第25回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和4年9月30日(金)10:00~12:00

場所

厚生労働省議室(9階)

出席者

(委員)(五十音順)
大橋委員 岡本委員 佐々木委員 武田委員 中野委員 春川委員 守島部会長 山川委員 山田委員
(事務局)
小林厚生労働審議官、山田大臣官房長、中村政策統括官(総合政策担当)、田中政策立案総括審議官、蒔苗政策統括官付参事官、古屋政策統括官付政策統括室労働経済調査官、古舘労働基準局総務課長、牛島雇用環境・均等局総務課長、長良人材開発統括官付人材開発総務担当参事官、宮元職業安定局雇用復興企画官

議題

  1. (1)フリーディスカッション
  2. (2)その他

議事

議事内容
○守島部会長 それでは、皆様、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより「第25回労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただき、誠にありがとうございます。
本日は、所用により、石山委員、入山委員、川﨑委員、古賀委員、冨山委員が御欠席でございます。
所用のため、大橋委員は途中で御退席されると伺っております。
議事に入ります前に、オンラインの開催に関しまして、事務局から御説明があります。
○古屋政策統括官付政策統括室労働経済調査官 おはようございます。事務局の古屋でございます。
オンラインでの開催に関しまして、留意事項を御説明いたします。
まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしていただくようお願いいたします。
委員の皆様は、御発言の際は「参加者パネル」の御自身のお名前の横にある「挙手ボタン」を押して、部会長から御指名があるまでお待ちいただくようお願いいたします。部会長から御指名の後、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度「挙手ボタン」を押して、挙手の状態を解除していただくようお願いいたします。
通信の状態などにより、音声での発言が難しい場合には、チャットで発信内容をお送りいただくようお願いいたします。
また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡いただくようお願いいたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず、本日の進め方について御説明さしあげます。
最初に、事務局からお渡ししている資料について御説明をさしあげます。その後、自由討議を行うことになっております。
事務局から御説明をお願いいたします。
○蒔苗政策統括官付参事官 事務局の蒔苗でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私のほうから、本日の議論の進め方について御説明申し上げます。
まず、参考資料1を御覧いただけますでしょうか。労働政策基本部会の位置づけについて確認しておきたいと思います。
本部会につきましては、労働政策審議会の各分科会、部会横断的なテーマかつ、中長期的な課題等についてメンバーの方々に御議論いただく場として、今回のテーマにつきましては2月から議論を始めてございます。
参考資料1の真ん中の辺りに【大テーマ】とございます。今回始めた議論といたしましては「加速する経済・社会の変化の中での労働政策の課題~生産性と働きがいのある多様な働き方に向けて~」という大テーマを掲げまして、これまで議論してまいりました。
下にございますのが前提でございまして、働き方の変化・多様化に大きく影響しうる社会・経済、ビジネスの変化ですとか、社会・経済の変化を受けた働き方の変化・多様化でございます。
これらにつきましては、これまでに委員の方のプレゼン、もしくは企業の方からのヒアリング等を通じて御議論いただいてきたところでございます。
次のページに参りまして【小テーマ】として掲げてございますのが2つございまして、社会・経済や働き方の変化に対応するために労働者・企業に求められる対応、同様に、労働政策において検討すべきテーマについて議論するということで、議論を開始してございます。
これまでの議論を整理いたしまして、本日、事務局として資料1を用意してございます。
このペーパーにつきましては、本日御欠席の委員の方も含めまして、あらかじめ事務局のほうで御説明させていただいておりますので、今日は簡潔に御説明をさしあげたいと思います。
この資料の構成ですけれども、目次に書いてございますが、「1.社会・経済の現状について」です。産業構造の変化、多様な人材の参加、労働市場の変化、意識の変化等についてとしています。
「2.働き方の現状について」です。生産性の向上に向けた雇用管理、流動化する労働者の雇用管理についてです。
「3.今後の労働政策の課題について」として2つあります。「労働者」・「企業」それぞれに求められる対応、労働政策において検討すべき課題ということで議論を進めてまいりたいと思っております。
2ページ目からでございます。2月からこれまで御議論いただきました皆さんの御発言を抜粋する形で、先ほどの小項目ごとに分類してございます。若干かいつまんで御紹介いたします。
「(1)産業構造の変化」といたしましては、ハードの設備に依存した社会から、「知」で勝負しなければならない社会にシフトするというお話とか、環境変化として技術革新、デジタル化、カーボンニュートラル等、中長期的に展望していくのかということが労働政策としても重要という意見です。
「(2)多様な人材参加」の部分ですと、これはヒアリングで御議論いただきましたが、いわゆるリモートワークのような柔軟な働き方が増えてくることで、多様な社員が活躍できる環境がつくられていくことが重要という御意見です。あるいは、大分取り組んではきておりますが、依然として男女の役割分担、性別役割分担がなかなか払拭できていないという御意見ですとか、既に共働きのほうが専業主婦世帯より多くなっておりますけれども、配偶者控除とか大企業の様々な手当などから、働くことを躊躇する方もいらっしゃるという御意見等がございました。
「(3)労働市場の変化」といたしましては、政府全体でも今、進めておりますけれども、社会全体で人材に投資を進めていくことが重要とか、中途採用がエンジニアの分野で活発化している中ですけれども、ジョブ型での入職者に他の社員と同じ仕組みで働いてもらうのではなくて、複線的な仕組みを整備していく必要があるのではないかという御議論です。
「(4)労働者の意識・企業の求める人材像の変化」のところですと、世の中は変わっておりますので、労働者の側もこうした変化を前向きに捉えることが大事だとか、労働者のエンゲージメントをどう高めていくかということも重要だという意見がございました。
3ページに参りまして、働き方の現状でございます。
