第197回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和5年9月22日(金)14:00~16:00

場所

会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)
傍聴会場
厚生労働省 雇用環境・均等局大会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館13階公園側)

議事

議事内容
2023-9-22 労働政策審議会職業安定分科会(第197回)
○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第197回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
 皆様方、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 議事に先立ちまして、職業分科会に新たに労働者代表委員といたしまして、日本基幹産業労働組合連合会事務局長の石橋学委員が就任されておられます。本日は御欠席とのことですので、次回以降に御出席の際に改めて一言御挨拶をいただければと思います。
 本日の委員の御出欠の状況ですけれども、公益代表の堀委員、労働者代表の小倉委員、平山委員、石橋委員、使用者代表の小野委員が御欠席と伺っております。
 事務局では國分首席職業指導官が公務で途中退席の予定です。
 カメラ撮影がありましたら、ここまでとさせていただきます。
 本日の分科会は、Zoomによるオンラインと会場での開催となります。オンラインでの発言方法等につきましては、事前に事務局からお送りしております「職業安定分科会の開催・参加方法について」に沿って御操作いただきますようお願いいたします。
 では、議事に入ります。議題1は「2022年度の評価及び2023年度目標の設定について」です。事務局から説明をお願いします。
○吉田雇用政策課長 議題1につきまして、雇用政策課長、吉田のほうから資料を御説明いたします。
 議題1、政策評価です。まず、2022年度評価について御説明いたします。昨年9月29日の本分科会で2022年度の目標が設定され、本年2月27日にその中間評価を行いました。そして、本日が年度全体の評価ということになります。
 資料1に基づき説明いたします。資料1ですが、全部で14の指標がございます。1つ目が「ハローワークにおける職業紹介・人材確保等」、2つ目が「成長分野等への人材移動」、3つ目が「高齢者・外国人の就労促進」という3つの柱で14項目を整理しています。
 なお、2022年度評価に係る資料につきましては、概要の抄訳や項目の統合など、分かりやすさの観点から、2021年度までの資料と比較して簡素化を図っております。
 1つ目「ハローワークにおける職業紹介・人材確保等」について。ページの1を御覧ください。1から8の項目ごとに、左から2020年度、2021年度の実績、中央に2022年度の目標、そして2022年度中間実績、一番右の列に2022年度実績を記載してございます。2022年度実績の欄に記載がありますとおり、項目の1、2、3、5、7におきまして目標が未達成という結果となっております。ただし、このうちマル5とマル7につきましては、昨年度実績は上回るという結果になっております。
 各項目について詳細を御説明いたします。3ページ目をお開きください。項目の1、ハローワーク求職者の就職率及びマル3、ハローワークにおける正社員の就職件数でございます。こちらについては、それぞれ26.7%、49万1400件ということで、目標を下回る結果となりました。
 2つ目のポツに要因の分析がございます。まず、就職率でございますが、就職率の分母である新規求職申込件数につきましては、おおむね横ばいの傾向でありましたが、他方、分子である就職件数につきましては、求職者において新型コロナウイルス感染症の見通しが不透明な中、求職に対し慎重な姿勢や、再就職のタイミングを伺う傾向があったことから伸び悩み、結果として就職率が目標達成に至りませんでした。また、正社員の就職件数についても同様の説明が成り立つと思います。
 今後につきまして、3つ目のポツです。オンラインサービスの利便性の周知などにより、ハローワーク利用者層の増加を図ります。併せて、事業所訪問や求人開拓を行い、求職者ニーズの高い求人の確保に取り組むとともに、求職者が応募しやすい条件設定や求人票の記載内容の充実に向けた助言・指導を行うなど、求人充足サービスの推進を通じて適切にマッチングを図るということでございます。
 続きまして、項目2、人材確保対策コーナー設置ハローワークにおける人材不足分野の充足数であります。実績は14万9666人と目標を下回る結果となっております。
 要因につきましてですが、これは項目1で述べた状況に加えまして、特に介護、看護、保育など一部の業種において、感染へのリスク懸念等から、事業所説明会や職場見学会等が十分実施できなかったことが要因であると考えられます。
 今後につきまして、3つ目のポツですが、求人者に対する求人条件の緩和への助言・指導、オンラインを活用した就職支援セミナーや面接会などに加えて、都道府県や業界団体と連携した業界の理解促進・魅力発信のためのイベントなどにより、マッチング機会の拡充を図ってまいります。
 続きまして、4ページ下、マル4、マザーズハローワーク事業であります。こちらは重点支援対象者の就職率を目標としておりますが、目標を達成するという結果になっております。
 要因につきましては、担当者制によるきめ細かな職業相談・職業紹介を行ったこと、仕事と子育てが両立しやすい求人の確保が進んだことなどが考えられます。
 引き続きオンラインを活用した就職セミナーや就職相談を実施するとともに、子育て中の女性などが仕事と子育ての両立を図りやすい求人の確保の実施に向けて取り組んでまいります。
 続きまして、5ページ目、マル5、雇用保険受給者の早期再就職の割合であります。こちらは32.9%と目標を下回る結果となりましたが、前年度実績からは0.4%ptの改善を果たしております。
 要因につきましては、項目1で述べたものと同様、新型コロナウイルス感染症の見通しが不透明な中、応募する求人を厳選する、あるいは再就職のタイミングを見る傾向があったことが考えられます。
 今後につきましても同様に、求職者ニーズの高い職種・業種等で重点的に求人開拓を実施するとともに、オンラインでの就職支援セミナーや職業相談等を通じ求職者の状況に応じたきめ細かな支援を行ってまいります。
 項目の6、就職氷河期世代専門窓口における支援対象者の正社員就職率であります。こちらは59.4%と目標を上回る結果となりました。
 要因としては、就職氷河期世代限定、あるいは就職氷河期世代歓迎の求人の積極的な確保や、各種イベントについて他機関との連携、オンラインの活用など、地域の実情に合った取組を果たしたことが考えられます。引き続き求職者のニーズを踏まえた取組を実施してまいります。
 6ページに参りまして、項目マル7、求職者支援制度による職業訓練の就職率です。こちらは基礎コース、実践コース、2つございますが、いずれも目標を下回っております。
 要因につきましては、項目1と同様に、コロナ禍において求職者が求職に対し慎重な姿勢を取るなど、求職活動期間の長期化の動きが見られたことが考えられます。
 今後につきましては、2023年度から給付金の支給要件の緩和などの制度改正を行ったところであります。また、訓練開始前から訓練終了後まで一貫した担当者制による個別・伴走型の就職支援を実施し、求人部門と職業訓練部門の連携により、求人者・求職者のマッチング促進を図ってまいります。
 マル8、生活保護受給者等就労自立促進事業の支援対象者の就職率です。こちらは就職率68.7%と目標を上回りました。
 要因としては、地方公共団体へのハローワークの常設窓口の設置や定期的な巡回相談の実施により、ワンストップ型の支援体制を整備したことが考えられます。
 今後とも地方公共団体と連携しながら就労支援に取り組んでまいります。
 7ページに参りまして、2つ目の柱「成長分野等への人材移動」であります。項目9、10、11と3つございまして、一番右の列、2022年度実績を御覧いただくと、項目の9と11は目標達成、10は目標未達成という結果になっております。
 各項目につきまして、8ページを御覧ください。マル9、労働移動支援助成金による再就職者に係る早期再就職割合は81.5%と目標を上回っております。
 要因としては、再就職者のうち早期再就職に比較的有利である45歳未満の方の割合が比較的高かったことや、45歳以上の方について76%が早期再就職を果たしていたということが考えられます。
 項目の10、労働移支援助成金による再就職者のうち、雇用形態がフルタイム労働者である方の割合であります。こちらは60%と目標を下回る結果となっております。
