第13回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年5月18日(水) 10:00~12:00

場所

厚生労働省省議室

議題

  1. (1)労働時間制度に係る個別の論点等について③
  2. (2)年次有給休暇について
  3. (3)勤務間インターバル制度について

議事

議事内容
○荒木座長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまより、第13回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式としております。
なお、本日、島貫先生は、所用のために途中で退席と伺っております。
それでは、議題に入りたいと思いますので、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
事務局より資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
まず、議事次第を御覧ください。本日、議題が3つございまして、1つ目の議題が「労働時間制度に係る個別の論点等について③」ということで、具体的には裁量労働制の集団的労使コミュニケーションと導入後の運用等についてです。2つ目の議題が「年次有給休暇について」、3つ目が「勤務間インターバル制度について」で、配付資料もこれに対応してございます。資料1-1、1-2が1つ目の議題、資料2-1、2-2が2つ目の議題、資料3が3つ目の議題についてです。
それでは、資料1-1から順次御説明いたします。まず、現行の裁量労働制についてでございます。
1ページ目は、これまでも御説明してきました裁量労働制の概要に関する資料でございます。
2ページ目は、労使委員会・労使協定についてです。一番左の高度プロフェッショナル制度と一番右の企画業務型裁量労働制につきましては、労使委員会の5分の4以上の多数決による決議と、労働基準監督署への届出が制度を導入するために求められておりまして、高度プロフェッショナル制度では、①から⑬の事項が、企画業務型裁量労働制では①から⑧の事項が決議事項となってございます。
また、どちらも指針に規定があり、対象労働者に適用される評価制度と賃金制度を変更する場合には、労使委員会に事前にその内容を説明するものとすることを決議事項とすることが望ましいとされてございます。
他方、真ん中の専門業務型裁量労働制でございます。こちらは労使協定と労働基準監督署への届出が制度導入に際して求められており、①から⑦の事項が協定事項となってございます。
枠の下に米印(※)がございますけれども、この労使協定は、労使委員会での5分の4以上の多数による議決によって代えることができることとされておりまして、この場合は、労働基準監督署への届出は不要ということとなっております。有効期間につきましては、指針ないし通達によりまして、高度プロフェッショナル制度の決議は1年、専門型の協定、企画型の決議は3年以内とすることが望ましいこととされております。
また、これらを労働者に周知することや、一定期間保存することも求められております。
次の3ページ目は、労使協定の協定当事者、あるいは労使委員会の労使委員などについてです。高度プロフェッショナル制度及び企画業務型裁量労働制の労使委員会の委員につきましては、使用者を代表する者と労働者を代表する者とされておりまして、どちらの制度におきましても労使各1名の計2名で構成される委員会は労使委員会として認められないこととされております。
また、労使委員会の労働者側委員につきましては、事業場に労働者の過半数で組織する組合がある場合はその過半数労働組合により、ない場合は労働者の過半数を代表する過半数代表者により指名を受けることとされております。
真ん中の専門業務型裁量労働制の労使協定に関しましては、協定当事者は、使用者と過半数労働組合又は過半数代表者とされております。この労使委員会の労働者側委員を指名する、あるいは労使協定の当事者となる過半数代表者に関しましては、管理監督者でないことや、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出された者でないことが必要とされております。
また、使用者は、過半数代表者に対して労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器の提供等の必要な配慮を行わなければならないことになっております。
「責務規定等」とある行ですが、高度プロフェッショナル制度の労使委員会の委員につきましては、決議の内容が指針に適合したものとなるようにしなければならないこととされております。また、労働基準監督署は委員に対して助言・指導できることとされております。
労使委員会の開催頻度についてです。高度プロフェッショナル制度については、少なくとも6か月に1回と指針で求められておりまして、企画型裁量労働制につきましては、少なくとも1年に2回と通達で示されております。
次のページを御覧ください。労使委員会に関するその他の事項についての資料でございます。高度プロフェッショナル制度、企画業務型裁量労働制に関する労使委員会に関しましては、運営規程を定めることや、議事録の作成とその保存が求められております。また、指針におきまして、使用者は労使委員会決議が適切に行われるために、評価制度、賃金制度の内容等を、また、労使委員会委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するために、健康・福祉確保措置の実施状況等をそれぞれ開示することが適当ないし適当であることに留意することが必要とされております。
加えまして、運営規程において使用者が開示すべき情報の範囲等を定めておくことが適当ないし適当であることに留意することが必要と指針に記載されておりまして、その中でも特に高度プロフェッショナル制度におきましては、その範囲を定めるに当たっては、健康管理時間の状況等について、平均値だけではなく、その分布を示すなど対象労働者の個別の状況が明らかになるものとすることが適当とされております。
枠の下の点線の枠囲みにつきましては、平成29年の労働条件分科会で示されました働き方改革関連法案要綱における企画業務型裁量労働制の労使委員会に関する部分の抜粋でございます。
続きまして、5ページ目です。こちらは苦情処理措置についてです。ここに記載されているいずれの制度におきましても、対象労働者からの苦情処理措置を使用者が講ずることが労使委員会での決議事項または労使協定事項とされております。
点線の枠囲みにありますように、高度プロフェッショナル制度と企画業務型裁量労働制におきましては、指針において苦情の申出となる部署ないし申出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順・方法等その具体的内容を明らかにすることが必要などとされております。
また、専門業務型裁量労働制におきましては、苦情処理措置は企画業務型裁量労働制と同等のものとすることが望ましい旨が通達で示されております。
6ページ目を御覧ください。最後に、行政の関与などについてです。一番左の高度プロフェッショナル制度におきましては、労使委員会決議を労働基準監督署に届け出ることで、対象労働者に対する労働基準法に定める労働時間等に関する規定の適用除外の効果が生じるものとされております。
また、使用者は、健康管理時間の状況等について、決議後6か月以内ごとに1回、労働基準監督署に報告しなければならないこととされています。
さらに、記録の保存についてです。①から⑧の事項の記録を一定期間保存することが決議事項となっております。また、議事録の保存も求められております。
真ん中の専門業務型裁量労働制についてです。こちらは、労使協定を労働基準監督署に届け出なければならないこととされておりまして、この義務に違反した場合には罰則が課されることとなっております。また、記録の保存につきましては、講じた健康・福祉確保措置等の記録について、一定期間保存することが労使協定事項となっております。
最後に、企画業務型裁量労働制についてです。こちらは、労使委員会決議を労働基準監督署に届け出ることで、労働時間をみなす効果が生じることとなっております。
また、使用者は決議後6か月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回(「1年以内ごとに1回」は、当分の間は「6か月以内ごとに1回」)労働時間の状況などについて、監督署に報告しなければならないこととされております。
記録の保存につきましては、講じた健康・福祉確保措置などの記録を一定期間保存することが決議事項となってございます。また、議事録の保存も求められております。
点線内の事項につきましては、平成27年の労働条件分科会の建議の企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の決議の届出や定期報告及び健康・福祉確保措置に関する書類の保存に関する事項の抜粋でございます。
7ページ目以降は参照条文ですので、適宜御参照ください。
資料1-1は以上でございます。
続きまして、資料1-2です。こちらは、これまでの検討会でもお示ししてきたデータを中心に、今回の議論に関係するものをまとめたものです。