「(1)生産性の向上に向けた雇用管理」といたしまして、人材育成の部分では、真ん中辺りにございますけれども、地域におけるリスキリング支援の情報の共有が課題ですとか、事例とか取り組み方に対する情報収集の支援の機会が必要という御意見がございました。
あるいは、スキルによる格差・分断をいかに回避していくかが重要であり、公平・公正な人材育成の機会提供が必要という意見がございました。
デジタルのところでございます。
デジタル人材は、特定の産業だけではなくて、あらゆる産業でこういった人材が必要となるという意見がございました。
4ページに参りまして、技術の導入だけではなくて、働き方も変えていくのが理想であるという御意見ですとか、今の日本企業では、40代半ば以降から50代、60代の社員の方々をリスキリングして、社内で戦力化したり、新天地で活躍してもらったりすることが必要であるが、なかなかそこが現状なっていないという課題があるという意見です。
あるいは、一番下ですけれども、日本全体でデジタル人材が不足する中で、社内教育でスキルを身につけた社員が他社に移ってしまうということが出てくるのではないかという御意見がある一方で、事前の御説明の中である委員からは、逆にこれからは人材投資をしない企業にはいい人材が集まらないという御意見もございました。
「(2)多様化・流動化する労働者の雇用管理」の部分で、人事制度で行きますと、1つ目に書いてありますけれども、DXを進める上では、失敗を許容する人事評価の仕組みも必要ではないかということです。DXの世の中になりますと、いわゆるトライアンドエラーとかアジャイル型開発といった、失敗しながら物事を改善していくという取組も出てまいりますので、そういったことを評価につなげることが大事ではないかという御意見がございました。
5ページでございます。ジョブ型雇用についての御議論もたくさんいただいてございます。
3つ目の○に書いてありますけれども、単線型の正社員のキャリアではなく、職務限定型、ジョブ型等の複線型の雇用管理が重要なのではないかという意見ですとか、その次に、ジョブ型での職務限定については、労使自治の中で試行錯誤していくことができているのではないかということです。
あるいは、ジョブ型の一番下にございますけれども、日本で産業横断的な仕事基準やそれに基づく賃金が整備されていない中では、「社内ジョブ型」にとどまらざるを得ないのではないかという、日本版ジョブ型といいますか、そういった御議論もございました。
労働移動の部分につきましては、転職していく中でキャリアアップしていく仕組みが日本ではまだ一部にとどまっているのではないかという御意見や、労働移動に中立的な制度へと、慣習や制度を見直していくべきではないかという意見がございました。
6ページに参りまして、最後ですけれども、一番上のところに、新しい制度として在籍型出向支援制度というのを厚生労働省で用意してございますけれども、こういった在籍型出向という仕組みについても総括していくべきという御意見もございました。
本日御議論いただくのは、今、私が簡単に説明した部分につきまして、もっと御意見、御指摘をいただくということもございますけれども、3番目として、6ページの一番下に箱がございますけれども、こういったことも踏まえまして、今後の労働政策の課題につきまして、労働者にまず求められる対応、あるいは、7ページに参りまして、使用者に求められる対応、行政において検討すべき課題につきましても御議論を深めていただければと考えております。
3番につきましては、全くまっさらですと議論しにくいと思いましたので、事務局として論点の例を4つほど準備してございます。
1ページ目に戻っていただきまして「※これまでのご議論から考えられる課題(案)」として4つ用意してございます。
1点目は、産業のDX・デジタル化が進展する中において、非正規雇用労働者の方々を含めて人材投資を増やして、これらの技術を労働者に実装しまして、所得上昇や働き方の改善にどのように生かしていくのかという話です。
2点目は、デジタル人材などの専門人材をどう育成・確保していくか、その際に「労働者」・「企業」それぞれや「労働市場の整備などの労働政策」に期待されるものは何かということです。
3点目は、雇用制度でございますけれども、デジタル人材などの専門人材の確保に向けて、一部の企業で導入が進みつつある新たな人事制度と従来からの人事制度との関係など、今後、雇用管理はどうなっていくかということでございます。
4点目は、ダイバーシティでございますけれども、企業組織におきまして、女性や障害者、高齢者、外国人など、いろいろな視点を持った多様な人材が社内で活躍できる環境を整備していくために、「労働者」・「企業」・「行政」、あるいはマネジメントのあり方を含めてどういうことが必要になってくるかについて、本日御意見をいただければと思います。
本日の御議論を踏まえまして、次回ヒアリングも予定しておりますけれども、めどといたしましては、来年2月ごろに部会としての報告書の取りまとめを今のところ考えておりまして、それに向けて我々のほうで議論を整理してまいりたいと考えております。
本日は御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、自由討議に入りたいと思います。御意見のある方は挙手をなさって、私が指名いたしますので、御発言いただきたいと思います。
山田委員、お願いします。
○山田委員 特にこれからの議論で考える課題ということで、今、事務局から御説明されたところに関して申し上げたいのですけれども、基本的にはこの4つの論点は大事だと思っています。
最初に報告書的に重要だと思っているのは、総論的にデジタル化とか脱炭素化などによって事業構造とか産業構造は本当に大変革の時代に入っているということの指摘です。
その上で、働く人たちが、いわゆるリカレントやリスキリングということをそれぞれが主体的に取り組んでいかないと駄目だと思います。それは経営者とかマネージャーとか現場労働者、全てのレベルで共有した認識が重要だということです。
特に変化に対して前向きに対応していく、変化を前向きに捉える発想が重要だという、全体の共有認識みたいなことを指摘する必要があるのではないかと思います。
その上で、まさに大変革ということなので、一企業の枠とか、従来の産業の枠を越えた発想とか連携が必要だということです。そういう意味では、公労使、政労使、あるいは産官学の連携の重要性ははっきり言っていくことが大事ではないかと思います。それが総論的なところです。
2点目で、今回特に重要なのは、まさに人材育成、リスキリング、アップスキリングというところだと思うのですけれども、特に企業としては個別に対応が進んできている中で、どうしても社会全体で見たときに漏れてくるところがあるので、そこに対してどう対応していくのかが大事だと思います。
具体的に言うと、中小企業の従業員、中小企業は多様ですからいろいろされているところもあるのですけれども、そこから漏れてくるところは多いだろうということです。非正規の方は言うまでもないと思うのです。企業経営の合理性から見ると、どうしてもそこの投資の回収が十分ではないということが考えられますから。
