第82回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会

日時

令和4年10月18日(火)13:00~15:00

場所

会議会場及び傍聴会場 厚生労働省省議室
(千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)

議事

議事内容
○山本(眞)部会長 定刻になりましたので、ただいまから第82回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を開催いたします。
本日は、公益代表の高木委員、労働者代表の佐藤委員、長谷部委員が御欠席でございます。清水委員、南部委員、森田委員、久保委員、須永委員、原田委員、藤原委員につきましては、オンラインで出席いただいております。
本日は、全委員の3分の2以上の御出席を賜り、労働政策審議会令第9条の規定による開催に必要な定足数を満たしております。
事務局において、本年6月以降に異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 本年7月に着任いたしました勤労者生活課長の大隈でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
引き続きまして、私から御紹介させていただきます。
雇用環境・均等局長に村山が着任しておりますけれども、村山は急遽、国会用務が入りましたので、大変恐縮ではございますけれども、本日、欠席とさせていただいております。
それから、大臣官房審議官(雇用環境・均等担当)に宮本が着任しております。
○宮本大臣官房審議官 このたび大臣官房審議官に着任しました宮本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
第82回「労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会」の開催に当たりまして、一言御挨拶をさせていただきます。本来であれば、村山局長より御挨拶申し上げるべきところ、国会用務のため急遽欠席となりましたので、代わりまして私から御挨拶申し上げます。
本日は、委員の皆様におかれましては、御多用中のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
当部会は、中小企業退職金共済制度について御審議いただいておりまして、この制度は、独力では退職金制度を設けることができない中小企業のための相互扶助の仕組みとして、昭和34年に国が法律で設けた制度でございます。以来、時々の社会経済情勢を踏まえた制度改正を経つつ、中小企業の従業員の福祉の増進、さらにはそれを通じた中小企業の振興に寄与してまいりました。
後ほど御説明申し上げますが、議事次第の議題のとおり、本日は、中小企業退職金共済制度の現況、及び令和3事業年度の決算の御報告とともに、一般の中小企業退職金共済制度の財政検証について御議論いただきたいと思っています。
中小企業で働く方々が安心して働くことができるように、引き続き中小企業退職金共済制度が安定的に運営され、従業員の方の福祉の増進と中小企業の振興にしっかりと寄与していけるよう努めてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○山本(眞)部会長 それでは、本日の部会ですが、対面のほかにオンライン形式でも御出席いただいております。その点も含め、開催に当たりまして、事務局からまず御説明がございますので、よろしくお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 それでは、事務局から御説明させていただきます。
本日は、対面のほか、Zoomによるオンライン参加をいただいておりますが、オンライン参加の方には、事前にお送りしております会議の開催・参加方法についても併せて御参照ください。
部会の進行中は、会場もオンラインも、皆様のマイクをオフにしていただくようにお願いいたします。御発言される場合には、会場内の皆様におかれては挙手を、オンライン参加の方におかれましては「手を挙げる」ボタンを押していただき、部会長から指名があった後にマイクをオンにしていただき、お名前を名乗っていただいた上で御発言いただくようにお願いいたします。また、御発言が終わりましたらオフに戻していただくようにお願いいたします。
なお、本日は、対面参加の方とオンライン参加の方が両方いらっしゃいます関係で、指名させていただく順番については前後することがあるかと思います。なるべく挙手の順番となるように配慮したいと思いますが、その点、御了承いただきますと幸いでございます。
それでは、本日はよろしくお願いいたします。
○山本(眞)部会長 ありがとうございました。
それでは、議事に入らせていただきます。頭撮りはここまでとさせていただきますので、カメラをお持ちの方は撮影を終了してください。
それでは、本日の議題1「中小企業退職金共済制度の現況及び令和3事業年度決算について」に入ります。
まず、事務局から説明をお願いした上で、その後、委員の皆様から御意見等いただければと思います。では、事務局のほうから説明をお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 それでは、資料の説明をさせていただきます。
まず、資料1「中小企業退職金共済制度の現況」、1ページ目を御覧いただければと思います。
まず、上段、新規加入状況についてでございます。一番下の欄に令和3年度の実績がございます。左側に共済契約者数、つまり加入事業主の数でございますが、こちらが3年度は2万835件となっておりまして、前年度、2年度の1万9,845件から増加しております。それから、被共済者数、従業員のほうですが、こちらの新規加入数は合計で48万7,266人ということで、こちらも前年度と比較して増加ということになっております。
それから、一般中退、建設、清酒製造業、林業の内訳がございますが、全体的に一般中退が増加しておりまして、これが全体の数字を引き上げているという状況でございます。こちらにつきましては、2年度から3年度にかけての増加分ですが、2年度はコロナ禍ということで、加入促進の活動にも一定の制約があったというところですが、3年度は個別事業主に対する加入の勧奨なども、感染防止対策に注意した上で実施でき、あるいは、ウェブ会議方式で説明会を行うなどの工夫も行ったということが影響していると考えております。