まず、労使協定・労使委員会についてです。2ページ目を御覧ください。こちらは労使委員会の手続につきまして、裁量労働制を適用している事業場に調査したものでございます。
上の表は、労使委員会の労働者側委員の指名方法についてです。専門型では必ずしも労使委員会の設置というのは求められていないわけでございますけれども、労使委員会について回答があった事業場が12.1%ございました。そのうち約5割が、労働組合が労働者側委員を指名していると回答しており、約4割が、過半数代表者が労働者側委員を指名していると回答しております。
企画型につきましては、約6割が、労働組合が労働者側委員を指名していると回答しており、約3割が、過半数代表者が労働者側委員を指名していると回答しております。
同じ表の右にあります過半数代表者の選出手続の方法についてですが、こちらは専門型、企画型ともに労働者による投票という回答が最も多くなっております。
下のグラフは、労使委員会の議題についてです。青の専門型、赤の企画型ともに、勤務状況や措置の実施状況の記録・保存や健康・福祉確保措置が多くなってございます。
3ページ目を御覧ください。3から5ページ目までの資料の専門型は、2ページ目と同様、労使委員会についての回答があって、自主的に労使委員会を設置していると思われる事業場を分母としているものでございます。
まず、このグラフは労使委員会の労働者側委員の指名方法を事業場規模別に見たものです。上の専門型、下の企画型ともに、事業場規模が大きいほど労働組合による指名の割合が大きい傾向にございます。
4ページ目を御覧ください。こちらは労使委員会の労働者側委員の指名方法を事業場の労働者の過半数で組織されている労働組合の有無別に見たものでございます。そのような労働組合がある場合は、上のグラフの専門型では約8割が、下のグラフの企画型では約9割が、労働組合によって労働者側委員が指名されているということとなってございます。
5ページ目でございます。こちらは、労使委員会の平成30年度の開催頻度を事業場規模別に見たものでございます。専門型、企画型ともに2回の開催という回答が多くなっております。
6ページ目でございます。こちらは、企画型につきまして、労使委員会の実効性の認識についての労働者調査でございます。「労使委員会が十分に機能していると思うか」という点につきまして、「どちらかと言えばそう思わない」「そう思わない」という回答が合わせて約11%となっております。
これらの「どちらかと言えばそう思わない」「そう思わない」と回答をした労働者について、労使委員会に対する改善要望は「労使委員会で、今よりも幅広い議題を扱うべき」の割合が比較的高くなっております。
7ページ目でございます。こちらは、前回の検討会で御説明した資料の抜粋でございます。企画型裁量労働制の適用労働者につきまして、労使委員会の実効性が、1週当たりの労働時間が60時間以上、あるいは50時間以上となる確率に与える影響について分析したものです。これによりますと、労使委員会の実効性がある場合には、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率が半分以上低くなりまして、50時間以上となる確率も低くなるということとなっております。
次の9ページ目は苦情処理措置についてです。苦情処理措置につきましては、青の専門型、赤の企画型ともに「人事担当部署等に相談窓口を設置」が最も多く、次いで「上司への申出」が多くなってございます。
10ページ目でございます。苦情処理措置に関する適用労働者の認知状況と苦情の申出の有無についての労働者調査です。左側のグラフの苦情処理措置についての認知状況につきましては、専門型では43.6%、企画型では65.3%の労働者が「苦情処理措置を知っている」と回答しております。
これらの苦情処理措置を知っている労働者のうち、専門型では2.1%、企画型では1.3%の労働者が、平成30年度に申出をしたことがあると回答しております。
11ページ目は先ほどのページのデータで申出をしたことがあると回答した労働者について、その苦情の内容を見たものです。青の専門型、赤の企画型ともに、業務量が過大であるというものが最も高い割合となっております。
12ページ目でございます。苦情処理措置の満足度等に関して適用労働者に尋ねたものです。苦情処理措置について、専門型では7.7%、企画型では3.1%が「満足していない」と回答しております。この「満足していない」と回答した労働者に、その満足していない内容を尋ねたのが下のグラフですが、青の専門型、赤の企画型ともに、「苦情を申し出ることで、処遇などで不利益な取扱いを受けるおそれがある」や「苦情への対応が十分ではない」という回答が多くなっております。
最後に、行政の関与等についてのデータでございます。14ページ目を御覧ください。こちらは裁量労働制適用事業場の手続負担軽減に対する意見についての資料でございます。まず、裁量労働制が適用されている事業場について、専門型では15.8%、企画型では39.7%が「制度を見直すべき」と回答しておりまして、その見直しの内容として、専門型では20.9%、企画型では76.5%の事業場が「手続負担を軽減すべき」と回答しております。
15ページ目でございます。専門型の適用事業場で、手続負担を軽減すべきと回答した事業場について、どのような手続が負担と感じているかを見てみますと、労使協定の労働基準監督署長への届出ですとか労使協定の締結が多くなっております。
16ページ目を御覧ください。こちらは同様に、企画型の適用事業場で手続負担を軽減すべきと回答した事業場について、どのような手続が負担と感じているかを見てみますと、報告の作成及び労働基準監督署長への届出や、決議届の作成及び労働基準監督署長への届出が多くなってございます。
17ページ目以降は参考のデータでございますので、適宜御参照ください。
資料1-2は以上でございます。
続きまして、資料2-1が年次有給休暇の制度についてまとめた資料でございます。
1ページ目を御覧ください。こちらは、年次有給休暇制度の概要でございます。要件・効果とあるところですが、①雇入れの日から起算して6か月継続勤務し、②全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10労働日の年次有給休暇が与えられることとなっております。その後、継続勤務年数1年ごとに、ここにある表の日数の年次有給休暇が与えられることとなっております。
その下の取得単位でございますが、こちらは原則1日単位でございますけれども、半日単位と時間単位でも取得可能となっております。
下の枠の付与に関するルールについてです。こちら、時期の指定方法としましては、「労働者による請求」のほか、労使協定で定めをした場合には、年次有給休暇のうち5日を超える部分について計画的付与が認められまして、また、平成30年の法改正によりまして、年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対し、そのうち5日について、労働者の意見を聴取した上で使用者が時季を指定して取得させなければならないこととされております。
2ページ目を御覧ください。こちらは令和元年に閣議決定された規制改革実施計画の抜粋でございます。年休の時間単位取得につきまして、取得日数など利用の実態を調査する等の現状把握を行った上で、年休の時間単位取得の有効な活用のあり方について検討することとされております。
3ページ目でございます。こちらが時間単位での年休取得に関する改正経緯でございます。平成20年の労働基準法改正におきまして、労使協定により年5日の範囲内で時間を単位として取得することを可能としたものでございます。その趣旨としましては、まとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇制度本来の趣旨を踏まえつつ、仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることと説明されてございます。
続きまして、4ページ目でございます。こちらは、年次有給休暇の継続勤務要件に関する改正経緯でございます。これに関しましては、労働基準法制定時は1年間継続勤務することが年次有給休暇を請求する要件の一つとされておりましたが、平成5年の労働基準法改正によって、6か月に短縮されております。その趣旨につきましては、若年労働者の年次有給休暇に対する希望が強いこと、労働力の流動化が進展していることなどとされております。
5ページ目でございます。こちらは、入社後6か月未満の新入社員への年休付与状況に関する民間の調査結果でございます。この調査によりますと、約7割の企業が入社後6か月未満の新入社員へ年休を付与しておりまして、特に規模が大きいほど付与している割合が高い傾向にございます。
6ページ目でございます。こちらは、ドイツ、フランスとILO第132号条約の年休の取得要件などに関する資料でございます。一番左の日本に関しましては、冒頭で御説明したとおりでございます。取得時の要件につきまして、ドイツでは労働契約が成立してから6か月以上が取得時の要件とされておりまして、フランスでは同一の使用者の下で最低でも実働で10日間勤務することが取得時の要件となっております。
