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第45回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録
日時
令和4年6月30日(木) 13:00~15:00
場所
AP虎ノ門11階B室(オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)
出席者(五十音順)
- 阿部 彩
- 宇南山 卓
- 岡部 卓
- 小塩 隆士 (部会長)
- 新保 美香
- 栃本 一三郎(部会長代理)
- 山田 篤裕
- 渡辺 久里子
議題
- 過去の生活保護基準見直しによる影響分析について
- 全国家計構造調査のデータの取扱い等について
- 生活扶助基準の体系の検証について
- その他
議事
- (議事録)
- ■小塩部会長 定刻になりましたので、ただいまから第45回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
事務局より、本日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。
また、オンラインで出席されている委員の方がいらっしゃいますので、会議での発言方法等についても改めて御説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 まず、本日の委員の出欠の状況でございますが、全ての委員に御出席をいただいております。
傍聴に関しましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、本日は一般の方の傍聴は御遠慮いただいており、報道機関の方のみの傍聴とさせていただいております。
議事録につきましては、後日ホームページに掲載をいたしますので御承知おき願います。
また、事務局側において幹部の交代がありましたので、御紹介をさせていただきます。川又社会・援護局長でございます。
それでは、局長から、一言御挨拶申し上げます。
■川又社会・援護局長 お疲れさまです。6月28日付で社会・援護局長を拝命しました川又と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
皆様方におかれては、昨年度からこの部会におきまして議論いただいているということで、心より感謝を申し上げたいと思います。
生活保護制度が最後のセーフティーネットとして有効に機能し、国民の信頼、納得の得られる制度であり続けられるような、必要な検証・検討を進めてまいりたいと思います。現行の生活保護基準につきまして、専門的かつ客観的に評価検証していくというのが、この部会のミッションでございますけれども、引き続き忌憚のない御意見を賜りたいと思いますし、それぞれの御専門の知見を存分に発揮して御議論をいただきますよう、何とぞよろしくお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 続きまして、本日の資料でございます。
議事次第に続きまして、
資料1 過去の生活保護基準見直しによる影響分析について(追加資料)
資料2 全国家計構造調査のデータの取扱い等について
資料3 生活扶助基準の体系の検証について
参考資料1 被保護者調査(概数)の結果(令和4年3月分)
参考資料2 水準均衡方式導入以前における第1・十分位に関する記述について
となってございます。
資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
会議の進行に当たりましては、お手元の資料を御覧になりながら御参加いただければと思いますけれども、事務局からの資料説明の際には、Zoomの画面上にも資料を表示するようにいたします。
また、会議中、発言を希望される際は、カメラに向かって挙手をお願いいたします。部会長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は再度、マイクのミュートをお願いいたします。
それでは、これからの議事運営につきましては、小塩部会長にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
恐縮ですが、カメラ撮影の方は御退出いただきたいですけれども、よろしいですね。
それでは、早速本日の議事に入りたいと思います。事務局から関連する資料について、御説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 まずは本日の議題とはなっておりませんけれども、先に参考資料2「水準均衡方式導入以前における第1・十分位に関する記述について」の資料を御覧ください。
前回第44回の基準部会におきまして、栃本部会長代理から、昭和58年の変曲点分析以前から生活扶助基準の一般国民との消費の比較に当たっては、第1・十分位の消費水準に着目してきたことについて御発言がありまして、それに対しまして、渡辺専門委員から、第1・十分位が歴史的にどう扱われてきたか勉強不足なので資料を示してほしいという旨の御意見があったところでございます。
今回、事務局から提出させていただく資料は、昭和39年12月16日の「生活保護水準の改善についての中間報告」という当時の中央社会福祉審議会生活保護専門分科会の報告書の抜粋となります。
下線部分を見ていただきますと、第1・十分位階級の消費水準の動向に着目した改善を行うことがとくに必要とされているところでございます。昭和39年12月は、翌年度から改定方式が格差縮小方式に切り替わるタイミングでありまして、水準均衡方式導入以前から第1・十分位に着目してきたことを示した資料となっています。
下段の(参考)にありますように、直近の社会保障審議会生活保護基準部会の報告書、平成29年12月14日のものでありますが、ここにおきましても、従前から比較対象分位として参照してきた年収第1・十分位の平均消費支出額について確認を行い、夫婦子1人世帯の生活扶助基準については、年収階級第1・十分位の世帯を比較対象とする所得階層と考えることが適当であるとされているところでございます。
資料の説明は以上になります。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいまの資料は栃本部会長代理からの発言に関するものでしたけれども、栃本部会長代理のほうで何か補足していただくことはございますでしょうか。
■栃本部会長代理 それでは、前の部会でも生活の履歴効果とかの話を少し説明したらどうかということもありましたが、部会長からただいま資料に関して補足があればということでご指名を受けましたので、それらを含めてお話をさせていただきます。生活の履歴効果や家計調査との関係についてということです。
私はもともと専門は福祉ではなくて宗教社会学なのですけれども、今から申し上げます籠山先生であるとか、中鉢先生については大学院時代、様々な形で直接御指導いただきました。いわゆる生活構造論というのは東大の青井和夫先生の生活構造論と、もう一つ、中鉢先生の生活構造論という2つがありまして、私が大学院の頃は2つの競争講座みたいな形で開講されておりました。青井先生の理論社会学的な社会学の生活構造論と、今申し上げます生活問題や貧困問題、貧困研究、階層転落と履歴効果などの実証的に見出した生活構造論の両方を学んだのです。当時まだ若かったのですけれども、すごい実証研究であると思いました。当時の記憶と後の歴史研究から簡単に報告いたします。
生活の履歴効果についてですが、委員の方々は御存じの方は多いのですけれども、少し述べさせていただきます。昭和22年とか昭和23年頃から家計調査が盛んに行われるようになりますが、GHQもそれを命じます。最低生活と最低賃金、特に最低生活費を実際に出す作業というのを旧生活保護法のときに行うわけなのですけれども、新生活保護法は法の仕組みということなのですけれども、旧生活保護法のときに最低生活費を出すという作業に取り掛かるわけで、極めて重要な、厚生省でCPSを用いて一般生活者の何%になるのかという技術的にかなり細かな指摘をGHQが作業を行っております。
生活の履歴効果について少し述べさせていただきます。昭和22年、23年頃から、先ほども申し上げましたように家計研究が盛んになるわけなのですけれども、その中で、籠山先生、中鉢先生が、辻村江太郎先生であるとか、奥村先生等、経済学者とともに議論するということになります。経済学者の方々が、お二人の生活の履歴効果について真剣に受けとめていました。中鉢先生も籠山先生も生活構造というものがあって、その中で消費行動、エンゲルの法則がどのように出るのか、逆の法則が出るのではないかということで履歴効果ということを論じます。
お二人の研究者にとって重要なのは、生活構造というものがあっての消費行動だということです。ただ、当時の経済学者や家計研究者は必ずしも生活構造という枠組みで消費の分析をしておるわけではありません。生活は階層転落しても一挙に下がるとは言えず、消費が直線的であるとか、ないしは湾曲して下がるということもあります。生活が階層転落しても一挙にすぐに下がらずに、消費が直線的ではなく、もちろん当時も直線的な解を出す経済学者もいました。しかし、直線的ではなくて湾曲して下がるということがあります。また、下がるものと下がらないものがある。そして、さらに収入が下がると、やはり持ちこたえ切れず消費が下がるということになるわけです。それをエンゲルの法則が通らない部分があるとかいうことも言います。
そういうことを思い出しながら、戦後における最低生活費の展開過程において、家計研究の歴史的文献からもう一度確認作業をしましたが、エンゲル法則の停止、最低生活費ということと支出拡張線というのがあるのですけれども、支出拡張線の適用、エンゲルの法則と履歴効果という枠組みというような事柄です。
