よりグラム陽性通性嫌気性菌の一種であるErysipelothrix属のErysipelothrix piscisicariusによる海産物を介したと推測される、初めてのヒト感染例(72歳女性)に関する報告となっております。抗生剤に感受性があり、回復退院されています。現時点では血液製剤について、特段の新たな対応は不要と考えております。
 6つ目の症例報告です。イギリスよりグラム陽性の小球菌Globicatellaによるcat bite,soft tissue infectionということで、こちらも抗生剤が有効でデブリーを行ったようですが、回復されているという御報告です。
 7つ目です。最後になりますが、こちらはイギリスにおけるBan lifted on use of UK plasma to manufacture life-saving albumin treatmentsということで、イギリス国内でこれまで採取された血液によるアルブミン製剤の製造を禁止とされていましたが、そちらの解除と製造されたアルブミン製剤の使用禁止の解除ということで、クロイツフェルト・ヤコブ病に対する対応の解除の報告となっております。
 続きまして、3ページです。こちらも期間は同様に9月~11月の受理分の「感染症定期報告(個別症例報告概要)」について、国内症例はこれまでと同様に議題2において、別の資料において収集・報告を行っておりますので、こちらは外国症例を一覧としてまとめております。4ページ以降に、同一成分ごとに、感染症発症の11例からの成分ごとに一覧としてまとめておりますので、詳細な説明に関しては割愛させていただきます。議題1について、事務局から以上となります。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ただいまの説明について、水上委員から追加で御発言がありましたら、お願いいたします。
○水上委員 今回、3件コメントしたいと思います。まず、文献1のHBVですが、責任著者の佐竹先生の前で大変恐縮ですが、文献1は輸血によるHBV感染事例の論文となっております。HBVは、HBV感染者の血液、精液、体液を介して感染する感染症で、3か月の潜伏期を有するのが特徴となっております。1987年から感染症サーベイランスの対象となっておりまして、1999年4月以降は4類感染症に分類され、全数把握疾患となっております。2003年の感染症法の改正で5類に分類されておりまして、感染症の発生動向調査の対象にもなっております。
 2016~2022年の届出では、大体、男女比は4.5ということで、男性が1,152例で女性が258例となっております。明らかな性差が認められており、また、年齢群では男性が25~29歳、女性が20~24歳で、感染経路の70%が性的接触となっております。本届出の中では輸血感染事例は1例となっておりますが、日赤の輸血情報によりますと、5例が確定例として報告されております。
 一般的に診断には、IgMのHBc抗体検査が用いられておりまして、99%の症例で抗体が検出されております。HBVの遺伝型は9つのジェノタイプに分類されておりまして、日本の全体の特徴としては、ジェノタイプB、ジェノタイプCが基本的な大部分を占めております。ただ、今回、2016年以降の届出を見ますと、ジェノタイプAが50%、ジェノタイプBが14%、ジェノタイプCが36%となっておりまして、ジェノタイプAの割合が増えております。これは都市部、それから若年層で増加していることを反映しているかと考えられます。
 また、ジェノタイプAは成人の水平感染でも非常に慢性化しやすく、宿主の免疫反応が弱く、症状も弱いということで発見するのが難しく、無意識のうちに性的接触を介して広がっているのではないかと考えられております。
 輸血後の肝炎対策としては、1972年にHBsの抗原スクリーニング、それから1989年にHBsの抗原、HBcの抗体検査が導入されまして、1999年以降は500人プールのNAT、2000年に50人プール、2004年に20人プールとなって、最終的に2014年8月以降は個別NATで検査されており、ウインドウピリオドによる感染率の低下が認められてきました。
 また、HBc抗体弱陽性の感染既往者による感染、いわゆるオカルトHBVに関しても、抗HBcの陽性献血は全体で大体1.3%程度ということもあったので、最終的に2012年にオカルトHBV対策として、HBc抗体陽性の血液は全部不適ということにして、更に、その判定基準も厳格化しておりました。
 しかし、2014年8月以降も8例の感染事例が報告されておりまして、そのうち6例が献血者のNAT陽転情報を発端としたウインドウピリオドの製剤による感染となっております。このうち、1例が今回の論文報告の症例となっております。ちなみに、報告された8例のうち7例は血小板製剤で、本事例は血漿製剤によるものになっております。また、内訳ですが、ジェノタイプA2が5件となっておりまして、ジェノタイプAが増えているということになっております。
