薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和5年度第1回運営委員会議事録

日時

令和5年6月9日(金)16:00~18:00

開催形式

Web併用

出席者

出席委員(6名):五十音順、敬称略 ◎委員長
日本血液製剤機構:敬称略
KMバイオロジクス株式会社:敬称略
武田薬品工業株式会社:敬称略
日本赤十字社:敬称略
事務局:

議題

  1. 1. 感染症定期報告について
  2. 2. 血液製剤に関する感染症報告事例等について
  3. 3. 献血血液等の研究開発等への使用に関する報告について
  4. 4.「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」の令和5年度改正に関する要望書について
  5. 5.血液法に定める「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」の5年ごとの再検討について
  6. 6.「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針(基本方針)第八に定める血液製剤代替医薬品 について」の廃止について
  7. 7.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

議事内容
○仲島血液対策課長補佐 それでは、定刻より若干早いですが、皆さんお揃いでございますので、血液事業部会令和5年度第1回運営委員会をWeb併用の形式で開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 本日は、お忙しい中御参集いただき誠にありがとうございます。このたびは、御参加いただく方の利便性等の観点から、Web併用での審議とさせていただきます。
 本日の会議における委員の出席についてですが、委員6名全員に御出席いただいていることを報告いたします。また、本日は参考人として、一般社団法人日本血液製剤機構より星山孝男代表理事常務理事、柚木幹弘研究開発本部研究開発推進部主席、KMバイオロジクス株式会社より尾本裕昭常務執行役員企画管理本部本部長、青山式孝執行役員医薬営業本部本部長、樋口浩文研究開発本部研究開発推進部部長、矢治博幸生産本部SCM部部長、武田薬品工業株式会社より、石丸洋一郎PDT R&D Japan PDT Pharmaceutical Sciences Japan Head、塩入將介希少疾患事業部血漿分画製剤領域企画渉外ヘッドに御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博経営会議委員、藤田秀行経営企画部次長、国吉紀和経営企画部事業戦略室参事、後藤直子技術部次長、川島航技術部製造管理課課長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、委員の皆様より薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には、会議の開催の都度書面を御提出いただいており御負担を掛けておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いします。タブレット上にマル1議事次第からマル16資料6までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
 本日は、Web併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法についての説明をさせていただきます。審議中に御意見、御質問されたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、委員長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上で御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたら、マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度皆様の発言を控えていただき、発言したい委員につきましてはチャットにその旨のメッセージを御記入していただくよう、事務局又は委員長からお願いする場合がございます。その場合には、記入されたメッセージに応じて委員長より発言者を御指名いただきます。
 まもなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは、以降の進行を田野﨑委員長にお願いいたします。
○田野﨑委員長 皆様、こんにちは。これまでの御説明に何か御質問、御意見ございますでしょうか。よろしければ、それでは議事に入りたいと思います。議題1「感染症定期報告について」、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○田村係員 事務局の田村でございます。まず資料1-1を御覧ください。感染症定期報告(研究報告概要一覧表)、こちらが令和4年11月から令和5年2月の受理分のデータとなります。今回は、対象の期間におきまして4つの文献報告がありまして、エムポックス(サル痘)に関する論文が2編、新型コロナウイルスに関するものが1編、そして人獣共通ウイルスとして新種のヘニパウイルスの報告が1編となっております。なお、WHOよりサル痘の名称につきましてmonkeypoxからエムポックスに変更するよう推奨され、本邦におきましても先の5月26日付けで感染症法上の規定としましてエムポックスと変更されておりますため、資料の表記も変更しております。
 それでは、それぞれの論文につきまして概要を説明します。1ページ目、一番上の論文です。エムポックスに関しまして、2022年5月17日から7月22日までの期間に、米国43州及びプエルトリコ、コロンビア地区で報告されたエムポックス患者につきまして、CDCに提出されました1,195例の症例報告を解析した結果となります。感染者のステータスのほか、地域感染の状況及び人種差の経時的な変化など疫学的な解析を示し、臨床症状につきましても、発症における特徴を示しております。
 1ページ目、2番目の文献もエムポックスについてとなっております。WHOのIHR(国際保健規則)緊急委員会におきまして、2022年7月の会合で、エムポックスの世界的な複数国での感染状況につきまして、WHO事務局長が公衆衛生上の緊急事態に相当すると判断し、暫定的な勧告を公表しております。
 2ページ目、3番目の論文ですが、新型コロナウイルスに関する文献となっております。コロナ感染者における供血者の血漿を調べたものです。感染報告のあった供血者2,250名の血漿サンプルについて、コロナウイルスRNAを検査し、ウイルス感受性の細胞株、マウスを用いた評価を行った結果、RNA血症供血者の血漿から感染性のウイルスは検出されませんでした。したがいまして、RNA血症の感染者から検出される血中ウイルスの感染性は低く、よって、輸血によるコロナウイルス感染は極めて起こりにくいということが明らかにされております。
 最後に、4番目の論文となります。中国において発熱患者から発見された新種の人獣共通ヘニパウイルスというものに関する報告となっております。感染者及び家畜動物、野生動物を調査した結果としまして、トガリネズミが自然宿主である可能性が示されております。
 以上、御説明しました論文につきましては、資料1-2に本文が載っておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、資料1-1の3ページ目からになります。感染症定期報告(個別症例の報告概要)、外国症例報告一覧が載っております。こちらも、期間としては令和4年11月から令和5年2月の受理分となっております。
 4ページ目から表が幾つか載っておりますが、附則番号の3、4として同一者における報告が1名ありまして、計6名となっております。詳細な説明に関しましては割愛いたします。事務局からの説明は以上となります。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ただいまの説明について、水上委員から追加で御発言があればよろしくお願いいたします。
○水上委員 よろしくお願いいたします。感染研の水上です。本日は、文献1、2、3のエムポックスとSARS-CoV-2についてコメントさせていただきたいと思います。文献1は、2022年5月17日から7月22日までに米国43州、プエルトリコ、DCから報告されたエムポックス患者2,891例のうち、症例報告書が提出された1,195例の解析結果報告となっております。エムポックス患者の99%が男性で、年齢中央値が35歳、94%が発症前3週間に男性間での性的な接触がありました。
 初発症状としましては、発疹が100%、発熱が63%、悪寒が59%、そしてリンパ節腫脹が59%で認められました。初発症状に関しましては、58%の症例で少なくとも1つ以上の前駆症状が認められたものの、42%の方は前駆症状がございませんでした。41%の方がHIVにも感染し、8%の方が入院、この報告時点では死亡者はおりませんでした。CDCの2023年5月10日付けの最新の報告によりますと、米国では3万395名の感染報告があり、42名が死亡しております。米国では感染が大幅に減少しましたが、低レベルで継続して発生しております。患者の臨床症状には変化は特にございません。
 続きまして、文献2です。こちらは2022年7月21日に開催された国際保健規則(IHR)の緊急委員会の第2回会合の結果を勘案し、複数国でのエムポックスの発生が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態、いわゆるPHEICに相当するとWHO事務局長が判断し、さらに加盟国の疫学的状況や伝播パターン、処理能力に基づき1から4のグループに分けて、それぞれ暫定的な勧告を示したものであります。WHOの5月11日付けのExternal situation report ♯22によりますと、世界的に感染者数は微増しており、多くは米州地域と韓国、中国、日本などを含む西太平洋地域からの報告が特に増加しているという報告になっております。感染者の96.2%が男性で、年齢の中央値が34歳、症例の84.1%が男性間性交者、MSMの方であり、基本的な疾患情報は先ほどと変わっておりません。世界で約8万7,377例以上の症例が報告がされておりまして、死亡例として140例が報告されております。
