2023年度第4回雇用政策研究会 議事録

日時

令和5年10月11日(水)9:00~11:00

場所

本会議会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

傍聴会場
厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2023-10-11 2023年度第4回雇用政策研究会
 
○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまより、2023年度第4回「雇用政策研究会」を開催いたします。
 本日は、大竹委員、清家委員、堀委員、宮本委員が御欠席となっており、アサヒグループジャパン株式会社の林様が対面での御参加、その他の委員はオンラインでの御参加となります。また、今回は外部有識者として、法政大学大学院政策創造研究科の石山教授、アサヒグループジャパン株式会社の林様を臨時委員としてお招きしております。
 なお、本日御登壇を予定しておりましたハーバード大学ライシャワー日本研究所のブリントン教授は所用により御欠席となりました。
 それでは、議事に入らせていただきます。今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 皆様、おはようございます。朝早くから御苦労さまです。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。
 まず最初に、事務局から説明をお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 それでは、資料につきまして、私から説明させていただきます。
 まず、資料1でございます。画面に投影させていただきます。
 資料1でございますが、アジェンダにつきましてお示ししているものでございます。第4回、今回のテーマは多様なキャリア形成・働き方と設定させていただきました。
 まず一番上の四角のところでございますけれども、こちらは第1回にお示しさせていただきました、今回の研究会の論点案のところでございます。その中に大きく2つテーマがございまして、緑色のところでございますけれども、ウェルビーイングの向上に向けた多様なキャリア形成・働き方といったところをお示しさせていただいております。また、そうしたキャリア形成・働き方のほうは、雇用量のところにも大きな影響を与えてございます。
 右側の青い四角のところでございますが、人口減少に備えた労働供給量の確保等といった形になってございます。日本の人口が今後減少していく中では、希望する女性・高齢者のさらなる活躍を促していくことが求められるといった論点を第1回に提示させていただきました。
 そうしたことを踏まえまして、第2回でございますけれども、女性活躍・両立支援関係の御議論をいただいたところでございます。その第2回のところで委員の先生方からいただいた御意見として、ピンク色の四角の中に抜粋させていただきましたけれども、その中で多く出たのは、例えば1つ目のところでございますが、女性の活躍や働き方の改善について、女性や子育て期だけにフォーカスするのではなく、男性の働き方も含め、労働者全員の働き方を変えていかねばいけないのではないかといった話であったり、2つ目のところでございますが、無制限に働くことが最も評価される仕組みが変わらなければ、柔軟な働き方が低評価されてしまい、男女問わずケア責任を負っている人が管理職のキャリアパスにつながっていくのは難しいのではないかといった御議論をいただきました。
 なので、第2回のほうは制度面について議論をしたところでございますが、やはり雇用慣行といいますか、働き方のところをもっと深掘りする必要があるといったことで今回の回を設けさせていただいたところでございます。
 一番下のところが今回の大きなテーマでございますが、制度面の改善に加えて、柔軟な働き方を阻害している日本的雇用慣行を修正していくことが重要なのではないかと。また、働き方の改善については、女性・子育て世代に限定せず、労働者全員の働き方を変えていく必要があるのではないかといったことを御議論いただきたいと考えてございます。
 2枚目に移らせていただきます。
 そういった大きなテーマで議論をいただきたいと思っておりますが、大きく3つの論点を御提示させていただいております。
 最初の2つの青い四角のところが女性のキャリア形成といったところでございます。本日、ハーバード大学のブリントン教授にプレゼンを行っていただく予定でございましたが、そのプレゼンターが今回はいないといったところでございますけれども、こうした論点につきまして御議論いただきたいと考えてございます。
 個別の論点につきまして御説明しますと、例えば一番上のところでございますけれども、長時間労働を前提とした働き方が見られる中、柔軟な働き方や女性のキャリア形成を阻害する日本的雇用慣行にはどのようなものがあるかといったことでございます。
 2つ目のところでございますけれども、生活時間と仕事の両立の難しさというのが改めて浮き彫りになったところです。そして、家庭内で役割の男女間の差といったところも認識されているところです。生活と働き方の関係というのを少し意識した御議論をしていただきたいと考えてございます。
 その下に緑色の四角が2つございますけれども、そちらが高齢者の働き方の部分でございます。今回、法政大学の石山先生にプレゼンをしていただく内容に関係する論点でございます。
 まず、緑色の四角の1つ目でございますけれども、長期的なキャリア形成といったことを考えたときに、やはり60歳以降も見据えた長期的な視点からキャリア形成を考えていく必要があるのではないかといった話。そして、企業、政府はどういった支援、取組が必要なのかというところを御議論いただきたいと考えてございます。
 最後に赤色の四角が2つございますが、こちらは企業の取組のところを少しフォーカスした全体的な話になってございます。こちらは今回アサヒの林様に御講演いただく内容に関連したところでございます。自律的なキャリア形成を促していくことが重要であるといった観点から、どのような取組が重要なのかといった話。また、テレワークとか柔軟な働き方が進む中で、企業はどういった取組をしていくべきなのかといったところを御議論いただきたいと考えてございます。
 3ページ目でございます。
 3ページ目は、これまでの第2回と第3回の論点を簡単にまとめたものでございます。第2回の御説明は省かせていただきますけれども、第3回、AI、新たなテクノロジーが雇用に与える影響につきまして、プレゼンターの先生にもいらっしゃっていただきまして御議論させていただきました。そこで分かったこととしましては、数々の生成AIが今生まれてきていて、なかなか今後の影響というのは読めないところがある。一方で、ホワイトカラー中心ではあるかと思いますけれども、やはり仕事の内容、タスクというのが変わってくるのではないかといったことがございました。また、AIの導入に関しては、労使で様々十分な議論が必要なのではないかといったお話もありました。また、AIを恐れずにまずは活用していくことが重要になるというような御議論もあったかと思います。
 AIにつきましては、省力化といったところとか働き方を改善するという側面もありますので、今回のテーマにも関係する部分があるかと思います。AIのことにつきましても、もし御意見等ありましたら、今回の議論の際に一言お話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 以上が資料1の説明でございます。
 資料2の説明に移らせていただきます。
 資料2でございますが、大きく3つのセクションに分かれてございます。
データ集でございますけれども、1つ目が女性のキャリアに関するデータ集で、2つ目が高齢者に関するデータ集でございます。3つ目が制度関連の資料を示しているといったところになってございます。
 資料は多くなってございますので、私のほうでピックアップして御説明をさせていきたいと考えてございます。
 まず、女性の関連のデータといったところで、3ページ目を御説明させていただきたいと考えてございますけれども、こちらは雇用形態別の就労者数の女性の推移というものを表したものでございます。こちらを見てみますと、昭和60年から比べると働いている人の数というのがかなり多くなっているといったところが見えてくるかと思います。特にパート・アルバイトの数というのが多くなってございまして、昭和60年に比べて約706万人増加しているといった状況になってございます。
 4ページ目でございます。
 こちらは既にお示しした資料ではございますけれども、女性の就業率のM字カーブといったところが近年では浅くなっているといった話。正規雇用率を見てL字カーブと言われているものも最近議論になってございますけれども、そういったものが存在しているといったところになってございます。
 5ページ目でございます。
 国際比較のデータを少しお示ししてございますけれども、日本が青色のところになってございます。日本の女性の年齢階級別に見た就業率でございますが、こちらを見てみますと、30~34歳とか35~39歳といったところで就業率が低下するといったところが見られております。お示しした各国を見てみますと、日本のような落ち込みというのが見られていないという状況がございまして、ここが日本の特徴なのかなと考えてございます。
 少しページを飛ばさせていただきまして、9ページ目でございます。
 今回、キャリア形成といったところがテーマでございますので、管理職等に占める女性の割合といったデータをお示しさせていただきたいといったところでございます。
 左側のグラフでございますけれども、役職別の女性の割合の推移をお示ししたものでございます。こちらを見てみますと、緑色が係長級でございますけれども、係長級のところはかなりの増加が見られるといったところで、直近ですと24.1%といった割合になってございます。一方で部長級、青色のところでございますけれども、8.2%といったところで低い水準になっているところでございます。改善は見られてございます。
 右側のグラフが国際比較のところでございますが、管理的職業従事者に占める女性の割合の国際比較でございますけれども、これを見てみますと、各国と比べて日本が13.2%となってございますので、低い割合になっているところが見てとれるかと思います。
 10ページ目でございます。
 そうした管理職の割合というのは、賃金のところにもはねてくるといったところでございます。
 左側のグラフでございますけれども、男女間の賃金格差の推移をお示ししたものでございまして、男性を100としたときの女性の所得といったところを表してございます。一般労働者と正規のところを分けてございますけれども、両方70%後半といったところで、改善はしておりますけれども、まだ差が見られるといったところが見てとれるかと思います。
 また少しページを飛ばさせていただきます。12ページ目でございます。
 こちらでございますけれども、男女別で見たテンポラリー労働者の割合、そして、勤続年数の国際比較でございます。テンポラリーといったところで、若干定義は各国で違うので単純な比較は難しいのでございますが、こちらを見てみますと、男女間で大きな差が見られるのは日本のみになってございまして、いわゆる期間が決まっているような雇用者の割合というところで女性が多くなっているといったところが日本の特徴でございます。
 右側でございますけれども、勤続年数のところでございます。こちらも男女間で大きな差が見られ、男性のほうが長くなっているといったところが日本の特徴となってございます。
 続きまして、少し世帯に目を向けたデータについて見ていきたいと考えてございます。