1935年のアレン・ボーレーの家計質論において、限界生活費というものが議論の出発点としてあります。その後、エンゲル法則の提出する点を最低生活と見直すというような議論が展開されてきます。そういった議論に加わったのがGHQなのですけれども、生活保護の運用と解釈にも出てきますが、これは1959年の大阪市立大学の戦後における最低生活論の展開過程であるとか、昭和23年8月に当時の総理庁統計局が配りました「消費者価格調査とは」というような資料説明、また、小山進次郎さんが事務官として数人の事務官とともに書いた「生活保護の基本問題 生活保護百問百答」というものを読み直してみました。宇南山先生が審議会で話されたことは、とても平易に話されておられますが、実に戦後の今申し上げています最低生活費論の中でも議論されてきたものと一脈通ずるものでありました。
生活の履歴現象については、中鉢先生もエンゲル線が曲がっているとか湾曲せざるを得ない理由として、生活の利益効果、履歴現象からこの意味づけをしています。一般に生活がある変化に直面すると、ただちにその変化に順応しないで抵抗する、そして、一定の抵抗期間を置いて、初めてその変化に応ずるようになる、これが履歴現象です。そして、そのような履歴現象は賃金労働者、給料生活者、自作農、小作農といった形で現れ方が異なってくる。それぞれの履歴現象が違うのは生活構造が違うからと述べています。それの代替が基準部会で前に出された基準額との比較検証に至って参考すべき世帯属性の部分です。
エンゲル線が所得無関係な支出に対して一定の数を保持するのは、生活構造が構造的変化を遂げるに至る一定期間、すなわち履歴間の間ということになります。そのように説明しています。
最後に、籠山先生は次のように述べられています。被保護者の生活構造を収入階層別に検討した結果、飲食費以外の費目においても湾曲線上の額をそれぞれ測定してみると、ここに示した飲食物費が湾曲線上にある世帯の各費目の実際額よりも低いことを見出して、飲食物費以外の限界線は飲食物費よりも遅れて現れるが、そして、そのように限界を示す順位に差があることは分かるが、何が最も早く限界が現れてきたかというところで、最低生活費を決めておかなければ危険であって、そうでないと、結果的に下げて終わることになると籠山先生は論じられています。
ということで、戦後間もないときに、家計研究というのは最低賃金の算出を実際に出す作業という軸と、もう一つは生活保護基準ということで、多くの研究者が加わり検討したということになります。家計の消費分析において重要なものだったということです。そして、その当時であっても、生活の履歴効果自体はあるのですけれど、それを家計分析であるとか消費分析に当てはめるときに技術的、また、分析方法などについては、当時から議論が行われてきたということであります。
以上、ちょっと長くなりましたけれども、それについての説明をさせていただきました。
前回の基準部会で、渡辺委員から第1・十分位が歴史的にどうされてきたか資料を出していただきたいという話がありました。今日、私が説明するのもそうなのですけれども、まずは研究者として自分で調べて、どうしても分からなかった場合には事務局にお願いするという体制であると思います。本来、部会の専門委員の役割は審議に加わるということではなかったと思うのです。ということで、事務局からちょっと説明してもらえますか。
■小塩部会長 事務局から説明をお願いします。
■池上社会・援護局保護課長 分かりました。御説明いたします。
社会保障審議会の各委員の役割については、社会保障審議会令のほうで定めがございます。それを見ますと、専門委員につきましては社会保障審議会令上、専門の事項を調査させるために必要があるときに審議会に置くことができるとされております。審議することを役割としている本委員や臨時委員とは異なる役割となってございます。また、議決に関しましても審議会の議事は本委員及び臨時委員の出席者の過半数で決することとされており、これに専門委員は含まれておりません。
このため、専門委員の役割といたしましては、審議そのものに関わるというよりも専門的事項に関し審議する上で必要な情報を御提供いただくことと考えてございます。
■小塩部会長 栃本委員、よろしいでしょうか。
■栃本部会長代理 ということで、本来、部会の専門委員の役割というのは、審議に加わるということではなくて、専門的事項を調査するという役割だということです。そういうことから、それに沿った発言を今後も一層期待するということです。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
議題に入る前に、ちょっとこういうお話をさせていただきますけれども、厳密なことを申し上げますと、審議会の審議は本委員、それから、臨時委員で行うということが定められているのです。一方で、やはり専門的な事項については専門委員の方の御意見を参考にして、本委員、それから、臨時委員で議論していくということも必要ですので、それぞれの立場から役割を踏まえた発言をしていただければありがたいなと考えております。
渡辺専門委員、いかがでしょうか。
■渡辺専門委員 立場を踏まえてということなのですが、参考資料2についてです。格差縮小方式のときに10分の1が使われており、歴史的に10分の1が使われていたことを示す資料と受けとめましたけれども、それがゆえ現在の水準均衡方式においても同じように10分の1を使うことが適当なのかについては、そもそも格差縮小方式のときの10分の1が、どういう文脈で、どういう目的で使われていたのかを踏まえる必要があります。
格差縮小方式のときの時代背景がどうだったかと申し上げると、大変景気がよくて、一般世帯の消費水準がかなり上がっていった。物価もその間、急激に上昇してきていた時代です。被保護世帯の消費支出が一般世帯の下位10分の1と比べても著しく低く、エンゲル方式のままで改定を続けると、被保護世帯だけ取り残されてしまうということが懸念されていました。なので、せめて一般世帯の10分の1での消費支出の伸び率以上に生活保護基準を改定するということが決められていったと思います。重要なことは、消費支出そのものと保護基準が比べられていたわけではなくて、伸び率をそれ以上にすべしとされたことで、かつ目標とされたのは下位10分の1の消費支出と見合うようにというところではなくて、中位世帯の消費支出の6割程度が目指されたわけですので、いま議論している10分の1とは使われ方が全く違うわけです。
また同時に、ある意味での理論生計費方式であるエンゲル方式から算出された保護基準を下回らないように、保護課ではエンゲル方式での確認もされています。格差縮小方式とエンゲル方式の2つの算定方法から保護基準を確認しつつ、改定率については一般世帯の下位10分の1の伸び率以上にするとしていたと理解しています。となると、今議論している一般世帯の下位10分の1の消費支出との比較と、格差縮小方式の時に使われた改定率は全く文脈が違うわけです。歴史的に10分の1が使われていたからといって、その10分の1という数字だけ独り歩きさせて、10分の1だけをピックアップするということは全く根拠がありません。なぜならば、全くコンテキストが違う中で使われているからです。
ですので、歴史的にと使う場合には、同じ文脈で同じ方法として使われていたのかというのが重要になるのではないかと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
議論がこれからどんどん展開するということでありますと、ちょっと時間が足りなくなりますし、参考資料2は議題ではございませんので、この点についての議論はここまでとさせていただきたいと思います。
岡部先生、お手が挙がっているようなのですが、申し訳ないですけれども、予定している議事に移りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入らせていただきます。
事務局から資料1について説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1「過去の生活保護基準見直しによる影響分析について(追加資料)」の1ページを御覧いただければと思います。こちらは前回5月の部会で提出しました生活保護受給世帯と一般世帯の社会的必需項目の不足状況の推移を表したものですけれども、前回の部会において、標準誤差等について御指摘がございました。これを踏まえまして、それぞれの数字の下に山括弧で標準誤差を追記しています。また、平均の差が標準誤差の1.96倍より大きい場合は、該当箇所にアスタリスクを表記しています。1ページ目が高齢者単身世帯、2ページが高齢者2人世帯、以降、母子世帯、その他の世帯と同様の対応をしております。
資料1の説明は以上でございます。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいま事務局から資料1についての御説明がありましたが、この点について御意見・御質問等はございますでしょうか。
山田委員、お願いいたします。
■山田委員 補足資料をありがとうございます。かなりサンプルサイズが小さいので、どれくらいの差を見ればよいのかというのが分かって大変助かりました。
こちらの追加資料でようやく社会的必需項目に関する影響について言えることが出てくると思うのです。少なくとも2つ、この使い方としては比較ができると思います。
一つは、生保世帯の時系列での比較、基準引き下げによる影響分析そのものです。もう一つは、生保世帯と一般世帯との比較という2つのことに、この貴重な図表というのは使えるかと思います。
生保世帯の時系列での比較で言えることは、私は2つあると思います。
