薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和4年度第1回運営委員会議事録

日時

令和4年6月8日(水)16:00~18:00

開催形式

Web会議

出席者

出席委員(5名):五十音順、敬称略 ◎委員長



欠席委員:敬称略
  • 松本 剛史



国立感染症研究所:敬称略
 
  • 水上 拓郎



日本血液製剤機構:敬称略
     
  • 柚木 幹弘



KMバイオロジクス株式会社:敬称略
     
  • 佐藤 英徳



日本製薬株式会社:敬称略
     
  • 太田 守



日本赤十字社:敬称略
     
  • 佐竹 正博
  • 後藤 直子
  • 川島 航



事務局:
 
  • 渡辺 顕一郎  (血液対策課長)
  • 仲島 昌司   (血液対策課長補佐)
  • 佐野 圭吾   (血液対策課長補佐)
  • 若林 雅之   (需給専門官)

議題

  1. 1.感染症定期報告について
  2. 2.血液製剤に関する感染症報告事例等について
  3. 3.献血血液等の研究開発等への使用に関する報告について
  4. 4.各調査会の審議結果について
  5. 5.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 


○佐野血液対策課長補佐 それでは、「血液事業部会令和4年度第1回運営委員会」のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からWebでの審議とさせていただきます。
本日のWeb会議における委員の出席についてですが、松本委員におかれましては遅れて参加する旨、御連絡いただいていますので、現段階において6名中5名の先生方に御出席いただいていることを御報告します。
本日は参考人として、国立感染症研究所より水上拓郎次世代生物学的製剤研究センター 第一室室長、一般社団法人日本血液製剤機構より柚木幹弘研究開発本部研究開発推進部主席、KMバイオロジクス株式会社より佐藤英徳生産本部生産統括部部長、日本製薬株式会社より太田守研究開発本部長に御出席いただいています。
また、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博中央血液研究所所長、後藤直子技術部次長、川島航技術部製造管理課長に御出席いただいています。
また、事務局に人事異動がありましたので御報告します。血液対策課課長補佐の仲島昌司です。よろしくお願いいたします。
続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御報告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしていますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上にマル1議事次第からマル13資料5までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や、不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に、御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と、発言したい旨を御発言いただくようお願いいたします。その後、委員長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。またノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようよろしくお願いいたします。なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう事務局又は委員長からお願いする場合があります。その場合には、記入されたメッセージに応じて委員長より発言者を御指名いただきます。
また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がありますので、御了承いただければと思います。間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。
それでは、以降の進行を田野﨑委員長にお願いいたします。
○田野﨑委員長 皆さん、こんにちは。これまでの説明で何か御質問はありませんか。よろしければ、議事に入りたいと思います。まず最初は議題1「感染症定期報告について」、事務局より資料の御説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。よろしくお願いいたします。資料1-1及び1-2をお手元に御用意ください。
まず資料1-1ですが、感染症定期報告となっています。1ページから3ページ目までに、今回の感染症報告がまとまっていますが、こちらは令和3年11月から令和4年2月までにPMDAに報告された研究報告一覧となっています。今回は9報の報告がなされています。それぞれ順に私から御説明させていただきます。
まず1報目ですが、こちらは南アフリカで、新型コロナウイルスについて、オミクロン株はデルタ株よりも急拡大していることが示唆されたという疫学的な調査についてまとめられた報告となっています。こちらは皆様、十分御存じのことかと思いますので、私からの説明は割愛させていただきます。
続きまして、2報目です。こちらもコロナウイルスの報告となっています。こちらはマレーシアとハイチという別々の場所で複数の方が新たなコロナウイルス、こちらはイヌ由来の可能性が高いものということなのですが、こちらに感染していたということが報告された事例となっています。軽く経緯を説明させていただきますと、2017年の初頭にハイチでボランティア活動を行っていた医療従事者の一団が、フロリダに帰国して間もなく、20人ほどが体調不良を感じ始めました。その後、フロリダ大学でいろいろ検査をされた結果、コロナウイルスがヒトの新たな病原体の可能性であることが判明したということが記載されています。
その後なのですが、2021年の5月にデューク大学で、マレーシアの病院の小児において報告されたものとほぼ同一の新たなコロナウイルスが検出されたと報告されています。さらにその方々は、追加で、2017年と2018年に検査を行った患者301例のうち3%の上気道に同じウイルスを発見したと報告しています。当該ウイルスなのですが、解析の結果、イヌに由来する可能性が高く、その後、ヒトにジャンプして感染したことが示唆されるということが報告されています。
結論としては、イヌコロナウイルスによるこれらのヒト感染というものは、単独のインシデントで、大規模なヒトの感染につながらなかったと考えられるものの、非常によく似たウイルスがハイチとマレーシアそれぞれで発見されているということを考えますと、今後、進化してより大きな問題になるリスクがあるのではないかと結論付けられています。
