第110回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 

1.日時 令和5年12月22日(金)10時00分~10時44分
 
2.場所 AP虎ノ門会議室C+Dルーム(※一部オンラインでの開催)
         (東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

3.出席委員
(公益代表委員)
○学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授 守島 基博
○明治大学法学部教授 小西 康之
○名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
○大阪大学理事・副学長 水島 郁子
○読売新聞東京本社編集委員 宮智 泉

(労働者代表委員)
○UAゼンセン労働条件局部長 柏田 達範
○全国建設労働組合総連合労働対策部長 田久 悟
○全日本海員組合中央執行委員政策局長 立川 博行
○日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長 冨髙 裕子
○日本科学エネルギー産業労働組合連合会副事務局長 永井 学
○日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 平川 達斎

(使用者代表委員)
○一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹 坂下 多身 
○東京海上ホールディングス株式会社人事部シニアマイスター 砂原 和仁
○日本通運株式会社人財戦略部次長 武知 紘子
○日本製鉄株式会社人事労政部部長 本荘 太郎
○西松建設株式会社安全環境本部安全部担当部長 最川 隆由

4.議題 
(1)労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(3)その他

5.議事
○守島部会長 皆様、おはようございます。ただいまから、第110回労災保険部会を開催したいと思います。本日の部会は、会場及びオンラインの両方で実施いたします。
 まず、出欠状況ですけれども、武林委員、二宮委員が御欠席と伺っております。それから、中野委員が11時45分頃に御退席の予定になっております。出席者は現在16名でございますけれども、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がございますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。それでは、カメラ撮影はここまでとさせて頂きたいと思います。御協力をお願いいたします。
 それでは、議題に入ります。第1の議題は「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」です。これは諮問案件ですので、まず事務局から御説明をお願いいたします。
○労災管理課長 それでは、説明をさせて頂きます。1つ目の議題は、フリーランスに関する特別加入についての諮問になります。前々回、前回で議論をして頂きまして対応案をまとめることができました。今日は、対応案を踏まえて省令事項に当たる部分について、改正案要綱を諮問させて頂きます。
 まず、諮問文に先立ちまして前回までの議論のおさらいをさせて頂こうと思いますけれども、資料1の4ページを御覧頂ければと思います。4ページ以降が前回までの御議論を踏まえた、対応案のペーパーになります。前回、概ねの御了解を頂いたものです。1点だけ、前回頂いた御意見を踏まえまして加筆したのが、5ページ目にありますけれども、特別加入団体の要件について活動の実績の具体例として、活動期間が1年以上、100名以上の会員等がいることを加筆しています。このほかにも、委員の皆様方からは今般の特別加入の対象範囲の拡大に当たりまして、特別加入制度の周知等々について御意見などを頂いております。頂いた御意見も踏まえまして、施行に向けて検討していきたいと思っております。
 それから、資料の一番最後になりますけれども、7ページ目を御覧ください。こちらは、今般の対象業務になるものを一覧でまとめております。業種全体の就業者数は、試算ベースでありますけれども、約270万人という推計をしております。その下です。業務の範囲ですけれども、前回まで対応案でまとめて頂いた対象業務を記載しております。2つ目の○の所は具体的業務の例示になりますけれども、こちらは実態調査の中で比較的割合が多いとされている業種を例示という形で列記をさせて頂いております。