 今回の事例では、HBV個別NAT陰性、それからHBs抗原及びHBc抗体陰性、そしてHBs抗体のみ弱陽性のドナー由来の新鮮凍結血漿を輸血した例となっております。受血者は60代の男性で、2020年9月に急性大動脈解離により赤血球15本、FFP8本、血小板1本の合計24本の輸血を受けております。輸血前検査ではHBs抗体陰性、HBc抗体陰性だったのですが、輸血後72日後にHBV-DNAが陽性となり、輸血後121日目に肝炎を発症しております。発症時の肝機能値が1,255IU/Lということで非常に高くなっておりますし、HBV-DNA、HBs抗原、HBc抗体も陽性となっております。この輸血された24本の血液ドナーのうち、1人の方に再献血してきていただいて、NAT陽性が確認され、このドナーの受血者のHBV遺伝子が一致し、欧米に多く、日本に稀のジェノタイプA2であったことからも輸血感染症例として特定されたケースになっております。
 この方の血中ウイルス量は、当該献血から84日後の時点でも、検出定量限界以下の低濃度でありまして、ジェノタイプA2は非常に複製速度が遅いということからも、HBワクチンのブレイクスルー感染か、あるいはHBs抗体陽性のオカルトHBV感染かと考えられております。ちなみに、同じドナーから同時製造された赤血球製剤については、既に使用されておりまして、感染の疑いはなしという報告になっております。
 今回のようなHBs抗体のみ陽性の献血者からの感染リスクのある方を特定するのは、現状のスクリーニング検査では極めて困難です。また、ワクチン接種が開始された状況下では、HBs抗体陽性の血液を排除することは非常に難しいと考えられております。ですので、HBs抗体のみ陽性血液の輸血HBV感染の可能性については、先ほどコメントにあったとおり、積極的な調査、サーベイランスが必要と考えております。
 また、通常、この複数回の献血があって陽転化した場合は、遡及調査が行われることになっておりますが、今回は献血間隔が84日ということで、遡及調査対象の72日を越えていたため、実際は遡及調査が行われなかった例となっております。この本審議会でも議論されて、このような事例を踏まえて2023年9月に遡及調査のガイドラインが改正されておりまして、こういったHBV、HCV、HIVの陽転が認められた場合は、当該献血者由来の有効期限内にある製剤は可能な限り供給停止、回収することになっております。また、ジェノタイプA2の倍加時間を3.4日にして、通常は2.6日なのですが、そういったところを鑑みて個別NATのウインドウピリオドを21日から27.5、血清学的ウインドウピリオドは26から47日に延長して、遡及調査期間も併せて個別NATで55日、血清学的診断で94日という形にして対応を強化しております。ですので、これからまた引き続き様子を見ながら、HBV感染に関しては注視が必要かと考えております。
 続いて、エムポックスです。既に先ほど課長補佐よりコメントがあったとおり、基本的に、献血血液においては問題がないという形の報告になっております。ただ、今回、追加で1点注意する点としては、2022年5月以降に報告されているエムポックスというのは軽症なグレードⅡb、西アフリカ型と言われているエムポックスであるのですが、実は、以前からコンゴ民主共和国では、重症化するリスクの非常に高いMPXVのグレードⅠ、コンゴ盆地型と言っておりますが、こちらが流行しておりました。2023年に過去最大の感染者数を出しておりまして、更に、男性から女性への感染が発生しているという報告があることと、特に性的接触に多く伴うMPXグレードⅠの集団感染事例が報告されていることが注意点になります。この方はベルギーで感染しておりまして、幸い、その後、ベルギーの中で様々な調査をしたところ、グレードⅠのウイルスはまだ検出されておりませんし、GISAIDと言いまして、ウイルスゲノム検出情報を登録するデータベースのサイトでも、日本も含めてグレードⅠの感染報告は、まだ認められておりませんので、WHO、ECDCやCDCも含めて、まだ拡大する可能性は低いと考えておりますが、引き続き、注視が必要ではないかということを、コメントをさせていただければと思います。
 最後に梅毒です。梅毒は梅毒トレポネーマを病原体とする細菌感染症で、性的接触により伝播する感染症となっております。特徴的なのは、感染者の皮膚粘膜病変からの滲出液に接することで傷口等から侵入して感染するわけですが、大体3週間経過後に無痛性の初期硬結、硬性下疳を生じて、基本的には自然回復するのですが、実際にこの症状を発出後、4~10週間程度経過すると梅毒トレポネーマが血行性に全身に移行して、手掌等に生じる無痛性の紅斑としてバラ疹などが全身で多様な症状を示すようになります。かつて、この血行移行期の患者血液に由来する輸血による感染が問題となりましたが、現在はスクリーニングにより国内での輸血用血液製剤を起因とする新規感染報告はありません。
