第12回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年4月26日(火) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 Bルーム

議題

  1. 労働時間制度に係る個別の論点等について②

議事

議事内容
○荒木座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第12回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御参加いただきありがとうございます。
本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加、双方による開催とさせていただきます。
なお、本日、小畑先生は所用のため御欠席と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
本日の議題は、「労働時間制度に係る個別の論点等について②」となっております。
事務局より資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
まず、参考資料2を御覧いただければと思います。こちらは第7回でお示しさせていただいた主な論点でございますけれども、本日はこのうち上から2つ目の白丸、「裁量労働制が、その制度の趣旨を踏まえたものとなるための方策についてどう考えるか」という点の、下の黒ポツの2つ目「対象業務、対象労働者、本人同意、同意の撤回」について御議論いただきたいと思っています。
それでは、資料1-1から御説明させていただきます。資料1-1は、現行の裁量労働制について、今回御議論いただく論点についての制度の概要についてまとめたものでございます。1ページ目を御覧ください。1ページ目は、これまでも御説明させていただきました裁量労働制の概要でございます。
2ページ目以降は、高度プロフェッショナル制度と並べる形で、今回関係する制度の概要について整理したものでございますので、こちらを用いて御説明させていただきます。まず、一番左の高度プロフェッショナル制度の対象業務でございます。「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」とされてございまして、具体的には省令において5つの業務が列記されてございます。また、「当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものを除く」とされてございます。
次のページを御覧ください。「具体的な指示」に関しましては、指針に具体的内容が明記されておりまして、例えば「①出勤時間の指定等始業・終業時間や深夜・休日労働等労働時間に関する業務命令や指示」が、「具体的な指示」となると示されております。
加えて、一番下の「通達」とあるところでございますが、「省令に規定する対象業務に該当する限り、対象労働者が従事する業務の内容が複数の対象業務に該当する場合であっても、決議の内容及び職務に関する合意を前提に、制度を適用することは可能である」ということを示しております。
2ページ目にお戻りください。続きまして、真ん中の専門業務型裁量労働制の対象業務でございます。「業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務」とされておりまして、具体的には省令あるいは告示におきまして①から⑲の19の業務が列記されてございます。
続きまして、一番右の企画業務型裁量労働制の対象業務でございます。こちらは「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務」とされてございます。
次のページを御覧ください。この「具体的な指示」をしないこととする業務に関しましては、指針に具体的内容が明記されておりまして、例えば、「使用者は、業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合には、労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われることがあることに留意すること」などが必要であるということが示されてございます。
4ページ目は、平成27年の労働政策審議会労働条件分科会でなされた建議、あるいは平成29年の同分科会で示された働き方改革関連法案の要綱のうち、企画業務型裁量労働制の対象業務に関する部分の抜粋でございますので、御参考でございます。
5ページ目は、対象労働者でございます。一番左の高度プロフェッショナル制度は、対象業務に従事するほか、「(1)使用者との間の合意に基づき、職務が明確に定められていること」と「(2)年収が1,075万円以上であること」の2つの要件を満たす労働者であることが必要であるとされてございます。
真ん中の専門業務型でございます。こちらは「対象業務に従事する労働者」が対象労働者であるとされてございます。
一番右の企画業務型でございます。「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有し、当該業務に従事する労働者」が対象労働者であるとされてございます。
下の枠線は、平成29年の働き方改革関連法案の要綱で企画業務型裁量労働制の対象労働者について触れられていた部分の抜粋で、参考でございます。
6ページ目は、本人同意に関してです。一番左の高度プロフェッショナル制度でございますが、「一定の事項を明示した書面に対象労働者本人の署名を受けることにより、本人同意を得ることが必要」とされてございまして、この明示する内容といたしまして、例えば、同意した場合には、労働基準法の労働時間等に関する規定が適用されないこととなる旨や同意の対象となる期間中に支払われると見込まれる賃金の額などが挙げられてございます。
また、下の事前明示の欄でございますが、本人同意を得るに当たりましては、使用者は、労働者本人にあらかじめ幾つかの事項を書面で明示することが適当であるということが指針で示されておりまして、その明示する事項としましては、同意をした場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度等が挙げられてございます。
併せて、一番下、不同意の労働者に対する不利益取扱いの禁止につきましては、労使委員会決議が必要であるとされてございます。
続きまして、真ん中の専門業務型裁量労働制でございます。こちらにつきましては、本人同意について特段の規定はございません。
一番右の企画業務型裁量労働制は、対象労働者本人の同意を得なければならないことについて、労使委員会決議が必要とされてございます。
その下の事前明示の欄でございますが、指針におきまして、同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容等について、使用者が労働者に対し明示して同意を得ることとすることを労使委員会決議で定めることが適当であることに留意することが必要とされてございます。
さらに、不同意の労働者に対する不利益取扱いの禁止につきましても、労使委員会決議が必要であるとされてございます。
最後に、7ページ目の同意の撤回等についてでございます。高度プロフェッショナル制度につきましては、対象労働者の同意の撤回に関する手続について、労使委員会決議が必要であるとされてございます。
また、指針におきまして、同意を撤回した場合の配置・処遇について、撤回したことを理由として不利益に取り扱ってはならないとされてございます。
さらに、一番下の適用解除の仕組みといたしまして、同じく指針におきまして、労使委員会委員は、把握した対象労働者の健康管理時間及びその健康状態に応じて、対象労働者への制度適用について必要な見直しを行うことが望ましいとされておりまして、その具体的な内容としては、例えば、健康管理時間が一定時間を超えた労働者については制度を適用しないこととすることなどが考えられるということが示されております。
真ん中の専門業務型裁量労働制は、同意の撤回や適用解除に関して特段の規定はございません。
一番右の企画業務型裁量労働制は、指針におきまして、労使委員会委員は、対象労働者から同意を撤回することを認める場合には、その要件・手続を決議において具体的に定めることが適当であることに留意することが必要であるとされてございます。
適用解除につきましては、こちらも指針におきまして、使用者は、把握した対象労働者の勤務状況及び健康状態に応じて、対象労働者への制度適用について必要な見直しを行うことを労使委員会決議に含めることが望ましいことに留意することが必要とされてございまして、「必要な見直し」とは、例えば、対象労働者への企画業務型裁量労働制の適用を除外することなどが考えられるということを通達で示しております。
