令和4年度第3回雇用政策研究会 議事録

日時

令和4年6月20日(月)10:00~12:00

場所

オンライン会議会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

傍聴会場
厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

議事内容
2022-6-20 雇用政策研究会(令和4年度第3回)
○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。
ただいまより、令和4年度第3回「雇用政策研究会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。
本日は、神林委員、清家委員、宮本委員が御欠席となっております。
それでは、カメラ撮影の報道関係者の方は、ここで御退席願います。
それでは、議事に入る前に、本日はZoomによるオンライン会議ということで、改めて簡単に操作方法について御説明させていただきます。
本日、研究会の進行中は、事務局のほうで委員の皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言をされる際には、画面下の「参加者」のボタンをクリックしていただき、その後に表示されるポップアップ画面の右下に表示されます「手を挙げる」のボタンをクリックしていただければと思います。その後、樋口座長の許可があった後に、御自身でマイクをオンにしていただいてから御発言をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
また、本会議室から御参加いただく皆様におかれては、御発言の前にお名前を名乗ってから御発言いただきますよう、お願い申し上げます。
なお、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や音声が聞こえなくなった場合など、何かトラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号か、チャット機能で御連絡いただきますようお願いいたします。
オンライン会議に係る説明については以上となります。
続きまして、議事に入らせていただきます。
今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 おはようございます。
本日ですが、まず最初に、JIPTの中井主席統括研究員から、お手元に配付というよりも画面に映るかと思いますが、資料2「雇用調整助成金のコロナ特例について」ということでお話をいただきます。
次に、これまで2回にわたって本研究会で委員の皆様と様々な議論をさせていただきましたが、その内容について事務局のほうで議論の整理案を作成してもらいました。その内容の説明を受けたいと思います。
それでは、資料2について中井主席統括研究員より説明をお願いいたします。
○中居主席統括研究員 労働政策研究・研修機構の主席統括研究員をしています中井でございます。
先生方にはいつも多大なる御指導、御支援をいただきまして、ありがとうございます。
私のほうから資料に基づきまして雇用調整助成金のコロナ特例について御説明をさせていただきます。20分程度ということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、進めさせていただきます。
今日の御説明の内容は、今お示ししている目次のとおりであります。最初に雇用調整助成金のコロナ特例の概要について簡単に御説明をさせていただいた後、現在、JILPTのほうで業務データをお借りして分析を行っておりますが、それについて御説明をいたします。関連して、緊急雇用安定助成金の支給実績についても説明いたします。そういった業務データを用いた分析を踏まえて、まだスタートしたばかりみたいな内容なので限定はしているのですけれども、これまで分かったことを御説明いたします。最後に御参考ということで、諸外国の雇用維持政策の概要について、これも簡単に御説明させていただければと思います。時間があれば参考についても少し言及させていただくかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
最初にコロナ特例の概要でございます。これについては、御承知のとおり、非常に大きな拡充をしてきましたけれども、この制度のもともとの概要ということで上に書いております。経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が休業、教育訓練、または出向により労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当等の一部を助成する制度ということで、財源は雇用保険二事業ということでございます。
今回のコロナにおきましては、簡単にお示ししますが、特に左、真ん中あたりでございますけれども、中小企業の場合だとコロナ特例で助成率は最大10分の10になった。上限額も最大1万5000になっているということでございます。
次のページに移りますが、特例の期間でございます。これまでコロナにおいて特例を拡充した後に順次縮小して、今、地域特例、業況特例という形でめり張りをつけた支給をやられているわけでございますけれども、この間、感染の拡大に波が何度もあったということで、それに対応した形で特例期間を延長してきているということで、今の状況では本年9月まで延長されているということでございます。
次のページが特例措置がどういう形で推移してきたかといった経緯であります。通常時が一番左にあります。そういった中で順次縮小してきているということでございます。
次のページが支給実績でございまして、一番下ので囲ってあるところが最新の支給実績でございます。全体で支給決定額が5兆7880億円ということで、そのうち雇用調整助成金本体5兆3449億円、また、後で若干言及しますが、一般会計で措置している緊急雇用安定助成金が4431億円という実績になっているものです。
最近の支給状況が次のグラフでございまして、徐々に縮小はしてきているということでございますが、まだ一定程度支給が発生していると見えるかと思います。
簡単に特徴ということで整理をさせていただきました。今申し上げたようなことの繰り返しなので、詳細は後で御覧になっていただければと思いますけれども、雇用助成金については、先生方も御承知のとおり、特に20年ぐらい前に衰退産業・企業を延命させて、産業構造の転換を妨げるという批判を大きく受けたということもありまして、その間、これまでは緊急的な経済ショックあるいは自然災害といったときに特例措置を講じて活用したと。通常期はあまり支給が発生しない。そこにコロナ前の予算額を書かせていただいていますが、今の金額とは桁違いの額でございます。そういった状況の中で、今回の経済ショックにおいても先ほど申し上げたような拡充を行ってきたということ。
それから、3つ目の○に書いてありますが、非正規雇用あるいは雇用保険の被保険者ではない週20時間未満の労働者も対象に加えられている。これが一般会計で措置している緊急雇用安定助成金ということでございまして、そういった層も今回は対象になっているということが大きな特徴であろうと思っています。
あわせて、4つ目の○に書いてありますけれども、この間、休業したけれども給与手当を受けることができなかった方なども発生したときに、休業支援金・給付金というものを創設したり、あるいは在籍型出向を支援する産業雇用安定助成金も創設して、併せて対応してきたという経緯がございます。
そういった中で、金額をついては先ほど申し上げたとおり、リーマンショックをはるかに上回った、桁が違う価格であるということでございます。
今の状況というのが一番最後に出ているとおりでございます。先ほどの推移のことなので繰り返しになりますが、今の形で、一番下、本年1月から3月にかけて、原則は特例の上限を段階的に9,000円まで引き下げる。その後において9月まで現時点と同じ内容の援助をするという形で今示されているということでございます。
この助成金について、我々JILPTのほうで研究を始めておりますので、これまでの成果に簡単に御説明申し上げます。
11ページの分析の取組の概要でございますけれども、厚生労働省の要請をいただきまして、今回の特例措置の効果検証を行うということで、今、研究会を設置して研究を行っています。その研究会に参集いただいている方の名前をそこに入れておりますけれども、我々JILPT内部の研究員と外部の有識者の先生方、雇用政策研究会のメンバーでは神林先生に入っていただいておりますけれども、設置して研究を行っております。
開催実績はそこに書いてあるとおりで、昨年10月に立ち上げまして、これまで3回開催してきたということでございます。
どういう形でやるかということについては、業務データをお借りして実態について明らかにするということと、補完的な情報を得るためにアンケート調査も行って実証分析を行う。これは以前、リーマンショック、東日本大震災のときにも同様の研究を行っておりまして、そのときの手法を参考にさせていただいているということでございます。ただ、現在についてはまだ最初の段階であります。コロナ初期のデータに基づく実態把握の分析ということで、お借りできているデータはコロナがスタートしたときから昨年1月まで、ちょうど1年間分のデータをお借りしています。それ以降についてお借りできていないというのは、この間の厚生労働省様の支給事務が非常に大変だったと。大量に業務をさばくてはいけなかったという中において、こういったデータの整理に苦慮されたということだろうと推測をしているところでございます。
まだ途中段階ということでありますが、成果は随時公表するとともに、新型コロナはまだ続いている状況でございますけれども、収束後に総括的な取りまとめを行う予定でございます。
下に今お借りできているデータを3種類書いております。雇用調整助成金システムデータ、一般助成金システムデータ、それから、雇用保険データ。時期も含めて、雇用保険データは1月分ということでございますけれども、そういう形でお借りしているということでございます。
