第9回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年1月31日(月) 14:00~16:00

場所

厚生労働省省議室

議題

  1. 労働時間制度について

議事

議事内容
○荒木座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第9回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御参加いただきまして、ありがとうございます。
本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式としております。
なお、本日、黒田先生は所用のため途中で退席されると伺っております。
オンラインで御参加いただいている委員の皆様、こちらの音声や画像は問題ないでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、本日の議題に入ります。カメラ撮りはここまでということでお願いします。
事務局より資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
まず、資料1「労働時間制度の概要」について御説明をさせていただきます。
こちらの資料は、第1回検討会などこれまでの検討会でお示しした資料も多く含まれておりますが、改めて簡単に御説明をさせていただきます。
1ページ目、労働時間につきましては、1番上にありますように、1日8時間、週40時間という原則があり、その上で、変形労働時間制、フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、専門業務型・企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度、そして管理監督者という立てつけになっております。
2ページ目は、現行の労働時間規制の体系図でございます。
まず、一般規制として1日8時間、週40時間の原則がある中で、弾力的労働時間規制として変形労働時間制とフレックスタイム制があります。そして、特別規制として、事業場外みなし労働時間制、専門業務型及び企画業務型の裁量労働制といったみなし時間制と高度プロフェッショナル制度、そして最後に適用除外との体系となっております。
3ページ目以降、各制度の概要となりますが、まず、3ページ目は原則的な労働時間制度の概要でございます。
法定労働時間として1日8時間、1週40時間、法定休日として、毎週少なくとも1回または4週間に4日以上の休日を与えなければなりません。
また、時間外・休日労働につきましては、労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、協定の定めるところにより、時間外・休日に労働させることができますが、その上限につきましては、月45時間、年360時間を原則として、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間という要件を満たす必要がございます。
時間外等の割増賃金につきましては、時間外または深夜については2割5分以上、休日については3割5分以上を支払う必要があります。
4ページ目、変形労働時間制は、1か月単位の変形、1年単位の変形及び1週単位の非定型的変形労働時間制がございます。それぞれ御覧のとおり対象や手続等要件が定められているところでございます。
5ページ目、フレックスタイム制でございます。こちらの制度は、労働者が始業、終業時刻を自らの意思で決めて働く制度でございまして、3か月以内の清算期間等を定めて、その枠内で働くという制度でございます。
6ページ目、事業場外みなし労働時間制でございます。こちらは労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間の算定が困難なときに、原則として所定労働時間労働したものとみなしますが、業務を遂行するために、所定労働時間を超えて労働することが必要である場合には、当該業務の遂行に通常必要な時間を労働したものとみなす制度でございます。
7ページ目、裁量労働制でございます。専門業務型、企画業務型がございまして、それぞれ対象や手続等が御覧のとおり定められているところでございます。
8ページ目、高度プロフェッショナル制度でございます。この制度は平成30年改正で新設された制度でございます。
この制度の対象は、金融商品の開発の業務など5業務、また、年収が1,075万円以上である労働者であることを要件とし、対象労働者には、労働時間や休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定が適用除外となっております。
9ページ目、管理監督者の概要でございます。管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働時間等の規制が適用除外となりますが、一番下の適用関係の表を御覧いただければと思いますけれども、その右端、深夜の割増賃金のみ適用対象となっており、それ以外は適用除外となります。
管理監督者に当てはまるかどうかは、このページの中ほどにございますとおり、「労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容・責任・権限を有していること」、「現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること」、「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」、この3点の要素を踏まえて、実態により判断されるものとしております。
最後に10ページ目、年次有給休暇制度の概要でございます。
こちらの概要は、12月の第7回の検討会でも御説明させていただきましたが、その際のものから一部記載を変更しておりまして、下の箱の「付与に関するルール」の箇所でございますけれども、このうち時季の決定方法の箇所、第7回の検討会では原則例外との記載としておりましたが、これを「労働者による請求」、「計画年休」、「使用者による時季指定」を並列の記載としております。
資料1については以上でございます。
続きまして、資料2「労働時間制度見直しの経緯」を御覧ください。
こちらは労働基準法制定以来、労働時間法制がどのような背景で、どのような改正がなされてきたかについてまとめたものでございます。
1ページ目、昭和22年の労働基準法制定時でございます。
社会的背景といたしましては、1919年以来の国際労働会議で最低基準として採択され、今日ひろくわが国においても理解されている8時間労働制、週休制、年次有給休暇制のごとき基本的な制度を一応の基準として、この法律の最低労働条件を定めたことであり、少し飛びますけれども、なお日本再建の重要な役割を担当する労働者に対して、国際的に是認されている基本的労働条件を保障し、もって労働者の心からなる協力を期待することが、日本の産業復興と国際社会への復帰を促進するゆえんであると信ずるのであります、ということが提案理由としてございます。
労働基準法の最初の制定時の労働時間法制の内容といたしましては、1日8時間、1週48時間の法定労働時間や、法定休日、割増賃金、年次有給休暇制度といった基本的な枠組みが定められたものでございました。
2ページ目、昭和62年改正でございます。
この当時の社会的背景といたしましては、労働時間の短縮が労働者の生活の質的向上、長期的に見た雇用機会の確保、内需拡大等の観点から重要な課題となるとともに、国際社会における我が国の地位にふさわしい労働時間の水準とする必要性が増大し、また、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応して、労働時間に関する法的規制をより弾力的なものとすること等も求められるようになった、というものでございました。
昭和62年改正の主な内容といたしましては、週40時間制を本則に規定するといった法定労働時間の短縮、変形労働時間制の改正、フレックスタイム制の創設、事業場外みなし労働時間制や専門業務型裁量労働制の創設、また、年次有給休暇制度も改正されまして、比例付与制度や計画年休の創設等が行われたものでございます。
