第8回雇用政策研究会 議事録

日時

令和6年2月22日(木)16:00~18:00

場所

本会議会場
厚生労働省 専用第14会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階国会側)

議事

議事内容
2024-2-22 2023年度第8回雇用政策研究会

○雇用政策課長補佐 定刻になりましたので、ただいまより、2023年度第8回雇用政策研究会を開催いたします。
 本日は、阿部委員、黒田委員、玄田委員、齋藤委員、佐藤委員、清家委員、鶴委員、山本委員が御欠席となっており、荒木委員、神吉委員、JILPTの渡邉様が御対面での御参加、宮本委員、大竹委員、堀委員はオンラインでの御参加となります。
 なお、石垣大臣官房審議官は公務のため欠席となっております。
 今回は、外部有識者として、JILPTの渡邉様を臨時委員としてお招きしております。
 また、労働力需給推計の議題の関係で、年金局数理課長がオブザーバーとして参加となっております。
 なお、労働力需給推計の議題については、資料4の議事の公開の基準にのっとり非公開とさせていただき、資料3については関係者にのみ後ほど配付いたしますので御了承ください。
 それでは、議事に入らせていただきます。今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 皆様、こんにちは。それでは、早速始めたいと思います。
 前回の第7回のときに、阿部委員から地域雇用対策に関する議論を投げかけられたと思います。初めに、まず地域雇用対策課長から資料1について説明をお願いしたいと思います。
○地域雇用対策課長 地域雇用対策課長でございます。
 前回の阿部委員の御提案と、あとは井上臨時委員からもお話をいただきまして、それを踏まえて本日「地域雇用対策について」ということで発言をする機会をいただきまして誠にありがとうございます。
 早速ですけれども、資料1の「地域雇用対策について」、1枚おめくりいただきまして、スライド1を御覧いただきたいと思います。
 この資料は地域雇用対策全般を網羅したものでございますが、現下の課題認識といたしましては、私ども地方自治体に行ってお話を聞く機会が多いのですけれども、必ずと言っていいほど課題が3つあります。
 1つは、資料にもございますとおり、若者を中心とした労働力人口の流出、それから人手不足、これは地域によっては全業種で不足しているというところもあれば、業種間の若干の濃淡があるという話も聞くことがございます。
 それから、全体的に有効求人倍率は高いけれども、やはりミスマッチが生じているということで、資料にもマッチング支援ということがございますが、この3つの大きな課題について対応する必要があると認識をしているところでございます。
 「主な施策」でございますが、大きく分けて3つに区分をしております。
 1つ目が資料左側でございますが【地方に魅力的な雇用の場をつくる取組への支援】、2つ目が資料右側の上で【地方へのUIJターンの支援】、それから【その他個別地域に限定した支援】が幾つかございます。
 本日は時間の関係上、前回の阿部委員の御提言を踏まえたものを中心として、資料左側の「主な施策」の2つ目の○と3つ目の○、これを一くくりに地方自治体に対する支援ということで御説明をさせていただきたいのと、資料右側の【地方へのUIJターンの支援】、この大きく2つについて資料に基づいて説明をさせていただきたいと思います。
 それでは、スライドの2ページを御覧いただきたいと思います。
 「地域雇用活性化推進事業」で、これは市町村や地域の経済団体等から構成される地域雇用創造協議会への委託事業になります。この後、説明いたします4ページに「地域活性化雇用創造プロジェクト」、いわゆる地プロと呼ばれているものですが、こちらが都道府県に対する補助事業で非常にスキームは似ておりますので、細かい事業の内容についてはこの後、4ページで御説明をしたいと思います。
 まず、地域雇用活性化推進事業でございますが、「事業の概要」のところにありますとおり、地域が提案をする事業構想の中からコンテスト方式で選抜をして事業を実施しているものでございます。
 「事業のスキーム・実施主体等」のところに「対象地域」というのがございます。雇用機会の不足している地域であるとか過疎等地域、こうした地域指定をして、この地域において事業提案ができるという仕組みにしているところでございます。
 内容につきましては、まず資料の真ん中の少し下のところに地域雇用創造協議会というものがございます。これは、市町村を中心として地域の関係機関で構成する協議会でございますが、この協議会に対して各都道府県労働局が委託をするという形の事業になっているところでございます。事業内容については、後ほど触れたいと思います。
 スライドの3を御覧いただきたいと思います。
 こちらは、地域雇用活性化推進事業を現在実施中の地域を表しているものでございます。都道府県の数でいいますと22道府県で、現在31の地域で実施をしているところでございます。御覧のとおり北は北海道から南は沖縄まで、割と全国満遍なくこの事業は活用されているというところでございます。
 続きまして、4ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらは、先ほども申し上げましたとおり都道府県の補助事業になっておりまして、いわゆる地プロと呼んでおりますが、「事業の概要」のところを御覧いただきたいと思いますけれども、【実施規模】が事業費の8割補助という割と高率な補助になっておりまして、【実施期間】が最大3年間となりますが、これは資料の事業スキームの真ん中に「都道府県」と書いてありますとおり、都道府県が実施主体になるところでございます。厚生労働省としてはこれは補助金になりますので、都道府県に対して交付決定をして事業を実施しているというものでございます。
 具体的にどのような取組かというのは、先ほど御説明した市町村等への委託事業と非常に近い事業スキームになっておりまして、下段の左側に「事業主向け支援」というものがございます。また、資料の一番右に「求職者・労働者向け支援」というのがございます。この求職者と事業主をいわゆるマッチングさせるために、資料の真ん中下段に「就職促進支援」というものがございます。この3つの事業を主として実施をして、地域における良質な雇用を創出するというのがこの取組のスキームになっております。
 ここで前回、阿部委員のほうから、10年前の地域雇用対策はまさに新たに雇用を創出するというのが中心であったけれども、今は雇用の創出をすると逆に人手不足下で人手不足に拍車をかけてしまうのではないかなという御指摘がございました。
 そうした中で、今どういうことをやっているかということで、阿部委員のほうから、地方の企業でDX化によって労働の質を高める取組などが行われているというお話があったと思いますが、この資料の左側、「事業主向け支援」のところに「労働環境の整備」「事業所の魅力向上」「生産性の向上等」というのがございますとおり、現在の主流の取組としては、企業に対してこうしたDX化も含めて働き方改革などのセミナーであるとか伴走型支援を通じて企業の方に各取組を理解していただく。