続きまして、3報目です。こちらは北海道においてダニ媒介性急性熱性疾患と関連する新たなナイロウイルスであるエゾウイルスを発見したという報告となっています。当該 報告ですが、患者2名の検体から当該ウイルスを分離培養し、さらに、これまでにダニ媒介感染症と疑われていた248検体を後方視的に調査した結果、既に7名の感染者が北海道内で発生していたと報告されています。結論としては、このウイルスがマダニや野生動物にも既に感染しており、北海道内に定着しているとの報告となっています。
続きまして、4報目です。こちらは中国内モンゴル自治区において、ダニ咬傷7日目に熱性疾患を発現した男性から、黒竜江省のダニ類から検出されたベイジナイロウイルスと約97%~99%の同一性を有する断片が認められたという報告となっています。さらに追加で、同じ病院でダニ咬傷のために入院した患者658人のうち、129人が同じウイルスの感染を認めているという報告となっています。当該報告からは、このウイルス自体が複数のダニから検出されていまして、さらに内モンゴルのウシとヒツジはこのウイルス陽性率が高かったということが同時に報告されていますので、このウイルスが中国北東部の熱性疾患と関連する可能性が示唆されていまして、さらに、ダニが潜在的ベクターである可能性やヒツジとウシが保有宿主になる可能性が示されたという報告となっています。
続きまして、5報目です。こちらは2014年にフラビウイルス流行に起因する急性熱性疾患を発症したハイチの小児の検体から、2つのオルソブニヤウイルスが検出されたという報告となっています。そのうち一方のMELVについては、これまでヒトの病原体としては記載されていなかったという形が報告されています。さらにもう1つのOROVというウイルスについては、遺伝子配列の検索を行ったところ、系統発生学的推論からはブラジル由来ではないかということが推定されているという状況となっています。この報告からは、これらのウイルスやほかの新興感染症によって引き起こされるアウトブレイクを同定するためのサーベイランスの重要性を強調しているということを、彼らは主張しているという状況となっています。
続きまして、6報目です。こちらは新たなハンタウイルス性肺炎を起こすようなオルソハンタウイルスが、新たな齧歯類から見付かったという報告となっています。この研究結果は、アルゼンチン中央部でこういったウイルスが循環しているということの疫学的な警告ではないかということを示唆しています。また、今後、当該新しい齧歯類が宿主として考慮しなければならないのではないかということが記載されている状況となっています。
7報目は、日本人の3人の入院患者の血液サンプルより分離されましたグラム陽性菌の3株についての研究報告となっています。これらはBacillus cereus groupに属する新たな細菌と同定されたという報告となっています。
8報目と9報目は、それぞれ1症例ずつの症例報告となっています。まず8報目が、循環器疾患がある酪農家の70歳の男性が、ウシの呼吸器感染を引き起こすような細菌に感染したという報告となっています。当該菌種なのですが、仔牛の肺炎、流産、髄膜炎、敗血症などが報告されているということで、ヒトへの病原性は今まで報告されていなかったという報告となっています。この患者さんなのですが、仔牛業に従事する酪農家であったということが同時に報告されている状況です。
続きまして、9報目です。こちらもTsukamurella属というような偏性好気性弱抗酸性放線菌が、末期がんの患者さんで血流感染を起こしたという報告となっています。当該属菌なのですが、免疫不全者において血流感染を引き起こすということは知っているのですが、今回検出されました菌種については、結膜炎の患者の結膜スワブより2018年に検出された新菌種で、本菌種による菌血症は過去に報告されていないということが報告されている状況です。
続きまして、感染症定期報告に移らせていただきます。こちらは感染症定期報告の外国症例報告一覧となっています。令和3年11月から令和4年2月までの受理分となっています。今回の感染症定期報告の外国症例については、武田薬品工業株式会社より2件、そしてCSLベーリング株式会社より2件、報告を受けています。海外からの報告ということで、十分な臨床経過は記載されておらず、全て明確に因果関係があると判断された症例はなかったという状況となっています。資料1-1及び1-2についての説明は以上です。田野﨑先生、よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。そうしましたら、水上参考人から何か追加発言などがありましたら、お願いいたします。
○水上拓郎国立感染症研究所次世代生物学的製剤研究センター第一室室長 よろしくお願いします。国立感染症研究所次世代生物学的製剤研究センターの水上です。今回は文献1と2のコロナウイルス関連、それから文献3、4のダニ媒介性の感染症についてコメントしたいと思います。
文献1から2の新型コロナウイルス関連ですが、御存じのとおり新型コロナウイルスはコロナウイルス科コロナウイルス亜科ベータコロナウイルスに属するエンベロープを有する一本鎖RNAウイルスで、2019年に中国で発見され、全世界に感染拡大し、現在も2021年11月に出現したオミクロン株がデルタ株に置き換わり、感染の中心となっている状況です。
文献1は、先ほど佐野先生から御報告があったとおり、2021年11月26日にWHOがオミクロン株を、懸念される変異株、variant of concern、VOCに認定した当時の状況を報告したもので、スパイク状に30種類以上の変異が存在し、免疫回避、そして感染性、増殖性、病原性変化の可能性を示唆し、対策としてはサーベイランスの強化、シークエンス解析、JISAIDなどでの情報共有、感染例のWHOの報告、ラボワークの充実、感染防止規制の維持、そしてワクチン接種の推進が示されています。
オミクロン株が収束しつつある現状では、2021年11月26日時点でのWHOの予測はおおむね妥当であり、日本においても3回目接種が推進され収束に向かいつつあると考えられます。その一方で、BA.1やBA.2などのsubspeciesも出現し、オミクロン株内での置き換わりも発生しています。また組換え体も多数発生し、BA.1とBA.2の組換え体であるXE株に関しては、BA.2より10~20%感染速度が速いということが明らかとなっており、英国では総数と比較すると0.7%と少ないですが、1,569例の小さな流行が報告されています。
またBA.1系統、BA.2系統、BA.3系統に加え、2022年1月にBA.4系統が、そして2月にBA.5系統がいずれも南アフリカから検出され、WHOはVOCに追加、南アフリカでは5月26日時点でBA.4とBA.5を合わせて82%と置き換わりが進んでいることを報告しており、またポルトガルでもBA.5の検出例が増加しており、引き続き注意が必要だと報告されています。
BA.4とBA.5ではワクチン接種者抗体に関係し、BA.1及びBA.2と比較しても数倍程度の中和活性の低下が指摘されています。また中和抗体の結合に影響するF486Vの変異を有しており、モノクローナル抗体治療の効果に影響を与える可能性が示唆されています。XE株と併せて本邦でも空港検疫、一部市中等でも見付かっています。