 14ページ目でございます。
 14ページ目は、いわゆる共働き世帯と専業主婦の世帯の推移を見たところでございますが、青色がいわゆる専業主婦の世帯、赤色が共働きの世帯といったところでございますけれども、これを見ていただきますと、80年代後半はいわゆる専業主婦の世帯が多くございましたけれども、90年代に入りまして逆転が起こっておりまして、直近で見ますと共働き世帯のほうが多くなっているといった現状がございます。
 15ページ目でございます。
 共働き世帯の内訳についてもう少し詳しく見てみますと、今回、こちらのグラフはパートとフルタイムで分けたところでございますけれども、緑色のところがフルタイム、青色のところがパートタイムでございますが、こちらを見ますと、1990年代後半ぐらいから逆転が起こっておりまして、足元ではパートタイムのほうが多いとなってございます。
 より世帯の中の家事に注目したデータを見ていきたいと思いますが、16ページ目を御覧いただければと思います。
 こちらは無償労働・有償労働の時間の国際比較でございます。こちらのデータでございますが、調査年が異なりますので、単純な比較というのは難しいのでございますが、こちらを見てみますと、赤色が無償労働のボランティア以外といったところで、いわゆる家事のような時間を示しているところでございます。それを見てみますと、女性のほうは各国間の比較であまり差はないのでございますが、右側の男性のほうを見てみると、日本の男性の時間というのがかなり少ないといったところが見てとれるかと思います。
 青色のところが有償労働または学習の中の仕事の時間でございますけれども、こちらを見てみますと、男性の日本のお仕事の時間が各国と比較してもかなり大きいといったところになってございまして、やはり男女間での役割の区別、差というのが見られるといったところがこのグラフから分かるようになってございます。
 17ページでございます。
 より詳細に見ているところでございますけれども、こちらは日本のデータだけでございますが、6歳未満の子供を持つ夫婦世帯の1日当たりの家事関連の時間といったところでございます。妻と夫と分かれておりますが、夫のほうを御覧いただければと思いますけれども、夫の家事関連の時間というのは延びているといったところでございますが、やはり妻と比べると差が見られるといったところが見てとれるかと思います。
 18ページ目でございますが、そうした時間の使い方といったところがいろいろと雇用にも影響を与えているのではないかといったところでございますが、右側のグラフを御覧いただければと思いますけれども、こちらを見てみますと、25~34歳の女性とか35~44歳の女性のところでございますが、赤色が出産・育児といったところを示しておりますが、やはり出産・育児のために求職していないといったところが見られていたりしておりますので、やはり家事といったところの雇用への影響というのが一定程度見られるのではないかと考えています。
 以上が女性のキャリアに関するデータでございます。
 次でございますが、高齢者に関するセクションに移りたいと思います。
 20ページを御覧いただければと思います。
 高齢者のところでございますが、法令によりまして、平成25年より65歳までの雇用確保といったところが企業に求められてございます。また、令和3年からは70歳までの就業確保、こちらは努力義務でございますが、そういったところが法令でも定められているところでございます。
 左上のグラフでございますが、65歳までの高齢者雇用確保措置の実施状況でございますけれども、実施している企業の割合は99.9%ということで、こちらは法令で義務づけられてございますので、実施されているところでございます。その内訳を見ますと、やはり継続雇用制度というのを設けているところが大半であるといったところが見てとれます。
 下のグラフでございます。2と書いてあるところでございますが、70歳までの高齢者就業確保措置の実施状況でございます。こちらは努力義務のところでございますが、実施の割合を見てみますと27.9%となってございます。なので、これらについてはこれからといったところが見てとれるかと思います。
 21ページでございます。
 こちらはいろいろ定年の状況を表したものでございますけれども、65歳定年の企業数の割合というのが21.2%ということで、大きな割合を占めているといった話でございます。一方で、定年の廃止をしている企業の割合は3.1%ということで低くなってございまして、企業によって制度の設け方は様々であるといったところが見てとれます。
 22ページでございます。
 こういった制度上の変更等はありますけれども、高齢者の就業率というのはかなり増えているところでございます。こちらは60~64歳の高齢者の就業率の推移を表したものでございますが、緑色のところが男女計でございますけれども、73%まで伸びているといった話がございます。
 そして、次の23ページが65歳以上の高齢者の就業率の推移でございますけれども、65~69歳が青色でございますが、直近の数字で見てみますと50.8%ということで、高い水準になってございますし、75歳以上のところを見てみましても、11%ということでかなり大きい割合の就業率になっているといったところが見てとれるかと思います。
 少しページを飛ばさせていただきますけれども、26ページでございます。
 それがどういった形で職種に分布されているかといったところでございますけれども、薄い青色のところと濃い青色のところが管理的職業従事者と事務従事者を示したところでございますが、こちらを見ていただきますと、やはり65歳以降になりましてそういった働き方が減ってきているといったところが見てとれまして、年齢によって就く職種というものが変化しているといったところが分かるかと思います。
 27ページでございます。
 一方で、いろいろとウェルビーイングのことを考えると、仕事の満足度というのも非常に重要になってくるかと思います。数字がついているところが仕事について満足であると答えた割合でございますが、30~39歳といったところを見てみますと、男性が34.6、女性が39.3%といった割合で満足と答えているのに対して、60~69歳といった数字を見てみますと、例えば男性が48.2とか女性が51.0と記載がございますように、高齢者のほうが満足度が高く働いているといったところでございまして、そこは担っている役職とか働く時間というところも大きく関係していると思いますけれども、高齢者のほうが満足度が高く働いているといった現状がございます。
 29ページでございます。
 こちらは60~64歳の方に65歳以上の就業の見通しというのを聞いたものでございますけれども、こちらを見てみますと、一番上のところでございますが、採用してくれる職場があるのであればぜひ働きたいと答えている人の割合というのが、2014年から2019年の比較で見ますと高まっているところでございます。
 とは言いましても、30ページでございますけれども、ばら色のといったところでは必ずしもなくて、現在仕事をしている理由を聞いたところでございますが、60~64歳とか65~69歳に聞いたところでも、やはり経済上の理由が大きいといったところで、生活の観点から必要に迫られて仕事をするといった現状もございますので、そういった現状も踏まえて議論をする必要があるのではないかと考えてございます。
 3つ目のセクションにつきましては制度に関する資料集でございますので、割愛させていただきます。
 私からの説明は以上でございます。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 今朝のノーベル経済学賞ではございませんが、やはりかなり働き方あるいは暮らしといったものに関連するようなことが多くなってきているかと思います。問題点は多々あるということは分かりましたが、政府がどこまで政策として介入していくのかというようなことについては、皆さんいろいろな議論があるかと思います。
 それでは、この議論はまた後でしていただくということで、早速、本日おいでいただいています林委員からお話を伺いたいと思います。資料4に基づきまして説明をお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。
○林委員 今御紹介いただきました、アサヒグループジャパンキャリアオーナーシップ支援室の林と申します。
 今日は多様なキャリア形成・働き方ということで、弊社の取組を御紹介させていただきたいと思っております。
 では、私のほうから、まず簡単にアサヒグループについて御紹介させていただきます。あと、弊社のキャリアオーナーシップ支援の取組についてということで御紹介させていただきたいと思います。そこから働き方改革ということで御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、アサヒグループについてということですけれども、弊社はAsahi Group Philosophyという理念を掲げております。グローバル展開を進めておりますが、全世界共通の理念を掲げております。ミッションといたしましては、社会における使命・存在価値ということで、「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」。ビジョンといたしましては「高付加価値ブランドを核として成長する“グローカルな価値創造企業”を目指す」。バリューといたしましては「挑戦と革新 最高の品質 感動の共有」。プリンシパルとしては「全てのステークホルダーとの共創による企業価値向上」ということで、こちらのビジョンをグループ共通のビジョンとして企業経営を行っているということになります。
 実際にグローバル展開をかなり進めているのですけれども、大きく4つのリージョンに分かれております。日本と東南アジア、オセアニア、ヨーロッパと大きくこの4つのリージョンに分かれて企業経営を進めているということです。
 グローバル全体でいきますと売上げが2兆5000億以上ということで、非常に大きな売上げ規模になってきております。
 生産拠点数は60か所以上、事業展開といたしましては100か国以上、従業員数でいうと約3万人、生産量としては100億リットルということで、私が入社してから30年以上たっているのですけれども、入社したときからは考えものにならないぐらいの規模に拡大しているという状況でございます。
 実際にブランドといたしましてはビール、飲料を中心といたしまして、ビールは皆様よく御存じのアサヒスーパードライを中心といたしまして、各国のブランドが5ブランドございます。
 日本ではビール、酒類以外にも飲料ですね。三ツ矢サイダーとかWANDAとか、あとは食品も展開しておりまして、一本満足バーとか、あと、タブレットのミンティアも作ったりしておりまして、食品・飲料事業を展開しております。
 私が所属しているのがアサヒグループジャパンという中間持株会社になるのですけれども、どういう位置づけかといいますと、先ほど日本、東南アジア、オセアニア、ヨーロッパと4リージョンに展開していますというお話をさせていただきましたが、その中の日本事業をつかさどっている中間持株会社となっております。
 日本事業の中では、その下にアルファベットで恐縮なのですけれども、アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品と、この3つの事業会社を中核といたしまして、日本事業を行っている会社を取りまとめているところがアサヒグループジャパンとなります。
 日本事業はトータルでいうと、従業員数でいうと1万3700人ということで、グローバル全体の3万人からすると、約半数弱の社員が日本にいるという状況になっています。
