第27回過労死等防止対策推進協議会 議事録

労働基準局総務課(過労死等防止対策推進室)

日時

令和6年3月19日(火) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 専用15会議室(中央合同庁舎5号館12階)
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2

出席者

専門家委員
岩城穣委員、戎野淑子委員、川人博委員、木下潮音委員、清山玲委員、堤明純委員、中窪裕也委員、宮本俊明委員
当事者代表委員
工藤祥子委員、髙橋幸美委員、寺西笑子委員、渡辺しのぶ委員
労働者代表委員
上野友里子委員、冨髙裕子委員 西尾多聞委員
使用者代表委員
佐久間一浩委員、鈴木重也委員、神尚武委員

議題

  1. (1)過労死等の防止のための対策に関する大綱(素案)について

議事

議事内容
○中窪会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第27回「過労死等防止対策推進協議会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらずお集まりいただき、誠にありがとうございます。
本日は御都合により、大下委員と柴原委員が御欠席です。
カメラの撮影につきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○中窪会長 それでは、お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題は「過労死等の防止のための対策に関する大綱(素案)について」です。
前回の協議会におきまして、今後の過労死等防止対策についてそれぞれのお立場から御意見を賜りました。本日は事務局において過労死等の防止のための対策に関する大綱の見直し案の骨子と、それを肉づけした素案を準備していただきましたので、事務局から御説明をいただきます。その後、議論の時間を設けたいと思います。
では、事務局から御説明をお願いします。
○企画官 事務局からお手元の資料に沿いまして御説明申し上げます。
資料の右下にあります通し番号で御案内いたします。
2ページ、資料1を御覧ください。過労死等の防止のための対策に関する大綱の見直し案の骨子です。現状と課題では、過労死等防止対策推進法施行後、働き方改革が進められ、労働時間などで一定の効果が見られ、令和6年4月からは建設業等で時間外労働の上限規制が適用される状況です。一方で、脳・心臓疾患や精神障害による労災認定の状況等から、長時間労働対策に加え、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止対策の重要性が増しており、そして、フリーランスの就労実態やハラスメントの状況等にも目を向ける必要があるとしております。
見直しのポイントとしましては、1点目、「過労死等の再発防止対策、フリーランスへの取組等を推進」としまして、1.時間外労働の上限規制の遵守徹底、2.再発防止の指導強化、3.勤務間インターバル制度の周知、4.フリーランス・事業者間取引適正化等法の履行確保等を挙げております。
ポイントの2点目、「調査研究内容の充実」では、1.芸術・芸能分野を重点業種等に位置付け、2.働き方や就労環境等に焦点を当てた調査、3.研究の成果や最新知見に基づく過労死等防止対策の支援ツール開発と効果検証等の実施、4.過労死等事案のハラスメント防止措置状況の分析、5.最新情報の専用ポータルサイトでの公表としております。
ポイントの3点目、「数値目標の追加設定」で、1.労働時間について重点業種等に着目した重点的な取組、2.勤務間インターバル制度について数値目標の設定、3.公務員についても実効ある取組の推進としております。
次の3ページに数値目標についてまとめておりますが、内容については、資料2で御説明いたします。
次の4ページ、資料2が大綱の素案です。
現行の大綱を右側に、見直しの素案を左側に、新旧対照表の形にしまして、修正箇所を赤字で表記しております。前回、前々回の協議会における各委員からの御意見を踏まえ、また、委員からいただきました意見書の趣旨を受け止め、できる限りその内容を反映させるよう関係省庁を含め各担当部署と調整の上、整理しております。
では、主な修正点を順に御説明します。
4ページ、「第1 はじめに」において、過労死等防止対策推進法施行後10年が経過したことから書き出して、関係者の取組により一定の成果が見られますが、過労死等は依然として発生しておりますので、法の目的と大綱に基づいて過労死等の防止のための対策を推進することを冒頭に記載しております。
続いて、「1 これまでの取組」の部分で、5ページの中ほどから、大綱策定後、働き方改革関連の法整備が進められてきたこと、調査研究による一定の知見が得られ、過労死等の労災認定基準が改正されたこと、過労死等防止対策推進シンポジウムなど周知・啓発によって関心と理解が社会的に醸成されてきたこと、6ページになりますが、関係者の取組により、労働時間など一定の成果が見られる一方、過労死等が多く発生していることから、長時間労働の抑制、ハラスメント防止対策等に取り組むことが求められることを追記しております。
なお、新型コロナ感染症の感染拡大といった記述や令和6年の大綱として記載がそぐわない部分などについては、全体を通して時点修正あるいは削除等をしております。
6ページの「2 現状と課題」「(1)労働時間等の状況」から11ページの「ウ.地方公務員の公務災害の状況」までは、各状況の数値等を更新しているところですので、説明は割愛します。
続いて、12ページの「(8)課題」の部分です。令和6年4月から適用される建設業等の時間外労働の上限規制の遵守が必要であることを追記しております。13ページの中段、これまでの調査研究で示唆された知見やさらなる調査の結果を踏まえた対応を広く周知・啓発していくことを追記しております。また、その下、若年層の心身の健康が損なわれる事案が増加していることや、14ページ、近年、精神障害による労災請求・支給決定件数が増加傾向にあること、メンタルヘルス不調による休業者等が一定割合いることを追記しております。
同じページの中ほど「第2 過労死等の防止のための対策の基本的考え方」です。ここで、過労死等の件数は脳・心臓疾患では横ばい、精神障害は増加傾向であること、次の15ページ、「一方で」で始まる段落で、副業・兼業を行う方について長時間労働のおそれ、フリーランスについてハラスメント等のおそれがあることを追記しております。そして、その下の段落で、令和7年には大綱が策定されてから10年になりますので、この間の調査研究や取組の成果を振り返り、過労死等の実態をさらに明らかとする指標の検討や調査研究、各種取組を推進していくことが重要であることを追記しております。
同じページ、「1 調査研究等の基本的考え方」で、過労死等の実態の解明に向けて、勤務時間の不規則性、業務内容の特性、作業環境等との関連性も分析していく必要があることを記載しております。また、労働・社会分野の調査研究における分析に、カスタマーハラスメントを含む顧客と労働者間の関係を追記しております。16ページの中ほど、医学分野の調査研究の部分で、これまで行ってきた過労死等事案の分析、職域コホート研究や対策実装研究等を継続する中で、これらの調査研究を統合しながら進めていくことを追記しております。その下、労働・社会分野の調査研究で、長時間労働等の実態があるとの指摘がある、として芸術・芸能分野を加え、これらを「重点業種等」ということとしております。そして、17ページ、「今後においても」の段落で、調査結果を経年比較できるよう測定・分析することが必要としております。
同じページの真ん中、「2 啓発の基本的考え方」の「(1)国民に対する啓発」で、周囲の気づきと支えにより孤立させないことを追記しております。
18ページ、「(3)職場の関係者に対する啓発」の中で、19ページ、特に過労死等を発生させた企業等に過労死等防止対策推進シンポジウムへの参加を促すことが重要であることを追記しております。
21ページから「第3 国が取り組む重点対策」で、その書き出しと1の「(1)時間外労働の上限規制の遵守徹底」で、令和6年4月から適用される時間外労働の上限規制の遵守徹底を図ること、また、建設業、自動車運転業務に関して、施主や荷主等の取引関係者、国民に理解と協力を呼びかけ、幅広く周知すること、そして、医師に係る対策について、医療勤務環境改善支援センター等を通じた支援を行うことを追記しております。
23ページの下の「(4)メンタルヘルス対策・ハラスメント対策」で、24ページ、精神障害の労災支給決定がされた事業場への指導を行うことを追記しております。
