第107回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第107回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和5年3月2日(木)13:59~14:26
 
2.場所 AP虎ノ門会議室Bルーム(一部オンライン会議会場)
        (東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

3.出席委員
(公益代表委員)
○学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授 守島 基博
○明治大学法学部教授 小西 康之
○大阪大学理事・副学長 水島 郁子

(労働者代表委員)
○UAゼンセン労働条件局部長 柏田 達範
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○全国建設労働組合総連合労働対策部長 田久 悟
○日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長 冨髙 裕子
○日本科学エネルギー産業労働組合連合会副事務局長 永井 学

(使用者代表委員)
○日本通運株式会社人材戦略部専任部長 池田 祐一
○一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部上席主幹 坂下 多身 
○東京海上ホールディングス株式会社人事部専門部長 砂原 和仁
○セコム株式会社総務人事本部参与 二宮 美保
○日本製鉄株式会社人事労政部部長 本荘 太郎
○鹿島建設株式会社安全環境部長 本多 敦郎

4.議題
(1)労働者災害補償保険法施行規則及び炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)労災保険財政懇談会について(報告)
(3)その他

5.議 事
○守島部会長 ただいまから第107回労災保険部会を開催したいと思います。本日の部会は会場及びオンラインの両方で実施いたします。出欠状況ですが、武林委員、中野委員、宮智委員、平川委員、が御欠席と伺っております。また、水島委員は遅れて14時40分頃から御参加の予定です。出席者は現在13名でございますけれども、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がございますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
それでは議題に入りたいと思います。第1の議題は「労働者災害補償保険法施行規則及び炭坑災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」です。これは諮問案件ということで、よろしくお願いいたします。まず、事務局から御説明をお願いします。
○労災管理課長 それでは資料1に沿って御説明いたします。4つ項目がありますが、資料の中の9ページの横置きの資料を御覧ください。まず1つが、介護等給付・介護料の最高限度額・最低保障額の改定についてです。労災法に基づく介護等給付については、最高限度額については特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給を参考に、また最低保障額については最低賃金の全国加重平均を参考に見直しておりました。今般、令和3年度の特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給、それから令和4年度に改定された最低賃金の全国加重平均に基づいて、これらを見直したいと思っております。
左下の表になりますが、最高限度額は、常時介護を要する者について、17万1,650円から17万2,550円に、随時介護を要する者については括弧内の数字から8万6,280円に、最低保障額については、それぞれ7万7,890円、3万8,900円に引き上げたいと思っております。それから右の表の炭坑災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法の規定に基づく経過措置として支給する介護料についても同様に、これは3段階に分かれておりますが、一番上の段の常時監視及び介助を要する者、3段目の常時監視を要するが通常は介助を要しない者については、左の先ほどの数字と同じ改定になります。あと真ん中に、常時監視を要し、随時介助を要する者という方がいらっしゃいますが、この最高限度額は常時監視・介助の方の約4分の3に設定されております。こうした見直しをお願いしたいと思っております。
 それから2つ目です。アフターケアの対象者の方ですが、傷病が治ゆして障害年金に移行される方などで、一定の要件を満たす場合、後遺障害に伴う病気を防ぐため、手帳を交付することになっておりますが、この名称が「健康管理手帳」ということになっておりまして、こちらが安全衛生法上の健康管理手帳と紛らわしいという声が現場に寄せられております。本省にも同様の照会が来ております。そうしたことで、この制度はもともとアフターケアということで、省令にも定めて取り組んでおりますが、その制度の名前と手帳の名前を一致させたほうがこの際分かりやすいだろうということで、名称を「アフターケア手帳」に変更したいと思っております。これが2つ目です。
 それから3つ目は、労災就学援護費及び労災就労保育援護費の額の改定についてです。労災就学援護費については、労災事故により不幸にして亡くなられたり重度障害を受けられた方の子弟の学費等の一部を支給して、遺族の援護を図るという取組をしております。また、労災就労保育援護費は、保育に係る費用の一部を援護することで、保育を必要とする児童を抱える労災年金受給者あるいはその家族の就労を促進し、被災労働者及びその遺家族の援護を図るということを目的としております。
