第26回過労死等防止対策推進協議会 議事録
労働基準局総務課(過労死等防止対策推進室)
日時
令和6年1月23日(火) 15:00~17:00
場所
厚生労働省 専用15会議室(中央合同庁舎5号館12階)
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
出席者
- 専門家委員
- 岩城穣委員、戎野淑子委員、川人博委員、木下潮音委員、清山玲委員、堤明純委員、中窪裕也委員、宮本俊明委員
- 当事者代表委員
- 工藤祥子委員、髙橋幸美委員、寺西笑子委員、渡辺しのぶ委員
- 労働者代表委員
- 上野友里子委員、冨髙裕子委員
- 使用者代表委員
- 佐久間一浩委員、鈴木重也委員、神尚武委員
議題
- (1)今後の過労死等防止対策について
議事
- 議事内容
- ○中窪会長 定刻となりましたので、ただいまから、第26回「過労死等防止対策推進協議会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては御多用中にもかかわらず、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、岩城委員と堤委員がオンラインでの御出席となります。なお、堤委員におかれましては所用により16時頃で御退席予定と伺っております。
また、御都合により、大下委員、西尾委員、柴原委員が御欠席です。
それから、本日付けで委員の異動がございましたので御報告いたします。全体資料の最終ページ、参考資料の委員名簿を御覧ください。専門家委員の黒田兼一委員が退任され、後任に清山玲委員が、使用者代表委員の山鼻恵子委員が退任され、後任に神尚武委員が、それぞれ厚生労働大臣から任命されております。
清山委員と神委員、一言ずつお願いします。
○清山委員 茨城大学に所属しております清山と申します。過労死防止学会の副代表になった関係で任期の途中から参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
○神委員 東京経営者協会の神と申します。よろしくお願いいたします。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、カメラ撮影につきましてはここまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○中窪会長 本日の議題は「今後の過労死等防止対策について」でございます。前回の協議会では今後の過労死等防止対策の進め方について様々な御意見をいただきました。いただきました御意見については事務局である厚生労働省が中心となって、関係省庁と連携を図りながら内容の整理をお願いしたところでございます。
本日ですが、厚生労働省から資料を説明していただき、今後、過労死等を防止していく上でどのような対策が必要となるかについて御議論いただきたいと思います。まず、これが前半です。それから、後半としまして、特に大綱における数値目標について御議論をいただければと思います。
まず、厚生労働省から説明をお願いいたします。
○企画官 厚生労働省事務局から資料の御説明を申し上げます。お手元の資料1、資料2、資料3を一つにまとめたものと、現在の大綱の冊子を用意しました。
資料については、右下の通しページで案内させていただきます。
まず、2ページからの資料1は、前回の協議会において委員の皆様からいただきました大綱見直しに関する主な御意見等をまとめたものです。
3ページ、4ページは委員の皆様の主な御発言の概要です。
5ページは前回御質問がございました「宿泊業、飲食サービス業」の週労働時間40時間以上の者のうち週60時間以上働く方の割合について、中分類に分けまして宿泊業について、その割合をお示ししたものです。
6ページと7ページも前回御質問がございました過労死等に係る労災請求・支給決定件数の男女別の推移について、脳・心臓疾患事案と精神障害事案、それぞれお示ししたものです。なお、括弧書きの数字は死亡の件数で内数です。
8ページと9ページも前回、過労死等の年齢別の件数について御照会がございましたもので、過労死等の労災請求・支給決定件数の年齢階層別の推移を雇用者数100万人当たりに換算した件数で表したものです。
続いて、10ページの資料2は数値目標の進捗と対策の取組状況についてまとめたものです。
11ページは数値目標について最新の数値をお示ししたものです。
12ページは週労働時間40時間以上の者のうち週60時間以上働く方の割合です。
13ページは、左側、勤務間インターバル制度の認知度と導入企業の割合の状況です。右上はインターバル制度の導入状況別の割合で、「導入予定はなく検討もしていない」割合は81%台、その下、その理由は、「超過勤務の機会が少なく、制度を導入する必要性を感じないため」が最も多くなっています。
14ページは年次有給休暇の取得状況です。左下のとおり、3年前に比べて年次有給休暇が取りやすくなったと回答した方が50%を超えるとする調査結果があり、その理由として、「年休の年5日の取得義務化」が最も多く、次いで「会社や上司などからの働きかけ」が多くなっています。
15ページは労働時間関係の数値目標の達成に向けた取組状況で、働き方改革に向けた相談支援や助成金支給による支援、シンポジウムの実施やポータルサイトを使った情報発信などを行っています。
次のページからがメンタルヘルス対策に係る状況で、16ページはメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合と小規模事業場のストレスチェック実施割合、右側は事業所が取り組んでいるメンタルヘルス対策の内容です。
17ページは仕事上の不安や悩み、ストレスがあるとする労働者割合で、右側は不安や悩み、ストレスの内容をお示ししたものです。
18ページがメンタルヘルス関係の取組で、産業保健総合支援センター等における相談対応、助成金による支援、ストレスチェック実施プログラムの提供、ポータルサイト「こころの耳」による情報提供や相談対応などを行っています。
19ページ以降は重点業種等の労働時間に係るデータと主な取組内容です。
19ページは自動車運転従事者で、運輸業、郵便業のうちの道路旅客運送業と道路貨物運送業の週労働時間40時間以上の者のうち週60時間以上働く方の割合です。その下、令和4年度の過労死等の状況で、支給決定された194件の脳・心臓疾患事案のうち、職種別では自動車運転従事者が最も多く57件で29.4%を占めています。また、支給決定された710件の精神障害事案のうち、自動車運転従事者が42件、5.9%となっています。主な取組状況は右側の記載のとおりです。
20ページは物流の革新に関する関係閣僚会議において取りまとめられた物流革新緊急パッケージで、物流の効率化、商慣行の見直しなどの施策の内容となっています。
21ページは教職員の状況です。週労働時間40時間以上の者のうち週60時間以上働く方の割合は教育、学習支援業のうち、学校教育で高い割合を示しています。その下、地方公務員の公務災害における令和3年度の過労死等の状況で、認定された22件の脳・心臓疾患事案のうち、義務教育学校職員が10件、45.5%、また、認定された66件の精神障害事案のうち、義務教育学校職員が7件で10.6%などとなっています。右側は主な取組状況として文部科学省の取組を掲載しています。
22ページはIT産業の状況です。労働時間については、情報サービス業は全体平均よりも割合が低くなっており、また、インターネット付随サービス業でも減少傾向です。令和4年度の過労死等の状況で脳・心臓疾患は3件、1.5%、精神障害は21件、3%を占める状況です。
23ページは医療従事者で、医療業の週労働時間40時間以上の者のうち週60時間以上働く方の割合は全体平均よりも低くなっています。令和4年度の過労死等の状況は脳・心臓疾患事案で医療業7件、3.6%、精神障害では医療業で79件、11.1%などとなっています。主な取組としては、医師の働き方改革として時間外労働の上限規制の適用と、それに向けた勤務環境改善支援センターによる支援などです。
24ページは建設業で、労働時間の状況は全体平均よりも高い状況が続いています。令和4年度の過労死等の状況は、脳・心臓疾患では総合工事業で18件、9.3%、また、精神障害では総合工事業で33件、全体の4.6%などとなっています。
25ページは外食産業とメディア業界です。週労働時間40時間以上の者のうち週60時間以上働く方の割合は、外食産業では飲食店が高くなっています。過労死等の状況は、脳・心臓疾患では飲食店が14件、7.2%、精神障害では31件、4.4%となっています。メディア業界については、放送業で労働時間の割合が高くなっています。メディア業界の過労死等の状況は過労死等防止調査研究センターの研究結果で、令和2年度に脳・心臓疾患の労災支給決定が1件、精神障害の労災支給決定が15件となっています。
26ページからはその他の取組状況として、新しい働き方として大綱に記載されているもので、26ページはテレワークです。テレワークの導入企業は令和4年で5割を超えており、今後の継続意向ありが8割以上となっています。その理由は「時間の有効活用」、「通勤の負担軽減」が多くなっています。一方、継続意向なしの理由は、「意思疎通が取りづらく業務効率が低下するため」が最も多く、一方で、「勤務時間が長くなるため」は少数となっています。
