第106回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第106回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和4年12月16日(金)10:00~10:54
 
2.場所 AP虎ノ門会議室Aルーム(一部オンライン会議会場)
        (東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

3.出席委員
(公益代表委員)
○学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授 守島 基博
○明治大学法学部教授 小西 康之
○慶應義塾大学医学部・大学院健康マネジメント研究科教授 武林 亨
○名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
○大阪大学理事・副学長 水島 郁子
○読売新聞東京本社編集委員 宮智 泉

(労働者代表委員)
○UAゼンセン労働条件局部長 柏田 達範
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○全国建設労働組合総連合労働対策部長 田久 悟
○日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長 冨髙 裕子
○日本科学エネルギー産業労働組合連合会副事務局長 永井 学
○日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 平川 達斎

(使用者代表委員)
○日本通運株式会社人材戦略部専任部長 池田 祐一
○一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部上席主幹 坂下 多身 
○東京海上ホールディングス株式会社人事部専門部長 砂原 和仁
○日本製鉄株式会社人事労政部部長 本荘 太郎
○鹿島建設株式会社安全環境部長 本多 敦郎

4.議題
(1)労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱等について(諮問)
(2)労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会について(報告)
(3)令和4年度第2回社会復帰促進等事業に関する検討会について(報告)
(4)労働保険関連手続及び労災保険特別加入関連手続に係る電子申請の状況について(報告)
(5)その他

5.議 事
○守島部会長 皆様方、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより、第106回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会を開催いたします。本日の部会は、会場及びオンラインの両方で実施いたします。
 はじめに、前回の部会以降委員の交代がありましたので、事務局より御紹介をお願いします。
○補償課長 補償課長の西岡でございます。本日、急遽、労災管理課長の代理といたしまして、事務局対応等を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。では、委員の御紹介をさせていただきます。労働者代表として、髙橋義和委員に代わり、UAゼンセン労働条件局部長柏田達範委員に御就任いただいておりますので、御挨拶をお願いいたします。
○柏田委員 UAゼンセンの柏田でございます。よろしくお願い申し上げます。
○守島部会長 よろしくお願いします。次に委員の出欠状況ですが、二宮委員が御欠席と伺っております。また、小西委員、永井委員、本荘委員は遅れて出席され、中野委員、砂原委員は途中退室の予定となっております。出席者は現在14名ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表それぞれの3分の1の出席がございますので、定足数を満たしていることを御報告させていただきます。それでは、カメラ撮影等はここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは、議題に入りたいと思います。第1の議題は「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱等について(諮問)」でございます。これは、諮問案件であります。事務局から、まず御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○補償課長 それでは、資料1について御説明いたします。3ページを御覧ください。まず内容についてですが、労働基準法施行規則の一部を改正する省令案の概要を御覧ください。1、改正の趣旨ですが、今回の省令改正については、一言で申し上げますと、業務上疾病に係る例示列挙を追加するというものでございます。改正の趣旨ですが、労働基準法第75条1項において、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合には、使用者はその費用で必要な療養を行い、又は必要な療療の費用を負担しなければならないという災害補償責任の規定がございます。そして同条第2項において、業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定めることとされております。具体的には、労働基準法施行規則第35条に書いてありますが、別表第1の2において疾病の範囲が決まっており、例示列挙もなされております。今般、業務上の疾病の範囲について、新たな医学的知見の公表等の状況、あるいは労働災害の発生状況等を踏まえまして、令和4年7月から労働基準法施行規則第35条専門検討会で検討を行いました。その結果、令和4年10月7日に検討会の報告書が取りまとめられたことから、この報告を踏まえ労基則別表第1の2について改正を行うというものでございます。
