2023年度第7回雇用政策研究会 議事録

日時

令和6年2月5日(月)15:00~17:00

場所

本会議会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2024-2-5 2023年度第7回雇用政策研究会
○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまより2023年度第7回「雇用政策研究会」を開催いたします。
 本日は、大竹委員、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部の是川部長、日本政策金融公庫総合研究所主席研究員の井上様、株式会社LIFEM取締役の平野様が対面での御参加、その他の委員はオンラインでの御参加となります。
 今回は、外部有識者として、国立社会保障・人口問題研究所の是川様、日本政策金融公庫総合研究所の井上様、株式会社LIFEMの平野様をお招きしております。株式会社LIFEMの平野様は、急遽御出席いただくことが難しくなった野村様の代理として御参加いただいております。また、本日、山田職業安定局長は欠席となっておりまして、是川様は15時半をめどに御参加、清家委員は16時半をめどに御退出の予定です。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 皆様、こんにちは。
 それでは、早速、始めたいと思います。
 黒田委員から、第5回の研究会のときに、職場における女性特有の健康課題について話を聞いたほうがよろしいのではないかという御指摘をいただきました。それで、本日は有識者の方にお越しいただきましてお話しいただくということで、平野様に来ていただいております。
 それでは、早速ですが、平野様から、お願いします。
○平野様(野村臨時委員代理) はじめまして。株式会社LIFEMの平野と申します。本日は、よろしくお願いいたします。
 弊社は、オンライン診療を活用した働く女性の健康課題改善をサポートするフェムテックサービスをやっている会社でございまして、そういった観点からお話しさせていただけたらと思います。
 こちらの資料1御覧いただき、1枚めくっていただけたらと思います。簡単に弊社の会社の概要ですが、3社の合弁会社という形で設立しておりまして、ルナルナという女性の生理日管理をはじめとする女性の健康情報サービスを20年前から提供しているエムティーアイと、エムティーアイのグループ会社でカラダメディカというオンライン診療サービスを提供している会社、総合商社の丸紅の3社の合弁会社という形でやっております。詳細につきまして、以降、御説明させていただけたらと思います。
 6ページ目を御覧ください。弊社がやっていることを簡単に前提情報として御説明させていただきます。弊社は、法人向けのサービスをご提供しており、女性は様々なライフステージに応じた健康課題がございますので、これらの課題改善を総合的にカバーしてご支援するサービスです。法人にご提供するに当たって、自社の状況が分からないという会社のためのアセスメント、男性を含む会社全体のリテラシーを高めるための医師による女性のカラダ知識セミナー、実際に月経・更年期・妊活などによる症状や悩みを持たれている女性の方々に対してのオンライン診療を活用した改善のご支援の機会を与えるプログラム、そして実際に症状などが改善をしたのか、法人の方々にとってしっかりと費用対効果があったのかというところを効果検証するというものが、サービスの全体像になっております。この中で、我々が右に赤枠で書いているとおり、会社の全体を把握するための実態データのアンケート、受診者の診療前後に、プログラムを使った結果、実際に症状が改善したのか、それは業務にどういった影響があるのかといったことを効果検証したデータがございますので、こういったところをお示ししながら、本日、お話しさせていただけたらと思っております。
 次は、10ページ目に移っていただけたらと思います。まずは、我々がサービスをやっている中で認識している女性の健康課題の実態、どこが問題なのかにつきまして、御説明させていただきます。皆様も御存じかと思いますが、女性と男性ではホルモンの分泌量の変化が生涯にわたって大きく違うといったところで、男性は緩やかに上がって緩やかに下がるのですけれども、女性は出産というライフイベントに備えまして大きく女性ホルモンが増えて出産ができるような体になり、その後、出産の時期を過ぎたときに更年期といった形で女性ホルモンが大きく減っていくというライフステージがございます。それに伴いまして、下に書いているような様々な女性特有の健康課題、女性しかならないもしくは多くの女性がなるような健康課題がございまして、男性のよくある課題は男性も女性もなり得るものが多いですけれども、女性につきましては女性しかならないものが多くあり、こうした背景から女性特有の健康課題が着目されているのかなと理解しております。
 次のページをお願いいたします。女性自身も悩ませているのですけれども、これが法人も悩ませていますよというものが次の資料でございます。女性の健康課題はこれ以外にも多くあるかと思いますが、今、特にフォーカスが当たっている、月経、不妊・妊活、更年期について、御説明させていただきます。まず、月経と更年期の両方なのですけれども、様々なデータが出ておりますが、月経につきましては、月に5日~10日程度、生理に伴いまして不調がございます。更年期につきましても、体のホルモンバランスが崩れることによって、人によっては、10日や15日程度、体の不調を来す時間がございます。こういったところから、実際のパフォーマンスに影響が出ております。日本医療政策機構の調査によりますと、それぞれ、月経、更年期、共にこの症状があるときにはパフォーマンスが半分以下になってしまうという女性が50%弱いらっしゃるところで、パフォーマンス低下への影響になっている。これは、本人も悩んでおりますし、働く企業としましては、従業員のパフォーマンスを上げていくという観点で大きな課題になっているのかなと理解しております。続きまして、真ん中の不妊治療のところは、不妊治療は、急に「明日が排卵の日なので、病院に来てください」と言われ、急な対応をしなければいけないというところで、職場を抜ける、休むといったことが発生します。今の状況ですと、不妊治療と仕事を両立することが難しく、実際に離職や休職をされる方々が多く出ていらっしゃいます。右側の更年期につきましては、プラスアルファで、これまで、月経に伴う体調不良はなく、妊娠も順調に来られた女性方が、更年期になって急に体調不良になってしまう方々がいらっしゃいます。更年期の期間は大体45歳から55歳の間に平均的に起きると言われているのですけれども、これがまさにキャリアのピークを迎える年齢と重なってしまうところで、順調にキャリアを積み重ねられた方々が更年期になって自信をなくしてしまい、昇進辞退されてしまうといったことが発生しております。企業にとっても、今、女性の管理職を増やす、役員比率を増やすという目標がある中で、女性にとっての大きな障壁になっているところがございます。まとめますと、この女性特有の健康課題が労働生産性の低下・離職・キャリアの形成の阻害要因となっているところが、本人の悩みだけではなく、法人にとっての課題にもなっているのかなと理解しております。
 次のページは、簡単なのですけれども、経産省の試算で実際にどういった社会インパクトがあるかというのが出ておりまして、こういった取組をして、しっかりと女性の健康課題に対処する女性が増えた場合、社会全体で2兆円ぐらいの経済効果があると試算がされております。これは裏を返せば、それ以上の社会損失が今日本に起きているということになります。さらに、ここに調査の前提としまして、女性の健康課題に対して何の対処も行っていない女性が、情報を得て適切な対処を行うことでの経済効果ということがありますので、裏を返せば、多くの女性に適切な治療が届いていないからこそ、この大きな社会損失が生まれてしまっている。その裏側には女性の大きな悩みがあり、企業にとっての損失にもなっているといったところが大きな問題だと理解しております。
 次のページは我々で調査した実際の女性の社員の方の健康状況なので、御参照ください。
 14ページ目を御覧いただけたらと思います。なぜ、適切な対処をすれば改善の可能性があるのに、多くの女性が産婦人科にアクセスできていないのかという我々のデータになっております。我々が先ほどのアセスメントを通じまして実際の企業の女性たちはどういう健康課題に悩んでいるのか、その背景は何なのかという調査をさせていただいております。こちらは我々が複数社横断して大体7,000名ぐらいの女性に調査した結果なのですけれども、先ほどのとおり、7~8割以上の女性が何らかの健康課題を抱えていらっしゃって仕事に支障があると答えているにもかかわらず、実際に婦人科を受診していらっしゃる女性は20%しかいないというのが見えてまいりました。ほとんどの女性が、市販薬を飲んで耐え忍んでいる、我慢をしている、本当につらいときは受診をするとかではなく有休を取っているといったところが実際であることがわかります。婦人科に行ったら改善するかもしれないのに、こうして我慢している現状があることによって、先ほどの社会損失が起きてしまっている、とても悲しい現状があるのかなと我々としては理解しております。
 次のページを御参照ください。こういったハードルにつきまして、ルナルナという2,000万人以上の女性にダウンロードいただいているアプリのデータ等を通じ、なぜ婦人科を受診しないのかを分析したところ、見えてきたのは資料の3点であると、我々としては理解しております。1点目がリテラシー課題です。女性自身が自分の体調の状況が悪いということを理解していないとか、婦人科に行って改善することを知らないなど、女性の健康課題に関するリテラシーが低いために、周りの目を気にして婦人科に行くことがはばかられてしまう方がいらっしゃることによって、なかなか婦人科に行けていないことが1つ目の課題でございます。2つ目は通院負担です。都市部においては、婦人科に行くとすると、とても混んでおりまして、移動時間と待ち時間を含めますと3~4時間、地方に行くとそもそも婦人科が少なく、移動にすごくかかってしまうといったところで、1回通院するのに3~4時間ぐらいかかってしまっている現状がございます。特に働いている女性にとっては、平日の忙しい中で定期的に3~4時間抜ける時間をつくるのがなかなか難しく、初診にも行けない、もしくは、初診に行っても続けることができず途中で離脱してしまっているという状況が見えてきております。3点目が費用負担です。女性にとっては改善するか分からないという状況もある中で、また、きちんと治療を受けようとすると、月経ですと大体月額3,000~4,000円、更年期ですと5,000~6,000円とかかってきてしまうという状況がございまして、こういった費用負担が、若い女性にとってはお金を使いたいときに負担になってしまう。更年期世代になりますと、お子さんの教育などの家計の問題もございますので、そういったところと比べてしまって、治療の優先度が落ちてしまうといったところが課題となってきまして、結果的に皆さんが我慢してしまっているという状況、それが最終的に医療費の増加や生産性の低下になってしまっていると考えております。そのため、これらのリテラシー、通院負担、費用負担の課題を改善することによって、婦人科を適切に受けやすくする社会をつくっていくことが我々として非常に重要なのではないかと考えております。
 次のページを御参照ください。さらに、女性の健康課題に関する問題は今もずっと続いているというよりは、さらに今後進んでいく可能性があるのではないかなと、考えております。具体的には、女性の社会進出に伴う社会の変化が、女性の健康課題の悩み及び社会の影響を強めているのではないかというのが我々の仮説です。具体的には、社会の変化というところで左に書いておりますが、出産回数がどんどん減ってきていることによって、妊娠期間や授乳期間は月経が起きませんので、必然的に月経の回数が生涯を通じて10倍ぐらいにはなっていると言われております。月経の期間が延びてしまうということによって先ほどの生産性の課題が増えている。2つ目は、晩産化・晩婚化が進むことによって、出産の年齢が上がっています。一方で若いときを基準とすると、年を重ねるにつれてどんどん妊娠のしやすさは下がってまいります。結果として不妊治療に悩む方が増えているのではないか。3点目として、女性の社会進出が進むことによって、役職者の比率が増えている。それに伴いまして、先ほどのとおり、更年期と重なる方々の女性が増えていますので、更年期の症状を抱えながらキャリアに悩んでいらっしゃる女性がどんどん増えてしまっている状況かなと考えております。女性の社会進出を進めていくに当たって、それと両輪で健康管理の改善支援を進めていかないと、よりよい社会になっていかないのではないと思い、この課題に取り組んでいるというのが、我々の状況と課題認識でございます。
 次に、我々のサービスを導入いただいております企業の皆さまを通じ、どういった背景で企業の方々は取り組んでいらっしゃって、どういった効果が出てきているのか、その他見えてきたところについてお話をさせていただけたらと思います。
 次の3ページは再掲ですが、先ほどのとおり、女性の健康課題が、従業員だけではなく法人にも支障をきたしているというのが1つございます。