3ページ目、平成5年改正でございます。
このときの改正の背景といたしましては、昭和62年の労働基準法の改正により週法定労働時間を40時間に向けて短縮していくことが、法の本則に規定することにより明確化されたものでございますが、その改正労働基準法の施行から3年が経過した平成3年7月から、今後の週40時間労働制に向けた法制面の対応の在り方等労働時間法制の問題について、検討がなされたというものでございました。
このときの主な改正内容でございますけれども、法定労働時間の短縮、こちらは週40時間制を平成6年4月から実施いたしまして、一定の業種については猶予措置を設けるというものでございましたが、ほか、変形労働時間制や休日の割増賃金率の改正、また、専門業務型裁量労働制につきましては、これまでは対象業務を通達での例示列挙としていたところでございますけれども、こちらを労働省令で限定列挙するとの改正が行われまして、専門業務型につきましてはその後、平成9年、14年、15年に対象業務が追加されていったものでございます。
また、このページの一番下、欄外に参考として記載しておりますけれども、この頃、平成4年に「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」が制定されました。なお、こちらの法律は、平成17年に「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」に改正されております。
4ページ目、平成10年改正でございます。
この当時の背景といたしましては、経済活動のグローバル化や情報化社会の到来などにより大きな転換期を迎え、戦後の我が国の雇用形態の象徴であった終身雇用制や年功序列制などにも変革の兆しが見え始めるなど労働者を取り巻く環境にも大きな変化が生じてきました。また、一方で労働者の側にも、自己の専門的能力を生かした働き方を求めるなど働き方や就業意識の多様化もみられるようになってきたというものでございました。
平成10年改正のときの主な内容ですが、時間外労働に関して、労使協定で定める労働時間の延長の限度等について基準、いわゆる限度基準告示でございますけれども、こちらを告示することとし、また、企画業務型裁量労働制が創設されました。
5ページ目、平成15年改正でございます。
このときの改正の背景といたしましては、少子高齢化が進み、労働力人口が減少する一方、経済のグローバル化、情報化等の進展による産業構造の変化や労働市場の変化が進む中で、我が国の経済社会の活力を維持・向上させていくためには、労働者の就業意識の変化に対応しつつその主体性を尊重し、個人が持てる力を発揮できる社会を実現していくことが必要となっておりました。このため、労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するとともに、働き方に応じた適正な労働条件が確保されるよう、労働時間などの働き方に係るルールを整備することが重要な課題となっていた、というものでございました。
平成15年改正の主な内容ですけれども、専門業務型裁量労働制の改正、こちらは企画業務型と同様に健康・福祉確保措置や苦情処理措置を追加したというものでございました。また、企画業務型裁量労働制の改正も行われまして、こちらは対象事業場を本社等に限定しないこととし、これまで全会一致としておりました労使委員会の決議につきましては、委員の5分の4以上の多数によるものとしたという改正でございました。
6ページ目、平成20年改正でございます。
当時の背景といたしましては、少子高齢化が進行し労働力人口が減少する中で、子育て世代の男性を中心に、長時間にわたり労働する労働者の割合が高い水準で推移していること等に対応し、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう労働環境を整備することが重要な課題となっておりました。このような情勢の下で、長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和が取れた社会を実現する観点から見直しを行った、というものでございました。
平成20年改正の主な内容は、月60時間超の時間外労働につきまして、割増賃金率を5割以上に引上げし、ただし中小企業についてはこれを当分の間、適用を猶予することといたしまして、また、労使協定により、この割増賃金率の改正による引上げ分の支払いに代えまして、代替休暇の付与を可能とすることといたしました。また、年次有給休暇制度の改正によりまして、時間単位の取得が可能となったものでございます。
最後に7ページ目、平成30年改正でございます。
このときの改正の背景といたしましては、急速に少子高齢化が進展する中において、労働者の働き方に関するニーズはますます多様化しており、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することが重要な課題となっておりました。このことは、労働者の就業機会の拡大、職業生活の充実や労働生産性の向上を促進し、労働者の意欲や能力を最大限に発揮できるようにし、ひいては日本経済における成長と分配の好循環につながるものでございまして、また、過労死を二度と繰り返さないといったことから、長時間労働の是正が急務でございました。このため、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するという観点から、見直しが行われたものでございました。
平成30年改正の主な内容は、長時間労働の是正ということで、時間外労働の上限規制の導入や、これまで中小企業には猶予されておりました月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率5割以上につきまして、その猶予措置の廃止、また、年次有給休暇の確実な取得のため、年5日の時季指定義務が設けられました。
また、多様で柔軟な働き方の実現ということで、フレックスタイム制について、清算期間の上限を1か月から3か月に改正したほか、高度プロフェッショナル制度が創設されました。
資料2については以上でございます。
続きまして、資料3「労働時間制度間の比較」を御覧ください。
まず、表紙の次のページ「労働時間関係規定の適用等について」を御覧ください。
こちらは一般労働者、専門業務型・企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度及び管理監督者において、どのような労働時間規制が適用されているか否か。また、健康・福祉確保措置等や導入手続についてどのような違いがあるかということを簡単に整理したものでございます。
労働時間につきましては、一般労働者は適用、高度プロフェッショナル制度と管理監督者は適用されません。
裁量労働制につきましては、※1とございますけれども、この表の下の※書き、明朝体の部分を御参照いただければと思います。※1、法定労働時間を超える「みなし労働時間」に対しては、36協定の締結が必要ということでございます。
休憩、休日の規定は、一般労働者と裁量労働制においては適用されます。高度プロフェッショナル制度については適用されません。ただし、その少し下、健康・福祉確保措置の欄を御覧いただければと思いますけれども、高度プロフェッショナル制度については、年間104日以上、かつ4週間を通じ4日以上の休日付与が必要とされておりますので、休日については労基法35条の休日規定は適用されないけれども、この特別規制で別途担保されているというものでございます。
割増賃金については、裁量労働制については休日・深夜は一般労働者と同様に適用され、ただ、時間外については※2にありますとおり、法定労働時間を超える「みなし労働時間」に対しては、割増賃金の支払いが必要ということでございます。
なお、割増賃金は、高度プロフェッショナル制度においてはいずれも適用されず、管理監督者においては深夜の割増賃金のみ適用となります。
年次有給休暇の規定につきましては、いずれも適用となっております。
続きまして、時間外・休日労働の上限規制でございますが、一般労働者は適用。なお、黄色に着色した欄が幾つかございますけれども、こちらは平成30年改正で規制が強化等された箇所でございます。
