2022年7月20日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会(薬事分科会・医薬品第二部会(合同開催)を含む) 議事録

日時

令和4年7月20日(水)18:00~

出席者

出席委員(医薬品第二部会委員 20名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理


出席委員(薬事分科会委員 21名)五十音順

 (注)◎分科会長 ○分科会長代理

 他参考人3名
 

欠席委員(2名)

行政機関出席者
  •  八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  衣笠秀一(医薬・生活衛生局総務課長)
  •  吉田易範(医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長)
  •  中井清人(医薬・生活衛生局医薬安全対策課長)
  •  江浪武志(健康局結核感染症課長)
  •  藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) 他

議事

○総務課長 それでは、定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会薬事分科会・医薬品第二部会合同開催のウェブ会議を開催させていただきます。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しいところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 医薬・生活衛生局総務課長の衣笠秀一でございます。よろしくお願いいたします。
 本日の会議の公開については、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしておりますので、御理解、御協力のほど、お願いいたします。
 議事録については、後日、厚生労働省ホームページに掲載いたします。
 なお、配信における留意事項ですが、本配信の著作権は厚生労働省に帰属しますので、配信している動画あるいは内容を許可なくほかのウェブサイトや著作物等へ掲載することを禁止します。
 まず、今回より御参加いただくことになった委員を御紹介いたします。公益社団法人日本医師会常任理事でありました松本吉郎委員が御退任され、後任として、同会常任理事の神村裕子委員が御着任されました。神村委員、一言お願いできますでしょうか。
○神村委員 御紹介いただきました日本医師会の神村と申します。内科医でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○総務課長 神村委員、ありがとうございました。また、松本委員におかれましては、これまで薬事分科会での議論において、多くの貴重な御意見をいただきましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。
 また、事務局に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。厚生労働省医薬・生活衛生局長、八神敦雄でございます。
○医薬・生活衛生局長 八神でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○総務課長 私ですが、総務課長の衣笠秀一でございます。よろしくお願いします。
 本日のウェブ会議における委員の出席についてですが、薬事分科会の岡明委員、医薬品第二部会の浦野泰照委員より、御欠席との御連絡をいただいております。
 それから、薬事分科会の関野祐子委員、医薬品第二部会の渡辺亨委員につきましては、現在は御参加されていませんが、後ほど参加されるというように聞いております。
 本日は現在のところ、薬事分科会委員22名のうち20名、医薬品第二部会委員21名のうち19名、合わせて39名の委員がこのウェブ会議に御出席いただいていますので、薬事分科会、医薬品第二部会ともに定足数に達しておりますことを報告いたします。
 会議を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。
○事務局 事務局でございます。薬事分科会規程第11条においては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定しております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告をさせていただきます。
○総務課長 委員の皆様には、会議開催の都度、書面を提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
 これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 本日の議題は、審議事項が1件、6月22日に開催された医薬品第二部会にて引き続き審議することとなっておりましたゾコーバ錠の製造販売承認の可否等についてでございます。
 それでは、太田分科会長、以後の進行をお願いいたします。
○太田分科会長 それでは、本日の審議に入ります。まず事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日のウェブ会議に係る資料の確認をさせていただきます。
 本日、あらかじめお送りさせていただいた資料として、資料No.1と製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。
 このほか、資料2から6と、専門委員リスト、競合品目・競合企業リスト、それから、参考資料の1から4までを、事前に電子メールにてお送りさせていただいております。
 なお、本日の審議は公開で行うため、資料につきましては全てウェブ掲載をしておりますが、申請者の知的財産等の関係で開示が困難な箇所についてはマスキングをしております。ただし、委員の先生方にはマスキング箇所を黒塗りではなく黄色ハイライトとして読むことができる資料をお送りしておりますが、その部分につきましては一般には公開できない内容になりますので、会議中での御発言をお控えいただけますようお願いいたします。
 続きまして、本日のウェブ会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料10の競合品目・競合企業リストを御覧ください。まずゾコーバ錠でございますが、本品目はSARS-CoV-2による感染症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上でございます。
○太田分科会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本ウェブ会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものといたします。
 それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりでございます。
 議題1、ゾコーバ。退室委員、大曲委員。議決に参加しない委員、亀田委員、川上委員、中野委員、横幕委員でございます。
 なお、薬事分科会審議参加規程第5条において「申請資料作成関与者である委員等は、審議又は議決が行われている間、審議会場から退室する」とされておりますが、同条のただし書におきまして「当該委員等の発言が特に必要であると分科会等が認めた場合に限り、当該委員等は出席し、意見を述べることができる」となっております。以上でございます。
○太田分科会長 ここで、今回、議題1の審議に関しましては、SARS-CoV-2による感染症に関する診療の経験があり、本剤の治験にも関わった大曲委員の意見は参考になるのではないかと思われます。当会議として大曲委員には御出席いただき、御意見を述べていただいてはどうかと考えておりますが、いかがでしょうか。どうぞ。
○佐藤委員 佐藤です。関与委員に御意見いただくのはいいと思うのですが、必要なときだけ御意見をいただけばよろしいのではないでしょうか。
○太田分科会長 そうですね。そうしたいと思います。
○佐藤委員 私が言っていることは、一旦退席していただいて、御意見が必要なときだけ戻っていただくのはいかがでしょうか。
○医薬品審査管理課長 審査管理課長でございます。これまでの第二部会での種々のコロナ治療薬ワクチンの審査におきましても、大曲先生におかれましては参考人という形で御参加いただいております。もちろん、あくまでも参考人という形で必要な場合のみ御発言いただけるという扱いにしてございますので、よろしければこれまで同様の扱いでいかがかと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
○佐藤委員 分かりました。それでは、そのようにお願いします。
○太田分科会長 よろしいでしょうか。それでは、了解をいただいたものとして、大曲委員には必要なときに御出席、御意見をいただくことといたします。
 以上の事務局からの説明に特段の御意見等はございますでしょうか。よろしければ皆さんに御確認いただいたものといたします。
 それでは、審議事項の議題に移ります。審議事項、議題1「医薬品ゾコーバ錠125mgの生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び毒薬又は劇薬の指定の要否について」でございます。
 まず、緊急承認制度の概要について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。緊急承認制度の概要について参考資料1-1に基づいて御説明をさせていただければと思います。
 今年の5月20日に薬機法の改正が行われまして、緊急承認制度という新たな承認制度が設けられました。この緊急承認制度の対象につきましては、参考資料1-1の1枚目の「改正の概要」のところに概要を記載しておりますが、このうちマル1のところに「適用対象となる医薬品等の条件」が記載しております。
 この制度における特徴でございますが、そのスライドの4枚目の表を御覧いただけますでしょうか。この表においては、薬事承認制度の比較をしたものでございますが、一番右に新たに設けられた緊急承認の制度について記載してございます。この特徴といたしましては、下から2段目のところ、有効性・安全性の欄がございますが、安全性については確認した上で、有効性については推定の段階で承認することができるということがこの制度の特徴となっております。
 この推定に関する具体的な考え方につきましては、次のスライド、5枚目に記載しているとおり、こういった例を御参考いただければと思いますが、例えばワクチンや治療薬など医薬品の特性に応じてそれぞれの考え方が適用されるのではないかと考えられております。具体的には、この考え方については、一番最後のスライド8枚目に、緊急承認制度における承認審査の考え方として概要をまとめさせていただいておりますが、具体的な通知の内容については、参考資料1-2にも記載しておりますので、適宜御参照いただければと思います。以上でございます。
○太田分科会長 それでは、議題1について、機構から審査の概要を説明してください。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品ゾコーバ錠125mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 審査報告書並びに参考資料3及び4のファイルをお開きください。以下、報告書のページ数につきましては、各ページの下部に何分の何で示しましたページ数で御説明いたします。
 審査の概要について、臨床成績を中心に説明させていただきます。
 有効性について、通し番号55ページ、表35を御覧ください。酸素投与を要しないSARS-CoV-2による感染症患者を対象とした国際共同第II/III相試験の第IIb相パートの結果を示します。主要評価項目は、SARS-CoV-2による感染症の12症状合計スコアの治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たりの変化量及びDay4におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量のco-primary endpointとされ、前者において統計学的な有意差が認められないことから、事前に規定された本試験の成功基準は満たされませんでした。また、本試験では、事前に二つの主要評価項目の間で仮説検定に係る多重性の調整は行われていなかったため、いずれか一方で統計学的な有意差が認められなかった場合、他方の試験成績に関する統計学的な有意差は評価できないと考えております。
 参考資料3及び4を御覧ください。本試験における症状の推移について、図5は12症状合計スコア及びそのベースラインからの変化量の推移、図6は各症状のスコアの推移を示しており、本薬群とプラセボ群でおおむね同様の推移でした。なお、同図につきましては、審査報告書56及び57ページにも掲載しております。
 当該試験成績を踏まえた有効性に関する機構の評価について、御説明いたします。
 通し番号62ページ、一番下の段落「機構は」から始まる文章を御覧ください。第IIb相パートにおいて事前に規定した本試験の有効性の主要評価項目について、成功基準は満たされませんでした。また、第IIb相パートの主要評価項目の一つとして、12症状合計スコアの単位時間当たりの変化量(AUCを120時間で割った値)が設定されましたが、最終評価時点の転帰と変化量の大きさが相関しない場合もあり得るなど、症状スコアの推移をAUCにより評価することの意義は不明であり、主要評価項目としての適切性には課題があると考えています。