25ページ、「(5)過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策」で、過労死等を発生させた企業への指導強化として、全社的な再発防止対策の策定を求める指導、また、複数の過労死等を発生させた企業に対しては、改善計画の策定とその取組を企業全体に定着させるための助言・指導を実施することを追記しております。
その下、「2 調査研究等」の「(1)過労死等事案の分析」において、重点業種等を中心に、ハラスメント防止措置の状況についても収集・分析を行うこととしております。また、労災保険の特別加入者の対象として、芸術・芸能従事者及びフリーランスを追記して、過労死事案の蓄積状況に応じて分析を行うこととしております。
26ページ、「(2)疫学研究等」の表題を「予防研究・支援ツールの開発」に変更しております。そして、最後の段落になりますが、ここに記載された様々な調査研究を予防研究として総括するとともに、過労死等事案の分析の成果、最新知見に基づき、過労死等防止対策の支援ツール開発と効果検証等を行うことを追記しております。
その下、「(3)過労死等の労働・社会分野の調査・分析」で、主要な項目の経年的な変化等の比較検証、状況に即して詳細に検証する項目も考慮すること、また、働き方や就労環境、属性等に焦点を当てた調査も行うことを追記し、27ページ、社会情勢等も踏まえ調査対象を選定することを追記しております。
その下、「(4)結果の発信」について、昨年開設した過労死等防止調査研究センターの専用ポータルサイトを通じて情報を公表すると記載しております。
28ページの「3 啓発」の「(1)国民に向けた周知・啓発の実施」で、過労死等を発生させた企業等に対して過労死等防止対策推進シンポジウムへの参加を促すこと、過労死等の状況について国際社会に発信することを追記しております。
その下、「(2)大学・高等学校等における労働条件に関する啓発の実施」です。29ページ、受講生徒数が増加するよう努めることを追記しております。
30ページ、「(5)勤務間インターバル制度の導入促進」で、シンポジウムを通じて制度導入促進の機運を醸成すること、制度導入の効果を期待して産業医にインターバルの効果などを周知すること、必要性を感じていない企業に対してメリット等、同制度の意義を周知することを追記しております。
31ページ、「(7)メンタルヘルス対策に関する周知・啓発の実施」で、事業主団体を通じた助成制度になったことを踏まえて記載を変更し、32ページ、健康保持増進のための指針を追記しております。
33ページですが、(9)のタイトルを「多様な働き方への対応」にして、適切な労務管理が求められるテレワーク、副業・兼業、取引の適正化が求められるフリーランスについて取組を推進していくことを追記しております。
その下、「ア.テレワーク」を記載して、「イ.副業・兼業」では、複数事業場で働く方の労災保険の制度変更による適切な制度運営について記載しております。
34ページ、「ウ.フリーランス等」で、フリーランス・事業者間取引適正化等法の周知・履行確保と、「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」に基づく取組、特定受託事業者の労災保険特別加入による環境整備などについて追記しております。
34ページの「(10)商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進」に、35ページ、下請企業等への「しわ寄せ」防止に向けた周知・啓発の取組を行うことについて追記をしております。
その下、「ア.トラック運送業」について、36ページに改善基準告示や価格転嫁、賃上げ等の取組について浸透を図ること、トラックGメンによる取引環境の適正化を進めてきたこと、そして、適正な運賃導入や物流効率化を進める法案に基づく取組を推進することを追記しております。
その下、「イ.教職員」について、37ページになりますが、中央教育審議会において検討が進められており、教育の質の向上、学校における働き方改革などを一体的に進めることを記載しております。
その下、「ウ.医療従事者」について、38ページに病院長等への労務管理者マネジメント研修のこと、医師の働き方改革についての普及啓発事業、看護師等の働きやすい職場づくりについて追記しております。
39ページ、「エ.情報通信業」について、IT業界の働き方・休み方に関する対応策や事例集等の周知、職場環境の改善を追記しております。
その下、「オ.建設業」について、時点修正をしつつ、上限規制が適用されたことも踏まえ取り組むことを追記しております。
40ページ、(11)の「ア.若年労働者への取組」の中で、労働関係法令の周知は事業主の責務であることを追記しております。
41ページ、「(12)公務員に対する周知・啓発等の実施」で、国家公務員の勤務間インターバル確保に係る努力義務規定に基づく取組推進、42ページ、テレワークに係るガイドラインの周知徹底を行うことを追記しております。
その下、「4 相談体制の整備等」の「(1)労働条件や健康管理等に関する相談窓口の設置」で、43ページ、カスタマーハラスメント、就活ハラスメントに関する相談受付、「こころの耳」による労災保険特別加入者を含めた相談対応について追記しております。
44ページ、「(5)過労死の遺児のための相談対応」で、過労死遺児が随時相談できる環境を整えることを追記しております。
その下、「5 民間団体の活動に対する支援」の「(2)シンポジウム以外の活動に対する支援」で、遺児のニーズを踏まえた必要な対応について追記しております。
45ページから「第4 国以外の主体が取り組む重点対策」になります。
46ページ、「2 事業主等」について、会員企業等に対し過労死等防止のための必要な支援や情報提供に努めることを追記しております。
その下、「(1)経営幹部等の取組」について、47ページ、労働関係法令の周知は事業主の責務として、若年労働者への研修を通じて過労死等の未然防止に努めること、また、ハラスメント防止対策について、アンガーマネジメント研修を例示して、確実に取り組むことを追記しております。
47ページの下、「3 労働組合等」について、48ページ、労働関係法令の周知・啓発とともに、労働関係法令が適切に運用されているかの定期的な確認について追記しております。
同じページ、「5 国民」について、睡眠状況を始めとした生活スタイルの見直し、また、発注者や消費者の立場で、働く方の過労死等を防止することについて理解と協力に努めることを追記しています。
その下、「第5 過労死等防止対策の数値目標」です。49ページ、公務員についても、目標の趣旨を踏まえ、各職種の勤務実態に応じた実効ある取組を推進することを追記しております。
そして、1の労働時間の目標年を令和10年として、特に重点業種等のうち週労働時間60時間以上の雇用者の割合が高いものについて重点的に取組を推進することを追記しております。具体的な業種等は記載しておりませんが、現状から考えられるものは後ほど資料3で、データでお示しします。
2の勤務間インターバル制度の目標年も令和10年として、勤務間インターバル制度を導入する必要を感じないと回答する企業を除いた導入企業割合を20%以上とすることを追記しております。制度導入の必要がない企業への導入を推進すべきではないかとの御意見もあり、また、一方で、長時間労働の多い業種への導入割合を増やす必要があるといった御意見もありましたので、これまでの目標は残しつつ、新たな目標を追加してはどうかと考えたところです。
3の年次有給休暇も、目標年を令和10年としております。
4から6のメンタルヘルス関係の目標は、第14次労働災害防止計画に合わせた目標としております。
なお、前大綱の数値目標である仕事上の不安、悩み等の相談先がある労働者割合についても、継続的に注視するとしております。
51ページからが資料3となり、52ページ、53ページで、週60時間以上の雇用者の割合で令和5年の数字を掲載しております。全体としては8.4%と、令和4年より0.5ポイント減少しております。数値目標の1で追記した重点業種等のうち60時間以上の雇用者の割合が高いものについては、この8.4%を超えるものをイメージし、現状では、53ページの建設業、54ページは重点業種等の中分類でのデータですが、左上の自動車運転者、その下の教職員、医師、外食産業などが重点的に取り組むものと考えられるところです。
55ページから58ページは、前回の協議会における主な御意見です。
59ページ、勤務間インターバル制度の導入状況に関するもので、左下のグラフ、ピンク色の線が全体の割合で、令和5年が6%のところ、目標15%というものを残しつつ、青の線の制度導入の必要性を感じないと回答した企業を除いた導入企業割合が10.5%となっておりますので、その目標を20%としました。