検証における論点の例というのを次に書いておりますけれども、今回どのような実態があったのか。それは雇用を支えたということで、どういうことがどういう状態だったのかということもありますが、コロナが長期化する中で、雇用調整助成金について、副作用という言い方をするのがいいかどうかは分かりませんけれども、そういうことも含めて考えていかなくてはいけない。当然、これまでもありました批判的な話というのは我々としては認識をしていて、そういったところをしっかり見ていかなくてはいけないと考えているところでございます。
ここからはデータの話でございますけれども、データの構造について少し整理をしたものが13ページにあります。
先ほど申し上げた雇用調整助成金のシステムデータが左側に出ていますけれども、これはもともと支給事務の行政記録を入力するデータシステムということでこれまでも運営されていたわけでありますけれども、今回はそれ以外に一般助成金システムデータ、これは雇用調整助成金以外の助成金について同じようなシステムをつくっているのですけれども、そこに大量にデータが入っているという状況がございます。これは、初期の頃に非常に大量の申請があって、それを早くするために支給事務の簡素化が行われたときに、一般助成金システムデータのほうが入力するデータの数が少なくて済む。右側にどういうデータが入っているかというのを一覧にしておりますけれども、そういうことでこういう形になっているということでございます。
ただ、こういう形になっているのが分析を難しくしている大きな要因でありまして、右側にありますけれども、一般助成金システムデータのほうが対象労働者数というデータの入力が不要だったりして、なかったりします。それで、今回、人数ベースの把握というのが自然体で業務データから分からないという状況がある。それを前提に進めてきました。
結果について、これは先ほど申し上げたとおり、昨年1月までのデータということでございますけれども、それについて簡単に説明しますと、これも支給実績でございます。過去のリーマンショック、東日本と比べても、今回、件数、金額とも大幅に突出していたということが分かる推移でございます。
それから、次は1件当たりの支給金額で、そうは言ってもピーク時では1件当たりの支給金額は同じぐらいだったということでございます。
下の表のほうは、これからI、II、IIIという数字が出てきますけれども、これはリーマンショック、東日本大震災域とその後の平常期、それから、今回の新型コロナ期ということで分けて、それぞれ月数は違うのですけれども、1か月当たりに直してどうだったかということも含めて比較をしたということでございまして、御覧なっていただいているとおりでございます。1件当たりの平均支給額もリーマンショックのときと比べて2.3倍の差があるということでございます。
続いて、次の16ページでありますけれども、これは産業大分類に見た支給事業所数、件数、金額、1件当たりの金額を表にしたものでございます。どれも似たような傾向でございますけれども、これまでの時期は製造業、建設業が中心だったのが、今回は特に対人接触のサービス分野について非常に大きな影響があったということで、そういったところの支給が非常に多くなっているということがあります。
次が中分類で見たものということで、それをより細かく見たときに、これまで製造業だったのが飲食店とか洗濯・理美容・浴場業、医療業、その他の小売業といったところが非常に上位に来ているということでございます。
それを件数、金額、1件当たりということで見たものでございます。詳細は時間の関係で割愛させていただきたいと思います。
次が事業所規模別に見たものでございます。これを見ると、大企業が占める比率というのは今回よりもリーマンショックのときのほうがやや高かったということでございますけれども、支給額で見ると今回のほうが少し高いという結果になっています。
それから、雇用保険の適用事業所に占める受給事業所の割合を見たものが次でございまして、全体が右下に書いてあるとおりで、前回のときが7.1%だったのが、今回は17.9%の事業所が補助金の支給を受けているといった形になっていて、全体の占める影響がかなり大きかったということだろうと思っています。
これは産業別に見たということでございますが、これについても、先ほど申し上げたようにサービス分野のところのカバーする割合、特に宿泊、飲食サービス業では40.3%と4割を超えているといった形になっているということでございます。
次でございますけれども、先ほど2つのシステムデータがあると申し上げたのですが、それを都道府県別に見たものが次の表でございまして、都道府県の労働局によってどちらのシステムに入力しているかというのが完全に偏りがあるということでございます。そういったことを念頭にデータを見ていくということになってこようかと思っています。
これは雇調金システムだけと全データだけで見たものでございまして、件数、金額を見ると製造業の比率が少し違ってくるというのは、地域の特性を反映したものということでございます。
また、1か月ごとの雇用調整助成金支給実績について、次のページでございますけれども、これは事務所によってタイムラグがあるということでございます。算定期間、これは実際に休業が発生した期間というところがどこがピークだったかというのは、2020年4、5月ということです。それに関連して、支給の決定日については、件数については10月、金額については8月がピークになっているという形になっています。
それから、タイムラグということで、支給申請と振込までの日数についてのラグを見たものが次でございます。これを見ると、初期の頃は結構な時間がかかっていたということで、これは報道ベースでもいろいろ言われていたわけでありますけれども、平均で50日以上、それが11月には30日ほどまでに短くなっているといった形になっている。
時間が押してまいりまして恐縮ですけれども、緊急雇用安定助成金について見たものがこれであります。それぞれどういう形で推移したかということが分かるかと思います。
また、産業別に見ると、雇用保険の被保険者以外のところ、非正規の方が多いという話があるので、ここはやはり宿泊業、飲食サービス業を中心としたサービス分野の割合が高いということであります。
それから、事業所規模で見ると、大企業の割合は雇調金に比較してさらに低下するといった形になっているということでございます。
これまでの分析結果の整理ということで、32ページでございますけれども、コロナ期はリーマンショックの後に比べると雇用情勢の悪化度合いは相対的に小さかった一方で、雇調金はそのときをはるかには上回る規模で支給されたということで、コロナ期においては人流抑制が行われたということ。そういった中で経済活動が停滞したわけですけれども、雇用維持支援が雇用情勢の大幅な悪化を防いだと考えられると思っています。
リーマンショック期と比較して、コロナ期の1年目ございますけれども、その支給が宿泊・飲食サービスをはじめとして広く活用されているということ。また、対人旅客の停滞の影響もあって、運輸についても大規模な支給が見られるということも分かっています。
それから、適用事業所に占める割合というのは、先ほど申し上げたとおり、今回のほうが10ポイント以上高いということでございます。
地域別には大都市圏、それから、緊急雇用安定助成金については正規雇用比率が高いサービス関連の業種の支給割合が高いということで、先ほど最後に見ましたが、手続の関係で言いますと、申請受付と振込時期の間隔がどんどん短くなってきているといったことが言えるということでございます。
これからも引き続き2月以降のデータを提供いただきまして、分析していこうと考えているところでございます。
最後に諸外国の雇用維持政策の概要でございますけれども、ここは主な先進国等と比較をしたもので、雇用維持スキームということでありますが、簡単に申し上げると、ドイツ、フランスはもともと仕組みを持っていた。それを拡充したということですが、アメリカ、イギリスについては、そういう仕組みがなかったものを今回新たに設置して対応したということでございます。
利用状況についてでありますけれども、ここは英、独、仏と日本を比較した。日本は金額ということで比較ベースが異なって恐縮ですけれども、こういう形になっています。日本も足元は減っていますけれども、それなりの水準が支給されている。ほかの比較の国々は、イギリスは制度をやめてしまっているということも含めて、減り方が足元は大きいということであります。
これは2020年ですけれども、GDPに対する支給額の割合ということで、日本はドイツ並みで、アメリカ、イギリスは新設したというところでありますけれども、そこは2%を上回っていたということであります。
最後に財源比較ということで、これは一般会計と雇用保険財源の割合をそれぞれお示ししたものということで、日本の場合は雇用保険財政のカバレッジが大きくなっているということが言えようかと思っています。
参考については時間の関係で割愛させていただきます。
少しオーバーして恐縮でございましたが、私からの報告は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
それでは、中井主席統括研究員の説明を踏まえまして、これより自由討議に移りたいと思っております。この後、取りまとめについての説明、議論もございますので、その点を御考慮いただきながら、御質問、御意見がございましたら「手を挙げる」ボタンをクリックし、そして、指名した後、お名前をおっしゃっていただければと思っております。
それでは、どなたからでも結構ですのでお願いできますでしょうか。
まだ分析が始まったところでありますので、今後の参考にでも皆さんの御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
玄田先生。
○玄田委員 玄田です。