一番右のILO第132号条約でございますが、こちらにおきましては、年次有給休暇を受ける資格の取得について、最低勤務期間を要求することができること、その資格期間は6か月を超えてはならないこととされております。
付与日数についてです。ドイツでは、1暦年につき24週日などとされてございまして、フランスでは1年につき30労働日などとなっております。また、ILO第132号条約におきましては、1年の勤務につき3労働週を下回ってはならないこととされ、また、年次有給休暇の分割された部分の一つは、少なくとも中断されない2労働週から成るものとすることとされております。
付与方法につきましては、ドイツでは、使用者が労働者の希望を配慮した上で決定することとされてございますが、従業員代表がある場合には、代表と合意の上で定めることとされております。
フランスでは、労働協約、団体協定の規定、または慣習により付与され、これらがない場合は、従業員代表委員の意見聴取後、使用者が付与することとされております。
ILO第132号条約におきましては、休暇を取る時期は原則として使用者が当該被用者またはその代表者と協議して決めることとするとされております。
ここまでが資料2-1でございます。
続きまして、資料2-2を御覧ください。こちらは年次有給休暇の現状に関するデータについての資料でございまして、第7回の検討会で御説明したものと同じ資料になってございます。
まず、年次有給休暇の取得状況についてです。3ページ目が年次有給休暇の取得状況の年次推移でございますけれども、取得率は近年上昇傾向にございまして、令和3年で56.6%となっております。
4ページ目は、年次有給休暇の取得状況を企業規模別・産業別に見たものでございます。こちらを見てみますと、規模が大きいほど取得率は高い傾向にございまして、また、産業では電気・ガス・熱供給・水道業ですとか情報通信業が比較的高くなっております。
5ページ目でございます。ここからは、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行ったアンケート調査について、時間単位年休に関する結果を紹介するものでございます。
調査の概要は、この6ページ目にあるとおりでございますので、適宜御参照ください。
まず、企業調査についてです。8ページ目を御覧ください。時間単位年休の導入状況を見てみますと、22%の企業が導入しておりまして、そのうち1年間に取得できる日数は5日としている割合が8割強となっております。
9ページ目でございます。この導入状況を従業員規模別・業種別に見たものでございます。従業員規模別につきましては、99人以下や1000人以上が比較的高くなっております。また、業種別に見てみますと、教育・学習支援業や、電気・ガス・水道・熱供給業が比較的高くなっております。
10ページ目でございます。次に時間単位年休の取得の実績についてです。時間単位年休が適用されている労働者の中で、1回でも時間単位年休を取得した者の割合についてですが、こちらは1割程度が23.7%と最も高くなっております。
また、右のグラフの時間単位年休の利用者が取得した時間単位年休の総計につきましては、1日分以上~2日分未満が最も高くなっております。
11ページ目を御覧ください。こちらは時間単位年休の5日という取得限度日数の評価と、希望取得限度日数についての調査でございます。時間単位年休制度を導入している企業のうち、22.5%の企業が、限度日数を増やしたほうがよいと回答しておりまして、そのうち55.6%が年休付与日数の全てを取得限度日数とすることを希望しております。
12ページ目でございます。こちらは従業員規模別・業種別に見た時間単位年休の取得限度日数の評価についてです。従業員規模別では99人以下が、産業別では教育・学習支援業について、時間単位年休の取得限度日数を増やしたほうがよいと回答する割合が比較的高くなっております。
13ページ目でございます。次に、時間単位年休を導入していない企業にその理由を聞いたものでございます。その理由といたしましては、「勤怠管理が煩雑になる」が最も割合が高くなっております。
次に、ここから労働者調査でございます。15ページ目を御覧ください。まず、時間単位年休の導入・適用状況でございます。22.3%の労働者が時間単位年休の対象となっておりまして、そのうち74.6%が1年間に5日間分の時間単位年休を取得できることとなっております。
16ページ目でございます。時間単位年休の取得実績を見たものでございます。56.7%が「取得したことがある」と回答しておりまして、その取得総計は、2日分以上3日分未満が最も高く、次いで1日分未満となっております。
17ページ目でございます。こちらは時間単位年休の利用用途を聞いたものでございます。一番左にあります「自身の病気などの通院」という回答が最も高くなっております。
18ページ目でございます。こちらは、時間単位年休制度が導入されており、対象労働者である労働者を対象に、時間単位年休の取得可能日数の評価を聞いたものでございます。自分が取得可能な時間単位年休の日数について、71.3%の労働者が「ちょうどよい」と回答している一方で、18.5%が「増やしてほしい」と回答しております。その「増やしてほしい」と回答した労働者のうち40.2%が年休付与日数の半分程度、40.0%が年休付与日数の全てを希望日数と回答しております。
19ページ目でございます。時間単位年休制度の導入や適用などの希望についてです。時間単位年休の導入・適用状況について、「導入されているが対象労働者ではない」「導入されていない」、あるいは「分からない」と回答した労働者に対して、導入・適用希望を聞いたものですが、50.6%が「導入・適用してほしい」と回答しております。
資料2-2は以上でございます。
最後に、資料3は勤務間インターバル制度についてです。1ページ目を御覧ください。こちらは勤務間インターバル制度の概要でございます。勤務間インターバル制度は、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間を確保する仕組みでございまして、働き方改革関連法におきまして労働時間等設定改善法が改正され、平成31年4月1日から、勤務間インターバル制度を導入することが事業主の努力義務となっております。
2ページ目でございます。勤務間インターバル制度の導入状況を見てみますと、「導入している」、あるいは「導入を予定又は検討している」とする企業の割合は、平成30年よりも増加しておりまして、令和3年は約18%となっております。
左下にグラフがございますけれども、制度を導入している規模別の割合を見てみますと、規模が大きい企業ほど導入されている傾向にございます。
また、右下のグラフでございますが、制度の導入予定はなく、検討もしていない理由を見てみますと、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」という回答が最も多くなっております。
3ページ目でございます。労働基準法における勤務間インターバル制度に係る規定についての資料でございます。左側の表でございますが、労働者を月45時間、年360時間の限度時間を超えて働かせる場合には、時間外労働、休日労働に関する労使協定、いわゆる36協定におきまして、健康・福祉確保措置を定めることとされております。その措置として望ましいものが指針で示されておりまして、その一つとして、一定時間以上の休息時間確保が掲げられております。
また、右の高度プロフェッショナル制度についてですが、こちらでは、実施しなければならない、いわゆる選択的措置の一つとして、勤務間インターバルの確保及び深夜業の回数制限が挙げられております。
他方で、裁量労働制におきましては、勤務間インターバルに係る規定は置かれていません。
4ページ目は参照条文でございますので、説明は割愛させていただきます。
5ページ目でございます。こちらは第11回の本検討会で久保先生から御説明いただきました、勤務間インターバルを確保した場合の生活シミュレーションの資料でございます。
6ページ目でございます。こちらも同じく、第11回の本検討会で久保先生に御説明いただいた資料でございます。こちらは「一律、何時間としてインターバルを規定するよりも、個々の職場の実情に合わせて、例えば職場の安全衛生委員会等でインターバル時間や運用方法を議論し、就業規則等に明記させるやり方」もあるのではないかと御説明いただいたものでございます。
これ以降は参考資料ですので、説明は割愛させていただきます。参考資料1と2はこれまでの検討会でもお示ししていたものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
事務局からの説明は以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。事務局から3点、裁量労働制の集団的労使コミュニケーションと導入後の運用等、年次有給休暇・時間単位年休、そして勤務間インターバルについて御説明をいただいたところです。
この説明を踏まえまして、御議論いただきたいと思いますけれども、大きく2つに分けまして、第一に、裁量労働制の集団的労使コミュニケーションと導入後の運用等について、そして、その後、年次有給休暇・時間単位年休と勤務間インターバル、この2つに分けて議論させていただければと思います。
