第196回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和5年9月12日(火)14:00~16:00

場所

会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)
傍聴会場
厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2023-9-12 労働政策審議会職業安定分科会(第196回)
 
○山川分科会長 それでは、定刻になっておりますので、ただいまから第196回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
 皆様方、大変お忙しい中、御出席をいただきまして大変ありがとうございます。
 本日の委員の御出欠ですけれども、公益代表の阿部委員、橋本委員、労働者代表の小倉委員、平山委員、使用者代表の小野委員、宮田委員が御欠席と伺っております。
 宮田委員につきましては、代理としてANAホールディングスグループ人事マネージャーのタナベ様が30分程度遅れて御出席の予定と伺っております。
 事務局では、山田職業安定局長、田中高齢・障害者雇用開発審議官が公務で御欠席となります。
 カメラ撮影がありましたら、ここまでとさせていただきます。
 本日の分科会は、Zoomによるオンラインと会場での開催になります。オンラインでの御発言の方法等につきましては、事前に事務局からお送りしております「職業安定分科会の開催参加方法について」に沿って御操作をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 議題の(1)は、「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な方針の改定について」の諮問でございます。
 議題内容につきましては、前回の職業安定分科会においてあらかじめ議論いただいております。その上で、事務局からの御説明をお願いします。
○井上人材確保支援総合企画室長 事務局の人材確保支援総合企画室の井上と申します。よろしくお願いします。
 議題(1)の「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な方針の改定について」の諮問について御説明をいたします。
 資料1-1を御覧いただきたいと思います。
 本件につきましては、9月1日に開催されました職業安定分科会におけます委員の皆様からの御意見等を踏まえ、修正したものを資料1-1としてお諮りするものでございます。
 前回御報告をした看護師人材確保指針案からの修正内容につきましては、資料1-2に基づき御説明いたします。
 資料1-2の3ページを御覧いただきたいと思います。主な修正点を御説明したいと思います。
 「(3)看護業務の効率化・生産性向上」に関しまして、現行指針の記載も踏まえ「生きがい」という記載を追記いたしまして、看護師等が生きがいを持ち、より専門性を発揮できる働き方の推進という点で1点、修正をしております。
 続きまして、「(4)勤務環境の改善」に関しまして、○の3つ目になりますが、「労働基準法に基づく母性保護の規定」ですとか「男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置」、こちらの記載を追加したところでございます。
 また、最後の○になりますが、現行指針にある退職金制度の記載等も踏まえまして、「魅力ある職場づくりのため、人間ドックの経費補助等健康管理制度の整備や中小企業退職金共済制度の利用等を含め退職金制度の充実に努める」ということを追加しております。
 続きまして、6ページを御覧いただきたいと思います。
 「(2)職業紹介事業、就業に関する相談等の充実」に関しまして、○の2つ目になりますが、有料職業紹介事業者に関しまして一定の基準を満たした事業者の認定を推進すること、こういったことを最初に盛り込んでおりましたが、事業者の透明性を高める観点から、職業紹介事業の実績等に関する情報の開示を行うことが重要であるという点を追加しております。
 また、30年ぶりの改正であるということもございます。前回、御質問もいただいておりますが、医療体制に係る見直しの状況等を踏まえ、必要に応じ指針の見直しを行うということを今回盛り込んでおりますので、今後はそうしたことがないように取り組んでまいりたいと考えております。
 そのほかにも、前回、宮田委員の方からICTを活用した看護業務の効率化ですとか、馬渡委員のほうから看護師を含め夜間保育の体制整備といったことにしっかり取り組むことが重要であるという御意見もいただいております。これらの点につきましても、医政局と共有をいたしまして行政運営上、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
 事務局からの説明は以上となります。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして御質問、御意見等がありましたら挙手、またはオンラインの方は「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、こちらで指名させていただいた後にお名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。
 御質問、御意見等ございますでしょうか。
 では、まず新田委員お願いします。
○新田委員 御説明ありがとうございました。
 資料1-2に基づく御説明を拝聴し、内容は、前回の議論が適切に反映されていると思っておりますので、全体的に異論はございませんが、1点だけ申し上げたいと思います。
 資料1-2の3ページになります。先日の分科会での議論を踏まえて、「生きがいを持ち」という言葉を追加していただきました。前回の議論の記憶をたどると、旧指針においては「生きがい」と書かれていて、事務局からの改定案で「生きがい」という文字が削除されていたところ、労働者代表の委員から指摘があり、私からもエンゲージメントという言葉を使うなど、そういった趣旨の記述が必要ではないかと申し上げた、ところです。これを踏まえて今回、「生きがいを持ち」という言葉が挿入されたと理解しておりますが、この「生きがい」という文字が非常に気になっております。
 というのは、御承知のように、昨今、仕事と生活の調和や、ワークライフバランスの重要性が非常に叫ばれていて、その実現のために支援策の導入・拡充や働き方改革、あるいは休み方改革などを推進しています。そうした中で、この「仕事イコール生きがい」と直接的に連想させるような記述は今の状況にマッチしていないのではないか、せっかく30年ぶりに改定をして現状に適した指針にするという今回の趣旨にかなっていないように私には思えます。
 したがいまして、できれば「生きがい」ではなくて、例えば「働きがい」という言葉に替えていただく、あるいは「生きがい」という文字をどうしても残したいということであれば、「生きがいと働きがいを持ち」と併記するといった御対応をぜひ御検討いただきたいと思います。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 この点は、事務局から何かございますか。
○井上人材確保支援総合企画室長 今、新田委員のほうからいただきました「生きがい」の表現の御意見でございます。
 この点につきましては、今回の修正に当たりまして、こちらのほうも医政局ともいろいろ相談をさせていただきました。先ほど御発言にありましたように、今回の指針の改定におきまして両立支援の環境整備ですとか、業務の効率化などによる働き方改革の推進、そういったことも当然盛り込んでおります。こうした働き方改革に取り組んでいくということにつきましては、看護師等が自らの職務に誇りを持って、また生きがいを持って職業人生を過ごすということと別のものではないと考えているところでございます。
 その意味でも、生きがいに働きがいは含まれるということで、今回の指針の改定におきましては整理をさせていただきたいと考えているところでございます。
○山川分科会長 新田委員、何かございますか。いかがでしょうか。
○新田委員 ありがとうございました。
