薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和5年度第3回運営委員会議事録

日時

令和5年12月13日(水)16:00~18:00

場所

Web併用形式
日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階 8E会議室

出席者

出席委員(6名):五十音順、敬称略 ◎委員長
日本赤十字社:敬称略 
事務局:

議題

  1. 1. 感染症定期報告について
  2. 2. 血液製剤に関する感染症報告事例等について
  3. 3. 各調査会の審議結果について
  4. 4. その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

議事内容
○鈴木課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「血液事業部会令和5年度第3回運営委員会」を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度は、御参加いただく方の利便性等の観点から、Web併用での審議とさせていただきます。なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 次に、会議における委員の出席についてですが、委員6名全員に御出席いただいていることを報告いたします。また、本日は日本赤十字社血液事業本部より谷中央血液研究所長、藤田経営企画部次長、早坂経営企画部次長、後藤技術部次長、国吉経営企画部事業戦略室参事にお越しいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしていますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上に、「1、議事次第」から「9、資料3-2」までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
 本日はWeb併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問がございましたら、挙手等によりお示しいただきますようお願いいたします。座長から順に発言者を御指名いただきます。指名された方はマイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を御発言ください。ノイズを減らすため、御発言が終わりましたら、マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際には、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は委員長からお願いをする場合があります。その場合は、記入されたメッセージに応じて、委員長より発言者を御指名いただきます。Web参加の皆様におかれましては、議事進行中に会場の音声が聞こえづらい状況が続き、審議参加に支障を来す場合には、チャット等でお知らせいただくようお願い申し上げます。
 まもなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは、以降の進行を田野﨑委員長にお願いいたします。
○田野﨑委員長 皆さん、こんにちは。これまでの説明について、何か御質問などがありましたらお願いします。よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。議題1「感染症定期報告について」、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○鈴木課長補佐 事務局の鈴木です。資料1-1を御覧ください。初めに、「感染症定期報告(研究報告概要一覧表)」を御説明いたします。1ページです。令和5年7月~8月までに提供された感染症定期報告に含まれる研究報告は3つありました。1つ目は、前回に草案を御報告しました、米国食品医薬品局からのHIVに関するガイダンス、血液及び血液製剤を介した感染のリスク低減のための個人のリスクに基づいた質問を用いたドナーの適合性を評価するための推奨事項の確定版となります。
 2つ目はウイルス関連です。感染研より、オルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に分類される新規RNAウイルスであるオズウイルスについてです。2018年に本邦でタカサゴキララマダニより分離同定され、野生動物の血清抗体調査によってマダニを媒介動物として国内での広い分布が予測されていましたが、世界的にヒトでの発症や死亡事例は確認されていませんでした。2022年に国内で発熱・倦怠感等を主訴として受診し、心筋炎により亡くなられた患者が、ウイルス学的・病理学的にオズウイルス感染症と診断されたとの報告です。