 2023年6月2日現在、日本国内においては169例が確認されており、当初は海外渡航歴や海外渡航歴のある方との接触が確認されておりましたが、2022年38週以降は海外渡航歴のない症例が主となっております。血液サンプルからのウイルスDNAの検出の報告はございますが、現時点で輸血による感染例は報告されておりません。2023年2月にTransfusion誌に報告された英国南部で2022年8月19日から24日の間に採血された合計1万896の献血サンプルを、545のミニプール血漿としてエムポックスウイルスの陽性頻度を評価した論文報告でも、ウイルスDNAは検出されておらず、英国での献血制限が有効であることを示しております。本邦でも、2022年7月29日付けの薬生発0729第1号で、エムポックス患者等からの採血制限の対策が公示されており、現時点では対応に問題ないといえます。
 なお、WHO事務局長は2023年5月11日、国際保健規則緊急委員の大委員会の第5回会合を受けて、直近3か月の感染者数が大幅に減少していることや、症状の重症度、臨床症状に変化がないこと等を鑑み、緊急事態宣言による対応よりは、エムポックスに提起された公衆衛生リスクを管理する長期戦略に移行するほうが望ましいと考え、この緊急事態の終了を宣言しております。
 また、ワクチンについてですが、痘瘡ワクチンであるLC16ワクチンのエムポックスへの適用追加が2022年8月2日に日本では承認されておりますが、国内では一般の医療施設等での予防接種は、まだ実施されておりません。エムポックスの患者への治療薬の投与、接触者へのワクチン接種に関する臨床研究、いわゆる「エムポックス予防における痘瘡ワクチンの有効性及び安全性を検討する観察研究」に参加することで接種することが可能で、患者又は接種者が本臨床試験の要件に合致し、当該者がこの臨床研究に関する説明を受けて合意した場合に、この臨床研究に参加し、ワクチンを接種することができます。
 続きまして、文献3、新型コロナウイルスになります。文献3は、米国において献血後にCOVID-19症状が発症した人や、COVID-19と診断された人の情報に基づき、2,250名の血漿検体のRNAを検査し、特に血中ウイルス量の高かった検体を用いてレセプター遺伝子を導入した高感受性細胞を用いてウイルス分離を試みたが、結論的には全く分離されなかったという研究報告であります。現在までに輸血による感染例の報告は世界で1例もなく、Vero細胞等を用いたウイルス分離の報告もございません。今回、例数は少ないものの、高感受性細胞を用いても分離できなかったことから、SARS-CoV-2の輸血感染の可能性は極めて低いことが実験的にも立証されたと考えます。コメントは以上となります。
○田野﨑委員長 詳細な御説明をどうもありがとうございました。ほかの委員の先生方から、何か御質問、御意見などございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。4か月間で4報ということになります。どうもありがとうございます。今までのところは、エムポックス、COVID-19の両方とも輸血での感染症なしというところではございますが、引き続き注視していただきたいと思います。事務局におかれましては、今後とも感染症定期報告について、よろしくお願いいたします。
 次に議題2「血液製剤に関する感染症報告事例等について」に移りたいと思います。事務局より資料の説明をお願いいたします。
○田村係員 事務局です。それでは、資料2-1を御覧ください。血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等についてでございます。資料2-1の1ページ目、令和4年11月から令和5年2月の期間の感染症報告をまとめております。感染症報告としまして、輸血用血液製剤が16件、血漿分画製剤が3件でございました。そのうち、輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告が1件、血漿分画製剤との因果関係が否定された報告は0件でした。輸血用血液製剤による病原体感染症報告事例の内訳としまして、HBVが2件、HCVが0件、HIVも0件、その他としまして13件が細菌等の感染報告となっております。
 まとめの2番目の項目からは、それぞれのウイルスについての紹介を示しております。HBVのうち輸血後に抗体検査等が陽性であった事例が2件、そのうち献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例は0件、また、劇症化又は輸血後に死亡したとの報告を受けた事例は0件でございました。HCV及びHIVは0件でしたので割愛いたします。その他の感染症報告事例でございますが、B型肝炎及びC型肝炎以外の肝炎ウイルスの感染報告事例につきましても0件でございました。一方、細菌等感染報告事例におきまして、輸血血液の使用済みバッグを用いた無菌試験が陽性だった事例が4件報告されております。このうち、輸血後に死亡したとの報告を受けた事例が2件ございます。
 感染症報告一覧につきましては、この後の2~6ページにまとめておりますが、細菌感染による死亡事例をお示しいたしますので、資料2ページ目を御覧ください。
 1例ですけれども、令和4年11月に発生した死亡事例となっております。2ページ目の一覧の後半からが細菌感染の報告例ですが、この細菌感染報告の上から2番目の症例が該当いたします。こちらですけれども、昨年度の2月の血液事業部会において報告をしておりまして、使用時の安全確保措置の周知徹底を通知として発出し、対応したところでございます。
 2つ目の事例ですけれども、令和5年2月に発生した死亡事例となっております。4ページ目に2例お示ししておりますが、上段の症例が該当いたします。こちらですけれども、黄色ブドウ球菌による敗血症を来し死亡に至っております。調査の結果としまして、供血者の鼻腔から細菌が検出され、製剤からも認められております。一方で、輸血前の患者からも同一株の菌が検出されておりまして、病院側の見解としましては細菌感染と輸血製剤の因果関係はあるとされております。こちらの事例につきましては、後ほど日本赤十字社より補足の説明がございます。
 続いて1つ飛ばしますが、資料2-3を御覧いただきます。こちらは、供血者からの遡及調査の進捗状況等についてです。
 1ページ目ですけれども、供血者からの遡及調査の実施状況の表となっております。こちらは、令和4年度の第4回の運営委員会における報告から様式を踏襲しておりまして、HBV、HCV、HIVと並び、同じ表の中にHEVも含めた報告となっております。表の一番右のカラムですけれども、令和4年度、令和4年4月1日から令和5年3月31日までの速報値となっております。調査対象としました献血件数は、HBVが1,497、HCVが217、HIVが17、HEVは5,707でした。そのうち、調査対象としました輸血用血液製剤の本数や医療機関に情報提供を行った輸血用血液製剤の本数については、表に記載のとおりの数字となっております。また、このうち医薬品副作用感染症報告を行った件数は、いずれも0件でございます。今回は2番目と3番目の表につきましても全て0件となってございますので、詳細な説明は割愛いたします。
 続いて、資料2-3の2ページ目となりますが、医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況となっております。こちらは全て個別に羅列しておりますが、全部で279本を計上しております。個別の例につきましては、詳細な説明は割愛いたします。事務局からは以上となります。資料2-1につきまして、日本赤十字社から資料2-2に沿って補足説明がございますので、続けてお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 それでは、黄色ブドウ球菌による細菌感染の死亡事例について、日赤の後藤から御説明いたします。
 資料2-2を御覧ください。まず最初に、1番として本事例の報告があった経緯です。令和5年2月17日に、医療機関から血小板製剤及び赤血球製剤による副作用が疑われる症例が報告されましたが、令和5年2月20日に、患者血液培養の結果、Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌が検出され、血小板製剤による細菌感染が疑われること、また、患者が死亡されたことが報告されました。
 続いて、2番の事例の紹介です。患者は60代の男性で、骨髄異形成症候群、膜性腎症の方でした。経過は、投与日にPC-HLAの輸血開始前に尿定性・沈渣・培養を実施し、併せて患者血液培養の検体を採取し、培養を実施しました。PC-HLAの輸血終了直後に悪寒と倦怠感があり、その後、赤血球輸血を開始したところ、意識レベル低下と発熱があり、赤血球輸血を中止しました。低血圧に対してノルアドレナリンを開始し、脈拍は200回で心房細動がありました。患者血液培養の検体を採取して培養を実施、また、メロペネムが投与されました。合成バソプレシン、ノルアドレナリン、ドブタミン塩酸塩を併用するも血圧は保てず、アドレナリンを筋肉内注射するも徐々に循環不全が進行しました。その日の午後に、院内で実施していた投与前の尿培養から大腸菌を検出していたということです。
 投与の1日後にバンコマイシン塩酸塩が投与されましたが、2日後に敗血症性ショックにて患者さんは死亡となりました。剖検は実施されず、副作用と死亡との関連は不明と医療機関から報告を頂いております。
 投与後3日目に院内で実施した輸血前後の患者血培から、いずれもS.aureus(MSSA)が同定されております。