裁量労働制においては、※1のとおり、法定労働時間を超える「みなし労働時間」に対して上限規制が適用されます。
高度プロフェッショナル制度におきましては、時間外や休日労働の上限規制は適用がございませんが、ただし、このすぐ下の健康・福祉確保措置の欄に選択的措置の実施とございます。この選択的措置とは何かと申しますと、※3にございますとおり、勤務間インターバルの確保かつ深夜業の回数制限、健康管理時間の上限措置、1年に1回以上の連続2週間以上の休日の付与及び臨時の健康診断の4つのいずれかの措置を実施するというものでございますけれども、このうち健康管理時間の上限措置は、具体的にはこの括弧にございますとおり、1週間当たり40時間を超えた時間について、月100時間以内または3か月240時間以内とすることというものでございますので、事業場の状況に応じまして、これを選択的措置として設けることも可能ということでございます。
続きまして、健康・福祉確保措置等の欄でございますけれども、一般労働者においては、時間外・休日労働の限度時間を超えて労働させる労働者には、健康・福祉確保措置を実施する必要がございまして、裁量労働制においても健康・福祉確保措置の実施が必要、高度プロフェッショナル制度においては御覧の3つの措置の実施が必要であり、管理監督者においては特段規定はございません。
また、労働安全衛生法の規定となりますが、その下、医師の面接指導については、一般労働者、裁量労働制、管理監督者においては、※4にございますとおり、1週間当たりの労働時間のうち40時間を超える時間が月80時間超の場合、労働者本人の申出に基づき実施することとされております。高度プロフェッショナル制度においては、※5にございますが、1週間当たりの健康管理時間のうち40時間を超える時間が月100時間超の場合、労働者本人の申出なしに一律に実施することとされております。
また、こうした医師の面接指導が確実に実施されるよう、平成30年改正により、労働時間の状況の把握義務が設けられまして、各制度については御覧のとおりでございます。
最後、導入手続でございますが、専門業務型裁量労働制は労使協定、企画業務型は労使委員会決議、高度プロフェッション制度も労使委員会決議が必要でございます。
本人同意については、企画業務型裁量労働制と高度プロフェッショナル制度については必要でございますが、※6にございますとおり、企画業務型裁量労働制は、本人同意を得なければならないことについて労使委員会決議で定めることが必要とされておりまして、高度プロフェッショナル制度につきましては、制度の適用要件として本人同意が必要となっております。
次のページ「各労働時間制度ごとの適用労働者割合の推移」の資料を御覧ください。こちらは就労条件総合調査のデータでございます。
まず、一番下の青のグラフが企画業務型裁量労働制で、およそ0.3%前後を推移しております。
そのすぐ上、濃いピンクのグラフが専門業務型裁量労働制で、こちらは近年1%台前半を推移しておりまして、その上、緑色のグラフが事業場外みなし労働時間制でございます。
その上の薄い黄色がフレックスタイム制でございますが、こちらについては近年やや増加傾向にあります。
また、少し上に行きますと薄い水色のグラフが1か月単位の変形、薄いピンクのグラフが1年単位の変形労働時間制のデータでございます。
ページの右側の下辺りを御覧いただければと思いますが、平成31年からえんじ色がございますけれども、これは管理監督者です。また、令和2年の一番下のからし色の点は、高度プロフェッショナル制度でございます。
なお、平成26年と27年の間でグラフを一旦途切れさせて表示しておりますけれども、これは左下の※書きにございますとおり、調査対象の一部変更があったためでございまして、平成26年調査以前は「常用労働者が30人以上である会社組織の民営企業」を対象としておりましたけれども、平成27年調査以降は「常用労働者が30人以上である民営法人」といたしまして、「複合サービス業」を含んだものとしておりまして、このように調査対象に一部違いがございますことから、こうした表示とさせていただいたものでございます。
資料3については以上でございます。
○労働条件政策課課長補佐 続きまして、資料4「経済社会の変化、デジタル化による働き方の変化、コロナ禍等による労働者の意識変化等について」、御説明いたします。
まず、経済社会の変化についてです。3ページ目を御覧ください。
少子高齢化の中で、日本の人口は既に減少局面に入っておりまして、今後は15~64歳の現役世代の減少がさらに進むことが見込まれております。
次のページです。
その中でも、2040年までの変化を見ますと、65歳以上人口は2000年~2025年にかけて急増してきたわけでございますけれども、2040年にかけては増加が緩やかになると見込まれております。他方で、15~64歳の生産年齢人口におきましては、2025年~2040年にかけて減少がさらに進むと見込まれております。
これまでの就業者数の推移を見ますと、就業者の大層が雇用者である状況が続いておりまして、雇用者の中でも役員や正規の職員が一貫して6割以上となっております。
産業構造も変化をしておりまして、製造業で働く労働者は減る一方で、第三次産業での就業者数が増えてございます。
人口構造の変化も踏まえまして、企業が考える、いわゆる人生100年時代に求められる能力といたしましては、「自ら考え、行動することのできる能力」「柔軟な発想で新しい考えを生み出すことのできる能力」等の割合が高くなっております。
現状の雇用人員の過不足状況に関する企業調査におきましては、「現場の技能労働者」に次ぎまして、「研究開発等を支える高度人材」「システム・アプリケーション等を開発する専門人材」「社内全体の人材マネジメントをする専門人材」等が「大いに不足」または「不足」していると感じられております。
今後の見通しを踏まえた企業の将来の人材戦略に関しましては、人材活用の方向性につきましては、「雇用や人材の育成を重視する」が69.1%と最も高くなっております。
人件費の配分につきましては、「年齢に関わりなく能力・成果に応じた登用を進め、正社員の年功賃金割合を小さくする」が50.5%と最も高くなっております。
人材マネジメントの方向性につきましては、「中途採用を強化する」が36.9%と最も高く、次いで「教育訓練・能力開発を進める」が36.1%となっております。
賃金制度の状況に関しましては、管理職層、非管理職層ともに役割・職務給の導入率が増加しております。
また、非管理職層におきましては、年齢・勤続給の導入率が減少しております。
続きまして、デジタル化による働き方の変化でございます。
AI等の進展・普及の影響につきましては部門によって異なると企業に認識されておりまして、総務、人事、生産、調達・仕入といった部門で強い影響を受けることが予想されているところでございます。
ポストコロナにおけるデジタル化関連の項目に対する変革についての企業の考えにつきましては、「デジタル活用の視点からの業務プロセスの見直し」が推進されるとする企業は53.3%、「デジタルトランスフォーメーション」が推進されるとする企業は47.0%となっています。
AI等の進展・普及が雇用・労働に与える影響につきましては、「経理、給与管理等の人事部門、データ入力係等のバックオフィスのホワイトカラーの仕事が減少する」ことについて自社に当てはまると考えている企業が55.2%、「人が直接対応することが質・価値の向上につながるサービスに係る仕事が増加する」と考えている企業が45.0%、「コンサルティング等を通じ、個々の顧客に合わせた高度な提案が求められる営業・販売の仕事が増加する」と考えている企業が36.1%となってございます。
また、AI等が普及する中での今後の人事労務施策の変化につきましては、「必要な人材について、現在より、直接雇用ではなく社外に業務委託する傾向が強まる」「必要な人材について、現在より、内部育成ではなく即戦力を企業外から採用する傾向が強まる」につきましては、「当てはまる」とする割合が高くなっております。
他方で、「将来の幹部候補を、新卒一括採用・内部育成で確保する度合いが今よりも弱くなる」「新卒採用について長期雇用を意識しないで採用する度合いが強まる」につきましては、「当てはまらない」とする割合が高くなっております。
