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第29回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和6年1月23日(火)10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第21会議室(17階)
出席者
- (委員)(五十音順)
- 石原委員、逢見委員、岡本委員、川﨑委員、佐々木勝委員、武田委員、春川委員、守島部会長、山川委員、山田委員
- (事務局)
- 田中厚生労働審議官、鹿沼政策統括官(総合政策担当)、青山政策立案総括審議官、平嶋政策統括官付参事官、中井労働経済特別研究官、古屋政策統括官付労働経済調査官、宮本大臣官房審議官(雇用環境・均等担当)、吉田職業安定局雇用政策課長、横田人材開発統括官付政策企画室長、石田労働基準局総務課課長補佐
議題
(1)部会長の選挙及び部会長代理の指名について
(2)部会の今後の進め方について
(3)その他
(2)部会の今後の進め方について
(3)その他
議事
- 議事内容
- ○平嶋政策統括官付参事官 それでは、皆様おそろいですので、ただいまから第29回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、委員改選後第1回目の開催になりますので、冒頭は私が司会を務めます。政策統括官付参事官の平嶋と申します。よろしくお願いします。
それでは、カメラの頭撮りはここまでとしたいと思います。御協力をよろしくお願いします。
(カメラ退室)
○平嶋政策統括官付参事官 まず、4月27日付で委員改選が行われましたので、御報告いたします。新しい労働政策基本部会委員名簿は資料1のとおりとなります。
新たに横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、石﨑由希子様にお入りいただいております。今日は残念ながら御欠席でございます。
それから、リクルートワークス研究所客員研究員の石原直子様にお入りいただきました。
それから、公益財団法人富士社会教育センター理事長の逢見直人様。
それから、本日はオンラインですが、大阪大学大学院経済学研究科教授、佐々木勝様。
以上、新しく委員にお入りいただいております。
それから、出欠ですが、本日は所用によりまして、石﨑委員、入山委員、大橋委員、佐々木かをり委員、冨山委員は御欠席となっております。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に関して事務局から御説明いたします。
〇古屋政策統括官付労働経済調査官 労働経済調査官の古屋と申します。今回はよろしくお願いいたします。
オンラインでの開催に関しまして、留意事項を御説明申し上げます。
まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしていただくようお願いいたします。委員の皆様方は、御発言の際、「参加者パネル」の御自身のお名前の横にあります「挙手ボタン」を押して司会から指名があるまでお待ちいただければと存じます。司会から指名があった後、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。発言終了後はマイクをミュートに戻しまして、再度「挙手ボタン」を押して挙手の状態を解除してお待ちいただければと存じます。
通信の状態などにより音声での発言が難しいような場合は、チャットで発言内容をお送りいただくようお願いいたします。また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号までお知らせいただくようお願いいたします。
以上でございます。
○平嶋政策統括官付参事官 よろしくお願いします。
それでは、本日の議事に入ります。
最初の議題は、部会長の選挙についてです。
部会長につきましては、労働政策審議会令第7条4項に基づき、当該部会に所属する委員のうちから委員の皆様に選んでいただくことになっております。いかがいたしましょうか。武田委員、お願いします。
〇武田委員 私は、労働政策に大変お詳しく、これまでの本部会でも座長としてこの部会をリードいただきました守島委員がよろしいのではないかと思います。
○平嶋政策統括官付参事官 ありがとうございます。
ただいま守島委員に部会長をという推薦がありましたが、守島委員に部会長に就任いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○平嶋政策統括官付参事官 ありがとうございます。
それでは、守島委員に部会長に就任いただくことといたします。以後の議事の進行につきましては、守島部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
(守島委員、部会長席に移動)
〇守島部会長 ただいま部会長に選出されました守島でございます。引き続き、皆様方の御支援を頂きながら部会を運営していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
最初に、労働政策審議会令第7条第6項の部会長代理を指名したいと思います。部会長代理は部会長が指名するということになっておりますので、今回は部会長代理として大橋委員を御指名いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
では、次の議題2に参りたいと思います。具体的な進め方ですけれども、まず事務局から資料説明として第4期労働政策審議会労働政策基本部会テーマ案について御説明いただき、その後、自由討議に入りたいと思います。
それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
〇古屋政策統括官付労働経済調査官 事務局でございます。
今回の検討テーマと進め方について、資料2を使いまして御説明させていただきます。また、現下の雇用・労働情勢についても資料3として配付させていただいておりますので、こちらのほうも一括して説明させていただきたいと思います。また、本日御欠席の冨山委員より事前に御意見を頂戴しておりますので、資料4として配付させていただいておりますので御覧いただければと思っております。
まず、今回のテーマについてでございます。資料2「労働政策基本部会(第4期)検討テーマ及び進め方(案)」としている資料を御覧いただければと存じます。