 これによってどういう効果が現れるかといいますと、例えばセミナーや伴走型支援を受けて、生産性向上を上げて、収益を上げて、結果として事業拡大をして新規の雇用を生むということももちろんあるのですが、それ以上にDX化や働き方改革によって労働環境を改善することによって、その企業が求職者から選ばれるという形で採用につながるというのが割と最近の主流になっていると考えております。やはり人手不足下でございますので、リーマンの後のような雇用失業情勢の厳しい時代とは若干取組の内容も変わってきているのかなと考えているところでございます。
 ちょっと資料にはございませんが、個別の事例を紹介させていただきますと、この地プロのある県の取組を活用した企業の例でございますが、ここは外国人を採用している企業で、今後も外国人材をさらに雇用したいという企業が、地プロ事業の日本人従業員向けの理解力研修であるとか、あるいは外国人材向けのビジネススキル研修、こうした研修を受講した企業が従業員のスキルアップにつながるだけではなくて、この企業がこうした従業員に対する研修を積極的に受講させているということが認知をされて、魅力ある企業として新たに3名の高度人材を採用につなげたというような例もございました。
 また、これはほかの県のほかの企業の取組でございますが、企業のDX化を進めるためのセミナーや伴走型支援というのはかなり多くやっているのですけれども、こうした企業はこういったセミナーや伴走型支援を通じて業務効率化が図れました。これによって労働環境の改善が図れて、結果として魅力ある職場として認知をされて採用が進んだというような例もございます。
 このように、阿部委員から前回御指摘があった、まさに現在の地域雇用対策というのは10年前と異なるのではないかなということは、現在の事業の取組内容や成果としても表れているのかなと考えているところでございます。
 スライドの5を御覧いただきたいと思います。
 こちらは地プロの実施地域でございますが、これは47都道府県全てが実施できるという仕組みになっておりますが、現在実施しているのはピンクで表記しております29の道府県地域になってございます。それで、青囲みにしているのは現在は実施しておりませんけれども、過去に前身事業も含めて実施をした経験のある県ということで御理解をいただければと思います。
 資料の下のほうにこの間の取組状況を書いておりますけれども、大体、地域としては27、28、29地域くらいで前後しているのかなと考えているところでございます。
 続きまして、最後に6ページでございますが、UIJターン支援、「地方就職希望者活性化事業」について御説明をさせていただきたいと思います。
 まず現状認識についてでございますが、資料がなくて大変申し訳ありませんけれども、やはり新型コロナの影響によって地方への移住、あるいは地方への就職の関心が高まってきているというふうに認識をしております。
 他方で、やはり東京圏を始めとする都市部への人口集中、これがアフターコロナでかなり進んでいる状況がございます。
 御存じかと思いますけれども、2023年の数字が総務省から発表されておりますが、東京圏の転入超過の数はコロナの前の約85%程度まで戻っている。恐らく、今後右肩上がりでさらに転入超過数が増えるのではないかなというような状況も承知をしているところでございます。
 それからまた、有楽町の交通会館にNPO法人が運営するふるさと回帰支援センターという施設がございます。こちらは移住相談をしている施設でございますが、全国47都道府県のほぼ全ての相談窓口に常駐の相談員がいて、そこで移住相談をしている施設でございますが、ここの相談件数を見ると令和3、4、5年と右肩上がりで相談件数が増えております。また、その相談件数のうち20代、30代が約5割を占めている。40代まで入れれば、約7割になる状況というように聞いております。
 こうした状況を見ますと、地方移住には関心のある若者がやはり多いと言えますので、私どもとしてはやはり地方就職を希望するこうした若年者の方々に、いかに地方の企業の魅力を伝えて適切に提供するということが重要ではないかと考えているところでございます。
 こうした現状認識の中で個別の事業について御説明申し上げますけれども、スライドの6の2の「事業の概要・スキーム、実施主体等」のところの左側がLO活プロジェクトと呼ばれている民間企業に対して委託をしている事業でございます。これは、潜在的な地方就職希望者の掘り起こしであるとか動機づけをやっている事業でございますが、セミナーやイベントの実施であるとか、あるいは新卒応援ハローワークへの誘導であるとか、そうした取組を行っております。
 また、2つ目の〇にございますとおり、地方就職に役立つ様々な情報を整理収集して地方就職を希望する方にその情報を提供するということを主にやっている事業でございます。
 資料の右側がハローワークでの取組になりますが、1つ目の〇にございますとおり、東京、大阪のハローワークに地方就職支援コーナーというものを設置しております。これがUIJターンの専用窓口になりますが、ここで相談者の相談に応じているということでございます。
 資料の右側に(支援内容)というのがありますが、例えば2つ目に「オンラインを活用した担当者制による個別支援」というのがありますけれども、実際に地方就職を希望する方の地方の現地のハローワークも、例えばハローワークインターネットサービスの求職者マイページによって情報提供をしたり、これは全国ネットワークの強みを生かして今後もより一層こうした取組に力を入れる必要があるのではないかと考えております。
 前回、井上臨時委員から、中小企業が提供できる就労に関する魅力を見出して、その魅力をうまく求職者に伝えることが大変重要であるという御発言があったと思いますが、まさにこのUIJターンの支援については地方就職を希望する方々に対していかに地方企業の魅力などを伝えることが重要ではないかと考えているところでございます。
 繰り返しになりますけれども、これまで以上にハローワークの全国ネットワークを活用して、このふるさと回帰支援センターにはハローワークが併設をされておりますので、このハローワークの相談者に対して地方、受入れサイドのハローワークからオンライン機能を活用した地方企業の求人情報、あるいは求人の情報だけではなくて、地方移住者の方の関心のある生活支援の情報であるとか、そういったことをしっかり伝達をして、地方就職を希望する方の就職支援につなげたいと考えているところでございます。
 大変駆け足になりましたけれども、地域雇用対策の概要について説明をさせていただきました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 御質問はあるかと思いますが、事務局から資料2について説明した後でしたいと思います。
 では、資料2についてお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。事務局でございます。
