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第8回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和4年1月17日(月) 10:00~12:00
場所
厚生労働省省議室
議題
- アフターコロナの働き方に係るヒアリング
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 定刻になりましたので、ただいまから第8回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の検討会は、委員の皆様に加えまして「アフターコロナの働き方に係るヒアリング」ということで、外部の有識者の方々に御出席いただいております。
御出席の有識者の方々におかれましては、本日は、御多忙のところ本検討会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
なお、本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式としております。
それでは、有識者の方からのヒアリングを行います。
20分程度の御説明に対し、30分程度の質疑応答の後、入替え制で行うことを考えております。
それでは、最初のヒアリングでありますが、御出席の方を紹介させていただきます。
株式会社野村総合研究所 ICTメディアコンサルティング部 上級コンサルタントでいらっしゃいます、光谷好貴様でございます。
本日は御参加いただき、ありがとうございます。
それでは、御説明を20分ほどよろしくお願い申し上げます。
○光谷参考人 御紹介にあずかりました、野村総合研究所の光谷好貴と申します。よろしくお願いいたします。
資料は、私から投映させていただきます。少々お待ちください。
ただいま資料は映っておりますでしょうか。
○荒木座長 大丈夫です。
○光谷参考人 それでは、早速、20分程度でお話を始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
私どもの研究内容の御紹介ですが「AIと共存する未来」と題しまして、問題意識は、当初、スタートは2015年とかなり以前になっていますが、労働力の不足にフォーカスすると、外国人労働者を受け入れるのか、AI・ロボットで自動化するのか、そもそものサービス水準や品質を切り下げて、労働需要を減らすのかと幾つかの対処があろうと思ったときに、真ん中の「AI・ロボットで自動化しヒトの不足を補う」ことについて、どの程度のことを行い得るのかを関心の出発点として設定したものでございました。
こちらは、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授と共同研究を行いまして、2015年に発表させていただいて、その後、かなり取材等をありがたく頂戴していたのですが、日本の労働人口の49%しかAIやロボットによる自動化で救えないと。
この言い方なのですが、置き換えられるぞ、恐怖だという言い方ではなくて、労働力不足が前提にありますので、救えるのはどれぐらいかというポテンシャルを考えると、49%しか救えないという言い方になっています。
こちらも、実際に代替し得るかは、社会的状況とかそういったこともありますので、本当にこの数字になるかはまた別ではありますが、行い得るものとして49%が該当するという研究を出しておりました。
そちらの中身といたしまして、一つ特徴的だったのが、こちらは縦軸に「コンピュータ化可能確率」と置いていまして、横軸に「対象職種内の平均賃金」を置いていますが、四角で囲っているところは、一般には高い賃金になっている、複雑な、高度な業務と思われているものであっても、コンピュータ化可能確率が高く出ているもの、要は人が難しいと思うこととAIにとって難しいと思うことは、一般的な感覚では異なっているのだということがこちらで分かったのかなというところでございます。
また、別の見方をいたしますと、今度は横軸に「雇用者数」を取っておりまして、日本にどれぐらいこれに該当する職業の方がいらっしゃるのか、囲っておりますのは、一般に事務職と言われるような方々です。
なので、製造業を自動化していくものは、ファクトリーオートメーション等でいろいろな議論がされてきたのですが、21世紀はAIがオフィスを自動化するというので、ホワイトカラーこそ、その対象になっていくのではないかと、これまでとは違うインパクトがあるのではないかという研究を行っておりました。
非常に簡単ではございますが、労働力の大規模シフトをどう支えるのかが今後の日本のチャレンジだろうと考えておりまして、ホワイトカラーにこそ、これまでとのギャップという意味では大きなインパクトがあるだろうというところで、自動化で大きく需要が減るときに、残ったホワイトカラーはAIとどう共存していけばいいのか、スキルアップとリスキルが必要なのかというところと、余ったホワイトカラーはどこへ向かうのかという観点です。
また「ヘルスケアを筆頭に」と書いておりますが、人手不足の業務ほど自動化が難しいというところで、医療、介護とかそういったところに関して、シフトできるようなケイパビリティ管理は何なのか、また、魅力あるような再構成が行えないか。
また、未来には、AIを前提とした多くの新しい仕事が生まれるのもあるだろうと。これもやはり異業種への転換ということになりますので、ケイパビリティという観点を踏まえて、どのように求職者に橋渡しを行っていけるのかが日本の非常に大きなチャレンジになるだろうと考えております。
