2023年度第1回雇用政策研究会 議事録

日時

令和5年6月1日(木)15:00~17:00

場所

本会議会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

傍聴会場
厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2023-6-1 2023年度第1回雇用政策研究会
○雇用政策課長補佐 定刻になりましたので、始めさせていただきます。
 ただいまより、2023年度第1回「雇用政策研究会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の中お集まりいただき、ありがとうございます。
 研究会の委員につきましても、資料1の名簿のとおり、14名の先生方にお願いをしており、研究会の座長は樋口委員にお願いしております。
 本日は、阿部先生、黒田先生、玄田先生、清家先生、宮本先生が御欠席されています。また、田中職業安定局長につきましては、公務の都合により、途中参加となりますので、その点、御了承いただければと思います。
 それでは、雇用政策研究会の開催に当たりまして、まずは今回の目的等につきまして、事務方のほうから簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
○雇用政策課長 雇用政策課長の髙橋でございます。よろしくお願いいたします。
 今回の雇用政策研究会の目的、役割について、私のほうから御説明させていただきたいと思います。
 これまで、雇用政策研究会におきましては、中長期的、構造的な課題を整理いただいていたところでございます。
 昨年の雇用の政策研究会におきましては、コロナ禍の不測の事態、グローバル化の進展、急速な技術進歩などによる産業構造の変化に柔軟に対応でき、かつ、回復力を持つ持続的な労働市場であります、しなやかな労働市場の構築が必要であることについて、御提言いただいたところでございます。
 そして、しなやかな労働市場の考え方につきましては、当初の令和5年度予算要求などの裏づけとして、考え方として活用をさせていただいているところでございます。
 今回の雇用政策研究会につきましては、5年に1回労働力需給推計を行っているところでございますけれども、そこにつながる議論といったことで、幅広い観点から今後の労働政策の在り方を見据えた形での御議論をいただければと思っておりまして、いただいたものにつきましては、今後の政策の方向の検討などに活用させていただきたいと思っているところでございます。
 以上が、今回の先生方にお願いいたします研究会の目的、役割ということで、事務方としては考えているところでございます。
 以上でございます。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 続きまして、樋口座長から御挨拶をいただければと思います。
○樋口座長 皆様、こんにちは。どうぞよろしくお願いいたします。
 今、髙橋課長のほうからお話がありましたように、従来から雇用政策研究会は、もう何十年にわたって行っておりますが、主に中長期的なことについて御議論をいただくということでございました。
 ところが、コロナに入って2回ほど、この研究会を開催させていただいておりますが、そこでは、まさに足元の議論をしていただくということでございましたが、今回は、元の話に戻しまして、中長期的な動き、また、具体的な政策について御議論いただきたいと思っております。
 事務局のほうから、何人かの先生方に既に御意見をいただいていることもございまして、特にここでの議論が、具体的な政策に生かせる形で取り組んでいければと思っております。
 ちょうど社人研の人口推計も発表されてございます。JILでは、これを受けまして、労働力需給推計を行っていくこともございます。それで、先生方にいただいた御意見を踏まえまして、労働力推計のほうにも取り組んでいきたいと思っております。
 特に、人口減少の社会の中において、今までのところ、例えば女性が活躍できる政策にしていき、それで労働力率を引き上げることも行ってまいりました。
 あるいは高齢者についても、高齢者の雇用促進ということで、高齢者の労働力率を引き上げることによって、労働力需給、特に供給面における活性化を考えてまいりました。
 どうも動きを見ていますと、ほぼこれらのところについては、数字の上では、少なくともこれ以上の上昇がどこまで期待できるのかということもあり、外国人労働者の問題も含めて、今回は御議論いただければと思っております。
 そこにおける受入れの制度の議論もございます。あるいは現行のいろいろな施策がございますが、それとの関連で、今後どうしたらいいのかという雇用政策との関連について御議論いただければと思っております。
 高齢者あるいは女性のときに、今までウェルビーイングの話で扱っていただきましたが、これについても、さらに進めていきたいと。具体的にどうすればいいかというお話をいただければと思っております。
 政府は、いろいろな施策について提言を出しておりまして、実行に移していることもございますが、この研究会では自由な御発言をいただきまして、皆様の積極的な議論に基づいた取りまとめができればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 続きまして、本年度から当研究会委員に就任いただきます、齋藤委員より御挨拶をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
○齋藤委員 皆さん、こんにちは。今年度から当研究会に加えていただいた齋藤隆志と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、主に企業と労働者との間の関係について、研究をしてまいりました。具体的には、労使コミュニケーションや企業統治といったものが、企業の行動、特に人事制度です。ここには、ワーク・ライフ・バランスとか、あるいは成果主義などの賃金制度も含まれておりますが、こうしたものに対する影響、また、それらが労働者の行動、ここには就業継続とか離職などが含まれております。さらにはウェルビーイング、最終的には生産性等、企業の業績に対して、どのような関係があるのかということについて関心を持って研究してまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございました。
 それでは、報道関係者の方は、ここで御退室を願います。
(カメラ退室)
○雇用政策課長補佐 それでは、議事に入る前に、本日はZoomによるオンライン参加の委員もいらっしゃいますので、改めて簡単に操作方法について御説明をさせていただきます。
 現在、皆様の画面には、我々事務局の映像及び各委員の皆様が映っているかと思いますが、まずは、画面左下のマイクのアイコンがオフになっていることを御確認いただければと思います。
 本日、研究会の進行中は、事務局のほうで委員の皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言をされる際には、画面下の「参加者」のボタンをクリックしていただき、その後に表示されるポップアップ画面の右下に表示されます「手を挙げる」のボタンをクリックしていただければと思います。その後、樋口座長から許可があった後に、御自身でマイクをオンにしていただいてから御発言をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 なお、会議の進行中、通信トラブル等々ございましたら、事前にお送りしております電話番号か、チャット機能で御連絡をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 オンライン会議に係る説明については、以上となります。
 続きまして、議事に入らせていただきます。今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 よろしくお願いいたします。
 今、事務局から説明のございました方法で進めてまいりたいと思いますが、念のために、マスコミの方は、この部屋には、もう既に退室なさっていらっしゃらないのですが、隣の部屋で聞いていらっしゃるということで、そういう意味では、一種のオープンになっておりますので、御発言についても、その旨、認識していただいた上で、お話しいただければと思います。
 それでは、資料2の開催要領及び資料3の議事の公開について、事務局から説明をお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 まず、資料2について御説明をさせていただければと思います。
 資料2は「雇用政策研究会開催要領」でございます。
 まず「1.目的」でございます。雇用問題に関して、効果的な雇用施策の実施に資するよう、現状の分析を行うとともに、雇用政策の在り方を検討することになってございます。
 「3.構成」でございます。「厚生労働省職業安定局長が学識経験者の参集を求めて開催する」となってございまして、今回14名の先生方に御参集をいただいている状況でございます。
 「5.その他」でございます。研究会の庶務につきましては、厚生労働省職業安定局雇用政策課で執り行いさせていただきます。
 資料3でございます。
 「議事の公開について」でございます。研究会は、原則公開となっております。
 ただし、記載がございます(1)から(4)に該当する場合であって、座長が、非公開が妥当であると判断した場合には、非公開となることとしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、以上でございます。
○樋口座長 それでは、皆様から、ただいまの説明につきまして、御質問あるいは御意見がございましたら、お願いしたいと思います。「手を挙げる」のボタンをクリックしていただき、指名しますので、その後、お名前をおっしゃってから発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 よろしいですか。よろしければ、資料のとおりの扱いとさせていただきます。
 それでは、続きまして、今回の研究会で特に議論を行う論点や、今後の進め方、事務局とも相談してまとめていただいておりますので、説明をお願いいたします。
○雇用政策課長 それでは、まず、資料4について御説明をさせていただきます。
 こちらは、雇用政策研究会における議論等について、論点的なものとして整理をさせていただいているものでございます。
 1ページ目の上に開催趣旨を書かせていただいてございます。
 冒頭座長のほうからも話がありましたとおり、足元2020年度、2022年度におきましては、コロナウイルス感染症下においての今後の労働市場の方向性などについて、議論を行っていただいたところでございます。
 こうした中、足元では、経済活動の再開に伴って人手不足の顕在化などがありまして、雇用維持から賃金上昇を伴う労働移動の支援、さらなる人材活躍を促す労働施策へと転換を図っていく必要がある状況と考えております。
 さらに、働く人の意識の変化、産業構造の変化の中で、働く人が自身の希望に合わせて、多様な働き方を選択でき、安定したキャリア形成ができる労働市場の構築が求められていると考えております。
 ということで、今回2023年度雇用政策研究会におきましては、コロナ禍での議論も踏まえながら、今後の多様なキャリア形成、ウェルビーイングの向上に向けた取組、それらを支える労働市場の在り方について議論を深めていただき、雇用政策の中長期的な方向性を検討していただくと。
 あわせて、将来の労働供給量の確保についても議論を行っていただきまして、労働力需給推計のほうにもつなげていきたいと考えているところでございます。
 議論すべき課題といたしまして、大きく5つ項目を掲げてございます。
 詳細は後ろにございますので、柱として、1つ目「労働者の職業選択に資する労働市場の基盤整備」「労働生産性向上に資する人的資本投資等」「非正規雇用対策・セーフティーネットの強化」「ウェルビーイングの向上に向けた多様なキャリア形成・働き方」「人口減少に備えた労働供給量の確保等」といった柱を立てているところでございます。
 2ページにお移りいただきまして、論点案の1つ目でございます。
 まず、左側ですが「労働者の職業選択に資する労働市場の基盤整備」でございます。
 「総論」でございますけれども、今後、産業構造が変化する中で、労働者が希望する職業を選択し、また、ライフプランに合わせて、適切な職場を選択できることが求められる中で、どういった労働市場基盤整備が必要かということでございます。
 1つ目が「自律的なキャリア形成を支える労働市場の見える化」としてございます。