次の60ページ、61ページは、常勤勤務医の週労働時間区分別の割合で、週60時間以上の者の割合を示す赤いラインの右側、令和4年の割合を足すと21.2%という状況です。医師に関する労働時間のデータは、今後も3年ごとに調査されると聞いております。
資料の説明は、以上とさせていただきます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、今の大綱見直し案全体につきまして、御意見をいただきたいと思います。御意見をいただくに当たりましては、見直し案のこの部分の記載はこのように修正あるいは追記したほうがよいという形で、具体的にお考えをお示しいただきますようお願いいたします。御意見のある方は挙手をお願いいたします。
渡辺委員、お願いします。
○渡辺委員 御指名ありがとうございます。過労死を考える家族の会の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。
私は過労死を考える家族の会で、子ども達、遺児の活動にずっと携わっているのですけれども、今回の見直しの中で意見もいろいろ出させていただきました。20ページや44ページに「必要な相談対応を行う」とか、「遺児が随時相談できる環境を整える」という文言を入れていただきまして、また、44ページの(2)で「遺児のニーズを踏まえた必要な対応を検討する」という文言も入れていただきました。子供たちは発達段階ですので、大人と同じように相談の窓口があって1対1で相談するという方法もあるのですけれども、それ以外に仲間と一緒に活動しながら心理的なケアを行っていくという活動もとても大事です。今回このような文言を入れていただいたおかげで、いろいろと幅が広いメンタルケアの活動ができると思います。どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
それから、若年層への取組ということで意見を出させていただいたのですけれども、今回の資料ですと40ページ、41ページにあります。前回も若年層の取組ということで、本当に若い人が被災しているので何とかしてほしいという意見を出して、ここに取り入れていただいたのですけれども、令和4年の白書などを見ると、若年層への被災の事例がいろいろ出ていまして、件数的には減っておりません。この取組で令和3年から今回の案になったところで多少文言は増えているのですけれども、大きく取組が変わるとか、新しく何かを入れるというのはありません。若年層に関しましては、もう少し具体的にこのように取り組んで必ず減らしていくのだということが分かるような文言を入れていただけるとありがたいと思います。
41ページの最後のところに「事業場と労働者の家族が連携したメンタルヘルスケアの取組事例等を周知する」と出ているのですけれども、これはぜひいろいろな事業所の特に上司の方には知っていただきたいことです。ここに文言を入れていただいたということで、具体的にぜひ動いていただきたいと希望いたします。
それから、脳・心臓疾患の件数で、14ページなのですけれども、今回令和4年度の白書を見ますと、脳・心臓疾患の認定件数は実は増えております。ただ、コロナの影響がありまして、どのように影響が出ているのかというのは、このデータでは出てこないので、分からないと思います。事実だけを述べるとしたら、脳・心臓疾患の件数は増加しているということになるのですけれども、今回特別コロナなどがありますので、そういうことが分かるような文言を入れた上での横ばいですね。事実だけ見たら増加ですので、そういうことを踏まえての横ばいと考えられるみたいな文言を入れていただけるとありがたいと思いました。
それから、インターバル制度についてなのですけれども、今回の資料ですと30ページにあり、私たち遺族の会は、過労死をなくすために、インターバル制度はかなり有効だと期待をしております。こういうインターバル制度の導入割合や目標値などをいろいろ書いていただいているのですけれども、企業の一部の方がインターバル制度を知っているとか取り入れていることも、働く労働者の管理をする上では非常に大事なことです。国民一人一人にも、インターバル制度という考え方があって、働くことと休むことは両方でバランスを取りながら幸福な働き方をしていくという意識を周知していただきたいということで、インターバル制度の仕組みや休養の大切さを国民に訴えるという文言をどこかに入れていただけるとありがたいと思いました。
25ページなのですけれども、「過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策」で、今回これを初めて入れていただきまして、いろいろ書いていただいて、私たち大事な大事な家族を失った遺族としては、もう二度とこのようなことを起こさないという再発防止ということが、亡くなった人たちに対するせめてものできることかと考えております。企業さんや厚労省さんでこのように再発防止対策のやり取りを強化して入れていただけているということだと思うのですけれども、できましたら過労死をしてしまったこの遺族に対しても、会社がどのような再発防止対策を出したのかを教えていただき、遺族のあれだけ真面目に働いていたのに亡くなるような職場の体制があったという思いなどを事業所に伝えて、そういう内容を再発防止にぜひ役立てていただきたいという希望があります。企業に対する過労死の再発防止というところで、遺族の意見も取り入れていただけるような仕組みや文言を考えていただけたらと思っております。
最後になりますが、28ページの「啓発」についてで、過労死のない社会を目指していくということをずっと私たちは訴えております。「11月の過労死等防止月間を中心として」という文言があるのですけれども、私たち遺族としては、年間を通じて過労死のない社会の実現を目指して、国と国民と協力して、そういう社会をつくっていきたい。そのためにこの白書や防止法という法律を制定して頑張っているので、そういう文言も入れて、防止月間を中心に頑張るのはもちろんなのですけれども、防止月間以外のときもみんなで協力して過労死のない社会を実現していきましょうという文言を入れていただけるとありがたいと思います。
個人的な意見ですので、この大綱に入れ込むのはいろいろとほかの兼ね合い等もあって大変かと思いますけれども、過労死をなくす社会をつくるという遺族の思いを反映させていただきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
岩城委員、お願いします。
○岩城委員 弁護士の岩城でございます。
2015年から大綱がつくられて、今回の改正で4回目になると思います。4回のこの議論に参加させていただいて、この間の記述が非常に詳細になってきたり、いろいろな政策や課題が進んできているということ、感慨深く思いますが、その一方では、ある意味で非常に深刻化している、また、広がっているという側面もあって、複雑な思いであります。
今回の大綱の素案について、非常に詳細な記述が入ったり、また、いろいろな工夫が見られて大変ありがたいと思っておりますが、私のほうで今日の資料の134ページ、135ページに少し意見要旨を書かせていただきましたが、大きく2点要望したいと思っております。
1つ目は、労働時間の適正把握ということであります。労働時間を客観的に把握しなければいけないというのは、これまで通達などで示されてきているわけですけれども、それが十分なされていない。自己申告制がいまだ大半であって、そういうところが過労死の温床になっていると思います。時間外労働の上限規制や長時間労働の削減に向けた取組、過重労働による健康障害の防止等、詳細な記述があるのですけれども、労働時間の適正把握はその大前提であり、そこが十分されていないと実効性を持ち得ないと思います。そこで、労働時間の把握は客観的に行われなければならず、自己申告は原則として許されないのだということを、大綱の中にも明記していただきたいと思うわけであります。
もう一つは、労働時間からの恣意的な除外という問題、これも大きな問題で、「在社時間」という言葉を使ったり、「自己研さん」などという言葉を使って、実態は労働時間であるのに労働時間としてカウントしないという新しい問題が広がっていると認識しております。この点にメスを入れないと各種の対策は実効性を持ち得ないのではないかということで、「労働時間外し」を許さないということを明確にしていただければと思っております。
これに関連して、現在の労働時間の認定方法について、厚労省の解釈自体が非常に狭いものになっているという点が関係しているのではないかと。あくまで過労死の防止という観点では、疲労というものへの影響が重要ですから、そういう観点で労働時間の認定を見直していただきたいと思っております。