 ただ、今の説明を聞いても納得いかない部分が非常に強いです。人それぞれによって、仕事を行うことが生きがいに直結する方もいればそうでない方も様々いると思っています。就業ニーズも多様化している中で、30年前の状況はいざ知らず、労使双方でまさに働きがい、働きやすさといった観点が重要との共通認識を持っている現状からすると、ここで限定的に「生きがい」と表記することについては異論があるし、違和感があるということは申し上げておきたいと思います。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 今の点について、ほかに御意見等ございますか。
 事務局から、再び何かございますか。
○井上人材確保支援総合企画室長 今回、先ほどの整理について御説明をさせていただいたところでございますが、当然、今回新しく見直し規定というものを盛り込んでおりますので、新田委員の御意見につきましては、改めてこの指針を見直す際には十分事務局として検討させていただきたいと思っております。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 「生きがい」の中に働きがいが含まれ得るという御説明でありましたけれども、指針全体を見れば働き方に関することがかなり含まれていますので、そこには働きがいというのも含まれ得ると、それぞれの受け止め方は人によって違うかもしれませんけれども、指針の趣旨としてはそういうものも含まれていると読めるのではないかというふうに私も考えているところですが、新田委員いかがしましょうか。本日、諮問の答えを出すことになっておりますけれども。
○新田委員 ありがとうございます。
 もちろん、山川分科会長に最終的な御判断にお任せするところであります。今回は諮問ですのでそのような取扱いでよいと思います。ただ、繰り返しになりますが、全体を読めば確かに「生きがい」の中に「働きがい」を包含するというのはその通りなのですが、そうであるならば、「生きがい・働きがい」を併記してもよいのではないかという気持ちはあります。
 ただ、冒頭申し上げたとおり、山川分科会長の御判断に御一任したいと思います。よろしくお願いします。
○山川分科会長 大変ありがとうございます。
 本件は医道審議会との調整の問題といいますか、そういう考慮事項もございますので、さっきのような理解の上でこのような形ではいかがか。また、今回、特に見直しを明言する形になっておりますので、その辺りは今後の課題として受け止めていただければと思うところでございます。
 それでは、ほかに御意見ございますでしょうか。今の点でも結構ですし、ほかの点でも結構です。
 では、馬渡委員お願いします。
○馬渡委員 全国中央会の馬渡でございます。私の発言を御紹介いただきましたが、ちょっとフォローをさせていただきます。
 今回の看護師の方に限った方針決定につきましては、変更点に別段異議はございません。
 ただ、いろいろな資料を見せていただきましたけれども、現在の状況としては夜間保育所が非常に少ないという実態が分かりましたので、そこはやはり問題ではないか。特に今回の看護師の方も、院内保育所を持たない医院に働いている方もたくさんいらっしゃいますし、できましたら医療従事者だけではなくてエッセンシャルワーカーと呼ばれる方々全体として夜間勤務の負担軽減、もしくはそのハラスメント対策、保育施設の充実というものを全般的に行っていただいて、看護師の方も夜勤が多いですから、どこの地区に行っても安心して働ける環境整備をぜひ進めていただきたいなという思いから発言をいたしたところでございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 この点は、事務局いかがでしょうか。
○習田看護課長 看護課長でございます。御指摘ありがとうございます。
 看護師につきましては夜勤業務がございますので、夜間保育は非常に重要なところだと認識しております。
 院内保育に限って申し上げれば、医政局では地域医療介護総合確保基金を通じて財政支援をしておりますので、こういった点も含めて引き続き財政支援をして院内保育所の確保に努めていきたいと考えてございます。
○山川分科会長 馬渡委員、何かございますか。
○馬渡委員 院内保育が増えるのは望ましいと思いますけれども、公的な保育所が院内保育というか、夜間保育を充実させていただくと全体のエッセンシャルワーカーも助かるなという思いでございますので、どうぞ院内保育だけに限らず充実をお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、冨髙委員お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 前回、発言した内容について幾つか落ちておりますが、一定盛り込んでいただきました。
 その上で、今回30年ぶりの改正ですので、その改正の内容については医療機関をはじめ、この指針が関連する機関や職場に広く周知を行っていただきたいと思います。また、「各医療機関等の実態に応じて」という文言が賃金のところで残っておりますが、前回も申し上げたとおり、看護師等の職場環境や給与水準の向上に資する取組が確実に前進をしていくよう、様々な施策を推進していただきたいのが1点でございます。
 それから、前回も皆さんからあったように、今後はぜひ定期的に指針の見直しを行っていただくということと、関連する審議会での報告も丁寧に行っていただきたいと思います。
 先ほど新田委員から御発言があった「生きがい」の部分につきましては、私も違和感は同じように持っております。働くことに関することですので、本来は「働きがい」や、「やりがい」といった言葉のほうがいいのだろうと思っておりますし、このようなことは関係局が連携をして、もう少し前段階から丁寧に議論をするべきであったと感じています。
 その点に気をつけていただいて、今後は丁寧な運用をしていただければと思いますのでよろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 事務局から何かございますか。
○井上人材確保支援総合企画室長 今、冨髙委員のほうから御指摘いただきました指針の周知という部分につきましては、医政局とよく連携をしながらしっかりと行ってまいりたいと考えておりますし、2点目の定期的な見直しの部分につきましては、冒頭申し上げたように、今回医療提供体制の状況に応じて見直すということを盛り込んでおりますので、その医療提供体制を変えなければいけないというタイミングでしっかりとまた議論をしていく。その際には、医療審議会と労働政策審議会のほうの連携を密にしながらうまく整理ができるように、医政局とよく連携を図ってまいりたいと考えております。
○山川分科会長 よろしいですか。
○習田看護課長 1点、審議会の報告について丁寧にという御意見がございました。
 働きがいというところにつきましては、これまで看護師は前回指針ができてから30年たっていて、それまでの間、新人看護職員研修ができたり、特定行為研修ができたり、看護師が自己研さんをしていくという仕組みが徐々に出てきて、看護師もかなり今、働きがいを持って働いておられているところだと考えております。
 そうした中で、あえて働きがいという文言を使ってしまいますと、働きがいがない職場なのではないかといった誤ったメッセージが伝わってしまってはいけないかなというところがございまして、今回はそういった懸念があるので、このままの書きぶりにしていきたいと考えております。
 また、周知については今、御説明があったとおり、関係団体を含め丁寧に周知をしていきたいと考えてございます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 いろいろな点について御説明いただきましてありがとうございます。特にお聞きしたいことを特定する趣旨でこちらから振ったわけではありませんので、ありがとうございます。
 冨髙委員、何かございますか。
○冨髙委員 大丈夫です。
○山川分科会長 よろしいでしょうか。
 ほかにいかがですか。
 では、どうぞ久松委員よろしくお願いします。
○久松委員 久松です。よろしくお願いします。
 改定の内容については特に異論があるわけではありませんが、1点だけ発言をさせていただきます。
 前回の分科会で出されました参考資料、看護師等の確保をめぐる状況の中に、医療関係職種である一般労働者の平均賃金があります。看護師については平均年齢39.4歳、平均勤続年数7.8年、月収換算の平均賃金が40万7000円と、賃金センサスから算出された数字が示されておりました。これについては、時間外労働や深夜労働などの超過労働給与も含まれている数字です。
給与水準については医療機関の設置主体や、同じ医療機関であっても、夜勤がほとんどないオペ室や外来などと、夜勤の多い入院病棟など、看護師の働き方によっても大きくばらつきがあると思っています。