御説明ありがとうございます。大変貴重な取組で、この研究会の意義と今後の役割について大変重要だと思いますので、ぜひ進めていっていただきたいと思うのですが、1点、なかなか申し上げにくいところもあるのですけれども、今回いろいろ研究して、先ほどあった論点で調べたところ、一つの可能性としては、少なくとも経済学的な分析からは、今回の雇調金の実施はやや過剰だったのではないかという可能性は少なからずあるのではないかと予想しているところなのです。
なぜそういうことを申し上げるかというと、私よりも2020年、21年度、雇用安定分科会の座長をされていた阿部さんなどのほうがもっとお感じな気もするのですが、実際に議事録などを御覧いただいても、雇調金は当初非常に重要な役割を果たしていながらも、労働市場の需給状況の改善に伴って、縮小に対してやはり取り組むべきだという意見を私も申し上げた記憶がありますし、阿部さんもおっしゃった記憶があるのですが、なかなか受け入れられないという状況があったと記憶しています。
その理由というのは、分科会のメンバー、特に使用者側の方々が大変深刻な状況にあることを切実に訴えていらっしゃいましたので、それが大変意味もあったということもありますが、より大きいのは、やはり政治的な決定ということが雇調金に対しては非常に大きくあったのではないかと思います。もっと具体的に申し上げると、やはりこの期間中大きな選挙も何度かありましたし、この選挙ということを考えると、やはり国民の支持ということを政党が考えるのは当然なので、その中で雇調金の実績とか実施の在り方というのが、少なくとも経済学の考え方だけで進んだわけではないということはどこかでちゃんと記録をしておかないと、大事な論点が抜け落ちてしまうと思っています。だから、この間、いろいろな雇調金の実施、需給の状況と同時に、どういう政治過程にあったのかということも踏まえていかないと、後々なぜこういう決定をしたのかが分からなくなってしまう。
さっき欧米の例もありましたけれども、日本の労働政策研究の中で、日本では経済学的研究は非常に優秀な研究がたくさんあるのですが、政治経済学的な論点からの政策の評価をするという研究は、やはりヨーロッパなどに比べると日本は必ずしも十分ではない。そうなったときに、特にこの雇調金の在り方というのが、経済学の分析と同時に、政治の決定の中で果たしてこれがよかったのかどうかということも踏まえていかないと、この評価はできないのではないかとこの2年間思っておりましたので、この研究会の意義自体は否定するものではありませんけれども、ぜひその辺りのことも、中井さんは十分過ぎるほどよく御理解されていると思いますが、研究会の中では何らかの形でそれも無視さされずに論点や解釈の中では考えていただきたいと切に思った次第です。
一言だけ申し上げたいと思いましたので、ぜひ期待をしておりますので、よろしくお願いいたします。
以上になります。
○樋口座長 ありがとうございました。
かつて内閣府でバブル/デフレ研という研究会が設けられて、その中でまさに政治の世界における動きとかといったものもインタビューを含めて書籍にまとめた。それが歴史的に残っていったというようなこともございます。どこまでできるかというのは私も分かりませんが、御意見は参考にしたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
よろしければ、また何かの機会に報告をしていただきたいと思います。
それでは、議論の整理案について説明を受けたいと思います。資料3と資料4についてお願いいたします。
○雇用政策課長 雇用政策課長でございます。
資料3を御覧いただければと思います。投影もされております。
1枚目ですけれども、検討の経緯と議論の整理ということですが、検討の経緯のほうの3ポツ目、2022年度雇用政策研究会でございますが、前回の研究会で指摘された課題について、その後の変化について整理するとともに、アフターコロナを見据えた今後の政策の具体的な方向性について検討するということで、本日も含めまして3回にわたって御議論いただいているところでございます。
右側の議論につきましては2ページ以降に詳細がございますので、説明は割愛いたします。
2ページでございますけれども、まずはこれまでコロナ前から構造的な課題と指摘されていたものがございます。課題1から課題5でございます。その中で、コロナでどのように変化があったのかなどを5つに整理したものということでございます。
課題1が労働供給制約とそれに伴う人手不足ということで、女性・高齢者の非労働力化が進行した。今後、一層の人手不足が懸念されるということ。これまでは大幅な賃金上昇が見られない中で、企業には処遇改善への取組の加速が求められているということ。また、雇用のミスマッチの顕在化が見られたということでございます。
課題2は働き方の多様化ということで、非正規雇用労働者を中心に多くの雇用が失われたということと、一方でフリーランスやプラットフォームワーカーといった新しい働き方にも注目が集まった。テレワーク等を活用した柔軟に働き方を変えて仕事を継続できる労働者とできない労働者といった新たな働き方の差も見られております。第2回の研究会で御議論いただきました、ワーク・エンゲージメントを高める雇用管理の改善というものも注目されているところでございます。
話題3でございますが、デジタル化の労働生産性の向上ということでございます。コロナ禍でデジタル化に向けた動きが加速しているということで、デジタル化への対応の差が労働生産性、賃金、そして、柔軟な働き方といった格差につながるおそれがあるということ。また、そのような中で人的資本投資の見直しが求められております。
課題4でございますけれども、豊かな人生を支える健康的な職業生活の実現ということで、コロナ禍が労働者のウェルビーイングにも影響を与えたという御指摘と、新しい働き方の下での家事、子育て、介護等を含む、生活時間と仕事の両立の難しさや家庭内での男女間の格差というものが改めて顕在化したというところでございます。
課題5でございますけれども、都市部と地方部における地域間格差ということで、コロナ禍で都市部への人口流入の緩和の動きはございましたけれども、地方部においては引き続き良質な雇用機会・人材が不足しているといった課題がございました。また、都市部ではテレワーク制度の整備を進めたわけでございますけれども、地方部ではデジタル化に向けた動きに遅れが見られるということでございます。
3ページ目でございますけれども、どういった方向性を目指すのかということですが、今回はコロナ禍の経験を踏まえて我が国の構造的な課題を克服するということで、これまでの内部労働市場の強みをさらに強化し、外部労働市場の機能も活用しながら、不測の事態やグローバル化などのさらなる進展ですとか、急速な技術進歩やデジタル化による産業構造の変化に柔軟に対応でき、様々な変化に対しても弾力を持つような持続可能な労働市場、「しなやかな労働市場」と名前をつけていまして、そういったものについて構築していくべきではないかということでございます。
IからIVまでで整理をしておりますけれども、1点目は、人口減少下ではワーク・エンゲージメントを高めることを通じた労働生産性の向上についても取り組んでいくことが重要だということで、企業内では労働者の多様性やワーク・エンゲージメントを意識し、労働者の意欲と能力を高めて引き出すといったこと。労働者の多様性やワークエンゲージメントを意識し、労働者の意欲と能力を高めて引き出すといったこと。あとは人材育成をしていくということを指摘しております。
2点目でございますけれども、企業への様々な人的資本蓄積の機会を活用する取組も含めて、企業内部の人材育成を強化するということでございます。そういった取組を通じたりして、外部労働市場に内部労働市場の情報が伝わることで、外部労働市場からの人材確保を通じて必要な人材確保と処遇改善を両立していくということでございます。
3点目ですけれども、ウェルビーイングの観点からライフステージや就業ニーズに応じた教育訓練や働き方の選択肢を拡充するということで、それを企業の人材確保や社会全体の労働供給の増加につなげるということでございます。
4点目は、上記を支えるために労働市場の基盤強化を行い、多様性に即したセーフティーネットを構築するといったIからIVの考え方を示しているところでございます。
続いて4ページでございますけれども、IからIVについてそれぞれ詳細を記載しております。
左側がIの部分で、労働者のワーク・エンゲージメントを高めて労働生産性と企業業績の向上につなげる仕組みということで、課題のところについては2ページ目でお示ししたものでございますので、説明は省略いたします。
その下の仕組みの考え方のところですけれども、労働者の高いワーク・エンゲージメントと企業の戦略的な人材育成が組み合わさって、労働生産性の向上や処遇の改善につながるといったことが望まれるということ。
その次が、企業と労働者はこれまで以上に密にコミュニケーションを取って、企業が求める人材と労働者が実現したいキャリアのすり合わせを行うことが必要だということでございます。
方向性としましては、1点目がワーク・エンゲージメントを規定する要因やそれを向上させる方策について整理が求められるということ。
2点目が、キャリア面談やセルフ・キャリアドック等を活用しながら、企業が求める人材と労働者が希望するキャリアのすり合わせを行うということ。
3点目が、企業内での能力・スキルの在り方とその評価について整理するということで、その際に労働者の取組を支援するためにキャリアコンサルタントを効果的に活用するということ。
4点目が、ワーク・エンゲージメントの向上の取組については管理職の負担の増加という指摘がありますので、そういったものを踏まえて組織的に対応していくことが重要だということ。
最後のところですけれども、女性に関わる企業の職場情報について、労働市場や資本市場での公開が進められてきたわけでございますけれども、こうした取組が幅広く取り組まれていくことが望まれるということでございます。
右側が2点目のところでございますけれども、多様なチャネルを活用した労働者のキャリア形成と人材育成の促進ということでございます。
仕組みの考え方のところですけれども、多様な経験を基に新しいアイデアを生み出せる人材の育成が必要だということで、企業は多様なチャネルを活用した人材育成を行う。労働者は長い職業生活を踏まえた自立的なキャリア形成を図っていくということが必要だということでございます。