 申請者が有効性の根拠になると説明している、12症状のうち、オミクロン株に特徴的と考えられる症状の合計スコアについては、次の2点を踏まえると臨床症状の改善効果が確認できたとは判断できないと考えます。
 一つ目は、多様な症状を呈するSARS-CoV-2による感染症において、一部の症状スコアの結果から臨床症状の改善効果を解釈することには限界があること。
 二つ目として、単位時間当たりの変化量の比較では、プラセボ群と比較して本薬群の変化量が大きい傾向を示しているものの、群間差の推定値は各症状スコアの最小単位である1を下回っており、これらの症状について意義のある群間差が認められているとは解釈できないこと。
 また、臨床症状に係るいずれの副次評価項目についても、プラセボ群と本薬群の結果に明らかな相違は認められておらず、臨床試験において、ウイルスRNA量やウイルス力価の低下や期間短縮を確認することは重要と考えますが、本試験の第IIb相パートにおいてウイルス力価の減少に伴う臨床的に意義のある臨床症状の変化は確認されていないことに加え、次の2点を踏まえるとSARS-CoV-2による感染症においてウイルス力価の減少の臨床的意義を評価することは、現時点では困難であると考えます。
 一つ目が、SARS-CoV-2による感染症は、これまでのところ、自然経過においても比較的短期間でウイルス量が減少すること。
 二つ目が、プラセボに対するウイルス量の減少が、対象となる株、採取部位、採取方法及び測定方法を含め、どの時点でどの程度の差をもって確認できた場合に、薬剤の投与が臨床的に意義があったと言えるのか十分な知見の集積には至っていないこと。また、同様の理由により、異なる薬剤の臨床試験で認められたウイルス減少の程度との単純比較にも限界があること。
 なお、各国の規制当局における議論において、SARS-CoV-2による感染症治療薬の評価では、生存や患者の状態等において臨床的意義がある効果が示されることが重要であるとされております。
 以上より、機構は、本薬の有効性について、次のように考えます。
 現時点で提出されている第IIa相パート及び第IIb相パートの成績に基づき、本薬によりウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しませんが、申請効能・効果に対する有効性を推定できるものとは判断できず、第III相パートの結果等を踏まえて改めて検討する必要があると考えます。なお、有効性に関する薬剤評価は御説明したとおりであるものの、医療・社会的観点から、本剤をより早期に使用可能とすることが適当とされ、現時点で得られている情報等を踏まえて本剤が承認される場合には、第III相パートの成績等に基づき有効性を再検討し、その結果に応じ、製造販売承認の見直しを含めた適切な議論が行われることが必要と考えます。
 安全性について、通し番号64ページ、表39を御覧ください。第IIa相パート及び第IIb相パートにおける安全性の概要を示しております。本薬では、重篤な有害事象及び死亡に至った有害事象は確認されておりませんが、プラセボ群と比較して本薬群で有害事象及び副作用の発現割合が高い傾向が認められています。
 次のページ、通し番号65ページ、表40を御覧ください。特に高比重リポたんぱく減少(HDLコレステロール減少)が本薬群で高頻度に認められていることなどから、本剤が承認される場合には、添付文書において注意喚起する必要があると考えます。
 また、次のページ、通し番号66ページ、2段落目の「本薬の安全性について」から始まる段落を御覧ください。第IIa相パート及び第IIb相パートの結果を踏まえると、安全性上の大きな懸念は認められず、一定の忍容性は示されていると考えますが、SARS-CoV-2による感染症の患者に対する本薬の投与経験は限られており、本剤が製造販売後に多くの患者に使用された場合に、新たな安全性上の懸念が生じる可能性は否定できないと考えます。したがって、本薬の安全性については、実施中の第IIb/III相パート及び第III相パートの情報を含め、さらに検討する必要があると考えます。
 なお、現時点で本剤が承認される場合には、特に次の三つの事項に対応する必要があると考えます。
 一つ目は、非臨床試験において胎児に奇形を示唆する所見が認められており、本薬は潜在的な催奇形性リスクを有することなどを踏まえ、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対する本剤の投与は禁忌とすること。
 二つ目として、審査報告書(2)に記載しましたとおり、申請用法・用量におけるCYP3A阻害作用の追加検討結果を踏まえても、本薬は強いCYP3Aの阻害作用を有するなど、他の薬剤との相互作用が生じる可能性があることから、適切に注意喚起を行うとともに、CYP3Aに対する時間依存的阻害作用を有することを含め、適切に医療現場に情報提供を行うこと。
 三つ目として、本薬が投与された患者は324例と限られていることから、安全性情報を確実に収集できる体制を確保すること。
 次に、同じページの通し番号66ページ「7.R.4 臨床的位置付けについて」を御覧ください。機構は、本剤の臨床的位置付けについて次のように考えます。
 第IIb相パートの成績に基づき、本剤の有効性が推定できるとは判断できず、現時点では、本剤がSARS-CoV-2による感染症の治療選択肢になるとは判断できないと考えます。
 なお、現時点で得られている情報に基づき、本剤が承認される場合には、効能・効果及び適用対象は、既承認の経口治療薬と同様に、SARS-CoV-2による感染症及びSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、また禁忌等に該当する場合などで他の治療薬を使用することが適切でないと医師が判断した場合に限り本剤を使用することが妥当と考えます。
 通し番号67ページ「7.R.5 用法・用量について」を御覧ください。第IIa相パート及び第IIb相パートの用法・用量等を踏まえ、本剤が承認される場合には、12歳以上の小児及び成人患者における用法・用量を1日目は本薬375mgを1日1回、二日目から五日目は本薬125mgを1日1回経口投与することが妥当と考えます。
 また、審査報告(1)に対して、申請者から意見が出され、通し番号69ページ以降に添付しておりますので御参照ください。
 次に、通し番号74ページ「1.1 有効性について」を御覧ください。専門協議において、有効性に関する機構の判断は専門委員からおおむね支持された一方、1名の専門委員から有効性が推定されるものであることを否定することはできないのではないかとの意見も出されました。専門協議の結果、機構の有効性等に関する判断に変更はなく、次のように考えます。
 緊急承認制度においては、検証的試験の成績が得られていない状況においても、探索的な臨床試験の成績に基づき早期に有効性の評価を行うことが可能とされています。機構は、探索的な臨床試験成績に基づく有効性の推定評価に当たっては、情報が不確実な探索段階での評価であるからこそ、検証的試験の主要評価項目と同一の主要評価項目を設定し、その他の評価項目と含め一貫した有効性が示唆される、若しくは検証的試験の主要評価項目のサロゲートエンドポイントとして明確に位置付けられた指標で有効性が示されるなど、適切に計画・実施された臨床試験において、試験の成功基準を満たす又はそれに準じた成績が得られていることが重要であると考えます。
 通し番号79ページ「4.総合評価」を御覧ください。機構としての有効性に関する評価はこれまで説明してきたとおりですが、本日の審議の結果、本剤が承認される場合には、第III相パートの総括報告書の提出可能時期は2022年11月を予定していると申請者が説明していることなどを踏まえ、医薬品医療機器等法第14条の2の2第1項における緊急承認の期間は1年が適当と考えます。また、ここに記載した承認条件を付す必要があると考えます。本品目は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。
 御説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○太田分科会長 ありがとうございました。次に、申請者からの意見書、前回部会における委員意見の概要、審議に当たっての考え方について、事務局から説明してください。
○事務局 まず申請者からの意見につきまして、資料No.2を御覧いただけますでしょうか。 「ゾコーバ錠125mg有効性に関する申請者の見解」というタイトルで、塩野義製薬株式会社から意見書という形で資料が提出されております。この資料の中におきましては、これまでの審査報告書にあるようなデータも含め、それと加えまして1ページ目の四つポツがございますが、この順にLong COVIDに関すると考えられる症状遷延リスク、抗ウイルス効果の臨床的意義、ウイルスRNA量及び力価のリバウンド、オミクロン株の亜種へのin vitro活性といったこれらのデータは追加したデータだということで資料が提出されております。 その内容について詳細な説明は割愛させていただければと思いますが、これらの結果に基づいて申請者としては最後の12ページに「総括」という形で記載がございますが、申請者の意見としては、本剤の有効性は推定されたと考えるという意見書が提出されておりますので、御紹介させていただければと思いました。
 続きまして、資料3の医薬品第二部会における主な委員意見について御紹介させていただければと思います。こちら、6月22日に開催された医薬品第二部会における委員からの意見の主なものをまとめさせていただいております。なお、部会の詳細な議事録につきましては、参考資料2として別途つけさせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 資料3の主な意見のうち、例えば有効性の評価につきましては、この一つ目のマルにありますとおり、これは申請品目関与委員からの意見ではございましたが、デルタ株までの流行期における臨床像と比べ、オミクロン株が流行し、ワクチン接種率が高まった時期以降の臨床像の変化は極めて大きいといった臨床像の違いの観点からの意見がございました。
 また、これに対して二つ目のマルですが、ウイルス量は減少するが、臨床症状の改善は認められない結果であり、ウイルス量が減少することで感染を抑えたり重症化を抑えたりするとの主張は想像にすぎない、といった例えば意見がありました。
 それから、安全性につきましては、その下の項ですけれども、一つ目のマルにありますように、併用禁忌となる医薬品に関する注意喚起ですとか、二つ目のマルにありますように、催奇形性に関する注意喚起の必要性といった御意見がございました。
 それから、次のページ、医療上の必要性の観点からの意見ですが、一つ目のマル、こちらも申請品目関与委員からの意見ではございましたが、最近、特定の中和抗体薬と変異株の組合せで効果が期待できないといったことがあるといった意見ですとか、二つ目のマルにありますように、今後、第七波や、新たな変異株のおそれもあり、全く予想が出来ない中、治療の選択肢を持っておくことも重要といった意見がございました。
 また、これに対しまして三つ目のマルにありますように、新しい薬が必要だということは誰も否定できないと思うが、この薬が新しい薬と認められるかどうかという点が問題であるといった意見もございました。
 例えばでございますが、以上のような主な意見があったということでございます。
 こういったことを受けまして、資料4、本日の審議に当たっての考え方を事務局においてまとめさせていただいております。資料4、御覧いただけますでしょうか。
 まず、前回の部会では、今御紹介いたしましたとおり、提出されている臨床試験成績では、有効性は推定できない、承認するべきではないとする意見が複数あった一方で、治療の選択肢を持つことの必要性の指摘はあったものの、明確に承認可能との意見はないという状況でございました。
 安全性につきましては、妊婦等に対して禁忌である旨や、併用が禁忌となる薬剤に関して注意喚起が必要であるとの意見はございましたが、これを許容できないとするような意見はなかったという状況でございます。ただし、副作用は認められており、催奇形性等のリスクを踏まえると、使用対象者を大きく広げるべきではないとの意見はございました。
 これらを踏まえますと、本議題については、現在実施中の国際共同第II/III相試験の第III相パートの結果等の提出を待って改めて審議する「継続審議」の扱いとすることとなるのではないかとまず考えられると思われます。
 ただ、次のマル「一方」でございますが、現下の急速な感染拡大の状況を踏まえ、今後の感染拡大や既存の治療薬の効果が期待できない変異株が発生する可能性も含めたリスク・ベネフィットバランスの観点を踏まえつつ、ウイルス量や一部の臨床症状に係る結果など、科学的根拠に基づき有効性が推定されると合理的に説明できる場合は、本剤の承認を可とすることもできると考えられるのではないかとしております。
 その際、使用対象につきましては、既承認の治療薬と同様に、重症化リスク因子を有する者を基本とするとともに、他の治療薬が適切ではない場合とする必要があると考えられます。
 その際の御議論に当たりましては、ここに挙げたような点を踏まえる必要があるというように考えております。以上でございます。
○太田分科会長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、医薬品第二部会長である清田委員からの御発言はございますでしょうか。