27ページは副業・兼業です。副業者の割合は全体の6%で、副業の就業形態は非正社員を兼務する形が3割以上となっています。副業する理由は、「収入を増やしたいから」等が最も多くなっています。
28ページはフリーランスで、有業者のうち3.8%がフリーランスとなっています。理由は「専門的な技術を生かせるから」、「自分の都合のよい時間に働きたいから」がそれぞれ3割程度を占めています。フリーランスとして年間200日以上働く人の1週間当たりの時間数は40時間から49時間が最も多く22.5%となっていますが、50時間以上という者も13.3%となっています。
29ページからは、令和2年度から令和4年度までの過労死等防止調査研究センターにおいて実施した労災事案の分析の主な結果です。
29ページは労務管理状況等の分析で、1の労働時間以外の負荷要因該当事案の解析では、不規則な勤務で完全な休息が得られない状況、また、出張業務の負担といった点が挙げられています。2の労働時間の認定に関する事例研究では、長時間労働の黙認や労働時間の過少申告、隠れ残業といった形で長時間労働をなしているとされています。
30ページは脳・心臓疾患事案の分析で、1の異常な出来事による脳・心臓疾患事案の解析では、暑熱作業に当たる建設業の土木従事者・サービス業の警備員が多いとされ、また、寒冷作業としては除雪等の過重な業務などが挙げられています。また、2の就業スケジュールの分析では深夜業務が多い事案や勤務間インターバルが短い事案が挙げられています。
31ページは精神障害事案の分析で、1の極度の長時間労働事案の検討では、膨大な業務量やタイトなスケジュールにより長時間労働が発生した事案や業務遂行が従業員の自己管理に委ねられていた事案が挙げられています。また、2のいじめ・暴力・ハラスメント並びに関連して生じた出来事の組み合わせに関する研究では、上司等との不和がある中で突発的なハラスメント等が発生してしまった場合や恒常的な長時間労働にハラスメントが重なって発症することなどが挙げられています。
32ページからは業種別の分析で、1の外食産業では恒常的な長時間労働に仕事のミスなどが重なっている状況、2~4の運輸業、道路貨物運送業では長時間労働、非運転業務では事故等による精神的負荷、配置転換・転勤などが多いことが挙げられています。5の介護職員と7の看護士では暴力等に遭遇、もしくは目撃したというケースが半数以上を占めることが挙げられています。6の医師につきましては精神障害の認定事案が増加していることが挙げられています。8のIT産業における精神障害事案の心理的負荷として恒常的な長時間労働、仕事内容・仕事量の変化が挙げられています。9の教育・学習支援業では嫌がらせ・いじめが大きな要因とされています。10のメディア業界では精神障害は20代が最も多く、その要因は仕事内容・仕事量の変化が最も多いとされています。
こうした分析結果も参考として御議論いただければと存じます。
次の34ページからは参考として、過労死等のうち、脳・心臓疾患の労災支給決定件数の多い業種と職種、そして、35ページは精神障害の労災支給決定件数の多い業種と職種をそれぞれ中分類で表したものです。
36ページは自殺の原因、動機別自殺者数の推移です。
37ページは過労死等の労災支給決定が行われた企業に対する再発防止指導の強化としまして、2つの新たな取組をお示ししたものです。
1つ目が、過労死等発生させた事業場を通じて企業本社による全社的な再発防止対策の策定を指導するもの、2つ目が、3年間に複数の過労死等を発生させた企業のトップに対して過労死等の防止に向けた改善計画の策定を求め、その取組の定着のための助言・指導を行うというものです。
38ページは現在の大綱の構成で、下線部が前回の見直しの際に追加された項目を示したものです。
39ページからは資料3で、過労死等の防止に係る施策の実施状況について平成27年度以降の取組を取りまとめたものです。説明は省略させていただきますが、議論の参考としていただければと存じます。
資料の説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関して、まずは過労死等を防止する上での対策について御意見をいただきたいと思います。先ほど申しましたように、数値目標に係る点につきましては後ほどまたお伺いしますので、この時間はそれ以外の全般的なことについて御意見をお願いいたします。それでは、挙手の上、要点を簡潔に、御発言をお願いいたします。
川人委員、お願いします。
○川人委員 川人でございます。質問を幾つかしたいと思いますのでお願いします。
まず、脳・心臓疾患と精神疾患、自殺案件に関して両者を比較すると、大きな違いは、自殺案件につきましては今回で言いますと36ページのように、労災申請、あるいは労災の認定決定数以外に、別途警察庁の統計に基づいて作成された人数及び原因動機別分類があります。
他方、脳・心臓疾患に関しましては、その総数がそもそもどうなっているのかということについて、私どもが接する限りではなかなか統計が見当たりにくいのが現状です。すなわち脳・心臓疾患に関して労災申請した数、認定した数は分かるのですが、そもそも在職中の方が脳・心臓疾患でどの程度の方々が倒れて療養・休業しているのか。あるいは在職中の人で脳・心臓疾患で倒れて亡くなられた方が何人ぐらいいらっしゃるのか。それは原因分類ができている、いないにかかわらず、我が国における現在の職場において脳・心臓疾患というものが、どういう形で働く人に発現しているのかというソースを把握することはとても大事だと思うのです。
自殺の場合は警察庁の統計がありますので、そちらから独自の把握ができるのですけれども、脳・心臓疾患に関してもそういう在職中の脳・心臓疾患の療養者、あるいは死亡者についての統計把握が必要だと考えております。これについて、現在、私が申しましたものに関連して統計がどのような形で取られているのか、いないのか、これについて御説明いただければと思います。
次に、労災認定の件数について書かれている数値には、このページのところには後に審査会、あるいは行政訴訟などで結論が変わったものが含まれるはずなのですが、これはどういう形で反映されているかということについて御説明いただきたい。あと、新しい認定基準が脳・心臓疾患・精神疾患ともにつくられましたが、一部には新しい認定基準は認定基準が発布される前の事案には適用されないという誤解があります。この点について担当のほうから明快に、認定基準はそれの発令前の事案についても適用されるかどうかについての御説明をお願いしたいと思います。
以上、今後の議論をしていく上での基礎的なデータですので、御説明をよろしくお願いします。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインで岩城委員が手を挙げられておりますので、お願いいたします。
○岩城委員 1点目、資料の3ページに芸術・芸能分野について重点業種に指定する方向で検討してもらいたいと意見が整理されていますけれども、私もこれに賛成です。昨年10月に公表された令和4年度の白書の128ページ以下にありますように、芸術・芸能従事者について本格的な調査が行われた結果、週60時間以上の拘束時間、実働時間の者が16.7%、睡眠時間5時間未満が9.0%、月収20万円未満の人が45.2%を占めるなど、過酷で低収入という実態が明らかになりました。また、パワハラやセクハラなどのハラスメントを受けたことがある人の割合も非常に高いことが分かりました。この1年ほどの間に著名な芸能プロダクションで大規模な性加害が明らかになったり、著名な歌劇団でパワハラによる自死が疑われる事案も報道されたりし、社会的な関心も高まっております。そこで、次回の大綱で芸能・芸術分野についても重点業種に加え、調査・研究や啓発を行っていくべきだと考えます。
2つ目ですが、資料の37ページに、参考として過労死等の労災保険給付支給決定が行われた企業に対する再発防止指導の強化が紹介されております。これを見ると、以下の2点で新たな取組が行われると理解してよいでしょうか。
1点目は、1件目の労災保険支給決定が行われた事業場に対しては原因究明及び再発防止策の策定を求めるこれまでの指導に加えて、その事業場を通じて本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施すること。
2点目は、3年以内に2件目の労災保険給付支給決定が行われた企業に対しては、企業本社への指導を実施するという従前の取組に加えて、その本社を管轄する都道府県労働局長から過労死等の防止に向けた改善計画の策定を求め、同計画に基づく取組を企業全体に定着させるための助言・指導を実施することにした。
この2点という理解でよろしいでしょうか。このような理解でよろしければ、大変画期的なことだと歓迎したいと考えております。
この点について確認ですけれども、この過労死等には脳・心臓疾患と精神疾患の両方が含まれ、例えばある企業で脳・心臓疾患についての支給決定があり、続いて3年以内に精神疾患についての支給決定がなされた場合、3年間の間に2件の支給決定があったとして指導が実施されるという理解でよろしいでしょうか。これが質問です。