 ここの1つ目でございますけれども、これまで情報公開などをやってきたわけでございますが、さらに職業選択に資するような情報を整備するために、今後どのような労働市場情報を整理し、活用していくべきか。
 2つ目、自身のキャリアプランに合わせて、キャリアアップしていくためにはということで、スキルや職務を整理し、内部労働市場におけるキャリアラダーを構築していくためには、どのような取組が必要かといったこと。
 3つ目ですけれども、雇用情勢に関する情報について、ハローワークのみならず、民間職業紹介事業者と協力したさらなる雇用情勢の把握、情報提供の在り方について、どのような対応が考えられるかとしております。
 次の柱としては「キャリア形成のサポート機能の充実」でございます。
 今後、自律的なキャリア形成を促進していくため、サポートする体制が求められるということで、ハローワーク、キャリア形成・学び直し支援センター、そして民間を通じた支援について、どのような対応が必要かという点。
 次が、ハローワークにつきまして、オンラインを活用したサービスを展開してございますが、キャリアコンサルティング機能の強化も含めて、今後どのような取組が必要かという点でございます。
 最後の点としては、地方部におきまして、特にハローワークの果たすべき役割は大きくなっていると思っております。自治体との連携も含めて、地域の実情に応じた公的サービスの在り方について、どのようなことが考えられるかとしてございます。
 右側は、労働生産性向上に資する人的資本投資等でございます。
 「総論」でございますが、1つ目、企業を通じた人的資本をより効率的なものにしつつ、個人主体の人的資本投資も、より充実させていく必要があるといった中で、生産性を向上させて賃金上昇につなげていくという労働分配の在り方を含めて、どのような人的資本投資の取組が必要かとしております。
 2つ目、生成AIのような新たなAIの普及により、今後、求められるスキル・タスクが変化していくことが想定されますので、そういった中での人的資本投資を進めていくために、どのような取組が必要かとしております。
 続きまして「企業による人的資本投資の在り方」でございます。
 企業と労働者のキャリアのすり合わせを通じた効率的・効果的な人的資本投資を行っていく必要がある中で、企業の人的資本投資の取組を促進していくために、どのようなインセンティブづけを行っていく必要があるかとしております。
 次でございますけれども、オンライン化が進んでいる中で、IT人材が必要不可欠な人材となっております。
 この人材を、これから経営・企画といった分野において活用して、付加価値の高いサービスを生み出していくことが必要でありまして、そういったITを活用した事業を展開できる人材育成に取り組んでいく必要があるのではないかということで、こうした企業の取組を推進していくためには、どのような支援が必要かとしております。
 次は「個人による人的資本投資の促進」でございます。
 個人の人的資本投資につきましては、効果的・効率的に行うためのサポート体制が求められるということで、キャリアコンサルタントのさらなる活用、キャリアコンサルタントの質の向上を図っていくために、どのような対応が必要となるかとしてございます。
 続きまして、3ページにお移りいただきまして「ウェルビーイングの向上に向けた多様なキャリア形成・働き方」でございます。
 「総論」でございますけれども、子育て・介護といったライフイベントの際に、キャリア形成の中断をせざるを得ない環境もありましたけれども、制度面での整備は一定程度進んできたところでございます。
 一方、価値観が多様化する中で、制度的枠組みだけではなく、社会全体働き方の改善も進めていくことも重要ということで、そのためにどのような取組が必要かという点を挙げてございます。
 「子育て・世代女性の働き方」でございます。
 女性のM字カーブの解消などが一定程度進んできたわけでございますけれども、現在においても、L字カーブの課題などが存在してございます。そういったL字カーブの解消に当たりましては、特に子育て期の女性の継続就業が課題ということで、男性の育児休業取得など、育児への関わりを増やすための支援等が重要ではないかとしております。
 次が、企業における女性の活躍について、課長・部長等での登用は十分に進んでいない状況にあり、より多くの女性のさらなる活躍に向けて、企業の取組を進めていくために、どのような対応が必要かとしております。
 次が「介護と仕事の両立」でございます。
 高齢化が進展する中、制度的な支援もあるものの、現役層が介護に携わる機会も増えている状況がございます。
 こういった現状に合わせて、仕事と育児の両立に向けた環境整備、労働者の働き方についても改善をしていく必要があるのではないかといったことで、介護を機会としたキャリアの中断が起きないよう、企業内での柔軟な働き方を促進していくためには、どのような取組支援が必要かとしております。
 次の柱としては「労働者の希望に添った柔軟な働き方等」としております。
 人材確保のため、企業は労働者の希望に沿ったキャリア形成支援を行っていく必要があるということで、また、労働者のライフイベントに合わせて、ポジションや職務の変更を選択できる柔軟な人事制度の構築も必要となってくると考えられます。
 柔軟な働き方を促進してくために、どのような取組支援が求められるかとしております。
 次でございますけれども、新たな働き方が進展する中で、企業は労働者を支援しながら、メンタル面も含め、無理なく働き続ける職場づくりを行っていく必要があるといったことで、こういった企業の取組を促進していくために、どのような対応が必要かとしております。
 次は「人口減少に備えた労働供給量の確保等」でございます。
 「総論」にありますように、今後、人口減少していく中におきましては、希望する女性・高齢者のさらなる活躍を促していくこと。加えまして、IT技術などを活用した省力化を推進し、労働生産を高めていくことが重要ということで、そのためにどのような取組が必要かといったこと。
 あとは、既に各産業において、働き手が減少することに対応した取組が行われておりますので、そういった取組、現状も踏まえながら議論をしていくことはどうかということで挙げてございます。
 「女性・高齢者等の労働供給量の確保」でございます。
 近年、女性や高齢者の労働参加が進み、労働力率の上昇が見られているといったことでございますが、希望する女性・高齢者のさらなる労働参加を促すためにも、賃金も含めた処遇の改善といった点を検討する必要あるのではないかという点を挙げてございます。
 次ですが、柔軟な働き方や多様な働き方をさらに充実させることで、誰もが子育て・介護などと両立しながら、働ける環境づくりといったものが必要ではないかと。
 女性・高齢者の労働参加のハードルを低くする観点からも、就職に向けた支援・訓練等が必要ではないかとしてございます。
 次が、制度的な要因で、労働参加が阻害されることがないよう、中立的な制度設計、政策的な対応が必要ではないかとしております。
 次が、外国人労働者について、安心して長く働ける環境づくりを行っていく必要があるのではないかとしております。
 最後の大きな柱といたしまして「非正規雇用対策・セーフティーネットの強化」としてございます。
 「総論」でございますけれども、人的資本の蓄積を通じた非正規雇用労働者の雇用の安定、雇用形態にかかわらず活躍できるための方策、多様な働き方を支えるセーフティーネットとしての雇用保険制度の在り方について、今後、どのような取組が必要かとしております。
 「セーフティーネットの在り方等について」でございます。
 コロナ禍、雇調金などの活用を通じまして、雇用維持に向けた支援などを行ってきたところでございますが、今後、産業構造の変化に合わせて、どのような運用が求められるかとしております。
 次が、希望する正規雇用労働者の正規化、同一労働同一賃金の徹底をはじめとした非正規雇用労働対策のさらなる推進加えまして、週20時間未満で働く方の雇用のセーフティーネットについて、どのような対応が必要かとしてございます。
 以上が、今回御議論いただく際の観点として、整理をさせていただいた案ということでございます。
 次の4ページが、これまで20年度、22年度、コロナ禍で議論いただいた雇用政策研究会の議論を簡単にまとめたものでございますが、説明は割愛させていただきます。
 5ページについてでございますが、こちらにつきましては、前回、雇用政策研究会で御議論をいただいた、しなやかな労働市場の考え方について、御提言をいただいたところでございます。
 そういった考え方に基づいて、政策を組み立てておりまして、こちらの資料につきましては、大臣のほうが新しい資本主義実現会議におきまして、説明した資料をつけさせていただいているところでございます。
 なお、この中で構造的賃上げということがございます。構造的賃上げに関しましては、事前に委員の方々から、政府が進めている構造的賃上げとは何なのかという御質問をいただいておりましたので、ここで併せて御説明をさせていただきたいと思います。
 これまで政府での議論におきましては、構造的賃上げといったもので、賃上げの流れを継続、拡大していくために、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、それがさらなる賃上げを生むという好循環を実現するものと位置づけておりまして、こういった持続的に賃金上がる構造をつくり上げていくといったことで、取り組んでいくということで、構造的賃上げという考え方が用いられているところでございます。
 一方、今回、雇用政策研究会との関係でございますけれども、雇用政策研究会につきましては、先ほど申し上げたとおりで、中長期的な観点から政策を御議論いただくといったことで、賃上げの部分のみならず、先ほど項目として御提示させていただいたように、ウェルビーイングの点でありますとか、人手不足の中でのAI等の新技術の活用でありますとか、労使の継続的な関係性の中での人材投資の在り方といった点につきまして、これまでの御議論も踏まえながら、御提言などをいただければと考えておりまして、そういった点で御議論をいただければと思っております。
 以上でございます。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 私のほうから資料5につきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 おめくりいただきまして、目次の部分でございますけれども、時間も限られておりますので、少しピックアップをさせていただく形で御説明をさせていただきたいと考えてございますが、先ほど論点案にもございましたとおり、労働市場の基盤整備とか、ウェルビーイングとか、様々なことについて御議論いただきたいと思いまして、その基礎になる資料を御提示させていただきます。
 今回、5つのセクションに分かれた形で御用意をさせていただいております。
 3ページ目でございますが、1つ目のセクションでございます。「足下の雇用情勢と労働力人口等の推移」といった形になってございます。
 4ページでございます。
 先ほど樋口座長のほうからも御案内がありましたが、先日、新たな将来人口推計につきまして公表がなされました。
 その中で、グラフにもございますけれども、総人口が2070年のときには約8700万人のところまで減少になるとございます。
 65歳以上のところでございますが、およそ4割程度になるというところが、このグラフからも見て分かります。
 一方、15歳から64歳の人口のほうは、大体5割程度になっておりますので、やはり人口の構成の変化は大きいということが、このグラフから分かります。
 こういった構造的なことを前提に議論をしていきたいと考えてございます。
 次をおめくりいただければと思います。
 こちらは、人口推計ではございませんが、労働力調査のもとに労働力人口、就業者数を表したものが左側のグラフでございます。
 こちらから分かるように、15歳以上人口のところは、やはり頭打ちといった状況でございますが、労働力人口・就業者のところは、近年緩やかにではありますけれども、上昇していたところでございます。
 一方、コロナ禍のところについては、少しその勢いが収まっているような印象がございます。
 右側のグラフは、こちら人手不足の動向を示したグラフでございますけれども、日銀短観の雇用人員判断のグラフでございます。
 これを見てみますと、黒い横線があると思いますけれども、それより上に行っていると、人手の過剰感が高いことを示しているグラフでございます。
 コロナ前の2019年を見てみますと、やはり人手不足感が強いことが分かるかと思います。これは構造的な問題なのかなと思います。
 一方で、コロナ禍に入りまして、青色の製造業のほうが、黒の横線より上に行ってございますので、一時的に過剰感のほうに振れたことが分かります。