8ページ目以降は参照条文でございますので、こちらは適宜御参照いただければと思います。
資料1-1の説明は以上でございます。
続きまして、資料1-2でございます。こちらの資料は、これまでも御説明してきました裁量労働制実態調査の結果を中心として、今回の議論に関連するデータをまとめたものでございます。
2ページ目の目次を御覧ください。最初に、対象業務と対象労働者について御説明差し上げた後、本人同意について御説明差し上げます。
3ページ目は、労働者の現在の勤め先での勤続年数についての資料でございます。特に企画型の適用者につきましては、非適用者よりも勤続年数が長くなっています。
4ページ目は、現在の勤め先での業務従事年数についてのデータでございます。こちらも特に企画型の適用者について、非適用者よりも業務従事年数が長くなっております。
5ページ目は、労働者の年収についてでございます。専門型の適用者につきましては、薄紫色の「700万円~800万円未満」、薄い黄色の「600万円~700万円未満」の層が比較的多くなっております。
下の企画型の適用者は、薄紫色の「700万円~800万円未満」、薄い赤の「800万円~900万円未満」、濃い赤の「1,000万円~1,250万円未満」の層が比較的多くなってございます。
6ページ目は、専門型に関しまして制度適用の満足度を年収階級別に見た資料でございます。濃い緑が「満足している」、薄い緑が「やや満足している」と答えた割合でございますが、こちらは年収が上がるにつれて満足度も上がっているような傾向となってございます。
7ページ目は、企画型について、同じく満足度を年収別に見たものでございますが、こちらも専門型と同様、年収が上がるにつれて満足度も上がっているような傾向となってございます。
8ページ目からは、労働者の裁量の程度についてのデータでございます。まずは具体的な仕事の内容・量に関する裁量の程度でございます。「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」あるいは「自分に相談の上、上司が決めている」との回答の合計は、専門型の適用労働者では27.5%、企画型の適用労働者では32.1%となっております。
9ページ目は、業務の遂行方法、時間配分等に関する裁量の程度についてでございます。「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」あるいは「自分に相談の上、上司が決めている」という回答の合計を見てみますと、専門型の適用労働者では5.7%、企画型の適用労働者では5.0%となっております。
10ページ目は、出退勤時間に関する裁量の程度についてでございます。「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」「自分に相談の上、上司が決めている」という回答の合計は、専門型の適用労働者で7.6%、企画型の適用労働者で6.0%となってございます。
11ページ目からは裁量労働制に対する具体的な制度の見直しに関する意見についてのデータでございます。まずは事業場調査でございまして、こちらは適用事業場と非適用事業場のデータが並んでございますけれども、時間の関係もございますので、左の適用事業場について御説明させていただきます。まず、専門型を見てみますと、37.9%が「今のままでよい」、15.8%が「制度を見直すべき」、39.5%が「特に意見はない」と回答してございます。企画型では、33.9%が「今のままでよい」、39.7%が「制度を見直すべき」、23.8%が「特に意見はない」と回答してございます。
下の左の棒グラフでございますけれども、「制度を見直すべき」と答えた事業場のうち、専門型では62.2%、企画型では71.6%が「対象労働者の範囲を見直すべき」と回答してございます。
12ページ目でございますが、今、申し上げた「対象労働者の範囲を見直すべき」と回答した事業場について、専門型では73.6%が「対象業務の範囲が狭い」、9.9%が「対象業務の範囲が広い」、16.0%が「対象業務の範囲が不明確」と回答してございます。企画型では94.0%が「対象業務の範囲が狭い」、4.0%が「対象業務の範囲が広い」、2.0%が「対象業務の範囲が不明確」と回答してございます。
13ページ目は、今、申し上げた「対象労働者の範囲が狭い」と回答した事業場の具体的な意見の内容でございます。一番下の棒グラフを御覧いただきますと、青いバーが専門型でございますけれども、「法令上規定された業務に限らず、業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務は、対象業務として認めるべき」という意見などが多くなってございます。赤いバーが企画型でございますけれども、こちらは「指針上規定されているように、対象業務に『常態として』従事していなくとも、『主として』従事していればよいものとすべき」などの意見が多くなってございます。
14ページは、先ほどの質問で「対象労働者の範囲が広い」と回答した事業場の具体的な意見の内容でございます。青いバーの専門型では、「一定の人事等級・経験年数等を要件とすべき」などの意見が多くなってございます。赤いバーの企画型を見てみますと、「現在認められている業務の一部又は全部を対象から外すべき」という意見などが多くなってございます。
15ページ目は、「対象労働者の範囲が不明確」と回答した事業場の具体的な意見の内容でございます。青いバーの専門型では、「業務ではなく、一定の人事等級・経験年数等を要件とすべき」などの意見が多くなってございます。赤いバーの企画型では、「業務ではなく、一定のコンピテンシー(職務遂行能力)を要件とすべき」という意見などが多くなってございます。
16ページ目からは同じく裁量労働制に対する意見につきまして、労働者への調査結果のデータでございます。ここでも左側にあります適用労働者のみ御紹介させていただきます。専門型では、33.0%が「今のままでよい」、28.3%が「制度を見直すべき」、28.8%が「特に意見はない」と回答しております。その下の企画型では、41.0%が「今のままでよい」、26.0%が「制度を見直すべき」、26.4%が「特に意見はない」と回答しております。
これらの「制度を見直すべき」と答えた労働者のうち、その下の棒グラフの一番左でございますが、専門型では31.5%が、企画型では46.6%が「対象労働者の範囲を見直すべき」と回答してございます。
17ページ目は、「対象労働者の範囲を見直すべき」と回答した労働者の具体的な意見の内訳でございます。専門型では10.4%が「対象業務の範囲が狭い」、36.1%が「対象業務の範囲が広い」、53.1%が「対象業務の範囲が不明確」と回答してございます。その下の企画型では、23.0%が「対象業務の範囲が狭い」、31.2%が「対象業務の範囲が広い」、44.0%が「対象業務の範囲が不明確」と回答してございます。
18ページ目は、今、申し上げた「対象労働者の範囲が狭い」と回答した労働者の具体的な意見の内容でございます。こちらは青いバーの専門型、赤いバーの企画型、いずれも「法令上規定された業務に限らず、業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務は、対象業務として認めるべき」という意見や、「法令上規定された業務に限らず、労使で合意された業務は、対象業務として認めるべき」という意見などが多くなってございます。
19ページ目は、「対象労働者の範囲が広い」と回答した労働者の具体的な意見の内容でございます。青いバーの専門型では、「一定の年収を要件とすべき」などの意見が多くなってございます。赤いバーの企画型では、「一定のコンピテンシー(職務遂行能力)を要件とすべき」という意見などが多くなってございます。
20ページ目は、「対象労働者の範囲が不明確」と回答した労働者の具体的な意見の内容でございます。青いバーの専門型を見てみますと、「業務ではなく、一定の処遇・雇用管理等を要件とすべき」などの意見が多くなってございます。赤いバーの企画型では、「対象業務をより具体的に明確化すべき」という意見などが多くなってございます。
21ページ目以降は、本人同意に関する調査結果の内容でございます。
22ページ目の一番左の棒グラフでございますが、専門型では46.3%が、企画型では97.2%が「労働者本人の同意」を裁量労働制の適用要件としてございます。
23ページ目を御覧ください。本人同意を要件としております46.3%の専門型の適用事業場のうち、97.4%が本人同意の際の労働者への制度、運用、働き方等についての説明を行っております。また、本人同意要件を求める理由といたしましては、「労働者に納得して働いてもらうため」が多くなってございます。