 現場からは、今後検討するにあたっては、時間外手当なども含めた平均賃金水準ではなく、基本給そのものの引上げが重要と聞いておりますので、給与水準の向上の推進に当たってはそのような視点が必要であることを申し上げさせていただきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 久松委員から、給与水準という、より具体的な御発言をいただきました。
 こちらは、事務局から何かございますか、
○習田看護課長 確かに給与水準、基本給については御指摘のとおり重要な点だと考えております。御意見として承らせていただきます。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。非常に貴重かつ重要な意見を種々いただいたところでございます。御意見につきましては受け止めさせていただきまして、先ほど来御説明がありますように、指針そのものに見直しを行うという規定が入りましたので、その辺りを活用して今後、今回出たような意見も受け止めつつ御検討いただきたいと思いますし、また指針の周知等についてもよろしくお願いいたしたいと思います。
 その上で、当分科会としては厚生労働省案をおおむね妥当というふうに認めて、その旨を私から労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思っております。そのような方向で御意見ございますでしょうか。おおむね妥当ということで御報告をいたしたいということであります。
 では、特に御意見がございませんでしたので、報告文案の表示をお願いします。
(報告文案表示)
○山川分科会長 それでは、表示されたこの報告文案をおおむね妥当と認めるということで、労働政策審議会会長宛てに報告をするということで御異議ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川分科会長 それでは、御異議ございませんでしたので、そのように報告をさせていただきたいと思います。
 習田看護課長につきましては御退席いただいて結構でございます。
(習田看護課長)
○山川分科会長 では、次の議題に移ります。議題(2)は、「職業安定法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」の諮問になります。
 議題内容につきましては、第360回労働力需給制度部会においてあらかじめ議論を行っていただいております。
 資料及び部会の議論につきまして、事務局から説明をお願いします。
○中嶋需給調整事業課長 承知しました。需給調整事業課長の中嶋でございます。
 議題の(2)「職業安定法施行規則の一部を改正する省令案」について御説明をいたします。
 諮問でございますので、資料は2-1としまして省令案要綱を、それから資料2-2としまして省令案の概要をお示しております。説明のほうは資料2-2の横書きのものに沿ってさせていただきます。
 まず、「1.改正の趣旨」を御覧いただければと存じます。
 こちらにありますように、今年の6月16日に閣議決定をされました規制改革実施計画におきましては、職業紹介事業者について厚労省の「人材サービス総合サイト」上での情報提供を義務づけております事業所ごとの離職状況につきまして、今年度中に離職者数の情報提供期間を現行2年から5年へ延長するということにされました。
 この規制改革実施計画について、少し補足をさせていただきます。資料が飛びまして恐縮ですが、参考資料2を御覧いただきたいと存じます。
 3ページで小さな字になりますけれども、こちらが「規制改革実施計画」の抜粋でありまして、これをもって職業紹介関係の内容を御紹介させていただきます。
 冒頭、趣旨書きのようなところで1パラ目であります。字が小さくて申し訳ありませんが、読む形で御紹介をさせていただきますと、厚労省は医療、介護及び保育分野、これを3分野と呼びますが、この3分野における人手不足を背景に、3分野の求人者において職業紹介事業者に支払う紹介手数料への負担感が強く、また、一部の3分野の事業者において短期間での離職が多いとの指摘があることを踏まえ、既にいわゆるお祝い金の禁止、都道府県労働局への『医療・介護・保育』求人者向け特別相談窓口の設置、それからハローワークにおける3分野のための人材確保対策コーナーの拡充などを実施してきたものの、依然として3分野の人手不足は深刻であり、また、3分野を扱う職業紹介事業者の業務の質や紹介手数料、いわゆるお祝い金などに関する問題も引き続き指摘されていることを踏まえ、様々な措置を講ずるとされたところでございます。
 今回お諮りをいたします離職者数の情報提供期間につきましては、これら様々な措置のうち、この資料ではCの後段というところに位置づけられております。
 これも読ませていただきますと、厚労省の「人材サービス総合サイト」で公開されている紹介事業者ごとの離職状況について、「判明せず(人)」の欄に多数を計上し、離職率の正確な状況が明らかでない紹介事業者が存在することを踏まえ、当該欄に計上した人数が相当程度多い紹介事業者に対して追跡調査を徹底させるとともに、これら離職者数の公表期間を現行の2年から5年へ延長するとされております。
 以上が、「規制改革実施計画」の該当部分でございます。
 それでは、資料2-2の省令案の概要にお戻りください。
 「1.改正の趣旨」の2つ目の○から改めて御説明をいたします。
 ただいま御紹介をいたしましたとおり、規制改革実施計画では離職者数についてのみ言及があったところですが、これに就職者数も併せて情報提供しなければ事業所ごとの離職状況の把握は難しいと考えられますので、就職者数の公表期間についても現行の2年から5年へ延長するということで考えております。
 こうした点を踏まえまして、職業安定法施行規則において所要の措置を講じるというのが今回の改正の趣旨でございます。
 続いて、中ほどの「2.改正の概要」を御覧ください。
 今、述べました趣旨に添いまして、具体には職業安定法施行規則の第24条の8第3項及び第4項について、有料職業紹介事業者がインターネットを利用して提供しなければならない情報である就職者総数及び無期雇用就職者総数並びに無期雇用離職者総数等について、情報提供の期間を2年から5年に延長すること。
 その際、この改正は3分野の職業紹介における議論を端緒としたものではありますが、労働市場全体の機能強化に資するものとして、これを全ての職業紹介事業者に適用するという考えでございます。
 なお、無料の職業紹介事業者につきましても、有料と同様に情報提供の期間を2年から5年に延長してはどうかと考えております。
 それでは、省令改正案の要綱それ自体を御覧いただきたいと存じます。資料の2-1をよろしくお願いいたします。
 第1とあるのが、今述べました「就職者数及び離職者数の情報提供期間の延長」です。ややくどくて恐縮ですが、既に述べましたように「職業紹介事業者がインターネットを利用して提供しなければならない情報である就職者総数及び無期雇用就職者総数並びに無期雇用就職者のうち、離職した者の総数等について、情報提供の期間を2年から5年に延長すること。」
 第2は、施行期日についてです。この改正省令は公布の日から施行するというものでございます。この公布の日につきましては、先ほどの横書き資料の4.のところに記載をいたしましたが、人材サービス総合サイトの改修に要する期間などを考慮しまして今年の10月23日としてはどうかと考えております。
 最後になりますが、事前に御審議をいただきました労働力需給制度部会の状況について報告をさせていただきます。
 本件につきましては、3分野における人手不足は深刻であり、今回の省令改正に限らず、規制改革実施計画の内容について着実に実施していくこと、また、今回の省令改正についてその内容の周知と効果の検証をしっかり行っていくことといった御意見をいただいた上で、特段の異議なく妥当との御意見をいただいております。
 資料の説明等は以上でございます。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして御質問、御意見等がありましたら、先ほどと同様の方法で御発言をお願いしたいと思います。御質問、御意見等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。労働力需給制度部会では、ただいま説明していただきましたように妥当という報告になっております。特にございませんでしたら、当分科会は厚生労働省案を同じように妥当と認めて、その旨を私から労働政策審議会会長宛てに報告するということではいかがかと思います。御意見等、ございますでしょうか