 飛ばしていただきまして、次、21ページです。さらにこれがこれまでの健康課題というところで、人事部や健康管理室の方々の課題から、さらに昨今、経営課題として女性の活躍や女性の健康課題が挙がってきているという認識を我々としてはしておりまして、それは2つ背景がございます。1点目が現在の岸田政権で進めていただいている、人的資本開示、人的資本経営という、企業の従業員に対して投資をして、企業の人的資本を高めていこうという取組の中で、そういった女性活躍の指標の開示がどんどん求められている状況かなと理解しております。既に欧米では、機関投資家等が評価するときに、女性の健康課題や女性活躍がしっかり進んでいる、KPIを設定してそれが進捗している企業につきましては、将来の成長性がある企業として投資対象とみなされ、それが進んでいない企業につきましては、将来の成長性がない企業とみなされるという状況が起きております。これが日本にも来るだろうといったところで、経営者の方々も、企業価値、株価を上げていくためにも、こういった女性活躍にしっかりと取り組まなければいけないというような動きがございます。2点目としましては、採用競争という観点です。日本は昨今、生産年齢人口が減ってきておりますので、男性を中心としたままでは優秀な社員を確保できないといったところで、優秀な女性の社員を獲得していかないと企業が人材確保をできないという状況がございます。そのために女性社員を増やすためにどうしていくのかという中で、これまでの日本の労働衛生環境につきましては、健康診断の項目だとかも踏まえて、保健施策につきましても、例えば、分かりやすいものでメタボ検診やメタボ指導、喫煙対策も蓋を開けてみると、比率としては男性のほうが圧倒的に高いといったところで、現在は男性中心の労働衛生環境です。女性を増やしていくためには、女性のためにも働きやすい環境を整えなければ、優秀な女性の採用、定着、活躍ができないのではないかという形で考えていただいている企業は増えていると理解しております。こういったところから、女性の健康課題が企業にインパクトがあることに加えまして、こちらの2点によって経営課題として認識される企業が増えてきていると、我々として認識しております。
 次の企業は、参考までに、我々の導入いただいている企業の一例なのですけれども、上場企業の中で特に大きな会社、さらにダイバーシティやグローバルな企業の中から感度高く導入いただいておりまして、そういった感度の高い企業から今後それ以外の企業にも広がっていくといいなと我々としては考えている状況でございます。
 次のページ以降は、詳細は割愛させていただきますが、我々のプログラム、具体的にはオンライン診療を活用させていただきまして、月経・、更年期に伴う症状に悩んでいる方が適切な治療にアクセスしたときに症状がどう改善したのか、症状の改善によって業務パフォーマンスがどのように改善したのか、それと時給や日給とかと掛け合わせることによって、労働損失を掛け合わせたときに、実際の労働総数をどれぐらい下げられたのかといったところの我々の検証結果になっております。これは一部の企業なので、n数が少ないのですけれども、ほかの企業でも同様の結果が出ております。こういったところが導入いただいた企業からは評価いただいているという状況になっておりますし、実際にこういった適切な治療介入をしていくことによって、女性の症状が改善し、それがしっかりと効果として現れる、この効果を示すことで、企業投資を促進させていただいて、企業の中でも導入が広がってきております。
 次、26ページ目を御覧いただけたらと思います。さらに、こういったパフォーマンスの改善だけではなく、エンゲージメントといったところが人的資本開示の中でも重要な点になっているかなと思いますが、企業が、女性の悩みに寄り添うことが、働く従業員にとっても安心感につながっているというの見えてきておりまして、そういったところを今検証しているような状況になっております。
 続きまして、27ページ目が最後の我々の見えてきた状況なのですけれども、一方でこの状況男性がどう捉えているのかというのが27ページ目でございます。昨今、こういった取組をしていくと、女性の健康課題だけは不平等なのではないかといった声が一部出てきて、なかなか取組が進まない企業様もいらっしゃったりするのですけれども、実際に本当に男性たちはそういうふうに考えているのかというのを男性社員に調査をさせていただきました。結果としましては、9割以上の男性は女性の健康課題に対して理解を深めたいと考えているとともに、女性のための制度を充実していくことについてポジティブに捉えているというのが見えてまいりました。一部の企業は逆に男性のほうが女性よりも賛成をしている場合もございます。こちらの通り、男性の中では多くの方々がこういった取組を進めていくべきだと考えているにもかかわらず、一部の不平等という声がマジョリティーの意見のように見えてしまって進んでいない現状があるのかなと思っております。そのため、本当は、多くの男性が女性特有の健康課題の改善を支援することをポジティブに捉えているという現状を広く知っていいただくことによって、こうした取組も推進していけるのではないかと考えております。一方で、こちらに、補足になりますが、男性が考えている解決すべき課題というのは、男性に身近な健康課題が挙がってきているという現状があります。妊娠・妊活は男性の中で一番身近ですし、毎月、奥さんやパートナーに月経があり、男性も認識しやすいものです。こうした男性が認識しやすい課題が上位に来ているのですけれども、女性にどの健康課題を解決してほしいかと調査してみると、月経が第一にきて、更年期、妊活がそれに続くという状況になっており、解決すべき女性の健康課題の男女認識のギャップも埋めていくべきものと考えております。我々の取組から見えてきた結果でございます。
 最後にまとめとして、29ページ以降、我々から考えていることを最後に御報告させていただきす。まず29ページ目、職域を起点とした医療アクセスの改善の意義といったところになります。これまでは職域は健康診断が中心になってきましたが、よりポジティブな健康アクションは意義があるのではないかなと考えております。1点目が受動的な人に対する取組の機会があるのではないか。具体的には、健康の取組をする際には、意識の低い方々が2割ぐらい、あまり積極的にやらない方々が6割ぐらい、自ら積極的に情報収集や健康行動を行う方は2割ぐらいしかいないといったところがよく知られているかと思いますが、積極的でない8割の方に対しても情報を届けていかないと、社会としては動かないと考えております。そういった中で、企業の中では研修として伝えたり、社長から発信する等、能動的ではない人たちに対しても情報提供やアクションを促すことができるというのが一つの意義かなと思っています。2点目としましては、婦人科の受診に当たっては、健康課題に関するリテラシーを高めて、どの病院に行くかを考えて、どのように継続していくかを考えてといった様々なハードルがあります。企業という接点を通じてそうしたハードル解消の取り組みをパッケージとして届けて行動変容や継続の支援をすることができるというのが、職域を通じたメリットなのかなと思っております。3点目としましては、これまで医療費というのは個人が負担するものというのは当然になってきたかなと思うのですけれども、企業に別の効果を返すことによって企業の投資を促すことができる、それによって本人の費用負担を下げることができるというのが見えてまいりましたので、企業に対して別の効果を示すことができれば、本人の費用負担のハードルを下げることができるのではないかというのが3点目の意義かなと思っています。最後、4点目としましては、最後の一歩目を踏み出すきっかけとして、好きで働いている会社から、情報提供を受けることによって安心ができ、やってみようと思ったという声が出ておりますので、最後の一歩の後押しという意味でも、職域を起点として取り組んでいくことはすごく意義があるかなと考えております。
 続きまして、30ページ目を御参照ください。今度は今我々が感じてる課題と今後こういったことをしていただけないかと期待していることでございます。1点目としましては、多くの企業様が健康課題の実態を把握できていない実情があるというところになります。こちらは、健康診断は今女性の項目はほとんどないですので、社会の中で健康課題が必要と言われているけれども、実際にうちの社員が困っているか分からないという声がよく聞かれて、なかなか進まないという声がございます。そういったところで、もし健康診断等、今厚労省でも進めていただいているかと思いますが、受動的な企業であっても女性の健康課題の状況を認知できる仕組みがあれば、進みやすくなるのではないかなという点です。2点目は意思決定者の理解です。特にこの決裁をする立場の方々が、男性でそれなりに年齢を重ねている方々が多いので、女性の健康課題に対してあまり認識がなく後回しになってしまったり、また、男性社員の比率が高い企業が多いですので必然的に男性に多い健康課題が優先度として上がってきてしまうという実情がございます。そういった会社であっても、意思決定者の方々が取り組もう、取り組まなくてはいけないと思っていただくような、企業評価や、最初の一歩目の費用補助をするなどの仕組みがあるといいのではないかなと思っています。3点目が経営者の本気度です。企業によっては経営者の理解を通じて、トップダウンで進む企業もございます。先ほど示したような経済インパクトだとか、経営層にとってのインセンティブを何かつくっていくとか、義務化をしていくということができれば、より進むんではないかなと考えております。
 最後、31ページ目は、これらも踏まえて我々が進めていきたいところを書かせていただきますが、詳細は割愛させていただきたいと思います。何か御質問がありましたら、後ほどお伝えいただけたらと思います。
 すみません。駆け足になりましたが、私からの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは今の平野様の説明に基づきまして、御質問なりあるいは御意見なり、いただきたいと思います。リモートでの参加の方、「手を挙げる」ボタンを押していただければ、こちらから御指名いたします。どなたでも結構ですのでよろしくお願いします。
 大竹さんから。
○大竹委員 ありがとうございました。
 今最後のほうに女性の健康問題の項目が健診で不足しているということがありましたけれども、それ以外に、例えば、これは厚労省の方に聞いたほうがいいのかもしれないですけれども、公的な統計で今御説明があったような女性特有の健康問題でどのように労働に影響があるのかという公的な調査がされているのかどうかということが知りたいなと思いました。非常に貴重なデータで、非常に影響は大きいなというのはプレゼンでは分かったのですけれども、一企業の調査データだと、それが過大になっている可能性もないことはないというので、そこが担保できるようなものがあれば知りたいというのが私の質問です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、平野様、もし御存じだったら教えていただけますか。
○平野様(野村臨時委員代理) ありがとうございます。
 公的な統計として企業へのインパクトについて、詳細は存じていないところが多いのですけれども、厚生労働省で更年期に関する調査結果や、経済産業省でも、昨今のフェムテック事業者の支援の取組を通じた調査結果などが発信されていると認識しております。一方で、今御指摘いただいたとおり、調査データ自体が少なく、出回っているデータは使い古されたものになってきてしまっている状況があるかなと思いますが、先ほど示した4900億円ぐらいの労働損失が日本に生まれているというチャート1つでかなり動いてきたという状況もありますし、最近、更年期においても4000億円ぐらいの労働損失があるというデータも出されまして、そういったデータがあることによって動き出したというのがありますので、ぜひそういったデータをどんどん出していただけるとすごくありがたいなと思います。我々も複数の企業のデータが集まってはおりますので、何かそういったところを提供することによって、ぜひ活用いただけたらと考えております。
○大竹委員 ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございます。
 厚労省、分からないところがありますので、宿題にしていただきたいと思います。
 それでは、宮本さん、いかがですか。
○宮本委員 大変優れた取組でしかも企業に実際に導入されているというところで、感服いたしました。ないものねだり的になるかもしれないのですけれども、御報告の中でも男性の理解ということをおっしゃっていました。確かに生理などについては、多くの意識調査でパートナーの理解が非常に重要であるということを挙げているので、理解するだけではなくて、その理解に基づいて生理中のパートナーに対する手助けができるという男性の働き方も大事ではないかと思います。そういう意味で、理解者としての男性ということを超えて、当事者としての男性、これがこの取組の中ではどんなふうに射程に上がってくるか。今日は女性特有の問題ということでこちらからお願いしているテーマですので、その枠を外れて聞くのはルール違反のような気もするのですけれども、当事者としての男性とはどういうことかというと、不妊治療との関わりはもう実際にお話の中でも出てきました。男性側に問題があるということも多々あると。それからもう1つ大きいのは、更年期の障害ですね。これは2021年の調査に基づいてやっていたと思いますけれども、50代、特に後半の更年期が、女性が42%に対して、男性も10%を超えているのですね。LOH症候群などと言って、実際にこれが降格だとか離職に基づくつながるケースが非常に多いということも示されています。ただ、男性の場合、なかなか言えないという現実もあろうかと思います。そういう意味で、当事者としての男性の問題、もちろん理解者としての男性の問題も含めて、もし何かお分かりのことがあれば、御教示いただければと思います。1997年に労基法が改正されて、ある種規制緩和という形でジェンダー平等が進められたわけですけれども、そこから30年近くたって、今度は男女の健康問題、双方に対処するウェルビーイングという形で、規制とは言わないまでも、新たな働きかけとしてのジェンダー平等というのが必要になってくるのかなという、そんな観点から、当事者としての男性について何か一言あればお願いしたいと思います。
 以上です。
○樋口座長 お願いします。
○平野様(野村臨時委員代理) ありがとうございます。
 今御指摘いただきました通り、男性が理解者になり、さらに当事者意識を持っていくというのは非常に重要なことかなと思っています。まず理解者という観点でいうと、女性からのアンケート結果においては、女性だけではなくて男性にもセミナーをやってほしいというのは必ず言われますし、我々が開催するセミナーでは男性の参加者も結構多くなってきています。加えて、女性からの声として、男性が理解をしようとしていることがうれしいという声が聞かれますので、まずその一歩目を進めていくことがとても重要なのではないかなと思っています。