 その下です。災害の状況ですけれども、前回、団体のヒアリングの中でお話のあったものから幾つかピックアップして記載をしているものです。その下、同種若しくは類似の既存の業種については、上に記載の具体的業務内容の所で列記している、例示している業務の該当する業種というものを記載しております。以上を踏まえまして今般、改正省令案要綱を諮問させて頂いているということでありまして、資料は最初に戻って頂ければと思います。
 1枚目は諮問文の鑑になりまして、2枚目からが内容になっております。まず、第一は労災保険法施行規則の一部改正になります。こちらでは、対象業務の追加について規定をしております。労災保険の特別加入の対象となる事業として、特定受託事業者に係る取引の適正化に関する法律、これがいわゆるフリーランス法になりますけれども、こちらに規定する特定受託事業者が同法に規定する業務委託事業者から同法に規定する業務委託を受けて行う事業、これを特定受託事業と定義しておりますけれども、これに加えて、又は特定受託事業者が業務委託事業者以外の者から委託を受けて行う特定受託事業と同種の事業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるものを新たに規定することとしております。注書きに記載しておりますけれども、労働基準局長が定める事項といたしましては、右にある特定受託事業、特定受託事業と同種の事業には既に特別加入可能な事業又は作業は除くものであることを規定することにしております。
 第二は、労働保険徴収法施行規則の一部改正になります。こちらでは、保険料率について規定しておりまして、今申し上げた第一の事業に係る保険料率については千分の三とすることにしております。
 次のページになりますけれども、第三で施行期日になります。この省令は、特定受託事業者に係る取引の適正化に関する法律、いわゆるフリーランス法の施行の日から施行するものとすることとしております。このフリーランス法の施行日は、まだ確定はしておりませんけれども、来年の秋頃になると想定をしているところです。御審議のほど、よろしくお願いしたいと思います。私からの説明は以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。それでは、ただいま諮問のあった件について御意見、御質問があればお受けしたいと思います。会場からの皆様に関しては挙手を、それからオンラインの方はチャットで発言希望、若しくはZoomの手を挙げる機能を使って頂いてもどちらでも構いません。よろしくお願いいたします。冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 この間の部会での議論が概ね反映されたものと受け止めております。その上で3点ほど、意見を述べたいと思います。
 まず1点目、これは従来から申し上げておりますが、安全衛生教育の徹底です。対象業務の追加に当たっては、労働災害防止のための安全教育の徹底が大前提だと考えております。特別加入した個人事業者の労働災害を未然に防止するように、政府として、論点3の災害防止措置の内容に基づき最大限の支援を行っていただくとともに、既存の特別加入団体を含めて安全教育が適切に実施されているかチェックする仕組みを整えていくことが大変重要だと考えておりますので、注力頂きたいと考えております。
 2点目ですが、特別加入制度への加入促進についてです。先日のフリーランス協会のヒアリングからは、制度の理解や周知不足に起因して特別加入制度に入りたくないというような印象をもたれている方も多かったように思います。今後、政府において職種別に労災認定され得る具体的ケースや加入するメリットなどを示して頂くことによって、そうした不安も解消されていくのではないかと考えます。広く分かりやすく、周知・広報して頂くよう改めてお願いしたいと思います。
 3点目です。特別加入の対象業種が広がることによって、本来は「労働者」として法の保護が受けられる方も「個人事業者」と扱われてしまうようなことがあってはならないとこれまでも申し上げてきたところです。引き続き、個人事業者であっても働き方の実態が「労働者」である場合には、特別加入ではなく労災制度本体に加入すべきことを、改めて周知・徹底して頂くよう強く要望したいと思います。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに、どなたか御質問。坂下委員、お願いいたします。
○坂下委員 御説明ありがとうございます。今回の諮問の内容については、これまでの議論を踏まえた内容になっていると理解しております。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに、どなたか。田久委員、お願いいたします。
