第201回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和6年1月10日(水)09:00~11:00

場所

会場
厚生労働省 共用第9会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館17階国会側)
傍聴会場
厚生労働省 職業安定局雇用開発企画課会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館14階国会側)

議事

議事内容
2024-1-10 労働政策審議会職業安定分科会(第201回)
 
○山川分科会長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、第201回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
 皆様方、大変お忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 本日は、公益代表の堀委員、労働者代表の平山委員、使用者代表の小野委員が御欠席と伺っております。公益代表の小畑委員におかれましては、所用で10時頃御退席予定とのことでございます。
 事務局におかれては、山田職業安定局長が公務のため、途中で退席されます。
 それでは、カメラ撮影がありましたら、ここまでとさせていただきます。
 本日の分科会は、Zoomによるオンラインと会場での開催になります。オンラインでの発言方法等につきましては、事前に事務局からお送りしております「職業安定分科会の開催参加方法について」に沿って御操作をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。最初の議題は「雇用保険制度」です。
 では、事務局から説明をお願いします。
○尾田雇用保険課長 雇用保険課長の尾田でございます。
 資料1に基づきまして、説明させていただきます。
 おめくりいただきまして、1枚目にかがみがついております。雇用保険部会におきまして、9月7日から1月5日まで、雇用保険制度の見直しについて検討を行っていただきました。1月5日の雇用保険部会におきまして、報告書をお取りまとめいただいて、本日この分科会に報告することを御了承いただいたということでございます。その中身について御報告いたします。
 おめくりいただきまして、1ページ以降でございます。最初に、雇用保険制度の現状ということで、財政状況等の現状について書いております。
 1つ目の○でございますが、コロナ禍におきまして、雇用調整助成金等、過去に例のない大幅な制度拡充を行ってまいりました。それを下支えするために、様々な財政上の特例措置、一般会計からの繰入れや、雇用安定事業に対しまして失業等給付の積立金から繰入れを可能とする、そういった様々な特例措置を講じてまいりました。
 その結果、雇調金が6兆円余り支出する中で、雇用安定資金への積立金からの言わば貸出しについては、累計で2.9兆円に上るなど、雇用保険財政は急速に悪化したところでございます。一方で、失業等給付の保険料率につきましても、もともと0.2%というかなり低い水準に抑えておりましたところ、令和5年度に最終的に原則である0.8まで戻させていただいたという財政状況にございます。
 3つ目の○でございますが、この雇調金等の特例措置は段階的に昨年度末までに縮小し、終了いたしました。また、新型コロナの扱いにつきましても、昨年の5月8日をもちまして感染症法上の扱いが変更になったということで、現在支出面においては過去3年間の異例と言える状況はほぼ終了したと言えるところでございます。
 現在の雇用情勢は、求人が底堅く推移しており、緩やかに持ち直していると。基本手当の受給者実人員につきましても、コロナ禍で48万人まで伸びましたが、昨年度は41万人まで減少しております。
 一方で、育児休業給付については、受給者数、給付総額とも増加傾向にございまして、現在の状況が続きますと、支出が収入を上回ることが見込まれているところでございます。
 次に、第2として、見直しの背景を書いております。
 1つ目の○でございますが、多様な人材の労働参加あるいは働くことに対する価値観、ライフスタイルが多様になってきている、こうした状況の下で、多様な働き方を効果的に支え、労働者の主体的なキャリア形成を支援することが求められている、また、少子化が急速に進展する中で、男性の育休の取得促進あるいは育児期を通じた柔軟な働き方の推進が求められているとしております。
 こうした背景の下で、昨年夏の各種の閣議決定におきまして、雇用保険の見直しに関する様々な内容が盛り込まれていたところでございます。
 次の3ページでございますが、そのほかにも令和4年の改正法やそのときの附帯決議などにおきまして、育児休業給付及び財源の在り方、また、先ほど申しましたコロナ禍における財政上の特例措置によって、積立金から多額の借入れを行ったというお金についての返済の在り方等について検討することが求められておりました。
 その他暫定措置が令和6年度末で期限を迎える、そうした状況を踏まえまして、昨年9月以降、雇用保険部会で御検討いただいたというところでございます。
 第3として、見直しの方向性を制度ごとに書いております。
 1つ目が、雇用保険制度の適用拡大についてでございます。現在、週の所定労働時間が20時間以上の雇用労働者を適用対象としておりますが、これにつきまして、雇用のセーフティーネットを拡大する観点から、週の所定労働時間10時間以上20時間未満の労働者にも新たに適用することといたしまして、事業主の準備期間等を勘案して、令和10年度中の施行を目指すこととすべきとしております。
 施行に当たりましては、この適用拡大の重要性等について十分な理解を得られるよう、労使双方に丁寧な周知を行うべき、また、新たに適用となる方の能力開発や雇用管理改善に向けた事業主の取組を支援する、その他中小企業の事業主をはじめとした事業主の追加的な事務負担を考慮しまして、申請手続の簡素化やオンライン化を進めるとしております。
 一方で、適用拡大となる方につきましては、現行の被保険者と同様に、失業等給付、育児休業給付、二事業の対象とする一方で、保険料率、国庫負担についても現行の被保険者と同等の水準とすべきとしております。
 また、基本手当の支給等に関する基準につきましては、従来、週の所定労働時間が20時間以上という基準を踏まえて設定されておりますが、それが半分になることを踏まえて、必要な見直しを行うということで、3つほど書いております。
 1つ目が、被保険者期間の算定基準でございます。失業給付の受給資格の判定の基礎となる被保険者期間、具体的には、過去2年間に12か月以上、倒産、解雇等の場合には、過去1年間に6か月以上、被保険者期間があることを受給要件としております。この1か月というカウントにつきましては、現在、その月に11日以上または80時間以上賃金が支払われたということを要件としておりますけれども、これにつきまして、約半分の6日以上または40時間以上に見直すべきとしております。
 2つ目でございますが、基本手当の支給に当たっての失業認定でございますけれども、5ページでございます。4週間に1度ハローワークに来ていただきまして、過去28日間のそれぞれの日につきまして、4時間以上就業していたか否かを確認した上で、4時間以上就業している日については失業認定を行わず、4時間未満の日については、就労によって得た収入を調整した上で基本手当を支給するという運用になっております。今回週10時間以上に適用範囲を変更いたしますので、この1日当たりの就業の基準を4時間から2時間に変更すべきであるとしております。あわせまして、この収入との調整でございますが、2時間未満の労働で得られる収入は一般的には少額であることも踏まえまして、簡素化等の観点からこの収入調整を廃止すべきであるとしております。
 3つ目でございますが、基本手当のベースとなる賃金日額の下限額につきましては、法律でこれを設定し、毎年度改定するというやり方を取っております。この金額につきましては、現行の週20時間以上という適用基準を前提に定められておりますので、これの2分の1の額に変更するということを書いております。また、この額については、現在は最低賃金の日額、これも現在週20時間労働を前提とした金額に調整しております。これと調整した上で、どちらか高いほうを適用するという制度に今はなっておりますけれども、この参照する最低賃金の日額につきましても、週10時間労働を前提とした計算に変更すべきであるということとしております。
 次に、複数事業所で雇用されている労働者の扱いにつきましては、現在の雇用保険制度では、主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者とするという運用になっております。これは引き続き維持することにしておりますけれども、週10時間以上に適用を拡大しますと、複数就業者の扱いをどうするかということが問題になってまいります。その場合に、現場における取扱いに混乱が生じることのないよう、例えば賃金日額の高いほうの事業所を主たる事業所とするなど、判断に当たっての基本的な考え方を明確化し、周知すべきとしております。