24ページ目は、企画型でございますけれども、本人同意の際に、労働者へ制度、運用、働き方等について説明を行っているという事業場が97.0%となってございます。
また、真ん中の円グラフにおきましては、「本人同意が得られなかった労働者がいない」事業場は89.4%となっております。一方で、1.9%は「本人同意が得られなかった労働者がいる」と回答してございます。
一番右の同意の撤回につきまして、「撤回した労働者がいない」事業場が93.9%である一方で、1.7%は「撤回した労働者がいる」と回答してございます。
25ページ目は、本人同意の手続についてでございます。専門型では、「書面」や「口頭で行うこととしている」という回答が多くなっております。一方、企画型では、同じく「書面」、あるいは「メールなどの電磁的方法で行うこととしている」という回答が多くなってございます。
右側の同意撤回の手続についても同様でございまして、専門型では、「書面」や「口頭で行うこととしている」という回答が多くなっております。企画型では、「書面」や「メールなどの電磁的方法で行うこととしている」という回答が多くなってございます。他方で、「手続を特に定めていない」という事業場も専門型、企画型双方とも25%程度となっております。
26ページ目、本人同意の方法を企業規模別で見てみますと、企画型、専門型共に、規模にかかわらず「書面で行うこととしている」事業場が多い一方で、企画型では、1,000人以上の区分で「メールなどの電磁的方法で行うこととしている」と回答する事業場が最も多くなってございます。
資料1-2の御説明は以上でございます。
続きまして、資料2でございます。2ページ目を御覧いただければと思います。こちらの資料は、必ずしも今回御議論いただく論点だけのデータではないのですが、第2回の本検討会におきまして、東京大学の川口先生に御説明いただいた資料の一部で用いられているものと同じ分析を、裁量労働制実態調査の労働者調査の結果を用いて、東京大学エコノミックコンサルティング社に委託して行ったものでございます。
この分析の中で「裁量の程度」という分類が出てまいりますが、「自分に相談なく、上司が決めている」・「自分に相談の上、上司が決めている」・「どちらとも言えない」を「裁量の程度が小さい」とし、「上司に相談の上、自分が決めている」・「上司に相談せず、自分が決めている」を「裁量の程度が大きい」としてまとめた上で、分析を実施していただいております。
労使委員会の実効性についても同様でございまして、労使委員会が十分に機能しているかについて、「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」を「労使委員会の実効性がある」とし、それ以外の回答を「労使委員会の実効性がない」としてまとめた上で、分析を実施していただいたものでございます。
3ページ目です。5つの項目について分析いただいておりまして、労働時間、睡眠時間、健康状態、メンタルヘルス、満足度に関する分析となってございます。
最初に、4ページ目、労働時間に与える影響等についての分析でございます。こちらは第2回の検討会で東京大学の川口先生に御説明いただいた資料でございます。制御変数を制御した場合、適用労働者の方が1週当たりの労働時間が1.3時間前後長いという結果について、御説明いただいたものでございます。
5ページ目は、専門型の労働者についてです。今回は労働者の裁量の程度によりまして、裁量労働制の適用が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率に与える影響が異なるかについて、分析を行ったものでございます。
左側の業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度について見てみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者のほうが1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっております。他方で、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
右側の出退勤時間の裁量の程度について見てみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者のほうが1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっておりますけれども、どちらも裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
6ページ目は、同じ分析を企画型で行ったものでございます。左側の業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度について見てみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者のほうが1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっております。他方で、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
右側の出退勤時間の裁量の程度についてでございます。こちらも裁量の程度が小さい場合には、適用労働者のほうが1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっておりますが、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
7ページ目でございます。こちらは企画型の裁量労働制の適用労働者について、労使委員会の実効性が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率に与える影響について、分析を行ったものでございます。労使委員会の実効性がある場合には、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率が半分以上低くなり、50時間以上となる確率も低くなるという結果となってございます。
8ページ目からは、睡眠時間についての分析でございます。
9ページ目は、労働時間がどの程度の水準になると1日当たりの睡眠時間が6時間を下回る確率に影響があるかという分析を行ったものでございまして、まず9ページ目は専門型についての分析でございます。こちらの表は、横軸が1週当たりの労働時間、縦軸が1日当たりの睡眠時間が6時間を下回る確率を示すものでございます。専門型の適用労働者につきましては、特に1週当たりの労働時間が55時間以上になると睡眠時間が6時間を下回る確率が高くなって、60時間以上になるとその確率はさらに高くなるという結果となってございます。60時間以上になると睡眠時間が6時間を下回る確率が大きくなるという傾向につきましては、適用労働者と非適用労働者に違いはないという結果となってございます。
10ページ目は、同様の分析を企画型で行ったものでございます。こちらも専門型と同様の傾向で、適用労働者では、特に1週当たりの労働時間が55時間以上になると睡眠時間が6時間を下回る確率が高くなりまして、60時間以上になるとその確率がさらに高まるという結果になってございます。60時間以上になると睡眠時間が6時間を下回る確率が大きくなるという傾向につきまして、適用労働者と非適用者労働者に違いはないという結果となってございます。
11ページ目からは、裁量労働制の適用が健康状態に与える影響についての分析でございます。
12ページ目を御覧ください。こちらも第2回の本検討会で東京大学の川口先生から御説明いただいた資料でございますが、裁量労働制が適用されている労働者のほうが、健康状態が「良い」と答える確率が高いという結果について御説明いただいたものでございます。
13ページ目を御覧ください。今回は専門型の労働者、企画型の労働者それぞれについて、労働者の裁量の程度によって裁量労働制の適用が健康状態をあまりよくない・よくないと答える確率に与える影響が異なるのかについて、分析を行ったものでございます。業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度について見てみますと、専門型につきましては、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者のほうが健康状態があまりよくない・よくないと答える確率が高くなってございますけれども、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