 一方で、右側のほうを見ていただきますと、人手不足感というのが高まっておりまして、その先行きにつきましても、人手不足感の高まりが見込まれているところで、人手不足について中長期、そして短期においても対応が必要なのではないかと考えてございます。
 次のスライドでございます。
 こちらは、現在の雇用情勢につきまして、お示しをしたところでございます。御案内の資料かと思いますが、御説明をさせていただきますと、緑色の線が完全失業率を表したものでございます。コロナ禍前の完全失業率のところが、2.5%になっております。ピーク時には3.1%まで上がっておりますが、足元では改善しており、2.6%まで落ち着いているところでございます。
 コロナのピーク、ほかの国、例えばアメリカですと、おおよそ14から15%の完全失業率がピークでございましたし、イギリスですと、おおよそ5.2%ということになってございますので、海外と比べてみると、完全失業率の上昇は一定程度抑えられたことが、日本ではあるのかなと考えてございます。
 赤色の線が有効求人倍率のところでございます。コロナ前は1.40倍になってございますが、ボトムのところで、コロナ後に1.04のところまで悪化し、足元では1.32まで回復していて、こういった状況を見まして、雇用情勢につきましては、緩やかに持ち直しが見られる形になってございます。
 次の7ページ目でございます。
 有効求人と有効求職についても確認をしておきたいと思います。足元のところの有効求人の赤色の線を御覧いただきますと、コメントも少し書いてございますが、コロナ前の水準を上回っている状況になってございまして、求人面につきまして改善が進んでいる状況でございます。
 一方で、青色の有効求職者数のところでございますけれども、コロナ前との比較で見ますと、高い水準がまだ維持されているところが特徴となってございます。
 少しページを飛ばしまして、10ページ目にお移りいただければと思います。
 10ページ目は、雇用形態別・性別の雇用者数の動向について、お示しをしたグラフになってございます。
 左側のグラフが、男性の雇用者数の動向でございます。これを見ていただきますと、緑のところが正規の職員・従業員となってございますが、正規のほうは、緊急事態宣言が縦線でございますけれども、それを見ていただきますと分かるように、そこまで大きな変化はなかったことが言えるかと思います。
 一方で、赤色のところが非正規のところでございますが、コロナを契機に緩やかに減少していることが分かるかと思います。
 右側でございます。女性の雇用者数のところでございます。まず、緑色の正規の職員・従業員を見ていただければと思いますが、近年、女性の社会進出といった話もございますが、順調に正規の雇用者が伸びていることが、このグラフから分かると思います。
 これもコロナ禍において落ち込むような大きな傾向は見られなかったことが分かるかと思います。
 一方で、上の赤色の線が非正規のところでございますが、コロナ前は、かなり高い水準で推移しておりましたけれども、コロナを契機に大きく下がっています。一つ言えることは、やはり飲食、宿泊といった産業に大きな影響があったことが言えるところでございます。
 足元を見ていただくと分かるように、その数も徐々に改善していることが分かるかと思います。
 次のページに移らせていただきます。
 こちらは、産業別の推移を示したものでございますが、左側のグラフが名目GDPの産業別の構成比でございます。少し長期的な形で取らせていただきますが、一番上の製造業、黒い点線のところでございますが、この比率が少し弱まっている。
 一方で、保健衛生・社会事業の赤色の線のところが、着実に伸びてきていることがGDPの構成から分かります。
 そして、GDPの構成ですけれども、やはり雇用のほうにも大きな影響がございます。右側のグラフでございます。同じように、製造業のほう、黒い点線でございますけれども、その割合が減少傾向にあります。
 一方で、赤い色のところでございますが、保健衛生・社会事業のところが伸びていることが分かると思います。
 次のページに移らせていただきたいと思いますが、少し労働生産性も見ることが非常に大事だと思いますので、産業別の労働生産性と就業者数の関係につきまして、示させていただいております。
 X軸のところが職業者数の伸びを表したものでございまして、Y軸のところが、労働生産性の伸びを表させていただいたところでございます。
 これを見ていただくと、灰色のところが製造業でございますが、労働生産性のほうは、着実に伸びている一方で、就業者数のほうは減少傾向にあることが、ここから分かります。
 一方で、情報通信業は、いろいろと上下がございますが、おおむね労働生産性が上がり、かつ就業者数の伸びも見られるといった状況がございます。
 一方で、保健衛生・社会事業といった、いわゆる社会の機能を支える方々のところは、労働生産性のほうは、そこまでといったところでございますけれども、見ていただくと分かるように、かなり就業者数の伸びが見られるところが、こちらのグラフから分かるかと思います。
 次のページに移らせていただきます。
 2つ目の「労働市場の機能強化」のセクションでございます。
 14ページに移らせていただきます。
 先ほどグラフで確認させていただきましたけれども、やはり産業構造の変化とか、そういったものが見られる中で、一定程度、そして希望する方々の転職というのも、マクロの視点から見ても重要なのではないかと考えてございます。
 左側のグラフが、転職者数を表したものでございますけれども、これを見ていただくと、大体2016年の前までは、300万人いかない程度でございましたけれども、2016年以降、300万人を超す水準で転職者数があったと。
 一方で、コロナ禍で少し落ち込みが見られていた特徴がございます。
 15ページでございます。
 先ほど希望する方がというお話を少しさせていただきましたが、こちらの赤色のところが、転職等希望者数でございます。
 青色のところが、実際に転職した方々のグラフでございますけれども、これを見ていただくと分かりますように、赤い色の希望者は、年々上昇する傾向にある一方で、青色の転職者数は、そこまで増えていないということで、ここの希望と実際のギャップがあるので、こういったところもし改善する必要があるのであれば、一定程度の改善が必要なのではないかと考えてございます。
 16ページ目でございます。
 転職が進まない理由の一つとしてよく言われていることは、やはり転職時の賃金の変化がございます。
 こちらは、転職に伴う賃金変動状況の推移について、お示ししたものでございますが、真ん中の緑色のところが変わらない方々で、青色のところが転職したことによって、むしろ賃金が下がったところでございます。
 これを見ていただくと分かるように、減少のところと変わらないというところを足し合わせると、大体6割ぐらいがそういった状況になってございます。賃金が上がった、転職ではないところでございますので、そういう構造的な問題もあると思いますし、経済状況の問題もあると思いますが、そういったところが日本の労働市場で見られることが特徴だと考えてございます。
 17ページでございます。
 少し国際比較のグラフをお示ししたいと思いますけれども、先ほどの転職前後の賃金の変化の話もありましたが、赤色のところが日本でございますけれども、グラフの緑色が、所得が増加した割合でございます。
 青色が変わらない。
 そして、オレンジのところが所得の減少といった割合を示したものでございますが、日本の所得の増加が大体23%という結果でございまして、例えばドイツでは60%、アメリカですと55%といったところで、やはり転職前後によって、所得が上がるところが、諸外国で見られ、その傾向は、日本では弱いことが分かるグラフになってございます。
 18ページ目でございます。
 転職に対して、転職者が行政に要望する事項は何なのかということを、少し見させていただきますと、いろいろと制度的なところもございますが、左の棒グラフを御覧いただければと思いますが、より多くの求人情報の提供とか、右ですと、職業紹介サービスの充実とか、労働市場の基盤に当たるところが要望としてありますので、そこをしっかりやっていくことでございます。
 そのほかにも、人的資本投資に関わる要望とか、高いところで言いますと、制度的なところでございますが、退職金が不利にならないような制度の改善とか、そういった制度的なところもございますが、この事項から分かることとしては、やはり労働市場の基盤整備が求められていると考えてございます。
 少しページを飛ばしまして、21ページの3つ目のセクションの「多様な働き方」に移らせていただきたいと考えてございます。
 22ページでございます。
 今までマクロの視点で御説明をさせていただきましたが、もう少しワーク・ライフ・バランスという視点にフォーカスを当てていきたいと考えてございます。
 赤枠で示したところでございますが、就業後の価値観の変化を示したグラフでございます。
 これを見てみますと、2000年から見ているデータでございますけれども、会社や仕事のことより、自分や家庭のことを優先したいといった価値観が大分増えてきているところ。
 左隣のところでございますが、自分の仕事の目的は、会社の発展をさせることであるという割合も、少し減ってきているようなことでございます。
 また、赤枠の右隣でございますけれども、たとえ収入が少なくなっても、勤務時間が短いほうがいいという形になってございまして、やはりワーク・ライフ・バランスを重視するとか、また、これまでの全体的な価値観というよりは、個々の時間を大切にしたいという価値観が増えてきていることで、様々なワーク・ライフ・バランスを含めた価値観の変化に、柔軟に対応していくことが必要なのかなと考えてございます。
 次のページでございます。
 ワーク・ライフ・バランスと、少しマクロにも関わりますけれども、重要なこととしましては、女性の働き方がございます。御案内のグラフかと思いますが、左のところは、女性の就業率を年齢階級別に示したものでございますが、いわゆるM字カーブと言われております30代の就業率が低い方につきましては、徐々に改善傾向にあるところが見て分かるかと思います。
 右側のグラフでございます。最近、いろいろなところで言われておりますけれども、こちらは女性の正規雇用率を年齢階級別で見たものでございますが、いわゆるL字カーブと言われているところでございますが、20代とか30代のところは、正規の雇用率が高いけれども、年齢階級が上がるにつれて、正規の雇用率は低くなっている課題がございます。
 様々な制度的な側面もありますが、家庭の中で、男女の家事の負担感の違いなども影響してくるのではないかと考えてございます。
 次の24ページでございます。
 ワーク・ライフ・バランスと密接に関係するところでございますが、育休の取得率のところでございます。
 左側の女性のほうを見ていただくと分かりますように、足元85%になってございまして、ある程度高い水準になってございます。
 一方で、男性のところは、近年かなり伸びていることが分かりますが、それでも最新値で13.97%でございまして、政府目標が2025年に30%となってございますので、それと比べると、かなり低い水準になっているところがございます。
 こういった面も含めて、どのようにワーク・ライフ・バランスを支えるかも議論が必要なのかなと考えてございます。
 次のページでございます。
 前回の雇用政策研究会でも、少し議論がございましたが、テレワークの導入の状況でございます。
 左側のオレンジ色の棒グラフが高くなっていますが、コロナ禍に入ってテレワークの導入が進んだところでございます。
 一方、いろいろ話を聞いていると、テレワークをやめているみたいな話も出てきているので、このテレワークの浸透を、今後、どのように生かしていくかが重要なのかと考えてございます。
 右側の下のグラフでございますが、企業規模別で見ていますけれども、テレワークの実施状況でございますが、やはり小規模のほうが低いことになってございますので、やはり企業によって働き方が変わってきてしまう、そして、上にもございますが、産業等々で実施できる、できないが変わってきてしまいますけれども、ある意味、もっと多様な働き方、柔軟な働き方を推進していくために、テレワークというのは、どのように進めていくべきか議論をしていきたいと考えてございます。
 時間の関係で、少しページを飛ばさせていただきますが、28ページでございます。
 4つ目のセクション「賃金」につきましても、議論をしていかなければいけないと考えてございます。
 29ページに移らせていただきます。
 こちらもよく目にするグラフかと思いますけれども、実質賃金の国際比較のグラフでございます。
