第26回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和4年12月23日(金)10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)

出席者

(委員)(五十音順)
入山委員 大橋委員 岡本委員 古賀委員 佐々木委員 武田委員 春川委員 守島部会長 山川委員 山田委員
(ヒアリング対象者)
橋本 ゆかり氏(アフラック生命保険株式会社)
伊藤 道博氏(アフラック生命保険株式会社)

(事務局)
小林厚生労働審議官、中村政策統括官(総合政策担当)、田中政策立案総括審議官、蒔苗政策統括官付参事官、古屋政策統括官付政策統括室労働経済調査官、古舘労働基準局総務課長、牛島雇用環境・均等局総務課長、長良人材開発統括官付人材開発総務担当参事官、宮元職業安定局雇用復興企画官

議題

  1. (1)ヒアリング
  2. (2)その他

議事

議事内容
○守島部会長 皆さん方、おはようございます。おそろいのようですので、始めさせていただきたいと思います。ただいまから「第26回労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日は、所用により、石山委員、川﨑委員、冨山委員、中野委員が御欠席でございます。
 あと、入山委員は、所用のため、途中で退席されると伺っております。
 議事に入ります前に、オンラインでの開催に関しまして、事務局から御説明があります。
○古屋政策統括官付労働経済調査官 おはようございます。事務局の古屋でございます。
 オンラインの開催に関しまして、留意事項を御説明いたします。
 まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしていただくようお願いいたします。
 委員の皆様、御発言の際は「参加者パネル」の御自身のお名前の横にあります「挙手ボタン」を押して、部会長から御指名があるまでお待ちいただければと存じます。部会長から御指名がありました後、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度「挙手ボタン」を押して、挙手の状態を解除していただくようお願いします。
 通信の状態などにより、音声での発言が難しい場合につきましては、チャットで発言内容をお送りいただくようお願いいたします。
 また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りいたしております電話番号まで御連絡いただくようお願いいします。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、本日の進め方について御説明いたします。
 最初に、ダイバーシティ推進と新しい人事制度の取組について、アフラック生命保険株式会社橋本様及び伊藤様にお話をいただきます。
 その後、ダイバーシティ経営の利点と「ダイバーシティインデックス」の必要性についてというタイトルで、佐々木委員からお話をいただきます。
 お二人のプレゼンテーションが終了した後に、まとめて質疑応答及び自由討議を行いたいと思います。
 それでは、ヒアリングに早速入りたいと思います。最初に、橋本様、伊藤様、よろしくお願いいたします。
○アフラック生命保険株式会社橋本氏 ありがとうございます。
 では、皆様、改めまして、おはようございます。本日は、当社、アフラックの取組を紹介させていただくという大変貴重な機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。私は、ダイバーシティ推進部を担当しております執行役員の橋本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、こちらのアジェンダで御説明させていただきます。冒頭、ダイバーシティ推進の部分を私から、そして、後半、人財マネジメントに関しては、人事担当役員の、伊藤から説明させていただきます。
 まず、当社の概要でございます。当社は、米国の生命保険会社の支店として、1974年に日本で初めてがん保険を販売する保険会社として創業いたしました。2018年に米国の支店から「アフラック生命保険株式会社」に移行しまして、名実ともに日本の生命保険会社となりました。
 当社は、がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたいという思いから、がん保険を提供する保険会社として創業して以来、当社独自の資源や専門性を生かして社会的課題を解決することによりまして、社会と共有できる価値を創造するというCSV経営を経営戦略のフレームワークとしてきました。
 当社は、日本で創業50周年となる2024年に向けまして、Aflac VISION2024を掲げて、「生きる」を創るリーディングカンパニーへ飛躍することを目指しております。
 2022年から3年間の中期経営戦略では、5つの戦略を掲げ、中でも人財マネジメント戦略を第一の柱に位置づけております。これは、当社の成長の源泉は人財であるという強い考えを表しているものになります。
 それでは、ダイバーシティ推進と「アフラック Work SMART」について御説明させていただきます。当社では、働き方改革を「アフラック Work SMART」と呼んでおります。
 まず、当社の女性活躍の歴史です。当社は、創業時から社員の役割期待など、男女差は設けておりません。創業メンバーも、16名中9名が女性で、生保初の女性役員を輩出したり、女性の営業支社長を輩出したり等、女性の活躍が当たり前である会社だと考えてきました。しかし、高く推移していた当社の女性管理職比率は、徐々に産業界と差がほとんどない状態であることが、あるときに分かりまして、当時の経営陣が衝撃を受けて女性活躍推進の取組を2014年から加速させました。
 まず、経営目標としては、御覧のとおり、2つの目標を掲げております。この目標の達成に向けまして、女性の活躍推進プログラムを策定して、重要6領域というものを定めて、様々な施策を実施してまいりました。
 ダイバーシティ推進においては、経営トップのコミットメントが最も重要だと考えております。一例としまして、日米合同のイベントを定期的に開催しております。ここでダイバーシティ推進が重要な経営戦略であることを社員に伝えています。参加者の満足度は毎回大変高く、社員がダイバーシティについて考える貴重な機会となっております。
 社内の推進体制でございますが、当社ではダイバーシティ推進委員会を設置しております。委員長は、社長が務めて推進をリードしております。
 管理職候補の女性社員が、視座を高め、視野を広げる機会として、役員向けのプレゼンテーションの機会も多くつくっております。トレーニングの最終プログラムとして、社長に向けてプレゼンテーションの機会を設けているというのも、その1つになります。
 また、社長もそうですけれども、役員と部長がメンターとなるメンタリング制度を導入しております。御覧のようにメンターの一覧を公開しておりまして、社員が指名してエントリーするという、当社がとっている、ちょっとおもしろい取組ではないかなと思っております。
 当社独自の制度といたしましては、リモートキャリアがあります。当社は全国に拠点がありますけれども、東京・大阪以外のエリアでは、転勤しない社員は営業以外の経験をすることが難しくなっています。このため、東京や大阪にある部署の業務を、地方の社員がリモートで従事することができる制度を導入いたしました。
 また、女性社員のキャリア開発のために、管理職は一人一人の育成計画書をつくって、定期的に面談を続けています。当初は女性のみが対象だったのですけれども、今では少し形を変えまして、性別とか役職を問わずに展開しております。
 当社では、女性活躍だけではなく、多様な人財が活躍できる環境の整備を進めております。男性の育児参画について、お話しをさせていただきます。
 当社では、2018年から男性の育児休職の取得の推進をスタートさせました。100%取得を目標に掲げまして、育休期間の5日間の有給化であるとか、各種セミナーによる啓発などを続けてまいりました。
 特に、上司への働きかけには力を入れておりまして、部下に子供が生まれたタイミングで、上司に制度の説明をして、部下との面談で取得時期を決めるように案内しています。そして、進捗を管理しているということが重要です。その結果、1.6%だった取得率は、2019年以降に100%になり、それを維持しております。平均取得日数は、直近のデータですと約16日となっております。
 働き方改革である「アフラック Work SMART」について、お話しをします。
 5つの原則というものを定めて取り組んでおります。御覧の青い箱、5つになります。こちらの英語の頭文字をつなげまして、「アフラック Work SMART」と名づけて推進してまいりました。この取組は、社員一人一人が仕事の進め方を見直すとともに、時間と場所にとらわれない働き方の実現に向けて、社員のワーク・ライフ・マネジメントの実現と組織としてのパフォーマンスを最大化することを目指しております。
 具体的には、2016年からテレワークやフレックスタイム制度を軸とした、時間と場所にとらわれない働き方を進めてきました。これらの制度は、育児や介護と両立している一部の社員だけが利用するという制度ではなく、全社員が利用できます。一部の社員だけが取得できる制度にしてしまいますと、その社員が取りにくくなりますし、制度を利用できない社員はネガティブな感情を持つということで、会社の風土にはならないということになりますので、導入当初から全社員が利用できる制度にしております。
 当社では、以前から在宅勤務は推進しておりましたが、コロナをきっかけにテレワークが一気に進むこととなりました。ウィズコロナの現在は、リモートとオフィス、それぞれの価値を理解して、組織成果を最大化するための働き方を実現する環境を整備しております。これと併せてオフィスのフリーアドレス化を進めており、最近、社長室もなくなりました。
 オフィスで働く価値として、エンゲージメント、コラボレーション、ネットワーキング、ラーニングの4つの価値を定義して、リモートとオフィスを使い分けております。
 当社は「イノベーション企業文化の醸成」を経営戦略に掲げています。そのための手段として、今まで御説明させていただいたとおり、ダイバーシティ推進と「アフラック Work SMART」を両輪で取り組んでいます。
 成果を幾つか御紹介したいと思います。指導的立場に占める女性割合は、目標を1年前倒しして30%を超えました。また、ライン長の女性割合につきましても、今年中に25%を達成する予定でございます。
 また、女性の活躍推進には、会社を退職せずに仕事と家庭を両立させてキャリアを助ける環境が必要になってまいります。以前の離職率は20代女性で14%、30代女性で7%と大変高かったのですけれども、今では男性社員と変わらない3~4%の水準まで低下しております。
 また、当社は、お子さんが小学生の間は時短勤務を選択できる制度があるのですけれども、時短勤務が長く続くと職場での経験を積む期間が短くなってしまうということがあります。育児を理由とした時短勤務者が減少していることも、キャリアを築きやすい環境になってきたことを表していると考えております。
 こうした取組が当社にどのように生かされているかについてでございますけれども、VUCAと言われている時代に持続的に成長するために、当社も変革に向けた様々な取組を行っているわけですけれども、改めて振り返ってみますと、2014年にダイバーシティ推進の取組を本格的に開始しましたことが、これら様々な取組における変革のドライバーになっていると考えております。
 まず、働き方改革が進みました。当社は、これまでもノー残業デーや業務の見直しということを行ってきましたけれども、なかなか効果が上がりませんでした。しかし、長時間労働を前提とした働き方を改革することは、ダイバーシティ推進に不可欠であるとの理解が浸透したこと。また、「アフラック Work SMART」を一緒に進めてきたことで、所定外労働時間の削減であったり、時間と場所にとらわれない働き方の改革につながりました。
 また、多様な人財が活躍して会社の先進的な取組を牽引しているということも挙げられます。アジャイルの推進やDXの推進は、会社の先進的な取組になりますけれども、当社では女性がこれらを牽引しています。ダイバーシティ推進によって様々な環境が整っていなければ、十分に能力を発揮することができなかったかもしれないというふうにも考えられます。この2つの部署の女性部長は、本年1月から役員として活躍しております。