まず、検討テーマ案については「人口減少に即した働き方について~中小企業・地域の雇用を支える産業での労働者の能力発揮に向けて~」とすることを考えております。
第3期の労働政策基本部会におきましては、「変化する時代の多様な働き方に向けて」としまして、人材育成・リスキリング、ジョブ型人事等の人事制度、労働移動等について議論いただきまして、これらの重要性やキャリアについて社会全体で考えることの重要性、労働者のスキルアップ・向上を労働政策において重視するべきことを示したところでございます。具体的な内容については参考資料のほうに昨年5月に本審に御報告した報告書と参考資料をお示ししておりますので、お時間があるときに御覧いただければと存じます。
一方で、昨年のこの部会では、労働者の多くを占める中小企業や地域密着型産業の働き方について考えることが重要なのではないかという御意見を頂いたところでございます。
我が国におきまして、雇用者の多くを占める中小企業や第3次産業を中心とする地域密着型の産業につきましては、特に人手不足感があるという一方で、労働条件や生産性には差があるとされているところでございます。
また、こういった分野での人手不足への対応を考える上では、サービス供給が合理的な在り方を超えて過度に消費者の利便性を追求したものになっていないかという点についても意識して、労働者は同時に消費者でもあるということを念頭に置いていく必要があると考えております。
こうしたことから、今回のテーマについては「人口減少社会における中小企業・地域の雇用を支える産業における労働者の能力発揮」をテーマに御議論いただくということを考えております。
まず、こうした観点から労働政策の課題について整理させていただいたのが1ページ目の(1)以降のところでございます。労働政策の課題を考えていきますと、直面しているところは人手不足の課題があるところでございます。この人手不足について、大くくりにしまして、3つに分けているところでございます。まず、人口減少による人手不足、ミスマッチによる人手不足、制度・慣行に由来する人手不足の課題があると考えているところでございます。
それぞれの課題について課題解決に向けての論点となり得るようなキーワードを挙げているところでございます。➀の人口減少による人手不足につきましては、女性、高齢者、外国人労働者の活用についての対応といったものが考えられるところでございます。続きまして、➁のミスマッチによる人手不足につきましては、中核人材の確保、あるいは労働市場のミスマッチ、こういったところに対応していくことが考えられるところでございます。➂の制度・慣行に由来する人手不足につきましては、価格転嫁や賃上げなどの生産性向上に向けた働き方、非正規雇用や雇用類似等の就業形態や、テレワーク、副業・兼業等の就業場所の多様化といった点、週休3日制などの柔軟な働き方への対応といったことが考えられるところでございます。また、先ほど申し上げましたような形で労働供給制約下においてサービス供給の効率化に向けた企業の取組や、長時間労働につながる商慣行の見直しといった論点も検討してはいかがかと考えているところでございます。
続きまして、(3)の「労働政策の立案・実施のあり方」でございます。こうした取組に関しまして、効果的な労働政策を立案・実施するということから、最近、特にデータの活用を行政において求められているところでございます。様々な分野でもデータ活用が求められているところでございますので、こういったことも議論いただくことを考えているところでございます。
スケジュールとしまして、粗案ということで書かせていただいておりますが、次回以降、企業、団体、有識者等から全般的にヒアリングを行い、議論を進めまして、来年度末頃までに報告書を取りまとめ、本審に御報告することを予定しているところでございます。
御参考ということで資料3として、03と打ったファイルでございますが、現下の雇用・労働情勢についてまとめているところでございますので、簡潔に御説明させていただきます。
まず、3ページを御覧いただければと存じます。日本の人口につきましては、近年、減少局面を迎えておりまして、2070年には総人口が9000万人を割り、高齢化率は39%の水準になると推計されているところでございます。
4ページを御覧いただければと存じます。左の図でございますけれども、近年では女性・高齢者の労働参加が進んだということで、労働力人口・就業者数は2019年まで増加傾向にありましたけれども、2020年以降は増加傾向に鈍化が見られるというところでございます。
続きまして、右の図を御覧いただければと存じます。人手が過剰とする企業の数から人手が不足とする企業の数を差し引いたDIで見ますと、コロナ後におきましては、マイナスという形となっておりまして、人手不足とする企業が多くなっているということで、人手不足感の高まりが見られるところでございます。
次に、こうした指標について10年間での変化を各都道府県別に見てまいったものをお示ししております。5ページを御覧ください。オレンジで示しているものが2022年、青で示しているものが2012年でございます。下のグラフでその間の15歳以上人口の増減率を見ているところでございますけれども、御覧のように、東京、神奈川、愛知、大阪などを除きまして、多くの道府県で減少しているという状況でございます。
6ページを御覧ください。就業者数におきましては、大都市圏にある都道府県や沖縄などで増加しているところでございますが、秋田県、宮崎県などでは減少している状況でございます。
続きまして、7ページを御覧ください。就業者の産業別の状況などについてお示ししているところでございます。左側が名目GDPの産業別の構成比でございます。右側が就業者数の産業構成比でございますけれども、いずれもグレーの点線で示している製造業の割合が減少しておりまして、赤で示す保健衛生・社会事業の割合が増加しているという状況でございます。
続きまして、女性、高齢者、外国人が働いている状況について御説明いたします。
8ページを御覧ください。近年、20代後半から30代にかけての女性の就業率が下がるM字カーブの底は浅くなって解消に向かっているという状況でございますが、依然、低い状況が続いているというところでございます。正規雇用の比率につきましては、右側に示しておりますけれども、20代後半から下がっているL字カーブといった傾向が見られるところでございます。