○清田部会長 清田でございます。まず付け加えたいのは、この第二部会、臨時部会が開かれたのは6月22日です。ちょうどコロナの患者数が下げ止まっていた時期ですね。この第七波が来ることはある程度予感していたかもしれませんけれども、現実にこうなるとは予想し得なかった時期なので、多少議論に危機感が欠けていたような印象を私は部会長として持っております。その後、追加の有効性としてLate COVIDの率が減るとか、それから、ウイルスの再拡散を抑えるというような会社の方のデータを今日、この後、四柳先生から御説明があると思いますけれども、そういったポジティブなデータもどう解釈するかというような議論の材料としていただければというように思います。以上です。
○太田分科会長 ありがとうございました。どうぞ。どなたでしょうか。
○島田(眞)委員 山梨大学の島田です。
○太田分科会長 島田委員、どうぞ。御発言いただけたら。
○島田(眞)委員 今の清田部会長の意見、ちょっと私としては疑義を挟みたいと思いますね。6月22日ですか。第七波、BA.5こんなにひどくはなかったけれども、諸外国でも出ていましたし、日本でもこれは来るのではないかという十分危機感を持って私たちは審議をしたというように思っております。清田部会長さんがどう考えたかは知りませんけれどもね。今、危機感がなかったとおっしゃったのでびっくりしました。
 ということで、先ほどおっしゃっていた幾つかの実験データも追加はされているのですけれども、これはもう既に塩野義さんは提出されていましたよ。罹病期間が短くなるのではないかとか。ただ、Long COVIDのことだけは言っていなかった。これは新しいデータだったかもしれませんけれども、あとのデータは大体が示されていて、これはエンドポイントが修正されたりしたようなものなので、例えば12症状のときは全然要するに全く効果は認められなかったわけですよ。
 だから、我々としては効果が認められないというように判断したのであって、それが何か呼吸器症状だけ後からピックアップしたら少しは有意差があったとか、これは要するにエンドポイントを後からいじるというのははっきり言って御法度ですよ。それをわざわざされて、これは有効性が認められるところをピックアップしてやるというのは臨床試験としてはあってはいけないことだと思いますということです。
○太田分科会長 島田委員、意見はこの全部の参考人からの御意見も伺った後にまたお聞きしたいと思います。
○島田(眞)委員 分かりましたけれども、今、清田部会長がおっしゃったのに私は反論しただけです。
○太田分科会長 それでは続きまして、本日御参加いただいている機構の藤原理事長から、補足のコメントがあればお願いしたいと思います。
○理事長 発言の機会をいただきましてありがとうございます。今回、ゾコーバの緊急承認の可否について薬事分科会と医薬品第二部会の合同開催という形で、公開で審議を行われることになりまして、このように国民的、社会的関心の高い品目の審議につきまして公開で行うことが議論の透明性を高め、薬事制度の信頼性向上に資することになると考えておりまして、皆様方に感謝申し上げる次第です。
 先ほどの機構からの説明、ちょっと専門的過ぎて分科会の先生方に分かりにくいところもあったらいけないなと私も聞いていて思いましたので、少し補足的に簡単に説明したいと思います。
 まず、一番皆さん方に見てほしいのは参考資料4の図6です。これは、この薬を投与した後に様々な症状の軽快が起きるのですけれども、縦軸にはちょっと小さい字ですが、委員の方々は拡大していただければ分かりますが、軽度、中等度、重度、これは患者さん本人が自分でつけるのですが、軽度が1、中等が2、重度が3ですね。ほとんどの症状は軽症1.0と1.5の間ぐらいが治療開始時の値です。ですから、あまりすごい症状は持ってない人たちがこのお薬を受けられたわけですね。
 その後、プラセボと本薬、用量が二つありますけれども、二つの用量、赤と青で比較してきますと、この推移を見ていただいたら分かりますが、私ももともと呼吸器専門医なので普通にこれをばっと見ると差がないのではないのというように見えますし、それが機構としての普通の感覚で見た判断でしょう。ただし、先ほど説明にありましたように確かにRNA量は有意差を持ってきっちり差が開いて下がっています。RNA量は下がっているのだけれども、臨床的効果はこのぐらいかというのが正直な判断であったと私は類推いたします。
 一方、先ほどから話題になっています後づけ解析に関連してですけれども、途中、機構の説明で多重性とかというお話がありましたが、これは今回、事後解析といって塩野義さんは後から何度も何度も解析しているのですが、生物統計学的には、山口先生とか佐藤先生に後から説明してもらったほうがいいかもしれませんが、何度も何度も解析するとバイチャンスで有意になるというのはよくあるのですね。例えばpが0.05だったら、20回に1回は間違った結果になるというのは自明の理でして、そんなに繰り返して統計解析するときには有意にするp値はすごく小さくするとか、これが先ほど事務局が多重性の調整というように言っていましたけれども、そういうことをちゃんとやらないといけないのですが、それをやらずに何度も何度も解析して、どこかで有意差が出たからいいのではないのと言っているのが塩野義さんかなと私は理解しております。
 一方で、臨床家、私も医者ですので臨床的観点からすると、今回のお薬、錠剤は小さいから、同じ薬効、機序を持っているファイザーのお薬と比べて、1種類だけでいい。ただし、併用禁忌の薬を見ていただいたら添付文書で分かりますけれども、たくさん処方されている薬がたくさんあって、これは薬局なんかで併用薬をチェックするのはものすごく大変だろうなというような手間は感じます。全体的に少しかみ砕いて皆さん方に今の機構の説明をしたところをお話ししましたので、それを考えていただきたいです。
 それから、後から説明があると思いますけれども、四柳先生のLong COVIDの話について、ちょっと私もこの数日いろいろ論文を見てチェックしましたが、一番きっちり解説しているのは6月30日の『Nature』のニュースに出ているのですが、確かに四柳先生が発言しているアメリカの退役軍人病院のデータはすごいn(エヌ:数)でやっていますが、サプリメンタルテーブルを見るとBMIが30、ものすごい肥満の人がほとんどなのですね。アメリカのベテランの人を見たら皆さん分かると思うのですけれども、そういう人でのデータで解析しているので、なかなかこれをすぐ日本に入れるのは難しいだろうなというように思います。という辺りは『Nature』の6月30日頃のニュースでいろいろ解説されています。ですから、まだLong COVIDとこういう治療薬の関連性というのは分からないというのが正直なところだと思います。
 あと最後に、今日、今回公開でやっていただいているので私は非常にうれしいところを含めて、これは塩野義さんにも感謝したくて、塩野義さんがこういうのを認めていただいたということがありがたいなと思いますし、今回、もっとすばらしいなと思ったのが、このフェーズIIaとかフェーズIIbとか、フェーズIIIに進捗している試験のプロトコルとか、これは全てメドアーカイブ(medRxiv)というプレプリントのバージョンのオープンサイトでもう公表されています。これはすばらしいことなのですね。
 創薬についても『Journal of Medicinal Chemistry』の今年の3月号にちゃんと報告されていますので、この辺り、みんなが見られるような状況で今日を迎えたというのはすばらしいなと思います。以上、コメントでございます。
○太田分科会長 ありがとうございました。続きまして、本日御参加いただいている参考人の先生方から御発言をいただきたいと思います。
 まず、本日いらしていただいている方の第1番目といたしまして、日本感染症学会理事長、東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター教授であって、本剤の治験調整医師でもある四柳先生にお願いしたいと思います。四柳先生、よろしいでしょうか。
○四柳参考人 ありがとうございます。お手元に私のつけました資料の方は御用意いただいておりますでしょうか。私、自分の手元にちょっとないのですが、5-1というようなものになりますでしょうか。
○事務局 事務局です。5-1でございます。
○四柳参考人 ありがとうございます。それでは、始めさせていただきます。東京大学医科学研究所の四柳と申します。
 なお、1枚目に開示しておりますとおり、私、今、御紹介がありましたとおり、日本感染症学会理事長の職にありますが、本日申し述べる内容は、学会の公式の見解ではないことを申し添えます。
 2枚目でございます。私は今、御紹介がありましたようにS-217622、以後は622と申しますが、臨床第II相、第III相試験の治験調整医師でございます。
 3枚目を御覧ください。現在使用できる経口抗ウイルス薬の有効性は、オミクロン流行期以前に、ワクチン接種なしハイリスク患者を対象に、海外で評価されています。一方622は、デルタ株、オミクロン株流行後に、多数のワクチン接種者を含む集団、ハイリスク集団に限定しない集団を対象として、臨床試験が実施されております。
 4枚目を御覧ください。ワクチン接種が進んだ今も、オミクロン株の強い感染力により、患者数は急増しております。重症化率は低いですが、重症例の増加、医療従事者の感染等によって、現在、まさに医療現場の逼迫が起こりつつあります。
 5枚目を御覧ください。既存の経口コロナ治療薬の有効性について、オミクロン流行下の臨床試験成績は存在せず、感染株の違いにより臨床学的有効性が異なる可能性も示唆されます。また、オミクロン流行下の観察研究において、ハイリスク患者での重症化抑制に関する効果の大きさは、年齢層やワクチン接種の有無により異なります。さらに、これまでに既存の経口薬で、症状改善あるいは消失といったエンドポイントで有効性を示した報告はございません。
 6枚目を御覧ください。現在、FDAやNIH等においては、ワクチン接種例、既感染例が優勢となったオミクロン流行期においては、死亡・入院率だけを臨床効果の指標とすることは非現実的であり、有病期間、ウイルス学的評価、Long COVIDなどの指標を併用して薬剤の有効性を総合的に評価・検証することが重要だという議論が行われています。
 7枚目を御覧ください。622は、ワクチン接種者が8割以上の患者集団において、速やかなウイルス消失効果を示します。
 8枚目を御覧ください。既存の経口薬を含む他剤と比較しても、最も抗ウイルス効果が高いことを示唆するデータが得られております。
 9枚目を御覧ください。既存の経口薬で課題となっている、治療完了後のウイルスの再増殖や症状再燃に関しても、これまで622の投与群では認められておりません。
 10枚目を御覧ください。現在流行中のオミクロン変異株であるBA.4、BA.5に関しても、622は活性を示すことが確認をされております。
 11枚目を御覧ください。臨床効果についてお話しいたします。622のフェーズIIb試験では、先ほどからお話があるとおり、主要評価項目である12症状の合計スコアに統計学的な有意差は認められませんでした。これはウイルス株間に症状の違いがあることによるものと考えられます。
 12枚目を御覧ください。オミクロン株に特徴的な症状、すなわち呼吸器症状、発熱に関しては、統計学的に有意な改善を認められました。
 13枚目を御覧ください。オミクロン流行下では、症状の程度が軽い患者が多いことから、現在行われている第III相試験では「症状回復」ではなく、FDAが推奨している「症状消失」までの時間を主要評価項目としております。
 14枚目を御覧ください。オミクロン流行期においては、症状が完全に消失するまでに時間がかかる例が存在いたします。その一部がLong COVIDに移行するものと考えられます。622のフェーズIIb試験では、症状消失までの時間において約三日の短縮効果が認められました。
 15枚目を御覧ください。Long COVIDについてお話しいたします。Long COVIDの定義については、一貫した定義はございません。ただ、WHO、CDC等により、COVID発症後3週間から数か月続く症状の総称とされております。
 16枚目を御覧ください。Long COVIDに関する日本の成績でございます。1,000例規模の患者を対象に行われた罹患後症状に関する調査ですが、対象の33%が、診断12か月後の時点でも何らかの症状を有することが報告されております。
 17枚目を御覧ください。ワクチンにLong COVIDの抑止効果があるとの報告はありますが、15%程度の低下にとどまっております。
 18枚目を御覧ください。Long COVIDの患者の60%で血清中にウイルスのスパイクたんぱく抗原が検出され、バイオマーカー候補であることが最近になり報告されました。レムデシビル投与患者でLong COVID発生が抑制されたとの報告もございます。これらのことは、ウイルスが全身に広がる前に早期に増殖を抑制することが、Long COVIDのリスクを低減することを示唆するものです。また、Day22から28に症状を有した症例の方が、24週間後の症状残存率が高かったこと、3、4週目に症状があることがLong COVIDにつながるという報告もございます。
 19枚目を御覧ください。622の抗ウイルス効果は、フェーズIIb試験の事後解析によれば、投与開始3週間後に症状が残存する被験者の割合を有意に低下させる効果が得られております。622はLong COVIDリスク低下の有効性があることを示唆するものです。
 20枚目を御覧ください。最後に簡単に安全性について触れさせていただきます。622には、現在までのところ、アナフィラキシーや中毒性の重篤な副作用を認められておりません。腎機能障害での用量調整も不要です。現在実施中のフェーズIII試験、これは本日エントリーが終わりましたけれども、そちらでも新たな安全性の懸念はございません。本剤の安全性リスク、管理可能というように考えております。