 さらに、社員の変化に対応できるようになってきたということも挙げられると思っております。オフィスで9時から5時まで働くという固定化された働き方から、柔軟な働き方への変化であったり、ルールどおりに業務を行うことから、プリンシプルベースでの業務運営への変化であったり、外部環境の変化に応じて対応することへの理解が高まってきました。ダイバーシティ推進は目的ではなくて、企業変革の手段であると考えております。
 続きまして、人財マネジメントについて、人事担当役員の伊藤から説明いたします。よろしくお願いします。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 続きまして、伊藤のほうから、人財マネジメント制度、キャリア形成支援、人財育成といったところについて御説明さしあげます。スライドが多いですので、重要なところだけピックアップして御説明していきたいと思います。
 まず、前提となる考え方ですけれども、当社では、人財を大切にすることでビジネスが発展するという考えを「人財を大切にするコアバリュー」と称しまして、これは1955年のアメリカでの創業以来、ずっと大切にしてきております。
 そのコアバリューの下、人財マネジメントの戦略をデザインしています。こちらが全体マップになります。詳細は割愛いたしますが、立て付けだけ御説明させていただきます。
 まず、1番目、人財マネジメント戦略を通じて、アフラックのビジョンを実現していくということを示しています。
 2つ目として、戦略の「核」となるのは人財エンゲージメントを強化していくことと掲げております。
 そして、3番目に、戦略を実現する戦術として、2つの柱の下、様々な施策を展開しています。
 そして、そうした取組の実効性を確保していくための仕組みやガバナンスを4番目のところで整理しております。
 こういった全体感を体系立てて、様々な人事上の施策を行っているということでございます。
 人財マネジメント制度、いわゆる人事制度ですけれども、「新」とついていますのは、2021年に、従来の職能等級制度から職務等級制度へと変更いたしました。この制度の理念は、一言で言うと、自律的なキャリア形成支援をしていこうということにあります。変化の激しい時代に企業価値を高めていくためには、一人一人が主体的に活躍できる環境をつくっていかないといけないという強い経営の思いがあって、制度改革を実行いたしました。
 職務等級制度の概念図でございます。
 左の絵のとおり、まず、各ポジションに求められる役割、ミッション、職務を明確に職務記述書に提示いたします。その仕事の大きさでグレードが決まっていくということになります。いわゆるジョブベースになりますので、配置の在り方は適所適財で行っています。いわゆる社歴とか年齢、性別といったものに関係なく、意欲と能力のある人財を配置していこうということです。まだ発生していないのですけれども、制度上は20代でも管理職になれます。実際、飛び級で管理職に登用されているケースは多く発生しています。
 同時に、若い人を登用していくことを目的とした制度ではありませんから、役職定年制、年齢が来たらポストオフにするみたいなものは廃止いたしました。誰もが活躍できるような環境づくりというのを目指しております。 
 この職務記述書は一番大切なものだと思っておりまして、全部で1400ポスト分あります。全て社内に公開して、誰でも見られるようにしています。ちなみに、社長の職務記述書とか我々役員の分も全て公開されています。この公開の目的は何かというと、制度の透明性を確保するというのもあるのですが、1番は、社員のキャリア形成を支援していくためということになります。目指すキャリア、そこで求められる知識や経験といったものを意識させていくことが、キャリア自律の第一歩になるという思いの下に公開しています。 
 それから、主体的なキャリア形成支援ということについても御紹介したいと思います。
 最初にお伝えしたいのは、ジョブ・ポスティング(社内公募制度)ということで、これは自分でキャリアをつかんでいくという意味では、非常に重要な制度として大切にしてきております。当社では、実は20年ぐらい前から実施しているのですけれども、御覧のように新しい制度に変わって、キャリア自律が大切だというメッセージが伝わったこともあると思うのですけれども、募集ポスト数、応募者数、手を挙げる社員が3倍ぐらいに増えました。実際、例えば課長とか支社長といったポストも公募していますので、そこに一般社員が手を挙げて管理職に登用されるようなケースもたくさん出てきております。
 一方、私たちの会社としては、全ての異動をジョブ・ポスティングで行えばいいと考えているわけではございません。当社は保険会社で、全国にお客様がいらっしゃって、全国に事業所もありますので、人財を機動的に配置していくことが非常に大切だと思っています。もちろん、本人の希望を踏まえた上ではあるのですけれども、会社主導の異動というのも組み合わせたローテーション、人財配置を行っております。
 特に、37ページの緑色のところになるのですけれども、キャリア初期、これは新卒で入社して10年ぐらいまでを意味しますけれども、ここは特に営業とか保険の支払いとか事務とか、会社のコアビジネスのところをちゃんと経験させることが大事だと思っていて、積極的にローテーションを行っております。
 そして、自律的なキャリア形成という観点では、今年、新卒採用の在り方も少し見直しました。最近、「配属ガチャ」みたいな言葉があって、入社してどこに配属されるか分からないみたいなことで学生が不安になっているという話もありますけれども、やりたいことが明確な学生には、内定時に初期配属先を確約する制度を導入いたしました。非常に好評でして、来年、当社は50人、新卒を配属するのですけれども、約2割がこの制度を利用して入ってくることになっております。
 そして、最後に人財育成でございます。人財育成のタグラインは「自分を創る。未来を創る。」ということで、個人に向き合うことを大切にしています。
 キャリア形成といったときには、詰まるところ、社員一人一人に向き合っていくということが大切になってきます。そこで、私たちの会社では、キャリア開発計画書、CDPと呼んでいますけれども、これを中核に据えた人財育成を行っています。
 ちょっと小さくて見づらいのですけれども、このCDPのシートでは、自分の目指すキャリア、さっきの職務記述書も参考にしながら考えてもらって、求められる経験やスキルに照らして、現状の自分がどうか、この辺を棚卸していく。それを上司が1on1を通じて支援していく。そのフィードバックと能力開発のサイクルを回していくことを大切にしています。
 CDPをベースにしていくと、よりパーソナライズされた能力開発支援が会社に求められるようになってきていますので、Aflac Caféという自己啓発のための支援金、これは最大10万円使えるのですけれども、これを支給する仕組みもございます。基本的には何でも使えまして、御覧のように、ビジネススクールに行ったり、通信教育を受けたりというような利用をされています。ただ、何でも全て自己啓発でやりなさいと言っているわけではなくて、このスライドの中にはありませんけれども、会社として当然必要な研修ですとか、手挙げ制の研修、e-ラーニングといったものも提供して総合的な人財育成を行っているということでございます。
 それから、最近、特に力を入れているのは、次世代の経営人財の育成ということです。サクセッションプランをはじめとして、階層別に選抜型のプログラムを走らせています。ちなみに、サクセッサーとして選ばれた役員とか部長も、先ほどのCDPを自分でつくるのです。そのCDPを会長や社長が見て、同じように能力開発支援をしていく。タフアサインメントをするなど、トップ層から下位層まで、同じような仕組みの中で個別に育成しているというのが弊社の今の取組の現状でございます。
 ちょうど時間になりました。いろいろ試行錯誤しながら、今、やっているところでございますけれども、今日は、皆様のいろいろな御意見をいただいて、学びを深めていきたいと思っております。
 本日は、このような貴重なお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。発表は以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続きまして、佐々木委員に御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐々木委員 このたびはお時間をいただきまして、どうもありがとうございます。「ダイバーシティ経営の利点と「ダイバーシティインデックス」の必要性」ということで、いろいろな事例とデータなどを御紹介させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 一番最初に、海外の動きなどを御紹介したいと思います。皆様、委員の方は御承知のことかと思いますけれども、例えば、英国では、2021年、去年、FCAが、ロンドン証券取引所のプレミアムとスタンダード市場の全上場企業を対象に、取締役40%以上を女性に、少なくとも1人以上は白人以外を登用するという新指針を公表し、CEO,CFOなどの上級独立取締役のうち少なくとも1人は女性とする要件も課すなどを求める発表をしています。
 それから、ノルウェーでは、自然に任せていたら200年かかるということで、2002年のことでございますけれども、クオータ制が導入されており、取締役の4割を女性にしていないと会社が解散させられることとなりました。
 ドイツでも、こちらは90年かかるということで、役員比率30%ということが義務化されており、ドイツの場合は、女性がいなかったという言い訳がないように、いなかった場合は、男性を選んでははならず、役員は空席でなくてはいけないということになっています。
 アメリカでも、ナスダックが女性・黒人なども含めて、マイノリティの一定数を義務づけておりまして、これを上場ルールにしています。また、御承知のとおり、アメリカの経団連に当たるビジネスラウンドテーブルは、2019年ですけれども、株主第一主義から、ESG  などをきちんと重視する経営に変えるという、世界に衝撃が走ったというのもございました。
 カリフォルニア州では、導入された法律ではございますけれども、女性の取締役の人数を指定して、こちらは罰金が課せられるということになっています。
 これはほんの一部でして、世界では企業の経営とダイバーシティが密接になってきています。
 では、どういうメリットがあるのか。つまり、今まで男女共同参画とか女性活躍とかダイバーシティというのは人事の話だったのですけれども、それが経営の話になってきているということです。これは、マッキンゼーが発表しているデータでございますけれども、2014年のときにはWhy diversity mattersというレポートだったのですが、これが2019年にはDiversity winsということです。女性が多い企業はアウトパフォーマンスが25%高い、人種の多様性があれば36%高いということで、利益が上がる可能性が高いというデータが出ていますし、それから、ボストン・コンサルティングのほうでは、女性が増えただけでは駄目で、管理職で女性が2割以上になるとイノベーションからの収入が上がるのだということも出ています。
 みんな、これは外国のことばかりでしょうと言う方がいらっしゃるのですが、ゴールドマンサックスのウーマノミクスレポートでは、日本でもROE、増収率、ともに女性管理職の比率の高い日本企業は高かったという傾向も発表されています。
 これら、御興味があれば山ほどデータがあるわけですけれども、こういう背景の中で、私どもイー・ウーマンは、ダイバーシティ視点でイノベーションを起こすということをミッションに掲げて、2000年に設立した会社でございます。
 私自身は、もう一社、1987年からつくっているので、ダイバーシティ経営ということに関しては、20年から30年間取り組んでいて、やっとこの時代が来たかと、今日、こんなところでお話できるようになったということが大変うれしく思っている次第です。
 私どもの会社としては、ダイバーシティ経営を促進するに当たり、先ほどのアフラック様のような先進的な企業様ばかりが日本にはないので、まず、「体感する」、ダイバーシティ経営とは何なのかというのを体にしみこませていただく機会の提供。それから、「気づく」ということの仕組みの提供。「可視化して成長させる」という仕組みの提供。「学び」の提供。そして、適切な女性人材はいないとは言わせませんということで、THE BORADという女性社外取締役のネットワークもつくって、企業に女性社外役員等紹介もさせていただいています。
 これは一部の写真でございますが、国際女性ビジネス会議という名前で開催している日本最大級のダイバーシティ会議です。コロナ前は会場に1000人以上が毎年集まって、10時間開催しておりました。