続きまして、9ページを御覧ください。高齢者の就業率についてでございます。こちらについては上昇傾向となっているところでございまして、65歳から69歳、赤い線で示しておりますが、こちらについては5割を超えているという状況でございまして、75歳以上についても2015年以降、上昇傾向となっているところでございます。
10ページを御覧ください。外国人労働者の雇用状況について見たものでございますが、(1)の左側の図に示しておりますように、約182万人程度となりまして、過去最高を10年連続で更新しているという状況でございます。国別の内訳については右側に示しているところでございます。
続きまして、目を転じまして、労働生産性について御説明いたします。11ページを御覧ください。こちらの図につきましては、産業別に1994年を100とした時間当たりの労働生産性を縦軸に、労働時間で見た労働投入量を横軸に取ったものでございます。飲食サービス業などは左側にありまして、生産性が低く、かつ低下傾向にあるというところでございます。一方、情報通信業、製造業は生産性が高くなっておりまして、特に情報通信業は右上にありまして、労働投入量も伸びているというところでございます。右側の労働時間で見た投入量を増やしているところは保健衛生・社会事業ですが、時間単位の労働生産性の水準は相対的に低い水準という形となっております。
続きまして、12ページを御覧ください。資本金規模別に見た労働生産性と賃金を図に示しているところでございます。こちらでは1997年の第1四半期を100として、2022年までを見たものでございます。資本金規模が大きい企業におきましては、労働生産性の伸びと賃金の伸びにギャップがある一方で、資本金規模の小さい企業は労働生産性の伸びと賃金の伸びのギャップは小さいですが、いずれの伸びも大企業より小さい水準となっているところでございます。
続きまして、13ページを御覧ください。賃金について御説明いたします。所定内給与の推移を見ますと、宿泊・飲食業やサービス業の賃金は低い水準で推移しているところでございます。
続きまして、14ページページを御覧ください。企業規模別に見ますと、近年、10人から99人、黄色い線で示したグラフでございますが、こちらの企業の賃金は上昇してきているところでございますが、依然として大企業とは差があるところでございます。
続きまして、15ページを御覧いただければと存じます。最後に兼業・副業やテレワークの導入などについて見てまいります。リクルートワークス研究所のデータによりますと、副業実施の割合を見ると、男女ともに正規の職員・従業員で10%程度、非正規の職員・従業員で15%程度が副業を行っているというところでございます。右の図を見ますと、3割以上が兼業の意向があるというような状況で、ギャップが見られるという状況でございます。
続いて、テレワークについてでございます。16ページを御覧ください。コロナによりまして、導入割合が大幅に上昇しているというのが左の図で見てとれるところでございます。一方で、令和4年8月末時点の段階で見てまいりますと、情報通信業などでテレワーク実施企業の割合が高くなっているという状況でございます。
17ページを御覧いただければと存じます。従業員のエンゲージメントの国際比較を見ますと、日本の水準は世界的に見て低い水準となっておりまして、向上が課題となっているところでございます。こうしたデータなども参考に御議論いただければと存じているところでございます。
なお、先ほど申し上げましたように、冨山委員から資料4の意見書を頂いているところですので、こちらも御議論の中で参考にしていただければと存じているところでございます。
私からの説明は以上でございます。
〇守島部会長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、自由討議に入りたいと思います。御意見、御質問がある方は挙手をお願いしたいと思います。今日は第4期の初回のために全員一通り御発言いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、どうぞ始めてください。石原委員、お願いいたします。
〇石原委員 おはようございます。石原でございます。今期からということでどうぞよろしくお願いいたします。資料の御準備ありがとうございました。
3点ほどございまして、まず、今期のテーマ案というところですが、検討テーマそのものは全く異論のないところですが、テーマ案のタイトルにちょっとひっかかるところがあります。「人口減少社会に即した働き方について」ということでいいのですが、まさに人口減少であり、次のところの「中小企業・地域の雇用を支える産業」というのが矛盾を感じるといいますか、雇用を支えるといってしまうと、働きたい人がいる、その人たちを雇ってあげているという意味になりますが、そうではなくてむしろ足りなくなっているわけですから、地域の生活を支える産業での人手不足の問題の話をするわけなので、「雇用を支える」は語義として違うのではないかと思うというのが1点目でございます。これは御検討いただければ幸いです。
この中で、労働政策の課題ということで人手不足の原因を3つに分けてくださっている、資料2の1ページ目から2ページ目にかけてのところ、(1)の➀、➁、➂、人口減少による人手不足、ミスマッチによる人手不足、制度・慣行に由来する人手不足とありますが、➁と➂は実は特に分けられないのではないかと思っております。➁と➂というのは、➂が問題だから➁が起きるという話ではないかと思っております。例えば賃金が高ければ、学習してその職に就こうとする人は増えるということもあるわけで、➁と➂を厳密に分けて議論することにあまり意味がないのではないかと思うというのが2点目です。
3点目は、ぜひ今後検討いただきたいというか、事実を知りたいと思っているところです。資料3、先ほど頂いたパワーポイントの資料の8ページから10ページまで、労働者の数が女性であっても高齢者であっても外国人であっても増えているというお話なのですが、一方で、例えば8ページにあるとおり、正規雇用は少ないという話があります。労働力の充足の状態を人数で見ることにあまり意味がなくて、いわゆるフルタイム換算という形で見なければ、実際に労働需要に対する充足ということをしっかり考えられないのではないかと思っています。大体何でも人数とかでカウントするのですが、3時間しか働いていません、週に3日しか働いていませんという状態であれば、結局、労働不足の状態に資する度合いは少ないわけなので、これは、いわゆるフルタイム換算あるいは人日という形で見られないのか、見たいという要求という感じでございます。