 役割といたしましては日本事業を取りまとめるというところで、持株会社ですので利益を出しているわけではないのですけれども、日本事業の企業価値を向上するため、持続的成長を率いるリーダーシップチームといたしまして2021年に設立したという状況になっております。
 日本の中の従業員の年齢構成になるのですけれども、実はかなり高齢化が進んでおりまして、50代が34.6%、40代が29.5%ということで、約65%を40代以上の社員が占めているという状況になっております。
 そのような状況の中で、私が所属しておりますキャリアオーナーシップ支援室というところで行っているキャリア形成支援の取組について御紹介をさせていただきます。
 共通する理念がありますという御紹介をさせていただきましたが、ピープルステートメント、人材におけるステートメントもグローバル共通で掲げております。「学び、成長し、そして共にやり遂げる」ということで、4つの柱を掲げております。今日のテーマでもありますセーフティ&ウェルビーイングということ、あと、学習する組織、ダイバーシティー、エクイティ&インクルージョン、コラボレーションの4つを柱に掲げております。
 キャリアオーナーシップ支援、キャリア自律に関しては、あえてうたわれていないのですけれども、基本的に社員自身が自分自身で自律して、自分のキャリアを自分で切り開いていく。ここがベースとなってこのピープルステートメントが実現されるという考え方にのっとっております。
 私が所属しているアサヒキャリアオーナーシップ支援室というところは、できたのは2022年ということで去年なのですけれども、キャリア支援に関しては結構歴史が長くありまして、2007年ぐらいからアサヒビールの人事部の中にOBの社員による若手社員の相談を受けるというような取組から始まっております。施策としては、OB社員が若手の社員に面談をして、リアリティショックの解消をしていこうというような取組を行ってまいりました。
 そこから発展してきているのですけれども、2017年からこの組織を独立させて、アサヒビールの人事部の中にキャリアサポート室という組織をつくりまして、メンバーも単なるOB社員ということではなくて、きちんと資格を持ったメンバーで構成しようということで、国家資格のキャリアコンサルタントを持っている社員で構成いたしました。取り組んでいる施策については、この時代もそれまでと同じく、若手社員のリアリティショックの解消の面談を中心として取組を進めてまいりました。
 2000年から大きく変わっているのですけれども、それまではアサヒビールの一事業会社の中だけの取組であったのですが、2000年から国内のグループ全体を対象とした取組ということで活動範囲を広げてまいりました。ホールディングスの人事部の中にキャリアサポートグループという組織をつくりまして、国キャリの有資格者による構成員で、対象とする施策も若手社員のみではなく、全ての社員を対象としたキャリア相談、キャリアセミナーであったり、キャリアを考えるE-learning等を展開してまいりました。
 去年からなのですけれども、人事部の中からさらに独立いたしまして、キャリアオーナーシップ支援室という室をつくりました。取組の内容はそれまでと変わらずでございます。こんな変遷を経てきております。
 今日お集まりの先生の皆様には釈迦に説法ではあるのですけれども、どうしてこのように社員個人個人のキャリアを支援する機能を拡充してきたかというところではあるのですが、もともとは私の個人の思いからこういう組織をつくりたいと思って立ち上げてまいりました。今日は細かいことは割愛させていただくのですけれども、私自身もメンバーシップ制の中の人事異動でいろいろキャリアを変遷してきたのですが、自分の意にそぐわない異動であったり、単身赴任とか、そういうことを経てきておりまして、やはり会社の思いどおりに自分は動かされているなという自覚を持ったので、そうではなくて、やはり自分のキャリアは自分で切り開いていくべきなのではないかと考えて、そういった考える場をつくる、社員が自分のキャリアを考える場をつくっていきたいという思いで今に至っているというところなのですが、ただ、やはり私一人の個人の思いではなかなかこういう取組を進めるのは難しいところではあって、そこで、昨今の伊藤レポートでも言われている中で、時代の変化が後押ししてくれたということがありまして、この人的資本経営というところが後押ししてくださって、個の自律・活性化をしていくということで、こういった独立した組織をつくるというところに至っているというところでございます。
 我々のキャリアオーナーシップ支援の考え方ですけれども、大きく柱が3つございます。我々が取り組んでいるのは、一番大きいところは真ん中の意識の醸成というところになります。人生100年時代になって、メンバーシップから変わっていかなければいけないという中で、自分一人、自分自身のキャリアを自分で考えるという意識醸成をするというところが一つ大きな柱です。
 ただ、自分自身の意識が変わっただけでは、なかなか自分のキャリアを自分の思ったように形成していくということは難しくなりますので、組織としてはキャリアの選択肢の多様化、制度周りのことにはなりますけれども、選択肢が多様化できるような、選べるような組織制度をつくっていくということが大事になってきます。なので、ソフトとハードという切り分け方もできるかなと思っております。
 あと、マネジャー支援なのですけれども、我々が社員一人一人の相談を受けたり、キャリアを考える場をつくるという取組を行っているのですけれども、理想的なところでいうと、日々のマネジメントの中で上司が部下のキャリアオーナーシップ支援ができるようになるという状況が一番望ましいかなと思っておりますので、マネジャーに対して部下のキャリア支援ができるようにということも我々の取組の中の一つに入れております。
 この3つを柱として、アサヒグループ社員のキャリアオーナーシップの支援を進めているということになります。
 我々の室のミッション、ビジョン、バリューですけれども、ミッションはアサヒグループ社員の全員がキャリアオーナーシップを持っていること、自分らしい仕事人生を歩んでいる状態になること。バリューといたしましては、個々人の能力を信じ、多様性を受容し、メンバーが全員キャリコンの有資格者ですので、専門性を高める。メンバー自身がキャリア自律して自分らしい人生を歩むということで掲げてあります。
 具体的にどのような取組をしているかということなのですが、これがイメージになります。社員が今の自分からありたい自分に向かっていく。そのプロセスですけれども、まず恐らく自己理解をして、環境理解をし、キャリアビジョンを描き、そのキャリアビジョンに向かって成長、自己研鑽を積んで、経験を積んで成長していく。そして、ありたい自分に向かっていくというプロセスを踏むのかなと思っております。
 さらに、シニアになってきますと、先ほど年齢構成も40代以上が65%というお話をさせていただきましたが、結構シニアのメンバーが多いので、シニアのメンバーに関してはセカンドキャリアの探索ということで、社内外を含めたセカンドキャリアを考えてもらう。
 そういったプロセスを踏んでいくという中で、ここを我々が具体的な施策で後押ししているということになります。一つはキャリア面談。個別に面談をして、キャリアを考えてもらう。あとは、自分で自己研鑽できるようなE-learningを展開したり、キャリアセミナーを展開して、自分のキャリアを考えてもらう場をつくる。あとは、キャリアカフェといううちのメンバー同士がキャリアについて語って、オンラインで配信してキャリアについて社員が考える。そういった場をつくるというようなことを行っております。
 あと、セカンドキャリアの探求でいうと、55以上になった方に対して、社外を考えていますということをアンケートで答えた方に対しては、面談をして、希望する方については社外とのマッチングをするという取組も行っております。
 あと、もう一つの柱である上司への支援なのですけれども、上司に対して実際に部下のマネジメントをサポートするようなグループコーチングを行ったり、E-learningを展開するというような取組も行っております。
 あと、これからの取組になるのですけれども、環境理解というところで、グループがこれだけ大きくなってきているので、どこのグループ会社にどういう仕事をできる部署があるのか、なかなか分からないという声が上がってきているので、そういった紹介をしていくということも今後取組をしていかなければいけないなと考えております。
 あとは、上司の支援も少し強化していこうということで、ワン・オン・ワンの支援をしていったり、あとは成長支援施策については人事と連携するということで進めております。
 細かいのですけれども、こちらが施策の全体像になります。柱になるのはオンラインキャリア相談ということで、個別の相談になります。常にいつでも希望する人に対してはキャリア相談を受けられるという状態にしておりますけれども、待っているだけだとなかなか来ないということもありますので、45、50、55という節目の年代の方には直接キャリア相談をしないかということをDMを打って働きかけをして、誘引しているというような状態をつくっております。
 あとは、E-learningで自己研鑽をして考える場をつくってもらって、セミナーに来ていただいて、個別の面談に誘引する。意識づけから面談に向かわせるというような仕掛けをしております。
 それ以外、先ほど御紹介をさせていただいたマネジャーの支援施策、あとは、面談をしたときに中には少しメンタル疾患の疑いがあるという人もいるので、そういう場合は産業医、保健師とも連携をして、リファーできるような体制を整えています。あとは、社外に出たいという人がいたら、社外へつなぐといった施策も取り入れております。
 こちらなのですけれども、まさに厚労省の皆様が掲げていらっしゃるセルフ・キャリアドックの仕組みになっているなと考えております。実はセルフ・キャリアドックを進めていこうと思ってこの体制を組んだのではなく、この体制を組んだ後に気がついたらセルフ・キャリアドックになっているなと思っております。
 こちらも皆さん御存じのとおりだと思いますけれども、セルフ・キャリアドックは企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を支援・促進する総合的な取組、また、そのための企業内の仕組みのことということで厚労省様が定義づけされていらっしゃいますけれども、まさに我々の取組はこのセルフ・キャリアドックだなと言ってもよいのかなと思っております。
 こちらも厚労省の資料の抜粋でございます。参考までにつけさせていただきました。
 実際にこの施策を年間どのように進めているかというところなのですけれども、実際のマネジメントサイクルがあるのですが、弊社は1月から12月、12月決算であるのですけれども、1月に目標面談、目標設定をして、上司との面談をする。前年度の期末の面談をして、前年度の結果を確認するということを行っております。5月に従業員のキャリアデザイン面談ということを上司と部下で行っているのですけれども、そのときに短期、中期のキャリアデザインを考えて、それを上司と話すという機会を設けています。8月には目標の進捗確認を行う中間面談を行い、8月、9月に定期異動があります。こういったマネジメントサイクルがあります。ここに合わせて私たちの施策を展開させています。
