令和5年度第3回医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録

日時

令和5年6月7日(水) 14:30~16:00

場所

厚生労働省 仮設第一会議室
(オンライン会議場)

議事

○医薬安全対策課長 それでは、定刻を若干過ぎておりますけれども「令和5年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開会いたします。
 本日御出席の委員、参考人の先生方におかれましては、お忙しいところ御出席を賜りまして、ありがとうございます。
 本日の会議の公開については、YouTubeによるライブ配信で行うこととしておりますので、御理解、御協力のほどお願いいたします。議事録につきましては、後日、厚生労働省ホームページに掲載いたします。
 また、今回もWeb開催としておりまして、対面での進行と一部異なる部分があります。議事に先立ちまして、進行方法等について事務局より説明させていただきます。
○事務局 事務局より御説明申し上げます。
 まず、ハウリング防止のため、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 御意見、御質問をいただくときは、ミュートを解除し、初めにお名前をお知らせください。
 御発言のタイミングが重なったりした際は、調査会長から順に発言者を御指名いただきます。
 その他、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので、事前にお伝えしております事務局の電話番号まで御連絡をお願いいたします。また、もし事務局のサーバーがダウンするなどのトラブルが発生した場合には、事務局から一斉にメールで御連絡いたしますので御確認をお願いいたします。
 御不便等をおかけするかもしれませんが、御理解、御協力のほど、お願い申し上げます。
 事務局からは以上になります。
 ここからの議事進行につきましては、調査会長の岡先生、お願いいたします。
○岡座長 それでは、座長を務めさせていただきます、岡でございます。委員の皆様には円滑な議事進行に御協力をお願いいたします。
 今回もWeb開催ということで、事務局から御説明がありましたけれども、これまでの御説明に御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入る前に、委員の出欠状況等について、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 本日の委員の出欠状況について御報告いたします。現時点で6名中6名の委員に御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会の規程により定足数に達しており、本日の会議は成立することを御報告申し上げます。
 続きまして、本日、参考人として御参加いただく先生方を紹介いたします。
 議題1「緊急承認された医薬品の市販後安全対策について」の関係で、東京女子医科大学呼吸器内科学講座教授・基幹分野長の多賀谷悦子先生。
 国立感染症研究所ハンセン病研究センター、センター長・真菌部部長の宮﨑義継先生。
 議題2「ノルトリプチリン塩酸塩製剤におけるニトロソアミン類の検出への対応について」の関係で、精神・神経領域の御専門家といたしまして、慶應義塾大学予防医療センター特任教授の三村將先生。
 なお、三村先生は、15時頃に御参加いただける予定となっております。
 また、毒性評価の御専門家といたしまして、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター安全性予測評価部、部長の増村健一先生に御出席をいただいております。
 以上です。
○岡座長 ありがとうございます。
 続きまして、審議参加に関する遵守事項について、御説明をお願いします。
○事務局 本日御出席の委員及び参考人の先生方につきまして、議題1及び2の対象品目、競合品目の製造販売業者からの過去3年度における寄附金・契約金などの受取状況を報告いたします。
 対象品目・対象企業及び競合品目・競合企業について、事前にリストを各委員・参考人にお送りして確認をいただいたところ、石井委員より、ファイザー株式会社、住友ファーマ株式会社、武田薬品工業株式会社より50万円以下のお受け取り。
 柿崎委員より、塩野義製薬株式会社より50万を超えて500万円以下のお受け取り、ギリアド・サイエンシズ株式会社、武田薬品工業株式会社より50万円以下のお受け取り。
 舟越委員より、ファイザー株式会社、武田薬品工業株式会社より50万円以下のお受け取り。
 多賀谷参考人より、MSD株式会社より50万円以下のお受け取り。
 三村参考人より、塩野義製薬株式会社、住友ファーマ株式会社、武田薬品工業株式会社より50万を超えて500万円以下のお受け取り、持田製薬株式会社より50万円以下のお受け取りと御申告をいただいております。
 柿崎委員におかれましては、議題1の審議中、御意見を述べることはできますが、議決に加わることはできません。
 その他の委員におかれましては、意見陳述、議決のいずれにも加わっていただくことができます。また、参考人につきましても意見陳述が可能なことを確認しております。
 なお、これらの申告については、追ってホームページで公表させていただきます。
 続きまして、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。
 薬事分科会規程第11条におきましては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。
 今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。
 以上になります。
○岡座長 ありがとうございます。
 ただいまの事務局から御説明に対して、何か御意見、御質問等ございますか、よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。
 資料はあらかじめお送りさせていただいておりまして、議題1に関しまして資料1-1~1-4及び参考資料が1-1~1-3。
 議題2に関して資料2-1及び2-2がございます。
 このほか、議事次第・資料一覧、委員・参考人名簿及び競合品目・競合企業リストがございます。お手元に御用意のない委員がいらっしゃいましたら、お知らせいただければと思います。
 また、資料は厚生労働省ホームページにも掲載しておりますので、オンラインで傍聴されている方は、そちらの御参照をお願いいたします。