それでは、どなたからでも御自由に御発言ください。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 法政大学の藤村でございます。
労使コミュニケーションということで労使委員会というのが設置され、そこで様々な議論をし、変なことが起こらないようにしていくという趣旨だと思います。裁量労働制という働き方は、ちゃんと使えばとてもいい制度だと思います。ただ、そうなっていない場合がたまにあります。それがどのくらいの割合かというと、ざっとこれまでの調査結果などを見ると、1割から2割ぐらいの労働者が不満であると回答しています。この中で一番気にしなければいけないのは、長時間労働になってしまって、それが健康被害を発生させてしまうということだと思います。
例えば通常の労使関係として、労働組合がある企業で、労働時間管理についてどういうことをしているかといいますと、これは工場ごと、事業所ごと、支部レベルごとの話になってまいりますが、毎月、経営側から全労働者の残業時間のデータが出てまいります。その中で、60時間以上残業している労働者について、労働組合から質問が出ます。「なぜこの人はこんなに長く働いているのか」と。それに対して経営側は、「こういう事情で長く働いている」ということを説明する。それに対して、「どうやって長時間労働を改善していくのか」というのが労働組合側から質問が出て、経営側はそれに対して「こういう措置をとって、長時間労働にならないようにしていく」というやりとりを、毎月やっている。それによってようやく、月100時間超えるような人は減り、80時間超える人が数人になり、だんだん適正な労働時間になっていくという実態がございます。
ではこの裁量労働制で労使委員会にそこまでのことが求められるかというと、なかなか難しいだろうと思っています。本来はそこまでやってほしいのですが、実態はどうもそれに伴わない。ではどうやって実効性のある労使委員会の活動というのを確保していくか、そこを考える必要があると思います。
これはいろんなやり方があると思うのですが、私は、本来の裁量労働制の使い方をしていないということが判明した場合、大きなペナルティを与えるという方法がいいと考えています。これは罰金とかそういう話というよりも、むしろ、「この企業は裁量労働制という制度を使ってこんなにひどい働かせ方をしていますよ」というのを世間が知るところになり、採用において非常に不利になるというものです。労使委員会の発動だけではなくて、何かそれにプラスアルファ、不適切な使用をしていた場合の何らかの社会的な制裁というか、そういったことがないとなかなか、1割から2割の不満を持ちながら働く人たちの割合は減っていかないのかなと思っております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
堤先生、どうぞ。
○堤構成員 ありがとうございます。
今、藤村先生からお話ありましたが、私のほうは、できるだけ細かい情報が労使コミュニケーションの中で把握され、好ましくない状況が発生した場合、それをちゃんとフィードバックさせるというのは大切なことと考えております。
ずっと御議論ありましたけれども、運用の十分な理解とか、労働者の納得というような点も重要なキーワードだったと思いますけれども、この労使コミュニケーションの場合、適正な制度の運用に十分に役立てていくというような部分では、できれば平均値ではなくて、個々の情報なども把握をして、それが必要に応じてフィードバックされるというようなところもあってもよいのではないかなと考えています。今、藤村先生の御意見をいただいて、なかなか現場では難しいというようなことも承知しておりますけれども、その塩梅をぜひ考えていければいけないという意見を持っております。
今回出た調査の中にも出ておりましたけれども、労使コミュニケーションの場で、今より幅広い議題を扱って欲しいという希望もありましたので、苦情処理措置のみならず、制度をよくする方向で議論ができればと期待しているところでございます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。筑波大学の川田です。
この集団的労使コミュニケーションという論点は、裁量労働制を中心とした関連する制度を適切に設計して運用していく上で重要な点だと思っておりまして、そういう観点から、3点に整理して、できるだけ簡潔に述べていきたいと思います。
まず1点目が、現在の制度との関係で、この集団的労使コミュニケーションというのは、基本的には裁量労働制の制度を導入する要件と位置づけられており、専門型の場合には労使協定、企画型の場合には労使委員会の決議が必要とされています。こうした今の労働基準法上の制度における集団的な労使間のコミュニケーション、特に労働者側の代表の関与の仕方がどのような制度的な位置づけになっていて、将来に向けて考えていくときに、どのような方向性が望ましいのかという点が検討すべき点としてあるのではないかと思います。
もともと、裁量労働制などを含めた労働時間規制の特例的な扱いをする際に、過半数組合が事業場にある場合には過半数組合、ない場合には過半数代表者を選んで、その者が労働者側の代表となり、使用者との間で書面によって労使協定を締結するという制度が広く用いられてきたわけですが、もともとは、時間外労働とか休日労働に関するいわゆる36協定に代表されるような原則的な規制をどこまで緩和するのかという場面において、一面では事業場の実情に応じた全国一律の規制の部分的な緩和を許容しつつ、ただ、それをやる場合には、使用者側の都合、意向だけに基づいてやるのではなく、事業場の労働者の代表もそれを認めているというような、労働者側の意向もチェックするというような形でこの制度が用いられてきて、基本的には、ある一時点で労働者側の意向をチェックするような仕組みという色彩が強いものであったと言えます。
裁量労働制だけではなく、例えば変形労働時間制とかフレックスタイム制なども含めた労働時間規制の特例がいろいろ使われるようになったときに、基本的には、この労使協定という仕組みを使って制度の導入の要件とするということが行われてきました。ここでは、やはり制度の基本的な設計上、制度を導入するとき、ある一時点で労働者の代表が、使用者がやろうとしていることがそれでいいのかどうかをチェックするという性質は同じだったと思うのですが、その扱う内容が、36協定と比べると、制度設計的な意味合いが強くなってきたというところがあったように思います。
このように労働者の代表も関与する形で事業場に適した労働時間制度を設計するというような意味合いが強くなってくると、その分だけ、理屈としては、実際導入した制度がちゃんと運用されているかどうかということを継続的にチェックする、あるいは、当該労働時間制度も事業場における労働条件の一部であるので、例えば賃金とか人事評価など、他の労働条件と関連づけながら、制度内容としての適正さを検証するというようなことが重要になってくるといえるように思います。ある程度常設的にというか、制度導入時だけではなく、その後も含めて継続して労働者の代表が関与して、制度が適切に運用されているかどうかをチェックするということと、それから、一定の包括性、問題になっている労働時間制度だけではなくて、関連性の深い他の労働条件と関連づけながら制度の望ましい内容かを検討していくということがより重要になってきています。
ただ、制度としては、労使協定は、その性質上、労働者の代表が協定締結という形での関与を行うのは制度導入の一時点だけで、その後の継続的な関与は必ずしも制度上想定されていません。また、扱う事項についても法律上定められた労使協定の対象になる事項のみで、関連する労働条件と関連づけた検討をするということは必ずしも想定されておらず、このような制度の枠組みの中で制度の導入要件が設けられてきています。
それに対して、同じ裁量労働制でも企画業務型の裁量労働制がつくられたときに、労使委員会という制度ができて、その後に高度プロフェッショナル制度を創設したときも導入の要件になったわけですが、この労使委員会というのは、ある一時点だけではなくて、常設的に設置される会議体として、継続的にその制度の運用の適正さをチェックできます。また、扱う事項についても、裁量労働制の導入の際の決議と、これまで労使協定で行うことになっていたものについては、労使協定の代わりに労使委員会の決議ができるというような制度設計がされたていますが、条文上はそれらを含めた事業場における労働条件に関する問題について調査・審議するという文言で、かなり幅のある事項についてやろうと思えば扱うことができる会議体として設計されているといえます。また、今の話の中にも出てきましたが、労使協定に代わる決議もできるということになっています。
これまでのこの検討会の議論の中では、集団的な労使コミュニケーションに期待される役割として、その制度が導入された後に適切に運用されているかどうかを継続的に確認していくという点の重要性が共通の認識としてかなり重視されてきたと思いますので、そういう観点からすると、例えば労使委員会の制度の機能を充実させていくというような形で、ある一時点ではない継続的なチェック、それから、一定の事項に限られずに、関連する労働条件も含めた包括的な検討ができるような仕組みを充実させていくという方向性が望ましいのではないかと思います。
2点目です。
