2023年度第2回雇用政策研究会 議事録

日時

令和5年6月27日(火)15:00~17:00

場所

本会議会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

傍聴会場
厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2023-6-27 2023年度第2回雇用政策研究会
○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。
 ただいまより2023年度第2回「雇用政策研究会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、阿部委員、荒木委員、大竹委員、黒田委員、佐藤委員が御欠席となっております。
 それでは、報道関係者の方はここで御退席となります。
(報道関係者退席)
○雇用政策課長補佐 それでは、議事に入る前に、本日はZoomによるオンライン参加の委員もいらっしゃいますので、改めて簡単に操作方法について御説明させていただきます。
 本日の研究会の進行中は事務局のほうで委員の皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言される際には、画面下の「参加者」のボタンをクリックしていただき、その後に表示されるポップアップ画面の右下に表示されます「手を挙げる」のボタンをクリックしていただければと思います。その後、樋口座長の許可があった後に御自身でマイクをオンにしていただいてから御発言いただきますようよろしくお願いいたします。
 また、本会議室から御参加いただく皆様におかれては、御発言の前にお名前を名のってから御発言いただきますようお願い申し上げます。
 なお、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や音声が聞こえなくなった場合など何かトラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号かチャット機能で御連絡いただきますようお願いいたします。
 オンライン会議に係る説明については以上です。
 続きまして、議事に入らせていただきます。今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 皆様、こんにちは。樋口です。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の予定でございますが、まず最初に、田中職業安定局長より第1回における議論を踏まえまして、今後の進め方について説明がございます。次に、JILPTから資料1としまして、前回、需給推計を5年前に行いましたが、そのフォローアップについて説明を行いまして、一度、自由討議を行います。その後、女性活躍及び仕事と育児の両立支援につきまして、議論を行いたいと考えております。まず、事務局及び雇用環境・均等局から資料2から4までについて、これまでの取組等の説明を行います。次に、齋藤委員から資料5として説明を頂き、最後に、事務局、雇用環境・均等局及び齋藤委員の説明を踏まえまして、再度自由討議としたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、初めに、田中職業安定局長から今後の進め方について説明をお願いいたします。
○職業安定局長 職業安定局長の田中でございます。
 委員の皆様におかれましては、本日も大変お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 前回、6月1日ですが、第1回の雇用政策研究会では、5年度の雇用政策研究会の位置づけや、御議論いただきたい内容につきまして、事務局、それから私も少し発言させていただきました。前回の議論の中で、委員の先生方から様々な御意見を頂戴しましたが、今後の雇用政策研究会の進め方につきましても、御意見、御発言を頂きましたので、改めて説明させていただきたいと考えております。
 政府としては、経済状況とか時々の社会情勢など様々な要因を踏まえながら、労働政策の検討を行い、その方向性を定めて実施しているところでございますが、厚生労働省としては、その政策の検討の過程においてしっかりとした学術的・理論的な背景を持った議論をベースとすべく、委員の先生方にお集まりいただいて、この雇用政策研究会を開催しているところでございます。本研究会で様々な御意見を頂きますし、また、時々のタイミングにおいて議論を取りまとめ、報告書をおまとめいただいておりますけれども、そういった成果を政策決定過程においてできるだけ反映すべく努力したいと考えているところでございます。
 先ほど申し上げたように、様々な要素等もうまく整合しながら検討を実施していく必要があり、そういう実態がございますが、雇用政策研究会での議論がしっかりと政策に反映されるように、そしてまた、その趣旨がなかなか反映されていないというような先生方の御指摘などについても真摯に受け止めながら、今後もしっかりとしたエビデンス、また理論的な背景に基づいた労働政策を組み立てていく努力を続けていきたいと考えております。したがいまして、私どもとしましては、本研究会の本来の趣旨、役割に基づきまして、雇用政策の今後のあるべき姿について中長期的な視野に立って引き続き御議論いただければと考えております。
 様々至らぬ点もあるかと思いますけれども、引き続き努力してまいりますので、御指導のほどよろしくお願いいたします。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 今、田中局長からお話がございましたように、自由な発言、そしてまたエビデンス等々、雇用政策の専門家としていろいろ御意見もあるかと思っておりますので、忌憚のない御意見を頂き、取りまとめに反映させていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、前回推計、5年前に行いました労働力需給推計のフォローアップにつきまして、JILPTより資料1に沿って説明をお願いします。中原さん、よろしくお願いします。
○JILPT JILPT、中原でございます。本日は、このような説明の機会を頂きまして、ありがとうございます。
 労働力需給推計を今回の雇用政策研究会でも活用していただけるということでございまして、前回の需給推計の状況と実績値にどのような乖離があったかといったことを中心にお話しさせていただこうかと思っております。
 まず、資料の2ページを御覧いただければと思います。グラフを描いておりますけれども、労働力人口、就業者数とも大体同じような傾向が出ております。この2つにつきましてはパラレルでございますので、労働力人口のほうでまとめてお話しさせていただこうと思っております。このグラフにございますとおり、黄色の線が実績、青色が成長実現・労働参加進展シナリオ、朱色がベースライン・労働参加漸進シナリオ、グレーがゼロ成長・労働参加現状シナリオでございます。
 このシナリオについて簡単に触れさせていただきます。成長実現につきましては、当時、中長期の経済財政に関する試算で実質2%程度の成長が見込まれるといったシナリオがございましたが、それに基づくものでございます。また、日本再興戦略、未来投資戦略など当時の政策目標に対しまして、成長分野の追加需要を考慮するといったもの、また、保育所・幼稚園在籍児童比率が上昇して女性の労働参加が進むといったこと、そういったシナリオが成長実現シナリオでございます。
 次のベースラインでございますが、これらの目標が半分程度達成されると聞いていただければいいかと思います。成長実現1%程度、ほかの目標については半分程度でございます。
 ゼロ成長につきましては、成長がないといったところ、就業率につきまして2017年と同程度といったシナリオでございます。
 それを見たところでございますと、一番高い伸びを示す成長実現シナリオよりも高い労働力人口の伸びといった状況になっております。これは後ほど説明しますけれども、2020年の国勢調査の結果、人口が推計人口よりも高い伸びがあったといったところが背景になっておりまして、そういった関係でこういうふうに労働力人口は推計よりも高くなっております。特に人口につきましては、社人研でやっております将来推計人口、こちらが非常に大きく影響しますので、そちらのほうで国勢調査が実際に上方にいったというところでございます。
 続きまして、3ページ、労働力人口比率、就業率実績でございます。いずれも率としては高くなっております。高くなっている背景でございますけれども、こちらは推計人口が違ったということではないのですが、また後ほど後ろのほうで説明しますけれども、ここに書いておりますように、特に男女とも若年層、高年齢層の就業率、労働力人口比率が推計値を上回っているという状況がございました。そういったところが背景でこのような想定よりも高い労働力人口比率になっているところでございます。
 4ページ、5ページは、これを就業者数、就業率で見たところでございます。傾向としては、労働力人口と同じ傾向が出ております。ほぼ同じようなパラレルな状況になっておりますので、説明は割愛させていただきます。
 続けて、6ページを御覧いただければと思います。今ほど申し上げました年齢別の状況で就業率の推計と実績の違いでございます。左が年齢別の就業者数でございますが、ほぼ全てのところで推計よりも上回っています。恐らくここが将来推計人口と国勢調査の結果の相違が出ているところではないかと思っております。
 右は就業率でございますが、黄色が推計よりも実績が上回っているところでございます。男女とも若年層(15歳から24歳)と60歳以上のところが推計よりも実績が高まっているといった状況が出ております。一方で女性の中間層(35歳から59歳)は推計よりも下回っているという状況でございます。こちらの状況としては、やはり高年齢層の就業参加が想定よりも進んでいるといったところが非常に大きく影響しているかと思います。高齢者ですので、フルタイムか、正規雇用、非正規雇用かといいますと、言わずもがなですが、ほかよりも比較的短い労働時間になりますので、いろいろあるかと思いますが、就業率については高い伸びを示しているといった状況でございます。また、女性のほうは、三角がついたところは推計よりも下回っているところですが、実績を比べますと、例えば35歳から39歳層でいきますと71.4%から77.0%ということで就業率は伸びています。上昇している状況については変わらずといったところと、特に高齢層、60歳から64歳、65歳から69歳のところは非常に高い伸びを示したという結果でございます。