 以上になります。
○岡座長 よろしいでしょうか。資料は、お手元にございますでしょうか。
 それでは、議題1「緊急承認された医薬品の市販後安全対策について」の審議を行いたいと思います。
 事務局より御説明をお願いします。
○事務局 資料1-1「緊急承認された医薬品(ゾコーバ錠)に係る対応について」を御覧ください。
 新型コロナウイルス感染症治療薬であるゾコーバ錠が緊急承認されたことに伴い、参考資料1-1としてお示ししている医薬品等安全対策部会での審議を踏まえ、安全対策調査会において副作用等報告の状況を考慮し、追加の安全対策の評価をお願いするものです。
 製造販売業者からの副作用報告の状況について御説明いたします。資料1-2を御覧ください。
 今回の調査会の集計対象期間は、11月24日から5月23日であり、製造販売業者からの報告に基づく推定使用者数は5万4924人です。当該期間において製造販売業者からの報告頻度は2ページ別紙のとおりです。
 3ページの別添1に症状別報告件数をお示ししています。
 4ページの別添2の症例一覧を御覧ください。
 前回の調査会で示していた症例で追加の報告があったものは、アスタリスクを付しております。その症例は、No.6のてんかんの症例です。
 今回、新規の症例として報告されたのは、No.7の浮腫・発疹、No.8の急性腎障害、No.9の薬疹、No.10のアナフィラキシー反応の4例の報告です。
 5ページから別添3で基礎疾患等及び症例経過をお示ししています。集計対象期間外に、No.7の浮腫・発疹の症例について、急性汎発性発疹性膿疱症と診断され、転帰は回復であったこと、No.8の急性腎不全の症例について、転帰は軽快との情報が収集されています。
 また、No.9の薬疹の症例について、副作用名は蕁麻疹であり、外来治療で軽快し入院していなかったことが分かり、非重篤と評価され、昨日副作用報告が取り下げられました。
 また、データロック外の新規症例として、昨日全身性浮腫が報告されました。その症例の転帰は回復となっています。
 No.6のてんかんの症例、取り下げられたNo.9を除くNo.7、No.8、No.10の新規症例及び全身性浮腫の症例について、いずれも詳細調査中ですので、引き続き追加の情報に注視してまいります。
 次に、医薬関係者からの副作用報告の状況について、御説明いたします。資料1-3を御覧ください。
 集計対象期間において、医薬関係者からの報告頻度は2ページ別紙のとおりです。
 3ページの別添1を御覧ください。
 前回の調査会から追加されたものはございません。
 次に、製造販売業者の公表資料である市販直後調査の最終報告を御説明いたします。資料1-4を御覧ください。
 3/11ページの記載のとおり、製造販売業者は緊急承認された医薬品であるゾコーバ錠について、市販直後調査期間は投与された全症例を対象とした使用実態、安全性の情報の収集を行うとしており、今般最終報告が公表されました。
 集計対象期間において非重篤な副作用の報告頻度は2/11ページ別紙のとおりです。また、非重篤症例の副作用収集状況は6~8/11ページのとおりです。
 9/11ページを御覧ください。
 RMPの重要な潜在的リスクである催奇形性に係る情報の更新はありません。
 11/11ページを御覧ください。
 RMPの重要な不足情報である中等度以上の肝機能障害患者での安全性について御説明します。追加の医薬品安全性監視活動として、肝機能障害を有する被験者を対象とした臨床薬理試験が実施されています。
 この報告書作成は、今月予定とされていましたが、患者エントリーに時間を要した等により、本年12月予定としてRMPの改訂がされました。また、中等度以上の肝機能障害患者への投与は、前回調査会以降3例減って計5例収集され、副作用等の発現は見られなかったとのことです。
 症例数が減った理由としては、企業が医療従事者への追跡調査を実施したところ、肝機能障害の程度を軽度と再評価した症例が1例、医療従事者が誤って登録していたことが判明した症例が2例いたためです。
 資料の説明は以上ですが、製造販売業者から、市販直後調査終了に係り、主に3点報告を受けています。
 1点目としては、医療従事者に市販直後調査終了後も引き続き、患者に緊急承認された薬剤であること及び有効性・安全性に関する情報を十分説明し、文書による同意を得てから投与すること、女性の患者には、妊娠に関するRMP資材を用いて妊娠している可能性がないことの確認を入念にすることを依頼し、ゾコーバ錠の適正使用の徹底についてお願いしたこと。
 2点目としては、今後もゾコーバ錠の新規納入施設の情報を収集し、その情報を入手した場合、速やかに訪問し、承認条件の説明及び妊娠に係るRMP資材等の提供を行うことで、適正使用の徹底がされるように努め、必要な安全対策を遅滞なく実施すること。
 3点目としては、本剤は緊急承認された医薬品であるため、今後も定期的に副作用等の発現状況を公開することです。
 厚労省としましても、本剤は緊急承認医薬品であり、引き続き適切な安全性監視活動を行うよう、指導しているところです。
 説明は以上となります。
 御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、参考人の先生から御意見をいただきたいと思います。
 まず、多賀谷参考人、御意見をいただけますでしょうか。
○多賀谷参考人 ありがとうございます。
 今、御説明があって内容を拝見しまして、症例も5万症例を超えていますけれども、副作用報告としては、件数がどんどん増えているわけではないことがよく分かります。
 それと、追加の症例が何例かございましたが、1例アナフィラキシーの症例がありましたけれども、一応回復ということでしたので、現状の報告の状況から鑑みますと、重篤な副作用とか、あと急速に対応しなければいけないという状況の副作用は出ていないことが分かります。
 以上です。
○岡座長 ありがとうございました。
 続きまして、宮﨑参考人から御意見をいただけますでしょうか。
○宮﨑参考人 宮﨑です。ありがとうございます。
 今、事務局から説明があったことと、多賀谷先生もおっしゃいましたけれども、かなり投与例は増えまして、7万例程度となりこれまで詳細な副作用調査が行われてきておりますが、急に、これまで知られていなかったような副作用が出ているわけでは無いと感じています。
 そういうことですので、この調査を毎月やっていただいていますけれども、2、3カ月に1回など少し間隔を空けていただいてもいいのかなと思いました。