私のほうから3点を申し上げさせていただきました。ありがとうございます。
〇守島部会長 ありがとうございます。
それでは、佐々木委員がオンラインで手を挙げていらっしゃいます。どうぞ。
〇佐々木(勝)委員 資料を準備していただき、どうもありがとうございます。
私のほうからも3点ほどコメントしたいと思います。
今回、トピックといたしましては人口減少、キーワードとしては中小企業、地域の雇用とあります。大阪は、東大阪を中心に中小企業が非常に多くて、やはり中小企業にフォーカスを当てるということは、日本にとってだけでなく大阪にとっても非常に重要な話かと思います。もう一歩進んで、ここで大企業と中小企業の関係というのもフォーカスを当てたほうがいいのかなと思います。というのは、よく問題になっている優越的地位の濫用によって下請いじめみたいな話がありまして、それに伴って、中小企業で働いている労働者の方の賃金の上昇につながらないという話があるわけです。そういうふうに考えれば、ある意味、中小企業と大企業間の取引をもうちょっと競争的にするような仕組みを考えてもいいのかなと思います。中小企業と大企業の取引がもうちょっと競争的になると、やはり中小企業のバーゲニングパワーが上がり、それによって取引価格が上昇し、それが賃金に反映されるのかと思いますので、そういうところを含めた上で包括的に考えていくのがいいのかと思いました。
2点目は、お話が先ほどありましたとおり、➀、➁、➂というところがありまして、➁、➂というのは似通った話でありまして、➁のミスマッチによる人手不足というのは、ここで話していることは、技能ミスマッチと、情報の非対称に伴う、発生するミスマッチですね。情報の非対称性があるがゆえに、それを解消するためにマッチングシステムの強化だし、技能ミスマッチを解消するために、技能が合うようにリスキリングなどの能力開発を進めていくのだと思います。ミスマッチといったら、そのほかにもいろいろありまして、こういう仕事がしたいという選好によって、相手が求めているものと自分がやりたい選好は労働時間も含めて違います。そういうような選好のミスマッチをカバーしているのが➂と思いますので、➁、➂は、ある意味、全体的なミスマッチをカバーしているのかと思います。
3点目は要望です。研究者がよく厚労省の皆様に言って、さすがに耳にたこができるほどだと思いますが、労働政策を推進する上でやはりデータというのは重要でありまして、ここに書いていますとおり、行政記録情報などの活用を促進できるような仕組みづくりをぜひしていただければと思っております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、続きまして、オンラインで山田委員が手を挙げていらっしゃいます。どうぞ。
○山田委員 ありがとうございます。今回も引き続きよろしくお願いいたします。
まず、事務局の今年の大きなテーマとして、人口減少社会における中小企業・地域の雇用――先ほど雇用を支えるというか、産業そのものという話もありましたけれども、いずれにしてもここにフォーカスするというのは非常に時宜を得た重要なことかと思います。
その観点から大きく2つ申し上げたいのですが、1つは、ここを考えていく前提として、ある意味、労働市場全体を見たときにかなり大きな変化が起こっていると思っています。人口減少もそうなのですけれども、技術の影響なのです。AIを初めとしたデジタル技術の影響で従来のオフィス労働と現場労働の関係に逆転が起こっているのではないかということなのです。というのは、従来、技術を導入すると、ホワイトのほうが希少性があって賃金が上がるというふうなことが起こっていたということなのですけれども、昨今はそこに少し変化が起こって、特にAI等はプロフェッショナルなホワイトの仕事の効率化もこれから進めていくだろうということです。アメリカの賃金の動きなどを見ても、プロフェッショナルなオフィス労働者の賃金の伸びが相対的に鈍化してきて、むしろ現場労働の賃金が上がるということが起こっております。
実は「ロンドン・エコノミスト」も去年の11月ぐらいの記事の中でこれを指摘していまして、「ブルーカラー・ボナンザ」というタイトルで指摘しているわけです。背景にあるのは、AI等の技術というのはホワイトカラーの仕事を効率化するのですが、ブルーをはじめとした現場労働というのはフィジカルなものが入ってきますので、そこは限界があるということです。あと、恐らくは、全体として先進国の場合は高学歴化していっているので、現場労働にあまり入りたがらないということです。特に日本は人口減少の中でその影響が強くなっているということで、全体でそういう変化が起こっている。その問題を背景として認識しながら、今回設定されているこの問題を考えていくということが大事なのではないかということです。
より直接的な話でいきますと、まさに地域のエッセンシャルな仕事、多くはサービスのところにかかっているわけですが、例えば医療、介護とか、物流、建設、あるいはある意味、小売というのも非常にエッセンシャルな部分ではないかと思います。ここが絶対的な労働力不足で、人口減少によって労働力の供給が物すごく減ってしまっているわけです。そうなると、本来は労働需給の関係から賃金が上がって人を集めるということになるのが経済の理屈なのですけれども、現実はなかなかそうはいっていない。絶対的な労働力不足とか、先ほど言いました働いている人たちの選好性、ホワイト的な仕事をしたいとか、だから地域から出ていくということでしょうし、あるいは実際は賃金というのは過去の影響を受けます。いきなり労働需給で決まるのではなくて、過去低い賃金であれば、労働力不足になっている介護とか物流の賃金を上げるかというとなかなかそうは動かない、そういう問題もあるということです。でも、ここの問題はまさにエッセンシャルな労働力なので、どうやってそこを確保していくのかというのは、労働需要というのは産業の派生需要であって、そういう発想だけでは解決しない状況が生まれてきているのではないかと思います。
そこで大事になっているのはプライシングの問題なのではないかということなのです。実際、エッセンシャルなサービスのところは、単純に需給関係で決まっているだけではなくて、例えば介護や医療というのは公共的な価格で決まっている部分が、これは直接ですけれども、あります。それから、物流なども自由だと言いながら、一定の影響もあるということです。だから、こういうエッセンシャルな、非常に構造的な労働供給不足になっているところに十分な人を集めるためには、それだけの十分な賃金を維持するということが必要で、そこにはプライシングの問題がかなり重要なファクターとして入ってくるということなのだと思うのです。
