薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和3年度第4回運営委員会議事録

日時

令和4年2月9日(水)16:00~18:00

開催形式

Web会議

出席者

出席委員(6名):五十音順、敬称略 ◎委員長




国立感染症研究所:敬称略
 
  • 水上 拓郎



日本血液製剤機構:敬称略
     
  • 廣田 年展
  • 津田 昌重



日本赤十字社:敬称略
     
  • 佐竹 正博
  • 皆川 信也
  • 後藤 直子



事務局:
 
  • 渡辺 顕一郎  (血液対策課長)
  • 菅原 高志   (血液対策課長補佐)
  • 佐野 圭吾   (血液対策課長補佐)

議題

  1. 1.感染症定期報告について
  2. 2.血液製剤に関する感染症報告事例等について
  3. 3.採取したNAT陰性の血漿の取扱いについて
  4. 4.各調査会の審議結果について
  5. 5.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 


○佐野血液対策課長補佐 少し早いのですが、委員の先生方が皆様揃われましたので、ただいまより血液事業部会令和3年度第4回運営委員会のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。本日のWeb会議における委員の出席についてですが、委員の先生6名全員に御出席いただいていることを御報告いたします。本日は参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部より、水上拓郎第一室室長、日本血液製剤機構より、廣田年展事業戦略部長、津田昌重執行役員経営戦略部長に御出席いただいております。
 また、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博中央血液研究所所長、皆川信也経営企画部次長、後藤直子技術部安全管理課長に御出席いただいています。
 続いて、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解・御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 続いて、本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見・御質問をされたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後委員長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 なお、発言者が多くなり音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は委員長からお願いする場合がございます。その場合には記入されたメッセージに応じて、委員長より発言者を御指名いただきます。また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がございますので、御了承いただければと思います。
 間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは以降の進行を、多野﨑委員長にお願いいたします。 
○田野﨑委員長 皆さんこんにちは。聞こえますでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 聞こえています。
○田野﨑委員長 そうしましたら、これまでの御説明に何か御質問とか御意見がありましたら、お願いいたします。皆様問題ないようであれば、議事に入りたいと思います。本日私は遠隔より入らせていただいていますので、途中お聞き苦しい点などありましたら、御指摘いただければと思います。
 そうしましたら議題1、感染症定期報告について、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局でございます。資料1-1及び1-2をお手元に御用意ください。まず1-1なのですが、こちらはまず感染症定期報告と外国症例報告一覧となっていまして、まずは感染症定期報告のほうから御説明します。
 表紙を1ページめくっていただいて1ページ目、こちらですが、令和3年9月から令和3年10月まで、PMDAに提出された感染症の研究報告の一覧となっています。こちらに提示されています8報の報告がこの期間でなされていまして、順に私のほうから御説明いたします。
 まず、1番の報告と2番の報告は、新型コロナウイルスの報告となっておりまして、まず1番目の報告は2020年3月7日から9月25日に採取されましたドナー血液のミニプールにおけるSARS-CоV-2RNA陽性率を調査したところ、約25万8,000のドナー血液に相当する1万7,995のミニプールのうち、16名のドナー血液から構成されるミニプールの3件が陽性であったというものでした。その結果、献血血液10万件中1.16件がSARS-CоV-2RNA陽性であったと推定され、SARS-CоV-2RNA陽性検体は抗SARS-CоV-2抗体が陰性であり、ウイルス量は1,000未満から4,000copies/mL未満であったと推定されています。また、培養細胞における実験の結果、感染性は観察されなかったとも報告されています。
 続いて2番目の報告になりますが、こちらは献血後に症状が現れSARS-CоV-2陽性と判定されたドナー血液由来の血小板製剤又は赤血球製剤を投与された血液悪性腫瘍患者7例について、輸血後の感染の有無を報告したものとなっています。7例中6例については輸血後に鼻咽頭スワブがSARS-CоV-2陰性であり、感染を認めませんでしたが、赤血球製剤を投与された外来患者1名については、輸血後2日後に鼻咽頭スワブがSARS-CоV-2陽性であったと報告されています。
 当該患者に投与された赤血球製剤のドナーは、献血後10日目にCOVID-19様症状(発熱及びインフルエンザ様症状)を呈し、当該ドナーは発症後1か月後に受けた検査はSARS-CоV-2陰性であり、2か月後に受けた検査で抗SARS-CоV-2核たん白抗体も陰性でした。なお陽性となった受血者の方ですが、こちらは外来患者で、市中で感染したことも考えられるという報告となっています。
 続いて3報目ですが、こちらは2021年3月にフロリダ大学の研究者が2014年から2015年にハイチで発熱した3人の子供の血液から、ヒトに感染するブタデルタコロナウイルスを初めて検出した報告となっています。研究者たちは血清サンプルをサルの細胞に移し、既知のブタデルタコロナウイルスと遺伝的に一致するウイルスを増殖させたと報告されています。
 続いて4報目ですが、中国において鳥インフルエンザAのH10N3型ウイルスによる初のヒト感染症例が認められた報告となっています。
 5報目はアラスカからの報告となっていまして、2例の患者さんが天然痘、サル痘及び牛痘と同属に由来する、最近発見された種でありますAlaskapoxウイルスの3例目、4例目と診断されたという報告となっています。初めの2例は2015年と2020年に確認されましたFairbanks地域の住人で、腕に同様の病変を認めたという報告となっています。全4例中3例の患者がネコを飼っていて、ネコが当該ウイルスの中間宿主の役割を果たし、本ウイルスをヒトに感染させる可能性があることに言及されています。