 2点目、当事者としては、今御指摘いただいたとおり、女性の更年期に関する社会の認知が進んだこと、また、女性の更年期がこれまではタブー視されてきたところが話題に上がるようになってきたことによって、今男性更年期もにわかに着目が集まっております。弊社においても、ポーラ・オルビスホールディングスさんにご協力いただき、会社様の中で男性が実際にそういった悩みを持たれているのか調査をしたところ、想定以上の方々が悩んでいらっしゃって、仕事に影響を及ぼしているというのが出てきました。そのため、女性に対して提供しているプログラムと同様に男性更年期でも同じような検証ができるのか、まさに準備を進めており、いずれそうした検証の結果もご報告できるのではないかと考えております。
 以上でございます。
○宮本委員 ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、神吉さんですかね。手を挙げていらっしゃるのは。
○神吉委員 大変必要な取組の御報告をありがとうございました。性別としても年代としても本当にドンピシャなものですから、大変共感を持って伺いました。
 途中で統計的なことをおっしゃったように、非常に有意義な取組であっても、その当事者、職場の不公平感があったりするとなかなか進まないと思うので、これを、男女、ジェンダーの平等ということと矛盾しないように進めていくことが非常に重要かなと思いました。
 そこの観点から1つ、伺いたいのですけれども、現在の職場が男性スタンダードでできているということで、その見直しとして、女性特有の問題をまずは知識として共有する、そしてそれに対処していくという、女性特有の問題に対して特別の対応をするという1つの道筋が示されたのかなと思いました。そこから外れるのですけれども、そうした質的に違う問題ではなくて、男女両方に関わる同じ基準が、男女で別の結果を生み出してしまっているという問題がないだろうかということが常々気になっているので、もしそういうことがあったら教えていただきたいと思います。具体的にどういうことかというと、例えば、時間外労働とか、それが同じ時間で過重性の基準を設定している。具体的には、現在時間外労働の絶対的条件というのはいわゆる過労死基準ということで、時間外労働が複数月で80時間、単月で100時間というので設定していますけれども、そうした男女共通の基準が、労災認定率を見ると、男性の認定率のほうが女性のざっと倍ぐらいあるということで、女性の認定率が非常に低くなっているという数字が厚労省から出ていると思います。その原因が何であるかということについても、私は統計的な分析はできていませんし、個別のデータも検証できていないので、これは仮説にすぎないのですけれども、その業務起因性を判断する認定基準の過重性が男性を基準としているのであれば、体力的に劣る女性がその認定基準以下の労働時間で健康を害するにもかかわらず業務過剰性が認められていないといった可能性もあるのではないかと考えていて、そうした男女共通の基準が女性に対してマイナスの影響を与えているかいないかといった研究がもしあれば、取組の中でそういう知見が得られていれば、教えていただきたいと思いました。現在、結構男女平等にやっていくということ自体は、なかなか覆せない、否定できない事象なので、私の職場の産業医と話していましたら、ストレスチェックにも、もうそもそも性別という項目を入れてはいけないのだというようなことで、男女のストレス、職場ストレスの影響を調べることすらできないという状況にあるようで、そうした会社における男女平等も、不公平をなくすという観点と女性特有の問題の解決というバランスをどういうふうに取っていらっしゃるのかについても教えていただければ幸いです。
 以上です。
○樋口座長 重要な問題だと思いますけれども、いかがですか。
○平野様(野村臨時委員代理) ありがとうございます。
 非常に難しい課題なのかなと理解しております。そもそもこの女性特有の健康課題の尺度というのがまだ定まっていないのが実情だと思っています。今の我々の状況としましては、不平等という声が出ないようになるべく男女共通の指標で取っていくことから始めておりまして、具体的には健康経営の枠組みで使われている、プレゼンティーズムと呼ばれる、健康問題を原因として労働生産性が落ちている状況を図る指標を採用しております。こちらも男女同じ方法で取りますので、こちらを女性の健康課題に当てはめたときにどれぐらいの課題があり、それがどのように改善したのかといったところを、企業に対してお伝えしております。
 一方で、女性の健康課題に積極的に取り組んでいらっしゃる企業様とお話をする中ででてくる声としましては、男女が同じ基準でいいのかといったところについては、平等性を重視すべきものと公平性を重視すべきものを分けたほうがいいのではないかというものです。どういうことかといいますと、女性の健康課題を重視したほうがいいということではなくて、女性には女性特有の健康課題があるのでそこに対してはより手当てをするべきだし、男性にとっても男性の健康課題で女性よりも悩むところであれば、より手当てをするべきだろうと。平等という観点では、同じ金額で同じ施策を全ての従業員に対して取り組むという考え方になります。しかしながら、統計を取ってみると、例えば、月経であれば、20%ぐらいの女性は本当に横にならなければいけないぐらい強く悩んでいらっしゃって、5割ぐらいの方々は何らかの支障はあるが何とか頑張って働ける、3割ぐらいの女性は支障がないというような割合になります。そういった状況の中で全員に同じ対策をしてみても、3割の元気な人にとっては無駄になってしまいますし、本当に症状が強い2割の方にとっては逆に十分ではないという結果になってしまう。なので、公平という観点では、悩んでいる方に対しては、より資源を割いて、そうすると効果も出やすいですし、逆に、元気な方に対しては元気でよかったねという形で、そういった観点で施策を考えることが必要なのではないかと思います。男性と女性であれば、女性の健康課題で悩んでいる方が多いのであれば、そこに対しては手当てをしましょう、男性にも男性更年期があるのだったらそこに手当てをしましょうという形で、平等ではなく公平という観点でやっていくと、少し見方が変わるのではないかというのをいただいております。
 まとまりのないコメントになってしまって恐縮ですが、以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、山本さん、手を挙げていらっしゃいますかね。
○山本委員 大変貴重な取組の御説明をありがとうございました。
 まず参考情報ですけれども、先ほど公的統計という話が出ていましたが、内閣府の男女共同参画局の今年度のプロジェクトで、比較的大規模な調査を行っていまして、まさにその女性特有の健康問題について調査をしていきます。私もそこの研究会に携わっているのですけれども、そこでまさに今御説明いただいたようなプレゼンティーズム、様々な月経とか更年期とかその他の症状によってどれぐらいパフォーマンスが落ちるのかといったことも調査しまして、今年度中、今年度末までに公表されると思います。比較可能かなと思います。
 質問は、宮本先生の御意見、御質問にも近いのですが、効果検証がされていてすばらしいと思うのですけれども、女性御本人のプログラムの効果検証だけではなくて、セミナーなどを行って職場全体の理解がどう変わったかとか、例えば、生理休暇は今取得率が非常に低くて問題になっていますけれども、その取得率が高くなった、取りやすくなったとか、そういう職場の中身、運用とか、リテラシーが変わったといった検証はされているのか、されていればどんな結果が出ているのかというところを教えていただければと思います。
○樋口座長 お願いします。
○平野様(野村臨時委員代理) 御質問いただき、ありがとうございます。
 我々の中で、アセスメントとして2種類やってございまして、今いただいた実際にプログラムを使って介入した方の事前・事後の調査、あともう1つが、全社調査というのを今やっています。ただ、こちらは始めたばかりですので、まだ各社1年分しかない状況ではあるのですけれども、これを経年で見ていくことによって、会社全体としてどういう変化が起きたのかというのが分かるのではないかということを仮説として持っております。現在、東京大学と共同研究を開始させていただいて、その全社アセスメントがどう変化をしたのかを見ていこうといった取組を始めている状況でございます。1つ、難しさとしましては、一方で企業の方々がそういったデータでやるといったところで、様々なアセスメントが走っていらっしゃる。ストレスチェックもありますし、プレゼンティーイズムサーベイという全社の健康調査もあれば、その他のいろいろなアンケートもある中で、こういった我々のアセスメントのようなものを毎年できるのかというと、やってくださる企業様もいれば、優先度として2回目はいつできるか分からないという企業様もいらっしゃるので、そこが今我々の取組の状況の難しさになっています。なので、可能であれば、我々のこういった踏み込んだ調査もやりつつ、何か公的な統計や健康診断なのか、もしくはそれ以外のものでも構わないのですけれども、多くの企業が必ずやらなければいけないもしくはそれに近しいような公的統計でその取組をより見ていけるようなデータがたまっていくと、すごくいいのではないかなと思っているのが、我々の今感じているところでございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 最後に、もし黒田さんに何か御感想なりあったら、お願いします。
○黒田委員 本日は、平野様、本当にありがとうございました。
 先ほど後半のほうでおっしゃっていましたけれども、男性のほうも女性の健康課題について理解を深めたいと思っているものの、では何から取り組んでいくべきかという点においては男女間に違いがあるとおっしゃっていた点に共感しました。具体的には、御社が行った調査において、実際に女性の仕事に与えている影響として一番大きいと考えているのは、男性の視点からは「妊活や出産」であったのに対して、女性の視点では「月経や更年期」に纏わる症状と答えた方が最も多かったという認識のギャップです。まさに最近は、男女の格差是正のための課題や支援を検討する際には、チャイルドペナルティーの存在や育休取得の推進、育児との両立支援など、出産や子育てに関連させたテーマで女性支援の在り方が論じられてきています。それ自体はとても重要ではありますが、今後はそれだけではなくて、出産や育児とは直接的に関係していない部分でも、働く女性の課題があるのではないか、という認識が今回の平野様のご報告で深まったと思います。アレンジをしてくださった厚労省の皆様にも深く御礼申し上げます。
 1点だけ、御指名いただきましたので、質問させていただきたいのですが、平野様のご勤務先では、オンライン診療などを通じてピルを処方し、女性特有の症状の改善や治療を行うというサービスをご提供していると理解しています。これに関連して教えていただきたいのですが、日本は低用量ピルの服用に対してまだ認知度や理解度が低く、服薬していいのか、抵抗を感じておられる方も多いのではないかと思っています。御社のサービスを利用する参加企業が増えてきている中、重い症状で苦しんでいる方からも実際にそういった悩みが聞こえたりするのでしょうか、最終的に治療に進む方の割合というようなものはどれくらいのものなのでしょうか。こうした質問をさせていただいたのは、先ほどのご報告の中で、プログラム前と後で、もともと小さかったn数がプログラム後にさらに小さくなっている箇所があったかと思います。プログラムに参加してみたけれども、やはり治療には抵抗がある、やめておこうという方がいらっしゃったのか、その辺りを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○樋口座長 お願いします。
○平野様(野村臨時委員代理) 御質問いただき、ありがとうございます。先生、ありがとうございました。
 御質問いただいたピルの服用に対する抵抗感や服用の状況について御説明させていただけたらと思います。御理解のとおり、まず我々のサービスは治療が必要な方につきましては、医師の判断によって、月経困難症、PMSの方については、低用量ピルの処方をさせていただく、更年期の方につきましては、更年期に効く漢方薬等を処方するということをサービス提供しております。抵抗感については、御理解のとおり、一定程度あるのかなと思っておりまして、その解消のためにセミナーを開催しハードルを下げていくといったところに今取り組んでいる状況でございます。特に若い世代の方々につきましてはそういった抵抗感はどんどん下がってきている状況なのかなと理解しております。今の利用状況ですが、各社様、結構ばらつきがある状況なのですけれども、大体平均してみると、15%前後ぐらいの女性に使っていただいている状況になっております。これが高いか低いかというと、ほかの健康課題に比べると高いと言われています。その理解としては、メタボの特定保健指導や、例えば、禁煙指導をしようとすると、これまで大好きで吸ってきた喫煙をやめたいという人は少ない中で、どうしてもやめさせなければいけない取組になってしまうところが、女性たちは自分のせいではなく体質として悩んでしまっているということに対してこういった選択肢を出すからこそ、高い参加率、ほかと比べて相対的に高い状況なのかなと思っています。
 一方で、先ほど申し上げたとおり、実際に女性で悩んでいる方々につきましては、本当につらい、重度・中度の方々は25%ぐらいいると言われている状況を鑑みると、本当はもう少し高い普及率や利用率になっていってもいいのではないかなというギャップは感じているところでして、そこに関してはリテラシーを高めていくとか、その他の選択肢を提供するといったことができるのではないかと思っております。ほかの健康施策よりは参加率が高いが、まだ本当に目指すべき参加率と比べると少し低い状況なのかなと理解しているところです。