出退勤時間の裁量の程度について見てみますと、同じく専門型につきましては、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が健康状態をあまりよくない・よくないと答える割合が高くなっておりますが、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
14ページ目からは裁量労働制の適用がメンタルヘルスに与える影響についての分析でございます。
15ページ目と16ページ目は、第2回の検討会で東京大学の川口先生に御説明いただいた資料でございます。項目全体を見て評価いたしますと、適用労働者と非適用労働者のグループ間に統計的に有意な差はないという結果となってございますが、例えば適用労働者のほうが、仕事の後の疲労感が「ほとんどない」と答える確率が高いなどの結果をお示しいただいたものでございます。
17ページ目を御覧ください。今回は労働者の裁量の程度によって、裁量労働制の適用がメンタルヘルスに与える影響が異なるのかについて分析を行ったものでございます。こちらは専門型についてでございます。左側の業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度について見てみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が、時間に追われる感覚や用事に集中できないということが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなっておりますけれども、時間に追われる感覚につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
右側の出退勤時間の裁量の程度について見てみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が仕事の疲労感、時間に追われる感覚、用事に集中できないことが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなっておりますが、仕事の疲労感、時間に追われる感覚につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
18ページ目は、同様の分析を企画型で行ったものでございます。左側の業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度について見てみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が時間に追われる感覚、用事に集中できない、眠れないことが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなってございます。いずれも裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されております。
右側の出退勤時間の裁量の程度でございますけれども、こちらも裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が、用事に集中できない、眠れない、不安感を感じることが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなってございます。一方で、いずれも裁量の程度が大きい場合には、その影響は低減されるという結果となってございます。
19ページ目からは、裁量労働制適用の満足度についての分析でございます。
20ページ目は、これまでもお示ししてきました裁量労働制の適用に対する満足度の資料でございまして、専門型、企画型共に約8割の労働者が「満足している」「やや満足している」と回答しているというものでございます。
21ページ目を御覧ください。今回の分析におきましては、裁量労働制適用に対して、「満足」または「やや満足」と答える確率、ここでは「満足度」と読んでおりますけれども、それにどのような要素が影響するのかを分析したものでございまして、このページは専門型でございます。様々な要素が満足度に一定程度影響を与えておりますが、出退勤時間に裁量の程度が大きいこと、能力や仕事の成果に応じた処遇となっていることが満足度を上げるという影響を与えている一方で、業務量が過大であることは、満足度を下げる影響を与えているということが分かったものでございます。このほか、期限設定が短いと満足度を下げ、労使委員会があると満足度を上げるような影響も見られたものでございます。
最後に、22ページ目は、同様の分析を企画型で行ったものでございます。満足度は、こちらも様々な要素が一定程度影響を与えておりますけれども、出退勤時間に裁量の程度が大きいこと、労使委員会の実効性があることが満足度を上げる影響を与えている一方で、業務量が過大であることは満足度を下げる影響を与えていることが分かったものでございます。このほか、本人同意時の説明があること等も満足度を上げる影響として見られている結果となってございます。
資料2の説明は以上でございます。
事務局からの説明の資料は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局から対象業務、対象労働者、本人同意、同意の撤回に係る現行制度、裁量労働制実態調査の結果等について御説明をいただきました。
今の説明を踏まえまして、まずは対象業務、対象労働者について、後ほど本人の同意、同意の撤回の2つ分けて議論をいただきたいと考えております。最初に対象業務、対象労働者について御意見をいただきたいと思います。
それでは、どの先生からでも結構ですけれども、いかがでしょうか。御自由に御発言ください。藤村先生、お願いします。
○藤村構成員 対象業務あるいは対象労働者ですが、こういう業務に従事している人はいいですよという決め方がされています。業務内容というのは、時間の経過とともに非常に多様化していると思います。そのため、制度的にこの業務は対象になりますということを決めていくというのは、やや後追い的になりそうな気がいたします。この際、対象業務を決めるのではなくて、働き方あるいは働かせ方で裁量労働制にふさわしいかふさわしくないかを判断していくというのが1つのやり方かなと思っています。具体的には、こういう働かせ方をしている場合には裁量労働制の対象にはなりませんよという決め方です。
例えば出勤時間が決められていて、基本的にそれを毎日守らなければいけないというのは裁量労働制ではない、あるいは業務を効率的に遂行した結果、少し時間的な余裕ができた場合に、上司が追加で仕事を命令するというのも違いますねとか、あるいは健康管理の面から労働時間が一応把握されていますから、例えば週の労働時間が常態的に60時間を超えているような場合には、これは裁量労働制の働き方から外すべきでしょうとか、こういった働かせ方あるいは働き方をしている場合には裁量労働制には当たりませんよという決め方もあるのかなと思っています。
取りあえず以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
川田先生、お願いします。
ほかの先生方はいかがでしょうか。それでは、川田先生、お願いします。
○川田構成員 川田でございます。
幾つか考えてきた点があるのですが、自分の専門が法律であるということもあって、最初は少し法律上の技術的に細かい、かつ堅い話になるところがあると思います。現在の法律の条文を見ると、対象業務については、専門業務型の場合には、「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務」という書き方になっており、企画業務型の場合には、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務」とされているわけですが、私が今から述べたいことは、この文言の中の2つの点です。
1つは、時間のコントロールに関して、現在、業務の遂行の方法と時間配分の決定について裁量性が認められるという書き方になっていて、これ自体は維持される必要があると思いますが、実態調査などを見ると、出退勤についても調査がされていて、それが裁量性に関する一つの着眼点として機能しているようにも思われ、また、実際裁量労働制が適用されながら、現実的に始業・終業時刻のコントロールを受けてしまっているというような不適切な使われ方のケースもあって、そういうことはしっかりチェックされなければいけないと思います。そうなると、実態調査の結果や近年認識されてきている制度運用上の問題等を踏まえると裁量性の概念に関して、今の2つ、業務遂行の方法と時間配分の決定のほかに、例えば出退勤とか始業・終業時刻の決定ということも加えるようなことが考えられるのかなと思います。