第1に、基準引き下げによって、特に被保護高齢2人世帯での衣食に関する社会的剥奪状況は、どうやら悪化したのではないかということが言えるかと思います。具体的には、肉、魚、豆腐などタンパク質の摂取の頻度、これが摂れていないという人の割合が高まったりとか、あとは新しい下着の購入頻度、こちらについては星はついていないのですけれども、かなり大きく、ぎりぎり表としては出るかなというぐらいで悪化している。
第2に、傷病者、障害者世帯を含むその他世帯の単身世帯での衣類に関する社会的剥奪状況を悪化させたのではないかということです。具体的には5ページのQ4の新しい下着の購入頻度、ほとんど購入しないというのがかなり増えてしまったということです。
この2つが言える。
あと、2つ目の使い方としては生保世帯と一般世帯の比較ができるということですけれども、これも2つあります。
1点目としては、基準額が今回は大きく引き下げられなかった被保護母子世帯も含めて、全般的に被保護世帯というのは、どの世帯類型でも冠婚葬祭への出席ができないという人の割合が、一般世帯と比べて1桁以上高くなっているということです。
2点目としては、1点目と関係するかもしれないですけれども、急な出費対応も一般世帯と比較して1桁ぐらい割合が高くなっている。
こうすると、社会参加の状況、これはずっと議論していて、例えば社会参加ができるとか、人前に恥をかかずに出られるというのは非常に重要な、アマルティア・センも貧困に密接なファンクション、機能だと言っていますけれども、ここの部分について被保護世帯全般は劣位してしまっているということが言える。
そうすると、以上をまとめると、やはり懸念事項としては、今回、もしこれ以上生活保護基準を引き下げることになれば、一般世帯と比較して、社会的剥奪の状況は今申し上げたように悪いですし、被保護世帯でも基準額を引き下げたことによって悪化した世帯類型もあるので、状況が深刻化する懸念を非常に注視する必要があるのではないかと思いました。
改めてこの星をつけていただきましてありがとうございます。
私からは以上です。
■小塩部会長 貴重な御指摘をありがとうございます。
他に御意見はございますでしょうか。
事務局から追加の御説明があるようですのでお願いいたします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 山田委員、御意見ありがとうございます。
一点補足させていただきます。御指摘にありました高齢2人世帯ですけれど、高齢2人世帯の基準額は、どちらかというと上がっていたかと思いますので、補足させていただきます。
併せまして、そういうことで誤差の程度についてこの資料中に表示させてはいただいておりますが、脚注にもありますとおり、それ以外の要因によって、こうした数字というのも動き得る可能性がございますので、その点についてはどうぞ御留意の上、御覧いただければと思います。
■小塩部会長 山田委員、よろしいでしょうか。
■山田委員 補足をありがとうございます。非常に重要な点の補足だと思います。
前回の第44回の参考資料2の29ページ以降を見る限り、確かに御指摘のように保護金品の増減と基準引き下げの動きというのは必ずしも一致しないので、基準全体の引き下げ、それから、実際に保護金品が上がったか下がったかというのは一致しないというのは気をつける必要があります。ですから、ぜひそういったところで、次回調査をするときには、これは前回も指摘させていただきましたけれども、基準額が引き下がったことによる低下なのかどうかというのが分かるような形で統計を取っていただくと、今のようにどのように解釈すればいいのかという、ちょっと曖昧な点がなくなるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
■小塩部会長 貴重な御指摘をありがとうございます。
他はいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、次の議事に移りたいと思います。
事務局から資料2の説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料2「全国家計構造調査のデータの取扱い等について」を御覧ください。こちらは前回5月の部会で資料2としてお示ししたものについて、一部内容を追記したものとなります。
まず、5ページを御覧ください。前回5月の部会において調査対象月に関する事項の検討に当たり、全国家計構造調査の調査対象月である2019年11月の数値について、家計調査による生活扶助相当支出額の月次動向の平均値が高かったことから、一部のサンプルに引っ張られている可能性があるということで、中央値を見てはどうかという御指摘がございました。これを踏まえまして、各月の数字の3段目に中央値をお示ししておりまして、例えば11月の一番上の部分、夫婦子1人 勤労者世帯の年収階級第1・十分位では、前年対比でプラス24%という数字であったところです。2019年11月の中央値は平均値ほど高いということではありませんが、同様に前年対比で増加という結果になっていましたので、資料の9ページの留意事項など、他の部分については変更しておりません。
続いて12ページを御覧ください。基準額との比較検証に当たって参考とすべき指標について、前回の部会の御議論を踏まえて修正・追記をしております。
まず、3つ目のマルとして、年間可処分所得の中央値に対する比率を盛り込んでおります。こちらは夫婦子1人世帯における年間可処分所得の中央値に対する年収階級、第1・十分位の年間可処分所得の平均の比率を見て、年間可処分所得の中央値を基準として、年収階級第1・十分位の年間可処分所得が相対的に減少、すなわち貧困の度合いが高くなっていないかを確認するというものでございます。
もう一つは、最下段の点線の中ですが、世帯属性を追記しています。こちらは世帯の基本的な状況として、配偶者の就業状態、子供の就学状態、貯蓄・負債の状況について確認し、その変化が直接的に評価に結びつくものではないものの、世帯の属性として大きな変化がないかを確認するものとしております。
資料2の説明は以上でございます。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいま事務局から資料2について説明をしていただきましたが、御意見・御質問等はございますでしょうか。
阿部委員、お願いします。
■阿部委員 12ページのところについて、意見を申し上げたいと思います。
まず、1つ目のマルについては、これは昔から行われている方法で、真ん中の所得の世帯との差異を調べるといったところかなと思います。2つ目、3つ目のところもこれまで行われてきたエンゲル方式の食費以上に、それ以外に固定経費という割合で比べているものです。これは以前も申しましたけれども、前回のときの第1・十分位の固定経費割合、例えばそれが25%だとしますけれども、その25%が妥当な数値かどうか、それが最低生活を保つのに妥当な数値と言えるのかという検証をしたわけではありませんので、これが前回と同じ比率だからといって最低生活が満たされているかどうかは分からないということを申し上げたいと思います。
世帯属性というのが新しいところで、そこの中で、例えば第1・十分位と前回と今回で大きく世帯属性が変わったようなことがないかというのを調べるというのは、もちろんそれは重要なステップであるかなと思いますけれども、たとえ同じだとしても、また変わっていたとしても、変わっていたら比較できないことになるわけですけれども、同じだとしても、それが前回の第1・十分位の人の属性と今回の第1・十分位の人の属性が同じだということだけをもって最低生活が満たされているかどうかの検証にはならない。
ということを考えますと、やはりこれ以外の何か、実質の生活水準を示すようなもので、前回の第1・十分位と今回の第1・十分位を比較する。前回の第1・十分位が最低生活費が満たされているという判断をしたことを出発点とするのであれば、それを行う必要があるかと思いますし、今言った前提が成り立たないのであれば、今回のもので見て、最低生活を満たされているかどうかというのを所得以外、また、消費実態以外のデータを持ってきて見る必要があるのではないかなと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
後でまとめて、必要に応じて事務局より対応していただきたいと思うのですけれども、他に御意見がございましたらお願いいたします。
岡部委員、お願いいたします。
■岡部委員 私も同じ12ページの箇所で、最初の中位所得層における消費水準の比率という点についてです。これは先ほど渡辺委員が大変貴重な指摘をしてくださいました。また第1・十分位は、先ほど栃本委員が、格差縮小方式から導入されていることを御説明して頂きました。これが出されたのは1964年の資料を基にということですが、もう一方で、1983年の12月に中央社会福祉審議会で生活扶助基準及び加算の在り方について意見具申が出されております。その中で、水準均衡方式の導入に当たっては、一般国民の消費実態との均衡がほぼ妥当な水準である、そして生活保護世帯と低所得世帯の生活実態を常時把握しておく必要がある。そして生活扶助基準の妥当性の検討を常時行う必要があるということを述べています。
そこで、一般世帯との均衡を図るという箇所では、中位所得、ここでは第3・五分位も比較を行うということは、これは水準均衡方式が導入のときに言われています。第1・十分位だけで考えるということではなく一般国民との生活消費実態との均衡を図ることをまず押さえて、それから、低所得世帯、被保護世帯の実態を把握して、そこで見ていくということが大事であるとしています。先ほど渡辺委員がおっしゃっていた第1・十分位が独り歩きをしないように、ここで水準均衡方式の妥当性を検証していくということが大事ではないかと思っております。これはこのことに関連してということですので、特に事務局から応答いただかなくても結構です。