 続いて6報目ですが、こちらはロシアの専門家が発熱症状を引き起こす新しいウイルスを発見し、Manychと名付けたという報告となっています。このウイルスはクリミア・コンゴ出血熱が確認されたロストフ州の医療機関において、ヒトの血清サンプルから発見されたことが記載されています。
 続いて7報目なのですが、こちらは重症熱性血小板減少症候群の報告となっていて、原因不明の発熱患者を対象とした遡及調査により、関東地方で初めて重症熱性血小板減少症候群ウイルスによる感染が確認されたという報告となっています。
 最後8番目は、クロイツフェルト・ヤコブ病の報告となっていて、英国において血漿を使用した血漿由来の製造禁止措置の解除によるvCJD患者の増加リスクが検討されました。数学的に予想される将来のvCJD臨床例の数は、評価されたほとんどの製剤で1から2例以下と推定されていて、その他の製剤では新鮮凍結血漿輸血で今後50年間に予測される15例の臨床例と、ほぼ同程度となっていることが報告されています。
 また、このレベルのリスクは新鮮凍結血漿輸血については許容可能と考えられていまして、以前実施されていたリスク低減措置は撤回されているという形となっています。結論として、ヒト免疫グロブリン製剤の製造に英国の血漿を使用しても、将来的なvCJDの追加リスクはない、又は最小限に抑えられていると考えられると報告されています。
 続いてめくっていただいて、外国症例報告一覧に移ります。こちらも令和3年9月から令和3年10月までの受理分となっていて、表紙をめくっていただいて1ページ目にまとめが記載されていますが、今回はCSLベーリング株式会社から8報、症例としては7報の報告がなされています。全てにおいて因果関係が肯定されたような症例はありませんでした。
 資料1-2については、研究報告一覧の詳しい論文となっていますので、また御覧いただければと思います。資料1-1及び1-2についての御説明は以上になります。田野﨑先生、よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 御説明どうもありがとうございました。2か月間で8報ということで、少し輸血に関連深いものもありますが、ただいまの説明について水上参考人から追加で御発言等お願いできればと思いますが、よろしくお願いいたします。 
○水上参考人 国立感染症研究所の水上です。本日はよろしくお願いします。今回の感染症定期報告ですが、文献1から3と文献8についてコメントしたいと思います。まず文献1から3ですが、新型コロナウイルスについてです。皆様御存じのとおり新型コロナウイルスは、コロナウイルス科コロナウイルス亜科ベータコロナウイルスに属するエンベロープを有する一本鎖RNAウイルスで、2019年に中国で発見され全世界に感染拡大し、現在も様々な変異株が出現しています。主に飛沫、接触感染により伝播しますが、一部の感染者におきまして血中にRNAが存在することが報告されています。
 文献1では米国における2020年3月から9月までの間に採取されたドナーの血液ミニプールにおけるSARS-CоV-2RNA陽性率を、グリフォルス社のTMA法によって検査した結果が示されています。約25万8,000人のドナー血液に相当する1万7,995ミニプールのうち、16名のドナー血液から構成される3件のミニプールが陽性であったという報告です。陽性検体は抗SARS-CоV-2抗体が陰性であり、培養細胞を用いた感染性の確認試験の結果、感染性は確認されておりません。
 文献には、献血後にSARS-CоV-2を発症したドナーから血小板、赤血球輸血を受けた血液悪性腫瘍患者7例の解析結果の報告で、受血者1例におきまして陽性が認められたという報告です。当該1例におきましては、献血者はCOVID-19様症状を有していましたが、いずれの検査も陰性で実施時期が適切でなかった可能性が示唆されています。一方、受血者も外来患者で、市中感染した可能性があり、輸血感染疑い症例としては確度が低いものと想定されます。
 血中のウイルス核酸については、大規模調査の報告により感染性が低い、ないことが次第に明らかとなりつつあります。また献血者にCOVID-19を発症した人から輸血事例の解析により、輸血による感染も生じていないことが確認されています。しかし、まだ症例が少ないこともあり、引き続き情報収集を行うとともに、変異等によりウイルスの体内動態、感染性、病原性等に変化が生じる可能性もありますので、引き続き注視が必要であると考えます。
 文献3はPro-MEDmailの報告で、米国オハイオ大学から過去にマレーシアにおいて肺炎で入院した子供の保存検体から、イヌ由来のアルファコロナウイルスが確認され、詳細なゲノム解析によりイヌ由来、ネコ由来、ブタ由来のTGEVのゲノムが混在し、子供の体内でシャッフリングされている可能性を示唆する報告がなされたものが引用されています。また、フロリダ大学からは過去にハイチで発熱した子供の血液検体より、初めてヒトに感染したブタデルタコロナウイルスが検出・分離され、同一遺伝子を持つウイルスが複製されたことが報告されています。いずれの報告も、動物由来のコロナウイルスがヒトへ感染した事例を示しておりますが、現時点でヒトの疾患との間の明確な関連性は認められておりません。こちらに関しましても引き続き情報収集を行い、注視する必要があると考えます。
 最後、文献8はクロイツフェルト・ヤコブ病に関してです。英国MHRAからイギリスの血漿由来免疫グロブリン製剤におけるvCJDのリスクアセスメント報告が2021年4月になされ、製品によって異なるものの、通常の免疫グロブリンでは1回の最大投与量100万人当たりの感染リスクは0.0007から324、臨床例のリスクは0.00005から24、特殊免疫グロブリンにおいては感染リスクは0.0000045から0.0009、臨床例のリスクは0.0000003から0.00007ということで、英国ドナー由来の血漿から製造されたヒト免疫グロブリン製剤におけるvCJDのリスクはほとんどないか、最小限に抑えられている結論でした。
 英国においてvCJDの感染の危険性から1999年以来、英国の血漿を使用した血漿由来製品の製造が禁止されていますが、製造業者、患者会、政府機関を含む関係者との協議によって、禁止措置の必要性を検討する時期であるという合意が得られているとのことです。今後このレポートに基づいた英国の対応を検証するとともに、日本におきましても海外渡航歴のある方の献血制限措置について、妥当か検討する必要があると考えられます。コメントは以上となります。
○田野﨑委員長 水上参考人、どうもありがとうございました。そうしましたらほかの委員の皆様から、コメント、質問などありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。新型コロナウイルスは積極的に感染性を示すものではないというのが、1番目、2番目だと思うのですが。岡田委員お願いします。 
○岡田委員 埼玉医大の岡田ですけれどもよろしいでしょうか。新型コロナに関しては、これまでの報告を更に補うような報告で、やはり輸血による感染というのはリスクとしてはあるものの確認された例がないということを示しています。2番で、献血後に発症した方の血液を輸血された方が感染したかどうかを示すときに、ついつい輸血関係者は血液中から病原体を検出しようと思うのですけれども、COVIDに関しては咽頭のぬぐい液を使って判断をしないと、正確には分からないと思いますので、もし献血者が献血後に発症した場合、その血液を輸血された患者さんは咽頭ぬぐい液で感染の有無を測定することが重要だと思います。