組換え体に関しては、感染拡大を示唆するデータや重症化、そしてワクチンの効果が減衰するなどの懸念すべき影響を示唆するデータは、現時点では報告されていませんが、引き続き注意が必要であると考えます。
文献2は、マレーシアとハイチで同時期に、複数の異なる地域の患者から、新たなイヌコロナウイルスが検出、分離されている報告です。ハイチの診療所でボランティア活動をしていたスタッフ20名がイヌコロナウイルスに感染し、また同時期、マレーシアの小児患者301例のうち、3%の上気道からイヌコロナウイルスが検出されています。現時点でヒト・ヒト間の感染があるかは不明ですが、変異等により大きな問題となるリスクがあるため、こちらに関しても引き続き注意が必要であると考えています。
文献3~4は、ダニ媒介性の感染症に関する報告で、文献3は、2019年に北海道でマダニと思われる虫に刺された後に、発熱と下肢痛を主訴に受診した患者1名から新規のナイロウイルスが検出された症例の続報です。ナイロウイルスはブニヤウイルス目ナイロウイルス科に分類されるウイルスで、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなど、ヒトに病原性を持つウイルスも属しているウイルスです。2019年及び2020年にマダニに刺された後、発熱等の急性症状を示し札幌市内の病院を受診した2名の患者検体から、免疫不全マウスモデルと培養細胞を用いてウイルスが分離、培養され、ウイルスの遺伝子解析の結果、2名の患者は未知のナイロウイルスに感染したことが分かり、この新たなウイルスをエゾウイルスと命名しました。患者の発熱期間中に血中よりエゾウイルス遺伝子が検出され、解熱後に消失していたことから、急性の熱性疾患の原因であると考えられています。
北海道立衛生研究所では、ダニ媒介性感染症が疑われた過去の症例の残余検体248検体を後方視的に調査し、248検体中5検体にこのエゾウイルス遺伝子の断片が見付かり、最も古い陽性検体としては2014年のものからも検出されていました。先の2症例を合わせますと、2014年から2020年の間で7名の感染者が発生したことになります。そのうち4名は、エゾウイルスに対する抗体も検出されています。また4例で細菌の1種であるスピロヘータ科のライム病、ボレリアライムの共感染も認められていました。これらの患者では、共通してマダニ咬傷後、数日から2週間の間に発熱や食欲不振が始まり、受診時には血小板減少や白血球減少、肝機能酵素の異常等、SFTSと類似の症状を示していました。
今回の調査では、エゾウイルス熱による死者は確認されていません。北海道内の野生動物では、エゾシカで0.8%、アライグマで1.6%の抗体陽性個体が見付かり、また道内の各種マダニにおいても数%程度、当該遺伝子が検出されています。このことから、エゾウイルスがほかのナイロウイルス同様にマダニによって媒介されるウイルスで、既に北海道では定着していると考えられます。今後、道内の地域における調査結果が注目されています。松野先生らによるプレスリリースでは、本州の一部地域で実施した調査で野生動物からエゾウイルス特異抗体が確認されており、北海道以外の地域でもエゾウイルス熱患者が発生する可能性があるとのことでした。エゾウイルス感染症は、国内で初めて確認されたナイロウイルスによる感染症です。適宜、エゾウイルスの検査体制を整えていく必要があると考えます。
最後、文献4ですが、こちらも中国モンゴル自治区において、ダニ咬傷歴のある発熱性疾患にかかった患者から、ブニヤウイルス目のナイロ様ウイルス群のRNAウイルスであるベイジナイロウイルスが分離されたという報告です。ベイジナイロウイルスは、乳児ハムスター腎臓及びヒト肝細胞がん細胞において、細胞変性作用を誘発し、電子顕微鏡像からはナイロウイルスと類似していました。2017年から18年にかけて67例の患者からこのウイルスが検出されており、全例で発熱症状が認められ、99%で頭痛、63%で抑うつ、そして63%で昏睡、54%で疲労、45%で筋肉痛又は関節痛が報告されています。3%、約2例が重篤となっており、1例が死亡しています。このウイルスはヒツジ、ウシ、複数種のダニでも検出され、ヒツジ、ウシが媒介生物の可能性があります。こちらもダニ媒介性の感染症の可能性が高く、引き続き注意が必要と言えると思います。コメントは以上です。
○田野﨑委員長 詳細な御説明、どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見、御質問などがありましたら、よろしくお願いいたします。
○岡田委員 埼玉医大の岡田ですが、よろしいでしょうか。
○田野﨑委員長 お願いいたします。
○岡田委員 ダニ媒介の感染症は、国内で確認されている例は非常に少ないと思いますが、いろいろな所にウイルスを持ったダニが存在していることと、最近、山里に動物、鹿や熊が出現などして、ヒトが感染する機会というものが以前よりも増加していますので、頻度は少ないと思いますが、今まで余り報告がなかったようなウイルスがとんでもない地域で報告される可能性があると思いますので、注意が必要かなと思います。
輸血に関しては、やはり山歩きやハイキングを楽しむ方が最近増えていますので、その人たちにダニよけのスプレーなど、そういうものを使用してもらって、献血者が感染しないように注意していただければよろしいかと思います。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。これは血中からもこのウイルスの断片が出たということで、血液での感染、輸血での感染というのはあり得るということと考えてもよろしいのでしょうか。岡田先生。
○岡田委員 可能性はあります。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。佐竹さん、どうぞ。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 日赤の佐竹です。この中で代表的なSFTSVについては、最近のペーパーでB細胞に感染することが報告されましたので、そういう意味ではこれは血中に乗っていくという可能性は十分出てきたということは確かです。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。そうしましたら、事務局におきましては、今後も感染症の定期報告をお願いいたします。