 資料2につきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 まず1枚目でございますけれども、今後取りまとめに向かっていくに当たって過去どのようなことがあったのかということを少し振り返りたいと考えてございます。
 今年度の雇用政策研究会でございますが、多くのプレゼンターの方に御登壇をいただきました。テーマとしては5つございます。
 まず1つ目のテーマでございますけれども【女性の多様なキャリア形成・働き方】といったテーマがございました。例えば、藤見様にはブランクがあった女性の再就職支援について実際の取組を御紹介いただきましたし、牧野様にはジェンダー格差について理論的な御説明をいただきました。
 また、2つ目の議題のところでございますが、【新たなテクノロジーが雇用に与える影響】につきましては松尾様から<生成AIの技術動向と影響>についてお話もいただきましたし、日本マイクロソフト様からは実際の活用事例などについて御紹介いただいたところでございます。
 また、3つ目のテーマの【ミドル・シニアを含む多様なキャリア形成・働き方】につきましては、石山様から実際に高齢者のキャリア形成に向けてジョブ・クラフティングが重要なのではないかというような御提案をいただいたところでございます。
 4つ目のテーマは【人的資本投資・労働市場の基盤整備】でございますが、大湾様からは人的資本の開示と新しい人事の役割といったことをお話しいただきました。
 また、5番目のテーマ、【地域雇用・外国人労働者】、まさに前回のところでございますけれども、井上様からは地域の雇用に関する課題の整理を、是川様からは国際労働移動の実態といったテーマでお話をいただいたところでございます。
 2枚目でございます。
 そういったことにつきまして、今後どういったことを議論していくかといったところのまずはたたき台のようなものをお示しさせていただいてございます。
 まず右下のところを御覧いただければと思いますが、これまでの雇用政策研究会のテーマについて3回分お示しをしております。
 一番下の2018年度でございますけれども、その際には「~人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて~」といったテーマで報告書の取りまとめが行われました。
 その後、2回はコロナ禍で開催されておりまして、例えば2020年度ですと、コロナの中でセーフティネットの機能強化とデジタル技術を活用した雇用政策が重要なのではないかというような報告書を御提案いただいてございます。
 そして、前回でございますが、2022年度でございます。「~コロナ禍の経験を踏まえた、不確実性に強いしなやかな労働市場の構築に向けて~」というテーマで、コロナ後も見据えた政策の在り方について御提言をいただいたところでございます。
 今回、1枚目でお示ししましたとおり、様々なテーマをご議論いただいておりました。
 まず、それを踏まえ少し方向性のようなものを記載させていただいたところでございますが、今後の日本の労働市場は人口減少が進む中で人手不足感が一層高まることが想定される。そのため、これまで以上に多様なバックグラウンドの方々が自身の希望する働き方で労働参加できる仕組みづくりが重要なのではないか。
 また、2つ目でございますが、より多くの人の活躍を促していくためには、長時間労働に代表される慣例的な働き方を前提とするのではなく、個々の労働者の事情に沿った働き方を前提とした労働市場を構築していくことが必要なのではないかといったところを大きな方向性として、まずはたたき台としてお示しをさせていただいております。
 その下に、今後御議論していただくに当たってトピック案のようなものを少し羅列させていただいております。
 まず、最初は「我が国の経済・労働市場の変化」につきましてまとめたいと思ってございます。
 その次に人手不足のテーマであったり、その下でございますが、「女性のさらなる活躍に向けて」といったところ、そしてその下でございますが、「労働生産性向上に向けたテクノロジーの活用」といったところがございます。テクノロジーの活用の部分は既に中間整理をさせていただいておりますので、それをある意味引用、そしてブラッシュアップするような形にしたいと思ってございます。
 最後は「多様化に沿ったキャリア形成」といったところで、経済社会情勢が変化する中でのキャリア形成の在り方というところを報告書に盛り込んでいきたいと考えてございます。
 事務局からは以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 報告書のトピック案について、これも議論をまたしていただこうと思います。どういう柱をつくったらいいか、今回の報告書の特徴をどうするかというようなことについても皆さんから御意見をいただきたいと思いますが、まず最初に先ほど地域雇用対策について御説明いただきましたので、これについて何か御質問、御意見ございましたらお願いしたいと思います。どなたでも結構ですので。
 それでは、宮本委員どうぞ。
○宮本委員 御説明ありがとうございました。
 前回、阿部先生のほうから御発言があったときに、おおむね納得しつつもちょっと確認させていただきたいなと思ったこともあったのですけれども、最初のほうにしゃべってしまったというか、カードを切ってしまったので黙っていたところです。それで、先ほど資料の御説明をいただいてかなり納得感は高まったのですけれども、念のため発言させていただきたいと思います。
 といいますのも、やはり人手不足、地方の人手不足は明らかに事実と思いつつ、その雇用機会の創出が人手不足を強めてしまうというのはちょっとミスリーディングな部分もあるかなと思った次第です。
 といいますのも、労働力調査などを拝見すると、人手不足の一方で、労働力調査は地域ごとに出ていないので少し一般的なデータになってしまいますけれども、失業者自体はむしろ増大をしている。それから、最近労働力調査で未活用労働指標というのを取っていて、例えば短い時間働いているのだけれどももっと働きたいという、いわゆる追加就労希望就業者、これも女性を中心に増大しているわけなんですね。
 そうなってくると、人手不足か、失業か、労働力の未活用かという二択の時代が終わって、そこにどうマッチングを生み出していくのか。その場合も、マッチングというと、これまではどうしても供給側ですね。働く側に働きかけるマッチングが中心であった。キャリア意識の形成とか、ニーズに合った人材育成というところだったわけですけれども、これからのマッチングというのはやはり雇用条件の硬直性のようなところに働きかけていく。需要側に働きかけていくマッチングというのが非常に重要になってくるのではないか。積極的労働市場政策の本場の北欧でも、今、需要サイドの積極的労働市場政策というのが一つの焦点になっているわけであります。
 そうした中で資料1を拝見したときに、旧来のマッチング、供給側に偏ったマッチングになってはいないかという疑念を持っていたのですけれども、今の御説明をお伺いする限りは、DX、働き方改革を通して需要側に働きかけるんだ。
 ただ、資料1を率直に読むとその部分は見えないわけではないんだけれども、ちょっと見にくいなと思いましたので、ぜひ報告書などではその辺りを丁寧に説明していただければと思います。