3つ目の点として、これに関連して資料の8~9ページ、また、6ページに脳・心臓疾患と精神障害に係る平成25年度から令和4年度までの10年間の労災請求・支給決定の年齢階層別件数グラフが掲載されています。これを見ますと、脳・心臓疾患については請求件数がほぼ横ばいであるのに支給決定件数がほぼ半減しております。令和4年過労死白書の44ページには20年間の記録も出ていますけれども、これを見ても請求件数はほぼ横ばいであるのに認定件数が激減している。特に死亡事案は3分の1にまで激減していることが分かります。これは大変問題ではないかと思います。
その最大の原因として2点ありまして、脳・心臓疾患の労災申請では労働時間が最も重要な負荷要因であるとされていますけれども、その労働時間の認定が大変厳しくなっているということ。2つ目に、労働時間以外の負荷要因の評価が低いと感じております。令和3年9月に脳・心臓疾患の認定基準が一部変わりましたけれども、少なくともこれまでのところ、認定行政に大きな変化は見られないと言わざるを得ません。労災と認定されると、先ほどもありましたように、過労死等を発生させた企業にしっかりとした指導が行われることになり、過労死等の防止に大きく寄与することとなります。そのためにも実態に即した労働時間の認定や負荷要因の評価を行うことを徹底していただきたいと思います。私からは以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、寺西委員、お願いいたします。
○寺西委員 過労死家族の会の寺西でございます。私から2点、対策についての意見と要望を述べます。
1点目は資料2の15ページ、労働時間の抑制に向けた取組に関して、労働基準監督署による長時間労働が疑われる事業場についてです。過労死家族会の経験から、労災申請する際、一番必要となるのは労働時間の立証ですが、この立証は自己申告の場合、職場の悪しき慣習により過少申告が日常的になっていることで、実際の労働時間と大きな乖離があっても証明することが難しいため適正に調査されず、労働時間の過少認定で労災認定されないケースが少なくありません。そのため、過労死を生み出す劣悪な職場環境は改善されず放置されています。
資料29ページの2で示されていますように、労基法により使用者は労働時間を適正に把握する責務があるとしていますが、様々な業種で自己申告制が導入され、過少申告の原因になっており、隠れ残業が常態化しています。自己申告制は、長時間労働が疑われる事業場の取組として、使用者へ一般的な指導だけでなく、休職者や在職死亡者など、職場の実態把握を啓発するなど、きちんと調査していただきたいです。
被災者の救済と過労死防止のためにも、自己申告による長時間労働の抑制に向けた対策を講じていただくよう求めます。
2点目は18ページのメンタルヘルス対策関係についてです。私の地元で過労死防止活動をしている関係で、厚生労働省が所管している団体経由産業保健活動推進助成金に関して意見を述べます。令和4年度の補正予算案において産業保健関係助成金は団体経由産業保健活動推進助成金として計上されるようになりました。それに伴い、ストレスチェック助成金や心の健康づくり計画助成金、副業・兼業労働者の健康診断助成金を含む7件の助成金廃止が発表されています。
令和5年度版の団体経由産業保健活動推進助成金の手引きでは、安衛法に基づく長時間労働に対する面接指導、高ストレス者に対する面接指導及びこれらの面接指導結果に基づく意見聴取は対象となりますが、ストレスチェックや集団分析については助成の対象外になっています。このように、大きな規模の事業団体の中に入っていないと助成が受けられないような規定になったと思います。これでは小規模事業場への支援ということからは矛盾する制度ではないでしょうか。
9ページ及び白書の54ページにおいて、令和4年度の精神障害に関わる労災請求件数の推移は2,683件の過去最多となり、ストレスを抱えている労働者が急増していることでストレスチェックや集団分析など、職場のメンタルヘルス対策は必要不可欠になっています。
資料16ページ、数値目標の進捗状況についても職場におけるメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合や、使用する労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合など、該当するために重要なポイントとしています。そのためにも、これまで実施していたところが実施できなくなるという助成金制度は大綱の取組に逆行するのではないでしょうか。
資料11ページの4項に示されているメンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合の数値目標についても今後影響が出てくるのではないかと懸念します。ストレスチェックが中小企業場でもきちんと実施され、そこに働く労働者がストレスに気づいてセルフケアを行えるようになることや集団分析による職場改善が進み、労働者の心の健康が守れる、そんな職場づくりのために、ぜひ従来どおりの助成制度の手だてはあるのか、ないのか、また、その説明をお尋ねしたいと思います。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、工藤委員、お願いします。
○工藤委員 神奈川過労死を考える家族の会の工藤と申します。私からは対策について2点述べさせていただきます。
まず、21ページの重点業種の教職員についてなのですが、こちらは大分類とともに中分類にも分けていただいて、とても見やすくしていただいてありがとうございます。重点業種ということなので、できれば学校教育の中に、例えば大学の教員と学校種別、それから、私立・公立とか、その他と分けていただくと、それぞれの働き方がそれぞれ大変だと思いますので、分けていただいて対策をとるということが必要ではないかと考えます。
また、教職員については昨年の12月に精神疾患の休職者数が過去最高となりまして、教員の1か月以上の休暇取得者及び病気休職者数は全職員の1.33%、これは労災で発表されている1か月以上ですと0.6%なので非常に多い数になっております。全てが過労死等というわけではないかもしれませんが、これだけ多くの精神疾患、過労死等が出ているということは、まだまだ対策が不十分ではないかと思いますので、ぜひこの協議会で話されているような過労死等防止対策推進法の観点から対策を考えていくことが必要ではないかと考えます。
あと、37ページについてですが、こちらは労災についての取組がかなり具体的に書かれていると思います。こちらは労災になっていますが、公務災害事案についても同じような取組ができないでしょうか。立て付けは違いますが、再発防止に取り組むためには公務員についても縦割りではなくて過労死防止法の下、同じような対策をとるようにしていただきたいと思います。御検討をお願いいたします。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、髙橋委員、お願いします。
○髙橋委員 遺族代表の髙橋でございます。
1点目は、私からも37ページで示された過労死の労災支給企業に対する再発防止指導の強化についてです。これまで私たち遺族が繰り返しお願いしてきた再発防止策に一歩進んだ対策をしていただいたことは大変ありがたく思います。具体的にどのように行っていくのか知りたいということと、3年目で2件目が起きた場合に、さらに指導を行うという、3年間というところに根拠があるのかなと、ちょっと疑問に思っています。重要なのは過労死が起きた企業で、労働環境の改善を継続的に行い、二度と過労死を出さないということです。しかし、現実には同じ企業からの過労死が起きています。労災支給決定があっても会社には責任はないという姿勢の企業もあります。反省も対策も行わない企業に対してどのように指導を行い、労働環境の改善を図っていけるかどうかというところに重要な点があると思います。
そのためには、1件目の過労死から全社的に再発防止のための指導を行っていただき、過労死防止計画書を作成し、社内全体・社員全員に周知し、継続して行うことが必要だと思います。事件の検証と再発防止ができていないから再発が起きるわけです。
私の娘が勤務していた会社は創業100年以上になる大企業で、グループ全体で従業員数は7万人になります。過去30年あまりの間に何人もの勤務問題からの死亡者を出しています。娘の過労死があってからは社長が強い決意を持たれ、全社を挙げて労働環境の改善に取り組み、再発防止を公表し行っていると聞いています。改善計画を公表してからも2018年には違法な長時間労働がありました。例えば時間外労働などを数字で表せるものは対策が明らかですが、社内全体・社員全体に定着するのに時間もかかるのではないかという心配もあります。ハラスメントなどに関しても長期的に注視が必要ではないかと思います。年月が過ぎて問題意識がなくなってしまうというところも心配ですので、3年間というところにこだわる必要があるのかなと思うところです。4月から運用されるということなので、今後何とかならないかというところも期待しております。
2点目は若年労働者への取組に関してです。2014年に防止法の制定があり10年になります。2015年に娘が亡くなりました。これまで様々な取組がされているのに、今も娘のように仕事で追い詰められて命を失ってしまう若者が後を絶ちません。どうしてかと本当につらいです。9ページの年齢別の労災状況からも明らかなように、精神疾患からの請求数は20代が最も多く、ハラスメントに悩んでいたお子さんが亡くなったという親御さんにお会いすることも多いです。まだまだ若者への対策が十分ではないのかと心を痛めているところです。