次に、下の段の在籍状況についてでございますが、こちらも新規加入状況と同じような傾向でございますが、3年度末現在、左側の共済契約者数は55万7,075件ということで、前年度より増加しております。右側の被共済者数につきましても、合計で576万2,772人ということで、こちらも同様に前年度から増加しているところでございます。
続きまして、2ページ目を御覧ください。こちらは退職金等支給状況でございます。一番下に3年度の数字がございまして、左側が合計ですけれども、支給件数につきましては33万914件、支給総額については約4,258億円ということで、こちらも全体としては2年度より増加傾向になります。
続きまして、3ページ目でございます。
左上が一般中退の平均掛金月額の状況でございます。掛金月額の設定は、一般中退の場合は5,000円以上3万円以下の中からの選択でございます。短時間労働者は2,000円、3,000円、4,000円となっておりますが、これは短時間労働者の掛金も含めて3年度の平均掛金月額が9,573円ということで、これは近年、増加傾向にございます。
それから、右側が特定業種の掛金日額の状況ですけれども、こちらはそれぞれ表の金額が定められております。直近では、建設業の掛金日額につきまして、令和3年10月から320円に変更されています。こちらにつきましては、令和2年度に行われた特定業種退職金共済制度の財政検証の結果を踏まえて日額を改定したものでございます。
続きまして、同じページの下の運用資産高状況でございます。3年度の運用資産高は合計で約6兆4,000億円という規模になってございます。内訳としては、一般中退がかなりの部分ですが、約5兆3,120億円を占めております。そのほか、建退共が約1兆688億円、清退共が約39億円、林退共が158億円ということになっております。
これらの資産運用状況につきまして、4ページ以降に資料をつけておりますので、1枚おめくりいただければと思います。
まず、4ページが一般中退における資産運用状況です。
一番右側が令和3年度末の数字でございます。この表の上半分、自家運用というところですが、こちらは国債等の満期保有という形で運用しておりますが、令和3年度の自家運用の利回りがプラス0.39%となっております。国債の低金利傾向を反映して、利回りが低下傾向にございます。
その下に委託運用ということで、信託銀行等に委託して運用している部分ですけれども、令和3年度は1.23%ということで、これを合わせまして、一般中退の運用全体としてはプラスの0.78%ということでございます。これは、昨年度の同じ欄で言うと5.25%であったことからすると、昨年度よりは下がっているという状況でございます。こちらにつきましては、海外金利の上昇や国内株式の下落の影響のほか、令和2年度に大幅に収益が出た海外株式の反動があったことなどの影響があると考えております。
続きまして、5ページ、同様に、建退共における資産運用状況です。こちら、給付経理と特別給付経理とございますが、中小企業に対する事業が給付経理、附帯的に実施している中小企業以外の企業に対する事業が下の特別給付経理でございます。給付経理につきまして、上の表の右側にありますように、3年度の自家運用の利回りがプラス0.50%、委託運用の利回りがプラス1.93%となって、全体の利回りはプラス1.03%となっております。
それから、6ページは清退共でございます。こちらも同様に、給付経理と特別給付経理を区分しているところですが、給付経理のほうを御覧いただきますと、表の右側にある自家運用の利回りはプラス0.21%、委託運用の利回りはプラス1.24%となって、全体の運用利回りではプラス0.44%となっております。
それから、最後に林退共です。7ページでございます。こちらも、令和3年度の自家運用の利回りはプラス0.30%、委託運用部分がプラス1.24%ということで、合計ではプラス0.67%ということでございます。
引き続きまして、決算の御説明をさせていただきます。こちらは、資料2になります。
まず、1ページ目に、勤労者退職金共済機構全体の決算の貸借対照表、損益計算書の要旨をおつけしております。
1ページ目は、損益計算書、下の段の下から3つ目の欄を御覧いただきますと、当期純損失ということで数字が入っておりますが、令和3年度は全体として127億円の当期純損失を計上しているところでございます。
その内訳ですけれども、2ページ以降、個々の事業勘定ごとの数字を載せております。
まず、2ページ目でございますが、一般の中退共制度の勘定でございます。下の段に損益計算書の要旨がございますが、中ほどに経常収益の中に運用収入というのがございまして、ここが令和3年度は414億円となっておりますけれども、前年度と比べると2,100億円ほど減少でございます。そうしたことの結果、当期純損失が37億円発生しております。
その結果、上段の貸借対照表の一番下のところ、利益剰余金合計というところで5,280億円ということで、こちらが前年比37億円減となったところでございます。
それから、同様に、3ページ目は建退共の勘定でございます。こちらにつきましても下の段の損益計算書の中ほどの運用収入が110億円となっておりますけれども、これは前年度と比べると300億円ほど減になっております。ということで、3年度当期純損失として約92億円発生しておりまして、上段の貸借対照表の利益剰余金の合計のところでは874億円ということで、前年比92億円減となったところでございます。
それから、4ページ目、今度は清退共でございます。こちらも下の段の損益計算書、中ほど、運用収入が1,600万円となっておりまして、こちらも前年比7,500万円減でございまして、当期純損失が5,600万円となっております。この結果、上段の貸借対照表の利益剰余金は26億9,400万円、前年比5,600万円減ということでございます。
それから、最後に林退共でございます。林退共も同様に、損益計算書の運用収入が1億500万円ということで、前年比206億円減となっております。当期純損失として1億1,900万円、発生しております。これによって、繰越欠損金が前年度1億9,200万円から3億1,000万円になっております。林退共については累積欠損金が発生しておりましたことから、累積欠損金解消計画をつくっております。これで、想定していた令和3年度末の目安としては7億6,200万円でありましたところ、現時点では3億1000万円ということで、累積欠損金解消計画よりは上回った水準で今のところ推移しているということでございます。
それから、最後、6ページは決算確定までの流れの御説明の資料でございますが、これは独立行政法人たる勤退機構は、事業年度の終了後3か月以内に決算を主務大臣に提出し、その承認を得なければならないとなっておりますけれども、今年6月30日に財務諸表が提出されて、7月29日に厚生労働大臣が承認するという手続を踏んでおります。