 2の改正の内容でございます。(1)労基則別表第1の2の疾病に「三・三´-ジクロロ-四・四´-ジアミノジフェニルメタン」を追加する。(2)としまして、労基則別表第1の2の疾病のうち、第8号に掲げる疾病について重篤な心不全を追加するとともに、解離性大動脈瘤を大動脈解離に改めるというもので、公布日は令和5年1月中旬を予定しており、施行日は公布日となっております。
 次に、労働基準法施行規則第35条専門検討会の報告書について、引き続き私から説明いたします。資料については、同じ資料1の5ページ以降です。こちらは、労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書がございますので、こちらを基に説明いたします。概要は4ページにございますので、これについて説明いたします。まず、概要の開催経緯、目的を御覧ください。この労働基準法施行規則第35条専門検討会については、医学の専門的知識を有する者により構成された検討会で、労働基準法施行規則別表第1の2に掲げる業務上疾病の範囲について、昭和53年以降開催し検討を行っているものでございます。今年度の開催に当たりましては、前回、35条専門検討会が開催されました平成30年度以降の新たな医学的知見を踏まえ、労働基準法施行規則別表第1の2に新たに追加すべき疾病があるか否かの検討を行い、本年10月に報告書が取りまとめられたものでございます。今回の35条専門検討会で検討を行ったのは、概要の中ほどの「検討疾病」の所でございますが、今回お諮りいたしますのは、このうちの2つ目、3つ目の○の所でございます。1つは、芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会で検討した疾病。それから3つ目の○の所ですが、脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会で検討した疾病の2件でございます。
 1つ目について御説明いたします。これは化成品を製造する事業場において、化学物質であるMOCAを取り扱う労働者が膀胱がんを発症したとして、複数の労災請求がなされたことから、MOCAへのばく露と膀胱がんとの因果関係について、令和2年に医学専門家による芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会において検討を行っていただきました。この結果、MOCAへの一定のばく露により膀胱がんを発症し得るとの結論が得られたことから、この労災請求については、業務上であるとして保険給付の支給決定を行ったところであります。この検討会報告書を踏まえて、今回、35条専門検討会において検討いただきましたところ、新たにMOCAによる尿管がんの労災認定事例があることを踏まえ、MOCAによる「尿路系腫瘍」を別表第1の2に追加することが適当との結論をいただいたものでございます。
 続きまして、2つ目、脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会で検討した疾病について説明いたします。この基準については、令和2年から3年にかけて医学等の専門家により開催されました脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会の報告書を踏まえ、昨年、令和3年9月に改正されております。その際、対象疾病の追加等が行われております。具体的には、重篤な心不全を追加するとともに、これまで解離性大動脈瘤としていたものを大動脈解離に改めたものでございます。この報告書を踏まえ、今回、35条専門検討会において検討いただきましたところ、別表第1の2についても、同様の見直しを行うことが適当との結論をいただいたものでございます。
 なお、検討疾病の概要の1つ目の○と4つ目の○については今回の諮問事項ではありませんが、1つ目の化学物質分科会で検討を行い、結論を得た化学物質による疾病については、化学物質による新たな省令について検討を行い、令和4年3月に取りまとめられた労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会の報告書に基づき、13の化学物質について大臣告示に追加等を行うことが適当との結論をいただいたものでございます。
 一番下の4つ目の労働基準法施行規則別表第1の2各号に規定する包括救済規定に該当した疾病については、平成29年度から令和2年度において、別表第1の2各号に規定する包括救済規定に該当するとして認定されました疾病について検討いただき、現時点において別表1の2及び大臣告示に追加する必要はないとの結論をいただいたものでございます。