 今、これがオンラインになっておりまして、3年間オンラインでございますけれども、こちらも1100人以上、20か国から10時間、休憩なし、同時通訳つきの会議となっています。政治の方から、経営の方から、様々な分野の方に御登壇いただきながら、参加者満足度98%以上、30年以上を誇るという状況でございます。
 もう一つ、今日お話ししたいことがダイバーシティインデックスでございます。国際女性ビジネス会議で「体感する」。そして「気づく」「学ぶ」「知る」ということを、ダイバーシティインデックスという形で提供しています。これは、ダイバーシティ経営の意義と基礎を学んで、企業価値とダイバーシティの関係を可視化して、さらにダイバーシティ経営を促進させるということで、弊社調べでございますけれども、世界唯一のプログラムだと思っております。
 どういうことかというと、一般的な企業の課題というのは、ダイバーシティの測定方法がないということです。また、公開情報のみで分析せざるを得ないとか、体制を整えてもカルチャーが変わらない。「今」が可視化できないので、次の策が見えない。経営戦略として、経営者から見る人事マターにとどまっていて、経営マターとしての可視化ができない等々、いろいろな課題がございます。公開情報というのは、どうしても女性の人数とか割合となってしまうことでございます。
 そこで、私どものインデックスは、非財務情報・人的資本の可視化。ダイバーシティと経営の関係の数値化。それから、ESG投資家、ステークホルダーへの情報発信にも活用していただきたい。進んでいくと、他社とのベンチマーク、比較していただく。それから、グループ企業やサプライチェーンのマネジメントにも使っていただく。今、人権デューデリジェンスがキーワードになっていますが、さらにその先のダイバーシティのサプライチェーンのマネジメントということです。
 私どもが事務局で発足しておりますけれども、様々な方に実行委員とか専門委員に入っていただいて、この道のプロの方々にいろいろと仕組みとか提案をいただいています。
 アドバイザーの方々も問題を出していただくなど、様々なところで貢献していただいています。厚労省様にもお世話になっております。ありがとうございます。
 イー・ウーマンという名前で佐々木がやっていると、ジェンダーだけと思われてしまうので、ホームページには男性の方々にメッセージを出していただいて、ダイバーシティ経営というのは別に女性活躍じゃないということで、ブラックロックなど投資家からも、また八木洋介さん、一橋大学の伊藤邦雄先生にも委員やアドバイザーとなっていただいているという次第でございます。
 私どもがダイバーシティインデックスでテーマとしているダイバーシティですけれども、4つの分野。ジェンダー、人種・文化背景、エイジ、障がい。この4つの分野でダイバーシティ経営を見ております。
 ダイバーシティインデックスの仕組みでございますけれども、今、3つの指標から分析するという方法で動いています。4回目実施が終わったところで、1月から5回目なので、日々、改善しながらでございます。
1つは、企業のDEIスコアを出すということ。もう一つが、個人です。そちらは、DEIのアウェアネスのスコアと、ナレッジのスコアの2つに分かれます。個人と申し上げているのは、従業員だけでなく、CEOや役員も参加するので個人と表現しています。この3つを掛け合わせて分析しております。
 DEIの企業チェックは、企業担当者にお答えいただくようなものでございます。それから、DEIアウェアネススコアと言っているのは、CEOから社員の皆様まで、個人が無記名で回答していくものでございます。ナレッジスコアは、先ほどのアドバイザーからいただくような問題を中心に、これは知識を問うものになっております。個人のIDがひもづいた形で、いろいろな分析が細かくできるようにしているのですけれども、これがテストになっています。
 これをどういうふう分析するかというときに、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、そしてガバナンス&イノベーションの4つの分野で分析しています。
 ここの分析での分解の仕方は、ダイバーシティが、多様な人が採用される仕組み。入ってくるとか、中で多様な人が集まる仕組みがあるか。
 エクイティというのは、ダイバーシティの最近のキーワードでございますけれども、エクオリティという平等ではなくて、公平性というエクイティがあるのか。つまり、先ほども時短の話が出ましたけれども、時短であろうが、どこにいようが、どんな人であろうが、本当にその人が公平に評価されていて、上に上がっていく仕組みがあるのか。
 それから、多様な人がただいるだけでは駄目ということで、インクルージョン。その人たちの声が取り入れられる仕組みや環境があるのか。
 そして、それらが活かされてガバナンスがよくなったり、イノベーションが起こったりしているのかということを分析しています。
 数値として、参加企業の方々には、経年変化とか他社との比較なども含めて偏差値として出しています。ここは、東京大学の教授陣と一緒にやっていて、都市別とか年齢別とか部署別。自社の経年変化、他社との比較データを出しています。
 それから、DEIのアウェアネスというのは、この結果データを全てお渡しして、テストもデータも全部お渡ししています。フリーコメントを含めて出しています。
 これらを報告書にまとめて御提出しています。ただの数値だけでなくて、分析するということをしており、さらにこれをCEOダイアログと言って、60分、CEOに時間を使っていただいて、私が説明しながらディスカッションするという、CEOにとっても理解を深めるいい時間になっているかなと思っています。企業によっては、取締役がずらりと10人ぐらい集まって、60分を90分にしてくださいと言いながらディスカッションする企業があったり、最近ですと、この前は、頭と終わりだけでもビデオで撮影して、社員にこういうことをやっているということを中で放映したいという企業があったりして、CEOの意識も高くなっています。第1回目は報告書を納品する形で人事部に出していたのですけれども、そうすると人事部の人が読んで終わってしまったり、社長にこの結果は報告できないと終わってしまったりするので、2回目からCEOダイアログということになりました。
 また、これをただ報告するだけじゃなくて、どうすると改善されるのかということを提供していています。どういう施策があるのか、何をやっていくといいのかなどを提供しているというサイクルで回っているものです。
 これまで2万5000人ほどの方がお受けいただいているというものです。企業としては、今、見ていただいている企業様が第4回目を受けたということでございます。
 事例もちょっとお話ししたいと思いまして、例えば受けていただいている小林製薬様、1回目から4回目、ずっと受けていらっしゃいます。小林製薬様は、私も受けていただく前から存じ上げているのですけれども、女性活躍とかダイバーシティというのはあまり経営の中心には来ていなかったのですけれども、このダイバーシティインデックスを受けるようになって変化が見られるようになりました。社長もお受けになって、とてもオープンな社長でいらっしゃいまして、国際女性ビジネス会議に登壇されたときに、「僕、スコアが社員の中で真ん中ぐらいだったので、頑張ってもっと勉強します」とおっしゃる方なのですが、社長も一緒に取り組むことで、取締役会でもダイバーシティ経営について議論が増えました。また、経営戦略としてダイバーシティ経営に取り組み始めていますので統合報告書にも掲載されています。ダイバーシティとかESGとか、ダイバーシティインデックスのロゴも掲載され、こういうものを受けて取り組んでいるのだということを発表されています。経営者の意識が変わってきているということが非常に大きいかなと思っている次第です。
 それから、もう一つ、エージーピーという会社です。こちらも上場企業でございますけれども、この会社様は、空港で飛行機に動力を提供したりという、裏方、一般の方からは見えない仕事をしている会社です。当初ダイバーシティも、女性活躍も全く経営に意識されていなかったところ、これからこの時代はダイバーシティ経営ですとお伝えし、1回目を受けいただきました。実は初めは、続けても意味があるのだろうかとおっしゃっていたのですけれども、4回受け終わったところで、大きな変化がありました。毎年1回、人間ドックのように受けていくので、全社員が受けていらっしゃるので、社員全員の意識が高まっていきました。年に1回、ダイバーシティについていろいろなことを聞かれることが蓄積となっているのです。
 また、サーベイではなくて、テストがあるということが大変重要です。知識テストがあるものですから、そこでいろいろなことに気がつき始めるのです。それによって意識が変わり、4回目のレポートは、CEOだけでなくて、関係の10人ぐらいの方が皆さん聞きたいということで集まられて、お伝えいたしましたところ、これはもっと取り組まなければということで、4回目が終わってからは、アンコンシャスバイアスの研修を開催したり、そもそもダイバーシティはどういうふうに企業の利益につながるのかというダイバーシティ経営の総論を私が講演させていただいたり、様々なことを取り組まれて、今、大変熱心でいらっしゃいます。ここに掲げさせていただいたのがエージーピーの中期経営計画ですけれども、中期経営計画の中にダイバーシティという言葉が入るようになり、ESG経営になり、本当に非常に熱心に取り組まれているかなと思います。本日も、ここで事例を発表させていただきたい旨を御相談いたしましたら、大変光栄だということで喜んでいらっしゃいました。でも、こういうことが変化の始まりなのだなと思っています。
 ここはFindingsなのですけれども、私ども、4年間やっておりまして、2万5000人のいろいろなデータの分析ができるわけですけれども、この中で、コロナもありましたので、経営に直結するという素敵な数字がなかなか出てきていない4年間ですけれども、ちょっとおもしろいのを1つだけお持ちしました。
 これは、ダイバーシティに関する知識は女性のほうがあるというデータです。2万5000人の4年間の分解をしましたところ、どこを取ってみても女性のほうが総合テストの偏差値が高いことが分かりました。人数が少ないとか、男性との関係はいろいろありますけれども、女性のほうが知識は高い。これはどういうことか。ダイバーシティと言うと、企業は社内アンケート、サーベイばかり取っていらっしゃるのですけれども、実際、私たちが小学校、中学校、高校、大学でいろいろなことを勉強してくるように、勉強して知っていると気づくことが分かるのです。
 例えば、何が差別なのか、何がエクイティでないのか、何がインクルージョンでないのかということの事例とか陥ってしまう傾向とかを知っていると、課題に気がついたり、チェックができるわけです。女性のほうが、この2万5000人の中ではテストの点が高いということが分かった。どういうことかというと、女性たちからすると気がついていて、これは変だと思っているようなことが、男性の方々から見ると何も気がつかないということが起きているのではないですかという1つのポイントがあります。サーベイばかりでなく、知識というのをきちんと勉強していくことが必要だろうと思います。
 先ほどの世界で唯一のプログラムと申し上げたのは、ここのポイントでして、サーベイとか公開情報の分析はいっぱいあるのですけれども、テストを提供して分析して知識度を上げていくということまで含めているところは、アメリカもヨーロッパも、いろいろ調べているのですけれども、ほかにないということでございます。
 そして、私たちは、知識が重要だということで、初めの3回までは年に1回のプログラムだったのですが、今はそこにフォローアップする形で、ダイバーシティマネジメントイニシアティブスという名前で勉強会にも参加していただいて、セミナーや、ファインディングスのレポートを発表したりということをし始めました。
 これは今年開催したものですけれども、男女賃金格差の話から、「Diversity, equity, and inclusionの実践」、それからESG投資家のインベスコの内さん。それから、「ダイバーシティ経営の今」ということで、カゴメの事例。こういうことを一つ一つ丁寧に御紹介いただいているということでございます。
 私の今日のポイントというのは、ダイバーシティは人事から「経営戦略」になったということが一番のキーワードだと思います。
「ダイバーシティ経営」が企業成長のキーワードであり、Diversity winsに象徴されるように、多様性が優れた組織は利益率が高い可能性が多いということでございますし、それから、女性管理職が2割を超えるとイノベーションが起きやすい。
だから、女性従業員の割合が8%から10%になったから、もうそろそろ取り組みはやめていいでしょうという話ではなくて、決定権を持つ立場の女性が2割を超えるようにするなど、具体的に取り組んでいただきたい。そしてダイバーシティを進めることで、あなたの会社がもうかるのです。株主からも応援されるのですよということを伝えていくことが重要かなと思っています。