 要因につきましては、母数である再就職者の半数を占める45歳以上の方について、フルタイムでの転職が比較的多いとされている同業種間での転職が、2022年度は26%と前年度及び前々年度に比べて低かったことが考えられます。
 マル9、マル10につきましては希望する働き方が実現できるよう、引き続き再就職に向けた支援と助成金の活用の周知に取り組んでまいります。
 項目のマル11、産業雇用安定センターによる出向・移籍の成立率であります。こちらの成立率は74.8%と目標を上回る結果となっております。
 要因としては、コロナ禍において雇用維持の手段として在籍型出向などが多く活用されたことが考えられます。引き続き積極的な企業訪問等を通じて円滑な出向・移籍の実現に取り組んでまいります。
 最後の柱「高齢者・外国人の就労促進」であります。指標としては12、13、14の3つございます。一番右の列を御覧いただきますと、まずマル12、生涯現役支援窓口でのチーム支援による就職率につきましては、おおむね60歳から64歳層で87.9%、65歳以上で83.7%とそれぞれ目標を達成しております。
 マル13、シルバー人材センターにおける会員の就業数につきましては、6315万9063人日と目標を下回っております。
 14番、外国人につきましては、定住外国人等につきましては1万763件と目標を未達成、留学生については3,002件と目標を達成しております。
 10ページ以降で分析がございます。12の生涯現役支援窓口につきましてですが、ハローワーク全体の新規求職申込件数につきましては、柱の1でも申し述べましたように、おおむね横ばいでありましたが、高年齢求職者については増加の傾向が見られました。そのため、生涯現役支援窓口全体の実績も堅調に推移したものと考えております。引き続き支援チームによるきめ細かな職業相談・職業紹介や職業生活の再設計に係る就労支援等に取り組んでまいります。
 13番、シルバー人材センターにおける会員の就業数です。資料11ページとなります。こちらにつきましては、目標を下回った結果となっておりますが、要因として、シルバー人材センターの会員数が減少傾向にあることに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、会員である高年齢者が就業を控えたということが考えられます。対策につきましては、引き続き広報活動の強化を進めるとともに、オンラインシステムの整備を行ってまいります。また、介護分野において会員の就業機会を創出する事業の実施など、会員数の増加を図り、会員のニーズに対応した多様な就業先の確保に取り組んでまいります。
 最後の項目、外国人であります。外国人につきましては、まず目標を下回った定住外国人について、要因が2つ目のポツでございますが、外国人につきましては、インバウンドに関連した仕事に就かれる方が多い傾向がございますが、コロナ禍でこうした労働需要が激減したということがこの原因ではないかと考えられます。
 今後につきまして、各労働局が実施している外国人の就職支援に係る好事例を収集し、全国で共有するとともに、ハローワーク職員向けの本省主催の研修などを実施して、マッチング機能の向上や相談・紹介業務の強化を図ってまいります。
 留学生につきましては、目標を上回ったところでありますが、こちらにつきましては、水際対策でかなりの期間外国人の流入が止まっておりましたので、その反動ということも考えられます。引き続き外国人雇用サービスセンターと大学の連携を強化して、留学早期から就職までの一貫した支援を実施するなどの取組を進めてまいりたいと思います。
 以上が資料1-1でございます。
 引き続きまして、資料1-2に基づいて2023年度の目標について御説明いたします。横置きになっております資料1-2の1ページ目をお開きください。2023年度の目標につきましては、項目がマル1からマル12と前年度に比べて2つ減っておりますが、これは簡素化の観点から、2022年度で言うとマル3とマル10、正社員の就職、あるいはフルタイムの就職という特定の雇用形態に係る目標を2つ削除したためであります。
 資料の1ページ目、左から2番目の欄に2023年度の目標を記載しております。この目標設定に当たりましては、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、その影響が小さくなることが見込まれる中、例年の方針にとらわれず、過去3年平均よりも可能な限り高い目標を設定するという考え方で作業をしております。
 まず、2022年度実績が2022年度目標を下回った項目であります。具体的にはマル1、マル2、マル4、マル6、マル11、マル12のうちの定住外国人の各項目につきましてですが、マル2とマル11を除き、2023年度は2022年度と同じ目標を設定しています。これは単純に3年平均を取りますと目標が下がりますが、そこを据え置くという形で高めの目標を設定するものであります。
 マル2の人材確保対策コーナーとマル11のシルバー人材センターにつきましては、2022年度目標よりも下方修正した目標となっておりますが、それぞれ箇所数の増や単純な3年平均の水準は上回るという目標設定にしております。
 目標を達成した項目であります3、5、7、8、9、10、12のうちの留学生につきましてです。7、8、10につきましては昨年目標を達成しましたので、これを用いた3年平均を用いて前年度を上回る目標設定をしております。具体的には7、8、10であります。
 マル3のマザーズハローワーク事業については、過去3年平均に体制強化の効果を加える形で目標設定をしております。
 マル5の就職氷河期世代の窓口につきましては、2022年度実績に2022年度各月の実績の伸び率の平均値を乗じることで3年平均より高い目標を設定しております。12のうち留学生につきましては単純な3年平均より高い数字となる2022年度目標をそのまま投入しております。
 マル9につきましてですが、2022年度実績は目標を上回っておりますが、コロナ禍において雇用維持の手段として在籍型出向が多く活用されたことから、かなりの高水準のものとなったと考えられます。また、実際に足元での実績が低下している傾向があることから、2022年度と同様の目標の設定としております。
 最後に、資料1-3であります。こちらは本年4月から6月まで今、御紹介した指標のデータをまとめたものであります。これは以前の分科会におきまして評価の時期が遅い等の指摘を委員からいただいたことから、四半期ごとの数字がまとまり次第、タイムリーに委員の皆様にお示しするという趣旨で配付するものであります。また、御指摘を受けた中間評価、年度評価の前倒しにつきましても、準備ができ次第、速やかに本分科会にお諮りしたいと考えております。
 以上、議題1につきまして、事務局からの説明となります。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 それでは、本件につきまして御質問、御意見等がありましたら、挙手または「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、こちらで指名をさせていただいた後に、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。御質問、御意見等ございますでしょうか。馬渡委員、お願いします。
○馬渡委員 中央会の馬渡でございます。
 1つ御質問と御提案とあるのですけれども、ハローワークの人材不足分野の実績等についてお尋ねしたいと思います。実績は全国誰でも閲覧できるようになっているかどうかをお聞きしたい部分と、どの業種が足りないのかなど全国的な傾向が分かるように出していただくと、企業側のほうでどういうふうにして人材確保していこうかと。そういう備えた活動もできますし、ハローワークさんたちと御相談が早めにできますので、より機能を充実していただいて、中小企業のマッチングが高まるようにしていただきたいなと思っているところでございます。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 事務局からいかがでしょうか。
○井上人材確保支援総合企画室長 馬渡委員から御質問いただきました人材確保の点につきまして、人材確保支援総合企画室の井上よりお答えさせていただきたいと思います。
 ハローワークの職業紹介の実績につきましては、全国という部分については、全体で国のほうで公表しておりますし、ハローワーク、労働局という部分につきましても、それぞれの労働局のほうでどのくらい就職しているのかということは公表させていただいております。また、求人と求職については職種別に示したほうが分かりやすいのではないかという点につきましても、実際有効求人倍率を出すときにはどのくらいの求人者がいて、ここの分野にはどのくらいの求職者がおり、どのくらい就職に結びついているということを示した資料を使いながら、ハローワークでは求人者の方に条件の緩和指導等を行っております。全体の数字というのは全国でも把握しておりますが、現場でもそういったものを使いながら支援に取り組んでいるところでございます。