 2番目ですけれども、7番目の重症熱性血小板減少症候群ウイルスは、これまで西日本で主に感染者が確認されていたのですけれども、今回千葉県で感染が確認されて、地名を言って申し訳ないのですけれども、千葉県房総半島というのは非常にダニ媒介の感染症が多いのです。これまでも日本紅斑熱とか、つつが虫とか、幾つかそういうのが報告されています。そういう丘陵地帯だと思うのですけれども、そういう所にハイキング等に行った時にはダニに噛まれる可能性があるということで、草の上に座ったりするとダニに噛まれる可能性がありますので、シートを敷くなり、ダニが嫌がるような散布する薬もありますので、そういう物を散布してから座るとか、対策が必要だと思います。
 最後にvCJDですけれども、これは2000年前後に英国では発生がピークを迎えて以後激減しています。ここ数年は1人発症するかゼロかというのが続いていますので、疫学調査ですと発症するというか、キャリアの人が2,000人に1人と推定されています。現実的に発症する方が非常に少ないということと、キャリアの方の血中に感染性の異常プリオンが存在するという報告もありますけれども、実際に発症する人が少なく、リスクをもう一回評価する時期になっているということで、今回の報告になっているのだと思います。
 我が国は大分厳しい海外渡航歴がありますけれども、やはり未だに加算されている国もありますので、ちょうど米国においてもイギリス、アイスランド、フランス以外の国に関してはもう献血制限はなくしていますので、我が国においても再評価する必要があるかと思います。以上です。
○田野﨑委員長 岡田委員、どうもありがとうございました。ほかの委員の先生方、何か御発言ありますでしょうか。濵口委員どうぞお願いします。
○濵口委員 濵口です。ありがとうございます。7番の先ほど岡田先生も指摘されたSFTSVについて、日赤の御対応をお聞きしたいのですけれども。これまで九州、中国、四国、この辺りの所で患者さんが発生しているということだったと思いますが、血液中のウイルスの存在だとかということもあって、やはり輸血に関連してもう少し気を付けておく必要があるのかなと思います。これについての日赤の現在の対策というか、起こった時にどうするかというようなことについて、御説明いただければと思います。以上です。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。日本赤十字社からいかがでしょうか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 日赤の佐竹です。これについては、大分以前にこの会でも御紹介したのですが、我々も関心を持っていまして、当時一番症例数の多かった中国、四国地方におきまして、一番その辺の山の多い地域ですが、3,990人、4,000人近い献血者の方をアトランダムに選んで、抗体の測定をしています。抗体は全員陰性ということで、一応その地域において、4,000人であってもばく露された方はそこにはいなかったということで、それが基になりまして、今のところは血液の安全性については、スクリーニングまでいく必要は少ないのではないかと、現在は考えています。これはパブリッシュされていますけれども、そのようなデータがあるということです。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。以上よろしいでしょうか、濵口委員。
○濵口委員 はい、ありがとうございます。ただ、感染の範囲というのがこれまで西日本と言われていたのが、少し広がりつつあるということもありますので、また時期が来たところで必要に応じて調査をしていただければと思います。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほかの委員の方から御質問、御意見よろしいでしょうか。そうしましたら事務局においては、今後も感染症の定期報告をお願いします。
 続いて議題2、血液製剤に関する感染症報告事例等についてに移りたいと思います。事務局より資料の御説明をお願いします。
○佐野血液対策課長補佐 資料2-1及び資料2-2を御用意ください。まず、資料2-1から説明いたします。こちらの資料は「血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について」となっていまして、令和3年9月から令和3年10月までに報告されたものとなっております。
 1ページ目を御覧ください。当該機関に報告された感染症報告は、輸血用血液製剤が8件、血漿分画製剤が4件でした。うち、輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告や血漿分画製剤との因果関係が否定された報告はございませんでした。輸血用血液製剤による病原体感染症報告事例の内訳についてです。HBV、HCVはともに1件、HIVはございませんでした。その他として6件で、内訳はサイトメガロウイルス感染が1件、細菌等が5件という報告がされております。
 続いて、HBV感染及びHCV感染の報告事例に移ります。ともに輸血後に抗体検査等が陽性であった事例で、1件ずつとなっております。また、献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例はありませんでした。劇症化や輸血後に死亡した症例はございませんでした。先ほども御報告いたしましたが、HIVの感染の報告事例はありませんでしたので、輸血後に抗体検査等が陽性であった事例はありませんでした。その他の感染症報告事例としては、B型肝炎及びC型肝炎以外の肝炎ウイルスの感染症報告事例は0件となっておりました。また、細菌等の感染報告事例において、当該輸血用血液の使用済みバッグを用いた無菌試験が陽性となった事例はございませんでした。また、輸血後に死亡したとの報告を受けた事例はございませんでした。2ページから4ページに、各症例の概要をまとめておりますので、また御覧いただければと思います。
 続いて、資料2-2に移ります。こちらは「供血者からの遡及調査の進捗状況等について」という資料です。1ページ目に記載されているのは、供血者から始まる遡及調査の実施状況です。今回は一番右側に記載されている令和3年4月1日から令和3年10月31日までの速報値について御報告いたします。
 まず、(1)遡及調査実施内容についてです。マル1調査の対象とした献血件数は、総数で1,249件でした。内訳としては、HBVが1,137件、HCVが99件、HIVが13件となっております。また、調査の対象とした献血のうち、調査の対象とした輸血用血液製剤の本数としては、総数として1,372本、個別本数としてはHBVが1,240本、HCVが117本、HIVが15本となっております。また、調査の対象とした輸血用血液製剤のうち医療機関に情報提供を行った本数としては、総数が1,065本、個別本数としては、HBVが934本、HCVが116本、HIVが15本となっております。
 続いて、(2)個別NAT関連情報に移ります。遡及調査対象のうち、個別NATの結果が陽性となった献血件数は、総数としては1件で、使用された本数も1件となっております。マル3ですが、医療機関へ提供された製剤のうち、受血者の情報が判明した件数は1件で、非陽転事例は1件であったことが報告されております。
 続いて、2ページ目に移ります。医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収状況についてです。こちらも令和3年9月から令和3年10月までの回収状況を記載しております。以下に示している14本の製剤が回収されております。資料2-1及び資料2-2の御説明は以上です。