 3番の製剤や検査の状況です。まず、輸血された血小板製剤についてです。血小板製剤は、採血3日目に医療機関に供給され、4日目に輸血されました。使用済みの血小板製剤の空バッグは調査用検体として確保しました。当該製剤と同一供血者から製造された1本の原料血漿も確保しました。当該製剤の製造記録には異常は認められませんでした。血液製剤供給部門から医療機関へ出庫する際の外観には異常はありませんでした。なお、医療機関での輸血前の外観に異常は認められなかったとのことでした。
 検体検査等の結果です。当該血小板製剤の試験結果は、細菌分離・同定試験が陽性でS.aureusが同定されました。こちらは東京都健康安全研究センターで実施いただきました。当該血小板製剤から検出された菌株と患者の輸血前、輸血後の血培で検出された菌株の相同性については、パルスフィールドゲル電気泳動法による遺伝子検査を行い、いずれも差異を認めなかった、つまり一致しておりました。こちらはSRLとLSIメディエンスの2か所で実施いただきました。また、同一採血番号の原料血漿の試験結果は、無菌試験で適合であり、細菌は検出されませんでした。
 供血者の状況です。この方は供血歴470回台の複数回献血者であり、当該供血以降は供血はありませんでした。この方が令和4年以降に供血した血液による輸血の副作用や感染症は報告されておらず、この供血者由来のほかの製剤の回収や調査は実施していません。当該供血の3週間後に、調査用の検体の採取、血液検体の採取、それからスワブの採取と当該献血時の体調についてインタビューを行いました。調査用検体の全血の無菌試験の結果は適合で、細菌は検出されませんでした。また、参考として実施した鼻腔のスワブ検体に関する日赤内部で実施した調査結果は、スワブ検体の培養試験にてS.aureusを検出し、この血小板製剤から検出された菌株とのパルスフィールドゲル電気泳動法による遺伝子検査にて一致が認められました。
 4番目、受血者の担当医の見解です。「副作用・感染症と輸血用血液との因果関係はあると考える。一部、検査結果の齟齬はあるが」、こちらは輸血前の患者血培からも同じ菌が検出されたことを指していると推測されますが、「全体として、輸血製剤由来の菌による敗血症として矛盾しない」と報告を頂きました。
 今後の対応です。日本赤十字社では血小板製剤の細菌スクリーニング導入に向けて、引き続き準備を進めています。有効期間を延長するための承認申請資料の作成と確認を進めていたところ、申請データに不備が判明したため、現在は再試験を実施しています。これは、品質などのデータそのものには問題はないのですが、書類上の不備等を指しています。そのため、スクリーニング済み血小板製剤の供給開始時期が、当初計画の2025年1月から最大6か月程度遅延する可能性がありますが、日本赤十字社としては、輸血後細菌感染症の事例が発生していることを重く受け止めており、厚生労働省やPMDAに相談し、できるだけ早く細菌スクリーニングを導入できるよう最大限努力してまいります。私からの説明は以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。昨年11月からの4か月間で、血小板製剤に関しては4例で感染が疑われていて、2例の死亡例ということですが、委員の皆様から、御意見や御質問などお願いいたします。
 では、最初に私から、資料2-2の事例ですが、この患者さんでは血液培養の検体から出ているわけですけれども、輸血の前にこの検査をしていて、それとも一致しているということ、それから、なぜこの輸血をする前に血液培養をこの患者さんは取っていたのかというようなことについて、何か情報があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 日赤の佐竹です。お答えいたします。それについては、我々のほうは全く手掛かりはございません。なぜ輸血前に培養をしたのか、後で尿培養でE.coliが出ていたということがあるのですけれども、やはり何らかの重篤な状況があったのではないかということが推察されるのですが、ただ、我々としては何の情報もございません。それから、その輸血前の血液検体からも全く同じものが出ていると、これは説明のしようがございません。主治医の先生方もこのデータを見て非常に驚いたということで、我々もこれについても何の説明もできません。しかも、これはパルスフィールドでやっていますが、もう1つ、MLST(Multi locus sequencing typing)で見ても、輸血前、輸血後、製剤中、それから3週間もたってから取ったドナーの鼻腔のS.aureus、これも全部完全一致しているのですよね。そのシークエンス、大体8つぐらいの場所だと思いますが、それも一致しているということで、これも非常に説明ができない状況であります。それ以上のことは分かりません。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ちなみに、これはすごく変異しにくいようなもので、一致したなら、ほかの方から取った場合には、ほぼ必ずこの検査法で違いが分かるというものなのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 それについても、例えばパルスフィールド、これは古典的な方法ではあるのですが、それを非常に長くやっていて経験のある先生にもお伺いしたのですけれども、やはりパルスフィールドの感度はそれほど高いわけではないのですが、ただ、S.aureusというようにターゲットを決めて、エンザイムを選んでやる分には、他人の空似みたいなことはまずないという見解を頂いております。一層よく分かりません。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかに、どなたかいかがでしょうか。濵口委員、お願いします。
○濵口委員 血小板で細菌感染が起こるというのは皆さんも認識されているのでしょうけれども、13件もの報告が、3か月の間になされたというようなことが、これまでもあったのかどうかということを教えていただければと思います。というのは、私の記憶では、3か月の間に輸血による感染が起こってくるというのは、非常にまれではないのかなという印象です。
 それから、先ほど日本赤十字社のほうから、対策としてスクリーニングをやるということだったのですが、仮にスクリーニングが入っていたとしたら、どのくらい今回の感染事例を防げるでしょうか。果たして、スクリーニングだけで十分かどうかということも含めて、日本赤十字社の御見解を聞きたいと思います。よろしくお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 日赤の佐竹です。お答えいたします。まず、この頻度については、これほど短期間の間にこの例数が上がってくるのは、今までよりは随分多くなったのは確かでございます。その上がってくる中身を見ると、今回、赤血球による例が今までよりも多くなっているところは少し認められるかと思います。それを含めて、最近のいろいろな国からの、あるいは我々のほうからの輸血による細菌感染の注意喚起といったものが、多くの報告を疑い報告として上げてきているといった可能性は1つはあるかと思います。
 もう1つは、上げてくる例が、疑って上げてきたという例ももちろんありますが、疑われるのだけれども、その確認のためといいますか、否定してもらうために我々に報告が上がってきて、それが入っていることも事実ですので、医療機関のほうでは既に否定されているけれども、こちらにもう一度製剤のほうを見てほしいという例も含まれていることも確かです。ですので、その辺を含めて増えてきているということはあるかと思います。我々のほうとしては、製剤そのものの汚染が増えたという認識ではございません。
 それから、この培養法を入れることによって、どれくらい感染例が減るのかという推測ですが、一般的には、前にもお伝えしておりますが、いかにも培養法を入れると全ての汚染が検出できるというようなイメージを持たれるかもしれませんが、そういうわけではございません。実際の頻度としては、通常の培養法を入れたアメリカ、カナダといった国での細菌感染例というものは、大体100万件に10件前後の輸血後の敗血症の症例というのが起きています。日本の場合は培養していませんけれども、有効期間を非常に短くしていることによって、100万件当たり大体1.5~1.8件ぐらいの頻度でございました。ですので、我々としては、そちらのほうがいいのではないかということでやってまいりましたが、イギリスからの新たな培養法、つまり培養のサンプルを取るまでの期間を十分長く取って、サンプリングエラーがないようにする方法を入れることによって、汚染例を少なくすることができるという報告がなされました。これが2017年のことですが、それが日本での汚染例よりも少ないデータが出た初めての報告となります。
 ですので、それを我々のほうで検討する方法があるのだろうということで培養法を選んだわけですが、これまで有効だったと思われる有効期限を短くすることに加えて、培養法を入れるのではなくて、有効期限を短くすることをやめて培養法を入れるということですので、かなり僅かな差なわけですし、これまでの方法を全く変えるので、我々としてはイギリスのデータを信じて、少なくてもデータとして出ているその方法を導入していこうということでやっておりますので、確かに濵口先生がおっしゃるように、本当に数値として、これが今までよりもいい臨床結果を生むかどうかというところは、我々としても実際に見てみないと分りませんけれども、ただ、これまでに出ているデータとしては、そういうデータが出ていますので、その方向にいくしかないというように考えたということです。また、同じような考えはアメリカ、カナダ、オーストラリアもしていて、今までの培養法を変えてイギリス方式の新しい培養法を導入するということは、多くの先進国がそのようにしてきております。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。松下委員、お願いします。
