第63回厚生科学審議会感染症部会 議事録

健康局 結核感染症課

日時

令和4年8月1日(月)13:00~15:00

場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)
 

議題

(1)現行の感染症法等における課題と対応等
(2)新型コロナウイルス感染症の検査について
(3)サル痘への対応について

議事

 
○杉原エイズ対策推進室長 それでは、時間になりましたので、ただいまから第63回「厚生科学審議会感染症部会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多忙にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日、議事進行を務めさせていただきます結核感染症課の杉原と申します。どうぞよろしくお願いします。
本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては、御理解、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
本日は、新型コロナウイルス感染症における今般の状況を勘案しまして、ウェブ会議で開催することとしております。
まず、ウェブ会議を開催するに当たりまして、会議の進め方について御連絡させていただきます。
発言される場合は、まず挙手機能を用いて挙手いただくか、チャットに発言される旨のコメントを記載いただき、座長から御指名されてから発言をお願いいたします。なお、ウェブ会議ですのでタイムラグが生じますが、御了承願います。会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしております番号までお電話をお願いいたします。
続きまして、委員の出欠状況につきまして御報告いたします。御出席の委員につきましては、通信の確認も踏まえまして、委員のお名前をこちらから申し上げますので、一言お返事いただければと思います。五十音順で失礼いたします。
今村委員。
岩本委員。
大曲委員。
賀来委員。
釜萢委員。
越田委員。
白井委員。
調委員。
菅原委員。
谷口委員。
中野委員。
中山委員。
西山委員。西山委員、つながりますでしょうか。後で状況を確認させていただきます。
森田委員。
脇田委員。
なお、味澤委員、山田委員より、御欠席の連絡をいただいております。また、戸部委員より、1時間ほど遅れて参加する旨の御連絡をいただいてございます。
また、本日、オブザーバーとしまして、全国保健所長会より内田様、全国知事会より國分様、全国衛生部長会より中澤様、東京都保健福祉局より成田様の御参加をいただいております。
現在、委員18名のうち16名、1名、まだお返事ない方がありますけれども、御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規定によりまして、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
(カメラ退室)
○杉原エイズ対策推進室長 それでは、議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。
議事次第及び委員名簿、座席表、資料1、資料2、資料3になります。不備等ございましたら、事務局までお申し出ください。そのほかに参考資料として、サル痘に関する参考資料1と2がございますので、そちらも念のため御確認ください。
それでは、ここからの進行は脇田座長にお願いいたします。
○脇田座長 感染研の脇田です。よろしくお願いいたします。今日も委員の皆様、参考人の皆様、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
それでは、「厚生科学審議会感染症部会」の第63回の議事に入りたいと思います。議事次第を御覧いただきまして、今日の議題は3つあります。1番目、感染症法、2番目が検査、3番目、サル痘ということで進めてまいります。
それでは、議題1から始めますけれども、現行の「感染症法等における課題と対応」。委員の皆様には、事前に資料送付、説明をいただいていると思いますが、事務局から議題1の資料について御説明をお願いいたします。
○江浪結核感染症課長 厚生労働省結核感染症課長の江浪でございます。
資料1に基づきまして簡潔に御説明申し上げたいと思います。資料1に関しましては、3部構成ということになってございます。
まず、一番最初のパーツでございますけれども、「感染症法の改正の経緯等について」という部分でございます。
資料の右下のページで2ページ目のところに感染症法制定の経緯とございますけれども、感染症法に関しましては、旧伝染病法からの改正ということで成立した法律でございます。感染症法となったときの視点の中に、患者さんに対する良質かつ適切な医療の提供の視点が非常に重要な視点ということで、まとめられて成立したという経緯があるということでございます。
右下のページで3ページ目のところに、旧伝染病法との違いが整理された資料を参考としてつけております。
資料の4ページ目のところに、感染症法についての経緯ということでございますけれども、前回の感染症部会におきまして、感染症法の目的、公衆衛生的な視点と医療の提供という観点とどちらなのかという御質問もございました。感染症法に関しましては、個別の患者さんに対して感染拡大防止対策をやっていただくということと、個別の患者さんに対して医療の提供をしっかり行っていくという2つの目的がある法律ということになります。
また、そういった観点から、医療提供体制の整備をされているということでございますけれども、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大におきましては、従来の感染症指定医療機関の枠組みそのものでは十分対応できなかったということもございまして、この感染症法の改正の経緯のところにございますけれども、医療法の改正によりまして、新興感染症などの感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項というものが、医療計画に位置づけられるという改正も行われてきたという経緯がございます。
資料の2つ目のパートは、感染症部会で昨年12月に1回、感染症法に関する議論をいただいております。その議論の振り返りということでございます。
右下のページで6ページ目と書いているところにまとめてございますけれども、左側のほうにテーマと書いてありますが、病床・医療人材等の確保、自宅療養者・宿泊療養者への対応、国・地方の連携・役割分担について、水際対策の強化という大きな部分に分けて御議論いただきまして、御意見をいただいたということでございます。
その中で、右端のほうに主な御意見ということで書いてございますけれども、例えば感染症指定医療機関以外に、流行の規模に合わせて拡大できるよう対応医療機関を設定しておくことが必要ではないかとか、データの活用についても検討する必要があるのではないかということで御意見をいただいたところでございます。
そういった御意見も受けながら、「課題と対応の方向性について」、先般まとまりました有識者会議における課題と、その後、政府の対策本部としてお示ししております対応の方向性ということで整理した資料を、本日の議論用に次のページから御提示させていただいております。7ページ目以降がその資料ということでございます。
8ページ目からは、感染症に対応する医療機関の抜本的拡充ということで、まず課題を挙げておりまして、それを見ていただきますと、例えば医療機関の準備が十分できていたのかということでありますとか、感染拡大時に医療が逼迫するという課題があったのではないかということが課題として書かれているということでございます。
それに対する対応の方向性ということで、9ページ目に書いてございますけれども、総論的事項として、まず最初に4行ほど書いてある上で、具体的事項として、例えば都道府県におきまして、あらかじめ平時から計画をつくっていくということであったり、協定を結ぶ仕組みを創設してはどうかということであったり、また協定に沿った履行を確保するための措置についても検討することとしてはどうかということで、課題に対応した対応の方向性というものを整理しているものでございます。
右下のページで10ページ目のところには、自宅・宿泊療養者への医療提供体制の確保ということでございまして、同様に課題と対応の方向性ということをまとめてございます。資料につきましては、事前にお送りしているということで、一つ一つ、課題、対応の方向性に関しまして読み上げるということは今回いたしませんけれども、以降、課題、対応の方向性、それぞれ整理したものをおつけしているということになります。
以降、右下のページで12ページ目に、広域での医療人材の派遣等の調整権限の創設。
13ページ目のところに、保健所の体制とその業務に関する都道府県の権限・関与の強化。
また、15ページ目には、検査体制の強化。
16ページ目には、感染症データ収集と情報基盤の整備。
17ページ目には、治療薬の研究環境の整備。
18ページ目には、医療用物資等の確保の強化。
19ページ目には、水際対策の実行性の向上ということで、それぞれ課題、対応の方向性を整理したものということでございます。
本日は、この資料に基づきまして、特に対応の方向性につきまして、御意見をいただければと考えてございます。
資料1につきましては、最後に参考資料といたしまして、現在の感染症法に基づく区分の一覧でありましたり、医療機関の提供体制の区分。また、新型コロナウイルス感染症の発生状況につきましてもデータをおつけしているところでございます。
私からの説明は以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
ただいま、資料1、簡潔に説明していただきましたけれども、既に委員の先生方はこの資料を御覧になっていただいていると思います。ただし、今日はかなり意見が多くなるということですし、議論が発散してしまうとか、なるべく多くの先生方から意見をいただきたいということでありますので、事務局からは既に御連絡さしあげておりますとおり、まず、委員の先生方から名簿順に御指名させていただきますので、簡潔に御発言いただければと思います。その後、参考人の先生に御発言いただいて、最後、私も少しコメントしたいと考えております。よろしいでしょうか。
それでは、申し訳ないですけれども、名簿順でいかせていただきます。今村先生、あいうえお順で申し訳ないですけれども、御発言をお願いしたいと思います。
○今村委員 今村です。
まず、8ページの(1)感染症に対応する医療機関の抜本的拡充に関してです。パンデミックの本質の一つに、分母数の圧倒的な増加による実数増加、つまり入院を必要とする患者数の増加というものがあります。今後も起こる可能性がある厳しいパンデミック対策というのは、広域かつ長期に起こる感染症による災害と考えることもできると思います。特に、感染早期の時期には、現在の感染症指定医療機関を中心とした枠組みでは、医療の防護壁を簡単に乗り越えられてしまう危険性が高いと考えています。
この中にある、都道府県があらかじめ医療機関との間で病床や外来医療の確保等の具体的な内容に関する協定を締結する仕組みを創設するという方針は、現場の医療機関の対応を踏まえると、平時から準備しておくことによって、公的医療機関だけでなく、公的以外の医療機関も参加することがより可能となり、パンデミック対策として適当な方針であると考えます。それによって、PPEの備蓄なども同時に行えるという利点もあるかと考えております。
もう一点になります。次は16ページです。感染症データ収集と情報基盤の整備についてです。ここにある医療機関によるHER-SYSでの発生届を強力に推進するとともに、入院患者の状態等の入力も促進ということや、発生届等の情報と医療保険レセプト情報等のデータベース等の他のデータベースの情報との連携や外部研究機関への情報の提供等を可能とするという、このような方針は、現時点での方針としては、既存データ収集方法による、さらなる活用の促進、新たな感染症データベース強化へ向けて、必要であると考えます。
また、HER-SYSについては、何とか現場が慣れてきたところであって、新しくデータベースを急につくることも難しい。現場に負担がかかることも危惧されます。
一方で、想定を超えて、データ収集の限界を超えるような状況となったときに、今後、疫学的な分析が可能な定点サーベイランスのような準備というのもしっかり検討を進めて、今までとは別な方向性としてどういうことができるかを検討しておくことも必要であると思っております。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、岩本先生、お願いいたします。
○岩本委員 岩本です。書きましたので、読ませていただきますが、ちょっと長くなるかもしれません、すみません。
伝染病予防法を廃止し、感染症法に切り替えた背景には、ウイルス性出血熱等、新興感染症への対応や、エイズやC型肝炎に関わる社会問題がありました。この際、隔離を基本とした伝染病法から感染症法への切り替えに当たって、医療の提供の視点が加えられたはずでした。
しかし、資料1の3ページ目に示されているように、感染症法の実態は、疾患の類型化を基に、基本指針や予防計画、感染症指定医療機関の指定、入院勧告や措置、外出自粛等の要請など、公衆衛生対策を書いた法律です。平成24年に制定された新型インフルエンザ特措法も、その3年前に流行した豚インフルエンザウイルスによるパンデミックの教訓、つまり治療を含む医療の必要性を強調したものではなく、より病原性の高い高病原性鳥インフルエンザに対する公衆衛生対策を念頭に置いたものでした。