16ページ目は、前回の検討会で株式会社野村総合研究所の光谷様から御説明いただいたものでございますけれども、AIが普及する中では、AIが人を単純に代替するのではなく、人がAIを使いこなし、人ならではの業務にシフトして、AIと共存していくことになるということが考えられているところでございます。
また、これも前回光谷様から御説明いただきましたことでございますけれども、そのようにAIと共存をしていくためには、データサイエンティスト等のAI活用のエキスパートに加えまして、創造的思考、ソーシャルインテリジェンス、非定型対応といった、AIが担えないことを得意とするエキスパートも必要とされることになるということでございました。
18ページ目は、前回の検討会で御説明いただきました株式会社日本総合研究所の山田様によるものでございますけれども、今後求められる人材ポートフォリオの在り方といたしましては、いわゆる就社型の正社員のみならず、プロ型の正社員や限定正社員、トップマネジメント層等の並存する形が考えられるということでございました。
最後に、コロナ禍等による労働者の意識変化等についてでございます。
まず、テレワークの実施率の推移を見てみますと、2020年2月の5.1%から、5月には55.9%にまで上昇いたしました。その後、最初の緊急事態宣言の解除とともに低下傾向にあったわけでございますけれども、2度目の緊急事態宣言が発出されました2021年1月には再び42.0%まで上昇しております。その後、3度目の緊急事態宣言が発出されましたが、40%台で推移しております。
他方で、テレワークの実施状況を職種別に見てみますと、職種によってテレワークの実施状況の増加幅は大きく異なっておりまして、生産現場職、運輸・保安職の増加幅は限定的でございます。
コロナ禍収束後の働き方等の変化の可能性について労働者に尋ねた調査によりますと、変化が「起こり得る」「どちらかと言えば起こり得る」とした回答の合計は、「時間管理の柔軟化」については50.2%であり、「テレワークの普及」については42.6%でございました。
テレワークを行うことによる仕事の生産性・効率性等の変化について労働者に尋ねた調査によりますと、「仕事の生産性・効率性」と「仕事を通じた充実感・満足感」につきましては、いずれも「低下する」の割合が「上昇する」の割合を大きく上回ってございます。他方で、「ワークライフバランスの実現度」につきましては、「上昇する」の割合が「低下する」の割合をやや上回ってございます。
他方で、テレワーク実施者の今後の継続意向及び非実施者の実施意向についての調査によりますと、新型コロナウイルス感染症の影響等によりテレワークを実施した方の大半が継続してテレワークを実施することを希望しております。また、テレワークを実施していない方の中にも、テレワークをしてみたいと思っている方が存在していることが分かります。
最後に、副業・兼業に関しましては、副業を希望する雇用者も、また、実際に副業をしている雇用者も、ともに増加傾向にございます。
資料4の説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局から、資料1~3で制度のそれぞれの趣旨、変遷等について、資料4で経済社会の変化、デジタル化による働き方の変化、コロナ禍等による労働者の意識の変化などについて説明をいただいたところです。
これらを踏まえまして、現行の制度の評価と今後の検討をするに当たっての視点について、各構成員の皆様から御質問や御意見を含めて自由に御意見をいただきたいと考えております。どなたからでも構いませんので、コメントいただければ幸いでございます。
堤先生、お願いします。
○堤構成員 ありがとうございます。
私のほうは主に健康確保措置に関連して、今後に向けた課題整理について意見を述べたいと思います。
健康確保措置に関連しましては、今、労働時間の状況の把握、それからこれに基づく措置が徹底を求められているところですけれども、労働安全衛生法に基づく労働時間の状況の把握と医師の面接指導、労働基準法による絶対上限労働時間といったような、今実施されているものは土台として今後の労働時間法制を考えていく必要があるのではないかと考えております。
労働安全衛生法の規定に関しては、エビデンスを基にこれまで積み立てられてきたものというような形で認識をしておりますので、そういったもので、こちらを土台にすればいいのではないかというような意見でございます。また、無理のない範囲で健康確保措置の統一といいますか整理をされていくほうが、運用面では好ましいのではないかという考えを持っています。
この労働時間あるいは労働時間の状況の管理に関連しては、これを一つの安全な装置として考えていければと思っているところです。裁量労働制にとどまりませんけれども、しっかりとした労働時間等の管理をしておりますと、健康確保に関連して現状でかなり確実に担保できる可能性があると考えております。
ただし、厳密な労働時間管理は裁量労働制の趣旨に合わないような状況も出てくるかもしれません。こちらは以前、他の先生から御指摘いただいていたようにも思いますけれども、例えば研究者が夜を徹して実験をしなければならないといったことに対して、それができないことで成果が上がらないということであれば本末転倒な状況でございまして、規制が創造的な働き方を阻害するようではいけないだろうと思います。
また、将来のことですけれども、より正確なリスク管理の追求が可能ではないかと思います。こちらの例としては、私たちは感覚的には仕事に入り込んで、一生懸命仕事しているとき、いわゆるゾーンに入っているような状況のときには、疲労をある程度忘れて、長時間働けるといった感覚を持ったりもするのですけれども、そういったことがまだ科学的に検証がされていない部分があるように思います。
裁量労働制に関して言いますと、健康に関連することが複数ありまして、裁量そのものがあり、自由度が高いというようなことは一定のポジティブな影響がありますけれども、逆に長時間労働や過重労働、それから不規則な生活や睡眠といった一部労働者の自己管理に関わるような、労働者側が認識しなければいけないような点はネガティブに働くところですが、それぞれがお互いに影響し合っているような状態が推測されます。
以上のような状況が統合された形でリスク管理が将来的にできるようになると非常に好ましいのではないかと考えるところです。現在はまだそれぞれ個々の要因が別個にリスク評価されているところかと思いますけれども、将来を見据えたところで言えばそういったものの研究が重ねられて、統合的なリスク評価ができればいいのではないかという意見を持ちます。
また、今申し上げた要因というのは、少なからず研究が進んでいる部分もありますけれども、今日の資料の最後のほうで御紹介がありましたが、まだほとんど研究が手についていないような状況の対象として、例えば兼業・副業といった対象がございます。そういったものを考えますと、現状は労働時間もしくは労働時間の状況を一つの核として健康管理を組み立てておいて、将来的に統合的な指標といったようなことを目指していく。それまでは労働者の健康指標を含めて、モニターをきちんとしていくといったスタンダードが考えられるのではないかと考えているところです。
今後に向けた課題というような視点でお話をさせていただきました。
以上です。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ほかの先生方、いかがでしょうか。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 労働時間というのは、長らく給料を払う基準に使われてきました。いわゆる工場労働の時代というのは、1時間多く働けばその分だけ生産物が増える、それに対する対価を払いましょうという考え方でした。ですから、労働者がどれだけ企業業績に貢献したかを測る手っ取り早い指標として労働時間というのがありました。