 6ページの最初の○でございますが、令和2年の法改正によりまして、65歳以上の労働者に限定して、複数就業している場合に、合算して20時間以上で本人の申出を起点として雇用保険を適用する特例的な仕組みが設けられております。こちらは令和4年1月から施行されておりますが、施行後5年をめどとして検討を加えるとされておりますので、しっかりと実施状況の把握と検証を行い、複数就業者への雇用保険の適用の在り方について引き続き検討すべきとしております。これにつきまして、労働者代表委員からは、その際には、雇用保険における「失業状態」をどのように捉えるかについても併せて検討すべきという御意見をいただいております。なお、週10時間以上ということに適用基準が変わりますので、この65歳以上の複数就業の特例につきましても、これに合わせた基準の見直しをする一方で、現在の制度の下で適用を受け始めた方が不利にならないような所要の経過措置を設けるとしております。
 さらに、適用範囲を拡大する結果、現在、求職者支援制度では雇用保険制度の対象とならない人を対象とするということで対象者を決めております。この結果、求職者支援制度でカバーされていた方が雇用保険制度に移ることになりますけれども、第2のセーフティーネットである求職者支援制度の役割・機能を踏まえて、所要の措置を講ずるということで、そうした方が不利にならないような何らかの措置を講ずるということを書いております。
 労働者代表委員からは、この適用拡大に当たりまして、現在、暫定的に任意適用事業とされている農林水産業の個人事業で常時5人未満の労働者を雇用する事業について、この暫定任意適用をどうするかという検討を行うべきであるという御意見をいただいたところでございます。
 以上が適用拡大でございます。
 続きまして、基本手当でございます。まず、自己都合離職者の給付制限でございますが、現在、2か月の給付制限ということで運用しているところでございますが、7ページでございます。令和7年度から、これをさらに1か月と短縮すべきである、ただ、その際、現行の5年間で3回以上の自己都合離職の場合には3か月とするという扱いについては維持することとすべきであるとしております。
 また、自ら教育訓練を行って再就職を目指す方につきましては、離職日から遡って1年の期間内に、自ら教育訓練を行った場合には、7年度から、給付制限を解除して基本手当を受けられることとすべきとしております。
 一方で、基本手当の給付水準については、現時点では改正を行うこととはしないと。この点につきましては、労働者代表委員からは、セーフティーネットの充実という観点からは、平成12年の雇用保険法改正以前の給付水準に戻すことを検討することが必要という御意見をいただいているところでございます。
 続きまして、基本手当の暫定措置についてでございます。2つございまして、1つ目が、雇止め離職者について所定給付日数を倒産、解雇等の離職者と同じ水準とするという措置と、雇用情勢が悪い地域に居住する方につきまして、延長給付を行うという措置がございます。いずれも令和6年度までの措置とされております。
 まず、雇止め離職者の暫定措置につきましては、この方々の就職状況が依然として低いことも踏まえまして、今後しっかりと検証することを前提として、2年間延長するとしております。この点については、労働者代表委員からは、こうした状況は変化していないということから、制度の恒久化も含めて検討すべきとの御意見をいただいております。
 また、もう一つの地域延長給付の制度でございますが、こちらは実績が乏しいということはございますが、まずは2年間延長した上で、さらなる検証を行うこととしております。これについて、使用者代表委員からは、廃止も含めて検討すべきであるとの御意見をいただいているところでございます。
 その他として書いておりますのは、毎年度賃金日額につきましては、賃金の上下動を踏まえまして改定をしておりますが、この改定に当たりましては、かなり細かい数字を使って数値を計算しているところでございますが、公的年金等の改定に用いられている数値なども参照いたしまして、この扱いをより簡便で分かりやすくする方向で見直すべきであるということを書いております。
 以上が基本手当でございます。
 続きまして、就職促進給付についてでございます。2つ書いております。1点目が、就業手当でございます。就業手当は、安定した職業以外の職業に就いた場合に基本手当の3割相当額を支給する制度ということで設けられたものでございます。しかしながら、当初より受給者数が極めて少数でございまして、さらに減少傾向にあることも踏まえまして、令和7年度から廃止すべきとしております。
 もう一つ、就業促進定着手当でございます。こちらの制度は、再就職後の賃金が低下する方を対象として、6か月分の差額を一時金として追加的に給付するという制度でございます。この制度につきましては、賃金低下をもたらす再就職を推進する必要性が低下している一方で、給付実績も一定ございますという実情を踏まえた上で、制度としては継続した上で、令和7年度から上限を引き下げる、具体的には、現在上限額が支給残日数の4割または3割相当額となっておりますけれども、これを2割相当額に引き下げるとしております。
 続きまして、4つ目の教育訓練給付等でございます。(1)教育訓練給付金について、最初の○では能力開発の重要性、特に自発的な能力開発への支援の重要性ということを書いております。
 2つ目の○では、雇用保険制度におきましては、これを受ける制度として教育訓練給付金がある、これについて拡充を行うべきであるとしております。
 次の○で、具体的にはということで、中長期的なキャリア形成に資する教育訓練を対象とする専門実践につきましては、現行の追加給付に加えて、賃金が一定以上に上昇した場合に、現行の追加給付を受けていることを前提に、さらに10%を追加で支給することとすべき。現在、この専門実践については、原則の50%に加えて、資格取得等を要件として追加で20%、合計70%の給付となっております。今回この10%を加えまして、合計で最大80%となるということでございます。
 次の○でございますが、速やかな再就職と早期のキャリア形成に資する教育訓練を対象としております特定一般につきましては、この制度は現在40%の給付率になっております。新たに資格取得等した場合には、受講費用の10%を追加で支給することとすべきである、ですから、最大で50%とすべきであるということでございます。
 その上で、制度趣旨に合ったより効果的な給付、講座指定の在り方の検討が可能となるように、しっかりと効果検証をする、そのほか、周知・広報を積極的に進めるということを書いております。
 2点目が、教育訓練支援給付金でございます。これは暫定措置として専門実践教育訓練を受けている方に対しまして、基本手当の8割を支給する制度でございます。これにつきましては、各種データを比較いたしまして、この給付金を受けている方が受けていない方に比べまして、各種データはよい結果が出ていることが確認された一方で、支給額が平均で1人当たり290万というかなり高額になっていることを確認しております。それを踏まえまして、制度としては2年間延長した上で、給付率については今の基本手当日額の80%から引き下げまして、60%とするということでしております。
 その上で、この教育訓練支援給付金については、現在看護等に教育訓練分野が著しく偏っております。その現状について、引き続き実態の把握に努め、制度の見直しにつなげるべきとしております。
 続きまして、訓練関係の新たな給付についてでございます。2つ目の○でございますが、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、新たに教育訓練休暇給付金を支給する、教育訓練給付の一つとして位置づけた上で、令和7年度中に実施すべきとしております。この給付設計でございますが、基本手当に相当する給付を支給するという考え方に基づき、制度設計をすると。
 具体的には、企業の教育訓練休暇制度を利用して、無給で、自ら休暇を取得した場合に支給すると。ただし、基本手当に相当する給付を支給しますので、過去2年間に12か月以上被保険者期間がある、そして、被保険者であった期間が5年以上あることを要件とするとしております。
 給付額につきましては、基本手当と同様でございまして、給付日数については、自己都合離職と同様に、勤続年数に応じまして90日、120日または150日とすると。また、基本手当を受給した場合と同様に、この給付金を受給した場合には、それ以前の受給要件については一旦リセットするということでございます。ただし、この場合において労働者が失業した場合にその生活の安定を図るという雇用保険の主目的をしっかりと果たすために、倒産、解雇等により離職した方に限りまして、受給要件を満たさない期間について、特例的に最低限の基本手当(所定給付日数が90日等)を支給するとすべきであるとしております。
 また、この教育訓練休暇給付金については、基本手当と同様に、費用の4分の1または40分の1の国庫負担を行うこととすべきとしております。
 次の(4)でございますが、教育訓練関係の新たな融資制度でございます。今の給付金制度、こちらは雇用保険の被保険者が対象でございましたが、雇用保険の被保険者ではない方についてもリスキリングが重要ということは同様でございますので、こうした方向けの融資を設けるべきとしております。
 具体的には、雇用保険の被保険者や受給資格者ではない方を対象といたしまして、教育訓練に関してその受講費用と生活費用を対象に、自らが受ける教育訓練に関しまして、その受講費用と生活費用を融資すると。
