第10回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年2月28日(月) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム

議題

  1. 労働時間制度に係る個別の論点等について

議事

議事内容
○荒木座長 おはようございます。皆様おそろいということですので、ただいまから、第10回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式となっております。
なお、本日、藤村先生は所用のため途中で退席と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでということで、議題に入らせていただきます。
事務局より資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
本日は、裁量労働制の各論のうち、みなし労働時間、処遇・評価及び健康・福祉確保措置について資料を御用意しておりますので、一括して御説明させていただきます。
まず、資料1-1、現行の裁量労働制について御説明いたします。
こちらは、本日のテーマごとに、現行の裁量労働制の内容につきまして、関連制度も参考として併せてお示ししながらまとめた資料でございます。
まず、1ページ目、「裁量労働制の概要」でございます。専門業務型裁量労働制は、表の左上、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる業務として、厚生労働省令及び大臣告示において新商品や新技術の研究開発やコピーライター等、19の専門的な業務が定められておりまして、これに従事する労働者について労使協定で定めた時間を労働したものとみなす制度でございます。
続いて下の段、企画業務型裁量労働制は、こちらの表の左下、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するために、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者に委ねる業務に従事する労働者について、労使委員会で決議した時間を労働したものとみなす制度でございます。
続きまして、2ページ目以降が裁量労働制と他の労働時間制度の比較の資料でございます。
まず2ページ目、こちらは裁量労働制におけるみなし労働時間につきまして、同様にみなし労働時間制である事業場外みなし労働時間制を参考として比較しながら整理したものでございます。
まず左端、御覧いただければと思いますが、事業場外みなし労働時間制では、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定しがたいときには、原則として、所定労働時間、労働したものとみなし、ただし、当該業務を遂行するためには、通常、所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、労使協定において定めた時間を当該業務の遂行に通常必要とされる時間として、この時間、労働したものとみなされるものでございます。
この事業場外みなし労働時間制におけるみなし労働時間につきましては、通達にて解釈を示しておりまして、この業務の遂行に通常必要とされる時間とは、通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間であり、この時間は一般的に時とともに変化することが考えられるものであり、一定期間ごとに協定内容を見直すことが適当とされております。
続きまして、表中央の専門業務型裁量労働制でございますが、こちらは対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間を労使協定において定めることで当該時間労働したものとみなされます。
この専門業務型のみなし労働時間については、具体的には、当該業務の遂行に必要とされる時間を定めることとされ、事業場外みなし労働時間制と同じく、この時間は一般的に時とともに変化することが考えられるものであり、一定期間ごとに協定内容を見直すことが適当と通達にて示されております。
続きまして、表右端にございます企画業務型裁量労働制でございますが、こちらは、対象業務に従事する労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間を労使委員会において決議等することで、当該時間、労働したものとみなされます。
この企画業務型のみなし労働時間については、告示(指針)でございますが、こちらにおいて、みなし労働時間を労使委員会で決議する際の留意事項を定めておりまして、そちらにおいては、労使委員会の委員は対象業務の内容を十分検討するとともに、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度について、使用者から十分な説明を受け、それらの内容を十分理解した上で適切な水準のものとなるよう決議することが必要であることに留意することを必要としております。
なお、こちらのページ、一番下に点線で囲んでいる箇所がございますけれども、御参考として、平成27年に労働政策審議会にて裁量労働制について建議いただいた内容のうち関連する部分を抜粋しておりまして、労働基準法第38条の4第3項に基づく指針、こちらはいわゆる企画業務型裁量労働制の指針(告示)でございますけれども、当該事業場における所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間相当働いたとしても、明らかに処理できない分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じないといったことは制度の趣旨を没却するものであり、不適当であるということに留意することが必要である旨を規定することが適当であると建議されております。
次に3ページ目を御覧いただければと思います。こちらは、裁量労働制における処遇・評価に係る内容につきまして、高度プロフェッショナル制度と比較した表でございます。
まず、表左端の高度プロフェッショナル制度では、告示(指針)におきまして労使委員会決議における処遇・評価について触れております。具体的には、労使委員会においては、一連の決議を行うに当たっては、委員が対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容を十分理解した上で行うことが重要であり、このため、決議を行うに先立ち、使用者は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について労使委員会に対し、十分に説明することが適当であるとし、また、委員は、使用者がこれらの制度を変更しようとする場合にあっては労使委員会に対し事前に変更内容の説明をするものとすることを労使委員会において決議することが適当、としております。
また、高度プロフェッショナル制度においては、加えて、対象労働者に関する要件ではございますけれども、法律及び省令において、年収、これは労働契約により使用者から支払われることが確実に見込まれる賃金の額でございますけれども、これが1,075万円以上であること、また、告示において、使用者は、労働者を制度の対象とすることでその賃金の額が対象となる前の賃金の額から減ることにならないようにすることが必要、とされております。
次に、先に表右端の企画業務型裁量労働制でございますけれども、こちらでも、高度プロフェッショナル制度と同じく、また同様の文言で、告示(指針)において労使委員会決議に関して処遇・評価について触れております。
そのほかの規定等はございません。