しかし、働き方がどんどん変わってきて、今日の資料にもありましたけれども、必ずしも労働時間の長さと成果が連動しない場合が増えてきた。そうすると、労働時間を基準として賃金を支払うことの合理性が薄れてきたと思います。いろいろな御発言を聞いていますと、賃金支払いの基準としての労働時間という発言がある場合と、従業員の健康確保措置という観点からの労働時間という観点の2つがあり、これらがしばしば混同されているような気がします。人事管理の観点から言えば、賃金支払の基準のは、各企業が自主的に決めて構わない。そこは企業の裁量の部分です。ただ、人を雇って働いてもらう以上、健康を害するような働かせ方をするのはまずい。健康を害するような働かせ方をさせない歯止めとして労働時間の管理があって、それが月に何時間までの残業等という基準でこれまでも議論をされてきています。
今回の裁量労働という議論においても、堤先生もおっしゃったように、労働者の健康を害さないような働かせ方という観点からの労働時間と、働いている人たちの賃金支払いの基準としての労働時間は別ものだと思います。賃金支払いの基準としての労働時間は裁量労働制では基本的には使わない。別の基準でもって決めますよと。でも、労働時間を全く管理しなくていいかというとそうではなくて、そこは健康確保というところで必要になってくる。
ある意味、労働時間の上限をしっかり見てくれれば、あとはあまり細かいことは言わないという仕組みとして企業に対して提示をしていくことになるのかなと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
島貫先生、どうぞ。
○島貫構成員 ありがとうございます。
3つほどお話ししたいと思っているのですけれども、1つ目が今、藤村先生がお話しになった、企業側としてどのような労働時間管理の制度を採用していくのか、選んでいくのかというところで、今の仕組みはやや整合性が取られていないというか、分かりにくいなというのがあります。これまで伝統的な労働時間管理の例外として様々な仕組みが整備されてきたということかと思うのですけれども、いま一度これを整理する必要があると思っています。
そのときに、これまでの制度は対象や要件といったところはそれぞれかなりきちんと考えられてきたと思うのですけれども、企業側からみて、どういう趣旨や目的で使うのかという点を明示していく必要があると思っています。例えばワーク・ライフ・バランスを確保するということであれば労働時間の柔軟性が必要だとか、先ほどもお話がありましたけれども、従業員により創造的な仕事をしてほしいということであれば、労働時間だけではなくて仕事の進め方の裁量も必要であるとか、趣旨や目的に基づいて、制度を整合的に考えていく必要があるというのがまず1点目です。
今、企業側と申し上げたのですけれども、2つ目としては、労働者側の視点を大事にしなければいけないと思っていまして、いろいろあると思うのですけれども、先ほどの先生方の御意見をふまえますと、本人の同意をこれまで以上に重視していく必要があると思っています。働き方や労働時間管理はどれを選んでいくのか。制度を選ぶというところもありますし、実際に制度が適用された後に外れるということも含めて、本人の同意を大事にしていくということです。
ただ、先ほど堤先生からお話がありましたとおり、適切なリスク管理は本当に大事だと思っています。本人の同意のみに依存し過ぎない、本人の意思のみに依存し過ぎないということはもう一つ考えなければいけないことで、先ほど指標という話がありましたけれども、エビデンスに基づいて、重要な指標を適切なレベルで考えていくことが必要だと思っています。
最後に3点目ですけれども、多様な働き方、多様な労働時間制度について、そもそもどのような制度があるのかということ自体が、企業の方や労働者の方々に知られていないといけませんので、労働時間管理に関することを労働市場に情報発信していく、情報共有していく取組も必要かなと思っています。
既にワーク・ライフ・バランスやダイバーシティなどの取組に関しては情報発信が積極的になされていますので、労働時間管理についても、実態の共有も含めて積極的になされるとよいと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑委員、どうぞ。
○小畑構成員 ありがとうございます。
言うまでもないことですけれども、労働時間規制というのはそれこそイギリスの産業革命の時代まで遡るような、労働法の中でも最も古い分野の一つでございます。その頃の労働というのは、例えば炭鉱労働など肉体的な疲労の激しいところもございました。機械化も進んでいなかったわけでございます。それが機械化や効率化、分業など、労働者が楽になる方向性を探ると同時に、経営を上向かせたいという試みもなされていった。そして、労使が緊張関係の中で折り合えるところを模索することが、欧米がたどった歴史といえると思います。
そうした欧米の視点を考えますと、労使が折り合える部分とはどこなのか、モデルとしての労働者とはどういう労働者かというと、先ほどから御発言の出ておりますワーク・ライフ・バランスが取れた生き方ができること。事情を抱えている労働者でも働けること。公正に取り扱われること。地域コミュニティーの一員でもある人生というものを送っている。そうした労働者が多面的に幸福であることを目指して、模索が続けられてきたという歴史がございます。欧米の視点のみではありませんが、欧米の視点を中心とした国際的な基準、理想というものが非常に輝かしく、そして、日本に対しては残念ながら労働者の幸福が大事にされていないのではないか、または不公正競争をしているのではないかというような批判もありつつ、日本に見直しを迫るといったことが一つのきっかけとなって労働時間規制というものがだんだんと変わってきていったということも、事実として申し上げることができるかと思います。
そして事実、日本におきましては、ここで申し上げるまでもないことではございますが、労働者が働く時間が長くなることを許容するところがあったことは周知の事実でございまして、雇用を維持するから長時間労働も受け入れる、もしくは転勤も受け入れるといった考え方、それから、労使協調の労使関係といったことも背景にあり、正社員に対しては非常に手厚く、大事にしていく。その反面で、非正規の労働者にしわ寄せが寄るといったようなことも一つの問題となっていたわけでございます。
そうした、正社員に関してはがっちりと中に組み込んで手厚く処遇していくということ、そして、その組織の規律を守っていくということが重視されるわけでございますが、今、その拘束の強さ、組織に対して自分を適応させなければいけないことに苦慮する若者たちが一つの問題として浮かび上がってきているのではないかと思います。
これは伝統的な日本企業も、より多くの時間を研修などに割き、新人研修が非常に充実していったといったところが、少しずつ変化してきていることと無縁ではございませんし、また、入社したその日からフル回転で働いてもらうような企業もたくさんあるというようなこととも関連してくるかと思われます。
日本の企業におきまして、労働時間が長くなる傾向がある。正社員は非常に長時間労働にさらされ、年休も取れないといったことが社会問題化していくということが幸福度の低さなどにも関連し、過労死や過労自殺といった問題も引き起こしてしまう。また、家族のケアについての偏りが生じ、それも幸福度を下げてしまったり、コミュニティー、地域社会との絆の薄さも幸福度に影響を及ぼすと思われます。
資料4の7ページに、自由な発想、柔軟な発想を持った人が欲しいというようなお話が出てまいりましたが、そういう方々はどのような志向を持っているだろうかということを考えますと、時間的拘束、場所的拘束を好まない人も多いと考えられます。また、納得して働きたいと希望されている労働者、若い方々にお会いすることが結構ございます。そうした方々がこのコロナの時期を経て、ますます拘束の薄い働き方を好むようになってきているかもしれないということを思っております。
さて、コロナに関しましては先ほどから御指摘がございましたように、収入が減るなどして労働者が副業や兼業に非常に関心を持っている。転職にも関心を持っている。そうした状況がございまして、それによってほかの企業の情報も目に入ってくるわけですが、兼業・副業を解禁した場合の管理をどうするか、法規制の在り方がどうあるべきかといった問題が、一つの大きな問題として提示されており、また、企業が柔軟な発想を持った人材に魅力を感じてほしいということで、そうした人たちにアピールするような情報を公開していくことに意味があるという状況も考えられると思います。