○松下委員 松下です。今回、ドナーの方の鼻腔スワブを取られているのですが、それはドナーの方に副鼻腔炎の症状があったからということではなくて、ということですか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 全然、そういうことはございません。
○松下委員 MSSAなので、鼻腔常在菌だからということで御協力いただけたということですね。鼻腔常在菌が血液の中に出現することがあるのかどうかということで、歯科治療の直後は献血しないでくださいというのがあるのですが、その辺り、何か知見はあるのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 鼻腔にS.aureusを持っていた場合に、それが採血血液の中に混入する経路としては2つ考えられまして、世界的にも、そこはレポートがあって証明されたということはございません。1つは、その人が生活している中で、鼻腔からのS.aureusが肘の所に付着して、それが皮膚消毒剤でも十分に消毒されずに、穿刺のときに皮膚から入るというのが1つの経路です。もう1つが、鼻腔から血中のほうへ入って、バクテレミアになっているところにたまたま採血をされたというものがございます。一般的には前者のほうを考えることが多いかと思いますが、ただ、データとしては、ドイツのほうから鼻腔にS.aureusを持っている入院患者を長期フォローしていって、その後敗血症になった人の血中のS.aureusを見ると、鼻腔にあったものとシークエンスが一致したということで、そういった集団では、これは輸血とも何とも関係のない患者のフォローアップのデータですが、鼻腔のほうから血中へS.aureusが入るということもあるということを示したペーパーですので、そういったことも可能性としては十分あるだろうと思われます。
 特にS.aureusの場合は、もう1つはアトピー性皮膚炎の方でして、この方は肘や何かに病巣を持っている方が多いのです。そういう方が、やはり鼻腔から肘の所にコロナイズする。アトピー性皮膚炎の方の皮膚の消毒は、菌を完全に死滅させることが非常に難しい皮膚の状態になっていますので、そういったところから採血するということも1つのリスクになるかとは思います。以上です。
○松下委員 アトピー性皮膚炎の方が問診の所にそういう病気がありますということに丸を付けて申告された方は、検診医は一応肘を見せていただくわけなのですが、何も知らないと献血の所まで行ってしまうという、今は検査採血は指なので、最後まで行ってしまうということもあるのではないかと思うのですが、問診で何か追加するとか、その辺りはどうなのですかね。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 そのことは、日赤の内部でも非常にしょっちゅう議論になるところです。世界の中でアトピー性皮膚炎の方を問診で排除といいますか、気にするということを積極的に取っている国はノルウェーがその可能性があります。ただ、非常に問題なのは、何と言いましょうか、差別的なことが起きる可能性が非常にありますので、アトピーの方というのは、何らかの、この場で言うのもなんですが、インフェリオリティーを持っている可能性があって、そこに、こういう理由で献血ができませんと言うことはなかなか難しいという状態がございますので、我々としてできることは、アトピー性皮膚炎の申告があって、現在の肘窩の皮膚の状態に問題がなければ、現在はアトピー性皮膚炎だというだけで採血をやめるということは今のところは行っていません。ノルウェーも、実際にそうしているのかどうかということは随分調べたのですが、そのことを言っているだけで、どういう方法を取っているかは、調べがつかない状況です。以上です。
○田野﨑委員長 このドナーの方はアトピーとは関係がないということでよろしかったでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 この方は、インタビューのときには特に何も問題はなかったということです。
○田野﨑委員長 ほかに、追加質問や御意見はいかがでしょうか。私からもう1つ、今回は血小板で亡くなられた方が2名いらっしゃるのですが、同じように、Morganella morganiiの亡くなられた方のもう片方の製剤で輸血を受けた方は亡くなっていないのですよね。あと、同じ時期にS.aureusが出た方がもう1例いて、亡くなっていないので、私たちは余り認識はしていなかったようなところがあるのですが、これはたまたま亡くなる方と亡くならなかった方で分かれたわけなので、そういう意味では、少しこういうインフォメーションを私たちのほうに、より注意喚起をしていただけるほうがいいのかもしれないなと。何がこれで亡くなったか亡くなっていないかが分かれたかというと、多分、亡くなっていない方は途中で気が付いて、それで止まっているケースもあれば、亡くなった方は次の製剤がもう入っていたりとかというのがあるので、患者さんの重症度や状況にもよるとは思うのですが、医療機関の医者側が早くこういうところに非常に注意を払って、少しでもおかしかったら途中でやめて、次の治療に入らないで、まずそれに対応できないかどうか検討するというのも非常に重要なのではないかと思いました。
 あと、今回報告が増えているというのは、そういう意味で医療機関のドクターの意識が高まりつつあるということの反映であるということかもしれないのですが、更にこういうのを進めていってもいいのかなと思いました。これに関してはいかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹経営会議委員 全くおっしゃるとおりです。1つ、S.aureusの例については、もちろん死亡例ではありませんが、一方の患者では症状が出たけれども、もう一方の患者では症状が全く出ていないのです。症状が出ないだけではなくて、そちらの製剤は培養でも全く陰性に出ているので、これは要するに、混入したときの細菌の濃度が極めて低かったことが確実にその理由かと思います。非常に極端な話ですが、血液バッグに1個のバクテリアが入った場合には、それを二分すれば、片方には入って、片方には入らないということになりますので、濃度の低い場合はポアソン分布でそういう偏りが出ますので、そういう意味では、そのような違いが出た場合には、通常は混入の初期の細菌濃度は極めて低かったということが大きな理由かと思われます。
 あとは患者さんの状態、特にS.aureusの場合には、患者さんの白血球数がかなりその後の臨床症状には大きな影響を与えるのではないかというように考えます。御存じのように、S.aureusはもともと黄色ブドウ球菌ですので、白血球で膿瘍というか局所化できるところですが、その白血球がないと、やはり全身的な状況になりやすいということはあるかと思います。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか、どうもありがとうございました。事務局においても、今後とも、感染者症例遡及調査の結果の報告などを引き続きお願いしたいと思います。
 続いて、議題3「献血血液等の研究開発等への使用に関する報告について」に移ります。事務局より、資料の説明をお願いします。
○田村係員 事務局でございます。議題3です。資料3-1及び資料3-2をお手元に用意いただければと思います。資料3-1のほうをメインとして御説明させていただきます。こちらは、献血血液の研究開発等への使用に関する報告の概要となっています。
 まず、1の報告の趣旨ですが、令和2年8月26日付けで発出されております厚生労働省医薬・生活衛生局血液対策課長通知におきまして、「採血事業者又は血液製剤の製造販売業者は、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を使用し、又は提供した量、その使用目的等の使用状況について、年度毎に血液事業部会運営委員会に報告するものとする。」とされております。当該の通知に基づき、各企業の方々からは、提供状況についての御報告を、年に1回こちらの運営委員会に提示していただいております。
 それでは、各企業の提供状況について御説明いたします。今回、御報告させていただく提供期間は、令和4年4月1日から令和5年3月31日までのものとなっています。こちらの4社の提供件数の合計は442件となっています。内訳としましては、新規が40件、継続が402件でした。
 各社の内訳について御説明いたします。まず、日本赤十字社が合計として424件、このうち新規が27件、継続が397件の報告となっております。外部と内部の内訳ですが、外部が243件、内部が181件となっております。新規の27件につきましては全て外部のものになっております。
 続いて、KMバイオロジクス株式会社ですが、全て新規の3件でして、外部、内部の内訳としまして、外部が1件、内部が2件となっております。
 続きまして、日本血液製剤機構ですが、合計としましては10件の提供となっております。内訳としましては、新規が6件、継続が4件となっております。内部と外部の内訳としましては、外部が6件、内部が4件となっており、新規の6件につきましては、外部が5件、内部が1件となっております。