今般、子どもの学習費調査、特に令和3年度の数字が新しく出されているということで、消費者物価指数に基づいてこれらの支給額を見直したいと考えております。学校区分ごとに分かれております。大学について変更はございません。通信制を除く高校は1万7,000円から1万9,000円に、通信制の高校は1万4,000円から1万6,000円に。中学校については、通信制を除くものが1万8,000円から2万円に、通信制が1万5,000円から1万7,000円。それから小学校については、1万4,000円から1万5,000円に引き上げをお願いしたいと思っております。
一番下にあります労災就労保育援護費ですが、こちらについては、先ほど令和3年度の子どもの学習費調査が出されたと御説明したところですが、令和元年10月から子ども・子育て支援新制度の対象となる幼稚園、保育園に通う3歳から5歳の子どものサービス料等が原則無料になっています。いわゆる幼保無償化という取組ですが、この影響によりまして、この調査の結果が従前の約6割の水準になっているというところです。これがなぜゼロにならないかということにつきましては、まずこの無償化の対象が施設などで対象ではない所がありますし、世帯についても対象にならない所があるというのが1つ。それから幼稚園、保育園等のサービス利用料だけでなくて、給食や制服の費用、家庭での習い事、こういう費用も調査の対象になっておりますので、ゼロになるというわけではなくて、6割程度の水準になったということです。これを基に単純に計算しますと、1万3,000円が8,000円になるということになりますが、この激変緩和のために今回は2,000円の引き下げということにとどめて、再来年度以降は2,000円を超えない範囲でそのデータに近づけていくということをお願いしたいと思っております。
 それから4つ目は、働き方改革推進支援助成金の支給対象となる中小事業主の要件の拡大についてです。この助成金については、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業、小規模事業者等を支援するために支給を行っているところです。この助成金も活用しつつ様々な業種等での働き方改革を促進しておりますが、医業に従事する医師に関しては、時間外労働の上限規制の適用が令和6年3月31日まで、これから約1年になりますが猶予されています。これが令和6年4月1日から、休日労働を含んで年最大960時間、例外として最大1,860時間の上限時間が適用されるということになっておりますので、適用猶予期間中、来年度中に施行に向けての長時間労働削減の取組をしてもらうということが重要になっております。このため、医業に従事する医師が勤務する病院等を運営する中小事業主が、時間外労働の上限規制の適用に向けた労働時間の短縮等の環境整備の準備をできるように、働き方改革推進支援助成金の支給対象を広げることを提案したいと思っております。従前は常時雇用する労働者数が100人を超えないこと、100人以下であることとしていますが、これが300人を超えないこと、300人以下に変更したいというふうに思っております。この300人という数字については、ほかの自動車運送業ですとか建設業が、同じく令和6年から猶予措置が外れるのと同じ水準になるということです。こちらが改正の中身になります。
 5ページ目に今御説明した内容を縦書きで記載しております。説明に入っていなかったもの、施行期日等というものがありますが、施行期日は令和5年4月1日から、それから、この省令に関して必要な経過措置を定めるという内容で改正をお願いしたいと思います。以上です。
○守島部会長 ただいま諮問のあった件について、御意見、御質問等があればお伺いしたいと思います。会場の皆様は挙手を、オンラインの皆様はチャットの欄で「発言希望」とお書きください。よろしくお願いいたします。冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 諮問内容については、特段異論はありません。その上で、2点、意見と要望を述べます。1点目は、資料1の11ページの労災就学援護費の額の改正についてです。支給額自体は様々なデータに基づき算出をされているものであり、全体としては理解します。一方、労災就労保育援護費については、幼児保育無償化の影響によって減額となっています。今年度の改正においては激変緩和措置を導入し、影響を緩和いただいたとのことですが、制度の趣旨等も考えれば、引き続き、統計的なエビデンスは基本としつつ、被災者本人やその家族が安心して就労ができるという視点での検討をお願いします。
 2点目は、「アフターケア手帳」についてです。「健康管理手帳」から「アフターケア手帳」に名称を変更することは、現場の意見も踏まえての整理と認識していますが、「アフターケア手帳」への名称変更をはじめ、今回の見直し内容全般について、被災労働者をはじめとする関係者への丁寧な周知をお願いします。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか御意見、御質問等のある方はいらっしゃいますか。坂下委員、お願いいたします。
○坂下委員 資料1の12ページ、働き方改革推進支援助成金の支給対象となる中小企業事業主の要件の拡大に関して、教えていただきたいことがあります。今回、支給対象を300人以下に拡大するということですが、これに伴い支出がどの程度増える見込みなのか、お分かりであれば教えてください。
○労働条件政策課労働条件確保改善対策室長補佐 労働条件政策課です。今回の拡大に伴って、どれぐらい支出増額を見込んでいるのかという御質問を頂きました。この働き方改革推進支援助成金については、令和5年度の当初予算案は総額68億円としており、令和4年度予算額に比べて2億円の増加となっております。この増額については今回の対象拡大によるものも当然含まれますが、助成金全体として見ますと、医業に従事する医師等を含む適用猶予業種等への支援の充実を目的として、新たに適用猶予業種等対応コースを新設することによる増額分と、他方で、従前の助成金のコースがありますが、これの要件等を見直すことによって一部減額をすることなど、幾つかの要因が重なる中での増額となっております。したがいまして、今回の対象拡大による増額分を特定してお答えすることはなかなか難しいところもございます。ただ、実際にどれぐらい支給対象となる病院等が増えるのかについては、大体約4,000ぐらい増えるのではないかと見込んでおります。病院等、これは病院あるいは診療所などですが、これが約4,000増えて、対象としては8万4,000ぐらいになるということで数としては見込んでおります。以上です。