○田野﨑委員長 委員の皆様から、何か御質問、コメントはありますでしょうか。確実に重篤例がなかった、感染が証明されたような事例はなかったということです。よろしいでしょうか。これからE型肝炎の遡及が実際に進みますと、この表の中にE型肝炎のものも入ってくるということで、よろしかったでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 そのようには考えております。ただ、その時期については、また検討させていただけたらと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○田野﨑委員長 そうしましたら、事務局においても今後も感染症症例や遡及調査結果の報告をお願いいたします。
 続いて、議題3に移ります。採取したNAT陰性の血漿の取扱いについてです。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 資料3を御用意ください。こちらは採取したNAT陰性の血漿の取扱いについてということで、資料4-1から一部抜粋しております。内容としては、令和4年1月12日に開催された、令和3年度第5回安全技術調査会の議題1の審議内容となっております。
 まず、議事概要について御説明いたします。昨年9月に、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインを改正したこと等から、日本赤十字社では、献血血液のスクリーニングにおいてNATが陽転した場合に、それより過去に採血された同一献血者の血漿について、原料血漿及び輸血用血液製剤としての供給を停止しているところです。この度、日本赤十字社より血漿分画製剤の安全対策に係るエビデンス等に基づき、献血者の思いを無駄にしない観点からも、従前どおり血漿を血漿分画製剤の原料血漿に有効利用したい旨の提案がなされました。その提案について、委員の先生方より、日本赤十字社の提案が了承されているという形になっております。
 委員の先生からの主な御意見としては、「血漿分画製剤による感染は、直近の15年から20年程度にかけて1例も報告されておりません。また、平成15年11月7日付け4課長通知の「血漿分画製剤のウイルス安全対策について」が発出された時期と比較しても、現在、混入し得るウイルスの量は2Log又は3Log程度減少している。このことから、安全性は非常に高くなっていると考える」との御意見を頂いております。
 安全技術調査会に提出された資料について、軽く説明させていただきます。資料3の2ページ目については、全体的に私が今御説明した内容が記載されております。3ページの「注」を御覧ください。令和3年9月22日に開催した令和3年度第2回の運営委員会では、血清学的検査陰性ОBIの話題の中で、献血者がHBV陽転し、遡及調査期間を越えているが、貯留保管中のFFPが原料血漿に使用される対象の本数について質問があり、日本赤十字社からは、年間10数本とお答えしたということが記載されています。
 4ページ目を御覧ください。ただ、HBV、HCV、HIVの血清学的検査若しくはスクリーニングNAT陽性の方の血漿を使わないと試算した場合は、年間で最大献血者約3万2,000人分の血漿が利用できなくなる結果であるということが、日本赤十字社から報告されております。資料3についての御説明は以上です。
○田野﨑委員長 委員の皆さんから、何か御質問、コメントはございますでしょうか。NATが陽性になって、これを遡って、NAT陰性であったタイミングでの血漿を使わないとされてしまっているところを、以前のように、これを血漿分画製剤等に使えるようにしたいということについての審議です。
○武田委員 よろしいでしょうか。
○田野﨑委員長 お願いします。
○武田委員 御説明いただいきありがとうございます。安全技術調査会でこうした議論がされて、安全については問題がないという話がされたと伺ったところです。ちょうど今、平成15年の4課長通知の話が出たところなので、この経緯についても振り返っておきたいと思います。
 当時、この血漿分画製剤のウイルス安全対策についてということで、運営委員会、血液事業部会、安全技術調査会でも議論をされたところです。この同じ年の10月1日、血液事業部会運営委員会で、今後、この問題を検討していくに当たって、安全技術調査会に対して、こういった点に留意して検討してもらいたいという申し送りがされていました。その申し送りの中から、2点お伝えしたいと思っています。
 1点目が、諸外国における制度との整合性をきちんと検討していかなければいけないということです。1つ事務局に御質問なのですが、今回、諸外国における制度がどうなっているのかということについて、もし分かっているところがあれば教えていただきたいと思います。あと、安全技術調査会でも、その辺りについては触れられたのかという点について、お聞かせいただきたいと思います。いかがでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 今、武田委員からお話いただいたことについては、我々も整理中ではあります。安全技術調査会で、そこが明確に議論されたかについては、まだ整理はされていないというのが現状であると思います。
○武田委員 この安全というところで、諸外国の制度との整合性というのは、エビデンスを担保する1つの目安と言うか、外国の制度と比べてどうなっているのかというのは、非常に重要な視点だと思いますので、こうした点も踏まえて検討していただきたいというのが1点目です。
 もう一点です。先ほど申し上げた申し送り事項の中で、医療現場への情報提供や広報の在り方にも触れられていました。今回、B型肝炎について、輸血のほうで、これまでのガイドラインの中では大丈夫と言われていたものから感染が出てしまったときに、血漿分画製剤のほうも大丈夫なのだろうかということは、患者側にもそうですし、また、血漿分画製剤を使用している医療機関の医療者のほうからも、少しそういった不安の声は聞かれていました。製剤メーカーの中には、私たちの製剤は安全だということをすぐにホームページに記載された企業もあったのですが、一方でそれが日赤のほうからは、その情報提供というところでどうだったのかということを感じています。
 問題が出たときに、安全性についてどうなのかということを、医療機関に対してもそうですし、広く社会に対しても、どういったことがあったのかということをきちんとまとめて提示していただきたいと思っております。それをもって、こういったことで安全なのだということであれば、それを伝えていただいて、また一方、少しガイドラインと違ったものが出てきてしまったということであれば、一旦立ち止まって考えるべきではないかとか、そういった意見も、是非どんどん出していただきたかったなというところです。
 そういった点を含めて、日赤でも今申し上げた情報提供のこと、また、諸外国ではどうなっているかは国のほうでも調べていただくというのは当然のことなのですが、日本赤十字社でも諸外国でどうなっているかということも併せて考えていただければというように思います。
○田野﨑委員長 ほかの委員の先生方、御質問等がありましたらお願いいたします。
○濵口委員 濵口です。今の武田委員からの御質問について、きちんとした形ではレポートはありませんが、海外と日本での分画製剤の取扱いについて、少なくとも私が認識しているところを述べたいと思います。
 国内においては、日赤での個別NATという形で、かなり病原体のスクリーニングについては、諸外国に比べて高い精度で検査がされています。それでも陰性とまでは言えない部分が少なからず残ってしまうかもしれませんが、海外においては、必ずしも個別NATを導入した血漿を原料として行っているわけではないというところが、必ずしも一致していないのかなと思います。今回、NAT検査で陰性だった場合の血漿を使うと、材料としての安全性の観点から、かなり外国に比べても安全なものが使われていると考えられると思います。