具体的にどういうことをやっていくかということですが、基本的には事業場の実情に合わせて適切な内容を検討するということになると思います。細かく見ていくと、例えば労働者側の委員の選び方とか記録の保存などの様々な手続きに関するルール等については制度面での検討課題があるかと思いますが、基本的には、事業場の実情に合わせてということだと思っており、法律で何か必ずやらなければいけないことを義務づける規定を設けるというよりは、例えば法制度で何らか関与するとしても、ガイドライン的なものを定めて、それを参考にしながら事業場ごとに適切な対応を検討してもらうというようなことが一つの柱になるかと思います。
ただ、その中で、今の制度との関係で言うと、苦情処理というのが本日御報告いただいた企画業務型の裁量労働制の中でも決議事項になっているのですが、調査結果で出てきた利用実績の少なさなどを考えると、これは原因をどう考えるべきなのかを検討することが必要だと思います。日本人としてあまり勤め先の会社に苦情という形で文句を言うことを望まないということなのかということもありますが、要するに、労働者の側から何か言ってくる、その後、それに対応するということを待つだけではなく、これまでの議論の中でも出てきたような、客観的なデータを収集して、それに基づいて検討するとか、あるいは、労使委員会のような会議体が主導して情報の収集を行い、収集した情報に基づいて何らかの対応を行うといったようなことも、今言ったような枠組みの中でそれなりに重視されるべきなのかなと思っています。
最後に1点、この労使委員会とか労使協定の決議事項は、今日の論点の中では、行政の関与という項目で整理されていたことと関わると思いますが、労働者と使用者の間の関係における制度の適法な実施要件につながってくる部分もあって、その辺りはこうした検討の中で併せて整理する必要があるかと思います。
具体的には、みなし労働時間制という効果が発生するための要件に直接結びついていて、違反があると、そのみなし労働時間制という効果が失われてしまうようなものがある一方で、労使委員会、労使協定の決議事項の中には、取りあえずこの事項について定めてくださいということが制度の導入要件であり、その一定の事項について定めがあれば、制度の適法な導入という要件はクリアしていて、定めたことが守られていない場合には、まずはその事業場の労使で適切に対応してくださいというような制度設計になっているものがあり、違反があったら制度の導入要件が失われるものと使い分ける設計がされているものがあると思います。
現場での話し合いを充実化させていくということであれば、その対象になるようなことについては、基本的には、違反があった場合に、即違法というところにつなげていくのではなく、まずはその現場の労使で適切な対応を検討するというような方向に誘導していく制度設計を併せて考えるべきなのかなと思っております。
長くなりましたが、以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑先生、お願いします。
○小畑構成員 どうもありがとうございます。
今、先生方から御意見いろいろと出されたところと同じ部分も多いのですけれども、裁量労働制に移行するときに、説明を受けて、これはとてもいい働き方だということで同意して裁量労働制を適用されることになったけれども、その後、話とは大分違っていると、そして、自分がそのような働き方をすることを望まない。そして、大分疲労もたまってきて、それで苦情処理機関に申告をするなり上司に掛け合うなりということをするということができても、なかなか解決されないと、どうやっても改善が見られないときに、やはり裁量労働制の適用を外れるという権利を残しておけば、最後には自分で希望すれば適用を外れることができるのだというような設計にしておけば、裁量労働制のもとで、もう絶望してしまうような事態を避けられるのではないかと思いますので、そうした点の検討も必要なのではないかということを申し上げたく存じます。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 ありがとうございました。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。すでに、他の委員からのご発言と重複する点もありますが、何点か気づいた点を申し上げます。
事務局に御用意いただいた資料1-2ですけれども、まず2ページ目の、労使委員会の議題というところの一つ一つの項目を見ますと、導入時に関する内容が非常に多いという印象があります。アンケートの中に導入後に関する項目が余り入っていなかったということもあるかもしれませんが、その場合はその他に丸をしてもいいわけですが、その他はそれほど選択されていない。ということを踏まえると、労使委員会の議題は、やはり導入時に関する点に集中していると推測されます。
一方で、11ページに、実際に何か苦情があったときにどういう内容を苦情として受けているかというところを見ますと、当然ながら、適用後に生じた問題であるということが確認できます。
適用後に生じうるこうした苦情処理に挙がっているような問題も、労使委員会で積極的に議論して解決していくことが望ましいということをまずは明示することが重要かと思います。
その上で、先ほど小畑委員もおっしゃっていらしたことと関連しますが、導入してから初めて分かることも多くあるように思います。裁量労働制が適用された後に、もし何らかの事情で裁量的な働き方が担保されない事態になった場合には、一時的にせよ、制度の適用から外れることができるということを、本人同意の段階でも労使で認識を共有・明示しておく、ということが重要だと思います。
ちなみに、この11ページでは、「仕事に裁量がない」という項目自体はそれほど数値が高くなっていませんが、おそらく考えられ得る理由は、裁量がないことによる結果としてそのほかの項目が生じているために、直接それらの項目に丸をつけている方もいらっしゃると思います。したがって、労使委員会で裁量がどの程度担保されているのかということをきちんと把握していくということが重要だと思います。
ただ、現場では、なかなか個々人レベルでは個別の問題を訴えにくいという方もいらっしゃると思います。そういった声が出せない方の事情をどのように把握していくかということが重要になっていくわけですけれども、例えば、労使委員会で定期的に実態調査などを行い、そこで声を拾っていくといった取り組みを推奨することも一案かと思います。さらに、実態調査を行っている企業は、集計結果を例えばホームページに載せるなど、情報開示を積極的に行うことによって、各企業がどういった取組をしているのかということを発信していくことも一案と思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、私からも一言申し上げたいと思います。これまでの色々な調査から、裁量労働制は労働者自身が労働時間の配分等について自主的に決定できる制度という高い評価が多いのですけれども、問題があるというところも1割前後見られるという状況がございます。これは裁量労働制の問題というよりも、そもそも裁量労働制を導入できないのに、違法に使っている可能性が高く、これは厳格に是正されるべき状況だと思われます。
制度としてはきちんと導入していても、現在の制度では、主として、導入するかどうか、どういう制度として導入するか、という時点で、労使協定や労使委員会がその役割を果たすわけですが、この検討会で議論してきましたように、それがどう適正に運用されているか、このチェックを行うことが非常に重要です。
これとの関係では、現在は省令等で大体半年に1回ほど、行政への報告もあって開催している状況になっているわけですけれども、行政への報告のために開催するのではなくて、一旦、制度をつくって導入したけれども、それが自分たちの思ったような制度として適正に運用されているか、これを確認するために労使委員会を開催するという実態であるべきだろうと思います。
制度の運用に問題がないかを確認するための労使委員会の開催がきちんと行われていれば、行政の報告の回数というものについては減らしてもよいのではないかと考えております。
それから、制度全体としては適正なのだけれども、個々人にとってみると、自分には合っていなかったという場合に、小畑先生、黒田先生からも御指摘ありましたけれども、その制度から離脱する自由というものをしっかり用意しておくということによって、制度の適正な運用が図られるという面もあります。労働者個々人が、問題があるということを訴えやすい制度をつくって、制度的対処を労使で考えていく、そのための労使委員会や労使協議を実効的にするということが必要だと考えております。
そのほかに、全体的に、最初の裁量労働制、労使コミュニケーションについて、何か補足的に御意見ございましょうか。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 苦情処理ということについて、ちょっと考えていることを申し上げたいと思います。苦情処理委員会、あるいは苦情処理の機関に訴え出てくる件数は非常に少ないです。これは実はこの裁量労働制に限ったことではなくて、日本の労使関係を見ていましても、苦情処理機関とか苦情処理委員会というのはあるのだけれども、そこに挙がる案件は非常に少ないのが実態です。では問題がないかというと、問題は発生しているのですね。それをどうしているかというと、苦情処理委員会に行く前に、例えば上司との話し合いとか、もし労働組合があれば、組合の役員が一緒に考えてくれるという仕組みがある。ですから、裁量労働制で働いていて、本当にこれでいいのだろうかと感じたときに、気楽に相談できる場があればいいのではないかと思っています。