2つ目が、政府は幅広い人材育成の機会を提供していくことが必要ということで、方向性といたしましては、1点目が企業における労働者の自立的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進するガイドラインの活用を進めていくということ。
2点目が、自立的キャリア形成を支援するために、キャリアコンサルタントの育成や民間人材ビジネス等の活用を図るということ。
3点目が、人への投資を抜本的に強化するということ。
4点目が、デジタル分野の公的職業訓練を充実し、中小企業におけるデジタル人材の育成促進に力を入れていくということ。
最後のところですけれども、職業選択の幅を広げたり、多様な人材の育成を促進するという観点から、在籍型出向や副業・兼業を活用するということでございます。
5ページ目でございますけれども、左側、3つ目のウェルビーイングへの取組が人材確保と労働供給の増加につながるということで、仕組みの考え方ですけれども、コロナ禍での経験を踏まえると、労働者のウェルビーイングの持続的な向上を図る仕組みづくりが重要だということで、ウェルビーイングの取組が企業の人材確保にも資するということと、労働者にとって魅力的な職場を提供するということが重要だということでございます。
方向性としては、新しい働き方について、先進的な企業の取組の横展開やガイドラインの周知といったことが必要だということ。
2点目が、非労働力化した女性や高齢者に対してはハローワークを通じて伴走型のアウトリーチ支援を行うということ。
3点目が、再就職した方々が子育てしながら働くことができる両立環境の整備といったものですとか、再就職後のキャリア形成で活躍できる環境を整えるということと、高齢者を含め、労働者の健康を重視した取組が必要だということでございます。
最後のところですけれども、企業規模や地域にかかわらず、使用者が適切に労務管理を行い、労働者が安心して働くことができるような支援が必要だということでございます。
右側、4点目ですけれども、労働市場の基盤強化と多様性に即したセーフティーネットの構築でございます。
仕組みの考え方ですけれども、中長期的な産業構造の変化に柔軟に対応できるよう、マーケット調整機能の向上を図ったということと、フリーランスなどを含め、どのような働き方であっても安心して働けるセーフティーネットの構築が望まれる。こういった取組を効果的に最適な資源配分の実現につなげていくために客観的な効果検証を行っていく必要があるということでございます。
方向性としましては、ハローワークのデジタル化や民間人材ビジネスとの連携を進めるということで、再就職支援をさらに強化するということと、労働市場の見える化を推進し、マッチング機能を向上していくといったことで、そうした情報を活用したキャリアコンサルティングが行われることで、労働者がキャリア形成のために必要な追加的な経験・スキルを把握できる環境整備が必要だということでございます。
3点目が、求職者支援制度等の支援を強化するということと、フリーランスなどのセーフティーネットの整備についても、労働者性について十分に注意しながら、雇用に中立的な在り方から総合的に検討を進めていくことが必要だということでございます。
最後のところですけれども、コロナ禍で講じた雇用調整助成金の特例措置等の政策の効果検証を引き続き進めていくとともに、人的投資に関する情報の開示や男女間賃金格差の開示など、政策の効果検証に資するような情報の整理が進むことが望ましいということでございます。
本体のほうは資料4で、今御説明いたしましたことをもう少し詳しくブレークダウンして書いて整理をさせていただいているところでございます。
なお、本体の最後に「第4章 まとめ」というところがございまして、こちらについては本日の御議論を踏まえて最終的に取りまとめて、先生方に御相談させていただければと考えているところでございます。
以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、資料3の概要版あるいは資料4、先ほど説明はございませんでしたが、皆さん御覧いただいているのかもと思いますので、それ及び資料5としまして、これまで研究会に提出のあったデータ等の参考資料もあります。これらを踏まえまして、委員の皆様から御意見をいただければと思っています。
「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきましてお願いしたいと思いますが、まず最初に鶴先生、どうぞ。
○鶴委員 鶴でございます。
どうも御指名ありがとうございます。
まず、事務局の皆様、また、座長におかれても、非常に短期間に、議論のまとめという御説明でしたけれども、このような報告書をまとめていただいたということは非常にありがたく思います。
特にワーク・エンゲージメントとかウェルビーイングというものに非常に焦点を当て、着目して議論を展開していただいたことは、私も非常に重要な点だと思っておりますので、ありがたく思っております。
また、委員のいろいろな最新の研究も含めて、そういうものを引用しながら、かなり丁寧にこの報告レポートを作っていただいたということについても、非常に評価をしたいと思います。
私は非常に細かくどういう根拠でどういうような研究に基づいてこういう主張をしているのかということで、コメントなどをすごく丁寧にお願いしますと。また、いろいろな極の使い方もきちんと定義を明確にしてくださいということで、その部分をかなり事務局に申し上げて御対応していただきました。
それでも少し残ってしまった論点について、テレワークについて2点。それから、最後のキャリアの自立性とか、多様な人事戦略みたいなところについてコメントを申し上げたいのです。
実は6ページに、テレワークの際に円滑な業務ができず、必ずしも労働生産性の恒常には至っていませんよと課題のことをお書きになっているのです。もちろん森川先生の御研究などが非常に引用されるのですけれども、一方、それ以外のものを見ますと、例えば早稲田の大湾先生とか黒田先生らがやられた大企業の製造業4社を使った、彼らは相当緻密な分析なのですけれども、確かに在宅勤務をすると生産は低下する部分があるのですが、かなりのところ、自宅の仕事の環境とか、情報機器は使えないとか、容易にアクセスできないとか、どうもインフラ整備によるところが非常に大きいということで、森川先生の御研究なども時間がたつと生産性低下効果が弱くなっているということも御指摘されておりまして、テレワークをやると必ず生産性は下がるのだという見方は必ずしも正しくないと考えています。
コロナ前の状況だとブルームらの精密な分析もあるのですけれども、労働時間が長くなる部分でかさ上げされているところはあるのですけれども、生産性が上がるよという指摘は幾つかそういう研究があったと思うのです。なので、テレワークをしたら必ず労働生産性が下がるというような書き方は問題かなと感じています。
私、RIETIで昨年11月にあった調査をまとめたものを6月10日に公表しまして、例えば2021年10月時点で2年前と比べ、コロナ前と比べて、職場と比較して効率性はどのぐらい上がりましたかと。正社員で在宅勤務をやった1,000人ぐらいの人たちの中で、効率性が上がった人は21%、変わらないは64%、下がったのが15%。そんな感じなのです。大部分が下がっているという形ではない。多分、在宅勤務をやってみてうまくいかないと感じている人もやはり一部はいるのです。これは全体の15%ぐらいそういう人がいまして、そういう人たちは半分ぐらい効率性も下がっているよということも解答されています。なので、結構まだら模様があるということと平均的な姿をしっかり把握することが大事だというのが一点です。
それから、7ページにテレワークをやるとメンタルヘルス悪化しますよねということを書いてしまっているのですけれども、先ほど御紹介した黒田先生や大湾先生の分析だと、テレワークをやってメンタルヘルスとは逆に在宅勤務の人は良好になりますよというようなお話をされていますし、我々のやった分析では在宅勤務者の6.7%がメンタルヘルスが悪くなった。それぐらいの人が悪くなったと答えているのですけれども、それが全体的な姿とは必ずしも言えないなという感じがしまして、実は日経の上場企業700社ぐらいをスマートワーク経営調査に使った私の研究なども、在宅勤務を利用すればするほど、コロナ前もコロナ後も精神的な健康は高まるという正の相関があるという結果も出ています。仕事のやりがいなどもそうなのです。結構ウェルビーイングを高める効果があるということ、むしろそういう結果のほうが出ているのではないのかなというイメージを私は持っています。
長くなって恐縮なのですけれども、最後、10ページ、13ページに労働者にとって自立的なキャリアの形成が必要だ、それから、企業は多様な人材戦略ということで大事だよということをお書きになっています。ここは私も全く同感しているところで、この文章自体にこれを直してくれ、あれを直してくれというところはもちろんないのですけれども、自立的なキャリア形成はがちがちのメンバーシップ型の人事で本当にできるのですかと。基本的にすごく難しいなというのが私のイメージで、やはり社内、社外公募をきちんとやるような、いわゆるちゃんと雇用契約や職務を明記するようなジョブ型にならないとなかなか難しいのではないのかなと。
実は今、ジョブ型と呼ばれているものは、往々にして単にジョブディスクリプションをつくればいいのではないか、そういう形で明確化すればいいのではないかといういわば「なんちゃってジョブ型」というのが物すごく氾濫してきて、マスコミもいろいろな人事採用の方々も企業も、まずここから始めるしかしようがないのではないかということを言っているわけです。私は必ずしもそれでいいのかなと非常に思いますし、ただ、お書きになっている社内副業とか横断的なプロジェクトをやることによって、まずは社内公募というところに行かなくても、そういうところを始めるというのは一つのやり方なのかなと思います。