 最後に3つ目は、脳アミロイド血管症の輸血感染の可能性に関する報告です。脳アミロイド血管症、CAAは、アルツハイマー病に関連するアミロイドβの脳血管への沈着を特徴とし、アルツハイマー型認知症の大半に併発すると推定されていますが、本報告では、アミロイドβの血液を介した伝播の可能性が示唆されています。以上、御説明しました3つの報告については、資料1-2に本文全文を掲載しておりますので、適宜、御参照いただければと思います。
 続きまして、2ページです。「感染症定期報告(個別症例報告概要)」の外国症例報告一覧をまとめて掲載しております。こちらも期間は同様に、令和5年7月~8月の受理分となっております。3ページを御覧ください。2例の報告がありました。詳細の説明については割愛させていただきます。事務局からの説明は以上です。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。ただいまの説明について、水上委員から追加で御発言等があればお願いいたします。
○水上委員 感染研の水上です。今回は先ほどお話がありましたとおり、文献1のほうは、1月にドラフトが出ていたものの最終版となりますので、今回、特にコメントはいたしません。
 文献2のオズウイルスに関してですが、オルソミクソウイルス科のトゴトウイルス属に分類される新規RNAウイルスで、2018年にタカサゴキララマダニから分離されております。野生動物の血清抗体調査によって、国内に広い分布が予測されていたウイルスになりますが、世界的にはヒトでの発症や死亡事例というものは確認されておりませんでした。今回、2022年に茨城で発熱・倦怠感等を主訴として受診し、心筋炎で亡くなられた患者さんが、ウイルス学的・病理学的にオズウイルス感染症として診断されたということでの報告となっております。
 この方の臨床経過ですが、2022年初夏に、高血圧症、脂質異常症を基礎疾患に持ち、海外渡航歴のない茨城県在住の70代女性に、倦怠感、食欲低下、嘔吐、関節痛が出現し、39度の発熱が確認されております。SARS-CoV-2のPCR及び抗原検査は陰性で、肺炎での疑いで抗菌薬を処方されておりましたが、症状が悪化し、体動困難となったため再度受診し、その後の転院となっております。
 右鼠径部に飽血、ダニが噛んだときにそういったものができるのですが、飽血に近い状態の噛んだ傷が確認されたために、入院後にリケッチアの感染症の検査、SFTSの検査が実施されましたが陰性となっております。また、血液培養でも陰性でした。入院後、房室ブロックが認められまして、ペースメーカーを留置し、各種検査では心筋炎が疑われておりましたが、10日後、脈拍が安定したため、実際そのペースメーカーは抜去しております。入院20日後に意識障害が出現し、多発脳梗塞が確認され、治療継続中の入院26日目に突如、心室細動が生じ、死亡され、病理解剖が行われました。
 その後、入院時に採取された全血、血清、尿に対して、茨城県の衛生研究所において次世代シークエンサーによるメタゲノム解析が行われ、全ての検体からオズウイルスの遺伝子断片が検出されました。確認のためウイルス分離試験を行ったところ、この全血及び血清を接種したVero細胞のCPE、細胞変性効果が認められましたので、ウイルスが実際存在していることが明らかとなっております。
 また、感染研でこの培養上清を用いた電子顕微鏡観察を行ったところ、やはりウイルスが存在していること、さらに培養上清抽出核酸を用いて次世代シークエンサーを行いますと、完全長のウイルスゲノムが同定されており、分離された病原体がオズウイルスであることが確認されております。保管されていた全血、血清、尿、各種生検材料、全ての検体からこのオズウイルス遺伝子断片が検出されており、特に全血と心筋組織で高いコピー数のウイルスが検出されております。特に、in situ ハイブリダイゼーション法を用いて、心筋組織の心筋細胞においてもその核酸が検出されているという状況でした。血清を用いた抗体検査では、入院日から21日までにかけて、オズウイルスに対する特異的な抗体の上昇が確認されています。
 検査結果と病理組織所見より、本症例はオズウイルス感染により生じたウイルス性心筋炎によって死亡したオズウイルス感染症として最終的に診断されております。ただ、マダニが本当にオズウイルスを有していたかというのは不明で、本例がマダニによるものが原因かということはまだ明らかとなっておりません。
 日本国内の血清抗体調査では、西日本から東日本の一部の野生動物、ニホンザルやイノシシ、シカなどで、地域によって違いますが、高くて50%、大体20%程度の抗オズウイルス抗体がこういった動物から検出されております。これまで動物での発症というのは報告されておりませんでした。またヒトにおいても、限定的な調査ですが、狩猟者の24名の検体において2名の方が抗体陽性として見付かっております。