 21枚目を御覧ください。最後のスライドになります。622に関して臨床上の有効性推定が可能であり、安全性上の大きな懸念も認められていないことを、現状でお示しいたしました。感染が日ごとに急速に拡大しており、早期診断、早期治療が強く望まれる現状を鑑みると、緊急使用承認下で新たな治療選択肢として臨床使用の環境を整えることには、十分な意義があるものというように私は考えております。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
○太田分科会長 四柳先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、国立がん研究センター中央病院感染症部の非常勤医師であり、本年3月まで感染症部長を務めておられた岩田先生からお願いしたいと思います。岩田先生、よろしいでしょうか。
○岩田参考人 ありがとうございます。
○太田分科会長 よろしくお願いいたします。
○岩田参考人 国立がん研究センター中央病院感染症部の岩田敏と申します。私の方からは、感染症専門医としての立場からコメントさせていただきたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症診療の手引の中では、COVID-19のマネジメントのためには、軽症例や中等症例に対して、抗ウイルス薬の早期からの投与が推奨されています。軽症例、中等症例に対する早期治療は重症化を防ぐ意味で重要でございます。
 現在、国内で承認されている抗ウイルス薬としては、注射薬のレムデシビル、経口薬のモルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルがあり、いずれも投与によってCOVID-19による入院・死亡を減少させる効果が認められています。これらの抗ウイルス薬の臨床試験が行われた時期につきましては、先ほど四柳先生がおっしゃいましたように、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルについてはオミクロン株出現前のアルファ株、デルタ株などの流行期だったのに対し、エンシトレルビルにおいては、開始直後はデルタ株、その後は主にオミクロン株の流行期となっています。
 一般に抗ウイルス薬の有効性を評価する場合、抗ウイルス効果と臨床効果で評価するわけですが、この二つがポイントになります。エンシトレルビルの試験管内での抗ウイルス効果については、オミクロン株などの変異株も含めて新型コロナウイルスに対して強い抗ウイルス活性を示すことが既に分かっています。また、エンシトレルビルの臨床試験での抗ウイルス効果については、オミクロン株流行下においてプラセボ群に対して速やかなウイルス力価及びウイルスRNA量の減少が認められており、臨床的に優れた抗ウイルス効果を示していると言うことができます。この抗ウイルス効果というのは、こういった臨床試験の中では大事な部分になると思います。
 一方、臨床効果については、オミクロン株出現前のデルタ株流行期に実施したフェーズIIa試験では、COVID-19の12症状の改善傾向が認められましたが、オミクロン株流行期に実施されたフェーズIIb試験では、症状改善に関する主要評価項目の12症状について、プラセボ群と比較して統計学的な有意差が認められず、結果的にフェーズIIbの主要目的は達成されないということになりました。
 ただ、事後解析として検討されたオミクロン株に特徴的な呼吸器症状・発熱症状の合計スコアでは、有意な改善が認められております。
 また、COVID-19関連の12症状が消失するまでの時間についても、先ほどお話があったように、プラセボ群と比べてエンシトレルビル群では短くなっております。
 さらに、投与開始3週後に症状が消失していない被験者の割合も、先ほどお話がありましたように、エンシトレルビル群では低い傾向が認められ、回復後も種々の症状が遷延する、いわゆるLong COVIDの発症リスクをもしかすると低下させるかもしれません。
 安全性については、催奇形性やCYP3Aを介した薬剤相互作用が問題になりますが、それ以外に特別に大きな問題はないと考えられます。
 以上のことから、エンシトレルビルに対する私の見解としては、まず良好な抗ウイルス効果が示されている。これは非常に大事なことだというように私は認識しております。また、フェーズIIbパートで、フェーズIIaパートの結果から設定した症状改善に関する主要評価項目において、統計学的な有意差を示すことはできなかったのですけれども、いろいろ御批判はあるかもしれませんが、事後解析の結果、オミクロン株に特徴的な呼吸器症状、発熱症状の合計スコアについては、有意に改善を示したということがございます。臨床試験に関して、事前に設定したエンドポイントで有効性を評価すべきであるということは全くそのとおりなのですけれども、いろいろな症状とか状況が変わりやすいCOVID-19という疾患を考慮した場合、臨床的に現在のデータを基にエンシトレルビルの有効性を推定することは、私は可能ではないかというように考えております。
 COVID-19をコントロールしていくためには、ワクチン接種、抗ウイルス薬等による早期治療、そして感染防止対策の3本柱が重要になりますが、治療薬に関しては外来で処方可能な抗ウイルス薬の十分な供給が、臨床現場の喫緊の課題となっています。本薬の安全性に関しては、臨床上特に大きな問題は見られてないということもございます。したがって、現在の流行状況を考慮した場合、フェーズIIIパートの結果をもちろん確認することは絶対的な条件になりますけれども、その上で本薬を早期に承認することが、COVID-19治療薬の安定供給・治療の選択肢拡大のために臨床現場としては非常に求められているし、必要なことだというようには考えております。私の方からは以上でございます。
○太田分科会長 岩田先生、ありがとうございました。
 それでは続きまして、富山県衛生研究所所長の大石先生にお願いしたいと思います。大石先生、よろしくお願いいたします。
○大石参考人 私も感染症専門医として、話をさせていただきたいと思います。お手元に資料、今回提出しておりませんので、文章を読む形で御説明させていただきたいと思います。
 これまでに機構の専門協議に参加し、2回開催されてフェーズIIaとフェーズIIbの結果につきまして、エンシトレルビルの有効性を評価しました。この段階では、これまでありましたように、結論としては事前に設定しました本試験の成功基準というのは満たすことができませんでした。この一因として、臨床症状がデルタ株とオミクロン株、臨床試験実施中にオミクロン株に変わってきたということで、この症状がかなり大きく変化したこともありまして、12症状を対象とした合計スコアの変化量で臨床症状の改善効果を示すということはかなわなかったと理解しています。
 評価基準を変更することがどうかという意見もありましたけれども、今回、申請者は事後解析結果を報告されておりまして、オミクロン株に特徴的な症状を考慮して、検討、報告されたというように思います。実際、今回のオミクロンは、発熱そして喉の痛みというのがかなり特徴的な症状だと私は理解しております。
 この12症状のうち、呼吸器系の4症状の合計スコアの変化量がプラセボと比較して有意に低下しました。さらに4症状に加えて、熱っぽさ又は発熱を加えた5症状についても検討し、同様にプラセボと比較して有意な合計スコアの低下を認めております。これらは専門協議においても示されたデータでございますけれども、FDAから推奨された指標である12症状の回復までの期間中央値は、プラセボと比較しても三日短縮されたとされております。
 本試験は、ワクチン既接種者が約8割を占める参加者を対象として実施されまして、またその事後解析を含む結果から、プラセボと比較してウイルス力価のベースラインからの変化量の有意な低下、五つの臨床症状の合計スコアの有意な減少、そして12症状の回復あるいは消失までの時間の短縮効果、本剤のオミクロン株に対する一定の効果は推定できたと私は考えております。また、安全性に関しても特段の問題は認められていないと思います。
 また、本剤で懸念されている、治療後のウイルス量のリバウンド及び症状再燃が、本剤でも認められないこと、また、今後の流行が予想されるBA.5系統に対する抗ウイルス活性が他の変異株と同等であることについて、期待できる効果を提供していると理解します。
 さらに、本試験では、四柳先生もお示しになった、本剤投与開始3週後のCOVID症状が改善していない者の割合が低下するという、本剤によるLong COVIDに関連する症状遷延リスクの低減効果は重要と考えられ、引き続き検討して詳細かつ信頼できる解析結果を公開してほしいと思います。
 現在、全国的にオミクロン株、BA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進み、新規感染者の増加が急速に進んでおります。オミクロン株BA.2系統の高い感染性及びワクチン免疫逃避する特徴から、第七波ではこれまで以上の感染者数の増加ということが想定されます。本剤のオミクロン株に対する有効性が推定される結果から、第七波における新規感染者の重症化阻止、そして、有症者の症状緩和や早期回復が期待できると考えられます。このような現状を鑑み、本剤を緊急承認するということは可能ではないかと考えております。
 今後、現在進行中の第II/III相試験の第III相パートの結果について、速やかな提出を求め、有効性をさらに検証する対応が求められると思います。また、将来的には抗インフルエンザ薬と同様に、重症化リスクのない感染者にも使用が可能になり、症状の緩和、社会活動の制限が低減できるということが期待できるのではないかと考えております。私からは以上でございます。
○太田分科会長 大石先生、ありがとうございました。大石先生が最後に触れられていた最近の感染状況について、最後に事務局から説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○結核感染症課長 厚生労働省結核感染症課長の江浪と申します。よろしくお願いいたします。
 資料No.6に基づきまして御説明を申し上げたいと思います。資料の右下に書いてありますページ数で申し上げますと1ページと3ページ、「感染状況について」ということでございますけれども、本年7月以降、全国各地で新規感染者数増加に転じておりまして、多くの地域において急速に感染が拡大をしてございます。オミクロン株のBA.5系統は感染者数がより増加しやすいということが示唆されておりまして、免疫逃避が懸念されるということから、BA.5系統への置き換わりが進むことによって、7月の三連休や夏休みによる接触機会の増加とあいまって、新規感染者数の急速な増加の継続も懸念されるということでございます。
 この右下のページで7ページに、オミクロン株の特徴ということでございまして、右下のページで9ページのところに、BA.5系統への置き換わりの状況ということでございます。国内の既存のオミクロン株におけます60歳以上の重症化率というのは、60歳未満の方と比べて著しく高いというデータがございます。BA.5系統の重症化につきましては、明確なエビデンスはないものの、WHOのレポートでは、既存のオミクロン株と比較した重症度の上昇は見られないということでございます。
 治療薬の確保、供給の状況につきまして、右下のページで申し上げます10ページのところに資料をお示ししております。令和3年11月、昨年の11月に取りまとめました「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」に基づきまして、治療薬の確保や医療現場への供給に取り組んでまいりました。今年1月以降の感染拡大では、中和抗体薬の活用に加えて、経口薬の普及が進んだということで、約40万人に薬が投与されているということでございます。
 現下の感染拡大に対しましては、政府が300万人分を供給可能な経口薬の2種類、この資料でマル1、マル2ということでございますが、それに加えまして、点滴薬「レムデシビル」が市場流通をしておりまして、これらの複数の治療の選択肢の中から、その適応に応じて適切かつ早期に投与できる体制を構築、強化するなど、万全を期しているということでございます。
 今後、更なる変異株の出現の可能性なども考慮いたしますと、医療現場で安心して使用できる治療薬の選択肢が増えるということは重要でございまして、本審議会におきまして、エビデンスに基づいた有効性・安全性に関する御議論をお願いしたいと考えてございます。私からは以上です。
○太田分科会長 ありがとうございました。江浪結核感染症課長は審議の内容に関する議論になりましたら退席いたします。
 まず、感染状況についての御質問がありましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○島田(眞)委員 今の御説明に対してですけれども、よろしいでしょうか。
○太田分科会長 はい。どうぞ。
○島田(眞)委員 山梨大学の島田です。江浪課長の資料の11/11ページで、確かに抗ウイルス薬、幾つか出ているのですけれども、パキロビッドは比較的いい薬だと私は思うのです。180万人が納入済みになっているのですが、投与者数がほかの薬に比べてかなり少ないのですね。我々のところでも使いにくいとかと言われて、実は初期の患者さんに投与しようと思ってもなかなか回ってこないみたいなところがありまして、だから、この薬がちゃんとフルに使えてないというのが問題だと思いますよ。この薬と今回の塩野義さんの薬とはプロテアーゼインヒビターということでは同様の薬ですね。細かい点は少し違うのですけれども、似たような作用機序であることは確かなのです。この薬をもっと医療機関などで使えるようにすることがこの感染症を抑えるのに先決だというように思います。