 その上でさらに、例えば資料1で説明いただいている地域雇用活性化推進事業で、これの対象は有効求人倍率が全国平均を下回るという条件があるわけなのですけれども、実は先日、秋田の地方新聞のインタビューを受けまして、これは地方創生10周年というところで、10年たってもなかなか秋田の中では雇用が行き渡らないのだがどうなんだろうかというお話だった次第です。それで、あるんだけれども、秋田は実は有効求人倍率は全国平均を上回っているわけですね。
 ところが、前回御説明というか、資料のあった労働力参加率で見ていくと58%にとどまっているということで、ここも人手不足と、やはりみんなが活躍し切れないという状況が同時に進行しているという事例なのではないかと思います。
 まさに需要側にも働きかける施策であるならば、例えば地域雇用活性化推進事業、この最初のスクリーニングの条件ですね。これを見直すということも考えてよいのではないかと思いました。これが2番目です。
 3番目は言わずもがなというか、ないものねだりになってしまうのですけれども、やはり地方の雇用といったときに公的価格に基づく雇用、つまり介護とか保育、あるいは医療を含めてですけれども、ここをやはり議論の対象にせざるを得ないが、なかなか縦割りでそこが難しくなっている。どこかこの壁も破れるといいなというふうに思っています。これは付け足しです。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 では、課長からお願いします。
○地域雇用対策課長 宮本委員、ありがとうございます。
 まず、人手不足等といわゆる新規雇用の創出との関係についてちょっとミスリーディングになるというお話は確かにそうだと思います。私どもの地域雇用活性化推進事業と地域活性化雇用創造プロジェクト、いずれも生産性の向上に取り組むような事業というのはDXであるとか働き方改革を通じてかなり今、多くなっているのですけれども、ただ、最終的には雇用の創出、あるいは処遇改善、これを必ず目指す取組にしております。また、地域によっては当然良質な雇用を創出する必要性というのがまだまだある地域はたくさんありますので、そういった意味ではやはり雇用の創出部分は大事ではないかと考えております。
 また、需要側に対する取組ということであれば、確かに阿部委員がよくおっしゃるのは、やはり企業の働き方改革であるとかDXの取組、これをしっかりとやるべきではないかということで、この地プロについても活性化事業についても企業向けの支援、もちろん求職者向け支援も大事でありますのでやっておりますけれども、企業に向けた取組が主流になっているのかなと考えているところでございます。
 それから、地域雇用活性化推進事業の対象地域のスクリーニングの話がございましたが、まず地域雇用開発促進法に基づく地域ということで、有効求人倍率に着目した中で地域指定は行っております。
 ただ、そうしますと先ほど委員がおっしゃったように、割と過疎的な地域であっても有効求人倍率は結構高い地域がありますので、そこで対象地域にならないという状況もございます。
 ただ、プラスアルファで現下の状況にも鑑みまして、雇用機会不足地域のほかにいわゆる過疎特別法で定める過疎等地域、あるいは今回石川県の地震があったように被災を受けた地域、こうした地域もこの活性化事業の提案ができる地域ということに指定をしておりますので、その辺は現下の情勢を踏まえて対応が必要かと考えているところでございます。
 私からは以上です。
○樋口座長 よろしいですか。
○宮本委員 ありがとうございました。
 あとは、雇用条件といったときに広い意味での障害等々ですね。その働きにくさみたいなものもそれによる労働時間の調整等も入ってくると思うのですけれども、ここに触れるとこの研究会の対象とはちょっとずれてくるところも承知しているわけで、そのグレーゾーンみたいなものは少し取り込んでいくという発想を持っていただければとも思いました。
 でも、御説明ありがとうございました。納得しました。
○樋口座長 次にどなたかいらっしゃいますか。
 大竹さん、いいですか。
 では、荒木委員からどうぞ。
○荒木委員 御説明ありがとうございました。
 地プロのほうでしょうか、伴走型支援という御説明がありました。これは厚労省が都道府県を主体として実施しているということで、この伴走型支援の主体も都道府県ということになるのか。伴走型支援は大変重要だと思うのですけれども、これがうまくいくためにはどういう人材がどうウォッチしていくかという辺りをもう少し御説明いただければと思いました。
○樋口座長 では、お願いします。
○地域雇用対策課長 活性化事業でも伴走型支援というのは結構主流でやっているのですけれども、この地プロに関してはまず事業実施主体は都道府県になります。
 ただ、都道府県の職員が当然、伴走型支援をしているのではなくて、その産業施策に応じたいわゆる業種の分野、重点分野などを定める中で事業をやっているのですけれども、その重点分野の専門家を個別に企業に派遣をして、年間を通じて例えば6回ならば6回、7回ならば7回という形で綿密に支援をして、特に中小企業ですけれども、いろいろな気づきを与えるというような取組になっております。ですから、専門家を派遣しているという形ですね。
○荒木委員 ありがとうございました。
○樋口座長 大竹さん、途中で失礼しました。どうぞ。
○大竹委員 取りまとめに向けた整理のところのコメントでもいいですか。
○樋口座長 では、それはまた区切って後で。
○大竹委員 分かりました。
○樋口座長 ほかに地域の問題はありますか。
 たしか、このプログラムが全体に始まったのが10年前という話で、消滅可能性都市を我々、本で出して、それを受けてということだったと思うんです。そのときの問題というのは、やはり過疎の問題ということで、人口というのが大きなポイントになった。これまでの厚労省の取組としては、求人があって、片方で求職者があって、どういうふうに求人を増やすか、求職者を増やすか、そのマッチングをどうするかというようなところだったと思うのですが、県を越えてほかに働きかけて、まさにIターン、Uターン、Jターンと、これがそういうふうになっているわけですけれども、その中で人口の移動を進める。
 そうなってくると、県単位での例えば労働局の範囲を超えた対策が必要になってくるわけですが、現実的には倍率が高いというような先ほど宮本委員がおっしゃったようなことが起こっている地域に特化してどうやったらいいのかを考えるようになる。何か田園都市構想みたいな話が今、内閣のほうは名前を変えてそうなったようですけれども、そういうもので何か具体的な対策に変更はあるのでしょうか。
 人口の移動といったものに対して働きかけるというのは、Uターン、Iターン、Jターンというようなところにここには出ておりましたけれども、何となくいろいろな要望を県とか市に行くと聞いて、向こうで求人を出すからハローワークで、例えば東京のほうでも紹介できるようにというような全国版をつくってくれないかという話をされることがあるのですが、今のところ全国で情報を得ることができるようになっていうのでしょうか。