次に議題2に移りたいと思います。「血液製剤に関する感染症報告事例等について」です。事務局より資料の御説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。資料2-1及び資料2-2をお手元に御用意ください。まずは、資料2-1から御説明させていただきます。こちらの資料ですが、「血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について」ということで、感染報告事例のまとめ及び一覧となっています。期間としては、令和3年11月から令和4年2月までにPMDAに報告されたものとなっております。表紙をめくっていただいて2ページですが、まずこちらから御説明させていただきます。当該期間に報告があった感染症報告は、輸血用血液製剤が14件、血漿分画製剤が7件でした。うち、輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告は2件でして、血漿分画製剤との因果関係が否定された報告はありませんでした。輸血用血液製剤による病原体感染症報告事例の内訳は、HBV感染症が2件、HCV感染が1件、その他が9件となっています。HIV感染は報告がありませんでした。その他の内訳としては、HEV感染が1件、細菌等が8件となっています。
HBV感染報告事例の内訳ですが、輸血後に抗体検査等が陽性であった事例は2件となっており、そのうち、献血者の保管検体の個別NATが陽性となった事例はありませんでした。劇症化又は輸血後に死亡した症例もありませんでした。HCVの感染報告事例については、輸血後に抗体検査等が陽性であった事例は1件でして、うち、献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例は0件でした。また、劇症化又は輸血後に死亡したとの報告を受けた事例もありませんでした。先ほども御説明させていただいたとおり、HIV感染報告事例については、今回は報告がありませんでした。
その他の感染症報告事例ですが、B型肝炎及びC型肝炎以外の肝炎ウイルスの感染報告事例は1件でして、細菌等感染報告事例において、当該輸血用血液製剤の使用済みバッグを用いた無菌試験が陽性となった事例はありませんでした。無菌試験が陽性となった事例が0件でしたので、そのうち輸血後に死亡したとの報告を受けた事例はありませんでした。感染症報告一覧については、3~6ページにまとめております。
続いて、資料2-2をお手元に御用意ください。「供血者からの遡及調査の進捗状況等について」ということで、御説明させていただきます。2ページ、こちらは供血者から始まる遡及調査実施状況となっており、令和元年、令和2年、令和3年のものを御提示させていただいています。今回は、一番右側の令和3年度の速報値について御説明いたします。この期間に報告された調査の対象とされた献血件数は、総数で2,129件となっており、内訳としてはHBVが1,937件、HCVが174件、HIVが18件となっていました。これらの調査の対象とした輸血用血液製剤の本数としては、2,280本となっており、HBVが2,067本、HCVが194本、HIVが19本となっています。このうち、医療機関に情報提供を行った本数は、総数が1,770本となっており、HBVが1,557本、HCVが194本、HIVが19本となっています。
個別NAT関連情報に移りますが、遡及調査対象のうち個別NATの結果が陽性となった献血件数は2件となっており、うち、医療機関へ供給された製剤に関する報告件数が3件となっています。そのうち、受血者情報が判明した件数としては、陽転事例の2件と非陽転事例の1件が報告されているという状況です。
次ページに、医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況を提示しています。今回は少し数が多く、120件の回収報告がなされていますが、新型コロナウイルスの感染が献血した後に判明した方が多かったという形で報告を受けています。あとは、遡及調査ガイドラインの改定に従って、NATが陽性となった場合に、過去に採血したNAT陰性の血漿については、使われていない場合は回収するという規定が盛り込まれましたので、それに従って増えた部分も一部あるとお聞きしています。事務局からの御説明は以上です。
○田野﨑委員長 ただいまの説明に、何か御質問、御意見等はございますか。今のB型肝炎が陽転したという方は、こちらはウインドウ期に感染したということかと思うのですが、お一人のドナーの方がウインドウ期に2つの血小板製剤としてなって、遡及でも2件上がっているものと実際の患者さんからの報告が一致したということでよろしかったでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 おっしゃるとおりです。
○田野﨑委員長 1つ御質問ですが、献血のときに個別NATをやっているわけですが、これは、たまたまそのときに陽性となった方のものは感染をしていないと。献血をしたときに、そのとき個別NATで陰性だった方が、そちらのほうのものは、これで感染が成立してしまったと、そういうような理解でよろしいですか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 いえ、これはいわゆるスプリットのPCということで、1人のドナーの方が献血した個別NAT陰性のもの、それが製剤を2つに分けて、それで2人の患者に輸血されたされたので、中身は全く同じものということです。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。少し分かりにくいので、追加で御説明させていただきたいと思います。恐らく当該事例については、感染症報告事例にあるHBVの欄の下にある2例、識別番号としては、AA-21000043とAA-21000047の2例の報告であると認識していますが、そちらで間違いないですよね。ありがとうございます。こちらの報告については複数回献血者の方で、備考欄の所を見ていただければと思いますが、2021年7月に今回の問題となった献血の1回目をされています。同月内に再度、献血に来られたのですが、スクリーニング個別NATは陽性となったが、ウイルスは同定できなかったと。その次に献血されたときにHBVが陽性となったということで、どうしても血小板製剤の有効期限は4日間ということで、その人から製造されたウインドウ期と考えられるような血液が既に2名の方に投与されていたと認識しています。補足説明です。
○田野﨑委員長 詳細な御説明、ありがとうございました。委員の皆さんから、何か御質問やコメントはありませんか。よろしいでしょうか。そうしましたら、この事例を除いては、特に重篤な感染事例というのはなかったということになるかと思います。事務局においても、今後とも感染症症例や遡及調査結果の報告をお願いいたします。
次に、議題3に移りたいと思います。「献血血液等の研究開発等への使用に関する報告について」、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。資料3-1及び資料3-2をお手元に御用意ください。資料3-1をメインに御説明させていただきます。「献血血液等の研究開発等への使用に関する報告の概要」となっています。まずは、報告の趣旨なのですが、令和2年8月26日付けで発出された厚生労働省医薬・生活衛生局血液対策課長通知において、「採血事業者又は血液製剤の製造販売業者は、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を使用し、又は提供した量、その使用目的等の使用状況について、年度毎に血液事業部会運営委員会に報告するものとする」とされています。当該通知に基づいて、各企業の方々からは、提供状況について御報告を年に1回していただいています。