前回の大綱の見直しでは企業の取組や職場風土の見直し、セミナーの実施など、メンタルヘルスなどについて記載がされましたが、抽象的な対策だけではなく、具体的に若者を守るために実効性のある対策をどうか組み入れてもらいたいと思います。どうか皆さんのお知恵をお貸し願いたいと思っております。新入社員研修や社員研修などで会社全体と社員全体が取組を一体になって行うことが何かできないかなと思うところです。職場環境がよくなれば、若者を守ることができるはずです。インターバルもできることを全部やってもらいたい。インターバルを確保すること、睡眠を確保する、休日を増やす、ハラスメントを禁止するなど。どうか皆さんのお力を貸してほしいと思います。
3点目は若者を守るという観点から行われている啓発事業に関してです。娘の卒業した高校では、委託事業の第1回目の平成28年、2017年2月から啓発事業を行っていて今年度で8回目になります。高校1~2年生は社会に出るのはまだ先ですが、自身の両親や学校の先生方の働き方に照らし合わせながら、自分自身の将来の働き方を考える貴重な機会になっています。実施校の先生方自身が自らの働き方の改善を校内一致で実行する重要な機会にもなっていると聞いています。
また、高知大学では私は今年で4年目でしたが、2コマの3時間を使って遺族の体験、社会政策の先生の講義と学生との意見交換まで行っています。就職活動している学生や既に内定が出ている学生にとって過労死は他人ごとではなく、働く前に知識を持って社会に出ることが重要だと思っています。そういう感想をもらっています。学生からは報道で目にする過労死の酷い実態が遺族の話を聞くことでとてもリアルに分かりました、就職する前に知ることができて本当によかった、社会に出て働くときに自分を守ることが大切だということがよく分かった、休むことが重要だと、自分を守るために参考にしたい、また、過労死のない社会にしていきたいという感想をもらっています。できる限り多くの学生に啓発の機会をつくってほしいと思います。
55ページの報告にありますように年間200回、受講者数1万5000人という実績がありますが、まだまだこれでは少ないのではないかと考えます。日本全国の学生の1%にもなりません。年間回数を1,000回にするとか、若者を守るためにはできる限り多くの学校で実施して、たくさんの学生に対して啓発してもらいたいと思います。
私からは以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、渡辺委員、お願いします。
○渡辺委員 過労死を考える会の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。本日は5点、御質問とお願いがございます。
1点目は過労死等の労災請求・支給決定件数の推移についてです。6~7ページにありますように、脳・心臓疾患の労災請求件数・支給件数とも令和3年度までは減少していましたが、令和4年度は増加しております。これは発生件数が減少したというよりも、コロナなどの影響が数値に表れているとも考えられますが、要因は分析されているのでしょうか。特に労災支給決定件数では女性は、令和4年度は令和3年度の倍の数字となっております。女性の請求件数には大きな変化はありません。令和4年度に女性の支給決定件数が増えたのはどのような要因になるのでしょうか。もし、分析されているのであれば、教えていただきたくお願いいたします。
また、精神障害の労災請求件数は男女でそれほど差がありませんが、支給決定件数は男性のほうが多くなっております。これも理由があるようでしたら教えていただきたく、よろしくお願いいたします。
2点目は若年層への支援についてです。9ページの年齢階層別件数を見ると、精神障害の労災請求も支給決定も20~29歳が令和4年度では一番多く被災されています。家族会の会員さんの中にも、まだお若いお子さんを過労死で亡くされた方が多数いらっしゃいます。これは本当に悲しいことです。大学を出てすぐに即戦力として使われ、十分な支援もないまま追い詰められて命を絶った我が子のことを嘆く親御さんの様子にかける言葉もありません。
令和3年度の大綱29ページにも若年労働者への取組について記載していただいております。しかし、被災者は増加し続けています。大綱で決めたことの成果が上がらなければ意味がないと思います。社会に出たての若年層のメンタル特性を上司が理解し、支援していくような取組が必要です。また、事業所と家族が連携して若い人を見守るということも重要だと思います。国が主導して行っていただくことが過労死防止の対策となります。ぜひよろしくお願いしたく思います。
3点目は労災事案解析の主な結果です。29~33ページに報告されていますが、家族会の会員さんやその御家族が被災した状況を語っているような事案がたくさんあります。このような状況で過労死が発生したということを、ぜひ多くの人に知っていただきたいです。そして、二度と同じことが起こらないように、事業所でも個人でも注意していただきたいというのが私たち遺族の願いです。この解析結果はどのように周知していくのでしょうか。この調査をした過労死等防止調査研究センターが過労死が起こる前兆について調査をしておられるようで、聞き取りに協力したことがあります。このような調査は過労死等防止対策支援ツールの開発につながるのでしょうが、それを今働いている人たちやその御家族も利用できるような仕組みづくりをぜひお願いしたいと思います。
4点目は過労死児に対する取組です。82ページに親が過労死した子供たちの相談対応について取組を行っていただいていることが示してあります。これはあらかじめ相談日が決まっており、その日にオンラインで相談を受け付けていただける仕組みです。今まで過労死遺児についてはどこにも相談体制がなかったので、初めて遺児たちの心のことに関心を寄せていただき感謝しております。ただ、このような取組は始まったばかりですので、子供たちが気軽に利用するようになるまでにはしばらく時間が必要だということも御理解いただけたらと思います。
また、83ページに過労死遺児交流会事業について記載があります。このときにも子供たちの相談の依頼がありましたので、対面による相談事業も御検討いただければと思います。また、子供は遊びの中で他の子の様子を見て癒やされたりお手本にしたりしますので、相談事業という対応だけではなく、子供たちの自助グループにつきましても御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
5点目は再発防止指導の強化についてです。37ページに過労死等の労災保険給付支給決定が行われた企業に対する再発防止指導の新たな取組が示されています。過労死遺族は大切な家族を働き過ぎで亡くしてとても苦しみます。その中で、このような苦しみは自分たちで最後にしてほしいと願っています。そのために、過労死が発生した事業所の再発防止の取組はとても関心を持っています。再発防止の指導を行った場合、事業所の改善計画を遺族も確認するような仕組みを取っていただけないでしょうか。遺族にもそれを開示していただければ、家族の犠牲がせめて生かされたと感じることができます。御検討をよろしくお願いいたします。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 経団連の鈴木でございます。私からは3点ほど発言をさせていただきます。
1点目として、労災防止に当たっては経営者層のリーダーシップと、風土改革も含めた全社的な対応が大切で効果的だと考えております。その観点から、さきほど、各委員からも御指摘がございましたが、37ページに記載いただきました労災保険給付支給決定が行われた企業に対する再発防止指導の強化策、これは効果が上がるのではないかと期待しております。
ここから質問ですが、一般的に労働基準法等の違反等があった場合の指導では、一定期間を過ぎた後に報告を求めるということが行われていると思います。この新しい強化策について、計画策定後はどのようなフォローをされるのかお伺いしたいと思います。
2点目は、医師に対する時間外労働の上限規制が今年の4月から適用されますので、医療従事者を重点業種として引き続き調査・研究をお願いしたいと思います。その中で、労働力調査には医師単体のデータがないようです。それぞれの地域医療等の関係者が計画を策定するという仕組みで、都道府県にはデータがあるのかもしれません。何らかの形で毎年医師の労働時間の実態を把握いただき、分析等の活用をお願いしたいと思います。
また、先ほど事務局から御説明がありました令和2年から4年の労災事案の解析について、私の見方が悪いのかもしれませんが、同じく上限規制が適用されるトラックドライバーの脳・心臓事案の解析がないようです。この点の解析も御検討をいただければと思います。
最後に3点目です。前回、フリーランスについてのテーマが挙げられていたかと思います。フリーランスを含む個人事業者につきましては、労災の報告制度が創設される方向にあります。その報告制度の実効性を上げるためには、特定注文者や個人事業者に対する効果的な周知啓発活動が重要になってくると思いますので、その周知についても注力いただきたいと思います。
併せて、今年の秋をめどに、希望する全てのフリーランスの方が労災保険に特別加入できるようになろうかと思います。このフリーランスの方の脳・心臓疾患、精神疾患の労災事案が生じた場合の調査分析も併せてお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、清山委員、お願いします。