今回、調査結果の中にも、人事部がそういった窓口を設けるというのがあるのですが、それが苦情処理委員会とかそういう名前でくくられてしまった途端に、数が非常に少なくなる。ですから、苦情処理にいく前に、何か相談機関をきちんと設けて、そこで対応するという、もう一段階置いておいたほうが実態に合ってくるのかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。確かに、苦情処理委員会の申出ということになると、かなり大ごとということになります。今回のアンケートで、苦情の申出場所を知っているかというのも、恐らく、この苦情処理委員会というものを知っているというよりも、不満があったときに人事部に申し出ることができることが分かっているということで回答した人もいるかもしれません。そうした情報が人事部に集まったとしましても、それをきちんと労使委員会などに、こういう苦情がたくさん挙がってきていますということを説明することが大事だろうと思います。
ただ、非常に難しいのは、川田先生も御指摘になりましたけれども、自分の働き方に対しての裁量労働制の中での評価の不満ということになると、個人個人の評価というものになってきます。そうすると、それを労使委員会という場で議論するのは適切かということもありますので、そこについては留意が必要だと思います。しかし、制度の運用についての問題点が窓口に集まってきたら、それを制度設計とか運用の問題として労使委員会等で議論するということも重要だろうと、今の御発言を聞いて触発されたところです。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、また後ほど戻ってくることも可能でございますので、次にまいります。2つ目の論点です。年次有給休暇・時間単位年休、そして勤務間インターバルもございますけれども、まずは年休の問題、年次有給休暇・時間単位年休、これらについて御意見があればお願いしたいと存じます。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 この年次有給休暇の時間単位取得、今、5日というのが上限で、これをもっと増やすかどうかというところについて、実態調査を見る限りでは、増やすということに対する要望は強くないと思います。年次有給休暇はそもそも何のためにあるのかというところから言うと、これはやはり通常の労働から離れて、頭も身体もリフレッシュする。そういう効果を期待し、設けられている制度だと思います。ILOの条約だと、分割してもいいけれども、一つのくくりは少なくとも2労働週でなくてはならないとか、つまり、まとめて取るのが普通だという考え方になっています。これは多分にヨーロッパの考え方だと思いますが、実際に年次有給休暇を使って休んでいるという人たちの実態を見ますと、最近ですと、1週間5日間、年次有給休暇を取得し、前後の土日を合わせて9日連続という休み方も、特に夏場は普及してきているように思います。やはり一定期間仕事から離れるということの良さというのは、客観的に自分の仕事を見直すという観点からもいいと思います。
ですから、私は5日までとしている現行どおりでいいのではないか、6日以上にする必要は現時点では必ずしもないと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑先生、お願いいたします。
○小畑構成員 ありがとうございます。
今、藤村先生がおっしゃった数字というのは全くそのとおりなのですけれども、1点心配していることがございます。それは、16ページをお示しいただきましたけれども、「取得したことがある」という方が56.7%で、その右側の「5日分すべて」取得したという数字が9.5%ございます。そして、17ページにお進みいただきますと、利用用途は何かというと、御自身の病気などの通院がトップ、そして、4番目には「介護や看護」という項目が挙がっております。そして、18ページにまいりますと、18.5%の方が「増やしてほしい」とおっしゃっていて、その右側では、「年休付与日数のすべて」という御回答が40.0%あるということです。
そして、19ページですと、時間単位年休制度が導入されていない方で、導入・適用を希望されている方が50.6%という数字になってございます。この数字は、何を意味しているのかということについて、特にあまり意味なく、全部時間単位でいいのではないかとお考えだというような、それほど切迫感がないということであれば心配はないのですが、例えば、今、高齢の方も労働市場にどんどん増え、また障害を持ちながら働かれている方も増えていらっしゃり、また、要介護一歩手前の御家族のケアをしながら働いていらっしゃるとか、御自身が例えば夕方少しお加減が悪くなることがあるというような方々が、時間単位取得によって年休をやり繰りすることによって何とか欠勤しないで済んでいるというような実態がもしあるのであれば、その実態をちょっと確認しないといけないようにも思っております。
ヤングケアラーではないですけれども、子供の頃から病気の御家族の看護をしながら、時々、夕方、学校を早退されて、それで社会人になったときに、最初の6か月の継続勤務と8割出勤という要件のために、なかなかその要件をクリアできずに年休を取得することができないまま欠勤を繰り返して、永遠に年休とは無縁なお仕事の人生になってしまって、年休を取れないというような方が実際にはおられると思いますが、そうしたことを考えましても、例えば一時的に、時間的に限られたところだけ年休を取得することができるような、そうしたことによって、むしろ希望を持って働けるような方がおられるか、おられないか、その辺りを確認するということも必要なように感じております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 今、小畑先生の御発言で、確かにそういう方いらっしゃるのはよく分かります。そういう場合、それは例外的な扱いとして、例えば労使でそういう人たちに対しては時間単位の、5日を超えて、時間単位の年次有給休暇が取れるようにしておくということはあり得るかなと思います。基本は5日までですよとしておいて、それ以上、それぞれの事情によって、そういったことが必要な場合には、それこそ労使委員会とか労使協定によってそういうことが、5日を超えて6日以上できるというのは考えられるかなと思います。
以上です。
○荒木座長 川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。川田です。
3点ぐらいに整理して述べたいと思いますが、1点目は、理屈の話として、この検討会の中でも労働時間に関しては、もともと、長時間労働の抑制を中心とした健康確保、余暇の確保といったところから始まって、ワーク・ライフ・バランス、あるいは就労に参加しにくいような何かハンディキャップ、病気とか障害を持った方が労働に参加しやすくするようにするなど、求められる役割が広がってきているというような議論がされてきたと思います。この年休のあり方についても、ベースとしては同じであり、年休も広い意味での労働時間制度の一部と言えると思いますので、そういう制度に求められる役割を踏まえた検討という視点が重要だと考えているというのが1点です。
それから2点目として、これは既に出てきている議論と重複するところがありますが、時間単位年休に対するニーズが、自身の病気の治療であったり、あるいは育児・介護であったりというところにあると考えると、そうしたものについては、労働法上の制度の中で、年休としてどこまでの守備範囲を持つと考えていくのかという点が1つ議論になるかなと思います。現行法の下でも、たとえば育児・介護休業法には、育児とか介護を目的とした休暇、これは有給で保障されているものではないものの、休むということ自体は保障されるような制度が設けられています。特にニーズが大きいものに対しては、このような目的を特定した休暇の制度で対応していくことも考えられますし、その一方で、ほかの労働者の方と共通の枠組みの年休という中で休むことを可能にしたほうが何か気兼ねなく休めるとか、実際、ニーズに応じて休みやすいというようなことがあるかもしれないので、ここは最終的には実態を踏まえて、どういうものがベストかを政策的に考えていくということなのかなと思います。
そういう中で、次は3点目ですが、年休制度に関しては、これも既に出てきた議論と共通ですが、一方で、そういう細かい生活上のニーズに応じて短時間に分割した年休を取得するという方向性と併せて、ある程度まとまった期間、労働から離れることが保障されるような使い方を充実させるということ、両方併せて考えていくべきなのかなと考えています。