 最後に武田薬品工業株式会社につきまして、今回は合計5件の提供となっております。内訳としまして、新規が4件、継続が1件となっております。内部と外部の内訳としましては、外部が4件、内部が1件となっておりまして、新規の4件につきましては、全て外部のものとなっております。詳細な個別の一覧につきましては、続く資料3-2にまとめております。こちらのほうを御覧いただければと存じます。事務局からの御説明は以上となります。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。委員の皆様から、御意見、御質問等いかがでしょうか。こちらは、だんだん増えているかのようでもあるのですが、少し気になったのが、例えば受付番号4番、あるいは32番のような事例は企業の方からの要望でありまして、その必要量が、例えば4番目ですと183万4,000Lという、かなり大量の血液の検体などが必要であるということになっていて、対応できているということでよろしかったかと思いますが、この状況がどんどん増えてくるといかがなものかと思いましたが、日赤の方からは何かこちらに関しては問題ないでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部川島技術部製造管理課課長 日赤の川島から回答いたします。毎年、公募をしておりますが、その際に提供可能な使用量、提供可能な量というものを設定させていただいて、それ以上の提供量になった場合は、こういった申請者の皆様方に相談させていただいて、提供量の調整を図ったりとかということで、対応させていただいているといった状況になりますので、現在のところはそういった状況ではありませんが、今後そういったことが発生した場合は、随時対応を図ってコントロールしていくということになるかと思います。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。有効利用という意味ではいいのかと思います。ほかにいかがでしょうか。そうしましたら、事務局におきましても、今後とも献血血液等の使用状況に関して御報告をお願いしたいと思います。
 それでは、次の議題4「「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」の令和5年度改正に関する要望書について」に移りたいと思います。まずは資料4-1、4-2について、参考人からの説明をお願いしたいと思います。
○日本血液製剤機構星山参考人 日本血液製剤機構の星山と申します。本日は、貴重なお時間を賜りまして誠にありがとうございます。本日は、まず4-1でお示ししていますように、3社の検討会を代表しまして、こちらの「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保に関する基本的な方針」の令和5年度改正に関して、要望書を3社検討会の中から出させていただきました。詳細につきましては、資料4-2をもって御説明したいと思いますので、そちらを御覧いただければと思います。
 本日は、血漿分画製剤事業の事業環境の御説明及び国内分画事業者からの血液法基本方針改正に向けた要望事項ということで、お話をさせていただければと思います。まず、前半は、血漿分画製剤事業を取り巻く事業環境について、3社を代表して、私、星山から、そして今回の血液法基本方針改正に向けた要望事項の中で、輸出に向けた取組がメインになりますが、こちらに関しては、武田薬品工業の塩入さんから説明を頂くという流れになっております。何とぞよろしくお願いいたします。
 まず、資料の2ページ目です。血漿分画製剤の特徴についてです。1.血漿分画製剤はヒト血漿から製造される医療用医薬品であり、下記のような特徴があります。まず、ヒトの血漿中のタンパク質を抽出・精製したものであり、アルコール分画により抽出されます。そして、製造量の最も多い分画製剤の製造に必要とする原料血漿量が配分されますと、一連の製造工程が進む中で、未利用分の画分が生じることになります。いわゆる連産品ということです。そして、原料となるヒトの血漿(原料血漿)から複数の製剤が製造されることから、特定の製剤の収益性だけでなく、血漿分画製剤全体における収益性が事業の安定性の面で極めて重要となってきます。そして万一、ウイルス等が混入した場合、多数の患者さんが感染するおそれがありますが、最先端のウイルス除去・不活化処理工程が導入され、製剤の安全性は飛躍的に高まっております。また、輸血用血液製剤とは異なり、複数製剤の競争環境にさらされることで経年的に薬価が下がってきたという歴史があります。そして、ヒトの血漿から製造される製剤であることから、画期的な新薬の開発の可能性がほとんどないという状況になっております。
 3ページ目、血漿分画製剤の医療上の必要性についてです。血漿分画製剤には、主に免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤、血液凝固因子製剤等があります。そして、承認から数十年以上経過している製剤が複数存在し、代替のない製剤もあることから、医療上必須の医薬品として安定供給の確保が強く求められております。厚生労働省医政局が実施しております「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」が取りまとめました安定確保法医薬品として、当初複数の血漿分画製剤が候補として挙げられておりました。
 しかしながら、血液製剤は一般の医薬品とは生産や流通などの性質が異なっており、また、需給や流通、情報不足に対する取組が適切に行われていることから、取組の重複を避ける等の観点で、安定確保医薬品の対象外とされたという経緯があります。こちらにお示ししたのは代表的な血漿分画製剤です。その血漿分画製剤が治療上の中心となっている対象疾患を、こちらで一例としてお示ししました。
 4ページ目、血液法基本方針の改正に当たる要望についてです。まず、血漿分画製剤は、医療上の必要性が高い製剤である一方、「供給のあり方検討会」で指摘されたような、血漿分画製剤事業特有の特徴や課題があり、各分画事業者それぞれが課題対応の検討・実行を行ってきたという歴史があります。そうした中、事業者間で連携すべき事項等について検討を対応すべく、武田薬品工業、KMバイオロジクス、日本血液製剤機構(以下、国内分画事業者という)は、「血漿分画製剤の安定供給の推進のための業務提携の在り方検討会」(以下、3社検討会という)を設置し、事業上の課題への対応や提携の可能性について議論・検討を行ってきました。
 そして、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(以下、血液法という)に基づく「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」(以下、基本方針という)の令和5年度の改正を控えている今、私どもとしてこういった要望を挙げさせていただきたいと思っております。今般、基本方針の改正に当たり、血漿分画製剤事業の特徴・課題を整備しつつ、血漿分画製剤の輸出に関する要望事項を3社検討会として取りまとめて提出をしました。
 次は、血漿分画製剤の連産構造と献血血液の有効活用ということでお話をします。6ページ目、血漿分画製剤の連産構造についてです。血漿分画製剤は、原料血漿から特定のタンパク質を分離・抽出して製造されます。そして、同じ原料血漿から複数の製剤の中間原料が得られております。以下、このような特性を連産構造と呼称いたします。また一方で、血液凝固第Ⅷ因子製剤の中間原料(クリオプレシピテート)は凝固用の原料血漿からのみ得られるものですので、一般の分画用の原料血漿とは少し違った位置付けになっています。そうした中で、図でお示ししていますとおり、凝固用の原料血漿からクリオプレシピテートを抽出・産出しまして、これを基に血液凝固第Ⅷ因子製剤が作られております。一番右端に、原料血漿1Lから得られます中間原料からどれぐらいの単位、あるいは本数の血漿分画製剤が作れるかというのを示しております。そして、クリオプレシピテートを取り除いた凝固用の原料血漿並びにその他の分画用の原料血漿、これらから免疫グロブリン製剤やアルブミン製剤、あるいはアンチトロンビン製剤といった各種の血漿分画製剤の中間原料が産出され、最終的に免疫グロブリン製剤等の各製剤が製造されるという形になっております。
 7ページ目、血漿分画製剤の連産構造についてです。製剤の製造過程で各中間原料が産出される一方で、製剤により国内の需要量が異なることから、最も需要の多い製剤以外の中間原料は余剰が生じる構図となっております。現在は、免疫グロブリン製剤見合いで、年間約120万Lの原料血漿の配分を受けております。一方、血液凝固第Ⅷ因子製剤は、必要分だけの凝固用原料血漿の配分を頂戴していますので、中間原料に余剰は生じておりません。
 例として、原料血漿120万Lを頂戴しております。こちらから得られます免疫グロブリン製剤の中間原料は、約2.5g換算で216万本の免疫グロブリン製剤の量に当たります。こちらは、ほぼ同数が市場に供給されているということです。一方で、この原料の血漿量からは、アルブミン製剤に関しては、240万本に当たる中間原料が産出されております。しかし一方で、市場に供給しているアルブミン製剤は約143万本ということで、発生する余剰は約97万本になります。また、アンチトロンビンⅢに関しては、中間原料として約108万本に相当する中間原料が得られることになっておりますが、実際に今、市場に供給しておりますアンチトロンビンⅢ製剤は約27万本ということで、約81万本の余剰が発生しているということです。
 8ページ目、献血血液の有効活用と他国の医療需要への貢献ということです。1つ目ですが、連産構造上、国内市場の需要に限定すると必然的に余剰が発生してしまいます。「供給のあり方検討会」において、海外分画事業者は、「製品は国境を超えて供給され、連産ギャップの調整を世界規模で行うことが可能」であることが指摘されております。また、国内分画事業者も同様に、国内需要に限定せず、海外需要も含めてバランスよく製剤を供給できれば、善意の献血から得られた血液を最大限有効活用できるのではないかと考えられております。
 また、2つ目としまして、海外においては、採血を含めた血液事業の環境が整っておらず、医療需要を満たすだけの血漿分画製剤を供給できていない国があることが想定されております。血漿分画製剤の輸出を柔軟に検討・実施できる体制を整えることで、そうした国の医療需要や貢献ができるのではないかと考えているところです。
 次は、血漿分画製剤の事業基盤の強化の必要性に触れたいと思います。10ページ目、血漿分画製剤事業の採算性についてです。まず、1つ目として、血漿分画製剤事業は下記のような採算性上の課題を抱えております。マル1、薬価改定を受け続けることによる収益性の悪化ということです。複数製剤の競争環境にさらされ、総値引率を用いた価格交渉などを受けてきた背景から、経年的に薬価が下がってきた、下がり続けたという歴史があります。この薬価下落への対処に関しては、血漿分画製剤の価値に見合った取引の推進を目的として、血漿分画製剤の取引の適正化について、2018年(平成30年)に、厚生労働省医薬・生活衛生局長より、その通知文を発出していただいています。こういった御配慮によりまして、現在は、複数製剤がなんとか基礎的医薬品に指定され、薬価が維持されるという状態になってきております。