 一方、日本国外からは、動物及びヒトにおいて、いずれもこの血清抗体検出やウイルス検出の報告は現在までありません。ただし、米国では、近縁のバーボンウイルスで死亡例を含む5症例が報告されており、注意が必要と考えております。現時点で、節足動物媒介性感染症が疑われるような発熱等のある方の献血はできませんので、ただちに対策が必要であるとは考えられませんが、本例では血中ウイルスコピー数が比較的高く、また長期間に様々な検体ウイルスが検出されていることからも、引き続き血中ウイルス動態など、情報収集や症例の集積など、注視が必要かと考えております。
 続きまして、文献3の輸血における脳アミロイド血管症についてです。脳アミロイド血管症はアルツハイマー病と密接に関連する脳内出血の代表的な症例で、多発性の突発性脳出血と脳血管アミロイドβの沈着を特徴とし、アルツハイマー型認知症の大半に併発するとされております。
 過去の論文では、クロイツフェルト・ヤコブ病に汚染された死体由来の成長ホルモンの投与を受けた8例が、36~51歳という比較的若齢でCJDにより死亡されており、この剖検によって半数から重度の脳アミロイド血管症を発症していたことが分かっております。これにより、アミロイドβの伝播の可能性が示唆されております。また、汚染された硬膜の移植等によりましても、数十年後に脳アミロイド血管症に特徴的な突発性脳出血が発症することも報告されております。
 今回のこの文献は、スウェーデンとデンマークの献血・輸血に関する全ての電子データをまとめたデータベースであるSCANDATを用いて、レシピエントとドナーの疾患リスクの感染性について調査された結果となっております。添付されている資料では、パワーポイントのスライドとなっておりますが、JAMAのほうに9月11日付けで論文発表されております。
 対象者は、スウェーデンのデータでは1970年1月1日から2017年12月31日まで、デンマークでは1980年1月1日から2017年12月31日までの間に、赤血球輸血を受けた5~80歳の約108万9,370人のデータの解析となります。その結果、多発性突発性脳出血を発症したドナーから輸血された場合、この突発性脳出血の発症リスクは約3倍ほど高くなるということが分かりました。また、レシピエントの半数以上が輸血後10年以内という、比較的短期にこの突発性脳出血を発症しておりました。ネガティブコントロールとして、この輸血後の虚血性脳卒中を対象とした解析を行った結果、こちらに関しては特に発症リスクの増加は認められておりませんでした。
 これらの結果から、アミロイドβを介した脳アミロイド血管症の伝播を示唆しているものと考えております。この研究では、暴露後10年以内に突発性脳出血の累積発生率が増加しておりますが、ほかの研究ではアミロイドβが臨床疾患として現れるには、より長い期間が必要であるという報告があります。現時点で、この期間の違については不明であるとされております。また、解析結果は突発性脳出血に関連する輸血伝達因子の存在を示唆しておりますが、選択バイアス等の影響を受けやすい可能性もあり、更なる研究が必要であるともされております。
 また、献血後に多発性突発性脳出血を発症された献血由来の血液製剤を輸血された方は、スウェーデンのコホートでは862名、全体の0.1%、デンマークのコホートでは448名、0.1%となっており、こういった血液製剤を輸血される可能性は極めて低いと、カロリンスカ大学の主任研究者の方は伝えております。
 そういったことから、現時点では、輸血が原因でこの突発性脳出血が生じる可能性は極めて低いと結論づけております。現在、彼らは「Danish Blood Donor Study Biobank」という所を使い、実際の血液中で、この脳アミロイド血管症に関する異常タンパク質の同定が可能かということを検討していると説明しております。
 現在、このCJD又はこの類縁疾患と診断されている方、ヒト成長ホルモンの注射を受けた方、角膜・硬膜移植を受けた方の献血は制限の対象となっていますが、アルツハイマーに関しては特に記載はありません。アルツハイマー等の認知症の方については、多くは健康上の理由で問診等で除外されていると考え、リスクは極めて低いのではないかと考えております。しかし、アミロイドβの蓄積は認知症発症の数十年前からあると言われておりますし、また本邦における高齢化社会の現実を考慮し、引き続きこのグループからの情報には注視すべきかと思います。以上です。
○田野﨑委員長 詳細な御説明、どうもありがとうございました。2か月ですので限られた報告ですが、委員の皆様から、御意見などお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。濵口委員、どうぞ。