大きな2つ目に、啓発の問題であります。1つ目が、啓発事業ですね。この間ずっと200回、これは200校という意味ではなくて200こまということですね。1つの学校の学年でクラスが3つあったら3つとカウントされております。そういう意味で200こま弱という数字は少なく、また、人数でいえば1万6000人前後しか受講していないと。学生や生徒の数は数百万人いるわけですから、1%にも満たないということであります。一人一人の生徒や学生が社会人になっていくわけですから、その一人一人に着目して、一度はこういった事業に触れる機会を持ってもらう観点からの制度設計が必要ではないかと思っております。少なくともここ数年間、3年の間に、年間1,000こま、10万人程度の受講を目指すべきであると。これでも数%にしかすぎないと思います。弁護士や過労死遺族の講師の問題がありますけれども、これについては我々も努力したいと思いますし、また、ビデオなどによってそれを代替するといったことで対応していくべきではないかと思います。
もう一つの啓発は、職場の関係者に対する啓発の一環として、入社時研修をきちんと位置づけるべきではないかと思います。学生などを終えて社会人になった際に、きちんとした過労死防止の必要な知識や制度について研修することが大事ではないかと思います。
もう一つが、管理職に就任するときの研修であります。管理職になりますと、部下の労務管理を行う立場となる一方で、自らも過重労働に陥りやすいというのが私たちの認識であります。管理職に就任する際に、過労死防止に関する研修を行うことを、今後意識的に制度化していく必要があるのではないかと思います。
私からは以上です。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
工藤委員、お願いします。
○工藤委員 ありがとうございます。神奈川過労死等を考える家族の会の工藤でございます。よろしくお願いします。
私からは手短に4点ほど述べさせていただきます。
まず、大綱の改正について、19ページの企業に関して、過労死等を発生させた企業にシンポジウムの参加を促したり、また、25ページの再発防止策など、とても進んできているという感じを受けております。ありがとうございます。
それに関しまして、公務員でも同様の取組があるのかということを思いました。立てつけは違うかと思いますが、全体として公務員に対する記述が薄いように感じております。また、数値目標に関しましても「公務員についても、目標の趣旨を踏まえ」という文言がありますけれども、具体的にこの数値目標にどのように対応していくかということも、記述はされないかもしれないですけれども、お伺いしたいところです。
それから、52ページの数値目標の進捗状況や今後11月の例えばシンポジウムなどでこういう表で発表する際にも、表のどこかに「公務員についても」という文言を入れていただくことで、公務員の方への意識づけなども強くなると思いますので、御検討のほどお願いしたいと思います。
また、再発防止策に関しても、防止法の中では中心課題でありますので、ぜひ公務員について厚い記述をお願いいたします。
2点目は、今回大綱の見直し、改正で、勤務間インターバル制度のことがとても重要視されていますけれども、こちらは国家公務員については努力義務化という記述がありますけれども、地方公務員について記述がないということで、これは対象外ということになるのかどうかということで、勤務間インターバルにすごく重きを置かれている企業と公務員の差がすごくあるのかと感じております。
3点目が、重点業種としての教職員について、今まさに中教審で議論されていると思います。長時間労働が多い職場でもありますけれども、精神疾患の離職者が年々増加しているということは、単に長時間労働だけの問題ではないと考えますので、ここは私もいろいろと相談をいただくのですが、例えば来年度からの教職員が足りないとか、タイムカードを早く押させられるとか、いろいろ切実な声が多いということもありますので、大綱の改正のときに、具体的な環境整備や労働安全衛生体制の整備、相談体制の充実など、ぜひ過労死等防止の観点からの記述を厚くしていただきたいと思います。
4点目、啓発事業についてなのですけれども、この啓発事業が終わった後の成果についての検証という点を入れていただくことはできないかということをお話ししたいと思います。
以上になります。ありがとうございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、木下委員、お願いします。
○木下委員 弁護士の木下でございます。
私は前回の委員会でもハラスメント対策に重点を置いた対策を考えていただきたいということを意見として申し上げさせていただきました。今回の大綱案では、ハラスメント対策について種々の記載があるのですけれども、ここはぜひ直していただきたいと思っておりますのは、前回の大綱を決めたときに、2019年6月にILO190号条約ができたということで、条約ができてその後にこの大綱が決まったのですが、その時点ではまだこの条約に対する国の対応については習熟しているとは思えませんでしたので、前回の大綱では資料ですと33ページ、「国が取り組む重点対策」の「啓発」の中の8番のハラスメントに関する周知・啓発の実施の中でこのILO条約ができていますよということに触れています。
この時点ではそのような触れ方も一つの考え方だと思うのですが、それから既に5年がたっておりまして、前回周知の中に入れたものを、今回ではILO190号条約を国として批准をするという方向性をきちんと出すべきではないかと考えておりまして、このILO190号条約の位置づけについては「啓発」ではなくて「第3 国が取り組む重点対策」の中の1の「労働行政機関等における対策」の中に、ここにも(4)としてメンタルヘルス・ハラスメントというところがございますので、こちらに移していただいて、国として190号条約の批准を目指すということをぜひ宣言していただきたいと思っております。
日本のハラスメント対策は、法整備がセクシャルハラスメントから段階的に進んだこともあって、いろいろな法律の中にばらばらに出てくるということで、私は企業に対するハラスメント対策のセミナーなどを多数行っているのですが、とても分かりにくい。企業も何をしたらいいのかが分からなくなってしまう。それぞれのハラスメントごとに別々の対策を取るのですかなどということを言われてしまうのですけれども、そうではないのですよと言うと、どうしてばらばらの法律で決まっているのだろうということも言われてしまいます。ハラスメント対策が国際的な人権問題であることを明記するためにも、ぜひ190号条約について、前回の大綱と同じ扱いで変更がないというのは消極的ではないかと思いますので、御検討いただきたいと思います。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
清山委員、お願いします。
○清山委員 今の木下委員のハラスメントのILO190号条約の批准に向けた国の一層前進させる動きを明記していただきたいというご意見に賛成します。学会からもそのような意見が出ています。できればそのためにまず批准に向けた課題が何かをきちんと明らかにするということと、スケジュールについていつの批准を目指して、批准に向けた対応をしていくということが明記されるといいと思います。
それ以外のところで言わせていただきますと、重点業種の一つの学校の箇所について、これまでの大綱では働き方改革についてどのようなことをするかが具体的に書いてあったのですけれども、その部分がもう大体進められているからということでしょうか。削られてしまって、中教審が今、このようなことを検討しているということしか書かれていません。ここの2つの働き方改革のスタンスには大きな違いがありまして、前回の大綱のときには労働時間を減らすための働き方改革が明瞭に示されていたと思うのですが、今度のものは中教審が教育の質の向上に向けてということを言っていますので、そちらが優先されているように見えるのです。しかし、大綱としては、教育の質を重視するスタンスではなく、教員が健康で安心して働き続けられるという視点からの、働き方改革を明確に打ち出したほうがいいのではないかと思いました。そこが気になったところです。
次に、労働時間の把握の仕方がいろいろな分野で出ていると思うのですけれども、特に今度の重点業種の医師あるいは学校の先生に関しては、大綱で随分働き方の見直しということを主張されて書かれたからだと思うのですけれども、結果的に前進したと思います。部活動に関する業務など、労働時間の把握の際に除外されていたものがきちんと労働時間の中に含まれるように大きく転換してきました。そういうことがほかの業種でも起きていると思うのです。
特に医師に関しては、自己研さんに入るかどうか。さっき岩城委員が言われていましたが、何をもって自己研さんなのかがすごく問題になると思います。特に大学病院などに勤務する若い医師の方たちが共同研究でやっているものについてそれは自己研さんなのでとか、手術の前の最新の治療をするために自分で練習していたらそれは自己研さんですといって外していいのかという問題があると思います。そういう労働の態様や職位など、その方たちの状況をきちんと認識して把握することがすごく大事だということが、どこかで見える形にしていただきたいと思いました。今でもある程度書かれてはいますけれども、抽象的なので、その辺りが外れてしまうのではと懸念しています。