 ダイバーシティでガバナンスが高まるということは、リスク回避ができる。不祥事が起きにくいということがあります。
 世界は、御存じのようにESG投資が大きくなっているので、投資家との対話では、ESGのSがちゃんとないところには投資が来なくなる。当然、日本でも御存じのように、CGコードの改訂でダイバーシティ経営が求められるようになってきました。ということで、非財務の可視化の重要性、これを開示することが重要でありますし、外から見える数字を整えるのではなく、内部をきちんと点検するダイバーシティインデックスは大変重要で、それを経営戦略に活用していき、企業価値を高めていただく、ということではないでしょうか。
 最後は私の略歴でございますので、御参照いただければと思います。
 30秒前に終わったつもりでございます。どうもありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
 これでプレゼンテーションが2つ終わりましたので、ここから自由討議、御質問に入っていきたいと思います。
 まず、入山先生、早く御退出されるということで、もし何かありましたらお伺いしたいのですけれどもね。
○入山委員 守島先生、ありがとうございます。私、あと10分か15分ぐらいで失礼しないといけないので、申し訳ございません、先にコメントさせていただきます。ありがとうございます。
 まず、アフラックさんは、さっきの資料にもちょっと出てきたのですけれども、一、二年前に古出社長とイベントで対談させていただいて、本当に今、日本の会社の先進事例なので、前からすばらしいなと思って、いろいろなところで僕も講演をよくさせていただくので、ダイバーシティの話をするのですけれども、アフラックさんの名前をよく出させてもらっているので、すばらしいなといつも思っています。
 僕がよく言うのは、これは経済学の言葉で、経営学でも使うのですけれども、経路依存性です。会社は複雑なので、どこかだけ変えようとしても変えられないのです。全体を変えないと、いろいろなものが絡まっているから。だから、ダイバーシティはその典型で、講演でよくその話をするのですけれども、ダイバーシティだけ変えようとする会社は絶対変えられないのです。ダイバーシティはできないのです。なぜかというと、本当に多様な人を採りたいなら、例えば新卒一括・終身雇用を見直さなければしようがなくて、新卒一括・終身雇用で多様な人は絶対採れないですから。
 多様な人がいると、例えば評価制度を変えなければいけなくて、多様な人がいるのに一律評価ができるわけないし、多様な人がいるということは、絶対働き方を多様にする必要があって、だけれども、これまで全然進んでいなかった。アフラックさんの場合、すごいのは、その全体を変えていったということだというのが私の理解です。だから、今日もいろいろな施策を御紹介いただいたと思うのです。キャリアの仕組みから働き方から。僕も古出社長に伺ったときは、多様性を進めていたら勝手に働き方改革が進み、コロナ前から既にオンライン会議が勝手に進んでおり、コロナになっても全然平気でしたというのがすごく印象的で。
 すみません、質問は全然なくて、いつもすばらしいなと思っているのですけれども、単純にダイバーシティを増やすというよりも、会社全体の体質をイノベーティブにするためにいろいろなことをやっていたら、結果的に会社がよくなって、その大きな施策の一つがダイバーシティで、でも、それは会社全体をいろいろ変えなければいけないから、それを同時にやり続けられているというのが、アフラックさんは今までもいい会社だったと思うのですけれども、特に古出さんになってから、さらによくなっていることかなと思っているので、引き続き加速していただいて、いろいろな日本の企業さんに、お手本じゃないですけれども、方向性みたいなものを示していただけたらありがたいなと思っております。すみません、ただのコメントで申し訳ございません。
 佐々木さんのやつも、今日、初めて伺ったのですけれども、とてもすばらしいなと思って、正直、大変感銘を受けてお話を伺っておりました。やられていることは本当に大賛成ですし、すばらしいことをされているなと思いました。
 すみません、コメントは3つ。これも質問というよりコメントなのですけれども、1個目は本当に釈迦に説法なのですが、僕もダイバーシティのことはさんざんいろいろな会社で講演するし、話もするのですけれども、最大のポイントはなぜやるのかということに尽きるなと思っていて。一番駄目なのが、ずばり言うと投資家に言われたからやるというやつなのです。僕から見ると、もっと最悪なのが、世の流れだからというやつです。大手損保が4~5年前からダイバーシティ推進室長がよく相談に来るのですけれども、うちはダイバーシティ、悩んでいるのですとダイバーシティ推進室長のおじさんが言うのですけれども、分かったけれども、あなたの会社、何でダイバーシティをやりたいのと言うと、いやあ、社長が言うからみたいな。社長は何で言っているの。それは世の流れだからみたいな。
 これだと進まなくて、僕は佐々木さんの御意見が完全そのとおりだと理解していまして、業績を上げなきゃしようがないのです。もちろん社会的な貢献というのもあるかもしれないけれども、別に社会的な貢献で女性を採用するのは、僕は女性に失礼だと思っていて、業績を上げるために不可欠なのだと。それはまさにおっしゃるとおり、イノベーションのためで、多様性があるほうが基本的にイノベーションが起きやすいというのは、経営学だとほぼ常識になっていまして、経済学でも、今日、大橋先生とかがいらっしゃるので僣越なのですけれども、今年、結構売れたオデッド・ガローという経済成長論のすごく有名な、ブラウン大の経済学者の「格差の起源」という本があって、あの本、めちゃめちゃいい本なのです。
 世界中の国で成長する国としない国が何であるのかというのをいろいろ調べた結果、結論は多様性なのです。ヨーロッパで何で産業革命が始まったかというと、それはヨーロッパが一番多様性が高かったと。そういう意味では、国の発展にも物すごく重要で。ただ、問題は、そのイノベーションにつながるから不可欠なのですよというロジックが、日本だと結構分断しているのです。なので、今日の佐々木さんの資料にもあったと思うのですけれども、もしよければ僕の本とかも読んでいただければありがたいのですが、離れた人たちが組み合わさることが実はイノベーションにつながるのだというロジックをちゃんと提案していく。されていると思うのですけれども、そこがよりポイントになるのだろうなと思って聞いておりました。
 あと、これは今日のプレゼンを伺った印象ですけれども、本当にすばらしいことをされていると思うのですが、日本だと、世界で最もダイバーシティが遅れている国になってしまったので、さっき言った4つの次元で言うと、男性・女性というジェンダーのところで止まっていると言うと失礼な言い方ですけれども、まだそこの議論が多いのです。もちろん、ジェンダーのイシューが日本は死ぬほど遅れているので、やるべきなのですけれども、御存じのように、先進国というか、ほかの国はジェンダーを余裕で乗り越えていて、障害者とか、御存じのようにニューロダイバーシティ、発達障害。日本で一番進んでいるのはアクセンチュアさんですけれどもね。
 僕も実はADHDなのです。だけれども、こうやってちゃんと生きていけるし、ADHDだから社会に貢献できる部分もあって。僕は軽度なので、組織にあまり迷惑をかけないで働けるのだけれども、もう少し重いとコミュニケーションとかがいろいろ難しくなってくるわけですね。
 あと、ジェンダーも、日本だとまだ男性・女性なのです。当然、男性・女性も大事ですけれども、人口の1割近くいるわけですからLGBTのことは考えなければいけないし。そちらのほうまで、より行っていただけるとありがたいなと思っていて。
 特に、日本の場合、僕が課題に思っているのが、外国人の登用の少なさ。あまりにも少ない。僕がいる早稲田大学ビジネススクールは、昼のプログラムのコーディネーターを何年もやっていたのですけれども、学生の8割が留学生で、めちゃめちゃ優秀なのです。ありがたいことに早稲田は結構人気があるので、比較的優秀で、学生が平均で3~4か国語、しゃべるのです。入山プロフェッサーは何か国語しゃべれるの。2か国語と言うと、鼻で笑われるという世界観なのです。
 彼らが本当に優秀なのに、誰も日本の会社に就職できない。なので、日本の大企業に行くな。おまえら、ベンチャーに行けと言うのですけれども、ベンチャーは英語・日本語ちゃんぽんでも採ってくれる。結構その辺が課題で。そうすると、今度は語学の問題が出てきて、日本で何で外国人が採用されないかというと、簡単で、まず、人事の採用担当は英語がしゃべれない。それから、日本人が外国人に完璧な日本語を求め過ぎるのです。日本はパーフェクショニズムが強過ぎて、世界で一番普及している英語は、ノンネイティブの片言の英語なのです。僕もアメリカで10年働きましたけれども、英語は下手くそなのです。でも通用するのだけれども、日本だと超完璧な日本語で忖度できる外国人でないと、グローバル人材と呼ばないと言っている。
 すみません、長くなってしまいましたけれども、言いたいのは、男女は超大賛成なのですけれども、佐々木さん、男女は当たり前ですよねという感じで、次のステージのニューロとか障害者とか外国人とか言っていただけると、アフラックさんにもお願いなのですけれども、ありがたいなと思っているということです。
 3つ目は、佐々木さんの試みは本当にすばらしい試みなので、ありがちなのが、いい感じの問題意識のある会社さんだけが、多分こういうものを使いがちだと思うのです。これだけすばらしいことをされているので、もう少しうまく、ムーブメントじゃないですけれども、日本の会社全体を巻き込むような仕掛けみたいなところに、例えばGreat Place to Workみたいな形でやっていかれるということを、これは最後、質問です、考えられているのですかということです。
 例えば、僕は今、経団連で、南場さんがこれからは大企業とスタートアップのコラボレーションだみたいな話になって、今度、出るのですけれども、スタートアップフレンドリー指数みたいなものをつくるのです。実は僕がつくっているのですけれども、そこで言っているのが、ほぼやるのですけれども、これは経団連の企業全部にばらまくので、該当しなかった会社をさらそうぜという話をしています。さらすかどうか。少なくとも業界で回答しない、つまりスタートアップのサポートに非協力的な業界ということに、イコール、なると思います。それは、業界で丸まった数字を出してしまうのですね。というのをやろうとしている。
 そうすると、ポイントは、感度のいい会社よりも、感度が低い会社にいかに危機意識というか、感覚を持ってもらうかで。経団連さんに全部まくので、そういうことをやろうとしているのですね。なので、もしかしたら、佐々木さんのこの指標も、いけている会社はどうせいけているので、そうじゃない会社が日本中にいっぱいあって、そこに、あなたたちのランク、実はめちゃ低いですよ。これを公表されると投資家に絶対批判されますよみたいなムーブメントとか、あとは賞とかをやるとか、そういう機運づくりみたいなことを考えられているのかなというのが最後の、すみません、これだけ質問です。
 以上です。
○佐々木委員 ありがとうございます。短く。
 LGBTQもニューロダイバーシティも外国人も、テスト問題、アウェアネスとナレッジのほうに入れてあります。そこもしっかりカバーしていこうと思っていますが、おっしゃるとおり、日本の企業は、そっちにあまり分類をやると、我が社はここまでいっていないのに、こんなに難しいことを質問してきたといって、なかなか参加してくれなかったり、私たちはまだ進んでいないので、もう少し何年か勉強してから参加しますとか、取り組んでいただく事情というのがあって、どこまで歩み寄るかということを考えながら進んでおります。
 先ほどおっしゃった経団連さんの企業が、まず全社が受けるというのは当然じゃないかと思いますので、そういうふうな指標になっていくようにと思っております。私、別途、後で入山さんに御連絡するので、お知恵を貸してください。
○入山委員 僕もいろいろな会社の人事をしていますけれども、Great Place to Workはいろいろな会社が相当意識しています。CHRをみんな意識するようになってきていて、リクルートさんは上手だなと思っていて、ああいうことが佐々木さんのこの指数でもできるといいですね。
○佐々木委員 どれだけ褒めてあげられる企業を増やすかですね。それこそアワードとか事例発表するという方法と、それから成績の悪いところは何が悪いのかをきちんと家庭教師のようについてあげますよということとか。そして、それが人事マターではなくて経営マターであるということをいろいろなところで見せていくような事例をどんどん出すとか、やっていくことがいっぱいあるなと思って、私もこれは本気で取り組んでおりますので、御支援お願いします。ありがとうございます。