医療は、患者さん一人一人の命を救おうとする行為です。日本の医療は、パブリックリーサポーテッドテッドパブリックリー・サポーテッド、プライベートリーマネージドプライベートリー・マネージドと特徴づけられています。一方、公衆衛生は、集団における予防や感染症対策を立案し、実施する行為で、パブリックリーサポーテッドテッドパブリックリー・サポーテッド・アンド・パブリックリーマネージドパブリックーマネージドパブリックー・マネージド。つまり、全て官あるいは公(おおやけ)ですから、医療と公衆衛生は別物です。新型コロナウイルスは変異を繰り返し、病原性と伝播力を変えながら、日本の公衆衛生と医療のマネジメントの間の隙間や弱さにつけ込んできました。公衆衛生対策だけで、新型コロナのようなパンデミックに対応することは不可能だと分かったわけです。
資料1には、公衆衛生対策、つまりパブリックマネジメントパブリックマネジメントパブリック・マネジメントのことだけが書いてあります。これは厚労省の縦割り上、公衆衛生を1部局、結核感染症課で担当することになっているからだと思います。プライベートリーマネージドプライベートリーマネージドプライベートリー・マネージド、すなわち保険診療を担当する部局と連携し、日本の医療と公衆衛生を取り仕切る厚労省総体として公衆衛生対策と保険診療の連携、あるいは公衆衛生対策から保険診療への移行をスムーズに行う道を模索すべきだと思います。
現在の感染症法や特措法の硬直した法体系だけでは、新型コロナのようなパンデミックに対して、日本が保有する医療の仕組みや国民の持つ協調性など、日本の総力を結集して対応できないと今回証明されたと思っています。英国は、今回、2年の時限立法で対応しました。欧米各国では、既に国の危機対策の対象から新型コロナウイルスが外れた、あるいは外されつつあると言います。例えば、新型コロナウイルスを2類相当から5類に変えるべきだという議論がありますが、それだけでは個人負担が発生します。
恐らく、しばらくは無料PCR検査等の維持が必要でしょうし、柔軟な運用が必要ではないでしょうか。そのためには、感染症法の手直しだけではなく、特措法をパンデミック特措法、仮称ですけれども、に切り替えたり、行政の柔軟性を担保するなど、感染症の法体系をもっと根本的に考えるべきだと思います。
あとはちょっと短いですが、2点目、12ページの対応の方向性の最初に「国による」という文言がありますが、ここで言う「国」とは厚労省でしょうか。設立されると言われている危機管理庁あるいはジャパンCDCなのでしょうか。これまでの経過で、特措法のリーダーシップがどこにあるのかが国民には分かりにくい局面があったと思います。リーダーシップの存在場所を法的にも明らかにすべきではないでしょうか。
3番目、宿泊療養や自宅療養については言及されていますが、臨時施設についての言及がないようです。軽症者用の臨時施設なのか、中等症対策も扱える臨時施設なのか。今回の対策での実施例と課題等を明らかにし、今後の臨時施設に関する考え方を示すべきだと思います。
4、感染者や死亡者が少ないことが日本の強みだと言われることもありましたが、最近では日本の感染症者は世界一だと報道されています。厚労省として、どう総括されているのでしょうか。諸外国は新型コロナ対策の店じまいをしています。国際連携という点でも、甚だ心もとない限りです。世界の実情を国民に知らせるべきだと思います。
少し長くなりました。申し訳ありません。以上です。
○脇田部会長 岩本先生、ありがとうございました。
続きまして、大曲委員、お願いいたします。
○大曲委員 よろしくお願いします。5点ほどあります。
まず、1点目ですけれども、医療の拡充に関してであります。事務局案を拝見しましたけれども、都道府県等、あるいは公的あるいは私的じゃなくて、医療機関との間で協定締結の仕組みをつくるということが書かれていますけれども、このような仕組みは必ず必要になると思います。単に法律に書かれているだけでは動かないというのは、今回経験したところですし、それこそ足元の流行の中で公的・私的な医療機関を広く動員しないと医療がもたないというのは、もう明らかだと思います。
2点目は自宅療養の点、書かれていることは賛成なのですが、自宅療養中の方も医療を受けられるようにするというのは1つの大事な論点だと思いますが、同時に、自宅にいながらも治験が受けられるようにするというのも、速やかな治療法の開発という観点で国の対策として必要だと思うので、論点として加えたいと思います。
3点目は専門人材の派遣に関してですけれども、これは専門的な知見と経験のある方を確実に集めて派遣できる法的な枠組みをつくっていただければと思います。思い出ですが、ダイヤモンドプリンセスの対応のときに感染症に対応できる人材を集めるのに本当に苦労しました。感染症の対応はできないということを言われて、断られたことがあったので、そこは根本的な問題かと思っています。
4点目は検査の件です。1点申し上げておきたいのは、感染研等でプライマーができた。それが例えば企業等に渡されるという段階になったところで、速やかに医療機関でも行政検査ができるようにしていただきたいと思います。言い方を変えれば、医療機関の判断で検査ができる。そうすれば、院内感染対策も救急医療も早い段階から回すことができると思います。要は、それぐらい検査に医療というものは依存しているのだということです。検査がないと回らないです。
5点目はデータの件です。データ活用がたしか6番目の論点で示してございました。こちらに関しては、HER-SYSの活用と入力。特に入院情報は重要なので、その辺を入れていくということ。あと、NDB等の既存のデータベースとのリンケージと、それによる活用ということが書かれていまして、これは必要だと思います。HER-SYSは実際それを基にして、各都道府県レベルで様々なプラットフォームがつくられていて、それが入院調整等に使われていますし、これは引き続き活用されるべきものだと思います。新しくつくり直すというのは相当きついだろうという話が1点と。
あと、データの活用の問題というのはいろいろ言われますが、1つ根本的な問題としては、既存のデータベースがつなげられていないというのが一般的には問題になりますので、まずは既存のものをちゃんとつなげることを進めていく。それで経験を積むし、実績も積んでいく、活用のレベルが上がっていくというのが流れではないかと思います。
6点目の研究開発の点ですが、これが最後です。研究開発を急いで速やかに、例えば100日ミッションを満たすようにやるべきというのはそのとおりなのですが、入り口のところにも、つまり患者さんのもともとの研究に必要になる臨床情報ですとか検体がちゃんと出てくるような体制づくりという論点を、ぜひ入れていただければと思います。それが臨床現場から出てこないと、その後の研究が何も進まない。ですので、現実に新興・再興感染症を最初に診る感染症指定医療機関の研究機能の強化といったところを、ぜひ御検討いただければと思います。自宅療養者の治験の推進も同様です。
私からは以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、賀来委員、お願いします。
○賀来委員 ありがとうございます。
それでは、5点ほど意見を述べさせていただきます。
まず、1点目は、6ページから8ページ、9ページ目にあります医療機関の体制のことです。拡大時には特定の医療機関だけではとても持ちこたえられない。これをこれまでの委員もお話しになっていました。各県でしっかりとした体制づくりが必要だということなのですけれども、今村先生もお話しになっていましたように、全ての医療機関が感染を確実に制御できるような体制になっていないということもあるので、その辺りをしっかりと支援していくということが非常に重要だろうと考えます。方向性としては問題ないと思うのですけれども、全ての医療機関あるいはある程度の医療機関が参加し、オール医療体制で対応するためには、感染症対策などのしっかりとした支援も必要であろうということが1点目であります。
2点目は宿泊療養のところで、10ページ、11ページ目です。現在、オンライン診療も行われつつありますが、これも非常に重要だと思います。実際には国あるいは県がいろいろなことを国民の方にもお伝えするのですけれども、症状などががひどくなっていったときに、実際の医療施設や保健所、サポートセンターなどに、どのように連絡を取っていけばよいのか、そのようなリスクコミュニケーションや情報の伝達・共有などが、非常に重要なポイントになってくると思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
3点目は広域での医療人材の派遣のことです。先ほどからもいろいろな先生方が意見を言われていますが、12ページ目です。私が環境感染学会の理事長のときに、環境感染学会独自に、特に震災がいろいろなところであったときに感染制御の専門家を派遣するような登録制度を作り、登録した専門家がチームで支援に入るというシステムを作りました。そのため、ぜひそういった学会などの活動とも連携協力し、しっかりとしたスキル・専門性を持った方が実際に支援していくような体制をぜひ整えていただければと思います。
次に、4点目は検査のところなのですけれども、今回の新型コロナウイルス感染症の対応では、検査体制の強化がなかなか難しかったということがあります。現在、抗原定性検査も含めて、いろいろな検査試薬が流通してきています。国として検査体制を強化するときに、併せて精度管理をしっかりと行っていっていただきたいということをぜひともお願いしたいと思います。
最後の5点目ですけれども、医療用物資等の確保、18ページ目のところです。今回、医療用マスクとかPPEが当初、非常に不足しました。実際には、マスクも今、様々なマスクが供給されていて、不織布マスクからN95N95、あるいは不織布マスクとN95の間の中間的な性能を有するマスクも供給されています。国として、ぜひこのような個人防護具について、職業感染研究会などとも連携して性能評価などを含む管理を行っていただき、流通などに支障が出ないように対応していっていただきたいと思います。
私からは以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、釜萢委員、お願いいたします。
○釜萢委員 9ページの一番上に書いてある「平時において都道府県と医療機関との間で新興感染症等に対応する病床等を提供する協定を結ぶ「全体像」の仕組みを法定化」、この方向性は大変大事だと思います。一方で、都道府県が策定する数値目標、国の定める基本指針に基づきとなっていますが、今後出てくる感染症がどのような性質のもので、どのような規模になるかということの予測は極めて困難です。その中で、柔軟性を持って協定を締結しておくということは、実際にはなかなか難しいだろうなと思います。疾患の様子がよく分からない段階で、今の新型コロナを想定してある程度やらざるを得ないとは思いますが、その辺りのところの問題点を指摘しておきたいと思います。
それから、新興感染症に対する対応のほかに、それ以外の疾病に対する対応を医療機関はきちんとしなければならないので、全ての医療資源を感染症に振り向けるというわけにはいきませんから、その辺りのところをどういうふうに役割分担をするのかということ。
そして、なるべく多くの医療機関を動員してオールジャパンでやるという方向性は、もうそのとおりなのですけれども、それぞれの医療機関の役割について、これこそ平時にしっかりとあらかじめ行政と医療機関、もちろん民間も含めて、きちんと合意をつくっておくということが大事だろうと思います。
次に、15ページですが、検査について申し上げます。もう既にお話がいろいろ出ていますが、抗原の迅速診断キットが作られるまでの間には、どうしても感染症の詳細が分かってから時間がかかります。早期にできるのは、基本的な手技としてはPCRが重要だろうと思いますが、これは現在、検査の可能数が大分増えましたけれども、短時間に大量に行うためには大規模の機械を設置して、ずっと平時からメンテナンスできるようにしておかなければならない。これは非常に費用がかかりますので、このように大規模の機械を使って短期間に多数の検体を扱えるようにするという計画を全国できちんと立てて、そして、そのために必要なメンテナンスの費用等をしっかり手当てする必要がある。
これによって、この地域では有事にどのぐらいの検体が処理できるのかというところを明らかにしておくことが必要です。もちろん、個々の医療機関や検査センターが役割を担うのですけれども、その中核となるべき大規模の検査体制というのも考えておく必要があると思います。
以上です。
○脇田部会長 どうもありがとうございました。
続きまして、越田委員、お願いします。
○越田委員 私は、地方自治体の立場からお伝えします。オミクロン株が主流の6波を何とか乗り越えて、今、7波真っ最中の状況です。この中で、保健所を含めた地方自治体の対応について、以下の3点を念頭に考えています。
まず、1点目は、保健所が漏れることなくきっちりとフォローし、医療機関がきちんと責任を持って診るべきなのは、コロナの検査で陽性の方々ではなくて、医療の関与が本当に必要な症状のある方ではないかと思います。限られた医療資源を守るためにも、コロナ陽性、かつ低リスクの若者には、外出自粛するなどの当たり前のエチケットをちゃんと啓発する必要があるのではないかということを考えております。
2点目です。検査へのアクセスが非常によくなったことを受けまして、検査において感染が明らかになった方を医療の枠組みで対応するのか、あるいは今、都道府県が設置している、フォローアップセンターのようなところで医療の外で対応するのか。こういった検討も必要かと思っております。