 また、行政当局においては、引き続き情報収集に努め、必要に応じて化学物質による疾病に関する分科会を開催し、検討を行うことを望むとの御提言をいただき、引き続き情報収集等を行うこととしております。私からは以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。それでは、ただいま諮問のあった件について御意見、御質問等がありましたら、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインで参加の委員におかれましてはチャットのメッセージボックスから「発言希望」というふうに入力をお願いいたしたいと思います。では、冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 御説明いただいた内容について特段異論はありません。過去に遡ってMOCAの作業従事歴のある労働者の方やその家族の方への早急な周知と適切な対応をお願いします。また、現在MOCAを使用している事業場や作業に従事する労働者への適切なばく露防止対策についても、行政として更なる周知徹底をお願いします。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。では、続きまして坂下委員、お願いいたします。
○坂下委員 経団連の坂下です。お話がありました改正省令案の内容については、有識者による検討会の報告を踏まえた「労働基準法施行規則第35条専門検討会」における十分な検討の結果として得られた結論について。
○守島部会長 坂下委員、ごめんなさい。多少小さいので、ボリュームを上げていただけますでしょうか。ありがとうございます。すみません。
○坂下委員 いかがでしょうか。聞こえますでしょうか。
○守島部会長 大変よくなりました。ありがとうございます。
○坂下委員 恐れ入ります。今回の内容については、有識者による検討会の報告を踏まえた「労働基準法施行規則第35条専門検討会」における十分な検討の結果として得られた結論であると理解しており、この改正省令案要綱は妥当であると考えております。
 今般の省令改正により、被災労働者等の迅速な救済につなげていくことは非常に重要です。しかしながら、そもそもMOCAを扱う事業場には、作業環境測定や労働者の特殊健康診断の実施等が義務付けられています。まずは、ばく露防止措置の徹底が重要であり、厚生労働省におかれましては、NOCAを扱う事業者への一層の周知広報と、現場の声を踏まえた必要な対応を是非お願いしたいと考えております。以上です。
 
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問等はございますでしょうか。大丈夫ですか。ほかにないようですので、それでは諮問のあった件につき、当部会としては妥当と認め、労働条件分科会会長宛てに報告することといたしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。皆様方のお顔が見えないので、反対の場合は申し訳ありませんが、御発言をお願いしたいと思います。これでよろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○守島部会長 ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。労働政策審議会令第7条第7項により、部会の議決をもって分科会の議決をすることができ、同令第6条第7項により、分科会の議決をもって審議会の議決とすることができるというふうに定められております。また、労働条件分科会運営規程第7条において、当部会の議決をもって分科会の議決とするということになっており、労働政策審議会運営規程第9条において、分科会の議決をもって審議会の議決をするということになっております。したがって、当部会の議決が審議会の議決となります。
 それでは、事務局に答申案を用意していただいておりますので、読み上げていただきたいと思います。画面にも映させていただきます。
○補償課長 それでは、読み上げさせていただきます。労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱について。令和4年12月16日付け厚生労働省発基1216第2号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本部会は審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。記、厚生労働省案は、妥当と認める。以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。ただいま読み上げられた内容で、部会長から分科会長、分科会長から労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛てに答申を行うことといたします。なお、委員全員には後ほど答申文を送付させていただきます。