最後に、表中央の専門業務型裁量労働制でございますが、こちらにおいては、処遇・評価に関しては特段の規定はございません。
続きまして4ページ目、こちらにつきましては、裁量労働制の労働基準法における健康確保のための措置について、高度プロフェッショナル制度と比較した表でございます。
まず、表左端の高度プロフェッショナル制度でございますが、こちらについては健康確保のための措置としては大きく3点ございます。
まず1点目、①でございますが、年間104日以上、かつ、4週当たり4日以上の休日取得が必要でございます。
2点目、②でございますが、いわゆる選択的措置と呼ばれているものでございますが、下記の4つの選択肢、具体的には、勤務間インターバルの確保かつ深夜業の回数制限、健康管理時間の上限措置、1年に2週間以上の休暇取得、最後に臨時の健康診断、これら4つの選択肢のうちからいずれか、労使委員会の決議で選択した措置を使用者は実施する必要がございます。
3点目は、③、いわゆる健康・福祉確保措置でございますが、こちらの措置の具体的メニューは省令で限定列挙しておりまして、ページ下中央の点線で囲まれている箇所を御覧いただければと思いますが、先ほど②選択的措置のメニューがございましたが、これらのうち、②の選択的措置として選択しなかった措置からいずれか、また、医師による面接指導、代償休日又は特別な休暇の付与、心とからだの健康相談窓口の設置、適切な部署への配置転換、産業医等による助言指導又は保健指導で、この中から労使委員会の決議で選択し、実施する必要がございます。
なお、これら①から③全てを実施する必要がございますが、特に①と②を実施していない場合には、当該労働者への制度の適用が無効となります。
次に、先に表右端の企画業務型裁量労働制から御説明させていただきますが、こちらにおいては、労使委員会の決議で定める健康・福祉確保措置を労働者の労働時間の状況に応じて実施する必要がございますが、その措置の具体的メニューにつきましては、その下の点線で囲っている箇所でございますが、指針(告示)におきまして、代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの健康相談窓口の設置、適切な部署への配置転換、及び、産業医等による助言指導又は保健指導を告示におきまして例示列挙しております。
最後に、表中央の専門業務型裁量労働制におきましても、労使協定で定める健康・福祉確保措置を、労働者の労働時間の状況に応じて実施する必要がございますが、この措置の具体的メニューにつきましては法令で定めておらず、通達において、この下に「※」が書いてありますけれども、「企画業務型裁量労働制と同等のものとすることが望ましい」としております。
続きまして、5ページ目を御覧ください。こちらについても健康確保に関する表でございますけれども、医師の面接指導、労働時間の状況の把握につきまして、一般労働者と高度プロフェッショナル制度と比較した表でございます。
まず、表の上段、労働安全衛生法に基づく医師の面接指導につきましては、要件等に一部違いはございますけれども、一般労働者、高度プロフェッショナル制度、裁量労働制、全てその対象となっております。
この医師の面接指導を行うために、表の中段、労働安全衛生法に基づき、労働時間の状況の把握を一般労働者と裁量労働制適用者について行う必要がございます。
この安衛法上の労働時間の状況の把握については、表の下の「※3」、小さい文字で恐縮ですけれども、御覧いただければと思いますが、タイムカードによる記録やパソコン等の使用時間の記録等の客観的な方法で把握する必要がございます。
ここで高度プロフェッショナル制度については「-」となっておりますけれども、そのすぐ下の欄、労基法上で健康管理時間の把握義務がございますので、これが代替する形となって、この把握結果をもとに医師の面接指導が行われます。なお、健康管理時間については、「※6」にございますとおり、タイムカードによる記録やパソコン等の使用時間の記録等の客観的な方法で把握する必要がございます。
また、労働時間の状況の把握については、表の一番下の段、安衛法とは別に、労基法においても裁量労働制の中で求められております。
具体的には表の下の「※4」の箇所でございますが、先ほど前のページで説明させていただいた裁量労働制における健康・福祉確保措置は、労働者の労働時間の状況を把握し、これに応じて実施する必要があることから、労基法においても労働時間の状況の把握が求められているものでございます。
なお、労基法上の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法といたしましては、この「※4」に続いて記載しておりますが、「いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退室時刻の記録等による」としております。
また、このページの一番下、点線で囲んでいる箇所でございますが、こちらも御参考として、平成27年の労働政策審議会での建議及びその後の平成29年の労働政策審議会で諮問・答申された際の法案要綱の内容のうち、裁量労働制の健康・福祉確保措置に係る記載を抜粋したものでございます。
当時の建議や法案要綱では、企画業務型における健康・福祉確保措置について、現行告示で例示されているメニューに加え、勤務間インターバルや、一定時間における労働時間の上限の設定等を追加し、かつ、これらを、告示での例示列挙ではなく、省令で規定すること、また、一番下の行に注⑤がございますけれども、この内容は専門業務型においても同様の改正を行うこととするとされておりました。
6ページ目以降は参照条文ですので、適宜御参照いただければと思います。
続きまして、資料1-2の「裁量労働制実態調査の結果について(概要③)」という資料を御覧ください。こちらは裁量労働制実態調査の結果として、これまでの検討会でお示ししたデータ等のうち、今回のテーマに係るものを一部抜粋したものでございます。
3ページ目から7ページ目までが労働時間関係でございます。
まず3ページ目と4ページ目は、左側に適用事業場における制度の導入理由を、右側に適用労働者における働き方の認識を掲載しております。
まず、3ページ目の専門型でございますけれども、左側の適用事業場における制度の導入理由については、「労働者の柔軟な働き方を後押しするため」の割合が最も高く、右側の適用労働者における働き方の意識については、「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」のほか、「仕事の裁量が与えられることで、メリハリのある仕事ができる」「効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる」の割合が比較的高く、続く4ページ目の企画型でも、専門型と同様の傾向にあるほか、制度の導入理由については、「柔軟な働き方を後押しするため」に次いで、そのすぐ右隣の、「労働者の能力発揮を促す」、「効率的に仕事を進めるよう労働者の意識改革を促すため」も同程度の高い割合を示しております。
続いて5ページ目、労働者における現在の働き方に対する認識の資料でございますが、先ほど3ページ目、4ページ目の右側にも適用労働者の結果を掲載しておりましたが、この5ページ目は適用労働者と非適用労働者の比較でございます。
上の専門型、下の企画型ともに、左から2つ目の「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」の割合が適用と非適用で特に差が大きくなっているところでございます。
続きまして6ページ目を御覧ください。左側は適用労働者における「1日のみなし労働時間の認知状況」でございますが、こちらについては、約6割が「分かる」と回答しております。