 比較しているのは、成長実現・労働参加進展シナリオですので、一番いいパターンの比較でございますが、ベースラインのほうと比較してみますと、ここに数字は載せておりませんけれども、伸びているところは当然高く伸びていますし、女性の参加がたくさん出ているところについてもほぼ同じぐらいというところなので、ベースラインの女性の35歳から59歳のところでは推計と実績は同じような状況でございます。
 7ページ、産業別就業者数の状況でございます。黄色いところがちょっとずれていますが、産業別就業者数比率で見ますと、製造業の構成比率は下がっている。情報通信業、その他の事業サービスで上がっている。卸売・小売業はちょっと下がっているといった状況となっております。公務・複合サービス・分類不能の産業は、分類不能のところが影響しているのではないかと見ておりまして、決して公務・複合サービスがというわけではないと思っております。
 次に、前提条件として見ていたところの差でございます。まず、大きなところで、マクロ経済成長率の状況でございますが、御案内のとおりコロナ禍がございましたので、成長率は大きな凸凹があったところでございます。想定では、ベースラインで1%前後といった想定をしておりましたけれども、2017年から2020年に関しましては、コロナの影響もございまして、マイナス1.4%、その後、2020年から2022年の平均では1.6%の年平均の上昇率になっております。1.6%ということでございますけれども、その前のマイナス1.4%がございますので、「行って来い」といったような状況ではございます。
 一方で物価の状況でございますが、成長実現で2%、ベースラインで1%ということでございました。物価上昇率はあまり伸びていなかった状況でございますが、2022年に入りまして、円安、原油関係が影響して高く上昇、こういった形で2.5%が達成されてしまっている状況でございます。
 もう一つ、先ほど来、お話ししておりますけれども、将来推計人口がどういうふうに変わってきたかというところでございます。将来推計人口につきましては、社人研の発表を見ておりますと、2065年で非常に大きなマイナスというようなことで、外国人で賄っているというようなプレスリリースもございましたけれども、2018年の推計で見ました2040年までの状況でいいますと、総人口、日本人人口ともに15歳以上のところでは上方改定といった状況になっております。外国人が増えますと、さらに高い伸びになりますけれども、日本人だけでも上方改定となっております。ただ一方で、黄色をつけておりますけれども、ずっと先になっていきますと、10歳刻みでまとめておりますが、例えば15歳から19歳ですとかなり早い時期からマイナスが出てまいります。15歳から24歳の段階でも2040年には前回推計よりも下方改定が出ております。特に75歳以上のところが下方改定といった状況になっております。一方で、25歳から64歳といった働き手の中心となるところにつきましては、人口ベースでは上方改定といった状況になっているのが実態でございまして、こういった人口の上方改定も踏まえて、労働力人口、就業者数は増加のほうに転じているといったところが一つあろうかと思っております。
 簡単でございますが、私からの説明は以上でございます。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは、自由討議に入りたいと思います。御意見、御質問がございましたら「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、指名した後にお名前をおっしゃってから御発言をお願いしたいと思っております。御質問等ございましたらお願いします。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。
 そうしましたら、少し私のほうからまとめさせていただきます。労働力人口は全般的に2つの要因、一つは人口そのものの推計の違い、もう一つは労働力率、人口に占める労働力参加人口の違いといった両方で起こってくるかと思います。労働力人口を見ますと、黄色い実績のほうが一番上にきているということになりますから、推計していたよりも実際の労働力人口のほうが大きく伸びていたということになるかと思います。そうしますと、人口の伸びは、社人研が行っていました前回推計において、例えば2020年あるいは2022年ということですが、実績のほうが大きく伸びていたということ、もう一つは、労働力率につきましても、年齢階層とか性によって違いますが、実績のほうが大きく伸びていたということがありそうだという説明だったと思います。
 今回、推計を行うに当たりまして、まずは2040年までを推計していこうということをもくろんでおりますが、そこにおいても人口の伸びあるいは減少、それと労働力率の変化といった大きく2つの要因に左右されることになるかと思いますので、そこにおいて的確な推計を行っていく必要があるということでございます。
 今日出された問題、前回の推計、プロジェクションの中におきまして、2022年ですから5年後の数字だったわけですが、5年後においても実績と推計の間でこれだけの乖離が発生していたということになるかと思います。その要因は種々あるかと思いますが、いかがでしょうか。まず、大きく人口推計のほうにつきましては、思ったよりも大きく伸びた。これは外国人の問題と考えていいのですか。
○JILPT 日本人自体もプラスになっています。
○樋口座長 日本人自体もプラスであった。そこにさらに外国人も乗っていたということで、コロナの下においても労働力人口が推計よりも実績のほうが大きく伸びていたということでありまして、いろいろ御意見があるかと思いますが、いかがでしょうか。齋藤先生、どうぞ。
○齋藤委員 明治学院大学の齋藤でございます。御指名ありがとうございます。
 意見というか、質問なのですが、実績値で女性の35歳から39歳、40歳から44歳、55歳から59歳といった辺りで2ポイントマイナスである。確かに2017年から2022年に実績値自体は伸びているのだけれども、推計から見ると2ポイントぐらいのマイナスで、35歳から44歳というのはM字の底の部分だと思うのですが、ここの伸びが鈍っているというのはやはり心配だと思います。この辺りについては何か原因等お考えがあるのか、お聞きしたいです。
 以上です。
○樋口座長 どうぞ。
○JILPT ありがとうございます。
 こちらは、どのシナリオと比較するのが一番いいのかと思ったのですけれども、全体として労働力率は上がっているので、一番いいシナリオで比較しております。その結果としてこういう数字になっているのですけれども、3つの中のベースラインシナリオ、真ん中のシナリオでいいますと、女性の35歳から39歳についても推計と実績は同じぐらいのところに当たっているということなので、あながち推計自体がおかしかったわけではないと考えています。ただ、いろんな要因があると思いますので、一概には言い切れないと思いますけれども、見せ方の違い、選び方としてこういった結果になっているということで御理解いただきたいと思っております。
○樋口座長 よろしいでしょうか。
○齋藤委員 ありがとうございます。
○樋口座長 推計を除いて実績を見ても、この間、すごい変化が起こっていた。わずか5年間、2017年と2022年を比較するだけで、例えば女性の60歳から64歳のところは53.6%が62.7%と約10%pt近く伸びているということで、ほかのM字の底というようなところについても5ポイントぐらいは伸びているということが起こっていたと思います。男性につきましても、男性の高齢層のところにおける伸びは10ポイントまではいきませんが、7%ぐらい伸びているというようなことで、相当人口が伸び悩むというか、マイナスの中において労働力率の引上げによって人手不足に対応してきたというようなことがどうも見てとれそうだと思われます。
 そうしましたら、宮本先生、いかがでしょうか。
○宮本委員 ありがとうございます。
 今、齋藤先生が質問されたところと関わるので、重ねてということになるのですけれども、私も先ほど御説明を伺って、特に35歳から39歳の実績が推計を若干下回った、ほかが全部アップしている中でちょっと目立つのが気になっていたところです。後の事務局からの資料の説明、事前に資料を拝見しても、特に非正規の女性、35歳から44歳、飲食店・宿泊業でかなり減少して、見かけでは消えたままになっているというところがあって、JILPTの2月のフォーラムも拝聴したのですけれども、そこでの周先生の御報告も、人手不足にもかかわらず、この部分、女性はコロナ前に戻れていないというお話があったように思います。見方によっては、これは後で伺ったほうがいいのかもしれませんけれども、正規層では医療・福祉を中心にこの年代を含めて女性は増えているので、ここが吸収したという見方でいいのか。やはりまだ消えたままと言わざるを得ないのか。さらに言うならば、去年の7月のこの研究会は、女性が不本意に非労働力化した状況が続いているという認識を示したわけなのですけれども、今の労働力需給推計等からこの状況は変わったというふうに言っていいのかどうなのか。今のお話からは立ち入り過ぎなのかもしれませんけれども、可能な範囲で御示唆いただければと思います。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 これは事務局で。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。事務局でございます。
 後ほどグラフ等でもまた説明したいと思いますけれども、まさに宮本先生に御指摘いただいたようにコロナ禍で女性の非労働力化が一時的に見られました。一方、その非労働力人口の減少というのはコロナ前の傾向に戻りつつあると考えております。御指摘いただいたところでございますけれども、女性の非正規雇用の減少というところがコロナ禍で見られました。2020年、2021年と対前年で減少しているところでございますが、2022年になりましてプラスのほうに動いてきたところでございますので、これからの動きをしっかりと注視していく必要があると思っております。後ほどグラフで御説明したいと思っております。