 それでは、特にございませんので、報告文案の表示をお願いします。
(報告文案表示)
○山川分科会長 部会の妥当という報告を受けて、当分科会でも妥当ということで、この報告文案で報告を労働政策審議会会長宛てに行うということで御異議ございませんでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川分科会長 ありがとうございます。御異議ございませんでしたので、そのように報告をさせていただきたいと思います。
 では、次の議題に移ります。諮問事項の3番目になります。議題の(3)「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」の諮問になります。こちらは、議題内容につきまして、第182回雇用保険部会であらかじめ議論を行っていただいております。
 では、資料と部会での議論について事務局から説明をお願いします。
○尾田雇用保険課長 雇用保険課長でございます。
 資料は3-2で御説明させていただきたいと思います。おめくりいただきまして、横書きの紙でございます。
 概要でございますが、今回の省令改正の趣旨ですが、押印の見直しの関係でございます。押印の見直し自体は令和2年、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、政府全体として行政手続における押印の原則廃止という方向性が打ち出されまして、それに従いまして雇用保険手続も含めて全体的に押印の見直しを行ったところでございます。
 一方、雇用保険手続におきましては大きく分けて2系統で手続を存続させております。1つが、あらかじめハローワークに御登録いただいた印影とその都度印鑑を確認するような厳密な手続を経て実施をしている手続につきましては、依然として押印が必要と整理させていただきました。
 もう一つは、労働者の申請書類の中で事業主の証明欄がある手続につきまして、その内容の真正性を担保するために事業主の印を求めていたという手続、この2系統につきまして継続させていたところでございます。
 しかしながら、改めて雇用保険における押印の必要性を整理いたしまして、他の手続においては既に原則廃止ということでこのルールが貫徹されていることも踏まえまして、雇用保険におきましても改めて押印を全体的に廃止していくということで、今、申し上げた2系統につきましても押印を原則廃止することとしで、今回省令を含めて全体的な規定の見直しを図ることとしたところでございます。
 なお、金融機関の届出印は行政手続の中でも依然として存続しておりますので、これについては存続するということにしております。
 「改正の概要」でございますが、今回省令改正としては2つございます。
 まず1つ目が、代理人を選任・解任した場合にはその選任届、解任届というものを出していただくことになっております。この際、併せて代理人の印影も登録していただくことになっておりますが、これを不要といたします。
 もう一つでございますが、再就職手当など、本人が申請する書類におきます事業主証明欄におきまして「印」という欄を削除する。あわせまして、「記載内容について、記載した方に直接確認する場合があります。」との表示を行うというものでございます。
 これらの改正につきましては9月下旬に公布いたしまして、施行は速やかに10月1日からということを予定しております。
 次のページに様式の例を示しておりますので、御覧いただきたいと思います。こちらは、再就職手当の支給申請書でございます。中ほどに「事業主の証明」という欄がございまして、こちらは再就職した場合に再就職先の事業主の方に、その雇用が1年以上の雇用見込みがあることなどについて証明していただくものでございます。
 この右下に「印」というところを設けておりましたが、これを今回削除いたします。
 あわせまして、この証明書の一番下でございますけれども、(注)として「記載内容について、記載した方に直接確認する場合があります。」ということを改めて記載させていただいております。これは、押印の廃止に伴いまして不適切な内容、あるいは内容に疑義があるときには、必ず事業主の方に確認させていただくということにしまして、そうしたことをあらかじめ周知することで抑止効果を期待するということも含めて、今回併せてこうした記載を追記したいと考えております。
 以上が、改正内容でございます。
 資料3の1、要綱でございますが、基本的に内容としては今、申し上げた概要と同様でございますので説明は割愛させていただきたいと思います。
 以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 雇用保険部会の議論はいかがだったでしょうか。
○尾田雇用保険課長 部会では特段の御意見はいただかず、おおむね妥当として御了承をいただいたところでございます。
○山川分科会長 それでは、本件につきまして質問、御意見がありましたら、先ほどと同様の方法で御発言をお願いいたします。御質問、御意見等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。特にございませんでしたら、雇用保険部会の方でもおおむね妥当ということだったとのことですので、当分科会としても厚生労働省案をおおむね妥当と認めて、その旨を私から労働政策審議会会長宛てに報告したいと思っております。この点について御意見等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 では、報告文案の表示をお願いします。
(報告文案表示)
○山川分科会長 雇用保険部会でおおむね妥当と認める。それで、当分科会としてはそれと同様、別紙1のとおりということで報告をいたしたいと思います。
 これで、御異議ございませんでしょうか。
(首肯する委員あり)
○山川分科会長 ございませんでしたので、このように報告をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 では、最後の議題(4)の「その他」になります。こちらは、雇用保険部会における議論ということであります。
 事務局から説明をお願いします。
○尾田雇用保険課長 雇用保険課長でございます。
 先日、9月7日に開催されました雇用保険部会におきまして、雇用保険の見直しに関する議論を開始いただいたところでございます。本日は、そのときに用いました資料をかいつまんで御説明させていただきたいと思います。
 まず資料の4-1でございますが、おめくりいただきまして1ページ目が「雇用保険制度の概要」でございます。
 雇用保険制度は、労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び子を養育するための休業をした場合に、生活及び雇用の安定並びに就職の促進のために失業等給付及び育児休業給付支給する。これが1つと、もう一つは失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力開発向上、その他労働者の福祉の増進を図るための二事業を行う、雇用に関する総合的機能を有する制度というふうに今はなっております。
 それで、「失業等給付」の内訳でございますが、まず求職者給付がございます。こちらの柱は基本手当でございまして、失業した場合に離職前賃金の5割から8割の給付を年齢、被保険者期間、離職理由に応じまして90日から330日の所定給付日数の間、失業認定を受けた日について支給するというものでございます。
 これと連動する制度といたしまして、早期に再就職等をした場合の手当、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当等、こういった一時金を支給することによりまして早期再就職を促していくということになっております。
 次に【教育訓練給付】でございますが、こちらは被保険者または辞めてから1年以内の方が厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受け、終了した場合に、費用の一定割合を支給するものでございます。現在は3種類ございまして、一般教育訓練給付、支給率20%、特定一般、支給率40%、そして専門実践については最大70%ということでやっております。