 ここの4、5月、キャリアデザイン面談という、キャリアキャリアデザインシートというのを従業員が書くのですけれども、中長期と短期のキャリアビジョンを考えて、自分で書いて、それを上司と面談するということになるのですが、そこに合わせて、いきなり上司と面談をするのではなくて、私たちと面談をしてもらい、少し考えを深めてもらったり、あと、ミニワークショップと書いてあるのですけれども、今日この後石山先生のお話にも出てくるのかもしれないのですけれども、ジョブ・クラフティングのワークショップをしたり、キャリアを考える機会というのを我々のほうで展開して、この時期にキャリアオーナーシップ強化月間と銘打って、いろいろな施策を集中させているというような状況で進めさせていただいております。
 中心の施策のキャリア面談について少し詳しく御紹介させていただこうと思うのですけれども、基本的にはキャリア・カウンセリング、守秘義務に基づく面談を行っております。グループ社員であれば希望者全員オーケーですよということで、基本的にはオンラインで面談をしております。メンバーは私たちの社内のカウンセラーが面談を受けるという状況で進めております。
 2020年からこの取組を始めているのですけれども、実績といたしましては年間約300名弱の人が希望をしてきてくれています。アンケートを取っているのですけれども、おかげさまでほぼ100%の方が満足しているという状況になっています。
 累計してみると、初年度はまだテスト展開というところもあって90名ということだったのですけれども、毎年300人弱ぐらいの相談者が来ているということで、累計では660人という状況になっています。
 希望者は年齢的には偏りはほぼなくて、満遍なくいろいろな年齢層の方が来ていただいております。
 アンケートによる結果は非常に満足いただいているという状況です。
 こちらは投影のみの資料とさせていただいています。私たちの主観が入っているものなので、投影だけにさせていただいているのですけれども、我々から見た面談者の主訴というのは年代ごとに違いがあるなと感じております。55歳ぐらいになってくるとキャリア全般と、漠然とした不安ですね。定年後の60歳以降のキャリアについての漠然とした不安。50歳ぐらいですと、今の仕事に対して今後どうしていこうかということ。あと、今後、自分のキャリアを考えたときに、どんな自己研鑽をしたらいいかというような御相談が増えてきます。もう少し下がってくると、45歳ぐらいですと、やはりキャリア全般というところと、55歳との違いは自己理解ですね。自分は今後どの方向でキャリアを積んでいったらいいかというようなことに悩んでいるというような年代になっているのではないかなと我々のアドバイザーから見て分析したところを御紹介させていただきました。
 このような取組を行ってきているのですけれども、今後の課題といたしましては、キャリアオーナーシップ支援室活動、我々の活動の認知度アップというところです。面談に来ていただいている方が年間に300人いらっしゃるのですけれども、従業員の数を考えると、国内で1万人いるのでまだまだ少ない。来ていただいた方はすごく満足していただいているので、もうちょっと活用してもらって、利用してもらいたいなというところが1点目。
 あとは、マネジャー支援策はまだまだこれからというところもありますので、ここも強化していきたいなと。
 あと、環境理解促進の施策もまだまだできていないところですので、こちらを強化していきたい。
 あと、我々の活動の効果の見える化というところです。研修とかもそうなのですけれども、アンケートの満足度調査は行っているのですが、なかなか定量的な指標を出して効果を見える化するというところが難しいというところ、ここも取り組んでいかなければいけないところ。
 あと、組織課題の提言というところで、個別の面談は守秘義務で行っているので、個別の話は外部に出せないのですけれども、そこから見えてきた先ほどの年代別の傾向だったり、もしくは組織的なキャリア課題の傾向があるということがある場合もありますので、ここを経営に提言をしていって、全体的な組織の施策につなげていくということをしていかなければいけないなということで、こちらを今課題として取り組もうとしているところです。
 では、続きまして、弊社の働き方についての取組について簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 2020年、コロナ禍に入ったときですけれども、そこから3年がたって、また振り返りと総括をしたいということで、社内向けに作った資料を今回御紹介させていただきたいと思います。
 コロナ禍に入ったとき、2020年ですけれども、このときにAsahi Work Life Innovationを打ち出しました。コロナが要因ではあったのですけれども、コロナの対策ということだけではなくて、新しい働き方をしていこうということで、テレワークとか直行直帰を軸とした働き方にシフトしていこうということを打ち出しました。リモートワークとグループオフィスのシェアをしていこうと。あとは、結果的に豊かな生活の実現をしていこうということ。の3つを柱として、基本的にはテレワークをしていこうということを打ち出しました。
 3年間たったところでアンケートをしたところ、実際によかった点が挙げられてきています。実際にテレワークをしている人も半数以上ということになってきているのですけれども、業務効率化につながったとか、ワークライフバランスにつながったという意見が出てきております。
 ただ一方で、やはりマイナス面もありまして、コミュニケーションですとかマネジメント上でやはり課題があるというアンケート結果も出てきています。やはりオンラインだと気持ちとか雰囲気が伝わりにくいだとか、相手の仕事の状況を想像しながら仕事を進めていかないといけないので難しいだとか、そういったコミュニケーション上の難しさということが挙がってきています。あとは、上司からしてもメンバーの指導が難しいといった意見が出てきています。業務の効率に関しましても、コミュニケーションを取るとなった場合でも、一々アポを取ってコミュニケーションを取らなければいけないということになるので、時間がかかるというような意見が挙がってきています。
 こういった総括を踏まえて、ここからまた新たにアサヒ型ハイブリッドワークに転換していこうということを打ち出しました。これは本当に最近打ち出したばかりなのですけれども、今まではテレワーク中心ということで打ち出していたのですけれども、うまくハイブリッドにしていこうと。目的に応じて働く場所を選択できるように移行していこうという形で打ち出したところです。まだここは打ち出したばかりなので、この結果はまた見ていかなければいけないのですけれども、新たに創出した時間で豊かな生活を実現して、社員のウェルビーイングの実現へつなげていこうということを目指していきたいと考えています。
 実際にどんなことが目指させるかというところなのですけれども、やはりオンラインでは体感できないような様々な情報との触れ合い方だったり、コミュニケーション、交流、マネジメントディスカッション、業務の目的に合わせた働き方とか、あとは、お客様との接点もやはりオンラインではなくて、対面で接することによってアサヒグループのファンを増やしていこうというようなところ。このぐらいのことが期待できるのではないかという仮説を立てて、今、このハイブリッド型の働き方を進めていこうということで転換を始めたばかりということになります。
 ということで、ちょっと長くなりましたが、私からの発表は以上とさせていただきます。ありがとうございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 皆様から御質問があるかと思いますが、この後、もう一つ、石山先生にお話を伺いまして、その後、御質問、御意見をいただきたいと思います。
 それでは、石山委員から説明をお願いしたいと思います。資料3でございます。
○石山委員 御紹介いただきました、法政大学の石山と申します。30分ほどお時間をいただいておりますので、よろしくお願いいたします。
 私、経営学の中でも人的資源管理と組織行動というところを専門にしていますので、いわゆるミクロ組織論ということで、個別の企業とかの個別の個人の組織の中の心理というのをやっていますので、今日はかなりミクロなお話になると思いますので、御承知おきいただければと思います。
 その中でもシニアのキャリアということなのですけれども、先ほど林さんのほうからアサヒさんもジョブ・クラフティングをやっているということだったのですが、その辺の話を踏まえて、このジョブ・クラフティングというのが今、世界的に組織行動論の中ではかなり注目されているので、この辺りを御説明したいと思いますけれども、最初に、これは投影のみなのですが、私、結構いろいろな企業にお邪魔するのですけれども、どの企業にお邪魔しても、さっきのアサヒさんもそうなのですが、とにかく人員構成が50代の方が非常に多いということで、皆さん物すごく関心があるのですけれども、結構ネガティブな意見が多くて、人事部の人いわく、上司も本人もシニアの活躍に期待していないのですよみたいな話をしたり、人事部の人もエイジズムの価値観でシニアを語ることが割と平気だったりする。その前提というのは、日本的雇用がずっと続いていたので、本人がキャリア開発に消極的ですよみたいなお話をされることもあります。また、定年再雇用後の動機づけを課題と感じているようです。
 これが、今までだったら福祉的雇用ということでしようがないからやっていたみたいな観点もあるのですけれども、そんなことを言っていられないぐらいの人数になってしまっています。定年再雇用になってしまうとどうしても賃金が下がってしまうので、本人は活躍できる能力があっても、賃金に見合った能力を下回る仕事を用意しなくてはいけないみたいなことになってしまうわけです。その代わりにきちんとした仕事をアサインしようとすると、今度は同一労働同一賃金と言われているけれども、あまりにもギャップがあり過ぎるよねとまた困ってしまうみたいな問題があったりします。それと、日本的雇用はとにかく年齢とか地位とかを重視してしまうので、年下上司と年上部下の問題がどうしても解決できないとか、こんなことを企業の本音としては人事部の人が皆さんおっしゃるというのが実態です。
 そういった中で、基本的にエイジズムというのがあると思うのですけれども、レイシズムが人種差別で、セクシズムが性差別だとすると、エイジズムというのは、若い世代が高齢者を蔑視することが典型的なエイジズムです。、逆もしかりで、シニアの人がZ世代を見て、世代をひとくくりに蔑視することもエイジズムです。これの問題というのは、若いときの高齢者へのステレオタイプのようなエイジズムは内面化しますので、自分が年をとってもずっとそのままだと。そうすると、エイジズムの場合はいつか自分が年をとってしまうから、立場が逆転してしまう。そうすると、エイジズムが強かった若者であればあるほど、年をとるとがっかりしてしまうのですよね。
 
 これは私のゼミで博士を取った人が博士論文を取った後の本に書いた内容なのですけれども、大企業の活躍していると言われる定年再雇用者の人15名にインタビューしたのですけれども、結局、皆さんすごく二律背反な思いを持っているのだと。結構活躍しているので優秀な人たちなのですけれども、60歳になった途端、そこで能力が落ちるわけではないのですが、そんなにやらなくていいよと。あなたがやり過ぎるとほかの人が迷惑してしまって、若手が育たないから程々にみたいなことで言われてしまうわけですけれども、そうすると、大企業なので、まだまだできるんだよなと思いながらも転職するのも難しいしなと。肩書きがなくなって寂しいのだけれども、責任が軽くなってよかったなと。もっとやれるのだけれども、上司は現役世代に遠慮しなくてはいけないなと思ったりと。そういう中で、何となくこの新しい仕事も悪くないなと思いながら、男性に多いのですが、家事や育児も全然やっていなかったし、地域社会のこともやっていなかったということで、そちらに比重を増やしていくというような実態があるのです。要は物すごく二律背反な気持ちがある。そういう中でも何らか自己調整できるとうまく適応できるというのも実態なのです。これは自己調整ということで、マスキュリニティーとかマッチョイズムというか、肩書きと昇進だけが全てだというような気持ちは自己調整したほうがいいと思うのですけれども、とはいえ、全然仕事ができる能力があるのに無理やり仕事やらなくなるというようなことに自己調整もしなくてはいけないというのは問題だと思います。