○入山委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 アフラックさん、何か一言ありますか。
○アフラック生命保険株式会社橋本氏 入山先生、2年前は本当にお世話になりました。ありがとうございます。
○入山委員 こちらこそありがとうございました。
○アフラック生命保険株式会社橋本氏 2020年のカンファレンスでお話いただきまして、社長との対談もお願いしておりました。先ほどもお話ししましたとおり、参加者のアンケートの結果もすばらしくよく、ほとんどが5点満点でした。あれから、ダイバーシティ推進に対する社員の理解がすごく高まったなと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、ほかの方、御質問、御意見等ありましたらお受けいたします。       
 では、山田さん、お願いします。
○山田委員 ありがとうございました。
 今日、本当に勉強になりまして、まずアフラックさんにお伺いしたいのは、質問とコメントと一緒になるのですけれども、日本のメンバーシップ型からジョブ型ということを全体で進めていこうという議論がある中で、一種のジョブということで、そこを非常に丁寧にやられている事例と思いました。社会的ないろいろな文[A1] みたいなものが欧米社会とは違いますから、ジョブ型をいきなり入れてもいろいろな問題が起こるということで。全体の考え方はジョブディスクリプションを入れられたりしてシフトしているのですが。
 1つ思ったのは、若い人です。欧米は、インターンシップとかにより、学校段階で特定の職種の経験とか技能がかなり身につくので、そのままストレートにジョブに入りますけれども、わが国では現段階では限界があるので、全体が職務等級にシフトしていると言いながら、特に若い人には職能的な部分で運用されているということで、非常に現実的なやり方をしているのではないかと思いました。
 ただ、どこまで職能的にするのかというのは結構難しい。そこの苦労があるのではないかと思うのです。1つは、キャリア意識の高い人は、具体的なこういう仕事をしたいということを言っている。それに対して、そういう制度を設けられているということだと思うのですけれども、一旦、その職種をしたいといって、やってもなかなかうまくいかないケースがあると思うのですね。だから、その辺り、どういうふうな調整をされているのかということをお聞かせいただきたいということです。
 もう一つは、非常にいいなと思ったのはキャリア自律に関わる点です。企業サイドだけじゃなくて、個人サイドでまさにキャリアの自律意識ということがないと、いわゆるジョブ型というのはうまく回らないと思うのですけれども、そこに対して、本当に丁寧にキャリアデベロップメントシステムの形をつくられたり、説明はなかったですけれども、資料を見ていますと、管理職の役割が多分すごく大事で、管理職自身がそういう部下のキャリアのこととか自身のキャリアのことが分かっていないと、そういうアドバイスができないと思うのです。そこをされているのは非常にいいなと思いました。これは感想なのですが。
 もう一つ考えると、こうやってキャリア自律していくと、欧米社会はそうですけれども、優秀な人からやめていくという問題が一方であって、そこに対してはどういう考え方、対応をされているのかというのを、ちょっと教えていただきたいということです。
 あと、佐々木さんのほうで、非常にすばらしい取組をずっとされてきたのがよく分かったのですが、私が聞いていて、1つ非常にいいなと思ったのは、外部からいろいろな開示をさせることによって圧力をかけていくというのは非常に大事ですが、一方で、自分たちの現状はどうかというのを客観的に内部の人たちが知っていくことが大事で、その点で言ったときに、個人でインデックスを測っていかれて、一種のアンコンシャス・バイアスを数値化していっているという面があるのではないかと思うのです。
 ですから、これはコメントなのですけれども、特に日本の場合は男女のアンコンシャス・バイアスが強いですから、ここを客観化して自己認知していくという取組として、私は個人別にインデックスを取っていくことはすごくいいのではないかと思いました。
 以上、コメントです。ありがとうございました。
○守島部会長 では。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 山田先生、御質問いただきまして、ありがとうございました。幾つか御質問いただきましたけれども、順番にお答えさせていただきます。
 まず、ジョブ型ですけれども、この資料の中には書いていませんが、実は弊社の中ではジョブ型人事制度と言わないようにしています。おっしゃるとおり、欧米型のように職務を限定した採用ではなくて、異動もあることを前提とした雇用契約にしていますので、アフラックらしい職務等級制度ということで、そういう誤解を招くような表現は使わないようにしています。
 御質問いただいたキャリアの調整のところですけれども、資料の37ページ。先ほどちょっとお伝えしましたけれども、おっしゃるとおり、大学教育との接続の問題がまだ日本社会は残っていますので、いわゆる生命保険会社の営業とか支払いの専門家なんて、大学生には当然いませんから、そういった新入社員にはローテーションを中心にいろいろ経験させる。何のためかというと、自分の適性を見出してもらう。合う仕事、合わない仕事、向く仕事、向かない仕事がありますから、そういう意味で、こういうローテーションを経験させていくことはすごく大事だと思っています。
 一方で、デジタルや、生命保険会社なのでアクチュアリー、数理の専門家といった分野については、学校の学業と連結しますので、割と新卒で入ってから異動なく縦で伸ばしていく。ただ、おっしゃるとおり、壁にぶち当たったり、うまくいかなかったりすることが当然ありますから、そういったときにちゃんと横の異動ができるような仕組みが必要だと思っています。そこに対する対応は2つあって、1つはジョブ・ポスティングです。これで違うところで挑戦したいというのを支援していくということで、実際、ITでやっていた社員が別のコーポレートに行ったり、人事に行ったり、営業に行ったりみたいなこともあります。
 もう一つは、部門の囲い込みみたいなことが起こってしまって、優秀な人財ほど外に出て、経営戦略のこととかやりたいとか、デジタルやりたいといっても、いやいや、人事の中で活躍しているから出したくないといったことがないように、そこは人事の仕事、BP(ビジネスパートナー)の仕事だと思っているのです。なので、本人の自己申告とか滞留年数などを見て、長いこと囲い込んでいたりすると、「結局辞めて外に行ってしまいますから、そんなもったいないことをしてはいけませんよ」ということで、人事が入って異動の伝達・調整をしていく。この両方のバランスが非常に大事だと考えてやっています。
 それから、結果、その先、優秀な人が辞めていくのではないかということですけれども、その可能性は否定できないと思います。日本全体で雇用の流動性を高めていこうという機運もありますから、メガトレンドの中で、ある程度退職が増えていくということはあるのかもしれないと思っています。ただ、それを座して見るわけではなくて、エンゲージメント、この状態をちゃんと観察して、異常があったら早めに対処していくということが大事だと思います。そのための仕組みとして、エンゲージメントサーベイは丁寧に取って、そこで何か前年から比べた変化がないかというのを見るようにしています。
 あとは、退職者のイグジットインタビューというものを全部やっていまして、私も全員の退職者のインタビューに目を通しています。そうすると、退職者の声というのは本音が出てくるのです。制度の問題なのか、運用の問題なのか、職場の管理職のマネジメントの問題なのかというのが見えてきますし、職場、職場の課題が見えてきたりしますので、それをちゃんと人事が検知してフィードバックしていくということを丁寧にやっていくということで、その辺は対応しています。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続きまして、古賀委員、お願いいたします。
○古賀委員 古賀でございます。ありがとうございます。
 アフラックさん、佐々木さん、貴重なお話、御報告をありがとうございました。
 私は、ある組織のダイバーシティアワードの審査員も務めており、数年前にアフラックさんに審査員の1人として、お話をさせていただきました。特にダイバーシティについて、非常によくやっていらっしゃると思いましたし、何よりもトップ自らが、このダイバーシティに対して非常に強い想いがあるという印象も受けました。そのことが職場にかなり浸透しているという感じた次第でございます。
 そのことを踏まえて、私はキャリア形成や人材育成の関係について、2点質問させていただきたいと思います。
 御社のご説明の中では、自律的・主体的という言葉が非常に多く出てきましたが、このことも重要だと思います。その上で、自律的・主体的なキャリア形成を軸に、働く者の主体性を踏まえて、使途自由な自己啓発支援金を活用した外部機関でのスキルアップ支援を行っているという御説明がございました。その後、口頭で企業内でも能力開発等を行っていると補足的に説明いただきましたけれども、自社の労働者の能力を発揮させるために、企業自らで行うキャリア形成や人材育成どのようなプログラムを設定していて、また自らが行う能力開発プログラムはどのように取り組んでいるのか、詳しくお聞かせ願えればと思います。
 また2つ目は、多様性の視点から、役職や性別に関わりなく、キャリア形成や自己啓発支援が行われているとのことでしたが、そのほか、障害者や非正規で働いている方々には、どのような支援が行われているのか。何か取り組んでいることがあれば、お聞かせをいただきたいと思います。以上でございます。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 御質問いただきまして、ありがとうございます。1点目は伊藤のほうから回答いたします。
 自律的とか主体的なキャリア形成というのは、確かに当社として、この数年、制度を移行してから象徴的に使っている言葉でございます。それまでの人事というのが、会社が異動を決めて、突然ぽんと異動していくので、キャリアが受動的だったのです。そうすると、来年どこに行くか分からない。例えば人事のスタッフも、来年、営業に出るかもしれないと思ったら、奥深い人事の勉強を時間をかけてやっていこうという気持ちが生まれにくいというのもありまして、自分でキャリアをつかんでいけるような風土づくりと制度が必要だということで、それが結果的に能力開発につながっていくという考え方の下、こういうことを行っています。
 会社が提供しているプログラムですけれども、大きく2つありまして、主に人事部が全社に対して行うもの。それから、各部門の教育の2本立てでやっています。後者の部門のほうは、部門それぞれ業務の特性に合った能力開発が必要になりますから、より実用的なものも含めて、IT部門ならITに教育チームがいて、マーケティングにはマーケティングに教育チームがいて、営業のやり方とか、契約事務なら事務の保険金のための知識の勉強といったものを、階層別にいろいろな研修プログラムを組んでやっています。
 では、全社に対してはどういうことやるかというと、1つには、先ほど山田先生がおっしゃられたように、管理職の共通的な育成というのは当然必要ですので、それは労務とかハラスメントみたいなことは当然ですけれども、人財マネジメントの在り方とか、こういうものは徹底して共通するものとしてやっています。同じように、階層別でリーダー層とか若手社員向けというのもやっています。あとは、任意で手を挙げて参加できるプログラム。いわゆる論理的思考力とかマーケティングの知識とか、一般的なビジネスとして必要となる知識、これは選択で受けられるようにしています。加えてe-ラーニングも結構活用しておりまして、全社員が知っておくべきことは、そういうものを組み合わせながらやっているということでございます。
 2点目の障がい者と非正規のところも私から。
 まず、障害者雇用については、当社はグループで特例子会社をつくって、そこでは知的の方が一番多いです。プラス、精神の方を抱えて、合計160人ぐらいいます。インクルージョンしなければいけませんので、単に囲って障害者雇用率達成のために仕事を与えていくとかじゃなくて、現場に出て社員と一緒に働くようにする。保険会社は紙が多いですので、いろいろな業務処理のプロセスの一部を障がい者の方が担っていく。なので、封入したり、折ったり、スタンプを押したり。それを日常的にやり取りして、グループ全体の業務・質の効率化というものに貢献する形でやっています。