○地域雇用対策課長 東京と大阪にUIJターンの専門窓口を置いているのは、東京なり大阪の大学で進学をして、その方が地方出身者が多いという状況の中でやっているのですけれども、そこに来る方というのは当然のことながら、例えば秋田ならば秋田を希望しているという中でいけば、そこはもう全国ネットワークの中でやっておりますので、東京でももちろん紹介ができますけれども、より地方の詳しい情報を知りたいという状況があれば、現地のハローワークからその地方就職希望者に対してしっかりと情報伝達などをして、全国的に取り組んでいる流れになるのかなと考えております。
○樋口座長 それで、例えばほかの政策でネットワークというか、在宅就労のテレワークの副業といいますか、そういったものが大分進んできて、山梨県でもどこでもいいんですけれども、そちらのほうで週に3日働いてというようなものも紹介されているんですか。
○地域雇用対策課長 もちろん、UIJターンの方をうちは雇いたいんだという情報があれば、それは積極的に受入れ地側の地方のハローワークなりがその地方就職希望者に紹介をしてうまくマッチングをするという例はあると聞いております。
 特に、コロナ禍においては言わずもがなでございますけれども、一時的にかなりテレワークを使って地方にいなくても仕事ができるという流れがありましたので、そういったようなときはそういった求人が一部出てきたというふうに承知をしております。
○樋口座長 そうですか。
 ほかになければ次に移っていいですか。
 では、報告書の話ということで、資料2に基づきますと2ページ目に示されていた、ここでは事務局案として5つほど項目が挙がっていたと思います。
 まず最初に、これ以外であるんじゃないかというような項目出しを少し皆さんからしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。全体の流れというのは上に書いてあるような、多様なバックグラウンドの方々が自分で希望する働き方で労働参加できる仕組みで、ここで一つ問題になってくるのは格差の問題というのがあるかと思いますが、こういった形でまず考えよう。
 もう一つは、個々の労働者の事情に沿った働き方を前提とした労働市場をつくっていくというようなことで、ここについて事務局から、この四角の中ですね。文字どおりと言えば文字どおりなのですが、少しその心はというところを説明いただけますか。
○雇用政策課長 雇用政策課長でございます。
 これまで長い結構な会にわたりまして、有識者の方々に議論いただいてきておりました。それをまとめたのが1ページ目でございますが、委員の方々にはその時々にこの研究会のメンバーの方からのリクエストのようなものも踏まえておりますし、我々の問題意識を踏まえたものもありますが、日本全体が人口減少していく中でいかに働いていただけるのかというのが今回の研究会の議論の大きなテーマの一つだったかと思います。それについて、例えば女性という側面から、あるいはテクノロジーという側面からというふうに議論がこれまでされてきたのかということを踏まえまして、ここにある2つのような形でいろいろな方が働いてもらえる労働市場ということをこの研究会で一つは考えていただきたいということがございました。
 それで、その中で2つ書いておりますが、1つ目はいろいろなバックグラウンドがあるということ、労働者の方の特性についてでありますが、2つ目はその特性を労働市場なり働く職場が受け止めるときにそういう慣例的な働き方というのを見直す必要があるのではないか。そういう議論もあったことから、あえて2つに分けて記載しているということでございます。
○樋口座長 この点について、私どもで議論をしてきた過程で出てきた多様なバックグラウンドというのはどういうことをイメージするのかということであります。例えば、男女というようなこともある意味ではバックグラウンドが違う。特に家庭における役割というようなことも違うということもあれば、年齢というようなところもバックグラウンドとしてあるのではないか。あるいは、障害者と健常者の間でのバックグラウンドの違いというようなこともあるのではないだろうかというようなことで、まずそういう個々人の状況の違いというようなものもあれば、あるいはその人たちが例えば介護を抱えているとか、保育を抱えているとか、そういうような点というのも、ずっとということではなくて一時的なバックグラウンドの違いというようなことであるのではないかということも議論してきたわけであります。
 こういうようなものが違ったときに、従来だとこのハンディキャップを持っている人たちに対して何らかの支援をしてイコールフッティング、機会均等というようなところまで持っていって、あとは個々人が選択する。どういう形で働くのかは個々人が選択していくというようなこともあるということで、雇用機会についてもそういった人たちを働きやすいような状況に持っていくようなこともあればということで、個人の責任もあれば、まさに企業の責任、そして特に行政の責任というような役割がそれぞれあるのではないか。そういったものを分けて考えていこうというようなことで、こういったテーマが掲げられたということだと私も承知しています。
 それを考えたときに、従来は例えば正社員と非正社員というようなところで差があるといったときに、正規化という言葉で示されるような、非正規の人たちも正規労働者の働き方をしてもらうというようなことを往々にして考えてきたわけですが、時には正社員の働き方も逆に例えば労働時間を短縮するとか、そういうような形で働き方を変えていくというような、両者が歩み寄るというようなことも必要であれば、あるいは企業だけではなく、企業とともに労働者の間においても働き方をお互い認めていくというようなことも必要ではないか。そういったものを、このテーマに掲げてはどうだろうかというようなことがあるかと思います。
 こういうことの前提として、やはり人口減少というような大きな日本の抱える課題というようなこともあり、またこれに基づいてこの後、議論してもらおうと思いますが、労働需給の推計というようなものも、それを前提にするとどんなことが言えるのだろうかというようなことも念頭に置きながら議論していただきたいと思っております。
 まずそういった取組でよろしいかどうか。これはかなり意見が分かれるのではないかと私は覚悟しているところなのですが、いかがでしょうか。
 大竹さん、どうぞ。
○大竹委員 ありがとうございます。
 私はその方向でいいと思うのですけれども、1つは人手不足というのがネガティブという感じがするのですが、もう少しポジティブな意味があるというのをはっきり打ち出してもいいかなと思います。先ほどの地域雇用のところでも同じことなのですけれども、やはり人手不足になるから雇用環境が向上したりとか、AIの活用が進むとか、生産性を上げざるを得ないというのがあるので、そういうことを促進するチャンスだということが一つあるかと思います。
 それからもう一つ、ここで追加してもいいかなと思ったのは、先ほど樋口先生がおっしゃったこととも関係しますけれども、働き方改革が4年前にあって、それから2024年問題と言われているみたいに物流だとか、医療だとか、建築関係に今年から適用されるということで、人手不足が議論されているわけですね。