 もう1点だけ補足させていただくと、女性の健康課題に対する取組を広げていくための指標につきましても、しっかりと考えていく必要があるかなと考えています。具体的には生理休暇の取得率はよく企業として統計が出ているのですけれども、必ずしも進んでいる企業だから高いかというと、そういうわけではないかなと思っています。どういうことかと言いますと、多くの女性は有休で取ってしまっている場合もある。なぜかというと、企業においては生理休暇を取得させることは義務だけれども、生理休暇を有給とする企業は限られているため無給休暇になってしまう企業も多く、休んでお金がもらえないのだったら、お金がもらえる有休にしたいという従業員も一定程度いらっしゃるというところと、適切な治療介入によって症状が緩和され休まなくてもいい状態になるほうがいいといったところもあるかなと思っておりますので、そういった観点で、適切な治療をうけている方々の割合や健康課題が仕事に支障をきたす女性の割合などを見ていくなど、指標の設計をしっかりと考えていく必要があるのではないかなと考えているところでございます。
 以上です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 多面からいろいろ考えていかなくてはいけないテーマですが、均等局の話なのか基準局なのか分かりませんけれど、幾つか宿題が今出ていましたので、次回にでもまたお話しいただければと思います。平野様の説明は以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○平野様(野村臨時委員代理) ありがとうございました。
○樋口座長 それでは、次の議事に入ります。資料2及び3について、事務局から説明をお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 それでは、資料2、3について御説明をさせていただきます。
 まず資料2でございますけれども、今回の御議論いただきたい内容につきまして、箇条書きでございますけれども、お示しさせていただいております。今回、2つテーマがございます。地域雇用と外国人雇用でございます。上の緑色のところが地域雇用でございます。1番目でございますけれども、地方では若年者の東京への流出等による人口減少もあり、人手不足が深刻化しているといった現状がございます。そういった中では、女性や高齢者などの潜在的な労働力の掘り起こしが重要であり、労働条件や働き方の改善を行っていく必要があります。そのためにはどのような対応が必要かということも考える必要がございます。
 また、UIJターンの促進、テレワークや副業兼業などで地域外との仕事のマッチング向上を図っていくことも重要でございますので、このようなことをどう考えていくかということを御議論いただきたいと考えてございます。
 また、下から2つ目のところでございますが、人手不足がより深刻な地域の中小企業においては、より柔軟な働き方を提供し、様々なバックグラウンドを持つ人が参加できる地域の労働市場の構築が重要となってくると考えてございます。こうした柔軟な働き方が可能となるような支援としてどのようなことが考えられるかといったことも御議論いただきたいと考えてございます。
 下の外国人雇用に移らせていただきたいと思います。まず1つ目でございます。人手不足の進展に伴い、幅広い分野において外国人材が活躍しております。また、アジア諸国の中におきましても日本での就労ニーズの高まりが見られるといった現状がございます。日本が外国人材にとって魅力的な労働市場になるよう引き続き雇用管理改善に取り組んでいくといったことが重要になってございますので、こういったことにつきまして御議論いただきたいと考えてございます。
 また、特に雇用管理改善を通じて外国人材の定着を図っていくためにはどのような相談体制の整備を行っていくことが重要なのかといったことも、キャリアアップも踏まえて御議論いただきたいと考えてございます。
 資料3につきましては、データ集なので、説明を割愛させていただきます。
 以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 今の資料は、本日議論いただくというよりも今後取りまとめのときにでも御議論いただければということですが、いずれにしても、人口の移動とといったものがかなり頻繁に行われるようになってきた中においての問題があるかと思います。
 それでは、続きまして、井上様から資料4について説明をお願いします。日本政策金融公庫の井上さんです。よろしくお願いします。
○井上臨時委員 日本政策金融公庫総合研究所の井上といいます。今日はよろしくお願いします。
 私からは、地域の雇用に関する課題の整理ということで御報告させていただきます。
 最初に自己紹介をさせていただきますと、日本公庫は、一般の金融機関が行う金融を補完することを業務として行っております政府系の金融機関でございます。コロナが流行したときに、いわゆるゼロゼロ融資でメディアでも盛んに取り上げられましたので御存じの方も多いかと思います。その公庫の中に総合研究所という部署がございます。中小企業を対象に調査をしておりまして、公庫のお取引先に限らず、一般の中小企業にアンケートを行ったり、ヒアリングを行ったりして、中小企業の現場についていろいろと調査研究しております。その研究成果については、冊子やレポート、論文、書籍という形で公表しておりまして、書籍以外のものについては公庫のホームページでも御覧いただけますので、御興味のある方は見ていただければと思います。
 それでは、早速内容に入っていきます。まず、将来推計ということで、国立社会保障・人口問題研究所さんで推計しております2050年の生産年齢人口の図を見ますと、全市区町村の40.5%を占める699の市区町村で、生産年齢人口が2020年の半数未満になるというデータが出ております。ここから人手不足等の問題が生じてくるわけなのですけれども、実は人手不足以外に企業の減少も大きな問題となります。少し古いデータですけれども、当研究所が2015年に実施した「地域経済の現状と経済振興の取組に関するアンケート」の結果では、人口問題を問題として認識している割合が高いのですけれども、それと同じように企業の減少についても大きな問題であると捉えている割合が高かったです。こちらは商工会議所や商工会といった地域の経済の現場で活動されていらっしゃるところに尋ねたものでございます。
そこで、企業数の減少への対応としまして、創業と事業承継の支援について、お話しさせていただければと思います。どちらも総合研究所で力を入れて調査しているものでございます。まず、新規開業企業について、皆さんも御承知のとおり、経済的貢献の1つとして、雇用の創出がよく挙げられます。新規開業企業に対して公庫は年間で2万から3万件、融資しておりまして、当研究所の最新の調査では、1企業当たりの従業者数が3人弱になっていまして、年度で10万人弱の雇用が生まれていると推計しております。
 ただ、開業後に雇用を増やしている新規開業企業は約4割です。逆に、開業してすぐに廃業してしまう企業もありまして、当研究所で開業してから5年間継続で毎年調査しているアンケートの結果を見ますと、5年間で1割から2割の企業が廃業しているという結果が出ております。
 従業員を増やしている企業の特徴、廃業している企業の特徴を見たものが11ページでございまして、多項プロビットモデルによる推計を行ったものです。増加している企業の特徴としましては、マネジメント経験がある経営者の方が率いている、開業費用が多い、事業内容に新規性があるといった要素が挙げられます。ただ一方で、直前の職業が法人の代表・役員であるとか、事業内容に新規性がある場合は、同時に廃業しやすいという傾向もあります。斯業経験や開業費用が不足しているケースではそもそも廃業しやすいという傾向も確認できました。
 創業支援については、雇用の創出を考えるのであれば増加企業を増やすことが重要ということになるのですけれども、企業数を維持することも非常に重要で、開業した企業がすぐに廃業しないようにすることも欠かせません。斯業経験が乏しい創業者や開業資金が少ない企業の支援が必要になりますし、また、地域の雇用を考えるのであれば、創業は都市部で多いものですから、地域で創業を増やす移住創業といった取組も必要になってくるかと思います。そもそも日本では創業希望者が少ないという現状もありますので、創業への関心を高めることも必要でして、公庫では創業マインドの醸成を目的に、高校生を対象にビジネスプラン・グランプリを開催しております。かなりの方に応募していただいており、先月、第11回の最終審査会を開催したところです。
 続いて、事業承継の支援です。中小企業の経営者の高齢化が、大きな問題となっております。当研究所のアンケートでは、廃業を予定している企業が約6割弱という結果となっております。廃業を予定している企業は、規模が小さい企業で特に多くて、逆に後継者が決まっている企業あるいは後継者はまだ決まっていないのですけれども事業承継はしたいと考えている未定企業は規模が大きい企業で多いという結果となっております。
 後継者が決まっている企業に対して、後継者の候補を尋ねますと、長男が大きなウエートを占めているのですけれども、この長男の割合が、最新の調査では33.7%と、以前と比べて低下しております。その代わりに増えてきているのが、役員・従業員、社外の人ということで、親族外承継の割合が高まっているという状況でございます。
 廃業を予定している企業になぜ廃業しようと考えているのかを尋ねたものが17ページの図でございまして、これを見ますと、業績不振、後継者難というような理由よりも、「そもそも継いでもらいたいと思っていない」と考えている企業のほうが割合としては高いという結果でございます。なぜそもそも継いでもらいたいと思っていないのかというと、この辺りがまだなかなか実態が把握し切れていないところではあるのですけれども、まず1つは、そもそも経営者個人の感性あるいは個性や技術といったもので事業が成り立っているので、自分が引退するとその事業は誰かに引き継がせられない、廃業せざるを得ないと考えていることが多いのかなと。これは腕のいい料理人さんが経営する飲食店をイメージしていただければ御理解いただけると思います。もう1つ、規模が小さい企業の場合は、経営者が生業として事業を行っている、あるいは自身の生きがいとして事業を行っているといったケースがあります。例えば、収入を確保するために事業をやっているケースでは、年金収入があれば、自分が引退した後にその事業がどうなろうとあまり気にしない、あるいは経営が生きがいとなっているケースでは、廃業するときは自分が亡くなるときだという意識から、承継についての意識があまり高くはないというようなことが考えられます。
 事業承継を促進するには何が必要かということで、先ほど申し上げましたとおり、親族外への承継が増えておりますので、その動きを促進することが必要かなと思います。重要な取組としては、経営者の個人保証の免除、この辺りは金融機関でも近年では取り組んでいるところでございます。それから、承継相手の紹介、マッチング支援と言われているものでして、最近では、民間の企業も含めて、マッチング支援が盛んに行われるようになっております。公庫でも事業承継のマッチング支援を行っておりまして、2023年度上半期の実績は、譲受の希望も含めて支援の申込みが3,000件弱ほどで、成約実績は52件です。成約は申込みに比べると少ないのですけれども、ここ数年ではかなり増えてきているという状況です。
 公庫が行うマッチング支援の特徴として2つありまして、一つは昨年度から、オープンネームでの取組を実施していまして、要は自社の名前を公表して引き継いでもらいたい企業を探すことができます。もう一つは、成約案件の2割が、創業・起業者への承継が占めている点です。公庫では継ぐスタと呼んでいるのですけれども、既存の企業だけではなくて創業したい方に廃業する企業の事業を継いでもらうという取組を行っております。
 こうした取組を行っても、廃業してしまう企業はなかなかなくなりません。そうした企業に対しては、まずは承継を意識してもらうことが重要なのですけれども、廃業する場合でも、顧客、従業員、設備などを他社に引き継いでもらうことで廃業の影響を和らげるということが必要になってくるかと思います。特に 経営者の能力を生かすことが重要と考えております。経営経験は貴重なものだと思いますので、廃業した後に、例えば創業者のメンターになってもらうなどの形で、これまで経営してきた経験等を生かしてもらうことも必要ではないかと考えております。
 最後といいますか、これが本題になるのですけれども、求職ニーズ、求人ニーズから、地域の雇用に関する課題についてまとめたものが21ページの図になります。まず、左上の求人ニーズも求職ニーズも少ないケース、こちらの場合は、地域経済の維持・発展が課題で地域振興が重要になります。その右側の求人ニーズが少なく、求職ニーズが多い場合は、雇用機会の創出が必要で、既存企業の成長、事業承継後の経営革新とか新市場進出とか、そういった取組で企業を大きくしてもらう。それから、新しい企業を増やすということで創業、よその地域から企業を誘致。テレワークで都市部の仕事を地方でも対応できるようにする。昔からある方法ですけれども、出稼ぎをしていく。そういったことも考えられると思います。左下の求人ニーズが多いけれども、求職ニーズが少ない、いわゆる人手不足の状況の場合は、労働力の確保が課題になります。対象別に考えますと、まず、今働いている人に対してはもっと長く働いてもらえるような取組が必要かと思います。非正社員の方に正社員になってもらう、副業・兼業として別の企業でも働いてもらうといったことが考えられます。今働いていない非就労者の方に対しては労働参加を図るということで、女性、高齢者、障害者、外国人などの労働参加を高めていくことが必要かと思います。それから地域外の人材を活用していくということで移住を促進する、都市部の人材に副業をしてもらうというような取組が必要かと思います。右下の求人ニーズ、求職ニーズも多いケースでは、ミスマッチの解消が課題になりまして、人材の育成とか働き方に関する問題、賃上げ、こういったところが課題になってくると思います。