○山川分科会長 馬渡委員、いかがでしょうか。何かございますか。
○馬渡委員 そういう業種ごととかも小まめに傾向が分かると本当に企業のほうで助かりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
○井上人材確保支援総合企画室長 承知しました。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、西尾委員、お願いします。
○西尾委員 西尾でございます。
 2点、意見させていただきます。1点目は就職氷河期世代への支援の部分です。マル6、専門窓口における支援対象者の正社員就職率について、就職率59.4%ということで、2022年度の目標を上回っている。また、件数では8,799件ということで明示もされております。これは就労支援において一定の成果を上げていると受け止めます。しかし、政府は2019年度から3年間について就職氷河期世代支援プログラムを策定していて、その中で正社員30万人増を取組目標としてきております。22年度から2年間延長していますけれども、現在の就職件数のペースでは30万人増という目標値には到底及ばないのではないかという懸念がございます。政府の氷河期世代の支援はハローワーク単体の取組ではないということは承知していますけれども、さらに積極的な求人開拓を行う、あるいは正社員就職の人数を増やすことを目指した目標設定や取組が必要なのではないかと考えています。
 それに関連して2点目です。2023年度の目標設定について、目標値やこれまでの実績が就職率で示されている項目が多数あります。単に対前年度と比較した割合ではなくて、実数が重要となる取組がほかにもあるのではないかと思っています。割合のみでは評価が難しい場合もありますので、そういった目標設定においては件数、数を記載して、その上で達成すべき目標を示すというほうが分かりやすいのではないかと考えています。
 以上、2点申し上げておきます。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 事務局からいかがでしょうか。
○國分首席職業指導官 首席職業指導官、國分と申します。
 ただいまの西尾委員からの御指摘、ありがとうございます。就職氷河期対策でございますけれども、委員御指摘のとおり、2022年度約9,000件ということで、こちらの数字につきましては、全国ハローワークの544か所のうち92か所で専門窓口を設置して、そこでの重点対象者の正社員の就職の件数ということになってございます。
 もう少し広く、先ほど御指摘がありました就職氷河期対策ということでは、2020年度10万人を超える正社員就職をハローワーク全体で達成しているところでございます。政府の30万人の目標というのは、政府でやっております労働力調査の関係での数字を上げるということになってございますが、ハローワークにおきましては一定の正社員就職に寄与しているのではないかと思っています。
 御指摘のとおり、厚生労働省、あるいは労働局、ハローワークだけではなくて、政府全体でこの問題に取り組んでいるところでございますが、プラットフォームなど関係省庁が集まる機会がございますので、そういったところでハローワークにおきましても引き続き尽力をしてまいりたいと考えているところでございます。
 また、数値目標の件につきましては、当然率だけではなくて、その達成に当たりましては、分母、分子を上げていくということが必要になってくると思いますので、全体につきましてはどういう形で対応していくのかというのは整理が必要かと思っておりますけれども、単に率だけということではなくて、数も見ながら政策の効果の評価を考えていくということだと思っております。
 以上でございます。
○山川分科会長 西尾委員、何かございますか。
○西尾委員 今の御答弁をいただきましたので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。新田委員、お願いします。
○新田委員 御説明いただきましてありがとうございました。
 私からは資料1-2と1-3に関連して意見を申し上げます。資料1-2の2023年度の目標設定に関する御説明を聞く限り、2022年度のうち、目標が未達成のものは基本的に据え置いて、目標を達成したものについては、直近3年度の実績の平均値を踏まえつつ、意欲的な目標が示されていると受け止めていて、率直にその点は評価いたします。
 今後につきましても、目標が未達成のものは堅実に達成を目指し、達成したものは、意欲的な目標を設定してしっかりと取り組むなど、事業をそれぞれ分類しながらメリハリをつけた目標設定を行う形でぜひ取り組んでいただくようにお願いしたいと思います。
 資料1-3では、2023年度の年度目標に係る4-6月の実績をお示しいただいております。この点、今年2月の分科会におきまして、私から、「年度の中間評価を2月末に行なっても、残りの期間が短過ぎて、その後に反映しようがないため、評価の実施時期について、ぜひ御検討をお願いしたい」という趣旨の意見を申し上げたところでございます。その見直しに向けた一環として、この4-6月の実績が早々に示されたと受け止めております。このような形で提示していただいたことにまず感謝を申し上げます。
 他方で、今回の資料を見ると、各月の実績は記載されていて分かるのですが、例えば4-6月の3か月の実績と年度目標に対する進捗状況の関係が分かりづらい部分もあると思っております。今後、中間評価に向けて御検討されると承知していますので、その際には、要因分析等と併せて実績の示し方についても御検討いただければと思っております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、事務局からどうぞ。
○吉田雇用政策課長 ありがとうございます。
 資料1-3につきましては今回の試みということで、早速数字がまとまった段階で出させていただきましたので、今、新田委員から御指摘がありましたように、例えば全体に占める割合であるとか、前年との比較を入れるとか、そうした工夫をしたいと思っております。
 また、評価の時期につきましても2月、3月ということで、遅いという御指摘はそのとおりだと思いますので、なるべく中間につきましては年内に、あるいは年度評価につきましても、今、9月にやっておりますけれども、もう少し早くということで準備したいと思います。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 新田委員、特に何かございますか。
○新田委員 中間評価と言いながら、2月や3月で議論をすることは非常に厳しいので、ぜひ年内での中間評価の取りまとめに向けて引き続き御検討いただければと思います。よろしくお願いします。
○山川分科会長 それでは、案がまとまりましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 本日のところでは追加の御意見もございませんようですので、こちらの議題は以上にさせていただきたいと思います。
 各委員におかれましては、この場で御指摘の点以外に追加で御意見等がございましたら、事務局から事前に送付しております意見記入用紙で10月4日の水曜日までに事務局まで御提出いただければと思います。
 当分科会としての2022年度の評価、2023年度の目標につきましては、本日の議論、追加で御提出いただいた御意見等を踏まえて、私と事務局で相談して取りまとめたいと考えております。これまでもこうした方法が取られてきたと承知しておりますけれども、そのような取りまとめの方向でいかがでしょうか。御異議ございませんでしょうか。
 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきたいと思います。
 では、次の議題に移ります。議題2「令和4年度のハローワークのマッチング機能に関する業務の評価・改善の取組について」になります。では、事務局から説明をお願いします。
○西海公共職業安定所運営企画室長 公共職業安定所運営企画室の西海でございます。
 資料2に基づきまして御説明をさせていただきます。まず、総合評価全体の仕組みでございます。2ページです。全てのハローワークにおきまして、(1)のところに記載しておりますような指標に基づきまして目標値を設定して、その達成状況を管理していくという取組でございます。その評価の結果あるいは取組状況につきましては、(2)のところにございますように公表をしております。また、(3)のところにございますように、評価結果につきましては、次年度の取組に生かすべく、本省あるいは労働局によるハローワークへの指導の際に生かす、あるいは好事例については横展開をしていくという取組でございます。