 私、今、その特例子会社の社長をしていまして、1つ課題としては、ペーパーレスが進んできて紙がなくなってきていますので、より別の形で障がい者の方々が持っている強み、いろいろな才能を持っていますので、それが生かせるところがないかなということを、今、本社のほうと人事と連携しながら、本当の意味での障害者雇用とか真の就労支援、ダイバーシティ、インクルージョンをやっていくみたいなことを考えています。
 非正規は、基本的に当社は社員と同じように扱っています。契約形態が終身雇用じゃない有期雇用契約の人たちも、病気をしたときの休みとか育休といったものは、等しく、線引きなく使えるようにしていますし、派遣の方も、雇用契約は直接ないですけれども、可能な限り、同じ教育機会を与えたり、福利厚生で社員と別にする必要がないものについては、同じような形で提供していたりということを基本的な理念として掲げてやっています。
 抽象的な回答だったかもしれませんけれども、以上でございます。
○古賀委員 ありがとうございました。
 守島先生、1つだけコメントを。
○守島部会長 どうぞ。
○古賀委員 ありがとうございました。佐々木さんに関しては、資料に記載されていますように、私もダイバーシティインデックスのアドバイザーの1人に名前を連ねておりまして、少し関わっております。佐々木さん、ますますダイバーシティインデックスの発展をお祈りいたします。以上でございます。
○佐々木委員 いつもいろいろなアドバイスをいただきまして、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続きまして、大橋委員、お願いいたします。
○大橋委員 ありがとうございます。
 大変勉強させていただきました。本日、私も途中で退席せざるを得なくて、申し訳ないので、早めに手を挙げさせていただいた次第です。
 まず、アフラック様ですけれども、非公開も含めて、ふんだんに資料を頂いて、大変勉強になりました。私、大学の管理職もやらなければいけなくなっていて、アフラック様のご講演を踏まえると、大学の事務の人事というのは、このジョブディスクリプションも含めて、ほぼある形になっているなと思っています。ジョブディスクリプションを見ると、達成すべき責任というのが入っているようですが、そういうところを含めて、どういうふうに御社の中で人材の質を上げていくというか、どこでやられているのかというのは、興味があるところなので、ぜひ教えていただければ幸いです。
 2点目は、佐々木様の発表も大変勉強になって、ある意味定量化してスコア化して見せていくことの重要性というのは、大変感銘を受けたところです。また、東大のUTEconも使っていただいて、ありがとうございます。将来的には、東大がやっているから云々というよりは、こういう手法でやっているからというプロセスの透明性が重要なのかなと思っていて、東大だから大丈夫というのは、そこで甘んじないで、ぜひ高めていっていただければと思いました。ありがとうございます。
○守島部会長 お答えありますか。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 大橋先生、御質問いただきまして、ありがとうございます。
 お悩みの点は、多分どこの企業も同じだと思っていまして、当然、弊社でも、事務をしっかりやることが好きな社員、あるいは、コールセンターでお客様としっかり対応して、感謝の言葉をもらえることに喜びを感じる人たちもたくさんいまして、そういう人たちも当然必要なのです。一方で、上位グレードになっていくと、課をまたいでいろいろなことを調整して、組織として価値を出していかなければいけませんから、新しい発想とか、またいだ調整とか交渉、あるいは外に向けてといったものが必要になってきますので、上位グレードの職務記述書にはそういったことが明記されています。
 それを好まないという人は、上のグレードには上がれないということになりますが、全員頑張って上のグレードに上がりましょうみたいなメッセージを出すことは、むしろ、本人の価値観を場合によっては否定しかねない部分もあります。お客様対応がすごく好きなのだ、そんなに多く残業して、新しいことを考えて不透明なところで働くよりも、しっかり今の仕事をしていくことに喜びを感じている、アフラックで働くことが好きだという人は、それはそれで大切にしていく。ただし、グレードはそこまでになってしまうという運用をしています。
○大橋委員 おっしゃったのは、そのポジションは別のジョブとして設けるべきだということですか。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 その方の報酬とか、いろいろ期待することとのバランスはあると思うのですけれども、全員に等しく新しいことを求めていくとか、そういうことではなくて、それが難しければジョブを分けていくといったことも必要かなと思っています。
○大橋委員 ありがとうございます。
 他方で、事務職員が少なくて、そこも。ありがとうございます。参考になりました。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 そうですね。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、岡本委員、お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。大変興味深いお話を聞かせていただきました。
 アフラックさんに2点伺わせていただきます。
 まず、フレックスタイム制度についてです。7時から22時の間で働く時間を選択できるとしていますけれども、実際に選択されているのはどの時間帯が多いのでしょうか。連合総研が今年3月に発表した「今後の労働時間法制のあり方を考える調査研究委員会報告書」では、睡眠時間を除く私生活、家庭生活、社会生活のための時間、いわゆる生活時間として確保したい時間帯を質問する中において、50%以上の男女労働者が20時から22時を生活時間帯として確保したいと答えております。また、子を持つ女性労働者の過半数が18時から19時の時間帯も生活時間として確保したいと答えています。そのことを踏まえて、アフラックさんでは、この7時~22時という時間設定に当たって、生活時間について、どのように考えていらっしゃるのか、お考えをお伺いしたいと思います。
 また2点目は、男性の育児休業取得についてです。ご説明の中で、平均で約16日間育休を取得され、取得率は100%を達成しているとお話がありまして、現状、企業がどのように男性に育休を取ってもらうかと悩んでいる中で、大変すばらしいと感じました。そのうえで、連合調査では、育児休業を取得しなかった男性の5割以上が、代替要員がいないことを理由に挙げていますが、アフラックさんの場合、男性社員の育児休業取得100%を達成した中で、代替要員の課題をどのように乗り越えたのかお伺いしたいと思います。
 それから、佐々木委員にもご質問したいと思います。ESG投資の指標として、「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」が有名だと思いますが、ダイバーシティインデックスとWEPsには、どのような違いがあるのかお聞きしたいと思います。
 最後に、私は多様性のある職場や社会をつくるためには、より多くの企業がダイバーシティインデックスに参加する必要があると感じております。ダイバーシティに関心のない企業や、特に中小企業こそ参加してもらわなければ、社会は変わらないのではないかと思いますが、そういった企業に対して、そのほか、どのようなアプローチが考えられるか、お伺いしたいと思います。以上です。
○守島部会長 どうぞ。
○アフラック生命保険株式会社橋本氏 御質問いただきまして、ありがとうございます。私のほうから回答させていただきたいと思います。
 1点目、フレックスタイム制度のことについてでございました。どの時間帯が一番多いですかというお話だったのですけれども、感覚的には8時から18時ぐらいまでかなと考えております。当社は、フレックス制度のほかに時間休という制度がございまして、中抜けができる制度がございます。なので、その時間であっても、間にお子さんを迎えに行ったりというときには、1時間、中抜けするとか、2時間、中抜けすることもできますので、その辺も柔軟に対応できているので、生活時間という意味では、個人がやりやすい仕事の仕方ができているかなと感じております。
 2点目の男性の育休で代替要員が見つからないということについてはお子さんが生まれるというのが随分前に分かりますので、そのときからいつ頃取るかということは上司と職場で相談をしっかり行っています。随分前に決まっているのであれば、その期間、どうしようかという話を組織の中で調整できることは調整しております。基本的には、育休を取ることはもう当たり前になっていますので、その中で調整可能ということではありますが、男性育休は女性に比べて、1年、2年と長く取る人がまだ多くないので、現状ではそれほど大きな問題にはなっていませんが、長く取得する社員が増えてきたときには、代替要員について会社で考えていかなければいけないと考えております。
 以上になります。
○佐々木委員 御質問ありがとうございます。
 まず、違いなのですけれども、一番大きな違いが、テストがあるということではないかと思います。私たちが今、ヨーロッパもアメリカも、いろいろなパートナーシップを結びたいと考えて調査をさせていただいたり、いろいろな方とお話ししているのですが、基本的には公開情報及びサーベイで分析されている。外からの場合はサーベイさえ使っていない場合があるのですけれども、公開情報、会社が出している情報で分析している。あるいは、社内でやったとしても、サーベイにとどまっている。
 私たちは、先ほどの古賀委員も含めて、いろいろなアドバイザーの方に試験問題を出していただいていて、それを私たちのほうで問題としてつくっていっています。御説明させていただいたように、知識がないと何が起きているのか分からない。例えば、地球温暖化も、データがあるので、この暑さの原因はこうなのだなとか、今日、雨が降っているのはこうなのかもねということに、みんな少し気がついたりする。この魚がこんなところで取れるようになった。これは温暖化かもしれない。などと考えるわけです。
 ですが、ダイバーシティに関しては、サーベイばかり、あるいは女性の人数ばかりみたいな、国籍も含めて、そういう数値しか測ることができていなかった。今、まだ試みではありますし、これが完璧ですと申し上げるのは、4年目が終わったところですから、時期尚早かもしれませんが、かなりよいテストと解説をつくっていて、知識の度合いを広めていこう。これを、社員IDがひもづいているので、部署別とか性別とか年齢でかなり分析ができるということを加えて、ミックスした分析を行っているというところが特徴であり、大きな違いかなと思います。
 2つ目の、これは本当にたくさんの企業に参加していただいて、そうなるとデータも集まってきますし、様々な分析もしやすいと思う。そして、中小企業を含めて、いろいろな方に参加していただきたいと思っております。もっと言えば、今回、徳島市が受けたのですけれども、自治体の職員、あるいは厚労省も含む職員とか大学、病院、学校、いろいろなところの職員、職場の方に参加していただくのは、企業ばかりではなく可能になるのではないかと思っています。
 これこそ皆様のお知恵とお力もいただいて、可能であれば1社1社で申し込むというのではなくて、何かのアソシエーションみたいなところに入って、年に1回はこれでみんなで点検していきましょうということになるといいなと思いながら、いろいろと今、動いているところでございますので、御指導いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。宣伝も皆さんにしていただけたら、知名度が上がってくるのではないかと思うので、ぜひよろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続いて、春川委員、お願いいたします。
○春川委員 ありがとうございます。
 本日は、大変貴重なお話、御報告ありがとうございました。
私からは、アフラックさんにご質問させていただきたいと思います。人財マネジメントの職務等級制度に関してですが、御説明をお伺いしまして、社内の方向性や、社内で重点的にキャリア形成を目的にさまざまな施策を行っているとのことなので、いわゆるメンバーシップ型をベースに、ジョブ型的な要素を取りいれている制度なのだろうと認識しております。
 そのことを踏まえて、3点質問させていただきたいと思います。