 そういった中で、これも本当に釈迦に説法なのですけれども、OECDは主観的ウェルビーイングということで、主観的幸福の測定というのに力を入れている。これは主観的幸福ということであれば測定できるからです。ただし、OECDはこれを3つに分けて計測しようということを言っていて、生活評価ということで、暮らし向きの満足度、英語で言うとサティスファクション。それから、感情的な幸福、ハピネスということで、おいしいものを食べたり、旅行に行ったりするときに感じるハピネス。ただ、この感情的ハピネスというのは一時的で長続きしないということなのです。OECDが3つ目に言っているのがエウダイモニアということで、エウダイモニアは若干難解な概念で、ギリシャ時代にアリストテレスが提唱した考え方ですが、アリストテレスは相当難しいことを言っているのですけれども、わかりやすくいえば、要するに人生の意義や目的を追求する幸せだということを言っているのです。私が非常に注目しているのはエウダイモニアということで、これは長続きする幸せなのですよね。そうすると、シニアの方にとって、これからお話しするジョブ・クラフティングなり、そういった仕事の意義みたいなことは、かなりこのエウダイモニア的な幸せに着目する必要があるのではないかと思っております。
 それで、こちらの上の表は、私ともう一人の幸福研究をしている先生で共同で研究したものです。ここのSWLSというのは、この平均点はエド・ディーナーの主観的幸福をはかる人生満足度尺度の得点なのですけれども、これを見ますと、これは40代以上の人で一般社員と管理職と役職定年と定年再雇用に分けたという調査なのですが、一般的には役職定年や定年再雇用になると幸福度が落ちるというような通念があるかもしれないのですけれども、実は管理職と役職定年と定年再雇用者の幸福度というのは、特に統計上有意な差はない。有意に低いのは一般社員だけなので、実は役職定年になったり定年再雇用になると、あまり幸せではないのかなというのは思い込みなのではないかというのは一つあると思うのです。
 実際に幸福のU字カーブみたいなことが知られていて、直近で世界145か国でやった調査の論文がありますが、主観的な幸福というのは48.3歳を底としたU字カーブを描く。これは145か国全部そうだったわけですけれども、つまり、主観的幸福というのは、48歳以降年齢を重ねれば重ねるほど幸せになってくるということで、エイジングパラドックスとして知られているわけですけれども、これら辺りも踏まえなくてはいけないということがあると思うのです。
 これはワーク・エンゲージメントと呼ばれる仕事の熱中度というところで、これは40歳以上の人ではかったのですけれども、やはり役職定年と定年再雇用と管理職の人の間に仕事への熱中度の有意な差はなかったのです。ところが、やはり54歳以下の一般社員が低いということでして、むしろ40歳以上の管理職ではない人のワーク・エンゲージメントの低さというのは、実際は課題だったりするのですけれども、年齢が高くなれば仕事に熱中しなくなるという、よく中高齢の男性の悪口を言うような変な言い方をメディアがするのですけれども、そういうのは非常にエイジズムを惹起するので問題なのではないかと思っています。
 ちなみに、このワーク・エンゲージメントということに対して、規定要因としてジョブ・クラフティングというものが、かなり有意な正の影響を与えてたということで、やはりジョブ・クラフティングは重要なのかなというのは後ほどお話ししたいと思います。
 このジョブ・クラフティングなのですけれども、先ほどアサヒさんもおやりになっていたということですが、2001年ぐらいにレズネフスキーという人たちが唱え始めた考え方で、今、組織行動論の中ではかなり蓄積されているのですけれども、これは職務特性理論というところから発展してきたのですけれども、今までの職務特性理論だと、会社がジョブというものを規定するから、会社がジョブというものを規定するときに、なるべく内発的動機づけとかを高めるようなジョブの規定をしましょうというような考え方だったのですけれども、しかし、それは結局トップダウンとかマネジャーが一方的にやってくることであるとも考えられます。一方、それに対して、ジョブ・クラフティングというのは、ボトムアップで個人が自らの意思によって、個人が自分にとって意義があるように職務を再創造とするという考え方なので、考え方が全く逆転している。
 御承知のとおり、この世に正解のジョブ型とか、標準のジョブ型なんてものは存在しないわけです。ただ、一応これは理念的なジョブ型みたいなことで考えるとするならば、このジョブ・クラフティングというのは、理念的なジョブ型へのアンチテーゼみたいなものですよね。職務を会社が一方的につくって、これだけやれと押しつけるとやる気がなくなってしまうということへのアンチテーゼなのです。はジョブ・クラフティングタスク次元と認知次元と関係次元と呼ばれる3つで構成されているということが特徴なのですけれども、仕事そのもの、タスクそのものを創造するタスク次元と、仕事への意味づけを変える認知次元と、仕事に関わる人間関係を変える関係次元の3つがあるというのが結構ポイントで、このジョブ・クラフティングというのは、起こるときにはタスク、認知、関係の3つが有機的に結びついているということが特徴的だと呼ばれているのです。
 なので、これは私が一番好きな定義なのですけれども、個人が自分にとって意義のあるやり方で職務を再定義し、再創造するプロセスですね。私はこれは非常にいいことだと思っているのですけれども、当然サイドイフェクトというか副作用もありまして、個人があまり勝手にやり過ぎてしまうと、会社の全体の職務遂行の効率が落ちてしまうという問題はあるのですけれども、それにしても、現代的な考えからすると重要なものではないかと思っております。
 これは相当な研究の蓄積があって、メタ分析とか文献レビューとか相当あるのですけれども、一般的にはこのJD-Rモデルということで、ジョブディマンドとジョブリソースがワーク・エンゲージメントを高めるというようなモデルにジョブ・クラフティングがアドオンされたというような考え方があります。つまり、仕事の要求だと仕事の資源ということで、その辺のバランスで本人のストレスというものは規定されるのですが、それがうまくいくと、PJフィットと言われる個人と仕事の志向性が一致するということでうまくいくのです。不一致であったときには、個人の差とか仕事の特徴が調整要因となるのですが、そこでジョブ・クラフティングが起こると、ワーク・エンゲージメントなどが望ましい結果があるというのが言われていて、相当研究蓄積があります。
 日本の事例でいうと、有名なのがディズニーランドの事例でして、ディズニーランドは、オープン当初はパークの中にキャストと呼ばれる人たちがすごくたくさんいるのですけれども、パークの中でお仕事をするキャストの中で、掃除を担当するのはカストーディアルという職種なのです。そうすると、カストーディアルという職種のは最初は物すごく不人気だったと。カストーディアルに配属されると、何で私はディズニーランドの中でこんな夢の国で掃除をしなくてはいけないのですかと泣いてしまう人もいたそうです。これはいかんということで、あなたのお仕事は目の前のお掃除をするだけではなくて、パークを清潔に管理してゲストに安全をもたらすことですよと。もっと言うと、ゲストのハピネスを追求することですよと運営側が伝えました。
 この運営側が伝えた考えをただそのまま一方的に受け入れただけだったら、一方通行でやらされ感なのですけれども、これをディズニーランドの場合は、カストーディアルの人たちが確かにそうだなと。そうであれば、自分たちでゲストのハピネスを追求する工夫をしようと自分たちでボトムアップで考えたということなのですよね。ここからは、運営側に言われたからということではなくて、独自に自分たちでいろいろなことをやり始めたと。そうすると、自分たちで、工夫して落ち葉でミッキーマウスの顔を作ったり、水で地面にミッキーマウスの絵を描いたり、ローラーブレードでかっこよく清掃するというようなことを行った。そうすると、カストーディアルは今まで人気職種になって、今、世界中のディズニーランドでカストーディアルはこういうことをやっているのですけれども、それはこの日本発で広まったと言われているのです。
 この場合、何が3次元かというと、自分たちの仕事の意味づけを目の前の清掃からパークに訪れるゲストのハピネスの追求に変えたというのが認知次元なのです。タスク次元としては、具体的にミッキーマウスを水で地面に描いた。そうすると、関係次元としては、今までカストーディアルはゲストと話もしなかったのが、ゲストとすごく話をするようになって、ゲストを楽しませるようになった。つまり、ゲストという仕事上の人間関係に大きな変化が出たということで、これで認知、タスク、関係が一緒に変わるということなのです。
 しつこいのですけれども、もう一つ事例がありまして、これはテッセイと呼ばれる新幹線のお掃除をする会社の話です。新幹線のお掃除をする会社は、皆さん御承知だと思うのですけれども、東京駅とかで物すごく手際よくお掃除して、新幹線が折り返せるということなのですが、CNNが7分間の奇跡として紹介したぐらいなのですけれども、これは矢部さんという人がJR東日本の親会社からテッセイに出向してきたのですが、矢部さんが来るまではみんなモチベーションが低くて、単に目の前のお掃除をするだけの仕事だったのです。ところが、矢部さんが来たら、これはちょっと違うでしょうと。我々はおもてなし創造会社であって、新幹線劇場ではないかということを言ったのです。最初はみんな半信半疑だったのですけれども、そう言われてみればということでみんな納得してやり始めて、そうしてみると、これもその後はみんな個人的に提案しているのですけれども、アロハシャツを着ましょう、サンタの服を着ましょうみたいな提案が本人たちが出てきた。これも今までお客様と話もしなかったのが、こういうことになったらお客様とすごく話すようになったと。そうすると、ある女性のお客様が、新幹線みたいな高級な乗り物で男女共用のトイレしかないことへの不満をテッセイの社員が聞いて、それで提案して、今、新幹線に女性用のトイレができたということなのです。そういうお客様の要望をきちんと聞いたということだと思うのですよね。
 そうしますと、この場合も、認知としては目の前の清掃から新幹線劇場に変わり、タスク次元としては工夫としてアロハシャツを着たりして、関係次元としてはお客様の提案を聞いて、お客様とよく話すようになったということなのですよね。
 これは、人間というのはそもそも仕事の意味を制御したいという気持ちがあるのですけれども、その意味が部分的なものなのか、全体的なものなのか。でも、より有機的になると仕事の意味が変化していくということをレズネフスキーたちは言っているのですけれども、これをシニアの観点から言いますと、今、どちらかというと、今までの日本的雇用の通説からいうと、日本の人事部は、福祉的雇用だから、そんなに真面目に働かなくていいから、技能継承だけしてことを言うわけですけれども、それだと非常にモチベーションも損なうし、そんなことを言っていられる人員構成ではない。そうなってくると、むしろシニアが主体的に第一線で働き続けるということが必要なのですけれども、これは中央集権的に人事部がやるというのは限界があって、シニア本人がジョブ・クラフティングすることが必須である。シニアがジョブ・クラフティングするというのは、仕事の意味の創造が生じるので、これはエウダイモニア的な幸せにつながっていくのではないかと。