 だけど、それも長時間労働でないとそこで働けないという状況を改善して、適材適所というか、長時間でなくて生産性が高く発揮できる人たちがそういう職種に入ってくるということが可能なような環境を整備するという側面もあると思うんです。だから、何かそういう議論をもう少し入れられないかなというのは感じました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 確かにネガティブなところだけではなく、むしろこれを前向きに受け止めるところもあるかなと思いますし、そこにおける具体策としてDXの話というのもあるかと思いますし、この研究会でもそこについては大分取り扱ってきたということがあるかと思いますので、それも織り込んでというようなことになるかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 ありがとうございました。
 全体的な方向性には賛成ですけれども、おまとめいただいた2つの違いがやや分かりにくいかと思いました。この1つ目、2つ目に重なっている部分もあると思います。たとえば最初の多様なバックグラウンドと、2つ目の個々の労働者の事情とは何が違うのか。先ほどの御説明だと、多様なバックグラウンドは性別、年齢、障害の有無といったような、ある程度固定化された継続されたような事情で、2つ目の個々の労働者の事情はそうではなく、子供が小さいとか介護すべき家族がいるといったテンポラリーなものも含む、ライフステージに応じて一定のタイムスパンなども考慮していく要素もあり得るかと思いましたけれども、ちょっと分からなかったので確認する次第です。
 同じ問題意識で、多様なバックグラウンドの方々が労働参加できる仕組みづくりと、2つ目の個々の労働者の事情に沿った働き方を前提とした労働市場を構築していくことという2つも同じなのか違うのか。あえて2つに分けることの肝がもう少し分かりやすいとよいと感じました。
 2点目としては、トピック案の下線の5つの関係も、より分かりやすくできればと思いました。私の理解だと、1つ目の経済・労働市場の変化は前提で、先ほど大竹先生からもありましたようにポジティブ感を出すにせよ、結局は人手不足という状況が導き出されるので、その対応としていろいろな人の潜在的な労働力を活用することになり、その対象としてシニア、女性、それからテクノロジーで人手不足を埋めていくことが選択肢に挙がるのだと思います。そこに働き方やシステムのレベルとして多様化に沿ったキャリア形成という仕組みの見直しも位置づけられるようですが、女性やテクノロジーの活用は人手不足への対応のサブセクションとはされていない。シニアはここに入っているが女性は外出しという、この関係をどういうふうに整理するかも見え方の問題としてあるように思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 また詳しくは説明していただきたいのですが、私の理解では、最初におっしゃった多様なバックグラウンドというのと個々の労働者の事情というのは御指摘のとおりだと思います。その人の特性というのと、その人が置かれたそのときの環境というようなことも考慮に入れろというようなことかなと思いました。
 もう一つの仕組みづくりと労働市場を構築してというのは、確かにそういうところはあるのですけれども、仕組みづくりというのはやはり制度を考えてということで、労働市場というときには、ここはこれから議論になるかと思いますが、雇用条件とか、そういったものをどうするかというような賃金の問題であるとか、そういうようなことも入ってくるでしょうし、個々人によってやはり同じショックが当たられたとしてもそれに対するリアクション、あるいはウェルビーイングの向上というのが大分違っているかと思います。
 その制度が変わることによって非常にありがたいと思う人もいれば、逆にそれは面倒だなと思う人もいたりして、そこの間の調整といいますか、そういうものをどうしていくのか。しかも、企業がやるのではなくて市場として、結果として企業も違えば個人も違うということで、そこのマッチングのものを含めてどう考えていくのかということだと思いますが、あとは詳しくお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 方向性のところの大きな2つがかなり似ているのではないかといったところで、樋口先生に今、御指摘いただいたところとかなりかぶるところがございますが、ご説明をさせていただきます。
 まず今回の多様なバックグラウンドのところでございますが、まさに女性とかミドル、シニア、外国人といった形で、ある意味、属性を切り口にこれまで御議論いただいておりました。まずそういった属性によってどこが異なるかといったところを切り口にしたといった点で、1つ目のところは「バックグラウンド」という言葉を使わせていただきました。
 2つ目の「個々の労働者の事情」といったところでございますけれども、先ほどの属性の中でも、まさに女性であっても個々の方々によって御事情が違いますので、よりミクロな点にも焦点を合わせていくことが必要なのではないかと考えてございまして、先ほどの点とはマクロとミクロのような関係性をイメージしてございます。
 後半の仕組みづくりと労働市場の構築といったところは、まさに樋口先生におっしゃっていただいたとおり、仕組みづくりのところは制度のことをイメージしており、労働市場のところは賃金とか、そういった仕組みがどう継続していくかというところも含めて考えていくといったことで「労働市場を構築していく」というような言葉を使わせていただきました。
 ただ、かなり似通っている部分があるので、今後議論の中で整理をしていけたらと考えてございます。
 トピック案のところで、分類のところですけれども、かなり難しいなという印象がございます。まず雇用政策研究会の第1回のところでも大きな話題になりましたが、人手不足に今後どう向き合っていくのかということは、今回の大きなテーマだと考えてございます。その中で、女性の活躍であったり、シニアの活躍であったり、ミスマッチであったりといったところが様々にぶら下がっていると考えてございまして、人手不足を2番目に持っていかせていただきました。
 ただ、議論の中で女性の活躍のところにつきまして、かなりジェンダー格差とか、ブランクがあった方をどう復帰させていくかとか、あとは女性の健康とか、様々なより重いテーマをいただいておりましたので、ある意味、ここの部分を特出しするといった意味で「女性のさらなる活躍に向けて」といった項目を下に持ってこさせていただいているところでございます。
 その下のところは、やはり人手不足に通じるといった意味もございますが、省力化の観点や、ウェルビーイングを進めていくといった観点から、テクノロジーの活用というものをぶら下げております。また、テクノロジーのところでも議論になりましたが、新たなテクノロジーに乗り遅れない、取り残される人がいないといった意味も含めて、そうした大きな変化の中でのキャリア形成が必要なのではないかといったところで、キャリア形成を最後に持ってこさせていただいております。