同じページ右側、「1日の平均実労働時間数と平均みなし労働時間数」のデータでございますが、特に上側、青色の適用事業場調査の表を御覧いただければと思いますが、このうち「外れ値を除く」欄を御参照ください。こちらについては、実労働時間がみなし労働時間より、専門型では約30分、企画型では約1時間長くなっております。
続きまして7ページ目、「事業場の労働時間の把握方法」でございますが、上半分が専門型、下半分が企画型ですが、それぞれ上側の適用事業場のグラフを御覧いただければと思いますが、青色のタイムカード・ICカードですとか、濃いピンクのPCのログイン・ログアウト等の客観的方法が6割超を占めておりますが、他方で、薄いピンクの自己申告も、専門型では35.2%、企画型では22.3%と一定割合あるところでございます。
続きまして、9ページ目から16ページ目までが処遇・評価関係でございます。
まず、9ページ目、10ページ目は適用労働者における働き方に対する認識についての制度適用の満足度別のデータでございまして、9ページ目が専門型、10ページ目が企画型でございます。
ページ上側の横の棒グラフにて、前提データとして制度適用の満足度を示した上で、下側に、満足度別にそれぞれ縦の棒グラフにて、働き方の認識のデータを掲載しております。
9ページ目の専門型、10ページ目の企画型ともに、上の棒グラフ、「満足」・「やや満足」を合わせた割合は8割程度で、制度適用の満足度は高い傾向にございまして、この「満足」等における働き方の認識を見ていただきますと、濃いピンクの「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」が高い割合を示しております。
他方、「不満」・「やや不満」を合わせた割合、専門、企画ともに2割以下でございますが、この「不満」等における働き方の認識は、この縦の棒グラフで言うと、グラフ中央から右寄りの割合が高い傾向にございまして、特に茶色の「業務量が過大」、赤の「みなし労働時間の設定が不適切である」、その隣の「労働時間が長い」のほか、青の「賃金などの処遇が悪い」、濃いピンクの「人事評価が不適切である」といった処遇・評価関係の割合も高くなっているところでございます。
次に11ページ目、12ページ目は、制度の適用の満足度の昨年の年収階級別のデータでございまして、11ページ目が専門型、12ページ目が企画型でございます。
ページ上側の横の棒グラフにて、前提データとして年収階級の分布を示した上で、下側に年収階級別にそれぞれ制度適用の満足度のデータを掲載しております。専門型、企画型ともに、年収が上がるにつれて満足度も上がる傾向にございます。
続きまして13ページ目については、左側が適用労働者に対する特別手当について、「1か月ごとに支払われている」と回答した適用事業場の割合、こちらは専門型は47.2%、企画型は63.2%でございました。この「1か月ごとに支払われている」と回答した事業場を対象として、特別手当の名目を調査した結果が同じページ右側でございますが、専門型、企画型ともに、「通常の所定労働時間を超える残業代として」の割合が最も高くなっております。
続いて14ページ目、こちらは、同じく「1か月ごとに支払われている」と回答した事業場における特別手当の1か月の平均金額の分布のデータでございますが、専門型、企画型ともに「5万円以上6万円未満」の割合が最も高く、平均金額としては、右上に書いてありますけれども、専門型は7万3,545円、企画型は8万5,401円となっております。
次に15ページ目、特別手当の有無の企業規模別のデータです。こちらは、専門、企画ともに概ね規模が大きくなると手当の支給割合が高くなるという傾向にございます。
次に16ページ目、特別手当の有無の労働組合の有無別のデータです。こちらも、専門、企画ともに労働組合があるほうが手当の支給割合が多くなっております。
最後に、18ページ目から27ページ目までが健康・福祉確保措置関係でございます。
まず、18ページ目、労働者調査における1週間の実労働時間の分布のデータでございますが、左側の棒グラフを御覧いただければと思います。1週間の実労働時間数が40時間以上の労働者の割合は、適用労働者のほうが非適用労働者に比べ若干多くなっております。また、右端、赤い点線で囲っている箇所でございますが、1週間の実労働時間数が60時間以上の労働者の割合についても、適用労働者のほうが非適用労働者よりも少し多くなっているところでございます。
続いて19ページ目、労働時間の分布を、適用労働者について、専門型と企画型に分けて示したものでございます。こちらも、右端の赤い点線で、囲っている箇所を御覧いただければと思いますが、1週間の実労働時間数が60時間以上の労働者の割合については、専門型のほうが企画型よりも若干多くなっております。
続きまして20ページ目、21ページ目は、労働者における深夜労働と休日労働の状況のデータでございますが、今回は、それぞれ上半分の適用労働者の部分を御覧いただければと思います。
まず、20ページ目左側、「深夜の時間帯に仕事をすること」の程度については、適用労働者において企画型よりも専門型のほうが、ピンク色の「よくある」「ときどきある」の割合が高くなっております。
なお、同じページの右側、「週休日や祝日などに仕事をすること」の程度、また、21ページ目の左側、「勤務時間外に電話、メール等で仕事関係の連絡をとること」の程度、また、その右側、「仕事をしない日が週に1日もないこと」の程度、いずれにおきましても、先ほどの深夜時間帯と同様、企画型よりも専門型のほうが、「よくある」「ときどきある」という割合が高くなっております。
続いて22ページ目、仕事のある日とない日の1日当たりの睡眠時間でございます。こちらについては、下の平均睡眠時間の表を御覧いただければと思いますが、それぞれ、適用、非適用、また専門型、企画型、いずれにおいても、仕事がある日は6時間程度、仕事がない日は7時間30分程度とほとんど差がない結果となっております。
続きまして23ページ目の左側、調査時点の健康状態の認識については、適用労働者は、「よい」「まあよい」を合わせた割合は、非適用労働者よりも適用労働者のほうが、若干ですが、多くなっています。
同じく23ページ目の右側ですが、調査時点の前年同月からの健康状態の変化の認識については、適用、非適用、いずれも「変わらない」と回答した割合が8割超を占めております。
続く24ページ目でございますが、こちらは、第2回の検討会におきまして、東京大学の川口教授より、裁量労働制実態調査のいわゆる二次分析の結果を御説明いただきましたが、その際の資料から一部抜粋したものでございます。
こちらにおいては、健康状態については、「適用労働者のほうが非適用労働者と比べて健康状態がよいと答える傾向がある」が、ただ、「健康状態が良いため裁量労働制で働いている可能性もあることは留意すべき」、また、メンタルヘルスについては、「適用労働者と非適用労働者のグループ間に統計的に有意な差はない」とのことでございました。
続きまして、25ページ目を御覧ください。こちらは事業場に設けられている健康・福祉確保措置につきまして、事業場に複数回答で回答いただいた結果でございますが、割合が高い順から、青の専門型では、左から4番目、「労働者の勤務状況及び健康状態に応じて、健康診断を実施する」や、その左隣の、「心と体の健康相談の窓口を設置する」、「休暇取得促進措置(年次有給休暇の連続取得など)を講じる」、また、赤の企画型では、ページ中ほどの、「一定時間以上の勤務や休日労働が行われた場合に産業医等による面接指導を受けさせる」、また、「心と体の健康相談窓口を設置する」、「休暇取得促進措置(年次有給休暇の連続取得など)を講じる」が高い割合を示しております。
続きまして26ページ目、適用労働者の勤め先に現在設けられている健康・福祉確保措置に対する満足度についてのデータでございますが、専門、企画ともに「満足している」の割合が最も高く、半数前後を占めておるところでございます。