それから、これは議論でもよく出ていたのですけれども、中高年のリカレントというところに対しての重要性を再認識する必要がある。これは企業の責任もあると思うのですけれども、どうしてもそれだけでは不足してくるので、既に申し上げたような公労使、産官学の連携の中でどう対応していくかというところを考えていく。具体的なところまで言えればいいのではないかと思います。
多くなったのですけれども、もう一点です。事務局に御用意していただいた3つ目の論点なのですけれども、これは俗に言うジョブ型の議論だと思うのです。日本全体でジョブ型という議論がこれだけ広がってくる中で、実際はかなり混乱している印象を私は持っています。ジョブ型という言葉の定義自体が、論者によって多様なのだと思うのです。比較的流動性が高いという意味合いで使われている方もいらっしゃれば、もうちょっと労働研究というプロパーで言っている部分の、職務型という意味で使っている人もいるということで、全体の整理をここで提示することが重要ではないかと思います。
この点に関しては、具体的にそれをうまく回していくという意味では、私はエコシステムが大事だと思っています。エコシステムというのは、実は企業の内部でのいわばミクロのエコシステムもあるのですけれども、マクロのエコシステムと両方あると思うのです。
ジョブ型の話で言うと、少し似たような話で言うと、20年前に成果主義という動きがあったわけですけれども、これは実は、人材マネジメントのミクロのエコシステムでもかなり問題があったわけです。評価の部分だけに特化してやって、育成の問題とか配置の問題をあまり考えていなかった。それでこれはあまりうまくいかなかったのです。
今回、大企業の事例とかを見ていると、かなりミクロのエコシステムのところには入り込んできているということで進み始めているのですが、マクロでは、例えば教育制度の在り方とか、それはまさにアップスキリングとかリスキリングという話が出てきているのですけれども、これは言葉ではそうですが、具体的にどうつくっていくのかは、かなりいろいろな調整が要るところだと思うのです。
もう一つは、社会保障の仕組みも裏側では非常に重要なところになってくるので、ジョブ型の議論というのを、全体像をバランスよく見せて、答えは出し切れないと思うのですけれども、どういう論点があり、特に私はミクロのエコシステムとマクロのエコシステムの重要性を指摘していく、そこが大事なのではないかと思います。
長くなりましたけれども、以上の3点です。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。
続きまして、岡本委員、お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。
90年代から現在に至るまで、雇用の流動化による不安定な雇用と格差の拡大、固定化、それに伴う社会的な分断が進行してきたと思います。
その上で、この部会で今後の労働政策の検討を行うに当たっては、いかに格差を解消するか、または、様々な分断をどう乗り越えるかという視点を軸に検討することによって、大テーマに掲げる「生産性向上と働きがいのある多様な働き方」を、雇用形態にかかわらず誰もが実現できるようにしていくべきではないかと考えます。
このような視点で、大きく3点について触れたいと思います。まず、ジョブ型雇用についてです。そもそも、DXの推進などに対応するために、ジョブ型雇用の普及、推進が必然かのように議論されていることに違和感がございます。
雇用に関する制度を検討する上で重要なのは、企業にとって制度の導入の目的は何か、同時に、そこで働く労働者に何を求めているのかということであって、単にジョブ型雇用の導入が目的となってはいけないと思います。
ヒアリングにあったように、これまでの労使慣行も考慮しながら、個別の労使で創意工夫しているというのが実態だと思いますので、政策的にジョブ型雇用の導入を後押しする必要性は高くないのではないかと思います。むしろ雇用区分が複雑化、多様化することで、労働者間の格差や分断が生じることを懸念しています。
先ほど山田先生のお話にもありましたけれども、この部会の議論でも、各企業の導入目的や発言者の立場、または文脈の違いによってジョブ型の意味が様々であって、言葉のみが独り歩きしているのではないかと感じました。
生産性向上と働きがいのある多様な働き方を実現していくためには、労使はもとより、行政も含めて長時間労働や、あらゆる雇用形態間の格差是正といった働き方改革のさらなる推進や、柔軟な働き方の適正な運用や活用促進こそ進めるべきではないかと思います。
次にフリーランスについてです。フリーランスが近年増加傾向にある一方で、労働関係法令が適用されないことで、不安定で低処遇な働き方になってしまっている人たちが増えていることを大変懸念しています。
現在、政府においていわゆるフリーランス新法の検討が行われており、一歩進んだ部分もあるのですけれども、就業者の中には労働者性の高い人が含まれています。労働者性が高いと思われる働き方については、世界的に労働者と考える方向で保護を図る取組が進められています。雇用者からフリーランスなどへの法の潜脱を目的とした置き換えがなされることを阻止するためにも、労働者性概念の見直しは喫緊の課題なのではないかと思います。
世界の潮流も踏まえつつ、社会保障の分野も含めて検討を進めるべきだということを改めて発言させていただきます。
最後に、労使コミュニケーションについてです。労使間の情報の非対称性や交渉力の差などを考慮しますと、集団的労使関係による労使コミュニケーションを軸に据えることが重要であるということを強調しておきたいと思います。
労働組合では、雇用形態、就業形態にかかわらず、職場の仲間を組織化するとともに、組織化の有無にかかわらず、多様な労働者の意見集約なども、併せて進めています。もちろん、労働組合としてもまだまだ努力していかなければいけないと思いますけれども、行政としても労働組合の取組を後押ししていく必要があると考えます。例えば、好事例の周知や、企業への望ましい取組の普及啓発などをしていただければと思います。
長くなりましたが、以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、大橋委員、お願いいたします。
○大橋委員 ありがとうございます。
私は労働や労働政策の専門家ではないので、用語の使い方が間違っていたら御容赦いただいて、その上でコメントさせていただければと思います。
大学にいて学生と触れ合っている中でも感じるのですけれども、恐らく、1つの会社に就職するという意識がだんだん薄れてきて、複数のタスクを働きながらやっていくという意識が強くなっているという感じがします。
そういう意味で言うと、一労働者に対して一使用者という1対1の関係が今後も続くのかという点は別にしても、幾つかの仕事をしながら自分の付加価値を社会に提供したいと考えている若い人は随分多いのではないかという気がします。