 ただ、御指摘のように、NATで陰性と言っても、もしかすると検出限界以下のものが入っている可能性というのがあり得ます。これは人にそのまま投与された場合には、感染するリスクが少なからず残っている可能性がありますけれども、分画製剤を作る工程においては、様々な低減化が行われることを考えると、NAT検査で陰性、若しくは検出限界以下というものを材料に作った場合には、基本的に、理論的にウイルス安全性というのは非常に高いレベルで担保できているものと考えております。こうした見解に基づいて安全技術調査会の中では議論を進めたと思っております。
○田野﨑委員長 ほかに御発言はいかがでしょうか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。輸血用血液に関しては、不活化の工程が入っておりませんので、NAT陰性と言っても、NATの感度以下のウイルスが混入している可能性があります。その一方、分画製剤に関しては、1万人とか2万人の供血者の血漿を混ぜ合わせて作るということで、平成15年の頃には不活化工程を2つ入れるということと、その当時の混入するウイルスの量の最大を想定して、9Logであれば、たとえ混入していても最終製品まで感染を起こすようなことはないということを検討して、9Logということになりました。その後、NATが個別のNATになりましたので、混入するウイルスの量は、当然検出感度がよくなりますので、原料血漿に入るウイルスの量は2Logとか3Log低くなっていることは確実です。
 製造工程も、平成15年の頃というのは35ナノのウイルス除去膜を多くの企業が使っていたのですが、今では特殊な製剤以外は20ナノのフィルターを通しているので、たとえ入っていてもウイルスを除去する能力は向上しているということを考えると、NATで陽性であることが分かれば、それは使うわけにはいきませんが、NAT陰性である原料で作って、なおかつ製造工程で十分に不活化、除去できるということを考えれば、献血者の行為を無駄にしない、安全性のほうからは影響はまずないと考えられますので、原料血漿として使用するのは問題ないのではないかと思っています。
○田野﨑委員長 岡田委員に1つ確認です。欧米からということになりますと、今度はE型肝炎に関しては、B型、C型に比べてかなり頻度が高くなってくると思うのですが、こちらに関しても同じような考え方でよろしいでしょうか。
○岡田委員 E型に関しては、輸血用血液でスクリーニングを導入している国は、ヨーロッパでは数箇国あります。ヨーロッパですとSDプラズマと言って、FFPを50人とか100人ぐらいプールして、それでソルベントディタージェント、界面活性剤を処理して、それをまた分注して使うのですが、その製剤に関しては、SDは全然ノンエンベロープウイルスには効果がないので、パルボとE型肝炎とA型肝炎のウイルス検査は入っていると思います。分画製剤に関しては、今のところ規定はないと思いますが、各分画のメーカーは、ノンエンベロープのRNAウイルスのモデルウイルスを使って評価をしておりますので、そのデータが安全性を判断するには利用できるかと思います。それで、少なくともE型肝炎が輸血で問題になってから、血漿分画製剤でE型肝炎が起こったという報告はないので、今の各メーカー、各国で行われている血漿分画製剤の製法によって、E型肝炎も不活化、除去されているのではないかと考えております。
○田野﨑委員長 我が国では、アルブミン製剤は、かなり非献血の海外からのアルブミン製剤が使われているというのが実際にあると思いますので、それでお聞きいたしました。ありがとうございました。ほかに、委員の先生方から御質問はありますでしょうか。
 あと、医療現場での広報の在り方に関してですが、過去に、実は陽性だったものの遡及で陰性だった血漿を使うということになると、いろいろと説明も必要なのではないかと思いますが、日本赤十字社におかれましては、この辺について別途御検討されているようなことはございますか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 それはHEVに関してのことでしょうか、それともほかのEやCやIのことでしょうか。
○田野﨑委員長 今回、NAT陽性だった方を遡って、NAT陰性の血液を使うということになりますと、その中には実際にはウイルスが混入している可能性が否定できないわけですけれども、それを今使っていないところを、実際にはこれからは分画製剤として使っていくということに関して、今までは国民の皆さんはそういうことは知らなかったということになっていたかもしれないのですが、今後は何か御説明について考えられていることがあれば、お願いしたいと思います。
○佐野血液対策課長補佐 先に私から御説明を補足させていただきたいと思います。もともと、そういった血漿は使用されていたと説明を聞いております。過去に1度NAT陽性になったものの、過去に採取されたNAT陰性血については、もともと使用されていたということになります。今回の遡及調査ガイドラインの改定のときに、こちらはどういう議論があったのかは詳細には忘れてしまったのですが、遡及調査の改定に従って、改定した部分で使用できなくなっていたというのが、私の認識です。
○田野﨑委員長 その点を踏まえた上で、今回このような議論がされているということが議事録などで公開されますし、今まで、実はよく知らなかったという医療従事者、私たちも含めて思っているメンバーはたくさんいるのではないかということも含めて、先ほど武田委員が懸念されていらっしゃいましたので、そこのところは丁寧に、慎重にやってもいいのではないかと考えたもので、そのように発言させていただきました。特に日赤のほうでは、今のところは御準備や検討をされているわけではないということでしょうか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 昨年の9月にこのガイドラインが修正されたときに、我々のほうで、血漿分画製剤についてこのように変わったということを全体にアナウンスするということはしておりません。ですので、今回、安全技術調査会運営委員会の決定でもって、そこを元に戻すという作業も発生しないことになるわけですが、正確に言えば、昨年の9月に一時的に日赤のほうで文面に沿って止めたわけですが、そのときに、時を移さずに医療現場にそのことを言うべきだったかもしれません。そのことについては時機を逸したことと考えられるかもしれません。
○田野﨑委員長 ほかの委員の方から、何かコメントなどはございますでしょうか。私からですが、再生医療の原料として、今、原料血漿あるいは原料細胞などを日本の中で供給することはなかなか難しいもので、いろいろな手段を講じて、そういう再生医療等製品や加工物を製造しているというのが現状であるわけです。その中で、例えばこれはウインドウピリオドのことも考慮した上で、安全な血漿を原料とする場合には、そういう原料血漿を使いなさいということにはなっているとは思います。ただ、そのときは2、3か月前、ウインドウピリオドということを考えて、そういうことを規定していることが多いと思います。実際に臨床研究などで、再生医療等安全確保法の下で、こういう原料血漿を何とか手に入れて、それでこれを製造に利用するという場合は、少し危険性が増えるのではないかと懸念するものなのですが、これについてはいかがなものでしょうか。お分かりになれば、どなたかお願いできればと思います。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 一言で言えば、我々のほうではそこまでは把握しておりません。ただ、例えば日赤のいろいろな血漿について、そのような再生医療を含めたいろいろな製品の製造のためにそれを使うこと自体が、これについては輸血用血液の適応外使用に関わってくるのではないか。10年以上前に問題になりましたが、そういうことになりますので、そういった輸血用のために使うのではなくて、何かの製造のために使うということ自体が、現在の適応から外れることになるのではないかと危惧いたします。