最後に27ページ目、こちらは労働者調査結果でございますが、青が、適用労働者の勤め先に現在設けられている健康・福祉確保措置、黄色が、適用労働者が希望する健康・福祉確保措置でございます。
このうち、黄色の適用労働者が希望する健康・福祉確保措置につきましては、上の専門型、下の企画型ともに、左端の「労働者の勤務状況及び健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与する」や、そのすぐ隣の、「休暇取得促進措置を講じる」の割合が高くなっております。
資料1-2については以上でございまして、続いて、資料1-3を御覧ください。こちらは、長時間労働者に対する面接指導の実施状況についてでございますが、簡単に御紹介させていただきます。
こちらは厚生労働省で実施しております労働安全衛生調査の結果でございますが、直近の令和2年の結果ですと、月80時間超の時間外・休日労働した労働者がいた事業所の割合は全体の2.5%で、面接指導の申出をした労働者がいた事業所は、そのうち12.1%、またさらに、そのうち実際に医師による面接指導したかどうかをその右に示しておりますが、95.4%が「実施した」としているところでございます。
続いて、参考資料1と参考資料2、本日つけさせていただいておりますが、まず、参考資料1でございます。こちらは第1回検討会の資料にも一部つけさせていただいたもので、先ほど少し御紹介いたしましたが、過去の労働政策審議会の建議ですとか、諮問答申時の法案要綱等でございます。
参考資料2は、昨年12月の第7回の検討会の資料としてもつけさせていただきました「主な論点」でございまして、そのうち2つ目の○の1ポツ目の「労働時間、健康・福祉確保措置、処遇・評価」について本日御議論いただくということで、改めてこちらの資料をつけさせていただきました。
事務局からの説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。事務局から、現行制度、裁量労働制実態調査の結果、労働安全衛生調査結果について御説明をいただきました。これらを踏まえまして、今日3つ論点がございますけれども、みなし労働時間、それから処遇と評価、この2つについて、まず皆様から御意見をいただき、健康確保のほうは後ほど、分けて議論させていただきたいと考えております。
それでは、どなたからでも結構ですので、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。
どうぞ、藤村先生。
○藤村構成員 みなし労働時間、あるいは労働時間の把握というところですが、例えば製造現場というのは標準工数を非常にきっちりとはかっていまして、これだけの生産量を実現するためには何人必要かということが明確に出来上がっています。標準工数というのは、トラブルが発生する可能性があるので、そこも織り込んで決まっています。
例えば自動車の製造現場では明確に決まっているのですが、事務・技術系の人たちについて標準工数のようなものがあるかというと、私は、見たことがありません。人事の人に聞いても、そこはあまり明確でない。その辺りをどのように考えるかというのが一つの論点になるように思います。
例えば専門業務型で、服飾のアパレルのデザイナーをやっている方、こういう人が具体的には当たると思うのですけれども、例えば1週間の間にデザインを10枚つくらなければいけないという課題が与えられます。デザインという仕事は、うまくいくときには、それこそ10枚だったら3時間もあればできるという場合もあります。逆に、うまくいかない場合には、何日かけてもなかなかできないということがあるのです。
ただ、経験的に、10枚のデザインをつくるためには大体これくらいの時間数が必要だというのを企業は持っているはずなのですね。ですから、それを前提に、これだけの仕事量の場合にはこれだけの人員が必要だというのを本来は配置すべきだと思います。ただ、先ほどの製造現場の標準工数にはトラブルの部分も織り込んであると申し上げましたが、事務・技術系の職場では、最もうまくいった状態を前提に人員の配置をしているように見えます。
ソフトウェア開発のエンジニアもそういう働き方をしていると思うのですが、非常にうまく開発ができた場合に、これぐらいの工数がかかるというのは持っているはずです。これを前提に人員の配置がなされているので、トラブルが起こったりして遅れると、長時間労働で対応せざるを得なくなります。会社側の主張としては、「それは君の能力が低いからだ。もっと能力を上げればこの時間で終わるはずだ」という言い方をします。でも、これは働く側からすると納得ができないということになります。
ソフトウェア開発というのは、途中で仕様変更がしばしば入るようです。最初に設定をした条件の途中で、発注元から、「こういうことをやってほしい」とか「こういうのも入れてほしい」という要望が入ります。すると、その分だけ工数が上がっていくのですが、それに応じて人員の配置がなされることはありません。結果として、長時間労働になり、それがいろいろな不満の原因になっています。ですから、仕事ごとの標準工数のようなものを企業は把握しているはずなので、それに応じた人員の配置が必要だと思います。
それから、処遇については、例えば年収要件を設定してはどうかという議論もあると思いますが、それはなかなか難しいと思います。それを補う方策として、例えば世間相場を知らせることがあると思います。厚生労働省が3年に1回とか5年に1回、裁量労働制で働いている人たちの年収を調査して、こういう仕事の場合、これぐらいの年収が標準ですというのを、裁量労働制の労使委員会とか、労使の話し合いの場でそれを必ず提示することを義務化することが考えられるのではないかと思います。世間相場と比べてうちの裁量労働制の処遇の金額は多いか少ないのかという情報を働いている人も持つということです。そうすることによって、不当に低い報酬で長時間働かされて、裁量労働だからそれで受け入れるしかないよねと言われる人を減らすことができるのではないかと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
主としてみなし時間数の設定の話のところになるかと思いますが、大きく3点に分けて、できるだけ簡潔に述べたいと思います。
1点目と2点目は、裁量労働制の趣旨を踏まえてみなし時間の設定の仕方について考えてみた場合にどのようなことがいえるかという点に関することです。これまでの企業等に関するヒアリングの結果等を見ると、成果主義的な評価と結びつけるなどの形で、実労働時間には必ずしもとらわれないみなし時間の設定の仕方をするケースがある一方で、ある程度実際の労働時間に合ったようなみなし時間を設定するようなケースもあって、恐らく制度として許容されるかどうかという観点から言えば、どちらも許容されるものであろうと思います。ただ、まさに裁量労働制というみなし労働時間制に属する制度をとることで可能になる扱いという意味合いが強いもの、そういう意味で、裁量労働制の趣旨とより深く結びついていると考えられるのは、前者のような扱いだろうと思います。実労働時間規制にとらわれないような自由度の高い働き方をすることで成果が上がりやすくなるような働き方、あるいは、処遇との関係で言うと、時間の長さに応じた賃金という形で処遇することが、その労働者に求められている働き方との関係で必ずしも合理的ではなく、むしろ成果に応じた処遇をすることが望ましいと考えられるような働き方について、実労働時間規制と切り離された働き方を許容するというのが一番制度趣旨と深く結びついた裁量労働制の用い方だといえるだろうと思います。