そうした中で、労働者性という概念が従来のままでいいのかどうか、あるいは、使用者が労働者を全てしっかり管理することが本当にできるのかどうかということは、実態と法制度がだんだんずれてくることもあり得るのかと思います。そうした雇用の流動性に対して、制度がどこまで面倒を見ていくのかというのは課題としてあるのかと思います。
より具体的に言うと、コメントの中でも、産業間の人材の流動が乏しいのではないかというお話がありましたけれども、他方で、相当程度雇用の流動化は今後進んでいくのか、あるいは、それを望んでいる人が増えてくるのかと思う中で、企業の人材投資も重要だと思いますが、産業調整をスムーズにするための何らかのリスキリングを企業以外の公的な主体がある程度担っていくことも重要かもしれませんし、従来のセーフティーネットというのは企業だけに任せることも難しくなってくると、負担のリバランスが必要になってくるのかと思います。
流動化が進むということは、団体としての労働者側の交渉力が低下するということも恐らく意味します。嫌なところは移ればいいということかもしれませんが、結果としては、弱い労働者については従来の労働者保護としての労働法制の在り方にもつながっていく話だと思います。
もう一つ、産業の流動化を進めていく上で、例えば、競業避止義務みたいなものがあると思うのですけれども、そういうもので社内の秘密を守るというやり方は、直接的な施策ではなくて、経産省が所管しているかもしれませんが、企業の秘密を守るのだったら守るための不競法で対応すればいいのであって、競業避止という形でやる必要はないのだと思うのです。ですから、そこを企業が民民でやっているとすると、独禁法の適用にするのか分からないのですけれども、雇用の流動化を妨げるものとして問題にしてもいいのかという感じもします。
いずれにしても、日本の経済の成長につながる形の労働政策をしっかり考えなければいけないという点でも、労働法制をどう支えていくのかというのは重要な論点かと思って、幾つか指摘させていただきました。
今日は途中で退席してしまって申し訳ないのですけれども、ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、春川委員、お願いいたします。
○春川委員 ありがとうございます。春川から発言させていただきます。
今日、フリーディスカッションの中で、先ほど「3.今後の労働政策の課題について」で、労働者に求められる対応というところが一つ掲げられていましたので、労働者の立場を踏まえて幾つか発言させていただきたいと思います。
労働者に求められる対応を問われたときに、働く現場としてどう思うかというところでまず感じたのは、この部会が掲げている「生産性向上と働きがいのある多様な働き方」、の「働きがい」という部分に対して労働者が思うところは様々あろうかと思います。
その中で、先ほど山田先生からもお話がありましたが、変化に前向きに対応していくことができる人とできない人がおりますが、巡り巡って分断や格差につながるのではなかろうかと思っておりまして、変化にポジティブに対応していくことの重要性が求められてくるのだろうと思っています。
従来から言われている少子高齢化、労働力人口の減少といった中では、年齢、性別にかかわらず、働く者それぞれが持つ能力を最大限に発揮できる環境を整備していくことが非常に重要と思っています。それがそれぞれの働きがい、さらには前向きに変化に対応していこうということにも波及していくのではないかと思います。
それに加え労働条件の改善や、労働者それぞれの能力開発に向けた対応が重要なのだろうと思います。
先ほどもありましたが、当然、正社員だけではなく、非正規労働者、フリーランスも含めた労働者、働き手に対しての対応もしっかりしていかないと、より格差も広がっていくと考えていますので、企業それぞれが対応できるところを後押しすることも当然必要だと思いますし、そうではない労働者も多くおりますので、そのような部分への対応が重要だと考えています。
また、このテーマの論議の中にもありました労働移動に関して、成長分野や、そもそも人材が不足しているところへの労働移動そのものに対しては当然否定するものではありませんが、例えば、労働者が自ら移動したいと希望して選択できるような処遇、労働条件や安定した雇用環境の整備への支援も必要だと考えておりますし、重層的な雇用対策や社会的なセーフティーネットの整備は不可欠だと思っています。
なお、労働移動の議論では解雇規制にも話が及ぶことがありますが、それは無関係だと思っています。労働移動を促進する目的に乗じて、安易な解雇を促しかねない流れをつくるべきではないと考えているということは最後に付言させていただきたいと思います。
私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続いて、佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 ありがとうございます。
まず、御提示いただいた今回のいろいろなテーマ、それから、これを2月に取りまとめるということで、どれかを選ぶのが難しいぐらい、全てが重要な案件だろうと思って拝聴しておりまして、ここから何がということではございませんけれども、労働者、使用者の両方の立場で考える審議会という観点で考えると、労働者にとって必要なことは、これから自分はどのようなことを学び続けていけば良い労働者になるのかという視点が知りたいだろうし、それがどのように評価されて自分が上に上がっていく、あるいは横展開することにつながっていくのかということだと思うのです。あるいは、管理職になるのだったら、今までだと3年働いていると上に上がるとか、5年働いていると課長になるみたいなのがあったのが、そうではなくて、スキルの観点から見ると、どのような条件をクリアすれば自分はポジションを上がっていかれるのかを明確にするという、教育と同時に、何が求められているのかということの明確な表示との公平な評価が労働者の幸福につながっていくと思います。
全く同じことが、企業から見ると、教育と、何を求めているかを明確に提示し、公平な評価、エクイティーを実現することによって、企業側が透明性を持ってそれを従業員に伝えることによって生産性が上がって、企業が成長するという対の関係なのかと考えました。
そうすると、審議会として2月に向けて総花的に書こうとすると、誰もが想像できるようなことが満遍なく書かれるということになってしまうので、何とか労働者あるいは使用者の役に立つような内容になっていけばと考えるわけなのです。そこで、いきなりピンポイントになりますけれども、一つは、働き方が変わってくる中で、労働時間をどう考えるかのということは非常に大きなテーマで、考え続けなければいけないのかと思っております。
在宅で仕事をしていれば、宅急便が来たら受け取るだろうし、洗濯機が止まればそこから出すことがあるかもしれない。会社に行っていたらできないようなことが、家にいたらいろいろなことをまあまあ同時並行でできる。それは賃金を払う側の1分幾らで時間外労働を支払うという視点からすると、1分だって立ち上がって玄関に宅急便を持ってきている時間まで、時間外で3分多くなったみたいなものも計算してくださいと言われると、何となく気持ちが落ち着かない。この労働時間を法的にどのように捉えることが可能なのか。在宅が増える中で、1日8時間分働いたと申告すればいいという、ざっくりのところまで行かれるのかみたいなことも含めて、どうやったら新しい働き方、暮らし方と、労働時間や賃金の関係を私たちがつくっていくのかというのはかなり大きなテーマで、重要なテーマなのではないかと思っています。それが1つ目です。