それでは、各企業の提供状況について御説明いたします。今回、御報告させていただく提供期間は、令和3年4月1日から令和4年3月31日までのものとなっており、提供件数としては468件です。内訳としては、新規が49件、継続が419件でした。各社の内訳について御説明いたします。まず、日本赤十字社が合計としては461件、新規が48件、継続が413件の報告となっていました。外部、内部の内訳なのですが、外部が306件、内部が155件となっています。新規の48件は、全て外部のものでした。続いてKMバイオロジクス株式会社ですが、今回はKMバイオロジクス株式会社から提供されたものはありませんでした。日本血液製剤機構については、合計としては5件の提供がありました。内訳としては、新規が1件、継続が4件となっています。内部、外部の内訳としては、外部が2件、内部が3件となっており、新規の1件については外部のものでした。最後に、日本製薬株式会社ですが、今回は合計2件の提供がありました。全て内部のものとなっており、新規のものはなかったという状況です。
詳しい一覧については、資料3-2にまとめておりますので、御覧いただければと思います。事務局からの御説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 ただいまの説明に関して、委員の皆様から御意見、御質問等はございますか。こちらは、毎年徐々に少しずつ増えてきていて、それぞれの本数などもかなりの量になっているかなと思います。日赤におかれましては、このような労務の負担というのは結構あるのではないかと思うのですが、何か問題はないのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 日赤の佐竹です。それについては、我々もちょっと負担が大きすぎて、少し本業に問題がありそうだという場合には、こちらから申し上げますので、できる範囲においては我々も努力させていただいております。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。ほかにございますか。岡田委員、もしよろしければ何かコメント等ございますか。
○岡田委員 日本製薬株式会社の内部で使用したということなのですが、使用量が非常に多いので、どういうものに使用したのかと。もちろん社内の秘密もありますが、説明していただければ助かります。
○日本製薬株式会社太田守研究開発本部長 日本製薬の太田です。まず、上清Ⅳ-4というものですが、こちらはアルブミンの製造工程途中の画分です。製造途中ですので、アルコール等の希釈が入って、もともとの原料血漿に換算しますと約5,100Lほどになります。この画分は、グロブリン等の連産品を採取した後、こちらはコマーシャルロットとなっております。その後に、実製造工程から分種して、試験製造に用いました。この試製の目的ですが、弊社で将来的な増産というのを見据えて、分画工程の効率化、具体的に言いますと時間とか設備、作業員等の効率化を目指して実施しているものです。一昨年まで少量のスケールで製造法を確立して、今般、その製造法が確立できて実製造に近いスケールでやったという状況です。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。
○岡田委員 よく理解できました。どうもありがとうございました。
○田野﨑委員長 ほかにはよろしいでしょうか。それぞれの内部でいろいろ使われているというところ、日本赤十字社においても、かなりそういうのがあるようですが、よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局におかれましては、引き続き献血血液等の使用状況について、これに関してまた御報告をお願いいたします。
議題4に移りたいと思います。「各調査会の審議結果について」、まず資料4-1について御説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。資料4-1をお手元に御用意ください。「令和3年度第6回安全技術調査会の審議結果について」ということで、御報告させていただきます。右下のナンバーの1~3ページを主に御説明いたします。令和3年度第6回安全技術調査会が、令和4年3月29日に実施されました。出席者としては、概要に記載されている安全技術調査会委員の10名の先生方、参考人として、日本赤十字社より4名、国立感染症研究所から水上先生、金沢工業大学からは山口先生に参考人として御出席いただいています。議論した議題としては、2つの議題となっており、まず議題1として、「新型コロナウイルスのウイルスベクターワクチン接種者の採血制限について」という議題について議論していただきました。議題2については、「「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」の一部改正について」ということで御議論いただいています。
まずは、議題1から御説明させていただきます。当該議題なのですが、まずは事務局から新型コロナウイルスのウイルスベクターワクチン接種者の採血制限について、ワクチン接種後の副反応や、諸外国の採血制限の知見を整理し、接種後4週間とすべきとする研究班、厚生労働科学研究班の浜口班ですが、そちらで議論された見解と、ワクチン接種後のTTS/VITTの報告を踏まえて、接種後6週間とすべきとする日本赤十字社の見解案の2案を提示させていただきました。水上参考人から研究班の見解について補足説明がなされた後に、日本赤十字社より、日本赤十字社の見解の内容について説明がなされています。以下の議論から、安全技術調査会としては、案2を推すこととなりました。
委員の先生からの主な御意見としては、VITTの前駆症状である重篤な頭痛がかなりの高頻度で起こっているということであれば、献血前の問診においてVITTを発症していない場合においても、直後に発生が予測されるものを高確率で見付け、採血対象外とすることができるのではないかという意見がまずありました。本邦での当該ワクチン初回接種者5万8,000人のうち、TTS/VITTの症例が2例報告されており、そのうちの1例が接種後39日を経過してから重篤な血栓症を発症したものであり、抗PF4抗体が長期間活性を有することとか、それに対する反応性も宿主によって異なるということからも、ドナー保護・安全性の観点で案2が妥当ではないのか。また、血液確保の観点においても、当該ワクチンの国内における接種規模とかペースが現状程度であれば影響は少ないとのことなので、現時点では案1より採血期限が長い案2においても問題はないのではないかという御意見がありました。当該意見の所では、今後ウイルスベクターワクチンが国内でも開発されるなどして、同ワクチンが恒久的に使われるようになった場合には、再度、情報を集めて採血制限期間については改めて検討していけばいいという御意見を頂いています。