3点目。サーベイランス機能がきっちりとワークするかを検証するということは、今後、感染症の類型を検討する上では必要不可欠なことではないかと思っています。全体の流行を把握する意味でのサーベイランスは必要不可欠ですので、こういったことをきちんと検証していく必要。これから冬に向けてインフルエンザの流行に備えることも踏まえますと、こういったことを今のうちからきちんと考えておく必要があるのではないかと考えております。
以上3点です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
それでは、白井委員、お願いいたします。
○白井委員 白井です。よろしくお願いいたします。
私も大きく3点、お話ししたいと思います。
まず、感染症法の目的というか、理念ですけれども、感染症の予防、それから患者さんへの適切な医療ということになりますので、これはサーベイランスをきちんとやるということと。それに応じて流行状況を把握しながら感染を予防するということ。それと、医療の必要な人、今回のオミクロンの第6波、第7波と言われるような状況においては、どこまでが医療の必要な人かということについては、そこまでの対応が十分より分けられていないと思っています。
そういった意味では、サーベイランスについても、入院または重症化のサーベイランスということを優先するような段階ではないかなと思いますし、これは初期の段階で、これからほかの感染症が発生したときにおいても、最初は全数であっても、どのような段階で入院または重症化のサーベイランスにするとか、そういうことを考えていくような運用ができる法律になっていく必要があるのではないかなと思います。
2点目については、感染症法の中で人権の配慮が言われておりますけれども、これは医療者・行政だけではなく、国民全ての方にかかることになっています。今のウイルスの特徴を考えて人権に配慮するということになったときには、特措法がどこまでこのような人権を配慮できるか、規制というか、制限できるかということも考えないといけないと思いますし、今、特措法で緊急事態宣言とか行動自粛を行うような状況ではないと言われていながら、特措法の範囲でのいろいろな縛りができてきているのではないかと思いますし、医療機関への協力要請についても、特措法に基づく協力要請という形になっていますので、オール医療という形でのそこまでの地域医療にはなっていないのではないかなと思いました。
3点目、保健所の体制についてですけれども、この資料の中で保健所の基幹的なコアの仕事ということを書いていただいているのですが、積極的疫学調査や情報の収集・管理ということになりますが、これは保健所の今のコアの仕事というよりは方法論であって、業務のコアとしては、法律に沿って感染症予防のための集団的介入とか対策立案への情報分析をすることが保健所の仕事だと思っておりますので、そういった意味では、情報収集というか、積極的疫学調査を使った仕事をするというところまでなかなかいっていないということがあります。
これは、HER-SYSでいろいろな情報を取れるようになりながら、地域ごとの解析がなかなか難しいということもありますし、地域ごとに大学とか地衛研を含めたような研究機関との連携があってできているところもあると思います。健康危機管理の拠点と言われる保健所ですけれども、地域の医療機関、またはその連携をするためのハブ機能であるということを、この感染症法の中でも公衆衛生対策の一環としてやる必要があると思っています。
そういった意味で、保健所のコアの仕事ということについて、自分たちがもう少しモチベーションを持ってできるような関わりをしたいと思っておりますし、ついでに申し上げますけれども、入院勧告も全ての方には不要という体制になりながら、入院勧告していない方への療養証明を出して、民間医療保険の証明の対応をしているということは法律以外の仕事になっていますし、これでかなり圧迫されている。こういうことに対しても、国民の皆様にも理解いただきたいと思っています。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、調委員、お願いいたします。
○調委員 調です。
私のほうからは、4点ほど意見といいますか、要望をしておきたいと思います。
まず、感染症に対応する医療機関の抜本的拡充についてというところですけれども、私、地方におりますが、地方は感染症の専門家であるとか人材が非常に乏しい部分がありまして、かつ第一種医療機関においても病床が患者の隔離に主体が置かれていて、十分な高度医療ができない施設もあると思われます。そういった意味で、そういった地方の一種・二種医療機関の施設、人材育成をきちんと行えるような枠組みにしていただきたいと思います。
2番目に、保健所の体制の強化についてですけれども、ここも人材育成ということになるのですが、我が国においては、FETPの修了生のような疫学調査の専門家というのは非常に乏しい、あるいは院内感染の対策を行うような専門的な医師・保健師・看護師というのも不足しているということがあると思いますので、そういったFETPの修了生の拡充といったこともできるような体制にしていただきたいと思います。
それから、検査体制の強化ですけれども、日本の国立感染症研究所と地方衛生研究所のネットワークというのは極めて高度なもので、外国と比べてもはるかに専門性の高いところがあると思います。そういった意味で、検査の数というところではなくて、感染症に関する調査研究を通じて自治体のレベルの底上げということにつながると思いますので、ぜひ地方衛生研究所、保健所の強化につながるような体制にしていただきたいと思います。
それから、最後ですけれども、論点が若干ずれるかもしれませんが、例えばサル痘について考えてみますと、動物や物の対策を行うことによって感染拡大を防ぐ4類感染症に分類されていますが、既に恐らく変異が起こったことによってヒト・ヒト感染性を獲得していて、その対策ではできないような感染症になっていますし、また入院措置もできない、搬送の規定もないといったところで、これを今の感染症の1類から5類までの分類で果たしていいのかどうかということも考えていかなければならないのではないかと考えています。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、菅原委員、お願いします。
○菅原委員 私からは3点述べさせていただきたいと思います。
まず、項目の(1)の医療機関の拡充の問題ですけれども、協定を結んで医療機関を確保していくということはもちろん大賛成ですが、何といっても、それには専門的な活動というか、知見を持った人材というものが絶対セットで必要になってくるわけです。
もちろんICD、インフェクションコントロールドクター、インフェクションコントロールナースや薬剤師、検査技師の中で専門的なトレーニングを受けた方はたくさんいらっしゃいますが、実際に感染症の患者さんを受け入れる、しかも未知の感染症の患者さんを受け入れるという段になったときに、現場の最前線で、やれゾーニングだ、やれPPEと様々なルールをつくるなどというのは、ICNのナースによることがとても大きいのではないかと思います。トレーニングを受けたICNの配属ということに関しまして、具体的に2人以上とか3人以上という人数を、診療報酬とのひもづけになるのかもしれませんけれども、そういった具体的な人数の配置というのも併せて検討していただければと思います。
2つ目は項目の3番目の広域に派遣する調整権限の創設等というところです。この資料には、対応の方向性のところにDMATのことが書かれておりまして、DMATも非常に活躍されたわけですけれども、DMATの方々が必ずしも感染制御に精通しているわけではないわけです。ここに来まして、DMATの資格を持った隊員の方々に、感染症学会や環境感染学会などと連携して感染対策に関する研修会が始まっております。
先ほど賀来満夫先生がおっしゃってくださったように、日本環境感染学会で災害対応ということでディザスターインフェクションコントロールチームというものがあります。頭文字を取ってDICTと言います。学会員だけではあるのですけれども、今、600人ほど、まだ数は少ないですが、全国に会員になってくださっている方がいらっしゃいます。
これには医師をはじめ、全ての職種の方々が登録してくださっていますけれども、災害時だけではなく、ダイヤモンドプリンセス号のときもDICT、私、その仕事をやっている1人ですけれども、支援させていただいたということもありますので、これからは災害だけではなく、感染症のパンデミックにも、学術集団ではありますけれども、実働部隊などを結成しておりますので、ぜひ有効活用をしっかりしていければなと思います。
最後、3点目ですけれども、これは医療物資の問題です。8番になりますけれども、医療物資が不足したということは本当に大きな問題になりましたが、国内がある程度落ち着いていても、製造拠点が海外にあるということで、この間のような上海のロックダウンということがありますと、コロナの患者さんの対応ということだけではなく、一般の医療で必要な物資が全く供給されなくなってしまったという案件が実際にありました。
1社の問題であったので、その会社が努力すればいいことなのかもしれませんけれども、国内で医療を安定的に提供していくためには、資材の安定的な確保ということを、海外のいろいろな動きにもできるだけ影響を受けないような体制というものを、ぜひまた検討というか、考えていかなければならない問題かと思います。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、谷口先生、お願いいたします。
○谷口委員 ありがとうございます。谷口です。
6点ありますので、簡潔に申し上げます。
まず、第1点目、9ページに病床等を提供する協定を結ぶ。これは非常にいいことなのですけれども、この中の文章、ほとんどが「病床」と書いてあります。病床だけで医療ができるわけではありません。必要なのはスタッフ。危機発生時だけに医療従事者がわいて出てくるわけではありません。日頃から医療スタッフを含めた体制整備が必要であって、その場合には、医療機関というのは過剰人員だ、あるいは収益が上がらないということをいろいろなところから言われます。減らせと言われます。ここを考えていただかないと、これは不可能だろうと思います。
2点目は12ページですが、これも同様に、広域な医療人材の派遣と記載されていますが、うちも派遣させていただいていますが、派遣すると確実に1名減ります。つまり、先ほどと同じ話で、どこかにサージキャパシティというものをきちんと確保するような枠組みがないと、これは不可能だと思いますので、サージキャパシティという概念を入れていただきたいというのが2点目でございます。
3点目、14ページ目です。これは都道府県の連携のお話ですが、協議会といったアナログのものとともに、多くの先進工業国では、電子的な情報共有システムあるいは電子化ネットワークというものが現にあります。アメリカは、普通に救急車に乗って保険者番号を入れれば過去の経緯が全部出てきます。日本はその辺りでは周回遅れになっているわけです。そこもきちんとやらないと、協議会だけを設置したところで情報連携は不可能だと思いますので、そこを考えていただきたいと思います。
続きまして、4点目、16ページです。何度も申し上げておりますが、届出とサーベイランスはイコールではありません。そもそも届出で全ての情報を収集しようということ自体が間違いです。世界中で医師からの届出で全ての情報を得てリスクアセスメントしている国はないのです。できるわけがないのです。その考え方自体が医療機関の負荷をいたずらに増やしている、保健所の負荷をいたずらに増やしているわけです。そもそもここにHER-SYSによる届出を推進すると書いてあること自体が間違いだと思います。今回、次の感染症危機と書いてありますので、感染症法に届出とサーベイランスというものの違いを明確に記載していただきたい。
サーベイランスというものは、必要な情報をいかに効率的に収集するかであって、本来は医療機関と保健所、地域での対策がいかに上手にできるシステムをつくって、それを上から眺め見るのがサーベイランスであって、国が都道府県・医療機関から情報を集めることでは全くありません。そこをきちんと書き分けていただきたいと思います。
5点目です。18ページ、医療用物資等の確保の強化です。これも、先ほども既にお話がありましたが、多くの国では国家備蓄、ナショナルストックファイルというものが存在します。多くの医療機器、全てにわたった、ワクチンと試薬だけではありません。また、WHOの中もそうですけれども、リボルビングファンドというものがあります。単年度で、あるいは備蓄も期限が来たら終わりで捨てるのではなくて、一定の期間で市場と流通していけば国に一定の量が常にあるわけです。それがこの国ではできないと、これまで何度も言われてきました。何でこんなことができないのかと、とても不思議です。税金の無駄遣いですね。備蓄して、期限が来たら捨てるのではなくて、欧米のようにリボルビングにしていただいて、常に一定の備蓄があるということを考えていただければと思います。
最後、19ページ、水際対策の実行性の向上ですけれども、水際対策でほぼ全ての侵入を抑えることは不可能ですね。完全に抑えようと思ったら、ボーダーをシャットダウンする以外に方法はありません。諸外国はもうそういったことは既に織り込み済みで、それに対してボーダーサーベイランスという概念を、つまり、ボーダー周辺におけるサーベイランスを強化するということをやっています。ポイント・オブ・エントリーにおける対策、プラス、強化されたようなボーダーサーベイランスというものを考えていただいたほうがよいと思います。
以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