 次の【雇用継続給付】につきましては今2つございまして、1つが高年齢雇用継続給付、60歳到達時点の賃金から一定低下したまま働いている方につきまして、65歳まで一定割合を支給するという給付でございます。介護休業給付については、介護休業をした場合に休業前賃金の67%を支給するというものでございます。
 「育児休業給付」でございますが、こちらは子が1歳になるまでの間の育児休業に対しまして、最初の180日は休業前賃金の67%、残りは50%を支給するというものです。ただし、一定の条件の下で2歳まで延長ということになっております。
 これらが給付でございますが、それと一体となったものとして「雇用保険二事業」というものを、こちらは事業主負担の保険料で実施させていただいております。雇用安定事業、雇用調整助成金などの助成金を支給しております。能力開発事業として、人材開発支援助成金の助成などの助成事業や、職業訓練の実施などを推進しているところでございます。
 2ページ目が、これを全体に体系にしたものでございます。こちらの図で保険料と国庫負担を確認いたしますと、まず失業等給付につきましては労使折半で保険料を負担していただいています。うち、求職者給付については国庫負担は4分の1または40分の1、そして雇用継続給付のうち介護休業給付については国庫負担は原則8分の1で、現在は80分の1となっております。
 そして、育児休業給付につきましても労使折半の保険料と国庫負担原則8分の1、ただし現在は80分の1となっております。
 一番下の雇用保険二事業については、事業主に御負担いただいている保険料のみで運営しているところでございます。
 中ほどの求職者支援事業につきましては、労使折半の保険料と国庫負担、それぞれ2分の1で運営しておりますが、現在この国庫負担割合につきましては2分の1の100分の55ですから27.5%となっているところでございます。
 以下、説明は省略させていただきます。
 続きまして、資料の4-2は主要指標ということで、雇用保険制度の今、御説明した各事業の現在の運営状況についてお示ししたものでございます。
 3ページ目を御覧いただけますでしょうか。
 この資料では、基本手当についてのみ簡単に御説明させていただきます。失業した方に対する給付でございますが、左の年度ごとの推移を見ていただきますと、新型コロナ感染症の影響によりまして、令和2年度に受給資格決定をされた方の人数は、それまで経年的に低下しておりましたものの、151万件ということで伸びております。
 その後は落ち着いているという状況でございますけれども、月ごとの状況を御覧いただきますと、令和5年に入りまして1月以降は前年比プラスで推移しているところでございます。
 次のページが、その月に受給している方の人数、受給者実人員でございます。こちらも年度ごとの数字を見ていただきますと、2年度に伸びまして、3年度はその受給決定の伸びの影響が引き続いておりまして高止まりしておりましたが、3年度、4年度と経年的に落ちてきているということでございます。
 一方、直近の状況でございますが、4月以降は前年比プラスということで、こちらもプラスで推移しているところでございます。
 あとの資料については御説明を割愛させていただきます。
 続きまして、資料の4-3でございます。
 こちらの13ページを御覧いただきたいと思いますが、失業等給付の収支状況でございます。9月に4年度決算が固まりましたので、それを反映した表になっております。4年度の収入でございますが、保険料収入は年度前半が労使合わせて0.2%、後半が0.6%という保険料をいただきました。それで、収入といたしましては7800億、一方で臨時的に補正予算で国庫からの繰入れを行った結果、国庫負担金につきましては7444億という金額になって、収入が合計して1兆5453億となっております。
 一方、支出のほうは前年から1600億ほど減りまして1兆2913億ということになっております。給付の減を反映した減になっております。その結果、差引剰余が2540億です。
 一方で、雇調金等の支払いの関係で雇用安定事業のほうに積立金から繰り入れた額が590億発生しております。その差引きで、それでもプラス2000億ほどになっておりますので、最終的に積立金残高は前年より増えまして1兆4410億となっております。
 これを5年度予算に反映させたのが5年度の収支イメージとなっておりますが、こちらのほうでは下から3行目の雇用安定事業費への貸出しを4600億立てております関係で、最終的に積立金残高は減という予算になっておりますが、これについては次のページで御説明させていただきたいと思います。
 こちらは、「令和5年度の雇用保険二事業関係の収支状況」でございます。
 令和4年度でございますが、支出のほうの雇用調整助成金が最終的に8356億の支出ということで決算をしたところでございます。この結果、収入に対して支出が多かったことから、先ほど申し上げたとおり上から4行目でございますが、積立金からの受入れということで590億円の収入を立てて、年度末の安定資金残高としてはゼロ、そして括弧内の積立金からの繰入累計額でございますが、約2.9兆となっております。
 この決算を反映させた5年度予算が右の収支イメージでございますけれども、こちらの支出のほうの3つ目の雇用調整助成金、6400億円を予算現額として確保しております。その結果、収入を超えますので、収入の内訳の3行目でございますが、積立金からの繰入れが4600億必要という予算になっております。その結果、安定資金残高はゼロで、かつ繰入額が増加するという予算になっております。
 ただし、12ページを御覧いただければと思います。雇用調整助成金の現状でございますけれども、昨年、令和4年度に雇用調整助成金につきましては段階的に縮小し、原則に戻るということで御了承いただいたところでございます。その結果、本年度は年度当初からはほぼ通常の雇用調整助成金制度に戻った形で運用しております。その結果、令和5年の4月は221億、5月は148億、6月は69億、7月は11億ということで、徐々に普通の形支出額戻りつつあるという状況でございます。ですので、今の状況が続けば令和5年度中の支出額は1000億を超えることはないという状況でございます。
 ですので、先ほどの14ページに戻りますと、予算編成当時はまだ状況が分からないということで予算額を確保させていただきましたが、実勢は今ご説明したような形になりますので、恐らく雇調金の支出は減り、また積立金からの受入れもこのような規模では必要にならないということが見込まれているところと考えております。
 続きまして、15ページの育児休業給付でございます。こちらは、先ほど実績のところで育児休業給付の説明を割愛させていただきましたが、令和3年度から4年度にかけて支出は450億ほど伸びております。その結果、差引剰余は生じましたが、780億ということで残高が3090億になっております。
 これを反映させた5年度の収支イメージが一番右でございますが、予算上、支出を0.78兆円と見込んでおります。これは実勢からいたしますと、あながち遠くはなく、今も特に男性を中心にかなり高い伸びを見せておりますので、これに近い数字になる可能性がございます。その結果、差引剰余は生じますものの、かなり少額になり、このままいきますと、6年度には単年度で赤字が立つことが見込まれるというのが現状でございます。
 以上、財政状況でございます。
 続きまして資料4-4でございますが、こちらの内容につきましては6月の分科会のほうで安定局関係の閣議決定として御報告した雇用保険の分を抜き出したものでございますので、恐縮ですが、本日説明は割愛させていただきたいと思います。
 次に資料4-5でございますけれども、こうした説明を踏まえまして今後の論点としてお示しさせていただきました。基本手当の在り方、育児や教育訓練に関する給付等の在り方、適用の在り方、暫定措置の在り方、財政運営の在り方、その他各種給付・事業の在り方、こういった内容を論点として示させていただいたところでございます。
 これで一旦、総論として御意見をいただいた後に、次の資料4-6で各論としてまず基本手当等に関しまして御意見をいただいたところでございます。
 おめくりいただきまして、資料の4ページ目以降に基本手当の概要をつけております。それで、5ページ目に基本手当の日額、6ページ目に給付日数のテーブル、7ページ目にこの金額については毎年改定しているという旨でございます。