 ですから、おっしゃっていただいたように、人手不足という大きなテーマの中に全部包含されるものではありますが、より特出ししたほうがいいというようなトピックをつけさせていただいたといった整理でございます。
 以上でございます。
○樋口座長 今、人手不足というふうな表現だったのですが、間違いないのは人口減少がどうも起こるだろう。
 しかし、それによって労働供給が減るということだけであればまさに人手不足というわけですが、ある意味では消費も減るというような需要面も時には人口減少によって影響を受けるでしょう。それはまさに今回需給推計のところでも出てくるかと思いますので、人手不足になってくれれば逆にいいのかもしれませんが、時にはまさに人手不足ではなくて逆に人口は減少しているんだけれども、縮小均衡にならなければいい。
 その縮小均衡にならないためにはどうしたらいいのだろうかというようなことも少し念頭に置いて、それは経済政策全体だというようなことになるかと思いますが、その中で今までもこの雇用政策研究会で何回かにわたって扱ってきたのですが、雇用政策も少し幅広に取り扱っていこう。幅広ということは税、社会保障というようなことで、例えばそれが働くということに対して、能力発揮といったことに対して障害にならないような制度というのはどういうものであるかなどというのもどこかで書いていこうというようなことを考えていたところであります。
 ほかに、今のことで神吉さんどうでしょうか。
○神吉委員 ありがとうございます。
 表現ぶりは課題だとは思いますが、その整理についてはよく分かりました。
 そして、今回、人手不足、つまり人口減少に対する様々な課題を特出しされたという、その関係もよく分かった一方で、この表現に関して気になるところがあります。「女性のさらなる活躍に向けて」の「活躍」とは何を示しているのか。女性活躍推進法など法律の名称にもなっていますけれども、雇用政策研究会は俯瞰的に人口減少への対応を考える場なのだということであれば、「活躍」をどう位置づけるべきでしょうか。今の社会状況では女性側に非常に無償労働の負荷が高く、有償労働と無償労働との合計でみれば女性のほうが長く労働しているという統計もありますよね。次世代を育む、ケア責任を担うという意味では、女性は既にかなり活躍していると言えないでしょうか。
 それが根本的な疑問としてあって、ここで言っている「活躍」が、より有償労働の割合を増やしていくべしということでよいのか。その辺りが、多様なバックグラウンドと多様な事情がある人の希望に沿った働き方の実現というミッションに対してどういう意味を持つのか、そしてどんどん有償労働を推進することで人口減少対策に矛盾するようなことにならないのかといった考慮も必要だと思います。
○樋口座長 ありがとうございます。
 確かに女性、活躍している面もあるわけですよね。活躍という言葉がどういう意味か。どういう視点で、多分ここでは労働市場に限定した話をしているのだろうと思いますけれども、この表現がいいかどうかはまた御議論いただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 大竹先生、どうぞ。
○大竹委員 2回目で申し訳ないです。
 人手不足ということなのですけれども、先ほど樋口先生がおっしゃったとおり、人口減少と、それから高齢化というのが大前提になっていて、労働力率が普通ならば下がっていく。それで、最近、GDPが第4位になったと言われていますし、この後の労働力需給推計でも、1人当たりGDPの成長率の前提をどうするかとか、そのようなことが議論されているわけですけれども、そのときに労働力率が下がったら、勤労者の生産性が一定の下だったら1人当たりGDPも下がるわけですよね。だから、結局人手不足というよりは、貧しくなるかどうかということが結構大事な話になってくるので、生産性を上げていくことが豊かさを維持していく上で不可欠だというのが、その前段にはこの2つは多分そういう設定だと思うのですけれども、トピックの案で最後のほうにしかそういう話が出てこないかなというのは若干気になりました。
 何か人手不足への対応というのを、最初のほうはやはり量を増やしたいというところがあるのですけれども、量を増やすのではなくてミスマッチをなくして、先ほど私が少し申し上げたような適材適所で生産性を上げていくとか、あるいは働き方の改革をすることで生産性を上げていくということがない限り日本は貧しくなるということになるので、もう少し何かそちらのほうを重視したほうがいいのかなと思いました。
 伝統的に、多分この雇用政策研究会というのは人手不足とか働き手をどう確保するかというふうなことが中心だったと思うのですけれども、何かちょっとそこは違うような気がして、もうそんなに増えないという前提の下でどういうふうに豊かさを維持していくのかということの視点にかなり議論の内容は変わってきているけれども、トピック案の前半のほうがそのままかなというふうには今、議論を聞いていて思い直しました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 その点については、後でクローズドにしてから話し合いたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、堀委員お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。
 今回の雇用政策研究会はヒアリングがとても充実しており、見学会なども開催していただきまして大変理解が深まりましたので、事務局にはお礼を申し上げたいと思います。
 今回の議論の方向性は賛成なのですけれども、人手不足というのが大きなテーマになってくるということで、人手不足は先生方も大竹先生もおっしゃいましたが、いい面もあるということで、全体のトーンとしては人手不足を逆手に取って、もっと質的に人にとって働きやすいとか、人にとって優しい労働市場にしていくような循環に結びつけられるような、そんなトーンにしていただけるとありがたいかなと思いましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 どうやれば働きやすくできるかといったときに、大竹さんがおっしゃったようなそれこそDXの活用であるとか、いろいろなもので質的な向上というものがないと、働きやすいといっても難しいのではないかというようなことはありますので、そこを少し後で御議論したいと思います。
 まさに今のままでは潜在GDPは減ることは間違いないわけで、生産性の向上と並んで、需要面の拡大、あるいはそれに伴う議論というのがGDPギャップをどうするか。それはプラスなのかマイナスなのかというのもあるのですが、そこら辺も考慮に入れながらここにも書き込んでいくというようなことが必要ではないかと思います。確かに最初のところに何かそういったものがあるといいかもしれないですね。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 荒木先生、どうでしょうか。