○清山委員 重なる部分を除きますので数字がはっきりしませんけれども、3~4点です。
最初に、勤務間インターバルについて、周知ももちろんなのですけれども、長時間労働業種で積極的に導入割合を増やしていく必要があると思います。例えば学校教員の働き方改革の中で、変形労働時間制による労働時間の短縮であるとか、健康被害を減らすということが出ていると思いますけれども、実際には、労働時間1日の上限を10時間、週52時間に達成できるような状況では今ありませんので、勤務間インターバルのほうが働き方の改革で、たとえば担任制の方法や時間割の組み方の工夫等によって可能だと思います。そちらのほうをやってほしいと思います。
また、校長先生が労災認定の申請の際に承認しないと申請がなかなか出せないという状況は、管理監督責任を十分に果たせなかった方のオーケーが出ないと労災申請ができないということにつながりやすくなっていますので、この点はもう少し考えていく必要があると思います。それと同時に、校長先生を責めても問題は解決しないと思っています。教育委員会レベルで組織的に対応することがすごく大事だと思います。
つまり、何か問題が発生したところは、先ほど鈴木委員も言われましたけれども、全社的に対応することが大事だとすると、学校というのは一事業所にすぎないのです。一事業所で何かが発生したら、その事業所を統括しているところの教育委員会レベルで、その問題発生をどうやって解決できるのか、課題解決に向けた支援を個別に行っていく対応が必要なのではないかと思っています。それはどの業界でもあると思います。
続きまして、精神疾患についてです。労働時間の男女間格差が多いにもかかわらず、精神疾患に関する男女間の差はそこまで大きくないという状況、それから、若年層に多いということを見ると、背景として職位が低い人たち、仕事を指示される立場というか、発言力とか交渉力が弱い人たちに生じていると考えられます。また、その人たちは上司の指示と顧客のニーズや要望との板挟みになっていることもあると思います。この件に関して、すでに超研究があると思いますけれども、長時間労働とハラスメントの複合要因から問題が発生しているのではないかということについての調査研究は大事になってくるかなと思いますし、認定などの在り方についても同様のことが言えると思います。
この点と関連しまして、学校教員に関して、精神疾患のために病気休職を取って、その後、退職している人たちが5,000人を超えているにもかかわらず、認定の件数が7人というのはどうなのかと思いますので、この辺りも調査が必要かと思います。在校時間の管理を厳しくしている関係で実際に記録が正確でないということは、校長先生レベルの学校の管理職層、それから、一般の教員レベルで相当数ヒアリングしましたけれども、ほとんどの職員の方があると言われました。
校長経験者の方たちももちろんそうですし、若手の職員ももちろんあるということで、管理をする責任者である教頭先生が実際の在校管理を短縮して出しているというようなこともあるようです。それを見ていると、一般の職員はなかなか長時間残業をそのまま記録することは難しいということを言われたりします。この辺は文部科学省で一生懸命に対応されているところだと思いますが、実効性があるものにしていくよう気をつける必要があると思っています。
フリーランスに関して、先ほど来幾つか出ていますので少し言うと、非正規雇用の人たちが経済的な関係からのマルチジョブをしていると思いますが、その方たちの中に休日がない、2つか3つの仕事がシフトで入ってくるために休日がほとんどないという状況も見られます。その辺りも調査する必要もあったりするのかなと思います。もうされているのかもしれないのですけれども、見落としているかもしれません。
あと、公務のところで地方公務の議会対応関連業務で相当長時間労働があります。今回みたいな災害とかいろいろなことが起きると、補正予算の申請や執行などの関係で担当部局の方たちの長時間労働が、議員の方たちとの対応も含めて出ていると聞いています。質問の通告時間の目安があると聞いていますけれども、事実上守られていませんので、こういうことに関しては質問のスケジュールそのもの、各政党や議員さんたちの日程の告知のほうも早めていただくようにしないと難しいように思います。人事院の方たちは、働き方を改善するプロフェッショナルだと思いますので、その辺りはどうしたらいいのかということを考えていただくといいかと思っています。
研修に関しましては、後の2番目のほうで取組として少し改善提案がありますので、そちらで述べたいと思います。以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、冨高委員、お願いします。
○冨髙委員 何点か御意見を申し上げたいと思います。
メンタルヘルス対策について、前回、今回と、私を含め多くの委員から指摘がありましたが、精神障害の労災請求、決定件数が増加し続けていることは重大な問題です。
早期発見から早期治療につなげることが重要であり、職場での定期的かつ、きめ細やかなチェックを義務づけることが有効な対策の一つだと考えています。現在、努力義務となっている労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェックの実施を義務化することも検討すべきです。さらには、昨年、精神障害の労災の認定基準が見直されたことから、2011年に作成されたストレスチェックの調査票について、職場環境等の変化や最新の研究の知見等を踏まえ、内容や効果等について検証・見直しに着手することが重要であると考えます。
また、連合が2022年に実施した調査では、「職場におけるストレスについて相談できる方はいるか」という問いに対し、同僚や家族・友人等とした回答が圧倒的多数を占め、産業医や保健師、外部のカウンセラーなどと回答した割合は少ないということが明らかになっています。職場や相談者の抱える課題を客観的に把握した上で、適切な対応につなげていくことが重要であることから、職場外の相談先も広く活用されるよう、取組を進めていただきたいと思います。
次に勤務間インターバル制度について、2019年4月から努力義務化されましたが、導入している企業割合がなかなか増加しないという実態にあります。これまでも厚生労働省を中心に周知、マニュアル作成等の取組を進めていただいていると思いますが、本日の資料によると、制度を知らないと回答する企業割合が増加し、導入予定はなく検討もしていないとする回答割合も微増しています。
連合に加盟する組合においても一定数、勤務間インターバル制度の導入に取り組んでいる組合もあります。導入に前向きでない企業に対し、制度導入に向けて積極的な検討がされるよう取組を強化していただければと思います。業種・業態ごとの特性などを基に、導入を阻害する要因などを分析の上、もう一歩踏み込んだ取組が重要ではないかと考えます。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、上野委員、お願いします。
○上野委員 大きく3点にわたって発言します。
1点目は年次有給休暇について、資料によると年次有給休暇の取得率の増加が見て取れますが、就労条件総合調査の結果を踏まえると、業種により取得率にばらつきが見られます。取得率の低い業種に対して、重点的な対策が必要なのではないかと考えています。併せて、既に年次有給休暇の取得率が高い企業については今以上の取得率の向上を求めるなど、大綱の目標である取得率70%以上の達成にむけ、全体の底上げに資する取組をお願いしたいと思います。
2点目は副業・兼業について、資料では副業をする理由として、「収入を増やしたいから」、「1つの仕事だけでは収入が少なくて生活自体ができないから」との回答が圧倒的に多く、就業形態でも、非正社員+非正社員が32.9%で最も多くなっています。生活を維持するために、本業に加え副業を行うことで、結果として長時間労働となってしまうという懸念が大きいと考えます。副業・兼業により労働時間は確実に長くなることから、導入をするとしても労使で十分に議論を尽くすべきものであり、そうした施策を政府として推進することには慎重であるべきと考えます。さらに、労働時間の通算管理や健康確保に向けた取組を徹底することが必要であり、過労死等の防止の観点から、引き続き大綱に盛り込んでいただきたいと考えます。
3点目はハラスメント対策についてです。前回も労働側委員から発言があったとおり、あらゆる業種で職場におけるハラスメントの被害の報告が増加を続けており、長時間労働といじめやハラスメントが重なることにより、過労死等に至ってしまうことが、労災事案解析の主な結果でも示されているかと思います。
また、パワハラ、セクハラ、マタハラに関する対策が全企業に義務づけされているにも関わらず、いじめ、嫌がらせ、パワハラに関する相談件数が増加を続けています。現大綱でもハラスメント防止対策の記述がありますが、さらなる周知啓発や、実効性ある対策を一層強化する方向で新たな大綱にも盛り込んでいただくことが重要であると考えています。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 私からも3点ほどあります。