以上です。
■小塩部会長 岡部委員、ありがとうございました。
山田委員、お願いいたします。
■山田委員 今、12ページのほうが議論になっていますので、そちらから申し上げて、その後、駆け込み需要の反動について申し上げたいと思います。
まず、参考とすべき指標について、色々と御検討くださりありがとうございます。これを見て少なくとも他にも、これを全部やってくださいというのではなくとも、3つほど追加的に参考指標が考えられるのかなと思いました。
第1点目としては、先ほど渡辺委員が専門見地から非常に重要な指摘をしていただきましたけれども、今日も冒頭にお示しいただいた参考資料2に第1・十分位に関する記述があって、渡辺委員の御指摘のとおり、第1・十分位階級の消費水準の動向に着目した改善を行うことが特に必要とされているのですけれども、された理由が歴史的なコンテキストで重要なわけです。この時期、この場合は全都市勤労者世帯の第1・十分位ですから、我々が第1・十分位と言っていたものとは少し違っていて、5万人以上規模の都市に住んでいる勤労者世帯。その第1・十分位の伸びのほうが、第2・十分位の伸びよりも実質上昇率に換算して実は2.3%高かった。だから第1を使ってみましょう、それが歴史的なコンテキストになります。
それまではどういうものが参照されていたかというと、5分位とか4分位での消費水準というのが観察されてきたわけです。ですから、この時期、第1・十分位が非常な勢いで、消費水準の伸びが実質的に第2・十分位に比べて高かったということが重要なのです。それが歴史的なコンテキストで、これは釈迦に説法な先生方もいらっしゃるかと思いますけれども、重要なコンテキストになるかと思います。したがいまして、もしこれを重視するのであれば、やはり所得第1・十分位とか所得第1・五分位の消費とか可処分所得の実質的な伸びについては見る必要があるかと思います。それが1点目です。
第2に、第1所得十分位が適切かどうか観察するのは、やはり消費額の適切さを、消費水準自体を見て判断するというのは難しいので、これは阿部委員と同じ意見なのですけれども、何か消費額以外の別の指標を持ってきて評価するということが重要かと思います。
第3は、今回も、これはコロナ禍のデータではないのですけれども、気になっているのは、生活保護世帯が受給している学習支援費でさえ申請しない人がいるのと同様に、生活保護を申請しない人というのがかなり存在するということが懸念されています。具体的には、もし第1所得十分位を何か見るのであれば、やはり気になるのは、資産とか何かも勘案して生活保護基準未満の人がどれだけ含まれているのかというのは見ていく必要があるのではないかと思います。
特にその割合がどれほど高いのか、その割合が前回と比べてどれほど高くなったのか、低くなったのか、要するに第1所得十分位にその生活保護基準未満の人たちが多く含まれているのであれば、当然ながらそこに引っ張られて、第1所得十分位を基準とした場合に物差しがかなり狂ってしまう可能性がありますので、ぜひこの第3番目については御検討の上、お示しいただければと思います。
とりあえず、12ページについては、この3点です。
駆け込み需要反動については続けてお話ししてもいいですか。それとも12ページの話に集中していますので、ここで一旦区切ったほうがよろしければ、区切らせていただきますけれども、部会長、いかがでしょうか。
■小塩部会長 それでは、恐縮ですけれども、12ページの話に限定して、他の委員の方々の話を伺った後で、山田先生に駆け込みの話を伺いたいと思います。よろしいでしょうか。
■山田委員 かしこまりました。
■小塩部会長 それでは、基準額との比較検証に当たって参考とすべき指標、12ページの議論ですけれども、他に御議論はありますでしょうか。
渡辺専門委員、お願いいたします。
■渡辺専門委員 岡部先生の御指摘のように、水準均衡方式といった場合には、近年は一般の平均的な世帯の6割とか7割を目指して、それをもっておおむね均衡というような指標にされてきているのが、少なくとも2000年代以降の話かと思います。なので、この指標が水準均衡においては重要ということは理解します。
ただ、前回の検証においては、このまま一般世帯との均衡で水準を決めてよいかということが懸念されたわけです。そうすると、その懸念が払拭されるような指標が選択されるべきと考えます。そうすると、これは単純に相対的な評価で決めるということですので、第3・五分位も第1・十分位も下方にシフトしていれば、ここで言う格差は拡大していないように見えるかもしれないですけれども、割合で見るということは、結局分母分子が下がっていた場合、それは下支えとなる水準を下回ってしまう懸念があるわけです。そうすると、参考とすべき指標については今回の検証に当たっては適当ではないのではと思います。
同じ文脈で言うと、年間可処分所得の中央値に対する比率というのも基本的には1番目の中位所得層に対する消費水準の比率というのと考え方は大きく変わらないと思います。何かの割合で考えて、その割合が変化していないかどうかを、参考指標とするというのは今回の検証、特に前回の検証を踏まえるならば、適切ではないだろうと考えます。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
他に12ページにつきまして御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、事務局より今委員の方々からいただいた御意見について、現時点で回答していただけることがございましたら、よろしくお願いいたします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 委員の皆様、御意見ありがとうございます。
まず、お話としまして、第1・十分位を前提とすることについて、ということが、一点、懸念として挙げられていたかと思います。この点に関して申し上げると、本日の資料2の11ページなどにも掲載させていただいております、こちらは第43回の基準部会で示されておりました検証作業の進め方に沿った内容になってございますが、その第43回の進め方の中で示されておりますのが、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位というのが、直近の29年の検証結果でこの階層が妥当とされたということを踏まえて、今回も基本的にこちらを比較の対象とすることとなってございます。ただし、この際に、29年検証時と用いた集団というのが大きく変化していないかどうかという観点から参考とすべき指標で確認しましょうとなっておりますので、これに沿って、今回資料12ページの指標を提案させていただいております。まさに5年前に参照した集団と大きく変化していないかという観点から、この指標を提案させていただいて、これで確認していただくという作業の進め方に沿っているものだと承知しております。
もう一点あったのが、相対的な比較によってのみに評価するということでは十分ではないのではないか、という御懸念が指摘されているかと思います。これに関しましては、まず、生活保護基準部会での議論の前提としまして、生活保護において保障すべき最低生活の水準は一般国民の生活水準との関連において捉えるべき相対的なものであるということから、検証に当たって比較対象とする集団について、中位や中央値などとの相対的位置関係を確認するということは基本的な考え方だと承知しております。特に中位所得層の消費実態に対しての比率というのは、御指摘の中にもありましたけれども、過去から参考指標として参照してきている経緯がございますので、今回も提案させていただいているということでございます。
一方で、併せて御指摘がありましたけれども、こうした相対的な指標が仮に一定だったとしても、今の絶対的な水準を割ってしまう懸念があるということは、まさに平成29年検証の報告書の中でも指摘されていることだと思いますけれども、こうしたことから、今回令和4年の検証作業の進め方の中では、消費実態によらない水準の議論として消費実態だけでなく生活の質も踏まえた検証を行う観点から、家庭の生活実態及び生活意識に関する調査を用いたような分析を行うことですとか、また、過去報告されておりますMISや主観的最低生活費といった結果等を補完的な参考資料として、どのように参照することが可能かを検討するということとさせていただいておりますので、それはまた別の議論としてあり得ることと承知しております。
続きまして、個別の話でございますけれども、固定的経費割合については、前回、その平均の水準を見て、それが妥当だという評価をしたものではないという御指摘があったかと思いますが、確かに前回、5年前の検証の中ではそういった使われ方はしておりませんが、5年前の集団と今回の集団というのが大きく変化していないかを確認するための指標として、これが使えないということを言っているわけではないと承知しておりますので、提案させていただいているものでございます。
それから、消費以外のデータで見る必要があるのではないか、これは先ほども申し上げましたように消費実態に基づくデータ、消費実態以外の指標によっての確認というのも、また別途あり得るということだとは考えております。
それから、山田委員から個別に何点か御指摘があったかと思います。