 この場合に、インセンティブといたしまして、訓練受講後に賃金が上昇した場合に一定額の返済を免除する措置を併せて設けるべきとしております。
 次の13ページでございますが、この融資制度については、求職者支援制度の一部として実施するとしておりまして、その財源は、労使から拠出いただきます保険料と国庫負担、原則2分の1、現在はその55%ということでございます。
 続きまして、高年齢雇用継続給付についてでございます。今回見直しの内容には入っておりませんが、令和2年の雇用保険法改正におきまして、給付率を15%から10%に引き下げることが、令和7年4月からの施行ということで既に法改正されているところでございます。
 これについて改めて十分な周知を行って、円滑な施行を図るとともに、この施行後には、廃止も含めて、引き続きこの制度の在り方について検討を行うべきとしております。
 次の6番は、育児関係でございます。まず、給付率の引上げについてでございます。少子化の観点からは「共働き・共育て」を推進する必要があると。
 ただ、一方で、少子化対策という要素が強い施策につきましては、雇用保険料以外の財源により賄うべきとしております。
 こうした認識の下に、令和7年度から、子の出生後一定期間内に、被保険者と配偶者がともに一定期間以上の育児休業を取得した場合に、28日間を限度に、休業開始前賃金の8割相当の給付を支給するようにすべきと。
 具体的には、子の出生直後の一定期間、男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、14日以上の育児休業を取得した場合に、28日を限度に、13%相当額の新しい給付金を支給する、既存の育児休業給付がその間67%の給付率で出ますので、合わせて80%相当額ということでございます。
 原則として被保険者と配偶者の両者が育児休業を取得することを要件としますが、配偶者がいない場合あるいは雇用労働以外の働き方で就業している場合など、育児休業が取れない場合、その他配偶者が産後休業を取得している場合などについては、配偶者の育児休業の取得は要件としないとしております。
 また、財源につきましては、雇用保険料以外の財源から拠出されるようにすべきであると。ここについては、報告書では明記されておりませんが、支援金制度というものが新しくこども・子育て関係で設けられることになっておりまして、そちらの財源を用いることを予定しているところでございます。
 なお、男性の育休取得が実質を伴ったものとなるように、制度改正と併せまして、男女がともに育児を担うことの重要性、共働き・共育ての意義が広く認識されるような取組も求められるとしております。
 もう一つ、新しく育児に関しましては、育児時短就業給付というものを創設することとしております。2つ目の○でございますが、育児休業給付とは別に、被保険者が2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている場合の新たな給付として、令和7年度から、育児時短就業給付を創設することとすべきであると。
 具体的には、時短勤務開始前2年間に12か月以上みなし被保険者期間がある方を対象として、2歳未満の子を養育する場合に給付すると。
 また、次の○でございますが、給付率については、時短勤務中の各月の賃金額の10%を給付すると。そして、高年齢雇用継続給付と同様に、給付額と賃金額の合計が開始前賃金を超えないように、給付率を逓減させるという制度にすべきとしております。
 あわせて、この給付の創設に伴いまして、今の雇用保険法の目的規定で読み切れないところがございますので、新たに労働者について子を養育することを容易にするために所定労働時間を短縮した場合に必要な給付を行う、こういった旨を目的規定に明記するということを書いております。
 また、財源については、先ほどの給付金と同様に、雇用保険料以外の財源から拠出されるべきとしております。
 加えて、育児休業の取得や時短勤務の選択を推進することに併せまして、職員の追加配置、体制整備を行う中小企業への支援を通じまして、職場における両立支援の取組を推進していくべきとしております。労働者代表委員からは、これらの制度の創設が、労働者間の分断をもたらす、あるいは労働者のキャリア形成を阻害するという御懸念の意見をいただいております。また、時限措置として行うべきとの御意見をいただいているところでございます。
 以上が給付制度の関係でございまして、次に、7番で財政運営についてでございます。1点目が失業等給付についてです。まず、保険料率でございますが、冒頭に書いておりましたとおり、現在1000分の8という保険料率になっております。
 こちらについては、弾力条項というものがございまして、この計算に基づきまして、保険料率を上げたり下げたりということが、労政審の御議論の結果、可能ということになっておりますけれども、計算結果を見ますと0.90ということで、保険料率を上げられる状況になっております。
 しかしながら、雇用保険財政の状況は、現在、安定的に推移しておりますので、こういったことを踏まえまして、来年度の保険料率については、1000分の8のまま変更しないということにしております。
 最後の「また」という点でございますが、季節雇用の労働者を多く雇用される業種につきましては、保険料率を高く設定しているという今の制度につきまして、これの妥当性について、引き続き今後の課題として検討すべきであるということを書いております。
 次の17ページでございますが、国庫負担でございます。最初の○は、国庫負担のこれまでの改正経緯、暫定措置の経緯等を規定しております。
 2つ目の○は、国庫負担の趣旨を書いております。
 その上で、3つ目でございますが、介護休業給付に係る国庫負担については、原則の8分の1に速やかに戻すべきであるものの、国の財政状況あるいは雇用保険の財政状況、介護休業給付の支給状況等も踏まえて、今の暫定措置、すなわち原則の8分の1をさらに10分の1として80分の1が今の暫定措置になっておりますけれども、これを2年間延長し、8年度まで継続することもやむを得ない。
 ただし、本来は法律上の原則に戻すべきとの考え方が変わるものではないので、令和9年度以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で暫定措置を廃止すべきであるとしております。
 続きまして、18ページ、育児休業給付の財政でございます。育児休業給付については、冒頭申し上げたとおり、支給額が年々増加しております。
 また、2つ目の○でございますが、今般、こども政策の充実の中で、男性の育児休業取得率の政府目標が大幅に引き上げられる等の状況がございます。このため、育児休業給付の支給額については、より一層増加が続いていくことが見込まれます。このため、財政状況が悪化することが予想されますので、財政基盤の強化が必要ということでございます。
 まず、国庫負担についてでございますが、現在は先ほどの介護休業給付と同様に、原則8分の1ですが、暫定的に80分の1とされております。
 これにつきまして、2つ目の○ですが、令和6年度から8分の1の原則に戻すべきであるとしております。
 一方で、保険料につきましては、現在賃金の1000分の4、0.4%を労使折半で御負担いただいているところでございます。
 これについて、国庫負担の見直しと併せまして、保険料の在り方についても見直す必要があるとしております。
 次の19ページ、2行目からでございますが、当面は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の財政悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げるとともに、実際の料率は、財政状況に応じて、弾力的に調整できる仕組みを導入すべきであると。具体的には、下のポツでございますけれども、「N+2年度の収入」と「N+1年度末の積立金」の合計額、すなわち、これは当該来年度に使えるお金が幾らあるかということが趣旨でございます。これと「N+2年度の支出」の見立て、すなわち、来年度の支出額の見込みでございます。これを比較いたしまして、来年度使えるお金が来年度支出予想額の1.2倍を超えている場合には、十分にお金があるという判断の下、労政審の判断を経た上で、保険料率を0.4%に据え置くことを可能とすると、このような仕組みでございます。これにつきましては、毎年度雇用保険部会において弾力的に調整できるか否かを丁寧に確認すべきであると。
 この確認の際には、保険料の重要性、事業主や労働者に影響を与えるものということを十分に認識しつつ、財政状況以外のデータ、人口、出生数あるいは育児休業周りのデータ、育児休業給付の実績、見通し、こういったものに基づきまして、丁寧にその在り方も含めて議論を行うべきであるとしております。
 次に「こども金庫」でございます。これはこども家庭庁の下に、新しくこども・子育て支援特別会計というものを創設し、現在、労働保険特別会計にございます育児休業給付の部分、これをこの特別会計に移して全体の見える化を進めることが、こども未来戦略で盛り込まれているところでございます。
 その移管に当たりましては、育児休業給付等が雇用保険に基づく給付である、この制度の在り方については、雇用保険部会においてしっかりと議論すべきであるということを確認しております。また、移管後に、この雇用保険料がほかの施策に流用されることのないよう、新たな勘定の中で、しっかりと区分して管理すべきであることを確認しているところでございます。