私も今の段階でこの部分をどういう具体的な形で全体として考えていくのかというアイデアはないのですけれども、一部、例えば政府でここ数年、介護労働者の賃金を上げるということで、公共価格の設定の分野もセットで議論するというようなことをされていると思います。こういうところをもうちょっと広げて、物流とか建設なども含めて、ここの価格設定のことも、本来で言うと労働政策からちょっとはみ出てくるのですけれども、もともと労働政策基本部会の視点というのはそういう従来の枠を超えて考えていこうということですが、このメンバーの中にも大橋先生のように競争政策の専門家の先生もいらっしゃいます。そういう視点も入れながら、少し前広に議論していくことが大事ではないかと思います。
ちょっと長くなったのですが、1点、資料の関係で指摘しておきたいのは、図表がいろいろあった資料3の11ページです。産業別労働生産性の推移が示されて、これは非常に興味深いのですが、1点コメントしておきたいのは、縦軸に時間当たりの実質労働生産性をとっています。もともと実質労働生産性の計測というのは極めて難しいと思います。というのは、実質GDPの計測は、製造業は比較的計測しやすいのですが、サービスというのは非常に難しくて、品質をどこまで測れるのかというのは半分以上不可能と言ってもいいのではないかと思っています。これを見るときに、先ほど申し上げた価格の問題ともかかわるのですけれども、これはこれで出すのも大事なのですが、名目ベースの時間当たりの労働生産性も一緒に並行して見ていくことも必要ではないかと思います。
そもそもどうしてもサービス業の一部の部分というのは、いわゆる実質ベースの生産性を上げる限界もあるのは事実ですので、でも社会全体の機能として必要であれば、そこの賃金水準を必ずしも生産性水準と連動させずに、実質生産性と連動させずに上げていくというのも社会の機能としては重要なことですので、そういう議論の前提になるということでも、例えばこの縦軸を名目ベースの生産性で見てみるということも大事ではないかと思います。ちなみに言うと、事前に提出されていました冨山委員が付加価値労働生産性ということを指摘されています。まさに名目の付加価値というのが大事ではないかと思います。
ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、逢見委員、お願いいたします。
○逢見委員 今期から委員になりました逢見です。よろしくお願いします。
テーマの「人口減少社会に即した働き方」というのは非常に時宜を得たものであり、とりわけ「中小企業・地域の雇用を支える産業」「能力発揮」ということも非常に重要なテーマだと思います。その上で何点か申し上げたいと思います。
人手不足ということで、労働力の充足をどうするかというのが課題として出てくるのですが、これが量的充足という面だけに偏ってしまってはいけないと思っています。やはり労働の質ということが同時に達成されなければいけないと考えています。ディーセントワークということが言われていますが、とりわけ中小企業とか地域雇用においては、賃金や労働時間など、ディーセントということでみると遅れているところがあって、雇用の質と量という両面から見ていかなければいけないということを申し上げておきたいと思います。
それから、能力発揮ということでいきますと、やはり人的投資ということが重要になります。今日の資料には出ていませんが、国際比較すると、日本の人的投資というのは公的にも民のレベルでも国際的には劣っているという指摘があります。こうした問題から、能力開発投資ということは官民挙げてもう少し見直していかなければいけない、もっと重視していかなければいけないということだと思います。ただし、DX人材の不足ということは、中小とか地域雇用だけの問題ではなくて全体に関わる問題ですので、こういった分野の能力開発についてはもう少し幅広い視点から取り組む必要があるのではないかと思います。
それから、商慣行の見直しも指摘されています。これも非常に重要だと思っています。今、2024年問題が注目されています。労働時間の三六協定の上限規制の適用猶予があった建設、自動車運転者等について、今年4月に猶予措置が廃止されますが、このまま何もしなければ物流に相当影響があるのではないかと言われています。そうした中で今、課題とされているのは、商慣行であり、例えば建設業でいうと、発注者と事業をする側の関係の商慣行、あるいは物流でいうと、荷主とドライバーの関係の中での、荷待ち時間や、あるいは本来ドライバーがやらなくてもいいような荷下ろしの作業、そういったものが長時間労働につながっているという指摘もあります。こうした商慣行というのも、特に中小企業において賃上げ、あるいは価格転嫁ができない状況を生み出しているひとつの要因であるという指摘がなされております。こういったことを見直していかないと、ディーセントワークの実現というレベルにはならないのではないかと思います。
あともう一つ、消費者の中で、個々人がサービスの在り方を考えるということも指摘されています。今まで当たり前だと思っていたサービスの中で、これらによって事業を提供する側に様々なしわ寄せが生じています。最近は環境の観点からレジ袋をもらわない、セルフレジ、キャッシュレス決済、そういうものが進みつつあって、業務の効率化につながっているという点では評価すべきだと思います。ただ、例えば物流でいうと、送料無料という表現を見直してほしいという要望が消費者庁に出されております。送料無料というと、物流業をやっている人たちの労働の価値が非常に低いようなものに見られてしまいます。山田先生も言われた、人々の暮らしを支えているエッセンシャルな労働ということでいうと、そこに正当な対価があって評価していくという観点からも無料で働いているようなイメージをなくしていく。そうした様々な分野の当たり前だと思っていたことの見直しを消費者サイドからもやっていく、そういった取り組みが必要ではないかと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、続きまして、オンラインの岡本委員、お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。岡本です、よろしくお願いいたします。