 8ページ目に、便宜的にこのような形で表を作らせていただいております。離職理由による区分として、倒産・解雇等により辞められた方、すなわち特定受給資格者であるか否か、そして期間の定めのある有期の労働契約で更新が叶わなかった方、あるいはやむを得ない理由により離職した方、これを特定理由離職者と言っております。あるいは、定年や期間満了で辞められた方、正当な理由のない自己都合により辞められた方等々、区分によりまして給付制限の有無、受給に必要な被保険者期間の長さ、そして所定給付日数、こういった形で違っているというものを一覧にしたものでございます。
 9ページ目は基本手当に着目いたしまして、主な制度変遷を記載させていただいたところでございます。
 10ページ目でございますが、これは確認といたしまして基本手当日額が再就職された場合の日額を超えているか否かをグラフにしたものでございます。個々の労働者で見たら基本手当より低い額で就職されている方もいらっしゃる状況ではございますが、あくまでも平均で見たところ、再就職賃金は基本手当日額を超えている。基本手当日額が再就職賃金を上回ることはないという状況を確認させていただいております。
 13ページでございますけれども、次に給付制限について少し資料をつけております。給付制限は、正当な理由がなく自己都合で辞められた方について7日間の待期期間を満了してから2か月間は失業給付が受けられないという制度でございます。
 それで、例外がございまして、1つには※1でございますが、公共職業訓練を受ける場合には受け始めてから基本手当が受けられる。2つ目として、この給付制限期間であっても安定した再就職をすれば再就職手当を受けられるという例外がございます。
 下に考え方が記載されておりますが、雇用保険の求職者給付は倒産・解雇など自らの意思によらない失業に対して給付を行うことが基本である。そうした考え方でございますので、自らの意思による離職者を同様に扱うことは基本手当受給目的として離職する方の誘発になりかねない等々の理由からこのような制度が設けられているということでございます。
 次のページでございますが、この期間につきましては雇用保険法制定当初は1か月でございました。それを昭和59年に3か月に延長し、令和2年10月からは2か月に一旦緩和をしているという状況でございます。
 また、訓練受講の扱いにつきましては、平成6年に初めて導入されまして、令和4年改正で対象訓練に求職者支援訓練を追加したところでございます。
 15ページでございますが、この給付制限の対象となる自己都合離職者の割合でございますが、近年は5割程度で推移しているというところでございます。
 16ページ、17ページは令和2年の改正、先ほど申し上げました3か月から2か月に給付制限期間を緩和したという制度改正の前後で、どのように行動が変化したかを見たものでございます。
 16ページは、期間経過ごとの就職者の割合を見たものでございます。赤い線を引いておりますのが、給付制限期間の終期でございます。これが3か月から2か月に短縮されましたので、単純にそれで前倒しになっている部分もございますが、1か月間、2か月間のときに就職した方が、従前ですと23.4%だったのが19.6%に低下している。これがちょうどコロナの時期でございましたので、新型コロナウイルス感染症の影響も多少あるでしょうし、はたまた給付制限期間が短縮されたということで少し就職を待たれた方がいるのか、そういうところは分かりませんが、いずれにしてもこういったデータが出ております。
 その次のページでございますけれども、これは上の折れ線グラフが給付制限のない方、すなわち倒産・解雇等で辞められた方で受給資格決定を受けた方のうち、実際受給を開始された方の割合です。こちらのほうはほぼ100%ということで、手続をした方はほぼ全ての方が給付に移られているということでございます。
 一方で、下のほうは、給付制限がある方について同じような状況を見たものでございますが、これはコロナ直前では6割まで低下しておりました。しかしながら、令和2年以降、7割程度に上がってきているということで、こちらは令和2年以降の給付制限期間の緩和が一定影響しているのではないかということが見て取れるかと思っております。
 1ページ飛ばしまして19ページでございますけれども、諸外国の状況を見ますと、こういった自発的な失業を別扱いするという扱いは我が国特有なものではございません。アメリカ、フランスについては基本的には対象としない。フランスについては近年、一部を対象にするという形になっておりますが、そういう形です。
 一方で、イギリス、ドイツ、スウェーデン、デンマークは日本と同様に給付制限を行うという扱いをしております。
 以上が、給付制限関係でございます。
 ちょっと資料を飛ばさせていただきまして、29ページ以降は暫定措置の関係でございます。
 今回、基本手当関係の暫定措置について御意見を伺いました。平成29年に改正した際に、それまで講じておりましたリーマンショック当時に創設した特例措置の見直しにあたり、2つ暫定措置を講じたところでございます。
 右のマル1でございますが、1つが雇用情勢が悪い地域に居住する方の給付を60日延長する暫定措置、もう一つが下のマル3でございますが、雇止めを受けた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等の特定受給資格者と同様の給付日数とする暫定措置、この2つでございます。
 32ページを御覧いただきますと、まず先ほど御説明した所定給付日数の暫定措置の対象となる方でございますけれども、これは近年、人数としては低下しておりましたが、令和2年のコロナの影響かと思いますが、これが絶対数としては倍になりまして、ただ、その後また元の水準に戻ってきているところでございます。
 33ページは就職率の推移でございますが、景気の回復とともに少しずつ上がってきておりまして、現在は75%前後ということになっております。
 一方で34ページでございますが、これは受給の推移とともに就職率を見たものでございます。真ん中の黄色い数字が、支給終了までに就職された方の割合です。令和3年度ですと57.4%となっておりますが、この数字は全体の平均より低い数字になっておりますし、または倒産・解雇で辞められた特定受給資格者の方は60%台後半になっておりますが、それよりは10%ポイントほど低い数字になっているというのが現状でございます。
 続きましてもう一つの暫定措置でございますが、35ページの地域延長給付でございます。こちらのほうは、雇用状態が悪い地域をハローワーク単位ごとに指定いたしまして給付延長を行うというものです。直近の指定基準が中ほどのマル1からマル4までございますが、マル1からマル3が、要するにリーマンショックの一番状況が悪い時期の雇用情勢より悪い地域であることということでございます。マル4は、しかしながらその地域の近くに就職ができる地域があるのであればそれは除外するという、いわゆるベッドタウン要件と呼んでおりますが、そういう要件でございます。
 37ページでございますが、こうした制度の下で指定されるハローワーク、これは大臣指定を行っておりますが、この数は直近ですと令和5年度現在、五所川原所と、いの所が指定されております。10月に1所追加される予定でございますが、いずれにしても3所ということになっております。
 次のページが実績でございますが、令和4年度は全国で8名に対しまして236万円を支給したということで、実績としてはかなり小さくなっているということでございます。
 続きまして、「就業促進手当」について今回併せて御議論いただきました。
 40ページに概要がございます。今は4種類ございますが、真ん中の(ロ)(ハ)をまず御説明します。
 (ロ)が「再就職手当」でございます。これは所定給付日数の残日数が3分の1以上ある方が安定した職業に就いた場合には、残った日数の6割、または7割の一時金をお支払いするというものでございます。
 一方、(ハ)の就業促進定着手当はこの再就職手当をもらって就職された方が再就職後の賃金が従前の賃金より低い。それが6か月後に計算した結果、その金額に応じて一時金をお支払いするというものでございます。
 (イ)は、この再就職手当のような就業ではない安定した就業以外の就業をされた場合に、1日当たり基本手当日額の30%相当額が支給されるというものでございます。
 (ニ)の「常用就職支度手当」は、所定給付日数が少ない方について再就職が困難な方に限りまして一時金を支給する。
 この4つの制度が現在、就業促進手当という制度の中にございます。
 43ページでございますが、再就職手当につきましては平成15年の改正で給付率は支給残日数の30%ということになっておりましたが、その後、リーマンショックへの対応とその後の制度改正によりまして、現在は所定給付日数が3分の2以上であれば70%、3分の1以上であれば60%と、かなり高率の給付になっているところでございます。