 支援側にどういったことが求められるのかを述べますと、個人や企業の状況は様々で、地域の状況でも異なってくると思いますので、それぞれのニーズや課題に対して解決策を提示しなければいけなく、国としては、様々な支援のメニューを用意していくことが重要ではないかと思います。それに対して当事者となる自治体とか企業、労働者の方は、自身に最適な支援を選んで取り組んでいくことが必要と思います。また、問題の根本を解決しなければ状況は変わらないこと、問題の背景は多様ですので、単独の組織では解決が困難なこともあることを意識しないといけないと思います。悩ましいのが補助金の問題と思うのですけれども、例えば、非正社員の方を正社員に登用するというときに、例えば、補助金を支給しますので正社員になってもらうということを制度として行っても、そもそもの正社員にならない理由、年収の壁といった問題を解決しなければ、なかなかうまくいかないということが考えられます。厚生労働省さんが単独でできることも限界があると思いますので、ほかの省庁とも連携して事に当たる必要があるのではないかと思います。そして、問題は既に顕在化していますので、まずは支援を実施して、その上で支援内容あるいは周知ルートを改善していく、充実を図っていくということが必要と考えております。
企業側も、ヒアリングなどをしてみますと、支援を十分に活用できていない、そういった支援があることを知らなかったという企業もいらっしゃいますので、積極的に支援を活用しようという姿勢が必要ではないかなと思います。また、就労条件は大企業に比べて中小企業は劣りますので、自社がどういった魅力を提供できるかを考えていくことが必要です。そうしなければ、他の企業に労働者を奪われて自社には見向きもされません。自社が提供できる働き方とか、仕事のやりがいだとか、そういったところを考えてそれをうまく伝えていくことが必要かなと思います。最後に、企業側が自ら制約を設けているという面もありまして、常識や習慣とか、そういったことが、取組を実施する上で制約になっていないかということが挙げられます。以前にヒアリングした牛乳配達の企業では、牛乳配達といえば早朝に配達することが一般的かとは思うのですけれども、その企業は必ずしも早朝にこだわらなくて、日中に配達しています。その結果、女性やシニアを採用しやすくなった、高齢者の見守り機能も発揮できるようになったということで、成果を上げています。柔軟な対応が中小企業の強みでありますので、意味のない常識や習慣があれば、それを取り払って何かできないかということを考えていくことも必要ではないかと思います。
 以上で私の報告は終わりになります。どうもありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 議論は、これから是川さんにお話しいただいて、併せてしたいと思います。それでは、是川さん、国立社会保障・人口問題研究所でいらっしゃいます。お願いします。
○是川臨時委員 よろしくお願いします。
 国立社会保障・人口問題研究所の是川と申します。
 本日は国際労働移動の実態及びメカニズムについてということで、外国人労働者を取り巻くアジアワイドの状況及びその受入れのメカニズムについて御報告したいと思います。
 まず、スライド1枚、お願いします。本日のポイントとしては、5点ございます。まず1点目といたしましては、アジアの国際労働市場、こういったものを観念できるとすれば、そこにおいて日本は既に最大の受入れ国となっております。そして国際機関等が行う推計等、各種エビデンスから見ていきますと、今後もこうした傾向が続く可能性が非常に高いと言えます。2点目といたしましては、こうした状況の認識を阻害している要因といたしまして、日本は労働移民中心の受入れを行っております。これは欧米が家族移民や難民といったような、主に旧植民地体制の名残といった形の受入れを行っているのに対して、日本は労働移民の受入れを行っております。そして労働移民の受入れという観点から申しますと、現時点で既に世界有数の受入れ規模となっております。3点目といたしまして、こうした国際労働市場、こうしたものをワークさせるためには、移住仲介機能が必須というのが通説となっております。そして、これは法や規制といったようなものだけではなく、経済的な動機づけを通じた市場のマーケットメカニズムを通じた管理が必要というのがコンセンサスとなっております。4点目といたしましては、今般、最終報告書が出て現在法案化を進めておられるかと思いますが、育成就労制度、こちらは、そうした中、スキル形成と人材確保の双方を目的とする点において、国際的なこうした労働移民政策の潮流に正面から向き合ったものとなっていると考えております。5点目といたしまして、こうした形で日本に入ってきた外国人労働者ですが、こちらは従前言われておりましたような外部労働市場を通じた包摂というものよりも、現時点で起きていることは、あらゆるスキルレベルにおいて、日本型雇用の内部、すなわち内部労働市場を通じた受入れが行われているという状況が見られます。そうした中、こうした内部労働市場を通じた受入れが行われた際に、日本人と外国人の賃金格差も最小となるといった現時点での技術的な分析が可能となっております。これらの点について詳しく見てまいりたいと思います。
 もう1枚、さらにもう1枚、お願いします。最初ですが、アジアからの労働移動において、日本が既に最大の受入れ国となっていることを示しております。左側の図1ですが、こちらはOECD等の国際機関が集計しておりますデータから、コロナ直前の時点、2019年時点での国際移民のフローを示したものです。アジアから年間約590万人の労働移民が毎年発生しておりました。このうち約半数の282万人が湾岸諸国に向かっております。そして、OECD諸国、先進諸国に対しては約230万人が向かっておりますが、このうち最大の受入れ国上位3か国というのが、日本、韓国、米国となっており、日本は約48万人、グロスのベースとなりますが、受け入れているということになります。右側の図にはこうした関係を各国の送り出し国の1人当たりGDPとグラフ上部に書かれておりますそれぞれの目的国の占めるシェア、それぞれの送り出し国から出て行く移民に占めるシェアを示したものですが、経済成長が進むほど日本やアメリカのシェアが高くなるという傾向が見てとれます。一方、湾岸諸国は完全な右肩下がりとなっておりまして、経済発展をするほどこれらの国には行かなくなると。また、韓国はその過渡的な状況にありまして、1人当たりGDPが1万ドルになる直前ぐらいまではシェアを拡大しますが、それを超えるとターンする逆U字型となっております。
 次のページをお願いします。こうした状況ですが、左側の図3、IMFが2022年の春に出したワールドエコノミックアウトルックから取ったものです。先進国と新興国間の国際移住の今後の推計を行っております。この報告書のポイントといたしましては、今後先進国と途上国間の経済格差が著しく縮小するという中で、こうした動きがどうなるかということを推計しております。結果、2050年まで見てもほぼ単調増加となっております。同じモデルを使いまして、日本に関してJICAが行った推計が図4です。現状40万人のグロスベースで見た外国人労働者の流入ですが、こちらが2040年にかけて100万人近くまで増えていくと、ただ、経済発展に伴いまして送り出し国の構成は徐々に変化していくと、そういった内容となっております。
 もう1枚、お願いします。こうした状況は、円安の中、日本がもはや選ばれる国ではないという議論もあるわけですが、足元の数字を見てまいりますと、2023年、直近のピークである2018年や2019年と比べても、毎月の新規入国者数は過去最高のペースで増えております。特に2022年の1年間で見ますと、1年間に32万人純増と。これは過去直近のピークの21万を10万人以上上回る数字となっております。すなわち、円安にもかかわらず、むしろ外国人の流入は加速していると。
 次、さらに次をお願いします。こちらはどういったメカニズムがあるのかということですが、IMF等も国際労働移動に関するエキスパートの間では、おおむねコンセンサスとなっているのが、この意欲潜在能力モデルと言われるものです。右軸が経済発展を示しておりまして、まずマイグレーションアスピレーションズ、移住意欲ですが、こちらはむしろ経済発展がある程度進む中で高まって、その後に低減していくと。また、移住能力は経済成長に伴って右肩上がりで増えていくと。そしてこの両者の重なったところで実際に移住が起きると言われています。その結果として、経済発展から送り出し圧力のピークまでの間に若干のラグが発生します。このラグが、およそ1人当たりGDPが7,000ドルぐらいになるまでというのがIMFの最新の推計となっております。そして、アジアから日本への国際労働移動が加速する背景には、東南アジア諸国の日本に数多く送り出している国の多くが、この2,000ドルから7,000ドルぐらいのところに集中しておりまして、現在ちょうど加速の傾向にあると。これが一見日本との経済格差が縮んでいく中でも流入者が増えていく背景にあると思われます。
 次の次、こうした状況があるわけですが、そもそも移民とは何かということで、移民政策とは何かということを簡単に確認したいと思います。
 次、お願いします。こちらはOECDの定義に従った移民の定義となっております。永住型移民と一時滞在型移民、表1にございますが、永住型移民は、滞在期間に上限がない場合のみならず、滞在期間の更新回数に上限がない場合も含めるということになっております。その定義でまいりますと、図8ですが、日本に現在在留する外国人の約6割以上が既に永住型と国際的には分類されることになります。
 次、お願いします。こうした永住型移民ですが、国際的に見てまいりますと、2019年の時点で日本は第10位の受入れとなっております。ただ、OECD諸国における永住型移民の受入れ、その類型別に見ていきますと、日本とは大きく状況が異なってまいります。まず、こちらの図9の円グラフですが、永住型移民の中で最も多い受入れは家族移民となっております。家族移民とは何かといいますと、国際結婚、その他家族呼び寄せですが、その多くが旧植民地と宗主国の間で起きております。すなわち、例えば、フランスなどでも、マグレブ系の移民の間で結婚するといった場合、国籍はアルジェリアであったりすると。ただ、そういった場合も同じエスニシティーの集団の中で結婚しますと、形式上、国際結婚になるといった動きが多くを占めております。また、ヒューマンイタニアン、こちらは難民等です。フリームーブメンツは、支援協定内の自由移動となっております。日本が専ら念頭に置いているワークとその家族、アカンパニングファミリーに関しては、全体を合わせても20%に満たないという状況になっております。
 次のスライドをお願いいたします。こうした類型化をレーダーチャートで示したものですが、日本を赤で示しております、労働、家族、人道、自由移動、その他のシェアをレーダーチャートで示したものですが、日本は労働移民が6割近くを占める形態になっておりまして、ほぼ重なっておりますが、これはカナダと極めて似た受入れのバランスになっております。日本が世界的にハイスキル人材を引きつけていると見ているアメリカですが、実はアメリカは家族移民が全体の7割近くを占めておりまして、この多くがメキシコなどの中南米から来る移民となっております。ドイツは自由移動が6割近くということで、実は受入れの中身を見ていくと大きく異なります。こちらの右側のグラフですが、類型別のボリュームを示しておりますが、実は労働移民に限りますと、例えば、日本とアメリカの差も全体の差ほどではないということが分かります。
 次、さらに次、お願いします。先ほど永住型移民、もう1つの一時滞在型移民というのがございます。日本は労働移民が多いということになるわけですが、こちらの表3は、労働移民という切り口から再度集計し直したものです。労働移民の中に永住型と一時滞在型という類型がございます。一時滞在型というのは季節労働者などが多くを占めています。日本は、こうした労働移民に限ってみますと、実はOECD加盟国の中で第5位の受入れ規模、年間133万人超ということになります。また、受入れの中身を見ましても、実は永住型の受入れの割合が、G7諸国の中でもカナダに次いで高い。こちらのc列に一次滞在型移民の占める割合を示していますが、アメリカやドイツなどは労働移民のほとんどは期限つきの労働移民として受け入れています。日本に関しましてはこれが80%ということになりまして、実は労働移民に限ると非常に永住型をベースとした受入れをしているということになります。
 次、お願いします。こうしたことを背景に、国際労働移動のメカニズムにはどういったことがあるかということを簡単に御説明したいと思います。国際労働移動において、最も大きな特徴は2点あります。1点目が、情報の非対称性が非常に大きいということです。こちらは当然のことですが、送り出し国と受入れ国の間は距離が離れておりますので、求人・求職はお互いのことがよく分からない。結果として仲介あっせん機能が必然的に必要になってまいります。また、2点目といたしまして、特にスキルレベルが低い層になりますと、需給ギャップが非常に大きい、供給過多ということになります。こちらは過当競争が発生することや情報のスクリーニングコストが非常に高いという状況が発生します。技能実習生の手数料問題はモラル事案として捉えられることが多いですが、実は国際労働移動に固有のこうした障壁を乗り越えるためのコストが立場的に一番弱い労働者に転嫁されたという形で理解することができます。
 次、お願いします。こうした状況は、実際にベトナム人技能実習生の払う手数料の負担額の内訳を見ることで看取されます。例えば、技能実習生はベトナムのどういった送り出し機関から来るかということ別に費用の内訳を示しておりますが、実は役務提供費としての実費部分というのは、国営であれ、民間中小であれ、大きく変わりません。何が違うのかといいますと、民間中小にありますと、追加的な情報探索コストの部分が、追加的な仲介手数料などのような形で追加されていくと。その結果として100万を超えるような額になっていくという状況があります。