次に頂いた意見としては、日本赤十字社に御作成いただいた資料1-2の献血影響数シミュレーションについて、当該ワクチン接種者の献血を制限しても安定供給に支障はない旨の説明がありましたが、血小板製剤というものは有効期間が4日間と非常に短いということもありますので、地方の基幹病院では血小板製剤の供給状況が厳しい旨の連絡を受けていると。そういったことを踏まえると、血小板製剤のドナーについては、複数回献血している方が多いということがありますし、そういった方は40歳以上の方が多いように思いますので、実際には同ワクチン接種者の採血制限が血液確保に与える影響が多少あるのではないかという御意見も頂きました。
次の意見としては、アメリカでは同ワクチン接種者の献血制限というものは設定されていませんが、血液学会の診断基準では、VITTについて発症期間を接種後42日間経過後まで設定しているということから、安全確保の観点で案2とすべきという御意見もありました。
最後の御意見としては、同ワクチン接種による抗PF4抗体の発生がレシピエントに及ぼす影響について更なる検討が必要であることも加味して、案2がよいという意見も頂きました。
続いて、議題2について御説明いたします。こちらについては、平成11年に発出された「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」について、AMED研究班において、最新の知見を踏まえて、改定に向けた検討が進められてきたところでした。そして、当該研究班の代表研究者を務めていただいた山口参考人から、同ガイドラインの改正案及びQ&A案について御説明がなされています。その後、御議論いただいた委員の先生方からの意見を事務局において取りまとめることとして、同ガイドラインの改正案が委員より了承されています。また、Q&A案については、委員からの意見を踏まえて、山口参考人と相談しながら修正し、最終案の文言については座長に一任されることとなっています。
委員の先生からの主な御意見については、2ページの後半から3ページの前半にかけて記載がありますが、基本的には記載整備としての議論が多かったと認識しています。ただ、1つ目としては、血漿分画製剤の安全性確保の上で問題になり得るウイルスとしてHTLV-1が追加されていますが、通常プラズマを介しては感染しないウイルスなので、あえて追記する必要はないのではないかという意見を頂いた形となっています。
資料4-1についての説明は以上です。田野﨑先生、よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 委員の皆様から御質問、コメントはいかがでしょうか。ウイルスベクターワクチン接種後の採血制限、少し横並びではなくなってしまっていますが、安全を考えて採血制限を多めに取ってあるような方向になっています。
○武田委員 はばたきの武田ですが、よろしいでしょうか。
○田野﨑委員長 よろしくお願いいたします。
○武田委員 御説明いただいて、ありがとうございました。今、田野﨑先生からも御指摘があったところで、ウイルスベクターワクチン接種後の採血制限について今回新たに決まったというところで、これでワクチンの種類によって、それぞれ採血制限の期間が変わってくるということになって、既にこれで運用されているところかと思うのですけれども、現場のほうでトラブルというか、どちらのワクチンを打ったか分からないというようなことが起きていないかどうかというところを御説明いただきたいのと、分かりやすい資料というか、どのような形で御説明いただいているかというところを併せてお伝えいただければと思います。いかがでしょうか。
○田野﨑委員長 日本赤十字社、よろしくお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤直子技術部次長 日赤の後藤からお答えいたします。ウイルスベクターワクチンを接種した方の献血制限というか、献血受入れは6週間以降ということが決まって、5月から実施しているところですが、それによって特に現場で問題が起きているというお話は聞いておりません。今、献血現場では、これらのワクチンの接種後の献血制限は何日ですというのを、mRNAワクチンでファイザーとモデルナ、ウイルスベクターワクチンはアストラゼネカと書いて、それぞれに48時間、6週間というのを明記して表にしたポスターを作って、献血する前、受付のとき、問診のときに、それぞれそのような資料を用いて確認しているというところです。以上です。
○武田委員 分かりました。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。実際のところ、今、ウイルスベクターワクチンというのは、接種がそんなに進んでいないのかなということで、混乱がないのではないかというのもあるかと思うのですが、今後増えてくる可能性というのはあるかと思いますので、武田委員が御指摘いただいたように、今後どうやって分かりやすくするかというのを、混乱が起こらないようにという意味で引き続き気を付けていただければと思います。
ほかによろしいでしょうか。そうしましたら、引き続き資料4-2について、事務局から御説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 資料4-2を御用意ください。こちらは「令和4年度第1回安全技術調査会の審議結果について」ということでまとめております。1ページ、令和4年度第1回安全技術調査会が令和4年5月11日に実施されました。今回、安全技術調査会の出席者の方々としては、こちらに記載がある安全技術調査会委員9名の先生方と、日本赤十字社から2名の方々、そして参考人として7名の方々に御出席いただいております。議事概要としては、今回、議題としては1つで、「「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の一部改正について」ということで、御審議いただいております。
内容としては、事務局より、令和3年度第5回安全技術調査会における議論、その後の研究班、こちらは大隈班になりますが、こちらでの議論等を踏まえて、「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の改正案を提示させていただきました。主な改正内容については、HBV、HCV、HIVに関して、NAT陽性となった供血者から、過去に採血されたNAT陰性血漿の取扱いと、E型肝炎ウイルスに係る遡及調査とHEV-NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたHEV-NAT陰性の血液の取扱いについてでした。
まず、大隈委員から、上記の内容に係る研究班で行われた議論内容について説明がなされました。その後、日本赤十字社から、原料血漿の安全対策に係る諸外国の状況と日本の基準について説明がなされております。委員より、事務局が提示した「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の改定案が了承されております。