若干補足すると、1つは、以上のようなことは、現行の制度との関係についてのことで、まず、企画業務型、専門業務型、どちらについても当てはまると考えていいのではないかと思います。細かく見ていくと、例えば対象業務のところでの要件の定め方などについて両者の制度の違いを考慮する必要が出てくる場面があるのかもしれませんが、みなし時間についての考え方ということで言えば、先ほど述べたようなことが企画型、専門型どちらにも同じように当てはまるのではないかと思います。
その一方で、そこで述べたような成果主義的な処遇の制度を設けるために裁量労働制の導入が不可欠かというと、そこに論理必然的な結びつきがあるわけではないとも言えるのではないかと思います。今の話というのは、法的な制度導入の要件として考える際にどこまで反映させるかということに直接結びつくものではなく、むしろ制度の趣旨との関係でふさわしいみなし時間の考え方についておおまかに考える際に、原則論的なところでそういうことが言えるということをまず確認しておくべきであろうというレベルの話であり、その上で、より具体的な、例えば制度を考える上での要件などについてはそれを前提にさらに考えていくということが必要なのかと思います。
それから大きな2点目は、今の話の中でも触れましたが、豺狼労働制において実労働時間とある程度近づけるような形でみなし時間数を設定するというやり方も、制度が許容するところの範囲内には入ってくると考えてよいだろうと思います。
ただ、その一方で、このように想定される実労働時間数に近い時間という形でみなし労働時間数を設定する扱いは、実労働時間を必ずしも厳密に把握したり管理したりしないで、みなし時間制という枠組みの下で実労働時間に近い概括的な時間数をもとにして、割増賃金などを含むいろいろな時間とか処遇に関わる管理をするというところに主眼をおいているということか思いますが、裁量労働制ということである以上、単純に労働時間の算定、管理やそれに基づく処遇を概括的な時間把握の下に行う扱いを許容する制度ではなく、やはり働き方に裁量性があるという点は重要と言えるだろうと思います。
そういう点からすると、今挙げた、実労働時間に近いみなし時間を設定するというやり方をとる際にも、そこにおける労働者の働き方について、使用者が時間の面も含めて一定のコントロールをするような実態があって、それが働き方に裁量性があるとはいえないと評価されて、その結果たとえば裁量労働制の対象業務に該当しないとの評価がされる場合には、裁量労働制の適用としては不適切なものとなってしまうし、そういうことにならないようにするという点については、あらためて注意が必要だろうと思います。実労働時間規制に近いみなし時間数の設定それ自体は許容されるものといってよいだろうけれども、裁量労働制である以上、それは単なる労働時間の概括的な把握を許容する制度と捉えられるべきものではなく、働き方の裁量性が確保されることへの留意が必要であるということで、これが2点目です。
3点目として、みなし時間数の設定の仕方については、割増賃金の抑制や労働時間規制の適用逃れを主眼に置く形で実労働時間より短いみなし時間数を設定する、あるいは、今2点目のところで触れたような、裁量的な働き方の実態がないところで単に労働時間を概括的に把握する扱いをするためにみなし労働時間制を適用するなどの濫用的な用いられ方を防ぐという点については格別の格別の留意が必要かと思っています。
この点については、みなし時間数の設定だけでなく、裁量労働制の制度内容の様々なところに関わってくる点であるように思います。例えば対象業務とか対象労働者の要件などとも深く関わるのではないかと思っていますが、みなし時間数の設定が不適切であるということが濫用的な制度の使い方つながったり、あるいは裁量性が損なわれるような実態のところに裁量労働制が適用されてしまうという話につながるという点もあるということで、ここでのみなし時間数を含め、ある程度全体を通じて見ていく必要があると考えています。
関連して、裁量労働制の濫用的な使われ方の防止という点に関してもう一つ述べておきたい点として、これはみなし時間数の設定だけではなく、裁量労働制の全体に関わることですが、裁量労働制の濫用的な使い方というと、これまでのところ、割増賃金を含む賃金処遇との関係で、割増賃金の支払い義務を回避することに主眼が置かれるような使い方はよくない、あるいは、そういうことを通じて働き方の実態と処遇のバランスが崩れてしまうような働き方を実現してしまうのはよくないというような点に問題意識が集まっているということができ先ほどの藤村先生の御議論も、そういう濫用的な使い方を避けるための工夫というような観点から見ることもできるのかなと思っております。この点について、濫用がどういう観点から問題になるかということに関しては、近年の改正で時間外労働の上限が加わったということを考えると、これからという視点で問題になり得る点としては、賃金の処遇と結びついた形での濫用とは別に、時間外労働の上限規制を回避するという観点からの濫用というおそれにも注意を払う必要があるのかと思っています。
若干長くなりましたが、以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
島貫先生、どうぞ。
○島貫構成員 ありがとうございます。
みなし労働時間と処遇に関して2つほどコメントさせていただきます。
1つ目は、裁量労働制に関してしばしば議論に挙がる、労働者の方々が感じている処遇の悪さというところなのですけれども、どういう意味で処遇が悪いと考えるのかをまず整理したらいいのではないかということです。
例えば、先ほど事務局の方から御報告もございましたけれども、そもそも賃金の水準が低いということなのか、それとも業務量に賃金が見合っていないということなのか、あるいは、先ほど藤村先生からもお話がありましたけれども、自分が発揮している成果がきちんと評価されず、処遇に反映されていないということなのか、ほかにもあるかもしれませんけれども、幾つかあるだろうと思っています。
不満の原因が賃金水準であれば、これも一つの論点だと思うのですけれども、裁量労働の対象業務や対象労働者の賃金水準を設定するのかどうかという論点になると思いますし、業務量に見合っていないということでしたら、対象業務としてどういうものがふさわしいのかとか、特別手当も論点になると思います。もし評価の問題ということになると、評価制度のあり方というところまで踏み込んで議論することになると思います。川田先生から御発言がございましたように、裁量労働制を考えるときに、今申し上げたような3つの観点のうち、どこに要件を設定していくのが望ましいのかということは考えたほうがいいだろうと思っています。これが1点目です。
2点目は、処遇に関する情報開示、情報公開に関してですけれども、先ほど藤村先生からもお話ありましたけれども、それぞれの企業が行っている裁量労働制に関する労働時間管理と処遇に関しても、情報公開とか情報開示を促進していくほうがよろしいのではないかと思っております。
ここも大きく2つ3つぐらい考え方があると思うのですけれども、1つは、優れた労働時間管理や処遇のあり方をより知ってもらうという意味での情報公開もあると思うのですけれども、まずは一般的に裁量労働制を採用している企業がどういう処遇を行っているのかということを知っていただく必要があると思います。先ほど藤村先生がおっしゃっていたような、全体としてどういう水準にあるのかという点と、個々の会社でどのように行っているのかという点の2つあるのかなと思っています。
処遇といっても賃金水準とかより広く処遇水準ということもあると思いますし、評価制度や賃金制度のあり方、特別手当のベースになっている考え方とか、いろいろな観点があると思うのですけれども、何を全体の水準や傾向として開示するのか、何を個社の取組として開示するのかというところも考えてはどうかと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑先生、どうぞ。
○小畑構成員 ありがとうございます。