 3ページを御覧ください。こちらがハローワーク総合評価の指標の全体でございます。1のところにございますのが全てのハローワーク共通の評価指標ということでございまして、主要指標として就職件数、充足数等の指標、所の重点項目として職員の資質向上、あるいは業務改善を図っていく、そういった取組に対する評価指標を設けております。
 また、2といたしまして、ハローワークがそれぞれ置かれている地域の雇用課題等に応じて選択をして評価をする指標を設けております。
 次の4ページ目は評価方法であります。マル1のところにありますとおり、労働市場の状況や業務量に応じてハローワークを11のグループに分けまして評価をしております。下の順に沿って評価指標に基づいて点数を計算いたしまして、同じグループの中での相対評価を行うということでございます。
 次の5ページ目、令和4年度の評価結果の概要ということでございます。下の表のところに令和4年度から過去を遡って評価結果を書いておりまして、類型1が「非常に良好な成果」、類型2が「良好な成果」、類型3が「標準的な成果」、類型4が「計画的な取組が必要」というふうに分けております。
 令和3年度につきましては、昨年度当分科会でも報告いたしましたけれども、コロナの感染状況を踏まえまして相対評価を実施しておりませんので、令和2年度との比較ということになりますけれども、まず類型1の「非常に良好な成果」と位置づけられたハローワークについては0から4に増加いたしまして、類型4のところは16から9に減少しているということでございまして、コロナの影響が弱まって、ハローワークが積極的なサービスが行えるようになってきていると考えております。
 次の6ページ目でございます。左側がこの評価に基づきまして計算しました平均値でございますが、総得点の平均値は令和2年度と比較しますと、括弧のところにプラス何%と記載しておりますけれども、赤枠のグループ1、つまり、規模が最も大きいグループのところが大きく点数が上昇しているということでございます。また、黄色の枠のところ、重点項目の平均点ですけれども、全てのグループで上昇しているということでございまして、コロナ禍で実施が難しかった求人企業への事業所訪問とか、あるいは就職の説明会、面接会などが再開できるようになったことでこういった評価の点数のアップにつながっていると考えております。
 また、右側が評価のばらつきを示す変動係数、標準偏差ですけれども、全体的に減少しているということでございます。
 そちらを図示しましたのが次の7ページ目でございまして、ハローワークごとの総得点の分布を示したグラフでございます。赤が令和2年度、青が令和4年度でございます。全体的に全てのグループで右上の方向にシフトしている。つまり、点数が上がっている傾向にございますのと、また、四角が標準偏差の範囲でございますけれども、赤枠と青枠を比べますと四角が小さくなっているということで、つまり、ばらつきが小さくなっているということを示しております。
 次の8ページ目以降が事例の御紹介でございます。総合評価の所重点項目の中で取り組まれた事例の中でも効果的な成果を上げたものを取り上げております。一番上のところが求職者の担当者制を敷いて支援を行った取組でございまして、例えば2ポツ目、和歌山の橋本所ですが、高齢者の就職支援に当たりまして、職業相談部門の職員と求人部門の職員が一堂に会して事例検討会を行って、マッチングに向けた支援について検討を行ったというものでございます。
 真ん中のところは求人企業に対する担当者制の取組でございます。一番下の3つ目のポツ、熊本の菊池所の取組でございます。半導体の大手企業の工場が進出してくるということに備えまして、職員がその半導体企業の事業内容を理解した上でマッチングができるようにということで、半導体の関連企業の事業所を見学いたしまして、その事業内容の理解を深めたというものでございます。
 また、一番下の水色の四角囲みですけれども、自治体等との連携の取組ということでございまして、例えば1つ目のポツにございますような大阪・門真所の取組では、大型のショッピングモールが開業するということで、地元自治体と連携いたしまして合同の求人フェアを開催し、また、その開催に当たって自治体のSNSの広報ツールも活用させていただいて周知を図ったということで、求人の確保の支援に努めたという取組になっております。
 次の9ページを御覧ください。各ハローワークの所長が当年度の取組の全体の評価を分析しているという記載でございまして、2つ挙げております。上の大阪東所の取組でございますが、介護分野を中心にバーチャル見学会を開催したということで、事業所の作業風景ですとか動画を撮影いたしまして、それを求職者の方に見ていただくということを通じて、求人票には現れない企業の魅力のアピールを行ったというものでございます。
 また、後段のWeb朝イチ会議でございますが、大阪東所の近隣の安定所とZoomで会議をいたしまして、大阪東所が持つ求人を他所の職業相談部門の担当者にPRをすることで求人の充足を図ったというものでございます。
 下のほうが豊橋所の取組でございますが、前半は広報の取組でございまして、SNSを通じた動画配信の広報を強化しようということで、プロジェクトチームをつくってSNSの動画配信に向けて取組を行ったというものでございます。
 後段は近隣の所と合同でオンラインの企業説明会を開催しまして、オンラインでの職業相談あるいは紹介を実施したというものでございます。
 10ページは、ハローワークの業務改善コンクールというのを令和4年度に開催いたしまして、その中で表彰いたしました取組を3つ御紹介しております。1つ目が熊本・宇城所の取組でして、「障がい、難病のある方へのハローワークご利用ガイド」を作成したという取組でございます。障害、あるいは難病をお持ちの方が就職をするに向けて様々な準備段階から求人を探す、実際に採用面接に行く、そういった様々な場面で有用な情報をこの利用ガイド1冊にまとめまして、ハローワークに来られる障害をお持ちの求職者の方々にお渡しして支援に役立てたというものでございます。
 次の11ページは群馬の高崎所の取組でございます。こちらは求人部門が求人企業に対しまして求人条件の緩和をお願いしていくわけですけれども、その中で、左下のところにございますように、求人票にある様々な項目、雇用形態ですとか学歴、必要な経験、それらの各項目を1~5点で評価基準を設けて数値化いたしまして、どの項目を見直せばいいのか、どの項目を見直すように求人企業の方々に指導すればいいのかというのがすぐに分かるようにしたということで、こういった求人指導の業務における効率化を図りまして、より丁寧な求人企業に対するマッチングへの支援にエネルギーを割けるように取り組んだというものでございます。
 次がスライドの12ページ、北海道・札幌所の新卒応援ハローワークの取組でございまして、イラストにございますようなマスコットキャラクターをつくるとともに、これらを活用してSNS・ホームページで、新卒応援ハローワークで実施している様々なサービスを情報発信したということでございまして、若者の方々にハローワークをできるだけ利用してもらえるような雰囲気づくりにも努めたということでございます。また、オンラインでもエントリーシートの添削とかWebの面接練習ができるといったサービスの積極的な発信にも努めたというものでございます。
 次に13ページ、令和5年度の総合評価についてでございます。指標等につきましては、基本的には令和4年度と同様でございますが、オンラインサービスを一層推進していくという観点から、既にハローワークシステムに実装しております求人者マイページ、求人企業の方々に来所いただかなくても求人の申込み等のハローワークのサービスが受けられる仕組みがございますので、こういったものを積極的に御活用いただけるように周知、利用を図っていくということを評価の項目として新たに追加をすることとしております。
 また、2ポツ目にございますとおり、この総合評価によりまして数値の達成を目指して取り組むことは重要なのですが、それと併せて、ハローワークの中で職員同士で課題、認識を共有しながら、改善に向けて取り組んでいくプロセスが重要だと思いますので、そういった観点からPDCAサイクルを回していくことについてより一層理解が深まるようにということで、研修資料を作成いたしまして職員向けの研修の場で活用しているということでございます。
 資料2の説明につきましては以上でございます。