1点目はインターバル制度でございます。この資料の13ページ、先ほど冨髙委員も言われましたけれども、この導入率というか認識率もなかなか上がっていかない。13ページの右下のほうでは超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないためというのが多くなっています。
中小企業においてはもちろん超過勤務、時間外労働が多いと指摘されることが多いのですけれども、大体の平均とすれば、コロナが終わってから経済活動が活発化して増えたとしても10時間ちょっとなのです。事業者はこの認識がないというか、自分のところの事業所は少ないと思っている。でも、こういうところにインターバル制度を就業規則に入れていく、規定上入れさせていくこと、というのが、本来、数字を上げるだけの問題ではないのですけれども、効果が高いのではないかなと思います。逆に、あまり必要がないから、そのような事業所にそこにあえて入れていくということが私は必要なのではないかと思います。
それから、2点目ですが、資料の37ページ、先ほどからも何点か、髙橋委員からも御指摘いただいておりますけれども、この新しい通達が出て、効果の分析を行うこと、この点は鈴木委員も言われましたけれども、私はもっと必要なのではないかなと思います。過労死等で労災を受けたということで重要な問題でありますので、ここについては1回目、2回目を問わず、検証していくのが必要なのではないかと思います。
また、資料で配布いただいております大綱の34ページに経営幹部等の取組が記されています。過労死を起こした事業所に対し、「過労死シンポジウムなどへ経営者、管理者を出席させたらどうですか、」ということを私は本会議において申し上げました。この実績というか、本当に出席されているのかどうか、この辺が分かれば教えていただきたいと思います。
以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございます。
神委員、お願いします。
○神委員 今後の過労死等の防止対策を考えていく上で、職場におけるハラスメントの防止対策の強化は引き続き重要な課題であると考えておりますので、このハラスメントの問題について2点ほど申し上げたいと思います。
現在、事業主には法律で10ないし11のハラスメント防止措置が義務づけられていると承知しておりますが、残念ながら全て実施されていないと推察されるデータも見受けられるところでございます。若干古いですけれども、令和2年度の厚生労働省委託事業、職場のハラスメントに関する実態調査によりますと、法定のハラスメントの防止措置を実施していると回答した企業は7~8割程度となっておりまして、十分な取組がなかなか進んでいないことがうかがえるかと思います。
そこで、例えばですけれども、労災の申請・決定事案において、当該企業でこれらのハラスメントの防止措置が実施されていたのかどうかの調査であったり、あるいは別途労働者の調査を行いまして、企業の隠蔽体質の有無などの職場風土であったり、ハラスメントを見聞きしたのかについて調査することで、企業の経営者に対する効果的な周知啓発にもつながっていくのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。
また、昨年9月に心理的負荷による精神障害の労災認定基準にカスタマーハラスメントが追加されたと承知をしております。東京都ではカスタマーハラスメントの防止に向けた都独自の対策の在り方につきまして昨年の秋より検討が進められておりまして、私もその検討部会に参加をさせていただいているのですが、カスタマーハラスメントは社会全体での認知であったり理解がなかなか進んでいないという状況かと思われます。
カスタマーハラスメントを原因として従業員の方がメンタル不調に陥るようなことは、企業サイドとしても何としても避ける必要があると考えておりますけれども、相手が主に一般消費者の方ということで、職場におけるパワハラとかセクハラとは対策の考え方がやや異なりまして、個社での取組には限界があるということから、行政による消費者サイドへの粘り強い働きかけや啓発といったものがより大切ではないかと思っているところでございます。
厚生労働省による明るい職場応援団のウェブサイトには、動画で学ぶハラスメントとして多くの動画が掲載されており、既にカスタマーハラスメントに関する動画も掲載されていることを承知しております。ぜひこれらの取組を強化していただきまして、社会全体の認知や理解を深め、一般消費者の行動変容を促すような取組を積極的に展開していただければと考えております。
私からは以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
戎野委員、お願いします。
○戎野委員 調査研究・重点業種等のところに教職員を改めて入れていただきたいということは前回申し上げました。今回、ほかの委員からもたくさん要望が出たと思いますが、私も重ねてお願いしたいと思います。その際に、いわゆる小学校から大学まで入ってくると、労働時間管理のありようもかなりそれぞれ異なっていると思います。ですので、細かく分けて分析する必要があると思います。任期付きの雇用であるかどうかなど、雇用形態の問題、職階、年齢、こういったところも分けて見ていくことが重要だと思います。そして、最終的にこの対策を考えたときには、それぞれに違った対策が求められてくるのではないかと思います。つまり、分類した内容で記載する必要があるのではないかと思いました。
もう1点、36ページの自殺の原因、動機別自殺者数の年次推移を見ますと、統計の取り方が変わったことによって4年に非常に伸びています。これをどう解釈するのかというところは、単純に解釈できないのは重々分かっておりますけれども、慎重に見ていく必要があると思いました。
例えば健康問題などは、全体として多いように見える平成25年と比べても少ないです。ところが、勤務問題に至りましては、どの年代を見てみても今回が最も高くなっているわけです。最大4つ原因を究明したことによって勤務問題が顕在化したのか、あるいは裏付ける資料のほか証言を加えてみたら顕在化してきたのか。
ある意味、これまで自殺の原因として勤務問題がまだまだ埋もれているのではないかとも解釈できると思うのです。ですので、これをどう解釈するのかというのが質問で、変更理由も含めてぜひ分かる範囲でお答えいただけたらと思います。そして、ここは注視してこの先数字を見ていく必要があるのではないかということを、質問と併せて申し添えておきたいと思います。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。それでは、様々な御意見や一部御質問をいただきました。それについて御担当から回答やコメントがあればお願いしたいと思います。
○総務課長 労働基準局総務課長です。
まず、岩城委員からは重点業種について御指摘を頂戴し、また、髙橋委員からは若年労働者、学生に対する啓発、渡辺委員からも若者への啓発で御指摘をいただきました。また、渡辺委員から労災の事案の分析結果の活用や遺児の皆様への対応の充実も御指摘いただきました。今後の大綱の見直しの中で、事務局としても併せて検討してまいりたいと考えてございます。
最後に、戎野委員から御指摘をいただきました自殺に関しては、警察その他におきましても、よりその状況を丁寧に見ていくということで、今回データの取り方を変えたと承知をしておりますので、単純に過去とはつなげられないとは思っています。今後のデータの動きもよく見ていきたいと考えてございます。
以下、御質問という形で頂戴したもので、この場で回答できるものに関して、各担当から簡潔に御説明を申し上げます。
○補償課長 補償課長です。
最初に、川人委員から質問をいただきました過労死の件数で、審査請求や訴訟の件数が入っているのかについて、今、お手元にお配りしている数字には入っていません。これとは別に、労災保険の補償状況を毎年6月末頃に公表しており、この公表の中では審査請求や訴訟等で取り消しになった件数をお示ししています。
参考までに訴訟もしくは審査請求で取り消しなった件数を申し上げると、令和4年度の脳・心臓疾患は9件、精神障害は25件となっています。
また、川人委員から認定基準の改正があり、その適用について、発病がその前であったら適用にならないという御発言もありましたが、労災保険の認定基準が改正された場合には、その認定基準の施行日以降に決定、判断するものに適用する取扱いをしています。したがって、発病日云々ではなく、支給決定する時点で適用しています。
岩城委員から認定基準の改正があったのに脳・心臓疾患の支給決定件数が増えていないとの御指摘がありました。脳・心臓疾患の場合は労働時間が大きな要因であり、厚生労働省として確たる原因を突き詰めるのは難しいですが、長時間労働が減っているという背景もあろうかと思います。
また、請求件数を見ていただくと、800件を界に上がったり下がったりというような状況で、令和4年度は前年の753件から803件に増えています。
認定基準の改正の関係で申し上げると、令和3年9月に脳・心臓疾患の認定基準を改正して、前年度の令和2年度と比べて認定率、業務上になった率が前年度の29.2%から32.8%に上がっています。また、令和4年度になると、38.1%と令和3年度よりさらに上がっております。
鈴木委員からフリーランスの特別加入の制度改正に併せて過労死の認定を適正にとの御指摘をいただきました。周知と併せまして一層の適正な認定に努めていきたいと考えてございます。