 続いて、次の議題は「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会について」でございます。まず、事務局から資料を御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○労災管理課長補佐(企画担当) 労災管理課です。内容を御説明いたします。資料2を御覧ください。こちらは労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会報告書(概要)です。こちらの「現状」の欄と「メリット制のイメージ」と青で囲われた所を御覧ください。この「メリット制のイメージ」にありますとおり、労災保険給付の支給決定がなされると、2~4年後の労働保険料が増大するという制度となっております。これがメリット制という制度です。「現状」の所ですが、各事業での労災保険給付の実績が反映されると、現在、国は労働者等の法的地位の安定性を重視して、①事業主に対して労災保険給付支給決定の不服申立適格等を認めておらず、②労働保険料認定決定の不服申立等において、事業主が労災保険給付の支給要件非該当の主張をすることも認めておりません。こうした国の主張を否定する下級審の判決が出ています。直近では、本年11月29日の東京高等裁判所の判決で、この①を認めないとの判決が出ております。この事件については、今月12月12日月曜日に国が最高裁判所に上告をしていることを申し添えます。
 検討会のメンバーは、法律の有識者の皆様に御参集いただいております。「検討の視点」ですが、労働者等の法的地位の安定性を堅持しつつ、メリット制を介して労災保険給付分に係る労働保険料の増大という不利益を受ける可能性がある事業主の手続的保障を図る観点から、こうした事業主が、労働保険料認定決定の不服申立等において、労災保険給付の支給要件非該当性を主張することを認める余地がないかを検討したものとなっています。
 まとめ、結論として、(1)労災保険給付支給決定に関して、事業主には不服申立適格等を認めるべきではない。(2)事業主が労働保険料認定決定に不服を持つ場合の対応として、当該決定の不服申立等に関して、以下の措置を講じることが適当、という結論です。ア)労災保険給付の支給要件非該当性に関する主張を認める。イ)労災保険給付の支給要件非該当性が認められた場合には、その労災保険給付が労働保険料に影響しないよう、労働保険料を再決定するなど必要な対応を行う。ウ)労災保険給付の支給要件非該当性が認められたとしても、そのことを理由に労災保険給付を取り消すことはしない、という結論です。
 参考資料として、各団体からの御意見を頂いておりますので、お手元に配布させていただいております。内容については説明を省略させていただきたいと思います。厚生労働省としては、この報告書を踏まえ、準備が整い次第、関係通達を発出することを考えております。資料の説明は以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関して、御意見、御質問等がありましたら、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインの委員におかれましてはチャットのメッセージから「発言希望」と記入をお願いいたします。それでは、まず、中野委員、お願いいたします。
○中野委員 こちらの検討会に参加していた者として、発言をさせてください。今、事務局から御説明がありましたように、労災保険法に基づいて保険給付の支給決定がなされると、メリット制を通じて使用者が負担する労災保険料が引き上げられる可能性があります。従来の国の立場では、労災保険料の増額に不服を有する事業主が、保険料認定処分に対する不服申立等において、その前提となる労災保険給付の支給決定の要件非該当性、つまり、当該災害が業務災害には当たらないということを主張することを認めず、また、保険給付支給決定に対する取消訴訟の原告適格なども認めてきませんでした。
 ところが近年、先月末に出された東京高裁の判決のように、事業主がメリット制を通じて労災保険料の引上げという経済的不利益を負うことに着目して、事業主に保険給付支給決定に対する取消訴訟の原告適格を認めるという判決が出される傾向にあります。しかし、高裁判決のような立場を取りますと、今後、保険給付の支給決定がなされる度に事業主が取消訴訟を提起するようになり、労働者やその遺族がいつまでたっても安心して保険給付を受けられなくなってしまい、労災保険制度の目的、すなわち、迅速かつ公平な保険給付の支給により被災した労働者やその遺族の福祉の増進を図るという制度の目的が果たせなくなってしまうおそれがあります。
 一方で、このような判決が出されるのは、労災保険料の増額に不服を持つ事業主が争う道が保障されてこなかったからであり、メリット制を含めた労災保険制度の安定的な運営を継続するためにも、事業主に対する手続的保障を図る必要があります。
 今回の検討会では、事務局から御説明いただいたような結論を導きましたが、これは事業主に保険給付の支給決定に対する取消訴訟の原告適格を認めないという国の立場を維持することで、労働者やその遺族の法的地位の安定を確保するのと同時に、保険料認定処分に対する不服申立ての段階で保険給付支給決定の要件非該当性の主張を認め、支給要件を満たしていない、つまり業務災害には当たらないと考えられる災害に対する支給決定は保険料の算定根拠から除外する道を開くことで、事業主に対する手続的保障を図ろうとするものです。