 次のページでございますが、1つ目の○ですが、一方、コロナ禍で特例として育児休業給付について失業等給付の積立金からの繰入れを可能とする仕組みが設けられておりましたが、コロナ禍の状況を脱したことを踏まえまして、この制度は延長しないということを書いております。
 次に、雇用保険二事業に関してでございますが、冒頭申し上げたとおり、コロナ禍の財政上の特例措置の結果、現在2.9兆円が積立金から雇用安定資金に繰り入れられている状況になっております。この繰入額の返還につきましては、雇用保険二事業の毎年度の差引剰余を充てることとされておりますけれども、その毎年度の差引剰余額の2分の1の範囲内で、雇用安定資金への積立てができることとなっております。また、この2.9兆円の額につきましては、その一部について控除、すなわち返済免除でございますけれども、これを財務大臣と協議して可能ということになっております。これについては、令和6年度までをめどに、在り方について検討を加えることが法律で規定されているところでございます。
 これにつきまして、まず、そもそも繰入れを可能とする措置につきましては、冒頭申し上げたとおり、コロナの措置が終わっておりますので、この特例措置は延長しないと。
 一方で、積立金から雇用安定資金への繰入額の雇用保険二事業からの返還につきましては、まず、令和5年度決算においては、生じた差引剰余について、全額を積立金に繰り入れると。その趣旨といたしましては、積立金を確保することの重要性、積立金の早期回復が失業等給付の保険料率の水準に影響する、こういったことに鑑みまして、まずは令和5年度については全額積立金に繰り入れるとしております。
 21ページでございますが、一方で、返済免除の在り方につきましては、引き続き検討ということで、令和4年改正法で6年度をめどにと書いておりますので、引き続き検討するとしております。この点について、使用者代表委員からは、二事業の財政再建に向けた道筋を早急に明確化することが不可欠、あるいは雇用調整助成金等の特例措置が失業予防に一定の機能を果たした、その結果を全額事業主のみが負担するのはどうなのかという御意見、また、一般会計からの繰入れが含まれていることをきちんと認識として共有した上で検討すべきであるという御意見をいただいております。一方で、労働者代表委員からは、この積立金には労働者が拠出した保険料が含まれていることを踏まえて、最優先でそういった意味で保全されるべきであるという御意見をいただいているということを書いております。
 その上で、雇用安定資金の残高が、全額を繰り入れるということで、引き続き残高がない状況になりますことを踏まえまして、雇用保険二事業の効率的かつ適正な執行に努めるべきとしております。
 最後に、その他といたしまして、以上、申し上げた雇用保険制度の見直しが多岐にわたるものとなっていることを踏まえて、これらの円滑な施行に向けてきめ細かい周知・広報を行うことはもちろん、データ収集・分析を進めまして、それぞれの見直しや給付の制度創設の趣旨に沿った効果が発揮できているかを適時に検証し、必要な措置を講ずるべきであると。また、一方で、育児休業給付の財政基盤強化策を講じた上で、今後育児休業給付の財政状況が安定的に推移することとなった場合においては、育児休業給付の財政状況、一般会計の財政状況等を踏まえて、必要な見直しを行うこととすべきであると。
 最後のページでございますが、今後の雇用保険部会における検討に際しましては、拙速な議論を避け、必要な資料が時間的余裕を持って提示され、改正案の内容について明確かつ合理的な説明が行われるなど、丁寧な議論が行われるべきであると、このような内容になっております。
 以上でございます。
○山川分科会長 それでは、本件につきまして、御質問、御意見等がありましたら、挙手または「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、こちらで指名させていただいた後に、お名前をおっしゃってから御発言をいただきますようお願いいたします。御質問、御意見等はございますでしょうか。
 石橋委員、どうぞ。
○石橋委員 委員の石橋です。
 御説明ありがとうございました。私からお願いということで発言をさせていただきます。
 今回雇用保険部会において、それぞれの改正について御議論いただきました。適用拡大など労働者のセーフティーネット拡充につながる見直しが行われる一方で、19ページに記載の、育児休業給付の保険料率の本則の引上げについては、十分な議論がなされていない中で進められたと聞いております。保険料率の引上げは労使に多大なる影響があるため、当然のことながら、今後の見直しについては、雇用保険部会において十分に議論できるような会議運営や本分科会との連携をお願いしたいと思います。
 また、育児休業給付の保険料率については、実際に引上げの必要性が生じるまでの間に、育児休業給付の状況や見通しだけでなく、育児休業給付の在り方についても、引き続き検討をお願いいたします。
 なお、本部会報告に基づき、法律案要綱と法案、政省令等の作成が行われると思いますが、事務局におかれましては、本部会報告の内容を正確に反映していただきますようお願いをいたします。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
 阿部委員、お願いします。
○阿部委員 おはようございます。阿部です。
 3点ほどあります。第1点目なのですが、12ページにありました融資制度についてです。そもそも雇用保険制度は保険の原則で成り立つものだと思っております。保険の原則というのは、偶然の事故で経済的損失を被った人がいた場合に、その経済的な回復をすることが原理原則になっていて、財政運営では、給付反対給付均等の原則あるいは収支相等の原則などがあるというのは御存じだと思いますが、今回この融資制度が保険制度の原理とどういう関係があるのかと考えると、少し悩ましいところがあるかと思います。
 積立金の運用という形で融資制度をつくって積立金の運用を図るということは、生命保険会社等でもやられていることだとは思うのですが、今回そういう形でやろうとしているわけではなくて、社会保険として教育訓練を受けたい様々な労働者の人たちに、雇用保険で適用できない部分について融資制度を設けるということだと思うので、その意義は認められるのですが、これを雇用保険制度の中でやるのか、それとも保険制度の外に出してやるのかというのでは、結構大きな違いがあるのではないかと思います。もし保険制度でやられるとすると、あまりこういう融資制度を拡充するようなことを今後するとなるのは、何となくまずいのではないかと思いますので、個人的にはあまり融資制度を拡充するとか、こういう制度をつくることはどうなのかと思っていますが、もしこの制度をやるのであれば、しっかり事後的に結果を評価して、何年後かに評価をし直すことも必要なのではないかと思います。特にこの融資制度で対象になっている個人事業主の方々が、本当に雇用者として将来なろうとしているのかどうかを見定めることはなかなか難しいと思いますので、その辺りをどうするかということもあるかと思います。
 それから、この制度はあまり私個人としては評価していないのは、求職支援制度とどういう違いがあるのかがなかなか見えづらいところがあるのではないかというところもあります。ですから、求職支援制度がありながら、この融資制度をつくるというのを明確にして、制度をおつくりになるべきではないかと思いました。
 第2点目ですが、これは13ページの育児休業給付の給付率引上げについてです。昨今、政府は、厚生労働省もそうですけれども、EBPMに基づいた政策立案をうたっていると思うのです。これまでに育児休業給付は幾たびか引上げをされていて、その効果がどうだったのかも評価されていると思います。東京大学の山口慎太郎さんがお書きになった一般向けの書籍で、この育児休業の効果をお書きになっていて、そこではオーストリアやドイツ、ノルウェー、カナダについての政策評価を行った結果、育児休業制度を改革して、例えば育児休業期間を長期化するなどということをやったとしても、就業構造には全く影響しなかったという研究結果を紹介されています。日本でも1995年と2001年に育児休業給付が引き上げられていますけれども、それにも全く効果がなかったというような研究結果を書かれています。そうした中で、今回こうした引上げをされることはどういうことなのかというのは、考えておくべきではないかと思います。単なる所得移転だとすると、あまり政策効果がないと思いますので、その辺りをもう一度お考えになるべきではないかと。
 そういった意味で、第3点目もまた同じようなところですけれども、短時間就業の場合の育児時短就業給付ですけれども、これも全く同じではないかと思います。これの対象になるのは正社員の方々で、パート・アルバイトの方々は対象にはなかなかなりにくいのではないかと思います。正社員の場合でも、例えば裁量労働制を取っている人たちは、この時短という概念はなかなか分かりづらいところもあると思いますので、これは15ページで、雇用保険部会で労働者代表委員から、労働者間の分断をもたらす、受給者のキャリア形成を阻害することを懸念する、まさにおっしゃるとおりだと思っています。確かに理由として所得が減ることが問題だとなっているのだろうと思うのですけれども、それならば、別に雇用保険でやるのではなくて、あるいは育児休業給付でやるのではなくて、税だとか、あるいは子育ての手当だとか、別のところでやるべきではないかと思います。少子化対策としてこうした問題が大事だということは私も重々承知していますけれども、もっと子育て対策として全体像を見て、政府全体でどういう対策が必要なのか、今ある育児休業給付をうまく使えれば何とかなるのではないかみたいな発想ではなくて、税あるいは補助金、様々な面から見て子育て対策をすべきではないかと思いますので、もう少しこの辺りは議論をしたほうがいいのではないかと思います。