 赤色が日本を示しておりまして、少し分かりにくくて後悔しておりますが、赤い点線がアメリカになってございますが、これを見ていただくと分かるように、各国実質賃金の伸びが見られるといった中で、日本のほうは、やはり停滞していることが、このグラフから分かることでございます。
 30ページ目でございます。
 雇用形態別に見た賃金のところでございますけれども、青色のところが一般労働者で、赤色のところがパートタイムの労働者のところでございます。
 やはり、最低賃金の引上げ等々もありますし、パートタイムのところが徐々に伸びてきていることが分かります。
 一方で、一般労働者のところは、緩やかに伸びているように見えますけれども、やはり伸び率につきましては、なかなか伸びていないところが分かるかと思います。
 少しページを飛ばさせていただきまして、32ページでございます。
 いろいろと賃金の話をしていく中で、一つ言われているのが、企業内の賃金のフラット化でございますけれども、こちらのグラフでございますが、青色が2005年で、赤色が2022年のところを示したものでございますけれども、2005年の頃は、年齢階級が上がるにつれて、賃金が高い傾向がございました。その傾向は、まだございますが、弱まっているといったところが、赤色の山が小さくなっていることが分かると思います。
 賃金につきましては、今、足元で言いますと、物価上昇とか、そういった中で賃金を引き上げていかないと生活が苦しいという事情もありますので、中長期的な観点もそうですし、また、足元の観点からも雇用政策に大きく影響する問題なのかなと考えてございます。
 33ページ目以降は「施策集」でございます。
3 4ページ目でございます。
 全ての御説明は差し控えさせていただきますが、昨年の10月に、雇用・労働総合政策パッケージで、賃金上昇と多様な働き方の実現に向けて政策パッケージをつくらせていただきました。
 厚生労働省は、そのほかにもいろいろと施策を展開しておりまして、御参考の資料としてつけさせていただいていますので、後ほど、御参考にしていただければと思います。
 駆け足でございましたが、私からの説明は、以上でございます。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 それでは、御議論に移りたいと思いますが、この資料集をつくるに当たって、私と事務局で大分議論を重ねまして、無理難題を言ったところもございます。
 特に最初の論点のところ、2枚紙で1ページから3ページにわたってということで、事務局は、まさに、今、政策が展開されていますことを中心にということで、御議論をいただきたいということだったのですが、待ってくださいと、私のほうは必ずしもそうではないと、今、議論しておりますのが、例えば構造的賃上げでありますとか、リスキリングであるとか、非常にぎらぎらした表現のものが多いことから、むしろ足元で、地に足のついた議論を皆さんにお願いしたいということから、そういった表現は、むしろ避けてほしいとお願いした結果が、こういったものになってきました。事務局には、非常に無理難題を申し上げて、恐縮でした。
 そういうこともございますので、この研究会では、自由な発言を保障したいと思っておりますので、どなたからでも結構ですので、「手を挙げる」ボタンというのがございますので、それを押していただき、皆様から御発言をお願いしたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いします。
 まず、大竹さんが手を挙げているように見えますが、よろしいですか。お願いします。
○大竹委員 資料4の論点案ですけれども、非常にバランスよく重要な論点が含まれていると、私も思います。幾つかコメントをさせてください。
 まず、2ページ目の論点案の左側のところなのですけれども「自律的なキャリア形成を支える労働市場の見える化」について、一つコメントがあって、ここで人的投資に関する情報開示というのが改正されて行われてきたと。
 職業選択に資するような情報を整備することは、私は非常に重要だと思います。例えば、離職率や採用率という、その企業の雇用の方針というのが見えるような形にするもので、情報開示を進めていって、それが転職の際、あるいは入職の際に参考になるようなものにするのは、重要な論点だと思います。
 それから「キャリア形成のサポート機能の充実」が、その下にあるのですけれども、もう一つ入れたほうがいいと思ったのは、キャリアコンサルタントみたいなコンサルティング機能の強化というのがあるのですけれども、もう少し、例えば、ICTやAI、右側にもありますけれども、生成AIというので、非常にAIの性能が上がってきているときに、キャリアコンサルタントそのものの業務のサポート、あるいは代替といったことを図っていって、キャリア形成のサポートを充実させるということも、論点としてはあるのではないかというのが、2番目です。
 それから、右側、先ほどの生成AIの影響云々を含めるというのも総論で書いていただいていますけれども、私は、これは重要な論点だと思いました。
 次の3ページ目のところで幾つかコメントがあります。
 3ページ目の右も左もそうなのですけれども、女性は非正規労働が多いという議論ですけれども、これの制度的な取組について、もう少し明らかにしなくてはいけないところがあると思っていて、例えば103万円の壁とか社会保障の130万円の壁とか、いろいろ言われているのですけれども、制度的なことで想定されるものよりも、はるかに大きなギャップがあるところの原因を、もう少し進めていかないと、どこを取り組めば、制度的に何を直したら本当に変わるのか分からないところがあるかと思います。
 例えば、配偶者控除や、配偶者特別控除というので、かなり103万円の壁がなくなっているにもかかわらず、103万円のところで、大きなギャップがいまだに存在している。
 そこの制度そのものではなくて、違うところに原因がある可能性があります、認知のギャップだとか、あるいは配偶者手当がそこに連動しているからだということがあれば、その辺りを改善するような仕組みを提案しないと、根本的な解決にならないのではないかと思います。
 もう一点、きちんと入っているかどうか分からないのですけれども、非正規雇用から正規雇用の無期転換が5年という形になっているのですけれども、これが本当に正規雇用を増やしているのかどうかについて、分析していかないと、それを短期化するべきだという議論もありますけれども、本当に短期化したらそれが増えるのか、あるいはもう少し長くしないと駄目だという可能性もある。どちらかということを議論していく必要があるのではないかと思いました。
 私からのコメントは、以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 今おっしゃったことで、AIとの関連でいうと、確かに今、AIのほうは、労働生産性の向上のところに項目として入っているのですが、どうもそういった量的な話だけではなく、むしろ質的に向上する、今の話で言うと、キャリアコンサルタントのマッチングにおいてと、そういう質が大分変わってくるところに、注目をしていかなければいけないのではないかというお話だったと思います。
 あと、103万、110万円の壁というのは、確かに従来の雇用政策に入れるのかどうかというのは、議論があるかと思いますが、雇用に影響しているのは間違いない。しかし、その要因というのが、必ずしも社会保障制度だけではなくて、企業の給与体系、給与構造によって影響が、認知ギャップとおっしゃったかと思いますが、それがまだ残っていると、それによるところがあるのかどうかについても検討していく必要があるだろうと、そういうお話だったかと思います。
 鶴先生も手を挙げていらっしゃるかと思いますが、いかがでしょうか。
○鶴委員 どうもありがとうございます。
 事務局の御説明、大変ありがとうございました。詳しく最近の状況も含めて教えていただきました。ありがとうございます。
 この後は、ディスカッションの時間ということでよろしいのでしょうか。
○樋口座長 自由な討議に移っています。
○鶴委員 では、まとめてお話をしたいと思うのですけれども、大きく分けて3つほどあります。
 1つは、今、資料4の4ページ、5ページを見させていただいているところなのですけれども、実は前回の研究会のときも、多分、コメントを申し上げさせていただいている部分かと思います。今回は、どんなテーマ、課題を扱うのかということで、先ほど御説明がありましたけれども、それについては、もちろん異論はございません。課題として挙げられている一つ一つのものについて、いろいろ検討していくのは賛成なのですけれども、そういう議論をしていくときのフレームワーク、キーワードとして、4ページに22年度の雇用政策研究会の議論の整理として内部労働市場の強みと、外部労働市場の機能と活用があります。私は、これまでも内部労働市場と外部労働市場という言葉について、かなり違和感を持っており今回、4ページ、5ページの資料を拝見して、さらに非常に強い違和感を覚えております。内部労働市場、外部労働市場という言葉を使って、研究会の報告書ないし、いろいろ議論していくというのは、これからの日本の労働市場や雇用の状況を真に変えていくことを考えていく際には必ずしも適切な言葉遣いではないのではないかということを、強く感じております。
 というのは、肝心なことが、内部労働市場、外部労働市場という言葉で、非常にカモフラージュされてしまうのではないかと考えるからです。
 例えば、日本の正社員というのは内部労働市場で、非正規雇用というのは外部労働市場であると。内部労働市場も外部労働市場も両方大事という話になると、正規、非正規の問題は、そのままでいいのかという話になります。
 実は、もう一つ5ページのところで、内部労働市場が外部労働市場との一つの循環ということで、関係の会議に御説明されて、私の記憶だと、その会議でこの前、三位一体の労働市場改革という指針を出されているのですけれども、そこの中に、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなぐという文言がキーセンテンスになっています。内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなぐというのは、一体どういうことなのか。言葉上では、それがつながってすばらしいという印象があるのですけれども、具体的に、どういうことなのか。先ほどの話であれば、完全に非正規と正規の転換が自由に行われるとか、その裁定が自由に行われるという意味で、賃金格差もなくなるといことを意味かもしれません。ジョブ型、メンバーシップ型というフレームワークでいけば、シームレスにつながっているというのは、完全に欧米の職務給に基づいたジョブ型になっているということかと思います。
 ですので、内部労働市場、外部労働市場ということで、両方大事だと言ったら、今の日本の現状において、何も変えなくてもいいのではないかという話につながりかねない。むしろ、いろいろな議論をカモフラージュするために、こういうものが扱われているという印象を持って、そういう言葉を使わなくても、ちゃんとした議論というのはできると思います。
 ついでに、その言葉遣いということになると、先ほどの5ページの構造的な賃上げというのは、実は私も事務局に事前に聞いて、今日も御説明があったのですけれども、聞いてもよく分からない。
 それで今日も御出席のメンバーで経済学専門の方はいらっしゃるわけですけれども、私が不勉強なせいか、structural wage increaseとか、structural wage hike、そういう言葉が学術的な世界に出てきたことがあるのかなと思うと、全く覚えがないわけですよ。
 少し考えてみて、実質賃金が労働生産性と見合って上がる、そういうのが一つのストラクチャルな変化ということであれば、何とか経済学的な説明ができるのかもしれないと思ったりしますが、このような言い回しが政策の1丁目1番地になっていることは、そもそもよく分からない。
 こういう話は、雇用政策研究会みたいなところでも、どういうことなのかと、せっかくプロ中のプロの皆さんが、労働分野に集まっていらっしゃるので議論する必要があると思います。
 それから、資料5の12ページです。「産業別の就業者数と労働生産性」ということで、このグラフがありまして、先ほど少し御説明いただいたように、必ずしも労働生産性が上昇している産業で、就業者は増えていません。こういう分析は、労働白書で2年前ぐらいもやられたし、もっとその前にやられているのは存じ上げていますし、日銀なども同じようなフレームワークで、もっといろいろな産業について見たりとかしているのですけれども、結局は、ここに見るように生産性が上がるが就業者は伸びない産業と生産性が上がらないが就業者は伸びている産業に分かれるL字型なのですね。