他方で、若い方々の中にも、伝統的な日本企業の人事管理に非常にフィットするようなタイプの方々は、コロナで残念ながら自宅で在宅労働を余儀なくされるなどして、自分の1年先輩は入社1年目でこんなことを経験した、あんなことができるようになったのに、自分は1年間家にいただけだと、非常に焦りを感じるというようなことをおっしゃっている若い方々もおられる。そういった意味では、多様な方々がおられるのも事実でございます。
ここで、先ほどから出てまいりました労働基準法の労働時間管理、労働時間規制について、改めて申し上げるまでもないことですけれども、長時間労働の問題が抑制されなければならないということとの関連におきましては、いくつか指摘をすることができるかと思うのです。拘束がないほうがより好ましいような職種、仕事があり、また、拘束が薄いことを好む労働者がいて、そうした方が納得感を持ってそうした働き方を生き生きと選択できるということについては、先ほどから諸先生方の御指摘もあったわけですが、納得、同意が重要といったことを指摘させていただけるかと思いますし、疲労、健康リスクを考えた際の上限の問題もあるかと思います。仕事の性質は多様であるわけで、いろいろな要素を考え合わせなければいけませんが、そうした問題がやはりあるだろうと思います。
それから、なぜ労働時間管理があるのかというそもそも論の御指摘もございましたが、ワーク・ライフ・バランス、働く以外の活動ができるということもまた、健康管理とともに重要でございます。そして、個々人にフィットする働き方を柔軟に考えられるということは、少子高齢化なども考えれば、おのずと働けるような働き方というものが追求される必要もあると考えられます。
また、年休というものが労働基準法の労働時間との関係ではもう一つ重要でございます。年休につきましては6か月の継続勤務の要件、6か月継続勤務で8割出勤すると年休を取れるという制度につきましてはこのままでいいのかということについて、検討すべきではないかと私は考えております。
先ほど申し上げたような新入社員の状況を考えますと、行き詰まりを感じたときに年休を取れるということは、一息つける、離職を防止することにもつながる可能性もあるのではないか。
また、日本の伝統的なお盆の時期に有休を活用して帰省することの意味、地方におきましては祭礼や伝統行事といった市民生活との関係で、若い方々が全く時間がない、年休も取れないという中で、そういった伝統が危機に瀕しているといったようなことが、実は人としてどう生きるかということとの関係でも考えなければいけないと考えているわけでございます。
労働安全衛生法のお話も出てまいりました。労働基準法と労働安全衛生法は法的な性質の違いもございますけれども、安全衛生法は労働災害を予防するための法でございますが、労働災害が多様であることは言うまでもないことでございます。労働災害の中には、高いところから転落してけがをする方もあれば、腰痛や頸肩腕症候群で苦しむ方もおられる。いろいろな仕事について、いろいろな管理が必要となってくるわけでございます。
労働時間に着目するとすれば、非常に広く考えますと、例えば一定の仕事をどれぐらいのスパン続けてしまうと、こういった状況になってしまう。もしくは、こういう環境にこれ以上置かれてしまうと労働者が発症してしまうといったような観点から、時間というものにフォーカスする必要がある場合もあり、また、過労死や精神疾患の問題が非常に現代的な課題としてある。そして、労働安全衛生法の法的性質からいたしますと、多様な手法で安全と健康を守って労働災害を予防するというところが安全衛生法の特色でございますので、来るべき社会においてどのような予防の在り方が労働安全衛生法の活用により導かれるべきなのかということを、高齢者のことも考えに入れつつ、考えていく必要があるのではないかということをここで発言させていただきたいと存じます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
川田委員、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
既にほかの先生方から述べられたことと重複するところもありますが、私なりに今の制度についての見方、考え方や課題について考えたところを述べさせていただきたいと思います。
まず、本日の例えば資料2などで典型的に示されておりますように、日本の法制度という観点から言うと、労働基準法を中心とした労働時間に関する制度は、その時々の課題に応じて法改正などを繰り返してきていると思います。私なりに見たところとしては、大きな方向性としては、1つは長時間労働を減らしていく改正の大きな流れがあると思います。これはいろいろなレベルでなされており、労基法制定直後の週48時間制から40時間制がありますし、より近年はいわゆる過労死などのの健康被害をもたらしてしまうような長時間労働の抑制というようなところにより重点が置かれるようになってきています。
その一方で、これと併せて、柔軟な働き方が求められる、あるいは柔軟な働き方に適しているといえるような働き方についての柔軟性を確保するという方向での改正の流れがあるといえるように思います。
ある意味、この両者は相互補完的なところもあって、柔軟化を進めるのであれば、それが不適切に使われて、長時間労働の歯止めが利かなくなるようなことがあってはならないということで、併せて長時間労働に対する歯止めも考えていくということが、いろいろなレベルで考えられているといえます。例えば労働基準法全体の中であったり、あるいは1つの制度の中で柔軟な働き方を許容する一方で、そういう働き方の中でも働き過ぎに対する歯止めはしっかり確保していこうとする制度設計があったりというようなことがあるといえるかと思います。
以上のような方向性については、どの程度うまくできているかという評価はいろいろあり得、現にいろいろな観点からの評価がなされていると思いますが、制度の趣旨としてはこうした方向性があるといえると思います。例えば近年の非常に大きな法改正としては、時間外労働の上限規制を新たに設けたということがありますが、こうした長時間労働に歯止めをかける改正の一方で、柔軟化を進めるという面では、例えば同じ法改正で行われた高度プロフェッショナル労働制の創設といった形で進展してきているということがいえるかと思います。
そういう中で私なりに見た課題として、1つは、その時々の課題に応じて改正を重ねてきているので、全体として分かりにくくなってしまっているのではないか、場合によっては整合性が十分取れているかどうか、改めて考えてみる必要があるところがあるのではないかという点を指摘でくるかと思います。
働き過ぎに対する歯止めをかける仕組みの中には、労働時間規制の柔軟化を図る制度の中で、当該制度に基づく働き方をする者の働きすぎに歯止めをかけようとするものが存在します。最近の法改正で導入された高度プロフェッショナル制度では導入の要件の中にいろいろと働き過ぎに歯止めをかける要件が設けられていますし、それより前にできた企画業務型裁量労働制のときには、導入の手続として労使委員会というような新しい仕組みを設けることが行われたということが例かと思います。そういう観点から見ると、新しい制度ができたときに、それ以前から存在していた制度の中に組み込まれた働きすぎ防止の仕組みについてそのままでいいのかということが課題になると思います。
また、今出てきた企画業務型裁量労働制と高度プロフェッショナル労働制については、それぞれの時期に出来上がったものが違う形になっているところがあって、もしかするとその守備範囲においても重なり合うなど、整理が必要なところもあるのかもしれません。
別の切り口から言うと、その制度を使う当事者の立場に立ってみても、法制度全体の中での個別の制度の間の関係性とか制度としての全体的な整合性が十分に取れていないと非常に分かりにくいとか、複数の制度を併用した場合にやらなければいけないことが煩雑過ぎるというようなことも起きてしまっているかもしれないと思っています。
そのあたりの整理は、この後の具体的な検討の中でも一つの大きな課題になるかなと思っていますが、そのときには、これも既にいろいろな御意見が出ておりますけれども、それぞれの制度を導入することの意義、誰にどのようなメリットがもたらされるのかという点、具体的には、既にワーク・ライフ・バランスの実現による生活の質の向上、あるいはより生産的な企業活動、生産性の高い企業活動をすることに資するということなど、幾つか述べられておりますが、そういったことを整理していくことが重要なのかなと考えています。