簡単ではございますけれども、1つ目の議題の説明は以上でございます。
○山本(眞)部会長 事務局から説明がありましたが、御質問や御意見がありましたら、会場の方は挙手を、オンラインの方は「手を挙げる」ボタンを押してください。指名いたしますので、その場合にはマイクをオンにしていただき、お名前を名乗って御発言をお願いいたします。
清田委員、お願いします。
○清田委員 御説明ありがとうございます。日本商工会議所の清田でございます。1点、意見を申し上げたいと思います。
共済事業を運営する皆様の努力によりまして、令和3年度の新規加入者及び契約者は増加しましたが、残念ながら運用利回りは期待を下回りまして、当期純損失が発生する状況となりました。市場環境によるものなので、単年度ではなくて中長期で評価するべきものというところは理解しておりますけれども、足下ではウクライナをはじめとした国際情勢が極めて不透明で、加えて、エネルギー価格ですとか資源価格も高騰しまして、金融情勢が大きく変動しているかと思います。こうした状況での運用は非常に難しいということは理解しておりますけれども、市場動向をしっかりと注視して、運用に大きな懸念が生じた場合には、この部会などを通じて、ぜひ御報告いただきたいと思います。
以上です。
○山本(眞)部会長 ありがとうございます。
事務局のほうで、コメントがもしあればお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 御意見ありがとうございました。
資産運用につきましては、勤退機構の中で専門家が集まっておられる資産運用委員会がございまして、定期的に運用状況をチェックいただきながらやっております。そちらの状況も厚労省としても踏まえつつ、あと、逆にこちらの中退部会のほうで出た御意見は、資産運用委員会でも共有ということで、橋渡しをしながらやることになっておりますので、そこはこちらとしても十分注視しながらやっていきたいと思っております。
○山本(眞)部会長 そこら辺の情報も上手にこちらに伝えていただくように、よろしくお願いいたします。
清田委員、よろしいでしょうか。
○清田委員 ありがとうございます。
○山本(眞)部会長 ほかに何か御意見ございますでしょうか。
山本委員、お願いいたします。
○山本(陽)委員 御説明ありがとうございました。
資料1の新規の契約者数ですとか在籍状況についてお伺いしたいのですが、これはトータルだと思うのですけれども、地域によってすごく入っているとか、余り普及していないとか、そういうものはあるのでしょうか。途中で都道府県別の在籍状況みたいなものを教えていただいたのですけれども、母数が把握しづらいのです。なので、普及率みたいなものがよく分からなくて、地域差で、この県はすごく普及しているけれども、この県は余り普及していないというものがあるのでしたら、そういったところの手当てとかPRとか、何かされているのか、したほうがいいのかなと思うのですけれどもね。
○大隈勤労者生活課長 ありがとうございます。
都道府県別の加入状況とか脱退状況の数字自体はあるのですけれども、どれくらいの部分をカバーしているかとか、どの地域に力を入れていくべきなのかとか、そこまでは、今、こちらとしては分析したようなデータは手元にはない状況でございます。
○山本(陽)委員 多分、制度を安定的に存続するには、新規の加入とか在籍の数が多いほうがいいと思いますので、そうすると、この辺、ちょっと頑張ってやったほうがいいのかなというのがあると、よりよい制度運営ができるのではないかなと思います。
○大隈勤労者生活課長 実際、加入促進を厚労省と勤退機構で協力しながらやっているところでございますので、当然、どのような分野にターゲットを絞ってやるべきかというのは、考えながらやるわけですけれども、その辺りの地域的なこととか、どこに注目すべきかを常に意識しながらやりたいと思います。
○山本(陽)委員 ありがとうございます。
○山本(眞)部会長 では、そのような体制でよろしくお願いいたします。
次に、藤原委員、お手を挙げられましたか。
○藤原委員 藤原と申します。
先ほどの御意見に通じる部分がございますけれども、中小企業としては、今、コロナ前から非常に慢性的な人手不足の問題を抱えていまして、これから経済改革していく動きもございますが、人材確保の問題というのはこれからますます厳しくなると予想されています。そうした中で、この中退共の制度の加入によって、自社の退職金制度を設けるというのは、雇用環境を整備して人材確保の面でも非常にメリットがあると思いますので、加入状況などを見える化しまして、新規加入時に掛金の助成があるというのは、国が運営する制度ならではのよい点だと思いますので、そういう部分もPRしながら、さらなる契約者数の増加に取り組んでいただけたらと考えております。
以上です。
○山本(眞)部会長 ありがとうございます。
事務局のほうで、今の点についてコメント、お願いします。
○大隈勤労者生活課長 ありがとうございます。
中退共の加入促進は非常に重要な課題だと思っております。このため、パンフレットなどを用意して加入いただくように働きかけておりますけれども、例えば表紙のところにも大きく、人材定着の対策にこの中退共を上手に使ってくださいとか、国が掛金の一部を助成しますとか、掛金は損金算入されて非課税であるとか、その辺のメリットも訴えながらPRしているところでございますが、今後ともそのような形でPRしていきたいと思っております。
○藤原委員 ありがとうございます。
○山本(眞)部会長 ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。よろしいですか。
それでは、続きまして、議題2のほうに進みたいと思います。議題2は「一般の中小企業退職金共済制度の財政検証について」ということでございます。これについても、まず事務局から御説明をお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 それでは、引き続きまして、議題2につきましては資料3を御覧いただければと思います。
まず、表紙をめくっていただきまして、3ページからでございます。3ページは、財政検証についての説明でございます。中退共制度は長期にわたって実施する制度でありますので、安定的な運営を行うために一定期間ごとに将来の財政見通しを推計して検討しているということですが、中退法85条で、少なくとも5年ごとに検討することとされております。前回の財政検証は平成29年度に行いましたので、ちょうど5年目であります令和4年度に財政検証を行う必要があるということでございます。