次は戸部委員の順番ですけれども、遅れて御参加ということですが、今はまだ入られていないですね。それでは、次に参りますので、中野委員、お願いいたします。
○中野委員 中野でございます。発言させていただきます。
現在の感染症法、特措法も含めてかもしれませんが、疾患オリエンティッドにはいろいろな規定がしっかりと書かれていて、恐らく医療者たちもそれを読んで、十分に理解できていると思います。ただ、検査とか治療とか、いろいろなことに関して、今までいろいろな委員の先生方から意見があったところは、本日は略しますけれども、私がこの感染症法などを見て思っていたことは、状況オリエンティッドというか、フェーズオリエンティッドな要素が非常に抜けているのではないかと思っています。
したがいまして、国から出される通達、その他は、こういうフェーズだからこうだ。検査にしても、治療にしても、その通達が非常に多くて、それを現場で消化して実践するのにとてもハードルが高くて、やりにくくなっているのではないかという思いで感染症法をもう一度読んでみたのですが、思っていました。したがいまして、私の一番の意見は、疾患オリエンティッドではあるけれども、状況アンドフェーズオリエンティッドになっていないところを、もう少し何か改善できないかと思っています。
それと並行して、私たち医療者は、その感染症を現場で見ているのではなく、例えば新型コロナにしても、患者さんが首に新型コロナですと病名を掲げてお越しいただくわけではなくて、私は小児科医ですけれども、今、ニュースにもなっていますが、たまたま今年は過去2年と比べていろいろな疾患がはやっていて、発熱のある人、かぜ症状のある人に現場では対処するわけです。
その場合、何人かの委員の先生が指摘されました感染症以外の疾患という御指摘もありましたけれども、感染症の中でも、そのときに問題となっている疾患以外の検査とか治療とか、何が必要なのだろう。PCRも、コロナが出てきて医療現場で普通の検査になりましたが、今まで逆にPCRという言葉さえ使われなかったぐらいで、感染症法に広く相対していこうと思うと、そういったことを今後、感染症全般として考えていかなければならないのではないかなというのが私の意見でございます。
以上です。ありがとうございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、中山委員、お願いいたします。
○中山委員 中山です。ありがとうございます。
今回の論点では直接触れられていない問題ですけれども、感染症と差別・偏見について一言意見を申し上げます。今回の新型コロナウイルスの感染症流行の早期には、クルーズ船の乗客や乗員、最前線で感染者の治療に当たってきた医療従事者やその家族等に対する差別的な言動が発生しました。その後も、感染者の存在やクラスター発生を公表した学校・事業所、保育所や介護施設等の関係者への差別的な言動の事例や、感染症の流行が拡大している地域の住民、そこからの帰省者や来訪者への差別的な言動の事例等が散見されました。
このような感染者やその家族、勤務先等に対する不当な扱いや誹謗中傷は、人権侵害に当たることは当然ですが、感染症の対策の面からも大きな問題があると思います。つまり、感染後の差別的な言動への恐怖心から体調不良時に受診しなかったり、陽性判明後の保健所の積極的疫学的調査への協力を拒否することなどにつながり、結果として感染防止対策に支障を来すおそれがあります。このことをいろいろな対策を立てる上でしっかりと認識する必要があると思います。
今回の取り上げられている論点の多くに、国や都道府県が平時から取り組むことが提示されていますけれども、感染状況が落ち着いている平時から取り組むべきこととして、感染症に関する正しい知識の普及、偏見、差別等の防止に向けた注意喚起、啓発。特に教育の強化ですね。それと、特にそのウイルスの特性を踏まえた情報公表に関する統一的な考え方を整理しておく必要があると思います。今回の新型コロナウイルスでも、流行の初期には感染者の特定につながるような公表がなされ、深刻な問題を引き起こしたことに留意して、個人情報保護と感染症のまん延防止に資する情報公表の調整について、バランスを取ることが必要であると思います。
私からは以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。
それでは、西山委員、お願いいたします。
○西山委員 西山です。
資料の11ページ、特にうちについては、保健所設置ではない市町ですので、突然というわけではないのですけれども、共有をお願いしたいという話がなかなかなかった中で出てきたので、平時からこういうときにはこうですよというのをある程度示していただければ協力はできるのですけれども、感染者の情報が各市町には降りてこない状況で、突然、ここの家に行ってくださいと言われると、特に地域との結びつきの強い、うちみたいな小さな町では、職員がそこに行くと、そこで感染しはったんじゃないのみたいな負の部分がどうしても出てきてしまうので、その辺が広域的に隣の町に行くとか、そういう部分でできるのであれば、それがいいのかなと思いました。
ですので、そこは始まったときに、うちの町でも誰が感染したのかとかなり問合せがありましたので、個人情報の保護の部分でもうまい具合にできればいいかなと思っておりました。
あと、12ページの医療人材の派遣応援の件ですけれども、当然、オールジャパンで今みたいにどこの県でも医療従事者が不足するという状態の中で、人材派遣の応援をしたことで、うちには余裕がないですみたいな話が当然出てくると思うので、先ほど過剰人員というのがほかの先生から出ましたけれども、ある程度余剰人員を残しつつでないと、こういう緊急時には対応できないというのが分かったと思いますので、その辺がうまくできればいいと思います。
18ページの医療用物資の確保の強化で、当初、医療機関でもマスクがかなり不足していたので、うちの備蓄のほうの協力をお願いしたいというので、うちのほうもさせてもらったのですけれども、たしか台湾では、ウェブシステムか何かを活用して、どこの薬局でマスクを売っているみたいな、一目で在庫状況が分かるようなシステムを構築されたかと思います。例えば、自治体にしても、国のストックにしても、都道府県のストックにしても、ウェブ上のシステムで情報共有をしておいて、常時、流通として流せるような状態にしておかないと、ストックしてどれぐらい在庫がありますか、これだけ出してくださいというのでは遅いと思うので、ウェブで申請すればシステム上、出していけるみたいな。
紙と電話の時代ではなかなか対応し切れない部分があると思うので、うまくウェブのシステムなり、インターネットを活用した情報共有であるほうが瞬時に対応できるのではないかと思いました。
私のほうからは以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。
森田委員、お願いいたします。
○森田委員 森田です。4点、御意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、13ページ、14ページの保健所に対するところですけれども、新型コロナの前は保健所の整理・統合、人員削減が継続的にされていたと思います。今回、保健所の役割というものが、このパンデミックではっきりしたと思いますので、具体的事項の中に「整備する」と記載されているのですけれども、拡充とか人員増とか、もっと具体的な強化の策を書いていただきたいなと思います。
次は15ページですけれども、これは検査体制の強化というところで、釜萢先生もおっしゃいましたけれども、PCRというものがしばらくは有用かと思います。ただ、パンデミックレベルのキャパシティを平時にもずっと維持し続けるというのはなかなか難しいかと思います。我々のところでもやりましたけれども、臨時衛生検査所というのを保健所から認定していただいて協力するということが、文科省下の研究所とか大学で可能なのではないかと思います。そういう方策を文科省と話していただけたらと思いました。
それから、16ページのことですけれども、ここは谷口先生とちょっと意見が違うので申し訳ないですけれども、私はHER-SYSのような届出のデジタル化というのは必須だと思います。ただ、今のHER-SYSというのは入力に膨大な時間が必要ということで、医療従事者の非常に負担になっているということも聞いております。そういうことで、この入力の省力化あるいは簡素化、音声入力を使うとか、いろいろな方法があると思いますけれども、そこを明確にしていただきたいなと思います。
それから、18ページのロジのことですけれども、これは同じ意見の方がさっきおられましたけれども、我々の研究の場でもPPEの不足、もうちょっとでなくなるという危機的な状況もありました。国家安全保障という観点から、国産でこれをどのぐらいまで持っておくべきなのかということを検討して、国産化、自給率を高めるということもここに明確にしていただけたらよいと思います。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
それでは、ここから参考人の先生方に御意見いただきます。
まず、内田参考人、お願いいたします。
○内田参考人 全国保健所長会、内田でございます。よろしくお願いいたします。
私からは3点申し上げます。
1点目ですけれども、9ページなどの医療拡充についてでございます。病床の確保につきましては協定は必要だろうと思いますが、先ほど谷口先生が御指摘のとおり、ふだんからのマンパワーの確保ということがないと、協定もちゃんと機能しないと思いますので、例えば診療報酬、院内感染対策、今回大幅にアップされましたけれども、そういった対応も併せて必要ではないかと思っております。
それから、外来医療の確保につきましては、感染早期は協定とか委託というものが必要な時期はあるのだろうと思うのですけれども、まん延期といいますか、ワクチンも普及し、薬剤も普及したような段階であれば、少ないところに患者が集中するという非常に大きな弊害がございますので、基本的には全医療機関で対応していただくということが必要ではないか。併せて、入院の必要性の判断などは地域医療でやっていただく必要があると考えております。
続きまして、11ページの自宅療養者や宿泊療養者についてでございますけれども、健康観察につきましては、これは医療が担当していただくほうがいいのではないか。その分、診療報酬にきちんと位置づけていただく必要があるのかな。必要であれば公費負担も上乗せする必要があるのではないか。行政が全ての感染者を管理するとか健康観察を行うというのは、これぐらいの数になりますと困難というより危険でさえあります。
続きまして、16ページ目のデータについてですけれども、先生方が御指摘のとおりですが、臨床の先生方から入力するのが非常に大変という声をいまだに聞きますので、電子カルテとかレセコンとか、そういったものと連携して簡易にデータが提供できるようなシステムというものが必要ではないかと考えております。
以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
國分参考人、お願いいたします。
○國分参考人 全国知事会、福島県の國分でございます。
地方の現場では、現在、第7波の対応真っただ中ということでございます。地方の立場から4点ほど申し上げます。
8ページ、まず第1点目、病床の確保についてでございます。次の新たな感染症に備えるとした場合、現在の規模の感染症病床で臨むのは大変厳しい状況にあることから、感染症病床の拡充、一般病床の利用についての取扱いを検討し、それに伴う環境整備に係る費用負担についても御検討いただければと考えております。
次に、10ページ、2点目、自宅療養等についてです。今後、新たな感染症へ備える意味でも、自宅療養、宿泊療養について法的に整理することは有意義であろうと考えております。ただし、現在の新型コロナにおける自宅療養者への対応については、特措法上の社会機能の維持、生活支援の観点も含めた部分であるということから、感染症法上の目的である感染症の予防と患者の医療という視点に立った上で、自宅療養等の考え方を整理していただければと考えております。
次に、12ページ、3点目、医療人材の活用についてでございます。対応の方向性には広域の人材調整が掲げられておりますが、裾野を広げるための人材育成の視点も重要と考えております。また、専門人材に関わらず、医療・介護の現場では人材の不足が課題となる事象も生じており、感染流行下においては人材派遣を柔軟に行えるなどの整理も検討の余地があるのではないかと考えております。
4点目、16ページでございます。情報基盤の整備。こちらは、HER-SYSをはじめ各種システムによる効率的な情報管理が指向されておりますが、現場から中央に迅速に情報を収集する視点だけでなく、医療機関の入力や保健所の分析など、現場の利便性にもぜひ御配慮いただきたいと考えております。なお、アクセス集中時の対応にも万全を期していただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
続きまして、中澤参考人、お願いいたします。
○中澤参考人 全国衛生部長会の中澤でございます。
委員の方々から多く御意見が出ていますので、オブザーバーとして議題の全体についての意見と要望を申し上げたいと思います。
今日の議論は、現行の感染症法等に関するコロナの経験に基づく課題、また今後の新興感染症に備える課題とその対応策についての議論と受け止めております。既に地方自治体で先行的、もしくは多くの自治体で取り組み始めている対策なども含めまして、充実・強化するためには、法に位置づけること、もしくは様々な施策がここにひもづくように改正することは、実行性を担保するという点で必要な議論であると思います。