○樋口座長 よろしいでしょうか。また後でグラフのところでということです。
 清家先生、手を挙げていらっしゃいますでしょうか。
○清家委員 ありがとうございます。
 予想以上に就業者あるいは就業率が高まったのはいいことだと思いますが、ちょっと気になるのは、就業率のところで男女とも若い層、15歳から19歳、20歳から24歳のところの就業率が両方とも相当上がっていますけれども、特に15歳から19歳というところで上がっています。これは進学率が下がって就職率が上がったということですか。それとも学校に行きながら働く人が増えたということですか。
○樋口座長 どうですか。
○JILPT そこは実際に細かいところまで分析できていないのですけれども、この辺りの年齢層につきましては、推計として就業率はほぼ変わらないという前提を置いていますので、2017年の数字と2022年の推計は大体同じような率が出ているかと思います。
○清家委員 分かりました。
〇樋口座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。また後で御質問があればお受けしたいと思います。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。資料2から4でございますが、事務局及び雇用環境・均等局から説明をお願いしたいと思います。まず、資料2からお願いします。
○雇用政策課長補佐 事務局でございます。資料2、3、両方を御説明させていただきたいと思います。
 今回の第2回のテーマ設定についてのお話もしたいので、資料3のほうから御説明させていただきたいと考えております。
 今回は、第1回でお示ししたアジェンダの1つございますウエル・ビーイングの向上に向けた多様なキャリア形成の働き方のうち、子育て世代、女性の働き方、介護と仕事の両立について御議論いただきたいと考えております。その背景としましては、今回の雇用政策研究会は労働力需給推計が一つ大きなテーマとなっておりますので、まずは労働供給側に与える影響について議論したいと考えておりまして、このテーマを設定したところでございます。また、事前に、今後の雇用政策研究会の進め方、つまりテーマのスケジュールなど御質問を頂きました。今回、外部の有識者の方も含めてお呼びして議論したいといったところも考えておりますので、具体的なところをお示しできていなく恐縮ですが、第3回の雇用政策研究会には、各回で扱うテーマにつきまして、併せてお示ししたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 資料3の御説明に移らせていただきます。まず「女性・両立支援等」といったところでございますが、これまでの雇用政策研究会でどのような議論がなされていたのかといったところを少し歴史立ててお示ししたところでございます。
 1980年代は、男女均等といったところが大きなトピックでございました。
 その後、1990年代になりまして、育児休業法の施行等もありまして、両立支援制度の整備といったところが主な議題になっておりました。その中では、職業生活と家庭生活の調和を図るための施策を充実していくといったことを中心に議論してまいりました。
 2000年代に入りまして、少子化対策としての両立支援施策につきましても議論いただいております。その中では、女性がライフサイクルを通して意欲と能力に応じた働き方ができるよう、子育て等との両立を可能とするための働き方の見直しといったところにつきまして御議論いただきました。
 その後、2015年以降になりますけれども、さらなる女性活躍に向けた取組と働き方改革といったところでございまして、長時間労働も含めて様々な観点から働き方を改革していかなければいけないということで、男女ともに長時間労働を強いられることがないような社会的機運を醸成していくことが必要であるといったところでございます。そういったことで2015年以降議論してまいりました。
 続きまして、次のページでございます。前回、前々回の雇用政策研究会、まさにコロナ禍の中で御議論いただいたところでございます。大きな変化がございました。例えば2020年のところでございますけれども、テレワーク等の新たなデジタル技術を活用した働き方といったものが普及したのもコロナ禍でございます。
 そして、前回2022年の雇用政策研究会でも、コロナ禍の中での家事についても男女間で負担感に違いが見られたとか、子育て、介護等も含む生活時間と仕事時間の両立の難しさが改めて浮き彫りになったところでございます。従来より議論しておりますウエル・ビーイングへの取組、人材確保と労働供給の増加につながる仕組みが重要であるという御提言を頂いたところでございます。
 それを受けまして、4ページ目は今回御議論いただきたい内容、ウエル・ビーイングの向上に向けた多様なキャリア形成・働き方でございます。
 まず、1点目でございます。子育て世代・女性の働き方といったところでございますが、男女ともに出産・育児を機に離職せずに就業を継続できるための環境整備はもとより、就業を継続した場合にも望むキャリアを形成していくことが可能になるよう環境整備をしていく必要があるといったことを中長期的な観点から御議論いただきたいと考えております。その中では、女性の企業内での活躍にもフォーカスを当てた議論ができればと考えております。
 2点目は、介護と仕事の両立といったところでございます。介護も多様化が進んでいるという現状に合わせて仕事と介護の両立に向けた環境整備が必要で、様々な観点がございますが、議論していただきたいと考えております。
 青塗りのところがございますけれども、今回の雇用政策研究会は、労働力需給推計につながるところも重要な論点でございますので、ウエル・ビーイングへの取組が結果的に人材確保や労働供給の増加につながるような仕組み、まさに前回の雇用政策研究会で御提言いただいた内容でございますけれども、それにつながるような議論を今回できればと考えております。
 資料3の説明は以上でございます。
 資料2の資料集につきまして御説明いたします。
 第1回でいろいろと御質問を頂きました。その中で、コロナ禍での様々なトレンドの変化、女性の正規雇用のトレンドがどう変化したのかを丁寧に見るべきとか、働き方改革を受けてどのように労働時間が変化したのかといったところをデータに基づいてしっかりと議論しようというような御提案を頂いたところでございます。
 データ集はいろいろございますので、かいつまんだ御説明になってしまいますけれども、2ページ目では、非労働力人口の動向につきましてお示ししているところでございます。赤色の線を御覧いただければと思います。女性の非労働力人口でございますが、近年、減少傾向にございました。縦の点線がございますけれども、そこでコロナ禍が始まるわけですが、この辺りを契機に非労働力人口はかなり増えたところでございます。こうした非労働力化が懸念されたところでございましたが、足元を見てみますと、コロナ前の減少傾向に戻ってきたというようなことがこのグラフからうかがえます。
 3ページ目でございます。先ほどJILPT様のほうから労働力需給推計の実績との乖離を御説明いただきましたけれども、こちらは2017年と2022年の女性就業者の実績を細かく見たものでございます。右側のグラフは、2022年と2017年の差分を見たところでございますが、これを見ていただくと分かりますように、50歳から59歳、もしくは60歳以上のところで就業者数が増加しております。特徴は赤色のところでございますが、やはり医療、福祉といった分野で就業者数が増加しているのが大きな変化と考えております。
 4ページ目でございます。第1回で御指摘いただきました女性の正規雇用の動向でございます。左側のグラフでは、コロナ禍にあっても女性の正規雇用労働者は、総数でございますけれども、着実に増えていっています。赤色の45歳から54歳、青色の25歳から34歳といった層で正規雇用労働者が増えてきたことが見て分かります。
 5ページ目、女性の非正規雇用の話でございます。先ほど御質問等もありましたが、黄色の35歳から44歳、青色の25歳から34歳で非正規雇用労働者の減少がコロナ禍では大きく見られたところでございます。2020年、2021年、対前年でマイナスとなっております。一方、2022年はプラスに動いておりまして、55歳から64歳の層で非正規雇用が伸びている現状が見てとれます。
 6ページ目は、産業別に女性の正規雇用労働者の推移を見たものでございます。これまでの説明と若干かぶっているところがございますが、医療、福祉で増えているのが分かります。
 7ページ目は、女性の非正規雇用労働者のところでございます。先ほど委員の先生方からも御指摘がありましたが、コロナ禍で見てみますと、女性の非正規雇用労働者は2020年、下のほうにいっているかと思います。青色の宿泊業、飲食サービス業で大きく減少したのがコロナ禍での特徴でございます。2021年も同じような傾向が見られまして、宿泊業、飲食サービス業や、生活関連サービス業、娯楽業で減少が続いていたわけでございますが、2022年を見てみますと、宿泊業、飲食サービス業がプラスに寄与しており、若干戻りが見えているような状況でございます。ただ、これが一過性のものなのかどうかは今後データを見ていく必要があると考えております。
 少し飛ばして10ページ目に移ります。第1回で御質問を頂きました労働時間でございます。2013年から2022年の労働時間の推移をお示ししております。2013年ですと、全体で168.4時間でございます。2022年は162.3時間まで、一般労働者でございますけれども、減少が見られ、労働時間はおおむね減少傾向にあるところでございます。パートタイム労働者については一般労働者と大きな違いは見られないところでございます。