 また、日本赤十字社の対策として問診の強化がされておりますので、現時点では感染のリスクはないと考えております。ただ、日本赤十字社の梅毒抗体の検査においても、2014~2018年の陽性者が大体4,500名なのですが、2019~2021年では1万1,200例と増加しておりますので、引き続き注視が必要かなと考えております。一方で梅毒トレポネーマ自身は、4~6℃保管で感染性が低下し、大体72時間で感染性が消失すると言われておりますので、そういったところからも、この輸血による感染のリスクは低いのではないかと考えております。コメントは以上となります。
○田野﨑委員長 水上委員、詳細な御説明、どうもありがとうございました。ほかの委員の皆さんから、何かコメントや御質問はありますか。濵口委員、お願いします。
○濵口委員 濵口です。1番目の論文について、佐竹先生がそちらにいらっしゃるので、少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。HBs抗体が陽性で、それで感染源になってしまったということなのですが、例えば、潜伏感染だった場合には、細胞内にウイルスのcccDNAが僅かながらでも存在しているというのが、ワクチン接種者によるHBs抗体陽性なのか、それとも潜伏感染によるHBs抗体陽性なのかということの違いになるかと思うのですが、近年、ダイレクトにでないにしても、一応、解析できるような検査システムがあるとも聞いているのですけれども、この辺りの検討は何か日赤のほうでされているのかどうか教えてください。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹血液事業経営会議委員 日赤の佐竹です。今の先生の言われていることは、HBコア関連抗原(HBcrAg)の検査のことかと思います。これについては、今回の論文にも書いてありますけれども、それで検査しても、これは陰性でした。これは、高感度HBs抗原よりも非常に高感度の高いものです。今おっしゃられたように、cccDNAなどを反映している検査法ですが、ここでも陰性です。全体的な論評としては、確かに高感度にはなりましたけれども、まだまだ、これはNAT等に比べると改善の余地があると言われていますので、まだ、その検査法によってもこのような例は捕まえられないということです。
○濵口委員 了解しました。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかには、よろしいですか。佐竹委員、後藤委員から何か追加でコメントなどがありましたら、お願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹血液事業経営会議委員 この例については、ほぼ全般、多くの議論をディスカッションいただいたものですが、それ以前に、S抗体が陽性で感染を起こすこと自体は、それだけで極めて稀なことです。これはS抗体が10mIU以上ありますけれども、世界中で10mIU以上あって輸血感染を起こしたというのは、東ヨーロッパのハンガリーかどこか忘れましたが、そこの1例と日赤からの1例だけです。それだけの非常に稀である上に、このような非常に分かりづらい経過を取っておりますので、こういった感染、これは先ほども説明がありましたように、ユニバーサルワクチネーションが増えてまいりますと、このようなS抗体が弱陽性を示すというポピュレーションが日本の大部分になってくるかと思います。それをスクリーニングアウトするということは到底できないことですので、非常に稀であるということと、このような方がこれから献血の中心になっていくことで、この対応は極めて困難と言いますか、非常に現在のところは難しいと考えざるを得ないかと思います。
 実際に、現在の献血の方をざっと見ただけでも、1日の献血の中でもS抗体が弱陽性を示し、コア抗体陰性であるというような例は1,000例ぐらい、あっという間に見付かりますので、そのような状況であるということです。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかには、よろしいですか。3か月の間の7例ですが、日本からの報告が3例入っているということで、引き続き注視が必要だということかと思います。そうしましたら、引き続き事務局におかれましては、感染症定期報告をお願いしたいと思います。
 次に、議題2「血液製剤に関する感染症報告事例等について」に移りたいと思います。事務局より資料の説明をお願いします。