新興感染症は、常に今後どう変化していくかなど不明な部分もあり、いざというときに対策を迅速かつ機動的に動かすために、当面、現状をステイとすることも必要であると思いますけれども、一方で、今まで御意見も出ていましたけれども、それで現場が回らず、実際は対策が行き届かないということも起きています。これに対しましては、現場がコロナの現状に見合うように回ることが必要であり、そういう意味での現場の負担軽減という視点が議論でちょっと少ないかなと感じました。
この資料の課題に対して対応の方向性として挙げていただいているのですけれども、これに応じることが行政や医療機関にとって相当の負担になることも一定考えられますので、充実・強化に加えて、例えばどこまでがっちりと2類感染症として捉えていくか。2類に対する対応の全てが必要なのかなどについても、現実的な負担軽減という面からも、今後法的な視点から加えて検討を行っていただきたいと考えております。
以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
それでは、成田参考人、よろしくお願いいたします。
○成田参考人 御指名ありがとうございます。東京都福祉保健局技監の成田でございます。
今後、新型コロナと共生していかなければならない中で、感染症法の改正の内容につきましては、地方公共団体の一つとして大変大きな関心を持っているところでございます。
また、今回、参考人となりまして、こちらの都合もあったと思うのですけれども、本日の御説明をいただきましたのが、7月29日の金曜日ということもございます。この間、国からお示しいただきました有症状者に対する検査キットの配布事業や自主検査による陽性者の登録制度の創設などに鋭意取り組んでいるところでございまして、このような中、病床から自宅療養、国・地方の役割など、多岐にわたる議論に対して的確に御意見を申し上げるには直前であったということもありまして、今後、改めて整理の上、意見を述べさせていただければと思っております。
また、今後、感染症法等の改正がどのような過程を経て、どのようなスケジュールで進められていくのかということを教えていただけますと幸いでございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○脇田部会長 ありがとうございました。
それでは、委員の先生方、参考人の先生方に一応御発言いただきました。戸部先生はもう入られていますか。まだですか。まだであれば、後ほどもし入られればお願いするとして、私、最後に意見を述べさせていただきます。
今日の論点ですけれども、現在も流行・感染拡大しているところで、今後、この流行が新型コロナに限って言ってもどうなのか、不確実性が非常に高いという状況です。そういった流行状況に対応できるように、現行の感染症法を弾力的に運用できるということが非常に重要であって、中野委員もおっしゃっていましたけれども、そのフェーズに応じた対応ということも感染症法に明記していくということで、弾力的というものがどういったものなのかということを明示していくことも必要かなと考えています。現在、どのように対処・対応できるのか。そして、将来のあるべき姿、方向性というものをしっかりここでは検討していくということが必要だと思っています。
その中でも、今、いろいろ議論がありました。発生届による全数把握についてであったり、あるいは入院・外来の医療の在り方、そしてその公費負担についてですね。それから、陽性者の入院勧告であったり、外出の自粛であったり、証明書の発行というものをどう考えるか。そして、濃厚接触者も既に同定が重点化されているのですけれども、まん延防止という確定で重点化しただけではなくて、自主的な濃厚接触者というのですか、身近な感染者がいた場合の接触者における対応というものをどうやって促していくのか。そして検査の在り方といったところだと考えています。
各論点についてですけれども、例えば8ページにあります医療の抜本的拡充というところで、感染防護であったり、感染管理の在り方、そして入院・外来機能というところですね。これは緩和に向けての制度設計であり、その際に、診療報酬や病床確保のための支援金の在り方といったものをどう考えるか。それから、高齢者施設での感染管理、医療介入ということが、感染症法で規定するものではないのかもしれませんけれども、高齢者施設での医療介入の在り方というものも感染管理に書き込んでいければ書き込むべきではないかと考えます。
そして、11ページ、一番下のポツのところで、患者の自己負担を公費で負担する仕組みということですけれども、今後、外来での治療というものがいわゆる5類的なものになっていったときに、抗ウイルス薬など高額な治療費が公費で負担可能かどうかというところを検討していく必要があると思います。
それから、15ページも様々な御意見がありました検査体制ですけれども、ここは調先生がおっしゃるように、感染研と地衛研のネットワークを基本として、今回も前回の新型インフルエンザ流行のときに感染研で備えた検査機器というものが、当初は非常に役に立ちました。そういった設備が地衛研にもしっかりと今、配備されていると思いますので、そういったものを維持・強化していくということで、もし新たなパンデミックが発生したときも流行初期の検査体制をしっかり確保するというところ。そして、その後のサージキャパシティあるいは民間検査を含めて、どのように整えるかといった論点だと思います。
それから、16ページのサーベイランス、様々な御意見があったところですけれども、私は全数把握も、もちろんやれるならやったほうがいいと思いますけれども、サーベイランスの在り方をしっかりと検討することが必要だと思っています。これは全数把握だけではなくて、どういった重層的なサーベイランス体制を構築できるかということも早急に検討する必要があると思っています。定点であれば定点、重点医療機関であったり、あるいは地域限定でやるとか。あるいは、入院あるいは重症サーベイランスといったものを行っていくということに加えて、新たなゲノムサーベイランスあるいは下水のサーベイランスあるいはG-MISの活用といったもの。
全数把握は現状、かなり厳しい状況になっていて、さらに全数がなかなか把握できないような状況に既にあるわけですから、そういった状況になってもしっかり流行状況を把握して評価できるような体制というものが必要だと考えております。
それから、17ページの研究環境のところですけれども、大曲先生もおっしゃいましたが、今回、ファースト・フュー・ハンドレッドの研究の有効性というものが、当初のクラスター対策、新型コロナウイルス感染症の流行伝播の仕方を明らかにするということで有効でしたし、オミクロン株が流行した際にも潜伏期あるいは伝播の特徴というものを理解するのに非常に有効であったということから、このファースト・フュー・ハンドレッドの有効性というものも入れ込んでいく必要があるかと思いました。
それから、18ページ、医療用物資の確保です。医薬品の国産化について検討するべきというのはそのとおりでありまして、ここは抗生物質の原料が全て海外産というところも注目して、国内生産だけじゃなくて、原材料の国産化というところにも注目していくべきではないかと考えています。
以上が私の意見であります。
ということですが、谷口先生、何か追加で御発言でしょうか。
○谷口委員 すみません、1点だけ。追加というか、私は全数把握を否定しているわけではありません。届出に頼ることが間違っていると申しただけです。届出以外で全数を把握する方法は幾らでもあります。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。先生の御意見は、届出とサーベイランスの違いを明確にすることということだったと思います。ありがとうございます。
それでは、戸部先生はまだですかね。
ありがとうございました。本当に多くの意見をいただきました。この資料に記載されている対応の方向性の考え方。それから、今日、委員の先生方、参考人の先生方からいただいた意見に沿いまして、事務局でさらに検討を進めていただくということになろうかと思います。
○岩本委員 脇田先生、戸部先生、入っていますよ。
○脇田部会長 入っていますか。分かりました。ありがとうございます。
戸部先生、今、資料1についての御意見を委員の先生方からいただきました。戸部先生からも御発言があれば、ここでいただいてもよろしいですか。
○戸部委員 すみません、遅れました。
資料の9ページ目の医療機関の対応のところですけれども、これは協定を使うということを想定されているようですが、協定というのはあくまで合意なので、医療機関がイエスと言わない限りは協定を締結できないということになります。そうすると、医療機関が非常にハードに交渉してきたような場合には、行政側がかなり妥協して協定を締結せざるを得ないということがあって、医療機関の交渉力の差が協定の内容に反映されるということにもなりかねません。そうすると、全体としては不公平感がある体制になる可能性もあるのかなと思います。
あと、協定の場合は交渉過程が外に見えない、不透明ということもありますので、いっそ都道府県が病床確保の数値目標を設定した上で、それに基づいて直接医療機関の規模とか特性に応じて、各医療機関に一定の体制整備を義務づけるという方法のほうが、負担の公平とか基準の明確性という点でよいのではないかと思います。その場合、もちろん医療機関側への手続保障というのが必要になってきますが。
もう一点は、義務履行確保の措置として、知事の勧告とか指示とか承認取消しといった公権力の行使を用いるということが想定されているようですが、契約による義務履行確保で公権力の行使を使うというのはあまりなじまないやり方で、通常のやり方としては、協定の中であらかじめ合意した上で、義務違反があった場合には医療機関から違約金を取るということが考えられてよいのかなと思います。公権力の行使を想定されているのであれば、先ほど申したように、初めから医療機関側に行政処分として行政上の義務を課すという方法のほうが整合的かと思います。
以上です。
○脇田部会長 どうもありがとうございました。
それでは、これで全員の委員の皆様から御意見いただきましたので、事務局のほうでさらに検討を進めていただければと考えています。
それでは、議題2に進みます。議題2は「新型コロナウイルス感染症の検査について」であります。事務局から資料2の御説明をお願いいたします。
○松岡内閣官房参事官 それでは、事務局より説明させていただきたいと思います。資料2を御用意ください。表題が「新型コロナウイルス感染症に対する検査について」というものでございます。
現在、新型コロナウイルス感染症の検査は、以下の病原体検査の指針5.1版に示すとおり、検体や検査対象者の症状の有無等によって、推奨される検査の種類が分類されております。
今般、新たに報告された知見を基に、無症状者の唾液検体を用いた、抗原定性検査の活用について再検討を行うというものが今回の議題でございます。
下の表を見ていただきますと、検査の対象者、有症状者、無症状者というふうに行ができておりまして、その一番下の行、無症状者のところの、縦の列は検査ごとの列になっておるのですけれども、一番右側、抗原検査(定性)のところにあります赤枠のところを見直すというものが今回の趣旨でございます。現在、この赤枠のところは※5となっておりまして、「推奨されない。(-)」となっております。こちらを今回どうするかというのが議題です。
次のページに移ります。無症状者における唾液検体を用いた抗原定性検査の臨床評価試験結果についてというペーパーでございます。
これまで抗原定性検査においては、検査性能が高いとの報告がなかったことより、無症状者における唾液検体の使用というものは推奨されておりませんでした。今般、タウンズ社より唾液検体を用いた抗原定性検査の有効性についてのデータが新たに報告されております。
結果は以下のとおりということで報告させていただきます。
対象は無症状者、合計102検体を用いたものでございます。
結果です。唾液検体における抗原定性検査及びPCR検査との比較では、陽性一致率は64.7%、陰性一致率は98.0%、全体一致率は81.4%でありました。唾液検体の抗原定性検査において、PCR検査陽性であり、抗原定性検査陰性となった18例につきましては、14例(77.8%)においてCt値が30以上、4例(22.2%)においてCt値30未満でありました。そのうちCt値20未満はなかったと聞いております。仮にCt値30をカットオフポイントとしますと、陽性検出率は87.1%となります。
無症状者の唾液検体におけるPCR検査との比較で陰性になった検体は、Ct値30以上のウイルス量が少ない検体がほとんどであったということが言えると考えております。
下は、そのことを表に取りまとめたものであります。
次のページに参ります。3ページです。無症状者における唾液検体を用いた抗原定性検査の活用について、これは事務局案でございます。
抗原定性検査においては、無症状者の唾液検体を確定診断として使用することは推奨されないが、感染拡大地域の医療機関や高齢者施設等において幅広く検査を実施する際に、スクリーニングに活用することは可能とするというものが1つの結論として考えられると思っております。これは、今までの抗原定性検査の鼻咽頭、鼻腔で判断されてまいりました判断と同じものを、今回、唾液でも扱うというものでございます。
下の表を見ていただきますと、無症状者の行のところにありますように、鼻咽頭、鼻腔は※6ということで、※6は先ほど申し上げたようなことでございますが、「確定診断としての使用は推奨されないが、感染拡大地域の医療機関や高齢者施設等において幅広く検査を実施する際にスクリーニングに使用することは可能。ただし、結果が陰性の場合でも感染予防策を継続すること、また、結果が陽性の場合であって医師が必要と認めれば核酸検出検査や抗原定量検査により確認すること。感染拡大地域の医療機関や高齢者施設等以外の有病率が低い場合には、スクリーニングの陽性的中率が低下することに留意が必要である。」と、このように限定をつけて使うことを可能としておりますが、これと同様の扱いに唾液もするということが今回の案でございます。