 すみません。長くなりました。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、新田委員、お願いします。
○新田委員 御説明ありがとうございました。経団連の新田でございます。
 御丁寧に御説明いただき、内容の理解が深まったところでございます。
 今回の雇用保険部会報告、多岐にわたる内容について取りまとめいただいたことに、関係者各位にまずは敬意を表するとともに、皆様の御尽力に改めて感謝申し上げるところでございます。
 様々な論点はあるかと思いますが、私からは大きく2点だけコメント、感想を申し上げたいと思います。
 1点目は、教育訓練給付の関係でございます。部会報告の12ページ以降に、新たに創設される「教育訓練休暇給付金」(仮称)と新たな融資制度について整理がされております。これに対しては、政府としてリスキリング等の能力向上にしっかり取り組むという観点からすると、一般財源を投入して国庫による負担をすることで、政府としてもしっかり取り組んでいく姿勢を見せる必要があるのではないかと以前から申し上げてきたところでございます。今回新たに創設される両方につきまして、一般財源による国庫負担が入ることが明確に示された点については、非常に前向きに受け止めているところでございます。
 2点目は、雇用安定資金の財政状況についてでございます。今回の取りまとめの中では、令和5年度については、雇用安定資金の剰余額を積立金に全額繰り入れるとされました。これはある程度やむを得ないと理解をしているところでございます。ただ、一方で、雇用安定資金の健全化が非常に喫緊の課題ということも重ねて申し上げているところでございます。返済、いわゆる控除の在り方につきましては、令和6年度末までを目途に着実に検討を進めて、できる限り早期に財政の健全化に向けた道筋をしっかりと明確にすることが必要だと考えています。引き続きの議論をぜひともお願いしたいところでございます。
 いずれにいたしましても、この部会報告の最後の「その他」のところにもある通り、今回は非常に多岐にわたる内容ですので、今後、改正法案の法案要綱の審議等も行われてまいりますが、法案が成立した際には周知を徹底していただきたいということを、最後に申し上げておきたいと思います。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 続きまして、橋本委員、お願いします。
○橋本委員 学習院大学の橋本です。
 私からは教育訓練休暇給付金と、もう一つ、基本手当の支給制限を解除するといったところの2点のリスキリング関係について簡単に意見を述べさせていただければと思います。
 11ページ、教育訓練給付金で、企業で教育訓練のための休暇を取ったときに、基本手当相当額を支給するという新たな制度が設けられるということでして、これがリスキリングの促進になることを強く期待したいと思っています。ただ、ここはあまり論点にはなっていなかったのかもしれませんけれども、安心してリスキリングのための休暇を取れるように、休暇中の雇用保障というものを何らかの形で確認できるような手続があるとよいかと思っています。ドイツでも似たような制度が最近できたのですけれども、その間、整理解雇の対象にしないことを労使で協定を結ぶといったことが要件になっていますので、同じような安心して休める仕組みが必要ではないかと思っています。
 もう一つ戻りまして、7ページ、退職から遡って1年間教育訓練に従事していたときに、支給制限をなくすという改正ですけれども、最初の○ですけれども、離職日から遡って1年間、自ら雇用の安定や就職の促進に資する教育訓練を行った場合にはと書いてあるのですが、この教育訓練を行っていたという認定はどのように行うのかを質問させていただければと思います。この書き方だとすごく広く読めるのですけれども、現行の教育訓練給付の対象となるような教育訓練を受けていた場合というように、それが当然なのかということで書かれているのかなどを確認させていただければと思います。この質問をさせていただいたのは、離職前に教育訓練をしているというのはどういうことかがよく分からなかったということがあります。
 以上です。よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 取りあえず御意見、御質問のある方はお伺いし、それから、事務局に御発言をお願いしたいと思いますけれども、ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
 それでは、黒澤委員、お願いします。
○黒澤委員 どうもありがとうございます。本年もよろしくお願いします。
 私は、先ほど阿部先生から融資制度の話がありましたけれども、それと、自己都合離職者の給付制限の件についてコメントさせていただきます。
 先ほどの12ページの融資制度の件ですけれども、これは教育訓練給付制度のようなものを被保険者以外の方にも拡大するお考えなのだと思います。ここでの対象者は被保険者以上に自分たちがどういった訓練をしたらいいのか、どういった訓練をすることによって市場でのエンプロイアビリティーが高まるのかということについて分からないと思います。ですから、そういう意味では、カウンセリングなどのより丁寧なものを要件として追加した上で、各人にとって有効な能力開発への誘導が不可欠なのではないかと思いました。
 もう一つ、7ページ、自己都合離職者の給付制限の期間を3か月だったのが2か月になっているところを、さらに1か月に短縮するということですけれども、そもそも失業給付というのは、そこにありますように安心して再就職活動を行えるようにするためということです。諸外国の実証研究によれば、失業給付によって就職意欲がそがれるということは共通にみられる、しかしそれがより質の高い転職につながるかどうかについては、実証研究においてもなかなかコンセンサスが得られていないなかで、今回の変更の影響はどうなるのか。自己都合離職者の方々であるということもあるので、是非事後的に検証していただきたいと思います。
 それから、諸外国の実証研究によれば、求職中に失業期間が延びると後で困るよ、仕事にますます就けなくなるよとか、どういった仕事だと今は求人があるよ、などのアドバイスを提供することによって、早期に、よりマッチの質が高い仕事に就くという結果が出ています。そういった知見を考えると、例えば現在は制度上、給付制限期間中に求職活動認定を受ける必要はないですが、例えば給付を受ける要件として、給付制限期間もハローワークに来てカウンセリングやアドバイス、相談を受けなくてはいけないといった要件を付加することも御検討いただければいいのではないかと思いました。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 大変貴重な御意見等をいただきまして、ありがとうございました。
 橋本委員から明示的に御質問の趣旨の御発言をいただきました。そのほかも含めて、事務局から御発言はございますか。
○尾田雇用保険課長 雇用保険課長でございます。
 各委員におかれましては、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 全てに対して網羅的に言及することは避けたいと思いますけれども、幾つかいただいた御指摘について御回答さしあげたいと思います。
 まず、阿部委員から3つほど御意見をいただきました。融資について、保険制度でこういった制度をやることについてどうかという御指摘をいただきました。今回求職者支援制度の中でこの融資制度をやるということで、純粋に保険制度ではございませんものの、委員からいただいた御懸念については十分踏まえた上で、もしこの制度をやるとなりましたら、この運用に当たりましては、しっかりと配慮してまいりたいと思っております。また、結果の評価につきましても、しかるべき時期にしっかりと検証しながら、その後の運用を考えていきたいと思っております。
 阿部委員からございました2点目の育児休業給付の引上げでございますけれども、私の認識でございますけれども、御指摘いただきました山口教授におかれましても、育児休業給付金のような現金給付についての効果については否定的な結果が諸外国でも出ている一方で、男性育休を取得促進する観点で一定期間給付率を上げることは効果があるということも山口教授は御主張されております。それが本当かどうかは私も検証できる立場にはございませんが、そのように私としては認識しておりまして、そういった観点もございまして、こういった今回の措置がこども未来戦略に盛り込まれたと認識しております。
 3点目の時短就業給付に関する阿部委員の御指摘でございます。今回こども政策全体を強化するという中で、この制度を雇用保険制度で講ずることが盛り込まれたところでございますけれども、一方で、この財源については、こども政策の新しい財源でございます支援金で講ずることにしております。そういった意味で、委員御指摘のように、もっと全体で考えるべきという御批判は受け止めた上で、そういった点も一部反映した上で、雇用保険制度としてはやるものの、財源としてはそのような形で、こども政策全体で考えているということで御理解いただければと思っております。