 11ページ目は、週間就業時間60時間以上の雇用者の状況についてお示ししたところでございます。左側を見ていただくと分かりますように、60時間以上の割合は男性が多かったものでございますが、働き方の改革が進む中で、社会的な機運の醸成もございまして、減少傾向にあります。法令的なところでいいますと、時間外労働の上限規制が原則月45時間、年360時間になっておりますが、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行されておりますけれども、そういったこともあり、2019年、2020年と大きく落ちております。若干一服感が見え、横ばいになっておりますが、今後どういった動きになるのか、引き続き見ていく必要があると考えております。
 13ページ目は、御質問が第1回でありました就業調整のところでございます。パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査でございますけれども、配偶者がいる女性のパートタイム労働者のうち、21.8%が就業調整をしております。その理由としましては「一定額(130万円)を超えると配偶者の健康保険、厚生年金保険の被扶養者からはずれ、自分で加入しなければならなくなるから」といった回答が多く、就業調整を一定程度しているような現状も見てとれます。
 14ページ目は、第1回で御質問を頂いた無期転換でございます。左側のグラフは、無期転換した人が分母ですが、そのうち、無期転換ルールを行使して無期転換した人が74.5%となっております。かなり大きな割合になっていることが調査から見てとれます。若干、幅を見て考える必要がありますけれども、それから推計したものを見てみますと、無期転換ルールにより無期転換した人数は約118万人と推計されるといった結果が調査によって出てきております。
 私からの御説明は以上でございます。
○樋口座長 それでは、続きまして、雇均局からお願いします。
○雇用環境・均等局総務課長 雇用環境・均等局の総務課の牛島と申します。今日はお時間を頂きまして、説明の機会を頂き、ありがとうございます。
 資料4に基づきまして、女性活躍及び仕事と育児の両立支援について、直近の状況と取組の概況を御説明申し上げたいと思います。
 1ページ、女性の労働力人口です。既に先ほどの推計のところでございました労働力人口全般につきましては、女性は右肩上がりで順調に伸びているという状況でございます。令和4年、直近では男女比で44.9%のところまで上がっているというのが現状でございます。
 2ページ、昨今、各方面から非常に大きく言われているのがM字カーブとL字カーブというものであります。青の一番上の線がM字カーブですけれども、こちらも巷間言われていますとおり、底も、30歳から34歳、35歳から39歳の部分につきまして、大分上がってきております。今も引き続き低めではありますけれども、一時期に比べると上昇しているというところでございます。
 一方で、正規の職員・従業員割合を見てみますと、25歳から29歳をトップにいたしまして、右肩下がりになっています。このL字カーブをどう考えていくかというところが雇均局関係の一番大きなテーマになっております。ここを解決するためには、一つは、25歳から29歳の正規割合が上がってきているがためにL字になっているという見方もできますけれども、ただ、その年齢層を過ぎると下がっていくところを直していくためには、やはり子育て世代の両立支援につきまして、正規雇用で働き続けられるような取組をより強力にやっていく必要があるのではないかということが第一の処方箋と考えております。
 もう一つは、既に下がってしまっている40代、また50代、こういったところのへこみをいかに上げていくのか。時が経過すればおのずと上がっていくという見方もありますけれども、どうしてもここの部分は氷河期世代というようなところもありますので、子育て世代、25歳から29歳、30歳のところに力を入れて両立支援を講じるとともに、中高年齢層の正規割合を高めていくというところを併せて講じていくことが非常に重要なテーマではないかと思っております。
 まず、両立支援の文脈でありますけれども、資料の3ページですが、今、政府を上げて少子化対策に力を入れていかなければいけないという文脈の中で、働き方につきましては、男女の役割分担をいかに解消していくのかというところを根本的に考えていかなければいけないという感覚でございます。その一つが育休の取得率、取得期間の男女別の差で表れていると認識しております。
 グラフを御覧になっていただければと思いますが、女性については、育休の取得率は85.1%、期間につきましても6か月以上が95.3%という状況であるのに対しまして、男性は上がってきたとはいえ、まだ取得率が14%、期間につきましても2週間未満が半分以上というところであります。「取るだけ育休」というような言い方もされておりますけれども、取得率を上げていくとともに、いかに期間を長期化していくかというところに力を入れていく必要があると認識しています。
 男性のグラフのところにございますとおり、「こども未来戦略方針」が取りまとめられた中では、2025年までに男性の育休取得率目標を30%から50%に引き上げるとともに、2030年に向けては85%まで持っていく。女性並みに引き上げるというところが目標として掲げられておりますので、こういったことは非常に重たい宿題でありますけれども、いろいろと取組をしていきたいというところでございます。
 4ページは、子育て世代の意識を資料としてまとめてみました。今、申し上げたように、共働き・共育て、なおかつ正社員という形でやっていくというところをこなしていかないと少子化は解消できないではないかという問題意識がございます。その背景にありますのは、これも先生方御案内の数字でありますけれども、今、若い世代は男女ともに共働き・共育てという意識が高まっているところでございます。図25にありますとおり、「育児休業をとって子育てしたい」という割合につきましては、2024年の学卒につきましては、男女ほぼ同数となっております。専業主婦希望者の割合も右肩下がりで下がっていますので、こういった若い世代のニーズをいかにかなえていくかというところに力を入れてまいりたいと考えております。
 5ページですが、今日御欠席でありますけれども、佐藤博樹先生にも入っていただきまして、武石先生を座長といたしまして「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」を開催してきたところでございます。第9回が6月12日、その翌週に報告書を取りまとめて公表しているところでございます。
 そこのエッセンスだけ御報告申し上げたいと思います。6ページです。基本的な考え方といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、男女ともに正社員で、共働き・共育てができるようにしていくというところがベースになっております。その中で、若い世代の男女がどういう働き方を子供の年齢に応じてニーズとして持っているかというところでございますが、資料をお示ししなくて恐縮ですが、ゼロ歳から1歳までは育休、1歳から3歳までが短時間勤務、2歳ぐらいからになりますと残業がない働き方、そういったところを希求していくというニーズが高くなっております。
 そういった中で、青の枠で囲んでありますのが法制度の枠組みになっていまして、御案内のとおり、育休は2歳まで延長が可能という形です。あと、3歳までの短時間勤務制度の導入、こちらについては労使協定によって選択的に代替措置を講じることができるという構造になっておりますけれども、ここにつきまして、一つの働き方としてテレワークを組み込んでいく必要があるのではないかというところで一つの論点となっております。
 3歳以降につきましては、育児目的休暇とか短時間勤務制度の努力義務がございますけれども、ここにつきまして、テレワーク、フレックス、新たな休暇の付与といったものを現場のニーズに応じて企業で導入いただくといったような選択的な措置義務を課していってはどうかというところが報告書の中ではまとめられております。
 また、残業免除の働き方につきましても、3歳以降は努力義務でありますけれども、ここを義務化していくことは考えられないか。子の看護休暇につきまして、今は6か月働かないと看護休暇取得の権利が出てこないわけですけれども、6か月未満の方をどう扱うか、また就学後3年生ぐらいまでは看護休暇の取得を認めていくべきではないかというような問題意識で報告書を取りまとめております。いずれにしても、若い世代に応じて、子育て年齢に応じての柔軟な働き方を考えていく必要があるのではないかという問題意識で、こういった方向性で検討を進めているところでございます。
 7ページですが、男性の育休取得率は非常に高い目標がございますので、ここにつきましては、義務づけをやるよりは、ソフトロー的な手法になりますけれども、次世代育成支援対策推進法の中で、現状は、ともすれば女性の両立支援という文脈で法律が仕立てられているところでありますが、事業主の1にございますとおり「男女がともに仕事と子育てを両立できる職場である」ことを目指していく。女性だけの問題ではなくて男性の働き方もきちんと目指していくべきでありますし、行動計画の記載内容に数値目標も設定してはどうかというところが検討の方向性としては位置づけられているところでございます。「くるみん」の認定制度もこの法律に基づいてありますので、男性を含めた働き方の改革、また育休の取得の促進、こういったところを社会的機運の醸成の中で進めていくというのがもう一つの柱になっております。
 まだ報告書が取りまとめられた段階ですので、今後、秋口にかけて労使の議論を踏まえた上で必要な法制度の見直しも含めて進めていくという流れになっているところでございます。
 8ページですが、唐突にキャリアアップ助成金という資料が出てまいります。これは何を意味しているかといいますと、先ほど申し上げました子育て世代の両立支援と併せて、中高年齢層を中心とした非正規雇用労働者の方の正規雇用化、こういったところについての取組を大きな柱として打っておりますのがキャリアアップ助成金でございます。釈迦に説法でございますけれども、2の「事業の概要・スキーム」にありますとおり、正社員化支援ということで有期の方を正規雇用労働者に、無期の方を正規雇用化するといったような場合に事業主に支援をしていく。こちらについては、人への投資のパッケージの中で、一定の訓練を経ての正規雇用化した場合に加算することによって、さらに拡充していきたいということを考えております。この実績としては、この助成金を介して10万人ぐらいが非正規雇用労働者から正規雇用化しているところがございますので、少なくない効果でありますけれども、果たして助成金だけでこういったものを進められるのかというところが雇均局の悩みの一つでもございますので、ぜひ先生方から忌憚のないお知恵を頂ければ大変ありがたいと思っております。