○田野﨑委員長 恐らく再生医療の現場では、私もかなりいろいろと再生医療に関わっておりますが、臨床研究になれば、特に厳しい規制が今のところはなくて、実際には海外から血漿を取り寄せて製造するというようなことで、細胞に関してもそういうことが行われている状況かなと思います。そういうので、少し懸念があるなと思いました。これについては引き続き検討していただければと思います。ほかに何か御意見等はありますでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局並びに日本赤十字社においては、引き続き海外における採取したNAT陰性の血漿の取扱いについて情報収集を行うとともに、必要に応じて報告をお願いいたします。また、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの改正に係る対応等をお願いしたいと思います。
 次に議題4、各調査会の審議結果についてに移ります。事務局より御説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 資料4-1について御説明します。こちらは令和3年度第5回安全技術調査会の審議結果についてまとめたものです。1ページ目を御覧ください。概要について御説明します。令和3年度第5回安全技術調査会が、こちらに記載している令和4年1月12日(水)16時~18時に実施されました。出席者としては、安全技術調査会委員10名の先生方と、あとは日本赤十字社より3名の方々、参考人として国立感染症研究所より1名の方に御出席いただいております。
 続いて議事概要に移ります。議題1については、本日の議題3で詳しく御議論いただきましたので、議題2から説明します。
 議題2のE型肝炎ウイルスに係る遡及調査についてということで、昨年12月に開催された令和3年度第3回運営委員会の議題「その他」におきまして、日本赤十字社よりE型肝炎ウイルスの遡及調査について報告がなされ、安全技術調査会にてより詳細な議論が必要とされたところでした。それを踏まえて、日本赤十字社より上記運営委員会での指摘を踏まえ、遡及調査対象の血液については、個別NAT陰性であっても、受血者の感染状況の調査を行う内容などが盛り込まれた今後のHEVの遡及調査手順案が提示されております。委員の先生から、日本赤十字社が提示した今後のHEV遡及調査手順案が了承されたという形です。
 委員の先生からの主な御意見としては、HEVの遡及調査期間、現在は6か月と規定されておりますが、その規定についてはE型肝炎の感染から発症までの期間が8週あるいは10週と報告されておりまして、当該期間の2倍程度を遡及調査期間として必要とすると、6か月は妥当ではないかと考えると意見されております。ただし、今後の研究結果によっては期間をより短くしてもよいのではないかという御意見も頂いております。
 続いて、議題3、輸血により抗新型コロナウイルス抗体が陽性となったことが疑われた症例についてということで、日本赤十字社より当該症例について報告がなされました。輸血によりSARS-CоV-2ウイルスが、当該患者さんですが、体内で増殖又は感染したのではない旨の説明がなされた上で、日本赤十字社としては、まず1つ目として、血液製剤中に存在していたIgG抗体が受血者に移行した、移行抗体が検出された可能性又は2番目として、血液製剤に含まれていたウイルスに対して受血者内で抗体が産生された可能性を考え、ウイルス学的検索を進める予定である旨の説明がなされております。
 委員の先生方からの主な御意見としては、まず1つ目としては、複数の研究機関よりコロナウイルス感染者の血液検体によるPCR陽性である場合に、その血液検体からウイルス分離を行ったところ、ウイルス分離はされなかったとの報告を受けていると。すなわち感染性を持っていると思われるウイルス粒子が血中に存在するというエビデンスは現在の段階で存在しないと理解しているという御意見を頂いております。
 もう1つとしては、献血後に感染や濃厚接触者である旨の連絡があった場合、献血者のPCRを実施し、陽性の場合には製剤の出荷差し止めや献血者の血液のPCRを実施しているとのことですが、感染者が急増している現在、感染者のみでなく、濃厚接触者についても同じ運用をするのは大変ではないかという御意見も頂いております。各議題の資料については3ページ以降にありますので、また御覧いただければと思います。事務局からの説明は以上です。田野﨑先生、よろしくお願いします。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。ただいまの説明について御意見、御質問などありますか。特に御質問、コメント等ないようでしたら、続いて資料4-2について、事務局より説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 資料4-2、こちらは令和3年度第1回適正使用調査会の審議結果についてとなっております。1ページ目を御覧ください。令和3年度第1回適正使用調査会が令和4年1月24日(月)15時~17時で開催されました。出席者としては、適正使用調査会委員11名の先生方、日本赤十字社より3名の参考人、参考人として6名の以下に記載している先生方に御出席いただいております。
 議事概要に移ります。議題1、血液製剤使用実態調査についてということで、今年度はクレオプレピシテート製剤(以下「クリオ」と略す。)、フィブリノゲン濃縮製剤(以下「フィブリノゲン」と略す。)の使用状況と、次に僻地・離島における輸血医療体制、3番目として、適正使用指針の見直しの効果を中心に、牧野先生及び田中先生の両参考人より報告を頂いております。
 まず1番目として、クリオとフィブリノゲンの使用状況については、大量出血、大量輸血時の凝固障害に対して使用する製剤が、新鮮凍結血漿、FFPのみと回答した医療機関が多く、大量輸血プロトコールがいまだ整備されていない可能性があることや、クリオの製造には日本輸血細胞治療学会のガイドラインでは、FFP-240mL製剤の使用が推奨されているものの、FFP-480mL製剤を多く使用されており、また患者同型とAB型FFPの使用が同数であったことや、フィブリノゲンの多くは適応外使用であること、そしてフィブリノゲン製剤の管理部門はほとんどが薬剤部でありまして、フィブリノゲンの使用に際しては管理部門も整備が必要であること等が報告されております。
 2番目として、僻地・離島における輸血医療体制に関しては、血液センターからの定期搬送に係る時間として4時間以上掛かると答えた医療機関が61.9%と、半数以上存在していることや、あとは合同輸血療法委員会の参加は30%であったこと。7施設で輸血用血液製剤を近隣の医療機関に融通したことがあったこと。70%近い施設が血液運搬装置、ATRの運用を希望しており、一部の施設では既に運用していることが報告されております。