○田久委員 御説明ありがとうございます。私から要望というか、今後の議論のところで、既存に類似したような特別加入団体や作業の関係もあると思いますから、そういったところの団体が組織をし始めていて、今特別加入に入れていないフリーランスを、もし現時点で扱えるという条件を満たせば、安全対策等を行っている実績もありますので、そういった点からはそういった特別加入団体も活用しながら幅広く業種を救済をしていく、拾っていく作業を是非、検討して考えて頂ければと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかにどなたか大丈夫ですか、特段の御意見がないようでしたら諮問のあった件につきましては、当部会としては妥当と認め、労働条件分科会会長宛に報告することといたしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、そのように進めさせて頂きます。労働政策審議会令第7条第7項により、部会の議決をもって分科会の議決とすることができ、同令第6条第7項により、分科会の議決をもって審議会の議決とすることができると定められております。
 また、労働条件分科会運営規程第7条におきまして、当部会の議決をもって分科会の議決とするということになっており、また、労働政策審議会運営規程第9条におきまして、分科会の議決をもって審議会の議決とすることになっております。したがいまして、当部会の議決が審議会の議決となります。
 それでは、事務局に答申案を用意して頂いておりますので、読み上げて頂くことにしたいと思います。あと、画面にも表示させて頂きます。
○労災管理課長 それでは、読み上げさせて頂きます。資料は3枚ありますけれども、3枚目がこの部会での答申文という形になります。守島部会長から労働条件分科会の荒木分科会長宛ということで、労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱についてということで、令和5年12月22日付け厚生労働省発基1122第4号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本部会は審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。「記」として、厚生労働省案は妥当と認めるとしております。
 その上で、2枚目の労働条件分科会長から本審の会長宛、それから1枚目になりますけれども、本審の会長から厚生労働大臣宛の答申ということで、それぞれ部会の答申を引用する形になっているところです。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。ただいま読み上げられた内容で、分科会長から労働政策審議会会長宛に報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛に答申を行うこととしたいと思います。既に皆さんにはお渡ししていますけれども、委員全員に答申文を後ほど事務局から送付いたします。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。次の議題は「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」です。まず、事務局から御説明をお願いいたします。
○労災保険財政数理室長 事務局から説明させて頂きます。労災保険財政数理室長をしております小此木でございます。よろしくお願いいたします。こちら、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案ですけれども、内容は労災保険料の算定の基礎となります労災保険率等の改定になります。労災保険率は、原則、3年ごとに改定していますが、前回の令和3年度は新型コロナウイルス感染症の影響が見通せないことなどから改定せず、据置きとしておりましたので、今回、6年ぶりの改定となります。
 資料2を御覧ください。初めに諮問文がありますが、まず改定の内容について説明したいと思います。資料をめくって頂きまして15ページを御覧ください。こちらが改定の内容になりますけれども、労災保険率等ということで労災保険率のほかに、特別加入保険料率の改定と労務費率の改定についても併せて改定する内容になっています。
 労災保険率の改定の説明に入る前に、労災保険率の関係法令について説明したいと思います。飛びまして資料の27ページを御覧ください。こちらで労災保険率に関する関係法令をまとめていますけれども、労災保険法で保険料について徴収法の定めによることとされていまして、徴収法では保険料は一般保険料、特別加入保険料等といったものになると分類されています。一般保険料は賃金総額に保険料率を乗じたものとしていまして、保険料率は労災保険率と雇用保険率を合わせたものとなっています。