 次、お願いします。これは、同じ技能実習生でも、どの国から来るか、どのルートから来るかということによっても、金額が違うということも見てとれます。日本国内では技能実習制度固有の問題と言われているわけですが、そうであるならばどこから来るにしても同じ金額になるはずなのです。それが実際はそうではなくて、需給バランスや情報探索コストの違いによって、実際の金額は大きく異なります。また、同様のことが韓国の雇用許可制においても発生しておりまして、G to Gでゼロフィーと言われているのですが、実際の国際労働移動において発生する様々なヒドゥンフィーが課せられておりまして、韓国政府の調査結果によると、やはりベトナムはこうした金額も非常に高いという結果になっています。
 次、お願いします。こうしたことを、実際の移動ルート、こちらはベトナムの例ですが、私が調査した結果でお示ししたものです。日本への国際労働移動の特徴といたしましては、いかなるスキルレベルであれ、基本は高卒以上ということです。アジアの国際労働市場においては高卒以上か高卒未満かによって行き先が大きく異なります。義務教育段階になりますと、産油国などに行く例が非常に増えます。そして、高卒以上になりますとスキルアップといった中長期的な視点を持つ労働者が増えてまいります。例えば、日本の技能実習生は留学生と出身階層が非常に重なっています。いずれも、高卒以上の現地におけるミドルクラス以上の人たちです。ただ、修学資金のファイナンス力に多少の違いがあって、ファイナンス力に乏しいと技能実習生で来ますし、そうでなければ留学で来るというような緩やかな分布があります。そして、実際に私が調査したところ、日本で学ぶ留学生の5%ぐらいはその前に日本に技能実習生で来ているという結果も出ております。すなわち、技能実習でためたお金でその後に留学してくる、そういったことが見てとれるということになります。
 次、お願いします。こうした中、健全な国際労働市場をつくるにはどうしたらいいかということですが、しばしば言われるような制度の厳格化や廃止というのは最も悪手であると言われています。国際労働移動ルートを著しく狭めることによって、インフォーマルセクターも含め、非常に仲介フィーを高くしていく、需給が逼迫することにより、高いフィーが取られるようになるといったことが言われております。情報の非対称性と高い送り出し圧力を前提とするならば、いかにこれをスムーズに機能させるかということこそが一番のポイントとなるべきと考えます。
 次、お願いします。さらに次、お願いします。どういった方法がいいのかということですが、ミクロとマクロがあると先行研究で言われております。ミクロでは、経済的インセンティブに基づく優良事業者のインセンティブづけが挙げられています。また、マクロな政策としては、健全な中長期的な視点に立った国際労働市場をどうつくるか。投機的な事業者が参加することをいかに防ぐかということがポイントとなっております。そして、その際には、中程度の寡占とも言われますが、ある程度の規模の事業者が競争する状況、また、スキルレベルの上昇といった中長期的な視点が組み込まれることが重要になります。
 次、お願いします。こうした視点で育成就労を見てまいりますと、非常にポイントを押さえていると言うことができるかと思います。
 次、お願いします。育成就労のポイントは4つあるかと思います。1点目としては、人材育成を人材確保となる目的としてキャリアアップできるということを掲げているということです。また、2点目といたしましては、移住仲介機能の役割を正面から認めている。また、3点目としては、あまり議論になっておりませんが、日本で身につけた技能の見える化など、国際的な資格の相互認証といった国際的な潮流を踏まえていることです。OECDや世銀が、スキルズモビリティパートナーシップあるいはグローバルスキルパートナーシップといったように国際的な技能の形成とその相互認証ということを前面に掲げております。こうした流れに応えるものと言えます。また、4点目といたしまして、人権保護ということについて多重のセーフティーがついているということです。
 次のさらに次、その次をお願いします。こうした育成就労ですが、今後の課題としては、特定技能制度と併せたスキル形成機能よりどう担保していくかということかと思います。また、就労の傍ら、高い日本語能力をどう身につけるか。また、3点目といたしましては、こういった視点を生産性の向上といった成長戦略とどうつなげていくかという視点も非常に重要かと思います。しばしば外国人労働者の受入れが生産性の向上と相反すると言われておりますが、例えば、介護労働実態調査の結果などを見てまいりますと、DXの進んだ施設ほど外国人介護士を入れているというような結果も出ております。こちらは相反するものではなくて、両方が併せて行われていくということがこれからの人手不足の中では求められていることかと思います。
 次、お願いします。さらに次、お願いします。最後に、日本における外国人労働者ということで、簡単に分かっていることを御報告したいと思います。まず、1988年に経済企画庁が出した日本型雇用における外国人労働者の概念図です。こちらは今でも引用されることが多いものですが、この頃と比較しまして大きく変わった状況がございます。主に赤字で書いているところです。1988年当時は、外国人労働者は、スキルレベルの差こそあれ、主に外部労働市場から入ってくるという認識がもっぱらでした。ところが、今現在足元で起きていることをつぶさに見てまいりますと、むしろ内部労働市場への組み込みが進んでいます。特にこの一番ボトムのところにありますが、留学生、技人国から入ってくる留学生が2000年代以降に急増しております。また、技能実習生も、特定技能ができたことによりまして、いわゆる高卒マニュアルワーク層に近いところでメンバーシップ型雇用に組み込まれていっているという状況が看取されます。実際に人口で見てまいりますと、賃金構造、賃金の昇給体系が、非正規ではなく、価格は安いものの定期昇給のある内部労働市場型の賃金体系になっていることが見てとれます。こちらの特定技能でハテナと書いていますが、特定機能は技能実習からの切替者と試験組で分かれてくるかなと私は見ております。主に試験組は非正規市場に近いところに寄っていくのかなと思いますが、JILPTなどのインタビュー調査においても、技能実習から来た人たちについては、内部労働市場に賃金的にも位置づけられることが多いのかなと思います。
 次の次、こちらで最後になりますが、人口のデータが2019年から在留資格を含んでおります。こちらを使って、私のほうで、あらあらですが、分析した結果を簡単にお示ししたいと思います。まず、ハイスキル層に関して、主に技人国ですが、こちらの賃金格差につきましては、様々な要因を標準的なものでコントロールしますと、日本人との賃金格差は約6.2%まで縮小します。ドイツを対象にした研究でも、ハイスキル層におけるドイツ人と外国人の賃金格差は大体7~8%という結果が出ております。技人国のスキルトランスファラビリティにつきましては、日本は十分国際的に見ても標準的な範囲に入っているのかなと思います。また、昇給ペースにおいては、ここは諸外国と大きく異なる点ですが、差がないという結果が出ています。海外では、外部労働市場を通じた昇進がもっぱらですので、最初の賃金格付けにはあまり差がなくても、その後の昇進で大きく差が出るといったような分析結果もございます。続きまして、マニュアルワークですが、技能実習生は非常に賃金格差が大きいと言われておりますが、2つ目のポツですが、受入れに伴う金銭的コストは、OTITが出しております標準的なものを考慮に入れた場合、日本人非正規労働者を雇用する場合より賃金率で見て4%程度高くなるという結果が出ております。こちらは先ほどの井上様の御報告でもありましたが、地域において、求人よりも求職者が減っていくという中で、企業としては高いコストを払ってでも雇い入れるという行動に出ていると推察されます。すなわち、安い労働力では決してございません。また、転籍制限による賃金抑制効果を見てまいりますと、約15%程度あるのかなと見てとれますが、一方で、特定技能になる際に、技能実習をしているところから職場を変えた場合、むしろ賃金は大きく低下します。これはスキルトランスファラビリティが日本の場合はあまりありませんので、同一事業所で働き続けた場合、技能実習から行きますと、日本人と有為な賃金格差はなくなりますが、転籍してしまうと大きく下がるという状況がございます。これも、日本型雇用においてこういうマニュアルワークの外国人が組み込まれていっているということの1つの兆候なのかなと思います。
 長くなりましたが、以上です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ディスカッションに移りたいと思います。
 井上様と是川様、両方から問題提起していただきました。それでは、早速意見交換に入りますが、鶴さんですかね。
○鶴委員 御説明をありがとうございました。
 私から公庫の井上様に御質問したいのですけれども、その前に、地方の雇用活性化、地方創生というのはこれまでも随分いろいろな議論がされてきていると思うのですけれども、私は人材の問題が一番大きいなと思っていて、その人材という意味も、地方のそこの現場の方と、外から、そこにいらっしゃらないのだけれども、別にそれは大都市圏でも東京でも別にいいのですけれども、そういうところでいろいろと御経験のある方がうまくマッチングして結びつくということが非常に重要ではないのかなという問題意識をずっと持っております。案外地元の人が地元の様々な資産と呼ばれるようなものを必ずしも客観的に評価できている・活用できているということではないなと、観光などでもよくそういう事例があるわけですけれども、そうなると、うまく人材がマッチングして組み合わせることによって、付加価値が創出されるとか、最終的に雇用が拡大していくということがあるのではないのかと。
 先ほど事務局の資料にもありましたけれども、リモートとか、兼業・副業とか、そういうものが、例えば、大都市圏にいても地方に対していろいろな関与できるということがやりやすくなるわけですし、逆にその地方に在住することによって、在住するのですけれども、仕事は大都市圏の企業の仕事をする、でも、そこは地元の人になって、いろいろと地元との関わりを持つ、それがまたその地元の活性化につながっていくという部分というのも、私はあるのだろうなと思っているのです。
 前置きが長くなったのですけれども、先ほどの井上さんのお話の中で、公庫の取組として、創業支援や事業承継というのは、公庫さんが非常に熱心に取り組まれているということは私も理解しているつもりなのですけれども、その事業支援の中で、最近、非常に、マッチング、先ほどオープンネームということもおっしゃいましたよね。事業承継してほしい企業の名前を出して、それに対してやや公募に近いような形で、そこを継ぐという企業、それは必ずしも名前を出さなくてはいけないかどうかというのは、もちろんいろいろなやり方があるのだろうと思うのですけれども、このマッチングというのを、幅広く、いろいろな方がこういう企業が事業承継したいということを、広い範囲の方々にそういう情報が行って、ここは興味があって、例えば、そこの地元にいらっしゃらなくても外から入ってきて何かやってみたいとか、私はその結びつきというのがすごく今後は重要視されていくと思うのです。
 質問になるのですけれども、先ほどマッチング支援というものを、オープンネームというのを含めて、何かそこをもっといろいろなレベルで大きく拡大して、今かなり公庫さんが支援されているのですけれども、もっとその規模の大きいようなマッチング機能というのをどんどんつくっていくということが、私は非常にこの活性化という面では大きいと思うのですけれども、その辺でもし井上様から何かコメント等があればお願いいたします。
○樋口座長 井上さん、お願いします。
○井上臨時委員 鶴先生、ありがとうございます。
 オープンネームのマッチングは、公庫のホームページに事業承継のマッチングのサイトがあるのですけれども、そこで名前を出してもいいという企業については実名で登録をしていただいています。それとは別に今年度から始めている取組なのですけれども、マッチングのイベントを開催しております。地方の後継者がいない企業に登壇していただいて、後継者となりたいあるいは事業を継ぎたいと考えている企業や創業者に自社のアピールをするイベントです。そういうイベントの効果もあって、マッチング支援の実績も、今年度、これまでと比べて伸びてきているという状況でございます。
 公庫単独で事業承継の支援をしているわけではありませんので、民間のM&Aの仲介会社や事業承継・引き継ぎ支援センター、商工会、商工会議所などの機関と連携して情報をやり取りし、たくさんある承継先の選択肢、あるいは事業を継ぎたい創業希望者の方とうまく結びつける、そういった取組を行っております。それをもっと規模を拡大してできればということは当然あると思います。後継者を探している企業の数と比べてまだ成約の実績が少ないわけですから、そこはまだまだ課題ではあるかなと考えておりますけれども、具体的にどういうような形でできるのかというのは、担当の部署で検討して進めていくことになろうかとは思っております。 
○鶴委員 ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 公庫の場合、支店の数が多いので、支店の間での情報交換というか、かなり私が公庫の代わりにしゃべってもしようがないのですけれども、あると思います。
 齋藤さんですかね。続けて、御質問をお願いします。
○齋藤委員 ありがとうございます。