2つ目がダイバーシティの促進なのですけれども、これは私の専門とするところなのですが、1の(2)で「多様な人材の労働参加について」と書いていただいたのですけれども、ここを考えるときに、ただ多様な人を雇いましょうという話ではなくて、審議会的に言うと、例えば、人数割合。今だと入社をするときに男性8割、女性2割として、これを目標として、入社のときには女性18%にしますとかという宣言がありますけれども、そもそもそこがおかしい。例えば、入社のときに男女の人数や割合を決めてはいけないとは言えないのだろうかとか、そういう入り口のところを政策として何か対応できるのか。
あるいは、今度は公平な評価です。平等でもなければ実力主義でもなくて、公平な評価、エクイティーという概念は世界的にダイバーシティの業界ではホットワードになって、みんなが取り組んでいるわけですけれども、公平とは何なのか。時短をしていても、どこで働いていても、不自由がある人たちの中でも、どうやったらその人をきちんと評価して、一人一人の力を発揮してもらえるのか。世界的には様々な公平な人事評価の事例があるはずなので、例えばこういったものを研究して発表する。まとめていろいろな企業が参考にできるようにしていくのはどうだろうか。多様な人材採用と公平な評価というところに絞ってサンプルをたくさん集めて提示するということはどうだろうか。これがダイバーシティのところでは2つ目で考えています。
3つ目はDAOです。Web3の世界の中で、新しい働き方としてDAOが注目されているわけですが、急に明日、日本国中がそうなるわけではありませんけれども、そろそろデジタル人材のことも含めたり、国際人材を考えると、こういったところを厚生労働省の労政審の中でもしっかりと研究して、どこかの委員会では研究しているとは思うのですけれども、どういうことなのか、それが今の日本の企業や働き方の中にどのように影響を与える可能性があったり、それをプラスに使えるのかみたいなことは入れ始めてもいいのかという3つがございます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、中野委員、お願いいたします。
○中野委員 ありがとうございます。
山田委員や岡本委員の御発言とも重複するところがあると思うのですけれども、私の専門は社会保障法ですので、社会保障制度に関して発言させていただきたいと思います。
先ほど山田委員からも社会保障政策について言及がありましたが、少子高齢化が進む中で社会経済活動を維持していくために、女性や高齢者など、多様な人材がそれぞれの能力や状況に応じて働ける社会づくりをしていくという観点からは、雇用政策や企業内での人材育成の問題だけではなく、就労を支える社会保障政策も視野に入れて議論していく必要があるだろうと思います。
社会保障制度の中でも、特に年金や医療などの社会保険の在り方が重要となるのではないかと思います。もちろん、共働き家庭を支える子育て支援、保育制度といったものも重要なのですけれども、本日は年金や医療などの社会保険の在り方について発言させていただきます。
すなわち、年金保険の第3号被保険者制度や在職老齢年金制度などが女性や高齢者の就業を抑制しているということがしばしば言われておりますし、短時間労働者への適用拡大は徐々に進められているものの、非正規雇用の増加や兼業や副業の促進など、働き方の多様化に現在の社会保険の適用基準がいまだに十分に対応し切れていないという点については、さらなる改善を考えていく必要があるのではないかと思います。
もう少し掘り下げさせていただきますと、高齢者の雇用促進に関しては、まず、在職老齢年金制度による賃金と年金の調整の問題も併せて考えていく必要があるだろうと思います。
ただ、60代前半の在職老齢年金制度については、賃金の抑制効果を指摘する経済学の研究なども見られるのですけれども、老齢厚生年金の支給開始年齢の引上げによって、60代前半の在職老齢年金制度は数年内に制度そのものが消失します。
高齢者の就労機会の確保の議論が60代の後半にシフトする中で、今後議論すべきは60歳代後半の在職老齢年金ということになるのですけれども、厚生労働省の資料を見ても、60代後半の在職老齢年金にはあまり賃金抑制効果がないように見えます。そこには恐らく、60代後半の高齢者の賃金がそもそも低いという、在職老齢年金の支給停止基準よりももっと低いところに60代後半の賃金があるという問題があるように思われます。
ただ、高齢者雇用安定法の改正によって、高齢者について雇用以外の就業の促進が進められておりますので、今後は現在の在職老齢年金が厚生年金保険の適用事業所での雇用による賃金のみを調整の対象としていることの不公平性がクローズアップされることになるのではないかと思います。つまり、60代後半の高齢者が自営業として働けば、収入と老齢年金の調整は行われないのですが、厚生年金保険の適用事業所で雇用就労すると賃金と年金が調整されてしまうという差が生じることになりますので、その点からも制度の見直しの検討が必要になるのではないかと思います。
女性の雇用の促進に関しては、配偶者控除とか第3号被保険者制度による130万円の壁など様々な問題がありますけれども、第3号被保険者制度については、その制度がないと無年金になってしまう女性、典型的には専業主婦の女性を年金保険の中に入れる、そういった女性が社会的に排除されることを防ぐという効果もありますので、直ちに廃止することは難しいだろうと思います。むしろ、現在進められているように、社会保険の非正規労働者、短時間労働者への適用を随時拡大していくことによって、第3号被保険者制度そのものを縮小していくという方向が望ましいのだろうとは思います。
ただ、その際に、短時間労働者への社会保険の適用基準として現在設けられている週労働時間20時間以上という労働時間要件が新たな就業調整を生んでいないかということは、調査して考える必要があるのではないかと思います。
短時間労働者への適用基準としては、現在、月の賃金が8万8000円以上という賃金要件もあるのですけれども、最低賃金が上昇することによってこの賃金要件は近年中に意味をなくすと言われています。つまり、最低賃金で週20時間働くと月の賃金が8万8000円を超えるという時代がすぐに来ますので、今後は週20時間以上という労働時間要件のほうが重要になってくると思われます。ですので、この労働時間要件が就業調整を生んでいないかという点が問題になるだろうと思います。
また、副業・兼業の促進ということから考えますと、単一の事業所での労働時間は20時間に満たないけれども、複数の事業所での労働時間を合計すると週20時間以上になるという働き方をしている人たちが現在、社会保険の適用から漏れているという点についても、労働時間をどうやって正確に把握するのかという問題と併せて考えていく必要があるだろうと思います。