○山川分科会長 それでは、以上につきまして御質問、御意見等がありましたら、先ほどと同様の方法で御発言をお願いいたします。御質問、御意見等ございますでしょうか。それでは、大下委員、お願いします。
○大下委員 御説明ありがとうございます。
 今、御説明いただいたお取組の内容について、1点だけコメントをさせていただきたいと思います。今月末に日商として、人手不足の状況を調査した結果を公表いたしますけれども、人手不足を訴える中小企業の割合は過去最高水準に達しております。こうした中で民間の職業紹介事業者も非常に活発に活動しておられますが、併せて起こっているのが人件費をはじめ、様々なコストの上昇というところであります。したがって、中小企業にとって人を確保するために高いフィーを払っていくというに関しては、なかなか難しい状況が深まっているのかなと思っておりまして、こうした中でハローワークへの期待はより大きくなってきております。
 同じ調査を業種別で見ても、どの業種でも人手不足が深刻化しておりまして、そういう意味では、求人企業、求職者共にこれまでの考え方に基づく求人の条件であるとか求職の希望では、単にそれをぶつけるだけのマッチングはさらに難しい状況になってきているのかなと思われます。
 8ページに記載をいただきました担当者制で求人企業、求職者双方に踏み込んで働きかけをしていただいてマッチングを高める取組は非常に重要かなと思っております。他方で、恐らくハローワーク自身も人手が非常に限られている状況かと思っております。これも御報告の中にありましたけれども、事務作業であるとか各方面との連絡調整、あるいは広報・PR、といった業務については積極的にデジタル活用を進め省力化、効率化を図っていただき、職員の方々には求人企業に足を運び、経営者の方々と直接お話をいたただいて御相談に乗ることにできる限り時間を割いていただくことで、より成約につながる形での踏み込んだマッチング支援の拡充をお願いしたいと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 それでは、山田委員、どうぞ。
○山田委員 山田です。御説明ありがとうございます。
 私からは10ページから12ページにある業務改善コンクールについて、1つ意見です。資料には、「サービス改善の取組を全国的に共有、活用することを通じ、更なる機能強化を図ることを目的として実施する」とあり、表彰された事例としてリーフレット、評価基準ツール、SNSを利用した若年者雇用支援が示されています。これらは水平展開をすれば、状況に合わせて加工などして活用することができるのではないかと思います。せっかくですから、単に取組内容を周知するだけではなくて、ツールとして全国で活用ができるよう工夫するなどした上で、共有や周知をするべきではないかと思います。ぜひよろしくお願いします。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 大下委員、山田委員から非常に有益な御提案もいただいたところですが、事務局から何かございますか。
○國分首席職業指導官 首席職業指導官でございます。
 大下委員、山田委員、御指摘ありがとうございます。
 まず、大下委員から御指摘のありました人手不足に関するハローワークの取組、全く私どもも同じ問題意識を持ってございます。オンライン化を今、ハローワークでも進めておりますが、一方で、それだけではなかなか十分に対応できていない求職者の方、あるいは求人者の方への個別的な支援、積極的に外へ出向いていって支援を行っていくということが必要だと思っておりますので、この辺りはまた展開してまいりたいと思っております。
 業務改善コンクールで表彰された事例でございますが、御指摘のとおり、私どもとしても「現場のチカラ」ということで、好事例としてツールを実際に各労働局・ハローワークのほうに共有をしてございます。先ほどの高崎所の求人票の評価基準の取組につきましても、既にほかのハローワークでも実際にこれを参考にして支援をしているところも出てきておりますので、そういったことでハローワークの全国ネットワークの力を生かしてサービスの向上に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○山川分科会長 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。大下委員、山田委員、何かございますか。よろしいでしょうか。
○山田委員 はい。
○大下委員 大丈夫です。ありがとうございます。
○山川分科会長 では、新田委員、どうぞ。
○新田委員 御説明ありがとうございました。
 私からはハローワーク業務改善コンクールに関して質問とコメントをさせていただければと思います。質問は、コンクールは優勝、準優勝、3位という形で表彰されていますが、このコンクールへのモチベーションを引き出す、インセンティブとして何か取り組まれていることがあれば教えてください。
 これは非常によい取組と思って説明を拝聴していました。先ほど別の委員もおっしゃっていましたが、積極的に横展開をして、好事例については様々なハローワークで取り入れていただければと思っております。
 特に今回の準優勝となった11ページの高崎所における、一定期間応募がない求人票の各項目について、評価基準をもとに数値化し、評価できるツールの活用については非常に興味深く拝聴させていただきました。先ほどの質問にも関連しますが、ぜひこのコンクール、よい意味でのハローワーク間の競争を喚起していただいて、こういった取組の横展開を重ねてお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 事務局から何かございますか。どうぞ。
○井上人材確保支援総合企画室長 コンクールにつきまして、昨年度このコンクールを開催したときに担当室長をしており、その関係で御説明をさせていただきます。コンクール自体は2年に1回、これまでもこういった全国のハローワークから提案して選んでいただくという取組を進めてきたのですが、コロナ禍で中断しておりまして、今回4年ぶりということで、昨年度開催をさせていただきました。ハローワークの所長が本省に来ていただき、民間企業の選考委員の前でプレゼンをしていただいて競い合い、最終的には職業安定局長から表彰状と励ましの言葉があり、それを全国にPRするという形になっています。実際参加されている所長さんからすると、本省に来る機会がそもそもないという中で、コンクールにエントリーすること自体、そしてここで表彰されること自体にすごくモチベーションを持って来られている方が多かったのではないかなと思っております。1点目はそういう状況かと思います。
○山川分科会長 事務局、よろしいでしょうか。
○山田局長 例えばこういう好事例を「高崎方式」と言い表す形で名前を残していけば、他安定所で同様の取組をされてもすごく誇らしく思えるので、各安定所のモチベーションを高めるためには、そういうやり方もあるのかなと思いました。
○山川分科会長 新田委員、何かございますか。
○新田委員 
 「○○式」という名前がつけば、それは非常に名誉なことでありますので、そういったことも含めて、「これまでの取組が認められた」と、ハローワークの職員の方々が誇りを持っていただけるようなインセンティブが必要かと思います。コロナ禍でハローワークの方は本当に御苦労されたと思います。そういった中でも、一生懸命取り組まれた方がいることについて非常に感銘も受けていますので、そういった方に対するインセンティブをさらに考えていただけると非常にありがたいと思った次第です。引き続きよろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 それでは、本議題につきましては以上とさせていただきます。
 次の議題は議題3「雇用調整助成金について」です。事務局から説明をお願いします。
○佐々木雇用開発企画課長 雇用開発企画課長の佐々木と申します。よろしくお願いいたします。
 雇用調整助成金につきましては、今年の6月に閣議決定されました骨太の方針とか、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画の中で見直しをするということが記載されております。これから見直しを検討していかなければならないことになっており、分科会での御議論をお願いするものでございます。
 資料は資料3として御用意しておりますので、こちらを御覧いただければと思います。資料の1ページ目、雇用調整助成金の概要ということで、今年の4月から通常制度に戻した形で制度を運用しているところでございます。
 資料の2ページ、コロナ禍における特例措置の変遷をまとめたものでございます。当初は日額上限を1万5000円まで引き上げて支援をしておりましたけれども、徐々に見直しを図ってきて、今年の4月からは通常制度に戻っています。