次のページ以降は、参考としておつけしております。4ページは、令和3年1月に議論されております抗原定性検査の実施方法についてというものでございまして、抗原定性検査でも無症状者で使えますということを言ったものでございます。
その次のページは、欧米における取扱いを少しまとめたものでございます。かいつまんで説明させていただきますと、無症状者に実施したPCR検査でCt値30未満の検体のうち93%は、抗原定性検査でも陽性となるというCDCの表記や、抗原定性検査は、感染リスクの高い密集した環境におけるスクリーニング検査に使用可能である等といったことを書いているものでございます。
また、EUにおきましては、抗原定性検査は、医療・介護施設の職員等に対する定期的な検査(2~3日ごと)に使用可能だというのがECDCのペーパーにあるということでございます。これも令和3年1月15日に出されたものでございます。
次の6ページは、これはWHOの抗原定性検査に関するガイダンスというものでありまして、迅速抗原検査キットでは、感度80%以上及び特異度97%以上の精度が推奨されるや、感度は製品の品質だけではなく、調査対象者の状態(病気の程度、発症からの日数)にもよるが、PCR検査と比較して、対象集団で最低でも80%に達する必要があるなどといったことを書いているものでございます。
次のページ、最後のページでございます。これは、今回、タウンズ社のデータが出ておりましたが、唾液検体を用いた抗原定性検査キットというものは、もう一つ、医学生物学研究所によるものが薬事承認されております。薬事承認を得た製品として医学生物学研究所のものは、今回のような無症状者でのデータというものは出されておりません。現在出されているのは承認時のデータでございます。ということで、○の2つ目に書いてありますように、承認時に提出された臨床性能試験の結果というものを参考までにお示しさせていただきました。
対象は171検体、これは症状の有無については書かれておりません。この方々について結果ということでございますが、陽性一致率は72.3%、陰性一致率は100%、全体一致率は89.5%であったというデータがございます。このようなものを見ていただきまして、先生方には御議論いただければと思っております。
以上です。
○脇田部会長 どうもありがとうございました。
抗原定性検査の無症状者の唾液検体を使った臨床評価試験結果というものがページ2にまとめられていて、その結果から、3ページのように無症状者で唾液検体を使う検査につきまして、スクリーニングとして使うことは可能とするといった御説明だったと思います。委員の先生方から御意見、御質問等あればお願いしたいと思います。
岩本委員、白井委員、谷口委員の順番でお願いします。
○岩本委員 ありがとうございます。岩本です。
これは2年前から僕、申し上げていることなのですけれども、医薬品と同様、体外診断薬もアクセルとブレーキは別であるべきで、患者数が多いときというのは、例えば感度がPCRの50%でも2人に1人でも陽性をつかまえてくれれば、検査しないよりはいいので、絶対必要だということになるのですけれども、患者数が減ってきたときに今度は偽陽性、偽陰性が問題になって、今日、賀来先生もおっしゃった精度管理が大事だということになります。精度管理はもちろん必要ですけれども、基本的に日本のシステムの中で、もっとたくさんの数でちゃんと検証しながらし、ブレーキ側(規制側)が承認した結果を国民に明らかにしていくことが必要だと思います。
ですので、患者数が急増して検査キットの容易化に反対しにくい状況になった時、われわれに意見を求めるのはやめてほしいと申しあげている。体外診断薬の信頼性がもっと上がるようにしていただきたいと思います。今まで、恐らく一旦承認してから承認取消しになったキットはないのではないですか。コロナウイルスの抗原検査キットで唾液を検体に使うのも日本だけでしょう。そういうふうに思います。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。
続いて、白井委員、お願いします。
○白井委員 白井です。
WHOとか海外のデータも示されていますけれども、そのデータが1年前の状況だと思うのですね。現在の日本で言えば、オミクロンのこれから使うものについての再現性というものが同程度なのかというのは、ちょっと疑問で検体数も少ないなと思いました。
あと、スクリーニングということで、もちろん確定診断ではないと、私たち医療者でしたら理解できるのですけれども、今、検査を望んでいる方々が、スクリーニングはどういう意味か分からないというか、実際、検査をして陰性だったらいいだろうと。陰性になりたいための検査をしたいという方々がたくさんいらっしゃいまして、そのときに提供できるようなキットになるのか、それを陽性のときには医療機関に行ってほしいということになると医療を圧迫するのではないかという懸念もありますので、この使い方を承認するだけではなくて、国民の皆様、一般の方々に分かるように示していただく使い方ということを重要視する必要があると思いました。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。
谷口委員、お願いします。
○谷口委員 谷口です。
まず、データに関しては数が少ない。スタンダードに取っているのが唾液のPCRであって、この人が感染しているかどうかを見るのであれば、鼻咽頭拭い液のPCRで見るべきだろうと思いますし、欧米のデータが出されましたが、あれは鼻咽頭のデータであって唾液のデータではないと思います。この使い方は、多くの場合には陰性を確認したいという目的で使われることが多い。厚労省もスクリーニングと明確に言われましたので、そういうことですね。そうした場合には、陽性をどのぐらい見逃しているのかということが問題になります。そこを見ると、これはかなり逃しています。つまり、院内感染とか高齢者施設内感染のリスクは、やることによって高まります。
前回の3日で解除というのも同じですけれども、いずれも感染者数を増やす方向に働くと思われます。ただ、経済社会を回すというのが目的で、これを容認する、国として経済社会を回すためには、多少漏れても、起こってもしようがないというのであれば、そういうふうに言っていただいて、これを出せばよいと思います。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。
調委員、お願いします。
○調委員 まず、恐らくオミクロンでは無症状の方がかなり減っているのではないかということが1つ。
それから、東京大学の河岡先生のところから、たしかデータが出ていたと思うのですけれども、厚生労働省で認可されている抗原定性キットの中でも、ここに使われていたものはかなり感度が高くて、中には100倍ぐらい感度が悪いものも含まれています。そういったものを使って抗原定性キットで陰性であったとしたとき、これから例えばウイルス量が増えていく時期で逃していた場合に、その後陽性になる確率というのは非常に高くなるということもあると思います。そういう意味で、症状だけで判断していくのも逆に1つの手なのではないかという気がいたしますし、ここに書かれている検査キットの結果を、ほかの承認された検査キットに演繹するのは少し危険ではないかと考えます。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
そのほか、よろしいですか。
今、岩本先生、白井先生、谷口先生、調先生から御意見いただきました。それでは、事務局から何かコメントありますか。
○松岡内閣官房参事官 幾つかお答えすることがございます。
1つは、岩本先生からおっしゃっていただいたように、もっとたくさんの患者がないといかぬのではないか。これは、ほかの先生からも多分出ていたと思います。こういったお話もございますが、すみません、こういうことを言うとみっともないのかもしれませんけれども、今までこの指針を改訂したりするような際、検討いただく際には、活用可能なデータを基に検討させていただいているところがございます。そういったところから、今回も現在活用可能な限りでのデータで議論していただいているということが、まず1つ前提としてあります。もっとやらないと判断できないということをおっしゃられるというのも1つの判断だと思いますけれども、私どもが今回出せるのはそういったお話なのかなと思っております。
また、ほかのものに演繹するのが難しいというお話もございました。これは調先生だったかと思いましたけれども、これにつきましても、今まで、例えばほかの抗原定性検査を鼻咽頭から鼻腔に広げたりしていくような段階でも、全ての検査キットについてのデータを見ているわけではないのかなと思っております。一方、今回、唾液で承認されているキットというのはタウンズと医学生物学研究所の2つでございまして、今回出てきたのはタウンズのデータだけです。今、医学生物学研究所は臨床データを取ろうとして計画中でございまして、そのデータが出てくるということもありますので、それをまた見るというのも1つの考え方なのかもしれないと思います。
あと、使い道ということなのかもしれません。スクリーニングとしての使い方をもう少しきちんとほかの一般の方々に分かってもらう必要があるということは、確かにおっしゃるとおりだと思います。このようなものを皆さんに使っていただくに当たっては、どのように説明したらいいのかということについては、我々も少し考えないといけないと思っています。問題意識としては同意いたします。
○脇田部会長 あと、今後の精度管理が必要なのではないか。つまり、こういった流行がまん延している時期には、精度がある程度一定のものがあれば使うのだけれども、流行状況がかなり低くなってきたときには、さらに検証が必要ではないか。つまり、偽陰性がかなり多くなってくる可能性もあるので、それは使い方ですね。ウイルス量が少ない人をかなり見逃すことになってしまうのではないかという線はつながるわけですけれども、その辺りでしょうか。
○松岡内閣官房参事官 確かにおっしゃるとおり、社会の感染状況において、感度というか、そういったものがまた変わってくるというのがあるので、そこは1つの課題だと思います。今までのこういうキットとか指針を見直すに当たって、必ずしもしばらく使った後の状況を見るということはしておりませんでしたし、これからもどうなるのかというのは、私も今、この場で言うのは難しいと思いますけれども、事業者と少しお話ししながら、そういったデータを取ることができるのかとか、そういうことについては相談してみるというのも私どもの考えだと思います。
○脇田部会長 少なくとも精度管理が必要で、それでしばらくたった後の見直しといいますか、承認の見直しというか、精度の見直しといったことをしっかりやってほしいという委員からの意見があったということは、議事録にも残しておくことだと思いました。
さらに御意見ございますか。よろしいですか。
それでは、事務局におかれましては、今、委員の皆様からの御意見がございましたので、その意見を踏まえて、さらに検討していただければと思います。
次に、議題3に入ります。「サル痘への対応」です。こちらも資料3が中心ですか。事務局からの御説明をよろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 どうもありがとうございます。事務局でございます。
サル痘につきまして、残り時間も12分ぐらいになりましたので、簡潔に御説明させていただきます。
まず、1ページ目、おめくりください。2ページ目になりますけれども、サル痘に関する説明でございます。
基本情報に関しましては、前回も紹介しておりますけれども、病原体に関しては、コンゴ盆地型と西アフリカ型に分かれるのですけれども、それぞれ名前がクレードというものが使われておりまして、コンゴ盆地型がクレード1、西アフリカ型がクレード2及び3に分類されるということで、現在拡大しているのはクレード3に属するというところの記載を変更しております。
また、臨床経過に関して、これまで従来の常在地域以外での死亡例はないということを把握しておりましたけれども、8月1日時点でスペインから2例とブラジルから1例の死亡例の報告がございましたので、アップデートを行っております。
次のページ、御覧ください。3ページ目ですけれども、サル痘の国際的な感染の拡大についてということで、6月23日の国際保健緊急委員会ではPHEIC、緊急事態には該当しないということを発表しておりましたけれども、再度開催されました7月21日の2回目の緊急委員会におきまして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当する旨を宣言されております。
患者数につきましては、下のほうにございますが、こちらは7月22日時点でのWHOのまとめになりますけれども、各地域から1万6000人の患者が報告されている状況でございます。
次のページを御覧ください。国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の宣言の概要ということで、暫定勧告について御説明させていただきます。この暫定勧告では、それぞれ発生状況に応じて勧告内容が異なっておりまして、国内での発生事例が見られる場合、輸入例を含めてですけれども、この場合はグループ2というところに該当するということで、まずグループ2について簡単に御説明させていただきます。
まず、連携した対応の実施ということで、特定の曝露リスクの高いコミュニティに優先的に焦点を当てつつ、対応策を実施すべきことと、そういったコミュニティの参画と感染対策を実施していくということ。