委員の先生からの主な御意見としては、血漿プール製造の際に行う3種類のウイルスの試験として、NATだけではなく、血清学的検査を行うことが安全性を担保するために重要であると。なぜならば、実際に起こる可能性は低いものの、例えば塩基配列が既存のものと異なったウイルスが含まれていた場合は、NATでは検出できない可能性があるが、ウイルスが高濃度に混入していた場合には血清学的検査で検出できる可能性があるからであるという御意見を頂いております。
詳しい改正内容については、参考資料に付けている新旧対照表、及び遡及調査ガイドラインの新しいものを御覧いただければと思いますが、簡単に改正内容について、私からも御説明いたします。
3~4ページにまとめております。まず、マル1のHBV、HCV及びHIVに関しては、NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたNAT陰性の血漿の取扱いについてということで、有効期間内にある使用されていない血漿製剤については、輸血用血液製剤としての使用は不可として供給停止・回収はするものの、原料血漿としての使用は可とするという形です。
マル2、E型肝炎ウイルスに係る遡及調査及びHEV-NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたHEV-NAT陰性の血液の取扱いについてということで、E型肝炎ウイルス感染者のHEV-RNA持続陽性期間が約3か月であることを考慮し、十分な安全域を確保した上で、遡及調査期間を6か月としますが、ウインドウ期間等に関する知見が確立した時点で改めて検討するという内容としております。
また、医療機関から輸血用血液製剤によるHEV感染が疑われた者が報告された場合であっても、E型肝炎ウイルス感染者のHEV-RNA持続陽性期間が3か月であることに基づき、HEVに関する遡及調査期間が6か月と設定されたことに加えて、E型肝炎は経口感染で何度も感染する特性があること等も考慮し、投与された輸血用血液製剤の供(献)血が6か月より前に行われた場合には事後検査依頼の対象外とするという形としております。
3つ目ですが、こちらも今までと同様に、E型肝炎に関する遡及調査期間が6か月と設定されたことを踏まえて、HEV-NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたHEV-NAT陰性の血液の取扱いを以下の3つとしております。
まず1つ目としては、遡及調査期間内かつ有効期間内にある輸血用血液製剤については、供給停止又は回収の対象とする。2つ目として、HBV、HCV及びHIVと同様に原料血漿としての使用は可とする。3つ目として、遡及調査期間外かつ有効期間内にある輸血用血液製剤については、供給停止又は回収の対象としないという形です。
マル3その他として、梅毒トレポネーマに関する記載、HIVの血清学的検査法の記載等について、現状に合わせた記載整備を行っております。
事務局からの御説明は以上です。
○田野﨑委員長 委員の皆様から御質問、コメントなど、よろしくお願いします。
○武田委員 御説明いただいき、ありがとうございます。今回、海外の状況についてもきちんと調べていただいて、前回も委員会で申し上げたとおり、きちんと科学的に大丈夫であるということ、それを担保するところとして、海外と比較して同等以上と言えるような形のガイドラインでとお願いしたところであったのですが、今回、議論いただいた上で、海外と同等以上できちんと大丈夫ということで、このガイドラインになったということでよろしいでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 こちらに関しては、私から発言させていただきますか。それとも、安全技術調査委員会の座長の濵口先生から御発言いただくか、どういたしましょうか。
○濵口委員 安全技術調査会の濵口です。今回の件につきましては、それぞれの海外のメーカー、国内のメーカーの、実際に行われている血漿の管理について御説明を頂きました。その中で、それぞれの製品の承認書に書いてある内容がメーカーによって若干異なってまいりますが、基本的には国で求めている病原体に対する安全性は確保できているということでした。安全技術調査会の中でも確認できましたので、我々のほうでまとめた案については、武田先生が今御指摘いただいた御懸念については、ある程度払拭されているというふうに考えております。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。こちらは武田委員、よろしいですか。この資料の中の5ページ、資料1-2の所の一覧表になるかと思いますが。
○武田委員 御説明いただきありがとうございます。大変よく分かりました。今後も様々な状況が変わってくる中で、また議論が必要になったときには議論いただくということで、今回きちんとこうして議論されて、作られたということで、承知しましたので、ありがとうございました。
○田野﨑委員長 ほかに委員の皆様から御意見、御質問はありますか。よろしければ、最後に議題5「その他」に移りたいと思います。令和3年度の主要血液製剤の供給状況について、事務局より資料の御説明をお願いします。
○若林需給専門官 議題5「その他」について、資料5を御覧ください。令和3年度の主要血液製剤の供給状況についての速報値です。例年、年末の血液事業部会で前年度の実績について御報告しておりますが、昨年度から、主要な血液製剤等の実績について速報値として報告しているものです。
2ページ目が、血漿分画製剤の国内自給率の推移です。供給量ベースの数値です。3ページ目以降が、主要な血液製剤、アルブミン製剤、グロブリン製剤、血液凝固第Ⅷ因子製剤、参考として血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤の供給量推移の令和3年度の実績値を示しております。令和4年度の需給計画値についても、一番右端の棒に含めております。
最終ページが、令和3年度の日本赤十字社の原料血漿確保状況等の実績値です。今回、速報値となりますので、また精査して、他の製剤も含めた数値を年末の血液事業部会に改めて報告させていただきます。資料について説明は以上です。
○田野﨑委員長 委員の皆様から御質問、コメントなどお願いします。この自給率の所は、アルブミンは今のところ少しずつ上がってはいるもののまだ64.9%、グロブリンは下がってきているかのようなところですが、今回、4月からアルブミン製剤は基礎的医薬品になったということで、その影響とか、事務局から何かコメントはありますか。
○若林需給専門官 事務局でございます。委員長の御発言のとおり、アルブミン製剤については、直近の薬価改定で全てのアルブミン製剤が基礎的医薬品になりましたので、薬価がそろいました。まだ令和4年度の実績については今後これから出てくるところですが、血漿分画製剤の国内自給率の向上ということで、基礎的医薬品になりましたので、今後の報告を楽しみにしているところです。事務局からは以上でございます。