次に、ハラスメントの具体的な調査に関して、ページ25の下のほうとか、26ページの(3)に当たるところです。ハラスメント防止措置体制との関係性を記入されているのですけれども、もちろん防止措置があったかどうかで労災の起き方にどういう違いがあるかを検討するのはとても大事なことで、私たちも意見として出しているわけなのですけれども、同時に、若い人たちにいろいろな職種でハラスメントで精神疾患がすごく増えている状況を鑑みると、長時間労働だけ書くのではなくて、ハラスメントもそこに独自の項目で入れて、長時間労働とハラスメントの組合せによる労災案件なども分析するのが良いと思います。カスタマーハラスメントも含めて労働環境、労働の態様に関する考慮が、労災や過労死等の認定の際に必要になってくると思います。調査対象として、過労死案件あるいは過労死案件かどうか疑われるようなものについても、こうした視点も入れて分析することが必要だと思います。ぜひそこのハラスメントの防止措置だけではなくて、ハラスメントがその職場にあったのではないかと疑われるようなもの、往々にして、その職場ではそれが当たり前なのでハラスメントだと認識しないのですけれども、他の業界や通常の厚生労働省の指針などいろいろなものによるとハラスメントであると認定されることもあるので、その辺りは少し緩やかに調査をしたほうがいいと思いました。
「高年齢者」という言葉がいろいろなところであると思います。高年齢者というと厚生労働省では60代前半層を指すのではないかという気がしますが、違ったでしょうか。今、60代後半層の男性は相当労働力率は高いですし、男女ともに上がってきていることを鑑みると、もし高年齢者が60代後半以上の世代も指すのであれば、そこは「高齢就業者」というように文言を変えると良いように思います。
最後にもう一点、企業の役割というところで、過労死案件が起きたところなどは全社的に取り組むとか、企業に対して相当いろいろなことがある程度書き込まれていると思うのですけれども、先ほど工藤委員が公務について言われましたが、例えば学校現場で過労死案件が起きたときに、前回言いましたけれども、それは校長の責任だけ追求するのではなく、教育委員会全体や地方公務全体の取組としてトップが取り組むことが必要なのではないかと思います。企業だけではなくて、公務に対しても、そういう取組の必要性や責任について対象となるように入れていただきたいと思いました。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
川人委員、お願いします。
○川人委員 弁護士の川人でございます。
今回の防止大綱の改正については、とても内外からも注目され、重要になっていると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
私は意見書の要旨をあらかじめ提出しておきましたが、ここでは2点発言させていただきます。
1点は、先ほどから出ておりますハラスメントに関する問題です。大綱案の25ページで「調査研究等」の中に「過労死等事案の分析」とあります。この中に「ハラスメント防止措置の状況」という言葉はあるのですが、全体としてハラスメントに対する調査研究が、率直なところ、まだまだ我が国においては遅れていると、そのように思います。このハラスメントに関して、いわゆる厚労省の令和2年の告示でハラスメントの定義が行われ、ハラスメントの6類型という6つのハラスメントの類型も提示されたわけです。この点はとても重要な前進だったと思うのですが、では、そのような厚労省告示が出てハラスメントの定義も明確にされた中で、そのハラスメントの実態についてどうなっているかについて、必ずしも全職場を対象にしたものが実施されていないと理解しておりまして、今回の調査研究の方針の策定に当たっては、現在のハラスメントの実態がどういう状況にあるのかを詳しく調査し、それを統計として発表していくことの重要性について、ぜひ大綱の中に入れていただきたいと考えております。
どのようなハラスメントの対応が多いのか、あるいはハラスメントの発生原因、どういう状況から発生したのか、その防止対策はどのように行われているのかなど、ハラスメントに対する基本的な情報を、全職場あるいは各業種、職種ごとにも、もっと広げて蓄積していく必要があると思うのです。その場合に、民間にあるハラスメントの研究所などとも連携といいますか、力を借りながらでもいいと思いますし、いずれにしても現代の健康を害する2大要素として長時間労働とハラスメントがある、過重労働とハラスメントがあると理解しております。そういう意味で、このハラスメントに関する調査研究を抜本的に強化していくことを大綱の中に組み入れていただきたいと、そのように考えております。
もう一つは、脳・心臓疾患については、いわゆる自殺における警察庁統計のようなものがありません。このために、労災申請に上ったものについてのみその実数がある程度把握されているのが実情です。ただ、脳・心臓疾患の過労死あるいは過労性疾病については、私どもの相談活動を通じても決して減っているとは思えない。そういう中で、職場の脳・心臓疾患の全体の把握について、様々な社会保険関係の組織などとも連携しながら、ぜひ調査統計をより充実する方向で進めていただきたいと。この点も何らかの形で調査研究のところで大綱の中に組み入れていただきたいと思います。
以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、西尾委員、お願いします。
○西尾委員 ありがとうございます。UAゼンセンの西尾でございます。
先ほど木下先生からありましたILO190号条約の取組を強化すべきであるという点について賛同いたします。
その上で、ハラスメント対策について発言させていただきたいと思います。カスタマーハラスメントの防止対策について、これまでも本協議会において発言してきました。顧客などからの著しい迷惑行為に対し、労働者、公務も含む多くの労働者がこういったハラスメントに悩んでいます。この間、様々な運動が進んだ結果、カスタマーハラスメントが市民権を得てきていると認識をしています。この協議会でも共通の課題認識に至っているのではないかと捉えています。現在、東京都で条例化するという具体的な話になってきていますし、ほかにも幾つかの自治体で同じような動きがあると把握をしています。そのような中で、この大綱が次の3年間を視野に入れるとすると、カスタマーハラスメント防止の機運はさらに高まるものであると考えています。
23ページの(4)に「メンタルヘルス対策・ハラスメント防止対策」の記載は、事業主に対する防止措置が義務化されている、パワハラとセクハラのみの記載となっていますので、「カスタマーハラスメント」も追記いただくことを検討いただきたいと思います。政府全体による対策の強化、それから、一層の周知・啓発にもつながりますので、ぜひお願いをしたいと思います。
さらに、2023年の9月には、心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改正され、心理的負荷評価表にカスタマーハラスメントも追加をされています。そこで、メンタルヘルスに関する調査などにおきましても、カスタマーハラスメントによる心理的負荷について調査研究を進めていただきたいと思います。
もう一点、46ページの「経営幹部等の取組」というところですが、「アンガーマネジメント研修」という記載がありますが、パワーハラスメントの防止策はアンガーマネジメント研修だけではないと考えています。ですので、「アンガーマネジメント研修など、パワーハラスメントの防止策など」と修正をしていただきたい。
それから、「労働者に対する労働関係法令の周知」という記載について、過労死などの防止には、管理職が率先して労働関係法令を理解することが重要だと考えています。労働関係法令の周知は労働者だけを対象にするということではなく管理職層も含めることも必要であることから、「管理職や労働者など」と明確に記載をいただく修正をお願いしておきたいと思います。
以上、発言させていただきました。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、寺西委員、お願いします。
○寺西委員 ありがとうございます。過労死家族会の寺西でございます。
私から大綱の見直しにつきまして6点意見を述べます。