 3ページ目、4ページ目はその詳細について整理をさせていただいておりますので、議論の中で御参照いただければと思います。
 資料の5ページ、雇用調整助成金の支給決定件数・支給決定額の推移でございます。累計支給決定件数につきましては、箱の中に記載しておりますけれども、629万件となっております。累計の支給決定額5兆9800億円となっております。雇用調整助成金については徐々に減少傾向になっております。7月、8月、御覧のとおりの状況になっております。
 資料の6ページ目、実際どんな形で使われていたのかということを少し御紹介させていただければと思います。6ページの支給決定額につきまして、業種別の状況についておつけしております。コロナ前5年間の状況、コロナ特例の状況、それぞれ記載させていただいておりますけれども、コロナ前5年は製造業が3分の2を占めるという状況でございました。コロナ特例におきましては、製造業でも4分の1ほど占めておりますが、そのほかに例えば運輸業・郵便業、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業、こういったところで使われてきたということが見てとれるかと思います。
 資料の7ページ、雇用調整助成金の支給日数がどうなっているのかということで、10日刻みでグラフ化しております。コロナ前5年の状況でございますけれども、30日以下がどれぐらいになっているかですが、全体の62%という形になっております。コロナ特例で30日以下というのがどうなっているのかですが、49%。大体半分という状況になっております。コロナ特例の特徴としましては、この資料の赤の部分になりますが、90日超というのが30%という状況になっております。
 資料の8ページを御覧いただければと思います。こちらはJILPTのほうでアンケート調査を実施しておりまして、これの速報値を基にこちらで資料を作成しております。速報値ですので、若干これから数字について精査されるところはありますが、御参考として見ていただければと思います。資料の8ページにつきましては、雇用調整助成金を受給した理由についてお尋ねしたものになります。資料を見ていただきますと、「休業期間中の休業者の雇用維持のため」「今いる従業員を手放したくなかったため」、こういった辺りが回答として多いという状況になっております。
 資料9ページ、逆に受給しなかった理由をお尋ねしたものになります。一番上「雇用調整助成金の対象となるような休業とはしなかったから」というのが、大体7割ぐらいの回答となっております。次に多かったのが「雇用調整助成金を申請する必要がなかったから(経営状態がよく、人手不足の状態にあった等)」ということになっております。
 資料の10ページを御覧いただければと思います。休業中の課題についてお尋ねしたものになります。それぞれの項目についてお尋ねしておりますけれども、例えば一番上の「従業員のモチベーション・働きがいの低下」について、「課題だと感じた」あるいは「どちらかといえば課題だと感じた」と答えられている事業所は51.2%という状況になっております。2つ目の「従業員の生産性の低下」について、同じように課題と感じられている事業所は45.7%、半数近くという形になっております。
 資料の11ページ、教育訓練の実施状況。雇用調整として行う休業の際の教育訓練の実施状況というものになります。「正社員へのOff-JTによる教育訓練を実施した」と答えられた事業所は17.6%、「非正社員へのOff-JTによる教育訓練」は7.2%という回答になっております。
 資料の12ページに移っていただければと思います。雇用調整助成金のよい点、よくない点についてお尋ねしたものになります。よい点としましては「従業員を解雇せずにすむ」「経営支援として有効」という回答が多くなっております。よくない点としましては、「不正受給の温床になりやすい」「将来の雇用保険料の上昇による事業主負担の増加が懸念される」、こういった回答が多くなっております。
 資料の13ページを御覧いただければと思います。こちらは雇用調整助成金が全く利用できなかった場合の状況についてお尋ねしたものになります。例えば一番上「事業継続が困難になっていた」ということについて、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」、このような回答をされた事業所は64.5%となっております。
 14ページを御覧いただければと思います。こちらは既に公表している資料、労働経済白書から取ってきているものでございますが、雇用調整助成金の失業抑制効果について分析したものになります。枠に書かれていることになりますが、「完全失業率の抑制効果を推計すると、その支給により2020年4~10月の完全失業率が2.6%ポイント程度抑制されたものと見込まれる」という分析がなされております。
 資料の15ページ、冒頭に申し上げました骨太の方針、新しい資本主義のグランドデザインをおつけしております。上段になりますが、骨太の方針では、下線を引かせていただいておりますが、「雇用調整助成金について、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくなるよう助成率等の見直しを行う」ということが書かれております。
 新しい資本主義のグランドデザインはその下になります。同じように「休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくするよう、助成率等の見直しを行う」と記載されており、その行の最後のほうにもう少し具体的に書かれておりまして、「例えば30日を超えるような雇用調整となる場合には、教育訓練を求めることを原則とし、例外的にその日以降に休業によって雇用調整を行う場合は助成率を引き下げる等の見直しを検討する」と書かれております。
 16ページになります。雇用調整助成金につきましては、会計検査院の決算検査報告、財政制度審議会の建議についても触れられておりますので、御参照いただければと思います。
 17ページは、昨年10月に分科会に御報告させていただいた雇用・労働総合政策パッケージになります。こういった考え方に沿って今、労働政策を進めているところでございますので、こちらも適宜御参照いただければと思います。
 19ページを御覧いただければと思います。骨太の方針なども含めて、どういったことが課題かということで、一旦事務局として整理させていただいたものになります。1つ目の丸につきまして、「雇用調整助成金は、経済情勢が急激に悪化した際に、従業員の雇用の維持などセーフティネットとして効果を発揮する一方で、労働者の職業能力の維持・向上や成長分野への円滑な労働移動を阻害するおそれがあるとの指摘がある。また、事業主にとっても、労働者のモチベーションの低下や長期的には事業主の新分野展開などの経営努力の妨げとなるといった意見もある」といった認識について書かせていただいております。
 2つ目の丸ですが、休業が長くなるような場合について、いろいろ指摘されておりますので、このような場合において課題への対応を併せて行うことが必要ではないかということ。その際には教育訓練が有効な取組であると考えられるが、実際に雇用調整の際に行われている例は少ないということを書かせていただきました。
 また、休業が長くなるような場合ですが、雇用調整助成金について、今後への備えも念頭に置きながら、雇用調整助成金のそもそもの目的であります雇用のセーフティネットとしての機能も引き続き維持しつつ、事業主の教育訓練の取組を、そのような長くなるような場合に促進していくため、どのような教育訓練を行ったらよいか検討の上、分かりやすく示すなど、教育訓練を実施するための支援が必要ではないかということを記載させていただきました。
 最後の丸ですが、雇用調整助成金について、申請方法が分からない、あるいは手続が難しいといった理由で活用しないケースも一定数あることから、見直しに当たって事業主負担の増加につながらない配慮が引き続き必要ではないかということを記載させていただいております。
 資料の20ページは、先ほど御紹介したJILPTのアンケート調査についての概要をおつけしております。
 21ページは不正受給件数の推移。22ページは、今年の3月に御報告させていただいておりますけれども、不正対策として不正事案の公表基準を御議論いただいておりますので、こちらをおつけしております。
 参考資料を見ていただければと思います。先ほど雇用調整助成金について会計検査院からも指摘があったというお話を御紹介させていただきましたが、雇用調整助成金につきまして、資料の1ページの上にあるような意見を会計検査院からいただいているところです。中身としましては、雇用調整助成金について超過額が発生していると。これについて極力生じさせないような合理的な支給額の算定方法にすべきだという意見の内容になっております。