 製造業では、就業者が減る形で生産性が上がる。むしろ、雇用が増えているのはサービス業である。情報産業は、やや分かりにくい動きですけれども、それでも、生産性はどんどん上がって、今度、就業者が増えている、45度線のほうにずっと行く形ではないと。
 こうしたエビデンスからこれまでも言われている労働再配分、成長分野の労働移動ということは、本当にそんなに簡単にできる話なのかということが、非常に私自身強く思っています。厚労省も、こういう分析を過去にずっとやっていながら、白書の表現を見ると、何か奥歯に物が挟まったような書き方にしかなっていないのです。分析してみたらこうだと分かっても、そのインプリケーションを私の目から見てちゃんと書けているように見えないところがあるます。もう少ししっかり、本当にどうなのかと、そういう政策の実現可能性があるのだろうかということも、しっかりしたエビデンスに基づいて議論すべきところだと思います。のこういうところも、せっかく御説明をいただいた部分なので、少し深めるべき論点なのかなと思いました。
 すみません、最後に全く毛色の違う話になって恐縮なのですけれども、先ほど、もともと冒頭、雇用政策研究会というのは、一体どういうものなのかとか、その意義について、また、先ほど樋口座長のほうからも、今回のテーマ設定に当たって、いろいろなお考えをお伺いしました。
 私自身も実は、ここの研究会に入ってから、2007年ですから16年ぐらいやっていまして、もちろん私よりも上の年齢の方はその前からいらっしゃいますし、阿部先生、玄田先生などは、その前からいらっしゃるなと思っております。
 私は、長年、この研究会で自由に議論をさせていただいて、非常に勉強になっています。ただ、その中で、政策決定プロセスもそうなのですけれども、いろいろ大きな環境変化が起きてきています。その中で、雇用政策研究会のあり方というのは、もちろんメンバーの入替えとかがあるのですけれども、私の観点からすると、驚くほど、変わっていません。これは、本当にぶれずによい伝統を守り続けてきたのかなという感じがしていますし、メンバーシップ型の研究会なので、非常に顔なじみの先生も多いですし、私自身、居心地が大変いい場所であります。
 ただ、今、時代の変わり目、大きな環境変化という中にあって、はっきり言って、いろいろなものから超越した居心地のいい場所というのが、それがある意味では、本当に空想的な、こう言ってしまうと言い過ぎかもしれませんけれども、「雇用政策の、ファンタジーランド」みたいになってしまっている。あまりにも、居心地がよ過ぎて、そういう部分もあるのではないか、「雇用政策研究会のための雇用政策研究会」になっているところもあるのではないかと。
 もちろん、今のようなお話を申し上げるのは、いろいろな背景があって、それは、また、別途お話しをさせていただく機会を持ちたいと思うのですけれども、今回、かなり数回にわたって議論をさせていただけることを聞いておりまして、私は、特に若手の委員の方々、これから雇用政策研究会を担っていく方々が、どのようにお考えになっているのかとか、そういうことを少しでもいいので、議論をせっかくなので、今回の雇用政策研究会の開催の中で、そういうことを自由にフリーディスカッションできるようなタイミングがあったら、いいのではないのかということで、大変僭越ながら、申し上げました。これまでのあまりの居心地のよさに甘えておりましたが、大きな変化の中で、もう一度そういうことをしっかり考えるところに、今、来ているのではないのかと、ちょっと感じるところがありました一言述べさせていただきました。すみません、コメントが大変長くなりました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 非常に重要なお話だったと思います。これは、事務局の責任というより、私の責任を負うところが多々あるかと思いますが、最初の話、最初のシームレスあるいは構造的賃上げ、さらには労働移動の生産性の高いところへの移動、こういったことが実現可能なのかというようなお話と、最後の雇用政策研究会の位置づけ、役割というところは、関連することではないかと、私は受け止めました。
 要は、前者のほう、平たく言えば、かなり官邸サイドが扱っているテーマに対して、専門家として、どう考えたらいいのか、本当に官邸のほうが挙げているから、それをそのまま受け入れるということではなく、むしろ、まさに地に足のついた議論を、これは、実証分析として行うべきところがあるのではないかと、そして、それを行うこと自身が、実は雇用政策研究会の役割といったものも変わってくることになるのではないだろうかと受け止めました。
 これは、事務局に言っても、少し重い課題過ぎるので、私どもで議論するべきことではないかと思いますが、まず、具体的な話として出ました内部労働市場と外部労働市場の、特にシームレスと、これは、分かったようで分からないということであったわけですが、具体的に何か考えているところがあったら、説明してもらえるとありがたいと思いますが、お願いします。
○雇用政策課長補佐 資料4の5ページ目を示しますけれども、鶴先生から御指摘いただきましたが、内部と外部に単純に分け過ぎなのではないかというような御指摘かと思います。
 この資料は、私のほうでいろいろ考えたものでございますけれども、シームレスといったところで、一つポイントになるところが、内部労働市場という枠の中にございますが、ステップアップ等を通じた人材活用といった中に、非正規雇用の方々へのステップアップの機会の提供というような言葉がございます。
 こちらは御案内のように、内部なのか外部なのか、いろいろな見方があると思いますけれども、まさに、非正規だった方の正規化とか、非正規のまま固定しないとか、そういった意味合いが重要だという意味で、シームレスということであったり、内部労働市場と外部労働市場の接続という意味で使わせていただいているのがメインでございます。
 以上でございます。
○樋口座長 むしろ事務局は、こういう使い方で評価といいますか、一般に分かりやすいようにというようなことで掲げてもらったと思いますので、これを使わないで、逆に鶴さんが、こういうことでどうだというようなものがあったと、今日は無理かもしれませんが、次回でも提示していただくと、なるほどということになるかと思いますので、よろしいですか。
○鶴委員 はい、それは、全然大丈夫なのですけれども、結局、そこの言葉で使わないでやると、結局、メンバーシップ型とか、ジョブ型とかの話に、当然、全面的に議論をしていく形になるのだろうと思うのです。
 これは、私は本当に長年この議論をやっていますので、持論を持っているわけですけれども、これまで雇用政策研究会で自分の持論を押しつけようと思ったことはありません。それは、もちろんメンバーの中に、そういうフレームワークで議論することに対し違った考え方を持つ方々もいらっしゃるからです。
 ですので、今、樋口座長のお話で、では、おまえ、そう言うのだったら研究会で別途説明しろということであれば、できないことはないのですが、結局は、メンバーシップ型、ジョブ型の話になってしまうわけです。内部労働市場、外部労働市場という言葉が好まれる理由は、メンバーシップ型を変えなければいけないのはそうだけれども、いきなりジョブ型という話も何だと、それについていろいろ思っている人たちがいるから、その言葉を出すよりは、内部労働市場、外部労働市場をうまくつなげてバイパスをつくって何かやればいいではないかというと、何となくみんなが、同床異夢ですけど、いいじゃないかということでまとまったと思うからです。
 ただ、あまりにも同床異夢が広過ぎるので、こういう言葉使いを、もうやめたほうがいいのではないかというのは、私の非常に強い意見です。ただ、やめたらどうなるかというと、がちんこでの話になるのです。
 だから、官邸のほうも、今、どこまでジョブ型が、相当彼らはやっているのだけれども、僕から見てもよく分からないですね。どこまでの本気度で、ああいう話をしているのかということがあります。私は御指示いただければ、そういう言葉を使わないのだったら、どういうことになるのか、私なりのものをお示しするのは、喜んでしますし、それに対して、もちろん御意見のある委員の方々もいらっしゃると思いますので、それはそれで議論をまたすればいいのだろうなと思いますけれども、どのようにも御指示をしていただければと思います。
○樋口座長 がちんこになるかどうかは別として、議論の素材として、やはりあったほうがいいのではないかなと思いますので、できれば、お願いしたいと思います。
 もう一つ重要な問題というのは、まさに構造的賃上げ、これが分かったようで分からない。単に分からないということだけだったらいいのですが、これは、政策に影響するし、何となく人の夢をそのまま表現しているのだけれども、本当に実現可能なのかというところもあるわけですね。そこについては、少し御議論いただいたほうが、要は賃上げの問題。
○鶴委員 樋口座長、この話は、さっきの事務局の説明もそうなのですけれども、成長分野への労働移動という話と完全にセットになっているのですよ。そこのスキルを、当然、低生産性部門の人が物すごい高度なスキルを得て、また別のところに行けるということが前提の話で組み上がっているので、この構造的な賃上げというのは、当然、私が言った成長分野への労働移動というのが、必ずしもできるのですかという話と、全部ここはセットになっていると理解をしているのです。
 ですので、単に賃上げだけの話をしても、一つあるモデルというか、そういうものを考えているようなのですけれども、それが非常にレレバントなモデルなのかなということ自体、根幹的な話なので、それは、それなりの有識者からきちんとした検討をやらなければ、まさに議論も何もならないですね。
○樋口座長 だから、今、それを言おうと思ったのですが、労働移動の話と絡めて賃上げというのがいいのか、要するにシグナルとして賃金が高いところに人が移ることを想定しているわけですが、果たして、それがどうやれば実現可能なのか、あるいは本当に無条件で実現できるのかというところについては、この場で議論をしたほうがよろしいのではないかと思っておりますが、ほかの先生で、この点について、自分の見解はこうだというものがございましたら、御指摘をいただければと思います。
 この点については、私は、鶴さんに大賛成な立場であるので、この構造的賃上げ、もし、必要であれば、担当者に来てもらって説明を受けても、こういう理由によって、こういうエビデンスがありますと、だからこうなのですという科学的な話をしてもらったほうがいいのではないかと思いますので、それは、また、事務局と話し合いをしますが、いかがですかね、この点について、労働移動と賃上げというか賃金、構造的賃金シグナルという、賃金シグナルというのは、構造的であっては困るのだけれども、何もやらなくても賃金が上がっていきますと、そこに人は移動していきますと、それが永遠に続きますというような話というのは、ちょっと私の理解を超えているのだけれども、佐藤さん、何かありますか。
○佐藤委員 論点1のところで、労働者が成長分野を把握しながら希望する職業選択し、また、自分のライフプランに合わせてと、これは、マクロ的に見れば成長分野なり、相対的に賃金が高いところに移動してもいいと思うのだけれども、でも働く人からすると、一つの転職の条件で、基本的には自分のキャリアなり、ライフプランを実現できる。そうすると、極端に言えば、賃金が下がっても満足している人はたくさんいる。
 だから、基本的には、どういうところが成長分野かと知っておくことはいいと思うのだけれども、基本的に自分のキャリアとか、ライフプランを実現できるところを考えて移動していくことを支援するということですね。
 結果的に賃金は下がるかも分からない。でもトータルとして、ウェルビーイングが上がるというような、あるいはやりたい仕事をやれるということは大事なので、ここは政策的には、そうかも分からないけれども、個人からすると、少しギャップがあるのかなと、今やりたい仕事をやっているのに、何で成長分野に行かなくてはいけないのというのは、変な話で、個人の選択とは少しずれがあるかなという気はします。
○樋口座長 要は選択の基準が、全部賃金になっているということだけれども、選択というのは、いろいろなシグナルを見ながら、あるいは自分の満足度とかを見ながらするのに、何で賃金に集約してしまっているのでしょうかという感じですね。
○佐藤委員 そうです。後ろのほうに行くと、働く人たちの希望に合った柔軟な働き方の提供は大事ですと言っているわけです。それとセットで、どういうバランスで働く人が選ぶか、それをきちんとアドバイスをするわけですね。そんなに賃金は上がらないけれども、あなたのやりたい働き方、勤務地で働けます、これは悪くないわけだね。だからキャリアコンサルタントは、多分賃金だけで誘導するわけではないのだと思うので、ところが、ここに出てくると、賃金が表に出てきてしまうというのは、やや違和感がある。