4ページですけれども、前回の財政検証のときに1つ検討課題とされていたことがございます。それが、4ページに記載のありますとおり、一般中退の安定に資する付加退職金制度の在り方について、次回の財政検証に向けての検討課題とするとされていたところでございます。したがいまして、今回の財政検証におきましては、まず当面の予定運用利回りをどうするかということを決めるとともに、付加退職金の在り方についても検討する必要があるということでございます。
それから、5ページ以降、まず現行の付加退職金制度の概要でございます。
6ページ、付加退職金の概要がありますけれども、中退共の退職金の額は、あらかじめ額が決まっている「基本退職金」部分と、実際の運用収入に応じて支給される「付加退職金」の合計額として算定されます。この付加退職金というのは平成3年度に導入されたものですが、運用収入等の状況において基本退職金に上乗せされるものということでございます。
基本退職金につきましては、掛金月額と掛金納付月数に応じて金額が決まってきますが、予定運用利回りは、現在は年1%として設計されております。付加退職金につきましては、実際の運用収入の状況に応じて計算されますけれども、下に支給率イコールという形で分数がございますが、分子のほうを見ていただくと、基本的には、利益見込額の2分の1を基本として算定するということでございます。
次のページ、7ページでございます。1つ、イメージがわきやすいように計算例をつくっておりますけれども、この場合は平成25年4月に掛金月額1万円で加入された方が、令和5年3月、ちょうど120月で退職された場合の額を計算してみたものでございます。
その下に、25年度から4年度までの欄がありますけれども、付加退職金は利益が出たときに支払うということなので、ゼロという年もありまして、それから、0.0182といった数字が入っていて、このときは付加退職金が支給される年だったということです。
真ん中の辺りにありますとおり、付加退職金の計算式が書いてありますが、このケースで言うと付加退職金額は1万8,297円ということでございます。
退職金がトータルとしてどうなるかというと、基本退職金の部分が126万5,600円ということなので、これを合わせた額が退職金額になるという仕組みになっております。
8ページですけれども、現行の付加退職金支給ルールでございます。これは、5年前にこの中退部会で御議論いただいてまとめた財政検証で決めたものでございますが、まず、累積剰余金の額の4,400億円に対する不足額を2022年度までの残存年数で除した値を、各年度における単年度目標額とするということでございます。
これは、右下に棒グラフと直線のグラフがありますけれども、赤いところを御覧いただきますと、2018年度の単年度目標額が587億円÷5と書いてあります。2018年度時点では、分かっている決算は3,813億円という2016年度末の値ですけれども、4,400億円から3,813億円を引いた587億円を5年間かけて4,400億円に近づけていくという考え方の計算で、単年度目標額が出てきます。
この単年度目標額が定まると、左側に長方形の箱のような絵があって、濃いグレーと薄いグレーの図がありますけれども、前年度の利益見込額が出たとき、単年度目標額に達するまでは先に剰余の積立てに充て、単年度目標額を超えて、まだ利益がある場合は、次は付加退職金に充て、さらに2倍を超えたら両方に半分ずつ充てるということでございます。したがいまして、基本的に利益が出たら、2分の1ずつ付加退職金と剰余に充てるのですけれども、剰余のほうに優先的に充てていくという考え方になっております。
それから、10ページからは、今回、財政検証を行うに当たって考慮すべき事項の関係資料でございます。
まず、10ページは、これまでの経緯ですけれども、上の説明のところにありますとおり、平成に入ってからの予定運用利回りは、金利が低下してきたことに伴い、最初、6.6%だったところが、5.5、4.5、3.5、1.0と逐次引下げを実施して、今は1.0%ということでございます。
付加退職金につきましても、6.6%を5.5%に引き下げた際に導入されたものでございますが、その後、付加退職金にどれだけ回すかというルールを、例えば、平成14年改正のときは2分の1ルールというものがありましたし、平成17年度は180億円を先に積立てに充てるといったような、そのときの財政状況に応じてルールが変遷してきております。現在は平成29年度の財政検証のときの試算により、先ほど御説明した4,400億円を目指して積み立てていくというルールで現在に至っております。
11ページですけれども、予定運用利回りと実績運用利回りの推移を長期的に見たものでございます。
赤い線が予定運用利回りで、これが先ほど御説明した6.6%から始まって、現在1.0%ということですが、青いほうの折れ線グラフが実績の運用利回りでございます。平成3年、付加退職金ができた当時は、青い実績運用のほうが上回ってスタートしたわけですけれども、それからほどなく青い実績のほうが予定運用利回りを下回るということになり、その後、平成15年から時価会計が導入された後は、毎年、実績運用利回りが大きく変動し、運用の実績がいい年は予定運用利回りを大きく上回りますけれども、大きく下回っている年も出る状況でございます。
それから、同じページの下ですけれども、こちらは当期損益金と累積剰余金・欠損金の推移でございます。これも平成4年から長い間、毎年度、当期損失が出てきまして、これが累積して累積欠損金がどんどん増えていく、青い折れ線がどんどん下に下がっていく状況でございました。その後、平成17年前後で少し持ち直したのですけれども、リーマンショックでまた累積欠損金が大きく拡大していきました。その後、平成24年以降、株価の好調な部分がありましたので、累積剰余金ということで、令和2年度、3年度は5,000億円を少し超えるぐらいの水準で、足下(令和3年度)では5,272億円という累積剰余金になっております。
12ページですけれども、こちらが付加退職金制度導入時の考え方ということでございます。
ここは下のグラフのところを御覧いただくと分かりやすいかと思いますが、左側に導入時(平成3年度)とございます。当時、予定運用利回りは5.5%、自家運用利回りは約6%ということで、ここは予定運用利回りより自家運用利回りが高かった時代で差分が出てくるということで、そこを付加退職金として支給しようという形で制度が導入されたということでございます。