まず、可処分所得の水準を確認してはどうかということであったかと思います。こちらについては、今回提案させていただいております中に、年間可処分所得の中央値に対する比率というものを提案させていただいているところでございますけれども、こちらを出す際に、当然関連する指標として併せてお示しするということは想定していたところでございます。ただ、もしその絶対額自体が上がったか下がったかということで評価するというようなことであれば、前回、第44回の基準部会では、収入が上がったか下がったかということでは評価できないのではないかといった御意見が一方であったかと思いますので、年間可処分所得の実額が上がったのか下がったのかということが、いわば生活水準が上がったか下がったかというように捉えて評価してよいのかというのは、この場で御検討いただければと思っております。
それから、生活保護を受給できるのだけれども、生活保護を申請しない人がいるのではないか、そういった影響があるのではないかという御指摘があったかと思いますが、こちらにつきましては、そうした影響というのは、その有無も含めて影響を把握することが極めて困難だと承知しているところでございます。
事務局からコメントさせていただく点については以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
今、事務局から回答していただいた分がございますが、それについて、何か先生方のほうから御意見等はございますでしょうか。
山田委員、お願いいたします。
■山田委員 御説明ありがとうございました。
何を参考指標とするかというよりも、懸念事項を申し上げますと、やはり第1所得十分位が本当に生活保護基準の物差しとなる階級なのかというのは非常に懸念しているというのは、今日お示しいただいた参考資料2のような昭和39年とは大きく状況が変わったからなわけです。OECD加盟国の中で第1所得十分位の等価可処分所得、これは全体の等価可処分所得ですけれども、第1・十分位の実質可処分所得額がマイナス成長というのは、OECD加盟国の中で日本だけなのです。
ですから、第1所得十分位の経済状況が悪化していく中で、夫婦子1人という標準世帯でもそうなっていないかどうかという確認はどうしても必要で、それは第1所得十分位に決まったでしょうと、前回決まったから、それは範疇に入っていませんと事務局側から決めつけられても我々は困るわけで、それを何度も何度も大丈夫ですかというのを言っているので、事務局がそのように決めるというのであれば、もちろんそのように決まったということで明記していただければ構わないのですけれども、いずれにしろ、最終的には第1所得十分位を参照するという結果になろうとも本当にいいのかどうかというのは、やはり検討する必要があるのではないかというのがずっと繰り返されている一連の議論になるかと思います。
実際、この参考資料2に平成29年の報告書の抄訳が出ていますけれども、「これらを総合的に勘案する」というのは、変曲点の分析と固定費の分析をやった上で、それらを総合的に勘案して、この約20万2000円と一致しているから今回も第1所得十分位で大丈夫だねと、それで言っているわけです。ですから、今回新しいデータを持ってきて、結果的には第1・十分位でいいということになるかもしれませんけれども、本当にそれで大丈夫なのですかというのを我々としては納得できないと、本当にこの後、重回帰分析で色々なパラメーターを出していくのは比較的スムーズに出てくると思うのですけれども、物差しが狂うと、この後全てが狂ってくるので、そこについては少なくとも私個人としてはしっかりやっていただきたい。
あと、3番目の参考指標については、これは以前、全国消費実態調査の頃、実際に生活保護基準未満で資産を持っている場合とか何かで場合分けして、何%の人がそういったカテゴリーに落ちるかというのは実際に厚生労働省のほうで推計されていますので、できるかできないかというと可能です。ただ、もちろん時間制約というのがあるのも委員の1人として理解しています。ただ、この生活保護基準未満の人たちが増えていった場合には、やはり第1所得十分位にその人たちがより多く含まれているのであれば、物差しを狂わせる非常に大きな要因の一つとなるので、そこの部分をお願いしたいと申し上げたところです。できるかできないかといったら可能ですということになります。ただ、時間的な余裕があるかどうかというのは、また別になるかと思います。
■小塩部会長 ありがとうございました。
今、阿部委員からお手が挙がっているのですけれども、池上課長から御発言を求められておりますのでお願いいたします。
■池上社会・援護局保護課長 御議論いただいて、どうもありがとうございます。
今回の検証作業ですけれども、相対的な基準で議論はするのだけれども、それで大丈夫かどうかという点で、そこは議論しなくてはいけないというのが、前回の基準部会の報告だったので、今回もその関係を勘案しまして、何度も出てきている検証作業の進め方の話になりますけれども、第1・十分位の比較をしつつ、一方で、MIS手法ですとか、あるいは主観的生活費の結果について、直接的な根拠となるものではないことに留意しつつもということでありますけれども、相対的な比較の検証結果との補完的な参考資料としてどのように参照するかを検討するとなっておりますので、それらについては、これからまた見ていくことになると思います。
併せて、消費実態だけではなくて、生活の質も踏まえた検証を行う観点からも社会保障生計調査や家庭の生活実態及び生活意識に関する調査を用いた分析をするということになっておりますので、その意味では所得についての相対的なもの以外についても、今後議論の対象とさせていただきますので、その点を御理解いただければと思っております。
■小塩部会長 ありがとうございます。
それでは、阿部委員、お願いいたします。
■阿部委員 今も御説明いただいたように、他の指標を用いてといったところなのですけれども、そのところが別個分析いたしますというような御説明、以前の御回答にもあったと思うのですけれども、そこのところのイメージが、別個どのように分析して、どのようにするのかというのが見えないというところが、委員としては今一番心配なところだと思うのです。
私自身は、今回は恐らく第1・十分位を含む所得も上がっている時期であったので、第1・十分位という結果になるのではないかなと思っておりますが、今この部会で、第1・十分位でやるのがデファクトスタンダードなのですというのは納得できないということなのです。というのは、5年後には、また同じことが起こるのです。私たちはそれを何年も経験してきているので、第1・十分位で大丈夫かどうか、きちんとそれを検証するというステップがここで必要なのです。
もし、時間的制約とかそのようなことで今回できないのであれば、今回それができなかったことは、大変なステップを一つ逃してやらなければいけなかったのだということをきちんと書いておかなくてはいけないということなのです。そうでないと、次回もまた同じこと、同じ議論をしなくてはいけなくなってくる。2回続けてしまうと、もう次はディファクトになってしまうというようなところもあって、それを私たちは何回も何回もちゃんと検証しなくてはいけませんよねと言っているわけなのです。なので、今回の基準部会の結論以上の影響がある。今後、もう何十年間も影響するかもしれないということを踏まえて、ここのところは何が必要かということはきちんと議論し、それを報告書に残しておく必要があるかなと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
池上課長、お願いします。
■池上社会・援護局保護課長 御意見をありがとうございます。
第1・十分位で検証はいたしますけれども、繰り返しになってしまいますけれども、併せて新たな検証手法に基づいての検討、そのやり方については、そもそもどのようにやるかというのも含めて基準部会での御議論だと思いますけれども、そういうことも行うことになってございます。それから、消費実態だけではなくて、生活の質も踏まえた検証も行うということになっておりますので、そこのステップで適切に対応にしていくことになろうかと思っております。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他に御意見はございますでしょうか。
渡辺委員、どうぞ。
■渡辺専門委員 1点確認ですけれども、そうすると、資料2の12ページで掲げられている参考とすべき指標は家計構造調査を用いる場合の指標であって、基準検証をするに当たっては、他が統計調査、あるいは局長検討会のときに実施された主観的、あるいはMISのようなところからも検証されるということで、今、ここに掲げられている指標については家計構造調査を用いた場合の指標だという理解でよろしいですか。基準検証をするときには、それ以外の指標も用いるのだという理解で間違いないでしょうか。
■小塩部会長 事務局から、今の御質問について回答はありますか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 今の御質問についてですけれども、先ほどから何度か言及させていただいている第43回にまとめられております検証作業の進め方に沿ってでもございますが、本日の資料2で検討していただいているものにつきましては、5年前に基準の検証の際に参照した集団と、今回参照しようとしている集団とで状況に変化がないかという観点から、すなわち、5年前の用いた検証のデータと今回用いる2019年の家計構造調査のデータでの集団との間に大きな変化がないかということを確認する観点から示している指標であって、それ以外に、今言っていただいた消費の実態に基づかないような指標で、併せてどのような確認ができるのかということは検討していただくということで考えております。
■小塩部会長 よろしいですか。
それでは、1番目のテーマ、駆け込み需要の話ですけれども、これについて山田委員から御意見があったかと思います。