また、公衆衛生とサーベイランスという観点では、サル痘のPCR等の検査体制を強化するとともに、積極的疫学調査等の実施を行うものとしております。
また、曝露前、曝露後予防のための天然痘またはサル痘ワクチンの対象を絞った利用を検討するというのが含まれております。その中には、接触者に対する曝露の部分と、曝露のリスクの高い保健医療従事者や実験室の職員、コミュニティや性的パートナーを複数持つ方のようなリスクの高い行動をとる人々を含むという一文がございます。
また、それに加えまして、臨床現場での対応ということで、スクリーニング、トリアージ、そして、推奨される臨床ケアパスウェイと手順を確立するということが書かれてございます。
感染予防・管理に関して手順で、医療従事者へ研修・訓練を行うということも記載されております。
医療機関、医薬品、治療薬やワクチン、カウンターメジャーと言われますけれども、については、標準的なデザイン手法や臨床データ・転帰のデータの収集を行って、臨床研究の枠組みの中で有効性と安全性のエビデンスを収集していくべきであるという記載がございました。
また、国際渡航に関しましては、情報提供を実施しまして注意喚起を行う。
次のページになりますけれども、グループ1はサル痘の発生事例がない国に対する勧告で、省かせていただきます。
グループ3は、人獣共通感染症として、動物とヒトとの間での感染が発生している国に対する勧告。
グループ4が医薬品の製造能力を有する国に対する勧告ということで、我が国も該当しますけれども、日本では第3世代の天然痘ワクチン(LC16ワクチン)の製造を行っておりまして、WHOはサル痘予防で推奨するワクチンとして推奨しているということでございますが、その製造や利用可能性を向上させるということと、妥当な費用で、最も必要とされる国に提供されて、サル痘の拡散阻止の努力を支援することが記載されております。
こういった対策を受けまして、現状の取組ということで6ページ目に記載がございますけれども、国内対策として、水際、検査、ワクチン、治療薬、情報提供を実施してきております。感染症の国内対策という観点でいきますと、サーベイランスの疑い例の症例は、こまで渡航歴を含めておりましたけれども、渡航歴がなくても医師が疑う場合は保健所に相談するとなりまして、NCGMにおいて臨床対応の指針を作成して、感染症研究所においてリスク分析、リスクアセスメントの実施を行っております。
検査につきましては、検査試薬の配布が終わっておりまして、現時点で各都道府県で少なくとも1か所の地方衛生研究所では検査が可能な体制を確立しております。
ワクチンにつきましては、先日報道もございましたけれども、先週の金曜日に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会におきまして、LC16ワクチンのサル痘予防の適応追加が議論されまして、承認を可とするとの結論を得ております。それを受けまして、近日中に承認される見込みという状況でございます。
ワクチンにつきましては、同時に曝露後と曝露前の研究を行っておりまして、曝露後については、こちらはずっと行っておりますけれども、患者の接触者に対してLC16ワクチンを接種、臨床研究体制を構築しております。曝露前につきましては、既にNCGMの医療従事者を対象にLC16ワクチンの接種を実施しておりまして、その経過観察をしております。その他の曝露リスクの高い者に対しての接種につきましては、この場でも先日議論いただきましたけれども、検討を重ねているところでございます。
治療薬につきましては、こちらも前回の感染症部会で御議論いただきましたけれども、臨床研究体制の拡充を行っておりまして、現在、大阪府、愛知県、沖縄県の医療機関において、追加で臨床研究を行える体制を確立しております。
また、情報提供につきましては、先日もコメントいただきましたけれども、7ページに詳しくございますけれども、コミュニティとの情報共有、オンラインミーティング等を実施しておりまして周知を図っているところでございます。
啓発資材というものも作成しておりまして、コミュニティ内での周知を図っております。今後の更新を予定しておりまして、そのための意見の聞き取り等も行っておるところでございます。
次のページで、先週発生いたしました2例の国内におけるサル痘患者の発生の状況について御報告いたします。こちらはプレスリリースさせていただきましたけれども、両方とも渡航歴のある方でして、現在、都内医療機関において入院されている状況でございます。7月25日と7月28日、それぞれ我が国で初めてのサル痘症例となります。
今後の課題、こちらは論点でございますけれども、時間がないので御報告ベースになってしまいますが、届出基準・届出票の見直しを考えております。特に、サル痘の今般の流行においては、これまで指摘されていたこととは異なる臨床像が指摘されておりまして、それに伴いまして検体の採取ですとか、どのように臨床上扱うのかという点において検討の必要があるのではないかと考えております。
この点、10ページ目で御紹介させていただければと思うのですけれども、特に性的接触に伴うと考えられる特徴的な症状として、肛門直腸病変、口腔内・粘膜の湿疹や潰瘍などというものがございますので、検体材料は、現時点では、水疱、膿疱、血液、リンパ節に限られておりますけれども、こちらに関して、その他の粘膜拭い液等や尿等の追加を行おうと考えております。また、届出票の症状に関しましては、現在流行しているサル痘の臨床症状に合わせて、今後検討を行いたい。それに併せて、事務連絡や病原体検出マニュアル等の改訂を行っていきたいと考えているところでございます。
2つ目の論点としましては、こちらも現状、なかなか議論する時間がないのですけれども、サル痘の曝露前接種ということで、接種リスクの高い者のうち希望者への曝露前接種について、以下を踏まえて検討を行いたいと考えております。
1点目が、前回の部会で御指摘いただきましたが、我が国におけるサル痘の発生状況も含めて、サル痘のリスクアセスメントをしっかり行う。
そして、LC16ワクチンのサル痘の予防の効能追加に伴う承認の時期と内容。
そして、諸外国における取組状況といったものを踏まえていく。
接種対象者の把握等の事前準備につきましては、同時並行で引き続き行っていきたいと思っております。
厚生労働省からの報告は以上になります。
すみません、参考資料のところに、今回のサル痘のワクチンのWHOにおける推奨状況とか、曝露前接種の対象者の各国の状況。また、LC16ワクチンのサル痘に関する有効性と安全性の概要の状況を掲載しております。
事務局からは以上です。
○脇田部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、ただいま説明がありましたけれども、委員の皆様から御意見があればお願いしたいと思います。今村委員、中野委員、谷口委員の順番でお願いいたします。
○今村委員 今村です。
1点だけ確認です。肛門直腸病変に関してですけれども、届出票に加えることに関しての反対ないのですが、サル痘の特徴ではなく、今回の流行がMSM中心であるために目立っている特徴かもしれないですね。したがって、サル痘そのものの特徴として追記しても良いのかは再確認が必要だと思います。掲載するということであれば、あくまでも今回の流行を捉えるために届出票に追加するという認識でいいのかということが1点です。
もう一点は、同じ肛門直腸病変ですけれども、肛門直腸病変と書いたとき、肛門病変は見えると思うのですけれども、直腸病変は確認がなかなか難しいと思うので、一般的に直腸痛と書いたりしているところもありますから、肛門痛、直腸痛というような表現も追加するのかなど、記載方法の確認が必要かなと思いました。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
中野委員、お願いします。
○中野委員 中野です。
1点御質問させてください。今後の課題の中に曝露前接種という文言がございまして、LC16ワクチンもその接種をする対象の方が御希望の方という文言がございましたけれども、一定の方々の基準がございました。お尋ね申し上げたいのは、この疾患の位置づけとか現状の流行状況から考えて、予防接種法に基づいたワクチンとして位置づける等の今のところ御意向もあるのかどうかということです。というのは、このワクチン、定期接種に含まれるワクチンですけれども、効能効果は天然痘という疾病名で、平時は行わないわけですけれども、予防接種法にも位置づけられていますが、今度、効能の追加となったのはサル痘の予防でございますので、そういったところがこれから扱いはどうなっていくのか。
細かい議論は、もしかしたら本部会ではないかなと、予防接種の分科会等かなと考えておりますが、その辺の現状をお聞かせいただければと思います。
○脇田部会長 ありがとうございます。
谷口委員、お願いします。
○谷口委員 ありがとうございます。
届出票症例定義の改訂に関しましては、異論はございません。こういった疾患は、侵入経路によって症状が変わることがありますので、以前のウガンダのエボラも経口感染が多かったときには胃腸障害が非常に多かったという記憶がありますので、今回もそれに似ているのかなと思います。それは、今村先生が言われたみたいに、こういったことも侵入経路によって変わり得ることも記載していただいていいのかなと思いました。
2点目は、ポックスウイルスですから、痂皮によっての感染、あるいはエアロゾルもありますね。この2つの感染は、今、リスクアセスメントにおいてどう考えてみえるのかというのを御教示いただければと思います。
以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
そのほか、よろしいですか。
それでは、事務局に、今、今村先生、中野先生、谷口先生から御意見、御質問ございましたので、反応いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
まず、今村先生からの御指摘のとおりですので、今回、谷口先生のほうから御指摘ございましたが、サル痘としての特徴というよりは、侵入経路といったところの特徴という観点になりますので、検査ができないという状況が生じないように、症状がかなり微細ですけれども、まさにその辺りの記載に関しては注意するようにしたいと考えております。
また、曝露前接種の扱い、位置づけにつきましては、現時点で予防接種法上の位置づけということは考えられていない状況ではございますけれども、もちろん今後の流行状況に応じるところですが、現時点で考えているのは任意接種での接種を行う場合という状況でございます。
最後、谷口委員に御指摘いただきました痂皮、エアロゾルによる感染でございますが、こちらに関しては、実験室レベルではそういった感染の可能性は指摘されているところでございますが、現状、それによってエアロゾルによる感染が確認された事例というのは報告がないというところと。指摘があるところとしましては、医療現場等でリネン等の交換とかのときにエアロゾルが発生するような措置においてはリスクがあるということで、こちらに関しましては、リスクアセスメントとか事務連絡、臨床のガイダンス等におきましても、そういった観点もあって、医療機関の中でn95マスク等をつけた対策等々はしているところでございます。
以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
私のほうから1点。前回、感染症部会で谷口先生から、感染研の職員にLC16m8を接種したときに副反応が強い例が結構あったという御発言がありました。私、そのときまだ感染研におりませんでしたので、所内で担当部局を含めて事実確認してみましたので、御報告します。
感染研では、研究内容などでワクチニアウイルスなどオルソポックスウイルスを扱う研究者に対して、希望者にLC16m8、m9ワクチンの接種を行ってきましたが、これまで接種後の強い副反応について相談を受けたという報告はありませんでした。
なお、所内の接種事例では、平成11年度に実験室研究者のボランティア24名に接種した際の観察記録が、厚労科研の報告書にも記載されております。24人全員で発熱等の全身症状の副反応は見られておりませんでした。初回免疫の4人全員で、接種部位に水疱性変化を主体とする変化が生じ、全例で所属リンパ節腫大、これは10ミリ大ぐらいまでということですけれども、一過性に見られて、腫大したリンパ節は柔らかく、軽度の圧痛が見られたということでした。3週目にはリンパ節の腫大は減弱したとのことです。種痘歴を有した残り20名では、所属リンパ節の腫大は観察されず、圧痛も認められなかったとのことでした。
所内の接種については、重大な有害事象以外の副反応評価については、記録そのものはほとんどないという状況ですが、少数例ですけれども、客観的な観察に基づく記録が残されておりましたので、それについては信頼性が高いのではないかと考えておるところです。
以上、御報告しておきます。
さらに何かございますか。よろしいですか。
それでは、こちらも委員の皆様から御意見いただきましたので、引き続き事務局で検討を進めていただければと思います。
それでは、準備した議題は以上になりますので、事務局にお返ししたいと思います。
○杉原エイズ対策推進室長 どうもありがとうございました。
委員の皆様の御意見を踏まえまして進めさせていただきたいと思います。
次回につきましては、事務局より改めて御連絡させていただきたいと思います。
本日、時間が超過してしまいまして、申し訳ございませんでした。お忙しい中、御出席いただきまして、どうもありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
○脇田座長 ありがとうございました。