 また、もし保険料認定処分に対する不服申立の段階で事業主の主張が認められ、保険給付支給決定が支給要件を満たしていなかったと判断されても、遡って支給決定を取り消すことはしないという措置を取ることにより、労災保険給付を受けている労働者や遺族の生活の安定が損なわれることのないようにという配慮もしています。
 このように、検討会の報告書は、労災保険給付を受ける労働者の地位の安定と、保険料を負担する事業主の手続的保障との間でバランスを取った解決策を提言するものであることを、部会の委員の皆様には御理解いただければと思います。以上です。
○守島部会長 中野委員、ありがとうございました。続きまして、冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 特定事業主の不服申立に関する議論では、多くの御意見や要望もあったとの御説明がありましたが、今回取りまとめられた検討会報告書や11月29日の東京高裁判決で結論が出たわけではないと考えておりますし、労働災害という労使が参加すべき課題の議論でありますので、労災制度全般に起こり得る影響を想定しつつ、議論をすべきものと考えております。今回、取りまとめられた検討会報告で、「給付支給の決定に対する特定事業主による不服申立等を認めない」という従来の解釈を維持したことは意義があると考えますが、それが確実に担保されることが重要であり、厚生労働省としても、これまで以上の御努力を是非お願いしたいと考えております。
 関連して11月29日の東京高裁判決ですが、特定事業主の原告適格を認めて、原告適格を有しないとしていた1審の判決を取り消し、差し戻す判決を出していることは、極めて遺憾であり、今後の裁判の行方を注視していきたいと考えております。
 また、これまでの裁判や今回の検討会の発端となったともいえるメリット制については、制度設立当初と比較して産業構造なども大きく変化しており、今日においても、労災を低減させる効果があるのか検証すべきではないかと考えています。
 いずれにしても、労災保険は被災した労働者を支える最も重要なセーフティネットであり、保険給付に当たっては、迅速かつ公正な実施のための法的安定性を保つことが必要だと考えております。労災保険制度の運用が適切に行われ、法の目的に沿って労働者が保護されることが最も重要であることを、改めて意見として申し上げたいと思います。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。続きまして、坂下委員、お願いいたします。
○坂下委員 ありがとうございます。中野委員からも御説明がありました報告書についてコメントをさせていただきます。労災保険の財政は全額が事業主の保険料によって賄われておりますが、労災保険の支給に伴い、メリット制を通じて事業主は労働保険料が引き上げられる可能性があります。報告書でも指摘されているとおり、精神障害や脳・心臓疾患の事案などには、業務に起因するものかどうかが微妙なものもありまして、保険料を引き上げられる事業主が不服を持った場合に、何らかの形で争うことができるようにするということは望ましいと考えております。
 一方で、労災保険制度の趣旨は、被災労働者等への迅速で公正な給付を行うことにあり、これが最も重要であることは改めて申し上げるまでもありません。一旦、支給決定された労災保険給付が、いつまでも安定せず、後に返還されるようなことになりますと、制度の趣旨を損なうことにもなります。
 今般の検討会の結論は、事業主が保険料の引上げを争う中で労災支給処分の支給要件の非該当性を問うことを可能にしつつ、労災保険給付そのものは引き続き安定させることとなっており、事業主と被災労働者等の双方の立場に配慮したバランスの取れたものになっていると受け止めております。
 いずれにしても、本件に関しては、係争中の裁判もあり、また様々な受止めや声があることを承知しております。今後の対応に関しては、厚生労働省において、労災保険制度の趣旨の一層の周知を図るとともに、関係する方々が無用な不安などを抱くことがないように、適切な制度運用に引き続き御尽力を賜りますよう、強くお願いしたいと存じます。私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問等はありますでしょうか。お願いします。
○審議官 ありがとうございます。労災担当審議官の梶原です。頂きました先ほどの御指摘等について、事務局からお答えをいたします。メリット制についての御指摘がありました。メリット制については、事業主間の負担の公平を図るとともに、事業主の災害防止努力を促進する制度となっております。この見直しについては慎重な検討が必要であると考えておりますが、先ほどの御指摘を踏まえまして、どのような検証ができるのかという点から検討をしてまいりたいと考えております。いずれにしましても、労災行政としましては、常日頃の審査請求の判断を引き続きしっかりと行っていく、これが一番重要なことと認識しております。また、係属中の裁判の対応についても、関係機関と協議・協力しまして、これもしっかりと取り組んでまいります。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。田久委員が手を挙げていらっしゃいます。どうぞ、御発言ください。