 そうなってきますと、アサヒさんも取り入れられているということなのですけれども、人事部の制度そのもので中央集権的な職務設計を現場に委譲して、上司が支援しつつ本人がジョブ・クラフティングを行ってシニアに適した職務を創造することが現実的なアプローチではないかと考えます。
 それで、今度は働き方の選択肢ということなのですけれども、こちらの資料は私がフリーランス協会さんと共同研究をした内容です・フリーランス協会さんに近いフリーランスに呼びかけて調査をしましたと。そのとき、同様にフリーランス協会がマクロミルでデータを取りましたということについて一緒に分析したのですけれども、そういう意味でいうと、ここのフリーランスのサンプルというのは、一般的なフリーランスに該当する全般の人たちのサンプルというよりも、フリーランス協会周りのかなり専門性が高くて自律的にやっている人たちという条件つきなのですが、それでワーク・エンゲージメントを見てみると、ワーク・エンゲージメントは6点が最大の点数なのですけれども、会社員が2.42で、フリーランスは4.0だと。これは低めに出ているのですけれども、日本では、数多くのワーク・エンゲージメントの論文があるのですけれども、大体どの論文も日本で調査をするとワーク・エンゲージメントは2.8から2.9に収れんすると言われているのです。この調査はちょっと低めに出ているのですけれども、3が真ん中で6が最大値なのですけれども、欧米諸国は大体平均が4に収れんするというのに比較すると、日本は非常に低いと言われてきたのですけれども、実はフリーランスだけは欧米諸国並みに高かったというようなことが実態だったのではないかと。サンプル条件に限界がありますが、それでキャリア自律なり、専門性なり、ジョブ・クラフティングというのもフリーランスのほうが高かったということなのです。
 そういう意味で言うと、フリーランスは一つの、特にシニアの有力な働き方なのではないかと思うのですけれども、ギグワークと言うと、今、ライドシェアの議論もありますけれども、UberEatsのことかと思ってしまうかもしれないのですけれども、UberEatsは一定の特徴があるギグワークで、ギグワークは裁量性とリモート性というのがありまして、裁量性の中では自分自身で提供する業務に値づけできるのが一番大事だし、リモート性というのは物理的に拘束されなくて、リモートで完結するというのは大事なのですけれども、UberEatsは両方ともそれを満たしていません。今のギグワークはオンラインで顧客と仕事をしたい人をマッチングしてしまったらあと値づけもかなり自由にやってねというパターンも多いのです。それで言うと、スキルが高まっていくということで、例えば単発のコンサルティング、単発のスキル提供、単発の講師、それから、タイミーという会社は、実は雇用型ギグワークで、隙間時間なのだけれども、例えば半日しかアルバイトしなくても、その半日間実は雇用契約が結ばれるというタイプのギグワークもありますけれども、これはシニアにとって実は有力な選択肢なのではないかと。それは会社にいるときからやりつつ、シニアになってもやれるということなのではないかと思うのですけれども、これをUberのしゃれだと思うのですけれども、一橋の檜山先生という方がITで実現できないかということでGBERみたいなプラットフォームをつくっているのですけれども、このときの前提はモザイク型就労ということなので、一人の人のスキル、時間、場所というのをモザイクにしてしまってITでマッチングしましょうみたいな取組もあります。
 今、世田谷区が実証実験をやっていまして、実際にこのプラットフォームを使って、世田谷区のこういったギグワークと、定年以降の専門性が高い方をマッチングしましょうみたいなことをやっているのです。そうすると、今、世田谷区がやろうとしている取組というのは、従来のシルバー人材センターの仕事ではない、もっと高度な仕事というのを世田谷区の事業者に考えてもらって、モザイク的な仕事を創出するみたいな実証実験をやっているのですけれども、実際にこれをやり始めると、今まで事業者もシニア本人側も考えられなかったような仕事が生まれているという実態がありまして、実は工夫すればできるのだみたいなことがあるので、こういった実証実験が広まっていって、選択肢が広がるといいなと思っています。
 最後に、キャリア・カウンセリングと越境学習ということですけれども、前川製作所という高齢者雇用で非常に有名な会社で、昔からずっと実質定年制はなかったのですが、ここが一番大事にしていることは、働き続ける人は健康であって自分自身のやりたいことが明確で、それを周囲が受け入れているということが重要なのですけれども、実はこれはジョブ・クラフティングとも関係しています。ジョブ・クラフティングの副作用として、やりたいことで自分の仕事を創出してもいいのだけれども、それが周りには受け入れられない仕事だったということもあります。自分だけやる気になっているのだけれども、それが職場の人からすると歓迎できない仕事をつくってしまっているのだけれども、先輩だからみんな遠慮して言えないみたいなこともあるそうです。そうならないように、まず50歳で360度評価をきっちりやり、その後、キャリア・カウンセリングをかなりしっかりやるのですけれども、70歳以降のシニアへのメンターに該当する方がキャリア・カウンセリングに入るようなことをして、上司と部下だけの面談に任せずに、その人たちと2対1でキャリア・カウンセリングをするからうまく回っていくみたいなこともあるということが言われています。
 あるいはNTTコミュニケーションズさんのキャリア・カウンセリングが非常に成功例なのですけれども、これは有名なキャリアカウンセラーがいまして、今まで50代の社員は、やる気はあるのだけれども、結局、役職定年とか定年再雇用になって、重要な会議で呼ばれないとか、重要なプロジェクトにアサインされないということで、自分はおとなしくしていたほうがいいのだなということでやる気が下がってしまうという現象があったのが、そうではないのだよというようなことをキャリアカウンセラーが面談でやるようになって、それで、例えば50歳になってからシンガポールにトレーニーで海外研修に行って、そこから自分の能力を伸ばそうみたいな人が出始めているということで、アサヒさんもキャリア・カウンセリングの事例の紹介がありましたが、一つ、やはりシニアに対してはジョブ・クラフティングを促したり、重要な施策になるのかなと思っています。
 それと、越境学習という考え方がありまして、簡単に言うと会社の外で学ぼうということなのですけれども、これは非常にシニアに有効だと思っていまして、何となれば、この越境学習の定義というのが、自分の心の中のホームだと思う場所と自分の心の中のアウェーと思う場所を、そこの境界を行ったり来たりして学ぶということなのです。自分の心の中のホームという場所は、そこに行くとよく知った人がいて、社内用語も通じるので安心できるけれども、刺激がない場所なのですよね。アウェーというのは、そこに行くと見知らぬ人がいて、社内用語も通じないので非常に居心地が悪くて、アウェー感があるのですけれども、刺激がある場所なのですよね。ここを行ったり来たりするのがいいということなのですけれども、何でこれを行ったり来たりするといいかというと2つありまして、シニアは実はずっと特に同じ会社の中にいたりすると、自分は人事異動で使い回されて、ジェネラリストになってしまって、何もつぶしがきかないとかと思い込んでいる人が多いのですけれども、実は外でボランティア活動とか地域活動とかをやってみると、めちゃめちゃそのスキルが評価される。あるいは今、リモートで地域の中小企業と副業できるようになっていますけれども、その場合も非常にこんなことがということが評価されるということがすごくあるのです。
 ところが、シニアのもう一つの問題というのは、マッチョイズムとかマスキュリニティーといいますか、年齢と地位にこだわり過ぎて、昇進だけにこだわり過ぎて、自分の社会的地位を前提としたコミュニケーションをすることが問題で、これをやってしまうと、中小企業や地域で歓迎されません。早いうちから越境学習をして、ボランティアとかそういったところに行ったりすると、そういう場所というのは年齢とか地位にこだわらないフラットなコミュニケーションができるようになり、趣味のサークルとかに行くと、全く手も足も出ないことを若い人から教えてもらったりするのですけれども、それが非常にいい。そこで自己調整すると、マッチョイズムみたいなものから解放されていきいきと働けるようになるという意味で、あるいはそういうアウェーに行ってみると、自分の人生の意味から含めた仕事の価値みたいなのが分かるようになって、エウダイモニアにもつながるということなので、実はシニアこそ主観的幸福を高めて幸せの生き方ができる黄金時代だと思うのです。
 ところが、人事部のほうが雇用の安定が全てで福祉的雇用をさせてやっているぞみたいなパターナリズムで、技能継承だけ推移しろというと、シニアの可能性を潰してしまうのです。だから、人事部にも変わってほしいのですけれども、もっと現場に権限を委譲して、シニア本人にジョブ・クラフティングをしてもらってほしい。ただ、そこは上司とか職場が一定介入して、これは本当に職場にも役に立つことだよねみたいな介入も必要だと思いますし、フリーランスの可能性も視野に入れるとなると、ジョブ・クラフティングをどんどん早めにやってほしいと。そういったときには、キャリア・カウンセリングと越境学習という考え方は有効なのではないかと思います。
 2分ほど過ぎましたけれども、以上で私の話は終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは、質疑に入りたいと思います。今日はお二人の御報告をいただきましたので、まずこの点について御質問あるいは御意見がございましたら、お願いしたいと思います。
 いかがでしょうか。非常に身につまされる思いの報告であったと思いますので、どなたからでも結構です。
 佐藤博樹先生、まずお願いします。
○佐藤委員 林さん、石山先生、どうもありがとうございました。
 それぞれに質問があるのですけれども、林さんには2つあって、一つは社員のキャリアオーナーシップを高めるということなのですが、それができても、他方、それが実現できないとやはり自分で自分のキャリアを考えてもしようがないなと思うようになると思うのですが、それには選択肢を用意しているということと、ある程度それを選べるということが大事だと思うのですが、キャリアオーナーシップが実現できるような、つまり、考えたことが実現できると思わないと考え続けませんよね。その辺をどうされているかが一つです。
 あと、キャリア面談などで、特に30代の人などで言うと、転職がありますよね。社内の方、つまり、キャリアコンサルタントと話しているときに、転職というようなことも含めて相談できるのかどうかなのですよね。やはり社内のことを考えたものになってしまって、でも、実際は外のキャリアも含めたキャリア相談が大事だと思うのですけれども、そのことがやれているのかどうか。実際に転職しようという人は相談に来ないのかどうか、それを伺いたい。2つです。
 あと、石山さんには、シニアの方が越境学習とかジョブ・クラフティング、これまでそういうことをやってこなかった人たちですよね。だから、どういうふうにして例えば今のシニアの人に越境学習をしてもらうようなきっかけですね。その辺、これから若い人からはいいと思うのですけれども、もう50代になってしまった人はかなりハードルが高いと思うのですが、それの仕掛けみたいなことを教えていただければと思います。よろしくお願いします