資料2の(2)の「中小企業・地域の雇用を支える産業の人手確保への対応について」、数点発言させていただきます。
人口減少による人手不足についてなのですが、この課題を何十年議論してきたのだろうというのが率直な思いです。ただ、いよいよせっぱ詰まって人手不足が見えてきている中で、しっかりと具体的な議論ができればいいと思います。
女性の働き方について「キャリア形成の在り方」と記載がありますが、女性のキャリア形成は非正規雇用の課題とも関係が深いことに留意すべきであると思います。特に非正規雇用で働く人たちは正規雇用と比べて能力開発機会が少ないということも大きな課題ではないかと思っています。
それから、外国人労働者の活用に関してなのですが、これもかつて高齢者か、女性、また外国人労働者の雇用か、のような議論がありましたけれども、日本人労働者の確保が困難だから外国人労働者を受け入れるということでは本質的な問題解決にはならないのではないかと思います。国籍を問わず、誰もが働きやすい環境整備や待遇改善を進めるためには、産業政策や地域振興の強化というものも図るべきだと考えます。
それから「多様な働き方を可能とする就業環境の整備」についてです。非正規雇用とか雇用類似など多様な就業形態というものが記載されていますが、コロナ禍ではこうした働き方の社会的セーフティーネットの脆弱性というものが明らかになったと思います。誰もが安心して働ける社会の実現に向けて、社会的セーフティーネットの整備は喫緊の課題だと感じています。
一方で足元では、多様な働き方の促進の名の下に、労働者からフリーランスなどへの置き換えを進めようとする動きが見られます。ライドシェアの問題を含めて、諸外国で顕在化している課題や、雇用労働者の待遇への影響、産業の健全な発展といった課題もあります。正規雇用から非正規雇用、さらにはフリーランスへと、保護の弱い就業形態に安易に置き換えが進むことのないように、本部会においては警笛を鳴らすメッセージを出すべきではないかと思っています。
フリーランス保護に関しては、これまでフリーランス新法の成立とか、労災保険特別加入の適用対象業務の拡大、労働安全衛生対策強化に向けた検討など、様々な方面の努力があって一定の進展が見られているということは私も感じています。一方、フリーランスの中には労働者に近い働き方も存在しています。これまでも申し上げてきましたけれども、社会実態の変化や就業形態の多様化などを踏まえて、労働者概念の見直しについて厚生労働省の専門部会で検討を進めていくべきではないかと思います。EUやアメリカでも議論が進んでいますので、諸外国の議論も参考にしながら、ぜひ進めていただきたいと思っています。
私からは以上です。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、続きまして、オンラインの春川委員、お願いいたします。
○春川委員 どうもありがとうございます。先期より引き続き、よろしくお願いいたします。
私からは2点、発言させていただきます。
1つは、検討テーマの中にありました(3)の「労働政策の立案・実施のあり方」についてです。データ活用について議論していきたいということについて賛同の立場での意見になります。ICT、ビッグデータの進展・活用というものが今、世の中で物すごく進んでいます。こういった労働政策の立案・実施に当たりましては、様々な客観的なデータを適切に分析・判断していくことで、政策の実効性を高めていくことがとても重要だと思っています。労働政策審議会の様々な分科会、部会におかれてもエビデンスを踏まえた取組が進められていると聞いておりますので、そういった分科会、部会において効果検証などを行う折に、どのように参照すればいいのかといった活用法や、事例を示していくことも重要ではなかろうかと思っています。
私が従事している会社のグループ会社の中には、地域に根差したグループ会社も幾つかありまして、そこで雇用され働いている従業員の状況などを聞きますと、入社するに当たって、UターンあるいはIターンというような形で地域の会社に入社してくる従業員もたくさんいます。そういったところも分析の一つとして取り上げれば、今回のテーマに沿った検証ができるのではなかろうかと思っています。この立案・実施の在り方についても、しっかりと議論していきたいと考えています。
2点目は労働者の立場として申し上げたいところなのですが、こういった人手不足、また地域における雇用ということになると、それらの対応においておのずと労働移動の話も出てくるだろうと想定しています。ただ、労働移動そのものを主たる政策の目的とするのではなくて、それぞれの地域においても成長産業あるいは人手不足の産業において、労働者自らが希望するような処遇や安定した雇用の環境というものを整備していくことが最も重要だと考えています。そういった環境整備が不十分な状態で労働移動が促進されるようなことがあれば、結果的には雇用の定着にもつながらないと考えています。労働者にとって魅力ある産業が発展するための産業政策あるいは人材の育成につながる施策も十分拡充していくことが必要なのではないかと思っておりますことを申し添えておきます。
私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか、では川﨑委員、お願いいたします。
○川﨑委員 ありがとうございます。またどうぞよろしくお願いいたします。
検討テーマにつきましては、人口減少社会というところは、皆さんも御発言があったとおり、このテーマで進んでいこうと思うところなのですけれども、私からは2点、コメントさせていただければと思っています。
この労働政策基本部会は、労働政策にとどまらず、広く問題、課題になるようなところを俯瞰していって提言していこうというふうな側面を一つ持っていると認識しています。その中で考えていくと、分析の中にも出ていましたが、一つは外国人労働者が増えてきています。外国人労働者が増えるというのは、労働者が増えるだけではなくて、今後、外国人の家族、子供、そういった部分も増えていくということが当然想定されていくわけで、そういうふうになってきたときに、日本の社会としてどうやって外国人を受け入れて地域社会を成り立たせていくのかというところも一つ検討項目の射程に入れていただければと思っています。単純に労働者として日本人が就きたがらないところに外国人に就いてもらおうという観点からの受入れでは、もうやっていけないというところから、外国人の受入れに関しては変わっていこうとしていると認識していますが、それを一歩踏み込んだ形で何か提言できるものがあるのかというところが1点目のコメントです。