○濵口委員 太田病院の濵口です。御説明ありがとうございました。2つ目のオズウイルスについて、少しその後の動きを教えていただきたいのですが、この方は70歳の女性で、ダニにかまれた跡があったとのことでした。国内でのこれまでのデータだと、狩猟者を調べて抗体陽性者が2人いたということなのですが、この女性の方は狩猟者だったのではないのではないかと思うのですが、実際に山に近い所に住まれている方を含めて、同様のような死亡例が出たということであれば、疫学的な調査や、もう少し積極的にいろいろ調べていく必要があると思うのですが、この辺りは感染研のほうで何か動きはあるのでしょうか。情報があれば、お願いします。
○水上委員 ありがとうございます。この症例に関しては、感染研としての解析は以上となっておりますが、全国も含めて、この茨城県もそうなのですが、やはり不明熱で死亡された方については、基本的に次世代シークエンサーを用いた解析をこれから引き続き行っていく形になっており、茨城県でも、この後、不明熱の方の解析をされていて、現時点では、このオズウイルスがあったという事例は今のところありません。恐らく、全国でも特にこういった動物での感染が認められている地域等では、定期的に検査が実施され、またそういう症例が出てくれば報告が出てくるのかと注視しているところです。
○濵口委員 ありがとうございました。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。例えば、この不明熱や心筋や何かのときに、オズウイルスの検査などは、通常は一般的には余りされないのではないかと思うのですが、実際にはどういう形でされるようになるのでしょうか。
○水上委員 恐らく、今回のケースでもSFTSとかリケッチアなどが否定された後に、より詳細にいろいろな関係する、特にダニ媒介性のウイルスとかで候補となるようなものがあるかと思いますので、そういったものに絞って解析が進められていくかと思います。ただ、今回はこういう症例が出ていますので、今後は比較的トッププライオリティの所に入ってくるのではないかと思っております。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。そうしましたら、ほかの委員の先生方、何か御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、引き続き事務局におかれましては、感染症の定期報告をお願いしたいと思います。
 次の議題2、「血液製剤に関する感染症報告事例等について」に移りたいと思います。事務局より資料の説明をお願いします。
○鈴木課長補佐 事務局の鈴木です。資料2-1を御覧ください。「血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について」、こちらも同様に令和5年7月から令和5年8月までの感染症報告事例をまとめております。次の1ページは、新規及び追加報告として、輸血用血液製剤は13件、血漿分画製剤は0件でした。そのうち、輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告が1件、血漿分画製剤との因果関係が否定された報告は0件でした。因果関係が否定された報告事例を除いて、輸血用血液製剤による病原体感染症報告事例の内訳は、HBV感染が2件、HCV感染が2件、HIV感染は0件、その他は8件の細菌等です。
 続きまして、2番以降にそれぞれのウイルスについての遡及調査の結果をお示ししています。HBV及びHCV感染報告事例について、どちらも輸血後に抗体検査等が陽性であった事例はそれぞれ2件あり、そのうち献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例はどちらも0件、また、劇症化又は輸血後に死亡したとの報告を受けた事例もいずれも0件でした。このうちHBVの1例は、資料2-2にも計上されていますので、後ほど御説明いたしますが、同一献血者の次回の献血時検査において、HBVDNA陽転化が確認されたことに係る遡及調査によって、当該献血者の前回献血時の輸血用血液を供給した医療機関に献血者の陽転情報を提供したことで、当該輸血用血液を使用された患者が輸血後陽性になっていることが判明した事例です。
 4番のHBV感染報告事例はございませんので割愛します。
 5番その他の感染症事例について、5件は血小板製剤であり、そのうち当該輸血用血液の使用済みバッグを用いた無菌試験が陽性だった事例が1例ありました。報告一覧につきましては、この後の2、3ページにまとめておりますので御覧ください。
 続きまして、資料2-2を用いて御説明させていただきます。こちらは「供血者からの遡及調査の進捗状況等について」になります。次の1ページは、供血者からの遡及調査の実施状況の表となっています。HBV、HCV、HIVと並び、同じ表の中にHEVも含めた報告としています。表の一番上の右側のカラムが令和5年4月1日~令和5年9月30日までの速報値となっています。調査対象とした献血件数はHBVが724件、HCVが86件、HIVが8件、HEVは2,466件でした。そのうち調査対象としました輸血用血液製剤の本数や医療機関に情報提供を行った輸血用血液製剤の本数については記載のとおりです。このうち医薬品副作用感染症報告を行った件数というのは、先ほどの資料2-1で御説明しましたHBV1件となっております。