 ただ、今回の副作用報告の中で、皮膚関連の事象が報告されていて、その中に、重症型の薬疹として知られています、急性汎発性発疹性膿疱症、いわゆるAGEPと言われるものが含まれていましたので、この点については、現場への周知が必要と感じました。
 ただ、この周知等に関しても、今、厚労省の説明がありましたように、これまでどおり現場で十分な説明をした後で同意を取って、また、妊娠の可能性の確認も含めて、適正使用を進めるということでしたので、このことを続けることで、特段の問題はないかと思います。
 以上です。ありがとうございます。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明、また、両参考人の先生からの御意見も踏まえて、何か委員の先生方から御意見、御質問等をいただけますでしょうか。
 いかがでしょうか。今、両参考人の先生から、一つは緊急承認だったわけですけれども、これだけ例数が増えて、ある程度傾向として、新たな副作用が出てきていないという御意見も頂戴したかと思いましたけれども、その辺りについても、よろしいでしょうか。
○事務局 岡先生、事務局よりよろしいでしょうか。
○岡座長 では、先に事務局のほうから、その後、舟越委員から御意見ということで。
○事務局 すみません。宮﨑参考人からいただいたAGEPの症例については、注視が必要とは思っているのですが、今、塩野義が詳細を調査中ですので、その情報を確認しながら対応について検討させていただきたいと思っております。
 追加の情報が得られましたら、適宜先生方にも御相談させていただきつつ、必要な対策を検討してまいりたいと考えております。
○岡座長 ありがとうございます。
 舟越委員、お願いいたします。
○舟越委員 舟越です。よろしくお願いします。
 資料1-2で、先ほどまで参考人の先生方がおっしゃっていたように、症例7、8とかの転帰も明らかになりましたし、急速な対応をしなければならないことは特段ないという意見について賛同いたします。
 ただ、今回の追加の情報ではないですけれども、資料1-2の症例6ですね。再度確認なのですが、この症例6に対して、ゾコーバを選んだ理由が、服用数が少ないとか、そういった患者さんのコンプライアンスの視点からはコメントが書かれているのですが、実際、この患者さんは高齢者ということもあって、他のコロナの治療薬が優先されるのではないかなと思っていまして、副作用とか、いろいろな評価の前に、この症例が、適正な使用をされている状態での副作用報告なのかについて、今、詳細の追跡調査中だと思うのですけれども、評価されている専門委員の先生とかの見解は何か出ているのでしょうか。まず、そこを事務局に確認したいと思います。
○岡座長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか、事務局のほうで何かお答えはございますでしょうか。
○事務局 舟越先生、重要な御指摘ありがとうございます。
 先生の御指摘のとおり、今、ベクルリーを投与された後のゾコーバ錠の治療に係る経緯でしたり、亡くなられたところの経緯について、企業に調査をしていただいているところです。
 専門委員の先生に評価されているかという点につきましては、こちらの症例は、専門委員の先生には、評価していただいていません。
○舟越委員 分かりました。この効果があるかないかということも、少しこの患者さんに対する処方が適切なのかというのが、少し気になっていたところでしたのでコメントをさせていただきました。
 もう一点は確認事項なのですが、今回で市販直後調査については終了ということで、参考人の先生も、こういったことを検討評価する間隔は延ばしてもいいのではないかというコメントについても、賛同するところではございますけれども、治療効果関係のMID-NETの評価は、この調査会ではなくて、今度の部会ぐらいで上がってくる予定ということでしょうか、一応確認です。
○事務局 先生の御認識のとおり、次回の安対部会で、MID-NETを用いたゾコーバ錠のシグナル検出の結果について御報告させていただく予定でございます。
○舟越委員 分かりました。ありがとうございます。
○岡座長 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、議決を取らせていただこうと思います。
 柿崎委員におかれましては、利益相反に関するお申し出をいただいておりますので、議決に関しては御遠慮をお願いいたします。
 現状の幾つか報告されている副作用がございますけれども、追加情報を踏まえて、事務局等で精査いただいて、必要に応じても委員にも御相談いただくということで、現状の報告状況を踏まえますと、現時点において追加の安全対策を行わないということでもよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○岡座長 ありがとうございます。
 佐藤委員もカメラはオフですけれども、賛同の挙手をいただいておりますので、あとは皆様、首肯していただいておりますので、御異議なしとさせていただきます。
 それでは、今後の進め方について事務局から御説明をお願いします。
○事務局 ゾコーバ錠の安全対策について御議論いただき、誠にありがとうございました。
 引き続き、今後の症例集積を注視してまいります。また、本調査での議論につきましては、安全対策部会に報告いたします。
○岡座長 ありがとうございます。
 こうした調査会の開催間隔等についても、御意見をいただきましたので、また、安全対策部会でも御検討をいただけるかと思います。
 それでは、本議題は終了したいと思いますので、多賀谷参考人、宮﨑参考人におかれましては、貴重な御意見をありがとうございました。
 これ以降、御意見を求める予定はございませんので、途中で御退席をいただいて差し支えございません。どうもありがとうございました。
(多賀谷参考人、宮﨑参考人 退室)
○岡座長 それでは、議題2「「ノルトリプチリン塩酸塩製剤におけるニトロソアミン類の検出への対応について」の審議を行いたいと思います。
 事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 ありがとうございます。
 それでは、御説明申し上げます。
 資料2-1「ノルトリプチリン塩酸塩製剤におけるニトロソアミン類の検出への対応について」を御覧ください。
 医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクについては、厚労省から通知を発出し、各製造販売業者等に自主点検を依頼しているところです。今般、この自主点検において三環系抗うつ薬であるノリトレン錠からニトロソアミン類が検出されたとの報告がありまして、今後の方針について御審議いただきたく存じます。