 実績でございますが、45ページ以下です。
 まず就業手当ですが、これは近年実績が低下しておりまして、3,486名に対して4億円という支出になっております。
 次のページの再就職手当でございますが、これは令和4年度で見ますと36万人に対しまして1428億円というかなり実績の高い給付になっております。こちらについてはコロナの影響で少し実績が落ちておりましたが、右の月ごとの状況を見ていただきますと、昨年の半ば以降はほぼプラスで推移しているという状況でございます。
 次の就業促進定着手当につきましては、制度発足当初は伸びて、その後落ち着いておりました。直近も少し落ちておりますけれども、9万人に対して160億を支出しているというものでございます。
 次の常用就職手当は、こちらも実績が低調でございますけれども、3,419人に対しまして5億円を支給しているというものでございます。
 52ページでございますが、就業促進定着手当について支給状況を見たものでございます。これは、再就職手当をもらった方がもらえる手当でございますので、マル1/マル2というふうに書いているところは再就職手当をもらった方に対する就業促進定着手当の受給者の割合を示したものでございます。直近ですと、令和4年度で25.7%となっております。
 これを年齢別に見たものが左下でございますが、年齢が上がるごとに比率が高まっているということでございます。これは、年齢が上がるごとに再就職賃金が下がる割合が高まるかと思いますので、そうしたことの反映かと思いますが、データ上はこうなっているということでございます。
 53ページでございますが、こうした資料でお示しした上で、「論点」としてこういったものをお示しさせていただきました。
 まず1点目が、失業者の生活の安定と再就職の促進、雇用の安定を図るという失業等給付の趣旨に鑑みて、基本手当(給付水準や給付制限等)の在り方についてどのように考えるか。
 2点目が、上記の失業等給付の趣旨、現下の雇用情勢等も踏まえ、以下の暫定措置についてどう考えるかということで、先ほど御説明した2つの暫定措置でございます。
 3点目といたしまして、人手不足の状況を踏まえ、安定した職業への就職促進や構造的な賃上げの実現の観点から、就業促進手当の在り方についてどのように考えるか。
 以上の資料に基づきまして、御意見をいただいたということでございます。
 部会でいただいた御意見について、簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず財政につきましては、皆様から危機時の対応を念頭に置くと、速やかに財政再建の道筋をつけて財政基盤を強化することが急務であるという御指摘をいただいたところでございます。
 あわせて、保険料率についてこれ以上の過大な負担はないようにという御指摘もいただいたところでございます。
 一方で、国庫負担につきましては、特に国の政策として推進するものということで、挙げられましたのが育児休業給付、そして教育訓練給付についても挙げられましたけれども、そうしたものについて国の負担でしっかりやっていくべきだという御指摘をいただいたところでございます。
 また、「こども金庫」についても、これまでどおり会計が移管されてもこれまで労政審で議論していたことについては引き続き労政審で議論することとすべきだという御指摘をいただきました。
 また、今後の議題になりますが、適用拡大について今後の議論の中で複数就業、あるいはマルチジョブホルダーの検証、それと労働者性の問題、そういったものも論点だという御指摘と、あとは給付面で特に慎重な検討が必要であるという御指摘をいただいたところでございます。
 あとは、基本手当につきましては、給付水準について従前の水準に見直すべきだという御意見と、再就職後の賃金改善につながるという明確なエビデンスがない中では慎重に検討すべきだという両論をいただきました。
 また、給付制限につきましてはミスマッチ解消のために短縮が望ましいという御意見の一方で、安易な離職を誘発しないような制度設計が必要である。あるいは、財政影響への懸念という御指摘もございました。また、労働移動を推進する方向での見直しが必要という御意見もいただいたところでございます。
 所定給付日数の暫定措置につきましては、先ほど御説明した就職状況でございますので、制度の恒久化も含めて検討すべきという御意見の一方で、暫定措置については効果検証をしっかりして、終了を含めて見直しを検討すべきだという御意見もございました。
 地域延長給付につきましても、実績が低調な原因をしっかりと分析すべきであり、活用が進むようにするという視点もあるのではないかという御指摘の一方で、維持する必要はないのではないかという御指摘もございました。
 最後に、就業促進手当につきましては、実績が少ないことの検証が必要であるということ、また、特に就業促進定着手当でございますが、再就職時の賃金が低下する方のための支援として必要ではないかという御意見の一方で、現下の政策の状況等を踏まえると再検討は必要ではないか。そして、制度全体について効率化を図っていく必要があるのではないか。そのような御指摘をいただいたところでございます。
 以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、種々、多岐にわたる論点が御議論の対象になったというような印象がありますけれども、本件について御質問、御意見がありましたら、先ほどと同様の方法で御発言をお願いいたします。御質問、御意見等ありますでしょうか。
 新田委員、お願いします。
○新田委員 経団連の新田でございます。
 詳細な御説明、御報告ありがとうございました。
 ただ、最後の雇用保険部会での意見紹介は非常にありがたいのですが、かなり情報量が多かったので、もし次回以降このような形で分科会に報告される際には、簡単で結構ですので、できれば書面でご報告いただけると非常にありがたく思います。
 その上で、資料4にあるとおり、雇用保険部会で主な論点案が示されて、いよいよ雇用保険制度の見直しの議論が始まったと承知をしております。
 主な論点の中で私からは2点、育児や教育訓練に関する給付等の在り方と雇用保険財政についてコメントさせていただきます。
 雇用保険部会で経団連推薦の委員からも申し上げたところでありますが、教育訓練に関する給付については、資料4-4の2ページ目「骨太方針2023」の第2章で紹介されている通り、「三位一体の労働市場改革」の大きな柱の1つとして「リ・スキリングによる能力向上支援」が明確に掲げられていると理解をしております。そこでは、現在、企業経由が中心となっている在職者への学び直しの支援策について、5年以内を目途に効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるよう、個人への直接支援を拡充すると明記されております。またその際に検討するものとして、教育訓練給付の拡充が挙げられております。
 現在の雇用保険制度においては、個人への直接給付というスキームは教育訓練給付しかありません。財源とも関係してきますが、今、教育訓練給付には、国庫が全く入っておらず、労使双方の雇用保険料のみで負担している状況にあります。
 教育訓練については、今後ますます個人向けに活用を進めていくという観点からすれば、使い勝手をよくするという面では給付率を高めるという手段もあるでしょうが、一方で受給の要件を緩和するといった手段もあり得ると思っています。
 そういった際に、必要な財源をぜひ一般財源で手当をして国庫負担を入れることによって、「リ・スキリングによる能力向上支援」について、政府がしっかりと取り組んでいくことを、ぜひ明確に示していただく必要があると考えております。この点は特に強調しておきたいと思います。
 2点目は、雇用保険の財政運営であります。資料4-3でいろいろ御説明がありましたが、特に象徴的なのは、最後の16ページの図だと思いながら御説明を拝聴しておりました。雇用安定資金は積立金勘定から大幅な借入れをしているにもかかわらず、3年度連続残高ゼロで、令和5年度末も恐らく同じ状況が見込まれていると理解をしております。この多額の借入金については当然返済をしていくことになりますが、果たして事業主だけで負担している雇用安定資金から全額返済していくのが適切なのかどうか。返済の方法については、今回の特例措置も含めた雇調金の受益者は誰なのかといった観点も含めて、ぜひ幅広に議論をしていきたいと思っています。