 続きまして、2、3ページ目につきましては、医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況を個別に羅列しております。事務局からは以上となります。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。以上につきまして、委員の皆様から御質問、御意見などがあればよろしくお願いいたします。B型肝炎の1例の方はリピーターの方で、ウインドウピリオドのときに感染したというような事例だと思いますが、この方に関しては、何かドナーに関する情報などは日本赤十字社のほうでは少し情報とかありますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤からお答えいたします。この献血者の方は、陽転の2か月前の献血血液でこの表に示されている感染が起きております。この献血者の方につきましては、陽性となった献血時に、ALTとか肝炎の値等が正常値でありまして、特に肝炎を疑うような情報もありませんでした。日赤の検査結果でもございませんでした。ですので、本人も自覚症状がなく、問診等でも特にお答えになる項目があるようなことや、そのきっかけにならなかったと考えております。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。なかなかスクリーニングしづらいということかと思います。委員の皆さんからほかに何か御意見とかありますでしょうか。細菌感染症の症例については、これから御説明よろしいですか。細菌感染症の事例は1例で、これは菌が同定されているものがありますが、これは日本赤十字社からは何か更なる情報提供などありますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 特にございませんが、細菌感染が疑われる症状を示したということで、調査をしたところ陽性だったと、そういう事例になります。
○田野﨑委員長 この事例に関しましては、幸運にも回復されたということだと思いますが、例えば、輸血をした後、すぐ担当医が気が付いてこれを止めたとか、何か適切な対応をされたから問題がなかったとか、そういう情報はありますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤です。この症例につきましても、輸血を開始して細菌感染が疑われるということで、比較的早い時間に輸血を停止して対応されておりますので、そのことが非常に重篤な症状にならないで済んだということかなと思います。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。松下委員から手が挙がっているようですので、松下委員よろしくお願いいたします。
○松下委員 松下です。B型肝炎のこの症例は、NATのすり抜けというか、NATにもウインドウ期があるということになるわけですが、後藤さんで多分いいのですけれども、現在、世界中でこういう症例はどれぐらいあるのですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 こういう症例というのは、ウインドウ期での感染ということでよろしいでしょうか。
○松下委員 ウインドウ期を捕まえられなかったというか、結果的にそうなったのですけれども。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 余り報告としてはないですが、昨年確かイギリスのSHOTで1件あったかと思います。あとは遡及調査をしっかりやっていて、こういう症例として報告しているのは、やはり日本が多いのではないかと思いますし、遡及調査をやらないと分かってこないような事例かと思いますので、余り報告としては挙がってこないタイプではないかと考えております。
○松下委員 この症例はいわゆる救済対象になるということでいいのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 患者さんから救済の申請を上げれば、この検査結果ですと恐らく救済対象になるのではないかと考えます。