 また、橋本委員から御指摘いただいた点でございます。1点目の教育訓練休暇給付金に関する雇用保障に関しましては、今回給付だけということで講じたところでございまして、育児のように育児・介護休業法で雇用保障した上で休業給付をするという関係にはございませんが、将来的な課題として私どもとしては受け止めさせていただきたいと思います。
 また、給付制限につきまして、遡って適切性をどう評価するかということでございますが、こちらはハローワークで確認することを予定しております。
 また、この対象となる教育訓練につきましては、今のところ、教育訓練給付金の対象となる大臣指定の講座を念頭に置いているところでございまして、そういった雇用や就職に資することが明確であるものをまずは中心に考えた上で、それをしっかりとハローワークで確認するということで運用を考えているところでございます。
 また、黒澤委員から融資制度の運用につきましてカウンセリングを要件とすべきという御指摘、また、給付制限について、こちらについてはマッチング改善のために、給付制限を見直すに当たりましてカウンセリングを要件としてはどうかということを御指摘いただきました。こういった御指摘を踏まえまして、運用の改善を図ってまいりたいと思います。
 その他、石橋委員、新田委員からも貴重な御意見をいただきました。各委員からいただいた意見につきましては、しっかり踏まえた上で、まだ報告書が出た段階でございますけれども、この後、法案あるいは施行という段階におきましては、しっかりと各委員の御指摘を踏まえて運用してまいりたいと思っております。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 今の、あるいは先ほどの報告の説明に関してでも結構ですけれども、さらに御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 本日は雇用保険部会の報告という議事になっておりますけれども、特にございませんでしたら、ただいま課長からありましたように、種々有益な御意見等をいただいたところであります。それを踏まえ、受け止めさせていただいた上で、この報告について雇用保険部会の報告として了承するということでいかがでしょうか。御異議ございませんでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川分科会長 ありがとうございます。
 それでは、御異議はございませんでしたので、当分科会としては、本件は雇用保険部会の報告として了承したということとさせていただきたいと思います。
 事務局から今後の手続について説明をお願いいたします。
○尾田雇用保険課長 雇用保険課長でございます。
 御了承いただきまして、ありがとうございます。
 ただいま御了承いただきました雇用保険部会報告を踏まえまして、今後関連する制度改正が必要となってまいります。その関係で、早急に法律案の要綱を作成いたしまして、改めまして、当分科会におきまして諮問をさせていただければと存じているところでございます。諮問に当たりましては、まず、雇用保険部会で御議論いただいて、それを踏まえて、改めてこちらの分科会にもお諮りさせていただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○山川分科会長 以上が今後の運び方ということでございます。こちらについては、委員の皆様方から何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本議題につきましては、以上とさせていただきます。
 では、議題の2「「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」について」に移らせていただきます。
 では、事務局から説明をお願いします。
○髙田労働市場情報整備推進企画室長 労働市場情報整備推進企画室長の髙田と申します。
 私から「「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の作成について」ということで御説明させていただきます。
 資料2を御覧ください。
 まず、1ページですが、企業における職場情報の開示について、労働者がより適切に職業選択を行うため、また、企業にとって円滑な人材確保を図るために、開示の項目や方法を整理した職場情報の開示に関するガイドラインを策定するということで、「規制改革実施計画」において閣議決定されており、「令和5年度措置」することとされております。
 近年、法令等で企業における積極的な情報開示等が求められておりますが、職場情報を適切に求職者にお伝えすることは、企業と労働者のマッチング機能の向上のためにも重要と考えております。そこで、今年度、厚生労働省で委託研究事業を行いまして、求人企業、転職経験者、民間人材サービス事業者の皆さんにヒアリングを行ってきました。規制改革実施計画では開示に関するガイドラインということで書いておりますけれども、ヒアリングでいろいろお話を聞きますと、マッチングの方法としまして、求人票やホームページで広く情報開示するだけではなくて、面接や面談などの対面の場で求職者が求める情報について、きちんと丁寧に説明していく場を各企業さんが設けるなど、そういう工夫をされているというお話がありました。企業と求職者のマッチングのためには、広く情報を開示するだけではなくて、このような面接や面談等で情報を提示するのも一つの方法かと考えております。
 規制改革では、開示に関するガイドラインということで御指摘いただいているのですけれども、今回、広く開示する場合にとどまらず、面談等で求職者等に情報を提供する場合も含めて「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」ということで作成していきたいということで、1ページに記載させていただいております。
 手引の具体的な内容については、整理すべき事項(案)ということで、下に事務局案ということで3つ書いております。整理すべき事項については、御議論いただければと思うのですが、まず、既存の法令等に規定されている開示項目ということで、例えば女性活躍推進法では女性労働者の割合、男女の賃金の差異、労働施策推進法では中途採用者割合など各種法令でいろいろ定められているため、その辺りを少し整理してはどうかというもの。次に、多くの求職者等が求める職場情報ということで、これはヒアリングの中でいろいろな御意見を伺っているので、そこを一定程度整理できないかというもの。あと、求職者等への情報提供の在り方、先ほど申しましたとおり、開示に限らず面談の場あるいは別の場で様々な方法で開示や情報提供を行っていく際の留意点や、何をどのようにどういうタイミングで提供することが効果的かということを整理し、企業の皆様に参考にしていただくための手引とすることを考えております。
 続きまして、ページをおめくりいただきまして、3ページからですが、今、申し上げました委託研究で、求人企業、転職経験者、民間人材サービス事業者の皆様にヒアリングを行いまして、その結果について項目ごとに少しこちらで整理してお示ししております。
 まず、情報開示に対する基本的な考え方ですが、企業からは、開示の重要性に関する御意見や、あるいは転職者についても開示していないこと自体がマイナスイメージを受けるといった御意見がある一方、企業によっては、例えば応募してくるに当たって、自分のキャリアを生かせるかなど、特に見てほしい項目を先に判断してもらえるよう、その辺りを全面的にアピールして、労働条件など細かいところについては後で実際に来てもらって面談で説明しているという工夫をされて取り組まれているというお話がありました。
 多くの求職者が求める項目について、こちらはいろいろな御意見があったのですけれども、比較的多かったものとしまして、職場環境あるいはコロナ禍でテレワークの実施の可否が増えているといったところ、あるいは転職者の方などだと中途採用割合とか、そういったところを気にされているといった御意見がありました。
 提供に当たっての一般的な課題や対応策についてですが、まず、一般的に開示されている企業情報は、企業全体の情報が載っている場合が多い一方、転職者の方はどのような部署に所属するのか、配属予定の部署の情報についてむしろ知りたいといった御意見がありました。次に、資本市場向けの人的資本開示に関する意見というところで、昨今、人的資本について、企業で様々な開示の取組が進められておりますけれども、そちらも労働市場で使えないかということで、まだまだ使っていないものの使えるものもあるのでは御意見がありました。定量情報については、数字だけを見ると誤解を与えることがあるので、数字を出すのであれば、どういう定義でどういう解釈、なぜこうなるのかといった補足説明を入れたほうがいいのではないかといった御意見がありました。また、自社に不都合な情報については、きっちり開示して、ちゃんと誤解を与えないようにきちんと補足説明をして開示していくという方針で取り組まれている企業もある一方、開示して募集の間口が狭くなってしまうこともあるので、間口を広く取るために、最初からは開示せずに面談の中で説明していく、そういった御意見もありました。