 もう一つの文脈が女性の活躍の部分でございます。9ページです。先般、男女共同参画の国際会議もございましたし、ジェンダーギャップ指数も公表されていますけれども、女性の管理職割合が伸びているとはいえ、まだ諸外国に比べると非常に低調で、ここをどういうふうに改善していくべきなのかというところがございます。
 10ページです。それと裏腹の関係であると認識しています男女間の賃金格差につきまして、男性を100としたときの数字をグラフ化しているものですが、年々上がっております。格差は縮小しているとはいえ、まだ少なくないギャップが生じているところがございます。女性のキャリア促進、継続就業といったところをいかに考えていくか、その前提となる働き方を男女ともに見直していくというようなところも大きな課題ではないかと思っております。
 その一助になるかというところでございますが、11ページ、女性活躍推進法という法律がございまして、ここでは(1)にございますとおり、行動計画の策定・届出・公表を通じてPDCAを回していただくとともに、(2)にあります企業の情報公表を促進していくような取組をしております。
 12ページにありますように、昨年、男女の賃金差の公表義務を新しく企業において課しまして、301人以上の企業については、男女の賃金差の状況については開示の必須項目となっております。101人から300人の企業につきましては、選択的に開示内容を1項目選んでいただきますが、その中に男女の賃金の差異も入れているところでございます。この改正が去年行われましたけれども、直近の事業年度の終了後3か月以内の公表というスキームになっておりますので、今年の3月末決算企業につきまして、6月末までが公表の期限になっております。その状況を踏まえた上で、引き続き解消策の強化等についてのフォローアップをしていく必要があると思いますが、こういったところも今、雇均局として実施しているところでございます。
 以上、私ども雇均局でやっております取組、その前提となる考え方を御説明させていただきました。ぜひ先生方から忌憚のない御意見を頂いて施策に反映していきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 ありがとうございました。
 言いたいことがたくさんあるのではないかと思いますが、まず、齋藤先生から説明を受けまして、その説明を踏まえた上で再度自由討議に移りたいと思います。齋藤先生、よろしくお願いいたします。
○齋藤委員 それでは、私の画面を共有いたしますが、よろしいでしょうか。私のほうから「企業のWLB施策と女性活躍・生産性」というタイトルで御報告いたします。
 私がこれまで関わった研究を御紹介するという形になっておりますが、今日は阿部先生が御欠席でいらっしゃいますが、阿部先生と児玉先生と書きました論文1本を中心に取り上げてお話をいたします。
 この論文は2017年に書かれたものです。もともとの問題意識としては、ワーク・ライフ・バランス施策は少子化対策として有効かということで始めたのですが、それだけではなくて女性活用等様々な指標に対して有効であるかどうかを分析いたしました。
 ワーク・ライフ・バランス施策に関しては、実はこれはオリジナルのアンケート調査に基づいて収集したデータを使っているのですけれども、そこでは11種類のワーク・ライフ・バランス施策、この後お見せいたしますが、それの施策の有無と利用実績を両方聞いております。今回御紹介するのは利用実績に基づいた分析であります。制度があっても使っていなければ意味がないと思いますので、利用実績のほうを使いました。
 この利用実績データを使って、11種類のワーク・ライフ・バランス施策を4種類に分類し直して、その4種類がそれぞれどういった効果を持つのか、回帰分析を使って分析したわけですが、残念ながらパネルデータ化はできておらず、2006年と2014年の2期間にわたって聞いた企業の公表データを使っているわけなのですけれども、実質的にはPooledOLSといったものを使っております。したがいまして、厳密に内生性を除去するということができておりません。その代わり、元から企業が女性活用とか育児支援に関して熱心な企業風土であるかどうかということを、その企業の過去の状況、そういったものを使って企業風土をコントロールしております。
 具体的には、均等法以前からポジティブアクションを実施しているかどうか、育休法以前から育休を導入しているかどうか、くるみんマークに認定されているかどうかといったことを使っております。これが全てダミー変数となっております。
 女性活用の指標についてはいろいろなものを使っておりますので、こちらも後で御紹介いたします。
 それから、企業の業績に対してこういった女性活用が有効であるかどうかということも分析を実施しております。こちらも同じデータを使っておりますので、Pooledのクロスセクションデータを使っているわけなのですけれども、こちらに関しては操作変数法を使って、プリミティブなものかもしれませんが、一応、内生性について考慮した分析をしております。
 データですが、こちらは「仕事と家庭の両立支援にかかわる調査」というものでして、もともとJILPTが2006年に実施しておりました。2017年の論文には、それにプラスして学振プロジェクトで予算を頂いて、2006年に実施されたアンケートに答えた企業も含めて、企業6000社を対象とした調査を行いました。結局のところ、回答企業数は合わせて2000社弱なのですが、両時点のデータが使えるのが264社ということで、この264社で固定効果モデル等いろいろやってはみたのですが、どうもうまくいかず、それでPooledの分析をした、こういうことになっております。
 こちらが分類でございます。aからlまで11種類のワーク・ライフ・バランス施策について挙げてあります。それを因子分析した結果、この4つに分かれたということです。
 「労働時間短縮配慮」という第1因子がありまして、こちらが、短時間勤務制度がある、所定外労働がない、始業終業の繰上げ、繰下げというのが入っております。
 第2因子に関しては、男性の出産休暇、子供の看護休暇というのが入っております。
 第3因子ですが、「フレキシブルな働き方」という名前にしておりまして、フレックスタイムと在宅勤務制度というのがあります。子育てサービス費用援助というのは、フレキシブルな働き方に直結するわけではなさそうなのですが、ほかのものに比べてここに対して因子負荷量が一番高いので、第3因子に含めております。
 第4因子は「存分に働くための支援」ということで、こちらが事業所内の託児施設、転勤免除、再雇用制度が入っています。事業所内託児施設がやや微妙なところではあるのですが、因子としてはここにまとまったということでございます。
 結果ですが、何種類かの被説明変数がありまして、それを順にざっと見ていきたいと思います。育児休業制度利用人数を対数化したものが被説明変数となっております。上から4つがそれぞれ先ほど御紹介いたしました第1因子から第4因子となっております。その下の3つ「1986年以前からポジティブアクション実施」から「くるみんマーク認定」までが企業文化に関する代理変数となっております。さらに下に「交差項」とありますが、こちらは、例えば第3列のものですとポジティブアクションというのが1つ企業文化の変数として入っておりますが、それと4つの因子の交差項となっております。つまり、1986年以前からポジティブアクションを実施しているような女性活用に非常に熱心、あるいは性別にかかわらず活躍してもらえるような企業風土を持っているといった企業で、よりこの4つの施策の効果が高いのか低いのかといったことを調べるために交差項を使っている、こういう状況です。
 育児休業の利用制度に関しては、1番目の「労働時間短縮配慮」、2番目の「子育て支援」、4番目の「存分に働くための支援」、これらがロバストにプラスということで、効果を持っているということが分かりました。
 一方、育児休業を取った後、復職予定をしていた人のうち、実際に復職した人について調べたのがこちらのスライドです。こちらもおおむね先ほどと似たような結果でして「労働時間短縮配慮」や「子育て支援」「存分に働くための支援」というのが非常に大きくプラスの値となっておりました。
 これはちょっとトリッキーな変数なのですが、実は会社に出産後継続就業するかどうかというのを直接聞いているというよりは、結婚した方がその後、仕事を続けるのかどうかというのを7段階に分けて聞いた質問がございます。結婚してすぐ辞めてしまうというものから始まって、継続就業するパターンとして一番カウントされているのが、出産後継続就業が一番多いということになっております。
 これを選んだ企業を1として、そうでない企業をゼロとするダミー変数を被説明変数としたということで、女性がこういった出産後継続就業を一番多くするような企業はどういう企業なのかということを調べたのがこちらです。実はさっきと少し変わって、「労働時間短縮配慮」と「子育て支援」についてはプラスのままなのですが、「フレキシブルな働き方」がかなりプラスの結果になっているということで、今までと少し違う結果が出てきております。一方「存分に働くための支援」に関してはマイナスに出てくることもある。非有意であることが多いのですが、10%でマイナスになるというパターンもございました。
 ここからが女性活用になりまして、女性正社員比率について見たものがこちらなのですが、これもやはりがらっと変わりまして「労働時間短縮配慮」と「存分に働くための支援」というのが大きくプラスになってくるのですが、ほかに関しては非有意であったり、「フレキシブルな働き方」に関しては一部でマイナスで有意になったりするということで、かなり結果が変わります。
 さらに、女性管理職比率となりますと、こちらは「存分に働くための支援」の効果が非常に強くプラスと出ておりまして、ほかに関しては散発的にプラスになることがあるといった形で、先ほどと変わった結果が出ていると思います。