もう一つは、そもそもの業務の定め方についてです。ここは専門業務型と企画業務型で少し違っていて、専門業務型の場合には、業務の性質ということを冒頭に言った上で、理屈としては、業務の性質上そもそも使用者が具体的な指示をすることが難しいからということで、先ほど述べた業務遂行の方法等について、使用者が具体的な指示をすることが困難な業務という大枠をはめて、そこからさらに厚生労働省令で指定するという形がとられています。
それに対して、企画業務型のほうは、業務の性質という言葉は使っておらず、企業経営上の一定の重要性がある業務で、先ほど挙げたような時間配分等について裁量を与えるということなのですが、若干文言の細かい話ではありますが、先ほど具体的な指示をすることが困難と専門業務型でなっていたところが、具体的な指示をしないこととするとなっています。要するに、使用者の判断で裁量を与えるという定め方になっています。
この辺りはそれぞれの制度の性質の違いもあるのかなと思いますが、私が少し気になっているのは、専門業務型のほうは、業務の性質上、具体的な指示があり得ないということなので、裁量性が失われる場合に関する留意点の指摘、あるいは対象労働者に関する要件等は関連する規定等の中に入ってきていない。それに対して企画業務型のほうは、指針、告示等を見ると、対象業務に関する記述の中で具体的な指示を与えたことになってしまう場合という形で、業務遂行上の裁量性について、例えば業務量が過大である場合や指示の期間が短い場合には裁量性が失われるということが書かれているほか、法律本体の中に対象業務に加えて対象労働者の要件がさだめられています。
ただ、この点についてもこの間の制度運用上の状況や実態調査の結果などを見ると、専門業務型についても裁量性がある働き方が確保できる、あるいは裁量労働制にふさわしいような、業務だけでなくて、働く側の能力や経験、属性も大事なのではないかという点が明らかになってきているのではないかと思います。
この2つの制度をここまで性質が大きく違うものと捉えるのが適切なのかどうかについては、条文の文言をどうするかという話とは別に、専門業務型についても働き方の裁量性や本人の属性といったものも踏まえて要件を制度化していくことがあると思います。
関連してもう一つ、今の話と関係するところがあるかもしれない点ですが、企画業務型のほうは、制度が後からできたせいなのか、告示という形で指針を定めることができるという根拠になる規定があって、実際その制度運用上のガイドラインが示されているのですが、専門業務型の方はそういうものがない状態であり、そうしたところの違いは必ずしも合理的な違いでもないような気もしますので、これもどちらかというと企画業務型に合わせた少し丁寧なガイドラインを示していくということが考えられるのかと思います。
大分長く話してしまったのでこの辺りでと思いますが、その上で、裁量制の中身については、先ほど藤村先生がおっしゃったことと同じように、裁量性が失われるかどうかについて着眼する点を、今の企画業務型の告示に挙がっている業務量が過大とか、期間が短いということのほかに、追加的な仕事がある場合とか、そういったものも含めて少し丁寧なガイドラインを置くということなどが考えられるかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 御説明ありがとうございました。
これまでの検討会でも何度か申し上げていたところと重複するのですけれども、対象業務と対象労働者に関しては、現在は裁量労働制と高度プロフェッショナル制度の対象業務の異同が整理できていなくて、制度が建て増しの状態になっているというところをどう考えていくべきかということも非常に重要な論点かと思っています。なぜ3つの制度が並立していて、ある業務は高度プロフェッショナル制度で、ある業務は裁量労働制なのかということに関して、説明が十分にできない状態が生じています。
例えば、資料1-1の2ページ目に対象業務がいろいろと列挙されているわけですが、専門業務型裁量労働制度と高度プロフェッショナル制度では重複している業務もあるわけです。高度プロフェッショナル制度は制度ができてからまだ日が浅いということもあるので、現在、大幅な制度の変更が難しいことは分かるのですけれども、こうした状況を考えますと、現時点で裁量労働制のみを議論の対象にして対象労働者や対象業務を考えると、今後もこの複数の複雑な制度が併存することになってしまうことについて心配をしております。
それから、先ほど藤村先生から時代の後追いという言葉も出たところですが、私自身も現在そのように感じております。現在、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度などの対象になっていない労働者も、コロナをきっかけにこの1~2年は事実上かなり自由度の高い働き方が可能になってきています。
その意味で、新しい時代に即した働き方や制度の全体像の在り方も視野に入れた上で、現在の話も進めていくべきだと思います。
これに関連して、資料1-2の13ページをみますと、対象業務に関して使用者側の意見としては「狭い」が多い一方、20ページの労働者側は、「広い」「狭い」といった意見よりも圧倒的に多いのは「範囲が不明確」となっています。ただ、この違いが労使の間での意見の隔たりを示唆しているかというと、そうでもないのではと思っていまして、結局のところ、業務の範囲に関して労使ともに様々な意見があるということかと思います。
その意味では、スペシフィックにこういった対象の業務をしている人でなければいけないという、これまでのような限定列挙的な定め方ではなくて、一定の年収要件や経験年数の要件、あるいは、例えば出退勤の自由度など裁量的な働き方の担保など、そういった具体的なことを要件とした上で、それが満たされていると労使が納得した場合には自由度のある働き方を認めるという方向性も考えるべきではないかと思っています。
以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
島貫先生、お願いします。
○島貫構成員 ありがとうございます。今、先生方がおっしゃっていただいたことと重なるところもあるのですが、発言させていただきます。
まず、対象業務のところですけれども、冒頭に藤村先生からお話があった業務内容、いわゆる業務の名称という形で定めていくというよりは、業務の特徴や特性、性質といったものを重視して定めていくべきであるというのは、私も賛成です。
今の制度の中にも業務遂行の手段と時間配分の決定という2つの裁量が求められていますので、これが実際に担保されることが大事だと思っています。特に、企画業務型に定められているようにこの2つに関しては、具体的な指示をしないという形で定めておくのがより望ましいと個人的には思っております。
あとは、先ほどの調査の結果のところでお話がありましたけれども、業務量が過大であるということや業務量がコントロールできないということに関しても併せて考えていく必要があるように思っています。
1つの考え方としては、業務遂行の手段とか時間配分に加えて、さらに業務量や業務の内容まで労働者に裁量を委ねていくのか、あるいはそれらの要件を定めていくのかという考え方もあるかもしれませんけれども、そういうことになったら、今、裁量労働制が適用されている人たちの3分の1ぐらいの人たちが恐らく外れていくことにならざるを得ないと思いますので、むしろ実態や実効性を考えていくと、業務量の過大に関してはそういうことがなされないようにしていくことを前提として、もしそういうことがあれば、これは第2の論点になるかと思いますけれども、適用解除を本人が判断できる方が望ましいと思っております。
最後になりますけれども、対象労働者のところについて、今、黒田先生からもお話がありましたが、私個人としては、業務の特性で定めていくということと、対象労働者を定めていくことの両方が必要かと思っています。実際に裁量労働制を活用していくことになると、自分自身でセルフマネジメントしていくことが重視されていくと思いますので、そういった人たちがどういう人なのか、きちんと労使で議論していただくことが必要だろうと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
川田先生、お願いします。
○川田構成員 先ほどの話に少し補足して、2点ほど述べたいと思います。
1つは、今の議論の中でも出てきました点について先ほど言ったことを改めて整理すると、私自身は、業務自体の性質や働かせ方、使用者からの指示の出し方、労働者本人の能力等の属性といった観点、そうしたいくつかの観点の全体に着目しながら対象の範囲を決めていくのがいいのかなと大まかには考えています。