1つ目は、22ページと27ページに関してですが、過労死等をめぐる調査・分析結果の活用についてです。過労死等防止対策推進法が成立して10年を迎えます。この間、大綱の取組は進んできまして、毎年白書に報告されています。これまでも過労死等の調査・分析の結果で得られた豊富な知見を踏まえて、これを広く周知して、リスクのない安全に働ける労働環境の改善に役立ててもらい、実効性ある対策に生かすことを求めます。
2つ目は、30ページの勤務間インターバル制度導入の義務化についてです。長時間労働と健康リスクが高い事業場へ勤務間インターバル11時間以上を義務づけていただきたいものです。例えば36協定の特別条項で月80時間という過労死ライン超えで締結している事業場や交代制勤務、深夜労働、不規則勤務、公務労働の労基法33条の対象者、また、教員など、恒常的な長時間労働で大変リスクが高い労働環境の職場は義務化されることを求めます。
3つ目ですが、25ページについて、過労死等の実態把握による調査・分析についてです。先ほど川人委員もおっしゃいましたが、自殺者の統計は警察庁自殺統計データによっておおむね把握できますが、脳・心臓疾患の被災者は労災申請者数でしか把握できておらず、健康被害による全体像がつかめないことで、過労死等の全容解明がいまだ不明であり、労災申請は氷山の一角と言われています。今後は健康被害による休職者や中途退職者及び在職死亡者など、これまでカウントされてこなかった健康被害を受けた労働者についても、過労死等防止対策の観点から包括的な調査・分析が必要と考えます。
4つ目は、時間外労働の上限規制について、これは21ページ、35ページ、37ページ、39ページ、41ページと、2024年問題に関してですが、働き方改革関連法の施行から5年猶予されてきた業種が今年4月から導入されます。いずれも独自の上限時間が設定されているわけです。建設事業は2ないし6か月平均で月80時間以内、単月100時間未満となっていますが、災害復興の事業に関しては適用されません。自動車運転業務についても36協定の特別条項が締結されれば年960時間可能になります。また、通達によれば、タクシー・ハイヤー・トラック・バス運転者それぞれ違いがあって、拘束時間などが長いものがありますので、これについても懸念する上限時間になっています。勤務医につきましては、原則960時間としながらも、地域医療は例外的に2035年まで年1,860時間可能としました。家族会の勤務医の過労自死事件については、22年に26歳という若さで勤務医だった方が時間外労働が月207時間と、これまた3か月間無休という常軌を逸脱した激務の末、痛ましい亡くなり方をされた事件が、皆さんの御記憶に新しいと思っております。年1,860時間という過労死ラインの2倍の時間外労働が可能になれば、また同じ事件が繰り返されることで、医師の命は守れないことになります。こうした原則を定めていても、業種によって独自に適用除外があるために原則が原則でなくなり、ダブルスタンダードになるために、命が守られていない。安全に働ける構造改革が必要になると考えます。
5つ目は、労働時間管理の把握義務についてです。労基法によって使用者は労働者の労働時間管理を客観的な方法で適正に管理する責務を負っているにもかかわらず、労働時間を自己申告制にしています。そうした事業場が多くあることで、実際の労働時間よりも過少申告することが慣例になっています。こうした企業風土があって、サービス残業や隠れ残業の温床になっているところです。このような事業所で被災すると実際の労働時間が証明できないことで労災認定されず不支給となって救済されないことになります。家族の会では実際にこのようなケースで多く被災を受けた方が発生しているところです。また、長時間労働の記録があっても上司からの残業命令が確認できない場合は、業務遂行による時間外労働であっても自己責任にされ、過小評価の対象にされてしまいます。このような労働環境で過労死すると、遺族に立証責任が課せられるために、使用者側の協力がなければなすすべはありません。泣き寝入りする人が多くあるため、違法労働が野放し状態になっています。こうした現状を踏まえて、自己申告制は過少申告を強要する実態があるため、使用者の労働時間管理の客観的な方法での適正把握の徹底強化を求めます。
最後に、46ページのハラスメント防止対策・コンプライアンス対策の義務化についてです。2022年にどちらも義務化されましたが、企業においては法令遵守よりも職場慣行や慣習が優先される企業風土が根強くあります。こうした職場が多いことで、何も対策をしていないというようなアンケートの回答が多くあることです。ですから、ハラスメント防止対策の義務化への意識改革、そして、コンプライアンス対策義務化への意識改革、こうした企業向けの啓蒙活動が必要と考えます。
このような文言を本日も個人の意見として出させていただいていますので、できるだけ反映していただきますようお願いをいたします。
私からは以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、上野委員、お願いします。
○上野委員 私からは3ページの数値目標について2点ほど意見を述べさせていただきます。
まず、メンタルヘルス対策として「仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者割合」と加筆いただいていることについて、前回の協議会での労働側の発言が反映されたものと認識をしています。
もう一点が、勤務間インターバルについて、他の委員からも多く発言がありましたが、必要性を感じないと回答した企業を除いた導入企業割合を20%以上とするという目標設定は一定意義があるものと思います。一方で、必要性を感じないと回答した企業であっても、インターバル制度の導入が努力義務であることを踏まえれば、制度導入に向けた積極的な検討がされるべきであります。そのような企業に対しても制度の周知・啓発を強化するなど、一層の取組をお願いしたいと思います。具体的には昨年の12月に厚労省が発表しております健康づくりのための睡眠指針2023において、個人差はあるものの、成人においてはおおよそ6~8時間が適正な睡眠時間ということが表記されていることや、この間、この協議会でも制度の導入に前向きでない企業に対して制度導入促進が図られるようにという趣旨の意見が多く出されてきたことを踏まえて、制度の認知度、導入を強力に推進していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
今回示された大綱の見直しの素案ですが、基本的には本協議会における発言が一定反映されていると受け止めています。
その上で、他の委員からも意見がありました勤務間インターバル制度の導入促進について発言したいと思います。厚労省の令和4年就労条件総合調査によると、勤務間インターバル制度を導入していない理由に「夜間も含め、常時顧客や取引相手の対応が必要なため」とする回答が一定割合あります。そのような回答があることを十分理解した上で、企業、業種ごとの特性を踏まえ導入を阻害する要因の分析を行い、課題解決を進めていくことが重要だと考えています。勤務間インターバル制度の導入促進に向けた取組の一層の強化をお願いしたいと思います。
また、今回、産業医等に対して勤務間インターバル制度の内容・効果の周知を図ると記載がありますが、専属の産業医の選任が義務づけられている事業場以外は、月に1回程度数時間企業を訪問するような契約が多いと認識しています。事業主の意識が高く、産業医と事業者とのコミュニケーションが十分でない企業の場合、産業医から制度導入を幾ら推奨したとしても導入は進まないと考えます。好事例の収集・周知にとどまらず、労働者の健康確保の観点からその企業の意識づけや、導入促進が図られるような仕組みづくりが必要であることをぜひ記載いただきたいと思います。先ほど発言があったように、国民全体が休息・睡眠を取ることの重要性を認識することも重要と考えます。
それから、先ほどほかの委員からも意見がありましたが、時間外労働の上限規制の適用猶予職種であった医師、運輸業、建設業における4月からの対応について、商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進に触れていただいてますが、時間外労働の上限規制の適用後に法令がきちんと遵守、運用されていることを確認することが重要だと考えております。今後の議論を進めるためには、大綱に商慣行の変化、勤務環境の整備状況、企業における労働時間管理が適正に行われているか調査、把握をするといった旨を追記していただくことが重要ではないかと考えています。上限規制適用後の企業を取り巻く環境や労働時間の状況を詳細に把握して、その後の対策をしていくことが重要ですので、御対応をお願いできればと考えています。
以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
私からはハラスメント防止について一言申し上げたいと思います。