 加えて、失業等給付の積立金も、大幅に減っております。また、もちろん望んでいるわけでは全くないのですが、今回のコロナ禍のような有事の際に、有益で有効な雇用政策が打てるのかどうかを考えると非常に厳しい状況にあると思っています。ぜひ早期に雇用保険財政の健全化に向けた道筋をつけるべく、議論を加速化していただきたいと切に願っているところでございます。
 私からは、以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、堀委員どうぞ。
○堀委員 JILPTの堀です。どうもありがとうございます。
 詳細な説明ありがとうございました。私からは、2点お願いをさせていただきたいと思います。
 まず1点目は地域延長給付なのですけれども、先ほどの資料を拝読する限りは役割が小さくなっているように見えますので、一旦、取りやめるというような方向もあり得るのかと存じております。
 ただ、現在給付されている方もいるということから、移行期間などの配慮をした上で縮小の方向ということが考えられるのではないかと思っております。
 第2点目なのですけれども、給付制限期間についてです。給付制限期間は前回、3か月から2か月に短縮するというような変更があったわけですけれども、この変更が求職者の行動にどんな影響を与えたのかにつきまして議論できるようなデータの整備をお願いしたく存じます。現在、給付制限期間はさらに短縮するというような議論も出ているようですけれども、仮にそうなった場合に、例えば雇用保険財政にどのような影響が出るのかなど、予測を持っていければと考えております。
 以上、2点どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、西尾委員お願いします。
○西尾委員 雇用保険部会の報告をしていただきましてありがとうございました。
 今回の御報告を受けた詳細な議論については雇用保険部会でも行われるということではありますけれども、何点か発言をさせていただきたいと思います。
 雇用保険制度は雇用のセーフティネットですので、引き続き雇用の非常時に備えて臨機応変に対応が可能な制度となっていることが重要だと思っています。そのためには、財政基盤の強化は急務だと考えています。そして、国策として推進する政策については、財源も含めて国が一定の責任を持つべきであると考えています。
 また、こども未来戦略方針の中で示されている施策の中には雇用保険財政に影響があるものも多いです。従来、雇用保険部会において議論を行ってきた財源の在り方や雇用保険料、保険料率などの事項に関しては、引き続き雇用保険部会において検討する枠組みを維持するということが重要だと思いますので、申し上げておきます。よろしくお願いします。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 黒澤委員、お願いします。
○黒澤委員 ありがとうございます。
 詳細な御説明をいただきまして、どうもありがとうございます。大変複雑になっているということに驚いているところなのですけれども、私からも2点ほどございます。
 1点目は、先ほど堀委員からもあったように、地域の延長給付の話です。利用者が減っているということもあるのですが、地域で人を動かすということを考えたときに、給付というやり方ももちろんあるのですけれども、広域の職業支援を充実させるなど、何か補完的な形でマッチング機能を高めるという方策はいかがでしょうか。もうなさっていらっしゃるとは思うのですが、そのさらなる充実をしながら徐々に縮小していくということをお考えいただいてもいいのかなと感じました。
 もう一点は、最初に経団連の新田委員からもあったことなのですけれども、リ・スキリング、教育訓練についてです。特に非正規労働者の方々のリ・スキリングになかなか手が届いていない状態になっています。公共職業訓練に在職訓練というものがございますが、どうしても雇用主が手を挙げないといけない状況がございますので、非正規の労働者個人がイニシアチブを取って、リ・スキリングができるような支援というものを充実させてもよいのではないでしょうか。すでに求職者支援制度というものはございますけれども、それに加えて少し明示的に組み込むということを国庫負担でお考えいただければと思います。
 その中には、オンラインのeラーニング的なものも含めて、働きながらも学べる形での学びを支援できるような方策も取り入れていただけると大変ありがたいと思いました。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、大下委員どうぞ。
○大下委員 御説明ありがとうございます。日商の大下でございます。
 雇用保険部会でも申し上げた内容と重なるかもしれませんが、これらの点について検討していく上で押さえておくべきと考えるところを何点か申し上げておきたいと思っています。
 まず、給付制限期間の短縮ですけれども、3か月から2か月に短縮した結果、それから今回検討されている2か月から1か月に短縮する際に見込まれる効果と想定される課題等を十分に精査いただき、慎重に検討していく必要があるかと思っています。
 労働政策全体として働く人が学び直しをしてスキルを上げ、その結果として給料が上がっていく、処遇改善が図られていくことには全く異論はないですけれども、この政策が発表されてから中小企業の声を聞いていますと、ただでさえ人手不足の中で、従業員が自分で勉強して他の会社に行ってしまうことを国は後押しをするのかという懸念の声はやはり根強いものがあります。
 企業経由と個人経由の支援のバランスも含めて十分な議論の上、最終的に効果が全体として上がっていくよう、検討していただく必要があるかと思っております。
 それからもう一点、就業促進手当です。これは、早期の再就職を促すことに一定の効果はあると思いますけれども、思い切ってやるのであれば、雇用保険財政が厳しい中で、既にあるような何かをすればインセンティブがついてきますよというようなやり方がよいのか、あるいは他の国の幾つかであるように、早く再就職をしないと給付が下がっていってしまいますよというような設計がよいのか、そうしたことも含めて本来は検討していく必要もあると思います。
 もちろん、失業手当がセーフティーネットとして機能しているというところはしっかり押さえた上でということになるかと思いますが、そういう意味で考えると、少なくとも政府がリ・スキリングによる処遇改善に政策の重点を置いていることを踏まえますと、就業促進定着手当というのは相反するとまでは言わないですけれども、別の方向を向いている仕組みなのかなとも思います。この辺りは今後、就業促進ということについてどう考えるのか、すぐにはできないにしても、可能であれば大きな方向性から、制度の根本のところから考えていく必要もあるのかなと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 全体として種々、有益な御意見をいただきましたけれども、事務局から何かございますか。
○尾田雇用保険課長 本日いただいた御意見も踏まえまして、今後具体的な検討の材料を我々として御準備して議論を進めていただきたいと思っております。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 個人的な感想ですけれども、労働市場政策の手法として様々なものがある中で、雇用保険システムという仕組みを取っていることとどういうふうに関係づけるのかというのは非常に難しい。
 財政的なことも含めて、国の役割をどう考えるかというのが一方でありますし、他方で効果の検証、EBPMということが言われていますので、そこもしっかりやる必要があることで、細かいことを含むと同時にかなり根本的なことも含む難しい問題かなと、具体的な方向というよりも印象として思った次第です。
 それから、新田委員から御要望がありましたように、雇用保険部会での議論を資料として、あちらでもいろいろ議論が進展すると思いますが、今回の部分も可能でしたらまとめて資料としてお出しいただければと思いますので、御検討よろしくお願いいたします。
 今回は報告事項ということで、種々、有益な御議論をいただきました。ほかにこの議題についてよろしいでしょうか。
 では、本議題は以上になります。
 予定された議題は以上で終了ということになりますけれども、全体的に委員の皆様から何か御発言ございますか。
 よろしいでしょうか。事務局からもよろしいでしょうか。
 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。大変お疲れさまでした。ありがとうございました。