ただ、現在を見ますと、予定運用利回りよりも自家運用利回りがかなり下回っている状況でございますので、足りない分はリスク性資産(株式等)で補っているということです。その結果、緑の線のように、運用結果が良いときもあれば悪いときもあるということですが、運用結果がよかったときに付加退職金を支給するということになります。
こういう形でございますので、リスク性資産も一定割合入っており、もともとの平成3年度の導入時とは、大きく前提が異なった中での付加退職金制度になっているということでございます。
それから、13ページでございますけれども、こちらが右下に出典が書いてありますけれども、勤退機構の資産運用委員会の資料から抜粋させていただいたもので、資産運用委員会から指摘を受けている内容でございます。これは、財務の安定性への影響ということですが、平均的に予定運用利回り程度の運用を行ったとしても、現在の付加退職金制度というのは、利益が出たときに付加退職金が支給される、損失が出たときには基本退職金を削るわけではないという非対称的な仕組みになっており、この制度の下では、長期的には資産が減っていくことが避けられない。
なおかつ、各年の損益の変動幅が大きいほど、この影響が大きくなって、財務基盤の弱体化や、場合によっては予定運用利回りの引下げを余儀なくされるということも考えられ、制度の安定性が阻害されるということでございます。
下の図はパターンが3つありますけれども、橙色のところが毎年プラスマイナス5%というでこぼこを繰り返した場合ですが、これは利益が出たときに付加退職金として支給することの影響が大きくなってきて、利益剰余金がどんどん減っていくというようなシミュレーションでございます。
それから、14ページですけれども、こちらも同様に資産運用委員会からの御指摘で、令和3年度でございます。追加的リスクの存在ということですが、現在の基本ポートフォリオは予定運用利回りの水準を目標としていますが、付加退職金という制度が内在していますので、その非対称性を考慮すると、実際に必要な利回りはそれより高く設定しなければいけないのではないかということです。
下のイメージ図にありますが、もともと予定利回りの水準というのが定められておりますが、実際には付加退職金という制度があって、利回りがいいときには付加退職金として支給するということになっていると、実際に収支をバランスさせるために、この緑の予定利率に付加退職金平均利回りの水準を足したところで設定しないといけないのではないかということですが、そうすると更にリスクを取るということになって、制度の安定性からどうかという課題が出てくるということでございます。
以上が検討に当たって必要な留意点ですけれども、16ページからは、どのような対応を取るべきなのかという事務局の案でございます。
まず、16ページですけれども、剰余金の積立額の目標水準をどう考えたらいいのかということでございます。
最初のところに書いてあるのは、現在の剰余金の積立額の目標水準は、モンテカルロ・シミュレーションで1%の確率で起こる悪い場合に相当する額として、4,400億円として設定されているということでございます。
これが、このページの左下のところに4,400億円の根拠と書いてありますけれども、2016年のところに3,813億円でスタートして、ここでシミュレーションして、1%タイル、橙色の点線で5年たったところで4,400億円損失が出るというシミュレーションになっております。これによって、現在は4,400億円の剰余金を持つことを目指すということにしております。ただ、これは平成29年2月のポートフォリオを前提として出したものですので、現在の状況では再度計算し直す必要があるのではないかということでございます。
それは、16ページの下の右側でございますが、見直し前の基本ポートフォリオ、平成29年2月のものですが、期待収益率1.1%、リスク1.88%という形でシミュレーションを行って4,400億円ということですが、その後5年経過して環境が変化したことにより、見直し前の基本ポートフォリオ(令和3年時点)というので、予想リターンが0.93%に下がっています。ここで期待収益率を1.1%にするような見直しをかけたということで、令和3年10月に現在の見直し後の基本ポートフォリオにしております。その結果、1.1%を達成するためにはリスクは1.92%になったということでございます。
次のページ、参考までに中退共の基本ポートフォリオ見直しという資料がございますが、見直し前と見直し後で、例えば国内株式の比率が下がって外国株式の比率が上がるといったような見直しが行われております。
それで、18ページでございますが、もう一度、現在の環境に照らしてモンテカルロ・シミュレーションを行ったところ、1%タイルで想定される損失額は5,350億円という結果となっております。これを踏まえると、剰余金の積立額の目標水準は現在の4,400億円では足りないということで、5,400億円が妥当と考えられるということでございます。
次のページ、19ページでございますが、そういたしますと予定運用利回りをどうするかということでございます。足下の令和3年度末の剰余金5,272億円ということですけれども、今、計算した剰余金の積立額の目標水準は5,400億円となると、おおむね達しているということで、併せて加入者にとっての魅力も考慮すると、予定運用利回りは現行の1%で維持することが適当ではないかというのが事務局の案でございます。
ただ、5,400億円には少し達していない状況ということで、ただし書きのところ、累積剰余金積立額の目標水準を若干下回っているということと、現状も低金利が続いていて、足りない分はリスク性資産で補っていることには留意が必要であるということでございます。
それから、20ページ、そこで付加退職金をどう考えていくかということでございます。
付加退職金制度の在り方の考え方の整理でございますが、最初のところ、1つ目の四角で書いてあるのは、先ほど出てきました非対称性の説明です。利益が出たときは、付加退職金として充て、利益が出なかったときは、基本退職金は減らすわけではなく、そのままということが長期的には剰余金の減少につながりまして、その結果、財務基盤の脆弱化という仕組みになっていきます。そうすると、現行ルールというのは、将来の予定運用利回りの引下げを招き得るものであるということを念頭に、今後の支給ルールを検討する必要があるのではないかということでございます。
それから、そういう形で財務基盤が脆弱化した場合は、加入者にとっての魅力にも影響して、それは中退共制度の持続可能性の低下につながるリスクがあるということにも留意する必要があるのではないかということです。そういたしますと、中退共制度の財政の安定性を損なわないような付加退職金支給ルールとする方向で検討することが適当ではないかということでございます。