○樋口座長 山本先生、手を挙げていらっしゃいますか。
○山本委員 すみません。違う論点です。
○樋口座長 そうですか。では、まず、今の論点で何か御意見がございましたら。
 齋藤先生、どうぞ。
○齋藤委員 明治学院大学の齋藤でございます。
 今、このスライドで関連していいますと、左側の内部労働市場で、既に在籍型出向というのは、結構活用されているはずで、さらにコロナのときには、例えば、航空会社から家電量販店に出向して、働いた経験をお持ちの方とかがいらっしゃると思いますので、もちろん、それらの方々というのは、内部労働市場に組み込まれたまま、他社に行かれているわけですから、完全に外部労働市場に行ったわけではないと思いますけれども、この中での取っかかりとしては、一つここが注目すべきところで、何か実証分析ができればいいなと思っております。
 それから、内部労働市場というのは、基本的に企業の仕事にフルコミットメントできる人を集めているところはどうしてもありまして、そうすると、外部から取り込む人というのも、基本的にはフルコミットしてくれる人を選別するというのが、どうしても働いてしまうと思います。
 もちろん、それができない方々もいらっしゃるわけですから、ここが非常に難しいところだと思います。
 多様な働き方に、また、これがつながってくるかと思いますが、勤務地を選べたりとか、リモートワークを選べたりすることは、非常にいいと思いますし、補償賃金仮説で、賃金が下がったとしても、そういった柔軟な働き方ができることによって、賃金は我慢するのだけれども、そういった働き方から得られるプラスというのを選択される方もいると思います。
 そういったことはいいと思うのですが、最近の研究で、リモートワークを選択する人というのは、どうも低生産性である可能性があるというか、逆選択になってしまうと。選ばせてしまうと、いわば、あまり仕事にコミットできないとか、生産性が低い方が集まってしまうことが、最近出た研究でありまして、非常に限られた業種での話ですので、一般化できるかどうかまでは、まだ分からないと思いますが、ただ少なくとも、そういったことも少し念頭に置いておかないといけないのかなと思います。
 ですので、そういう意味では、内部労働市場にコミットしてくれる労働者を、企業が優遇するところは、これは、はっきり言ってどうしようもないところで、ですので、年金のポータビリティーとか、そういうところで少し不利にならないような制度をつくるというのはいいと思うのですが、どちらかというと、外部労働市場にいらっしゃる方々を強くサポートするようなやり方のほうに力点を置くほうが、政策のやり方としてはいいのかなと感じた次第です。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 確かに、よく外部労働市場といって、その下に賃金上昇を伴う円滑な労働移動と、ここが少しみんな引っかかっているところがあるのですね、内部労働市場と書いて、人材の育成、活性化を通じた賃上げと、いずれも賃上げにつながるというところで、本当かという疑問で、シームレスという話も、そういうところから出ている面がありますが、今の御議論のところで、何か御意見がございましたら、配っていただいたものの17ページ「転職前後の所得の変化の国際比較」。
 日本が転職をして、賃金が上がった人が23%。国際的に見て低いのではないかと。逆に、賃金が下がったというのが15%、下がったほうについては、あまり国際的な違いはないみたいですけれども、日本の転職というのは、必ずしも賃金だけで行われているのではありませんと、これは、単にそれを示しているのではないかなと思って、それにもかかわらず、転職によって賃上げというと、この23というのを大きくしましょうという発想になるのですかね。
 だけれども、まさに転職は、いろいろな理由によって起こる、特に日本の場合、今の会社における人間関係がどうだというようなこともあったりして起こってくるもので、鶴さん、これは、どうですか。今、画面に出ている17ページは。
○鶴委員 私も事務局に申し上げたのだけれども、日本だけおかしいという話というのは、別に私は全然おかしくも何ともなくて、日本だけメンバーシップ型ですから、当然転職したら賃金が下がるのは、正社員であれば当然ですねと、私はそう思っているわけです。職能給とか年功型が非常に強いと。完全職務給で、欧米の正社員というのは、30とかになっていって、普通の正社員は、賃金が上がらないというか、フラットになっていくという状況ですので、日本の場合は、はっきり言って、普通であれば下がる。だから、もちろんいいところを目指して行かれる方はあると思うのですけれども、メンバーシップ型ということを前提にすれば、むしろ落ちるのが当たり前と、職務給という形で、そこが非常に外と中がつながっているという状況であれば、むしろ下がるということは、あまりないだろうし、上がるからこそ転職するというビヘイビアに多分なるのだろうなと。
 だから、まさしく日本がメンバーシップ型だからこうだという、端的なエビデンスというか、そう考えるのは、私は物すごく自然だなと思っているのですけれども、これを見たときに、そう思いました。
○樋口座長 例えば、これは、僕が思っているのではなくて、構造的賃上げというのをディフェンスする側に立つとすれば、これは、23が低過ぎると、それは、まさにジョブ型ではないから、メンバーシップ型だから低いのだと。だから、メンバーシップ制をやめて、ジョブ型に変えるべきでしょうと。それによって賃上げを行うべきではないかという人もいるわけですね。
○鶴委員 でも、そのようになると、今、ある程度の中高年の賃金は、多分かさ上げされているわけですから、ジョブ型になったら、その途端に下がってしまいますねという話のほうが、むしろ出てしまうので、そこを強調すると、だから、上がるほうに移っていくのだという話を組み込まないと、賃上げの話とジョブ型の話は、絶対結びつかないのです。それぐらいは、多分、分かって官邸のほうも議論していると思うのです。だから、余計物事がややこしくなって、いろいろな条件をつけないと、そんなに美しい世界は描けないという話になるのだろうと思うのです。
○樋口座長 分かりました。
 大竹さんは、にこにこしているのではなくて、写真がにこにこしているのだね。
 大竹さん、今の点について何かありますか。
○大竹委員 すみません。私は、官邸の構造的な賃上げの実現というのを、まだ完全に理解していないのですけれども、私が先ほどの2ページや3ページで、論点案と出ている話と、それから構造的賃上げの実現というところの関係が分からなくて、構造的賃上げのところを雇用政策研究会で、正面で取り上げなければいけないという話を、鶴さんが、それは正しい議論かどうかまで含めてやらなければいけないということをおっしゃっているのか、事務局側の原案は、そういうのをある程度、この雇用政策研究会は論点案(1)、(2)というところで独立にやりましょうという話なのか、少し私は混乱していて、分かっていないのですけれども。
○樋口座長 鶴さん、どうでしょう。
○鶴委員 私がこれを申し上げたのは、雇用政策研究会の課題のところは、それでいいのではないかということを申し上げたので、これを議論しないと、雇用政策研究会としては駄目だということを申し上げたつもりはないのです。
 ただ、雇用政策研究会でいろいろな議論をしたこととか、そのことをまとめて、こういう形で官邸の会議と御説明をされたり、こういうところから来ていると。
 もちろん、そういうことにおいて、全く我々としては、そんなのは勝手に向こうがやっているから、我々はそんなことに何も関知しなくてやればいいのだという話でも、多分ないのだろうなと思うのです。それが雇用政策研究会の在り方ということを、どのように考えるかという話に、だから、多分これは座長が先ほどおっしゃった話とも結びつくのですけれども、そこを我々は、もう少し考えなければいけないのではないか、こういうことは勝手に向こうでやっているので、我々は遮断して独立的に、超越的に、我々は我々のテーマでやればいいと言い切って良いのかということです。
 でも、当然超越的にやっても、いろいろなものが当然関係してくるわけですね。そうしたときに、いや、こんなものは知らないよと勝手に言っているから、我々は知らないよという話だけでいいのか。ただ、それを本格的に取り上げるのかということも、それはそれで、また少し違うのではないかということも、私も思います。
 だから、そういうことを含めて、もう一回、今、雇用政策研究会はどうあるべきなのかというところを考えないと、我々は一体何をフォーカスしてやらなくてはいけないのかというところの話も、非常に曖昧になってしまうなと。そういう曖昧なことをずっと続けてきたのだけれどもどうするのかということです。
○大竹委員 分かりました。
 私の意見は、こちらから何か行動的な賃上げの議論がどうのこうのというのを言う立場にはないと思うのですよ。ですから、官邸というか、どこですかね。
○樋口座長 新しい資本主義実現会議。
○大竹委員 そこのところから、雇用政策研究会として議論してほしいところというのが、これと関係してどういう論点であるかというのが説明されれば、もちろん関連はつくという形だと思います。
 こちらから、何かこの構造的賃上げはおかしいのではないかという話をするのは、少し違うかなと思います。
○鶴委員 ただ、最終的に、これは大きな政策としてのキーワードになっているので、そういうキーワードで全部あらゆる政策が整理されてかぶさって、その中で、個々の厚労省の政策も、これから実施されていくことにもなるわけですね。
 だから、もうそれは全部所与として、我々はいろいろな細かい政策の話も議論していくということで、いいのですね、どこで何が決まろうとも、我々は我々で理想的な世界を追求していくのが、雇用政策研究会だと割り切れば、それはそれでいいと思います。ただ、実際の政策が、全部こういうものに対してかぶさって、あらゆるものが決まっていくという状況が、今、現実にあるわけですからね。それをどう考えるかということだと思うのですよ。だから現実の雇用政策の話と、我々がどこまでそこの話に議論できるのかという、そこの話にもぶつかっていくことになるわけですね。
○樋口座長 私は事務局と最初に議論をしたときに、資料4の議論すべき課題の論点案で、ここで考えたのには、今の行動的云々とか、労働移動が生産性の高いところに起こるのだという話は入れていなかった、あるいは、それを除いてくださいと、私のほうからお願いしたところがあって、5ページは、事務局がつくったというよりも、ここに書いてあるような新しい資本主義実現会議の資料9というところで配付されましたということで、これをつけなくてもよかったのではないかと思って、構造的な賃上げとは、少なくとも、ここから発言を少し丁寧にしないと、普通の経済学者では理解できないような表現だし、中身なのですね。だから、これにあえて触れる必要はないのではないかと、逆に触れるとすると、どこがおかしいとか、また、言わなければいけないことになってくるので、当面は、これに触れないほうが建設的な議論ができるのではないかと私は思いました。
 触れる必要があるのだったら触れればいいと、必要があるというのは、今の鶴さんの話だと、現実の政策が、かなりこれによって動いていると、その政策の批判をするのであれば、入れる必要があるのではないかという意見ですね。
○鶴委員 それを全部議論として認めた上でやると、そこの中で考えていきましょうということで、割り切ってやるのであれば、それでいいと。
 だから、私自身も、これをどうぞ議論してくださいということを申し上げるつもりはなかったのですけれども、あまり全く見て見ぬふりを、10年ぐらいやってきているのですよ、だから、あまり見て見ぬふりという話はどうなのですかということも、私も少し思うところがありまして、一応、そういう問題意識という、ただ、雇用政策研究会でどうなるのかというのは、座長がおっしゃったように、我々は我々で、このテーマをしっかりつくって、その中で、それは、必ずしもこういうところにどんどん入るのはどうなのかというのは、私は、それは全く賛成ですので、これは、最初に申し上げたとおりです。御提示いただいたもので議論していくというのでいいのではないかというのが、もともとの私の考えですから。
○樋口座長 この5ページを入れたから、ややこしい議論になっているので、どうぞ。
○佐藤委員 私も5ページが何で入っているのかで、厚労省として議論してほしいということであれば、我々は議論することもありかなと思うのです。これが何でここにあるのかということだと思うのです。
○樋口座長 局長の考え方を。
○職業安定局長 職業安定局長でございます。
 この5ページの紙で、少し議論の混乱をいたしていることについては、大変恐縮しております。