 資料の「3.N-ニトロソノルトリプチリンについて」を御覧ください。
 こちらに記載させていただいておりますとおり、今回ノリトレン錠から検出されたニトロソアミン類は、有効成分であるノルトリプチリンがニトロソ化したN-ニトロソノルトリプチリンとなります。一般的に、ニトロソアミン類は発がん性を有する可能性がありますが、N-ニトロソノルトリプチリンについては、がん原性試験等のデータがなく、動物における発がん性の有無は不明です。
 一方、EMAは、N-ニトロソノルトリプチリンについて、この物質と構造が類似する化合物の毒性データを用いて一日許容摂取量を定め、公表しているところです。
 ノリトレン錠の製販業者である住友ファーマからは、ノリトレン錠に実際に含まれているN-ニトロソノルトリプチリンの量なども踏まえた今後の方針に関する企業見解が提出されています。
 企業見解は資料2-2となりますが、その内容を資料2-1に要約しておりますので、御説明については、2-1に沿って進めさせていただきます。
 資料2-1の「4.製造販売業者より提出されたノルトリプチリン塩酸塩製剤の使用による健康への影響評価及び今後の方針案について」を御覧ください。
 N-ニトロソノルトリプチリンの量につきましては、平均で1.646ppm検出されています。この量について、構造が類似する物質に基づいて、一日許容摂取量を公表しているEMAが参照している毒性データに基づいて、製剤中に許容される限度値を計算すると、0.356ppmとなるため、先ほど申し上げた平均値1.646ppmと比較すると、EMAが提示している量の平均で約4.6倍含まれていることになります。
 理論上の発がんリスクについては、本剤150mgを毎日服用し、その使用期間は、通常10年間は超えないと仮定した場合、理論上の発がんリスクの程度は、4.4×10のマイナス5乗と推定されております。
 こちらは、生涯でおよそ2万3000人に1人が過剰にがんを発症する程度のリスクに相当するとされています。
 
 この結果は、国際的なガイドライン(ICH-M7ガイドライン)で許容されている発がんリスクの上昇の程度である「おおよそ10万人に1人の増加」を上回っています。
 一方で、本剤は三環系抗うつ薬であり、投与量の急激な減少や投与の中止は、離脱症状を生じるおそれがあります。
 そのため、この健康影響評価の結果を情報提供した上で、医療現場において本剤を使用中の患者に対しては他剤への切替え等を検討するよう周知しつつも、医療現場において他剤への切替え等がなされるまでの当面の間は、本剤への患者アクセスを確保する必要があるとされています。
 ただ、供給する場合であっても、過剰なN-ニトロソノルトリプチリンへの曝露を防ぐ必要があることから、暫定管理値を設定する方針案が示されています。
 暫定管理値の設定に当たり、製販業者が、構造が一定程度類似している複数の化合物のTD50を調べた結果、資料2-2の「参考」に企業に一定程度構造が類似しているものとして調べていただいたものを並べていただいておりますけれども、毒性の指標であるTD50という値が0.00797から、多いものでは2.37mg/kg/dayと大きな幅がありました。
 また、置換基、Nに結合している構造を指しますけれども、こちらが、何がついているかとTD50にも明確な相関がないとのことで、そのため、製販業者としては、ニトロソアミン類のうち最も単純な部分構造を持ち、TD50も比較的小さめの値であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)のTD50を参照して、暫定的な管理値4.267ppmを設定し、当面の間の対応として、これを超える製品は流通させないこととする案が示されています。
 ただし、当該暫定管理値については、今後の測定結果等を踏まえて、さらに低減を図ることが可能か検討するとされています。
 中長期的な対応としては、N-ニトロソノルトリプチリンの混入原因や毒性が不明であることを踏まえ、製造方法や原材料等を見直した上で、毒性試験の実施も検討し、本剤中のN-ニトロソノルトリプチリンのリスク管理手法の確立を検討するとされています。
 参考情報となりますが、「5.海外におけるこれまでの対応」のとおり、本剤の製販業者は、本邦以外では本剤を製造販売しておりませんが、同じ原薬が使用された製剤が欧州で製造販売されており、その製剤からもN-ニトロソノルトリプチリンが検出されています。
 ただ、欧州も含めて現時点で、海外の製販業者や海外規制当局が回収等の措置を行ったとの情報は確認されていません。
 今後の方針案については、「7」を御覧ください。
 本剤の投与量の急激な減少ないし投与の中止は、離脱症状を生じるおそれがあることを踏まえ、当面の対応として、本剤の使用による健康影響評価の結果の情報提供と、医療現場において他剤への切替えなどを検討するよう周知した上で供給を継続する。ただし、先ほど御説明した暫定的な管理値を超える製品は流通させないこととする。
 また、この対応は、あくまで当面の対応として、製剤の安定供給の状況は国により異なると思われますものの、海外の動向等を踏まえて必要に応じて改めて措置を検討することとしたいと考えております。
 御説明は以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、参考人の先生から御意見をいただきたいと思います。
 まず、三村参考人より、御意見をいただけますでしょうか。
○三村参考人 ありがとうございます。
 本日参考人として発言させていただきます、慶應義塾大学の三村と申します。
 私は、精神神経科の医師でありますけれども、日本うつ病学会という、こういった適用になっております鬱病の患者さんに対して、ノルトリプチリンを含めた抗うつ薬を使うことの取りまとめをしておりますような学会の理事長を拝命しておりましたけれども、今は交代しましたけれども、前理事長を拝命しておりました。
 また、日本精神神経学会という、この領域では最も大きい学会の理事、そして、薬事委員会という、こういった問題が挙がったときに、おおむね召喚される委員会の委員長を拝命しております。
 そのような視点から、臨床的な立場から、先ほど御説明がありました案件についての私の考えを述べさせていただきます。
