2023年度第6回雇用政策研究会 議事録

日時

令和5年12月21日(木)15:00~17:00

場所

本会議会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2023-12-21 2023年度第6回雇用政策研究会
○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまより、2023年度第6回雇用政策研究会を開催いたします。
 本日は、阿部委員、大竹委員、玄田委員、清家委員、佐藤委員が御欠席となっており、齋藤委員、富士通株式会社の阿萬野様が対面での御参加、その他の委員はオンラインでの御参加となっております。
 また、今回は、外部有識者として、早稲田大学政治経済学術院の大湾教授、富士通株式会社の阿萬野様を臨時委員としてお招きしております。
 なお、堀委員が少し遅れて御参加、山田局長は、公務のため、遅れて御参加の予定です。
 それでは、議事に入らせていただきます。今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 こんにちは。よろしくお願いします。
 それでは初めに、事務局から説明をお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 事務局から説明させていただきます。
 今回でございますけれども、人的資本投資、労働市場の基盤整備といったことをテーマにさせていただいております。
 資料1を映させていただきます。
 今回、人的資本投資・労働市場の基盤整備ということで2つ大きくテーマがございます。近年の動きにつきまして1枚目にまとめさせていただきました。ピンク色の上のところがハローワーク機能と人的投資の強化といったところでございます。ハローワークのほうでございますけれども、マザーズハローワークとかわかものハローワークといった、2000年代や2010年代前半頃には、ターゲットを絞ったサービスを提供してございました。近年ですと、コロナ禍を経まして、オンライン化といったところを進めさせていただいているといった現状がございます。その間、教育訓練給付であったり求職者支援制度の創設であったりということで、訓練のほうも充実させてきたといったところが近年の動きでございます。
 下のほうでございます。青色のところでございますが、企業情報の開示を通じた労働市場政策の展開といったところでございます。法令で情報開示を求めたところがございます。大きなところで言いますと、次世代法、若者雇用促進法、女性活躍推進法などがございます。
 例えばくるみんであったり、ユースエールであったり、また、えるぼしであったりといった形で、マークによって、求職者の方がどのような企業かということが分かるような情報の示し方といったことをやってまいりましたし、近年ですと、2022年でございますけれども、男女の賃金の差異についても公表義務を課しているといった形で、様々な情報開示につきまして制度面のほうから取り組んできたところでございます。
 今回、こうした近年の動きを経まして、今後どのように労働市場の基盤整備、そして人的資本投資を進めていくかといったところを議論していただきたいと考えてございます。
 次のページに移らせていただきます。2ページ目でございます。こちら、今回のアジェンダをお示ししたものでございます。第1回の資料から抜粋したものでございます。上のほうが労働市場の基盤整備でございます。労働市場の見える化を進めていくべきといった観点で、近年ですと、先ほども申し上げましたが、男女の賃金の差異などの情報公開が行われてきたけれども、さらに職業選択に資するような情報を整備するためには今後どのような労働市場の情報を整理・活用していくべきかということを御議論していただきたいと考えております。
 また、その下でございますけれども、スキルや職務を整理し、外部労働市場におけるキャリアラダーを構築していくためにはどのような取組が必要かといった点につきましても御議論いただければと考えてございます。
 2つ目のトピックでございます下の水色のところでございますが、労働生産性向上に資する人的資本投資といったところになってございます。まず、上の企業による人的資本投資のあり方のところでございますけれども、企業側と労働者側のキャリアのすり合わせを通じた効率的・効果的な人的資本投資を行っていく必要があると考えてございます。また、企業側に対してどのようなインセンティブづけが必要なのかといったところも御議論いただきたいと考えてございます。
 2つ目のところでございます。個人による人的資本投資の促進といったところでございますけれども、個人が明確な目的がないまま能力開発を行っていくことは効率的でないというところがございますので、どのようなサポート体制が必要なのかというところにつきましても併せて御議論いただきたいと考えてございます。
 資料2につきましてはデータ集でございますので、御説明は割愛させていただきます。
 また、アナウンスだけになりますけれども、資料6~8につきましては、前回御議論いただきました新たなテクノロジーが雇用に与える影響につきまして、報告書のほうを先生方の意見を踏まえて修正いたしまして、また座長の樋口先生に御相談しまして確定しましたので、厚生労働省のホームページに併せて今回公表させていただいてございます。
 以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。資料1を見ましても、厚労省だけでもいろんな制度ができ、いろんなルールが変わったり、あるいは情報公開を求める内容も変わってきている、あるいは拡大しているということがあります。ほかの役所でも有価証券報告書でこういったものを報告するようにということもありますので、一度、何を具体的に求めているのかという、各法律ごとではなく、それを見越したものを今事務局にお願いしてつくってもらうということになっているかと思いますので、次々回ぐらいにはその整理されたものが見られるのではないかと思っております。
 それでは、資料1、2につきましては以上説明いただきましたので、その後、資料3について、労働市場情報整備推進企画室の高田室長から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○労働市場情報整備推進企画室長 労働市場情報整備推進企画室の高田と申します。私から、資料3「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」というものについて、厚生労働省の取組として御説明させていただきたいと思います。
 まず1ページを御覧ください。企業における職場情報の開示について、労働者がより適切に職業選択を行うことができるよう、また、企業にとって円滑な人材確保を図ることができるようにガイドラインを策定するということで、1つ目の■ですが、「規制改革実施計画」、そういったことを策定するなど必要な措置を講ずるとされております。
 職場情報を適切に求職者にお伝えするというのは、企業と労働者のマッチング機能の向上のためにやはり必要なことだと考えておりまして、今年度、職場情報の開示を通じた労働市場の見える化に関する調査研究ということで、外部委託して委託研究を行っておりまして、そこで、企業であるとか転職経験者、あとは民間人材サービス事業者なんかにヒアリングをしながら、どういった情報開示項目がマッチングに資するかといったところ、あるいはどういった開示の方法があるのかみたいな話を、ヒアリングをこれまで行ってきております。
 ヒアリングを通じて分かったことですけれども、求職者が求めている情報であるとか、あるいは企業が求職者さんにどういうタイミングでどういう情報を出すのかみたいなところは、やはり求めるものとか出していくものは企業さんの戦略等に応じて様々あるというところで、こういう項目を開示するのがよい、開示すべきだみたいなところを一律に定めるというところまではなかなか難しいかなとヒアリング等を行って感じてきたところです。ちょっとまた後で御説明させていただきます。
 また、ガイドラインの規制改革実施計画では開示ということで書いておりまして、開示って広く一般に示して、誰でも見えるようにするというイメージかと思うのですけれども、実際ヒアリングを聞いていますと、企業によっては、開示という形ではなくて、面接や面談とかで丁寧に職場情報を説明していくとか、そういったことをあえて取っているみたいな話もありまして、そういったこともやはり企業と求職者のマッチングのためには重要な、有効な手段かなと考えております。
 ですので、今回、名称を「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」としておりますけれども、なぜこうしたかというと、開示って、面談とか面接とかで情報提供する、広く開示するわけでなくて、その求職者に対して必要な情報を提供するといったことも含めて、提供するということによって、企業さんにとってどういう情報を提供することが効果的かみたいなところの参考資料みたいなものをつくったらどうかということで、今回そういった方法で進めさせていただきたいと考えているところです。
 具体的な内容につきまして、下の「整理すべき事項(案)」に書いてありますが、1つは、既存の法令等に規定されている開示項目や、先ほど資料1でも御説明ありましたけれども、例えば女性活躍推進法で女性労働者の割合であるとか男女の賃金の差異、あと労働施策推進法で中途採用者の割合とか、各種法令でいろいろあって、それらについて様々、いろんなところに規定がありますので、それは一定程度整理したいというところが1つ。先ほどちょっと話しましたけれども、求職者が求める情報、様々ありますので、それについてもどういう情報を求めているのか、全ては難しいかもしれないですが、ヒアリングで確認取れたところをちょっと整理したいというところです。
 もう一つは、様々な、開示に限らず、面接とか面談とか、そういったところで提供する等の方法もありますので、そういった提供のタイミングであるとか、提供に当たっての留意点みたいなところをちょっと整理することによって、企業さんにとってどのような提供することが効果的かといったところを参考情報として手引を整理していきたいと考えております。
 次、2ページですけれども、最初に申し上げました規制改革実施計画以外に、雇用政策研究会の議論の整理でも、情報の整理・充実が重要であるといった御指摘、令和4年7月にいただいておりますので、そちらのほうをちょっと掲載しております。
 続きまして3ページが、先ほど申しました調査研究の概要ということで、令和5年6月からヒアリング等を実施しているといったところでございます。
 4ページ以降に、ヒアリングの主な結果についてということで、項目ごとに少し整理させていただいております。まず、情報開示に関する基本的な考え方というところで、企業の方からは、情報開示が重要であるという話、あるいは転職者の方にとっては、企業を選ぶ際の前提条件となるから、開示していないこと自体がやはりマイナスのイメージを受けるといった意見もあったのですけれども、一方で、企業さんにとっては開示するのをあえて項目を絞って、例えば自分のキャリアを自分の企業で生かせるかみたいな項目に特化して開示してあげることによって、そういったところをまず応募の基準にしていただいた上で、細かい労働条件とかは開示をちょっと少なめにして、後で面談でしっかり説明する、戦略的にといいますか、そういった形での情報開示をしているというヒアリングでの御意見もありました。
 2つ目ですけれども、求職者が求める項目について、いろんな御意見があったのですけれども、多くの方は職場環境とか、コロナ禍でテレワークの実施の可否みたいな声が割と多かったといったところ、あるいは転職者の方だと、やはり中途採用者の割合を気にされていたといったところです。
 次に、提供に当たっての課題や対応策ということで幾つか項目別に整理させていただいております。まず、1つ目は提供単位に関する意見ということで、一般的に情報開示といった場合、職場、企業全体の情報を開示するのですけれども、特に転職される方にとってみると、自分が配属される部署がどうなのか知りたいといったところの御意見が割と多かった。あるいは、人的資本開示ということで、昨今取組進んでおりますけれども、そういった資本市場に開示するという話だと思いますが、やはり労働市場にも使えるものがあるのではないかといったような意見があったり、あるいは定量データ、定量情報についてですけれども、企業にとっては数字を出すとそれが独り歩きしてしまう、特にマイナスのイメージを持たれてしまうみたいな意見があるので、そういったところについては、解釈とか補足説明とかをしっかりすることによって開示できる、そういった御意見があったり、あるいは自社に不都合な情報についても、一般的には、ちょっと都合悪いからと隠すとかではなくて、開示したほうがいいだろうという話はあるので、しっかり補足説明、何でそういうことになっているのか、これからどういう取組を進めていくみたいなところをしっかり説明していくという企業がある一方で、余りそういったものを開示すると応募者が減ってしまうので、最初から開示するのではなくて、間口を広く取るために、最初は少し限定的にするみたいな御意見もあったりしました。