○田久委員 今、様々な意見も頂きましたし、事務局からも報告があったように、拙速な結論ではなく、やはり慎重に、労働者の立場に立っての関係での結論を、是非、引き続き検討していただきたい。やはり事業主の姿勢や労使の関係なども含めて、十分な分析を行いながら、引き続き、この問題点の検討を労使間できちっとやっていくべきかと思っています。
 また、メリット制に関しても、先ほども、災害防止の観点も含めて設けたと報告がありましたが、是非、メリット制の存廃自体も含めた議論なども、これを機に議論していくべきではないかと、私自身は考えております。そういった点も含めて、やはり労働者が事故に遭った際に速やかに、生活が貧困にならない救済ができる体制を保つような制度に、引き続き労使で検討することが重要ではないかと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問等はありますでしょうか。特にないようですので、それでは、この議題は終わりにして、次の議題「令和4年度第2回社会復帰促進等事業に関する検討会について(報告)」をお願いいたします。事務局から御説明をお願いいたします。
○労災管理課長補佐(企画担当) 労災管理課です。内容を御説明します。資料3を御覧ください。これに関連する参考資料として、11月7日の検討会の資料も机上に配布しているところです。資料3で御説明申し上げます。
 まず、総論です。社会復帰促進事業費の来年度の予算要求額は、未払賃金立替払事業費を除くと、前年比で3%程度の減少となっている。なるべく早く平成25年の水準へ戻してほしいと考えており、事業の不断の見直しをお願いするというもの。2つ目、未払賃金立替払事業費の減額に伴い、社会復帰促進事業費の支出は削減されているが、いまだに労災保険財政の収支はマイナスとなっている。今後、支出超過が拡大しないよう、各事業のPDCAをしっかり回してほしい。ウィズコロナとして経済活動が再開される中、社会復帰の関係の予算は必要。特に有事の備えとして未払賃金立替払事業は重要な施策。また、働き方改革の推進など労働関係の助成金は、予算に余裕を持って取り組んでほしい。全体を見ると、めりはりの効いた予算を計画しているのではないかと思う。労災保険は、労働者の災害に対する直接の補償というのが本来の趣旨。社会復帰促進事業については、ある意味、おまけ的な要素であるということを踏まえ、予算については、社会復帰促進事業の部分は削減し、本当の意味での補償部分を充実させることが大切である。令和5年度のことを考えていく中で、各事業によってコロナの影響というのはいろいろ変わってくるという説明については、理解した。以上が総論です。
 続きまして、個別事業についての御指摘を紹介したいと思います。まず、労災特別介護施設運営費・設置経費についてです。将来的には労災の特別介護施設にではなく他の医療施設や介護施設等でのケアにお金を出すような形への運営に変更することも検討してほしい。
 続きまして、過労死等防止対策推進経費です。労働法の専門家等のコメントを収録したDVD製作について、YouTubeなど、臨機応変に動画コンテンツの変更ができるような方向性も1つあるのではないか。
 続きまして、職場における化学物質管理促進のための総合対策です。来年4月から化学物質の自律的な管理への移行が予定されている中で、中小、特に小規模事業所におけるリスクアセスメントの定着や、適切な保護具の着用促進は非常に重要。
 メンタルヘルス対策等事業です。「こころの耳」相談事業について重要な取組であり、令和5年度より個人事業主も相談対象になるのは非常に良いことだと思う。
 続きまして、自動車運転者の労働時間等の改善のための環境整備等です。1つ目の御指摘です。極めて重要な事業であり、予算を有効に活用し、また、国土交通省や経済産業省とも協力しながら十分に取り組んでほしい。令和6年4月適用の改正後の改善基準告示について、複雑な点があるのでドライバーに十分周知してほしい。取引上の慣行の見直しについては、問題意識を荷主に共有し、本質的な課題解決に向けて対応してほしい。2つ目の御指摘です。トラックの改善基準告示について、例外も多く内容が非常に分かりにくい。運送業界の労働移動が積極的に進むよう取り組む必要がある。
 続きまして、家内労働安全衛生管理費です。家内労働者は減少しているが、巡回訪問が行き渡るようにしてほしい。フリーランスの取引適正化に向けて新法の検討が進んでいるが、労働政策の視点から進むべき方向性を明確にしてほしい。
 外国人技能実習機構に対する交付金です。予算が若干削減されているが、十分に対応できる予算規模か確認してほしい。
 続きまして、産業医学振興経費です。産業医科大学が重点的な教育支援をしっかりやっていることは承知しているので、引き続き目標達成に向けて頑張ってほしい。キャリア形成プログラムへの加入促進等、産業医科大学の卒業生が確実に産業医として従事するための方策に対応していると認識しており、経済界としては、産業医をしっかりと輩出していくために、産業医科大学に対する期待が大きい。産業医科大学の教職員の定員について、毎年削減が進んでおり、持続的な大学運営が難しい状況になりつつあると聞いている。国の定員整理、合理化と同様の対応が求められているとのことだが、非常に重要な機関であるため、大学運営に支障を来たさないようにしてほしい。