○太田分科会長 ありがとうございます。それでは、ほかに感染状況についての御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、審議の内容に移りたいと思います。それでは、委員の先生方から御質問等ございましたら。
○島田(眞)委員 よろしいですか。
○太田分科会長 ちょっとお待ちください。それでは、江浪結核感染症課長は御退席いただければと思います。
 それでは、どうぞ。宮川先生に御発言をまずはしていただきます。
○宮川委員 参考人の方にお伺いしたいのですが、四柳先生にまずお伺いしたいのですが、14/21ですけれども、そのスライドの中で症状が消失するまでの時間ということが書いてございますが、このグラフの中には250mgと125mg両方書いてございますが、プラセボと比較して、74時間、三日間の短縮というのは125でも同じようだということで了解してよろしいのでしょうか。これは私たちが使える臨床の用量というのがそこで決まっているわけですので、ぜひ教えていただきたいと思います。
○四柳参考人 回答させていただきます。スライドの左下に14枚目と書いてあるところを見ていただきますと、それぞれのKaplan-Meierが描いてあって、ほぼ125mgと250mg、最初の問題となるところではほぼ重なり合うようなKaplan-Meierを描いております。したがいまして、これは約三日、74時間と書きましたけれども、その間には125mgでも250mgでも大きく差はないというようなことでお考えいただいてよろしいかと思います。
○宮川委員 では、125mgでも実際には三日間の短縮が見られたという統計学的な解析でよろしいのでしょうか。
○四柳参考人 はい。そのように思います。
○宮川委員 ありがとうございます。
 それから、岩田先生にお伺いしたいのですけれども、岩田先生のスライドの10/13のところですが、臨床効果というところなのですが、先ほどのところで12症状が消失するまでの時間ということですが、これもやはり250mgと125mgが混在しているわけですが、この記載を見ると125mgの方ではプラセボと比較して短い傾向が見られた。125mgでも統計的な差が見られたということで確かでございましょうか。つまり、臨床的に私たちが使える用量は125mgという形なのですが、その中の私たちの使える用量では有意な差が見られなかったという、そういう解釈でよろしいでしょうか。
○岩田参考人 一応p値の方が0.09ということなので、傾向はあると思うのですけれども、250mgの方が0.04というところで、この辺、まだ症例数が少ないので、このデータからすぐに物を言えるかどうかは微妙なところがあるかもしれないのですが、先生が御指摘になったとおりでよろしいかと思います。
○宮川委員 よろしいですね。つまり、そういう意味では消失するまでの時間というものが短くなったという表現というのが適切なのかどうかということでお聞きしたかったわけです。ありがとうございます。
○岩田参考人 実際には短くはなっているけれども、検討した時点のところの幅は250mgの方が大きかったということです。
○宮川委員 ありがとうございました。それから、私、実際には発熱外来を毎日やっているのですけれども、その意見からすると、BA.5に置き換わってかなり臨床症状も異なっています。そうすると、確かに呼吸器を含めた発熱も含めた4症状というのが本当に今の症状に当てはまっているのかどうかということが疑問です。倦怠感とか筋肉痛、子供の場合にはけっこうそういう症状を示してくることがあります。海外のBA.5に置き換わった症状を統計的に見ていたのですけれども、塩野義の提出している4症状プラス発熱というものが、本当にオミクロン下の日本の状況を鑑みて、申請者がオミクロンに特徴的だというような表現をされていることに違和感を覚えます。本当に今の臨床症状に合致しているとの申請者の表現は問題と思いますので、そこはしっかりと私たちは検証していかなければいけないのだろうなというように思っている次第です。以上でございます。
○太田分科会長 それでは、事務局から1点補足があるようでございます。
○事務局 失礼いたします。事務局でございます。今の宮川委員の御質問の1点目に関しまして、審査報告書に具体的な値がございましたので、御紹介を念のためさせていただければと思います。審査報告書の70/82ページでございますけれども、ちょうど宮川委員が御指摘の図がそちらにございまして、それぞれのグラフの具体的な値が70ページの一番上のところに文章として記載してございますが、プラセボ群と比較して本薬125mg群と250mg群の両群で中央値として74時間(約三日)の短縮が見られたとあり、その後括弧書きで、層別log-rank検定で本薬375/125mg群ではp値が0.0939、本薬750/250mg群ではp値が0.0406といった記載となっております。ちなみにこれは機構の審査報告書ですが、申請者からの意見として提出された記載部分でございます。以上でございます。
○宮川委員 分かりました。ありがとうございます。申請者のそういう意味では表現という形でよろしいですね。ありがとうございます。
○太田分科会長 いかがでしょうか。ほかの意見、ございましたら。
○島田(眞)委員 先ほどから手を挙げているのですけれども、島田です。いいでしょうか。
○太田分科会長 島田委員ですか。どうぞ。
○島田(眞)委員 細かい点はいろいろあると思います。先ほどの125mgと250mgの間でも岩田先生と四柳先生からデータを示されていますけれども、125と250でドーズが多いのになぜか臨床症状の改善が逆になっていたり、ドーズレスポンスカーブというか、ドーズレスポンスがはっきりない項目が幾つかあるのは事実です。そこは指摘しておきます。
 ただ、そういう細かい議論に入る前に、今、お話になった3名の先生方、四柳先生、岩田先生、それから大石先生、COIの方はどうなっているのですか。最初の2人は塩野義製薬から何らかの利害関係があるということで見たような気がするのですけれども、大石先生の方は関係ないのでしょうか。というのは、お三人とも、これは塩野義製薬の反論に補足したというか、最初に機構がきちっと報告されているのですよ。だから、それに対しての反論だというように私はお伺いしたのですけれども、はっきりとしたCOIがあるならば本当はあまり会社にそうような主張をされるのはいかがなものかと思いますよ。ということで、どれぐらいのCOIがおありになるかちょっとお話しください。
○大石参考人 大石でございます。私には塩野義製薬との関係でCOIは全くございません。よろしいですか。
○島田(眞)委員 分かりました。だけれども、要するに大石先生の御説明は、塩野義製薬の機構への反論に沿った形で御提示いただいたと思うのです。全く四柳先生、岩田先生とお変わりのない御意見だったと私は伺いましたので、それはないのならそれで結構です。だけれども、やはり審議会のやり方ですが、せっかく機構がきちっと報告されました。6月22日の医薬品第二部会でもきちっとしたデータや議論が出ていますよね。参考資料No.2これを尊重していただかないと本当は駄目なのですけれども、それに沿って今日は機構がきちっとプレゼンされたと私は思います。ところが、これに対して反論を3人も4人も何か先生が出てきていろいろおっしゃるのはちょっと問題かと思います。これはフェアに意見をおっしゃる方を選んでいただかないと、3人が3人とも塩野義さんの御意見と全く同調されるような方々をお選びになるというのは、私は、これはフェアなやり方ではないというように思っております。いかがでしょうか。
○太田分科会長 感染症の専門家からの御意見ということで、こちらからお願いしたわけでございます。
○島田(眞)委員 感染症の専門家なんてごまんといるわけですよ。だけれども、塩野義さんとのCOIがある方を3人中2人も呼んでいて、その方だけにプレゼンされる。あと一人はニュートラルかもしれませんよ。だけれども、やはりこれはもう少しフェアな方を呼んでいただかないと議論がやはりちゃんときちっとかみ合わないです。
 この3人の参考人の方々、ほぼ同じことをおっしゃっているのですが、塩野義さんの主張のとおりにしゃべっておられます。我々第二部会できちっとこの薬の有効性、安全性を審議したわけですよ。だから、それに問題があるのだったら、どこにどう問題があるのかをちゃんとおっしゃっていただければいいのだけれども、プレゼンの内容が塩野義さんの内容に偏ってお話しされるので、問題ですよ。
 要は副作用もほとんど問題ないとおっしゃりますけれども、安全性ですね。この薬はCYP3Aを阻害するのは目に見えていますから、結局パキロビッドと似たような併用薬の懸念があるわけですよ。どんな薬を飲んでいても安全ですよという、そういう薬ではないのです。非常にこれは危険なので、本当にきちっとそういうところを見極めないといけないわけですし、しかも催奇形性が認められているわけですよ。ウサギに飲ませてみたら骨格異常が出たとかそういうお話もあるので、これはやはり催奇形性に関しては、いろいろ我々は苦い経験を持っているわけですからね。これに関しても、いや、何もなかったみたいな雰囲気で、それは何十例かの臨床試験ではそういう重大な副作用は出ないのですよ。だけれども、若い女性で妊娠可能な方にはこれは危ないのですよ。だって、本当にその方が妊娠しているかどうかなんて分からないわけですからね。そういう方が飲まれたら、ひょっとしていたら妊娠していて初期だったということになると何が起こるか分からないので、これは禁忌とされる予定なわけですよ。非常に危ないと私は思うのですけれども、これがやはりこういう話をきちっとしていただかないといけないなというように思います。
○太田分科会長 分かりました。今回のこの合同の、分科会とそれから第二部会の合同開催ということで、ここの場でそのようなことを多くの先生方から議論いただくということにしたいと思いますので、ほかの委員の先生方、また御意見を頂戴したいと思います。事務局から。
○医薬品審査管理課長 審査管理課長の吉田でございます。島田先生の御指摘に対しまして御説明さしあげます。参考人の選定あるいはその御発言に対しまして御批判をいただいたというように承知しておりますが、私ども、できるだけフェアな御審議をいただきたいというように思っておりまして、いろいろな方面からのいろいろな立場からの御意見をいただきたいというように思っておりまして、それで専門協議等々を踏まえて委員の選定をさせていただいたというところがございます。
 ただ、実際の当日の御発言、これについては各先生方のお考えの下に御発言いただくという形になってございますので、先生御批判の、結果としてこのような同じような御意見になったということに対して、一定のその方向性があるのではないかということについては、そんなことはないということを申し上げたいと思います。選定の段階での立場としてはですね。
○島田(眞)委員 塩野義とCOIのある方を3名中2名も選んでおられるから言っているのですよ。
○医薬品審査管理課長 いろいろな選定の過程で、COIがある方、それからない方も含めて選定をしようとしましたが、限られた時間の中で作業しましたので。
○島田(眞)委員 だから、それがおかしいと言っているのです。選び方がちょっとおかしい、偏り過ぎていると申し上げているので、「我々はフェアに選んだ」という、私が言っている内容と違う答えをされても困るのですよ。関係のない方を選べばよかったでしょう。
○医薬品審査管理課長 できるだけフェアにしたつもりでございますけれども、結果としてそういうような御発言になったことに対しては、おわび申し上げたいと思います。
○太田分科会長 いかがでしょうか。亀田委員から御発言があるように思います。よろしくお願いいたします。
○亀田委員 ありがとうございます。私から一つだけ質問させてください。やはり抗ウイルス効果があるということは非常に重要なことだと思います。四柳先生のお話の中で、臨床試験の結果から、この薬剤はほかの薬剤以上に抗ウイルス薬としての効果が強いのではないかというお話がありました。ただ、臨床試験の結果というものは、ベースラインの患者さんの状況、例えばワクチン接種とかどのぐらいウイルスが増えているか、いろいろなことによってベースラインが違ってしまいますので、臨床試験を単純に一つ、二つで比較することは難しいと思います。そういった意味で、in vitroの検査の結果とか、あるいは臨床試験とかいろいろなものを総合的に考えて、この薬剤の抗ウイルス効果というものはどのように位置付けられるかということに関して、機構の見解をお聞かせください。お願いします。
○太田分科会長 いかがでしょうか。機構からお答えいただけますでしょうか。
○亀田委員 時間がかかるようでしたら後で結構ですので、よろしくお願いします。
○太田分科会長 よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 しばらくお待ちください。確認させていただきます。
○太田分科会長 それでは、しばらくお時間をいただきたいということなので、次に行きたいと思います。山本委員からお願いしたいと思います。
○山本委員 山本です。ちょっと確認なのですけれども、先ほどから今日の会で紹介があった第III相試験はまだ症例登録中ということでいいのでしょうか。もしそうであれば、その症例登録をとにかく加速して第III相試験の結果を見て臨床試験の結果をニュートラルに判断できる場に、そういう議論をしたほうがいいのではないかなと考えたので、一言申し添えます。第III相試験ですと、結果が出てから、登録が終わってから、最終的な判断に行くまで少しタイムラグがあると思いますので、どうしても診療の現場で急がれるということであれば、これまでの効果を外挿できるという御意見もあるのであれば、例えばシングルアームの拡大治験とかやる方法もつなぎではあると思いますので、やはり臨床試験の結果をニュートラルに受け止めるべきだと思いましたので、そこは意見として申し添えます。以上です。
○太田分科会長 ありがとうございます。機構から今の件に関して何か情報があれば。