 次、5ページですけれども、正確性とか情報量に関する意見ということで、企業からは、情報量が多くなると、正確性の確保、あるいは更新が大変になる、あるいは情報量が多くて、何でもかんでも出してもなかなか見てもらえないという意見があったり、あるいは転職者の方も、余り項目が多いと詳しくは見ない、そういったお話も聞かれました。
 その次、多様な提供方法に関する意見ということで、いろんな方法があって、広く一般に開示する方法以外にも、例えば人材サービス事業者を通じて情報を提供して求職者に話をしてもらうという話であるとか、あるいは最近だと、採用選考と別にカジュアル面談というのをやっている企業が割と増えてきているみたいで、選考と別に何でも聞ける場を設けることによって、質問に答えることによって、企業のイメージであるとか企業の職場環境をお伝えするといった企業さんも割と多くあったところです。
 その次、採用サイト等に関する意見ということで、先ほど言った情報量の話とも少し関連するのですけれども、採用サイトとか求人票からIR情報とか人的資本とか労務管理のデータにリンクを張ることで情報をうまく整理できるのではないかみたいな意見があったり、あと、中小企業に関する情報提供。中小企業さん、情報開示していかないとなかなか人が集まらないという御意見、よく聞かれるのですけれども、一方で、ホームページの作成とかデータ更新、人が少ないので大変といったお話が聞かれました。
 これについて、1つ厚生労働省で行っている取組としまして、「しょくばらぼ」というページを作成しておりまして、そちらを活用していくということを考えております。「しょくばらぼ」というのはどういう仕組みかといいますと、各企業さんの情報を一覧持たせて掲載できるページでして、こちらをうまく使うことで、中小企業さんにも職場情報の開示を進めていただくことができるのではないかと思います。
 ちょっと7ページを御覧いただければと思います。こちらに少し参考で掲載しておりまして、各企業さんの情報、比較できるようなサイトになっております。現在、この「しょくばらぼ」ですけれども、若者雇用促進サイト、女性の活躍推進企業データベース、両立支援の広場といった、ほかのページに掲載されている情報を転載して一覧性を持たせているというところですが、ですので、その3サイトを利用している企業さんだけ使えるという状況になっていますので、そちらをもう少し拡充して、いろんな企業さんが使えることにするということをちょっと厚生労働省の取組として今考えております。
 1ページ戻っていただきまして、6ページを御覧ください。以上のヒアリングなんかを踏まえて手引を作成していきたいと考えております。項目案ということで御提示させていただいておりますけれども、先ほどヒアリングで整理させていただいた内容を提示させていただいております。こちらに沿って手引をつくっていくということを考えておりまして、具体的な作成の手続的に言いますと、来年1月以降、職業安定分科会で労使の関係者の皆様からも御意見をいただきながら、年度内に取りまとめていくということを考えておりますので、こちらのほう、厚生労働省の取組ということで御説明させていただきました。
 私からの説明は以上になります。
○樋口座長 ありがとうございました。何か質問ございましたら。御意見は後で聞こうと思うので。よろしいですか。
 よろしければ、今の研究会の委員でもいらっしゃいました大湾臨時委員より、資料4について説明をお願いいたします。
○大湾臨時委員 皆さん、こんにちは。それでは、資料を共有させていただきます。
 今、スライド表示されておりますでしょうか。
○雇用政策課長補佐 表示されています。
○大湾臨時委員 すみません。ちょっと咳ぜんそくの症状があるので、マスクをつけて話をさせていただきます。
 今日、一応3つトピック用意しているのですけれども、20分しかありませんので、最後のほうは一言二言のコメントになるかもしれないです。
 まず、「人的資本経営はパラダイムシフト」という話なのですけれども、今日は樋口先生をはじめ多くの労働経済学の大家と言われるような方々を前にしてお話しさせていただくので、ちょっと釈迦に説法みたいな形になるかもしれませんけれども、御容赦ください。
 この人的資本情報開示の流れの中で、私、ちょっと違和感を感じていまして、それはどうしてかというと、金融庁主導でこれまで議論が行われてきたと。やはり出てくるレポート、資料なんかを見てもかなり投資家目線での議論が非常に多いということを感じています。
 この真ん中のところに書いていますけれども、価値創造ストーリーを構築することが強調され過ぎて、実態から乖離した「絵に描いた餅」を生み出していないかという疑問を持っています。つまり、例えばDX戦略なんかも、外から引っ張ってきた人をCDOに置いて、DX戦略、あるいはデジタルリスキリングの方針を決めていく。あるいは、コンサルタントを入れて、ストーリー、いわゆる価値創造ストーリーというものを構築していく。そうすると、実際に従業員が行っていること、あるいは期待することとは乖離していろんなストーリーがつくられているのではないか。それだと非財務情報開示という観点からも、資本市場を通じた規律付けという観点からも、効果は期待できないと思います。人的資本情報開示の本当の目的は、いい人的資本政策を取り入れている企業を評価するということだと思います。最終的にいい人が採用できて、いい人材を育成して、その人たちが定着しないと企業価値は上がらないので、最終的な政策ターゲットってやはり従業員だと思うのですね。あるいは従業員になる可能性のある求職者である。そうすると重要なのは、労働市場を通じた企業行動の規律づけではないかと思っています。
 そういう点で重要になってくるのが労働市場の摩擦という概念ではないかと思っています。今日は、皆さん、労働市場の摩擦ということについてはよく御存じの方々が多いと思いますので、このスライド、スキップしたいと思いますけれども、要するに、摩擦が大きいと、離職率が下がる、労働市場はより非競争的になる。その中で企業が囲い込みをしようとする。そういった現象があるかと思います。
 これまでの定説として、人的資本投資が増えるのは労働市場の摩擦が大きいときだという考え方をお持ちの方は、労働経済学者も含めすごく多いと思うのですね。これはAcemogluとPischkeらが書いた論文にもきちんと定式化された形で入っているわけですけれども、ただ、疑問としては、労働市場の摩擦が人的資本投資のインセンティブをつくり出すのであれば、どうして労働市場の摩擦が高い日本企業の人材育成投資は欧米企業より低いのかという疑問が出てくるわけですね。
 JILPTで樋口先生を中心にやっている企業パネル調査、この第1回の回答をもとに私のほうで試算すると、民間企業全体での能力開発費はおおむね給与総額比で1.5~2%だろうと読み取っています。それに対してヨーロッパなんかで出ているレポートを見ていると、欧米主要国の能力開発費というのは大体2~5%の範囲だと考えられます。もちろん計算の仕方に若干の違いはあると思いますけれども、かなり日本は人材育成投資が低いと言われています。
 何故かということを議論したいのですけれども、労働市場の摩擦だけでは効率的な投資は生み出せないわけですね。どうしてかというと、まず、摩擦があっても雇用主はリターンをフルに享受できるわけではないので、効率的、つまり、生涯所得が最大になるように、生涯生み出す付加価値が最大になるような投資にはならない。それから、人的資本投資が競争優位につながる効果というのは、経営者がきちんと理解していない可能性があるのではないかなと。そうすると、経営者のマーケットで十分に競争が働く、あるいは長期的な競争効果が現れるまでの短い期間の中で考えると、摩擦があっても、効率的な投資が行われない状況というのは十分想定できるわけです。
 それから、コスト回収のために投資期間を長引かせる誘因が必ず働く。これはGaricanoとRayoなんかの論文にもきちんと定式化されていますけれども、彼らのモデルで言うと、企業にとって最適な人的資本投資のスピードは、割引率10%だと11年、5%だと21年というような結果を出していて、例えばすし職人を育てるのに10年かかるとか、あるいは企業で管理職になるまで20年かかるという数字と大体対応したような数字になっているかと思います。
 すると労働市場の摩擦が人的資本投資を促すというロジックは、社会的に効率的な投資は決して生み出さない。一方で、忘れてはいけないのは、摩擦があるから投資するというロジックと別に、労働経済学の中には、競争によって人的資本投資が生み出されるというロジックがベッカーの頃から議論されてきたわけですね。こちらのほうが今重要になってきているのではないかなというのが私の意見であります。
 もともとのベッカーの人的資本理論を思い出していただくと、彼のモデルでは、明示的に書かれていないものもありますけれども、3つ条件があって、この3つの条件が成り立てば人的資本投資は効率的になると。まず最初に人的資本投資内容が契約に書けるということ。2つ目が、労働市場が競争的である。3つ目が、労働者が研修期間の低賃金を受け入れられるという条件です。3番目については、給与総額の1~2%、3%というレベルの話をしていますから、3番目は既に満たされている。そうすると問題になるのは2つになるわけですね。
 これらが満たされると何が起きるかというと、高い人的資本投資を契約で約束できる企業に高い生涯賃金を求めて優秀な応募者が集まる。採用市場における競争を通じて、投資水準は効率的な水準まで上がっていくというのがベッカーのモデルの結論になるわけです。そこでは、企業は研修期間の賃金を下げて費用を回収するわけですね。
 今までは、ベッカーのモデルに対して人的資本投資を契約に書くのは無理でしょうというのがまず1点。それから、労働市場、全く競争的ではないよねということで、このベッカーのモデルが予測する効率的な人的資本投資の水準というのは非常に難しいと考えられていたわけです。
 ただ、ここでいう契約というのは明示的な契約である必要はなくて、人的資本投資内容が開示されて、企業が人的資本投資にコミットし、社員や応募者がそれを信頼できれば契約に書くのと同じ効果が期待できる。つまり、関係的契約が形成されれば、それで十分だと思います。それから、労働市場は日本だとジョブ型雇用への移行という動きもありますし、それから、人材仲介業を中心にデジタル技術が相当程度活用されるようになってきて、一昔前に比べるとかなり競争的になってきている。この傾向が続けば、つまり、ベッカーの世界に相当近づけるのではないかなと考えています。
 ですから、11ページの図にある3つのケースがあったとすると、今まで、真ん中の囲い込みロジックで、摩擦が起きれば投資が生まれるという考え方だったものが、この右側の情報開示が進んで労働市場が競争的になっていくというベッカーが予想した世界になる。つまり、この世界がだんだん現実的なものになってきている。世界の動きというのはこの右側にどんどんシフトしてきているわけですね。ですから、日本も摩擦をできるだけ下げて、採用市場における競争を通じて人的資本投資を促すというのが正しいあり方だと思います。
 そういう意味で、どんな政策が有効かというと、まずは今の人的資本情報開示の流れをさらに進めていくということですね。ですから、それに対して経営陣がコミットするように、コーポレートガバナンスコードのさらなる充実も必要だと思います。それから、今、高田室長から話がありましたように、企業の人的資本投資内容だけではなくて、職業情報を含めてどんどん可視化して、採用市場においてこういった情報を見て、求職者が比較しながら選べるようにしなければいけない。それから、競争的な労働市場の確立のためには、職とスキルの標準化というのも非常に大事になってくるので、民間企業でも、厚生労働省がつくった職業分類、これをどんどん普及させていくことが大事だと思っていて、私も、共同研究相手に人材仲介業とかありますので、そういった企業に対してはできるだけ厚生労働省の職業分類を使って情報蓄積していったらどうかということを提案しています。
 それから、摩擦を減らすためにはできるだけその中の壁を減らしていくということも重要なので、非正規の正規化とか、それから解雇コストが高いということが採用市場における制約になっておりますので、これも下げていく。要するに解雇の金銭補償ルールを明確にして、解雇コストを下げてやるということも必要だと思います。
 それから、労働仲介業にはもっとIT・R&D投資を促進させるということも必要なのではないかなと思っています。これを通じてサーチコストをどんどん下げていくということですね。共同研究しているある労働仲介業者は、今までは産業と職種を分類してマッチングしていたけれども、もっとリッチなスキル情報を使ってマッチングしたいということで、そういったスキル情報の収集ですね。要するに職務記述書と、それから、御本人の経歴情報を使ってより詳細なスキルデータベースをつくって、それを使ってマッチングしようという試みをしております。
 それから、人的資本投資のコストを下げるということも重要かと思います。厚生労働省さんから様々な助成金が出ていて、この点ではかなり政策的にサポートされていると思いますけれども、一層安価な学習プラットフォームをいろんな企業が使えるようにするということと、それから、候補者自体も、標準化されたスキル分類でどんなスキルが習得できるのかといったことを明示できるようにしていかなければいけないと思います。