 井上様の御発表について質問があります。11ページのプロビット分析のところで、雇用を増やす企業になりやすいかどうかというところがあったかと思います。これが他項プロビットなので、不変企業と比べてどうかということをお示しになっているのですが、女性ダミーがかなり面白いといいますか、要するに、不変と比べて増加もするが減少もする、さらに廃業もしやすいということで、これはどのように解釈すればいいのかなと思いました。女性のスタートアップに関しては、例えば資金調達がなかなか大変だとか、そういうジェンダーバイアスの問題もある一方で、こういうふうに増加することもあるということは非常に大きな希望だと思うのですけれども、その逆の結果も同時に得られているということに対する解釈を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○樋口座長 お願いします。
○井上臨時委員 齋藤先生、ありがとうございます。
 こちらの多項プロビットモデルの女性ダミーの解釈ということですが、まず増加企業がプラス、廃業企業もプラスで有意ということで、考えられることが幾つかあります。まず、従業者数を増加させている背景に、女性が行うビジネスの特徴があると思います。飲食店とか、スナックとか、エステとか、そういった人手を必要とするビジネスを行う割合が相対的に多い点です。もう1つ、数は少ないのですけれども、女性が直面する問題を解決するためにビジネスを行うケースもありまして、女性のニーズをうまくつかんで事業を大きくしているケースがあります。逆に廃業にもなりやすいということですけれども、エステとか飲食店とかですと、当然競合も厳しい業界でありますので、競争に負けて廃業してしまうというのが1つ考えられます。もう1つ、女性が行うビジネスの特徴として、自分の趣味のためにプチ起業するというようなケースがここ10年ぐらいで割と見かけるようになってきております。事業を大きくするつもりはなくて、小遣い稼ぎ程度に商売できればいいというような形で始めるのですけれども、やってみてうまくいかなければすぐに廃業してしまうことが挙げられます。また、女性の場合ですと、配偶者の方がいらっしゃれば、主たる家計維持者ではないということもありまして、男性と比べて廃業を選択しやすいという側面もあるのかなと考えております。
 以上でよろしいでしょうか。
○齋藤委員 ありがとうございます。
 追加すると、要は、不変というのはあまり多分リスクを取らないというか、そういう形でビジネスをされていて、増えるにしても、廃業するにしても、リスクを取った結果かなと感じたので、巷間よく言われるように男性より女性のほうがリスクを取らないというのとは少し違うのかなと思ったのですけれども、今の御説明では、リスクを取りやすい環境ももしかしたらあるのかなと感じた次第です。
○樋口座長 昔、このデータをつくり出したときには、業種や職歴を入れると女性ダミーの有意性が消えてしまうというのがあったということで、今の話でも業種をどうコントロールするかというのが割とポイントになっているという話でしたね。
○井上臨時委員 そうですね。一応業種のコントロールはしているのですけれども、大分類ベースになりますので、もう少し細かい業種分類でやればまた違った結果になるのかもしれないです。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、堀さん、どうでしょう。
○堀委員 どうもありがとうございます。興味深い御発表、誠にありがとうございました。
 是川先生に2点お尋ねしたいと思います。
 まず1点目なのですけれども、資料ですと24ページ、育成就労制度のポイントの3番目なのですけれども、日本で身につけた技能の見える化ということを示唆していただいておりますけれども、何か具体的な仕組みがあれば、お考えのようであれば、教えていただければと思います。
 第2点目なのですけれども、私は若者の研究をしておりまして、しばらく前から外国にルーツを持つ若者について支援が必要な状況がしばしば生じてまいりました。移民の社会的包摂というのは、どこの国、どこの社会においても大きな課題になっているのではないかと推測するのですけれども、是川先生が御存じの国や社会でうまく社会的包摂をされている事例がございましたら、教えていただけると大変ありがたいです。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 1点目、見える化の話でお願いします。
○是川臨時委員 ありがとうございます。
 まず、育成就労の最終報告書の中では、国や自治体の役割というところに見える化ということがさりげなく入っております。この見える化に関しまして、国際的な事例といたしましては、例えば、近いところでいいますとASEANがQRFという仕組みを持っております。これはASEAN諸国内で学位や資格といったもののレベルを相互に格付けして、相互の労働移動等においてそれが参照され、スムーズにいくようにするという国際的な資格相互認証の取組の一つとされています。また、先進国でいいますと、EUが代表的かと思います。EUでは、EU指令におきまして、各国における専門職等の学位等の相互認証を行っておりまして、EUマーケット内、EU域内における労働移動を円滑化するといった取組も行われております。また、個別の国の単位でいいますと、ドイツのスキルドワーカーシステムプログラムとか、そういったものにおいては、ドイツのマイスター制において海外で取得した経験や資格をどう格付けするかということを行っていると聞いております。OECDの国際労働・国際移民政策の作業部会におきましても、このミューチュアルスキルリコグニションというのは非常に大きなテーマとなっております。こうした取組を2国間や多国間で進めていくということが、1つ具体的な取組として考えられるかと思います。
 2点目といたしまして、外国ルーツを持つ子供、移民第2世代への教育達成や社会統合ということになるかと思います。こちらにつきましてうまくいっている国というのは実はあまりございません。特に先進国におきましては、移民、国際移動のモードが、先ほど申し上げましたように、家族移民や難民というケースが非常に多いです。そうしますとどうしても、家族・本人も含め、スキルレベルのセレクションを受けておりませんので、統合には大変困難を伴っているという状況があるかと思います。一方、日本におきましても、日系人のように家族的つながりをベースに来た人たちについては、東海地方などを中心に既に大きな問題が確認されております。ただ一方で、そうした中でも、例えば、アジア圏から留学生として入ってきて日本で働いている移民外国人の第2世代につきましては、既に高い教育達成を経て、日本の非常にランクの高い大学を出て日本企業で活躍するといったようなケースも見られてきております。非常に親の人的資本や経済力というものに大きく依存してまいりますので、そういった点については、そういった出自が不利にならないような取組が今後は求められていると思います。ただ、その一方で、私でも国勢調査の公表データなどを使いまして、民間第2世代の高校就学率や大学進学率というものを見ております。こちらは、1990年代、2000年代、2010年代と。データを経るごとに、教育達成は上がってきております。実は日本国内の大学進学率でいいますと、日本国内の地域間格差のレンジの中に既にもう入ってきております。そういった意味では、日本国内における、例えば、都道府県間の大学進学率の違いといったこととも非常にレリバントな問題かと思いますので、併せて見ていく必要があると思っております。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 我々がデータなしに語っていることが、大分是川さんの示されたものと違っているなということで、改めて考えなくてはいけないなということを感じました。
 それでは、佐藤先生、いかがでしょうか。
○佐藤委員 井上さん、是川さん、どうもありがとうございました。簡単な質問がそれぞれ1つあるのですけれども、井上さん、どうも御無沙汰です。
 地方の特に女性の人材確保なのですけれども、いろいろな今日御説明いただいたような取組はすごく大事だと思うのですけれども、同時に、地方から女性が流出するもう1つの要因は、かなり地域ごとに特に伝統的な価値観が強いところ、男女役割分業感が強いようなところが女性は流出しているという分析もあるので、地域の女性についての考え方みたいなものが変わっていかないと個々の企業が努力しても難しいという側面があるかどうか、少し伺えればというのが1つです。
 是川さんには、技能実習なのですけれども、今現状でいうと3年間、日本の企業に来て技能習得をしていただくわけですけれども、技能実習計画を出していただいてやっていただくということになっていますが、どういう具体的な技能実習をしながら、例えば、食料品製造業の企業が受け入れた場合、各社での技能実習、OJTの技能実習の仕方は違いますよね。どういう技能実習をしたら習得が円滑にいくかというような研究があるのか。そういうものがないとすると、そういうものなしにして技能実習期間をどうするかみたいな議論が行われるとすると、おかしくなってきますので、それについてお教えいただければと思います。よろしくお願いします。
○樋口座長 井上さんから、お願いします。
○井上臨時委員 佐藤先生、ありがとうございます。
 女性の流出に関して、伝統的価値観の問題、男女の役割分担があるのではという御指摘ですけれども、厚生労働省さんでつくっていただいた資料3の都道府県別の労働参加率を見てみますと、女性の労働参加が北陸では高い割合になっていまして、昔から北陸地方は女性の就業が高いと言われているものがまさにこの図からでも分かるのですけれども、おっしゃるように、そういった地域における女性の価値観というようなものは非常に大きな影響があるのではないかと思っております。確かにそういったところを変えていかなければ、地方において、女性の就業について変えていくことはできないのではと思います。ただ、最近ではテレワークもかなり普及してきておりますので、地元にいながら都市部の仕事をすることも可能になっています。そういったテレワーク等の働き方をもっと普及させていくことができれば、女性の流出の問題も多少緩和されていく可能性もあるのではないかと考えております。
○樋口座長 是川さん。
○是川臨時委員 御質問をありがとうございます。非常に重要な点かと思います。技能実習におけるOJTのパフォーマンスということについて、個別の研究がないわけではないのですけれども、全国レベルでのデータもなかなかなかった中で、フィールドワークに近いようなところでの研究というものになってしまうのかなと思います。ただ一方で、技能実習は、要するに、技能検定で、要所でピン留めをされておりまして、全体としてのその技能検定の合格率が高くなっております。そういう意味でいいますと。制度全体のパフォーマンスとして、中にすごいその極端なOJTのパフォーマンスの違いがあるといったことは予測しにくいかと思いますが、ただ、技能検定ではかれない部分やそれが実際の企業間で見たときの賃金率にどれくらい反映されているかといったようなことにつきましては、例えば、目下行っております新しい外国人労働者の統計などを使って今後分析していく必要があるのかなと思っております。
 以上です。
○佐藤委員 ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございます。
 たしか文科省か何かが日本の技能検定をアジアで通用するようにと。まだ遠い目標の段階なのかもしれませんけれども、そんな話を聞いたことがありましたけれども。
 それでは、阿部さん、お願いします。
○阿部委員 ありがとうございます。
 井上さん、是川さん、非常に面白い分析とお話を伺うことができて、ありがとうございました。お2人に質問ではなくて、どちらかというと井上さんの資料に補足的な内容になるかもしれませんが、ずっと樋口先生の後釜で地方雇用対策課のいろいろな仕事を引き継いでやっておりまして、もうかなりの年月がたっております。先週もそちらにいる福岡課長と一緒に愛知県に行かせていただいて、現地の状況を見てきたので、その辺りから少し地方の問題を御紹介したいと思います。
 地方の問題というのは、今や地方と地方の地方との問題になっていると私は認識しています。一般に地方というと東京圏あるいは大阪圏以外・近畿圏以外の地方と語られるのですが。地方に行くと、地方の地方が問題だとなっています。特に県庁所在地あるいは第2番目に大きい市以外のところがかなり深刻な問題になっているということです。先週金曜日も愛知県新城市というところ、奥三河と言われているところですけれども、長篠の戦いとか、設楽原の戦いとかをやったところで、名前は聞いたことがあると思うのですが、もう人口規模は新城市で4万人前後、新しい事業を起こしても、人がもういないと。若い人がもう全然いない。課長とお邪魔した宿泊施設でも、新しい事業を起こして人を雇いたいのだけれども、日本人はいませんと。今雇っているのはミャンマーから来ている留学生の人たちで、アルバイトですと。ただ、そのアルバイトも、今や新城市内のチェーン店でかなり求人が出ていて、そちらに取られつつあると言っていて、若者がいない。人がいない。外国人も取り合いになっているというのは、地方の地方の問題かと思います。そういったところでどうやって地域の力を再生していくかというのがかなり大きな課題になっているのではないかと思っています。今や10年前の地域雇用対策とは相当様変わりしていかなくてはいけないと思っていまして、10年前までは多分地域雇用対策というと雇用の創出というのが中心に行われてきたと思いますが、今、雇用の創出をしてしまいますと、むしろ人手不足に拍車をかけるということになりかねないということでして、そういう意味では地域雇用対策をどのようにしていくかというのは、転換していかなくてはいけないのではないかと思っています。
 DX化などで人を増やさず労働の質を高めていくというようなことは考えられるのですけれども、実際にそういうことをやって、地方の企業で雇用の質を高める、それまで非正規雇用中心の労働力構造だったのが、中小企業ですけれども、大学院生を雇用して自動化ラインをつくっていくとか、DX化をしていくというような企業も、地方の中にはあります。そういったところの経営者の人たちはすごいバイタリティーがあって、先見の明があるというか、特に地方、中小企業ですから、経営者がどうかというのが結構大事で、そういった経営者をつくっていくことも、地方の雇用対策としては大事かと思います。