また、この部会では雇用による就労が議論の中心になるのかと思いますけれども、岡本委員からも御発言がありましたように、雇用以外の働き方に社会保険がどう対応していくのかということも考える必要があるだろうと思います。
労災保険や雇用保険では部分的ながら対応が始まっておりますけれども、労働者に類似する働き方をする自営業の人たち、フリーランスやギグワーカー、クラウドワーカーといった人たちにどこまで社会保険を適用するのかということは、雇用労働を前提として構築されてきた社会保険の在り方自体の見直しに踏み込む課題ではありますけれども、労働保険での動きを参考に社会保険でも対応を議論していく必要があるのではないかと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかに、どなたかございますでしょうか。
山川委員、お願いいたします。
○山川委員 ジョブ型の話なのですけれども、私も弁護士としてどうかというのはあるのだけれども、ジョブ型の定義がかちっとしているわけではないのです。
ただ、私は弁護士で、外資系の会社の使用者側ばかりやっているのですけれども、それとの比較で、私の中のジョブ型というか、日本企業と外資系の企業の決定的な違いは、労働者自身による自律的なキャリア形成に関する意識が全然違います。私の中では、ジョブ型というのは何となく、今まで会社が決めていたキャリア形成を労働者が決めるのだとイメージしているのです。日本の大きな典型的な終身雇用、長期雇用の会社でいうと、企業が持っている人事権が世界で類を見ないほど広いのだと思うのです。つまり、解雇はできないけれども、それ以外は何でもできてしまう。人事から経理に行ってもいいし、東京から北海道に行きなさい、それは配転命令権だから有効ですよねということです。
ですから、物すごく単純化すると、あなたの一生を丸抱えで面倒を見てあげるよ、だから解雇はしないよ、その代わり会社の命令には従ってねという構造です。もちろん、それには雇用が維持されるという側面があって、それはすごく大事ではあるのだけれども、労働者によって自律的に何かというところがあまりないし、どうせ会社が決めてしまうのだからということであったら、自分でキャリア、転職を考えて一生懸命勉強しようという意識もなくなってしまうだろうと思います。
それに伴う弊害は当然あって、自分のキャリアが会社に全部依存していたら、会社の言うことは絶対だから長時間労働は当然起きるでしょう。嫌な言い方をすると社畜になってしまうわけだから、コミットしなければ駄目です。当然、有休も取りにくいだろうし、上司の権限はすごく強くなってしまうからパワハラだって起きやすいです。それなりの弊害は当然あると思うのです。そういうふうに丸抱えできない社員を非正規にしてしまって、処遇も劣るし、あるいは、配転とか転勤に耐えられないから、女性はどちらかというと補助的なお仕事になってしまう。
結局、確かに解雇はできない。雇用さえ維持していればいいのではないかみたいなイメージが少しあるのです。例えば、整理解雇の話にしても、この会社は赤字ではないのだから何かポジションはあるでしょう、ポジションをつくればいいではないかみたいな、そういうのはその会社がずっと存続するのだったら分かりますし、60年代にそういうことがオーケーだったのは非常に理解できるけれども、今はそういう時代ではないから、今度は会社側から見ると、何となく労働者の一生を支えますという義務が会社にかかってしまうところもあって、よく外国の人事の方と話すと、日本は社会保障みたいなものを全部会社にやらせているみたいなところがあるのです。それを会社から出して市場に持ってくるのだというのが私の中でイメージしているところがあって、それがジョブ型なのかは分からないけれども、労働者は自分でキャリアを自律的に考えるということだったら、当然勉強しますね。
つまり、日本の労働者は世界の労働者に比べて、自分で勉強している時間は圧倒的に少ないと思うのだけれども、それは勉強する必要がないからということなのです。自分で考えるということになったら当然勉強するし、リカレント教育とかリスキリングみたいな話が企業内というよりは一つの市場で行われるだろうし、あとは雇用が流動化することが大前提だから、今まである制度で変なものは変えなければいけない。例えば有休とか、8年ぐらい勤めたら20日だった有休が転職したら10日になってしまうとか、私的には意味不明なのです。そういうのはありますね。転職することが前提とされていない労働規制などもあるし、そこも考えなければいけないのかと思います。
あとは、解雇の話をすると、企業の広範な配転権を制限するのであれば、それは当然、解雇の権利はもう少し緩めないと、会社はにっちもさっちもいかなくなってしまうと思うのです。配転もできないし、解雇もできないとなったら、それこそ成長分野に人員を置けなくなってしまうので、そうすると、解雇規制を一定程度緩めるのだろうというイメージが当然あります。
ただ、解雇というのは結局、収入がなくなってしまうという話だから、一定程度の金銭補償は当然あるべきだし、失業保険も当然あるし、あとは、そのようにキャリアを自律的にやるのだということになると、解雇に対するスティグマは当然下がると思うのです。今はもう、解雇されてしまうとすごく大変という感じです。でも、例えば、外資系の金融機関をやっている人などは、この間解雇されてしまってみたいな、RIFという言葉を使うのですけれども、解雇されてしまってとか言っていて、それが全然スティグマにもなっていないから、私がイメージしているところはそういうことであって、単にいたずらに解雇規制を緩めろということではなくて、労働者の自律性をもっと高めるべきなのではないかということです。
労働時間の話もすると、確かに今、長時間労働の話があるから客観的に把握することが重要だということは分からなくはないですけれども、今の厚労省のやり方だと、例えば、リモートワークの時にも客観的に把握しなければいけないという話になっているから、PCのログイン、ログアウトとか、ワードをいじっている時間を客観的にデータで集めて、何時間働いているかをやらなければみたいなことで、それもまた労働者の自由と少し違うのではないですかということです。
例えば、外資系の会社であれば、お昼休みなどを何時に何時間とっても誰も別に目くじらを立てないけれども、日本の会社だとみんなが11時45分になって出ていって、エレベーターが渋滞してしまって、みんな1時になると潮が引くように帰っていく。それ自体が異常なのかと。何時にお昼を食べようと、その日に何時間お昼をとろうと、それは労働者の自由なのではないかというところもあるので、どれだけ会社が管理して、兵隊みたいに労働者を使うのか、労働者がどちらかというと自律してやっていくのかという、そこの視点かと私は個人的に思っています。