 まず、資料の中で、人財マネジメントの制度改革を進めるに当たって、様々な労使のコミュニケーションを行っているというご説明がありましたけれども、こういった制度を改革していくことになれば、職場の従業員からは、納得感や公平感などしっかり調整する必要が当然あろうかと思います。そうした中で、例えば、従業員の意見を反映するような取組など工夫されたことがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
 2つ目は、自律的・主体的なキャリア形成を進めていく場合に、中には適応しづらい従業員もいるのではないかと思いますが、例えば、メンタル的な部分でのフォローや離職につながらないための支援など、何か取り組まれていることがあれば、教えていただきたいと思います。
 最後の質問ですが、例えば、ポストを解任されないために、自身のポストを維持するために、過重労働のような健康被害が生じることがないようなフォローアップも大変重要だと捉えており、そのような観点で、何か取り組まれていることがあれば、お教えいただきたいと思います。以上です。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 御質問いただきまして、ありがとうございました。いずれも本当に大切な観点だと思いました。
 1点目の制度導入時の労使の対話です。当社は、組合がないのです。だからこそ、より一層丁寧な対話というのをすごく重視してやってまいりました。資料にもありますけれども、1つ大きなポイントは、制度改革のときは、大体人事が制度をつくって現場に下ろすみたいな形が多いと思うのですけれども、そうじゃなくて、現場を熟知している役員をプロジェクトメンバーに入れて、その人たちで議論して決めてもらって、制度を展開していくときも、その役員が一番分かっていますので、自分でこの制度にかけた思いとか制度の中身を説明することで、社員の納得感が全く変わったなと感じました。
 それから、社員の声を拾う仕組みとしては、資料の34ページにもありますけれども、一般社員で各部門からメンバーが集まって、フォーカスグループインタビューというのをやっています。この制度を入れたらどういうふうに感じるとか、どういうことが問題になるみたいなことを、私も入っていろいろ話を聞いて、そこで出てきた声を社長も含めたプロジェクトのほうに入れていく。一般社員のこういう受け止めがありますということをちゃんと伝えて、そこを折り合いながら制度設計をしていくということです。
 それから、おっしゃるとおり、そうは言っても、なかなか表立って言えないということもあるでしょうから、相談窓口みたいなものをちゃんと開設して、どうしても制度に納得いかないとか、ここのところが自分は気に食わないみたいなことがあれば、コメントを入れたり、個別に人事と面談したいということであれば、それをちゃんといただいて、時間かけて一人一人と向き合ったりということをやってきました。
 それから、2つ目は、こういった中で適応しづらい社員もいて、メンタルとか離職が増えるのではないかということですけれども、新制度が始まったばかりですので、この制度が直接的な引き金となって会社をやめていくみたいなものは、さきほどお伝えしたエグジットインタビューによれば今のところはそんなに出ておりません。3点目については、そのポストから離れるのが怖くて過重労働を強いてしまうリスクがあるということは認識しております。したがって、残業時間は多くないのだけれども、例えば深夜22時以降の労働時間が増えていないかなどはチェックをしています。あとは先ほどのエンゲージメントサーベイとか、ポジションアセスメント、多面観察もやっていまして、職場のリーダーと部下の関係性とか職場の雰囲気みたいな、こういう幾つもの指標を見ながら、早めに異常を検知していくということに取り組んでいます。何かあれば、そこに対して人事がちゃんと入って話をしていくということをしています。当然、ホットラインとか産業医に直接相談できる窓口とか、あるいは社内では言いにくいこともあるかもしれません。外部の相談窓口、それも医療機関とか弁護士とか、幾つも設けて、何かあったときにちゃんと声を発せられる環境づくりといったことは行っております。
 以上でお答えになっていますでしょうか。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続いて、武田委員、お願いいたします。
○武田委員 ありがとうございます。
 本日は、まず、アフラック様、佐々木様からすばらしいお話をありがとうございました。双方のプレゼンテーションから、大変多くの気づきをいただきました。厚く御礼申し上げます。
 質問が幾つかございますので、それぞれにお話を伺えればと存じます。
 まず、アフラック様に伺いたいことは、29ページの職務グレード体系のイメージについてですが、年齢や職位ではなく、職務に応じた処遇を実現と書かれているスライドに関してです。管理職でも、部長や課長という職位ではなくて、職務の大きさを基にグレードを定めること自体、私は大変望ましい制度であると思います。
 一方で、こうした制度を導入しますと、よく意見として出てきますのは、この事例ですと、B部は部長・課長ともにグレードが、ほかの部より、やや低くなっておりますが、従業員、この部で働いている方々から見た場合に、社内での位置づけや役割、機能が低いと捉える方もいらっしゃる可能性があり、そこで働いている方々のモチベーションに影響が出るのではないかということがございます。これは、私の意見というより、意見を聞くことがあるということですが、そうした議論が社内ではなされなかったのかという質問でございます。
 また、同じ部長でも、会社の戦略や、予想していない事態の発生で、仕事の中身や負担も変わると思います。そうした運用はどうされているのか。中計や、大きな枠組みの変更であれば、職務のグレードをあらかじめ、その中計に合わせて変えればよいため、可能と思いますが、環境の変化や、会社としても途中で戦略を見直さなければいけない場合、その職務に期待されるものが変わり得ると思います。そのような運用のフレキシビリティについての問題意識です。
 最後に、管理職では、集中する人には幾つも兼務がつく状況になりますが、その場合、どのようにグレードをつけられているのか、この点について、お伺いできればありがたく思います。
 次に、佐々木様の枠組は本当にすばらしい取組です。数年前にお話を伺い、そうした取組を始めていらっしゃることはもちろん存じ上げておりましたが、このように成果が着実に出ていらっしゃることを、改めて体系的にお伺いする機会をいただき、大変ありがたく思いました。佐々木様の長年の努力、そして着実に進めていかれる推進力に、一女性として心から敬意を表したいと思います。
 そうした佐々木様のような先駆者がいらっしゃったおかげで、遅れている日本でも、近年、働き方、そして育児制度も含めて、様々な制度が変わってきたと思います。制度、仕組みはできたのですが、最後残っている部分は魂、一言で言うとマインドになると思います。投資家の要求や世の流により、企業経営者はダイバーシティに取り組まなければならないと思っていらっしゃいますが、真の意味でのダイバーシティへの理解不足があるほか、アンコンシャス・バイアスがとても大きいと思います。
 CEOがアンコンシャス・バイアスを見直していかなければ、後継者を選ぶ際にかなり影響力が大きい日本の社会の現状を踏まえますと、そこを変えないとなかなか変わらないのではと強く思います。したがって、このダイバーシティインデックスも、CEOから従業員までとのことですが、日本全体のCEOに対する何らかの働きかけといった取組はお考えではないでしょうか。この点について、お話を伺えればと思います。ありがとうございます。
○アフラック生命保険株式会社伊藤氏 武田さん、鋭い御質問を幾つもいただきまして、ありがとうございます。
 3つ質問をいただきましたけれども、2つ目から御回答したほうが1点目を回答しやすいので、順番を前後してお答えできればと思います。ジョブグレードのところ、環境変化だったり、負荷がかかったりしたときに、そのまま硬直的なのかという問いだったと思うのですけれども、ここに対応するために2つあります。
 1つは、職務そのものは変わるわけじゃないけれども、仕事がいろいろ増えた。例えば、人事でもコロナの対応のために職域接種を行うなど、大変だったのですけれども、そういったことは、その年の業績考課で評価して、つまり、ボーナスで還元していくという考え方。ベースレートは別に変えるものじゃないということです。
 2つ目は、仕事そのものが大きくなっていくケースがあるのです。職務そのもののミッションが上がっていくみたいなことがあります。成果が出れば、またいろいろなプロジェクトとかが普通の業務として落ちてきたりしますので、そういうときはジョブグレードを速やかに柔軟に見直しています。1回決めたグレードを固定するわけじゃなくて、実は変えることが仕組み上は毎月可能なのです。職務の変動があればグレードを見直していくということを即時やっていて、上がることが多いのですけれども、こういうことで対応しています。
 そうすると、1点目の従業員が見たときに、B部の社員はモチベーションを下げるじゃないかという声がなかったのかということですけれども、制度を導入するときにまさにありました。社員にアンケートもいろいろ取っていますので、自分の所属長のグレードが低いから、僕たちも期待されていないのではないかという声がありました。ただ、最近の調査ではそういった声はなくなっています。
 これは、大きく2つあると思っていまして、1つは、グレードというのは仕事の大きさであって、仕事が大きくなっていけば上がっていくということが見えていますので、そういうものなのだという理解が進んでいるというのが1つ。
 2つ目は、制度導入時の説明会でも、最初から社長を含めて経営陣が言っているのですけれども、仕事の大きさをグレードにしているだけで、どっちが偉いとかじゃない、ということです。部長・課長みたいな格があったときには、どっちが偉いみたいなことがあったと思うのですけれども、そうじゃないのだということをしっかり位置づけしてやっていったことで、そういう声はなくなっていったかなと思います。
 それから、3点目の兼務の扱いですが、これも大変いろいろな議論があったのですけれども、当社では兼務する場合、報酬は案分しています。なので、20グレードの部長が、例えば新しいプロジェクトのプロジェクトリーダーとして22グレードの大きさの仕事をすることになった。FTEでならすと5割5割だったら、足して2で割ったお給料を払ってあげるということをしています。人事管理は非常に大変です。人事部泣かせなのですけれども、どっちかに寄せてしまうと不満も出るでしょうし、分かりにくいですので、プリンシプルベースで正しい選択をしようということで、運用の負荷よりは、そっちの選択を当社はしたということでございます。
○佐々木委員 武田さん、どうもありがとうございます。武田さんに高く評価していただいたということで、私も大変光栄に思います。これからも御指導、お願いいたします。
 今の御質問にお答えしたいのですけれども、ダイバーシティ推進ということが人事ではないということ。それから、女性活躍とかも含めてですが、これはかわいそうな立場にいる人たちを救ってあげるという施策ではなくて、自分に対してもプラスになり、企業に対しても、ひいては日本社会にも、あるいは地球社会にも貢献するのだという大きなところに向かっているのだということが分かる必要があると思っております。しかしながら、そんな中でどう整えるかで、各所、皆さんいろいろと知恵を使って、アワードを出したり、数値を公表したりということも進んでいるので、本当にいい時代になってきたと思うのですけれども、企業の中では、まだ外から見えるところを整えるというところになっているのです。
 それこそ、御記憶にあるかもしれないですけれども、雇用機会均等法ができた頃、あるいはその直後というのは、訪問してみると、男・女で職を分けていない、総合職と一般職と上手に名前を変えることですり抜けていくという知恵が男性の中に生まれたわけですし、それから、女性の管理職を増やせと言ったら、何とか室長とかグループ長とか、いろいろな名前をつけて女の人の数をカウントするけれども、行ってみると部下もいないし、予算もない女の人が続々いた。そういうことも含めて、今、厳しく言うと、私は取締役の数というか、役員の数のカウントも、日本は、監査役には議決権がないのに、この人たちを役員としてカウントして、企業によっては取締役は女性ゼロ、監査役に3人で、うちは3人いるという発表をする企業もあるわけです。
 なので、様々なところで、まだ男性も苦心しながら外目を整えているというところかもしれないと、言葉を選ばずに言えば、そういうことだと思っておりまして、私も講演やコンサルで招かれて伺いますと、人事の方とか、時には社長が、形は整ってきたのだけれども、中身は変わっていないという声を、この20年ぐらい聞いてきたのがダイバーシティインデックスになっておりまして、ダイバーシティの取組は、企業から整えていく、制度を整えていくというアプローチと、それから、個人一人一人のマインドを変えて知識を深めて、そこに多様な人材として貢献するのだという人を育てていくという両輪がないと、どうしても片方だけだと、制度は整ったがマインドは高まらない。