 一方で、労働の質を高めていこうとすると問題になるのが、地域の労働の質です。18歳で大体大都市圏に若者が流れていって、大学とかで、戻ってこないということで、その地域にいる人材だけではなかなかDX化とかを進めようと思っても進められないというのが現状に近いのではないかと思います。企業の中には、もうDX化を今雇っている人間でやることを諦めて、新しく採用して、その専門家に任せてしまうという会社もあって、そういうところのほうがむしろ雇用を増やしているような結果も出ているようです。
 もう1つ、課題としては、UIJターンというのを粘り強くやっていって、成果が上がっている自治体は結構あるのですけれども、自治体間での競争がかなり激しくなっていまして、どこもかしこもUIJターンをやりたい。それで補助金も出しますと言ってやるわけですけれども、この競争が激しくなっている、それでマッチング率が悪化しているというのが、最近起こっていることではないかと思います。こういうのをどういうふうに政策としてやっているか、私もまだ解はありませんけれども、地域雇用対策を従来どおりでやっていくというのがなかなか難しい現状にあるというのは、事実ではないかと思っています。
 意見、感想です。以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 井上さん、もし何かあったら。
○井上臨時委員 ありがとうございます。
 地域の人材だけではなかなかDXをはじめとした新しい取組ができない、人手の問題を解決するにも人がいないのでなかなか難しいということですけれども、最近では、都市部の人材を副業として地方の企業が雇う、活用するといった取組が出てきております。UIJターンですと取り合いになってしまうというお話ですけれども、副業人材であれば都市部に情報通信関係のスキルを持った人材は多くいらっしゃいますので、そういった方に対してうまくアプローチして、問題の解決を手伝ってもらうというような取組が今後は重要になってくるのではないのかなと思います。
 ただ、この取組も、どうやってマッチングをさせていくのかというところで悩ましく、自治体がやるにしても、補助金が出なければ継続的に実施できない、民間の人材関連の会社に仲介をお願いするにしても、コストの問題が出てくるというところが結構なネックになってくると思います。地方と都市部のプロフェッショナル人材をうまく結びつける仕組みを考えていく必要があるのではないかと思います。
○樋口座長 ありがとうございました。
 地域雇用課長もいらっしゃっているのですけれども、時間の関係で、次回にでも取組について、お考えを。
 それでは、大竹先生。
○大竹委員 ありがとうございます。
 私は、井上さんと是川さんにそれぞれ1つずつ質問があります。
 井上さんのお話だと、公庫の役割として、それは事業承継を支援するというのは当然のような気もするのですけれども、それが例えば開業を抑制している可能性もあるかなと思うのです。廃業してもらって、より資源が有効に使われると。有効活用していないということが起こるシャッター街をもたらしているとすれば、もっと廃業して別の人が経営をする、あるいは、全く違う産業にしてもらうという形がいいような気もするのですけれども、そういう取組も行われているのかどうかというのが質問です。
 それから、是川さんについては、先ほど少し議論があったのですけれども、日本に第1世代として来る人は多分そんなに問題はないと思うのですが、是川さんの御報告の中で、だんだん長期化しているという形になると、第2世代の問題というのが深刻になってくるかなと。今のところはいいかもしれないけれども、その中で、長期化しても賃金があまり上がらない人たち、日本人に比べて上がりにくい人たちが残ってくると、同じように、第2世代の海外で起こっていることと同じことが起こるのではないかなと危惧するというのが、先ほどの議論についてのこのコメントです。
 それから、1点だけ。資料3について、都道府県別・男女別・年齢別の労働力参加率のデータはすごく面白くて、これを見ると、男女ともに低いところ、例えば、奈良県みたいなものはそうなのですけれども、男性が低くて女性が高い高知県みたいなところもあれば、男女ともに高い、先ほどの北陸もそうですけれども、東京圏みたいなものもあるというのは、何が原因なのか。先ほど佐藤さんがおっしゃった価値観なのかもしれないし、行動経済学でいうと社会規範みたいなものかもしれないし、それが結婚を通じたものなのかどうかということも含めて、今後、そういう研究が経済学者の間であるのかどうかは分からないのですけれども、進めていかないと、この辺り、どうすれば労働力不足に対応できるのかということについては、重要な課題かなと思ったと。最後は感想です。
 以上です。
○樋口座長 井上さん。
○井上臨時委員 大竹先生、ありがとうございます。
 公庫の役割として創業も事業の承継も力を入れて取り組んでいるものであります。廃業して、新しく創業していただくほうが、新陳代謝が図れるのでいいのではないかということですけれども、事業承継については、なくなっては困るような企業、地域の住民等から必要とされている企業、そういった企業を基本的には支援すべきであると考えています。そうした事業として価値がある企業に対して、単に後継者がいないからということで廃業してしまうのは、非常に損失ではありますので、後継者あるいは創業したい方とうまく結びつけて事業の存続を図ることが必要だと考えております。ただ、後継者が見つからない企業については、一旦整理して、新しい企業にその経営資源を使っていただくということもありかと思います。そういった廃業してしまう企業に対しては、取引先や従業員などの経営資源をうまくほかの企業に引き継ぐ取組も進めていくべきではないかと考えております。
 その辺りの仕組みは、例えば、飲食店とかの店舗であれば、都市部であれば、居抜き物件を仲介する仕組みみたいなものはあるのですけれども、地域でなかなかそういった取組までは行われていませんので、円滑に引き継ぎができるような仕組みを構築していくことが必要かとは思っております。
○樋口座長 是川さん。
○是川臨時委員 ありがとうございます。
 第2世代、長期化したときの労働市場の包摂という点ですが、例えば人口のデータになりますけれども、日本で長く暮らしていくと永住資格というものが取れます。永住資格を取っている人の中で、若年層というのは明らかに親が取ったことで永住を取った人たちということが識別できるのですが、そういった若年層の永住で賃金格差を見てまいりますと日本人との差は全くございません。ですので、例えば、長期化といっても、これは定住から来た人であれ、技人国から来た人であれ、いずれも多分変わらないのですが、永住資格まで取られるような方というのは、基本的に第2世代についても、少なくとも労働市場に参加して既に雇用されている人たちについては、賃金格差が確認されないと。それは1つポジティブな材料かなと思います。ただ、もちろんその労働市場に入るまでのプロセスでいろいろと教育達成で高校進学とか様々な障壁はありますので、そういったところについては、先ほど申し上げたように、しっかりと見ていく必要があるかと思いますが、例えば、アメリカで見られるように、フェノタイプ、見た目というのですかね、人種や民族といったことで、労働市場があらかじめ階層化されていて、そこに逆にいかに高い学歴達成をしても入り込めないといった状況というのは、少なくとも現状、日本の労働市場においては確認されないかなと思います。
 また、同様に、技術・人文知識・国際業務という第1世代に関するものにつきましても、新卒採用で入った人たちについて見てまいりますと、これは恐らく新卒というフラグが立っていることから考えると、恐らく日本の大学を出て入っている人たちが多いのではないかと思いますけれども、そういった人たちについても賃金格差というのは確認されません。ですので、日本における日本人と外国人の賃金格差があるとすれば、もうこれは完全にそのスキルのトランサビリティーの問題であって、いわゆる文化や宗教といったような、ある意味、より社会構造に根深いところというのは、現時点では看取されないのかなと思っております。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 日系人の受入れを始めてから、もう30年以上が経ちますかね。だから、そういうことも起こっているのでしょうね。
 それでは、最後に、荒木先生、お願いします。
○荒木委員 お時間が過ぎているのに、恐縮です。2点あるのですけれども、是川さんに質問です。大変勉強になりました。
 1点目、技能の見える化のところなのですけれども、諸外国の参考でおっしゃったのはいずれも資格の相互認証のようなジョブ型雇用を前提にした相互認証ですよね。外国人労働者もかなり内部市場化しているという中で、日本で身につけた技能の見える化というのは、諸外国のジョブ型雇用を前提とした議論でうまくいくのかというのが1点です。
 もう1点は、人権侵害問題、個人のそういった問題があったときに、厳罰化というのは悪手であると。私も大変重要な御指摘だと思います。ただ同時に、2番目ぐらい後に、このマクロの政策として市場の健全化のための中程度の寡占というのは望ましいのではないかと。そうすると、一定のコントロールをせざるを得ないということになります。その市場の健全化のための規制、コントロールをどう考えていくかというときに、国内については規制が可能ですけれども、外国人労働者の場合は送り出し国、送り出し団体などに様々問題があることが多いわけですが、そうしたときに、一体、そういう送り出し国の内部、送り出される前の状況についての規制というのは、どうやっていくのか。難しい問題ですけれども、何か今後の政策において御示唆があれば伺いたいと思いました。
 以上です。
○樋口座長 お願いします。
○是川臨時委員 ありがとうございます。
 1点目の見える化、ジョブ型を前提としているのではないかという点につきましては、おっしゃるとおりかと思います。日本の外国人労働者の受入れでいいますと、大卒以上の主に技術・人文知識・国際業務は日本のいわゆる普通のホワイトカラー、あまり技能レベルということがはっきりしないメンバーシップ型の曖昧模糊とした中に入っていっているわけですが、ここにおきましてはなかなか見える化というのは難しいのではないかと私も思います。ただ、これは日本の若者と共通した課題かと思いますが、そのミッドキャリアにおいて展望が描けず辞めてしまうみたいなことは、留学生を追跡した調査でも出ておりますので、新卒一括採用というものがこういった大卒の若年失業率を下げるという点においては、非常に外国人についてもプラスに働いているかと思います。ミッドキャリアにおいて、ディスカレッジされないような仕組みというのは、つくっていく必要があると思います。この点については、国際的に見ても、そのまま日本で応用できる正解はないのかなと思います。
 一方で、その見える化といったときに、技能検定のように、マニュアルワークの世界におきましては、ある種のジョブ型に近い状況というのは既にあるかと思います。そういったところで、例えば、技能検定の相互認証といったようなことが、どれくらい可能なのか分かりませんが、既にASEAN加盟国内では部分的に始まっているところもあると聞いております。そういった取組というのは、仮に今後、日本に来たマニュアルワーカーが、一部は国に帰るとしても、入ったスキルというものがしっかりと現地で証明できるといった取組にはつながるのかなと思っております。
 2点目の人権侵害を防ぐ、特にその送り出し国においてということですが、先生のおっしゃるとおりでして、送り出し国においては、国家主権の問題もあり、直接規制の網の目をかけるということは難しいという状況がございます。ただ一方で、送り出し国側におきましても、多様な送り出し機関をどうマネジメントするか、レギュレートするかということは議論になっておりまして、主にライセンス制を通じたコントロールということが行われております。その際には、ライセンスの発行に、ペナルティー、経済的なインセンティブをつけたような形でライセンスをコントロールすると。なかなかその政府が直接管理するというのはキャパシティーの問題もあって難しいこともあって、そうしたライセンスによるコントールが取られております。これはフィリピンやインドネシアなどで大きく活用されている方法となりますが、もちろんベトナムなどでも似たようなことはしております。そうした観点からいきますと、日本側としてこれにどう関与するかということにつきましては、そのB to Bルートのマッチング支援を日本側でしっかりと行うことで、先方の国におけるライセンスを持った送り出し機関のうち、どこが優良なのかということを市場を通じて識別していくしかないのかなと思います。なかなか直接ペナルティーを課しましても、要するに、その法人を廃してまた別のものをつくってまた来るというようなこともございますし、送り出し国政府のコラプションの程度も国によってまちまちですので、結果的に取引のところで、B to Bでしっかりやると。その上では日本においてもジェトロ等を活用してB to Bの送り出し機関と受入れ企業のマッチング支援などを行っていくということも一案としてあるのかなと思っております。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 まだ議論も尽きないかと思いますが、私どもは雪がすごいのでそろそろ終わりたいと思っております。
 それでは、次回以降の研究のスケジュールについて、事務局からお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 第8回目の開催日時につきましては、改めて御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○樋口座長 ありがとうございました。
 本日の議論で事務局あるいは関係部署に幾つか質問が出たかと思いますので、これも含めて、次回以降、議論したいと思います。
 それでは、以上で本日の会議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。