2点目のコメントですけれども、非正規で働く女性が多いというか、M字型雇用の解消が進んだものの、L字型雇用の課題点が出てきているというものが挙げられていると思います。今、年収の壁を解消していこうということでいろんな取組がされています。ただ、年収の壁は、一つは所得税の問題だったり、あるいは社会保障の問題だったり、いろんな政策の壁があって、これをどうクリアしていくのかというと、実は働いている本人からすれば、一体何を基準に考えて、どういう壁の越え方が自分にとって適切な働き方かがよく分からないという現状になっていると思っています。ここの壁を越えていくことに関してのメッセージをどう出せるか。ここは女性にとどまらず、非正規で働いていくところでの雇用の拡充、短い労働時間から長時間働いて能力の開発と本人の年収の増加みたいなところにどうつなげられるのかというのも、労働政策と違う観点からのメッセージが出せればいいかなと思っていますので、労働政策を少し踏み越えた部分も今回は検討できればと思っています。
私からはコメントでございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか、武田委員、お願いいたします。
○武田委員 このたびもお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、事務局におかれましては、大変充実した資料の御提示、御説明、ありがとうございました。
テーマには違和感ございません。その上で3点申し上げたいと思います。
1点目は新しい変化について、2点目は旧弊についてです。労働市場にとどまらないというお話が、川﨑委員からもございましたけれども、私も全く同じ思いです。後ほど申し上げます。3点目はエビデンス事例です。3点について順を追って述べます。
1点目の新しい変化についてです。前回の部会でも労働市場全体への影響として、DX、AI等の影響については議論してきたところです。前回この点を議論しましたが、思いますのは、地域、中小企業はまだDX、AIの導入が進んでおらず、逆の言い方をすれば、導入の余地、それによって変化していく余地があるのではないかということでございます。また、この1年で一番変化したのは生成AIが出てきたことです。前回は最後のほうでそれを少し議論させていただいた記憶があります。弊社で従来型のDXと生成AIが労働市場あるいはスキル別に見て労働代替にどういうインパクトがあるか試算しました。従来型は確かに、いわゆるホワイトカラーの雇用代替という面が非常に大きかったのですが、生成AIで分析し直しますと、その分析はアメリカのある大学でだされた論文に基づき日本に当てはめたらどうなるか試算したものですが、結果は必ずしも定型的なタスクの代替だけではなく、むしろ創造的なタスクの部分での代替もかなり強めに出てきており、様相が変わってきています。また、AIとロボティクスが組み合わさっていきますと、今は価格が高く中小企業で導入は難しいと思いますが、いずれそれが広がり価格が下がれば、冨山委員の文章にもございましたように、補完財的に生産性向上に資する部分があるのも事実でございます。刻々と技術、AI、デジタルの使われ方が変わってきている中で、地域、中小企業という文脈においてもデジタル技術の影響はしっかり見ていく必要があるのではないか、これが1点目です。
2点目が旧弊の部分です。制度や慣行が労働問題に大きな影響を及ぼしていることはほぼ周知の事実で、あとはいかに変えられるかという問題と思います。川﨑委員もおっしゃったとおり、労働市場を見ている側からこうした問題が大きな供給制約になっていることをしっかり訴えませんと、税制も社会保障制度についてもそれぞれ関係性が非常に強まってきていますから、ここで変えなければ、5年後、10年後の地域は大変になるというメッセージを出していくことが地域にとって大変プラスになると思います。全てが大変な状況になってからでは遅いため、労働以外の制度・慣習の見直しもしっかりメッセージを出していくことの重要性を共有させていただければありがたいと思います。
3点目が地域の実情とエビデンスです。地域、中小企業と言いましても様々ではないかと思います。最近、九州では半導体産業の周辺で状況がかなり変わってきており、また北海道でもインバウンドで有名になったニセコなどでは賃金や物価が東京以上という話もあり、一くくりでは語れないところも出てきています。このようにさまざまな取組が先進的に進められているところはあるように思います。同時に、全体で見たときのデータがどうかという点も含めてエビデンスベースで考えていければ大変ありがたいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかに、山川委員、お願いいたします。
○山川委員 いつも最後に発言している山川です。今回もよろしくお願いします。
頂いたテーマについてはもちろん私も賛成なのですけれども、1点だけ、人手不足の解消のところに女性とか高齢者を活用していきましょうという、外国人もそうなのですけれども、それ自体はそうなのですけれども、欠けている視点が、人手不足だから女性と高齢者を活用していこうぜということの逆で、要は今まで何で活用されていなかったのか、今まで働きたいように働けていなかったのだというところが根本的な問題だと思うのです。
女性に関して言えば、例えば補助的労働とかケア労働的な労働ではない労働をしたい人ももちろんたくさんいたのだけれども、社会構造だったり、家庭の構造だったりとか、アンコンシャスですらないコンシャスバイアスがあったりして、なかなか今まで希望するようには働けなかったので、活用していきましょうというよりも、今まで働けていなかった人をちゃんと働きたいように働かせてあげましょうという視点は必要なのかなと。でないと、こっちからすると急に輝けと言われても、えっという感じになるではないですか。そういう問題ではなくて、主体的にやりたいことができるようにする。
その観点から言うと、高齢者の話は重要というか、結構大きな問題と思っています。これは、寿命が延びた、寿命というか、健康寿命が延びたというところが圧倒的に大きくて、人手不足の解消にも使えるのだけれども、別の大きな問題として考えるべき問題なのかと思います。よく言われているのは、サザエさんの波平さんは54歳で、今見ても64歳でもちょっと違和感がある。74歳かなとか、84歳でもいいぐらいで、そんな話ではないですか。そうなってくると、65歳以上を高齢者と呼んでいいのかどうかも分からないのだけれども、その人たちがどうしたいのか、どういう意識なのか。平均寿命が100歳まで伸びたら、60歳で定年させられても、人手不足とか以前の問題として、高齢者の方の問題として、困ると思うのです。