清山委員からフリーランスの関係で日曜日がないとか、連続勤務の話もございました。フリーランスに限らず、複数の事業に従事されている労働者について、複数業務要因災害として労災認定する枠組みがございます。適切に行っていきたいと考えてございます。
私からは以上です。
○監督課長 監督課です。資料の37ページ、過労死等の再発防止指導の強化について、複数の方からの御質問等をいただきましたので、まとめて回答いたします。
取組の1点目は、現行、事業場に対して原因究明・再発防止策の策定を求める指導を実施していますが、今回、新たな取組として、その事業場を通じて企業の本社における全社的な再発防止対策の策定を求めるものです。
取組の2つ目は、現行ではメンタルヘルス対策の観点から、複数の精神障害に係る労災保険支給決定が行われた企業について、企業の本社への指導を実施していますが、新たな取組として、長時間労働による脳・心臓疾患も含めて複数の労災の決定が行われた企業のトップに対して改善計画の策定を求めるものです。
岩城委員から、1件目、2件目がそれぞれ精神障害に限らないのか、脳・心臓疾患、精神障害を含めるのかと御質問をいただきました。1件目が脳・心臓疾患、2件目が精神障害の場合、1件目が精神障害、2件目が脳・心臓疾患の場合なども対象になります。
また、この取組について具体的にどうするのか、フォローアップをどうするのかとの御質問がありました。これは企業に計画を立てていただいた後、6か月後と12か月後に実施状況を報告いただき、労働局又は労働基準監督署で確認をします。その目標が達成された場合には、本社だけでなく、支社にも取組が定着したかどうかを確認することを予定しており、フォローアップを図っていくこととしています。
髙橋委員から3年に根拠があるのかと御指摘をいただきました。これは新たな取組を始めるに当たって一定のルールは必要と考え、今回の3年で設定をしました。これは将来にわたって3年でなければならないというものではありませんので、実施状況を見ながら、検討していきたいと考えています。
渡辺委員から遺族に対しても開示してほしいとの御要望について、これは監督指導の内容ですので、労基署がつまびらかにするのは難しい面がございます。しかしながら、遺族の方の御要望・御意見などを企業にしっかり伝えて、指導に反映させていくことは可能と考えますので、適切に対応していきたいと考えています。
また、寺西委員から労働時間の過少申告についての御指摘をいただきました。労働時間の把握については原則としてタイムカード、ICカードなど客観的な記録を基礎として把握することになっています。やむを得ず自己申告による場合でも、労働者に対して十分な説明を行うなどをガイドラインで定めておりますので、その考え方をしっかり周知していきたいということ。加えて、個別の事案に関しては記録を確認することはもとより、ヒアリングなども通じて適切に労働時間を把握していきたいと考えています。以上です。
○労働衛生課長 労働衛生課長です。
寺西委員からの御指摘で、団体経由産業保健活動推進助成金についてお答えいたします。従来、産業保健関係助成金は事業場単位で助成を行ってきたものです。これを令和4年度より中小企業における産業保健活動を効果的・効率的に運営する観点から、中小企業の各種活動を支援する団体経由で助成を行う仕組みに変えたものです。
この新設の助成金は中小企業のメンタルヘルス対策を含めた産業保健活動を推進することを目的としており、現在、その活用について事業主団体等に働きかけをしているところです。
助成条件は変わったりもしまして、ストレスチェック自体を実施することについては助成対象から外していますが、例えばストレスチェックから見つかった高ストレス者の申し出に伴う面接指導の費用について助成することにはなっています。引き続き各種支援を通じながら、中小企業のメンタルヘルス対策の推進を図ってまいりますし、この助成金の活用の状況を見ながら、助成条件などについても適切に検討してまいりたいと思っています。
以上です。
○雇用環境・均等局総務課 雇用環境・均等局総務課の雇用環境政策室です。
勤務間インターバル制度について、清山委員、冨高委員、佐久間委員よりそれぞれ導入マニュアルは長時間労働の業種を踏まえて作成したほうがいいのではないか、制度を知らない人の割合が高まる中で、導入に前向きではない企業に対しても積極的に取り組むことが必要ではないか、また、必要性を感じていない企業についてもしっかり導入させていくべきではないか、という御指摘をいただきました。
厚生労働省においては、これまでも長時間労働が認められる業種、もしくは勤務と次の勤務の間隔が短いシフトによって十分な休息時間を取れない業種などを念頭に業種別の導入・運用マニュアルを作成しています。例えばIT業種、建設業、高齢者福祉・介護、食料品製造業などを作成しており、今年度は業界団体、労働組合、学識経験者の方々に検討部会の委員となっていただき、宿泊業・飲食サービス業版の作成を行っているところです。
周知については、特に今年度は、当時の加藤厚生労働大臣に率先して御対応いただきました。具体的には昨年7月に開催したシンポジウムにおいて、大臣が冒頭にインタビュー形式によりシンポジウムの狙いや制度への思い、インターバルが労使にとってメリットがあることを御紹介いただきました。そのほか、雑誌広告として9月に御出演いただき、過労死等防止調査研究センターのセンター長と労務に関するコンサルティング会社の方との鼎談形式によるやりとりによりメリット等について情報発信をしました。
また、メリットをよくお伝えするということが導入に前向きではない企業にとって大変重要と考えていますので、具体的なメリットはどういうものなのか、また、具体的に導入する際に就業規則にどのように書けばいいのかといった疑問を解消すべく、規定例なども含めて紹介をしているところでして、引き続き導入促進に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思っています。
また、上野委員から年次有給休暇の低い業種への取得の促進について御指摘をいただきました。年休の取得促進については、例えば休暇を取得しやすい時期に啓発を行ったり、厚生労働省のポータルサイトにおいて企業の事例紹介などを行っていますが、ご指摘のとおり、業種特有の取得しにくい課題があろうかと思います。どこに隘路があり、また、それをどのように工夫して年次有給休暇を取得したのかを含めて事例の中で紹介を行っておりますので、引き続き御指摘を念頭に置き、事例を収集するなどして、目標の達成に向けて取り組んでまいりたいと思っています。以上です。
○雇用環境・均等局雇用機会均等課 雇用環境・均等局雇用機会均等課のハラスメント防止対策室です。
上野委員と神委員からハラスメント対策につきまして御意見をいただきました。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、いわゆるマタニティーハラスメントについては、それぞれ法律及び指針に基づき、事業主はその防止のため、雇用管理上、講ずべき措置を講じていただくことが義務づけられています。これらについては、さらに積極的に周知を図ってまいりたいと考えています。
また、カスタマーハラスメントですが、これは指針に基づき取組を行うことが望ましい旨が定められており、これについても明るい職場応援団など、様々な媒体を活用して、引き続き、周知を図ってまいりたいと考えています。以上です。
○文部科学省初等中等教育局 文部科学省初等中等教育局です。学校教育・学校教員について、委員の皆様から御指摘を賜りましたので回答いたします。
まず、髙橋委員からは、高校等での啓発の取組が必要であるという御意見をいただきました。私どもとしても子供や若者が雇用・労働問題について考える機会は重要なものと思っており、中学校の社会科や高校の公民科などにおいて労働基準法の基本的な考え方などを学べるような指導が行われています。加えて、学校での指導を支援するために厚生労働省とも連携をしながらハンドブックの学校における活用促進や、講師派遣の周知などの取組を行っているところです。
また、清山委員からは勤務間インターバルの導入について御指摘をいただきました。現在、文部科学省においては、中央教育審議会で学校における働き方改革について集中的な御議論をいただいており、その審議会の中でも勤務間インターバルを取り上げて検討いただいているところです。
また、国家公務員・地方公務員における勤務間インターバルの在り方についても検討中と承知をしており、そういった動きと整合的に学校教員についても進めてまいりたいと考えています。
また、清山委員から校長先生だけを責めるのではなく、いわば企業体としての教育委員会への指導が重要ではないかとの御指摘もいただきました。校長だけの問題ではないというのは御指摘のとおりで、我々としても学校教育に携わる国、教育委員会、学校、それぞれが、それぞれの立場でできることを進めていく必要があると考えていますので、長時間勤務等があった場合は校長だけの責任ということでなく、教育委員会に対して、取組を促進していく必要があると考えています。
さらに、清山委員から在校等時間の虚偽申告があるのではないかとの御指摘もいただきました。記録上の時間を縮減することを目的として過少申告をすることは、あってはならないと我々としては考えており、文部科学大臣が各教育委員会に示している指針においても、その考え方を明確に示していますし、先ほど厚労省からあったようなICTの活用を通じて虚偽申告が起きにくくなる取組も進めてまいりたいと考えています。以上です。