 AIの影響というのはもう既にかなり議論されるということですので、このページはちょっと飛ばさせていただいて、日本企業の特殊構造ということで、私はこの4つがあると思っています。1つは、集権的人事が投資意欲を削いでいるということですね。これによって人材育成の予算権限が現場に与えられていないために、現場のニーズに応じて育成投資ができないといった点とか、2番目、自分でキャリアを形成できないので自己研鑽意欲が高まらない。3番目、中間管理職の部下育成力が弱い。これも多くの管理職が部下の育成というのが自分の主務だと考えていない方々がまだまだ多い。こういったところを変えていく必要がある。
 それから2番目が、企業特殊的人的資本の価値が低下しているのに、その蓄積を促す制度や仕組みが存続している。ですから、企業特殊的人的資本の蓄積をする上で非常に効果のある、戦後生まれた年功的処遇とか遅い昇進といったものはできるだけ排除していく、やめていくということが大事かと思います。
 3番目に、標準化されたキャリアやスキルがないために育成計画を立てにくいという問題があるので、これも職やスキルの標準化を進めていく。
 最後、CHROの権限が弱くて事業戦略と育成計画がリンクしていない。これも日本の経営の問題だと思いますので、これも企業に対しては様々な情報提供を通じて開示を図っていってもらう必要があるかと思います。
 あと、この辺、時間の関係で飛ばしたいと思いますけれども、恐らく多くの方がパーソル総研のグローバル就業実態、成長意識調査というのを御覧になっていると思いますけれども、これを見ると、日本だけが何も自己研鑽やっていないという人が5割以上いるということになっていて、ほかの国よりもはるかに高いわけですね。今後もやる予定がないという人もたくさんいる。
 ちょっと御紹介したいのが、これはアジア研究所の明日山さんが行った研究なのですけれども、ここに出ているグラフはいわゆる国際社会調査プログラムで出てきた数値で、いろんな国で、あなたの仕事は面白いですかということを聞いている。そうすると、一番右の日本を見ていただくと、面白いですかという質問に対して、「Strongly Agree」という人と「Agree」という人、つまり、自分たちの仕事が面白いと言っている人は半分ぐらいしかいない。残りの半分近くが、面白くないとか、あるいは分からないというような回答をしていて、諸外国と比べると日本だけが非常に面白くないと言っている人たちが多いわけですね。
 この仕事の面白さというのは何によって決まっているのかというのを明日山さんが分析していて、日本だけがほかの国に比べて決定要因がかなり違うと。日本では、興味・関心のマッチというのが一番大きな説明要因で、2番目が人間関係なのですね。ですから、興味・関心が持てないから面白くない、人間関係が余りよくないから面白くないと考えている人たちが多いということが分かります。これはやはり集権的人事のもとで、自分の意向とは別に会社の方針で異動させられて、関心とは合わないけれども我慢してやっているとか、あるいは人間関係よくなくても、辞めるということではなくて、あと数年たったらまた異動があるからと思ってみんな我慢してやっているということで、こういうところが仕事を面白いと感じられない、ひいては自己研鑽意欲を伸ばせない原因になっているのではないかと思います。
 このグラフも明日山さんが作成されたもので、中間管理職の部下育成力が弱いということをPIACCのデータを使って示したもので、ほかの国に比べると、部下の指導とか、部下の業務計画を立てるとか、部下に対してメンタリング、コーチング適用するといったところでかなり低い数値になっています。
 すみません。私の持ち時間はもうそろそろない感じでしょうか。
○樋口座長 もう少し大丈夫と思います。
○大湾臨時委員 今のお話に対して一応今後取り組むべき具体的な課題として、人的資本情報開示に対して、企業がもっと積極的に労働者向けに情報開示していく。それを通じて、自らの自社の労働市場での評価を高める努力をするというのが大事かと思います。そういう意味から、人事の分権化を通じて現場管理職の意識改革、社員の自己研鑽意欲向上を図っていく。そういう意味では、特に異動に関して分権的な方法をどんどん取り入れていく必要がある。この辺り、ソニーの異動施策とか、それからシスメックスのマッチングアルゴリズムによる配属辞令とか、一応御参考程度に載せましたけれども、今日この後発表される富士通さんの資料を見ても、かなり分権化という方向で動いているなということが分かります。職やスキルの標準化なども申し上げていますけれども、これがリスキリング計画を立案する上で非常に必要な、重要なデータベースの整備につながると考えています。
 先ほど申し上げたような人事制度改革、それから、経営陣の事業ビジョンを明確にして、できるだけCXO制度を導入して、事業横断的な軸で評価していくような体制を進めていく必要があるかと思います。
 最後、もう時間がないと思いますけれども、人事のDXをどう進めていくかということで、一応5点ここにまとめております。私が特に強調したいのは、データの民主化というところで、人事のDXがかなり進んでいる企業ほどデータの民主化ということを意識した取組が行われている。つまり、経営陣とか人事が自分たちの知りたいことを知るためにDX化を進めるのではなくて、社員が自分のデータを確認できる、あるいは管理職がチームの情報を活用できる、各部署が社内のタレントを検索できるようにする、これが最も重要なポイントになると思います。そのためには、社員のためにデータを活用するという原則を明確にして、組合の協力も得る。それから、現場からのニーズに沿って様々なツールをそろえていくということが大事になってくるかと思います。
 2つ目に、施策の効果を測るということが、近年、エビデンスベイスト・マネジメントという観点からも重要になってきていて、これができている企業は全ての人事施策は効果測定を前提に設計するという考え方を取り入れつつあります。それをするためには、結果指標の選択肢を広げる必要があるわけですね。評価制度だけだとどうしても主観的な評価になってしまうので、そうではなくて、エンゲージメントサーベイとか、360度フィードバック、こういったものを定期的に行うことによって、それらを使って効果測定をすることができるようになります。それから、できるだけ社内でいろんな部署でA/Bテストを行って、様々な施策の効果を検証していくということが大事になってくるかと思います。
 そろそろ時間になったのではないかと思うので、この辺でまとめに入りたいと思います。すみません、CHROの役割が非常に重要になっている点は一言ちょっとつけ加えさせていただくと、特に経営戦略と人材戦略の連動が非常に重要だと。したがって、自社の事業特性やニーズを十分に理解している人がCHROになる必要があるということと、それから、様々なスキル、経験を持った人たちが必要になってきている。
 最後は、特に最近の傾向として、HRツール、DXツールを全社的に取り入れていく上で、CHROがやはり重要な役割を果たすので、CHRO、CDOが協働して、システムインテグレーターとしての役割を担って、社内でどんなツールが必要かということを考えていくということもCHROの役割になりつつあります。
 こういったことを踏まえて、27ページに記載した内容のメッセージをお伝えしたいと思っておりました。
 すみません。時間になったと思いますので、この辺で終わりたいと思います。
○樋口座長 どうもありがとうございました。いろいろ参考にすべきことが多かったのではないかと思います。
 御質問はまた後にしていただきまして、続きまして、阿萬野臨時委員より、資料5について説明をお願いしたいと思います。
○阿萬野臨時委員 富士通株式会社の阿萬野と申します。よろしくお願いいたします。
 私の立場、Employee Success本部と書いていますが、一昨年、組織の名前を人事本部から変えました。目線が変わって、人事管理をするというところから、社員の成長を支えるといったようなことを主眼に置いたということで、わざと変えたということであります。
 後で出てきますポスティングシステム、昔でいうと社内公募制に近いですが、私もこのポジションにポスティングに応募して合格して、ここに今いるということで、こういうリアルな話を後ほど差し上げたいと思います。
 今日のテーマが労働市場の整備ということもありまして、弊社の場合、グループ、大きゅうございますので、まずはグループの中での適所適材という言葉にしていますが、最適な配置をするということと、グループの中での人材の流動化を進める。これは全て事業を成功させる、社会の公器として、我々がサステナブルに残るためにどうするのかということを考えた結果、ここに行き着いたということであります。この辺りを少し紹介させていただきたいと思います。
 まず、会社の概要でございます。社員数は12万4,000人というこの規模感でございます。グローバルにこれだけの人材がおり、国内では約8万人おります。こういった大きな人材の宝庫があるわけでして、この方々が一人一人活躍し続けられるということを目指して、人事のいろんな取組をやっているということであります。
 まず、我々の会社の存在意義というもの社内外に表明しておりますが、ここにありますとおり、我々、ITカンパニーからDXカンパニーに変わっていくという流れの中で、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことだと、こういう目指すべきことに向かって、事業を最適に変えてきたという歴史がございます。
 全てこのパーパスに立脚して経営戦略を立てていくということをやっているわけですが、今年の春に社長の時田が、中期経営計画ということで、先ほどのパーパスに向けて、まず我々が貢献すべき重点分野ということで3つのマテリアリティを掲げました。これは、世の中どこにいても、これに間違いは多分ないだろうということで、地球環境問題の解決、デジタル社会の進展、そして人々のウエルビーイングの向上、これを、社会からの要請もあり、我々として目指すべきということで、3つ掲げました。
 こういうことを旗印にしながら、左端にあります人について言うと、12万人の社員、それからアウトカム、右のほうにいくと人々のウエルビーイングということに、人に関する情報がここまで入ったことは珍しいのですけれども、いかに人材というものを、富士通のグループの中のみならず、社会全体に対してインパクトを与えていくのかということです。真ん中に、それを実現するためのリソースの戦略というのがあると、そういう理解をいただければと思います。
 いろいろと取り組む過程の中で、取りも直さず、企業でございますので、我々、社会の要請、先ほどの社会課題、これはサステナブルに改善していくという流れの中で、いろいろな事業の変遷があります。我が社、1935年に設立して以降、最初は通信事業から始まり、コンピュータに転換し、ICT、いわゆるソフトウェアとかサービスの領域にいって、昨今、3~4年前からDXへということで、事業が刻々と変わっていくということを経験してきました。
 もちろん、これに伴って、組織のありようであるとか、投資の向け方、そして、何より価値源泉である人材についても、中身が変わっていくということにならないと、サステナブルなことをお支えすることができないということから、いろいろな組織、人材、マネジメントの変革を進めてきたという流れでございます。
 これは御紹介でございますが、社会の課題解決のために、これまではどちらかというと、弊社は業種のお客様とか団体に向けて、その個社の単位で、ITを使った業務の効率化であるとか課題解決をやってきた。これを社会の課題解決をするためには、業種をまたがって、あるいは業務をまたがって我々が貢献するということで、それをUvanceというブランド名にして新しい企業価値を生んでいこうということでブランディングをしながら、今、お客様と対話をしてビジネスを進めてき始めているということであります。
 こういういろいろな事業の変遷とともに人材が変わっていかなければならないと。どのように変えてきたかというのは後ほど申し上げますが、先ほど大湾先生より、人的資本投資の話がありましたので、これも弊社のホームページを見ていただきますと、10月に、私の上司でありますCHROの平松がESG説明会の中で、人的資本経営に関する当社の考え方ということで発表しております。
 この1ページを持ってきておりますけれども、人的資本開示をすることが目的ではないということであります。人的資本経営というのは、企業価値の向上につなげるために、経営戦略と人事戦略はいかにどうつながっているのかというのを、自分たちがどう考えているかきちんとお示しする。それが社内外に伝わることで新たな人材に来てもらえることができる、中で活躍してもらえる、こういう一気通貫のナラティブな、ストーリーをもとにやってきているということが一番大事かなと思っています。その結果として、いろいろな数値、データというのを開示していくということかなと考えております。
 これは、我々、社長の時田が掲げたパーパス実現に向けて人事部門としてこういう企業にしたい、ということで、ビジョンを掲げたということであります。
 ありたい姿というのが先ほどのビジョン、あるいはパーパスの実現ということですが、大きくコンセプト、今回、人事制度を2020年から変えてきておりますけれども、どのようなものが大事なのかということで、ここに3つ、示してしておりますけれども、全ての社員が魅力的な仕事に挑戦し続けられるような状態、多様・多才な人材がグローバルにコラボレーションできるような環境をつくり、そして全ての社員が常に学び続けて成長し続けられるという環境、こういうものを実現するために、グローバルでグループワイドな人事基盤が必要であるということから、人材マネジメントの仕組みを変えたということであります。それが我が社でいうジョブ型人材マネジメントの仕組み。