○樋口座長 それでは、林さんからお願いします。
○林委員 佐藤先生、ありがとうございます。
 まず、1点目の選択肢の件なのですけれども、選択肢については幾つか用意しておりまして、シニアの社員に対しては、よくあることなのですが、早期退職の制度を恒常的に入れています。なので、外に行きたいなと思ったら手を挙げて、少し退職金の上積みがあって、辞めていくというような制度があったりします。
 あとは、公募も徐々に増やしてきています。なので、行きたい、異動したい職種、部署があったら、そこに手を挙げて異動する。100%実現するわけではないのですけれども、公募の制度があります。
 公募と似ているのですけれども、ダイレクトアピール制度というのもあって、先ほど年に1回キャリアデザインシートというのを書きますというお話をしたのですけれども、そのときに、上司に言わずに直接自分が行きたい部署の上司に私はそこの部署に行きたいのですというアピールをするという制度もあります。
 あと、基本的にはキャリアデザインシートというところに自分が行きたい部署の希望を出したり、将来の中長期の希望を出して、それは人事に来るので、人事異動の参考にするといった選択肢を用意しています。
 ただ、まだジョブ型に完全に移行しているわけではないので、いろいろな会社さんで公募を100%にしていますという会社もあるのですけれども、まだまだ公募の比率が低いのは事実なので、ここは増やしていきたいなと思っているところです。
 こちらが1点目で、2点目なのですけれども、若手の転職の相談は確かに多くはないです。多くはないのですけれども、実はあります。私も実は受けたことがあるのですけれども、別にリテンションをすることがいいわけではないので、本当に本人が外がいいと言った場合は外を紹介したりもしたことがあります。ただ、結果的にその人とかは残るのですよね。相談に来るうちは基本的に出ていかないですね。決めてしまって言いに来るという人はいるのですけれども、相談に来る人というのは基本的には外に出ないというのが今の実感値です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、石山先生。
○石山委員 佐藤先生、御質問ありがとうございました。
 佐藤先生の御指摘の点というのは、まさに最も企業さんが悩んでいるところなのですけれども、実態として、ちょっとステレオタイプになってしまって申し訳ないのですが、特にシニアの方がいきなり越境学習をすると、最初はどうしても年齢とか地位に縛られた話し方をして苦労するのは確かなのですけれども、ところが、やってみると、2~3か月すると皆さん克服してしまって、うまくフラットに話せるようになるのです。
 そうすると、私の実感としては、シニアの人がそういう場に行くことがハードルが高いという問題で、行ってしまえば大丈夫だということなのですけれども、行くきっかけがない。私も企業で越境学習の講演とかをシニア向けの方にやることが多いのですけれども、皆さん総論賛成だけれども、いきなりそんな怖いところにどうやって行くのだみたいな話があったりするのです。例えば川崎市には川崎プロボノ部という取り組みがありますが、3か月ぐらいのボランティアができる機会を提供しています。また日本全国にできているコワーキングスペースが実はコミュニティーを同時につくっていたりして、そういう場に行くと、うまくシニアがなじめる環境ってすごい整ってきているのです。ただ、最初の一歩が出ないので、私がお勧めしているのは、これは組合がやっても企業がやってもいいのですけれども、5~6人ぐらいでグループワークとか、飲みながらやってもいいのですけれども、越境したシニアの経験を聞いてみる。そうしてお互いにどんな感じですかとやってみると、そんな身近な感じでできるのだねというようなことで、そうすると、結局モデリングというか、あの人ができたのなら私もということで一番できやすいのではないかということを今考えていまして、これは企業の人事部とか労働組合さんに強くお勧めしているところです。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、玄田先生、お願いします。
○玄田委員 ありがとうございました。
 私は林さんと石山さんに同じ質問を1つだけしたいと思っていて、質問から聞くと、50代を中心に対象とした公的なキャリアオーナーシップセンターでもいいし、ジョブ・クラフティングセンターでもいいのだけれども、そういうものをそろそろ考える必要があるかどうかという質問なのです。
 お二人の話を聞いて、(接続不良)やはりキャリアオーナーの役割というか、一定の責任とか、やはり効果があるのは、(接続不良)そういう公的なセンターみたいなものが必要かどうかということで、ちょうど氷河期が50代になり始めて、またいろいろな難しい問題を抱えていたり、昔、若者のことをやったときに、ハローワークでは駄目で、ハローワークの前段階が必要だということでサポステをつくったりして、中高年にはハローワークがあったり、産雇センターとかいろいろあるのだけれども、今日お話を聞いたような公的なキャリアオーナーシップとかジョブ・クラフティングセンターがあるかといえば、やはりないと言えると思うのだよ。それで、アサヒさんはやはり3兆円企業だし、今日出てきた例も、石山さんの例も大企業だから、中小企業まで含めて考えると、そろそろ公的な形で、職探し、求職活動以前の段階で、マッチング以前の段階で、キャリアをサポートするセンターはやはり必要なのではないかなという気が。これは雇用政策研究会なので、政策面としてそういう必要があるかどうかということをどうお感じになるかというのをぜひお聞かせいただきたいという質問でした。お願いします。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、林さん。
○林委員 ありがとうございます。
 まさに必要だと思います。というのは、実は我々、お客さんがあるのです。従業員のキャリア開発ですとか育成とかまで手が回っていない企業さんがすごく多いです。実はそういうところから私のところにやってほしいと。うちの従業員にもキャリア相談とかセミナーをやってほしいというリクエストがありまして、対応することがあるのです。それを考えると、やはりそういう場がほしいと思っている企業さんはすごくたくさんあると思うので、公的な機関であると利用されるのではないかなと思います。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、石山さん、お願いします。
○石山委員 私はサポステ、ジョブカフェの役割はめちゃめちゃ大きかったと思うのですよね。それはやはり、そういったところに行きやすくなるし、なおかつサポステとかジョブカフェは地域と連携しやすいというのがすごくいいことだと思っていまして、そうすると、サポステ、ジョブカフェの発展形として、例えばジョブ・クラフティングとか、そういったものをやる組織ができると非常にいいと思うのですよね。それはさっき申し上げたように、地域の仕事というものと連携しやすいということもありますし、あと、同時に、私は外部で企業外のところで3か月ぐらいジョブ・クラフティングのワークショップをやっているのですけれども、そこの受講者の意見を聞くと、本来これは企業でやってもいいと。例えば同じ職場ぐるみでジョブ・クラフティングをみんな共有すると、お互いにそういうことが大事ではないと分かると。ただ、やりにくい面もあると。上司の前でジョブ・クラフティングのワークショップをやると、お前はそんなことを考えているのかみたいなことで非常にやりにくい面もあるから、外部でやりたいという意見も同時にあるのです。そうすると、アサヒさんみたいに職場ぐるみでやってもらうことも大事なのですけれども、同時に、中小企業ということもありますけれども、大企業でもあっても、外にそういう公的な組織があって、それをやった上で地域とか企業と連携していくということができれば理想的なのではないかと思っております。
○樋口座長 ありがとうございました。
 玄田先生、よろしいですか。
○玄田委員 はい。ありがとうございました。
○樋口座長 それでは、阿部先生、お願いします。
○阿部委員 ありがとうございます。
 私は、林さんにだけ質問で、石山さんは今日は御無沙汰していますけれども、質問はありません。
 林さんにお聞きしたいのは、まず、アサヒビールのような大企業で、50代あるいは40代後半の人で、キャリアについて関心を持っている層って大体どれぐらいで、関心が全くない層というのはどれぐらいいるのか。いなければいけないでいいのですけれども、それがまず第1点です。
 第2点目が、40代から50代で多分7,000名ぐらいいらっしゃると思うのですけれども、これに対して現状のキャリアコンサルタントの方は、聞き漏らしたのかもしれませんが、何名で対応しようとされているのか。現状は足りているのか足りていないのか、その辺りを教えていただければと思っています。
 私の質問は以上です。
○樋口座長 それでは、お願いします。
○林委員 ありがとうございます。
 1つ目の質問なのですけれども、非常に難しい質問だなと思って伺っておりました。どのぐらいのシニアの社員がキャリアに関心があるかということなのですけれども、なかなか感覚値でしか分からないのですが、まず、面談に来る人とかセミナーに来る人とか手を挙げてくる人は関心があるということを考えると、例えば55歳、50歳あたり、節目年齢に声をかけてキャリア・カウンセリングの相談に来る人は3割ぐらいいます。なので、3割ぐらいは自分のキャリアに関心があるのではないかなということは言えるのではないかなと思います。ただ、来なくても関心がある人もいると思うのですが、そこは分からないですけれども、3割ぐらいと思っていただければと思います。
 あと、もう一点目が、もう一度御質問をいいですか。ごめんなさい。
○阿部委員 先ほどお聞きしたのは、キャリアコンサルタントの方は何名いらっしゃるか。
○林委員 失礼しました。
 今、8人おります。8人で足りるかどうかというところなのですが、今のところ年間300人ぐらいなので足りています。ただ、これを広げていこうとすると足りなくなるなという状況ではあります。
○阿部委員 ありがとうございます。
 7割が無関心かもしれないというのをどうやって掘り起こすかというのが問題としてはあるのかなと思いました。これから掘り起こしをされるということをおっしゃっていたので、どんなことをやれば関心を持つ人たちが増えるのかなというのは、政策的にも大事なような気がしました。
 私からは以上です。
○樋口座長 それについて何か。
○林委員 ありがとうございます。
 まさにおっしゃるところが課題で、今日の課題の1点目なのですよね。私たちがやっている施策、取組をまだ1万人の従業員の人たちにきちんと理解してもらっていないというところがあるかなと思うので、まずはPRをしていくということと口コミで広げていくとかということを進めて、あとは日々対応しているマネジャーに理解をしてもらうという辺りを進めていって広げていきたいなと考えております。ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、神吉先生、どうぞ。
○神吉委員 いずれも大変興味深いお話をいただきました。ありがとうございました。
 林さんに、佐藤先生の最初の質問とも関連して、異動の実態が変わったのかを質問したいと思いました。林さん御自身が意に沿わない異動であったり単身赴任をされたりという経験をおっしゃられていましたけれども、こうしたキャリア面談をして希望が出されるときに、それは異動の実態にどのように反映されるのか。単身赴任は今はできないとかしたくないなどと拒否できるようになったのかを伺えればと思います。
○樋口座長 お願いします。