恐らく、制度としては、現在の日本の年休の制度というのは、使途や取り方に関してはかなり自由度が高い形になっており、先ほど述べられたようなILO条約で示されている、1回は最低2連続労働週というようなルールもないという状況なので、これを前提とする限りは運用のレベルの問題として様々な、運用する当事者を支援するような情報提供とか、場合によっては助成といったような枠組みで考えていくべきものなのかなと考えているところです。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
このテーマも、ほかの先生方と重複することがあるかもしれません。私自身も、有給休暇は、本来はリフレッシュのために取得することが大前提だと思います。ドイツやフランスの制度についても御紹介ありましたけれども、1年に1か月ぐらいまとまってリフレッシュする時期があるとしたら、それは労働者の心身の健康に大きな影響を与えうると思います。一方で、そうはいっても、現状の日本が置かれている事情というものもあって、そうした事情にもどれだけ対応させるべきかを考えることも重要だと思っております。
複数の委員が既に指摘されていらっしゃいますが、資料2-2の18ページに、時間単位の取得についての要望については、18.5%しか増加を希望していないという数字が出ています。ただ、無回答も8.8%あります。この無回答の人たちがなぜ無回答だったのかということも想像する必要があるかと思っておりまして、例えばそもそも有給休暇がとても取りにくい環境で働いていて、時間単位年休について論じているどころではないというような方々も、もしかしたら入っているのかもしれません。年休自体が取りづらいので時間年休のことまで考える余裕がないという人たちの中には、もし年休がとりやすい環境になるのならさらに時間給という選択肢もあったらありがたい、といった潜在的なニーズももしかしたら持っているかもしれないとも思います。
その1ページ前の17ページを見てみても、先ほど小畑委員からもお話がありましたけれども、様々な事情を抱えている方がある一定の割合でいらっしゃって、日本は恐らく今後、こういう事情を抱える人がどんどん増えていく社会になっていくと思います。特に高齢化に関しては、介護休業などもありますし、育児休業もありますけれども、そういった、介護休業制度を利用する少し手前の、病院の付き添いや諸々の手続きなど、ちょっとした用事が頻繁に生じる、そういう方が増えていくのではないかと思います。
さらに、特に今後恐らく深刻になりそうなのが、40代、50代以上の労働者が増えていく中で、自分自身の体調が芳しくないという人も増えていく可能性が考えられます。こうしたことを踏まえますと、有給休暇は本来リフレッシュを目的として取るべきとは思いますが、様々な事情がある方のことも考え、時間単位の取得制度の拡大を検討してもいいのではないかと思います。
なお、将来的には、リフレッシュのための休暇とそれ以外のための休みを分けていくような制度設計も考えていくべきではないかと思っています。欧州諸国で長期のバカンスが楽しめる背景には、別枠で病気休暇(シックリーブ)制度があるためということがよく指摘されます。もちろん、シックリーブ制度を手厚くし過ぎるとアブセンティーズムという別の問題が出てくる可能性もあります。しかし、少なくともそういったシックリーブが年間数日程度あれば、念のために有給休暇を取っておくということをしなくて済むので、有給休暇取得率を100%に近づけていくことが可能になるのではないかとも思っております。将来的な課題になるかと思いますけれども、検討いただければと思っております。
以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
それでは、私のほうからも、年休の制度について一言申し上げたいと思います。まず、時間単位年休の話が相当議論されました。時間単位年休の5日上限を増やしてほしいという希望自体は決して多くはなくて、実際、希望されている方の内訳を見ましても、5日全部使っている方というのは本当にごく僅かです。それをどう見るかという問題は1つあるかと思います。
それから、これは事務局にお尋ねしたいのですけれども、今日の資料2-1の1ページで、取得単位、原則1日単位、例外として、①半日単位、②時間単位で、半日単位というのは、実は時間単位年休制度を導入する前から解釈上認めてきたものです。そうすると、半日単位という形で取った場合には、時間単位年休の5日を使ったことにはならないということではないかと思うのですが、そうしますと、仮に5日を全部使ってしまったという方が時間単位年休を使えなくても、半日単位というのは別途、普通の年休権の行使として、使用者が認めさえすれば使えるという状況だと理解して間違いないでしょうか。
○労働条件政策課長 荒木先生の御指摘のとおりでございまして、時間単位年休を5日分全て使っても、半日単位の年休の取得が可能でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それから、時間単位年休というのはまさに年休制度の趣旨が多様化してきたということかもしれません。1日単位とか、バカンスのような使い方ではない、労働者の日常的なニーズに対応する制度として使われ始めている。この制度で入れるときにも大分議論しましたけれども、大きな背景として、日本では、年休取得率が5割程度です。年休権は2年で時効消滅してしまう。使わないままに労働者の年休権が消えてしまうくらいであれば、日常的なニーズのために使うということで、少しでも取得率を上げることは労働者にとっても意味があるのではないかということを議論して導入したものです。
ですので、そういう日常的な必要性、いわば労働時間の配分に関係するニーズに対応した側面があると思います。そのニーズに、実はフレックスタイムとか、スーパーフレックスとか、あるいは裁量労働制という形で、何時から何時まで出勤して仕事しなければいけないというものに対して対応できる可能性が広がってきているということも併せて考えることも1点あるかなと思いました。
政府は、年休の取得率を70%にするという目標を掲げておりますが、最近、取得率が上がってはきておりますけれども、まだなお50%台です。使わなかった年休は翌年に繰り越されますけれども、さらにそれが残りますと時効消滅することになります。こういう事態は大変問題でありまして、やはり完全消化というのが本来あるべき姿です。
ヨーロッパではなぜほぼ完全取得が可能かというと、例えばドイツなどでは年度の当初に、年休カレンダーを使用者のほうが労働者に配って、あなたは、例えば30日の年休をどこで全部使う予定ですかという希望を聞く。それを踏まえて使用者のほうが、この時期には年休取得者が重なるので調整しよう、あるいは、それでも足りなければ、例えば代替要員を活用して対応しようというように、全員が年休を完全取得することを前提に要員管理を年度当初から計画することで完全取得が可能となっています。日本では労働者が年休を取りますと言ってくるまで、使用者は受け身で何もしなくてよかった。その発想を変えようと、使用者に5日の年休付与義務を導入したのですけれども、例えば20日間年休権が発生するのであれば、その完全取得を目指した希望を年度当初に聞くのが当たり前という社会慣行にしていくということが大事ではないかと思います。
日本ではいわゆる病休制度というものがないので、年休がその代替として使われているということがございます。労働者がある程度リザーブしてもいいのですけれども、少なくとも7割は完全消化をするということで、年度当初に労使ともに計画をする、行政としてもそういう方向に働きかけるということが重要ではないかと考えています。
私からは以上ですけれども、ほかに、今までの議論を踏まえて御自由に御議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、また後ほど何かありましたら戻ってくることにしまして、勤務間インターバルに移りたいと思います。勤務間インターバルについて、先生方から何かコメントがあれば伺いたいと存じます。
堤先生、お願いします。
○堤構成員 ありがとうございます。
勤務間インターバルに関しては、やはり健康・福祉確保措置の観点から、できるだけよい形で広がっていけばよいと考えています。ここの検討会に来ていただいた種々の企業の方からも非常に上手に運用されている事例も御紹介いただきましたが、そういう好事例が広がっていくような仕組みになるとよいのではないかと思っています。
それから、専門家からのヒアリングでは、一律導入ではなくて、事業場に合わせた導入というような御意見もいただきました。本当にごもっともだとそのとき感じました。やはり必要のないような事業場もあるかとも思いますので、そういうことも踏まえるべきと思いますし、また、先ほどの議題にも少し関わりますけれども、導入をして、不具合があればそれをチェックして修正するというような形もあってよろしいのではないかなと考えるところでございます。
一つの事業場で制度をいろいろと変えるのはなかなか大変かもしれませんけれども、少なくともうまく動かないようなところがあれば、制度変更になるようなきっかけの議論は労使コミュニケーションなどでスタートして、その後でまたその事業場に合わせた形に変えていくというような柔軟性をもって、導入の推進に活かせればいいのではないかなという考え方を持っております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 やはりその日の疲労はその日のうちに解消するというのが大原則だと思うのですね。そうすると、会社を出てから、次の日の朝、会社に行くまでの間の時間というのが一定以上ないと疲労の回復ができないという、これは自明のことだと思います。それが何時間が適切かというのは、やはり仕事の種類とかそういったものによって変わると思います。