 先ほど、大湾先生のスライドにジョブ型雇用という字がございましたけれども、我々、「雇用」という言葉をわざわざ使わずに、「人材マネジメント」と言っています。これは職場の誤解を回避するためでございまして、アメリカ企業のように、少しパフォーマンスが上がらなかったらクビになるのかと、そういう乱暴なことはやらないですと。もちろんできもしないので、そこを誤解のないようにしていくということで、マネジメントと言っています。
 我々の変わっていく考え方として、一つ一つの人事制度だけを変えればいいとか、等級制度から何々制度に変えればいいという、非常に断片的な人事の仕組みを変えたところで、ひずみが出てくるということであります。1つさわるとほかの施策を変えなければならないとか、あっちを変えるともうこっちは手遅れだとか、こうならないように、大変だったのですけれども、一気呵成にフルモデルチェンジをするというのが一つのみそだったかなと思います。
 まずはということで、事業戦略に基づいた組織デザイン。当たり前のように見えるのですが、これを徹底するということ。そして、一人一人のチャレンジを後押しするジョブ型の評価であり報酬の仕組みを設ける。3つ目が大事だと。これまでは人事がいろいろと権限を持って採用の数を決め、配置、配属の数字を決め、その中でやってくださいねと言っていたところから、事業部門が、それぞれの事業を伸ばすためにどうすればいいのかというのを権限移譲、リソースマネージ自体の権限を事業部門に渡していくということをやっております。そして、自律的な学びを継続的にプラットフォームとして提供する。
 こういうことの組合せを、ストーリーを持ちながら社員に見せていくということが大事と思っていまして、粒々の施策を一つ一つ見せたところで、社員の人からすると、どれを順番に自分は考えればいいのかということに迷わないようにしていくというふうにしております。
 これまでどちらかというと、従来型のマネジメントの仕方は、適材適所という言葉で、もとから事業戦略に基づいた組織ポジションデザインをやらなければいけなかったのですが、とはいえ、目の前に社員がいます。こういう人たちにいかに活躍してもらうかという人起点だったのがこれまでの感じだったと思います。ところが、企業というのは、長年においても、事業の変遷、刻々と変わっていきます。という中で、仕事のありようも変わっていくわけで、そのときに最適な組織設計、ポジションのマネジメントをやっていく中で、ここに仕事がある、ではなくそこに誰が最適なのですかという発想に切り替えたということでございます。
 こういう大きな大改革の中で、社員はどうすればいいのですかということでございます。これは人事の腕の見せ所なのですけれども、まずはということで、従来、会社の上意下達、あるいは戦略に基づいてあなた方が動く、働く従業員という、そういう言葉を使っていましたが、社員という呼びかけになるべくしていこうとしています。これがまず1つ目です。
 そして、「自律と信頼で結ばれる」と書いておりますけれども、どちらかというと上下の関係だったところから、ある意味、横並びですよと。社員と、富士通と書いていますが、企業というのがお互いそれぞれ一人一人の自律というものと、企業と社員、あるいは上司と社員、こういったものの相互の信頼というものがベースとなって、社員は企業のパーパスの実現に向けて自らの意思を持って貢献する、新しい価値を創造していく。会社は、それが実現できるように魅力的な場の提供を継続してやっていくという、この組合せで、冒頭申し上げた企業のパーパスを実現したいと、こういうものをずっと言い続けることで腹落ちをつくっていくということかなと思っています。
 この中で一番キーとなるのが、キャリアオーナーシップという言葉でございます。先ほどの自律と信頼の関係の中で、一人一人の社員が我が事として、自分のキャリア、自分の人生というものはどういうものかということを改めて考え直してもらい、では自分はどう生きていくのか、働いていくのかということをパッケージとして会社としては示していきます。その中で、本人にきちんとした選択肢がない、言ったに終わる、機会がないじゃないかと、このようにならないように、いろいろな仕掛けを講じてきているというのが今の状態でございます。
 この絵にありますとおり、入社のときには、もちろん採用面接をし、どういう仕事につきたいかというインタビューもします。希望に沿ったアサインメントから入るわけですけれども、仕事でアサインされました、配属された後、数年やりました、次のキャリアを目指したいと考えた時、2年目以降の社員は手を挙げることができるとなっています。もちろん、全員が合格するわけではありませんので、その合格に向けて皆さんが自分で学んでいく。こういうプラットフォームを会社として用意する。こういうものの繰り返しかなと思っています。
 もちろん、会社が主導で、あなたの今の能力はここで生かしてほしいという、戦略的に会社がリードしたアサインメント、これも通常どおり普通にある。この組合せで今やっているというのが現状でございます。
 こちらは、どこが出発点か分からない双六なのですけれども、これはむしろあえてこのようにしていまして、人それぞれ立ち位置が違いますし、経験値も違う、能力も違うということもありますので、まず出発点は、一番左下に、我が社の場合、移行しています。会社にパーパスがあるのと同じように、自分自身のパーパスって何ですかと、私はどうなりたいですかということがありますよねと。会社に入るときには皆さん何かアスピレーションがあってこうしたいなと思って入っていますよね。それがややもするといつの間にか、配属された後、組織の要請に基づいて仕事をするというふうに慣れてしまいますということから、もう一度、自分とは何者なのかというのを認識し直してもらう。
 もう一つは、キャリアオーナーシップと突然言われても、今まで考えたことなかったということを再認識してもらうというために、自分というのはキャリアオーナーシップをどの程度持っているだろうかと自分で測るようなことができたり、そのための壁打ちができるセッションを設けたりということもやっています。その上で、自分は何者なのか、自分はどうしたいよということを認識できれば、では次に向かってどうするのかということを認識できるので、高めようとします。そうすると、学びのプラットフォームを用意してあげると自分で学んでいく、こういう世界をつくっていきたいわけです。その過程の中で実際に挑戦をし、ポスティングに手を挙げるであるとか、上司と相談して異動の申請を出すとかいうことができるようになっているというのが今の仕組みのありようでございます。
 先ほど申しました、まずは、私は今キャリアオーナーシップをどれぐらい持ち合わせているだろうかとか、どういう心持ちに変えないといけないのだろうかということを知るためのキャリアオーナーシップ診断というのを法政大学の田中研之輔先生に監修いただきつくりました。今大体2万人ぐらいの社員がこれを活用して、自分の立ち位置を知るということをやっています。簡単なアンケートに16問答えて、自分は今どういう立ち位置にいるのかを理解することができる。これは縦軸、横軸になっています。縦軸に、上に行けば行くほど、自分についてしっかりと認識ができている。アイデンティフィケーション、アイデンティティと呼んでいますが、私が自分のことを分かっている度合いというのが縦、横は、社会がいろいろと変わっていった中で、アダプタビリティ、変化適応力というのがどういうことにあるのだろうか。これを4象限で捉えた図がこれになっています。
 企業としては、全社員の皆さんがこの未来創造フェーズにいっていただきたいのですけれども、現状どこをいるかというと、現状停滞フェーズにほとんどの人がいますというのが、弊社においても、いろいろな仕掛けを講じてでも、まだ7割ぐらいの人がここにいるということです。もちろん、この4つの箱それぞれでもう4分割ずつすると大分未来創造フェーズに近づいてはいるのですけれども、もう一押し、二押し、自分事化して、自分で手と足と頭を動かすということをやってもらうための仕掛けづくりが必要だというのが現状かなと思っています。
 これは自分一人で悶々と考えるのではなく、同世代同士で、あなたはどう考えているの、私はこう考えているのだということで、従来でいうと、キャリア研修というと、先生が外から来て、こうやって考えるんだ、というレクチャーをしていたのですけれども、そのやり方をやめました。私はどう考えている、あなたはどう考えているというのをお互い同世代で壁打ちをする。家族関係はそれぞれもちろん違いますけれども、同世代だと何となく、介護の世代だと同じような会話ができて、同じ苦しみの中でどのような会話ができるのかということをやっております。これは去年から始めていまして、今年から本格的にやっています。
 キャリアオーナーシップを高めもう一段活躍してもらいたいということで、48~53歳の方々に自分の手と足が動くように壁打ちしてもらうセッションを設けています。こういったことを地道に繰り返してやることで、少しやわらかくなり、行動につながっていくということ。
 人材育成のあり方も、階層別教育をしらみつぶしに入れていくというやり方をやめました。会社主導というよりは、社員の自律的な学び、私はこうなりたいので、このスキルが足りないなあ、この経験が足りないなあということで、自分がそのメニューを探しにいくということを会社としては支援するというようなやり方に変えていくということが1つ。
 それから、全員が一律の教育を学ぶとか、全体として底上げしましょうとか、チームで仕事するのだから、チームとして勝てばいいじゃないかという発想から、一人一人が強くならなきゃいけないよねということで、一人一人が自律的に自分で考え行動ができるという、そういう人材をつくっていくというような研修メニューにしているということであります。
 それの一例としまして、Fujitsu Learning EXperienceという名前のウェブサイトにいろいろなコンテンツそろえました。外部のコンテンツも買いながら、いろいろなことがいつでもどこでも誰でも学べるという環境を提供しているということであります。これは自律的・自発的に学ぶので、労働時間になるのですかならないのですかと、こういう問題ももちろん出てきますけれども、もちろん会社が推奨して、これは必ずやってねというものは労働時間です。でも、そうではなくて、自分が富士通を飛び出てでも学んでおきたいようなプログラムもあるわけですね。それは自律的・自発的に自分の時間の中でやってもらいたい、そういうことの使い分けをしています。
 これが最近、社内でも、新しい事業領域に向かうために、現状やっている仕事から新しい、先ほど冒頭に申し上げた富士通Uvanceという、業際、業種をまたがるようなビジネス、クロスインダストリーのビジネスをやっていくために必要なスキル、これを身につけるために、リスキリングプログラムというのを始めています。これも、今いる現状の仕事から離れてやってもらうということを去年からやり始めていることでございます。
 こういうことを自分の意思とは別に、あるいは自分の意思で行く人も、ということで、私はどうキャリアを自分で考えればいいのかということを、先ほどは同年代で対話ができるチャンスがあると言いましたが、こういった会社の支援施策の1つとして、ベテラン社員、ベテラン管理職だった人がコーディネーター、カウンセラーとして、皆さん手を挙げて自分でキャリアコンサルティングの資格を取ったりされている方々に人事部門に来ていただいて、今、1年間で1,000人ぐらいの人が相談にきてもらっているのですけれども、機能し始めているということであります。様々な施策で社員のキャリアに寄り添っている状況です。
 これはグループの中の仕組みとしてのポスティングの施策でございます。この2年3年の間に2万人ぐらいが応募して、7,000人が動いたという実績がありますけれども、私はその一人ということでありまして、特に新任で課長になるところは全部ポスティングに変えました。課長になりたいかなりたくないかでいうと、なりたくない人をわざわざ上げて不幸になるのはその部下です。御本人のみならず、その部下の家族まで含めて面倒を見るという覚悟を持った人でなければだめなわけですよねというのが我が社のマネージャー論でありまして、そうすると、覚悟持てる人が自分でやりますと、そういう人になってもらいたいねということで、今、新任の課長はみんなポスティングになっています。
 ちょうど来年の4月に向けて今面接がグループ中で行われているという状況でございます。新任課長のポストには、年間約900人から1,000人ぐらいが応募しているということになっていまして、ポジション的には600ぐらいあります。こういったことをやることで、いわゆる自分のキャリアのオポチュニティというのをつくっているということであります。
 少し長くなりましたけれども、こういったいろんな諸施策を通じまして、まずはグループの中での流動化施策を進めています。この外側で、先ほどのキャリアコーディネーターであるとかカウンセラーが外部に転身を希望する方の支援をするということをやっております。これは本当にone my oneで、いろんなチャネルを使いながら、求人情報をいただいて、本人とマッチングをするということを地道にこつこつやっているということであります。これをITカンパニーらしく、マッチングツールなんかをまずつくってやってみるとか、それをもう少し輪を広げていくであるとか、最後は社会全体でこういうのができるといいなと思っておりますが、まずは自分たちでやってみて、どこまでできるか。それをリファレンスとして広げていけるといいなあと考えているところでございます。