○鈴木課長補佐 事務局の鈴木です。資料2-1を御覧ください。血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について、こちらも同様に令和5年9月~11月までの3か月間の感染症報告事例をまとめております。1ページ、新規及び追加報告として輸血用血液製剤は7件、血漿分画製剤は6件でした。そのうち、輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告は0件、血漿分画製剤との因果関係が否定された報告も0件です。
 2番以下の所、輸血用血液製剤による病原体感染症報告事例の内訳はHBVが1件、HCVが2件、HIVが0件、その他では細菌等で4件でした。
 HBV、HCV感染症報告事例については2、3ページの2ページの見開きにもありますが、献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例は、どちらも0件ですが、輸血後に抗体検査等が陽性であった事例がHBVで1件、HCVが2件あり、劇症化又は輸血後に死亡したとの報告を受けた事例はいずれも0件です。HIV感染の報告は0件でしたので割愛します。その他の4件の細菌感染症報告事例について、うち2件は血小板製剤であり、そのうち、当該輸血用血液の使用済みバッグを用いた無菌試験が陽性で、院内にて実施の患者血液培養検査での同定菌と一致であった事例が2ページの一番下の1件となっております。
 最下段の被疑薬は、採血3日目の照射濃厚血小板の使用済みバッグ内残渣にて細菌培養試験を実施し、Streptococcus agalactiaeを同定。血液培養のバッグからの2つの菌株については、遺伝子型検査を実施中という報告を受けております。
 続いて、資料2-2に進みます。供血者からの遡及調査の進捗状況等についてです。1ページ、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインに基づく日本赤十字社における供血者からの遡及調査実施の進捗状況を日赤より御提出いただいており、今回は、こちらも令和5年4月1日~12月31日までの速報値ということで頂いております。表の左と中央は、比較のために一昨年と昨年もお示ししておりますが、一番右のカラムが今年度の速報値となっており、前回12月の運営委員会では9月30日分まででしたので、そこに12月31日までが累積されております。一番上の1つ目の遡及調査対象献血血液の概要について、(1)調査対象とした献血件数はHBVにおいて、前回よりも319プラスの計1,043、HCVは53プラスの139、HIVが3件プラスの11件、HEVはプラス1,310の計3,776件が対象になりました。
 (2)調査対象として輸血用血液製剤の本数や(3)医療機関に情報提供を行った輸血用血液製剤の本数についてというのは記載どおりの数字となっております。(3)のうち、薬機法第68条の10第1項に基づく医薬品副作用感染症報告を行った件数が、HBVについては12月に追加で1件あり、前回までの運営委員会の数字から追加されてトータル2件となっております。続いて、2、3ページについては医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況を個別に羅列しております。簡潔ですが、事務局からは以上です。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。以上の御説明について、何か御質問や御意見があればお願いいたします。
 私から、細菌感染の4例目でβ溶連菌が出ているのですが、こちらに関して、もし何か日本赤十字社のほうでドナーの情報などがあれば伺えればと思います。いかがでしょうか。表の一番下の所、血小板製剤でStreptococcus agalactiaeが患者さんとバッグと両方で一致したものが出ているというのが、今のところ1例あるかなと思います。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹血液事業経営会議委員 これはそこにあるように、現在、遺伝子型を実施予定となっていますが、つい最近、これはコアゲノムのMLSTで99%一致しているという結果が出ましたので原因製剤であることは確認されました。ここにもあるように、採血3日目のものですので、通常、血小板製剤でこのような敗血症を起こす場合は採血4日目のものが多いのですが、この場合は3日目で、我々もかなりショックなのですが、ただ、患者さんについては回復されてきているということで、恐らく3日目であったということと、このS.agalactiaeというのがレンサ球菌の中では毒力が比較的弱いものであるといったところが幸いして回復されてきているのではないかと考えております。ドナーに関しては、先ほどのシークエンスの一致というところを現在確認したというところです。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかに何かありますか。それでは、事務局においては、今後とも引き続き感染症症例遡及調査報告などをお願いしたいと思います。