 この労災保険率ですけれども、過去3年間の業務災害、複数業務要因災害、通勤災害、二次健康診断等給付の実績に基づき算定した費用のほかに、社会復帰促進等事業や事務費を考慮して、財政の均衡を保つことができるよう、厚生労働大臣が定めるとされています。このとき定めるものは事業の種類ごとにということになっています。定めたものが徴収法の施行規則第16条又は別表にそれぞれ規定されているところです。
 こちらの法令で定められたもの以外に、次のページに記載している「労災保険率の設定に関する基本方針」というものを定めていまして、こちらで具体的な算定内容も決めています。こちらにつきましては、前回の部会で説明した内容で本年11月27日に行政内部で決裁を取り、決定しています。この方針では、改定は原則3年ごとに行うことや基本的な算定方式、一定の激変緩和措置等を講じることを定めています。
 基本的な算定方式についてですが、資料28ページの下の図を御覧頂ければと思います。保険料の要素を保険給付とそれ以外の社会復帰促進等事業費に分けまして、保険給付を更に業務災害と通勤災害などの非業務災害分に分けています。業務災害を更に短期給付と長期給付に分けています。短期給付というのが、治療費にある療養補償給付と休業補償給付、長期給付というのは、死亡時に遺族に支払われる遺族年金など年金として長期にわたって支給するものですけれども、こちら、それぞれ短期給付につきましては被災後3年以内の給付分と、3年を超えて給付される分に、また長期給付については被災後7年以内に年金裁定される分とそれ以外の分に分けまして、短期給付の被災後3年以内の給付分と長期給付の被災後7年以内に年金裁定される分が、当該災害が発生した業種に賦課するという方法を取っていて、それ以外のものは全体で賦課するというやり方をしています。また、こちらの図には記載されていませんが、年金給付につきましては今後3年間の保険料収入で、今後3年間に発生した年金裁定者が将来にわたって受給する将来給付分も含め、年金に必要な費用を賄う充足賦課方式を採用しています。
 これを踏まえまして労災保険率を計算した結果を、資料16ページに今回の改定(案)の概要としてまとめています。16ページを御覧頂ければと思います。現在、労災保険率は54の事業の種類に分かれていまして、それを加重平均した結果ですけれども、現行は4.5/1,000となっていまして、過去3年間の給付等の実績を反映して計算した結果、現在の労災保険率から引上げとなるものが3業種、据置きとなるものが34業種、引下げとなるものが17業種となり、平均しますと0.1/1,000低下しまして4.4/1,000となります。引下げになるのは、労災事故等が減少して給付実績が減少したことが主な理由になります。また、下の所に平成10年以降の改定の経過を示しています。労働災害の減少傾向を受けまして、改定の都度、労災保険率は引き下げてきましたけれども、近年、引下げの幅は減少傾向にあるところです。また、今回の改定によりまして、保険料負担は全体で年間約116億円の軽減と見込まれているところです。
 資料17ページを御覧ください。こちらは労災保険率を構成する各要素別に見た改定の内容をまとめています。業務災害につきまして保険率、通常は業種別に異なりますけれども、ここでは平均値を小数点第2位まで記載しています。今回の改定案では、業務災害のうち、短期給付分が2.22/1,000から1.94/1,000に、長期給付分が1.18/1,000から1.08/1,000にそれぞれ低下しています。これは近年、労働災害自体の発生はちょっと横ばいの傾向にありますけれども、大きな事故や死亡災害等が減少していまして、短期給付、また新規年金受給者数が少なくなったことが理由として挙げられます。
 下の非業務災害分ですけれども、これは通勤災害と二次健康診断等給付に要する費用です。こちらにつきましては改正前と同じ0.6/1,000となっています。また、社会復帰促進等事業と事務費につきましても改定前と同じ0.9/1,000となっています。下にあります年金積立調整費用ですが、こちらは積立金の過不足を調整する部分です。現在、積立金が年金の将来受給に必要な額、責任準備金ですけれども、その額を若干上回っている。積立金が責任準備金を若干上回っている状況ですので、その上回っている部分、余剰部分ですけれども、それを今後の保険料の財源として使うということで、その分を入れています。それが今回、▲0.1となっていまして、前回は▲0.4でしたので、こちらはちょっと減少することになります。これらの要素を合計した結果が4.4/1,000ということになります。以上が全体像です。