 続きまして、4ページになりますけれども、正確性に関する意見、情報量に関する意見ということで、企業の方からは、情報量が多くなると、正確性の担保も大変だし、更新も大変になるといった御意見や、情報量が多いとなかなか見てもらえないという御意見があり、実際に転職者の方からも、情報量が多いとそんなに詳しくまで見ていませんというご意見も聞かれたというところです。
 また、多様な提供方法に関する意見ということで、一般に開示する以外の職場情報の提供の方法として、職業紹介事業者を通じて提供するといったケース、あるいは、最近だと採用選考と別にカジュアル面談という形で、選考に影響しませんという形で割と何でも聞ける場を設けて求職者さんからの御質問にお答えするとか、そういった工夫をされていらっしゃる企業のお話がありました。
 次に、採用サイト等に関する意見ということで、こちらは求人サイトや求人票からIR情報や人的資本など、労務関連のデータが結構いろいろ載っているので、そちらにリンクを掲載するなどといった考え方はあるのではないかといった御意見がありました。
 最後に、中小企業における情報提供に関する意見ということで、中小企業では情報開示しないと人に集まってもらえないというお話がある一方、ホームページをつくったり、データを載せても、データの更新に手間がかかってしまってなかなか進めるのが難しいというお話がありました。
 こちらについては、一つの厚生労働省の取組を御紹介させていただこうかと思うのですけれども、ちょっと飛ぶのですけれども、18ページを御覧ください。厚生労働省が実施している「しょくばらぼ」というホームページがありまして、こちらを活用いただくことを考えております。「しょくばらぼ」はどういうページかといいますと、現在法定開示が求められている項目で「若者雇用促進総合サイト」「女性の活躍推進企業データベース」「両立支援のひろば」といったほかのページで開示している項目の情報を、この「しょくばらぼ」に転載して、各企業の情報を一覧性を持って開示しているページになります。現在は、今申し上げました主要3サイトに掲載している企業だけの情報を取ってきていますので、そこをもう少し拡充し、項目も様々な項目を載せられるようにする、あるいはこの3サイトに載っていない企業でも自社で載せたいという企業については載せられるようするなど、そういった工夫を「しょくばらぼ」にすることによって、中小企業にとっても使いやすくしていき、厚生労働省で普及促進をしていくことで情報開示につなげていくといった取組を考えておりますので、御紹介させていただければと思います。
 戻りまして、4ページまで御説明しましたけれども、次は6ページを御覧いただければと思います。具体的な手引の作成に当たって、構成のイメージ案をお示しさせていただいております。次回以降、具体的に手引の案をつくって、再度御議論いただければと思っておりますが、まず、先ほどヒアリングでご説明した項目に沿って整理してはどうかと考えております。また、御意見をいただければと思いますが、まず「基本的な考え方」「多くの求職者が求める項目」、あと「提供に当たっての一般的な課題や対応策」ということで「提供の内容」「提供の方法」「その他」ということで、さっき申しました中小企業における対応や現行の法定開示項目についてもここの中で一定程度整理するということを考えております。
 7ページ以降は、今、おおむねヒアリングの概要で内容を申し上げましたけれども、御議論いただくに当たってどういった論点が考えられるかといったところを少し整理させていただいておりますので、簡単にお話させていただきます。
 まず、7ページを御覧いただければと思いますが、基本的な考え方ということで、冒頭申しましたとおり、企業が求職者等に提供する情報、あるいはどういったタイミングで提供するか、各企業でいろいろ工夫されていらっしゃって様々であり、求職者さんが求める情報もいろいろあるという中で、手引に記載すべき事項、取り組むべき事項としてどのようなことがあるのかという点を論点として提示しております。具体的に事務局で考えている案としましては、冒頭申しましたとおり、各種法令等に規定されている開示項目や、多くの求職者が求める職場情報、求職者等への情報提供の在り方などを整理できないかと考えております。
 また、基本的な考え方として、職場情報の提供の内容やタイミングが先ほどから申しましたとおり企業で様々ある中、手引の中で一律にこうしなさいと定めるのではなく、各企業がその辺りは考えて使えるような形で、こういうケースにはこのページを見ればいいとか、そういった形で使えるような形で手引を整理していくことがいいのではないか、そういった方向で考えているところです。
 続きまして、8ページを御覧ください。多くの求職者等が求める情報は様々あり、どのように整理していくかということで、次回手引の実際に具体的に案をつくるに当たってもう少し検討したいとは思っていますが、ここでは一案としまして、企業・業務に関する情報、転職者の関心事項、職場環境その他といった形で項目別に分けております。どのような形で整理していくかは少し検討したいですが、何か御意見がありましたらいただければと考えております。
 続きまして、9ページ、提供の内容についてということで、こちらも先ほどヒアリングで整理した内容に基づいて少しまとめさせていただいておりますけれども、まず、部署単位・プロジェクト単位での職場情報の提供については、先ほどヒアリングの意見でもご説明しましたが、一般的に開示されている情報は企業全体の情報である一方、求職者が求める情報は部署単位やプロジェクト単位の情報や職場環境などといったご意見がありましたので、手引の中で、例えば部署単位の情報についてはなかなか細かい部署単位での情報の開示は難しいかと思うので、例えば面談等の場で部署単位の情報をお伝えするとか、そういった取組を手引で御紹介するみたいなことを考えております。
 次に、IR情報や資本市場向けの人的資本開示について、大企業中心でこちらは取組が進められている情報かと思うのですけれども、労働市場への活用を促していけないかというところで論点として上げさせていただいております。
 その下、定量データあるいはその下の実績が低調な取組といった点について、こちらは先ほどご紹介したヒアリングでも意見がありましたけれども、解釈が難しいとか、あるいは誤解を与えたりするというところがあるので、定義を明確にしたり、あるいは注記や補足をきちんとする、あるいは実績が低調な取組みたいなところは、自社の魅力みたいなところを少しアピールするとか、その辺のバランスみたいなところも考えられるのかといったことを記載することを考えております。一方、低調な取組については、入社後にそんな話は聞いていないといったことにならないように、求職者が求める情報については適切に御説明していただきたいというところは、少し盛り込めないかと考えております。
 次に、不正確な職場情報の提供を防止する取組について、定義が不明確になることがないように明確化する、あるいは情報更新についても、なかなか情報更新が難しい、数字が古くなってしまうという場合であっても、時期を明確にするみたいな取組は一つ考えられるのではないかと考えております。
 情報開示の量について、こちらは、各企業で今でも工夫されていらっしゃるところですが、各社の採用戦略を踏まえた開示を行うことが考えられるのではないかとしております。
 10ページですが、求人票や募集情報による開示のほか、多様な提供の方法やタイミングについてどう組み合わせるかということで、最初に求人票や応募の段階で開示する情報と、選考のときに面接や面談の中で提供する情報について、いろいろ組合せは考えられるかと思いますので、これで全てというわけではないかと思うのですけれども、例として、1つ目は応募のときには企業全体の情報を提示して、選考の段階で部署単位の情報を少ししっかりお伝えする、2つ目は応募段階では求職者が共通で皆さん関心を持っている情報で引きつけて選考段階で個別の関心事項の話をする、あるいは3つ目は定量的な情報は開示しておいて、データのスタンスやどういう取組をしているかを補足していくとか、いろいろな提供や開示のタイミングや組合せはあるかと思いますので、その辺を少し御紹介できればと思っております。
 その次に、IR情報も求職者にとって有効な情報が掲載されていると思うのですけれども、どのように届けていくか、先ほどの情報量の話もありますし、IR情報は膨大な情報が載っていますので、少しリンクを貼って誘導するとかをうまくすることによって、例えば資本市場向けの情報についてもうまく活用できないかといったところの御提案をさせていただいております。また、IR情報は企業全体の情報ですので、さっき言いましたとおり、部署単位の情報を少しお示しするという組合せも考えられるのではないかということをご提案しております。
 中小企業の提供に当たっての留意すべき点や対応策ということで、先ほど御紹介させていただいた「しょくばらぼ」について、厚生労働省の取組として御紹介させていただきましたけれども、そちらも活用できるのではないかといったところを御提案させていただいております。
 その他、職場情報の提供に当たって考えられる論点ということで、何か御意見がありましたらいただければと考えております。
 11ページ以降は参考資料ですので、今年度実施した調査研究の概要、現行の法定の開示項目、あるいは資本市場における情報開示の状況、ヒアリングのもう少し細かい概要、その他参考データ集を少し整理しておりますので、説明は割愛いたしますけれども、必要に応じて御参照いただければと思いますので、よろしくお願いします。