業務の属性のところはもしかするとなくてもいいのかもしれないというのは、そういう調査結果による適用対象者、企業等からの意見もあるところですが、私自身は、裁量労働制の意義として、自由度の高い働き方が効果を上げられるようなものについて制度の対象にしていくという観点、時間管理や時間の規制は原則としてあって、それに対する例外にふさわしいものを対象にしていくという観点から、今のところは業務の特性という視点も一定の重要性があるのではないかと思っているところです。
ただ、最終的には先ほど述べたようないろんなものを考慮していくということになると、個々の企業あるいは事業場ごとにその制度の運用のやり方を決めていく必要が高くなるのかなと思っていまして、最終的にはこの検討会では次回の論点で挙がっている労使コミュニケーションや労使の継続的関与、導入後の対応等も踏まえて、事業場あるいは企業で制度を運用する当事者にどこまでのことを委ねることが可能と考えられるかによるところが大きいのかなと思っています。それが1つです。
もう一つは、調査結果などを見ると、特に企業側からの意見で、対象業務に専ら従事している、対象業務以外の仕事にあまり就いていないことを要求するところを多少緩めてほしいというような趣旨の意見がありました。恐らく個々の企業ごとの組織のつくり方や仕事の振り分け方が、法律上、対象業務を特にかっちりと業務で絞った場合などには、企業の現場で組織や仕事の割り振りと合わないようなところが出てくるということかと思いますが、一方で、そこを緩め過ぎると、裁量労働制にふさわしくないようなところに適用されてしまうという危険が大きいと思います。
この点は、まさにそこに尽きるのですが、私が知る限りの外国の例で、米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度などは、対象業務については、主たる職務、プライマリーデューティーという言い方で、それには含まれないものが多少入ってくることを許容するような定め方になっているのですが、その一方で、その点については連邦労働省の規則等でかなり細かく、この場合はこう、全体的な割合がこうなどということが定められているということができます。裁量労働制にふさわしいような働き方でないものが入ってくる余地を認める方向や拡大する方向で考えていく場合には、それにより制度の不適切な使い方になってしまわないかという辺りは慎重に見ていく必要があるということになるのかと思っています。
取りあえず以上です。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、私も一言コメントをさせていただきます。対象業務については、専門業務型と企画業務型で考え方が基本的に違っているのだと思います。専門業務型は、当初は例示列挙としていたところ、非常に乱用されてしまったという経験から、限定列挙になりました。その結果、今は19の業務が列挙されています。変化の激しい時代にあって、実態が展開した後で後追い的に追加をするという形で業務を定める方式が専門業務型では採られています。
それに対して企画業務型の場合は、対象業務は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析という非常にざっくりとした定め方です。後追い的に対象業務を指定するのではなくて、半数以上は現場の労働者の代表からなる労使委員会という機関を設けて、その決議により、当該事業において裁量労働制がふさわしいと労使が判断した場合には採用できるという制度になっています。対象業務の考え方は専門業務型と企画業務型では大きく違っています。
つまり、実体規制で全てを国が決めてしまうという専門業務型に対して、企画業務型では現場の労使が納得して、この業務については裁量労働制を導入していいという決め方がきちんと民主的になされるための手続を規制し、労使委員会をつくりその5分の4の以上の決議という手続を踏むことを前提に認めたという点に大きな考え方の違いがあると思います。今回の調査の中でも労使委員会が実効的に運用されているという場合には、満足度も高いし、労働時間の削減効果もあるということが挙がってきています。
このようなことも踏まえて、対象業務については、現場の労使が、変化の激しい時代にどういう働き方・業務であれば裁量労働制とするにふさわしいかというものをきちんと協議して決めていただくという方向は、1つ注目すべき点ではないかと考えております。
先生方から御指摘があったように、対象業務をどうするかという問題だけではなく、それに対して使用者側がどういう働かせ方をするかを見なければいけないということで、使用者が「具体的な指示をすることが困難」、あるいは「具体的な指示をしないこと」という点が協定あるいは決議事項に入ってきています。
もう一点御指摘があったのは労働者の属性です。労働者がその裁量労働制にふさわしい働き方をする能力を持った方かということについても確認すべきだという御指摘があったのですが、これも大変重要だと考えております。こういう対象業務、使用者の関与の在り方、労働者本人の属性というものを見ながら、適切な運用をされるための対象業務をどう考えていくかということが大事ではないかと思います。
それから、過大なノルマや業務を与えることのチェックは難しい問題ですけれども、これを運用上きちんとチェックをする仕組みが非常に重要です。これまでの検討会でも指摘されておりましたように、労使委員会などの機関が年に1回や半年に1回など、そういうときだけ集まるのではなくて、運用上の問題があった場合には常にチェックして裁量労働制を適切に運用させる、そういう仕組みがあれば、事細かに全てを法が定めることなく、合理的な裁量労働制度となり得るのではないかという気もしたところでございます。
私からは以上でございます。
それでは、この点について御自由に御議論いただければと思います。何か追加的なコメント等ございますでしょうか。藤村先生、お願いします。
○藤村構成員 私たちが検討会の場でこういう議論をしなければいけないそもそもの理由というのが、使用者側が労働者に過酷な働かせ方をしていることにあると思います。その結果、健康被害が出るような状況になっています。経営者としては、裁量労働制という制度があるからいいのではないかということで、過酷な働かせ方をさせている面があると思います。使用者側の主張としては、いやいや、時間が長くなっているのは本人に能力がないからだ、能力のある人がこの業務をやればもっと短い時間でできるのに、本人に能力がないから労働時間が長くなっている、これは本人の問題だと言います。つまり、本来支払うべき賃金を低く抑えるために裁量労働制が使われているという実態があります。やはりこれは制度の本来の趣旨ではないので、それを何らかの形で適正化をしていかなければいけないと思います。
実はここにもう一つ要因があって、働く側の意識や、働く側の仕事に対する考え方。これは次のテーマの本人同意というところに関係すると思うのですが、多くの日本人の場合、心優しい従業員ということで、例えば「お客さんが困っていらっしゃるから何とかしてよ」と使用者から言われたら、いや、本来は自分の仕事ではないのだけれどもと思いながらも何とか対応しようとします。そういうところに対するある種の歯止めというか、要は、健康被害が出るような働き方、働かせ方はまずいのだというところが原点だと思います。
裁量労働制という働き方はとてもいい制度だと思うのです。ただ、その使われ方がおかしい場合があって、おかしい使われ方をしているのをどうやって少なくしていくか。その辺で、先ほどから委員の皆さんから出てきた業務の遂行の自由度や時間配分など、あるいはどういう人が本来対象になるべきかということをある程度定めていかなければいけないと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、対象業務とか対象労働者と本人同意の問題も関連しておりますので、本人同意等の論点に移らせていただきまして、併せてさらなるコメントがあればお願いしたいと思います。
では、本人同意、本人同意の撤回について御自由に御発言いただければと思います。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。堤先生、お願いします。
○堤構成員 ありがとうございます。
私のほうは、まず資料、解析を進めていただいたこと、本当にありがとうございます。特に資料2の解析は非常に勉強になりました。裁量労働制が健康指標や睡眠指標に与える影響というのが言わば仮説どおりといいますか、先行研究でも示されているようなところで、やはり自由度というのは大切だということがよく分かったように思いました。
別の研究では時間に対する自由度というのは、一定の量の長時間労働であれば、その悪影響も軽減させるのではないかという示唆的なものもありまして、やはりこの部分は守っていく必要があるのだろうなと思っていたところです。