御説明の中で、9ページに内部労働市場の強みと外部労働市場の機能をうまく生かしてと。そういうものを両方取ってうまくつなげてやれば、メンバーシップは今のままやってもうまくいくのではないかという何となく「お花畑的な」御指摘で、そのように書くと、考え方が違う委員の中でもうまくまとめられるのではないかという御趣旨かもしれないのですけれども、必ずしもそれで本当にうまくいくのかなと思っています。だから、これまでのシステムをそのまま温存して本当にできるのですかという意識がないとやはり言っているだけに終わってしまうなというのが感想です。
長くなりましたけれども、以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
御指摘の点、少し事務局でも考慮してということですが、いろいろなテレワークの影響というのもあるかと思うのですが、影響はいろいろあるというだけではなくて、どうやれば逆にいい方向にこのテレワークというものを使えるのだろうかとかという話も今の鶴先生の話で書き込めればと思いますが、そういう方向でいかがでしょうか。
○鶴委員 結構です。
内閣府の調査だと、男性も既婚男性と独身男性とで全然違うというアンケート調査の結果も出ているのです。同じような環境でもうまくいく人、そうではない人と多様性があるので、そういうところを細かく見ながらどういうふうにやるのがいいのかということも考えていくというきめ細かな対応がやはり必要ではないのかなと感じています。
○樋口座長 ありがとうございました。
今までの経験を私もそれほど知っているわけではないのですが、雇用政策研究会あるいは雇用政策の中で、こういうウェルビーイングであるとか、あるいはメンタル的な影響であるとか、人事制度を議論したというのはあまりなかったような気がして、その点、今回はそれを前面に押し出しているというような点で、まだ十分には至っていない点がありますので、課題は課題としてまた次のときに持ち越して、それまでに議論していこうと思います。
阿部先生、手を挙げていらっしゃるのですが、今のテレワークの関連でどなたかありますでしょうか。
阿部先生、テレワークの関係の御意見ですか。ではない。
どなたかありますか。
大竹さん、どうぞ。
○大竹委員 大竹です。
テレワークについては2点ありまして、一つは、テレワークの生産性があまり伸びなかった例として、鶴先生もおっしゃったとおり、環境整備が当初できていなかったというのは大きいと思います。
もう一つは、テレワークが一番使われた時期というのは第1回目の緊急事態宣言のときで、臨時休校の時期と重なっていますので、そうすると、子供が家にいて生産性が高くならないという問題がそのときは深刻だったと思います。ですから、その後は臨時休校の問題が少なくなったのと、時期によっては保育所の閉院が特に2022年の第6波になってからは深刻になって、そういう時期はテレワークの生産性が下がるのかなと思いますので、その点は考慮したほうがいいかなと思います。
それから、もう一点は、業務によってはテレワークの生産性が下がるというところの研究が幾つか出ていて、例えばアイデアを考えるというときにはテレワークはあまり向かないとかと、アイデアについて議論するというときというのは研究がありますし、それから、テレワークによってピア効果が減るのだという研究もありますから、よい面とあまり望ましくない面というのがやはりあって、それをうまく組み合わせていくことが重要かなと思います。
別の観点で意見はありますけれども、テレワークについては以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにテレワークについてございますでしょうか。
山本先生、テレワークによる促進というのは、働き方の格差の状態に云々という御議論がこの間もちょっとありましたが、その点はここで十分に書かれていると考えてよろしいですか。
○山本委員 文章のほうに取り込んでいただいていると思いますので、私からは特にはございません。ありがとうございます。
○樋口座長 佐藤先生、テレワークだけではなくて人事管理も含めてどうでしょうか。
○佐藤委員 まず、テレワークは、皆さんが言われたように、やはり自宅の環境の部分がすごく大きくて、いろいろな調査を見ても、変な話だけれども、仕事する机がないとか、あとはWi-Fi環境もマンションなどは夜はつながらなくなるとか悪くなるとか、環境がすごく大きくて、環境を幾つかコントロールすると生産性が落ちる人はすごく減るので、僕はテレワーク自体ではなく環境整備がすごく大きいかなと思います。そういう意味では、早めに進んでいたところがうまくいっているというのは、仕組みだけではなくて環境整備をかなりちゃんとやってきたところが進んでいるということなのかなと思います。それが一つです。
あと、自立的なキャリア生成は、鶴さんが言われるように、長い職業キャリアについて社員に考えてくださいというようなことを言いながら、他方で企業が社員を企業内でローテーションして育成するなんて書いてあるのです。本来それは両立しないのです。なので、本当に社員に自分のキャリアを考えてやりなさいと言いながら、企業内では会社が人事権を持ってローテーションで育成しますというのはちょっと難しくて、現状で言うと、唯一社員がキャリアを選ぶのは転職なのです。だから、現状を言うと、今、日本では自立的なキャリア形成をやるということは転職というときしか選べないのです。なので、逆を言えば、社内で駄目だったら転職しなさいという話なのです。だから、その辺をどうするかなというのはあります。
感想です。
○樋口座長 ありがとうございます。
それでは、阿部先生、どうぞ。
○阿部委員 私、そんなに大層なことを言うつもりはないのですが、報告書を読んで1点だけ、新しい働き方という言葉の意味するところが分からないところがあったので、質問させていただきたいと思っています。
報告書の4ページ目なのですけれども、あるいは資料3のほうでは2枚目の課題2のところで、新しい働き方というのは、その上にフリーランスやプラットフォームワーカーといった新しい働き方となっているのです。ところが、その後、一番いいのは2ページ目の課題4ですけれども、「テレワークなどの新しい働き方」と書いてあるのです。新しい働き方がフリーランスやプラットフォームワーカーといった新しい働き方と、テレワークなどを活用した新しい働き方というのは指し示していることが全然違うのではないかと思うのです。
そのこと自体はどうでもいいことかもしれませんが、その後、15ページ目でテレワーク等を活用した新しい働き方というのが、多分15ページ目ではその後政策の方向性として子育て介護との生活時間と仕事の両立云々と書いてあって、新しい働き方で「テレワーク等の」と書いてあるので、これはプラットフォームワーカーやフリーランスも含むものなのかどうかというのはどうなのだろうな、よく分からないなというところがあるということです。ここで言っていることはプラットフォームワーカーとかフリーランスまでは入れていない、考えていないと思うのですけれども、そこら辺はどうなのでしょうかというのが分からなかったということです。
その一方で、テレワーク等の働き方を柔軟な働き方とも言っている。そういう使い分けはいいのですけれども、何が言いたいかというと、テレワーク等の働き方はむしろ柔軟な働き方というものに統一されたほうがよくて、新しい働き方というのはプラットフォームあるいはフリーランスというのを指し示す言葉としたほうが後々分かりやすいのではないかと思った次第です。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
今の点で何か関連することが皆さんでございましたら。
大竹さんはこれとの関連ではない。
では、事務局の考え方を。
○雇用政策課長 雇用政策課長でございます。
今、先生から御指摘がありました新しい働き方の言葉の使い方でございます。大変恐縮ですけれども、4ページと7ページ、また、15ページでいろいろ違う意味で捉えられているのではないかという御指摘でございました。そこはまた整理をさせていただいて、柔軟な働き方という形でテレワークを定義するという方向で修正をさせていただこうと思っておりますが、中身については先生の御指摘のとおりの解釈と思っております。
○樋口座長 では、そのようにして、厳格に書くようにいたします。
それでは、大竹さん、どうでしょうか。
○大竹委員 大竹です。ありがとうございます。
この概要、本文とも今までの議論を非常にうまくまとめていただいていると思っております。
ただ、2点申し上げたいと思います。
一つは、概要の4ページと5ページ、それから、本文の13ページと15ページにガイドラインを活用するとか周知という言葉が出ていて、こういうガイドラインを使った政策というのは行動経済学的にも、あるいはソフトローと言われている分野で一つの政策手段だと思います。ただ、文章だけ読んでもこのガイドラインが既にあるものなのかどうかということと誰が作っているのかということが不明確なので、そこをどこか明確にしたほうがいいかなと思いました。
コロナ対策でもガイドラインは実際によく使われていて、感染対策の業種別ガイドラインというものを業界団体が作っていきました。ただ、その改訂と周知が非常に遅れて、意味のない対策がずっとなされ続けたというところも問題点としてありますので、どういうふうに進めていくのかということは、論点としてはこのガイドラインを使った政策というのは考えていく必要があるかなと思いました。
第2点はEBPM、先ほどの雇用調整助成金のことなどについても、本文の19ページ、それから、概要の5ページの辺りに書いてあるのですけれども、政府の中でやっていくのも重要なのですが、学術的にもこういう分野の研究を進めていく、あるいは先ほど玄田さんがおっしゃいましたけれども、政治経済学的なアプローチというのも重要なので、そういったことをどこかに盛り込めないかと思いました。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