 それでは、議題3、各調査会の審議結果に移ります。まず、資料3-1について、事務局から御説明をお願いします。
○鈴木課長補佐 資料3を用いて、令和5年度第2回安全技術調査会の概要について御報告いたします。1ページから議事概要の御報告をいたします。議題は2つ、1つ目として新型コロナウイルス既感染者の採血制限について、事務局よりCOVID-19既感染者の採血制限について令和3年度第2回安全技術調査会における審議結果を踏まえ、これまでは「症状消失(無症候の場合は陽性となった検査の検体採取日)から4週間」とし、併せて、その取扱いについて「少なくとも1年ごとに本通知の適切性を評価すること」を令和3年8月に発出した通知に定め運用されていることが説明されました。
 一方、COVID-19については、令和5年5月8日に感染症法上の位置付けが5類に移行したので、現時点においては病原性が大きく異なる変異株の発生といった特段の事情は生じていないことから、これらの状況を踏まえ、罹患者の採血制限の期間について改めて研究班で御検討を頂きました。その結果として、症状軽快から2週間が経過しているとする見直し案を提示させていただき、調査会においても御了承を頂きました。こちらは既に12月15日付けの通知の見直しということで、実際に、日赤のほうでも変更して運用を開始していただいております。
 続いて議題2、性的接触及び海外地域別の滞在期間の問診について、厚労科研の大隈班において、諸外国の動向や科学的知見の整理を始めていただいたところですので、その検討の開始について概略を御説明いたしました。
 2ページ、1つ目として、性的接触に関する問診について、現状では男性どうしの性的接触によるHIVの感染リスクを踏まえ、本邦では不特定の異性又は新たな異性との性的接触歴や、男性どうしの性的接触歴のある方、いわゆるMSM等からの献血を制限している一方で、諸外国では、特定のパートナー間のみの男性同性間の性的接触歴のある方の献血を受け入れる動きというものが出てきております。
 今回、議論のポイントとして、性的接触歴に関する問診の見直しを行う場合には、事前確率が上がらないことのほか、倫理的・運用的に留意すべき点が考えられるので提示しております。実際、性的接触に関する問診について、こちらに挙げたような諸外国においては個別リスク評価が行われるようになってきており、これに基づいて献血の基準等が評価される運用変更が進んでいるところです。我が国において、こういった海外の状況を踏まえ、見直してもいい時期にきているのではないかといった御意見も頂戴しました。
 日本赤十字社により、MSM等、包括的に制限するのではなく、個人の性的接触による感染リスクに基づいて評価する方針に転換しつつあり、諸外国の動向や日本国内におけるHIVの感染状況、事前確率等についても慎重に検討を進めるということで御説明も頂いております。今後はMSM当事者団体からの意見を聞くことも必要ではないかといった有識者からの御意見も頂戴しましたので、引き続き検討を行っているところです。
 2つ目として、海外地域別の滞在期間の問診について、いわゆる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に係る感染対策として、2000年から海外地域別の滞在期間に基づいて献血制限を行っておりますが、このvCJDの発生リスク、そもそも発生が低下してきているということが世界的にも認められているので、この辺の見直しが諸外国で行われてきているところの報告をさせていただき、研究班において、科学的知見の収集を行っていただいているところで、現在、献血を介したvCJDのリスク評価ということで、BSE対策の日本における状況、発生0件という状況も鑑み、日本においてこの献血制限を見直す必要性について御提案いたしました。
 1992年をピークに、現在、非常に少ない、日本においても発生0件という状況をどのように評価するのかはかなり難しいのですが、本邦の制限について見直してよいのではないかという方向性についても御賛同を頂いております。今後は、諸外国評価では海外ではイギリスなどを含め、滞在歴による献血制限の撤廃は可能ではないかといった御意見もありましたが、一方で、まだvCJDについては検査や治療などには課題もあるので、今後のリスクなどを考慮して、イギリスとそれ以外の国を区別した検討というのも1つの方法であるという御意見も頂戴しております。この辺りも引き続き議論していくこととなっております。簡潔ですが、以上です。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。安全技術調査会の概要についての御説明でしたが、委員の皆様からコメントや御質問はいかがでしょうか、よろしいでしょうか。