 企業活動をやっていくに当たりまして、何を目指してやっていくのかということはパーパスでありますが、そのパーパスに立脚した中でどのようなキャリアを築いていけばいいのかというのを、企業のみならず、社員一人一人が考えるということ。企業の役割としては、それをデータで可視化して、次の施策につなげる。あるいは次のキャリア支援につなげるということをやってまいりたいと考えているということで、まだ始まって2年ぐらいしか経っておりませんので、まだまだ反省点ばかりですけれども、皆様からの御示唆をいただけるとありがたいなと思います。よろしくお願いします。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは、皆さんの自由討議に移っていきたいと思います。どなたからでも結構ですので、挙手ボタンを押していただいて、御意見、御質問のある方はよろしくお願いいたします。
 鶴さん、どうぞ。
○鶴委員 御指名ありがとうございます。大湾先生、阿萬野さん、どうも詳細な御説明ありがとうございました。
 いろいろ日頃からもお話を聞く機会が多いので、それもあるのですけれども、お二人のお話、本当に同感するところばかりで、このような機会でお話をいただけたことというのは、私も本当にうれしく思いますし、聞いていらっしゃる、また、この後で資料も、議事録なんかを見られる方も非常に参考になるお話だったのではないかなと思いまして、大変ありがたく思います。
 まず、そういうことなので、余りお伺いしたお話に対して何かコメントがあるとかそういうことは全くなくて、ただ、お二人のお話の中で一番根本的な部分で強調する部分というのはやはりジョブ型の話ではないのかなあということで、これも私の持論でもございますので、非常に納得できている部分です。
 大湾先生のお話の中で、大変重要だなと思っているのは、これから企業の競争というのは、いかに優秀な人材を集めるかという人材獲得競争なのだと。そういうフレームワークの中でいろいろなものを考えないと、遅れをとってしまうということなのですね。そうしたときに、人的資本とか働き方の話でも、どのように情報開示にコミットするかとか、それから、阿萬野さん御説明した富士通のように、例えばいろんなそういう研修のオプションをみんなが非常に学べる仕組みをつくるとか、そういうものを提供できるかどうか、成長できる機会が提供できるかどうか、そういうことも含めて大競争しているだと。その認識がないと、もうかなり遅れをとってしまうなという意識をしっかり持たなければいけないということについて、非常に説得的にお話しいただいたと思いました。
 それから、阿萬野さんのほうは、ジョブ型雇用という言葉というのがいろいろ誤解されるということで、ジョブ型マネジメントというお言葉もお使いになっていましたけれども、富士通さんにおかれては、やはりポスティングというのを、ほかの企業に比べても非常に積極的にやられて、課長以上クラス全部ということをおっしゃっていましたけれども、これは本当にすごいなと思っています。要は、ジョブ型にしろ、根本は公募制ということで、これは私も申し上げています。一番重要な部分は、非常に先進的な取組でやっていらっしゃるということなので、お二人のお話の中でも、個の成長とか、それから自律性、キャリアの自律性、キャリアオーナーシップということがその中心になると思いますけれども、そこが今私は一番、人材の問題でも大きな焦点になっていると思います。
 最後、これは事務局の説明に対してのコメント、よろしいでしょうか。
 先ほど、求職者等への職務情報提供に当たっての手引の検討状況ということで、私は重要な取組、なかなか強制は難しいので、いろいろガイドラインをつくっていこうというお取組自体も方向性としては非常にいい話だと思うのですけれども、ちょっとお話を聞いていて思ったのは、企業にとっては余り情報開示したくないというのは、当然最初からそういうスタンスってあるわけです。だから、そういうヒアリングの中で、例えば数字が独り歩きするとか、いろんな理由をつけてお話を多分されて、それで最後は、情報開示ではなくて、実際に志望する方々と直接話すときに丁寧に話をすればいいのではないですかというようなお話をされたのだけれども、僕はもう全くそれはおかしいなと思うのですよ。
 そうやって企業側と話をするときに、どれだけ聞きたいことが相手に対して聞けるのかというのは当然あるわけですよね。だから、なるべく事前の段階で、みんなが知りたいと思っている情報を幅広く正確に客観的に示していく。もちろん企業にとってはいろいろやりにくい面はあるかもしれませんけれども、最後、それがさっきの獲得競争という話につながっていくと思うので、企業が、余り出したくない、いろいろ理屈つけている話に一々うなずいていてどうするのだと、そこが非常に違和感を持ちました。最後ちょっと強い意見になりましたけれども、もっとそこはしっかりやっていただきたいところです。これは大湾先生の理屈とも絡むわけですよ。先ほどのお話。そうやって逃げていくばっかり、理屈をつける企業は、今の人材確保競争の中で大きく遅れをとるよと、そういうことを厚労省側もしっかりヒアリングのときに言っていただきたいなと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。厚労省で、今の点、何かありますか。
○労働移動情報整備推進企画室長 ありがとうございます。おっしゃるとおり、転職者の方もやはり対峙していないこと自体がマイナスのイメージを持つというか、そういった御意見なんかもあったりしましたので、そこはちゃんと開示しないとそもそも人が集まりませんという部分はあろうかと思います。そこは手引なんかでもお示しすることもちょっと、今後検討していくということはあるかなと思います。
 一方で、例えば企業さんによってはこういうところを見てほしいみたいなところがやはりあるという話がよくありまして、その辺をしっかり打ち出したいみたいな、プラス面でそこを打ち出すためにそこを出して、ほかのところよりもそこを見てもらいたいみたいな、例えば専門職とか研究職であれば、どういう研究をしているのかみたいなところを積極的に打ち出したいみたいなお話もあったりして、それでこういう形でちょっと案として出させていただいているのですけれども、その中で、出さないといけない部分というのもあろうかと思いますし、一方で、話をしていく中でマッチングを果たしていく部分もあろうかと思います。そこはちょっと今後分科会なんかでも御意見聞きながら進めていきたいと思います。
○鶴委員 個別企業がそれぞれの自分たちが何をアピールしたいのかということで出していくというのは、もちろん、今の企業、いろんなツールを持っているわけですよ、既に。やっているところはどんどんやっているということなので、ある程度それを幅広く一定の枠組みを捉えて、こういうことをやらなきゃいけないという立場でやっているときに、個々の企業が自分たちはこういうことをアピールしたいというのは幾らでもできる場があるので、そういう話に持っていっても僕は余り意味がないと思うわけですよ。
 だから、本当にスタンスをしっかり厚労省として決めてこういう話をやらないと、ぐにゃぐにゃになってしまうなということは、今のお話を聞いていても非常に思うので、そこは本当にしっかりやっていただきたいなと思います。
○樋口座長 ありがとうございました。全く同感であります。
 それでは、山本先生、次にお願いします。
○山本委員 ありがとうございます。大変示唆に富むお話をありがとうございました。勉強になりました。
 お話に関連するところで、人的資本投資について、大湾先生と阿萬野様にお尋ねしたいと思っております。大湾先生の御説明の最初のほうで、日本企業の人的資本投資の金額が少ないと。これはJILPTの調査で能力開発費が少ないということだったり、あとはOECDなどの統計を見ても、軒並み、日本というのは人的資本投資が少ないという数字が出てきているので、それはそのとおりかもしれないのですが、ただ、その統計を見ると、なかなかOJTがカウントされにくいような形になっていて、またOECDの統計などを見ると、日本企業想定での人的資本投資を想定していないような、あるいは日本の企業が、日本の労働者が答えにくいような聞き方のものがあったりして、なかなか比較が難しいような気がしていて、本当に日本企業の人的資本投資って少ないのだろうかというのは、私、よく疑問に思っているところです。
 そこで、OJTのカウント、あるいはOJTをどう見ていくのだろうかというところについて御示唆をいただければと思っていますけれども、何となく大湾先生のお話とかを聞くと、OFF-JTに力を入れてというか、OFF-JTが人的資本投資の中心というようなスタンスなのかなとも私としては捉えてしまったのですけれども、OJTは比較的、一般スキルと特殊スキルというと特殊スキルがやりやすいというところもあって、特殊スキルというのが余り重要視されていないということもあると思うのですが、ただ、OJTにあったものが十分一般的スキルが身につくと言いますし、そうなってくると、摩擦があるなしというところの投資に関係してくるのかなと思うのですが、いずれにしても、今、OJTの重要性というのはどのように評価したらいいのかというところを併せて御見解をお聞きできればと思います。
 また、阿萬野様のお話の中でも、人材育成方針をお聞きすると、比較的、OFF-JTが大きな要素を占めているかなあというような印象を受ける一方で、人の登用というところでは、いい形でキャリアを積んでいくという意味では、キャリアを積む過程でのOJTというのが重視されているように見受けられまして、御社の中で、OFF-JT、OJTの切り分けというか、ウェイトというか、位置づけというか、その辺りをどう捉えていらっしゃるのかお聞きできればと思います。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。堀先生、宮本先生もお手を挙げていらっしゃるのですが、今の質問と関連しますか。
○宮本委員 宮本です。私はちょっと違うところです。
○樋口座長 それでは、大湾先生、お願いします。
○大湾臨時委員 山本先生、重要な点、御指摘いただき、ありがとうございました。OJTについては、山本先生もおっしゃったように、はかるのが非常に難しいというのがまずあるかと思います。それから、誰がOJTを提供するかということについても、日本の企業とアメリカの企業を比べると結構違いがあると思うのですね。日本企業の場合は、この人、新しいから面倒見てあげてみたいな感じで、いわゆる先輩格の人に指導を任せることが多い。それに対してアメリカとかだと、マネージャーが直接OJTを施すというケースが多い。その違いは押さえておく必要があるかなと思っています。
 それから、例えばOJTが大きければそれで人的資本が拡充されているかというと、そうででもないと思うのですね。というのは、職が標準化されていなければいないほど、OJTを増やさざるを得ないわけですね。同じような仕事をしていたにもかかわらず、転職すると、新しい企業では何かやり方が違う、システムが違う、プロセスが違う、誰が意思決定するかというのも違うみたいなところがあると、自然にOJTを増やさざるを得ない。でも、職やスキルが標準化されてくれば、そういった形のOJTって減らせるわけですよね。ですから、そういう意味で、私は、OJTを細かく測ること自体に余り意味がないのではないかと。つまり、本来要らない。例えば大学なんかも、昔からの規定の中で、要らない仕事がたくさんあるわけですね。これ、どうするのですかというと、要らない仕事であるにもかかわらず、やはり事務室に聞いたり、それを記入したりとか、そういったところに時間を取られる。それを教えてもらうことが本当に会社にとっての付加価値向上につながるのかというとそうでもないので、私の意見は、OJTは今の状態で測って国際比較しても余り意味がないと。OFF-JTであれば相当程度一般的な人的資本投資なので、そこに焦点合わせて計測して比較すべきではないかと思っております。
 以上です。
○樋口座長 それでは、阿萬野さん、お願いします。
○阿萬野臨時委員 御質問ありがとうございます。弊社の例で言うと、圧倒的にOJTです。皆さんにはもう釈迦に説法ですが、70 20 10というラーニングモデルございます。どこで一番人の力が伸びるのか、成長するのかというと、もう実地ですと。それが70%を占めると言われています。ラーニングで本当に自分でオフで学ぶというのは20とか10のレベルでありまして、弊社の場合、実践あるのみということであります。
 とはいえ、多くの新人と呼ばれる新卒、まだ一括採用していますので、毎年、900から1,000人ぐらいが入るわけです。その人たち、まっさらの状態から、やはり自分たちで何ができるようにするかという武器・弾薬はちゃんと投入してあげないといけないねという意味での、半年間、最初きちんと基礎教育をするというところはやりますが、それ以降は実地訓練です。職場に配属して、先ほど大湾先生おっしゃられた、いわゆる先輩社員、プロフェッショナルな人たちについて仕事をしていくということです。