今のところ、JILでEBPMにのっとって雇調金のところについてということでやっているのですが、そこで行政記録を整理し直すというようなことがどうしても必要で、それができましたら、JILもそうですが、外部の先生方も情報公開というような形でやっていければ、そこで皆さんが利用して研究ができるのかなと思っております。この点は事務局とも相談しなければいけない、あるいは関連部署とも相談しなければいけないことなのですが、そういうことが必要なのだろうと思います。
今回のこの取りまとめというのはこれで終わりということではなくて、今後に続く点、幾つか議論しなければならない課題が残っておりますので、今後、また皆さんとともに提供しながら、次の機に備えてというようなところでやっていこうと思っておりますが、今の点はよろしいですか。誰に相談したらいいのか分からないのですけれども、行政だけではなくて、研究者もこういうことをやっていく必要があるというようなことを書き込んでいただければということだと思います。
ほかにどうでしょうか。
今の研究者のということで出てきておりますのが、これは私が行政のほうにお願いしているのですが、今回いろいろなところで企業の情報開示というような形で、男女間の賃金格差の問題や女性の活躍の問題といったことについて取り組むというようなことになっているかと思いますが、まさにそれを今度は研究者がどういう形で利用できるのか。要はデータとして活用できるというような状況に持っていくまでにはまだ工夫が必要なのかなと思っておりまして、そういったものも今後進めていくというようなことを記載させていただいています。
それについても御意見があれば皆さんからいただければと思いますが、それにかかわらず、どなたかいかがでしょうか。どの点でも結構です。
荒木先生、法的な視点からいかがでしょうか。
○荒木委員 ありがとうございます。
ここの文章をこう変えたらいいという具体的な提案はないのですけれども、今の議論をお聞きしておりまして幾つか、情報開示の問題、EBPMのために研究者の活用という話がありますけれども、もともと市場が選択をするための情報というものを開示するといった手法を政策実現のために法が規制するのではなくて、市場の選択を活用した政策目的の達成ということがメインであったと思いますので、最後のところは、そういったことは当然なので特に触れていないのかもしれませんけれども、情報開示についてはその点についても当然現象的にはそういう目的なのだということがあってもいいかと思いました。
それから、阿部先生からの新しい働き方について2通りの言葉で使われているというのはおっしゃるとおりだと思いました。法的に言い換えますと、雇用に対しては雇用政策が行くのだけれども、非雇用である、あるいは雇用類似のフリーランスとかプラットフォームワーカー、そういうふうに雇用と評価されない人のための政策の雇用政策の対象外となってしまった。これが今回のコロナでは非常に顕在化して、よりセーフティーネットが必要なのはそういう人たちではないかということでしたので、今回の提言の中でも、雇用と非雇用の間にいるグレーゾーンの雇用類似の方々についての政策というものも雇用政策として視野を広げて捉えていく必要があるということが先ほどのコロナ禍の対応のところでも示唆されたと思いますので、そういったことを意識しながら、政策の対象を雇用だけに限らない取組が望まれているということが伝わるような形で書いてあると非常によろしいかと思いました。
ついでにもう一点、鶴先生の御指摘のように、内部労働市場と外部労働市場を上手に接合すると書いてあると大変耳ざわりがよいのですけれども、果たしてそれがうまくいくのかというのは大変重要な指摘だと思います。今回の報告書は、内部労働市場のいいところはあるので、この面を全部捨て去るのではなくて、でも、外部市場のいいところをうまく活用できないかという観点から両方接合するというような議論になっていると思うのですけれども、タイトルとして労働市場の基盤強化という言葉も出てきます。この労働仕様というのは外部市場のことなのか、内部市場のことなのかと思って読んでいくと、あまりはっきりしないというところがあると思います。あえてそこは玉虫色にしてあるのかもしれませんけれども、今後、ジョブ型がどんどん進んでいくときには、内部市場の在り方も相当変わる。変わらなければならない必要性があるかと思いますけれども、それを内部市場で受け止めていくのかということについてより積極的な提言ができれば望ましいとは思いますが、ただ、これは大変難しい問題ですので、今回の報告書でどこまで書けるかというのは、私も具体的にこうしたほうがいいというところまでの提案はできていない状況ですので、単なる感想にとどまります。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
外部市場、内部市場という話で、特に内部の中でも転勤あるいは人事制度的な異動というところにどれだけ個人の意見といったものを反映させることができるのかというようなことも関連してくるようなテーマのように思います。
佐藤先生、いかがでしょうか。
○佐藤委員 しなやかな労働市場というのは今回初めてですか。見ると、「弾力的で柔軟な」と書いてある。でも、弾力もflexibilityと訳すのだよね。弾力的と柔軟は実は同じこと言っていて、だから、これは柔軟な労働市場ではまずいのかなという気もしていて、しなやかな労働市場というほうがより伝わりやすいのかどうか僕は分からなくて、そこはなぜしなやかな労働市場と言うようにしたのか。説明を見ると「柔軟で弾力な」という書き方なので、柔軟な労働市場でもいいのではないかというような気もしないではないということ。
あと、荒木先生が言われたように、労働市場と言うときに内部労働市場と外部労働市場を多分合わせて言っているみたいね。だから、外部も内部も両方合わせてしなやかな労働市場というようなことなので、そうすると、荒木さんも言われたようにそういうふうな連携はすごく大事なので、実際にどうするとうまくできるのかはよく分からないです。要するに、しなやかな労働市場と言う必要があるのかどうか。そのほうが中身が締まるのかというと、余計に分からなくなってしまうのかなという気もしないでもないです。あと、内部と外部を両方含むとすれば、連携のところ、多分両方のつながりが「柔軟な」ということなのだと思います。
○樋口座長 ありがとうございます。
しなやかというのは私も見てええっと思ったのですが、事務局も何かこの言葉に込めた意味合いがあるのではないかと。単なる弾力的なということではなくて、多分持続可能性とかといったところまで含めての話かなと。しなやかというと、私が思い出すのはフランスの国旗の中にある何度も大きな問題に直面しながらしなやかに持続していくというようなことで書いたのかなと思いますが、事務局からその意味合いを説明していただけますか。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございます。事務局でございます。
しなやかな労働市場ということで、今回、取り上げられやすいようなワーディングということでご提案させていただきました。御指摘いただいたように「柔軟な」というところもひとつありますけれども、「弾力な」というところは、今回、不確実性の中であっても「壊れにくい」という意味で「弾力」という言葉を使っております。なので、まさに樋口座長もおっしゃられましたけれども、「持続可能な」と「壊れにくい」という意味を込めて「しなやかに」という言葉を使用させていただいております。
○樋口座長 逆に皆様からこういうワードがいいというようなものがあったら、あるいは従来の「弾力的な」とか「柔軟な」のほうがいいというようなことがあったら、また御指摘いただければと思います。
鶴さん、どうぞ。
○鶴委員 ありがとうございます。
私、前回出ていないので完全には把握していないのですけれども、山本先生などもレジリアンスということも非常におっしゃっていて、コロナの中で先ほどのショックはあって、その中で樋口先生もおっしゃった持続可能とか壊れにくいとかがあって、そういうものをまとめる言葉としてレジリエンスというのがあり、コロナショックに対してどれぐらいそういう耐性を持っているのかを示す用語です。あまり、がちがちに作られていると折れてしまうわけですよね。柔軟と言うとただ柔らかいだけでまた元に戻っていくというか、そこの部分が必ずしもうまく表せないので、柔軟性とレジリエンスというものを持ち合わせたものがしなやかさというふうに2つを含んでいるのだよと言うと、先ほど事務局、また、樋口先生がおっしゃったようなものもうまく入って分かりやすくなるのではないかなと思いましたけれども、どうでしょうか。
○樋口座長 ありがとうございます。
それでは、山本先生。
○山本委員 私もこの資料を見たときに事務局にこれは英訳すると何になるのですかとお尋ねして、これはresilientだということで、柔軟と弾力と持続可能を3つ合わせ持っているという回答をいただいて、それで理解はできたのですけれども、だから、サステーナブルとフレキシブルとレジリエントという3つが合わさったものを表現して「しなやかな」とされていると思います。
それで、ウェルビーイングについてこの雇用政策研究会でもたしか少し前に報告書で取り上げて、コロナを経てやはりウェルビーイングが大事だと。それが中長期的も大事だということを盛り込んだ今回の報告書の中で、しなやかな労働市場というのは個人的には悪くはないのかなと思うのですけれども、ただ、やはり英語にしたらどうなるのだろうとか、これまでよく言われているものとの対応はどうなるのか、どこが一緒でどこが違うのだというところはもう少し整理しておいたほうがいいのかなと思っています。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
ウェルビーイングというのは前回の雇用政策研究会の報告書で我々が使った言葉でして、
そうしたら、逆に世の中のほうでみんな一般に使うようになってきたというようなこともあって、もう一回「しなやか」に込められている意味合いをちゃんと説明する必要がやはりあるだろうと思いますので、事務局、そのようにお願いしたいと思います。
神吉先生、いかがでしょうか。
○神吉委員 ありがとうございます。