○林委員 ありがとうございます。
 まず、私たちの面談は直接人事に情報を伝えるわけではないので、直接私たちが面談をしていることが人事異動につながっているかというと、それはそうではないのですけれども、結果的にキャリアオーナーシップ、自分で希望を出したり、自分の意思を人事に伝えたり上司に伝えたりすることによって、意にそぐわない異動が減っているということは、これも感覚値で恐縮なのですけれども、あるかなと思っています。少なくとも我々の面談を受けた人たちに関しては少なくなっているということは言えると思います。ただ、会社全体として、どれだけ意にそぐわない異動が少なくなっているかということは分析できてはいないのですけれども、ただ、私も人事にいたので、人事側の回答になってしまうのですが、キャリアデザインシートというところで希望を細かく出してもらうので、希望職種もしくは希望のエリアに関しては、異動した人の8割、9割は希望を聞いているという状況になります。
 ただ、実は希望しても異動できないという人がたくさんいるので、ここをどういうふうに意にそぐわない、希望しても動けないという人をどれだけ減らしていくかということがやはり私たちの課題かなと思っております。
○樋口座長 よろしいでしょうか。
○神吉委員 ありがとうございます。
○樋口座長 ほかにお二人に対する御意見、御質問はございますか。よろしいですか。
 齋藤先生、どうぞ。
○齋藤委員 ありがとうございます。
 私も林さんに1つ質問したいのですが、やはり相談内容としてそういった転勤とか単身赴任を拒否されるとか、あるいは遅らせてほしいとか、そういう内容が実際に多いのかということと、もしかしてそういったことをたくさん受け入れると、人気のない仕事とか人気のない勤務地に対してどうやって人を割り当てていくのかという問題が非常に深刻になってくるのではないかと思うのですが、この辺りはいかがでしょうか。希望をそのまま受け入れるというよりは、話し合って本人に納得してもらうとか、それこそ石山先生がおっしゃったジョブ・クラフティングを活用していくのかといったような解決策もあるのかもしれないのですが、お考えをお聞かせいただければと思います。
○樋口座長 お願いします。
○林委員 ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、そこは難しいところではありますが、基本的に上司がやはり大事だと思っていて、上司と部下できちんと話し合った上で自分のキャリアを選択していけるように、例えば今は意にそぐわない仕事かもしれないけれども、それが将来の自分のキャリアに、部下のメンバーのキャリアにつながるのだよということを上司なりがきちんと説明をできれば、そこは本人の納得度も高まるでしょうし、あと、私たちがやっているキャリア面談の中でもそういう話をすることはよくあります。こちらから言うのではなくて、本人に気づいてもらうような働きかけをするのですけれども、中長期的に見て、今はやりたくないと思っているかもしれないけれども、それは意味があることなのだよと。ジョブ。クラフティングを入れたのは、そういうところでも使えるかなと思って、こちらも始めたばかりなのですけれども、自分のジョブをクラフティングすることによって、今の仕事に対してもモチベーションが高くなり、さらに中長期のキャリアにつながるというようなことを考えてもらう。本当に本人にそこに気がついてもらうような話合いを上司と部下、もしくは私たちと話をするということで、解決につなげていこうとしているところでございます。
 よろしいでしょうか。
○樋口座長 人気のない赴任地とか仕事とかはどうしていますかと。
○林委員 そこは、やはり人事異動で配置をしているということが現実的にはまだまだあります。
○樋口座長 ありがとうございます。
 山本先生。
○山本委員 ありがとうございます。
 私も林さんに1つ、今までの関連になると思うのですけれども、人事と直接の連携はないというようなお話だったと思うのですが、キャリア面談などをしていて、こういうスキルを身につけるとよりよいキャリアを築けるというようなことが分かったり、研修との連携というのですかね。そういったものをされているかということをお聞きできればと思います。
 それから、もう一つは石山先生に質問なのですが、私も玄田先生と同じように、中小企業の方はこういう今大企業で取り組まれているような手当てを受けにくいのかなと思って、これはますます格差が広がっていきかねないなと思って聞いていたのですが、ただ、高齢者で働いている人は、割と中小企業のほうが長く働いていたり、高齢の方が活躍されているというようなこともあるかと思うのですけれども、規模で分けて、中小企業と大企業とかで働いている人のエンゲージメントとかに違いがあるのかどうかというところを御存じであれば教えていただければと思います。
 以上です。
○樋口座長 では、林先生から。
○林委員 ありがとうございます。
 研修との連携というところなのですけれども、我々、人事部との情報交換も当然しておりまして、人事の研修体系とかを理解した上で面談をしているというところになります。なので、例えば相談を受けたときに、どういう自己研鑽をしたほうがいいかなという相談を受けたときに、人事が展開している研修を紹介するであったり、あと、こういう職種に就きたいのであればこういう勉強をしたほうがいいのではないかというアドバイスはするようにしています。なので、相談内容はもちろん人事に漏らさないということは徹底しているのですけれども、情報に関しては人事と定期的に情報交換をして進めている。そんな形で進めさせていただいています。
○樋口座長 石山先生、中小企業の問題で。
○石山委員 まず、ワーク・エンゲージメントについて、大企業と中小企業でどれだけ違いがあるのかということについては、こちらなのですけれども、それを大規模にやった厳密な調査は私のほうでは存じ上げないのですけれども、私の研究の中で重回帰分析をやったときに、企業規模を統制変数で取っていまして、企業規模ダミーでベースを大企業と設定した場合、ワーク・エンゲージメントをそのベースと中小企業と小規模企業で比較してみると、特に有意な差はなかったのです。だけれども、結局これは会社員600人ぐらいのサンプルなので、あまりこれがどこまで言えるかというのは分かりませんけれども、恐らく企業規模でそこまで違うかどうかというのは、どこまで影響があるかは分からないなという感じはします。山本先生がおっしゃるとおり、むしろ中小企業のほうがシニアについてはどんどん働いてもらってしまったりしているので、むしろひょっとしたらそちらのほうがワーク・エンゲージメントにもいい数値が出ている可能性あるのではないかと。
 あと、越境学習みたいなことは、実は中小企業のほうがやりやすいのではないかと思っていまして、最近出ている例でいうと、中小企業の経営者とかが越境学習をしたりするのですけれども、そうすると、企業が丸ごと越境学習をすぐしてしまう文化ができたり、あるいは越境学習手当、1年間何でもやってもいいよというのを1人5万円つけますというのを10人ぐらいの小規模企業がやったりということで、むしろ大企業だけにとらわれない可能性があるのではないかとも思っております。
○山本委員 ありがとうございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
 役所はどうなのかというところもありますが、黒田さん、お願いします。
○黒田委員 ありがとうございます。早稲田大学の黒田と申します。
 林様、石山先生、本日は本当にありがとうございました。
 お時間もないので、林様に1点だけ質問させていただければと思います。本日の御案内はおおむね高齢者雇用に関する御案内だったと思うのですけれども、先ほどのご説明資料の年間スケジュールの箇所で、「女性」という記載がありましたが、女性のキャリアオーナーシップの育成に関する御社のお取組などがありましたら、教えていただければと思いました。
 といいますのは、先ほどの厚労省が用意してくださったグラフの中でも見えてきましたけれども、現状では係長クラスには大体女性の4人に1人ぐらいがなっていますけれども、部長クラスまで行くにはかなりまだハードルが高い。これもステレオタイプかもしれないですけれども、20代の後半から40代にかけては、相対的には女性のほうが多くのライフイベントに直面していて、そこでキャリアに悩む女性もかなり多いと思います。御社で、そういったことに関してのサポートなどが何かあれば教えていただければと思います。
○樋口座長 お願いします。
○林委員 ありがとうございます。
 先ほど説明はしなかったのですが、ちょうど3月、国際女性デーが3月8日にあるので、そこに合わせて、女性をターゲットに、女性に面談しませんかということで声をかけて、女性に特化して面談をするということを行っていたり、あとは、今日御説明はしなかったのですけれども、ダイバーシティー、エクイティ&インクルージョン、DE&I室というところが、別部署にあるのですけれども、そちらと連携をして、女性だけに向けた女性のキャリアセミナーを実施したり、そういった取組も行っています。女性に対して、やはり弊社も管理職1割未満という状況になっているので、例えばロールモデルといいますか、先輩社員の話を聞く機会を設けていたり、そういった女性に特化した取組も行っています。
 あとは、制度的にも両立支援制度はかなり整っておりまして、女性が長く働き続けるという環境は随分出来上がってきて、出産とか育児で辞めるという人は0%になっています。ただ、やはり社内のM字カーブではないのですけれども、復職後、産休明けに出てきたときにどうしても補佐的な仕事をアサインされてしまうとか、そういったことが起こりがちなので、そこを何とか上げていかないといけないねということで、個別の面談をしたり、キャリアの話をする機会をつくったり、ネットワーキングをしたりというような取組を行っております。
 簡単ですけれども。
○樋口座長 ありがとうございました。
 あとはよろしいでしょうか。
○雇用政策課長補佐 補足でよろしいですか。事務局でございます。
 先ほど玄田先生からキャリア形成で公的な支援がないのではないかというお話がありましたが、厚生労働省の委託事業でキャリア形成・学び直し支援センターというものがございまして、個人の方に関しては無料のキャリアコンサルティングを行ったり、あとは企業向けに対してはセルフ・キャリアドックの導入についてのコンサルみたいなことをやっているといった事業がございますので、先生方に後ほど資料を送らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○樋口座長 誰も知らなかったというのがまた不思議で、これだけの先生が。
○雇用政策課長補佐 頑張ります。
○樋口座長 あと、鶴先生と荒木先生ですが、よろしいですか。
 ありがとうございます。
 ほぼ時間もまいりましたので、本日の御議論はそこまでにしたいと思います。全体についての議論も伺おうと思ったのですが、時間の関係で次回にしたいと思っています。
 それでは、次回以降の研究会の開催スケジュールについて事務局からお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 第5回研究会の開催日時につきましては、委員の先生方には先日御案内させていただきましたが、12月21日木曜日の15時から17時での開催を予定しております。
 第6回目以降の開催日時につきましては、現在調整中でございますので、確定次第御案内をさせていただきます。
○樋口座長 それでは、お二人の先生、どうもありがとうございました。
 また、委員の皆さんも朝早くからありがとうございました。
 それでは、本日は以上で終了したいと思います。どうもありがとうございました。