 下に図を描いておりますけれども、超過額が発生する理由としましては、もともと休業手当の算定方法と雇用調整助成金の算定方法が違っていることに起因するものでございます。この見直しについては、これまで平均賃金額というものを利用しておりましたけれども、こちらではなく、実際の休業手当の支払額に基づいて助成額を算定していく。このやり方になれば超過額は発生しないことになりますので、こういった見直しをこれから行っていく準備をしているところでございます。見直しにつきましては、今後一定の周知期間を取った上で、来年の1月から運用を開始していきたいと考えております。
 事務局からの説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 それでは、本件につきまして御質問、御意見がありましたら、先ほどと同様の方法で御発言をお願いいたします。御質問、御意見等ございますでしょうか。宮田委員、お願いします。
○宮田委員 ANAホールディングスの宮田でございます。
 今、丁寧な御説明をいただきましてありがとうございます。雇用調整助成金ということですので、特に先ほどの分析にもありました、私ども航空業界に関しては、今までにない大きな危機の中で、雇用調整助成金において何とか雇用が維持できたということで、改めて感謝申し上げます。
 また、その中で雇用調整助成金の課題として雇用保険財政への影響や労働移動の妨げというところもあったとは思うのですが、1つ現時点で感じていることとして、コロナ禍での雇用の維持につながったというのはすごく大きなことだったのですが、実はコロナからの回復の過程において、何とか従業員を解雇せずにいたことが結果として、特に私どもは公共交通機関として運航便を戻すときにスムーズにそこに移行できたと思っています。海外では一旦解雇しているので、この人たちを再度戻して通常のオペレーションに戻すということに相当な時間がかかっていました。そういう意味では、解雇しないことによって、コロナからの回復においてその事業をすぐに正常に戻し、特に公共性の高い企業においては、コロナからの回復に向けた経済を支えるということでもスムーズな移行につながったかと思っておりますので、ぜひその辺の観点も雇用の維持だけではない観点で意見として申し述べさせていただければと思っております。
 以上でございます。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、馬渡委員、お願いします。
○馬渡委員 全国中央会の馬渡でございます。
 2点お願いがございます。資料3の11ページにありますように、休業の際の教育訓練の実施というのは少ないという状況にあるのですけれども、我々中小企業というのはOJTが中心ですが、やはり外部の技能講習とか資格・免許の取得のための外部講習というのもありまして、もしリ・スキリングによる能力向上支援を中心にお考えになるのであれば、どんな訓練を行えばその対象となるのかとか、具体的に中小企業が分かりやすく示せるような考えを提示していただきたい。例えば我々の業界で言うと、大型の免許を取りに行けばそういう取得支援はありますよとか、いろんな技能講習がありますので、具体的に示していただければなと思っています。いずれにしても、在職したままの技能講習・教育訓練というのは、中小企業にとっては、休みを与えた上で取得させるというのがなかなか難しい状況でありますので、歓迎したいと思っております。
 ただ、もう一点は、先ほどANAの宮田さんがおっしゃったように、雇調金の特例措置が延長されて、我々中小企業の雇用維持というのは非常にやりやすくあったということは本当に感謝しているのですけれども、いつも言われますが、雇用保険財政が枯渇しているということを考えますと、財源の安定化というのはいつになるのだろうなという心配が常に付きまとっています。それで、先ほどお願いをした上でこういうお話をするのは申し訳ないのですけれども、教育訓練を付加するような新たな制度設計をされるという場合に保険料率を増やさないでやっていただきたいなと思っています。「人への投資」に1兆円するのだけれども、その1兆円は雇調金から出ますよというやり方でなくて、政府が真水で1兆円投資していただいて、リ・スキリングをやりますというふうな話になっていただけるとうれしいなと思っております。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、大下委員、どうぞ。
○大下委員 日商、大下です。御説明ありがとうございます。
 今のお二方の御意見にもつながるところかと思いますけれども、少し発言をさせていただきたいと思います。今回の見直し議論というのは、コロナ禍で雇調金がこれまでにないレベルで活用された結果、雇用の維持が今般の危機の中でも図られた一方で、新たな問題も浮き彫りになってきた結果とも思いますが、非常時と平時というのはしっかり分けて考える必要もあろうかと思っております。浮き彫りになった問題が平時においても雇調金の課題なのかというところは、しっかり整理をしておく必要があるかなと思っております。
 お示しいただいた資料で、骨太方針等にも「休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくなるよう」という書きぶりもされています。今、政府が進めようとしていらっしゃる労働市場改革の一環かとも思いますが、働く人のリ・スキリングや円滑な労働移動の促進は進めるべきだと思いますけれども、ここに雇調金を絡めていくのが本当にどこまで適切なのか。本来の雇調金の役割というのは雇用のセーフティネットということであって、馬渡委員からもお話があった財源の問題もありますので、こうしたところも十分踏まえた上で、本来の機能維持に支障がないように必要な改革を進めていくということはしっかりと押さえておく必要があるかなと思っております。
 仮に教育訓練による雇用調整というところにつなげていくのだとしても、事業主が実際の経営が厳しい状況、雇調金を使って従業員の稼動を調整しているような状況の中で、雇調金の制度を少し変えるだけで新しい分野にチャレンジしようかとか、労働者に何か新しい勉強をしてこいというふうに簡単に踏み出せるようになるとはあまり考えにくいと思っております。
 もし制度にそのような面も付加して変えていくのであれば、併せてハローワーク等において、例えば私ども商工会議所の経営相談や、あるいはポリテクセンターの講座の利用の案内をうまく連携して行うなど、各企業の状況に応じた働きかけを行っていかないと、料率を変える、期間を変えるといった、雇調金の制度だけを変えただけでは思ったような効果は生まれないのかなというふうにも思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど雇調金の失業抑制効果について御説明がございましたけれども、非常時において雇調金が雇用の維持に果たす役割は非常に大きいと思いますし、それはこれからも変わらないと考えております。
 非常時、平時というお話もございましたが、非常時において柔軟、迅速に対応できるためには、平時のうちに必要な財源をきちんと準備しておく必要があると考えております。19ページに今後の雇用調整助成金の在り方に関する課題のところに触れていただいているとおり、雇用のセーフティネットとしての機能を維持しつつ、事業主の教育訓練の取組を促進することは重要だと思っておりますが、骨太の方針等を見ると、雇用調整については休業から教育訓練にかなりシフトをしていくような書きぶりもされておりますので、教育訓練は非常に重要ではあるがそれを強化することによってセーフティネットの機能が後退することがないよう注意が必要だと考えております。
 それから、どのような教育訓練を行うべきかですが、なぜ雇用調整のときに教育訓練が行われていないのかをまずしっかりと分析した上で、活用しやすい教育訓練メニューの設定や、時間的な制約がある非正規の雇用で働く方たちを考慮した訓練メニューも考えていかなければいけないし、メニューとして用意することが重要だと考えております。
 また、対象となる休業日数の在り方についても、現場において訓練の選定や準備に要する期間などを考慮して検討する必要があるのではないかと考えております。
 先ほど宮田委員からも、雇調金が労働移動を阻害しているというようなことも記載されているものの、正常な事業へのスムーズな移行という効果もあったという話もございました。そもそも雇調金は、事業の再開を見据えてスキルを持った労働者を雇用し続けたいという企業側の意向と、今の仕事を続けたいという労働者側の意向がマッチした場合に雇用維持を後押しするものであり、成長分野に労働移動させるための仕組みではないと考えております。加えて事業主の新分野展開への経営努力の妨げとなるとの記載もありますが、事業主は常に事業展開などの経営努力を行っているものであり、この制度の有無によって変化するものではないのではないと思います。この点の記載ぶりが、若干恣意的にも見えますので、そのような考えが多数ということではないということは意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、久松委員、お願いします。