 最後に、適正使用指針の見直し効果についてですが、少数ながら、輸血部門における血液製剤の適正使用の評価は、業務ではないとか、輸血療法委員会の検討項目ではないとの回答が散見されたことや、あとは小規模施設では輸血管理に関わる人員体制の整備が遅れていること。病床数が300床以上の施設で適正使用の評価を綿密に行っている施設の特徴は、専任の輸血責任医師、専任の輸血担当技師が在職していること。高度の医療機能を持つ施設の3分の2では、輸血管理料の適正使用加算を算出されていなかったこと等が報告されました。委員の先生からの主な御意見として、適正使用を促進するためには、輸血部の責務として、適正使用の評価があるということを血液製剤の使用指針等に明記するべきであるという意見を頂いております。
 議題2として、血液製剤使用適正化方策調査研究事業について、面川参考人、藤井参考人、長井参考人、古川参考人より御発表を頂きました。まず、面川参考人からは、秋田県の取組として、小規模医療機関を重点対象とした輸血療法におけるChoosing Wiselyの周知及びオンラインツールを用いた診療支援活動を検討する取組が報告されております。
 藤井参考人からは、広島県の取組として、災害等の緊急時に血液製剤の血液センターからの供給が間に合わない場合に備えて、緊急時に地域の医療機関で協力して、血液製剤の提供を可能とする仕組みを構築するために、令和2年度に作成した手順に基づき模擬訓練を実施した上で、必要な手順の改定を行う取組が報告されております。
 長井参考人及び古川参考人からは、それぞれ長崎県、鹿児島県の取組として、それぞれの都道府県で離島圏におけるATRを用いたBlood Rotationについての取組が報告されております。
 委員の先生からの主な御意見として、まず1つ目として、自治体と血液センターが血液事業を支えていくことが重要である旨の御意見を頂いております。2つ目としては、血液製剤を融通する際には、温度管理等適切に行い、製剤の安全性について配慮する必要性があると考えるという御意見も頂いております。最後に、Blood Rotationの実施については、有効期限が短くなった輸血用血液製剤を受け入れる医療機関の環境を整える必要性があるという御意見も頂いております。適正使用調査会の説明については以上です。田野﨑委員長、よろしくお願いします。
○田野﨑委員長 委員の先生方から御質問、コメントなどよろしくお願いします。よろしいですか。このATRの利用というのは、必ずしも離島とか僻地でのものに限らず、今後とも都市部においても在宅医療が非常に必要になってきておりますし、コロナで在宅での輸血が非常に重要であるということを考えますと、急いでこれに取り組んで導入していくことも必要ではないかと個人的には考えております。ほかに御意見等あればお願いします。
○松本委員 松本です。この輸血部門でのフィブリノゲンが出てきましたが、取扱い、管理という意味ですが、やはり、正確な数字は忘れましたが、フィブリノゲンを含む例えば免疫グロブリン製剤であるとか、そういうものまで管理できている輸血部門というのは、大学病院であってもまだまだ少ないということがあります。やはり薬剤部管理になっている所は多くあると認識しておりますので。
○佐野血液対策課長補佐 松本先生、少し声が小さいので、できればもう少し大きい声で話していただけると非常に有り難いです。
○松本委員 そういうふうな形で輸血部門での管理を推進したほうが、フィブリノゲンもそうですが、免疫グロブリンも少し需要が大きくなってきている昨今、輸血部門での管理をもう少し進めたほうがよろしいのではないかと思っているところです。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。私も個人的にはそのように思っておりますが、なかなか再生医療等製品なども、同様に輸血・細胞療法部門として取り扱う方向になってきていて、輸血部門の業務が増えてきていて、なかなか手に負えないという意見があちこちからあります。そういう意味ではトップダウン的にやらないといけないとは思いますが、少し輸血部門をきちんと整備することを検討していってもいいのかなと私も思っております。こちらに関して、松下委員から何か御意見を頂けますか。
○松下委員 これを拝見しましたが、今のところ、私からこれと思うようなお話は思いつかなかったのですが。また思いついたら申し上げます。
○田野﨑委員長 了解いたしました。ほかに委員の先生方から、何かコメント等ありますか。それでは、次の議題5の「その他」に移ります。事務局よりクリスマシンM静注用の供給停止について及び献血ヴェノグロブリンIH5%静注の4規格の供給停止について御説明をお願いします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。まず、資料5-1について御説明させていただきます。クリスマシンM静注用の供給停止についてです。まず、経緯を御説明いたします。クリスマシンM静注用は、血液凝固第Ⅸ因子欠乏患者の出血傾向を抑制する効能・効果をもつ血液凝固第Ⅸ因子製剤です。今般、一般社団法人日本血液製剤機構(以下「JB」と略す。)より、クリスマシンM静注用全規格について供給停止したいとの相談がありました。本製剤の400単位は、年間250本製造しておりますが、そのほとんどが有効期限内に供給することなく期限切れとなっております。本剤の1000単位は年間約110本製造しておりますが、そのほとんどが有効期限内に供給することなく、同じように期限切れとなっている状況があります。また、医療機関への聞取り調査から、現在、本製剤を定期的に使用している患者はいない状況であるということです。
 以上から、本製剤の供給を停止したい旨の要望がありました。なお、本製剤の代替可能な血液凝固第Ⅸ因子製剤は、現在、本製剤のほか6製剤。うち、献血由来の血漿分画製剤が2製剤供給されております。今後の予定としては、供給停止に向けた手続を進めるとなっております。
 続いて、資料5-2をお手元に御用意ください。こちらは、献血ヴェノグロブリンIH5%静注4規格の供給停止となっております。経緯について御説明いたします。献血ヴェノグロブリンIH5%静注は、以下にお示しする13の効能・効果を持っている静注用ヒト免疫グロブリン製剤となっております。500mg10mL、1g220mL、2.5g50mL、5g100mL及び10g200mLの5規格を持っております。今般、JBより、献血ヴェノグロブリンIH5%静注5規格のうち、5g100mL規格を除く4規格について供給停止したいとの御相談がありました。献血ヴェノグロブリンIH5%静注は、献血ヴェノグロブリンIH10%静注の販売に伴い需要が大きく減少しており、今年度上半期には、10%製剤の供給割合が95%を超える実績となっております。5%製剤は、需要低下により供給前に有効期限切れとなる状況となっております。
 以上のことから、5%製剤のうち4規格を供給停止し、有効期限切れ防止による血液製剤の有効利用を図るとともに、10%製剤の製造可能量の増加を図ることで安定供給や国内自給への貢献を図りたいという御相談がありました。なお、限定的ではありますが、5%製剤を使用するケースも想定されることから、献血ヴェノグロブリンIH静注5g100mL規格は製造を継続するというお話です。今後の予定としては、供給停止に向けた手続を進めるとなっております。資料5-1、5-2については、事務局からは以上です。田野﨑委員長、よろしくお願い申し上げます。
○田野﨑委員長 こちらに関しては、まず委員の先生方から御質問、コメントはございますか。反対意見とかがありましたら、お願いしたいと思います。事務局におかれましては、これは、ここで裁決する、審議するというような形になるものでしょうか。意見を出すということでよろしかったでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 私としては、意見、報告がメインだと思っております。