 CFOに言わせると、「その期間というのは投資だよね」。いわゆるOJTは人件費もかかっていて、先輩は人を育てる時間も使っていてと、こうなるのですけれども、それを計算して何か意味があるのですかということを僕らは言っています。彼らは入社した時点で人件費はかかっていますと、もう既にということで、それを打ち返すだけのビジネス伸ばすためにやっているので、そっちを見ませんかということですよねということにしてありまして、一個一個のOJTで幾らかかっているよねというのは、見たいのは分かるのですけれども、そこに時間を費やすよりは、早く育てて、早くビジネスの前線に出して活躍してもらうほうがよほど企業にとってはいいわけですし、社会貢献になるのかなと思います。
 答えになっていますでしょうか。
○山本委員 ありがとうございます。
○樋口座長 山本先生、よろしいですか、それで。
○山本委員 大湾先生の話、そのとおりだなと思う一方で、習っているタスクにもよるのかなと思うのですね。単純なタスクで、標準化できるタスクであれば、OJTというのはほとんど必要ないだろうと。ただ、比較的複雑なタスクになってくると、OJTによって学んでいくというところは結構重要視、それこそが富士通さんの今のお話なのかなと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。特殊的というのはファームスペシフィック、企業の間での特殊性。一方において、ジョブの間での特殊性とかいうのがどうなってくるかというのはまた別の議論になってくるかなあと。企業の壁とジョブの間での壁とかいうようなことをどう考えていくかというのはもしかしたら重要なポイントになっていくかもしれないと思います。
 それでは、堀さん、いかがでしょうか。御質問お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。大湾先生、阿萬野様、大変貴重なお話、ありがとうございました。大変勉強になりました。それぞれ一つずつ質問させていただきたく存じます。
 まず、大湾先生におかれましては、先ほど鶴先生が御指摘されたところとちょっと重なっているのですけれども、11ページの、これから競争的労働市場に変わっていくというようなお話があったのですけれども、この競争的労働市場にさらされる労働者の割合というのは全体のうちどのぐらいになると見込まれておられるか、教えていただけないかと存じます。
 また、阿萬野様におかれましては、資料の20ページ、キャリアCafé、大変興味深いお取組だと思ったのですけれども、差し支えない範囲で、例えば若手とか、中高年であるとか、それぞれのグループに分かれてお話しされるということでございましたけれども、どんなことが議論になっているのか教えていただけると大変ありがたく存じます。
 以上です。
○樋口座長 それでは、大湾先生、お願いします。
○大湾臨時委員 御質問ありがとうございます。競争的市場といった場合、競争するのは、労働者ではなくて、企業なわけですね。ですから、企業が人材獲得するために競争する。もちろん、ある程度スキルを高めた、例えば古典的な職種特殊的な技能だったり、あるいは産業特殊的な技能を蓄積される方々は、そういった技能を必要とする企業の間での競争になりますので、その競争の範囲は狭まると思いますけれども、基本的には100%ですね。どの分野であろうと、企業は競争して、外部労働市場から人を採用しなければいけない、そういう意味では100%だと考えていますけれども、すみません、お答えになっているかどうか、ちょっと質問の意図を私が誤解している可能性がありますので、もし不十分であればもう一度御説明いただければと思います。
○堀委員 ありがとうございます。企業が競争するということは一応認識はしておるのですけれども、全ての労働者において企業が競争しなければいけないものだろうか、トップの労働者層だけ競争的になるのか、それとももっと広くなるのかということをちょっとお尋ねしたくて、ちょっと質問不十分だったのですけれども、お尋ねした次第です。よろしくお願いいたします。
○大湾臨時委員 それは労働市場の需給環境にもちろんよると思いますけれども、その場合にも、競争が企業間で、転職、完全に企業特殊的人的資本が積み上がって、独占的買手市場みたいな状態になることはあると思いますけれども、基本的には全ての労働者が企業間の競争の対象になるという理解で私は話をしています。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。
○樋口座長 多分、堀さんの御質問は、今日も午前中その話をしていたのですが、ハイスキルの労働者と、スキルを必要としないというのはちょっと適当な言葉ではないかもしれませんが、そういう労働者と、労働者はいろいろいるでしょうと。そうしたときに、ここで想定していくのは、多分、ハイスキルの労働者ではないかという意味ですよね。そういう人たちが全体の労働市場から見るとどれぐらい企業が競争して獲得しようというのが起こってくるのでしょうかという意味ですが、大湾先生の答えは、全部の労働者。例えばパート労働者とか、そういったところについても企業は獲得競争をしていくのだというような意味ですかね。
○大湾臨時委員 そうですね。ロースキルでも競争が起きていると。だから、外国人でも採用したいという企業が結構あるわけですよね。一番余っているのはホワイトカラーの中高年だと思うのですよ、日本の経済の中で。ですから、ホワイトカラーの中高年で特に専門的なスキルを持たない方々に関しては競争の対象にならないとすれば、それはある一定層はかなりいるかもしれないです。
○樋口座長 ありがとうございます。それでは、阿萬野さん、お願いします。
○阿萬野臨時委員 御質問ありがとうございます。私自身がプログラムの一個一個に入ったわけではもちろんないのですけれども、もともと20代、30代、40代、50代、もっというと60代も含めて、その層別に縦に割ると、それぞれで傾向として、20代前半って、大卒修士で入る人がうちはほとんどなので、ようし、頑張ろうというところから、大分一回り、二回り仕事して20代後半になると、僕、次どこへ行こうかなと思い始める。30代は、四の五の言わずに、とにかく第一線で活躍する。40代は不惑の40ですと、マネージャーになるかな、どうなのだろうと。第二のキャリアプランを考えるところ。50代、いよいよ、さあそろそろちょっと、親も年いってきたしどうしましょうという、それぞれのキャリアステージと呼んでいますけれども、そういうのがあるかなあと。これも一律ではもちろんありませんけれども、そういった人たちが仲間同士で話をする。
 例えば48~53のこういう緑のところで言うと、管理職になっている人はもういいのですね。ある程度成功者の一人ですと。そうではない、大半に残っている一般の社員、組合員レベル、こういう人たちは、私はどこへ行けばいいのだと。一方で、家族も気になりますという年代にだんだんなってくる。最初は組織が、ジョブ型って何か難しい言葉が入ったよ、どう捉えているのという、愚痴の言い合いも含めてそういうところからスタートしますよねと。これがリアルだと思います。
 では僕たち、私たちはこのままでいいのかと、人生100年とも言われているよねと。60まで逃げ切る、どうするって、こんな会話です。最初。そこから、愚痴ばかり言っていてもしようがないよねとだんだん変わってきます。本当にじゃあどう考える。こんなあり方もあるし、おれの友達はこんなことで成功しているよ。あんな道もあるみたいよ。こういう会話でだんだんポジティブに変わっていく。最後は、自分が会社人生で受けた研修の中で一番よかったと言って帰っていってくれるという、壁打ちの相手が同じ年代とキャリアステージで、言葉が同じになっていくということから見つけ出すことができるという、これが特に40代の後半から50代前半で一番よかったかなと思っています。
 20代後半は、実はエンゲージメント一番高くやってほしいところなのですが、実は下がっていくところの過程にあるというのが弊社の実情です。仕事が一回り分かり、会社の雰囲気が分かり、このままでええんかいなという人がまあまあ増えていくところです。ここで一刺しをして、じゃあ不満を言っていないで外に飛び出てみたらと。自分の組織を飛び出てみて、自分のチャレンジをすればいいではないかという話題がここで行われると、こんな世界だと思います。
○樋口座長 ありがとうございます。下の絵が男女ともに、ここは女性が3人かな、男性1人となっていますけれども、このキャリアCafeは、男女の区別というのはないのですか。
○阿萬野臨時委員 全くありません。
○樋口座長 そうすると、多分、女性と男性と悩んでいるところが違うことがありますよね。その場合も同じのに入って。
○阿萬野臨時委員 はい。女性だけが集まる気持ち悪さみたいなものを指摘されています、逆に。でも、女性ならではの悩みが、ライフイベントがありますので、それは女性が違う世代のお姉さん社員と会話できるチャンスを逆に設けたり、そういう場を設ける。そこで悩みを打ち明け、みんなでそれに対してどういう意見を交換するのかというのをウェブサイト上でコミュニティをつくったり、リアルなイベントの中に登壇してもらって共感を得るということも併せてやっているという感じですかね。
○樋口座長 キャリアCafeが幾つもあるということ。
○阿萬野臨時委員 と思っていただけると。
○樋口座長 ありがとうございます。それでは、宮本先生、お願いします。
○宮本委員 いつものように、やや周辺的な議論なので最初に御質問させていただこうと思ったのですが、ぼやぼやしていて、すみません、最後のほうになってしまいました。
 3つあって、最初の2つは、どちらかというと事務局にお伺いしたいということになります。最後の1つは、大湾先生、阿萬野様にお伺いしたほうがいいのかなと思ってございます。
 最初ですけれども、これ、何といえばいいのか、どういう形でお伺いすればいいか若干逡巡していたのですけれども、今期の雇用政策研究会の最初に、鶴先生が提起された問題にも関わるのかなと思っているのですけれども、要するに官邸とか、その他霞が関の各部局から、今、雇用政策が決定的に重要だという声が聞こえてくるのだけれども、その議論の中身と、この雇用政策研究会の議論、恐らく雇用政策研究会の専門性の高い委員の先生方からすると、余りにラフな議論なので、コメントのしようがないよというところがあるのかもしれませんけれども、他方で、その分、議論が独り歩きしてしまっているというところもあるのかなと思って、どういうことかというと、少子化対策なのですね。
 こども戦略未来方針、6月に出たわけですけれども、あそこ、丹念に読んでいくと、要するに少子化対策の肝は雇用政策だ、リスキリングだと書いてあるわけです。特に有配偶率の引上げが重要になってくる。みんなが結婚できるようにしていく。若者の所得、どう引き上げるかといったときに、リスキリングだと書いてあるのですね。恐らく人生開発支援助成金を念頭にだと思いますけれども、ただ、今のリスキリングは、会社にお金が流れる形になっているので、これから企業経由が中心になっている国の在職者への学び直し支援、今日の話としっかりと重なると思うのですけれども、働く個人が主体的に選択可能になるような、まさに大湾先生のお話と重なると思うのですけれども、5年以内を目途に効果を検証しつつ、過半が個人経由の給付になるようにしていくと宣伝してあるわけですね。
 これ、どのように受けとめればいいのだろうかということです。人材開発助成金は私も大切だと思いつつ、他方においては、これが、先ほどの堀先生のお話に引きつけて言うならば、ハイスキルにはいくだろうと。でも、ロースキルのところにこのリスキリングが流れていかないで、そうすると、少子化対策の決定打としてのリスキリングというのは、まさに地域、地方のロースキリングの領域が勝負でもあるので、ここにどう関わるのかと思っていた矢先でもあったので、この辺り、事務局として、雇用政策研究会としての受け止めのヒントをいただければと思っております。
 2番目が、事務局からのお話、非常に重要で、これを聞いていて、恐らくこれから職業紹介そのものを軸にした日本の雇用政策が、今、職業紹介事業者が3万に近くなっている状況の中で、国の役割というのは、こうした職業紹介、情報開示を促進しつつ、その質保証をしていくということ。同時に、先ほどの話に関わりますけれども、もっと多様な人が仕事を見つけられる。例えば若干うつぎみで、午後でないと元気にならないとか、いろんな障害があるという場合を含めて、マッチングのヒントを得ることができるような情報開示。そういう意味では哲学が必要で、これは先ほどの鶴先生のお話をふむふむと聞いていたのですけれども、やはりそこは哲学を持って強く、まさに老若男女が活躍し得る条件提供のための情報開示を求めていかなければならないのではないかということです。
 そういう意味で、ちょっとお伺いしたいのですけれども、「しょくばらぼ」、例えばポータルサイトのような形で、職業紹介の事業者を束ね、その情報の多角化と質保証をしていくというのは決定的に重要だと思うのですけれども、これに3万になる事業者はどれぐらいカバーできているかということと、もう一つは、さっきのロースキリングです。無料職業紹介事業が1,000件ぐらいになっていると思いますけれども、これって国の労働部局とはちょっと微妙な緊張関係にあることは承知の上で、無料職業紹介事業のポータルサイトでくくっていくということになると、国と地方の関係というのもちゃんと役割分担ができて、少しいいとこ同士の協調になっていくのかなあと思ったのですけれども、その辺り、実態としてまずいかがというところでお話を伺えればと思います。