※部会終了後、成田参考人から議題(1)「現行の感染症法等における課題と対応等」について提出のあった御意見は以下のとおり。
 
現行の感染症法等における課題への対応の方向性について
 
(1)感染症に対応する医療機関の抜本的拡充
・都道府県が医療機関と医療提供体制の確保に関する協定を締結する場合には、その前提として、救急医療を含む通常医療との両立を図りつつ、新型コロナウイルス感染症の拡大期において確実に医療が提供できるよう、国において、医療機関における環境整備や人材配置への支援、診療報酬の仕組みの整理など必要な対応を行うこと。
・全ての医療機関にて発熱外来に対応できるようにすること。
・国立病院機構、地域医療機能推進機構など国所管の公的病院において、中等症以上の高齢患者を積極的に受け入れること。
 
(2)自宅・宿泊療養者等への医療提供体制の確保等
・自宅・宿泊療養者の医療費は入院医療と同様に、患者自己負担分を公費負担する仕組みを検討することに関して、今回の新型コロナウイルス感染症は、広域にわたり災害級の被害をもたらしたものとして国が対応するべきものであり、全額を国の責任において負担すること。
 
(3)広域での医療人材の派遣等の調整権限創設等
・広域的な応援職員派遣の体制整備を行うこと。
 
(4)保健所の体制とその業務に関する都道府県の権限・関与の強化等
・人命にかかわるような緊急時の入院勧告・措置について、都道府県知事が保健所設置市・特別区の長に指示できる権限の創設を検討することに関して、都は、感染症対応における都と保健所の役割分担を実態上整理し、自宅療養フォローアップセンターや「うちさぽ東京」など、健康観察・フォローアップ体制を強化して広域的に対処してきた。緊急時には、都が行ってきたこうした取り組みなど保健所設置市と都道府県知事が一体性・統一性をもって感染症対策ができる仕組みを構築すること。
 
(5)検査体制の強化
・検査キットなど医療用物資を戦略的に確保すること。
 
(6)感染症データ収集と情報基盤の整備
・医療機関によるHER-SYSの入力を推進するとともに、システムの改善等に際しては自治体や医療機関等と十分な対話を行うこと。
 
(7)治療薬の研究環境の整備
・国産の治療薬の開発支援や流通の改善、医薬品等の効率的な備蓄のための検討を行うこと。
 
(8)医療用物資等の確保の強化
・検査キットやワクチン、防護服など、感染症医療に必要な医療用物資について、確実に供給を行えるよう、国においてサプライチェーンを把握し、戦略的に確保すること。
 
(9)水際対策の実行性の向上
・水際対策を含め、海外で新たな変異株が発生した際の迅速に対応すること。