 まず、先ほど資料2-1で、今後の方針案ということで挙がっておりましたところとも関連いたしますけれども、前回、ニトロソアミンの関連では、アモキサピンという薬剤について、これが製造できなくなるという件でも、参考を述べたことがございますけれども、アモキサピンに比べますと、ノルトリプチリンのほうが、臨床的には、多く使われていて、現在でもかなりの患者さんが服用しておられるだろうと思います。
 したがって、これを使用できなくなるという選択肢は、患者さんにとっては、かなりインパクトが大きい問題であると思います。
 現在、抗うつ薬の使用については、先ほどうつ病学会のガイドラインも記載していただきましたが、こちらは、薬剤そのものの名称ということは、あまり挙げないのですけれども、ジャンルでいいますと、今日、SSRIと呼ばれると選択的セロトニン再取り込み阻害薬あるいはSNRIと呼ばれます選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬が、ほかにもう少し別の薬剤がありますけれども、こういった新しいタイプの抗うつ薬がファーストチョイスであって、ノルトリプチリン、ノリトレンのように、三環系の抗うつ薬というのは、前の世代の抗うつ薬であって、効果はSSRI、SNRIと同等である、ないし、それよりは少し強いけれども、副作用、有害事象が、新しい薬よりは多いという位置づけです。
 したがって、ファーストチョイスでノルトリプチリンを使うということは、今日的にはあまりないのですけれども、今日的には、いわゆるSSRI、SNRI等を使っても十分な改善を認めない難治性の鬱病ないしは治療抵抗性の鬱病に対して、ノルトリプチリンは最もよく選択される旧世代の薬剤であるという点が一つ。
 特に、例えば、重症の治療抵抗性の鬱病で、修正型電気けいれん療法を行った後に薬物療法に戻す際に、このようなノルトリプチリンや、あるいは気分安定薬である炭酸リチウムを併用して使っていくことが、比較的よく臨床的には行われております。
 また、治療抵抗性の鬱病、SSRI、SNRIの効果がないということ以前に、もともとSSRI、SNRIのほうが登場する前の段階から鬱病というのはあったわけで、その頃から、最初の世代の抗うつ薬でありますノルトリプチリンをずっと継続して飲んでいる方、新しい薬が出てきても、これで効果的にも副作用的にも問題がないので、再発を予防することも含めて継続されている患者さんが少なくないと思います。
 したがって、これらの薬剤が使用できなくなることのインパクトは、治療抵抗性、難治性の鬱病ないしは長い期間、このお薬を飲んでいた方にとっては、かなりの影響があるということが一つです。
 もう一点は、資料2-1の7の丸ポツと関連いたしますけれども、離脱症状そのものは、恐らくSSRIないしSNRIのほうがノルトリプチリン、三環系抗うつ薬よりは出やすい。つまり、ノルトリプチリンは、離脱が起きにくい薬剤であると考えられます。
 ただ、そうは言っても、この薬剤を急に中止したり、あるいは急激な減量をしたりすることは、十分、先ほどもありましたような離脱症状をして、心身に影響することはありますので、可能な限り減らしていく場合には、離脱症状を避けるという意味でも、ゆっくりやっていく必要がある。ないしは、そのことを十分に利用者あるいは医療機関に対して周知していくと、そこに情報提供とありますけれども、このことは、非常に重要なポイントであろうと思います。
 以上のことを勘案いたしますと、発がんの可能性、リスクというものがどのぐらいか、現状では十分に評価ができていないということでありますけれども、恐らくかなり発がんのリスクそのものが、このノルトリプチリンを継続服用することによって、非常に高まる、あるいは既に高いということは、あまり想定しにくいのではないかと思います。
 したがって、特に海外でも、この薬剤に対しての対応を考えることは、現時点では行われていないようですので、現状で使っている方たちに対しては、十分な情報の提供をした上で、ここに発がんのリスク、オッズ比等がどのぐらいなのかが十分分からないという泣きどころはありますけれども、それが、無視できるとまでは言いませんが、さほど高くないだろうと考えた上で、可能な限り、現状で使っている方たちについては、そのまま継続していく、ないしは他剤への切替えを提案しながら、御本人が、やはりそうしたいとおっしゃる場合には、もちろんSSRI、SNRI等に切り替える。場合によっては、他の三環系ということもあると思いますけれども、そういったところを考えております。
 そして、ニトロソアミンが混入している原因というのが、十分分かっていない点がありますけれども、製販業者には、一刻も早くその原因を追究していただき、そして、可能であれば、そこを修正、改善した上で、安全な形でノルトリプチリンの提供は継続していただく。そこがどうしても分からない範囲で、また、本日のこの委員会の結論を踏まえて、リスクとベネフィットの勘案になると思いますけれども、リスクのほうが上回ると判断した場合には、この薬剤に対して製造中止を求めることになろうかと思いますが、個人的な見解では、そこまで踏み切ることのリスクよりはベネフィットの観点から、何とか提供を継続できることが望ましいのではないかと考えます。
 以上でございます。長くなりまして、申し訳ありません。
○岡座長 ありがとうございました。
 本剤の臨床的な観点からの位置づけ等を踏まえて、詳細に御意見をいただき、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、増村参考人より御意見をいただけますでしょうか。
○増村参考人 国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部の増村です。
 私のほうでは、発がん性の評価の点について、事務局の資料を基に、簡単に説明させていただきます。
 今回、検出されましたN-ニトロソノルトリプチリンですけれども、こちらについては、その物質自身の発がん性のデータが現時点でないという状態でございます。
 ですので、どうやって評価するかというときに、構造的に比較的似ているサロゲート物質の発がん性のデータから類推して評価値を設定するわけですけれども、今回の場合、採用された類似物質が非常にTD50値が低い、要するに発がん性が強いとされる物質でありまして、その数値を今回のN-ニトロソノルトリプチリンに当てて計算すると、現在の含有量は、10万分の1のリスクを超えることになるわけです。欧州で、N-ニトロソノルトリプチリンの許容摂取量は公表されていまして、その数値を使いますと、10万分の1のリスクは、今回超えることになるわけです。