 No.37、過重労働の解消及び仕事と生活の調和の実現に向けた働き方・休み方の見直しです。働き方改革推進支援助成金について、自動車運転業務を含む時間外上限規制の対象となる適用猶予業種等の事業者向けに対応するコースは、来年度において非常に重要。会計システムの導入等の支援を行う労働時間適正管理推進コースについては、働き方改革において企業のDXが進むよう、積極的に支援してほしい。2つ目は、希望する御夫婦が不妊治療を円滑に受けられる環境整備は、少子化対策の強化の観点からは重要。不妊治療と仕事の両立支援について、例えば、職場の方に相談しようと思ってもなかなかしづらい等の非常にセンシティブな問題もあると思われるため、何か総合的なしっかりとした対応が必要なのではないかという御指摘です。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして御意見、御質問等がございましたら、前のように、会場の方は挙手、オンラインの方はチャットから「発言希望」と御記入願いたいと思います。柏田委員が手を挙げていらっしゃいますか。御発言、どうそ。
○柏田委員 2点意見をさせていただきたいと思っております。1点目は、個別番号30に関連しまして、自動車運転者等の時間外労働上限規制に関する周知広報事業に関することです。2024年4月から自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用されることとなり、先般、改善基準告示が取りまとめられたところです。自動車運転者の労災認定件数は依然高止まりしていることは御承知のとおりです。参考資料2の検討会資料の資料8番、31ページの「令和5年度概算要求への反映状況」の欄においては、法適用までの周知広報として、荷主、運送事業者向けのセミナーを開催し、また、事業者、労働者、企業、更に国民を含めて啓発事業を行うということですが、自動車運転者の安全・健康を守る観点からも、本事業が実効性あるものとなるように取り組んでいただきたいと思います。
 続きまして、2点目です。個別番号35番、産業医学振興経費についてです。資料3の2ページ目で、検討会においても関連の発言がされておりますが、産業医科大学は、働く人々の安全と健康を支援し、快適な職場の形成に寄与する労働安全衛生専門職の育成を担っております。労働安全衛生分野において果たすべき役割は、極めて大きいものがあります。産業医科大学の教職員の定員については、削減が進んでいると聞いておりますが、そのことによって、労働者の安全衛生の確保に影響を与えるようなことがあってはならないと考えております。大学運営に支障を来すことがないよう、体制の維持に努めていただきたいと思います。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。特にございませんですね。ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。次の議題は「労働保険関連手続及び労災保険特別加入関連手続に係る電子申請の状況について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○労働保険徴収課長 労働保険徴収課長です。労働保険関連手続に関わる電子申請の状況について内容を御説明します。
 資料4を御覧ください。2ページ目ですが、オンライン利用率引上げに係る基本計画についてです。規制改革実施計画に基づきまして、厚生労働省では年間10万件以上の手続について、オンライン利用率を引き上げるため基本計画を策定しております。当該基本計画においては、オンライン利用率目標値やオンライン利用率引上げに向けた課題と課題解決のためのアクションプランを定めており、第三者チェックの結果を踏まえ、必要に応じて計画を見直すことになっております。労働保険についてですけれども、以下①から⑤の届出等が対象となっております。また、同計画において令和8年度末までにオンライン利用率を①から⑤の平均で30%まで引き上げることを目標としているほか、課題解決のためのアクションプランとして、以下aからeの取組を行うこととしております。対象手続等やアクションプランについては、次ページ以降で御説明します。
 3ページです。上の表の左、対象手続が、①労働保険料の申告(継続)、②労働保険料の申告(一括有期)、③保険関係成立届、④名称、所在地等変更届、⑤労働保険料/一般拠出金還付請求書となっております。令和3年度の電子申請利用率が真ん中に書いてありますけれども、①18.4%から以下、15.5%、19.6%、16.1%、6.2%で、令和3年度平均では17.6%です。直近が右側、令和4年度の上半期の数字になりますけれども、それぞれ21.2%、17.2%、21.3%、17.5%、7.3%ということで、平均では20.3%となっております。利用率の推移は下の表に付けておりまして、まだ低いですけれども徐々に上がってきているところです。