■山田委員 今の事務局の説明で確認なのですけれども、参考とすべき指標で、それはなさそうですけれども、阿部委員の御発言のように、ただ、万が一大きく第1所得十分位の状況が悪化していた場合には、11ページに第1・十分位を対象とすると書いてありますけれども、万が一、指標の確認で何か第1・十分位ではまずいということが分かったら当然第1・十分位ではない、より高めの十分位なり、第2・十分位なりも見つつということはもちろん前提になっているという理解で、私は第1・十分位を対象とすると読んだのですけれども、そうではないのでしょうか。これについては、また後ほどお答えいただければと思うのです。
駆け込み需要のほうについては5ページと6ページになりますけれども、中央値でもお示しいただきましてありがとうございます。これは中央値でも10月にかなり消費額が多くなっているということで、駆け込み需要の反動がどうやら第1・十分位についてはなさそうだということが確認できました。
その上で、ただし、なぜ第1・五分位とか全年収階級と違う動きをするかというのは、時間的な制約もあるのですけれども、半耐久財とか非耐久財とかのサービスが7ページだと前年の2割から3割も増えております。ですから、具体的にどのサービス、財の消費が増えるかというのは時間の制約上難しいかもしれませんけれども、可能であれば確認していただきたい。なぜなら第1・十分位がかなり特異だということを言っているのであれば、その理由は何なのかというのを特に確認しておく必要がある。特に今回の全国家計構造調査以降の大きな変化としては、物価が急上昇しているということがありますので、所得階級によって違った反応をするのであれば、その手がかりになるのではないかと思いました。
私からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
それでは、事務局から補足の説明、回答があるということですのでお願いいたします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 先ほどの山田委員からの御指摘に関するところも含めてコメントさせていただきます。
まず、少し話が戻ってしまいますが、第1・十分位が物差しとする階級でよいのかというようなことをおっしゃっていた際に、全体の可処分所得がマイナス成長ですということをおっしゃっていたと思います。こちらにつきましては、その際、山田委員からも言及がありましたとおり、標準的な我々がターゲットとしているような夫婦子1人世帯におけるものではなく、恐らくおっしゃっているのは様々な世帯類型を含んだ全体でのことをおっしゃっているということでございまして、そうした意味では、夫婦子1人世帯での状況を確認する観点からも、今回12ページで提案させていただいております中での年間可処分所得の中央値に対する比率を出す際には、中央値も併せてお示しするという形で御懸念の点についてはお答えできるのではないかと考えております。
また、生活保護基準以下の低所得世帯の規模と、それに対する生活保護世帯の割合といったようなものを出せないかということがあったかなとは思いますが、こちらにつきましては確かに過去推計したものがございます。ただ、これはもう既に御案内のとおりかとは思うのですけれども、推計を行う際に全国消費実態調査と国民生活基礎調査のデータをそれぞれ用いてやっているというものでございまして、実は用いるデータによって推計値というのが大分変わってしまうところがございまして、この数字自体を評価していくのが難しいという部分がございます。そうしたことから、そういうのがどう影響しているのかということについては、なかなか評価が難しいということで申し上げたものでございまして、推計自体ができないということを申し上げたということではございません。
ただ、さらに山田委員からもお話がありましたように、実際に作業として、この部会開催期間中にできるかといいますと、なかなかそれは難しいとは思っております。
もう1点、進め方として万が一状況が悪化する場合には、第1・十分位を前提としないのかという点につきましては、どのような数字が出て、どのような議論があるかということは、今時点でこうですということをお答えすることは難しいです。
駆け込み需要のお話に関してお答え申し上げます。駆け込み需要というよりは2019年の10、11月の数字がどうして上がっているのかというお話でありますが、夫婦子1人の3人世帯の第1・十分位において増加しているということでありますが、こちらにつきましては資料にはないのですけれども、状況を確認しましたところ、11月の平均額が大きく増加しているということについては、住居費の修繕材料費が大きな額を計上しているような世帯がありましたので、こちらも要因の一つだったと考えております。ただ、御指摘の中にありましたように、外れ値の影響を受けにくい中央値でも増加となっていることから、分布の全体が引き上がっているという状況が見られるのではないかと考えております。細かい数字の用意はありませんけれども、この外れ値のある住居費以外でも幅広く各費目での増加を確認しておりまして、強いて言えば食料、それから、教養娯楽、そして、その他の消費支出ということで、財・サービス別のところで申し上げますと、半耐久財のところが住居、それから、非耐久財のところは食料、サービスのところは教養娯楽、その他の消費支出というのが多く含まれるということとなってございます。
事務局からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
山田委員、後半の駆け込み需要について今説明がございましたが、それについていかがでしょうか。
■山田委員 御説明ありがとうございました。
住宅の修繕費が多いサンプルがあった。中央値がそれに該当しているかどうかはもちろん分からないということだと、合致しない可能性のほうが高いと思いますけれども、ただ、サンプルサイズも小さい場合には、今おっしゃったように、今度、全国家計構造調査を使うときには外れ値も非常に慎重な取扱いをしつつ見ていただければなと思います。
前段部分については発言を控えたほうがよろしいでしょうか。
■小塩部会長 いや、もし御意見がございましたらお願いします。
■山田委員 時間の制約云々というのは分かりました。繰り返しになりますけれども、先ほど生保世帯に占めるとおっしゃっていたので、私が申し上げたのは第1所得十分位に占める生活保護を受給しても別におかしくはない世帯という意味で、第1所得十分位に生活保護未満の人たちがたくさん含まれると、そこでまた第1生活保護基準の人たちと比べてしまうと、その比率が多くなっていれば、物差しとしては問題があるではないかということです。もちろん時間的な制約については理解しております。
ただ、時間的な制約については理解しておりますけれども、阿部委員がおっしゃったように、第1・十分位が適当かどうかを生活保護基準を評価するには事前に必ず検討するというのは重要なステップではないかと思います。それを何か参考でやるとかいうのではなくて、非常に重要なステップなので、もしできないのであれば、ちゃんとそれは報告書に明記すべきですし、また、今、提案したような指標が、もし時間的な制約でできないというのであれば、こういったことも検討されたが時間制約上難しかったというのも最終報告書には明記していただければと思います。よろしくお願いいたします。
■小塩部会長 貴重な御意見をありがとうございます。
他にはいかがでしょうか。
渡辺委員、冒頭に申し上げましたが、専門委員としての御発言ということでお願いしたいよろしいですか。
■渡辺専門委員 事実確認だけお願いしたいのですけれども。
■小塩部会長 手短にお願いいたします。
■渡辺専門委員 家計調査の5ページ、生活扶助相当支出額の推移となっていて、今、住宅修繕費が大きい世帯があったからという御説明だったと思うのですけれども、住宅修繕費は住宅扶助に相当し、生活扶助相当ではないことから、関係のではないかと思った次第です。
以上です。
■小塩部会長 この点について、事務局は回答できますか。
■森口社会・援護局保護課長補佐
住居費用のうち修繕材料費につきましては生活扶助相当の費目となってございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他はよろしいでしょうか。
それでは、色々と貴重な御意見を頂戴いたしました。そのうち、12ページの2の基準額との比較検証に当たって参考とすべき指標、委員の方々から貴重な御意見を頂戴いたしました。その御意見を踏まえて、私のほうで事務局に具体的に指示をいたしまして作業を進めていただくようにしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
よろしいでしょうか。それでは、次の議事に移りたいと思います。
事務局から説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料3「生活補助基準の体系の検証について」御説明いたします。こちらは今回の部会で新たに御提案する議題となります。
2ページを御覧ください。こちらは4月に開催しました第43回部会において資料1としてお示しし、今回の検証作業全体の進め方として委員各位で共有いただいているものとなります。改めてになりますけれども、生活扶助基準は夫婦子1人の標準世帯に係る基準額を基軸として、級地、世帯人員数、世帯員の年齢階級の別に基準額が設定されていることから、これまでも級地、世帯人員数、世帯の年齢階級ごとの消費実態の較差との比較により検証を行っており、今回も過去の検証手法を踏襲して同様の検証を行うこととしてございます。
2つ目のマルになりますけれども、具体的には2019年の全国家計構造調査のデータを用いて、第1類と第2類のそれぞれの消費支出について各世帯の世帯構成、級地、収入、資産等を説明変数とする回帰分析を行い、その結果を基に消費実態の較差、指数を推計し、当該推計結果と現行の生活扶助基準における較差を比較することにより、評価検証を行うとことにしています。