そういうことになってくると、今度は労使の対話の話で、労使間の対話はすごく大事だと私は思っているのですけれども、雇用が流動的になってくると、当然企業内組合では対応し切れないところもありますし、組織率も下がっているし、それが上がる兆候は多分ないと思うから、新たな労使関係の対話の、集団的労使関係という意味ですけれども、プラットフォームというのも考える必要があるかと思います。
以上、少しまとまりのない話でしたが、以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
武田委員、お願いいたします。
○武田委員 ありがとうございます。
本日まとめていただいた内容については、大きな違和感はございません。その上で意見を述べさせていただきます。いただいたお題ですと労働者、使用者、労働政策審議会の三者で検討すべき課題は何かということですが、三者に求められる共通事項は危機感だと思います。
日本は、いろいろな指標がありますが、端的に分かる指標のIMDの世界競争力ランキングについて申し上げると、90年代初頭には1位でした。それが今では34位です。変化に適応できなかった結果として、現在の順位だと思います。
確かに変化に適応できない方々がいらっしゃることは考えられ、そこへのセーフティーネットは十分必要と思います。しかし労働政策の変化のスピードを遅くすれば、全員で沈んでしまうと思います。結果的に、皆さん御存じのとおり30年間賃金は横ばいなのです。これはグローバルでは本当に異常な、いびつな構図です。その危機感をもっと持たなければいけないと思います。
1点目、まず変わるべきは企業であると思います。もちろん、企業の中でもヒアリングをさせていただいたとおり、とても前向きに取り組んでいらっしゃる企業はたくさんいらっしゃるので、全ての企業がと申し上げるつもりはございません。しかし、全体として見ると、この30年、人材投資をコストとして捉えて、無形資産投資、あるいは、非財務価値を高める意識が乏しかったと思います。
まず、やるべきこととしては、無形資産投資や非財務価値を見える化していくことが必要と思います。そのためには経営戦略を示しそれに人材戦略をどう連動させるのかを従業員にしっかり伝え、こういう方向性に向かうのだから、こうしたことを学んでほしいと伝えていく努力をしなければいけないと思います。
学んだことに対する価値、身につけたスキルに対して対価を払う。そして、役割にも賃金をしっかり払うことによって、学び直しやスキル習得のインセンティブを高める。そのインセンティブが高まれば新しい事業開発が進み、ビジネスも広がり、結果として企業にもリターンが返ってくる。そういった循環をつくる必要があると思います。
日本は全体として雇用を守るということは確かに重視されてきましたが、それは既に雇用された人を守ったのであって、その結果、次世代で就職氷河期を招き、非正規雇用を増やしてきました。加えて、格差は確かに問題ですが、逆にスキルを身につけようが身につけまいが、一律の人事制度で行った結果として、賃金カーブを見ても、年齢では正の相関がありますが、スキルや新しいことへの挑戦に対しての対価がほとんど払われない。スキルに基づく賃金カーブを弊社で計算しますと、アメリカでは正の相関があるのに対して、日本は無相関です。これを年齢に置き換えると、きれいな正の相関がございます。ここは見直していく必要があると思います。
米国のような超格差社会は避ける必要がありますが、一定程度のスキルあるいは学び直したことによる価値に対して対価を支払っていくことができれば、日本の雇用者報酬はマクロ全体で1.3倍になるという試算をしています。
企業は苦しいのではないかという議論はあり、そういう企業がいらっしゃるのは事実だと思いますが、マクロで見れば、現預金が300兆円に達しています。
30年間賃金が横ばいの中で、この金額は、私は世界的に見ても異常な、いびつな構造にあると思っており、そこを変えていく必要があります。価値へ対価を払う関係は大企業と下請企業との取引も同様で、価値が払われなければ下請企業としては賃金を支払うことができない。そのため賃金が上がらず、値上げもできない。値上げができないから、低インフレで日本は続いてきたということです。
しかし、現在はコストプッシュのインフレで、それに耐え切れず値上げされる企業も出てきており、消費者の間でも、価格が上がる時代が来たという意識を持たれた方はいらっしゃると思います。そうした中で賃金を上昇させることは、DX、GXという時代の変化に適応していくことのみならず、コストプッシュインフレを乗り切るためにも、価値に対価を払う、人的資本に投資することを徹底するというメッセージが必要なのではないかと思います。
2点目、一方で働く側に対しても、課題はあると思います。以前この会議でも申し上げたかもしれませんが、他社によるグローバル調査では、日本の働く方々へのアンケートとして、将来の仕事を心配している方々の割合は約70%です。一方で、学んでいる方はという質問に対しては、世界で一番低く7%です。インドや中国では3割になります。
先ほど山川委員もおっしゃいましたが、自律的にキャリアを形成していく意識が、長年の関係の中で薄れているのではないかと思います。本当についていけない方たちのセーフティーネットは確かに要りますが、もう少し働く側の自律的な姿勢、自律的にキャリアを形成していくことをセットで考えていく必要があると考えます。
長時間労働は是正すべきですが、多様な働き方を要求する一方で、学び直しをしない、自律的なキャリア形成をしない、企業が守ってくれる、だから求めることだけ求める。それでは企業も従業員も一緒に沈んでしまわないかという危機感があります。
最後に3点目は行政です。ハローワークなどでの訓練や、学び直しの訓練など、行政はやることをおこなってくださっていると思います。一方で、ミッドキャリアの学び直しについて、大学や企業との連携、カリキュラムの民間との連携、そして、変化に適応して、スピード感を持って見直していく。そうした点は努力が要るように思います。例えばシンガポールなどではコロナ禍の間にミッドキャリアの支援プログラムをかなり充実させ、これはIBMなど、民間企業と連携して行っていると聞いています。
また、転職者に不利な制度を徹底的にやめてほしいと思います。先ほど山川委員が有休の話をおっしゃいましたが、日本の制度は転職すればするほど不利に置かれます。特に退職金です。ミッドキャリアで転職すると退職金がもっとも低くなるという経産省の試算があり、これでは前向きにポジティブに動こうとする気持ちをとどめてしまいますので、そこは直していく必要があると思います。
政府としてできることとしては、退職金税制の見直しに加え、厚生労働省の労働政策審議会から、企業に対して転職に不利な制度をやめることを働きかけることが必要ではないかと考えます。
長くなりましたが、以上です。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
まだ時間はたっぷりありますので、ほかにどなたかございますでしょうか。