24ページの2つ目のパラグラフ、「全ての事業主において」から始まるところでございます。「ハラスメントの防止に向けた取組が進められ、ハラスメントがあってはならないという方針の明確化及びその周知、相談体制の整備等の措置が講じられるよう指導等を実施する」とありますが、ハラスメント防止の取組みとしては、やや淡泊な感じがするというのが率直なところです。
厚生労働省の令和4年度の雇用均等基本調査では、ハラスメントがあってはならない旨の方針の明確化、周知に取り組んでいる企業が75.5%、相談窓口担当者への研修の実施が39.7%と、取組状況にばらつきがあり、しっかり取り組んでいればハラスメントを防止できるケースもあるのではないかと思うところです。
過労死事案についての原因分析も重要ですが、加えて、あまねく企業におけるハラスメント防止の取組状況の調査・分析を定期的に行い、必要な支援、指導、効果的な周知につなげていくPDCAを回すことも大切だと思っております。具体的な案を御提示できず申し訳ございませんが、そうした観点からの記載の追加をお願いできればと思っておりますので、御検討のほどよろしくお願いいたします。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ありがとうございます。
2点です。1点目は、インターバル制度です。全体としての導入目標と必要性のある企業の導入率の目標ということで、今回後者が追加されました。これは、導入率の向上を促し、実態の改善においていい目標ではないかと思います。他方で、必要性を感じていないところの企業につきましても、客観的に見て確かに短時間であることから必要性のないという認識が妥当なところもあるかと思いますが、そうではなく、そもそも必要性を感じていないところの意識改革から必要であるところもあることが考えられます。実際に、載せていただいた調査データを見ましても、必要性がないと感じているところでも長時間労働は発生しています。そうした場合、意識改革が急がれると思いました。
したがって、書きぶりなのですけれども、インターバルのところで、必要性がないと感じている企業については、その中で長時間労働であるところに関しては制度導入の検討を促すというような文言など、強めの言葉を入れていいのではないかと思ったのです。現在は、導入についての機運を高めるとか、導入のメリットがあることを知らしめるというような記載であるのですけれども、今回必要性があるところの導入数値目標があることで、必要性がないと思っているところに対してのインパクトが弱まる可能性があると思いました。そのため、少し補強した文言を入れてはどうかと思いました。
2点目は、高年齢者についてです。これは先ほど清山委員からも御指摘がございましたけれども、高齢者の就業は非常に増えてきています。2021年の改正高年齢者雇用安定法の施行で、70歳までの就業が努力義務になり、今、社会的に、高齢者が働くことが推奨されています。ここのところの記載が前回と全く同じなので、このような社会的背景を踏まえて、また、若年者や障害者のところの書きぶりと比べましても、41ページですが、格段に少ないので、もう少し書き込んではどうかと思った次第です。
内容的には、いろいろなことがあるかと思うのですけれども、高齢者は働き方が変わっていきます。50代からの変化もありますが、60代になると、新しい仕事への対応や新しい職場への対応も増えますので、一つは、精神的な負荷が大きくなることです。もう一つは、健康状態が高齢になってくると個人差が開いてきます。そのため、ここには、身体機能の低下ということが記載されているのですけれども、心身の健康状態への対応ということについても、働いている本人もそうですけれども、企業も配慮が必要になってくることを書き込んでみてはいかがかと思いました。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
髙橋委員、お願いします。
○髙橋委員 ありがとうございます。髙橋でございます。
私からは若年労働者に関する対策と事業場に対する対策、インターバル制度についてお話ししたいと思います。
若年労働者に関して、経営者が労働環境を整える必要があることを強調してほしいとお願いしまして、40ページに「労働者に対する労働関係法令の周知は事業主の責務であることを踏まえ」と記入していただきました。また、46ページ、47ページにも同様の記載をしていただきましたが、若い労働者が亡くなる事例、精神障害を発症して亡くなる事例、また、精神障害からの労災申請が大変増加していることを考えましたら、本当にもっと職場環境を整えていくことが必要であることを強調していただきたいと感じています。
若い人が就職して仕事をする上で、当然管理職の指導、管理責任というものもあると思います。岩城委員、西尾委員からも管理職、部下を管理する者の研修と労働法令の周知をするということを強調してほしいという意見がありましたが、管理責任者でなくても実際の現場では入社から数年たった先輩社員が若い社員を指導することも多いと思います。先輩社員からたくさんの仕事を振られたり、フォローがなかったり、ハラスメントされていて心を病んでしまうことも多く、そういう事例で亡くなっている人もたくさんおります。事業場においては管理責任者でなくても若い人に対してちゃんと指導をしなければいけないという研修を全社でやってもらいたいと思っているところであります。
また、勤務間インターバル制度についてなのですが、娘は連続53時間も働くことがあって、亡くなってしまいました。勤務間インターバル制度があれば、死ぬことはなかったと思います。人員不足、仕事量が多いため、交代勤務のために導入できないという企業にこそ、義務化が望まれるところであります。たくさんの方から御意見をいただいたと思いますが、そこのところも強調していただきたいと思います。
また、ほかのたくさんの委員の方の御意見もあって、先ほど上野委員から導入の必要を感じない企業にも導入を強力に推進してほしいという意見がありましたが、私からもぜひお願いしたいと思います。
戎野委員からも導入の必要を感じない企業でも長時間労働が起きているという実態のお話がありましたが、連続勤務がなかったにしても、月にしたら数日、長時間の残業があるとしたら、朝8時から夜10時まで勤務して、車を運転して1時間かけて家に帰るとしたら、帰宅は11時、12時になります。それから朝1時間かけて8時に出勤するということは、勤務間インターバルは10時間ですが、通勤、食事、入浴で、睡眠時間は5~6時間になります。疲れて車を運転すると事故を起こす可能性もありますし、違法にはならない残業があったとしても、連日残業が続くと本当に人はいらいらしてきますし、正常な判断ができなくなってくると私は感じています。これは実際に息子の事例なのですが、時間外労働は数日間で人間の体に負担を与えることを実感しています。
技術発展や社会状況の変化で働く環境は変わりますが、人間の体は変わることなく、生命を維持するためには、十分な睡眠が心と体の健康を守るということは変わっていません。公務員だから、教師だから、医師だから、緊急を要する仕事をしているからといって、眠らなくてもいい体になれるわけではありません。どうか勤務間インターバルを強力に推進していって、必要でないと思っている企業に対しても導入を強力に推進して、メリットをアピールしていただいて、国民全体でインターバル制度の認知の定着につなげてほしいと強く願っています。
私からは以上です。ありがとうございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。全国中小企業団体中央会の佐久間です。
私からは2点ほどお話をさせていただきたいと思います。
まず、16ページに出ています企業側のシンポジウムの参加についてなのですけれども、私もこの過労死等防止対策推進シンポジウム等々に企業側が不幸にもこういう出来事が起きた場合に参加をすることは重要なことではないかと思います。家族会の方々のお気持ちを考えれば、傍聴参加し、どういう状況なのかが分かるためには必要だと思います。
ただ、15ページに書かれているのが、「職場の関係者に対する啓発」なのですね。もう一か所、25ページにも国が行う「3 啓発」の「国民に向けた周知・啓発の実施」ということで、ほとんど同じ文面が2回出てきている状況になっています。参加を促すということは非常に重要だと思うのですけれども、国等が基本的に周知をしながら意識づけをしていくということで、25ページまたは15ページ、16ページのどちらかで記載されているので、1か所掲載すればよいのではないかと思います。重要視しているという意味合いなのかもしれませんけれども、私は1か所掲載すればよいのではないかと思います。前段は「職場の関係者に対する啓発」で、これは実際に誰がやろうとしているのか。国がやろうとしている、地方公共団体がやるということであれば、これは後ろのほうも同じ意味合いになるので、どちらか一方でもよいと思います。