 3番目に、大湾先生、阿萬野様への質問ということで、ちょっと重なるので阿萬野様にお伺いしたほうがいいのかなと思っております。素人目にも非常に啓発的に面白くお伺いできました。その上で、ジョブ型雇用といったときに、先ほど、鶴先生とはまさに一致しているというお話でしたけれども、門外漢でもあるということもあって、どのように定義しておられるのか。特にJILPTの濱口さんが、ジョブ型雇用が成果主義と一緒になっているみたいなコメントありましたけれども、まさにその成果主義をくぐってきた富士通であるからこそ、それと区別されたジョブ型雇用。
 もう一つは、ポスティングと言ったときに、何か、いかにも素人的な比喩で申し訳ないのですけれども、吊るしの服を無理やり着るというのではなくて、かつ、従来のメンバーシップ型雇用のように、人に完全にオーダーメイドで服をつくるというようなのでもなくて、ある種セミオーダー的な形で調整の局面というのがあるのかなと思うのですね。希望だとか資質において。この調整の局面、つまり、一応ジョブという形でモデルが提示してあるのだけれども、いざそれを羽織るとなると、肩幅だとか袖口だとか、いろいろ調整していくみたいな、その局面というのはどのようにこなされているのかということと、それから、評価。まさに成果主義とはちょっと違うといったときに、評価はどんな形でなされていくのか、この辺り、お伺いできればと思いました。
 以上です。すみません、長くなりまして。
○樋口座長 ありがとうございました。まず1点、雇用政策研究会としてのポジションというのをどう考えるかというような御質問で、これは私のほうから答えたほうがいいのかなと思います。
 出された事例として、少子化対策ということで、リスキリングの重要性というような話というのが出ていましたが、これに限らず、必ずしも内閣府、あるいは官邸のほうから言われたことが理論的にどうかということと、EBPMの視点から見てどうかというような疑問を持つことがしばしばあるのではないかと思います。
 その点については、ここがおかしいとかいうような指摘方法もあるかと思いますが、私のできればスタンスとして、むしろEBPMとか、論理的にこうつながっているというような、そこをむしろ内閣府、あるいは官邸から言われたものとは独立して、やはりこの研究会として考えていくべきではないかと思います。もちろん、コンシステントなものというのも多々あるかと思いますが、もし何かおかしいことがあったとすれば、そこについては独自に考えていくというようなことが必要だと思いますが、鶴さん、どうでしょう。
○鶴委員 結構だと思います。なんかここはちょっと変だよねと思って、ここでやっている議論というのは相当幅広く雇用政策に関わることを隅から隅まで毎回議論しているので、その中で、官邸ないしそういうところでやっている議論、急にぽっと出てきた議論というのは、我々の目から見て、これはどうなのだろうかということを感じた場合は、その関連の議論として、やはり問題提起というのをしていくということは、私はすごく自然なことだと思うのですね。雇用政策研究会として。なので、それを事前に排除したり、こういう議論をするのはやめましょうとかそういうことではなくて、もちろんそういうことも当然雇用政策研究会としてはアジェンダの中で議論していると、こういうことにも触れざるを得ないよねというのは幾らでもあると思うのですよ。そういうところはもっと我々は自由な立場から、委員同士でもけんけんがくがく議論したらいいと思いますし、事務局ともそういう議論、しっかり議論するというのは、私はこの研究会の健全的なあり方としてはすごく大事なことだと思いますし、樋口座長の今のお話も全面的に賛成です。
○樋口座長 ありがとうございました。それでは、そういうスタンスを少なくとも私は持っているので、皆さんからまた御意見いただければと思います。事務局もまた事務局の立場があるでしょうから、そこら辺については十分に相談してということになるかと思います。
 続きまして情報開示についての哲学、フィロソフィとして、やはりそれに強い意見を持っていかないと、当然、鶴さんの言葉ではないですけれども、企業としては情報を開示するということを嫌うというような面があるかと思いますが、何のために情報開示するのか、そして何をするのか、どこまで最低限してもらって、これ以上については企業から独自に開示していけばいいというようなことをすり合わせしていく必要があるかなと思いますが、ちょっと質問に対してお答えいただけますか。
○労働移動情報整備推進企画室長 ありがとうございます。まず、職場情報開示、あるいは提供についての哲学ということなのですけれども、やはり目的は企業と求職者をしっかりマッチングさせていくことかなあと思いますし、例えば開示しても誤解を与えるようなこと、あるいは間違った情報とかいうものはあってはならないことかと思いますので、その辺しっかり正確な情報、あるいは正確に理解してもらえるような情報の出し方みたいなところ、あるいはその提供。開示しないにしても、誤解を招くような言い方をしないとか、その辺りについてはメッセージとして出せるところかなと思っていまして、今後の議論かと思いますけれども、そこはちょっと示していけないかなということは考えております。
 「しょくばらぼ」についてちょっと御質問あったかと思うのですけれども、「しょくばらぼ」、現状、10万企業ぐらい情報が入っているという状況になっておりまして、先ほどちょっと申しましたけれども、主要3サイトという女性活躍、若者支援、両立支援の3サイトから取ってきているので、誰でも入れるというか、その3サイトに入れた企業が載るという形で、使い勝手が必ずしもよくないかなというところもありますので、そこは改善して、もっと活用できるようにというところは厚生労働省としては課題かなと考えておりますので、そこは進めていきたいと考えております。
 あと、無料職業紹介の話なのですけれども、そちらについては、すみません、実態はちょっと存じ上げていなくてお答えできないところもあるのですけれども、今、民間との関係で言いますと、民間との情報を共有して、例えば必要なデータを出していくみたいなところで少し話は進めておりますので、その辺りの中で取組を進めていきたいかなと思っております。
 以上です。
○樋口座長 よろしいですか。
 ありがとうございます。情報開示の目的として、まさに誰もがそこにアクセスすることによって、逆に、いいかげんな情報、間違った情報を出していったらそれをチェックできるというようなことがあるわけですね。個別にやると、本当にそうだったのかというチェックの機能をもたらすことができないということで、入ったら話と大分違うじゃないかというようなことって、入らないと分からないというところもあるかと思いますので、それをどうするかというところは基本になると思います。
 それでは、阿萬野様、ジョブ型雇用のところ。
○阿萬野臨時委員 御質問ありがとうございます。何点かあったかと思いますが、まず冒頭、ジョブ型の定義とは何ということと、昔やっていた成果主義とは何か違うのかとか、その辺りの話で言いますと、よくも悪くも成果主義の富士通と言われまして、90年代前半に、これはどちらかというと、年功序列とか、長時間、要は働いた時間によって報酬の払い方に関して一石を投じたというのが出発点だったのですね。そのときに、残念ながら、階級、昇格の仕組みとか教育の仕方とかいうのは全然変わっていなかった。一部、報酬の払い方を成果に基づいて払いますといったことだけだったので、中途半端だったのですよね、残念ながら。それをいろいろとモディファイしながらやってきたのですけれども、そのときは全てがうまくいったわけではなかったということでありまして、その話と少し、ジョブ型というのはもっとブロードな話かなと思っています。
 これはどこから来ているのかというと、やはり最初に申し上げた、会社、企業としてどうありたいのかというところから来ているのだろうと。我々は何者ぞと、何を生業にするのだというところから、社会課題解決する会社なのだと改めて言いましょうと。皆さん、どこの企業もそうだと思うのですが、我々はテクノロジーを使って、そういうことをしていく会社なのだと。では社会課題って何というのは、時代、あるいは年によって全然変わってきますし、今は、明日はとなると、変わっていきますよねと。社会の要請が変わっていく。そうすると、お客様、企業も変わっていかねばならない。こういうときにジョブというのはどんどん変わっていきます。事業というのは変わっていくので、そうすると、ジョブも変わっていきます。そのジョブを起点にしているということだと理解していただければと思いまして、パフォーマンスができないならクビにすると、そういう話ではありませんということでございます。
 これはだから、パーパスドリブン経営と、社長の時田が言っているのもそういうところに立脚して、仕事をベースに物事が成り立つ。なので、人事の仕組みも変えないと、会社のやりたいことと人をマネージするやり方が異なることになるので、そこをそろえていったということでのジョブ型だと理解しています。
 それから、ポスティングの話で、吊るした服を着るのではなくてという話がありましたが、どちらかというと、服というのがもしポジションだとすると、自分で好きな服探してと言っているのであって、オーダーメイドでつくるということはしません。企業というのは、服はそれぞれ、こういう服が必要なのだと、ビジネスによってですね、というふうにつくっておくので、どの服を着にいくのは本人が選べるというふうにしたということでありまして、もちろんそこにフィット全部するかというと、しないこともありますねと。ポスティングに合格するためにはこのスキルを持っていなければいけないという入学方式なのか、最後、100%このスーツに合う体になっているねという卒業方式なのかという問題はありますけれども、100%、最初から合うやつなんていませんと。そこはディベロップをちゃんとするのですと。ジョブ型の人材マネジメントになったら人を育てないのではないかとか言いますけれども、そんなことはないわけです。そこも勘違いを払拭していかねばならないということだと思っています。
 最後、評価のところですが、今日ちょっと事前にお見せできなかったので、1枚だけスライドがあるのですが、この評価の仕組みも、どちらかというと、今までは報酬を決めるための指標みたいな感じだけだったかなと。達成したら何ぼという感じでボーナスの水準なんかも決まっていました。それを、我々、この人事の仕組みを変えたのはパーパスの実現のためだと何回も申し上げておりますが、それときちんとコネクトしておかないとまずいよねということであります。
 この表が全社員に説明しているものですが、立脚点としては、左上の富士通、企業としてのパーパスを目指したいこと、それぞれがこのパーパスの実現のためになし遂げたい。組織として、上のほうにいきますが、それぞれの組織が構成されていて、その組織でありたい姿に結びついていきますと、これが会社側の理屈です。
 一方で、社員は一人一人自分のパーパスというのを掲げましょうと言いました。そうすると、どうありたいかということで、自分のそのための成長ビジョンというものを持っていますと。これを上司と部下の対話、これは1 on 1カンバセーションとかいろんな言い方をしていますが、1 on 1のミーティングで詰めていきます。組織はここまで何々をやりたいということ、私はここまで成長したい、このすり合わせを一生懸命します。これを対話でやっていくという評価の仕組みにしていまして、では何を評価するのかというのがこの真ん中でありまして、組織がこうありたいという3年後の姿、ここに向かってあなたのミッションをこうしたいし、こうしてほしいし、僕はこういうふうになし遂げたいという会話の結果、出した大きなインパクトと我々呼んでいます。そのビジョン達成のために本人が出したインパクト、貢献度合いというものと、そこに至るまでのビヘイビア、どんな行動があなたはできたのか、その前段として、あなたは何を学び、成長できたのかということの3つを評価するということで、最後、レイティングを決めるというふうにしています。
 全て、パーパスからスタートして、こういう評価につなげ、これが次の仕事のアサインメント、例えば昇格だとか報酬とかいうものに結びつく、こういうタレントマネジメント全体につなげていくという仕組みに全体を見せるように変えていきましたということで、単純に何%、何円達成したから幾らですという感じにはしない。そうすると近視眼的になりますし、物すごくスモールな目標になってしまいますということになりますので、そこを変えたということであります。
○樋口座長 ありがとうございます。JILPTのほうでもいろいろ研究をやっていまして、ジョブも変わるということもあるのですが、ジョブの中でタスク、何を具体的にやるかというのが、技術革新とかそういうのによって変わっていくのではないかということで、今それを研究しているというところです。
 では、黒田さん、お願いします。
○黒田委員 ありがとうございます。早稲田大学の黒田です。
 大湾先生、阿萬野様、本日は本当にありがとうございます。大変勉強になりました。
 お二人とも大部な資料をつくっていただいたのに、時間の関係で一部しかお聞きできなかったのが残念でしたが、資料を後で拝見し直しながら勉強させていただきたいと思います。
 大湾先生と阿萬野様に1点ずつ質問させていただきたいのですが、大湾先生の25ページの資料で、「データの民主化」という言葉があったかと思います。非常に興味深い言葉とお聞きしていて思ったのですが、もう少し具体的に教えていただければと思います。というのは、1番の個人情報の管理というところとも関係すると思うのですけれども、そことのトレードオフという問題もあるのか、どういったイメージでこの民主化というのを推進していくと、よりキャリアデベロップメントにも寄与するのかというところをお伺いしたいと思います。