先生方の御意見と重複するところもたくさんあるのですけれども、ヒアリングなどを通して、裁量労働といっても、企業によってやはり多少違いがあるということが痛感されました。幅があるというように思います。それは川田先生が整理してくださったところとも重なると思いますけれども、そのような状況の中で自分の会社はどのような裁量労働制なのかということを理解した上で、どのように運用されているかというところが若干気になるところで、その説明が十分になされているか、例えば処遇や評価についてもちゃんと把握した上で同意を取っているのだろうかというところが気になるところでございます。
裁量労働制をぜひ自分に適用してほしいと思っている方の典型的なモデルを考えますと、労働時間主権が自分自身にある、労働者個人にあるというところに魅力を感じていらっしゃると。会社とか上司が労働時間主権を持っているのではなくて、ある程度自分で決められるというところに非常に魅力を感じる。そして、賃金の決まり方というのも、働いた時間数と比例するなどのそうした影響が必ずしもない。原則としてはない。しかも、みなし労働時間の中で効率よく仕事を終わらせれば、家族のための作業をしたり、副業したり、ほかの教育訓練を受けるといったようなスキルを磨くということも柔軟にできるというところに魅力を感じているにもかかわらず、実は適用されて実際に始まってみると、話とは違って、少し余裕がありそうだから、だったらこれも、仕様が変わってもできるよねとか、人を補充しなくてもいいねというようなことで追加的な業務が、藤村先生がおっしゃったように発生してくるということですと、時間主権というのが侵されてしまうということが心配されますし、そういったことについてちゃんと報いるというような評価システムがあるのか、また不満がたまった場合に、上司に直接言う以外のルートでの解決ができるかどうかといった点も気になるところでございます。
そして、本当に苦しくなった場合に適用を外れるといったようなところまでも考えて、労使委員会の機能の強化でありますとか、もしくは本当に追い詰められてしまった場合のシェルターもしくは逃げ道のようなものがあることが必要になってきてしまうということも、実は裁量労働については懸念される部分もあるのではないかと思っている次第でございます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
最初の2つのポイントについて、私も一言コメントさせていただきたいと思います。今日の資料1-1の2ページとの関係で、事業場外みなしについては、「ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」というのが法律の条文でございます。ですから、必要労働時間とみなすというのが事業場外労働の考え方です。
ところが、これに対応する条文が裁量労働制にはないわけですね。ですので、必要労働時間と対応することは法律上は要求されていないということになります。これに対して通達でこのような、割とパラレルな取扱いがされているというのが客観的な状況かと考えております。その結果、みなし時間と実働の乖離問題をどう捉えるかということにつながってきますので、まず法制度の違いということについては、押さえておいていただければと考えております。
そこで今回いろんなヒアリングをいたしましたところ、大企業で、裁量労働制が労働者にも高く評価されて運用されているというところでは、所定労働時間とみなしている例がありました。実働がそれより長いという実態はあるけれども、それについてはいわば裁量労働手当という形で対応しているという運用がありました。これは実労働とみなしの乖離を前提としつつ、処遇の点でそれが納得のいく制度にしていくという運用がなされております。これは、今申しましたとおり、事業場外労働のみなしとは違って、裁量労働ではそういうことも法律上認められていると私は理解しているところです。
それから、御発言がありましたとおり、情報開示によって妥当な運用となるということを労使が納得して決めていくという点、これも大変重要だと思います。裁量労働制の良い点をアピールするということもありますし、それから、そのような制度が妥当かどうかをチェックするという両方の面で、重要な点だと思います。
それから、最後に、小畑先生御指摘のように、労使、とりわけ労働者が納得した上でこの裁量労働制の適用を受けるということは非常に重要で、それは満足度の高い働き方にも結びつくということになります。しかし、当初納得していたところ、運用が始まってみると想定と違った、こんなはずではなかったといった場合、現行制度では労使の協定や決議は裁量労働制導入のときの要件ではありますけれども、それが運用されているところでのチェックは必ずしも十全ではないという問題点があると思います。その点をどうしていくか、運用実態が当初の制度導入の労使の了解と違う場合をどうチェックしていくかというのは大変重要な課題となってきているのではないかと考えております。
私からは以上ですけれども、先生方からの御発言を踏まえて、さらに御自由に御発言いただければと思います。
黒田先生、どうぞ。
○黒田構成員 ありがとうございます。
現在、新しい働き方がかなり普及していますので、裁量労働制だけを議論することが果たしていいのかどうか、この検討会でも労働時間制度全体のあり方についてまた改めて考える機会も必要だと思っています。今日の論点は裁量労働制に限定してということなので、その裁量労働制に関して意見を少し述べたいと思います。
まず、みなし労働時間についてですけれども、そもそも裁量労働制は、業務遂行の手段や時間配分に関して労働者の裁量に委ねること、さらに労働時間と生産が必ずしも1対1対応していない業務を担っているということが前提になっていると思います。
しかし、今回の調査では、裁量労働制の適用を受けている労働者の中に、実は裁量がない人が少なからずいるということが明らかになってきました。
これに関連して、今回事務局がまとめてくださった資料1-2の9ページと10ページで、どんな方が不満を訴えているかというところが見えてきたわけですけれども、私自身は、棒グラフが最も高いあるいは2番目に高い項目にのみ注目するのではなく、それ以外でも棒が結構高くなっている項目同士はかなり相関が高いのではないかと思っていまして、全部を総合して裁量がないことが、業務量の過大感や長時間労働につながっているのではないかと読み取っております。
そういう意味では、先ほど小畑委員もおっしゃっていましたけれども、当初の了解とちょっと異なるような運用になってきたときに、それをどのように是正していくかが重要なポイントになっていくのではないかと思っています。例えば、あらかじめ設定しているみなし時間に合わないほどの業務量が命じられる場合には、それを拒否できる裁量権を必ず担保するというような方向性です。
とはいっても、現実にはなかなか断ることは難しいというケースも多いと思います。突発的で急な対応が求められるような業務が発生した場合には、一時的に裁量労働の適用から外れ、そうした業務が終了した際には再び裁量労働制の適用に戻るというような、適用と非適用の行き来が可能となることを担保するという仕組みも重要になってくるのではと思います。
それから、既に発言された他の委員と重複しますが、これまでは、裁量労働制で働く人たちが、どれぐらい裁量があって、どれぐらいの処遇を受けているかといった情報がほとんどなく、今回、調査で初めて明らかになったことが非常に多いと思います。今後は裁量労働制の適用対象者の処遇やみなし時間制度の運用の仕方などを、企業が積極的に開示していくということを政府として促していくことも重要と考えております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはよろしゅうございますか。