○久松委員 久松です。御説明ありがとうございました。
 冨髙委員や宮田委員の御発言とも重なる部分がありますが、私たち交通運輸産業については、国民の移動を支える一つのインフラだと思っております。雇用調整助成金により雇用を確保できたことによって、国民の移動の需要が回復したときに速やかに稼動を確保できたと思っています。労働者をしっかりと雇用し続けるという意味では、この雇用調整助成金は本当にありがたかったと思っていますので、その点は私からも述べさせていただきたいと思います。
 もう一つですが、私たちの交通運輸や、宿泊・飲食サービス業が雇用調整助成金を活用できた背景には、残業相殺の停止や休業規模等要件の緩和といった点もあります。あくまでもコロナ特例ということでありましたが、特例措置として対応いただいた要件緩和についても、今後検証いただけたらと思っています。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。御質問、御意見等ございますでしょうか。阿部委員、どうぞ。
○阿部委員 事務局のほうから何か反応があるのかなと思っていたのですが、反応がなかったので、私のほうからちょっとお話をさせていただきたいと思っています。
 今回、皆さん、雇用調整助成金の枠組みの中で議論されていますが、一方で、労働移動支援助成金という枠組みもあり、それは対で考えたほうがいいのではないかなと思っております。雇用調整助成金は、休業と教育訓練がありますけれども、あくまでそれは同じ会社にこの後もずっと従業員の皆さんをとどめておくためにあるわけです。今回コロナの中で休業のほうは使われるけれども、教育訓練は使われないことによって、休業期間中に例えば従業員の皆さんのモチベーションが下がるとか、いろんな能力が下がっていくとか、そういった問題も指摘されていたように思うのですが、それを防ぐのを教育訓練のほうでやっていただければというふうな思いがあるのではないかなと思います。
 その一方で、皆さんの議論を聞いていて、雇用調整助成金の教育訓練が転職につながるとか、あるいは次の企業に移るのにつながるとかいうような誤解もあるように思ったのですけれども、そちらはどちらかというと労働移動支援助成金のほうで考えるべき話であって、あくまで雇用調整助成金は、今、会社が大変な時期であっても、将来景気がよくなってきたらまた従業員に即時に活躍してもらうためにあるというのが雇用調整助成金の位置づけなので、そこははっきり明確にしておいたほうがいいと思います。
 ただ、一方で、会社が非常につらい時期で、もしかしたら業績の回復が見込めないということであれば、労働移動支援助成金をうまく活用して、そこで教育訓練を行って失業なき労働移動につなげていくというのが、政策の意義として労働移動支援助成金があるのではないかなと思っていますので、厚生労働省としてもその辺り、これまであまり労働移動支援助成金が使われていないですが、なぜ使われていないかとか、雇用調整助成金と労働移動支援助成金がどうなっているのか、そういったものを事業者の皆さんにもうまく伝わるようにしていただきたいというのが個人的な意見です。
 ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 事務局からは何かありますか。どうぞ。
○山田局長 今の阿部先生のコメントに直接的な回答ではないのですけれども、比較的安定局に長くいた経験を踏まえて雇用調整助成金について少し語らせていただくと、本当はこれからまさに審議会の場で見直しをしていただくので、あまり事務局から決め打ち的な物の言い方をするのはよくないかもしれないのですが、雇用調整助成金は労働政策の中で最も強力な政策であって、多分雇用対策の中だけでなくて、経済対策としても最も強い力を持っているものだと思います。それであるがゆえに、雇用調整助成金を廃止しろといっておきながら、景気が悪くなった瞬間に雇用調整助成金の要件緩和をしない厚労省を批判するといったようなことが起こるのも雇用調整助成金の力強さゆえだと思います。
 その上で、基本的に雇用調整助成金というのは、医療で言えば救急医療だと思っていて、本当に経済が危機になったときに救急医療として対応するために、なるべく簡便な方法で事業主の方がそれを申請する上でハードルを下げて、ただ短期でとりあえずの悲劇的な状況を回避させるという意味で救急医療的なものだと思っています。それであるがゆえに、長いことそれを続けることはよくないというのは、救急医療がそうであるように、雇用調整助成金もやはりそうだと思います。
 ただ、先ほど資料でお示ししたとおり、世間で言われているよりは実際のこの助成金を受給している期間というのは、半数の企業が30日以内ということで、実際救急医療的に使われているのは事実。ただ、一方で、非常に長い期間使われているところもあるという中で、長く使ってしまうような状態になることに対して、どういったことが考えられるかというところで問題が提起されているのではないかなと思っておりますので、そういう文脈の中で、今、政府全体としていろいろな場で提起された話をどういうふうに見直しとして落としていくのかということではないかと思います。
 その一方で、ある意味雇用調整助成金は市場メカニズムを一時的に停止させるような、経済の基本原理に反した対応であって、一方で、労働移動助成金については、ある意味市場原理をうまく動かしていくためのものだと思っていますので、ただ、正直阿部先生に言われて、あまりに労働移動助成金について我々が考えが足りなかったということは思いましたので、そちらのほうも頭に置いて対応していきたいと思っています。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 雇用開発企画課長から何かございますか。
○佐々木雇用開発企画課長 様々御意見をいただきました。セーフティネットという本来の機能をしっかり頭に置いてということですとか、教育訓練をやるにしても分かりやすく、あるいは今までなぜできていないのかということも踏まえた上で、どういう対応が必要なのかと。いろいろな御意見をいただきました。少し整理をさせていただいて、次回以降、事務局のイメージといいますか、たたき台的なものを少しお示ししながら、さらに議論を深めていただければと思っております。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 委員の皆様方、雇用調整助成金制度の趣旨と労働政策の手法との関係についての御関心が非常に高かったかと思うんです。今、問題になっております労働市場政策の手法というのは、阿部先生から根本的なお話もありましたように、様々な手法があるので、その中で何を使うかという点と、雇用調整助成金の趣旨が教育訓練にシフトされるときにどういう役割を果たすかということの議論になってくるのかなと思います。そこも宮田委員がおっしゃられたように、休業からの回復のときにスキルを維持しておくというのはある種本来的な趣旨に合致しているかと思いますけれども、労働移動との関係はさらに根本的な問題が出てくるのではないかと思います。
 冨髙委員から御質問のあった、なぜ教育訓練があまり使われていないのかという点もそこと関わりがあるような感じがするのですが、これまでそういう研究があったかどうか分かりませんけれども、事務局では、なぜあまり使われていないのかという理由は把握されているでしょうか、あるいはデータとして何かありますか。
○佐々木雇用開発企画課長 データとしては特にアンケートで取ったものとかというのはなかったかと思います。
○山川分科会長 もし個別の事業主、あるいは事業者団体でも結構かもしれませんが、何かそういうことの実態が把握できるようなことがあれば、お教えいただければと思います。
○山田局長 そこはエピソードベースも含めて、その視点はちょっと掘り下げたほうがいいと思いますので、少しやり方を考えてみます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 先ほど申しましたように、本日は議論のキックオフということで、いろいろ根本的な御議論もいただきました。本日の議論も踏まえまして引き続き議論をすることになりますので、御検討をよろしくお願いいたします。
 本日予定されておりました議題は以上ですが、委員の皆様方からこの際、何か御発言等ございますか。
 事務局からは何かございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。大変お疲れさまでした。