さらにつけ加えますと、中退共制度の財政の安定性を損なわないようなルールを定めることができれば、基本退職金部分の安定化が図られるということで、将来の予定運用利回り引上げの可能性を相対的に高め得るのではないかということでございます。
21ページですが、ここはいろいろな案を考えてみるということで、仮定の話なのですけれども、仮に現行ルールの考え方で5年延長したらどうなるかということでございます。この場合も同様にモンテカルロ・シミュレーションを行ってみると、2026年度末の中位点(50%タイル)の剰余金は4,743億円となるということでございまして、足下の水準よりも約500億円減少するという結果となっております。この中位点で剰余金が減少するということは、実質的に逆ざや状態で、将来の財務基盤の脆弱化とか、その結果として、例えば5年後の予定運用利回りがどうなるかということも考えると、将来的に予定運用利回りの引下げの可能性も示唆するものではないかと考えております。
これを回避しようとすると、その下に書いた2つが考えられるということですが、1つ目が、先ほど14ページにありましたように、期待収益率に付加退職金相当分を上乗せして設定するということですが、これはリスクが高まって安定性が低下するという問題があります。
それから、2つ目ですけれども、非対称性を解消しようとして、損失が出た場合は基本退職金を削減するという仕組みですが、こちらは実質的に予定運用利回りを引き下げるようなことを許容することになるということで、安定性の面からもなかなか難しいのではないかと考えております。
それから、22、23ページは、現行の5年のままで延長したときのデータの資料でございますので、割愛させていただきます。
そうすると、中退共制度の財政の安定性を損なわない方法として、どういうものがあり得るかということですけれども、まず、24ページを御覧いただければと思います。
ここの下の図に資産運用額の収益構造とございます。横軸のほうに運用資産額とございますけれども、これは責任準備金に当たる部分と剰余金に当たる部分があって、これを1年かけて期待収益率1.1%で運用するということですけれども、毎年度、責任準備金を増やしていく必要がございますので、どれだけ必ず確保していかなければいけないかということでございます。
この1.1%を達成するということになると、予定運用利回りに従って責任準備金が運用によって増えるAの部分と、あと、業務経費率ということで0.1%を計上しております。このAとBという部分は毎年度確保していかないと、今までの剰余金を減らしていくことになりかねない部分ですが、下の図にCという部分がございまして、ここは剰余金を運用で増やした部分ということになるので、Cが発生したときは剰余金の積み増しに充てられる部分と考えられます。
次のページ、25ページでございます。今の話の続きですけれども、実際に毎年度の実績利回りは丁度1.1%ということにはならずに、期待収益率を上回る場合も下回る場合も両方あるということですが、中期的に平均的には期待収益率で運用されることを前提と考えられます。そうすると、この図の左側、期待収益率の赤いラインより実績が上回ったときの図でして、右側が逆に実績が下回ったときの図になります。この①と③というのは、少し長い目で見るとお互いに相殺してゼロになり、それから、剰余金を運用した部分、②と④も何年かたって中期的に見ていけば相殺してゼロになるということですが、Cの部分、剰余金の運用益のうち業務経費率以上期待収益率1.1%以下の部分というのは、剰余金を減少させることなく付加退職金の財源として活用することができると考えられます。
なお、現行ルールで先ほどから出てきている非対称性が出てくるというのは、実績利回りがよかったときに主に①の部分を付加退職金に充ててしまうことにより、実績利回りが悪かったときの③をカバーできないということが一因になっているといった問題があります。
その結果、26ページが見直し案でございます。付加退職金支給ルールを次のように見直すこととしてはどうかということです。
基本的には、現行ルールを基本としつつ、中退共制度の財政の安定性を損なわないよう、付加退職金に充てる額の上限を設定することとしてはどうかということです。現行ルールと異なる部分だけ下線を引いております。
1つ目のポツのところは、基本的に現行ルールのままなのですけれども、今、4,400億円となっている部分を、先ほどの新しい算定の下での金額5,400億円に置き換えるものです。それから、5年時点が修正されますので、今まで2022としていたところを2027という形で時点修正するというのが1つ目のルールです。
2つ目につきましても、利益金の半分を付加退職金に充てるけれども、一定額までは積立てを優先するという、そこも現在のルールと同じなのですけれども、「また」以下をつけ加えたものになります。また、付加退職金に充てる額の上限を「前々年度の決算における累積剰余金の額×0.01」としまして、この0.01というのは、予定運用利回りに当たる数字でございます。ここは、結局、先ほどの図で言うところのCに当たる剰余金の運用の期待収益率を下回るところを上限に、これ以上の額は付加退職金に充てないというルールでございます。これであれば、中退共制度の財政の安定性を損なわない、なおかつ実績利回りが毎年変動しても、剰余金を減少させることなく運営できるのではないかと思っております。
それから、27ページは、実際、この案でもう一回モンテカルロ・シミュレーションをやってみるとどうなるかということで、中位点、50%タイルは、2026年度末で5,351億円ということで、足下より79億円増えることになっております。
それから、28ページは、実行しようとする案ではありませんが、比較のために付加退職金不支給の場合の推計結果を挙げたもので、次のページは、現行ルールのままで5年延長した場合。これは先ほども出てきましたが、500億円ほど減少してしまうというものです。
30ページで、その3つの案を比較しておりますけれども、現行の案が付加退職金を全く支給しない場合と、今のままで5年延長した場合の間ぐらいの水準ですけれども、どちらかといえば付加退職金を支給しないほうのルールに近い、財政的に安定した状態がつくれる仕組みではないかと思っております。
資料の説明は以上でございます。
1つ、机上配布資料としてお配りしているものがございまして、本日、長谷部委員が御欠席なのですけれども、御意見をいただいております。御紹介させていただきます。長谷部委員の意見です。