なお、1つ目のマルの2つ目の※になりますけれども、級地間の較差の比較検証を行うに当たっては、現行の6級地の区分を前提とした消費実態の較差のほか、検証時点で見込まれる級地区分も踏まえた消費実態の較差を用いることが考えられるということで記述をしてございます。
続きまして、3ページを御覧ください。検証作業の進め方の続きの記述になります。この際、展開手法の改善の観点から必要がある場合には、参照する所得階層や具体的な説明変数の設定などの回帰分析の細部について、この部会において採り得る方法をあらかじめ検討していただき、その方法による結果と従前の方法による結果を合わせて算出するということとしてございます。
また、2つ目のマルになりますけれども、算出した消費実態の較差の推計が多様な世帯類型の消費実態の較差を反映したものとなっているかについて、先ほど御議論いただきました参考とすべき指標からも検討を行い、その状況を確認することとしています。
その上で、(2)の本日の検討事項としましては、展開手法の改善の観点から、回帰分析を用いた消費実態の較差の指数の作成方法について、その採り得る方法を細部にわたり御議論賜りたいと考えています。
4ページ以降は、前回平成29年の検証で用いられた消費較差の推計方法の振り返りとして記載をしています。
5ページを御覧ください。まず、年齢別較差の指数の推計方法になります。生活扶助基準の中で年齢差を設けていますのは第1類のみとなりますので、第1類のみの検証となっています。
回帰式Aは、第1類相当支出の対数を被説明変数として、説明変数は各年齢階級の人数、世帯人員数の2乗、各級地のダミー変数、ネット資産額、世帯年収の対数、家賃・地代支出の対数を用いてございます。これを低所得世帯、具体的には生活保護を受給していると推察される世帯を除く世帯のうち、世帯員1人当たり収入に関して第1・十分位に属する世帯であって、第1類相当支出と第2類相当支出がともに1円以上計上されている世帯を対象範囲として回帰分析を行い、各年齢階級の人数の計数を指数化して、年齢別較差を算出しています。
6ページを御覧ください。こちらは級地間較差の指数の推計方法になります。第1類相当支出につきましては、先ほどのページの回帰式Aを用い、第2類相当支出については、このページにある回帰式Bを用いています。回帰式Bは、第2類相当支出の対数を被説明変数として、説明変数には年齢階級ごとの人数は設けずに、世帯人員数、世帯人員数の2乗、各級地のダミー変数、ネット資産額、世帯年収の対数、家賃・地代指数の対数を用いています。これについて低所得世帯を対象範囲として回帰分析を行い、第1類、第2類について、それぞれ回帰分析結果の級地ダミーの係数を指数化して級地間較差を算出しています。
7ページを御覧ください。こちらは世帯人員別較差の指数の算出方法になります。前回平成29年の検証では、世帯人員別の較差の算出に当たって2つの方法を用いておりました。
一つが実データによる方法で、第1類、第2類の相当支出額を単身世帯の平均、2人世帯の平均、3人世帯の平均と並べていって較差を見る方法です。
ただし、第1類につきましては、年齢構成による違いや級地による違い、家賃負担の違いによる影響を除去するために、先ほど算出方法を示した年齢の較差指数の平均と級地間較差、家賃・地代支出の対数に係る係数の結果を用いて調整をした額を用いているところです。第2類につきましても、級地の違い、家賃負担の違いによる影響を同様に取り除いて、使用していたところです。
8ページを御覧ください。こちらは世帯人員別較差の指数のもう一つの算出方法として、回帰分析による方法を用いたものです。具体的には回帰式Cを用いておりまして、それぞれ第1類、第2類の相当支出の対数を被説明変数として、説明変数には世帯人員数、世帯人員数の2乗、各級地のダミー変数、ネット資産額、世帯員1人当たりの年収の対数、家賃・地代支出の対数を用いています。これについて低所得世帯を対象範囲として回帰分析を行い、世帯人員数の係数を指数化して世帯人員別の較差を算出しています。
9ページを御覧ください。今、説明しました世帯人員別の較差の指数につきまして、2つの方法で結果に差が見られたところでありますが、この点、平成29年検証の報告書においては、実データと回帰分析による結果の違いについては、理論値を導き出すための回帰式の立て方に起因するものと考えられるが、今回の検証においては、その原因等について十分な解明には至らなかったとされています。
この2つの方法の計算上の取扱いの違いについて事実関係を整理したものが、2つ目のマルに記載してある3点になります。
1つ目が、実データによる方法と回帰分析による方法で用いた回帰式が異なること。
2つ目として、回帰分析による方法は、較差の指数が世帯人員数による特定の関数、具体的には※にあるような二次関数の指数関数に従うことを前提とする一方で、実データによる方法では、こうした関数に従うことを前提とするものではないこと。
3つ目が、回帰分析による方法は、年収や資産の違いによる影響を説明変数としてコントロールしている一方で、実データによる方法は、低所得世帯における年収や資産の違いによる影響を除去していないということが挙げられています。
このような点についてどのように考えるかということで、検証の視点として挙げています。
資料3の説明は以上でございます。
■小塩部会長 ありがとうございました。
非常にテクニカルな議論に入ってまいります。今日、全部議論が出尽くすことはないかと思うのですけれども、委員の方々から御意見を頂戴したいと思います。この分析手法について、御意見がございましたらよろしくお願いいたします。
宇南山委員、お願いいたします。
■宇南山委員 この推計方法についてです。推計式が回帰式A、B、Cと分かれているわけですけれども、概念的にこれが一本の式で回帰分析をすることは可能であるにもかかわらず、こちらの実データによる方法というやや回りくどいテクニックを使っていて、ただし、これは計量経済学的に言えば、一定の計数制約の下で回帰式を回したのと同じものですので、名前は実データによる方法という名前になっていますけれども、これはある種の係数制約を課した推計式と呼ぶことができると思います。
私が言いたいことは2点ありまして、まず第1に、この推計方法については、できれば一本の回帰式で全ての係数を同時に推計するほうが透明性の観点で望ましいだろうと考えています。もちろん第1類と第2類では制度的に反映すべき変数が違いますので、ここは違うというのは問題ないと思いますが、この回帰式Aと実データによる方法という部分については、A、Bと回帰式Cというのは一本化するべきではないかなと思います。
また、ここは既に第1・十分位を使っているという点と、制度的にはネットの資産額や年収によって支給額が変わるわけではないということ、さらに資産額や年収というのは消費と極めて相関の高いもので、推計結果に影響を与えつつ、資産と年収の間の多重共線性などの問題で係数を不安定にする可能性がありますので、私はネット資産額と年収については説明変数に加える必要はないのではないかと考えています。
最後、この家賃・地代支出については、持ち家かどうかというのは消費支出、消費パターンに大きな影響がありますし、ベースラインとしては持ち家でない人というのが受給者になるわけですので、ここは家賃支出額ではなく持ち家ダミーのようなものを使ってコントロールするのがいいのではないかなと思います。
申し上げたいことは3点ありまして、回帰式はできるだけ1個の回帰式で回したほうがいいだろう。ネット資産額、年収は必ずしも推計式の中に入れる必要はないのではないか。家賃・地代支出はできれば持ち家ダミーのようなものでコントロールしたほうがいいのではないか。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
阿部委員からもお手が挙がっています。よろしくお願いいたします。
■阿部委員 宇南山先生が私の言いたかったことをほとんど言ってくださったので、それに合意するという形で発言したいと思いますけれども、私もなるべく違う数値が入っているようなものをあまり使わないほうがいいかなと思います。変数がばらばらだと思いますので、第1類、第2類というような違いはありますけれども、例えば世帯人数を片方は年齢別で入れていて、片方は年齢を問わない人数で入れているとか、そういったものをなくすために、なるべく一本化したほうがいいと思います。より正しいのはどちらだろうというようなところで見ていけばいいのではないかなと思います。
また、宇南山先生がおっしゃるように、これは第1・十分位に限っているので、ネット資産だとか収入の差はそれほどないかなと思いますけれども、それでも、やはりそこにとらわれてしまうところがありますので、それは除いてもいいかなと思います。所得階級を絞っているのでね。
3つ目の新しいこととして、私は前回を覚えていないのですけれども、これは第1・十分位の選定の仕方です。世帯員1人当たり収入と書いてあるのですけれども、これを世帯員でただ単純に割った数、収入という意味なのでしょうか。前回は等価所得で十分位を決めたような気もするのですけれども、こういうところがちょっと紛らわしかったので、そこのところは等価でするべきだなと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
阿部委員の最後の質問ですけれども、等価所得ベースですか、それとも単純に世帯人員の数で割った数字なのでしょうか。確認はできますでしょうか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 お答えいたします。こちらは等価、すなわち人数の平方根で割っているものではなくて、人数そのもので除しているものとなってございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他にこの回帰分析について御意見等はございますでしょうか。