この点は、この先の議論になる各論との関係では恐らく全ての制度の内容に関わることで、とりわけ、どういう人が柔軟な働き方の制度の対象になるかという、例えば対象業務等について具体的に検討していくと、現状で何か不適切な使われ方をしてしまっていて、もう少し見直して限定をかける必要があるのではないか、あるいは逆にこのようなところは広げてもいいのではないかというような具体的な議論につながると思いますが、このように個々の制度に期待されるメリットをあらためて確認し、整理しておくことは出発点として大事なところなのではないかと思います。
次に、ここまで述べてきた基本的な制度趣旨に関することのほかに、これまでの議論を通じて割と多くの場面に共通する課題かなと感じていることとして、既に過去の検討会でも述べたところですが、特定の事業場などの労働の現場に一旦導入された制度が、その後も適切に運用されていることを継続的にチェックするような仕組みのあり方が課題になるのではと考えています。具体的には労使協定で制度を導入したようなケースでこうした継続的なチェックのあり方をどう考えるのかとか、現行の労使委員会制度がこれでよいのか、あるいは、労働者本人が自らの意思でその制度から離脱するような仕組みをもう少し充実させる必要はないか等について、制度の適正化という観点から見直すべき点があるのかといったところにつながっていくのかなと思います。
最後に、働き過ぎに対する歯止めをかけるための仕組みとして、特に最近の制度では、いろいろな形で時間の長さに着目した規制をかけるケースが増えてきていると思います。こうした、時間の長さに対する規制は、一面としては、働き過ぎに対する歯止めとして、直接的に負担の軽減を実現できるような対応につながるという点で適切な部分があると考えられる一方で、使い方次第では、柔軟な働き方の実現との関係で、これに対する足かせになってしまうようなところもあると考えられ、このあたりは少し考えるべき点かと思います。
例えば、同じような長時間労働、働き過ぎに対する歯止めについても、ある程度段階的に考えていく中で、より直接的な健康被害のおそれが大きくなっているような状況への対応としては、勤務負担の軽減をダイレクトに実現できるような時間の長さに対する規制が相対的に重要である一方で、より予防的な色彩の強いところについては、ほかにもいろいろな手段を取りながら、全体として健康被害に対する予防の実効性を確保するようなことも考えられるのかなと思っている次第です。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
非常に多様な論点について、有益な御意見をいただきました。
私も若干意見を述べさせていただきます。多くの先生方が御指摘になったように、労働時間管理は健康確保ということから出発したわけでありまして、どのような働き方をしても健康を害することがあってはいけない、これが大前提であろうと思います。
今般、2018年の働き方改革による法改正で、労働時間管理が適用除外となっている管理監督者も含めて「労働時間の状況の把握」が規定されということは、そういう観点からすると最も基本的な踏まえるべき視点であろうと思います。
したがって、堤先生の御指摘のように、労働時間を中核としてということになりますけれども、労働時間の「状況の把握」ということは、同時に健康リスクをチェックするためには多様なアプローチもあり得るということかと思います。絶対的に睡眠時間が取れないような状況は許容できないということになりますけれども、そのほかの観点については、様々な健康リスクのコントロールの可能性も併せて検討すべきということかもしれないと思いました。
働き方が非常に多様化しております。今日の説明にもありましたように、労働時間制度は非常に複雑で多様な制度ができておりますが、1つは多様な働き方を許容するために制度も多様化したという側面がないわけではありません。そういう側面がありますけれども、その際に、御指摘にもありましたが、それぞれの制度の趣旨、目的がどのようなものかが十分に理解されないままに運用されていきますと、制度の趣旨が運用上は生かされないことになるのだと思います。
もともと労働時間制度が入ったときの原初的な目的は、もちろん労働者の健康確保、それから小畑委員が指摘されたように公正競争という目的もあります。長時間労働で利益を上げるということだと、全ての企業が長時間労働に入ってしまう、そういう競争をさせないという公正競争の側面は伝統的にありました。
ところが、今回のいろいろな議論から分かりますとおり、労働時間制度に対する期待といいますか趣旨が多様化してきています。ワーク・ライフ・バランスの実現とか、これも小畑先生がおっしゃったように、障害者とか、育児・介護といった責任を負った方々がこれまでは働けなかったり、休業あるいは短時間勤務せざるを得なかった方が、テレワークであればフルタイムで就労できるようになってきました。
つまり、これまでの労働時間規制の展開は労働時間の長さの規制をどう柔軟化するかという議論をしてきたのですけれども、多様な働き方、とりわけテレワークなどは、実は働き方自体と労働時間管理・規制というものが直結して、多様な働き方自体を許容するような労働時間制度であることが、規制の趣旨としても目的の一つになってきていると思います。
本人の同意や本人の納得という発言もたくさんありました。これは実は自らが望んだような形態で働きたい、場所とか時間について自分で決定できる働き方をしたいという労働者の希望をかなえることも、労働時間制度に対して期待されてきていることだと思われます。
そのような働き方を受け止める制度として裁量労働制は導入されたという立場もあったところですけれども、そういう趣旨が生かされていない可能性もあるのではないかと思います。
このように、それぞれの労働時間制度の趣旨が多様になってきましたので、どのような趣旨のための制度であるかをよく周知し、理解して、適正に運用していただくことが要請されると思います。
そのためには幾つか課題があると思います。1つは、もちろんその制度の趣旨をよく理解していただくことが大前提ですが、それがうまく機能するためのサポートが必要だと思います。今回のテレワークなどでも、労働者が自宅で孤立してしまっていると、どのように仕事をしていいか分からない。うまくいっている企業では、テレワークの人たちに適切なサポートをすることによって効率も上がるというような成功事例につながっていると思います。そうした制度がうまく機能するためのサポートが重要だと思います。
また、川田委員が御指摘になったように、制度の趣旨・目的に合致して制度が運用されているか、その運用実態を制度を導入した後にチェックすることも非常に重要だと思います。そのためにどのような制度があるか。労使委員会や従業員代表制度といった運用実態を適切にチェックするための工夫も課題となってくると思います。
さらに、藤村委員が御指摘になったように、報酬の支払い方が、かつては労働時間の長さで払うということだったのが、そうではない働き方が増えてきた。それをどうやって公正に評価するのかという問題があります。多様な働き方に対応した労働時間制度がある中で、人事管理、マネジメントとして、どう公正な評価をそれぞれの制度を基に実現するかというのが重要な課題となってきていると思います。これがうまくいきませんと、企業としても効率性が害されているし、労働者も不公平感を募らせることになりますので、そうした制度の趣旨がうまく回るためのマネジメントについて、使用者側は十分に検討する必要がある。そういう課題が提起されているということを、先生方の御意見を聞きながら考えた次第でした。
それでは、残った時間をフリーディスカッションにしたいと思いますので、それぞれの御発言に補足して、あるいはほかの先生方の御意見について、何か追加のコメントがあればいただきたいと存じます。
どうぞ御自由に手を挙げていただければと思います。
藤村先生、どうぞ。