 具体的には、資料2-1の2ページに、リスクについて説明されていますけれども、基本的には、その許容値まで低減をするなりして、安全に医薬品が使えるようにすることが、必要な対策だと思われるのですけれども、そうは言いましても、現在、使われている患者さんたちがいらっしゃいますから、医薬品へのアクセスを確保する意味で、10万分の1のリスクを超える状況があったけれども、そこは、リスクベネフィットで考えなければいけないということで、現在の資料で示されている対応案になっているわけです。
 そうは言いましても、一応設定された基準値を超えている状況でありますから、患者さんへのアクセスを確保するためであっても、何も基準なし、基準を超えてそのままでいいというわけにはいかないということで、現状含まれている不純物の量を著しく超えるようなものは、市場に流通させるのはよろしくないということで、そういう点での管理値のようなものは示す必要があるだろうということで、事務局からの提案としては、ニトロソアミンのうち、代表的な発がん性ニトロソアミンですけれども、N-ニトロソジメチルアミンという比較的構造が単純なものがありまして、そちらのTD50値から計算した値を暫定的な管理値として設定し、これを超えていなければ、少なくともN-ニトロソジメチルアミンのリスクは上回らないという値を、ある意味、管理値として設定することによって、許容摂取量は超えている状態であるのだけれども、無制限に高い値は認めないという形で、患者さんへのアクセスを確保しつつ、引き続き、メーカーには、不純物の生成原因を解明していただいて、低減化を実現していただくところに努めていただきたいということで、今回のような提案になっているものと理解しております。
 簡単ですが、私からの説明は、以上です。
○岡座長 ありがとうございました。
 事務局案について、専門的な立場からの御意見を頂戴したかと思いますけれども、それでは、本件につきまして、委員の先生方から御意見、御質問等ございますでしょうか。
 柿崎委員、お願いいたします。
○柿崎委員 柿崎です。
 参考人の先生方の御意見を拝聴しまして、リスクベネフィットの問題を考慮し、アクセスを確保しつつ、リスクの低減化を図るという事務局案には同意します。
 先ほどSSRIやSNRIが効かない患者さん、あるいは継続使用されている患者さんが、主に使われている患者さんだと、参考人の先生の御発言だったのですけれども、実際、鬱病の患者さんの中で、どの程度の割合の患者さん、あるいは何万人ぐらいの患者さんが利用されているか、そういうデータはあるのでしょうか。
○岡座長 三村参考人、いかがでしょうか。
○三村参考人 ありがとうございます。
 それは、三環系抗うつ薬ないしノルトリプチリンが、どのぐらいの数出ているかということが、もし、調べていれば分かるのですけれども、私自身の手元ではありません。
 お分かりになりますか。
○岡座長 事務局のほう、何かそうした数字はございますでしょうか。
○事務局 事務局でございます。
 あくまで製造販売業者から聞いている限りということになりますけれども、抗うつ薬のうちこのノリトレン錠の市場シェアは、非常に低い割合と伺っております。
○柿崎委員 ありがとうございます。
○三村参考人 実際に、先ほど申し上げたように、SSRI、SNRIあるいはNaSSAと呼ばれるような薬物がファーストチョイスですので、三環系として使用するものは、かなり割合としては少ないだろうと思います。
○柿崎委員 ありがとうございます。
○岡座長 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 それでは、先に舟越委員で、その次に伊藤委員にお願いしたいと思います。舟越委員、お願いいたします。
○舟越委員 まず、事務局に確認なのですが、これは、暫定値を設けて、ロットごとに全部検査をするということでよろしいのでしょうか。
 そうすると、ふだんはサンプルごとに品質の検査をしているところに、今回、N-ニトロソアミン関係のもので、ロットごとに全部やるとなると、供給に時間がかかって、結局、供給不安定になることというのが、リスクとしてあるのか、どうなのかの見解を教えていただきたいのですけれども。
○岡座長 事務局、いかがでしょうか。
○事務局 事務局でございます。
 先生おっしゃっているとおりでして、まずは、ロットごとに検査をした上で出荷していくことになろうかと思います。
 時間がどのぐらいかかるかというのは、企業のほうで対応することになりますので、つまびらかに分かるところではない部分もございますけれども、その供給も見越しながら、生産もしながら実施されるものかと思っております。
 現在、混入の原因が分からないということで、生産してみなければ、どのぐらい入っているかが分からないという状況になりますから、先生おっしゃっているとおり、あまり厳しい値で管理をしていこうとすると、供給が非常に不安定になるという事態は、生じ得るものと考えております。
○舟越委員 多分、三村参考人のほうが御存じだと思いますけれども、シェアとしては少ないので、逆に、今いる患者様のために、買い占めとかではないですけれども、変なことで、この報道が使われて、企業がいろいろ発出する前に、ばたばた現場が動くようなことがないように、供給に関しては、問題なければ、問題ないというのを企業のほうから早目に発出いただけると、現場が動かないで済むかと思っているところです。
 もう一つが、供給不安の部分のことは、アモキサピンのときにもコメントを出しましたけれども、確かにアモキサピンのときには、自主回収と製造中止の対応でしたが当院でも数症例でしたので、医師のほうからも困ると言われながら、丁寧に説明に時間をかけて、患者さんのほうには切替えのほうで済んでおりました。
 それで、三村参考人がおっしゃったとおり、それよりは、処方されている患者さんが多いので、正直、リスクコミュニケーションの観点で、いつもどおり10万人に1人だったり、そういう話をされても、現場の患者さんは、逆に不安を抱えたまま治療を継続することになったりとかして、免疫関係だったり、こういった心療内科系のお薬の場合ですと、どうしても不安によって症状が不安定になる方もいらっしゃいますので、ぜひ製販の企業のほうには、現段階では解明されていなかったとしても、リスクコミュニケーションの観点の情報提供を、使える文書等を作成いただけないかというところは、お願いしたいところです。
 アモキサピンのときには、数症例でしたので、一人一人に口頭を含めて説明ができましたけれども、人数が多くなってきますと、これまでのN-ニトロソアミン関係の部分では、患者さんに理解をしていただくのに非常に時間がかかることだけは御理解いただきたいと思いますので、事務局、行政のほうからも製販のほうに、そういったツールをぜひ出していただきたいところは、ここで発言させていただきます。