それでは、相互にも関係しておりますので、次の論点、健康・福祉確保措置について、これもまた自由に先生方から御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
堤先生、どうぞ。
○堤構成員 ありがとうございます。健康確保措置関係、少し意見を述べさせていただきます。
まず、先ほど来議論があります裁量労働制のメリットといいますか、創造的な働き方ということはやはりちゃんと進めていくというような前提ですけれども、一定程度、労働時間管理というものもそれにうまいあんばいでちゃんと見ていかなければならないのではないかというのが健康確保措置の方からみての意見でございます。
繰り返しますけれども、創造的な働き方を阻害しないというような形で、労働時間管理について厳密過ぎますと、ちょっと困るところがありますけれども、労働時間の状況の管理という点では、労働時間は重要で、企業間でその取扱いが曖昧にならないためにも、ある一定明確にしていくのが必要ではないかと思います。現状はやはり労働時間が長時間労働等の健康問題があるというような観点からは大切なところではないかと思っています。
先ほど川田委員からも別観点で御紹介がありましたけれども、労働時間の管理に関しては、平成30年の改正で、時間外労働の上限規制、それから、労働安全衛生法に基づく労働時間の状況の把握義務等が設けられておりますけれども、こちら、やはり一定の検討がなされた積み重ねの上に成り立っておりますので、こういった形を土台として裁量労働制の健康・福祉確保措置も考えていくのが妥当ではないかと思います。
それから、企業間での曖昧さといいますか、それを避ける方向といいますか、実効性を高める上では、現状、健康・福祉確保措置は例示列挙というような形になっておりますけれども、選択肢のいずれかを実施するというところをできるような方策にしますと、安心できる制度になるのではないかと思っています。
それから、今日は事務局から御提示のありました資料1-2の最後の資料で、現在設けられている健康・福祉確保措置の運用を改善するというようなところに10~15%程度の希望があるようですけれども、この中で、勤務間インターバルに関しては、十分なインターバルがあることが健康に好ましい、もしくは、逆に十分でない場合は健康に好ましくないというような研究結果も出ておりますし、私たちが伺いましたヒアリングでもとても上手に使った好事例として管理されているようなところもございました。したがって、勤務間インターバルというのをうまく適用していく余地があるのではないかと思います。
それと共に、幾ら勤務間インターバルが確保されていたとしても、いわゆる仕事関連の連絡がその中に入ってくるといった状況であると、健康に好ましくないといったような知見が国内外で見られてきています。例えば勤務関係のメールに対応しなければならないといったような状況が頻発するという状況になりますと、これは裁量労働制の趣旨にも少し外れるようなところがありますし、先ほど申し上げたように、健康関連指標、特に睡眠などに悪影響を与えるというようなことも言われております。
心身ともに仕事からきちんと離れられるといった考え方であろうと思いますけれども、こういった制度は法制化されている国もありますので、個人に任せるというよりは、職場のルールというような形で検討していくということも参考にしていいのではないかと思います。
私からは以上4点でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
先ほどの堤先生の御意見と重なるところも多く、また、私自身が過去に検討会の場で述べさせていただいたことの繰り返しになるところが多いのですが、考えたところを述べますと、まず、前提としては、裁量労働制の趣旨である自由度の高い働き方を実現する上で、それを許容するためにも健康確保するというところをしっかり押さえておく必要性が高いというところに健康・福祉確保措置の基本的な意義があるということで、当たり前といえば当たり前の話ですが、健康確保を確実なものにするという点が重要であるといえます。
そういう観点から、1つは、現行の裁量労働制の骨格がある程度出来上がった後で、労働安全衛生法制などの観点から長時間労働等による健康被害に対する歯止めを設ける制度が整備されたというような法改正の経緯の中で、例えばこうした安衛法上の動き等があった後の最近になって制度化された高プロの制度の中には健康被害を抑制する仕組みが制度の導入要件の中によりはっきりした形で組み込まれているような状況があり、そちらのほうもさらにその後の状況等を踏まえて見直す点もあるのかもしれませんが、裁量労働制については、制度導入後の労働安全衛生法制の展開等を踏まえた上で、労働安全衛生法制との統一性というか、整合性がとれた形のものにすること、それから、そういう中でほかの労働時間法制全体の中でも、高プロとほかの関連する制度との間で統一性がとれた制度、仕組みにしていくことが1つ重要な制度の在り方に関する視点ではないかと思っています。
そういう観点からは、先ほどの話の中にも出てきましたが、ある程度自由度の高い働き方をするということを前提にした時間管理のあり方等を制度の中で取り入れていくということが改めて課題になるのだろうと思います。
それからもう一つは、そういう中で、やはり健康確保が重要なのだという観点からすると、求められる制度の中身として、健康被害の具体的なおそれが生じているような場面においては、より確実に業務負担を軽減するような措置がとられる内容のものにしていく、業務負担の軽減が確実にとられるような措置を設けるということが重要と思います。同じことを逆から言うと、健康への被害の具体的なおそれが生じているというのが緊急性の高い状況を対象とした健康確保措置については、容確実に業務負担の軽減につながるようなことを関係当事者に求める内容の措置として制度化される必要があるだろうということだと思います。
その一方で、より予防的な段階での措置については、例えば業務の性質であるとか業種に応じた特性、あるいは労働者自身の希望などいろんな要素があると思いますが、ある程度幅のある選択肢の中から一定の手続的なルールを整備した上で、それに従ってどういうものを導入するかを選んでいくというような制度設計にも意義があるのではないかと考えております。
その中で、これは健康確保措置というくくりよりは、もしかするとより大きな話なのかもしれませんが、既存の制度の中にないものとして、いわゆるつながらない権利というような考え方も、自由度の高い働き方の中での健康・福祉確保措置、あるいはそれに類する効果が期待できる措置のあり方として検討に値するのではないかと思います。
それから最後に、これは前の論点のところでも出てきましたが、ここでも、一旦制度を導入した後で、その制度の運用の仕方に問題がないかどうか、また見直すべき状況がないかどうかということを定期的に確認して、必要な是正というか修正が必要なのであればそれを行っていくという、主として手続面での体制を整備するということも重要な課題なのではないかと考えています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑先生、どうぞ。
○小畑構成員 ありがとうございます。今、川田先生の御指摘の途中で出てきた健康被害の具体的なおそれが生じている場合というところは、やはり重要な点だと思っております。それで、裁量労働制というのは自分自身で労働時間管理が裁量的に行えるという原則ですので、ある意味では、労働者は緩急をつけて自分でやりやすいように業務を行っていくことができるという意味では大変いいと思うのですが、残念ながら、先ほどから御指摘ありますように、満足度調査の中で出てくる、業務負担が非常にきついとか、それから、業務の配分が不適切で、とても納得ができないような場合などもあり、そうした中で、心ならずもたくさん働いてしまうという場合と、もう一つは、自分で労働時間管理しながら働いているのだけれども、本当にのめり込む余りに自己抑制がきかなくなってしまっているというようなおそれもあるかと思います。