 4ページ、アクションプランの履行状況についてです。a、オンライン申請を利用していない事業場に対する初期設定や申請方法の説明の実施です。令和4年9月末時点で1,316件の事業場に対して、オンライン申請を利用するための初期設定や申請方法の説明を実施し、分からない方に説明をするということです。それから、b、年度更新申告事業場へのGビズIDの周知ということで、令和4年6月の年度更新の書類に同封する電子申請周知用リーフレットに、GビズIDについて掲載のうえ、全ての年度更新事業場に対して送付をしているところです。c、オンライン申請に関するオンラインサポート体制の構築ということで、令和5年度からの予定でしたが、計画より前倒しで令和4年5月30日より、いわゆるチャットボットにより自動応答のサービスの運用を開始しているところです。d、オンライン申請の利便性等の周知ということで、これも令和4年5月1日から令和4年7月11日、年更とその直前の1か月の間に、インターネット広告や動画広告により、オンライン申請の利便性等の周知広告を実施しております。最後になりますが、社労士へのオンライン申請の周知ということです。そこに書いてありますけれども、令和4年5月の「月刊社労士」において企業を掲載したり、また、原則月1回の社労士連合会と定期協議会に参加しまして、意見交換等をしています。引き続きオンライン利用率の引上げに取り組んでいきたいと考えております。私からは以上です。
○補償課長 補償課長の西岡です。続きまして、労災保険特別加入関連手続に係る電子申請の状況について御説明します。
 資料5の2ページを御覧ください。オンライン利用率引上げに係る基本計画についてです。特別加入関連についても、労働保険関連と同様に基本計画を作成しておりますので、今般、目標値の進捗とアクションプランの履行状況について御報告するものとなっております。まず、基本計画の枠内の3点目に記載しておりますとおり、労災保険特別加入関連については、①から⑤の手続が対象になっております。令和7年度までの目標値としまして、手続により2つに分けて設定しております。具体的には①と②の特別加入の変更届については50%、③の特別加入の申請、④の特別加入脱退申請、⑤の給付基礎日額の変更申請については20%としております。この目標値の達成に向けた課題解決のためのアクションプランとしまして、aからcの3つを掲げております。こちらについては後ほど具体的な事項と合わせて御説明します。
 3ページ、目標値の進捗状況についてです。資料の下のグラフにおいて対象手続ごとの、平成29年度から令和3年度までの過去5か年の電子申請利用率の推移を示しております。青色と緑色のグラフが50%目標値としている特別加入に関する変更届で、ピンクとグレー、黄色のグラフは20%目標値としております特別加入の申請、脱退申請、それから、給付基礎日額の変更申請となっております。全体としましては御覧のとおりということで、順調に右肩上がりで上昇しているという状況です。また、資料上の表において、今年度におきます上期までの電子申請利用率を、暫定値ではございますが示しておりまして、給付基礎日額の変更申請を除いて令和3年度の実績を上回る状況となっております。なお、給付基礎日額の変更申請については、毎年度下半期に申請件数が増加する状況がありまして、上半期で見れば、今年度は前年度上半期より電子申請率は増加しているという状況ではあります。
 4ページ、課題解決に向けたアクションプランの履行状況についてです。aについては、労働保険関連と同様にGビズIDの周知を掲げておりまして、年度更新の対象となる全ての労働保険事務組合、特別加入団体、海外派遣事業主に対して送付しております事業主向けの施策周知用リーフレットにより、GビズIDについても周知をしています。続きましてb、申請の入力支援機能の拡充については、対象手続により令和4年5月と令和5年2月の2回に分けておりますけれども、各手続における入力必須項目について黄色のハイライト表示をするということで、どの項目について入力が必要なのか視覚的に分かるようにするという対応や、ハイライト表示のうち住所など一部の項目については、文字数制限表示を実施することで誤入力を防ぐようなシステム改修を行うこととしており、申請者の利便性の向上につながるものと考えております。最後にc、労働基準行政システムと特別加入システムの連携です。現在ここは連結しておりませんで、一部紙での処理もありますけれども、そこは業務効率化の観点で改修するということで、令和7年度までに実施したいと考えております。現時点では具体的なシステム改修の内容等は決まっておりませんけれども、今後、関係部署と適切に連携して調整してまいりたいと考えております。労災保険特別加入の電子申請に係る報告については以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして御意見、御質問等がありましたらお受けしたいと思います。会場の方は挙手、オンラインの方は「発言希望」と御記入願います。特にどなたもいらっしゃいませんかね。大丈夫ですかね。ありがとうございました。特段の意見がないようでしたら、これでこの議題は終わりにさせていただきたいと思います。そのほか、何かこの際ということで御発言がありましたらお伺いしますけれども、いかがでしょうか。これも特にないということを認識させていただきました。それでは、本日予定した議題は以上となりますので、部会は終了させていただきたいと思います。次回の日程については、事務局より追って連絡することとしたいと思います。本日は、以上となります。皆様方、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。