 また、マル2として、ヒトの血漿から製造される製剤であることから、画期的な新薬の開発の可能性はほとんどありません。一般の医薬品のように、新薬の上市、特許期間中の投資回収、別の新薬の開発、また、特許が切れて後発品を上市していくという、こういうことを繰り返すライフサイクルマネジメントが機能しておりません。
 そして、マル3として、無償の献血であるために、好立地の採血所の開設や普及啓発に相当な経費が必要となってきます。事業者によるコスト構造の内訳は異なりますが、原価率が高いことは共通しているところです。また、同じ原料血漿から複数の製剤が得られる連産構造上、特定の製剤のみの採算性ではなく、事業全体の採算性向上、事業基盤の強化が求められているというのが現状です。
 11ページ目ですが、御参考までに、免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤に関して、初発薬価に対して、2023年度で薬価がどれぐらい下落しているのかということをお示ししました。免疫グロブリン製剤で約66%、アルブミン製剤で65%下落しているという状況です。一方、原料血漿価格の推移をこちらにお示ししました。原料血漿の確保目標量は年々増えております。日赤様には大変御苦労をお掛けしておりますが、そういう中で、原料血漿の価格もだんだんと上がってきました。2018年に特に上がっておりますが、ただ、その後はなんとか横ばいで安定して、この価格を維持していただいているところです。
 13ページ目、血漿分画製剤事業の採算性についてです。前述のような影響を受け続けてきた結果、血漿分画製剤事業の採算性は非常に悪化しております。薬価の下落率を見ていただければ分かるかと存じます。また、下記のように、血漿分画製剤事業は一般的な医薬品事業に比べて利益率が低い傾向にあります。特に、製造原価に占める原料血漿費の比率が大きく、各社ともに原価率が高いということになっております。御参考までに、一般医薬品事業と血漿分画製剤事業とでのコスト構造というのをお示ししました。御覧いただければと存じます。
 14ページ目、血漿分画製剤の採算性の悪化についてです。血漿分画製剤の多くは、代替薬がなく、長期にわたる安定供給が求められ、生産体制を維持するために継続的な設備投資が必要となっております。血漿分画製剤は、製造工程が長く複数の設備を要することから装置産業とも言われ、生産体制を維持・更新するためには多額の設備投資が必要となってきます。特に、国内分画事業者は、各社とも製造設備の老朽化が現在進んでおり、近い将来、大規模な設備投資に迫られる可能性が見込まれております。国内事業者3社は、既に工場が稼動して40年あるいは45年経過しているといった状況です。また、ウイルスの不活化・除去などの安全対策に係る設備投資も継続的に発生しております。血漿分画製剤の事業継続性を確保するためには、多額かつ継続的な設備投資に耐えうる利益を得られるだけの採算性を確保することが求められております。
 15ページ目、血漿分画製剤の事業基盤の強化の必要性についてです。採算性を改善し、事業基盤を強化するため、国内分画事業者は各社の経営方針の下、各製剤の効能追加等のライフサイクルマネジメントや製造工程の効率化などに努めてきました。そして、3社検討会において、各社の課題や事業者間の連携等について検討を協議する中、既存の国内市場や医療制度の下での対応に加え、事業基盤を強化するような取組が必要ではないかといった結論に至った次第です。そのうちの1つとして、「血漿分画製剤の輸出」の可能性というものが挙げられたということです。
 ここから、実際の輸出の検討における課題ということで、塩入さんのほうから御説明を頂きたいと思います。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 改めまして、武田薬品の塩入です。よろしくお願いします。今、星山さんから、大きな血液事業、血漿分画製剤事業の課題について御説明を頂きました。そのうちの改善の1つのオプションとして、輸出に関して、現状と課題について御紹介をしたいと思います。
 17ページ目です。まず、血漿分画製剤輸出の検討における課題というタイトルですが、こちらで現状も含めて御紹介したいと思っております。まず、輸出貿易管理令が改正され、血漿分画製剤は輸出規制の対象外となったということです。一方、基本方針及び血液事業部会運営委員会で示された「輸出における検討事項」により、現在、輸出可能な血漿分画製剤は限られている状況です。現在、下記製剤が国内自給率100%を達成しているが、輸出困難な製剤も多いということで、各製剤の状況を記載しております。そして、輸出の要件を見直し、国内事業者が柔軟に輸出の検討・判断を行えるよう、基本方針改正の御検討に当たり考慮いただきたい要望について提出をすることになりました。
 18ページ目、血漿分画製剤の輸出のイメージとして図を貼らせていただきました。先ほど来、紹介をしましたが、献血由来の原料血漿から得られる一部の中間原料に余剰が生じているということです。そして、需要に対して生じている余剰の範囲内における輸出であれば、将来にわたる国内自給及び安定供給の確保に支障を来さず、献血血液の有効活用や事業基盤の強化につながるのではないかと考えている次第です。
 では、次ページで、血漿分画製剤輸出に関する現状についてもう少し御紹介をしたいと思います。現在、輸出可能製剤の範囲として「国内自給率100%の達成」が要件とされております。下の図で言いますと2番目のバーになるかと思いますが、国内のシェア100%を達成したその先から輸出可能というような理解になっているかと存じます。アルブミン製剤においては以下に示すとおり、既に輸入品が一定のシェアを構築しており、国内製品がシェア100%を得ることは難しい状況にあると考えております。なお、こちらは輸入製剤のお陰で達成できているという部分もありますが、国内のシェア、今、国内製剤は約65%となっております。一方、真ん中のバーですが、こちらに示しておりますのが、1年間に各分画事業者が頂いている原料血漿から、グロブリン見合いで頂いているわけですが、グロブリンを製造しアルブミンに回せるだけの中間原料というのは、真ん中にお示ししてありますように、240万本相当になります。現在、その状況の中で、国内製品は140万本の供給をしているところですので、その間の部分が余剰分になっていることになっております。
 20ページ目です。その中で、血漿分画製剤の輸出に関する要望事項の1番目として記載しました。余剰となる中間原料を有効活用することを目的として、輸出可能な製剤の範囲として、「国内自給率100%の達成」の考え方を見直していただき、「国内分画事業者が国内需要を100%満たす製造能力を保有している製剤」とお考えいただきたいと考えております。その中に、そのシェーマとしてイメージ図を貼らせていただきました。ただし、上記要件は下記の前提に基づくものと考えております。1つ目としては、我々国内分画事業者は、血液法の理念に基づき、国内自給及び安定供給の確保を最優先としております。その方針は今後も変わることはございません。2つ目ですが、輸出可能量を国が調整することによって、国内自給・安定供給の確保に支障を来すことなく、かつ余剰分の血漿分画製剤を輸出することで、献血原料を最大限有効活用できるのではないかと考えている次第です。
 21ページ目、要望事項の2番として、赤字で一番上に書きました。血漿分画製剤の輸出の規制・許認可の範囲に中間原料も含まれるような条文に改正していただけないかと考えている次第です。現在の血液法及び基本方針の規制対象、並びに血液事業部会等での議論の対象となるのは血漿分画製剤のみであり、その中間原料は規制や許認可の対象として想定されていないのではないかと考えております。それから、海外の血漿分画事業者には、製造設備を保有していても十分な原料血漿を確保できないため、その国の需要を満たす血漿分画製剤を供給できていない事業者が存在する可能性もあるのではないかと考えています。そうした事業者に中間原料を輸出すれば、既存設備を活用して製剤化することができ、当該国の医療ニーズに加え、分画事業者の事業効率性の向上にも貢献できるのではないかと考えております。また、国内分画事業者においても、輸出に当たって、中間原料から製剤化するまでの工程のコストが不要になり、輸出価格を抑えることができる可能性もあるのではないかと考えております。
 22ページ目、要望事項のまとめです。国内分画事業者の製造可能量が国内総需要を満たしている製剤においては、国の管理の下、余剰分の「製品の輸出」及び「中間原料の輸出」が可能となるような条文への改正を検討いただきたいと考えている次第です。以下、参考になりますので、私からの御紹介は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
○田野﨑委員長 詳細な御説明をありがとうございました。それでは、委員の方々より御意見、御質問等ありましたら、よろしくお願いいたします。武田委員、お願いします。
○武田委員 御説明いただきありがとうございました。武田です。よろしくお願いします。今、御説明いただいた中で、3社の皆さんの厳しい状況であったり、この製剤の供給体制維持のためにこういった要望が必要だという、その状況は一定程度理解はいたしました。
 ただ一方で、まだ国内需給が達成されていない状況、また、国内需給を達成していくための国のグランドデザインが明確に見えていないというままで、輸出についての議論が先行してしまうことに、私は危機感を覚えています。血液法において、献血による国内自給を基本とすると述べられていて、かつ、その責任は国にあると明記されているにもかかわらず、今日その成果が十分に上がっていないということが、こうした要望につながってしまった一因になっていると考えます。