○新薬審査第四部長 お答えさせていただきます。組入れの状況については、我々としてはまだ最新の情報は頂いておりませんけれども、先ほど参考人の四柳先生の方から、本日エントリーが終わったというような御発言があったかと受け止めさせていただきました。
○山本委員 ありがとうございます。
○太田分科会長 よろしいでしょうか。それでは、戸部委員からお願いしたいと思います。
○戸部委員 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私の方からは、生活者の視点から質問をさせていただきたいと思っております。
 本剤ですけれども、事前に頂いた資料の中に添付文書がありましたので拝見しました。やはり先ほども少し話がありましたけれども、この薬剤については、併用禁忌や併用注意というものがたくさんあるというようなことがわかりました。また、試験結果から、催奇形性リスクも懸念されるというような御説明をいただきました。こういったことを考えると、この薬剤が要するに臨床の場で実際処方できる可能性というのは、先行する治療薬と比べてどうなのかということが知りたいということが一つと、あと今、今日この場でお伺いすることが合っているかどうかちょっと分からないのですけれども、保険適用対象の薬剤になるのかどうかを教えてください。
○太田分科会長 これは機構からお答えいただくのがよろしいでしょうか。どうでしょうか。
○新薬審査第四部長 ありがとうございます。併用禁忌の件に関しましては、先ほど来御説明させていただきましたように、先行されております同じ作用機序の有効成分を持ちますパキロビッドと同じような併用禁忌、加えて妊婦さんの禁忌といった形が設定される形と想定しております。
○太田分科会長 それでは、保険適用に関して事務局からお願いします。
○医薬品審査管理課長 審査管理課でございます。先ほどの資料No.6にもございましたとおり、当初はやはり今の経口薬あるいは中和抗体薬も基本的には国で買上げをして供給するという、そういう形になってございます。ただ、資料No.6の10ページにもございますとおり、レムデシビルこれにつきましては、一定の供給が整いまして、一般流通開始、保険適用になっているというのがございますので、供給が十分になれば保険というのも十分あり得るけれども、当初は買上げ供給という形になる見込みが高いかと思っております。以上です。
○太田分科会長 よろしいでしょうか。
○戸部委員 ありがとうございます。変な質問かもしれないのですけれども、先行の薬剤と価格的には同じぐらいなのでしょうか。
○医薬品審査管理課長 大変申し訳ございません。価格等につきましては、ちょっとお答えは控えさせていただきます。
○戸部委員 分かりました。どうもありがとうございます。
○太田分科会長 それでは、山田委員からお願いしたいと思います。
○山田委員 非臨床の薬理試験でマウスの実験をやっているときに、投与時間がウイルス感染させてから速やかに投与しているわけです。しかしながら、臨床試験のときに、リクルートされた患者さんがPCRで陽性になる、あるいは初期症状が出てから120時間以内の方たちを対象にしているというような設定になっていると思うのですけれども、これで正しいでしょうか。正しいとすれば、抗ウイルス活性があると臨床試験で証明されているというような御意見がたくさん出ているのですけれども、実際にそのデータを見てみますと、もう既にウイルスの力価が下がり出している、下がり始めているところで投薬しているわけです。恐らく120時間以内というやつを細かく切っていけば、あそこに出てくるような図のように完全に右肩下がりになんかなるわけなくて、もっとばらばらになると思うのですけれども、ほとんどが右肩下がりになっているということは、かなり集めた検体がもう既に発症あるいは感染してから日にちがたっているのではないか。そういうものを使って抗ウイルス活性と、それから臨床的な有効性を判断しているとなると、もう要するに感染のピークを過ぎている人たちしか見てないのではないかという疑念が拭い去れない。その辺はいかがでしょうか。私の誤解であればそういう説明をいただければありがたいのですが。以上です。
○太田分科会長 これはどうしましょう。機構ですかね。いかがでしょうか。分からないですよね。では、宮川委員からお願いします。
○宮川委員 宮川でございます。今、御指摘のあったとおりで、臨床の場面ではやはり感染の症状があって、それから医療機関等を受診して、それで確定診断ができるわけですから、全くそのとおりだろうと思います。ですから、それが今の実臨床の状況だということで、実臨床の状況の中で臨床試験が行われていると理解していただければと思います。ですから、このように効果が悪いという結果が出てくるのかもしれません。ウイルス活性の問題が臨床に結びつかないということが出てくるのだろうと思います。それが現状だとお考えいただいてよろしいのではないかなと思います。
○山田委員 ありがとうございます。ただ、よろしいですか。治験をやるのであればそういう知りたいことが知れるような対象を選ばなければいけないですよね。120時間というのは五日間ですから、検査してから五日もたった人をリクルートしてきても全く意味がないと思います。ということで、だから、臨床試験の設計自体、初期設計がやはり少し問題なのではないかな。それがかなわないというのは果たしてどうなのか。要するにPCRを受けて。
○宮川委員 私がそれを答える立場にないのかもしれませんが、実際の臨床現場で投薬をする、お薬を飲んでいただくという段階になりますと、やはりそれに近い状況のタイミングでしかお薬を服用できないということになります。初発の状況から1日ないし二日たって私たちの現場に来られるわけですから、翌日ないしそこで半日ぐらいで結果を出して、その方に治療を施すという形になれば、どうしても二日ないし三日に近い状況でお薬を投薬するという形にならざるを得ないのが、実臨床の現場という形になるのではないかなと思います。
○山田委員 分かりました。ということは、現実的なことを考えたときに、抗ウイルス薬で、本当に初期で抑えられればその後の症状の発生とか、そういったものを抑えるのに非常に役に立つのだけれども、結局何日かたってからしか投薬ができないようなものというのが臨床現場でどの程度の役に立つのかということは、きちんと考える必要があると思います。
○宮川委員 やはりそれだけの強い力がある薬でないと今の臨床現場では無理です。当初のCOVIDの流行のときにデルタも含めてですけれども、そのときは接触してから発症までの時間がある程度時間がかかっていたわけです。しかしながら、これがオミクロンになってくると、それが発症する前にもう感染成立して二日、三日たっているというような状況です。多少ウイルスというものの態度というのが違ってきているということで、臨床現場が困窮しているのは、それも一番あるのではないかなというように私は思っております。
○山田委員 ありがとうございます。そうすると、救世主にはなかなかなり得ないという。以上です。どうも失礼いたしました。
○太田分科会長 宮川委員、ありがとうございました。それでは、機構からよろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 先ほどの非臨床における同時投与というお話だったのですけれども、本薬の遅延投与、本薬を後で投与した場合でも一応非臨床でも効果は認められておりまして、ウイルス量を下げるという方向は認められております。
 また、亀田委員からの御質問でありましたin vitroでの他剤との比較みたいなものなのですけれども、こちらに関しましては本薬と同様の機序のものと一緒にやったような結果というのは出ておりませんで、持ち合わせておりません。以上です。
○太田分科会長 ありがとうございました。それでは、半田委員、御発言よろしくお願いしたいと思います。
○半田委員 北里大学の半田です。聞こえますか。
○太田分科会長 聞こえております。どうぞ。
○半田委員 大変素朴なのですが、第III相試験を待たずに当該薬を緊急承認ということですよね。そうした場合、待った場合と待たなかった場合、どこまでいわゆる実臨床とか、あるいは今後予想されるCOVID変異株に対する効果ですね。つまり、国民の福祉に対してこの緊急承認というのはどのぐらいのインパクトがあるのかというところがちょっと分からないのですね。というのは、COVID自身がもう今、変異をどんどん繰り返して、どんどん感染性が高くなっても毒性は低くなる傾向があるということですね。
 したがって、当該薬剤を4か月前に、11月までという意味ですけれども、承認したことで何か本当にメリットがあるのでしょうか。添付文書を見ますと非常に適応範囲は狭いですよね。ほかの薬剤の効果がない、あるいは使用できないような場合に使うというただし書がついていますから、実際にこれが供給されたとしてどのぐらいインパクトがあるのかというのは、私はよく分からないです。なぜ11月まで待てないのかというところをちょっと教えていただければと思います。
○太田分科会長 どうしましょうか。どなたからお話を伺えばよろしいでしょうかね。それでは、事務局から御発言いただけますか。
○医薬品審査管理課長 御説明いたします。まさに医療・社会的なという機構の報告書にあったとおり、そういうところでの議論の過程だと思っております。だから、今後の感染拡大の状況、それは誰も予想できないという形になると思いますけれども、ただ、今後の例えば変異株の問題もあろうかと思いますし、今後の感染がどれだけ広がるかというのは分からない。そういった意味では、そういう選択肢を多く持っておくことは一定の意義があるのだろうと思っております。そういったようなことを含めて、本剤を緊急承認するようなリスク・ベネフィットバランスと医療の必要性、そういった意味でそれが十分に認められるのかどうかということについて、この場で御議論いただいてはどうかということで、御提案、この場に本品を上程させていただいている、そういう理解でございます。繰り返しになりますが、資料No.4にございますとおりでございますが、そういう既存の治療薬では効果が期待できないというような変異株等々の可能性がありますので、そういったようなことも当然視野に入れつつ、この場で御議論いただければという御提案でございます。
○半田委員 ちょっとそれに追加の質問なのですけれども、例えば第III相試験が出た場合、もしそれの有効性が認められなかった、あるいは毒性があるというようなことがあった場合、当然これはもちろん取消しになるわけですが、その間の7月から11月までの間の4か月のタイムラグ、それはどういうように考えればよろしいのでしょうか。
○医薬品審査管理課長 お答えいたします。そのことも含めまして、それから、これを使うことによる、逆に既存薬で与えられるべきベネフィットが得られなかったという患者さんの問題もあろうかと思いますので、そういったことも含めまして、治療の機会を失うということも含めましてのリスク・ベネフィットバランスなのだろうと思っております。ですから、そういったこと、なかなか想定は難しいのだろうと思いますけれども、そういったようなことを医療・社会的な視点から御議論いただいて、あくまでも科学的根拠に基づいて有効性が推定されるというのが大前提でございますが、そういったような御議論ができるのではないかということで御議論いただいているというように理解しております。
○半田委員 質問が長くなってすみません。実際、臨床現場あるいは実臨床をやられている先生方はどういうように思われているのでしょうか。どなたかもしお答えいただければ。
○太田分科会長 それでは、宮川委員からよろしいでしょうか。
○宮川委員 お答えしますけれども、お答えになっているかどうか分かりませんが、これは効果についてはそういう意味では推論、この分科会が推定できるというような結論を出したとすれば、私たちは実臨床の中で、患者さんとそれから医療機関の医療者が話し合って、これを使っていいですかということをお尋ねをしながら使っていきます。そこで患者さんと一緒に検証して、それが本当に効いているのか効いてないのか、全部それを現場で出さなければいけないわけです。それが果たして可能なのかどうかと危ぶみます。推定が難しいけれどもこれなら緊急承認はやむを得ないよと言われてしまったら、余計に臨床現場でその答えを出しながら、患者さんと一緒に悩みながら使っていくというのが現場になってくるのではなかろうかと思っています。これは、緊急承認制度というものが臨床現場に突きつけられている問題だろうと思います。日本医師会の神村からまた同じようなお話をします。
○島田(眞)委員 すみません、今のことについてよろしいですか。山梨大学の島田です。
○太田分科会長 今、かなり多くの委員の先生方から御質問、御意見がありますので、ちょっとお待ちいただけますか。
○島田(眞)委員 今おっしゃったことについてコメントするだけですけれども。では、いいですよ。どうぞ。
○神村委員 よろしいですか。神村です。
○太田分科会長 どうぞ。
○神村委員 先ほど自己紹介のときに内科医ですと申し上げましたけれども、私、女性の医師ですので、女性の患者さんがたくさんいらっしゃいます。若い女性もいらっしゃいます。その中で、例えば妊娠の可能性のある方には禁忌という場合に、これが大変。妊娠しているかどうか分からないとなると、とても怖くて使えない。また、同じような薬効のお薬、既にパキロビッドパックというものが錠剤の大きさで飲みにくいとかそういうことがありますけれども、既にあるものと、薬効ほとんど作用機序が同じとなったらば、なぜそちらでは駄目なのかというように考えております。当然ながら、私が臨床の外来で、この程度の呼吸器症状の有効性の差が出たと言われても、とても使いたくはないなというようなのが、申し訳ないのですけれども、私としてはそのように素直に感じました。また、実際のCYP3Aの阻害作用が強いということ、これを考えればやはり慢性疾患でかかってらっしゃる高齢の患者さんたちにも使えないとなると、非常に使える幅が狭くなってきて、第III相のはっきりした結果が出るまではちょっと手を出せないというように思っております。