○総務省自治行政局公務員部 総務省の安全厚生推進室です。
工藤委員からの、資料の37ページの過労死等を複数回発生させた場合の再発防止指導について、公務災害でも同様の取組ができないかという御質問です。労災では認定と監督指導を労働基準監督署で行っていると認識しておりますが、地方公務員の場合は認定を行うのは地方公務員災害補償基金であり、労働基準監督機関の職権を有するのは基本的に各地方公共団体の人事委員会、または首長です。その主体が異なるため、同様の取組ができるかどうかを含めて検討が必要であろうと考えています。以上です。
○人事院職員福祉局 人事院です。
清山委員から議会や国会対応に関して、議会等の日程の告知そのものも早めていただく必要があるのではないかという御指摘をいただきました。国会等の日程については国会の運営事項ですので、行政から何かを発信することは難しいところですが、対応業務については行政部内での課題には改善に取り組むとともに、部内を超えた取組が必要なものについては、引き続き関係各方面の御理解と御協力をお願いしていきたいと考えています。以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
まだまだ御意見の尽きないところではありますけれども、時間の制約もありますので、続いて数値目標について御意見をいただきたいと思います。もう時間があまりありませんので、簡潔に御発言いただければありがたく思います。
工藤委員、お願いします。
○工藤委員 前回の大綱の数値目標について、公務員についても目標の趣旨を踏まえ、必要な取組を推進となりました。この3年間の協議会とか白書でも公務員について随分丁寧に記載されるようになりまして、大変ありがたく思います。公務員については、ぜひもう一段強い打ち出しをしていただきたいと思います。例えば地方公務員については一般職のほかに消防とか警察、教職員の区分をするとか、もうちょっと細分化をして、そして、多くの数値目標と対比できないかということを要望させていただきたいと思います。以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、宮本委員、お願いします。
○宮本委員 2点ほど。まず13ページに出ている勤務間インターバル制度は今までもいろいろお話があったのですが、その右側の2つのグラフでみると、確かに超過勤務の機会が少ないというところですと制度自体が必要ないと思ってしまうので、例えば今の目標と調査をそのままでもいいのですけれども、それに加えて24時間操業しているとか、特定業種とか、本当に残業が多いところ等で、そこを分母にした調査を行って、まずそこできちんと目標達成するという意味で、現状でどういう数値になるのか分からないのですけれども、本当に制度が必要なところを調べてみてはいかがかと思うところです。
それと、16ページ、先ほど冨髙委員からもお話があったのですが、大綱の目標にちょっと遠いところ、例えば中小企業でのメンタルヘルス対策やストレスチェックの実施率などは、健康診断やストレスチェックの実施を報告させる制度を少し強めることで、これらの実施にドライブがかかるのではないかと思います。ここで話す問題ではないのかもしれませんけれども、労働者数50人未満のところでこれから高めていく目標なので、例えば30人以上の事業場に報告義務を課すといったことは可能なのかどうか。また、過労死等の労災認定のほうも企業規模によって差があるのであれば、そこも今後対策を詰めていくという点で、データが出せるといいかなと思っております。16ページのほうは今ある目標を変えるという話ではございません。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
清山委員、お願いします。
○清山委員 今の宮本委員から出た案件で言うと、勤務間インターバルに関して実効性のあるというのはすごく大事だと思っているのですけれども、他方で、知らない企業を減らすというのに、それとの関係で言うと、特別条項つきの時間外36協定を出すところに、情報提供を同時にやることにするだけで随分違うのではないかなと思ったりもしました。
あと、経営者協会さんなど経済界の方で各種研修を本当に沢山されていると思うのです。研修の中で、1回の研修を丸々こういうものに使おうと思うとなかなか難しいと思うのですけれども、1枚とか2枚とかでワンポイントレッスンみたいな研修の資料をつくり、いろいろな研修の時に適切なものを5分間、閑話休題みたいな感じで使ってもらうだけでも効果があると思います。過労死等防止研修だけでなく、いろいろな機会に利用していただくと、結構広がるのではないかなと思っています。
同時に、虚偽の記録などに関しても、そんなことはないと思うけれども、レ点を入れるチェックボックスつきで、そういうことは行われていませんかとかというようなことを聞くだけでも違うと思います。また、新入社員研修や管理職前研修といった節目の研修で、過労死等防止の内容を必修研修に入れてしまうと、すごく効果的だと思います。そうすると、例えば研修で新入社員に説明しているのに、それと違うことを、たとえば自分の直属の上司が過少申告をそれとなく言ってくるというようなことがあった場合、これはちょっとおかしいなということになり、上司も言いにくくなる。そういうのも含めて必修研修の中に、大部でなくてもいいのですけれども、ポイントを入れていただくのも一つの手ではないかなと思います。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
冨高委員、お願いします。
○冨髙委員 前回、数値目標を実現可能なものにすべきという意見がありましたが、いずれの目標も非常に重要な数値であることから、ぜひ堅持していただきたいと思います。
メンタルヘルス対策について、2022年度まで「数値目標に掲げられていた仕事上の不安・悩み、またはストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者割合」が90%以上という指標があったのですが、2022年度で79.8%と未達成のままですので、引き続きのフォローアップが重要であると考えます。
また、先ほども申し上げた外部の相談先の活用状況についても、参考指標となり得るのではないかと考えています。
それから、週労働時間60時間以上の雇用者割合や年次有給休暇の取得率について、数値目標が必要だと考えます。業種ごとにばらつきがあるということから、達成しているような業種はさらなる向上を求めるということも考えられると思います。以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、木下委員、お願いします。
○木下委員 この数値目標の中で、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合が目標となっておりますけれども、2022年から全ての事業所でハラスメント対策についてパワハラも含めて対策が義務化されておりますので、ぜひ今回の大綱の中では、ハラスメント対策に取り組む企業の割合について一定の数値目標を掲げて、ハラスメント対策をより広げていくことを希望します。メンタルヘルスの前にハラスメント対策のほうを対策したほうがメンタルヘルスの結果にもつながりますし、また、長時間労働とハラスメントの関係も非常に強いものと考えられておりますので、ぜひハラスメント対策をこの数値目標の中に取り入れていただきたいと思います。
以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、今の数値目標に関する御意見につきましてコメントがありましたらお願いいたします。
○総務課長 労働基準局です。今、目標の設定、それから、目標達成に資するための取組に関しての言及も頂戴しました。また、事務局のほうで次回以降に向けて検討して整理してまいりたいと考えてございます。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
それでは、時間も限られておりますので、本日はここまでとさせていただきます。
委員の皆様におかれましては、活発な御議論をいただきましてありがとうございました。
次回の協議会に向けましては、厚生労働省が中心となりまして関係省庁と連携を図りながら、本日の御意見を踏まえて大綱の見直し案の骨子と、それを肉付けした素案を準備していただくようお願いいたします。それから、準備をしていただくに当たりましては、各委員からも丁寧に御意見を伺いながら作業を進めていただくようお願いいたします。
最後になりますが、今後の日程につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○企画官 委員の皆様には既に御連絡させていただいておりますが、可能な限り全員での御議論を賜るとの趣旨により、次回は3月19日火曜日の開催として調整させていただいております。また、5月の協議会の開催日につきましては追って調整をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○中窪会長 それでは、第26回「過労死等防止対策推進協議会」はこれで閉会といたします。本日はお忙しいところをありがとうございました。