 血液製剤の国内自給の話は、国の安全保障の観点としても非常に重要なことだと私は思っています。例えばコロナのときには、きちんとワクチンを確保して国民の安全を守るということで、大量のワクチンを確保するという政策も行い、備蓄も行いましたが、そういったことも踏まえて、血液製剤についても、安全保障の観点から国としてできることがないのかということ、まずそういったことを議論していかなければいけないのではないかと考えています。
 再三、この委員会の中でも発言しているところではありますが、血液法の理念に基づいて国内自給をどうしていくか。そのグランドデザインを描く必要があって、その中で議論していく問題であり、その枝葉の課題だけを議論するのではなく、幹の部分を議論していくことが先なのではないかと私は考えています。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほかの委員の方々はいかがでしょうか。松下委員、お願いします。
○松下委員 今、武田先生が安全保障のことを少し言われましたが、2000年代の初めの頃に、血友病Aに対する遺伝子組換え製品で、当時60%ぐらいシェアがあった製品が、いわゆる製造上の不備が原因で輸入ができなくなり、それを使っていた患者さんたちが困るということが発生しました。当時、JBや当時の化血研、もちろん日赤にも緊急に増産していただき、一時的にその患者さんたちへの製剤が滞ることのないようにしていただいたことがありました。本日のお話でいろいろなことが分かったのですが、仮の話はできないかもしれないのですけど、仮に今、アルブミンの輸入されている分、グロブリンの輸入されている分の輸入がゼロになったと仮定したら、3社は全て100%自給を達成できるだけの生産能力はあるのですか。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 3社の検討の中で、各社の製造能力というのは各社持ち寄って検討しております。その中で、理論上ではありますが、国内需要を満たすだけの製造能力はあると我々は判断をしております。
○松下委員 では、その状況の中で、21世紀はもう何が起こるか分からない時代になっているので、明日そのようなことが起こるかもしれないということを不安に思う中で、毎年、国内自給が達成されそうだという判断の下に、これだけだったら輸出していいですよと決めてしまってから、「いや、そのようなわけにはいかなくなりました」ということがあっても、既に売り出す契約をしているわけですから、なかなかそうもいきませんということが発生してしまうわけですが、その辺り何か保険が掛けられるといったことはないのでしょうか。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 武田の塩入でございます。国内向け、海外向けという言い方をすると、輸出は海外向けになるかと思いますが、国内向けも含めて、年間自給計画の中で我々は原料も頂いておりますし、製造量の計画も立てております。なので、それと同じスキームでとは考えております。
 ただ、今御指摘のように、有事で突如として製剤が入ってこないとなった場合どうなのかと考えますと、置き換えると、現状でも同じことが起きるのかなと思っております。御存じのように、どの製剤も製造時間というのは約半年掛かるわけでして、今すぐに増産ということに対応できるかというと、この血漿分画製剤の性格上なかなか厳しいと思っております。なので、年度計画の中で、国と検討を重ねながら、この委員会のほうで相談を重ねながら、年度の供給計画を立てていきたいと考えております。
○日本血液製剤機構星山参考人 松下先生の御指摘はごもっともだと思っております。本日、私どもがお話をさせていただきましたのは、今すぐこれを実現してほしいということではなくて、やはり議論を重ねながらやっていきたいということが根底にございます。その中で、昨今言われております安全保障上で国内自給の必要性はますます感じておりますので、そういった意味では当然そこを最優先にやっていきながらも、ただ、先ほどお話しましたように、私たちの事業基盤を考えたときに、この輸出という選択肢に可能性があってもいいのではないかと。では、その際、もし万が一何かあったときに、私どもが契約上で先方さんと何かそのようなところで縛ることができないのかというようなことが、可能性としてはあるのかもしれませんが、今現在そこまでの回答は持ち合わせておりません。
 御参考までに、昨年ようやくアルブミンも基礎的医薬品に指定していただきました。これにより、昨年4月直近のアルブミンの国内自給率は63.1%でした。それが、外部データなのですが、本年直近の5月単月で70%まで上がってきました。当然ここは、最大限3社ともに努力をしながら自給率を上げていくということを継続し、そしてその中で、1つの選択肢、可能性として、この輸出を行うことによる事業基盤の強化ということを検討課題として考えていきたいということが、今回要望書を出させていただいたという経緯でございます。ですので、拙速に進めようということではなくて、そこは慎重に、先生方の御意見を伺い、国とも御相談させていただきながら、いろいろと考えてはいかなければならないと思っております。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。よろしいでしょうか。松本先生、お願いします。
○松本委員 松本です。今のお話の中で、例えば輸入が止まったような場合には、用意ドンで作っても半年ぐらい掛かるという、そんなようなことをやることになれば、やはりそのようなことが起こるおそれというか、先ほど保険を掛けるというようなことは言われておりましたが、保険という意味では、半年分の在庫はどの製剤も置いておくべきではないのかと単純に思うわけですが、そのようなことは可能かということ、あるいはそのようなことを国が指導するとか、支援、補助をして、そのようなことができるようにならないのかということ、その辺りをメーカー3社の方、あるいは国としてどのようなことができるのかということを教えていただければと思います。
○日本血液製剤機構星山参考人 先生、ありがとうございます。日本血液製剤機構の星山でございます。今、少し御説明が足りなかったかと思いますが、私ども3社といたしましても、例えば今回のこのアルブミンの例ですが、中間原料余剰分の輸出ということに関して、どこまでその余剰分をそういった緊急事態に備えて持つか、そういったところも当然考えながら、議論し、今後進めていきたいと思っているところです。
 ただ一方で、アルブミンとは違って、今現在、御承知のとおりグロブリンが非常にひっ迫した状況になっておりますので、グロブリンの中間原料をどこまで持つことができるのかというのは、なかなか厳しい状況です。各社によってもその辺の事情は異なっており、私どもメーカーの立場としては厳しいとしか言えないというところであります。
○松本委員 ありがとうございます。グロブリンに関しては、最近私の周りでもグロブリンが入手できないということで、市中病院から大学病院に転院をしていただいた患者さんが実際にいらっしゃいます。実際に困っている患者さんがいるわけです。今、グロブリンはギリギリの状態になって、このようなことが起こっているということで、先ほど半年という話が出ましたので、半年分ぐらいの在庫があれば、このようなひっ迫ということはないと思うのですが、どうしてこのようなことが起こってしまうのか。恐らくギリギリの生産、原料も供給できていないということでというように思うのですが、この後はどうなのでしょうか。この辺りをもう少しうまく管理できないものかなと考えています。
○日本血液製剤機構星山参考人 先生のおっしゃるとおり、いろいろな要因が重なっていると思っております。1つは、日赤様から原料血漿を頂戴しておりますが、私どもはメーカーとして分画しグロブリン製剤を作る能力は現状では限られております。そのような中、ここ10年、そういった生産量を増やす努力もしてまいりましたが、実は医療現場、市場のグロブリンに対する需要が予想以上に伸びてきております。これは世界的に見てもそうです。そこで、国内メーカーも精一杯みんなで協力しながら現場に供給する努力をしているところですが、現状そこには限界があるということです。そうしますと、海外メーカーにお願いせざるを得ないという状況の中で、その辺りは国の御指導も頂きながら、私どもメーカー間で1日も早く安定した市場への供給ができるような努力をしているところです。
 ただ、今申しましたように、現在国内3社での生産能力の上限というものプラス市場の伸びが予想以上に大きいということ、それと、今回この品不足の要因の1つとして、グロブリンはここ数年ずっと市場は伸びてきていて、大体103~105%ぐらいで前年からの伸びを示しておりました。ところが、この1月以降、市場でのグロブリンの伸びが110%を優に超えてきております。このように最近急に市場が伸びてきたものですから、私ども事業者では、医療現場でほかの代替療法も含めて少し使用を抑えていただくことは可能でしょうかというような情報提供をさせていただく中で、医療機関様としては、そのような状況になればある程度の在庫を抱えておきたいという心理も働くと思います。そういった意味で1月以降、実際に処方していただいている以上の御購入があるというようなこともございますので、その辺りに関しても国から文書を出していただき、各医療機関を回って、必要な分だけの御購入をお願いする活動もやっております。まず、現状はそういった市場を落ち着かせるということをメーカーとしても取り組んでいるということ、何とぞ御理解を賜れればと存じます。
○松本委員 ありがとうございました。その辺りの変わらぬ御努力をよろしくお願いいたします。
○日本血液製剤機構星山参考人 ありがとうございます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。今回の要望書については、まだ多くの議論が必要かと思いますので、今回多くの御意見を頂きましたが、事務局におかれましては、基本方針の改正についても踏まえて十分に検討していくということでやっていただきたいと思います。とりあえず、このことに関しては本日はここまでとして、次回検討を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 議題3及び議題4で参考人として御出席いただきました3社の方々にはここまでの御対応となりますので、傍聴席への移動若しくは御退席をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