 私たちは、前回の議論の整理において、様々な御議論をいただきまして、その中で、現在の政府全体の中での労働政策といいますか、産業政策、教育政策とも、かなり絡みながら議論がされている部分なのですけれども、その中で、去年の10月の時点でありますけれども、そのときに課題になっていたのが、今後、立ち遅れている賃金の引上げをどうやっていくかというテーマ、それを打開するための様々な政策手段というのを議論する中で、労働市場という問題が少しずつテーマに挙がってきておりましたし、その結果として、この半年間の中で議論を進めて、これは学術的にも理論的にも必ずしも説明できない部分もあるかもしれませんけれども、いろいろな諸要素を含めながら、労働市場改革の指針を政策的な文書として取りまとめたということになっております。
 私ども職業安定局あるいは厚生労働省としては、この議論の中にしっかりとした政策的議論の背景を持ったものを、できるだけ反映すべく、雇用政策研究会の議論も踏まえ、かつ政府全体の議論の流れにも、少しずつ整合させながら、どのようなメッセージあるいは提起というものをしていくかを考え、このペーパーは、その上で加藤大臣とも議論をし、加藤大臣が、この新しい資本主義実現会議で、議論の前提として説明するペーパーとして取りまとめさせていただいたということでございます。
 したがって、雇用政策研究会の議論を事務的には、大きく参考にさせていただいていますけれども、それ以外の要素も入っています。
 また、雇用政策研究会の各先生方の意をちゃんと体しているかどうかというもの、全く誤解をして入れている部分もあるかもしれませんけれども、そういったものとして、実際の議論の素材として提出させていただいたものでございます。
 したがって、これを前提にまた議論をしていただきたいということではなくて、逆に、前回の雇用政策研究会の議論が政策形成過程において、こういう形で使われている、活用させていただいていることをお伝えしたくて、これをつけさせていただきました。
 ですので、前回の議論を踏まえても、これは違うのではないかとか、この考え方は違うのではないかという御意見も、むしろいただきたいと思いますし、内部労働市場と外部労働市場の分け方自体も、もう古いのではないかと、むしろ議論を制約してしまっていないかという鶴先生の議論も、もちろん私どもも、この紙を説明する過程でも様々な方からいただいておりますので、そういった紙として御覧いただいて、連続性としては、むしろこれというよりは、前回の雇用政策研究会の議論の取りまとめにプラスして、その後の状況、それから、今後の中長期的な視野といったもので、雇用政策のあるべき姿というものを議論していただければという趣旨でつけさせていただいたところでございます。
 説明になっているかどうか分かりませんけれども、そういう形でございますので、よろしくお願いいたします。
○樋口座長 前回の雇用政策研究会でも、構造的な賃上げとか、賃金上昇を伴う円滑な労働移動というのは、あまり出てこなかったのではないかと思って、これは、その後、付け加わったことで、それに対して、みんな違和感があるのではないかと、これは、私も違和感が、もちろんあるので、このままこれを資料として認めるわけにはいきませんというのが、皆さんの御意見だろうと思いますが。
○佐藤委員 大竹さんは、授業で抜けるということです。
○樋口座長 もう抜けてしまったのかな。
○佐藤委員 大竹さんは、恐らく。
○樋口座長 今、局長のほうから説明があった経緯だけれども、多分いろいろなものがミックスしたのですね、その後も含めて、そのミックスしたものがかなり重要な点が加わったということで、経済学というか、実際の労働市場を見ている立場からすると、こんな華やかなというか、こんな都合のいいことが本当に起こるのかというところに疑問がありますと、鶴さんは言いたいのでしょう。
○鶴委員 話がだんだん大ごとになってきて、恐縮しているのですけれども、いろいろな御事情はあると思うのですけれども、今の局長がおっしゃったお話は、苦しい胸の内なのかなと、我々は聞いていたと思いますし、理想的な雇用政策をどう考えていくのか、樋口先生がおっしゃったように、エビデンスに基づいて、いろいろな議論に基づいてやっていく中で、ここの紙にいろいろな問題が、結局、凝縮しているということなのではないですか、だから、これが悪いと言ってしまうと、現実を全て否定してしまうときに、我々は、現実のいろいろな課題とか問題点というところが、まさにこの紙に凝縮しているというところから、どのようにこの研究会自体もやっていくべきなのかとか、そういう話にもなってくるのでしょうし、どういう議論をしていくべきなのかと。
 これは、この資料を何でつけたのかということよりは、むしろありのままの姿を我々に見せていただいたというか、そのように取らないといけないのではないですかね。
○樋口座長 分かりました。ここの点は、少し次回までに事務局と相談して、新たに問題を提起させていただきたいと思いますが、ほかの点で、御意見を持っている方もいらっしゃるようですので、先ほど山本さん、手を挙げていたように思いますが、ほかの点で結構です。
○山本委員 ありがとうございます。
 座長の最初のお言葉で、方針として、地に足のついた議論と、あまりぎらぎらしない方針というのは、とても賛同していたので、ここまでとってもぎらぎらした議論が展開されていて、戸惑うところはあるのですが、一旦そういう意味では、私は座長の地に足のついた議論を、この研究会で進めていくという方針は賛成でして、その方針は決めたほうがいいのではないかと思ったのですけれども、いかがでしょうか。
○樋口座長 それは、私の代わりに山本さんが提案していただいたので、どうでしょう、よろしいですか、そのような形で、プリンシプルで進めていくということで、何かその点については、御意見がある方がいたら、挙手を願いたいのですが、よろしいですか。
(異議なしの意思表示あり)
○樋口座長 では、その点については、合意を得たということで、ほかの論点でも結構です。
○山本委員 それでは、時間もありませんので手短に、今回の研究会は、コロナ禍での臨時の研究会を経て行われていて、中長期の雇用政策を考えていくということを考えると、私が見たいのは、コロナ禍で変わったトレンドとか、変わらなかったトレンドというのは、今後も中長期に続いていくのかというところが大事になるのかなと思っています。
 そういう意味では、例えば、変わったものとしてテレワークというのがあって、そこは十分議論、論点に入っていたと思いますし、資料5でも詳しく扱われていたと思います。
 もう一つ注目したほうがいいかなというのが、女性の正規雇用が増加トレンドにあって、それがコロナ禍の2020年でも変わらなかったというところが、それが、今後も続いていくのだろうかと、それこそがL字カーブの解消とか女性の登用につながっていくのかというところを占う上で、今後、より丁寧にデータとかを見ていったらいいのかなと思います。
 というのも、2022年に正規の女性の雇用の増加トレンドというのは、一旦止まっているようにも見えますので、増えているところが、どういうセクターで、どういう企業規模あるいは、どういう年齢層で増えていたのかとか、あるいはトレンドが停滞したのは、どういう要因なのかとか、どういうセクターなのかといったところを、少しエビデンスを持って捉えておくと、今後、何か手当が必要なのかどうなのかというところが見て取れるような気がします。
 そういう意味では、雇用の視野が増えているのが、保健衛生・社会事業というところが見えていますけれども、そこというのは、あまり賃金が高いセクターではないと思いますけれども、そこで何が起きていたのかというところを見るのも大事なポイントになるのかなと思います。
 もう一つ、コロナ禍で変わらなかったと思うのが、労働時間の減少だと思います。コロナ禍前から働き方改革などの影響で、労働時間は減ってきていて、コロナ禍で不況になったので、さらに減少したのですが、足元を見てもそこまで増えてはいけないということで、これが本当にこのまま定着していくのかどうなのかというところで、それこそセクターとか属性別に見ていって、今後につなげていくと。
 そこで気になるのが、やはり正規雇用の長時間労働がなくなってくれれば、女性で正規を選ぶ人も増えてくると思うのです。
 そういう意味では、論点に挙げているような女性、高齢者の労働供給の確保とか、あるいは女性の働き方というところにもつながってくるので、その辺りにも注目していくというのが、今後の研究会を見通した私のコメントになります。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 幾つかの点については、事務局に調べてもらったりするということで、女性の正規雇用の増加というのが、正規雇用は、無期雇用が伸びている、それとも企業における正規と思われている人が伸びている、要するに正規の定義で、私の承知しているのは無期雇用が増えていると。ただし、どうも賃金が低い人たちが、無期雇用という形で呼ばれるようになったという増え方のように思うのですが、そこは事務局に、業種も含めて調べてもらうことにします。
 あと、労働時間の減少の問題、これも非常に重要な話ですので、次回までに調べるということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 荒木先生、どうでしょう。
○荒木委員 荒木です。
 地に足のついた議論、大変大事だと思います。政治的にいろいろな議論があるのですけれども、やはり専門家の議論を積み重ねることによって、これはおかしいということが世の中に伝われば、それはそれで大事なことだと思いますので、そういう地に足の着いた議論をしていくことがこの研究会でも有意義だと思います。
 私は、法制度のほうから見ておりますが、今日の議論も市場による調整が中心で、Voice or Exitでいうと、Exitができるように制度を整備しようということなのですけれども、企業の内部においても賃上げについてのVoiceの仕組みが機能するようにしていくということも車の両輪として、もう一つ重要な点だと思います。
 しかし、内部市場におけるそういった議論をするときにも、やはり転職の可能性によって個人の交渉力が高まる、つまり外部からのオファーがあれば、賃金を上げてくれなかったら転職するぞということによって、内部労働市場の中でも労働条件の改善が可能となります。それをサポートするための、いわば内部労働市場で見えなかった部分を見えるようにしていくということも重要で、今回も3月の省令改正でも、いろいろな労働条件をもっと明示することを要請しております。
 これは、ジョブ型にも多少関わるのですけれども、内部市場に関する法制度も変わってきている状況がありますので、内部市場、外部市場両方ともに、より望ましい方向は何なのかということを、この研究会でも議論していくことで基本的な理解というものが進んでいけば、非常に有益かなと思って議論を伺っていたところです。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 ごもっともな御意見で、実は私も少しまとめていながら、この議論の中に労働組合が登場しないと、少し気になっていたところなのです。労組の存在あるいはそこにおける役割が、どこにも出てこなかったし、出す必要があるのかどうかも含めて考えてみたいと思いました。ありがとうございます。
 神吉さん、どうでしょうか。
○神吉委員 ありがとうございます。
 私は既に出た論点については賛同するところも多いのですけれども、関連して気になったところを挙げさせていただきます。
 資料4の「議論すべき課題」という最初のところで、下の箱の5つの柱の相互のバランスをみたとき、左下の非正規雇用対策とセーフティーネットの強化という柱が非正規雇用をどう位置づけるかという観点から、違和感がありました。
 全体を通して、非正規労働がそもそも望ましくない働き方に位置づけられているように見えるのです。
 たとえば3ページ目で、子育て世代・女性の働き方、M字カーブは解消しているのだけれども、L字カーブが残っている、つまり非正規が多いことが問題にされ、右側の女性・高齢者の労働参加についても、労働力率は上昇しているが多くは非正規雇用という形の労働参加に限られているので、さらなる労働参加を促さなければいけないとされています。本来であれば、ライフイベントやニーズに応じて、柔軟な働き方の一つ、あるいは多様なキャリアの一つとして選ばれるという積極的な側面もある非正規が、この黄色の箱の中で、対策の対象とされているという位置づけ自体がどうなのか。「無期フルタイムで働くのがスタンダードであるべきだ」という視点自体が、スタンダードから外れるから処遇に差をつけて良いという非正規問題を生んでいる側面もあるのではないかという懸念があります。