一方、資料1-2では、これは以前も出ていましたけれども、実態調査の中では、いわゆる始業や終業の時間の決定に係る裁量がないような状況というのが疑われていて、こういうのを見ますと、労使双方が本当に適切に運用しているのかという疑問が出ています。そういうことに鑑みますと、双方が十分了解しているか、正確な情報や理解に基づいて同意をしているということが非常に大切なのではないかなと思うところでございます。
健康管理の点では今回の課題とは少し違うところですけれども、先ほどの労働者の資質等に関連することですが、始業・終業の時間は労働者にある程度の裁量があるというところについては、不規則な労働をしているという部分が入ってくると、健康問題が発生してくるということも分かっていますので、労働者側も自ら一定のリテラシーを持って律していくということもセットになっていくのではないかなと考えているところです。
先ほどの絡みも併せまして発言させていただきました。
以上です。ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかの先生方、いかがでしょうか。藤村先生、お願いします。
○藤村構成員 本人同意というのは、同意するときには、恐らく御本人もどういう働き方になるかよく分からないまま始まると思うのです。実際に働き始めてみると、こんなこともやらなければいけない、とか、こういうところで制約がかかる、といったものが出てくることがあります。特に短い期間に非常に多くの課題をやらなければいけないような指示が出て、これは裁量労働制ではないと思ったときに同意の撤回ができるというのがとても大事だと思います。
ただ、この研究会でも発言してきたように、働いている人たちというのは、上司から高い評価を得たいというふうに普通は思っていますね。そうすると、ここで自分は裁量労働制から外れたいという意思表明をしたときに、自分の評価が下がるのではないかというのを常に考える。そうすると、本来は撤回すべき状況なのに撤回しないということが起こるため、本人の意思だけに任せていたのでは少しまずい事態が起こるのではないかと思っています。
そのためここでもう一つ労働時間という客観的な指標があるといいなと思うのです。裁量労働制とはいえ、会社側は健康管理の面から一定の労働時間の把握が必要ですから、それがある時間を超えると、これ以上裁量労働制という働き方、働かせ方をするのはまずいと会社側も判断すると。これまでヒアリングをしてきた中で、ちゃんとやっているところは、労働時間がある一定時間を超えると、それは対象から外すということを非常に明確に運用していらっしゃいます。それを何らかの形で制度の中に組み込めないかなと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。川田先生、お願いします。
○川田構成員 川田です。
これまで議論してきたところに付け加えることはあまりなく、前回までに述べてきたところを整理するような形になるかと思いますが、まずこの点、現状において労働者の特に健康確保との関係で重要な意味を持つと考えられるということからすると、本人の同意というもの自体は必要であり、それが健康確保に深く関わるということであれば、企画業務型と専門業務型で扱いを分ける必要も特にないのかなと思います。
また、制度の導入のときの同意とその後の同意撤回の双方を考える必要があるという点もこれまで議論されてきたものと同じで、ただ、藤村先生もおっしゃったように、制度導入、例えば異動や昇進等で新たに対象業務になったり、制度の対象になり得る立場になったりしたときに、いきなり同意しないというのは現実に考えにくいようなところもあるのかなと思います。ただ、制度の内容や制度を後から外れることができるという基本的なことについての説明は、この段階で同意の際の手続として必要なことではないかなと思っています。
制度をより適切に運用していく上で重要なのが制度導入後の同意の撤回という点は、私も同意見であり、先ほども出てきました労使委員会その他の場での制度運用後の状況のチェックと連携したような形、あるいは一体になるような形で運用されていくべきものだろうと思います。これまでの議論の中でも出てきている、一定の場合にはむしろ客観的な基準で適用から外すという仕組みを設けることも重要ではないかと思います。また、撤回の際には、あらかじめ撤回した後に例えば労働時間制度としてどういうものが適用されるのかといったことや、仕事の中身に変化があるのかといったこと、撤回した後にどうなるのかということについての情報提供が恐らく撤回時の手続としては必要になってくるのかなと考えております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
オンライン参加の先生方、いかがでしょうか。何かございますか。黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
これまで数回にわたるヒアリングや今回のデータ分析からは、裁量の度合いが、労働時間の長さや満足度、健康状態の規定要因としてかなり影響を及ぼしているということが見えてきました。つまり、自由度の高い働き方というのは労働者の満足度や、ひいては健康を含むウェルビーイングを高めることにもなり得るということがわかってきたわけで、結果としてそれが生産性の向上にもつながりうるという意味で、裁量的な働き方がきちんと確保されていることが大きなポイントだと思います。
これを踏まえ、納得のいかない条件の場合に、本人同意を撤回するということをルール化、整備化していくということについては私も賛成です。ただ、その際のルールはできるだけシンプルにしていくべきだと思います。現在はそのルールが必ずしも制度間で統一されていないわけですが、もし統一する場合には、それをより厳格なルールのほうへ統一していくのか、それとも逆なのかということを考える必要があるかと思っています。
例えば資料1-1の6ページや7ページ、本人の同意あるいは撤回に関して比較してみますと、専門業務型に関してはあまりルール化されていないわけですが、それ以外の制度に関しては、どちらかというと入口をかなり狭くしておいて、一方で、制度の撤回という意味での出口のところも狭くしているという印象があります。
むしろこれからは入口を入りやすくしておく一方で、出口もシンプルかつ簡単にしておくというルール整備の仕方も一案なのではないかと思っています。というのは、裁量労働制などの自由度のある働き方というのは、働いてみないと、労働者もどういうことになるのかを想像できないと思うのです。今回のコロナ禍のように、テレワークも実際に働いてみると意外によかったという声が上がっているのと同様に、あまり入口を狭くしすぎると、なかなかその制度を試してみるというインセンティブが労働者にも働きませんし、使用者側も制度を積極的に活用していこうという気持ちにもならない。その意味で、入口のところをあまり狭くしすぎず、一方で、要件が合わないということが分かった場合には、一時的な適用除外も含めて弾力的に運用できるようなルール整備が必要なのではないかと感じています。
要件が合わないという見極めとしては、例えば労働時間の長さが過度になっているというのも1つの閾値になると思いますし、あるいは労働者から個別に相談があったときは、先ほど荒木先生からも労使委員会の回数をもう少し増やしたほうがいいのではないかという御意見がありましたけれども、長時間労働や過労の状況を半年に1回や1年に1回ぐらいしか点検しないという形ではなく、労働者や現場からそういった声や相談があればその都度直ちに労使委員会で対応するという形にしておき、裁量労働的な働き方を広く認めていくという方向性も一案なのではないかと思っています。
ただ、その際には、労使が何をもって要件が合わないと判断するのか分からないという問題が生じる可能性はあります。「何をもって」という判断材料についてですが、これまで多くの企業は、自社の制度的な枠組みや対応についてほとんど情報開示してこなかったわけですが、今後は裁量労働制を適用する際の要件や処遇、適用を外す場合の条件などについて各社からの積極的な情報公開を推奨し、他社比較を可能とすることによって、労使とも客観的に判断できる材料を増やしていくことも必要と考えます。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。島貫先生、お願いいたします。
○島貫構成員 先生方がおっしゃってくださったところに重なるところばかりなのですが、本人同意と同意の撤回ということに関して、これまで何度か意見させていただきました。本人同意、先ほどの入口のところだと思うのですけれども、実際に適用されたときにどういう働き方になるのか。それが制度上、説明されているものと合わなくなったときに、その制度からどのような手続きで適用除外になるのかというところを考える必要があると思います。