 以上です。
○岡座長 ありがとうございます。
 何か事務局のほう、ございますか。
○事務局 事務局でございます。
 今、いただいた御意見、すぐにできるかどうかというのはありますけれども、企業にお伝えさせていただきまして、検討を促してまいりたいと思います。
○岡座長 ありがとうございます。
 大事な御指摘をいただいて、ありがとうございました。
 伊藤委員、お待たせしました。
○伊藤委員 ありがとうございます。
 いろいろお話を伺いまして、今回の対応としては、これで問題ないのではないかと思うのですけれども、2つあるのですが、1つは、いろいろなロットに含まれるN-ニトロソノルトリプチリンの含量を測定していただいて、ロット間で5倍ぐらいの差があると思われるのですが、今回のリスクの計算に関しては、平均値を使って計算されたということで、それよりかなり高いロットもある状況ではあるかと思います。
 記載されていますように、濃度の高いロットをずっと飲み続けるという可能性は低いとは思いますけれども、例えば、こういう計算をされるときに、ロット間でかなり濃度に幅はありますので、その幅をつけてリスクを計算されるというほうが、情報としては、正確なのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○岡座長 ありがとうございます。
 事務局あるいは、もし、よろしければ、増村参考人から何か御意見がございましたら、お願いいたします。
○事務局 事務局のほうからお答えさせていただければと思います。
 先生、御指摘いただいたとおり、資料2-1にございますとおり、平均値では、1.646ppm、最小値が0.625、最大値が3.446ということで、平均値から比べますと、2倍程度含まれているものもロットによってはあるという状況になっているところでございます。
 今、伊藤先生から御指摘いただきました点でございますけれども、どのようなお示しの仕方をするかというのは、事務局でもかなり悩んだところではございますけれども、ずっと最大値で飲み続けるというわけではないということも考えて、一つの示し方として、企業が提案しているように、平均値でお示しするというのも選択肢だろうということで、このような形でお示しさせていただいたところです。
 今後のお示しの仕方等については、検討してまいりたいと思いますし、特に、本件について、これから医療現場等に伝えていく際には、この値が平均値であるということ、ロットごとにばらつきがあるということ、そういったことをしっかりと伝えながら、リスクコミュニケーションを図っていくことも大事かなと思っておりますので、そのように検討してまいりたいと思います。ありがとうございます。
○伊藤委員 ありがとうございます。
○岡座長 よろしいですか、どうぞ。
○伊藤委員 もう一つ、N-ニトロソノルトリプチリンそのものについては、毒性のデータがないということで、先ほども御説明をいただいたところですけれども、類似化合物の毒性の中で、今回は、一番単純な構造であるNDMAの毒性を参考にされたということで、それが、側鎖の影響を排除した化合物を適切と考えたと記載があるのですけれども、それが適切なのかなというところが、はっきり判断できないところなのですけれども、結果として計算された値というのが、実際の現在のロットに含まれる濃度よりは、かなり高いところでの管理値というものが計算されていまして、先ほどから御説明がありましたように、確かに安定供給のところを重視する必要があると思うのですけれども、例えば、供給に支障が生じないぎりぎりの値に設定するとか、あるいは、現実的か分からないのですけれども、全てのロットを測定されるということでしたので、なるべく濃度の低いものから供給していただくとか、そういった対策は考えられませんでしょうか。
○岡座長 ありがとうございます。
 事務局、何かございますでしょうか。
○事務局 もし可能でしたら、リスク評価の部分について、増村先生から何か補足等あれば、いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
○岡座長 増村参考人、よろしいでしょうか。
○増村参考人 増村です。
 今の御質問の件ですけれども、まず、N-ニトロソノルトリプチリンの発がん性に関するリスク評価について行われた類似化合物の選択については、最初の前段で申し上げましたとおり、非常に発がん性が強いというか、TD50値の低い物質が選択されて、そのTD50値を使って計算した一日許容摂取量を、今回のN-ニトロソノルトリプチリンに適用することが決まっているわけです。
 ですので、化学構造からの一日許容摂取量の推定ということについては、その時点で、非常に低い値が設定されているというのが、まず最初です。
 そこから計算すると、現在のN-ニトロソノルトリプチリンの検出量は、それを超えているというところが、いわゆる化学構造の類似性を用いて、発がん性のリスク評価を適用した結果ということになります。
 後段のN-ニトロソジメチルアミンの話は、結局、供給のアクセスを維持しつつ、かつ特定のロットで極端に高い不純物の値が出た場合に、そういったものについて、何もケアしないでいいのかという観点から、一定のキャップをつける必要があるのではないかということで、何か基準を設定するという、また、別の目的で設定された値と考えていまして、それについては、今回申し上げましたとおり、N-ニトロソジメチルアミンという代表的な発がん性ニトロソアミンのリスクは超えないというところで設定すると、その目的を達するのに妥当なのではないかということで出されたものだと思います。
 したがいまして、ここが緩過ぎると不純物の高いロットが出てきたときに見逃すことになりますし、これがきつ過ぎると、今度はロットを調べるたびに、値を超えてしまったものは出荷できないことになりますし、そこのさじ加減は結構難しいところだと思うのですが、目安として、今回設定した値であれば、N-ニトロソジメチルアミンのリスク以内には収まる形で設定されたものだと理解しています。
 ですので、最初の話に戻りますけれども、化学構造の類推から発がん性の評価をする点については、非常に低い評価値が国際的にも設定されていて、その値を超えているという点が、そもそもの今回のリスク評価の結論でありまして、あとは、それに続けて、リスクベネフィットでどうやってアクセスを確保しながら不純物の量をコントロールしていくか、あるいは低減していくための時間を稼げるかというところでの、暫定的な基準値の設定と理解しております。
 以上です。
○岡座長 伊藤委員、いかがでしょうか。