○田野﨑委員長 今までは価格の面で、多くの施設で海外からのもの、例えばⅭSⅬベーリング社のものを使っている所が多かったのではないかと思いますが、それが一度に、価格差がなくなるということで、国内産のものにシフトしたときには、これはかなりうまく分配がされないと、各施設での使用が難しくなってくることが想定されるとは思いますが、こちらに関しては、国のほう、あるいは各企業の方々のほうで、うまく連携を取りながら工夫をして計画しているというようなことがありましたら、何か御発言をお願いしたいと思います。
○若林需給専門官 事務局でございます。アルブミン製剤が、今後すぐ切り換わった場合には、安定供給がちょっと危ないかもしれないという御指摘も今頂きましたが、こちらにつきましては、国内企業の集まりである検討会のほうでも、国も参加して、安定供給に支障がないように国内自給の向上について検討してまいりたいと考えております。以上です。
○田野﨑委員長 そのほか、よろしいですか。
○武田委員 今御指摘いただいたアルブミンの所で、安定供給のためにというところで、私も少し懸念を持っていたところです。今回、薬価がそろったというところではあるのですが、ものによっては低いほうの薬価にそろってしまったという製剤もあるように聞いております。今後、基礎的医薬品になったことで、薬価の点ではこれ以上は下がらないような措置等されると聞いてはおりますが、これまでの薬価より下がってしまったというところで、国内の安定供給に支障が出ないだろうかというところが少し気になっているのですが、その辺りはいかがでしょうか。
○若林需給専門官 事務局でございます。今回の直近の薬価改定で、初めてアルブミンが基礎的医薬品となって、薬価がそろったのですが、この取組については、私が赴任した数年前からアルブミンの自給率を高めようということで、国内企業で取り組んでおりまして、その際から海外の製剤のほうが薬価が安いということはもちろん承知して進めていたものですので、そういった部分は、もちろん企業として厳しい部分はあるとは思いますが、織り込んだ形で取組を進めていただいたというふうに考えております。以上です。
○武田委員 ありがとうございます。少し今後の推移も見守りながら、きちんと安定供給が保たれるようにやっていっていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。ほかにはいかがですか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。アルブミンの件ですが、薬価が統一されたということで、そうなりますと、販売力の差が、需要のほうに差が出てきてしまうのではないかと思いますので、製品を作ったけれども売れなくて、国内での自給が増加しないということがないように、なかなか行政的な指導は難しいかと思いますが、作ったものは売れるようなシステムも必要かと思います。以上です。
○田野﨑委員長 それに関しては何かありますか。
○若林需給専門官 事務局でございます。御意見ありがとうございます。アルブミン製剤については、国内3社で構成する検討会においても、国内自給を高めるための広報資料を作成しております。また、一般社団法人血液製剤協会でも同様に広報資料を作成しております。この広報資料を使用することによって、国内の献血由来の製品が使われていくようなことを進めていきたいと考えております。以上です。
○田野﨑委員長 よろしくお願いします。あとはいかがですか。
○岡田委員 アルブミン製剤の適応症は各社共通なのですか。それとも、やはりメーカーによってはほかのメーカーにないような適応症を持っている所があるのですか。
○田野﨑委員長 こちらについてはいかがですか。
○若林需給専門官 基本的には一緒だと思っているのですが、ここについては今手元に資料がございませんので即答しかねます。以上です。
○岡田委員 あとでも結構ですので、ちょっと調べていただきたいと思います。
○田野﨑委員長 もう1つ、グロブリンに関してですが、余り自給率が伸びていかないものではありますが、実際のところ、各年度の確保量の目標と実際の実績を比べますと、その目標を達成していますが、これに関しては、皮下注製剤がかなり増えているというようなことを伺っていますが、これは実際には国内で皮下注製剤がなく、現在、国内産で使えるものがないので海外のものが入ってきていると伺っています。もし、使えるようになってくる場合には、日本赤十字社からの原料血漿確保量が、この目標値の設定だと、十分ではなくなる可能性があるようにも思いますが、こちらに関しては、日本赤十字社のほうではどのように考えられているか、いかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 年間の確保量については、国のほうと一緒に決めるものですので、我々としても、これからの需要の増加を見据えていろいろ手は打っているところですので、その辺と併せて御相談、進めていくしかないかとは思いますが。
○若林需給専門官 ありがとうございます。日本赤十字社のほうで、必要な原料血漿の確保をしていってくださるというふうに過去にも御発言いただいておりますし、今現在も需要が増えている中で、コロナ禍でも原料血漿をしっかり確保していただきました。今後も国と日本赤十字社のほうで、うまく確保できるように取組を進めていきたいと思います。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問はよろしいですか。それでは本日の議題は以上となります。
○松下委員 議題にないことですが、先々週になるのですが、5月24日(火)に発生した日赤さんのシステム障害について、何か分かっておりましたら教えていただければと思います。
○田野﨑委員長 日本赤十字社の方からお願いできればと思います。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 もちろん内部では、どのような原因であったかということで、十分な検討をして、原因であったところ、回復のさせ方等について重々検討しています。現在、手元に資料がありませんので、ここで間違ったことを申し上げるとちょっと問題になるかと思いますので、後ほどきちんと正確なところをお伝えしたいと思います。
○松下委員 ありがとうございます。医療機関によってはかなり混乱があった所もありましたので、これは全国的な問題でしたので、安定供給ということも必要ですので、取りあえず医療機関のほうにはまだきちんとした御説明がないようですので、どうかよろしくお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部佐竹正博中央血液研究所所長 承知いたしました。ありがとうございました。
○田野﨑委員長 ほかに、その他を含めて、何かございますか。ほかになければ、それでは、議事進行を事務局に戻したいと思います。
○佐野血液対策課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。次回の運営委員会の日程は、別途御連絡を差し上げます。これにて、血液事業部会令和4年度第1回運営委員会を終了いたします。ありがとうございました。
(了)