○松下委員 ありがとうございます。医療機関にもその辺りの情報を適切に提供していただければと思います。以上です。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。患者さんからの感染症報告のときに、元になるドナーの残っている血液がNAT陰性であるということで、通常はそれ以上には進められないことになるのですが、今回、たまたま遡及と一緒になったので分かったということかと思うのです。かなり実際には、このようにアンダーエスティメイトしている可能性があると考えてもいいのかなと思うのですが、こちらに関しては日本赤十字社はいかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤です。献血者の方が再来して陽転している場合には、遡及調査が必ず走りますので、そこで判明してくるものかと思います。その後の献血がない場合、医療機関から輸血による感染が疑われて、報告が上がってきた場合には、その後の献血の有無を調べますが、献血がない場合は献血者の方に事後検査のお願いをして、ウインドウ期を越えた時期の血液で感染していないか、つまりその患者さんに輸血された血液が、ウインドウピリオドの間に献血されたものではないかどうかを調べるようなことをしておりますので。それに対応していただけない献血者の方も僅かにはいらっしゃいますが、なるべくそういうことがないように、分かった症例に関しては、報告いたただいた症例に関しては、きちんと調査をするように、日赤としては心掛けております。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。そうしましたら、事務局におかれましては、今後も感染症症例や遡及調査結果の報告をお願いいたします。
 次に、議題3、「各調査会の審議結果について」に移ります。まずは、資料3-1について、事務局より説明をお願いいたします。
○仲島課長補佐 事務局の仲島から、3-1について御説明いたします。資料3-1として、「令和5年度第2回献血推進調査会の審議結果について」があります。1ページの概要に沿って説明いたします。
 「令和5年度第2回献血推進調査会の審議結果(概要)」を御覧ください。1.開催日時・場所ですが、令和5年10月23日(月)14時から、こちらの会議室で行いました。2.出席者ですが、委員全員に御出席いただきました。日本赤十字社から2名、それから参考人として、これは議題2に関係するもので、広島県健康福祉局薬務課長の岡田様、株式会社イトーヨーカ堂の小山様、強矢様、花田様に御出席いただきました。本年の昭和天皇記念献血推進賞を受賞されているということで、その御報告です。
 3.議事概要です。議題1、「令和6年度の献血の推進に関する計画(案)について」御議論いただき、令和6年度の献血の推進に関する計画(案)について、前年度からの変更点、今後のスケジュール等を説明し、原案にて了承を得ました。11月27日に開催された血液事業部会において、こちらも了承されております。委員からの主な御意見ですが、地域性を踏まえた献血の受入時間について、柔軟な対応を引き続き検討いただきたいという御意見もありました。
 議題2、「自治体・企業における献血推進活動」です。広島県健康福祉局薬務課の岡田様から、広島サミット開催に備えた広島県の献血推進計画の策定の取組、後は若年層の献血の推進の取組について御説明いただきました。それから、株式会社イトーヨーカ堂の小山様から、社内の献血推進の取組について御紹介いただきました。委員からの主な意見ですが、針の太さに着目したキャンペーンということで、効果的なキャンペーンであったというような御意見があったのと、個人情報の取扱いには注意しつつも、ショッピングモールでの来店者、献血者の年代別の関係を分析することで、効果的な啓発ができるのではないかというような御意見もありました。
 議題3、「その他」です。上半期のモニタリング結果として、令和5年4月~9月までの献血に関わる実績を説明いたしました。また、「献血推進2025」に関して、基本方針とスケジュールを合わせるために、目標年度を延長し、法律、基本方針、計画・目標が一連のものとなるように整理し、来年度の第1回目の調査会において御議論いただくことを説明し、了承を得ております。本件について、1点、モニタリング結果として、目標値の結果が非常に分かりにくいという御指摘もありましたので、そこを分かりやすく説明できるように、今調整をさせていただいているところです。説明は以上です。
○田野﨑委員長 以上に関して、委員の先生方から何か御意見、コメントなどあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。献血推進、それから2025年の目標について、よろしいでしょうか。松下先生、よろしくお願いします。
○松下委員 このイトーヨーカ堂の取組は、スーパーに会場を設けて、社員だけではなくて、お客様にも献血をしてもらっているということですね。
○仲島課長補佐 事務局からお答えいたします。社員の献血というよりは、御来場いただいたお客様に献血いただいているということでした。
○松下委員 これが団体献血なのかどうかは分からないのですが、スーパーは非常に集客力がいいので、こういうものが広まるといいなと思って聞いておりました。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、次に資料3-2についてお願いいたします。