この勤務間インターバルではないのですが、私がこれまで見てまいりました自動車の最終組立ての現場では、残業をやるにしても、その残業の上限が決まっていて、1時間半以上はさせないということが労使の協定で出来上がっています。なぜ1時間半を超えてさせないかというと、疲労の回復が十分にできないと、疲労が蓄積したまま次の日の労働に従事することになります。それが重なってきますと、注意力が散漫になって、事故が起き、労災につながります。従業員の安全というのを考えたときに、やはり経験的に残業時間を1時間半までという、これは非常に厳しく守らせてきたのです。そういう観点からも、いわゆる事務・技術系ですね。ホワイトカラーの人たちに対しても、こういった一定時間空けて出社するということを考えていくことも必要なことだと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
インターバルが重要な制度であるという認識は共通で、その上で、このインターバルの制度を導入するということを検討する場合の目的や、それに応じた具体的な制度の考え方について、幾つかの検討すべき点があり、そういった点の整理が必要だと考えております。
外国の例などを見ると、もともとヨーロッパで広く見られた制度ですが、そういうところだと、もともとの労働時間制度の中に一般の労働者の場合には時間外労働というような概念がそもそもあまりないというようなこともあって、例えばシフト制とか交代制で勤務する場合のシフトの組み方について、夜勤と昼間勤務が入り交じるような形になったとしても、前の勤務と後の勤務の間に一定の時間を空けようというような、主として正規の労働時間、所定労働時間の配置の仕方に関するルールという捉え方ができるものもあると思います。
それから、時間外労働、所定外の労働があるということを前提とした上で、先ほど藤村先生のお話の中に出てきたように、所定外の労働に制限をかけようというものとしてインターバルを考えるというような考え方もあり得、さらに、所定外の労働が長時間になってしまった場合に、翌日の出勤時刻を後ろにずらすというような、正規の勤務時間を、場合によっては所定外の時間が長時間になった場合に正規の勤務時間の例外を認めるというようなイメージのものもあると思います。これらは、どのくらい原則的な働き方についてのルールと考えるのか、あるいは何かイレギュラーなこと、特殊な事情で長時間働くという事態が発生したときの対応という意味合いで考えるのかという違いや、疲労の蓄積防止をどのぐらいのタイムスパンで考えるのか、1日単位なのかというようなこととも関わってくるのだと思います。
そういう中で、これまでの議論の中でも、個々の事業場の実情に応じた対応という視点は重要なのだという議論があったと思いますが、恐らく、一律何時間というような基準を決めて、それを下回ったら違法と考えるというよりは、原則的な時間を定めつつ、例えば1週間当たり何日まではそれよりも短くなることを許容するけれども、その場合にも最低何時間は確保するというような定め方とか、あるいは、別の視点で、インターバルが確保できないような状況が1週間、あるいは1か月のうち何日を超えたら、例えば医師に健康状態を確認するとか、別な対応をとるとか、いろんな制度設計があり得るのかなと思います。
その辺りは、基本的には事業場の実情に合わせた、ある程度柔軟な制度設計があってもよいのかなと思うのですが、考え方の整理としては、そのときに、一般的な労働時間に対する歯止めなのか、極端に労働時間が長くなるような事態が生じたときの対応という意味合いを強く持たせるのか、あるいは、疲労の蓄積に対する歯止めをかける時間の単位、1日単位とか1週間とか1か月とかいう単位をどのぐらいに想定するのかという、その辺りを踏まえた議論をした上で、これは制度設計のレベルでも、個々の事業場で検討するレベルでも必要なことだと思いますが、そういう基本的な趣旨を踏まえた制度設計という視点が重要になるのではないかなと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
ユーロファウンドがコロナ前に行った労働者調査で、インターバル制度の存在について知っているかというアンケートを行ったところ、制度を知らない人が意外に多いという結果がありました。恐らく、疲れたら休む、休息は不可欠という社会規範が既に確立しているので、こういった制度を知らなくても特に問題がないのかもしれません。一方、日本の場合は、依然として無理をしてしまうとか、自分が休むと周りに迷惑がかかるというようなことを思いがちな文化が根強く残っているので、まずはこのインターバル制度をしっかり普及させて、一日のうちに疲れをリセットするという規範を政府主導でつくっていくということは非常に重要だと思っております。
ただ、これは企業による厳格な労働時間管理が可能ということを前提としている点が、新しい働き方が普及しつつある現状では悩ましいところです。裁量労働制のみならず、テレワークで自由度が高い働き方の普及しつつある中で、パソコンのログオン、ログオフだけでは厳格な管理は現実には難しいと感じております。例えば、勤怠管理システムでは働いていないことになっているけれども、実態はログオフした後に働いているというような労働者もいると思います。
こうした新しい働き方の普及の下で、インターバルを確保していくためには、制度をつくるということだけでなく、つながらない権利の普及促進や、労働者のセルフケアの支援というものもセットで推奨していくということも必要なのではないかと考えています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは私も一言申し上げます。勤務間インターバルを実際に導入するといたしますと、きちんと適用できるワーカブルな制度にしなければ意味がないと思います。想像すると分かるように、翌日に重要な行事やイベントがあると、その準備のために遅くまで作業するということはよくあることですが、そのときに例えば11時間置かなければいけないということになりますと、一番大事な責任者がイベントのときに出勤できないということになりますと、そんな制度は導入できないということになってしまいます。
前回専門家の方から御説明をお聞きしましたとおり、実情に合わせてこの勤務間インターバルをどう設計するかが大事で、1つ御報告にあったのは、例えば勤務間インターバルは「平均して」11時間が確保されていると。平均で考えるという考え方が1つあります。
それから、1日8時間、週40時間働かせてはならないというのは労基法32条に罰則つきで規定がされていますけれども、労使協定、36協定でこの例外を認めております。勤務間インターバルにも同様に、11時間の勤務間インターバル確保が原則だけれども、例えば月に1回は、労使協定を結べばこの例外を認めるといった例外も許容しつつ、それ以外の場合には確保させるというやり方もあると思います。それから、そういった例外を入れる際に、そうするとかなり過密な労働がその日はあるわけですので、それに対応して十分な代替の休息もセットとして与えることを条件にそういった例外を認める。いろんな実情に応じた使い方というのは工夫の余地があるのではないかと考えております。
現在、努力義務という形で企業が試行錯誤を始めているという状況だと思われますので、どうしたら企業としても導入できるワーカブルな勤務間インターバル制度を設計できるのか、これについてよく検討することが大切だろうと考えております。私は、労働時間規制は、最長労働時間規制、割増賃金規制、そして労働解放時間の規制の3種類があると考えています。労働解放時間規制には、休憩時間、休日、年次有給休暇がありますが、そこにもう一つ、4つ目として、勤務間インターバル規制を議論しているのだと思います。労働時間規制には、労働から解放された時間を確保するということも重要な規制の一つの柱ですので、それが実際にワークするような制度を検討していくべきだと考えています。
ほかにはいかがでしょうか。
小畑先生、どうぞ。
○小畑構成員 先生方におっしゃっていただいたとおりで、やはり具体的な事情がいろいろと会社によって異なっておりますので、そのことを踏まえつつ制度設計していくということが大切と考えております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、3つの論点について御議論いただきましたけれども、全体を通じて何か補足的なコメント等があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、今日の議論はここまでということにさせていただきます。
最後に、事務局から次回の日程についてお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 次回の日程、開催場所については追って御連絡いたします。
○荒木座長 それでは、第13回「これからの労働時間制度に関する検討会」は以上で終了といたします。本日も、お忙しい中、御参加いただきまして、どうもありがとうございました。