 ということで「存分に働くための支援」というのは正で相関することが多く、特に女性管理職比率に対して強い効果を持っていたと思いますけれども、「子育て支援」や「フレキシブルな働き方」というのは、少子化対策のところでは有効であったかもしれないけれども、女性活用を高める方向には働いていないかもしれないというような結果が出てまいりました。ほかの部分については細かいので、飛ばすことにいたします。
 この論文の最後では、業績に対するこういった出産後継続就業ダミー等、先ほどの一連のモデルにおいて被説明変数だったものを説明変数とし、それが業績にどういう影響を与えるのかということを調べた結果になっております。ここに挙げているものは全て操作変数モデルを使ったものになっておりますが、これは残念ながらいずれも非有意になっておりました。ただ、我々としてはそう悪い情報とまでは思っておらず、コストはかかっているわけなので、これは赤字になってもおかしくないわけなのですが、たとえ短期的なものであったとしても業績が悪化するまでにはいっていないということで、様々な経路を考慮すれば中長期的にはプラスになる可能性もあるわけです。そうしますと、それはもちろん新たに論文を書いて検証する必要はあるのですが、短期的にも悪い影響はないと言っていいのではないかというのがここで我々が得た結論になっております。
 後は追加の分析です。私のほうでCSR企業総覧を使って今度はパネルデータにしてみようということで、追加で分析いたしました。ただ、予算の都合上、電機産業だけになっていて、しかも2006年、2011年、2015年の3時点だけです。ただ、先ほどの我々3人で実施した研究に結構近い2006年と2015年があって、その真ん中の2011年を取られたということです。
 CSR企業総覧で同じように制度について聞いております。こちらは残念ながら利用実績については情報がないのですけれども、制度の有無で仕方なく因子分析をしたということです。さっきと聞き方は異なっておりますし、内容も違うのですが、ここもやはりこの4つの因子が出てきました。「フレキシブルな働き方」「労働時間短縮」というのはさっきと同じような内容だと思います。それから「キャリアアップ」とか「インセンティブ」ということで、これは先ほどとは少し違うものも交じっております。
 これが因子分析の結果ですが、飛ばします。
 固定効果モデルで今回分析した結果、「フレキシブルな働き方」では女性の管理職比率が高まる。「労働時間短縮配慮」では、子育て世代と見られる30代の正社員の女性比率が高まる。「キャリアアップ支援策」に関しては、40代から50代といった中堅層の方々の女性比率が高まったといった結果が得られております。
 さらにもう一つ、今度は生産関数に入れて、これは業績に対して先ほど最後に御紹介したワーク・ライフ・バランスの効果を見たものに似たような分析をしたということなのですけれども、こちらに関しては、ワーク・ライフ・バランス施策の中では労働時間や労働の強度をあまり減らさず、むしろ存分に能力を発揮したりするためのものが特に女性活用度が高い企業において生産性を高めるといった効果を得たりしておりました。逆に、労働時間の短縮や有給取得率のような労働時間を減らすとか働き方をややセーブするような施策については、女性活用度が非常に高くなった場合にむしろ生産性に対して負の効果をもたらすかもしれないといったような結論を得ています。
 以上、御説明を終了いたします。ありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは、自由討議に移りたいと思います。資料2から4までと齋藤先生の資料5、どれからでも結構ですが、いかがでしょうか。
 神吉先生、この間の第1回のときに、非正規をみんな正規化すればいいという話ではない、非正規と言っているものもいろいろあるし、正規と言っているものもいろいろあるというようなことであったかと思いますが、今日の発表の中で正規化というのが企業の努力義務等々で大分出てきたと思います。これについていかがでしょうか。
○神吉委員 大変貴重なデータと研究の御報告を頂きまして、ありがとうございました。
 私も今、勉強中なので、いろいろ教えていただきたいことがあるのですけれども、まず、厚労省の資料を拝見して素朴な疑問として感じたのが、様々な施策がある中でワーク・ライフ・バランス支援、両立支援の取組といったものと管理職割合の拡大、その2つの目標というか、路線があるように見えたのですが、それが両立するのかなということで、それは、齋藤先生の御報告を伺って延長線上にある問題ではないのかなというような印象を受けました。そういう受け止め方でいいかどうかということが一つあります。
 そうした疑問を持ったというのは、女性活躍という文脈が、有償労働の促進、そして、できれば正規雇用で、その先には管理職として活躍していくということがきっと念頭に置かれているのだと思います。日本の管理的職業は業務の質ではなくて量的な部分というのがあって、非管理業務は管理業務に置き換わるというものではなくて、多くはプレーイングマネジャーとして、自分の仕事があって、さらに管理業務が乗ってくるというような、かなり量的に強度が高い職業だと思うのです。
 女性が今、非労働力化したり、あるいは非正規で甘んじているということの背景には、何度も指摘されているように、育児や介護といった無償のケア責任を負っているという部分があって、その部分を管理職としての強度な仕事のほうに振り向けられないという事情があるのではと思います。無償のケア責任を果たしている部分というのは社会の持続可能性を維持するために必要不可欠な部分でもあって、それが削られていくということであると、少子化対策としてはやはりマイナスになるということもあろうかと思います。その部分が過小評価されると、犠牲にされていくのは次の世代の労働力ということもあるのではと思う点です。
 両立支援型の柔軟な働き方をするとして、労働時間を短縮できるようにする、その権利を拡大するという方向自体は十分立派だと思いますが、そこを幾ら拡大したとしても、無制限に働くことが最も評価されるというその仕組み自体、その仕組みや基準が変わらないと、結局、柔軟な働き方を選ぶということが低評価されるので、男女かかわらず、ケア責任を負っている人が管理職のキャリアパスにつながっていくというのは難しいのかと感じました。
 私のコメントは以上です。
〇樋口座長 ありがとうございます。
 そうしましたら、まず齋藤先生から、今、神吉先生が提起された問題、それぞれの施策によってその効果が何に現れるかといったものも違っているのではないかという点、いかがでしょうか。
〇齋藤委員 ありがとうございます。
 「労働時間短縮配慮」が概して私たちが取り上げたいろんな被説明変数に対してプラスで有意で出てきたのに、女性管理職比率になると有意性がかなり落ちたり効果が小さくなったというのがまさに象徴的なのではないかと思っております。これの背景にあるのも、やはり神吉先生がおっしゃったようなことがあるのではないかと思います。私たちの研究は、結局、2014年までしかやっておりませんので、その後10年近くたっておりますから、どういうふうになったのか、ぜひ追跡で調べたほうがいいというか、自分でも調べてみたいと思っておりますけれども、非常に大きな課題だと認識しております。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 そうしましたら、厚生労働省のほうでまさにおっしゃったようないろんな施策があるのだけれども、あれもこれもということでずっと追跡していくと、その効果は違うのではないかというような、少子化対策というものがあり、その後に能力を十分に発揮できるといいながら、また管理職という、同じ人をずっと想定しているのかということだろうと思いますが、神吉先生、そういう質問でよろしいですか。
〇神吉委員 そうですね。希望する人が管理職化していくということが失われていると思いますが、それは子育てをした後にやっとなれそうという位置づけなのか、それとも違うお話なのか、その点です。
〇樋口座長 では、雇均局から。
○雇用環境・均等局総務課長 雇均局、牛島からお答えいたします。
 お答えになるかどうか、ちょっと自信がないところでございますけれども、一つ確実に言えるのは、私のお配りしました資料4の4ページですが、今は働く若い世代を中心に、育休を取って子育て、共働きというようなところのニーズが強いというもの、これは揺るがせられない事実ではないかと思っております。こういったニーズをかなえていくことが女性活躍、また少子化対策という意味でも共通して重要なのではないか。ですので、少なくとも女性も男性も望むキャリアをきちんと実現していくために何ができるかというところが共通の処方箋ではないかと思っております。
 そこから先のところが確かに悩みの種でございまして、それではみんな女性は、共働きを希望する女性は今の正社員の管理職を目指すべきなのかと言われれば、そこは決してそういうところまでは行かないのではないかと思っています。ただ一方で、管理職にならないまでも正規職員として働いていくというようなところが職業生活のキャリアというものを目指していくときには一つの大きな方向性としてあるのではないかというところがあり、だからこそ、L字カーブというところをどうしていくのかをきちんと考えていく必要があるのではないかという問題意識でございます。ただ、行ったり来たりになりますけれども、では今の無限定の正社員という働き方を国民の皆さんがみんな目指しているのかと言われると、そこはまたいろいろな議論があろうかと思いますので、そういった無限定の正社員という形を。
○事務局 Zoomが接触不安定で落ちてしまったようです。
〇樋口座長 では、どうぞ、続いて。
○雇用環境・均等局総務課長 どこから話が切れたのかがよく分からなくなってしまいましたが、目指すべきところが無限定の正社員でいいのかというところにつきまして、ここは必ずしもそういうことではないと思っております。ですので、そういった観点から、ここから先が処方箋がないということで、限定正社員という働き方なのか、ジョブ型というものなのか、はたまた現在のフルタイム正規の働き方の時間を短くしていくということなのか、確たるこの方針でいくのだというところが、現状、雇均局の中では固め切れていないという状況でございます。ぜひそういったところの御示唆等を頂ければ大変ありがたく存じます。