 私からの説明は以上になります。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして、御質問、御意見等がありましたら、先ほどと同様の方法でお名前をおっしゃってから御発言をいただければと思います。御質問、御意見等はございますでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今回御提案いただいている手引の作成によって、企業から求職者に対して十分な情報提供がなされ、より適切な職場の選択、それに伴う入職後のミスマッチ防止につながることを期待しております。
 その上で、御説明や資料の記載から、正規雇用の中途採用がメインになっていると想定されますが、場合によっては、非正規雇用で働くことを希望する求職者の方もいらっしゃると思いますので、企業が提供する情報については、そういった方たちにも有益な内容とすることを念頭に手引を作成していただくことが重要かと考えております。
 提供される情報については、入社後の処遇、キャリア形成、能力開発に資する制度、また、非正規雇用から正規雇用への転換率など、求職者が求める情報は様々あると思いますので、積極的に開示をしていただくことが重要だと考えております。
 また、9ページの論点にあるように、実績が低調といった不都合な情報であったとしても、補足を入れるなどしつつ、積極的に開示していくことで、各企業の取組が改善されることが促されると思いますし、冒頭に申し上げたように、早期の離職防止などのミスマッチの防止にもつながると考えております。
 7ページに、提供する情報や提供のタイミングを一律に定めるのは難しいとあります。求職者が就職活動のどの段階でどのような情報を求めているか、目安のようなものを盛り込むことで、企業が求職者に適切に情報提供を行えるのではないかと思いますので、そういった点を踏まえて検討していけばよいのではないかと考えております。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、大下委員、どうぞ。
○大下委員 御説明ありがとうございます。
 内容について、特に異論はありません。雇用のミスマッチの解消に向けて、あるいは今、人手不足で非常に困っている中小企業の採用拡大に向けて役立つ内容になっていると思っていますし、効果を発揮することを期待したいと思っております。
 他方で、従前からこの手のお話をする際に申し上げておりますのは、人手がいないことは、こうした作業をする人手も足りないというのが中小企業の現状であります。これもいつものお願いで大変恐縮ですけれども、ハローワーク等で中小企業が求人票を提出する場合あるいは求人の相談に訪れた場合に、こうした開示をすることの意義、開示に向けての支援、また、開示する内容自体の充実、職場環境の整備も非常に重要になってこようかと思っております。今回の手引の公開と併せて、引き続き中小企業の採用力強化に向けた御支援についても厚生労働省としての取組をぜひお願いをしたいと思います。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、宮田委員、お願いします。
○宮田委員 ANAの宮田でございます。
 10ページのところで、少し感想を含めて意見を述べさせていただければと思います。全般的に情報開示という観点では、私も企業でESG情報の開示等を担当していますけれども、今は非財務情報の開示がかなりグローバルでも進んでいるところでありますので、企業の情報開示については、ここにあるようなIR情報や今後の非財務情報の開示をうまく活用ということは、ぜひ御検討いただければと思っています。
 もう一点が、どうしても情報開示、情報を出すだけであったりとか、データを出すだけという観点になるかと思うのですけれども、今回最初のところにあるように、多様な情報のタイミングがあるということを書かれていましたので、特に企業の立場としては、情報を一方的に出すだけではなくて、採用の段階でよりコミュニケーションを取るとか、情報開示だけではなくていかにコミュニケーションを取りながら伝えていくかという観点も必要かと思っていますので、ぜひその辺も含めてこの手引をまとめていっていただければと思いました。
 以上になります。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 ありがとうございます。
 職場情報を開示して、それがいろいろな形で役に立つというのは非常に結構だと思うのですけれども、中身がかなりいろいろなものが入っている印象があります。特に、資料でいいますと14ページ以下になりますが、現在こういうものが法定開示にされているということで、一方で、女性活躍推進法や労働施策総合推進法に基づくものなど、様々な企業全体に関する情報があり、これに対して、次のページになりますと、今度は個別の求人に当たっての、職安法や労基法上の労働条件の明示があり、こちらはまさにその人のための情報で、場合によっては労働契約の内容にもなり得るものですから、だいぶ性格が違っているように思います。その辺の今、求められているものの位置づけと性格について、しっかり整理をしていただくことが有益である気がいたします。
 また、その後ろにありますように、最近はIRですか、資本市場の要請として有価証券報告書における対応も求められており、その中で、労働法令とは違う形で、しかし、いろいろな共通するような情報が出てきます。いわゆるコーポレートガバナンスコードでも、今では中核人材の登用における多様性の確保について開示が求められております。このように、趣旨も性格も本当に様々なものがありますので、今回、手引を作るに当たっては、求められる情報にはどういうものがあって、それぞれがどういう位置づけになっているのかを、ぜひ分かりやすく整理していただければと思います。それを基に、各企業が、必須なものはもちろんカバーしつつ、さらにどこにどういうふうに力を注いでやろうかとか、あるいは求職者のほうもそれをどのように活用しようかとか、そういう手がかりになるのではないかと思います。
 それから、いわゆるブラック求人がかつて問題になったときに、求人不受理についていろいろ強化されたと思いますけれども、そういう情報も求職者にとって実は非常に重要な気がしますので、そこもちゃんと活用できるような形で手引に載せていただければと思っております。
 
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 今日御提案ということなので、私からも個人的に申しますと、ミスマッチの解消や、それから、企業にとってもPRの機会になりますし、また、市場の評判を利用して政策を誘導していくという手法にも使えるので、非常に意義の大きいものではないかと私としても思っております。
 もう一つ、この手引そのものについてではないのですが、今、中窪委員からお話もありましたけれども、情報の受け取り手といいますか、求職者にこういう情報が開示されていて、それは非常に有益だということを周知したり、教育したりしていくことも意味があるのではないかと思いました。「しょくばらぼ」ではないのですが、「女性の活躍推進企業データベース」を授業で紹介しておりましたら、男女問わず学生は非常に興味を持って自分で検索したりもしておりましたので、そういう受け取り手への働きかけも有益ではないかと思ったところでございます。個人的な感想も申し上げました。
 ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
 それでは、本議題は以上になります。
 本日いただいた御議論を踏まえまして、引き続き御議論を続けていただくことにいたしたいと思います。
 それでは、本日予定されておりました議題は以上でございますけれども、事務局から1点御発言があるということですので、お願いいたします。
○長良総務課長 職業安定局総務課長でございます。
 今般発生いたしました能登半島地震に関しまして、一部報道等もございますので、現状を御報告させていただきたいと思います。
 能登半島地震に関しましては、被害状況、それから、厚生労働省全体の対応につきましては、逐次ホームページなどで情報発信をしているところでございますが、様々な情報がある中で、いろいろな雇用労働分野における取組についても適時にこの分科会を含めて様々周知を図っていければと思っているところでございます。
 報道では、特に総理から、被災地の要望なども踏まえまして、激甚法に基づく雇用保険法の特例や雇用調整助成金の特例措置などについて速やかに検討をする旨の言及があったと伺っているところでございまして、現在対応を進めているところでございます。
 企業活動や雇用への影響をしっかり把握しながら、過去の災害への対応状況などを踏まえまして、必要な対応を速やかに検討し、逐次本分科会を含めて皆様にも情報を提供していきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 以上です。
○山川分科会長 また具体的なことが出てきましたら、よろしくお願いいたします。
 今の点につきまして、それから、本日の議題全般につきまして、委員の皆様方から何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。
 皆様、朝早くから大変ありがとうございました。