また、今、黒田先生がおっしゃってくださった柔軟に入口と出口を考えるというところで言いますと、同意して裁量労働制が適用されて、運用上うまくいっていないから適用除外になり、出ていくというところから、運用がうまくいくようになればもう一度戻ってこられるという意味も含めて「柔軟性」とおっしゃってくださったと思います。正しく運用されており、それに対して自分自身の働き方がフィットしているということであれば、その制度の適用や適用除外がある程度柔軟になされるということに関しては、私も賛成しています。
あとは適用除外について、先ほどほかの先生方もおっしゃってくださいましたけれども、本人の判断や意思と、客観的な指標としての健康管理の観点などの両面から適用除外のルールを定めていくというところは、私も賛成します。先ほどの調査の結果ですと、同意撤回の手続が定められていない、あるいは明確になっていないというところも一定数あったと思いますので、この部分はきちんと定めていく必要があると思っています。
また、若干細かいところですが、同意の手続というところが、裁量労働制の書き方ですと、書面での同意を中心として電子メールなどもあると思うのですが、中には口頭で確認をするという回答もあったりするので、きちんとエビデンスを残すということが大事かなと思っております。
これは先ほど黒田先生がおっしゃってくださったところで、それぞれの企業の裁量労働制がどういった仕組みになっているのかということと、運用の実態としてはどうなっているのか、例えば労働時間がどのくらいの水準にあるのかとか、実際に適用されている人たちにどの程度の裁量が付与されているのか、こういったところの情報開示や情報公開も併せて考えていったら良いと思っています。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、私からも若干コメントさせていただきます。既に各先生から御発言があったように、本人の同意について、高度プロフェッショナル制度と企画業務型裁量労働制にはその根拠となる規定があるのですけれども、専門業務型にはない。これは統一的な運用が望ましいのではないかということで、私も同感です。企画業務型を導入しているところは、専門業務型についても同様に同意を取るという運用が実務でもなされているようでございまして、同意というのは非常に重要だと思います。
若干敷衍いたしますと、裁量労働制というのは、実労働時間によって管理をするという働き方とは違うみなし労働制という別枠の働き方に移るということです。そのことを本人が納得して働くということが非常に重要です。納得しているということの確認がこの同意ではないかと思います。納得してもらうためには、企業のほうで十分に、裁量労働制で働くとはどういうことか、どのような処遇になるのか、どういう時間管理の実態に移るのかということをきちんと説明する必要があって、その上で、そういう働き方に移ることについて、自分はそれで結構ですという確認をする、納得していただくということが重要で、ここでその処遇についても十分な説明と納得を得るというプロセスが必要だと思います。
もう一点、これは藤村先生も御指摘されたように、本人は時間に縛られない自由度の高い働き方でいいのだということになっても、やはりワーカホリックの問題がございます。自分ではコントロールできない長時間労働に陥ってしまうという危険性がございますので、ヒアリングで聞いたように、実際の労働の実態が非常に長時間に及んでいるという場合には、もはや本人が自由に働くということが健康問題を生じさせるということで、裁量労働制から制度的に外すのが留意すべき対応の一つだろうと思います。
そうすると、恐らく、あなたは非常に長時間労働になっていて、このまま働くと裁量労働制から外れることになりますよということを企業から本人に通知をするという形でコントロールもなされていくのではないかと思います。
そういう形で企業のほうから裁量労働制を外す場合が一つ担保としてあり得るのですけれども、本人が同意を撤回するということも重要です。しかし、人事管理等を考えると、なかなか自由に撤回を申し出るのは困難ではないかという藤村先生の御指摘も大変重要だと思います。そのためには、ヒアリングの中で出てきたように、裁量労働制を外れたときも、なお本人が望むような形態での働き方の一つとしてフレックスタイム制があれば、裁量労働制から移りやすいという指摘があったところです。これは法律に書くかどうかという問題ではないのかもしれませんけれども、同意の撤回のしやすい環境の一つとしてフレックスタイム制も用意しておくということも考えられます。フレックスタイム制の場合には実労働時間に従って賃金も支払われる制度に移ることになりますが、そのような制度に移るのだということを説明して、その上で同意の撤回がしやすい状況を整えることも重要ではないかと考えたところです。
私からは以上でございます。
それでは、今までの様々な御意見を踏まえて、今の本人同意、同意の撤回の点でも結構ですし、併せて対象業務に関わっても結構ですが、御自由に御議論いただければと思います。藤村先生、お願いします。
○藤村構成員 例えば制度本来の趣旨から外れたような働かせ方をしている事業主に対して、何らかの罰則やペナルティーが必要ではないかなと思うのです。いい制度をいい制度として使ってもらうためには、その制度の趣旨を理解している事業主、あるいは働く人がそれを利用していくことが一番理想的な姿ですが、それを悪用しようとする、あるいは結果として悪用してしまったという場合に、何らかのペナルティーがあったほうがいいのではないかなと思います。どういう形で罰則を決めるかというのは難しいのだと思いますが、そういうことも制度をちゃんと使っていく上での条件の一つになるのではないかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ペナルティーの話が出ましたけれども、川田先生、何かありますか。
○川田構成員 恐らく今の法制度の下だと、裁量労働制の導入が適当な要件を満たしていないと判断された場合に、みなし労働時間制の効力が発生しない。その結果、原則的には実労働時間の規定に戻ることになるので、そこで例えば36協定なしの時間外労働等が発生していると労働基準法違反ということになるし、それから割増賃金も原則どおり1日8時間を超えたところでということになるわけですが、一つは、割増賃金について不払いということになると、裁判で訴えたら付加金の可能性もあるので、それなりに大きなサンクションである面はありますが、訴えないといけないというところがやや大ごとというところもあり、どちらかというとそういう大ごとにならない段階でのチェックというのも必要なのかなと思います。
一方で、先ほど挙げたアメリカのホワイトカラーエグゼンプションの制度は、要件の中の一部である賃金の払い方について、違反した場合に使用者が非常に大きな負担を受けるような制度設計をしつつ、自分で是正の仕組みを設けて、それをちゃんと機能させた場合には大きなサンクションを負わなくて済むという形で、自主的な是正の仕組みを設けて適切に運用することにインセンティブを持たせるということも行っています。
要するに、ホワイトカラーエグゼンプションの要件の中の一部のものについてですが、そこでは、ある1人の労働者との関係で問題が起きると、同じマネジャーが管理している同種の人全員について、適用除外の効果が否定され、制度上、集団訴訟も可能ということになっているので、例えば一気に莫大な割増賃金の支払い義務を負うことになる可能性がある一方で、見つかった問題のあるところについて早急に是正することでそういう効果を回避できるという制度です。ただ、一般的に言えばそのようなものも考えられなくはないと思いますが、ペナルティーをある意味大きくするような形をつくることで遵守に対するインセンティブを生み出している部分もあって、本当にそこまでやることが適切なのかどうかということは、日本の状況に即して考える必要はあるだろうなと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、今日も大変貴重な御意見を様々いただきましたけれども、本日の議論はここまでということにさせていただきたいと思います。
最後に、事務局から次回の日程について御説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 次回の日程、開催場所につきましては、追って御連絡いたします。
○荒木座長 それでは、第12回「これからの労働時間制度に関する検討会」は以上で終了とさせていただきます。本日も御参加いただきましてどうもありがとうございました。