○鈴木課長補佐 事務局の鈴木です。資料3-2を用いて御説明いたします。1ページを御覧ください。概要をお示ししております。令和5年10月31日、16時~18時で開催いたしました。出席者については、こちらに記載しているとおりです。
 議事概要として、議題1は「座長代理の指名について」ということで、濵口座長より大隈委員を座長代理とする指名があり、了承されております。
 議題2、「感染症安全対策体制整備事業について」、本日も御出席いただいておりますが、水上委員より、令和4年度の成果として、国内でのアウトブレイク時に蚊媒介性ウイルスが血液中に混入するリスクへの対策として、チクングニアウイルス及びジカウイルスについて核酸検査のための国内参照品を整備し、多施設での共同測定を行ったこと等を御報告いただきました。COVID-19パンデミック収束後、社会活動の活発化に合わせてエムポックスをはじめとした新興・再興感染症の流行が確認されており、当該事業において令和5年度については、エムポックスウイルスに対する国内標準品の整備等を進める予定であることも御報告いただいております。
 議題3として、同じく感染研で行っていただいております「NATコントロールサーベイ事業について」、当日参考人として御出席いただきました手塚先生より、2022年度の成果として、血漿分画製剤の原料血漿プールのNATを実施する施設を対象に、HBV、HCV、HIV-1 NATの感度と特異性の把握を目的に、HBV、HCV、HIV-1の3つのウイルスパネルを用いたコントロールサーベイにおいて、試験の精度管理が適切に実施されていることが報告されました。
 今後は国内標準品の更新と整備についても検討を進め、2023年度は輸血用血液のNAT実施施設を対象に、新しい試験法におけるHEVも加えた4ウイルスのNATの検出感度と特異性の実情把握を目的としたコントロールサーベイを実施する計画であることも御報告いただいております。
 2ページです。議題4として、「令和4年度の血液製剤安全性確保の取組」ということで、日本赤十字社より、2022年度に医療機関から報告された輸血感染症、遡及調査、輸血副作用等について御報告いただきました。個別NAT導入以降は、輸血後の感染疑い例として医療機関から報告された件数は、年間100件以下で減少傾向が続いており、2022年は46例の報告がありました。日本赤十字社から、血小板製剤における安全対策として細菌スクリーニングの導入を進めていることも御報告いただきました。
 2022年に報告された輸血副作用は約2,600件であり、非溶血性副作用が大半を占めていたということです。非溶血性副作用の約4分の1が重篤であり、重症アレルギーや呼吸困難が占めていたということです。また、輸血時に肺水腫など重篤な症状を呈する呼吸器系での副作用であるTRALIやTACOについて、2022年は137例において評価が行われています。その結果として、2021年4月に導入された新しい評価・診断基準により、12例がTRALIと評価され、81例はTACO症例と診断されたことが御報告されています。
 委員から、細菌スクリーニングの導入により有効期限が延長するに当たり、血小板の止血に関する機能的な評価や、TRALI/TACOといった副作用の発生予防に向けて事例を解析し、チェックリスト等の必要性についても御指摘があり、今後御検討いただくこととなっております。概要は以上です。
○田野﨑委員長 委員の皆様から、御質問、コメントなどをお願いできればと思います。松下委員、どうぞ、お願いします。
○松下委員 この資料を見ていて、先ほどのHBVの感染の件で思い出したのですが、例えば問題になった血液のNATを、そこのセンターではない別のセンターでかけると陽性に出るとか、そういうことはあり得ないのでしょうか。
○田野﨑委員長 日本赤十字社から、何か答えられますか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤です。ほかのセンターで掛けたから陽性に出るとか、ほかのセンターでやると陰性に出るということはないかとは思いますが、NAT用の検体のサンプリングのときにウイルスが入るとか入らないというヒットレートの問題というのが以前からありますので、施設の問題ではなくNAT検査の特徴として、陽性に出たり出なかったりということがある可能性はあるかと存じます。以上です。
○松下委員 分かりました。サンプリングがある程度影響しているというのは分かったのですが、今は300IU/mLの低濃度検体を用いてコントロールサーベイされているということなのですが、この濃度で今後やっていて大丈夫なのか、その辺りはどうなのでしょうか。
○田野﨑委員長 こちらは、いかがでしょうか。日本赤十字社、あるいはほかの。水上委員、お願いします。