○守島部会長 ほかに御意見、御質問等はありますか。よろしいですか。特段ほかに御意見がないようでしたら、諮問のあった件について当部会としては「妥当」と認め、労働条件分科会会長宛に報告したいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○守島部会長 ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。
労働政策審議会令第7条第7項により、部会の議決をもって分科会の議決とすることができ、同令第6条第7項により分科会の議決をもって審議会の議決とすることができると定められております。また、労働条件分科会運営規程第7条において、当部会の議決をもって分科会の議決とするということになっており、労働政策審議会運営規程第9条において、分科会の議決をもって審議会の議決とすることになっております。したがって、当部会の議決が審議会の議決となります。
事務局に答申案を用意していただいておりますので、読み上げてください。
○労災管理課長 3枚目の当部会の議決について読み上げます。
労働条件分科会分科会長荒木尚志殿。労災保険部会部会長守島基博。「労働者災害補償保険法施行規則及び炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について。令和5年3月2日付け厚生労働省発基0302第3号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本部会は、審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。記。厚生労働省案は、妥当と認める。
1枚目は労働政策審議会会長から加藤勝信厚生労働大臣宛ての答申、2枚目は分科会長から審議会会長宛ての答申になります。
○守島部会長 ただいま読み上げられた内容で、部会長から分科会長、分科会長から労働政策審議会会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛てに答申を行うことにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○守島部会長 ありがとうございます。なお、委員全員に答申文を後ほど事務局から送付させていただきます。
 それでは、次の議題は「労災保険財政懇談会について(報告)」です。事務局から説明をお願いいたします。
○労災管理課長 資料2です。今年の1月に労災保険財政懇談会の1回目を開催しております。こちらは、労災補償の将来の支払いに備えて責任準備金が設けられておりますが、この水準のあり方について検討するために開催しております。また、この責任準備金については、令和3年12月の行政改革推進会議において、「責任準備金の算出根拠となる賃金上昇率や運用利回りについては、設定値と実績値とが乖離していることからも、妥当性について検証を行うとともに、この適正水準について引き続き検討する必要がある」と指摘されました。こうしたことから、4.にあります4人の外部有識者の方にお集まりいただき、この責任準備金の算定の基礎となる、主に賃金上昇率、予定運用利回りが大きくこの計算に影響するわけですが、これらについて御意見を伺いました。
 2枚目が、その中の主な意見になります。4つ主な意見がありました。1つ目は、将来の賃金上昇率を予測することは非常に困難であるが、昨今の情勢から、賃金上昇率の設定は上げることが妥当と。これまでは長く1%というところで置いておりましたが、これについては何らか上げることが妥当であろうということです。上げるに当たっては、内閣府の経済見通しなどを材料に設定することが考えられるということです。
 2つ目は、公的年金の財政モデルは100年を想定しているものであるが、労災保険の責任準備金は現在年金を受給している方々のみを対象としているので、足元から10年程度の経済を想定することが重要だろうということです。
それから、賃金上昇率と運用利回りについては、過去の傾向、ピケティの研究などの議論になりますが、運用利回りが賃金上昇率より高いことが一般的であるが、公的年金の財政検証でも足元10年で賃金上昇率の方が高い傾向がみられ、しばらくは賃金上昇率の方が高くなり責任準備金の水準が上がることが考えられる。
 最後に、積立金の水準と単年度の給付規模を考えると、単年度の給付規模が8千数百億円、それから積立金は7兆円を超える数字がありますが、こういった状況を考えると、社会情勢の変化、物価や賃金が上昇することが直ちに財政上の問題になるわけではないけれども、責任準備金の算定に用いる基礎率については、社会情勢を捉えながら少しずつ実態に合わせること。単年度の動きだけを見てパッパッと変えるというよりは、少しずつ動かしていくのがいいのではないかという御意見を頂いております。
 これは1月に開催しておりますが、今後賃上げの動きや物価の動きなど、各種データが出てまいりますので、単年度の動きだけで決めるものではありませんが、そうした数字も見ながら、また夏以降にこうした議論を続けていきたいと考えております。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問等がありましたらお伺いしたいと思います。先ほどと同じように、会場の方は挙手、オンラインの方はチャットへの書き込みでお願いいたします。特にどなたもいらっしゃいませんか。特段の意見がないようでしたら、そのほかに何かあればお伺いいたしますが、いかがでしょうか。よろしいですね。
それでは、本日予定した議題は以上になりますので、部会は終了といたします。
 次回の日程については、事務局より追って連絡することといたします。本日は以上です。皆様方、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。