○太田分科会長 ありがとうございます。それでは、ほかの委員から御意見を聞きたいと思います。横幕委員からお願いしたいと思います。
○横幕委員 私は議決の方には参加しませんが、コメントを何点かさせていただきます。
 個人的にはこういった緊急承認の案件に上がってくる薬というのは、ほかの臨床試験と比較して評価するのではなく、この薬に関して上がってきた臨床試験の結果、vitro、vivo、併せてですけれども、ある評価項目があって、それに合致した臨床試験がしっかりと行われていて、圧倒的な効果がそこに認められ、目標とした評価項目に臨床試験の結果がぴったり合うというときに、この緊急承認制度を適用する薬に当てはまるのかなと思っております。それに合わせると、今回の議論で臨床試験と比較してとか、評価項目や承認後に期待される効果が追加されていくという今までの部会の議論も含めて経過を考えると、緊急承認制度の案件としてこうやって時間をかけて議論すべき事案なのか疑問に思うところがあります。今までの先生方の御発言もありますけれども、やはり臨床試験の設定が難しくて、ウイルス量の減少を示すグラフも、有意差があっても症例間の差が大きいと思われる結果が示されています。そういったところをしっかりとデザインした臨床試験の結果があれば、もう少し建設的な議論がこの場でできると思います。
 今回、議題にあがっているゾコーバ錠について、抗ウイルス剤の一つである抗HIV剤、そしてその中の一つであるリトナビルなど、CYPの阻害作用を有する薬の使用経験が多い立場から少しコメントをさせていただきます。先ほどパキロビッドの処方数が伸びていないというコメントがありました。現在議論されているゾコーバ錠につきましては、確かにブースターが必要ない錠剤です。剤型も飲みやすいというところがありますが、他剤との相互作用という点からすれば、抗HIV薬もそういったものがあったのですけれども、誘導と阻害という両方を見なければいけないということについてはパキロビッドに比べると逆に使い方が難しいという見方もできます。パキロビッドについては、リトナビルのCYPの阻害効果だけを観点に相互作用を逆にさばいていけるところがあるのですけれども、ゾコーバ錠についてはまず基質としてCYPの誘導があって、その後阻害というところが、五日間の処方の中で起こります。ですので、剤型は確かに改善されているかと思いますけれども、相互作用については、臨床の現場で楽になるかというと、現在のパキロビッドと同じような制限をかけてくるような実臨床上の使い勝手についての課題を想像すると、私も診療に従事する側ではあるのですが、現場としては出てきたときにそれほど多くの症例にこれが使われるようになるか疑問なところがあります。相互作用について少しコメントをさせていただきました。以上です。
○太田分科会長 ありがとうございました。それでは続きまして、宗林委員からお願いしたいと思います。
○宗林委員 宗林です。2点ございまして、まずウイルス量の減少に関しては有意差がある、減少の差が認められないわけではないというようなコメントが出されております。ただ、第二部会のときにもお話しましたけれども、四日目までは差があるが、六日になるともう有意差はないというようなことでお答えをいただきましたので、その間に臨床的な症状の改善がないということなので、ウイルス量が六日目の時点ではプラセボ群と同じになっているというようなことで、この影響についてもよく分かりません。
 それから、2点目ですけれども、これは皆さんがお話しているのとそれほど違う話ではないのですが、このゾコーバに関して、確信を持った有効性が、今出されていない中で、今の2剤、あるわけですよね。ラゲブリオとパキロビッドパックが出ているわけでして、3番目にこれをもし入れたとしても、経口薬でありますので、臨床医、例えばクリニック等の医師が処方するかと思いますが、このゾコーバは催奇形性も強く、妊娠可能な女性はやはりある程度の期間避妊をしてくださいというようなことまで書いてあること。それから、CYP3Aの阻害薬の関係で飲み合わせが非常にたくさんあるというようなことからして、これをクリニックの医師のところで、適切に選択をしてこれを利用していくという場面が、一体どれほどあるのかというように思います。
 機構の最初の御説明の中でも、ほかの選択肢がない場合に、非常に限られた範囲でこれを使うべきというコメントがありましたけれども、そういうコメント自体も、では実際具体的にはどういう場面が考えられるのかということについて、実はあまりないのではないか、あるいは各クリニックの医師の段階で、全ての注意事項を網羅しながら選択するということが、極めて難しいのではないかというように思います。2点目は以上でございます。
○太田分科会長 ありがとうございました。それでは、脇田委員からお願いしたいと思います。
○脇田委員 ありがとうございます。ディスカッションが始まってから戸部委員のお話の途中まで少しネットが悪くて落ちていたので、ちょっと重複することがあればごめんなさい。
 私の方からは、ウイルス学的な観点からの意見を述べたいと思います。先ほど来、ウイルス量の減少についての議論がありますけれども、HIVとか肝炎ウイルスとかと違って、呼吸器感染ウイルスの経時的な変化は非常に難しくて、抗ウイルス薬の効果を見るのも非常に難しいのですね。感染をして数日後にウイルス量の増加が始まりますけれども、それで数日間でピークになりまして、そこから自然免疫でどんどん減少していきます。なので、抗ウイルス薬をエントリーするときにはなるべく早くエントリーしないと、できれば増加している局面で入れないと、抗ウイルス効果がなかなか見られないのです。だから、ピークを越えてしまった後で抗ウイルス効果を見ようとしても、その効果は非常に見えにくいということになるわけです。
 その面から言って、動物なんかを使って試験をやってもなかなか効果が見られないのですよね。そうしたところからして、先ほど診断して五日までのエントリーということになっていて、もう大体ピークは越えているわけですね。ただしかし、このデータを見ますと、RNA量も減少している、そして感染性のウイルスも減少している。そして、最も大事だと思うのですけれども、感染性ウイルスの消失までの時間の短縮が見られるということなので、これは御意見ありましたが、はっきりと抗ウイルス薬のウイルスを減少させる効果は見えているのだろうというように思います。
 それでウイルス量の減少の意味ということになるわけですけれども、これはやはり、臨床的に症状が改善をして重症化を予防するということが期待されるわけですが、評価項目の設定の問題もあるかもしれませんが、それは十分に見られなかったということなのだろうというように思いますが、ほかの既存薬、先行薬と比べて、抗ウイルス効果、評価の方法が違うかもしれないので全くそれよりも優れているとはなかなか言いにくいですが、少なくとも同等程度の抗ウイルス効果があれば、重症化予防の効果も推定はできるかなというように思います。
 それから、感染性が早くなくなることで蔓延防止につながるのではないか、あるいは実効再生産数を減らせるのではないかといったような議論があったというように資料を見ました。ただ、実際には感染者が診断をされて抗ウイルス薬を飲むということなのですけれども、その人は隔離をされるわけですから、そこからの二次感染がなかなか減らせないということはあるのですね。ただ最近、オミクロン株になって東京都の先週のデータを見ても、感染した場所というのはほとんど家庭内なのです。70%は家族の感染。ですから、家族内の感染を減らすということは可能になる可能性があるというように思います。
 もう一点、3点目、ウイルス量が減ることの意味ということで、ウイルス量が消失するまでの期間が短くなる。これは大体二日弱程度は短くなる。92時間あったら51時間ということですから二日弱程度短くなる。これはオミクロンで最初の100例で感染研の方で調べまして、大体十日目で全員発症、あるいは診断してから感染性のウイルスの排出がなくなるということで、隔離期間十日に短縮したわけですけれども、これをさらに短縮することができる可能性があるというように思いますので、症状の改善であったり二次感染を減らす効果であったり、あるいは隔離をする期間を短くできるといった効果は可能性があるのではないかというように考えました。
 それから、RNAが残っている。RNAの消失時間までの差はないということなのですけれども、ウイルスの変化を見ていますと、感染性のウイルスは減っていくのですが、普通の感染者でも3週間程度出ていますので、それは感染性のないRNAの残存というものはどうしてもあるということで、RNAの方を見ますと差がなくなるということはウイルス学的に見ると十分に納得できるところかなというように思っていますので、抗ウイルス薬のウイルス量の変化というところでは、効果が十分に見られているのではないかというように考えます。以上です。
○太田分科会長 脇田委員、ありがとうございました。それでは続きまして、石井伊都子委員から御発言をお願いしたいと思います。
○石井(伊)委員 ありがとうございます。聞こえますでしょうか。
 これまでの議論で、臨床試験に対する考え方というのは非常に私も賛同するものがあります。一方、実際医薬品を管理する薬剤部あるいは薬物治療のマネジメントという視点、薬剤師の視点からお話し申し上げます。
 催奇形性の問題、それから薬物相互作用の問題から、やはりこの薬は非常に使いにくいので、チェックシートとかそういったものでかなりしっかりと、この患者さんに適合するか適合しないかといったことを明確にしないと使えないお薬ではないかというように思いました。実際、パキロビッドパックが承認された後、当院でどれだけ使用しているかというと、ほとんど使用ができておりません。当院は急性期の病院でございますので、COVIDに感染してパキロビッドパックを使用することで薬物治療を壊していくことになりますので、やはりその辺で使用が難しいと思っています。したがって、薬物治療がない患者さんに対して使えるお薬であるかと。また、若い方に関してはやはり妊娠の問題がございますので、催奇形性の問題からすると、そこも管理をしていかなければいけないことだと思います。
 一方、緊急承認のお薬の管理の仕方です。これは厚労省か機構にお聞きしたいのですが、特例承認に倣って、一定の体制の下で使っていくということでよろしいでしょうか。そうなりますと、先ほどの脇田先生のお話からですと、なるべく早く、感染が分かってから初期に投与するのが効果的であるというお話でしたので、そこでも非常に時間がかかって、感染が分かって最速でも翌日ぐらいの投与になってしまうイメージでございます。その辺はいかがでございましょうか。
○太田分科会長 これは事務局からお願いできますか。
○医薬品審査管理課長 審査管理課でございます。最後の薬剤の管理、投与体制ということかなと思いますが、これは私どもが詳しいことを申し上げる立場ではないのかもしれませんけれども、基本的にはもし使うことになった場合には、国で買い上げる形になりますし、その際にはこれまでのお薬、経口薬と同様に、恐らく一定の管理体制、すなわち登録センターといいますか、そういうところで管理して登録して、そこでお薬の供給を受ける、そのようなこれまでの同様の供給体制になるのではないか。もちろん、これから承認された暁には検討する話になると思いますが、同様の管理体制を考える形になるのではないかというように認識しております。
○石井(伊)委員 ありがとうございます。そういたしますと、結構現場は今、疲弊ぎみにあるということも事実でございますし、管理は必要に思いますが、やはり即効性を有するお薬ですので、その管理体制というのも一緒に併せてしっかりと考えていただく必要があるかなと改めて思いました。以上でございます。
○太田分科会長 それでは、山口委員から御発言をよろしくお願いしたいと思います。
○山口委員 山口でございます。手短に、もう時間ですので、すみません。今回、申請者から追加のデータ等々提出されておりますけれども、これまで有効性を主張されてきた副次的な解析結果あるいは事後解析も含めてあくまで後づけです。副次解析は事前に決めてらっしゃったのかもしれませんけれども、あくまでも副次解析の結果ですよね。主要評価項目が達成されてない状況での副次評価項目の解析結果の解釈というのは、探索的な結果にすぎないというところかというように思います。そういう意味で、やはり臨床試験結果から科学的な根拠を創出して有効性を推定するという、そういう観点からは、今回のデータからは有効性を推定できるものとは判断できないのかなという機構さんの判断に、改めて私は同意いたします。先ほども御意見ありましたけれども、ぜひIII相試験できちっと解析結果を考えていただいて、きちっと前向きな結果で示していただきたいなというのが私の意見です。以上です。
○太田分科会長 ありがとうございました。それでは、そろそろ議論は出尽くしたと思いますので、本日の議論を取りまとめたいと思います。
○佐藤委員 佐藤です。よろしいでしょうか。
○太田分科会長 佐藤先生から。よろしくお願いいたします。