○荒木委員 実は今、労働基準局のほうでも、今後の労働時間制度の見直し等々も含めて議論しているのですけれども、その中で多くの委員が考えておられるのは、これからは個人が望んだ働き方をサポートするような制度というものを労働基準行政としても考えなければいけないのではないかということです。
 今日の議論に合わせると、最初の多様なバックグラウンドの中で希望する働き方を可能とする。これはマクロで言うと、差別はやめよう、男女の差別とか、年齢差別とか、障害者差別といった人権侵害的なものは許さないということでコンセンサスができると思います。しかし、そういった差別禁止について相当の制度を用意していても、個人が望んだ働き方ができているかというと、そうではない。
 例えば、これは男女差別というふうに見る国もあるのですけれども、パートは圧倒的に女性が多い。でも、これは女性を差別してというよりも、女性が家庭責任を負っている結果、パートでしか働けないという状況だとすると、次の個々の労働者の事情の問題になってくるのではないか。具体的な個人で見た場合、差別の問題なのか個々人の抱えている事情の問題かというと、かなり個人の抱える事情の問題に移行してきている状況もある。このような状況に、マクロというか、上のほうから見て差別は駄目ですというような政策はこれまでもやってきたのですが、そうではなくて働く個々人に視点を置いて、その人が働きやすい環境を提供するということが労働政策としても重要になってくるのだろうと思います。
 それと、人手不足の関係ですけれども、大竹先生がおっしゃったように、労働市場がタイトであるということは労働条件が向上する好機、チャンスでもあるわけですね。労働条件が上がるといっても賃金が上がるということではなくて、賃金が変わらなくても例えばリモートワークができるのであれば働けるというように、量的な労働条件ではなくて働き方、その質が改善するということであれば、多くの方が機会を得て就業できる。そういった施策も、個人に視点を置いて考える労働政策としては望まれてくることになります。
 こちらの研究会でも労働基準局でも同じような労働政策の視点が共有できているように思われましたので、そのような方向で議論いただければありがたいと思ったところです。
○樋口座長 ありがとうございました。
 確かに労働時間の分布を見ますと、日本の場合には明らかに二項分布になっている。パートとフルタイムと分かれてということで、中間というか、そこのところがアメリカ辺りですとかなり正規分布に近いような形になっていて、労働時間の選択というのは連続的に行える。
 ところが、日本はまさに離散型といいますか、パートなのかフルタイムなのか、二者択一になっている。しかも、それが時間当たり賃金とセットで出てきているというようなことがあって、それをどうするのかというところもあるかと思います。こういう見出しでいくのかどうかというのも含めて、少し議論をさせていただければと思います。ありがとうございました。
 宮本先生、いかがですか。
○宮本委員 ありがとうございます。
 今、その構成表が画面に出ていないので正確にワーディングできるか分からないのですけれども、最後の「多様化に沿ったキャリア形成」、これは先ほど御説明していただいたときに聞き漏らしていたかもしれませんけれども、その具体的な内容について、例えば現状では人材開発支援助成金等、やはり企業に対する支援を通してキャリア形成を図るということ、人への投資を図るということ、リスキングにつなげるということだったと思うのですけれども、やはりこれからは今のお話を総合しても個々人のそれぞれのライフスタイル、あるいは属性等に沿ってそこに投資をしていくということになっていくと思うんですね。
 それで、先ほど需要側に対する働きかけは大事だと言ったのですけれども、当然、供給側に対する働きかけと一体になっていくことが大事なわけなのですが、そうなるとこの中身の書き方というのはどういう方向になるのか、ちょっと御教示いただけるとありがたい。
 どんな議論を盛り込むべきなのかというところで、大体のポイントとしてどんな論点をお考えか、ちょっとそこを御示唆いただければと思います。
○樋口座長 ありがとうございます。
 これについても、実は事務局と議論をしてきたところでありまして、1つはおっしゃるように企業に対する支援を通じて能力開発、人材育成をしていくというような面もあるでしょう。
 しかし、時には転職する人もいるし、休業する人もいるだろう。そうなってくると、企業任せということではなく、やはり本人が能力開発をしなければならないというような局面も出てきて、そのほうがある意味では、例えば業種の転換であるとかといったところでプラスになる面もあって、個人に対する支援というようなところも考えていく必要があるよねというようなことで、ここのキャリア形成のところに対する個人と、企業と、それと政府の役割というようなことを考えていく必要もあるかもしれない。
 あるいは、ジョブ型というのは私は好きじゃないのですが、まさにそういったところで企業を離れてその仕事、職種のどういうことをやるかという選択みたいなもので、それに対するキャリア形成といった在り方というのも議論になってくるのかなというようなこともちょっと事務局と話し合っていたところです。
○宮本委員 分かりました。
 それで、恐らく先ほど来の先生方の議論を伺うにつけ、あまり差別的に書いてはいけないのですけれども、やはり日本を豊かにする、牽引する雇用と、放っておくとやはり地盤沈下が進むところを下支えするという地域を支える雇用と、露骨に分けて書く必要はないですけれども、イメージの中では区別しながら議論していかないと、ちょっとこんがらがっているかなという気もしました。
 後者についてもやはりキャリア形成は必要なんだというところは今、樋口先生がおっしゃったことで納得なのですけれども、確認しておければとも思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 ほかによろしいですか。
 もしよろしければ、これについてはまた少し事務局と相談しながら皆さんに御議論いただきたいと思いますが、次の議題であります労働力需給推計に移りたいと思っております。ここからの議論は非公開とさせていただきたいと思いますので、一般傍聴の方は御退席をお願いしたいと思います。
~非公開~
○樋口座長 それでは、時間も過ぎておりますので、今日の議論はそこまでとしたいと思います。
 次回以降の研究会のスケジュールについて、あるいはその他の連絡事項について事務局からお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 次の第9回研究会につきましては、3月11日月曜日10時から12時に開催予定となっております。
 なお、資料3につきましては非公開の資料となりますので、御参加の皆様はその場に置いてお帰りいただきますようよろしくお願いいたします。
○樋口座長 リモートの方は置いていって欲しいと言っても仕方ないですが、我々はそういうことで御了承いただければと思います。
 それでは、以上で本日の研究会は終了したいと思います。どうもありがとうございました。