 続いて、資料3-2について、事務局より御説明をお願いします。
○鈴木課長補佐 令和5年度第1回適正使用調査会の概要について御報告いたします。1ページ、今回、議題として2つと、その他の報告をさせていただいております。
 議題1、血液製剤使用実態調査について、本調査においては血液製剤の適正使用の推進に必要な方策を検討するため、医療機関の血液製剤の管理体制、使用状況など、医療機関における血液製剤の使用実態を把握することを目的とし、日本輸血・細胞治療学会に委託して実施しております。今年度は、特にマル1へき地・離島での輸血使用状況、マル2小規模医療機関における輸血管理体制・使用状況を中心に、2022年度に日本赤十字社から輸血用血液製剤の供給を受けた全医療機関9,277施設を対象として調査を実施し、調査結果については、学会より田中参考人及び藤原参考人に御出席いただいて御報告いただきました。
 マル1のへき地・離島での輸血使用状況については132施設からの回答があり、考察として、小規模施設であっても二次救急などの医療機能を担う比率がほかの地域よりも高く、輸血管理体制の整備率・輸血管理料の不足率等も若干高いことに影響していると考えられたという御報告です。診療科別の赤血球製剤使用量は、内科、救急、整形、消化器内科での使用が多く、その他の地域とは異なっていることが廃棄率の高さにつながっているのではと考えられる。
 緊急避難的な血液製剤融通というのは、離島施設の約4分の1で実績があったということですが、こういった血液融通の需要があると回答した施設でも、合同輸血療法委員会への参加はまだ少ないような状況で、地域における輸血医療連携の検討というのはまだ課題かなというところで御提案いただいております。
 マル2の小規模医療機関における輸血管理体制・使用状況に関しては、小規模ということで200床未満を対象として集計していただきましたが、供給された中では全国7,974施設で、これら小規模医療機関に供給された輸血用血液製剤は、全体からすると5~16%といった割合になっております。御回答を頂いたのは、残念ながら半数程度の3,795施設ですが、こちらについて、年間赤血球の廃棄量が多く有効期限を切らしてしまっているといった状況でした。特に、診療所では産科診療及び輸血管理体制の不備、小病院では心臓血管外科及び産科周術期診療、赤血球使用量の多い内科系診療科の不在、輸血管理体制の不備などの要因も挙げられております。
 廃棄の削減に向けて、特に、産科や心臓血管外科診療においては、中大規模病院との病診連携推進及び基幹病院への診療の集約化といった対策も必要ではないかと御提言を頂き、委員からもそのような御意見を頂戴しました。
 続いて、議題2、血液製剤使用適正化方策調査研究事業については、各都道府県における課題とそれに対する取組について調査研究をすることを目的とし、合同輸血療法委員会を主体として実施し、その好事例を全国で共有することで、効果的な血液製剤の適正使用の方策を推進するものとして行っております。
 2022年に実施された新潟県の取組について、関参考人より御報告いただきました。新潟県の特性として、山間へき地・豪雪地域というのがありますので、その背景を踏まえて、廃棄血の廃棄理由や今後の適正在庫血の検討について御報告を頂戴しておりました。
 その他の中で、今回、厚生労働科学研究として科学的エビデンス等に基づき、医療環境に応じた適切な輸血療法実施についての研究を奈良医大の松本先生に開始していただいておりますので、概要を御紹介させていただきました。
 内容は、当課より2つ、使用指針、実施指針をお示ししておりますが、こちらについて歴史的な経緯もあり、別々の改定時期となってきている状況です。科学的知見等も指針の内容と乖離してきているという御指摘も審議会のほうで頂戴しておりますので、血液法の理念を踏まえた上で両指針の在り方の検討を進めるとしていたところです。
 最近の知見を踏まえて、医療機関が参照しやすい形になるよう、松本先生の御研究において、学会をはじめ、連携し、指針に用いている元のガイドラインの位置付けなども、様々御検討いただいた上で見直し、統合した形で作成いただけたらということで御検討いただいております。以上です。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。適正使用調査会の概要について、委員の皆さんから御質問やコメントなどお願いしたいと思います。
よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 そうしましたら、議題4のその他、事務局からお願いいたします。
○鈴木課長補佐 事務局から運営委員会の議論の深化に向けた対応について、少し御説明のお時間を頂戴いたします。資料4を御覧ください。血液事業部会運営委員会と各調査会の合同開催について御提案させていただきます。