その両方の場合につきまして、もはや自分で主体的にスイッチを切れなくなってしまっている、そういったところまで進んでしまうと、自分での行動が難しいので、ほかからそのスイッチを切ってあげると、アラームを鳴らしてあげるという必要が大変高いというようなときのための装置をどうつくっておくのかということがやはり心配される点かと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
黒田先生、どうぞ。
○黒田構成員 ありがとうございます。健康確保に関して、私からは2点です。
既にほかの委員がおっしゃったことと重複する部分もありますが、1点目は、専門と企画と高プロの健康確保の仕方というのがばらばらになっていますけれども、これはそもそもばらばらにしておく意味があるのかどうかということを整理したほうがいいと思っています。
現在、高プロで示されているようなメニューに統一していくということが一つの案ではないかと思いますし、それに関して、今、例示という形になってくるところもあるかもしれませんけれども、限定列挙というような形で担保していくということが一案なのではないかと感じています。
2点目は、その健康確保措置のメニューの中に入っている勤務間インターバルについてです。これも先ほど堤委員からもお話が出ていましたけれども、私自身も、心身の休息を取る上で非常に重要な制度だと思っています。
ただ問題は、これまでは出社から退社までが労働時間で、退社した後は、次に出社するまではきちんとそこで休暇が取れているであろうということが類推できるような職場環境で働く労働者が多い中で、勤務間インターバルの重要性が唱えられてきました。今後、テレワークが普及していく中にあっては、どうやって勤務間インターバルを実行可能なものにしていくかというところが非常に難しくなってきていると感じています。
そういう意味では、制度を設けるということはまず大切なわけですけれども、その上で、それを新しい働き方の下で実行可能なものにしていくにはどうすべきかということも話し合っていく必要があると思っています。1つは、先ほども出ていましたけれども、つながらない権利の確保です。先ほど小畑委員から、ついつい頑張ってしまって、のめり込んでしまうという人が職場にいるというご発言がありましたが、つながらない権利は、その人だけが健康被害があるのではなく、のめりこんでしまう人が職場の同僚に次々にメールを出したりすることで、のめり込んでいない人までも巻き込まれてしまうというような負の外部性を抑制することができるという利点があるかと思います。そのほかには、のめり込んでしまう人に対してちょっと働き過ぎじゃないですかというような気づきや警告を発するような情報技術を積極的に取り入れていくことも重要ではないかと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
それでは、私も一言述べさせていただきます。既に先生方から御指摘ありましたけれども、健康・福祉確保措置は制度によってばらばらであるという問題、使用者にも分かりにくいですし、労働者にとっても分かりにくい。そうするとなかなかこの制度がきちんと実施されにくいという状況かと思います。したがって、健康・福祉確保措置を統一的なものに整理する必要性は高いと私も思います。
特に裁量労働制、先ほど議論してきましたように、自由度が高く、自分で労働時間をどう配分するかといった労働時間主権を労働者に戻すと、そのことがストレスも低く働くことができるというメリットがあるのですけれども、そことの関係で、この健康・福祉確保措置としての労働時間の状況把握をどう捉えるかという相関も考えておく必要があると思います。自由度の高い働き方を阻害せずに、しかし、しっかり健康は守るものとしてどう位置づけるかについて検討することが必要だろうと考えております。
それから、健康確保措置の一環として、健康を害するような働き方の人がいれば、それは制度の対象から外すことが必要となってくるわけですが、制度の対象から外すというのは2つの側面がありまして、既に指摘がありましたけれども、そもそも裁量がない、裁量労働制の対象とすることが違法で、対象としてはいけないという課題については当然ながら対象外とすべきということが1点あります。
しかし、そうではなくて、違法とは言えないかもしれないけれども、自分で長時間労働の抑制がきかない、ワーカホリックになってしまっている。そのままの状況でいると本当に健康を害することになりかねない場合に、制度として、そういう方については一旦裁量労働から外すルートが確保されていることも大変重要な点だということがこの間の議論でも御指摘のあったところで、重要な点だと考えています。
ヒアリングでもそういう場合には裁量労働制から、本人が申し出なくても外すという運用をしているという報告もあったところで、大変重要な実例かと思いました。
私からは以上です。
それでは、今までの議論を受けましてさらに御自由に御議論いただければと思いますが、何かお気づきの点などありますでしょうか。
川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
先ほど触れたことに若干の補足といいますか、私自身が、裁量労働制を適切に運用していく上で、裁量労働制のもとで働く人の裁量性の確保という点が非常に重要ではないかというところに、ある種こだわりのようなところがあるせいということもありますが、健康・福祉確保措置の趣旨としては、先ほど述べたように、まさに健康を害する事態を回避するということが重要であると思います。それは間違いないのですが、同時に、具体的な措置の中身次第では、働く人の裁量性の確保を実現するための措置という観点からとらえる視点も一定の重要性があるとみるべきなのではないかと思います。とりわけ裁量性の意義を、この議論の中でも出てきている時間主権という概念に着目して、時間主権を労働者に認めるという観点から捉え、時間について、働き手、労働者がコントロールできるという点も、裁量労働制の趣旨として一定の意義があると考えていきますと、健康確保措置、より具体的には先ほど私自身が整理したところに従いますと、健康状態がもう危険な状態になっている段階での措置というよりは、より前の段階の措置が主として念頭に置かれることになろうかと思いますが、そうした段階での具体的な措置の意義について、働き方の裁量性を確保することを可能にする措置というような観点からその意義を検証して、その制度の中でどう対応するかを吟味していく、そういう視点も必要になるのではないかと思いまして、補足いたしました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
今日は、みなし時間の考え方、処遇の問題、それから健康・福祉確保措置、3点について御議論いただいたところですけれども、全体を通じてでも結構ですが、何か御発言があれば伺いますが、いかがでしょうか。
よろしゅうございましょうか。
それでは、特に御発言がないようでございましたら、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。
最後に、事務局から次回の日程について説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 次回の日程・開催場所につきましては、追って御連絡させていただきます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、以上で第10回の検討会は終了とさせていただきます。本日はお忙しい中を御参加いただきまして、どうもありがとうございました。