○佐藤委員 すみません、今の山口委員の発言についてちょっと追加をしたいのですけれども、いろいろと副次解析とか事後解析を行ったということなのですが、冒頭で機構の藤原理事長から、参考資料4について各症状の推移のグラフの指摘があったかと思います。臨床家の目から見るとどれも差がないように見えるというような御意見だったと思います。特に参考資料4の2ページのところに、大石参考人から発熱とか喉の痛みがオミクロン株では重要なのだという御指摘があったと思いますが、この発熱ですとか喉の痛みの推移のグラフを見ますと、もう本当に全く私の目では差がないように見えていて、申請者が主張しているオミクロン株に特有の症状を見ても、非常にいい効果があるとはとても思えないような状況ですので、やはり私も機構の審査結果、有効性が推定できるとは認められないというのは支持したいと思いますし、そうであれば、先ほどの参考資料1でしたか、緊急承認の条件からいきますと、有効性の推定ができない場合にはもうこの緊急承認自体が使えないということになりますので、何か社会的・医療的な観点から承認するということであれば、緊急承認制度とは別の制度を使う必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○太田分科会長 では、事務局から。
○医薬品審査管理課長 御指摘どうもありがとうございます。緊急承認制度ではない別の制度はなかなか難しゅうございますので、これはあくまでも緊急承認制度についての御議論をいただいているということでございますので、繰り返しになりますが、有効性が推定できるかどうかというお話に、議論を帰着させていただけるとありがたいかなと思っております。
○太田分科会長 よろしいでしょうか。ほかの委員からどなたか御発言がありますでしょうか。宮川委員から。
○宮川委員 今までの議論をお聞きして、先ほどの機構の方からありました、組入れが全部終わったということなので、多分III相の試験結果というのは大体時期的に言えば11月初旬頃に提出されるのでしょうか。
○新薬審査第四部長 11月に総括報告書が提出されるというように申請者からは聞いております。
○宮川委員 ということですよね。ですから、そういうところをしっかりと見定めるということが大切です。緊急承認の枠組みの中では有効性は推定できず、否定されたというわけではないけれども、このような現状ではIII相試験というのがしっかり出てくる時期を待って、それを待ってしっかりとした薬事としての承認体制に組んで審議していくというようなことも重要なことかなと思いますので、そういうことも含めてお考えいただければと思います。
○島田(眞)委員 私も宮川先生に賛成です。島田です。
○太田分科会長 分かりました。ありがとうございました。
 今までいろいろ御議論いただいて、ありがとうございました。もう大体議論は出尽くしたかと思います。これまでの御議論では、提出されているデータから有効性は推定されるということの判断はできないとの御意見が多くを占めております。
 本課題については、継続審議としたいと思います。現在実施中の臨床試験の結果等の提出を待って、改めて審議をすることとしたいと思いますが、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○太田分科会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、本件、継続審議といたしたいと思います。今までの御議論、ありがとうございました。
○事務局 事務局になります。薬事分科会、医薬品第二部会の合同開催は現時点で開催予定はございませんが、開催が決まりましたら追って御連絡さしあげます。次回の薬事分科会の開催につきましては、日程が決まり次第、お知らせいたします。医薬品第二部会につきましては、7月29日に開催を予定しております。以上です。
○太田分科会長 それでは、今までの御議論、本当にありがとうございました。本日はこれで終了とさせていただきます。
 
○清田部会長 引き続き、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催いたします。
 それでは、その他事項の議題1に移ります。「医薬品ヌバキソビッド筋注について」、議題1につきまして、事務局から概要の御説明をお願いいたします。
○事務局 医薬品審査管理課でございます。では、その他事項として、医薬品のヌバキソビッド筋注、いわゆるノババックスのワクチンについて、資料7-1から7-3を用いて事務局より御説明をいたします。
 それでは、事前にお送りした、まず資料7-1「ヌバキソビッド筋注(組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン)試験の概要」を御覧ください。
 武田薬品工業株式会社が製造販売するヌバキソビッド筋注については、4月18日の当部会で御審議をいただきまして、現在、臨時接種のワクチンとして接種が進められているところです。こちら、ヌバキソビッド筋注については、当初、18歳以上を対象とした臨床試験を基に接種対象年齢が検討されましたが、別途12歳から17歳を対象としました約3,000人の海外第III相試験のデータが提出されましたので、今回、その概要を御報告させていただきます。
 用法・用量については、18歳以上と同量を21日間隔で2回、筋肉内接種しております。
 有効性に関しましては、1ページの下段から3ページの上段にかけてお示しをしておりますように、デルタ株の優勢期間における発症予防効果、こちらが約80%であること。また、18歳から25歳と比べた中和抗体価の幾何平均値の比が非劣性であることの2点が示されております。
 また安全性に関しましては、接種後七日間に発現した特定有害事象、こちらを表3に示しておりまして、また、1回目接種から2回目接種後28日までに認められた非特定の有害事象、こちらを表4にお示しをしております。また、重篤な有害事象や注目すべき有害事象については、5ページに記載をしておりますが、他剤の影響などとして治験責任医師により否定されているものもございます。
 また、心筋炎について1例認められており、因果関係は否定できないとされたものの、併用薬やウイルス感染の影響も考えられたとされております。なお、こちらの心筋炎につきましては、7月8日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同部会におきまして、国内外の接種後の報告であったり、海外当局の取扱い等を総合的に勘案しまして、現時点で得られている知見は限られてはおりますけれども、添付文書の「重要な基本的注意」の項において心筋炎及び心膜炎について注意喚起することとされております。
 このようにお示しした試験成績を基に、先般、武田薬品工業株式会社から添付文書改訂の相談が機構に申し込まれたところです。
 改訂の内容について、資料7-2の添付文書案及び資料7-3の新旧対照表、こちら2点、併せて御覧ください。現在のヌバキソビッド筋注の添付文書においては、7.の「用法及び用量に関連する注意」のところの「接種対象者」において、「本剤の接種は18歳以上の者に行う」としておりますが、今回提出されました臨床試験データを踏まえまして、「初回免疫」の項に本剤の接種は「12歳以上の者」に行うという記載に改訂をする予定としております。また、これに合わせまして、添付文書の「臨床成績」の欄に、先ほど御紹介した12歳から17歳における試験成績を追記するなどの対応を行う予定となっております。報告は以上となります。
○清田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がございましたら承ります。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、本議題につきまして確認いただいたものといたします。
 その他事項の議題2に移ります。中和抗体薬の変異株への対応について、議題2につきまして、事務局から概要の御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。資料8を御覧いただけますでしょうか。中和抗体薬の変異株への対応についてということで、まず背景でございますが、このマルにありますとおり、今回、国内での現在の変異株の流行状況でございますが、この6月6日から12日までの間におきましてBA.2系統の割合が97.3%、BA.1系統0.4%、BA.5が1.4%程度とされておりましたが、最近の東京都における状況ですと、6月21日から27日の状況といたしましては、BA.2系統疑いが57.8%、BA.5系統疑いが33.4%、BA.2.12.1系統疑いが4.5%、BA.4系統疑いが4.2%といった状況でございまして、BA.5系統など他の下位系統への置き換わりが進みつつある、そういった状況となっております。したがいまして、最近の変異株の流行状況も踏まえまして、新型コロナウイルス感染症治療薬として承認されているロナプリーブとゼビュディの中和抗体薬につきまして、変異株への対応を整理する必要があると考えて、御議論いただければと思っております。
 対応案に移る前に各剤の現在の状況について御説明させていただければと思います。3ページを御覧いただけますでしょうか。
 各中和抗体価の状況についてですが、まずロナプリーブでございます。本剤、国内の現在の位置付けでございますが、添付文書におきましてはこのとおり注意喚起されておりまして、オミクロン株については、だから、オミクロン株の下位系統が出てくる前のとき、最初にオミクロン株が出たときの注意喚起でございまして、特に下位系統の記載はございませんが、本薬有効性の減弱おそれがあることから、事務連絡等に基づいて適切な患者に対して投与することとされております。
 また、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部の事務連絡におきまして、このとおり、患者の感染しているウイルス株がオミクロン株であることが明らかである場合やその蓋然性が高い場合は本剤を投与することは推奨されないという記載となっておりました。
 これに対しまして、最近のロナプリーブの下位系統に対する中和活性の変化についてですが、リジェネロン社の実施した試験の結果によりますと、この表のとおりでございまして、オミクロン株BA.2に対しては、変化倍率は325倍程度、BA.4、BA.5系統に対しては201倍程度となっておりました。これはもともとBA.1系統に対しては1,000倍超程度の変化倍率であったのに対し、倍率としてはやや下がっているという状況でございます。
 それから、中外製薬からの説明によりますと、ロナプリーブは現在の用量は血中濃度やウイルスの中和に必要な濃度に比してやや過剰となるものと説明を中外製薬からは受けておりまして、つまり、IC50に対する血中濃度の比といたしましては表のとおりでございまして、特にオミクロン株、BA.2に対してカシリビマブ、イムデビマブを各600mg投与した場合はソトロビマブ500mgを投与した場合と同様であるという説明を中外製薬はしております。
 また、海外の状況でございますが、海外におきましては、またBA.2、4、5に対する評価は示されていないという状況です。
 続きまして、ゼビュディの状況ですが、次のページを御覧いただけますでしょうか。
 ゼビュディにつきましては、現在、国内の状況といたしましては、BA.2系統に対して本剤有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することとされております。
 中和活性の変化につきましては、Vir社の実施した試験の結果によりますと、この表のとおりでございますが、BA.2に対しては16倍程度であったのに対し、BA.4に対しては21.3倍程度、BA.5に対しては22.6倍程度の変化となっております。
 海外の状況につきましては、FDAにおいてBA.2に対する効果が認められないため、現時点においては全米において対象から外れるという状況となっておりまして、BA.4、5に対する評価は現時点では示されていないという状況です。EMAにおきましても、BA.2においては中和活性が低いという評価がされておりますが、4と5に対する評価は現在示されていないという状況ではございます。
 こういった状況も踏まえまして、本邦においてどういった対応があるかということを1枚目に戻っていただきまして、対応案のところを御覧いただけますでしょうか。
 ロナプリーブ及びゼビュディにつきましては、いずれもBA.2、BA.4、BA.5系統に対して一定程度の中和活性の低下が認められているという状況ですが、これは著しい低下が認められているものではなく、有効性が減弱するかどうかについては必ずしも明らかではないと考えております。また、現時点で得られているデータからは、変異株に応じて薬剤ごとに使用の優先度を検討することも困難であるというように考えています。また、さらに、医療現場におきましては、現時点では医薬品の投与前に感染株の系統を正確に特定することも困難であると考えております。このため、これらの中和抗体薬につきましては、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討するよう、添付文書において注意喚起することとしたいと考えております。
 また、ロナプリーブの発症抑制に係る用途など、同様の対象者に使用可能な他の治療薬がないという場合は、慎重に投与を検討するといった注意喚起を併せてすることとしたいと思っております。
 この2ページ目に具体的な注意喚起のイメージを記載しておりますが、このような添付文書上の注意喚起をしてはどうかと考えているところでございます。御説明は以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 ないようでございます。本議題につきましては、御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か御報告がございますでしょうか。
○事務局 次回の部会は令和4年7月29日午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。お疲れさまでした。
( 了 )
備考
この会議は、企業の知的財産保護の観点等から一部非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)
総務課 薬事審議会係 (内線2785)