 つまり、実はダイバーシティ経営は、企業側だけではなくて、人事、一人一人の人材の育成につながっている。ここが、武田さんがおっしゃった、ここからは魂、マインド。この魂、マインドは、社長の魂、マインド、志、人事部や経営、企画の方のマインドだけでなく、全社員の魂とマインドがそこに向かわないといけない。厳しく言うと、以前、終身雇用のときは、入社して犯罪でもしなければ、30~40年いて退職金がもらえるという時代だったけれども、ダイバーシティ経営の時代は、アフラック様の事例もあるように、基本的には一人一人も伸びよう、貢献しようという意識が育たないと、幾ら組織が整える器がよくても、それを悪用というか、目的にそぐわないものになっていると思っています。
 これをずっと、私もこの10年、20年考えてきて、気づきを高めて、カルチャーを高めるには、先ほどから言う知識を上げないといけないのだな。今日の労政審に参加している皆さんは、ダイバーシティ経営がいかにプラスになるか、みんな知っていて、多分いろいろなデータを持っていて、確信した10年、20年を過ごしているのですが、一般の人は知らないのですね。これがアンコンシャス・バイアスにつながるわけです。
 私たちの行っているテストの中は、テストですので、こっちが好きか嫌いかではなくて、少なくともこのアメリカの何とか大学では、こんな論文があるとか、こういう実験結果があるということを基にテストにしているのですけれども、例えば同じ事業計画書をプレゼンするときに、パワポも一緒で、スクリプトも一緒にして、声だけ男と女にしたら、男の人のほうにベンチャーキャピタルの投資がつくとか、そういうデータが研究されていっぱいあるのです。
 そんなもの、1データじゃないかというのではなくて、こういうデータもあるよということを毎年1回、社員みんなが、あるいは社長も触れることがあると、アンコンシャス・バイアスは、ネガティブに働いたときに、このバイアスは悪いわけです。評価に影響したときに悪いわけで、バイアスは、私たちポジティブに言えば、ノンバーバールコミュニケーションですから、常に様々なポジティブにも使うわけですけれども、これがネガティブなバイアスにならないように。
 でも、このバイアスは、それによってかわいそうなことをしないようにではなくて、有能な人材を評価し損ねて、自分の会社の上に上げなかったがために失ったとか、あるいは投資案件で、素敵な男性が出てきた会社に投資したけれども、実は同時にやった、あの女の子の会社のほうが後でもうかっていたということがあったときに、すごくバイアスがかかって正確に見えなかった。これは、実力主義と言っている企業に意外と起きていて、実力というものが男性目線でバイアスによって行われていて、正しく評価されない。こういうデータを見せることが、最終的には魂やマインドに火をつけるのではないか。
 あなた、心を入れ換えなさいよと揺さぶっても、それはなかなか難しいですけれども、時間はかかりますが、会社の役職のある、人事部だったり、推進室だったりが仕組みを発表しますが、そうじゃなくて、全社丸ごとが改革に入っていくという時期なのかなというのが、私たちの個人のアウェアネスとか個人のナレッジをスコアにしていくという取組です。今、4年目、今度は2月に5回目をスタートするので、参加企業を探しているというか、増やしていきたいわけですけれども、これが5年目、6年目となっていくとマインドが変わってくる。先ほどの小林製薬さんやエージーピーさんも、4年やって随分マインドが変わってきているということが見えますので、続けていただくといいのかなと思っている次第です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 山川委員、何かありますか。
○山川委員 質問が2つだけあって、1つは簡単な質問をアフラックさんに。全直雇用の社員に占める女性の割合と、先ほどの30%という数字をどういうふうに決めたのかなというところを、ちょっと教えていただきたいというのが1つ。
 それから、アフラックさんと佐々木さん、お二方にお聞きしたいのですけれども、女性活躍の話だと、当然、女性の管理職が増えないとお話にならないと思うのですけれども、私は、別にこの分野は専門じゃないのですけれども、素人的に考えると、管理職になりたい女性があまりにも少な過ぎるのが一番の問題だろうと思います。私自身もそうだったので、そう思うのですけれどもね。このときに、女性にとって管理職になるというのは、男性と違って自然なキャリアパスではないから、どこかでかなり意識的に自分は管理職に向いているかしらということを、特に真面目な人は絶対考えると思うのです。そうしたときに、私は向いていないわと思う人が多いのかなと。ちなみに私自身もそうでしたと。
 その問題をどう克服するのかというところについては、個人的にお知恵をお聞かせいただきたくて。私自身は、そういう質問を若い女性からされたときには、今まで会った男性の管理職の中で一番駄目なやつを思い浮かべて、その人より自分ができると思ったらできるのではないか。そんな大した話じゃないよみたいな話をしているのですけれども、建設的じゃなくて、これじゃ駄目だと思うのですけれどもね。
 思うに、管理職としてのトレーニングで身につくことは幾らでもあって、それはもちろん普通のトレーニングでやっていただければいいし、男女を問わずやるべきだと。だけれども、管理職とかリーダーについてのイメージが完全に間違っているというか、鶏と卵みたいな話ですけれども、管理職をイメージしてくださいといったら、絶対男性をイメージすると思うのです。リーダーをイメージしてくださいと言われると、少年漫画に出てくるカリスマ的なリーダーみたいなものを思い浮かべてしまう。
 そうすると、私はそうじゃないわねと当然思いますね。そうすると、管理職ないしリーダーにもいろいろなやり方があるのだ。それこそダイバースなのだということを伝えないことには、男性管理職みたいなものに女性がなりましょうとなるわけはないのですけれども、その辺の意識づけとかをどのように工夫していけば、その問題を解決できるのかを個人的にはすごく知りたいなと思っています。よろしくお願いします。
○アフラック生命保険株式会社橋本氏 山川さん、御質問ありがとうございます。
 まず、アフラックの社員は約5000名おります。5000名のうち、男女ほぼ半々になっているので、2500人ぐらいいるということになります。当社がダイバーシティ推進をしているのは、意思決定層の多様性を確保したいということで、会社が変わるためにそこが必要だということで取り組んでおりますので、少しでも上がればいいというものじゃなくて、30%ぐらいいないと発言できないと考え、まず30%は女性を配置しようということで進めています。なので、多分30%が最後のゴールではなくて、当社の男女比が50対50なのであれば、最後の最後は50%ということなのだろうなと、今、考えております。
 2017年にこの目標を立てた当時は11%だったのです。それを30%にいつするかという話で、25年に達成なんてできるのか。という話も当時あったと聞いていますけれども、大変高い目標を掲げて、今、推進しているところでございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 では、佐々木さん、お願いします。
○佐々木委員 女性は管理職になりたくないと。本当にそういう話をいろいろなところで聞くのですけれども、まず1つは、男性の管理職しか見てきていないので、管理職になりたくないのではなくて、ああなりたくないという話だと思うのです。なので、私はそういう女性たちに会うと、そうなりたくないね。でも、あなたがならないと、永遠にあなたの会社のカルチャーはこのままです。この人の部下として働くのです。あなたが上になっていくことによって、あなたがルールをつくったり、カルチャーをつくったりできるので、変えたいのだったら、今こそあなたがなったほうがいい、と。
 会社は、できない人には仕事を振りません。この人は絶対失敗する、と思う人に管理職になってと声をかけないので、期待されたり、可能性があるのだから、声をかけられたら受けたらどうかと個人には言っています。
 以前、カルビーの松本さんがおっしゃっていたけれども、みんな、そんなことを世の中の人は言うけれども、カルビーでは管理職にオファーして、一人の女性も断らなかったよ。何でというと、男は名誉で動くから、何もやれないのに部長になれ。部長になります、課長になりますと喜んでやるのだけれども、女の人は、それはどういうふうに労働時間は変わりますかとか、給料はどのぐらい変わりますかとちゃんと聞く。給料をちゃんと望むように高く上げてあげたら、100%、女の人はイエスと言った。つまり、今までの男の人に管理職を提供するようなやり方ではなくて、給料も上げて、いろいろなものを上げれば、うちの会社では、女の人で僕がオファーした人は一人も断らなかったよということでした。なので、様々な方法があると思います。
 もう一つ、データがたくさん出ているわけですけれども、女性が自信を持たない。アンコンシャス・バイアスというのが、女の人に対して男が思うということではなくて、女の人が自分自身にアンコンシャス・バイアスを持っていて、自分はできない、女だからということを思ってしまうというバイアスがある。
 これもよく言われる事例ですけれども、例えばあなたは管理職になってください。あなたがやらなければいけないことは、先ほどのアフラックさんじゃないけれども、この10のジョブディスクリプションがあって、スキルもこういうことがないといけません。男の人にオファーすると、自分は4しかないのに、頑張ります。4あります。あとの6は頑張りますと言って、とにかく課長やります、部長やりますと言うけれども、女の人は9あるのに、すみません、私はあと1個足りないので、まだやりたくないです、できないと思いますと言ってしまう。この傾向もデータで出ているので、4でもやっている人はいるよということを教えてあげるのも1つだと思います。
 あとは、今日テーマになりましたアンコンシャス・バイアスが社会的になっていて、幼稚園、保育園、小学生に、例えば消防士の絵を描けと言えば男の人を描く。テレビのほうでも、コメンテーターをフィフティ・フィフティにするというBBCの運動がございますけれども、これも私は大変重要だと思っていて、例えば事故や事件が起きたときにコメンテーター、あるいは経済のコメントをする人はみんな男の人が出てくると、これはアンコンシャスの植えつけなので、見ている人は、何か偉くて専門で、難しいことを言うのはみんな男の人だと思ってしまう。ニュース番組も、女性のアンカーがキープできているところは少なくて、男の人がアンカーで立っていて、この人は20年やっているけれども、女の人は3年ごとに変わるとか。
 こういうことが起きていると、知らないうちに学習してしまっているので、先ほどから私が知識、知識と申し上げるのは、そこに気がつく。ああ、そういえば、この番組と思っただけで、明日から見える景色が変わってくるので、それをどこから取り組むかというと、1対1の場合は、あなたでもできるのよと言うことですね。
 もう一つだけ、最後につけ加えると、今、メンター制度というのが世界ではだんだんなくなりつつあって、スポンサー制度になっています。つまり、相談に乗るというだけではなくて、本当にその人が成功するように支援する。頑張ってね、応援しているよ、すばらしいね、ではなくて、実際にその人がプレゼンするなら資料をチェックしてあげる。話がうまくいかないなら、営業先に一緒に同行してあげる。1本のメールを事前に入れてあげるみたいな、いろいろなことをして成功させる。という意味では、女性を管理職にするときに、その人が心地よく成功できるような応援体制が必要かなと思っています。
○守島部会長 ありがとうございます。
 もう12時過ぎましたので、今日はこれでこの審議会を終わらせていただきたいと思います。
 最後に、日程は事務局のほうからお願いします。
○蒔苗政策統括官付参事官 今日はどうもありがとうございました。
 次回ですけれども、1月末に、今日も大分いろいろな気づきをいただきましたので、今日の議論を含めまして、これまで2月からずっとやってまいりました議論を整理したものを用意させていただきまして、また御議論をお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
 本日はどうもありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。これで終わりにします。