資料3「一般の中小企業退職金共済制度の財政検証」で示された付加退職金支給ルールの見直し案について、中退共制度の財政の安定性を損なわないためにはやむを得ないと考えるが、中小企業退職金共済法の目的にのっとり、一般中退制度の魅力が損なわれないように、財政の安定運用、基本退職金部分の維持、予定運用利回りの引上げを強く要望させていただきます。
事務局からは以上でございます。
○山本(眞)部会長 今の事務局からの説明につきまして、御質問、御意見がありましたら、また挙手をお願いいたします。お名前を名乗って御発言をお願いいたします。
川野委員、お願いいたします。
○川野委員 ありがとうございます。
中小企業退職金共済制度は、中小企業で働く従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与する目的という、先ほど、説明いただいたとおりだろうと認識しております。そうした制度で、単独では退職金制度を設けることが困難な中小企業における退職金制度の確立、さらには、安全で安定的な外部保全先という認識を我々、持っていまして、負債を抱えて倒産した場合であっても、従業員に確実に退職金が支給される制度であると理解しています。そのため、制度の安定性と安全性はもちろんのこと、資産運用いかんによって制度の持続可能性を損なうことがあってはならないと考えているところでございます。
前回の財政検証の際にも、低金利政策が続く中で、自家運用の収益低下によってリスク性資産での運用が高まることに懸念を示してきたところでございます。その上で、付加退職金の支給方法、支給ルールの見直しの必要性にも言及してきた経緯がございます。資産運用委員会からも、令和3年の基本ポートフォリオ見直しの際に御指摘がありました付加退職金制度の非対称性の問題で、安定的な制度運営が損なわれるようなリスクが高まるのであれば、解消もしくはリスクを低下させることが大変重要と認識しています。
大前提として、基本退職金の予定運用利回り、既に1%まで落としているわけでございまして、その1%を維持しながら財政の安定性を確保した上で、付加退職金の支給について現行ルールを基本に提供がなされるべきと考えておりますので、事務局に提案いただきました付加退職金に充てる上限額の設定と、予定運用利回り1%引下げを招くことなく、むしろ将来の予定運用利回りの引上げも可能にする改善策と理解しています。
また、次回の財政検証時になるのか、必要に応じて、必要なタイミングで、今回の付加退職金制度の見直しによる効果も見極めながら、よりよい制度の運用と、より魅力ある中小企業退職金共済に向けて努めていくべきだと考えています。
以上です。
○山本(眞)部会長 ありがとうございます。
事務局のほうから何かコメントございますでしょうか。何人かお手を挙げていただいているので、御意見を伺ってから事務局でまとめてもらおうと思います。
では、森田委員、お願いいたします。
○森田委員 すみません、連合の森田でございます。
先ほど、欠席者の長谷部委員のほうのコメントをいただいておりますが、実は私ども、本日、佐藤委員も欠席しておりまして、私に意見を携えていただいておりますので、そちらのほうもちょっと御紹介させていただきながら、私の意見も発言させていただきたいと思います。
まず、佐藤委員ですが、今回、提案されました付加退職金制度については、昨今の状況を踏まえれば、致し方ないのかなと考えています。しかしながら、政労使ともに困難な状況において、傷ついた経済を立て直すという努力をしている中で、経済が回復していくことは願っています。しかしながら、これから先、世界経済が不況に向かうといった見方も出ていると認識しています。したがいまして、財政検証については、5年に一度ということに限らず、情勢を見ながら柔軟に対応していくといった議論の場も必要なのではないかということを申しておりましたので、そちらにつきましてはつけ加えさせていただきます。
続きまして、私のほうの意見ですが、今回、提案されました付加退職金制度の変更ルールにつきましては、付加退職金を廃止することなく、基本退職金の部分の安心・安全を確保するぎりぎりの内容ではないかなと判断しています。今後も引き続き、5年に一度の財政検証をしっかり実施した上で議論を進めていければと思いますけれども、先ほど佐藤委員からもあったように、原則5年というものは残しつつ、急激な情勢変化とか有事の際については、柔軟に対応すべきではないかなと私も思います。
以上です。
○山本(眞)部会長 ありがとうございました。
続いて、南部委員、お願いいたします。
○南部委員 ありがとうございます。
中小企業退職金共済制度の安定を確保するという観点で、今回は理解しますが、今回提案されました付加退職金制度については、上限を設けるということで、もしかすると目減りすることも考えられます。退職金を受ける側からすれば、制度の魅力ということをおっしゃっておりましたが、大きく目減りすることになりますと、大きく低下するということも考えられますので、この点について、そうならないように努力をお願いしたいと思います。
また、最近は中小企業の倒産が多く、今回のような付加退職金ルールを変更することにより財政のやり繰りをしているというだけではなく、そもそも中退共制度の安定を維持するために、加入者の促進などに力を入れるべきだと考えております。併せまして、付加退職金部分だけではなく、そもそもの大局的な議論も今後、必要になってくるのではないかと考えておりますので、その点につきましても御検討をお願いしたいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。
○山本(眞)部会長 ありがとうございました。
続いて、原田委員、お願いいたします。
○原田委員 経団連の原田です。ありがとうございます。
それでは、事務局から御説明のあった対応案について御意見申し上げたいと思います。
まず、資料3の12ページにありますとおり、この付加退職金が導入された平成3年の当時と、金融市場における資産の運用状況等が大きく異なっております。運用されているのは、事業主が大切な社員のために納付した掛金ですので、こうした困難な状況にあっては、あくまで制度の安定性とか財政基盤の強化を最優先に考える必要があると思います。
こうした観点から、26ページにありますように、今後5年間の累積剰余金の目標額を5,400億円、それから利回りを1%維持すること、加えて、付加退職金の支給については、上限額を設ける案、この見直し案に賛成したいと思います。
その上で、資料20ページの一番下の四角ですけれども、こちらに、適切なルールを定めることができれば、将来の予定運用利回りの引上げの可能性を相対的に高め得るとあります。次の財政再検証の折には、今後の5年間における運用実績とか付加退職金の支給実績を見ながら、付加退職金の効果について検証した上で、予定運用利回りを引き上げて基本退職金を厚くしていく観点から、その後の付加退職金制度の取扱いについて、さらに検討する必要があるのではないかと思います。