私もこのしなやかな労働所長というものが具体的にはどういうものを指すのかということについて事務局にお尋ねして、それに関して今御議論あったようなことを伺って、それは従来の柔軟性とは違うのだなという感触は持ちました。
これまでも柔軟性という言葉が使われてきたときには、例えば急な需給の変化があったときに、特に非正規労働を雇用の調整弁として需給を調整するということ。これは伝統的なまさに柔軟性の発揮だったのではないかなと思います。かつ、コロナ禍でもそれが行われたということなので、単に柔軟性を発揮するということであればこれまでと変わらない。これから志向されているしなやかな労働市場というのは、そうした二極化みたいなものを前提とするような柔軟性の発揮が好ましくないという価値判断を含んでいるのかなと思いました。
ですので、量的に需給に対応していくということでは尽きずに、質的なものを見ていく。例えば個別の労働者のワーク・エンゲージメントというものを重視しつつ、なおかつ格差の拡大を生じさせるような形ではなく、かつ潜在的に労働市場全体の生産性を損なわないようにするような調整の仕方が望ましいということが持続可能なしなやかな労働市場ということなのかなと思いました。ただ、それが不確実性への対応や弾力性という言葉で表現されていることが少し分かりにくいというのは御指摘のとおりかと考えているところです。
若干気になったのですけれども、こうしたしなやかな労働市場の構築を目指すとして、冒頭検討されていたような雇調金制度の活用、拡大というのは、しなやかな労働市場の構築に対してプラスと評価されるべきなのかどうなのかという姿勢はどうなのでしょうか。雇調金制度はかつては衰退産業の延命につながるという批判もあったところで、もしかすると、今はしなやかではないので緊急対応としてやらざるを得なかったということで、実際にはしなやかな労働市場が実現すれば縮小されるべきものということになるのか、どうなのかということについて伺えればと思いました。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
用語の「しなやかな」は、確かに柔軟と言うと割と短期的な視点が強いのかなということで、長期的にまさにレジリエンス、波を経験しながら生き残っていく、あるいは成長していくというような意味合いかなと思いますので、用語はもう一度事務局と検討します。
あと、皆様のほうからこういう用語がいいのではないかというようなことがあったら教えていただければと思いますので、よろしくお願いします。
佐藤先生、何か。
○佐藤委員 今のことなのですけれども、山本さんが言われたようにレジデンスと言ってもらえたほうが分かりやすい。ただ、これは検索したら今回の報告書にはどこにも出てこないのだよね。だから、レジリエンスというのは回復力、困難に立ち向かうとかということなので、あそこは弾力的な柔軟性みたいなことしか書かれていないので、あそこの説明のところにレジリエンスというのを入れてもらったほうが柔軟性との違いが分かって理解しやすくなるかなと思いました。
あと、レジリエンスはもともとは個人に使うのです。でも、労働市場のとか企業のというと、もともと個人に使われたものの意味をそれに使っているのだと思うので、今回労働市場のということなので、それのレジリエンスとは何なのかということを説明していただくといいかなと思いました。
○樋口座長 ありがとうございます。
では、それは説明をということで、あと、神吉先生から雇調金のお話がありました。雇金とまさにしなやかな労働市場はどう関係しているのだというようなことだったと思いますが、雇用政策研究会も過去のことを遡ると、まさに雇調金が延命措置になっているのではないかということで、かつての雇調金というのは業種別にして、それをしてとというような形でやってきて、それはやはりおかしいのではないか、個別企業について見るべきではないかというようなことと、そのときに廃止論が雇調金についてあったのですが、皆さんの御意見で、そのときには緊急事態なんていうのは忘れて、好景気なときの議論だったので、やはり残すことがある意味では持続可能性というような、ないと企業がそこで倒産してしまう、あるいは労働者が解雇されてしまうというようなことの効果分析というようなことで議論してきたところがあって、ある意味ではしなやかな労働市場に対して補助機能を持っているのかなというようなことで残してきた。あるいはそれを活用するということでしたが、今回のやり方がどうかというようなことについてはまさにこれから検証していくというようなことになるかと思います。
黒澤先生、いかがでしょうか。
○黒澤委員 ありがとうございます。
雇調金のことでもないのですけれども、今般のこの報告書はワーク・エンゲージメントやウェルビーイングといった考え方を前面的に出されたということで、本当にすばらしいと思いました。
私のほうから2点ほど、1点目が12ページの辺りの女性の活躍のところで、ESG投資が拡大しているということを付け加えていただいたのですけれども、この部分、実は単に労働市場以外に注目が高まっているということを超えて、例えば女性の活躍がなかなか進んでいない、ダイバーシティーが進んでいない企業というのは資本市場において資金が得られなくなっていくような状況にグローバルでここ数年どんどんなっている。なので、ここは実はすごく大事で、これは私の主観ですけれども、今まで内部労働市場は市場の圧力というものからかなりシールドされていたと思うのですけれども、それで直接的な形で影響を与えるような形で浸透してきたということも言えるのではないかということが考えられるので、ここはできればもう少し付け加えていただけると大変うれしいなと思いました。
もう一点は、先ほどからの先生方の議論でいろいろな内部労働市場と外部労働市場ということでお話がありましたけれども、まさにその部分はもう少し突っ込んでいけないかなと思いながらも、そこは難しいのでしようがないと思うのですが、しかしながら、やはり一番外部であがいている方々というのは非正規雇用者なわけです。その非正規雇用者の方々への支援ということでマッチング機能を高めるといったことが書かれてはいるのですが、もう一歩踏み込んだ形での記述というのはあの層に対してはやってもいいのかなと感じました。その理由というのは、もちろん皆さん既に御存じだとは思うのですけれども、非正規雇用の方々においては、正社員の方々と比べると、まず第一にどういうスキルを身につければいいのか分からない。それで、労働市場において彼らのスキルというのは非常に過小評価される傾向にある。また、資金制約に直面している度合いが一番強いわけですので、そういう意味においては、彼ら、彼女らに対する支援としてのプラスアルファ的なところで、やはり資金制約の支援ということ、それから、スキルの見える化の強化というようなものについてもう少し付け加えてもいいのかなと感じました。
以上です。ありがとうございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
今おっしゃった資金制約というのは所得制約みたいなもの、個人での話ということで。
○黒澤委員 そうです。自分のコストで自分のスキルに対する投資をしなければいけないような状況にある方々に対する支援ということです。
○樋口座長 ありがとうございます。
堀さん、いかがでしょうか。
○堀委員 どうもありがとうございます。
今回、事務局におかれましては、短期間にすばらしくまとめていただきまして、どうもありがとうございます。
あと、先ほど議論のあった「しなやかな」という言葉なのですけれども、いろいろと概念がまだしっかりしていないというような御指摘もありましたが、先ほど佐藤先生がおっしゃったような説明を付け加えていただいて使っていただけると、今、不安定な世の中の中ですごく期待が持てるキーワードなのではないかなと思いまして、とてもいいキーワードではないかと私は思いました。
それから、1点お願いなのですけれども、先ほど荒木先生から御指摘があった資料3の一番最後の情報開示のところなのですけれども、これだけを読むとEBPMのために情報開示をするみたいな感じに読めてしまうような懸念を持っておりまして、多分このEBPM自体がEBPMのためにあるわけではなくて、EBPMを使ってよりよい労働政策をつくっていこうというのがこの雇用政策研究会の趣旨なのではないかと考えておりますので、最後の部分は少し工夫していただけると誤解がないのではないかと思います。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。ここはぜひそういう形で進めさせていただきたいと思います。
情報開示のところは、最近いろいろなところで情報開示というのが進んでいるのですが、それぞれは完結しているのかもしれませんが、それを全体でまとめるものが実はないという感じで、例えば次世代法や女性活躍法であるとか、あるいは最近議論しているのは有価証券法でというようなことで、それぞれ個別にやれば、あとは研究者がまとめるということかもしれませんが、そこの基盤をまとめることによって、EBPMだけではなくて、その元になるまさに企業の選択というようなところにつながっていくような役割を担うのかなということです。ここはちょっと加筆してもらうことにします。
鶴さん。
○鶴委員 どうもありがとうございます。
2点ありまして、最後のまとめのところはこれからやられるということだと思うのです。雇調金は政治的な影響を受けたというようなお話もさっきあったわけですけれども、欧米諸国と比べて、欧米諸国のほうがどんどんポストコロナに向けて経済も非常にダイナミックに変化してきている。政策も大きくかじを切って変化をしてきている。日本を見ると、さっきの雇調金だけではなくて、ありとあらゆる政策というか、経済の状況を見ても、政策の状況を見ても、時が止まっているのではないのかなというような印象を受けるのです。それで、ポストコロナに向けて、もちろん感染症の問題というのはありますし、そこは軽視するべきではないのですけれども、やはりそれに向けてどういうふうにしていくのかという決意というようなことを、さっきの雇調金の話がひとつあるのだと思うのですけれども、そういうものをしっかりやっておかないと、本当に日本だけ全てが止まったまま、このままずるずるというような問題があるのではないのかなというのがひとつあります。