皆様方の御意見を伺っていると、今回の報告書の中で言うかどうかは別だと思うのですが、ジョブ型という言葉をもうちょっと明確にしていくというか、この審議会としてジョブ型というものをどのように捉えているのかというところを多少明確にしていかないと、ジョブ型というと、一部のコンサルがやっているように、海外、特に米系の、アメリカの企業でもほとんどやっていないようなジョブ型の事例を出されるコンサルが多くて、そういうものが流布していくから、企業としては怖いのだけれども、曖昧な気持ちになるのだと思うのです。ですから、皆様方のお話を伺っていて、そこの部分が一つあるかと思いました。
2番目は、リスキルという考え方は、もう一企業の問題ではないのだと思います。つまり、社会全体でリスキルをどうやっていくのかという視点に移っていくことが必要で、海外はほとんどそうやっているのです。極端に言えば、日本の人材育成というのは、戦後ずっと企業に頼ってきた部分がかなり強いのですけれども、そうではなくて、人材育成というのは社会の責任なので、社会として人材投資をどうやっていくのかという視点も、今は人的資本経営みたいな議論の中で、企業の視点が重要だと言われていますけれども、一つは、社会としてどうやってリスキリングを進めていくのかという視点が必要だろうと思いました。
3点目なのですけれども、これは皆様方が言われていたことなのですが、働く人たちが自律的にキャリアを歩んでいく世界をもっと真剣に、日本の企業というか日本の社会全体で考えていかないと、先ほど武田委員が危機感という言葉を最初におっしゃいましたけれども、もう未来がなくなってしまうような危機感を最近は抱いています。
余談になりますけれども、昨日うちの大学の授業で、学生たちにキャリアアンカーの中で何が大切ですかと聞いたら、キャリアアンカーは8つあるのですが、安定とワークライフバランスの2つが重要だというのがすごく出てきて、例えば、イノベーションを起こします、経営者になります、管理職になりますというポジティブな回答をした子は、それでも4割ぐらいはいたのですけれども、6割がワークライフバランスとか安定を望みますということが出てきてしまっているので、今のままで放っておくと、こういう議論はいつも大学に返ってきて、あなたがやっていないから世の中が変わっていないのだとよく言われてしまうのですけれども、大学を変えていくということも含めて、今のままでやっていくと、キャリアというのは企業に預けておけばうまくいくのだという感覚が日本の社会で蔓延しているように思います。もちろん、そうではない、自分ですごく苦労されている方もたくさんいらっしゃるというのはよく知っているのですけれども、そういう部分を自律的なキャリアを歩んでいくという方向で変えていかないと、なかなか日本の社会というのはよくなっていかないのだろうと思います。
あと、これは岡本委員なども言われた話に関連するのですけれども、格差というか、正規、非正規の分かれ方というのはひどいというか、もう手をつけるべき時代のように思っています。非正規の働き方がかなり増えてきたのは、結局、それによって企業に対してある程度低コストの労働力を提供して、それで企業が、バブル経済の崩壊であるとか、リーマンショックであるとか、その辺から戻ってくるという部分では、それが結果としていいことかどうかというのは歴史が判断する部分だとは思いますけれども、ある程度機能していたように思うのです。だけれども、その働き方が区分されているということが、逆に言うと様々な問題を起こしています。例えば、非正規から正規へ動けないとか、就職できなくて非正規になってしまった人たちが正規になれないとか、そういう問題が多く起こっていると思います。さらに、最近はそれにプラスアルファでフリーランスの問題が出てきて、それが非正規のさらに外というか、さらに弱い立場の労働者が出てきてしまっているので、社会としての労働区分というか、そういうものをもうちょっと見直していく。具体的に言えば法律を変えるとかいろいろあるのでしょうけれども、そういう時代に入ってきているのだろうと思いました。
ですから、それをどの程度のタイムスパンでやっていくのかということも考えた上で、ここの部分は武田委員と非常に共感するところがあるのですが、いろいろな講演とかでも申し上げているのですけれども、このままで行くと日本は駄目になると思っていて、ですから、先ほど中野委員が言われた社会保障とかの問題も含めて、ドラスティックな転換を比較的短期間で起こしていかないと、日本の社会全体がおかしくなってしまうということも含めて、今、言ったようなポイントを、ほかにもあるのかもしれませんけれども、やっていくというのは重要ではないかと思います。
あと、言い忘れましたけれども、春川委員が言われたことで1つ感動したことがあって、労働移動というのは実はポジティブであるべきなのだということをおっしゃったと思うのです。そのとおりなのです。要するに、先ほど山川委員が首になったということが全然スティグマにならないのだとお話しされていて、それは労働移動のチャンスなのです。ほかのところに、もっといいオポチュニティーに行けるチャンスなので、そういう意味では、私が大学を出た頃は転職するというのはマイナスのスティグマが貼られた時代だったのですけれども、もっとポジティブな転職ができるような社会にしていくというのが重要だと思いますので、そういう点も含めて、さらに、何度も申し上げますが、それを比較的短期間でやらないとまずいのです。
特にDX、GXというものを海外はどんどん進めているわけなので、そういうところが進んでいる中で、日本がさらに、先ほどIMDで34位というお話がありましたけれども、もしかしたらどこかの段階でそのランキングにも入らないような事態になってくるのではないかと個人的には思っています。ですから、今言ったようなことも含めて、できれば少し大きなメッセージを出したいという感覚です。皆様方のお話を伺っていて思いました。
座長があまりしゃべってはいけないのですけれども、何かほかに御意見がおありになる方はいらっしゃいますでしょうか。
それでは、事務局からお願いします。
○蒔苗政策統括官付参事官 今日は御議論をありがとうございました。フリーディスカッションだったので、予想を超える、視野が広がるような御議論もございました。
今日は御欠席の方もいらっしゃいますので、今日の議論を我々で整理しながら、御欠席の方も含めてもう一回皆さんと御相談しながら、次回、次々回に向けて資料を整理していきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○守島部会長 それでは、これで閉じてよろしいですかね。まだ時間はあるのですけれども、今日は御出席の方が多少限られているということもありますので、これで本日の議論は終了させていただきたいと思います。皆様方、活発な御議論をどうもありがとうございました。
最後に、事務局から、次回の日程について御案内をさしあげます。
○古屋政策統括官付政策統括室労働経済調査官 御議論をありがとうございました。
次回の日程については、調整の上、追って御連絡いたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、以上で本日の労働政策基本部会は終了とさせていただきたいと思います。
皆様方、御多忙の中、御出席いただいて、どうもありがとうございました。