私からの意見は以上です。
○山本(眞)部会長 ありがとうございました。
続いて、清水委員、お願いいたします。
○清水委員 学習院大学の清水です。御説明ありがとうございます。
この間、事前に御説明いただいたときもいろいろ御質問させていただき、本当にいろいろ考えた上での今回の付加退職金制度を含めた変更ということで、致し方ないことであると考えております。そういう意味では、この案に賛成でございます。
ただし、皆様おっしゃっていらっしゃったとおり、付加退職金に関してですけれども、これだけ複雑かついろいろな計算をしても、実際問題として、頂くときの金額がさほどプラスにはなっていないという現状を踏まえたときに、制度の魅力と制度の安定性の駆け引きではあるかと思いますが、個人的な意見となりますけれども、まずは制度の安定性を目指すために、参考例にもありましたとおり、付加退職金を残念ながら一旦停止するといった形で制度の安定性を高めるといったことを考える案というのも、もし今後、厳しい場合には、検討する余地があるのではないかと考えております。
その点につきましては、皆様おっしゃっているとおり、5年待っての見直しではなく、もう少し状況を見極めた上で、安定性重視の上で付加退職金の制度を一旦休止するといった案も、今後考えていく必要があるのではないかと感じております。
私からは以上です。
○山本(眞)部会長 ありがとうございました。
小野委員、お願いいたします。
○小野委員 ありがとうございます。
皆さんがおっしゃっていることと同じなのですけれども、基本的に現状認識として、12ページにございましたとおりで、従来は自家運用と書いてありますけれども、ファイナンスの用語でいくと、リスクフリーです。これが予定利率よりも大きかった時代から、それが逆転してしまっている時代に変わってきているということだろうと思います。そのことは、結局、資産運用の側として、ある程度のリスクを取らないといけないのだという結論になってくるということがありますけれどもね。
一方では、13ページとか14ページでお示しいただいている中で非対称性の話が出てきましたけれども、リスクを取るということで付加退職金を今までどおりのルールで提供するということになると、それは必ずしもよい結果にはならないのだということを、資産運用委員会としては御指摘になっているのだろうと思います。
そういう意味で、従来から、私も何回か過去に携わらせていただきましたけれども、付加退職金の支給ルールをいろいろ改善したわけですけれども、そこでの議論、提起されている問題は、シミュレーションの結果を前提として、その結果の50%タイル値を見てあげると年々下がっていくということを、運営を預かるこの部会としてどう考えるかということが問題なのだろうと思って伺っておりました。そういう意味で、このモデルを前提として合理的な判断を出すということであれば、事務局側の御提案というのは、理にかなったものかなと思っております。
以上です。
○山本(眞)部会長 どうもありがとうございました。
その他、御意見、今の段階では。では、一旦、事務局から、今いただいたいろいろな御意見についてコメントなり回答をお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 ありがとうございます。
見直しのタイミングの関係で何人かの委員から御意見をいただきました。先ほどの資料にもありましたとおり、財政検証は、法律で少なくとも5年ごとにということになっておりまして、これまでも基本的に5年ごとということでやっておりましたけれども、これはもちろん今後、状況が大きく変わるようなことがあれば、前倒しで検討することは可能な仕組みになっております。今後の金融状況、経済状況など、どうなるか分かりませんけれども、今後の状況に応じて必要があれば、そういうことが必要になってくるかと思っております。
あと、加入促進との関係の御意見もいただきました。もちろん、この付加退職金の支給ルールもそうですし、資産運用のやり方もそうなのですけれども、加入者数が増えるということも、この制度の安定性に寄与するものだということで、重要なものだと考えております。加入者数が増えると運用資産が増えるということで、収益力が上がっていき、財務基盤の強化につながっていくものだということで、加入促進の取組も重要だと思っております。
先ほど1つ目の議題のほうで御説明いたしましたけれども、3年度は、2年度と比べれば様々な加入促進の取組も行われるようになって、共済契約者数でいえば11%ほど増えていますし、被共済者数のほうの新規加入も、前年度からいえば3%ほど増えているということで、あと、在籍者数で見ても1%ぐらいは増えているということです。これもいろいろな取組を行った結果ですけれども、また4年度、5年度、これからの加入促進の取組はしっかりやっていきたいです。
加入促進の点が1つと、それから、安定的な資産運用を可能にするような、今回の付加退職金の見直しを両輪のような形で進めていくことで、中退共制度の安定性を確保していきたいと考えております。
以上でございます。
○山本(眞)部会長 それでは、さらに何か御意見や御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、今までに委員の皆様からいただいた御意見も踏まえていただいて、事務局のほうで取りまとめという形で対応案を作成いただくということになるそうでございます。対応案をつくっていただいた段階で、次回の部会でそれに基づいて、また議論していただくということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
ありがとうございます。それでは、事務局は次回に向けての準備をお願いいたします。
本日の議題はこれで以上になりますが、その他、全体を通して何か御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。 それでは、次回以降について事務局のほうから簡単に説明をお願いいたします。
○大隈勤労者生活課長 本日は、議題について御審議いただきまして誠にありがとうございました。
次回の部会につきましては、また日程を改めて調整させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○山本(眞)部会長 それでは、本日の部会はこれで終了とさせていただきます。本日はありがとうございました。