 続きまして、個別の業種の状況について御説明いたします。資料18ページを御覧ください。こちらは54の事業の種類ごとの具体的な改定案になります。業種の右側に現行の労災保険率、続きまして改定(案)、一番右側に変化ということで増減を矢印で示しています。引上げになるのは、真ん中よりやや上にあるパルプ又は紙製造業、真ん中よりやや下にある電気機械器具製造業、下のほうにあるビルメンテナンス業、この3業種が引上げになります。引上幅はいずれも0.5/1,000となっています。
 19ページ、こちらがこの改定の詳細表です。表頭を御覧頂ければと思いますが、表頭に先ほど基本方針で説明した要素ごとのそれぞれの所要額等を記載しています。業種の右側に賃金総額を記載しています。賃金総額は保険料収納済額を基に算出していまして、それから右側に業務災害分として短期給付、長期給付、それぞれ3年以内、3年を超える部分、7年以内、7年を超える部分に分けて記載しています。短期給付3年以内分につきましては業種内で負担し、3年を超える部分は全業種で負担することになりますので、3年を超える部分の合計値をそれぞれの業種の賃金総額に応じて配分しています。そのため所要料率としては、一律短期給付の3年を超える部分としては0.4/1,000ということになります。同様に長期の7年部分についても、7年を超える部分については0.2/1,000の負担になるところです。この短期と長期を合わせた①+②と書いてある部分ですが、こちらが業務災害に係る所要料率となります。これに年金積立調整費用として、今回、0.1/1,000を引きまして非業務災害分として0.6/1,000、社会復帰促進等事業等の費用として0.9/1,000を加えたものが激変緩和前の算定料率となります。激変緩和につきましては次の資料で説明しますけれども、参考の欄に激変緩和を適用する判断となる数字を記載しています。激変緩和は救済される側と救済する側で対応が異なり、救済に必要な費用は救済される以外の業種で負担します。この欄でマイナスになっている業種が救済される業種、プラスになっている業種が救済費用を負担する業種となります。負担する率は0.1/1,000となっています。激変緩和を加味して設定料率でまるめたものが右の欄にある設定料率になります。欄外に現行料率を記載していますので、その差を引き上げ引き下げ欄に記載しています。以上が詳細表の内容です。
 続きまして、激変緩和について説明させて頂きます。資料20ページを御覧ください。こちらにまとめていますが、激変緩和につきましては従来、四角1、四角2の激変緩和をしていましたが、今回新たに、恐らく今回限りになると思っていますけれども、新型コロナウイルス感染症に関するものとして四角3を追加しています。それぞれの内容ですが、四角1は、引上げになる場合に引上幅を最大でも1/1,000、労災保険率が10/1,000未満の場合については最小設定単位である0.5/1,000とするものです。
 四角2は、激変緩和を行う前の保険料率の算定結果が、現行の労災保険率よりも高くなった場合でも、業務災害の発生度合いが下がっている場合は労災保険率を据え置くというものです。これは前回も激変緩和の対象になった場合など、算定結果よりも低い労災保険率が設定されている場合、今回も算定結果が設定の労災保険率よりも高くなっても、災害発生度合いが前回よりも下がっていれば据え置くとするものです。こちらの四角1、四角2は従来と同様、今回も激変緩和措置として適用したいと考えています。
 四角3が今回、新たに設定するものですけれども、従来の四角2の対象とならない場合であっても、給付実績としての業務災害が減っているにもかかわらず、賃金がそれ以上に減少することで労災保険率の算定結果が高くなる場合、新型コロナウイルス感染症による影響を考慮して据置きとするというものです。賃金の減少理由につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を判断することが困難なため、業務災害が減少している場合で賃金がそれ以上に減少しているものを一律対象としたいと考えています。
 以上が今回の激変緩和の内容ですが、これらの激変緩和の対象になる具体的な業種につきまして、次の21ページを御覧ください。四角1の対象が下線のないもので、これがパルプ又は紙製造業のみとなっています。四角2の対象になるのは1本線の下線が引いてある13業種です。今回新たに導入しました四角3の対象になるのは二重下線を引いてあるところで、下のほうにある交通運輸事業など4業種となります。以上が激変緩和の内容です。