山田委員、お願いします。
■山田委員 多分、この推定式は今ある基準額表でどのように計算するかというのと、それから、計量経済学上、どう推計したらいいのかというので一種のせめぎ合いというか、妥協のような形で出てきた推計式だったと記憶しています。
もう一つは、夫婦子1人でやっていた場合に、これは第1・十分位だけでやった場合と、あと、全世帯を入れてやった場合と、たしか2種類やって年収を入れればいいか、年収の入れ方は別ですけれども、どちらがいいかというのを検討した覚えがあるので、第1・十分位に限った話なのかというのは今の段階で決めないほうがいいかもしれない。
あと、ネット資産については宇南山先生の経済学的な見地から立ったアドバイスというのはよく分かる一方で、実は前回、高齢者世帯もやっていたのです。高齢世帯のことを推計する場合に、どのように資産を考えればいいだろうかということで、必ずしも年収が高い人が資産を持っているかどうかというのもありますし、どのように取り崩しをコントロールしたらいいだろうかというので、かなり検討した可能性があります。ですから、ある程度細かい部分については試行錯誤といったところが今回も必要になるかもしれません。というのも全部推計しようとしたら説明がつかない係数が出たりとか、本来だったら符号とか何かが適当でなかったりすれば、色々と推計式をより適切に近づけていく際の手順まで、ここでがっちり決めてしまうのかというのは一つ議論の余地があるかなと思いました。
あと、一つ事務局に教えていただきたいのは、これを基準額表に展開する場合に、1類費と2類費の比率というのはどのように設定して、ここから出た額をそのまま基準額表に展開していらっしゃるのか、そうではないのかというのを教えていただきたいです。
あと、今回やっていく中で少し気にしているのは、今6級地でやっていますけれども、3級地にまとめるのかどうか分かりませんけれども、そういうような方向で自治体と話していると、その話し合いがまとまらなければ、結局何を級地として入れたらいいのだろうか。間に合わなくて級地を6級地で入れておきましたと、3級地に変わりましたといった場合に必ずパラメーターが変わってくると思うのです。パラメーターが変わった場合に、もう部会が閉じてしまっていたら、事務局のほうで推計してパラメーターを出して、部会も開かずにそのまま進めていくと、この数値に誰が責任を持つことになるのだろうという点で、この先のスケジュールについてお示しいただければなと思います。
ですから、級地の話のときに、この推計を行うのはもっと先だから今決める必要があるのですかといったときに、この推計があるから逆に早めにやらなくてはいけないというようなニュアンスでの御発言もあったかと思うのです。そうすると、間に合うかどうかというのは非常に重要な点なので、そちらについて、今のところの見通しを教えていただければと思います。
私から以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
具体的な進め方について、山田委員から御質問がありましたけれども、現時点で事務局から回答していただくことはできますでしょうか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 お答えいたします。級地の在り方につきましては、4月に国と地方の実務者協議での議論の整理がまとめられて以降、引き続き検討しているという状況でございまして、いつまでにどういうことが決まっていくかというところは、今ここで明示的には申し上げられないところではございますが、年末にかけて調整していく見込みとなってございます。
そうした中で、級地の区分が、その時点でどういった見直しが見込まれるかということを踏まえた上で、基準部会での級地間較差の検証というのは、消費の実態の級地間較差指数の算出を行う場合に、現行の区分でない区分も用いた場合を仮に試算していただくということで予定してございます。つまり実際に推計する段階で、その時点で検討されているものでやっていただくということになると思いますが、今時点で、その具体的なスケジュール、いつまでにどうこうということは申し上げられないということでございます。
1類費、2類費の額の設定についてでございますけれども、こちらは基本的には水準の検証を行っていただいた夫婦子1人世帯の金額を基に設定しています。
■小塩部会長 山田委員、よろしいですか。
■山田委員 非常に気になるのは、ここは最終報告書で明記していただきたいのですけれども、3級地に行政上の理由で、こういう形で級地をまとめるということについては、専門部会のほうでは、それについて責任は持てないというか、それを推奨したわけではないというのは級地のときの報告書にもそれをにじませるような形で出ていたかと思うのです。それでやってくださいというのがあれば、もちろんやらざるを得ないと思うのですけれども、その場合にも、どのタイミングになるか分からないのですけれども、その点は別にまとめることを専門家が認めたわけではないというのは明示してほしい。
ただ、どのタイミングになるか分からなくて、いつ入れるかというのまでが分からないと、作業するほうとして非常に困ると思いますので、その責任を明確化した上で、どういうタイミングで、もし、今回の部会が終わるまでにまとまらなかったらどのようになるのか、その先はどうなるか、これは部会長と栃本先生の専権事項だと思いますので、そちらのほうをどうするかというのは、選択肢を幾つか考えたほうがいいということです。
1類費と2類費、これは要するに夫婦の1類費と2類費の比率をそのまま全ての世帯に拡張していると理解でよろしければ、ひょっとしたらこの1類費と2類費の比率というのが世帯類型によっては異なるという可能性をどう考えるのかというのは、少し検討したほうがいいかもしれないと思いました。
以上2点です。御説明ありがとうございました。
■小塩部会長 ありがとうございました。
他に御意見はございますか。よろしいでしょうか。
今日も非常にテクニカルな部分に至るまで、多くの貴重な御意見を頂戴いたしました。私もそうなのですけれども、皆さんも実証分析を色々やった経験があるかと思うのです。なかなかうまくいかないこともありますので、ある程度試行錯誤みたいなところはあるのかなと思いますけれども、今日、皆さんからいただいた御意見を参考にさせていただいて、事務局では作業を進めていただければよろしいかと思います。
今回の分析手法につきましては、次回以降も引き続き議論したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
最後に申し上げたいことがございます。今回も事務局のほうから精力的に色々と作業をしていただいて、私たちの要求に応じて数字等々をそろえていただきました。深くお礼を申し上げます。私もこの部会の会長になって非常にびっくりするところが多いのですけれども、数字が非常に細かいです。しかもその数字が国民生活に直結するという非常に重要な意味合いを持っているところなのです。そういう重要な作業をするのですけれども、時間が限られていまして、事務局には非常に大きな負担になっているかと思います。
前回もちょっとあったのですけれども、集計上のミスが出てくるということも、そういうリスクを初めから全部なくすのは難しいのだろうなと思うのです。もちろんミスはないに越したことはない、拙速は絶対避けていただきたいと思うのですけれども、やはり人間のすることですから、私もそうですけれども、時に間違いが起こる場合もあるところです。
それで、これは私部会長からのお願いなのですけれども、事務局の方にはぜひ多様な形でデータに当たっていただいて、色々なことを試していただきたいなと思っています。もちろん今日も御指摘がありましたけれども、時間的な制約がございますので、なかなか厳密にやっていくのが難しい場面もあるかと思うのですけれども、事務局の方には色々な角度から調べていただきたいと思います。その中で、もちろんエラーやミスが発生することがあるかも知れませんが、私としてはある程度やむを得ないものと考えますし、その際は必要に応じて直していただければ良いと思いますので、活発な議論のためにぜひ積極的に色々なデータを提供いただければありがたいと思います。ということで、これからもよろしくお願いいたします。
それから、先生方からも非常に貴重な意見等もいただいたのですが、引き続きよろしく御指導をお願いいたします。
それでは、事務局から御連絡していただくこと等はございますでしょうか。
■池上社会・援護局保護課長 今、部会長のほうからお話をいただきました。我々としてもできるだけ委員の皆様からお求めのあったデータについては、追加的に資料などを今回も出させていただいているところでございます。その意味で、どうしても数字誤りがないように厳格にやるということになると、時間もかかるし、出せるデータ量というのはどうしても少なくなってしまうのですけれども、今、部会長からお話がありましたので、そこのところは、場合によっては、ちょっと集計誤りがあれば、分かればそこは訂正させていただきますけれども、それがないように厳格にやるというよりは、多様なデータをお出しできるようにというようなスタンスで取り組ませていただこうと思います。御指摘をありがとうございます。
■安西社会・援護局保護課長補佐 最後に、次回の開催スケジュールですが、現在調整中でございますので、追って御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。本日も御多忙の中御議論を賜り、ありがとうございました。
■小塩部会長 どうもありがとうございました。