そうすると、大きな問題として、そもそも日本にある割と特殊な定年制をどうするのか。誰がどう見ても、きれいに年齢による差別ですね。そんなものを維持していいのですかという話もあるし、定年制というのは基本的には差別だと思うから撤廃すべきだと思うのだけれども、そこだけぽんと撤廃するといろいろ問題があるのですが、結局、高齢者をどうするかということを考えると、多分ここに上がっているような論点が全部出てくるのです。高齢者が働くにしても、昔みたいに24時間働きたくないに決まっているから、長時間労働の問題もあるし、ミスマッチの問題もある。キャリア転換の問題もあるし、マッチング機能の問題もあるし、柔軟な働き方の問題もある。そういうこともあるので、労働者の働く側からの視点とか、そういうところも入れたほうがいいかなと思いました。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたかいらっしゃいますでしょうか。
では、私からも一言言わせていただきたいと思います。
今回事務局から頂いたテーマ案と、冨山委員のもともとの文章を比べて読ませていただきますと、一つ大きく違うと思うのは、一種の切迫感というか、タイムホライズンが今回の事務局の文章の中にはほとんど何も見えてこないという感じがいたしました。
2070年になると9000万人の人口になるという話もありましたけれども、それまで待っているわけにはとてもいかない話なので、この部会の報告書を私も2回か3回ぐらい取りまとめのお手伝いをさせていただきましたけれども、常にいつまでにやるかというのがあまりない報告書で、言いっ放しになっていることがあるかなと思うので、強い言い方で申し訳ないのですけれども、タイムホライズンを、いつまでにこれはやらなくてはいけないみたいなことを、今回の報告書というか、最終的な取りまとめをする中ではぜひ加えていただきたいという感じがいたしました。特にこういうふうな人口の問題が主ですから、結果がでるのは、相当先になるのですけれども、さっき申し上げたようにそれまで待っているわけにはいかないというのが1点です。
そういうふうに感じた一つの理由というのは、昨日、別の省のこういう問題の検討会に出ていまして、そこで今、地方の中小企業はどんどんいわゆる業務委託であるとか、副業などの働き方の人材の獲得に移っているのです。政府が副業などをそういうことをすすめるというか、やろうという掛け声をしているということもあるのですが、どんどんやっているのです。でも、そういうふうな働き方の増加が果たして社会として、さっき岡本委員もちょっと言われましたけれども、社会としていい方向なのかということもある。現場はどんどん対応していくわけですから、それを放っておいて見ているということが果たして政府としていいのかどうかということも考えなくてはいけない。そういう意味で言うと、タイムホライズンであるとか、逆に言うと、今、進んでいる動きをもうちょっとちゃんと把握した上で、それに対してブレーキをかけるという言い方がいいかどうか分かりませんけれども、そういうことをやっていったほうがいいような気はするので、もう少し切迫感みたいなものが出てくるといいかなという感じがしました。
それから、第2点、これはまず質問なのですけれども、今回、エンゲージメントのデータを最後にお出しになっていたと思うのですが、エンゲージメントのデータというのはどうか意図で事務局としては入れられたのでしょうか。そこからお答えいただけますでしょうか。
○中井労働経済特別研究官 ありがとうございます。
エンゲージメントについて言えば、先ほど山川委員からも労働者側の立場に立ってといった話があったと思いますが、我々自身もやはりそういう視点は常に持たなければいけないと考えています。こうした話は、どうしても先ほどの労働力供給をどうするかといった話にもなってきますが、最終的には働く人が幸せになっていかなければいけないという社会をつくるという観点から、働く人の視点はやはり持つべき視点ということで、色々な視点がある中で資料にはあえて入れたほうがいいのではないかということで入れさせていただいたものです。
○守島部会長 ありがとうございます。
要するに、働く人の視点をやはり考慮しなければいけないのではないかという話だと思います。そう考えて、アメリカのデータを見ると断トツに高いのですけれども、アメリカは働く人にとってそんな幸せな社会なのかというのが個人的にはすごく疑問があって、エンゲージメントというのは要するに頑張ってやるという指標ですから、逆に言うと、いつ解雇になるかも分からないし、いつ給与が減額になるかも分からないという状態の中で頑張っているという可能性もあります。私は個人的にはそういう部分がこの国際間の比較の中で大きいのかなと思っています。
そういう意味で言うと、働く人の視点を入れるというときに、エンゲージメントは確かに重要なデータで、私も研究テーマとしていろいろ研究しているのですけれども、アメリカが高いからいい、カナダが高いからいいという話でも必ずしもないのではないかと思います。実はこの裏にある、どういう社会として日本が生きていきたいのかという部分を議論した上でないと、これを見てアメリカはいい国だねというふうには素直には言えないと思うので、そこの部分もぜひ考えていただきたいと個人的には思います。
それでは、一応一巡したので、ほかの方、何か追加の御意見とかおありになれば、オンラインの方も大丈夫ですか。
それでは、御意見も一応出尽くしたようなので、今回の議論はこれで終了とさせていただきたいと思います。活発な御意見をどうもありがとうございました。
当部会で検討を進めるテーマについては、本日頂戴した御意見を十分に勘案いたしまして、私と事務局で検討して委員の皆様と御相談の上、決めていければと思います。
最後に、次回の日程等について事務局からお願いします。
○平嶋政策統括官付参事官 次回の日程につきましては、座長や委員の皆様と調整の上、また御連絡したいと思います。よろしくお願いします。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、以上で本日の「労働政策基本部会」は終了いたしたいと思います。御多忙の中、御出席いただき、また御意見を頂き、どうもありがとうございました。