 続きまして、新型コロナウイルス感染症についての説明をしたいと思います。22ページを御覧ください。前回の令和3年度におきまして、企業活動や労働災害の動向が、新型コロナウイルスの影響が見通せないということで改定せず、据え置くこととしたところです。今回、労災保険率の計算に当たりまして、新型コロナウイルスに関する災害給付の状況等がどうなったかについてまとめています。新型コロナウイルス感染症に関する労災給付は令和2年3月に初めて労災請求が行われ、直近の令和5年10月末時点で約21万件の労災決定をしているところです。労災保険率の算定基礎となるのが令和2年度から令和4年度までですので、この間に行われた新型コロナウイルス感染症に係る労災決定に要する所要額、ここで所要額というのは、年金給付につきましては将来の給付を見込んだ額としていますけれども、所要額を試算しますと短期給付で約227億円、長期給付分が約74億円、合計しまして約300億円となり、3年間で300億円ですので年間約100億円ということです。
 今回、改正する労災保険率の反映については、新型コロナウイルス感染症が本年5月に5類感染症に位置づけられたところですけれども、今後も一定の流行が続くと予想されるため、もし万が一、今後、同程度の労災給付が発生しても労災保険財政に影響を与えないリスクを見込んでいます。このリスク分は業種によって異なりますが、全業種平均しますと平均で0.05/1,000程度となっています。以上が新型コロナウイルスの影響です。ここまでが一般の保険料率についての説明です。
 続きまして、特別加入保険料率について説明したいと思います。資料23ページと24ページが第二種・第三種特別加入保険料率の改定案となっています。特別加入保険料率につきましても、基本的には一般の労災保険率と同様の考え方で、それぞれの特別加入区分ごとに過去3年間の給付実績等に基づき料率を算定しています。一人親方等の第二種特別加入につきまして25区分ございますけれども、このうち5つの区分で引下げ、20の区分で据置き、引上げになる区分はございません。引下げになる区分は資料23ページの変化の所に右下の矢印が書いてあるものですが、特1の個人タクシー、個人貨物運送業等の事業、特2の建設業の一人親方、特5の医薬品の配置販売業者、特14の金属等の加工、洋食器加工作業、特15の履物等の加工の作業の5つです。いずれも引下幅は0.1/1,000となっています。また、海外派遣労働者に係る第三種特別加入保険料率につきましては据置きとなっています。
 24ページは詳細表です。表の中で一部、「0」や「-」がありますが、こちらは新設して間もないためデータが取得できていないものや、対象労働者が少なく給付がなかったりするものです。通勤災害の欄に「-」があるものにつきましては、区分の性格上、通勤災害がないものでございます。第二種・第三種特別加入保険料率は対象数が少ない区分もありますので、従来より設定単位を、本体は、10/1,000以下については0.5単位にしていますが、こちらは全部一律、1/1,000としていまして、過去の所要料率も考慮しながら設定しているところです。また、本体給付である労災保険率を下回らないような範囲で設定しているところです。以上が特別加入保険料率に関する改定内容です。
 続きまして、労務費率の改定につきまして説明したいと思います。資料25ページ、26ページが労務費率の内容です。請負による建設事業の場合には賃金総額が正確に算定できない場合について、請負金額に一定の率を掛けて賃金総額とすることが認められていますが、この一定率を労務費率と言います。労務費率につきましては、労災保険率の改定に合わせて3年ごとに改定していますが、改定に当たりましては建設業の労務費率の実態を把握するための調査を行っていまして、その調査結果に基づき率を決定しているところです。本年5月から6月にかけて調査を実施し、その調査結果を資料26ページに掲載しています。それぞれ労務費率を使用している事業場、実際の賃金の事業場合計ということで調査の結果を掲載していますが、労務費率を使っている事業場の中位数を参考に設定していまして、これが現行の労務費率と乖離している場合については、そこを見直すことにしています。今回につきましては、資料25ページの変化のところで矢印が書いてある2つの事業、鉄道又は軌道新設事業とその他の建設事業で引下げになっています。改定の内容につきましては以上です。
 資料の最初に戻って頂き、1ページが大臣からの諮問文となっていて、2ページが今回の改正内容の要綱になっています。要綱の第一の一と二が労災保険率、三が特別加入保険料率、四が労務費率の改定になっています。第二として施行期日等がございまして、施行期日は令和6年4月1日としています。3ページ以降に労災保険率である別表第1の新旧対照表、第二種特別加入保険料率である別表第5の新旧対照表、労務費率の改定として別表第2の新旧対照表を、それぞれ要綱の別添という形で掲載しています。私からの説明は以上です。
○守島部会長 はい、ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について御質問、御意見がある方はお伺いしたいと思います。先ほどと同じですけれども、会場は挙手、オンラインの方はチャットで発言希望、若しくはZoomの手を挙げる機能で意思を示して頂ければと思います。それではよろしくお願いいたします。永井委員、お願いいたします。