 御存じのように、血液事業部会の下には安全技術調査会、適正使用調査会、献血推進調査会の3つの調査会を置いており、年に1~2回程度開催しております。また、こちらの運営委員会については四半期ごとに各調査会の調査審議の状況を御確認いただいており、必要に応じて部会に御報告しているところです。
 血液製剤の安全性の確保と安定供給の上で、献血推進、需給状況、適正使用、安全対策というものは密接に関連しております。昨今の血漿分画製剤の需要の増加、若年層の献血者数の減少等の状況を踏まえると、可能な場合においては、この運営委員会と各調査会の合同開催をすることによって、横串での議論を深め、議論の円滑化と深化を図ることを御提案させていただきたいと思っております。もちろん、緊急時等必要な場合には運営委員会の緊急開催や各調査会の単独での開催も行っていくということは考えております。
 御参考として、平均的な過去の各部会、調査会、運営委員会の開催状況もお示ししており、参考2として、まずは来年度のイメージですが、四半期ごとの運営委員会と、事業部会も2回ほどで、その運営委員会に合わせた合同開催が可能な場合には一緒に調査会を、必要な場合には単独開催を考えております。こちらについて御意見を頂戴できればと思います。お願いいたします。
○田野﨑委員長 ただいまの説明について、何か御質問があればお願いしたいと思います。武田委員、どうぞ。
○武田委員 武田です。よろしくお願いします。調査会のほうにも合同開催ということで議論を聞かせていただけるというのは歓迎すべきことだと思います。その方向でやっていただければと思います。
 一方で、お忙しい先生方ですので、合同開催となったときには多くの先生方になるというところで、日程調整がうまくいくのかというところが1つ懸念をしているところです。特に、運営委員会においては重要な議案が来年度も議論されるというようにも考えておりますし、そうした意味では、議論を深化させるためには、皆さんが現地で集まれる日に開催をしていただきたいというところで、合同開催ということが目的となって、それがないがしろにされることがないようにというところだけ、1点、確認をさせていただきたいと思います。
○鈴木課長補佐 武田先生、御意見ありがとうございます。我々も、目的が手段になってしまうようなことのないように、まず、先生方に議論を深めていただくことが一番と思っておりますので、既に日程調整をお伺いしておりますが、まず、先生方にきちんと、できる限りは利便性も考えますけれども、現地での御出席などをお願いし、議論のほうが浅くなるようなことが決してないように、可能な範囲での合同開催というように検討していきたいと思っております。
○山本血液対策課長 私からも補足をさせていただきます。特に、こちらにも書かせていただいておりますが、テーマに応じて単独開催という形とか、あとは、別に開催しながらきちんと議論を頂けるような形が重要かと考えております。特に、これまで御心配をお掛けしておりますように、免疫グロブリン製剤の限定出荷であったり、血漿分画製剤の不採算の問題など、長い間、様々な場所で御議論を頂いていたところもありますし、その辺りの部分について、必要に応じというか、特に来年度は運営委員会で血漿分画製剤メーカーからヒアリングを非公開でしていただくということを検討しており、その辺りについては企業情報、しかも非公開となります。本当に、この運営委員会の先生方には、その部分はできる限り対面で御出席いただきたいと思っておりますので、日程について個別に調整をさせていただくなど、こちらにいらしていただける日程ということで御協力をお願いできればというように考えておりますので、補足をさせていただきます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。いかがでしょうか、委員の皆さんから「いや、これではまずい」というようなことがあればお願いしたいと思いますが。皆さん大丈夫そうですので、今、合同開催をするという中でお話がありましたように、しっかり時間を取って議論をし、事前にも、必要に応じて十分お話していただけると思いますので、皆からテーマも拾ってお話を進めていただけるといいかと思います。それでは、特に反対意見がなかったということで、これから、こちらの御提案のように合同開催の方向で進められればと思います。ほかに何か御意見やコメントなどがあればお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。特にないようなので、事務局に議事進行をお戻ししたいと思います。
○鈴木課長補佐 田野﨑委員長ありがとうございました。次回の運営委員会の日程は、別途御連絡を差し上げます。これにて、血液事業部会令和5年度第4回運営委員会を終了いたします。本日はありがとうございました。
(了)