それから、もう一つ、情報開示、人的資本の話なのですけれども、私が懸念しているのは、例えば労働経済学の専門の方々がどこまでこういう中にちゃんと入って議論しているのか、賃金格差の話でもできるだけいろいろな要因をコントロールした上でどこまでそういうものが残るのかとか、そういうことをちゃんと議論しなくてはいけないのですけれども、そもそも先ほど投資家という視点もあったのですけれども、こういうことがパフォーマンスに直接影響を与えるからこういうことを開始しなくてはいけないのかという話と、先ほど黒澤先生がおっしゃったように、今は社会的課題について非常に取り組むところがまさに消費者や投資家に評価される。だから、そういうSDGs的なところを開示しなくてはいけない。私は両面あるのだと思うのです。そういう議論がちゃんとされないまま、どういう指標が大事なのかとかなるのかということも十分議論されないまま、恣意的に海外と同じ指標を開示しなくてはいけないのかどうかということについても、私は必ずしも自明だとはなかなか思えないなと。なかなかきちんとした議論がされないまま、いろいろなものが決まってしまって前に進んでしまっているなという印象を非常に受けますので、どうしても会計分野の専門の方々が主導しているなという印象、私の印象論でしかないのですけれども、せっかくそういう記述をしていくのであれば、何かそういう問題意識というのも必要ではないのかなと。これは今日ほかの委員の方々の話を聞いて思いました。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
情報開示については、各審議会でやっていたり、研究会でやっていたりというようなところもありますので、もう一度なぜこういったものが必要なのかというようなところについて議論を整理してもらうと同時に、鶴さんのような本当に必要なのか、あるいはちゃんと検討した上でやっているのかというようなことですよね。そこのところについてどういうふうに加筆したらいいかと思いますので、検討させていただければと思います。
あと、コロナだけではなくて次のステージといいますか、経済として、例えばポストコロナと言われているのかもしれませんが、そういう局面に入ってきているのではないかいうような御指摘があって、日本はそれが遅いというようなこともあったかと思います。
先ほど中井さんの説明の最後のところで、国際比較といいますか、海外における雇用維持政策についての説明が入っていました。その中を見ますと、金額的にはほかの国も日本以上に出しているところが多い。ただ、それはロックダウンという日本とは違ったやり方でやったということもあるのかもしれませんが、期間的にはかなり終わっている。イギリス辺りでいうと昨年で維持政策は打ち止めというような形で、次の直面に来ているというようなこともあって、それがどうかということについてはいろいろ意見があるところですが、大竹さん、どうですか。今、雇調金もありますが、それ以外の局面でも経済的なところをもうちょっと考えていくべきではないかというような鶴さんの御意見に対して、分科会を代表してということではないと思いますが。
○大竹委員 分科会でも私は少数派なのであれなのですけれども、私自身は鶴さんがおっしゃった方向のほうがいいとは思います。
中井さんの資料だと3月まで出ているのですね。雇調金の分析自体がまだ最近時点まで出ていないけれどもということですが、2つあって、一つは、確かにコロナの感染者数や死亡者数は海外、ヨーロッパのほうが圧倒的に多いので、それに対してロックダウンあるいはこういった支援が大きくなるのは自然だとは思います。ただ、日本の場合は感染者数も死亡者も対象としている国に比べるとはるかに少なくて、その割にお金を使ったというところが大きいと思います。
それから、その後、特に2021年の夏以降、ワクチンが一巡した後にも行動制限を続けたというのは国際的には非常に特徴があって、さらに第6波のオミクロン株の場合には、ほかの国はかなり開放してきたけれども、日本は続けた。それがいまだに続いているというところが問題だとは思っています。恐らく参院選後には変わるかもしれないとは思いますけれども、そのときにこの対策をずっと続けていくのかどうかというのは私自身は疑問には思っていますので、そうなったときに合わせた政策の在り方を見せるという視点はどこかで必要かなと思いました。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
レジリエンスの議論のときに、期間の長さの問題というのは元へ戻すというようなところであるのかなと思っていて、それをどういうふうに乗り越えていくのかというのは、乗り越えるという結果も重要なのかもしれませんが、どれだけの期間をかけて乗り越えていくのかというようなところも議論があって、確かに日本の場合、GDPを見ても欧米に比べて回復力といったものがどうも弱いというようなことは事実としてあると思いますので、どうやって短期間にそれを戻していくのかという政策的な議論もあるかと思いますが、山本先生、その点はどうでしょうか。
○山本委員 まさにそのとおりで、OECDとかもポストコロナを見据えてレジリエントな経済構造をつくっていくべきというような議論をしていますし、それもあって先ほどの話がしなやかな労働市場というところにレジリエンスというのを入れて対応させたほうが、世界の人に対しても分かりやすいのかなと思った次第です。
○樋口座長 ありがとうございます。
この点、また文章を少し練って皆様の御意見をいただきたいと思いますが、ほかになければよろしいですか。
それでは、今いただきました御意見を基に、議論の整理案について取りまとめを行っていきたいと考えております。修正内容については、必要に応じて皆様に御相談させていただきますが、私のほうに一任としていただければと思いますが、いかがでしょうか。
(首肯する委員あり)
○樋口座長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきたいと思います。
それでは、委員の皆様には本年4月から3回にわたってこの研究会に御参加いただきました。今回、取りまとめではコロナ禍の経験を生かすという点も含めまして、これを取りまとめていくということになるかと思います。
また、コロナ禍は、雇用に限らず、人々の暮らし全般に非常に大きな影響を与えたと思っております。雇用政策も従来の範囲に限らず、範囲を拡大したような形で展開していく必要があるのではないかというのが今回のコロナ禍で私どもが学んだ経験かなと思いますので、まさに経済社会の構造が変化していく中で、この雇用政策の議論も可能な限りエビデンスを基に議論していくことが重要だと考えております。
今回は議論の整理ということで、議論を今後の政策立案に生かしていただきたいと考えておりますが、幾つかの課題もまだ残されております。事務局には引き続きコロナ禍の影響の把握、分析等を含め、引き続き時期を見て議論を再開したいと考えております。
最後になりますが、改めて本研究会に御参加いただきました皆様にお礼を申し上げるとともに、事務局も非常に大変だったと思いますので、感謝を申し上げたいと思います。
それでは、最後に田中局長から御挨拶をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○職業安定局長 職業安定局長の田中でございます。
一言お礼を申し述べたいと思います。
本研究会におきましては、4月から本日を含めて3回にわたって委員の皆様に熱心な御議論をいただきまして、報告書の取りまとめについて大変御指導いただきましたこと、御礼を申し上げます。
まだまだコロナ禍の影響が色濃く残るわけでありますけれども、コロナ禍での状況あるいはコロナ禍で起こってきた変化が今後どのようになっていくかといったことについても、徐々にデータあるいは研究を含めて明らかになりつつあるところではないかと思っております。そうした中で、いち早く新たな雇用政策の課題あるいは方向性につきまして御議論いただき、具体的な方向性といったものも含めてお示ししていただいたことに感謝いたします。
今回、大きく4点ございます。
ワーク・エンゲージメントを高めて、労働生産性の向上を図る。
労働者のキャリア形成・企業の人材育成を促進する。
それから、幅広くウェルビーイングの向上に取り組み、人材確保と労働供給の増加につなげる。
さらには、それを支えるセーフティーネットと労働市場の基盤強化を通じて、最適な資源配分を実現するといった政策の方向性、そのキーワードとして、本日も御議論いただきましたけれども、しなやかな労働市場の構築ということについてもいろいろと御示唆をいただきました。
本日いただいた御意見も踏まえまして、樋口座長と御相談の上、また委員の皆様にもさらに御相談して、一旦ここで議論の整理をまとめさせていただきまして、近日中には公表させていただきたいと思っております。
足元では雇用情勢は持ち直しの動きが見られますけれども、世界経済の動向あるいは国内の物価、賃金の動向についても非常に不確実な部分もございます。
本日いただいた議論をまずは足元の政策に生かしていくこととしたいと思っておりますけれども、さらに今後明らかとなるコロナ禍の影響等を私どもとしてもしっかり整理を進めさせていただきまして、またしかるべき時期に本研究会を再開して、アフターコロナにおけるまさに構造的な問題について御議論いただければと考えております。
最後になりますけれども、改めまして、今回、精力的に御議論いただきましたこと、重ねて感謝を申し上げまして、私の御挨拶といたします。
本当にありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
今まで雇用政策の方向性というような形で議論してまいりましたが、今日、最後のところで、雇用政策のタイミングの問題というのがどうも重要だというような御指摘というのも起こってきているのかなと思いますので、今後とも議論を続けてまいりたいと思います。
どうも本日はありがとうございました。お疲れさまでした。