○永井委員 本日示された考え方は、前回の部会で議論した基本方針や従前からの考え方に沿った形で示されたものと考えています。その上で、何点か確認したいと思っています。先ほど説明もありましたが、20ページの激変緩和措置についてです。今般、新たに設けられた3つ目の基準は新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し設定したということでしたが、本取扱いは今回限りのものとなるのかどうか確認したいと思います。2点目は、25ページの労務費率です。改定案は据置き、あるいは一部の事業において引下げとなっており、これらは調査結果に基づいて機械的に算出されたものと理解しています。資料26ページの調査結果が記載されておりますが、前回平成29年の有効回答数よりも1,500くらい減っており、10ポイントくらい回収率も低下しています。次回調査に向けて、回答率の向上、あるいは有効回答数の増加につながるよう工夫を是非お願いいたします。
 また、建設業等工事の工法の高度化に加え、円安、資材高騰の影響もあって、請負金額の高騰が続いています。こうした状況において、労務費についても適切に価格転嫁されていくことが重要だと考えます。関係各庁との連携の下、取組を推進して頂きたいと思います。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。お答えになりますか。よろしくお願いいたします。
○労災保険財政数理室長 ありがとうございます。まず激変緩和で、今回新しく追加したものが今回限りかということでございます。事務局としては、今回、コロナによる大きな影響を受けた部分について対応策ということで入れたものですので、恐らく次回以降については必要なくなるのではないかと考えておりますが、激変緩和措置については、その都度設定するという形にしておりますので、次回、また必要であればということになろうかと考えております。
 続いて労務費率について御質問頂きましたが、御指摘のとおり、ちょっと調査環境がなかなか厳しくて、どんどん調査を重ねる都度、回収数が少なくなっているという状況があります。今回についても、オンラインによる調査を導入しまして、比較的オンラインでは回答が伸びていたということもありますので、次回調査等についても、引き続きそういったことを強化していくことによって、回収率向上に努めていきたいとは考えているところです。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかにどなたか御意見、御質問のある方、いらっしゃいますでしょうか。オンラインの方も大丈夫ですかね。ありがとうございます。本議題については、また次回の部会において引き続き議論をさせて頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。その他に何かあればお伺いいたしますけれども、よろしいですか。
○最川委員 西松建設の最川です。本日の議題とは直接関係ないのですが、労働者健康安全機構の効果的な運営について要望がありまして、1つ意見を述べさせて頂きたいと思います。
 現在、労働災害データの運用、厚生労働省の安全サイト等で事故型別とか、建設業の何人とか、そういうデータはあるのですが、当社も含めましてゼネコン各社では、自分たちの労働災害、不休災害も含めて、いろんな災害分析をやっています。他社の情報等を収集して日建連や労研等で検討しているのですが、なかなかそういうビッグデータを扱える場がないのです。今、労働災害データというのは全部、厚労省は持っていると思うので、それを開示して頂いて、個人情報とかは抜いて頂いて結構なのですが、そのデータを使って有効利用できるような形で、例えばCSVファイルですとか、そういうもので開示して頂けると、安全対策というのは進んでいくかなと思います。それを要望いたします。以上です。
○労災管理課長 御指摘ありがとうございます。担当課のほうにお伝えさせて頂きたいと思います。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかに何か御意見とか御質問とかおありになる方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですね。それでは、本日予定した議題は以上ということになりますので、部会は終了したいと思います。次回の日程については、12月26日に予定されておりますので、よろしくお願いいたします。本日は以上となります。皆様方、お忙しい中、お集まり頂き、どうもありがとうございました。