○伊藤委員 ありがとうございます。
 御説明の内容に関しては、理解しているつもりでございます。今後、なるべく濃度の低いものを提供していただくことができると、管理値がかなり高い値になっていますので、それに限らずといいますか、なるべく低いものを提供していただくような、何か体制ができるといいなと思いまして、発言させていただきました。
○岡座長 ありがとうございます。
 先ほど佐藤委員が手を挙げていただいていましたでしょうか。
○佐藤委員 すみません。間違いました。大丈夫です。
○岡座長 大丈夫ですか。そのほか、いかがでしょうか。
 石井委員、お願いいたします。
○石井委員 ありがとうございます。
 何か基準を決めて、構造の類似性からそれを推察するというやり方は、それはそれでいいと思うのですが、結局、いつも後追いになってしまって、薬の供給を止めてしまうということが現状にあります。
 今、この表に示しているように、何か分かっているものがあったら、先行してエビデンスを出していただくのが一番いいのではないかと思いますが、そのようなことは、難しいのでしょうか。
○岡座長 いかがでしょうか。
 事務局でよろしいですか。
○事務局 事務局のほうから、もし必要であれば、増村先生からも補足をいただければと思いますけれども、TD50値というのを用いて、毒性を検討して管理値を決めていくことになるのですけれども、恐らくがん原性の試験が必要になるかと思っております。最終的にはという意味ですけれども、発がん性の懸念がないことが、もう少し手前の毒性試験で明らかになる場合もあるかもしれませんけれども、このTD50値というのを出していくためには、がん原性試験が必要になるものと思います。
 それを実施するとなりますと、数年、2年以上はかかるということで、どうしても先生御指摘のように、毒性データのほうが後にならないと出てこないというような状況が生じているのかなと理解しております。
○石井委員 ありがとうございます。
 恐らく製造過程で、このような構造を持つものは、ニトロソ体が出てくるというのが予測されるようなイメージがあるのですが、なかなかその辺りは、試験をする手間とお金というのがあると、進まないということなのでしょうか。すみません、教えてください。
○岡座長 いかがでしょうか。
 ちょっとお答えしにくいですか。
○石井委員 もちろん答えがないのですが、一応何か持っていらっしゃるかなと思ってお聞きしたまでです。このTD値を用いて、このようなグローバル基準でやるというのは、私は理解しておりますけれども、やはり、なかなか難しいのでしょうか。
○事務局 石井先生、ありがとうございます。
 既に流通している製品に対する対応ということで行きますと、当然、先生がおっしゃっているとおり、どういう化合物が生じるかということを想定しながらになるのですが、まず、毒性試験よりも先に、実際に製品に入っているかどうかというのを確認するほうが、順番としては先に来ることが多いのかなと思っております。その前後関係で、今のような状態になっていると理解しているところでございます。
○石井委員 ありがとうございます。
○岡座長 そのほか、いかがでしょうか。
 柿崎委員、お願いいたします。
○柿崎委員 柿崎です。
 今回、ニトロソアミン類の自主点検の中で判明したわけですけれども、自主点検は、薬剤の中でどの程度進んでいるのでしょうか。まだまだ、これから同じようなケースは、報告されてくるのでしょうか。
○事務局 ありがとうございます。
 自主点検については、その医薬品にニトロソアミン類が入っていそうかどうかというスクリーニングのようなものの期限を今年の4月末としておりますので、そこは終了した段階です。
 その後、ニトロソアミン類が入っていそうだという医薬品については、入っていそうと思われるニトロソアミン類について測定を行うという段階になっておりまして、測定の結果も踏まえたリスク低減措置も含めた対応を、令和6年の3月末までに行うということにされておりますので、今、測定に移っている企業さんも多いかと考えております。
○柿崎委員 分かりました。
○岡座長 ありがとうございます。
 そのほか、御意見はよろしいでしょうか。
 そうしますと、今、皆様の御意見を伺いますと、基本的には、事務局案の考え方でよろしいのではないかという御意見が多かったかと思いますけれども、資料2-1にございます今後の対応方針案のとおりに進めていただくということで、よろしいでしょうか。
 佐藤委員も大丈夫でしょうか。
(首肯する委員あり)
○岡座長 皆様、御承認をいただけたと思いますので、委員のほうからは、供給不安という点、それから、どうリスクコミュニケーションをするかといったような点。
 また、一方で、いかに濃度の低いものを供給していただくかという点、そうした御意見がございましたので、それを参考に進めていただければと思いますけれども、御異議なしということで、事務局案で進めていただければと思います。
 それでは、本議題に関する今後の進め方について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 ありがとうございます。
 今後の方針案に記載のとおり、本剤については、当面の対応として、本剤の使用による健康影響評価の結果を情報提供した上で、医療現場において他剤への切替えなどを検討するよう周知するとともに、暫定的な管理値を超える製品については流通させないことといたします。
 また、本調査会での審議結果も踏まえまして、近日中にノルトリプチリン塩酸塩製剤におけるニトロソアミン類の検出への対応について周知する通知または事務連絡を発出させていただきます。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、よろしければ、本議題は終了したいと思います。
 三村参考人並びに増村参考人におかれましては、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
 予定しておりました議題は以上ですけれども、事務局から何かありますか。
○事務局 先ほどご質問いただいた自主点検の進捗について、回答に一部誤りがありましたので、訂正させていただきます。
 自主点検の実施スケジュールなのですけれども、先ほど実測とリスク低減措置を令和6年3月末と申し上げましたが、10月末の間違いでした。今、測定に移っている企業が多いだろうというところには、変わりはございません。失礼いたしました。
○岡座長 ありがとうございます。
 それでは、本日の調査会を閉会させていただこうと思います。どうもありがとうございました。