もう一点が、46ページのインターバル制度の考え方でございます。私も戎野委員の意見に賛成でございます。まず、インターバル制度はまだまだ導入率が少ないということで、全社的にというか全体的に意識づけをすることが必要ではないかと思っています。中小企業なり大企業でもそうでしょうけれども、いきなり仕事が入ってきて、そして、プロジェクトをつくる、特に中小企業の場合ですと、人が足りないので他部署から応援に向かうというときに労働時間が超える状況もある、今までインターバルの時間数を明記するなど関係なかったけれども、超えてくることもあるのではないかと思います。企業は成長をすることを前提に企業活動を行っていますので、ある程度常態的なものから突発的な事業や業務・作業も、もちろんあると思うので、急に入ってきたときにインターバル制度の項目が就業規則に入っていないということもあると思いますので、まずは意識づけをして、この導入率を高めていくことが必要ではないかと思います。ですから、私は前の現状のとおりの表現で、パーセンテージを見直していくことのほうがよろしいのではないかと思います。
それについては、資料3で導入状況の率が出ていると思うのですけれども、ここで導入の必要性を感じないためと回答した企業を除いたとあります。これはパーセンテージだけが出ているのですけれども、実際にここで回答された方の実数ですね。それから、この項目に該当したときの実数とか、また、そのうちの割合の実数とか、この辺は分かれば教えていただきたいと思います。今、分からなければ、後でまた教えていただければと思います。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、神委員、お願いします。
○神委員 ありがとうございます。東京経営者協会の神でございます。
私からは1点お話をさせていただければと思います。
26ページに「事業場における過労死等防止対策の定着を支援するチェックリスト等のツールの開発と効果検証」という記載がございますが、こちらにつきましては、27ページの現在の大綱でも「ツールの開発等のための研究を行う」との記載がございます。これまで既に開発されたツールがもしあるということでしたら、ぜひ普及啓発に向けた取組が必要であるといった記載をお願いできればと思います。特定の重点業種はもちろんのことですけれども、幅広い業界、とりわけリソースの少ない中小企業でも活用できるようなチェックリスト等のツールをぜひ開発いただいて、そうしたものを盛り込んでいく形でお願いできればと思います。
私からは以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、堤委員、お願いいたします。
○堤委員 ありがとうございます。
今の開発しているツールにも関連することで、研究面からお話ができればと思っております。
この大綱案に関しては「過労死等の防止のための対策の基本的考え方」のうち、15ページから始まります「調査研究等の基本的考え方」のところでお話をいたします。調査研究は非常に進んできております。16ページの中頃に「過労死等事案の分析」から始まる職域コホート研究、介入研究、実験研究、対策実装研究等、長期的な視点で行うものも含め、危険因子と疾患の関連、効果的な予防対策に資する研究を継続的に行う中ということで、少しずつ蓄積をされているところで、これが今、調査研究を統合しながら進めていこうという段階にあると認識をしています。
この部分、本当に進んできている部分があるとともに、今後これが現場で取り入れられるような、そういう研究に進んでいかなければいけないのではないかと思っています。ここにも書いてあります実装されるというところで、これは恐らく研究者だけではなくて現場の皆様、それから、当事者も含めた方々の協働という形があって進むのではないかと思います。ですから、「調査研究等の基本的考え方」という中に、関係者と協働して進めていくという考え方も盛り込んでいただいて、今後実装ができるような研究の枠組みという形で進められればどうかと思います。
関係者の中には当事者もいらっしゃると思いますし、ステークホルダーの中には事業者もいらっしゃると思います。労働者も協力していただかないと進まない研究もあると思いますので、そういう協働という部分と、どうしても社会を相手にした研究になりますので、エラーもあるかもしれないですね。トライアル&エラーと言うと言葉はふさわしくないかもしれませんけれども、PDCAを回していきながらいいものにしていくという考え方も入れて実装していくという考え方を、この中に入れられればという感じで考えております。
どうしても研究といいますと、研究者が主語になってきますので、関係者の協力を得てという考え方になりがちですけれども、これからは関係者と協働して進めていくというような、そういう考え方はいかがでしょうか。
以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、宮本委員、お願いいたします。
○宮本委員 ありがとうございます。
2点ほど、まず、14ページに「カスタマーハラスメント」が定義されているのですけれども、「顧客等からの著しい迷惑行為」と限定されてしまっているので、先ほど来のお話でいくと「顧客や発注者等からの」と入れたほうがいいのではないかと思った点がございました。
あと、例えば資料の31ページにメンタルヘルス指針というお話が出ていますし、32ページには労働者の健康保持増進のための指針、いわゆるTHP指針などがあって、これまでの施策に戻ってここが使える、あれが使えるというものがあると思うのです。確かに月何時間かの産業医でどこまでできるのかというお話もありましたが、産業医をうまく活用しているところですと、働く人の健康が企業発展を支えるという感じになっていることも確かですので、こういった過労死等防止にもうまく取り組んでいただけるということがあると思います。
したがって、総論的な話になるのですけれども、これまでの産業保健活動を、その狙いを理解してちゃんとやっているということが当たり前のようでいてすごくありがたいことなので、どこかに産業保健活動をちゃんとやりましょうということをもっと強調して入れていいのではないかと思っています。そうなると、50人以上の産業医がいるところだけではないかと言われるかもしれませんが、50人未満のところも保健師でもいいことになっていますが労働安全衛生法の努力義務で同じように行うことになっています。働き方改革関連でも示されたように健康管理活動をきちんとやる、健康診断だけでなく結果に基づく措置や面接などをきちんと進めましょうというところを入れられると、地域産保センターなどいろいろなところのリソースを使えることになっていく。改めてもう一度総論で強くうたうことが必要かもしれないと思いました。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
そのほか、いかがでしょうか。一通り皆さんから御発言をいただいた気がしますが、よろしいでしょうか。
それでは、事務局から、今、御質問もありましたけれども、御説明、御回答がありましたらお願いいたします。
○総務課長 厚生労働省の労働基準局総務課長です。
本日は素案という形で御説明をいたしました。本日もまた委員の皆様から大変貴重な御指摘をいただきましたので、本日いただきました御意見を踏まえまして、また事務局で関係省庁とも一緒に文章を整理いたしまして、次回に向けてブラッシュアップする作業を進めてまいりたいと考えております。
また、先ほど佐久間委員からございましたデータの件に関しまして、後ほど改めて調べて御報告申し上げます。
事務局からは以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、時間も参りましたので、本日はここまでとさせていただきます。
委員の皆様におかれましては、活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
本日はそれぞれの立場から貴重な御意見をいただきましたので、次回の協議会に向けては、事務局である厚生労働省が中心となって関係省庁と連携を図りながら、本日の御意見を踏まえ修正した大綱見直し案を準備していただくようにお願いいたします。また、その過程におきましては、各委員からも丁寧に御意見を伺いながら作業を進めていくようお願いいたします。
最後になりますが、今後の日程について、事務局から御説明をお願いいたします。
○企画官 委員の皆様には既に御連絡しておりますが、可能な限り全委員の方の御出席の下、検討を賜るという趣旨により、次回は6月4日火曜日の開催として調整しております。
○中窪会長 それでは、以上で第27回「過労死等防止対策推進協議会」は閉会といたします。本日はお忙しいところをありがとうございました。