○樋口座長 聞こえましたでしょうか。分かりましたか。
○神吉委員 聞こえました。ありがとうございます。
 一点だけ、今、おっしゃった若い世代、子育て世代の意識ということに関係してなのですけれども、子育て世代とか子育て時期という把握がちょっと短いように思えるのです。先ほどの御説明の中で20代後半から30代ぐらいまでというところにフォーカスされていたと思いますが、現在、かなりの晩婚・晩産化で、第一子ならともかく、複数子育てする場合は、子育て時期というのはかなり後ろ倒しになっていると思うのです。40代前半ぐらいまでは子育て世代の真っただ中なのかという感触も受けています。特に第一子の就学までを子育て時期というふうに見て、そこの部分に施策を重点的に集めるということがむしろその後の就労とのバランスを難しくしているのではないかと思います。育児に対する公的支援は、子供が就学してから途端に薄くなるので、そうなってくると親が自分の時間を割いて子育てをする、そのリソースのやりくりが一番大変になってくる時期だと思います。だとすると、M字カーブの底に当たる部分というのは実際に育児に関してリソースを割かなければいけない時期と思うので、その把握をもう少し長めに見ていくことが必要なのではないかと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 これは女性に限らず、男女ともにだと思いますが、管理的職業に就業するということをキャリア形成の目的としているのかどうか。この間、あるテレビ番組を見ていましたら、むしろ管理職に就くのはペナルティーですという人たちが多くて、できれば就きたくないのだけれども、給与は欲しいし、自分のキャリアは維持したい、形成したいという人たちが多くなっているというのだったのです。ここで管理職に就くというのを数値目標として立てるのは適切なのか、あるいはそういう施策を取るということは適切なのかというのが神吉さんから御意見だと思いますが。
 では、続けて、玄田さん、鶴さんということで、まず玄田さんから。
〇玄田委員 多少過激めに言いますけれども、女性が管理職になるとしんどいというのは、やや幻想というか、つくられた神話です。昔、女性の活躍推進、ポジティブアクションのときに、実際管理職になった女性に共通するのは、管理職が一番ラク、もっといえば社長になることが一番ラクと、だって自分で決められるものという、その声が圧倒的に多くて、そういう幻想をまずどこかでちゃんとデータに基づいて変えていかなければいけないというのは一つあると思います。
 私が聞きたいのは、さっきのキャリアアップ助成金のところで思いついたのですが、何で女性管理職確保コースという助成金がないのだろうか。つまり、今まではキャリアアップ助成金というのは非正規の人のキャリアアップの助成金で、今回の氷河期支援でもそれなりに成果は上げているのだけれども、女性が管理職になることを促進する助成金は、今、見る限り全然なくて、もちろん目標にするのもいいのだけれども、女性を管理職にしたいけれどもできないという中小企業がたくさんあるのだったら、目標よりもそれなりにちゃんとお金をあげればいいのではないのか。管理職の中でも、雇用者に限られるかもしれないけれども、係長、課長、部長、いろんなレベルも含めて、その助成金というのは今まで何で厚生労働省は考えてこなかったのかなと、今日説明を見ながら改めて思ったので、ぜひ何か見解があれば教えてください。やはり女性の管理職が増えないと女性は活躍できません。女性が活躍して管理職をつくるのではなくて、まず管理職の女性を増やさないと、そこがみんな指示して変えていくので、鶏と卵の関係からすると管理職を増やすほうが早いような気がします。
 以上です。後は鶴さん、よろしくお願いします。
〇樋口座長 事務局からお答えよりも、まず順番に、鶴さん、今の質問と関連しますか。
〇鶴委員 今、女性の話をしているところで、さっき齋藤先生の分析は非常に面白く聞かせていただいたのですが、女性正社員や管理職に与える影響として「存分に働くための支援」、これは因子分析なので、そこの要因の中で、地域限定正社員というところ、また違うものがいろいろ入っているので、どういうふうに説明するか難しいのだけれども、限定型の正社員というのは、私のグループがやった分析でもパートナーの男性が例えばそういう働き方をしていると女性の就業に好影響を与える、女性自身もそういう働き方が非常に重要という解釈をしているのですがそういう解釈で良いのか。女性の活躍の問題のほうも20年ぐらいというか、ずっとやっていて、逆に議論が何も変わっていないなと全体的なお話を聞いていて思ったのです。
 2つあって、女性のほうにいろいろ着目するよりも男の認識が変わらなければ駄目だ。男の働き方が変わらなければ駄目だ。女性のほうばかり見ても、そっちが変わらない限り結局何も変わらない。今日、事務局からのお話を聞いた中で非常に印象的なのは、男性の育児休業というのは物すごい勢いで近年増えている。まだまだレベルは低いですけれども、まさにそこが一番で、最後、事務局のほうで、女性だけでなくて男性もということをお話ししたところが私は非常に引っかかって、むしろ男のほうから変えなければ駄目だろうということで進まないと、結局何も変わらないということをずっと強く思っています。
 それと、しばらく前の政権でも、また今回も、目標というお話が出ましたね。「2030(にいまるさんまる)」(2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にするという目標)があったわけだけれども、そのときに思ったのは、遠い目標の話ばかりしてどうするのだと。近いところでまずどこからターゲットをやるのかということで、将来幹部になるような総合職みたいなレベルで半分半分ぐらい採用しないと、とてもじゃないが、そういう目標は達成できない。そういうところの話になったときに、製造業の大手などは、女子はもともと入ってこない、理系の人がいないという話をするわけです。そうすると、もっとそういうところに女子が行くようなことをどういうふうにしたらいいのだろうかとか、もっと手前の目標をしっかりつくらないと、何で遠い先の目標ばかり議論するのですかと。それも10年ぐらい前にそういう話をしていて、ではどこまでいっているのかということが全然検証されていない。仕込みというか、パイプラインを入れないとこの話は何も前に進まないので、同じことをずっと繰り返しているという印象です。
 さっきの事務局の資料、非常に有益な御説明があって頭の整理になるのですが、先ほど宮本先生が一番最初に御質問されたことなどもお伺いしていると、ほかの先生方のお話も聞くと、5年に一度、特に労働力需給推計ということで、研究会の意義として大きなところに来ていると思います。5年前はちょうどコロナの前、それでコロナがあって、少しそこからまた回復してきているというところで、局面が非常に見やすいわけです。そうすると、例えば事務局の時系列のいろんな御説明なども、この前はこうだった、コロナの間でこういうふうに変わって、でもその後またこういう動きが出てきている。コロナ前からずっと一貫している動きなのか、コロナで、例えば一時ショックで違った変化がまた戻りつつあるのか、結構パーマネントなショックでそこから以降あまり変わっていないのかとか、あらゆる時系列の指標などを見るときに、そういう観点から少し評価するような、なるべくそういう御説明を、これは非常に難しいことなのですが、意識して御説明いただけると我々も頭の整理になるのではないかという、最後、お願いです。
 私からは以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 よく反省しろと、過去これまで言ってきたことが効果を生んでいるのかどうかというようなことについて、実態とよく照らし合わせて言ったらどうですかということですね。
○鶴委員 ありがとうございます。
○樋口座長 雇均局も、いろいろ新しいのが出てくるのだけれども、例えば少子化対策といったときに、少子化対策を初めてやるわけではなくて、これまでにもやってきたものがあるわけですね。それの効果の話というのがほとんど出てこない。それが出てこないと次の施策がどうかというようなところも検討できないのではないか、これは私の付け加えですけれども、確かにそういうふうに思いました。
 恐縮ですが、宮本先生、堀先生、山本先生の順番でお願いします。
○宮本委員 二度目ですけれども、いいですか。堀先生、山本先生、まだでよろしいでしょうか。
○樋口座長 どうぞ。
○宮本委員 すみません。齋藤先生への御質問ということになるのですけれども、大変勉強になりました。非常に精緻な研究で感心いたしました。
 ないものねだり的になるかもしれないのですけれども、ワーク・ライフ・バランス企業の像というのを考えてみた場合、昨今、例えば企業内出生率を発表した企業なんかもありました。ワーク・ライフ・バランスを推進できる企業というのがあって、多くの場合、企業規模が大きく、IT関連で、しかもパワーカップルが多いみたいな、そういう企業で、むしろワーク・ライフ・バランスがブランド化していく、ファッショナブルになっていくというような流れの一方で、エッセンシャルワークに絡む企業などはなかなか厳しいという側面もあるのではないか。つまり、齋藤先生の御研究に関連して言うならば、例えば賃金水準、企業規模、事業分野などとWLB企業の相関は何かないのだろうかというところを御教示いただければと思います。
○樋口座長 それでは、後で齋藤先生、お答えをお願いします。
 堀先生、どうでしょうか。
○堀委員 どうもありがとうございます。
 事務局と齋藤先生におかれましては、丁寧な説明を頂きまして、誠にありがとうございました。
 齋藤先生に教えていただきたいのですけれども、ここ5年ぐらい女性の就業率は急激に上昇したという御説明がさっき事務局からありましたし、正社員比率なども上がっていくのだろうと思います。この領域の先生方にとって、女性の子育て世代の就業率というのは一体どのぐらいまで上がると予想されているのか、あるいはどのぐらいまで上がればよいと思っておられるのか、感触を教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
○樋口座長 それでは、山本先生、お願いします。