○日本血液製剤機構星山参考人 ありがとうございました。失礼いたします。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 ありがとうございました。失礼いたします。
                                  (参考人退席)
○田野﨑委員長 そうしましたら、続いて議題5、基本方針の5年ごとの再検討について、事務局より状況の説明をお願いいたします。
○仲島血液対策課長補佐 事務局です。事務局から、議題5「血液法に定める「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」の5年ごとの再検討について」ということで、説明させていただきます。まず、この基本方針ですが、3月の運営委員会で一度御報告させていただいて、運営委員会で御議論いただいたものを4月の血液事業部会でお認めいただいて、基本的な見直しの方向を定めることができました。
 本日の運営委員会で、基本方針の第一の「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保に関する基本的な方向」についてから、第八の「その他献血及び血液製剤に関する重要事項」についてまでの間の、どこで落とし込むのかというところを具体的に示して御議論いただいて、7月の血液事業部会でお認めいただいたものを文書化していこうということで予定していたスケジュールを皆様方に御説明させていただいていたところなのですが、諸般の事情、これを進めるだけの体制が整っていないということもあり、拙速な進め方というよりは、きちんと体制が整ったところで進めたいということで、今回の運営委員会でお示しができませんので、一度飛ばさせていただきます。7月の血液事業部会も一度飛ばすということで、その次の運営委員会から進めさせていただければ、年度内には議論をまとめられるものと考えておりますので、その旨を御報告させていただきたいと思います。以上です。よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 御説明ありがとうございました。この議題の前に議論していただいた血漿分画製剤に関する議論も、ここに大きく関わってくる問題ですので、グランドデザインをしっかりと構築して、また議論を深めていければと思いますので、延期後も十分な議論を行った上で取組ができるようお願いしたいと思います。
 そうしましたら、次に議題6「「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針(基本方針)第八に定める血液製剤代替医薬品について」の廃止について」に移りたいと思います。まず、資料5-1について、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○渡辺血液対策課長 事務局です。お手元に資料5-1と5-2を御準備ください。資料5-2でお示ししている局長通知の取扱いを御議論いただきたいというものです。方向性は、資料5-1にお示ししたように、局長通知を廃止してはどうかということで資料を準備しています。
 資料5-2を御覧いただきたいと思います。この局長通知は令和3年1月22日に出されたものです。一番最初に出されたのが平成15年と承知しています。この通知は、血液製剤代替医薬品の取扱いを規定するものです。血液製剤代替医薬品は3ページ目に一覧があります。令和3年1月と申し上げましたが、3ページ目の2.に書いてあるシモクトコグ アルファという製剤が承認されましたので、そうした製剤が承認される度にここを更新していくということで、局長通知も更新されてきたと、このようにまず御理解ください。
 この局長通知が意図するところですが、血液製剤代替医薬品は、ほかの医薬品も同等ですけれども、承認されるときに薬機法上の分類があります。通知の話とは少し離れていただいて、薬機法上、主に動物に由来する原料とか材料を元に作られた製剤というのは生物由来製品として、そしてそうしたものの中で、特にヒトの血液や組織に由来する原料又は材料を用いた製品は特定生物由来製品として分類されています。それは、それぞれの製品の特性に応じた安全対策を求めるというもので、国の別の審議会で安全性を御議論いただいたり、取扱いを御議論いただいて、厚生労働大臣が生物由来製品とするのか、特定生物由来製品とするのか指定しています。
 もう一度、血液製剤代替医薬品に戻ります。血液製剤代替医薬品は、局長通知が出された当初、平成15年に遡りますが、そのときには生物由来製品もあれば、特定生物由来製品もありました。そうした中で、血液製剤代替医薬品については医療現場の混乱等を回避するために、一律により厳しい規制の掛かる特定生物由来製品と同等に扱うということが局長通知で示されました。つまり、薬機法上は生物由来製品に指定される血液製剤代替医薬品であったとしても、取扱いは特定生物由来製品として書類の保存期間とかを求めていたということです。
 その後、平成30年に、コージネイトFSバイオセットという薬が製造販売中止になっています。このコージネイトFSというのが特定生物由来製品だったのですが、製造販売中止になったということで、血液製剤代替医薬品は全て生物由来製品になりました。そのときに、この局長通知の取扱いについてもキーパーソンの先生方と意見交換を重ねて、局長通知を廃止して、薬機法に従うというシンプルな取扱いにすればいいのではないかという方向性がまとまっていました。それが平成30年、令和元年の話です。
 その後、コロナウイルスの対応があったりして、局長通知の取扱いに関する議論が棚上げになっていたという背景がありました。今回、改めて血液製剤代替医薬品の取扱いを定める局長通知について御議論いただきたいと思います。事務局からの提案では、先ほど申し上げたように、薬機法上に従う取扱いにするということでよいのではないか。つまり、局長通知の廃止という方向性でいかがでしょうかということで御提案させていただきたいと思います。御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。取扱上の事務的な事情ということかと思いますが、委員の方々から御意見はいかがでしょうか。特に反対意見等がないようであれば、こちらに関しては皆さん異存はないということでよろしいかと思います。よろしくお願いいたします。
○松下委員 質問というか、これは、日付はいつになりますか。
○渡辺血液対策課長 まだ日付は決まっていません。
○松下委員 分かりました。
○渡辺血液対策課長 それと、今日見ていて、漢数字だったり普通の数字だったりという所を少しだけ修正したかったりもするので、資料5-1は最終確認をしてから発出いたします。時期についてはもう一度相談というか、課内でも確認したいと思いますし、必要に応じて先生方の御意見も承りたいと思います。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。そうしましたら、最後に議題7の「その他」に移りたいと思います。令和4年度の主要血液製剤の供給状況について、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○吉田需給専門官 事務局より説明させていただきます。資料6を御覧ください。令和4年度の主要血液製剤の供給状況についての速報値です。例年、年末の血液事業部会で前年度の実績を御報告していますが、令和2年度より主要な血液製剤等の実績について、速報値としてこの運営委員会で報告しているものです。
 2ページ目をお願いいたします。2ページ目ですが、血漿分画製剤の国内自給の推移です。グロブリンの自給率が減少しており、今後のグロブリンの需要増加を踏まえると、減少傾向が続くものと考えています。アルブミンに関しては、令和4年度に基礎的医薬品の適用を受け薬価がそろったこと、また国内メーカーの周知活動の努力もあり、自給率が上昇しています。
 3ページ目以降は、主要血液製剤、アルブミン製剤、グロブリン製剤、血液凝固第Ⅷ因子製剤、参考として血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤の供給量の推移について、令和4年度の実績値を示しています。令和5年度の需給計画値についても、一番右端に含めています。
 最終ページですが、令和4年度の日本赤十字社の原料血漿確保状況等の実績値です。今回は速報値ですので、精査して、他の製剤を含めた数値を年末の血液事業部会に改めて報告させていただきます。資料についての説明は以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ただいまの説明について、御意見、御質問などがありましたらお願いいたします。免疫グロブリンの自給率が下がっていくというのは分からなくはないのですが、先ほどの議論を踏まえると少し理解し難いところがあるかと思いますので、こちらに関しても議論を深めていく必要があるかと思います。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、本日の議題は以上です。ほかに何か御意見等はありますでしょうか。それでは、ないようですので、事務局に議事進行を戻したいと思います。よろしくお願いいたします。
○仲島血液対策課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。次回の運営委員会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて、血液事業部会令和5年度第1回運営委員会を終了いたします。ありがとうございました。

(了)