○水上委員 こちらのガイドラインのほうで、その値でまず実施していくことが規定されておりますので、そこが各メーカーも含めて感度として最低守っていく所と考えておりますので、まずはここが基準になっていくかと考えております。
○松下委員 分かりました。あくまでもコントロールサーベイなので、最低これぐらい検出できなかったら意味がないという感じですね。
○水上委員 はい、そのとおりです。
○松下委員 分かりました。
○田野﨑委員長 ほかはよろしいでしょうか。
○武田委員 武田です。議題4の所で、今予定されている細菌スクリーニングを導入し有効期限を延長するというお話で、血小板の止血に関する機能的な評価等が必要だという御指摘がありました。諸外国で、既に有効期限を延長したスクリーニングを導入されていて、その中では基本的にはこれで問題ないというエビデンスは出ている上で、日本でもこれをしっかりと検証していこうという理解でよろしいでしょうか。
○田野﨑委員長 日本赤十字社からお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤です。そのように考えていただければと思います。
○田野﨑委員長 この件に関しては、ほかはよろしいですか。そのほかはいかがでしょうか。私から議題4に関連して、輸血感染症に関しては非常にしっかりとスクリーニングなどがされていて、より安全性が高まっているということで、大体理解できるのですが。ほかのTRALIやTACOなど、これは実際には血液製剤の品質とは少し異なることに起因するものかとは思いますが、これに関連してアナフィラキシーショックも含めて、重篤に実際に死亡されている事例などは、本邦では大体どのぐらいあるのかということが、いつも余り私たちの所に情報共有として入ってきていないように思うのですが、これに関しては日本赤十字社で一緒に把握されているということでよろしいのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤です。もちろん、副作用の結果亡くなったことが否定できない症例と御報告いただいたものについては、日赤としても副作用による死亡症例ということでPMDAに報告をしております。そして、副作用については、PMDAでも死亡症例は、副作用と死亡の因果関係を全て評価している状況で、全ての症例についてPMDAのサイトで一覧表の形で報告されております。その中で、死亡症例が何例あるとか、この症例は副作用による死亡と考えられるとか、副作用によるのではなくてほかの原因で死亡されたと考えられる、というようなコメントを付けて報告されている状況ではあります。
 こちらの審議会では、そのような情報を確かに日赤として報告はしておりませんでしたが、きちんと薬機法に従った報告の結果として日赤からも出しておりますし、国のほうでもしっかり評価はされている状況ではあります。
○田野﨑委員長 そうしますと、輸血に関連して亡くなっている症例が年間何例ぐらいあるとか、肺障害が一番多いか少ないかというような形で、私も実際に拝見しておりませんが、そのように公表されているということでよろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 PMDAのサイトで全て公表されている状況です。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。水上委員、どうぞ。
○水上委員 先ほど、松下先生の御質問の回答の中で300IU/mLの話をされていたと思うのですが、あれはあくまでも今回のコントロールサーベイで100IU/mLに対して1.5倍、3倍という形で濃度を振って300IU/mLと書いているので、一応ガイドラインは100IU/mLとなっています。すみません、勘違いされているかと思い、修正させていただきます。
○松下委員 勘違いしていました。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。最後に、議題4、「その他」ですが、事務局から何かありますか。
○鈴木課長補佐 議題としては、特にありません。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。本日の議題は以上となりますが、ほかに何か御意見などあればお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。皆さんに御協力いただき、予定の時間よりかなり早く終わりましたが、事務局に議事進行を戻します。
○鈴木課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。次回の運営委員会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて、血液事業部会令和5年度第3回運営委員会を終了いたします。ありがとうございました。
(了)