 それから、阿萬野様のお話で、ポスティング制度のところの、25ページになりますでしょうか。こちらで応募人数と合格人数の「日本の27%の従業員が」とか「11%の従業員が」と書いてあったところについての質問です。グローバル共通のマネジメントにシフトチェンジされたと前段のほうでおっしゃっていたと思うのですが、傾向として、こういったポスティングに手を挙げるのはキャリアオーナーシップの認識がビハインドである日本人は、どうしても手を挙げるということができず途上の段階なのか、それとも結構日本人が頑張って手を挙げていて、もうグローバルに負けていないという感じなのか、教えていただければと思います。
 それに関連しますが、日本人は奥ゆかしく手を挙げる人が少ないいのではないかというイメージがあるのですが、同じ日本人でも男女で比較すると、女性がどうしても控えめになるところがあるのではないかなと思っていまして、女性の幹部を今後増やしていくという場合、こういった手挙げ制度は、少し背中を押してあげなければいけないような方々がちゅうちょするといった傾向があるのか、あるいは全くそんな心配はないのか、教えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 ありがとうございます。ちょっと時間の関係で、簡単な答えになって恐縮ですが、大湾先生、よろしくお願いします。
○大湾臨時委員 具体的にはタレントマネジメントシステムのことをお話ししていまして、10年ぐらい前から少しずつ、企業がタレントマネジメントシステムというのを導入していますけれども、最初の頃は、タレントマネジメントシステム、入れたはいいけれども、中に入れるものがないという状態が結構どこの企業でも見られたのですね。ただ、最近、ここ数年、どんどんタレントマネジメントシステムの中にデータを入れてきている。そうすると、自分のスキルがどのように会社に認定されているかというような情報もタレントマネジメントシステムの中の自分の情報として見られるようにした企業もありますし、それから、管理職が特に見たいというのは、部下のエンゲージメントがどう変わっているか。ですから、エンゲージメントが下がっているというところの集団があれば、管理職はそれを改善するには何が必要かということを考えないといけないわけですね。そういったものを見られるようにする。それから、あとは、富士通さんのポスティングのように、ある程度、いろいろな異動の意思決定が分権化するに従って、実際にその人たちを受け入れる人たちは、社内のどこに自分たちの欲しい人材がいるかということを特定できなければいけないので、それを検索できるようにしたりすることが必要になってきている。そういった現状ですね。企業さんとの話の中で、こういった変化が起きているということを私は感じたのでここに書きました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。それでは、阿萬野さん。
○阿萬野臨時委員 阿萬野です。
 まず、ポスティングの数ですね。我々からすると、当初の予測よりは多くなってきているという感じです。もうちょっと控えめかなと思ったのですけれども、やはり結構宣伝しました。キャリアオーナーシップは大事だとさんざん言いましたし、失敗は1回とかでなくて、何回でもチャレンジできるともなっていますし、そういう意味ではやりやすくなっていると思います。手が挙げやすくなっているということがあります。若い人が、2年目、3年目から管理職に手を挙げる人もいます。というようなチャレンジができるようになっているので、これがもう少し増えてほしいなと思っています。今、27と言っているのは、3割にはいってほしいなという感じで今私の上司とは話をしています。これは今日本のと書いていますが、グローバルポスティングというもう少しワイドな、地域をまたがるポスティングの仕組みもありまして、海外の人が日本のポジション、日本の人が海外でのポジションも応募できる、こういう仕組みも始めましたので、これがまだまだ100人規模という感じなので、どんどん増やしていきたいなと思っています。
 それから、2つ目の奥ゆかしさの話で言いますと、我々も心配していました。自分で手挙げる女性が減るのではないかと思いましたけれども、先ほど申し上げた新任の課長さんに応募するときに、女性の割合が、今までの上司推薦のときよりも手挙げのほうが、女性の手挙げる人の数が増えました。これはめちゃめちゃうれしかったです。そのために何やるかというと、もともと啓発活動とかキャリアに関してこう考えるのですよという、こういうプログラムを何本か用意するとか、これも壁打ちのメンタリングシステムを入れるであるとか、他者のメンターとなってくれる女性の社員と会話をするとか、そういった仕掛けを講じてきたことで、自分でキャリアを築いていいのだと、築けるのだと自信を持つ女性が増えたのは確かかなと思っています。まだまだ少ないですけれども。もともと社員の数が少ないので。男性、女性の割合が全体で8:2ぐらいの感じですので、これをもっと増やしていきたいなと、母集団を増やすともう少し手挙げる人が増えるかなという期待をしております。
○樋口座長 ありがとうございました。そうしましたら、恐縮ですが、3人の先生が今手を挙げていらっしゃいますので、一緒に、まず神吉先生から、そして荒木先生、それで齋藤先生、お願いします。
○神吉委員 本当に興味深い御報告で、伺いことはたくさんあるのですけれども、時間もありますので、1点だけ阿萬野さんに伺いたく思いました。
 今もお話にありましたポスティング制度では、アサインされたポジションにいつまでいられるのでしょうか。というのは、これだけ大企業でいらっしゃると、人気のあるポジションに就いたら動きたくない、自分はすごくやりがいを感じているのでずっと続けたい。でも、刻々とジョブやタスクが変わるのであれば、最初にアサインされたときには最適でも、周囲が思うほど成果が上がらないとか、そういった状況も出てくるかもしれないと思います。一方で、不人気のポジションで、余り手を挙げる人がいない場合に、ある程度仕方なくというか、会社の都合で人事異動ということもあるでしょうが、希望を重視するというスタンスだと、その希望と会社側の考える適材適所とミスマッチがあったときにどのように対処されていくのだろうかという点を伺いたく思いました。
 私からはその1点だけです。
○樋口座長 ありがとうございます。では、荒木先生、お願いします。
○荒木委員 私もたくさんあったのですけれども、1点に絞りますと、阿萬野様から現状停滞フェーズにいる方が7割はいるというお話をお聞きしたところです。富士通さんのように、大変革新的な人事制度をとっておられる企業において、なお7割の方が現状停滞フェーズにいるという中で、新しい制度を取り入れられておりますけれども、決して人材マネジメントで即解雇ということではないということだったのですけれども、同時に転身制度という話もされました。この7割の方については企業が望んでいる方向に積極的な行動をとらないという方がどうしても出てくると思うのですけれども、それに対して、この転身制度というものでうまく対応できるのか。アメリカであれば解雇は自由で、解雇に正当事由は必要ありませんから、これは解雇ということで解決できるのですが、そうではない、アメリカ以外、世界中どこでも正当事由が必要なのですけれども、そういう中で、なかなかそういう方向に対応できないような方について、新しい制度がうまく対応できる見通しがどういうものか、お伺いしたいと思いました。
○樋口座長 では、齋藤先生。
○齋藤委員 ありがとうございます。私も1点に絞ります。
 阿萬野さんにお聞きしたいのですが、フルモデルチェンジ、つまり、複雑に絡み合った制度を1つだけ変えるのではなくて、一気に全て変えたということで、その際って非常に移行コストが大きくなると思うのですが、それをどのように実現したのかなと。例えば労働組合で労使協議等で話し合ったとか、そういうことがございましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○樋口座長 それでは、阿萬野さんに集中して恐縮ですが。
○阿萬野臨時委員 興味を持っていただいてありがとうございます。
 まず、ジョブマッチの話で、ポスティング後どうなるかということですが、これで仕事をやって、すぐに、いや、これちょっと違ったなというケースも実はあります。そういうケースはまた手挙がります。自分で次のオポチュニティを探すこともできます。
 ただし、それがセルフィッシュな感じではないようにしないといけないというのがすごく大事なところでして、責任感を持ってちゃんと全うするということが同時に求められる、これがプロであると、仕事の流儀だというのは忘れてはいけないというのは、今再度すり込み始めているというところでありまして、立つ鳥後を濁しまくって出ていくなんてあり得ないよねという話でございまして、こういうのはきちんとやってもらう。
 一回応募して合格したところに2年しかいられませんとか、そんなルールはございません。これも事業とか仕事がどんどん変わっていきます。タスクも含めて。そうすると、では次は私どう生きていくのかなというのはもうみんな常に考えておいてねということでありまして、会社の要請として事業がなくなる可能性もあるわけですから、常に常に、次を次をと考えてくださいというお願いをしているということであります。
 全て個人の自律だけで企業が成り立つかというとそんなやさしいものではないと思っておりまして、そのすり合わせが物すごく大事だと思います。なので、ジョブというのは誰が決めるのだというと、私は、そこでやりたいというのは本人が最後決めますが、ジョブのアサインメント、ジョブそのものは企業が生きていくために決めるということだと思っています。
 2つ目です。70%の停滞フェーズと。停滞フェーズというのが余りにも全員ローパフォーマーかみたいな感じでもし捉えられているとすると、全然そんなことはございませんで、次のネクストの自分のキャリアに向けてどう考えているかということでありまして、全員がローパフォーマーで転身してほしいという人ではありませんと。そんな会社だったらもう会社つぶれていると思いますので、先ほど少し言いましたが、この現状停滞フェーズをさらに4分割すると、その右上に7割ぐらいいますという感じですので、もう一押しということです。会社がキャリアオーナーシップと言い始めてから3年ですかね、やっとそこまで来たという感じでございまして、ほかの企業さんだともっと左下にいるのではないかなと思われます。これはもう地道な活動と仕掛けが非連続的にあることで啓発活動をしていくということかなと。
 それから、転身の仕組みは設けております。事業が突然なくなることもあります。それから、仕事が少しずつなくなっていくケースもあります。そのときに、あなたの仕事はここで終わってしまうので、あなたの次のキャリアは自分で考えてほしいと上司がコミュニケーションを常日頃からとっておいてくれとお願いをしています。解雇ではありません。その中で本人が、そろそろ自分の仕事なくなっていくのねと。では自分はポスティング、手を挙げなければいけないという準備ができる。その中で教育を自分で受けたり、次のオポチュニティー探したり昔の先輩をたどったりということで、自分でオポチュニティを探しにいく。それが外もありにするということで、いろいろな支援金も渡しながら。この支援金の仕組みというのは2007年ぐらいからあります。自分で手を挙げる。決して非自発的ではない。自発的に私は外に出て頑張りますというための支援が先ほどのキャリアコーディネーターとかキャリアカウンセラー、こういうことでございます。
 それから3つ目、労働組合とはもう集中的に議論しました。ジョブ型雇用と言った瞬間にシャットアウトされましたし、何を言っているんだぐらいの感じからスタートして、いやいや、そういうことではないのですということをひもといていきながら、適所適材で、みんながいつも活躍できる、成長し続けられる土壌をつくるのですということをお互い理解し合えるまで、彼らは従業員の代表なので、別の組織ではなくて、従業員が腹落ちできるように、彼ら自身が伝えてもらえるようなコミュニケーションをずっと続けたということでは時間を費やしました。なので、管理職を先にやって、2年後に組合員に導入したと、こういうプロセスでございます。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 まだ議論は尽きないかと思いますが、時間も過ぎておりますので、本日の委員会はここまでとしたいと思います。御発表いただきました先生方、どうもありがとうございました。
 それでは、次回以降のスケジュールについて、事務局から説明をお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。1点お知らせでございますが、資料1の1枚目で少し誤記載がありましたので、直したものを、後日ホームページでアップロードさせていただきます。
 次回の開催日時につきましては、事前に委員の先生方に御案内しておりますが、2月5日、月曜日15時から17時に第7回を開催予定です。よろしくお願いいたします。
○樋口座長 それでは、本日は以上といたします。皆様、よいお年をお迎えください。どうもありがとうございました。