○山本委員 ありがとうございます。
 女性の働き方という今日のテーマですけれども、鶴先生のおっしゃったように、それを考えるときにやはり男性の働き方がとても大事だと思っています。そういう意味では、厚労省からの説明は、割と女性に特化したものだったり、あるいは子育て時期に特化しているものが多くて、全体として働き方が変わっていかないとなかなか根本的には変わらないのかなと思っているところがあります。
 以前、私がやった実証分析でも、男性の労働時間が短いと女性が多く正社員で働いていたりとか、あるいは賃金カーブが寝ている企業ほど女性が多く活躍していたりとか、女性に特化した話ももちろん大事なのですけれども、根本的に働き方を柔軟なものに変えていく、あるいは日本的雇用慣行から修正していくというところが大事で、そこに訴求するような政策もやはりやっていかなければいけないと思っています。
 L字カーブの解消というところも、25歳から29歳をもっと上げるということはとても大事だと思いますし、その世代が上がったところからいかにして出産・育児で下げないかというのも大事なのですけれども、あとは、戻れるかどうかというところですね。今、非正規化してしまっている人、就業を中断した人が戻れるかというところでも、日本的雇用慣行が強い企業だとなかなか戻れなかったり、あるいは労働時間が長いのでそもそも戻る気がしないとか、そういうのがあります。柔軟な働き方といったときに、働き方、フレックスとかテレワーク、そこに比較的注目されているのですが、戻れるとか、非正規から正規に転換できる、それから今日も女性の正規化のところの説明をたくさんしていただきましたが、無期雇用を固定化してしまわないように、無期から正規に行けるとか、そういう転換とか流動性というところをどうしていくか考えていく。そのためにはスキルアップも大事になると思います。今日はウエル・ビーイングに焦点を当てて多様なキャリアという中で女性の働き方を論点にされていますけれども、キャリアとか、ほかの非正規雇用のリスキリングとか、ほかのところにもすごく関係してきているところだと思うので、幅広く捉えていくというのが中長期的に考える雇用政策研究会としても大事になると思いました。
 最後に、個別の点で、鶴先生がパイプラインという言葉を使っていらっしゃいましたけれども、役員ではなくて管理職の比率を高めるというところの目標とか政策介入しないのかというところで、開示のところを見ると、正社員の女性比率、管理職女性比率というのは選択肢の中に入っているのですね。ただ、幾つかの中の一つで、必ず開示しなければいけないという項目にはなっていないのです。むしろそこは開示させるということがすごく大事になると思いますので、それぞれをきちんと、役員だけではなくて、正社員の女性比率、管理職女性比率、そして役員女性比率というようなステップを踏めるような開示の仕方を政策的にもぜひ進めていただきたいと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 雇用政策というか、企業における働き方ということですが、皆さんの話を聞いていると、企業の中だけではなくてそれぞれの世帯において夫婦の役割というのも重要になってきているというような新しい局面あるいは新しい指摘が出てきているような気がしますが、清家先生、いかがでしょうか。
○清家委員 ありがとうございます。
 皆様の議論、とても参考になりましたけれども、私は今、樋口さんが最後に言われた点については家庭の中の役割分担といったことまでは雇用政策の対象にすべきではないのではないかと思います。ウエル・ビーイングの定義ですけれども、特に労働者のウエル・ビーイングという点からいえば、それぞれの労働者の選択が優先される。つまり、短時間で働きたい人は短時間で働けるし、長時間ばりばり働きたい人はそのように働ける。あるいは子育て中どのぐらい休みたいかについても、いろいろな希望はありうるので、ポイントは個人の都合がどのぐらい優先されるかということだと思います。そのためには、こう申しますと身も蓋もないかもしれませんけれども、一番大切なのは労働市場の需給関係で労働側が有利になっているかどうかということだと思います。
 最近、賃上げもだいぶ進んだとか、あるいは今日資料に出てきたような労働者に都合の良いいろいろな施策も進展をみているというのは、やはり労働市場がタイトになってきて人手不足だということを背景にしていると思います。そういう労働者の、いわばわがままを聞かないと人は雇えませんよという状況になってきていることこそ一番大きなドライビングフォースだと思っています。そういう面では、もちろん、就業者を増やす、労働供給を増やすというのはいいことなのだけれども、大切なのは今の労働市場のタイトネスを維持していくということ。そのためには、例えば労働時間規制とか、そういうのはすごく大事だと思いますし、マクロの労働市場をタイトにしていく中で、労働者の側の選択の優先されるような状況をつくっていくということが良いわけで、個別に個々の企業でこうしたらどうでしょうかとかいったような人事コンサルタントのような話は雇用政策としては別にやらなくてもいいのではないかと思います。
○樋口座長 ありがとうございました。
 最後のチャンスになりますが、どなたか御質問があったら、なければ今までの御質問に対してあるいは御指摘に対して、齋藤先生あるいは事務局から答えてもらいます。そうしたら、齋藤先生、お願いします。
○齋藤委員 まず、宮本委員からの御質問なのですが、我々の研究では企業規模とか産業はコントロールしておりました。ただ、今回載せておりませんが、確かに企業規模が大きいほどこういった施策があるとか、そういったのは結果として出ていると思います。
 それから、堀委員からの御質問で、子育て世代の就業がどれぐらい上がればいいのかといったようなことなのですが、経済学者でのコンセンサスというのは私はよくわかっていないです。ただ、国際比較を見ると、日本というのはM字の最初の山はかなり上位にあるわけです。25歳から29歳だとかなり上にきていて、むしろ他国を凌駕しているのだけれども、その次の年代でがくっと下がってしまうというところで、形を台形に近づけていくということが大事なのかなと思っております。
 以上です。
○樋口座長 事務局に御質問のあった資料2、3、4、どうでしょう。
○雇用政策課長補佐 清家先生から頂いたところで、市場がタイトになっているというところが一つ処遇改善のところで資するのではないかという御意見がございました。今回、女性の正規雇用の動きとか、いろいろと資料をお示ししておりますけれども、まさに労働需給のバランスの中で処遇改善の契機になる状況なのかなと考えております。そういった意味で、企業に対して、人事コンサルというよりは、どのような条件の雇用があるのかというのを見える化していくといったことが必要なのではないかと思っております。今、労働市場の見える化を我々のほうで進めておりますけれども、そういったことを通じて、ある意味、市場のタイトさの中で市場の整備を行い、処遇改善が全体で起こっていくような対応が必要なのかなと考えております。
○樋口座長 どうぞ。
○雇用環境・均等局総務課長 何点か御質問を頂きました。管理職割合を目標として設定することが妥当か、また玄田先生のほうからは助成金をどう考えるかというところがございました。実はキャリアアップ助成金ではない両立支援助成金の中で女性活躍加速化コースというものをやっていたのですが、制度設計の問題なのか、実績が十分ではなく、最近廃止されているというところがございます。そこら辺の事情も踏まえて、ただ一方で管理職割合を引き上げていくところに本当に力を入れてやっていくということであれば、そこの要因の分析等をやった上で、必要なところにつきましては、引き続き検討していきたいと思っております。
 あと、鶴先生、山本先生からもだったかと思いますけれども、女性の活躍を進めていくというところで、女性だけではなくて男性を含めての働き方、また山本先生からは慣行といったようなところをどう変えていくのか、そこに働きかける施策をという御指摘を頂きました。実は慣行というところにつきまして、政府として力を入れてここを変えていく、おかしいから直すべきだというところにつきましては、ナイーブな部分が正直ございますけれども、いろいろと見直しをしていくべき日本的雇用慣行についてどう考えていくかというのは最近議論が非常に高まっているというところもありますし、今のままでいいのかというところも御指摘としては非常に強い声になっていると思っていますので、ここは今、にわかにどう変えていくべきだというようなお答えはできないところですが、いろいろと勉強し、また先生方からも御示唆いただきながら、何か働きかけられるような施策を考えていきたいと思っております。
 あとは、樋口先生と清家先生から夫婦の働き方のニーズについて雇用政策としてどう取り込んでいくかというようなところがございましたが、夫婦の役割分担につきまして、直接、雇用政策としてこうすべきだというところ、共働き・共育てでいくべきだというところを働きかけるというのは、越権行為だと思っておりますけれども、ただ、共働き・共育てを求めている方々が非常に多くなっているということを前提として、いろいろな制度や、ニーズを実現するための権利義務、ここをどう考えていくかというところは労使も交えてこれからも不断に議論していきたいと思っておりますので、そちらについてもぜひ御示唆を頂ければと思っております。
 答え切れているのか、心もとないですけれども、私からは以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
 この問題でこれだけは聞いておきたいとか、これだけは言っておきたいというようなことが先生方から何かございますか。よろしいですか。
 よろしければ、ほぼ時間になりましたので、本日の第2回研究会は以上とさせていただきます。
 では、次回について事務局から連絡をお願いします。
○雇用政策課長補佐 事務局でございます。
 次回でございますが、第3回「雇用政策研究会」につきましては、7月26日水曜日、10時からの開催を予定しております。後日、改めて御案内を送らせていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 以上で本日の研究会を終了いたします。どうもありがとうございました。