 先ほど齋藤先生のほうから、企業としてはフルコミットできる人がスタンダードで、それをするのが当たり前、それは仕方ないことだという御意見で、そういうのが現状なのだろうとは思います。他方で、それでいいのだろうか、フルコミットできない人に対して、それは仕方ないと追認してしまうと、非正規対策は結局何なのかが疑問です。正規化が進められるようですが、「正規化」とは何でしょう。非正規問題は、そもそもパート、有期派遣、それぞれの問題があるにもかかわらず、非正規とくくって正規化にもっていこうというのが、ほかの論点の細かさと対比して、あまりにも大まかな議論になっているように感じました。
 それがセーフティーネットの強化と一緒にされていると、雇用に関するほかの問題は正規の人たちの話であって、非正規はセーフティーネットのように外側に位置づけられている問題に見えないだろうか。つまり、既にある分断をさらに追認しないかという懸念として、述べさせていただきました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 確かにそういう面があって、実は週20時間未満で働く方の雇用保険の拡大、これが本当に望ましいのかと、少なくとも本人たちが希望していることなのか、あるいはその人たちが従来の雇用保険の目的に即しているものなのかというのは、議論の余地がありそうだというところもあるのかなと。これもいただいた課題として、今後、検討を進めたいと思います。ありがとうございました。
 それで、今日の予定は5時までだったのですが、5時から用事のある方は退出なさって結構です。残ってもいいという方は、少し残っていただければと思います。
 堀さん、どうぞ。
○堀委員 ありがとうございます。
 事務局におかれましては、データや論点の整理、どうもありがとうございました。
 私からは、1点質問と1点お願いがございます。
 質問は、論点の2ページなのですけれども、左側のピンク色で上から4つ目の丸の「雇用情勢に関する情報については」というところなのですけれども、現状政府が行っているところ、民間の職業紹介事業者と協力するということが書かれておりまして、情報提供はイメージが湧くのですけれども、雇用情勢の把握として何かイメージされていることがあれば、教えていただければと思います。
 第2点目は、お願いなのですけれども、3ページの右側の青い部分で上から5つ目、これは、先ほどの大竹先生との論点とも重なるのですけれども、制度的な原因で働き方が左右されることなのですけれども、確かに税制であるとか社会保障制度の在り方によって、働き方は、現状、左右されている部分は非常に大きいと思うのですけれども、どのぐらい左右されていて、どのくらい左右されていないかということが分かるといいなと思っています。
 というのは、社会保障の議論だと、3号があるから就業調整が行われているのだということで、3号をなくせみたいな議論があるわけなのですけれども、やや乱暴なのではないかと思っていまして、現状、社会保障制度が働き方を規定する方向性に、専らなっているのですけれども、どちらかというと、労働政策のほうから社会保障政策に打ち返すような形のエビデンス的なものが、もし整備できると、大変有効ではないかと思いますので、可能な範囲で御検討いただければ、ありがたいです。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 後者のほうについては、これから検証してもらおうと思いますが、前のほうの2ページの左側の4つ目のダイヤのところ「雇用情勢に関する情報について」、これは事務局、どうでしょう。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 私のほうからお答えさせていただきたいと思います。
 まず、現状としましては、いろいろ雇用情勢は、ハローワーク等々の有効求人倍率とか、そういった形で情報提供させていただいていること。
 あと、最近ですと、ジョブタグ、日本版O-NETとか、そういった形で職業情報の情報提供をさせていただいているところでございます。
 一方で、民間の事業者を活用するユーザーも増えている中で、必ずしもハローワークだけの情報提供ですと、見切れない部分があるのではないかといったことで、今後どういった情報収集と、提供の在り方があるのかというのを、少し考えたいという点で入れさせていただいたところで、具体的にこういう協力をすべきというのは、まだないところでございます。
○樋口座長 堀さん、よろしいですか。
○堀委員 はい、ありがとうございました。
○樋口座長 では、佐藤さん。
○佐藤委員 もう時間もあれなので、1つは、論点の2ページ目の自律的なキャリア形成、つまり働く人たちが自分のキャリアプランに合わせて、内部、外部を見ながらキャリアをつくっていくという話と、右側による人的資本投資、ここの関係で、多分これまでの企業に雇われた人と、社員と企業の関係を変えるということだと思うのです。これがうまくいくかということなのだけれども、分かりやすくいうと、これまで就職活動をし、企業とコミュニケーションを取るわけですね。入ったら、こんな仕事に就けるよ、あるいはこういうキャリアがあるよと。
 採用されたら、実は企業が人事権を持って、あっち行け、こっち行けとキャリア形成をしてきたわけです。
 そういう意味では、そういう会社に入った後の、鶴さんがメンバーシップ型といったような社員と企業との関係を変えるということで、これからは企業に雇われた後も、社員は社内だけではなく社外を見てキャリア形成を、そのときに当然企業と対話するということです。自分はこういう仕事をやりたい、こういうキャリアを実現したいのだけれどもと。
 会社は、やれるということを言える場合と、いや、それはとても無理ですよと、こういう話し合いをして、無理だといったら、とりわけ外を探すということになる。
 会社としていてほしい人は、ほかを探すといえば、違うよ、うちでやれるよと、企業も積極的に、あなたが希望するキャリアを提案できると、リテンションをやるとなってくるわけです。
 そうしたときに、例えば、今、自動車会社のエンジンの開発エンジニアが、会社は、これからは水素や電気に変わるよというときに、私はエンジンをやりたいですという人がいたら、これは、教育訓練投資はしないですね。出ていってくださいという話で、そういう人が、やはり自分は電気とか水素をやるよと言ったら教育訓練投資をするということで、そうすると、教育訓練投資のほうも、企業からすれば、いてほしい人にはやるし、あるいは、いてほしいから、訓練機会を提供するから教育訓練はいてねと、こういう関係になってくると思うのです。
 ですので、教育訓練投資をする対象も選ばれることになっていくような気がする。この辺が両方うまく回るかどうか、それが一つ。
 もう一つは、キャリアプランと書いてあるのだけれども、多分、ライフプラン、キャリアプランに合わせていって、初めのほうにはライフプランと出ているのだけれども、多分、これからは、働く人たちがキャリアだけではなく、ライフも考えてキャリアを考える、それをどう支援するかということなので、キャリアのコンサルタントも、多分、キャリアのアドバイスだけでは駄目だと思うのです。ライフも含めると。これが2番目。
 もう一つは、情報提供なのだけれども、多分、これからは賃金だけではなく、どういうキャリアが提供されるかということなのだけれども、もう一つ大事なのは、最近言われている企業のパーパス、経営理念とか、つまり、この会社で働きたいと思うのは、この会社が目指すものにコミットできるというのがあると思うので、こういう点は、今まで、例えばハローワークをやっていた情報提供が、仕事や労働条件の情報提供ではないのですね、やはり、この会社はどういう会社なの、何を目指す会社なのということが、特に若い人も、転職する場合も、単に労働条件を見ているだけではなく、この会社が目指すものに自分をかけてみたいというのが、結構大きくなってきているのかなと。だから、職業情報なのかな、もう少し広げたほうがいいかなということです。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 要は検討する課題とか、あるいは、ここに書き込む。
○佐藤委員 だから、論点(1)の左と右が自動的にうまくいくように書いているのだけれども、やはり企業と個人の関係が変わって、企業も投資する人を選ぶ、いてほしい人に投資するということだと思うし、社員もそういうことをやってくれるところには行くわけですね。
 だから、ただ何となく人的支援投資を全部やってもらえるということもないだろうし、企業からすると、いてもらうようにどうするかというのは、結構大事ですね。企業は外も見るようになってくるので、そういう意味では、やはり賃金は大事だと思うのです。先ほど荒木さんが言ったように、転職すれば賃金が上がるのだから上げてと、そういうことを支援するということが変わってくるわけだ。企業もそれにどう対応するかということが、それが回ってくると賃金も上がってくるのではないかなという気がしますけれどもね。
○樋口座長 ありがとうございました。
 あと、全部御意見をいただけましたか。
○事務局 そうですね、今日御参加の先生には、いただきました。
○樋口座長 活発な議論をありがとうございました。
 大分宿題も出ておりますので、持ち帰って検討したいと思います。皆さんが言いたいことは、本当によく分かるので、これから事務局と折衝します。
 それでは、よろしければ、この後、田中職業安定局長もいらっしゃっておりますので、一言御挨拶をお願いいたします。
○職業安定局長 職業安定局長の田中でございます。
 本日は、大変御多忙のところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 また、委員の先生方には、引き続き、雇用政策研究会の議論に加わっていただきますことを、改めて御礼申し上げます。
 樋口先生におかれましては、引き続き、座長をお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 先ほども少しお話をさせていただきましたけれども、本研究会は昨年7月に議論の整理を取りまとめていただきまして、その内容につきましては、政策立案等に最大限活用させていただいております。
 その後、1年弱が経過しておりまして、コロナの5類への移行、それから、足元では再び激しい人手不足感が高まっております。
 また、昨年からは、世界情勢の不安定もありまして、物価高騰など、雇用に及ぼす諸要因が、さらに不確実性を増しておりますので、こういった社会経済を取り巻く環境の中で、改めて、今後の雇用政策の在り方を御議論いただければと思います。
 議題は、また、今日も御議論がありましたけれども、多様な働き方の下でのキャリア形成、ウェルビーイングの実現、そういったことを支える労働市場あるいは労働市場政策の在り方、セーフティーネットの在り方、こういったことについても、引き続き、議論を深めていただくとともに、今後の中長期にわたる雇用政策という意味では、将来の労働供給量がどうなるか、あるいはどう確保していくかということも、非常に大きなテーマであり、非常に難しい点でございますが、そこについても、ぜひそれぞれのお立場からの御議論をいただきまして、労働力需給の推計のほうにつなげていきたいと思っております。
 スケジュールといたしましては、今年度中に報告書の取りまとめをいただければありがたいと思っておりまして、その点、また、よろしくお願いいたします。
 先生方には、大変お忙しい中、お世話になりますけれども、よろしくお願いいたします。
 以上です。ありがとうございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 今日いただいたのは、非常に重い課題があったのではないかと思いますので、ぜひ検討させていただいて、次回以降につなげていきたいと思っておりますが、次回の日程等について、事務局から連絡をお願いします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。
 次回、第2回「雇用政策研究会」でございますけれども、6月27日火曜日の15時から開催を予定しております。後日、改めて御案内を送らせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 ありがとうございました。
 まさに雇用政策研究会の意義について、役割について考えさせていただきたいと思います。安定局長の参集を求められた下において開いているのですが、研究者は、やはり独立だし、研究のあるべき姿あるいは発言のあるべき姿というのは、独立自尊で行くべきだろうと思いますので、地に足のついた議論ということで、もしかしたら、先ほどの賃上げの構造的云々というのは、議論する対象から落とさせていただくというのが、もしかしたら一番賢明かもしれないと思いますので、その点も含めて議論をさせていただけたらと思います。
 どうもありがとうございました。