○田野﨑委員長 特に反対意見の方がいらっしゃればと思いますが、実際にはほとんど使用されていない。
○松本委員 松本ですが、よろしいでしょうか。
○田野﨑委員長 松本委員、どうぞお願いいたします。
○松本委員 反対意見も何もないのですが、これは、以前もこういう製造中止の要望というのが出されており、その際には患者会からまだ使用している患者がいるということでそちらの要望書が出て、それでまだ製造販売をメーカーがしていたという経緯があります。ですから、その当時は第Ⅸ因子製剤というのは、血漿由来の製剤は残り2剤しかなかったということで、やはり供給不安というのがありましたので、そういうことで患者会からの要望によって継続していたのですが、その後、一旦そういうようなことを表明した製剤だったので余り使われなくなってしまい、現在もほとんど需要がないという状況になっていると承知しております。コメントです。
○田野﨑委員長 松下委員、武田委員からも、実際の現場においてクリスマシンMに関しては、特に問題ないでしょうか。
○松下委員 松下です。この話はいろいろな所で出ていますが、現状やむを得ないと血栓止血学会も認識しております。輸血学会も同様です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。
○武田委員 武田です。今この製剤はほとんど使われていないということで、残念ではありますが致し方ないかなと感じています。ちょっとこれは、クリスマシンがどうこうということではなくて、今後、日本国内の血漿分画製剤をどのように守っていくかということについては、また別途、この運営委員会等でも議論していく必要があるかなと考えています。私からは以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。
○岡田委員 埼玉医大の岡田ですが、いいでしょうか。
○田野﨑委員長 お願いいたします。
○岡田委員 反対ではないのですが、確認です。組換えも含めて国内で製造されている第Ⅸ因子は、先ほど血漿で2製剤あると言ったのですが、組換えも国内で製造されている製剤はあるのでしょうか。
○田野﨑委員長 国内で製造されているかどうかに関してお願いいたします。
○松本委員 松本です。国内で製造されているものはないと認識しております。全て輸入です。
○田野﨑委員長 松本委員、どうもありがとうございました。岡田委員、よろしいでしょうか。
○岡田委員 組換えも複数会社があるので、その会社が全て製造を止めるということはないので、船なり航空機が動いている分には問題ないかと思います。以上です。
○田野﨑委員長 実際の使用状況を見るとやむを得ないのかなと思います。献血ヴェノグロブリンIHに関しては、私もよく管理して使っているわけですが、代替品がたくさん出て、適応などに関しても問題ないということかなと思いますので、こちらに関しても特に反対意見はなくていいのかなと思います。よろしかったでしょうか。先ほどもちょっとお話がありましたが、特に松本委員と松下委員、それぞれの委員の施設において献血ヴェノグロブリンIH、クリスマシンMのような製剤はどこで管理されていますか。薬剤部か輸血部門か、松本委員、松下委員、いかがでしょうか。
○松本委員 松本です。アルブミンもそうだったのですけれども、以前は薬剤部で管理していたのですが、まずはアルブミンの管理を4、5年前からするようになりました。その後、フィブリノゲンに関しては、今は適応になっているのですが、産科で適応外で使用したいということで、そういう適応外使用の委員会で審議されることがあり、安全管理部門から、適応外使用するのであれば輸血部門で管理を支持され、フィブリノゲンは現在、輸血部門で管理しております。今後の課題としては、免疫グロブリン製剤の管理も輸血部門でやるべきだろうという議論にはなっているのですが、まだそこに至っていないということです。凝固因子も同様なのですが、凝固因子あるいは代替の遺伝子組換え製剤なども管理をと考えているのですけれども、ちょっと今はそこまでいっていないという状況です。
○田野﨑委員長 松下委員はいかがでしょうか。
○松下委員 もしもし、松下です。
○田野﨑委員長 献血ヴェノグロブリンIH、クリスマシンMのような製剤について先ほどちょっと話がありましたが、輸血部門あるいは薬剤部、どちらでどのように管理されておりますか。
○松下委員 その件に関しても、一応、学会内でフィードバックはしていて、仕方ないですねという話にはなっています。
○田野﨑委員長 そして、松下委員の施設において、名古屋大学において、どこでの管理になっているかということで伺いたいのですが。
○松下委員 管理は、名古屋の場合は輸血部です。
○田野﨑委員長 そうしたら、免疫グロブリンにしても凝固因子製剤にしても、輸血部がやっているということですか。
○松下委員 院内で使用する場合は輸血部が管理していますが、今、皮下注用の自己注射が認められているので、その辺に関しては管理できていないです。
○田野﨑委員長 なかなか輸血部門で管理するというのが、人手の問題などでマンパワーで難しいのかなとは思いますが、できればそちらの方向に持っていったらよろしいのかなと感じております。
○松下委員 その意見は学会でもいろいろ出ております。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。
○松下委員 申し訳ありませんでした。
○田野﨑委員長 そうしましたら、本日、用意いたしました議題については全て終わりましたが、ほかに何か御意見等はございますか。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。先ほど御説明させていただければよかったのですが、1点、資料2-1の4ページについて補足説明をさせていただきたいと思います。
○田野﨑委員長 お願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 症例AA-21000029のエイフスチラなのですが、こちらの備考欄には、講演会の講演スライドで確認された症例で、当該製品の製造工程には、ウイルスの除去ろ過等のウイルス除去・不活化工程が組み込まれているとか、そういったことで一定のウイルスクリアランス能が有されているということが記載されています。当該症例については、基本的には遺伝子組換え製剤になっており、血液疾患のHIV感染の報告とはなっているのですけれども、提供された情報からは、HIVが併発症例か本剤による治療後に発現したものであるかどうかということは判断できなかったということが補足の情報として手に入れられておりますので、そちらだけ今、御報告させていただきます。初めに御報告しておけばよかったのですが、事務局からは追加では以上です。
○田野﨑委員長 そうしましたら、先ほどの血漿分画製剤の海外のものも絡んでいるかと思いますので、引き続きこちらに関しては、情報収集などをお願いできればと思います。その他、委員の先生方から御意見等がございましたらお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局に議事進行を戻したいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。次回の運営委員会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて、血液事業部会令和3年度第4回運営委員会を終了いたします。ありがとうございました。

(了)