○藤村構成員 今、人事管理の観点からの労働時間管理ということを考えているわけですけれども、非常に極端な話をすれば、労使が決めてくれればいいのだと。そこに対して、国は面倒なことは言わないが、健康を害するようなことは駄目ですよという形での持っていき方と、もう一つは、やはり働く側は経営側に比べると弱いから、労使の自治という考え方で放っておくと、経営側のいいように使われてしまう。それがいろいろな意味で人権侵害につながることもあるから、そこはちゃんと制度として細かく決めて、どの制度をどう使うかを経営側が選んで、それを適正に使う。もし適正に制度を使っていなければ、労働基準監督署の臨検があるから、ちゃんと使ってくださいねというように、国が法律によって適正に使われているかどうかをチェックするという形で介入をしていくというやり方があります。いま申し上げた両極端の中間のどこかで現実は動いていくと思います。
私も労働実態を見ていますと、前回も発言しましたが、もうこれ以上働けませんということを言わないのが日本の労働者です。上司から頼まれたら、嫌だなと思いながらも引き受けています。その結果として、労働時間がどんどん伸びていく。先ほど来の議論で言うとワーク・ライフ・バランスの面でも決していい状態にはならない。そこで働く側が、もうこれ以上は無理ですということが言えるようになっていればいいのだけれども、それが言えない。そうであれば、何か制度としてそこをある程度縛っておくことが必要ではないか。そこで、裁量労働制にしても、そのほかの働き方にしても、野放図に使用者側が労働者を使っていいというわけではないですよというような、ある種の歯止めをかけていくということだと思うのです。
労働組合の役割あるいは労使委員会ですが、私は残念ながらあまり期待できないなと思っています。そうなるとある程度制度を整理した上で、ちゃんと適用していかないとまずいことが起こりますよという仕組みにするしかないと思います。具体的には、社会的な制裁、あるいは選ばれない会社になってしまうということです。変な働かせ方をしている会社だという評判が立つといい人は来ませんから、そういう形での制裁が来ますよということです。だから、従業員をどう働かせるのかが経営にとって大切ですよという点を経営者が認識することですね。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
今、藤村先生が最後におっしゃったことは大変重要だと思っておりまして、言わば労働者に選ばれない会社、これが外から見て分かる、見える化することは非常に重要です。最近の労働政策で取られているように、女性活躍もそうですけれども、どのように女性を活躍させているのか情報開示をさせる。それによって市場のレピュテーションが形成されます。労働者のほうが、こんな長時間労働をやっている企業には就職したくない、テレワークが整備されていない企業には就職しないというように、市場のレピュテーションを使いながら目的を達するという方向性も非常に重要な観点だと思った次第です。
小畑委員、どうぞ。
○小畑構成員 私も、藤村先生が最後におっしゃったことはとても重要な御指摘だと思います。若い学生さんたちや働き始めてすぐの方々とお話をしておりますと、昔は自分が望む人生を送るには自営業ぐらいしか無理だとおっしゃる方が結構いたのです。特に女性でそういう方も多かったのですが、しかし、随分いろいろな働き方があって、この企業ではこういう労働者もいると聞いてきた。だったらどこかに勤めるのもいいなというような方が増えてきたということを実感するところがございます。
そういったことから、こういう柔軟な働き方ができるのであればぜひそこで働きたいなということで、就職活動する先を決めていく。そういうことの情報収集を熱心にしているグループ、サークルみたいなものも増えてきているなと実感しております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
堤先生、どうぞ。
○堤構成員 ありがとうございます。
今回上がってこなかったキーワードというような感じで私自身も認識をしながら進めていきたいなと思っていることが2点ございまして、先ほどからワーク・ライフ・バランス等々が話題に上がっていますけれども、やはり日本なりの歴史があるといいますか、文化的な積み重なりといったところがあるように思えて、それが今ジェネレーションの差になって残っているのかなと思うところがあります。これも委員の先生方がおっしゃっていたことそのままでございますけれども、一様に当てはめられない部分があるのだろうなということを少し感じているのが一つでございます。
もう一つ、これも海外で動き始めていることですけれども、つながらない権利の部分は、先生方にいろいろと教えていただいたことでございますけれども、オフの時間をノンワークのライフの中でいかに充実させるかというようなことと並行して、何か考えていってもいいのかなという感じでおります。
特に裁量が多い労働といいますか、例えば研究者などは比較的そのあたりが全く関係なく情報が飛び交い、対応するという部分などがございまして、これは本当に健康かななどと思ったりもするところがございます。必ずしも日本の文化にフィットするかどうかは分かりませんけれども、そういう海外の事例なども検討されていいのかなと思いまして、付け加えさせていただきます。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
多様な働き方ということ自体が、いわゆるメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移るのかどうかとか、そういうことにもつながってきておりますので、日本的な働き方と言ってよいかどうかは分かりませんけれども、これも時代環境、経済環境によって変化し得るものですので、そのことも含めて、今後の望ましい労働時間制度を考えていく必要性もあるということかと思います。
ほかには特に御発言はないでしょうか。
これまでのヒアリングで、制度の趣旨に合致しないような運用がある。これはきちんとチェックしなければいけない。先ほどうまく制度が機能するためのサポートということを言いましたが、使用者がサポートするだけではありませんで、行政も制度趣旨を逸脱した運用についてはチェックし、監督するということも含めて申し上げたつもりでした。
制度は非常に多様ですので、分かりにくいところや、部分的には整合性がないのではないかという御指摘もいただいたところです。そういう点については改善を図る必要性もあるかもしれません。
今後の労働時間制度の在り方については、健康確保のための労働時間の状況の把握といった視点は、考える上での土台として据えておくべきだという御指摘もあったところです。
そして、それぞれの制度の趣旨を考慮しながら、それが適正に運用されているかを、導入のときだけではなく、運用の最中もそれをチェックすることが必要であるという御指摘もいただきました。
自分の望むような多様な働き方が実現できる技術の進展があり、そういう働き方を可能とするための労働時間制度というものも考えていく必要がある。そして、それが持続するためには、きちんとしたマネジメントも必要となるとの指摘もありました。
最後のほうでは、市場の観点からのチェックも議論となりました。伝統的には、違反には刑事罰とか行政監督という公法上の規制をするのが労働法と思われていたのですけれども、やがて労働契約法ができ、私人間で紛争解決をすることによって守られる労働法も登場しています。その後、法規制ではなくて、言わば市場のチェック機能を活用するほうが、よりコストが少ないし、しかも目的を十分達成できることがあるのではないかということで、そういった市場のチェックを可能とするための情報公開を義務づけるという方向の展開も見られるところです。労働時間の規制においても、そういう観点も併せて考えるべきだといった議論にもなったところです。
多様な御意見をいただきまして、私自身も大変勉強となりました。今日の御意見も踏まえながら、次回、さらに議論を深めていきたいと考えております。
最後に、事務局から次回の日程について御説明をお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 次回の日程、開催場所については、追って御連絡いたします。
○荒木座長 それでは、第9回「これからの労働時間制度に関する検討会」は以上といたします。
本日は、お忙しい中御参加いただきまして、誠にありがとうございました。