「AIとの共存」というタイトルになりますが、これまで機械による失業という恐怖をもって語られるものが非常に多くありました。
最近は、下のほうに随分変わってきたというのがあるのですが、発表させていただいた当初は、ロボットの襲来のような形で人を置き換えていくのだという論調に対して、どう対応するのかという言説が多く出ていたかと思うのですが、RPAの登場に従ってX-Tech(クロステック)と呼ばれる既存産業と先端技術の融合が2020年頃から広がっていって、もう近づいてきましたが、2030年頃は「人とAIの協働」で、下のAIとの共存モデルが近年では多く語られるようになっているのかなと考えております。
実際に、実例としても、完全自動化が難しい弁護士業務も、部分的にはAIを活用しつつあるところで、実際に米国の弁護士の事務所の事例をお持ちしておりますが、情報を収集してサマリーを作成するところは、これまで人海戦術になっていた業務であるというのがありまして「事件ごとの分析」「過去事例のリサーチ」「方針の決定」「顧客説明」「手続き」といった一連のプロセスのうち、リサーチ系の業務、前の2つについては「AIに任せる効率を求める業務」ということで、AIに行わせることができたところなのですが、それに対して読み方を解説するという新しい人ならではの業務として生まれています。
それ以降の「方針の決定」といったところは「弁護士に残るAIが不得意な業務」なのですが、こういったAI弁護士を導入することが実際にできたところと、それに伴って人がやらなければいけない新しい業務が生まれたのが大きな示唆かと思っております。
また、もう一点、同じくAI弁護士の事例ですが「分析計画」をして「データ収集」「データ分析」「法的分析」を行って「顧客説明」を行うという業務プロセスだったところを、デジタル情報を分析するように業務プロセスを再構築したところで、ツールの操作という形になっているところです。
「データ収集」と「データ分析」は、これまで人海戦術で行っていたものが「非弁護士によるAI活用のための業務」ということで、実際にツールをマネジメントしていくような業務に変わったというところでプロセスが再構築された例もございました。
こちらは「AIが担える業務は自動化され、人はそれ以外の業務を担う」。
言葉で言ってみれば当たり前のお話にはなってしまうのですが「新たな人ならではの業務」「人に残るAIが不得意な業務」「AI活用のための業務」で今後、新しくエキスパートが登場してくるのではないかというところです。
上の2つが「AIが担えないことを得意とするエキスパート」で、一番下に「AI活用のための業務」とあって、そこは「AI活用のエキスパート」が出てくるだろうと捉えております。
AIを前提にするからこそ、業務を見直せる、スリム化できるという観点もあろうということで、中間管理職の業務も、日本の場合はかなり業務負荷が集中している立場の方々だと思いますが「中間管理職の業務の削減可能確率」は、アンケートベースで確認したところ、46.7%が削減可能なのではないかというところです。
時間量割合(タスク別)を右に置いていますが、事務処理系の業務が大きくなっていますが、実際に生産していく活動や柔軟な指揮とか、それぞれの観点で代替可能時間を見たときに、今、中間管理職が担っている業務は、AIで代替できる部分はあるのではないかという分析になっております。
ということで、AI時代のデジタル化が単なるどのツールを導入すればいいかという議論ではなくて、業務プロセスと業務の担い手を最適化・再構築するプロセスであろうと我々は捉えております。
これまでの業務プロセスは、人が担うことを前提に構築されて、改善を重ねていって最適化していくという思考回路だったと思うのですが、そちらの担い手が替わる非連続の変化を迎えることが大きな特徴であろうと。
新たな担い手は、人とAIが協働しながら進めていくことになりますので、業務プロセスを再構築して、再び最適化していく必要があろうというところで「人に最適化された業務プロセス」としては、左側に書いておりますが、OJTで学んで「人のスキルセット」が前提にあって、ミスや個人差が存在していて「長年のカイゼン」を積み上げてつくられているものであるものが、人とAIで能力に合わせてタスクを仕分ける。
不要なタスクを削って、必要なタスクを足して、業務プロセスを構成することを踏まえた上で、一番右側の「人+AIに最適化された業務プロセス」で、人とAIがそれぞれどのプロセスでやるのかを定義した範囲で各自動いていくのと、AIの機能が前提になっていく。AIについては、確実・均質的ですが、エラーが一定数存在し得るところなので、改善というよりはトライ・アンド・エラーで進めていくことが必要になるだろうというところで、単なるツールのお話ではないですねというのが、我々が考えていることでございます。
また「機械による失業」と「AIとの共存」の軸で書いておりますが、シンギュラリティがいつ来るのかというと、当面は来ないだろうと思っております。AIが人を単純に代替していくモデルではなくて、従前より申し上げておりますとおり、AIを使いこなして、人ならではの業務にシフトしていくモデルになるのだろうと。
「機械化可能性が高い」ものは、どんどんAIに任せていっていいとは思うのですが、結局、そういったものは、ある意味汎用的に使われるツールになってくるのだとすると、どちらかというと企業の競争力は「人でなければできない」ところにフォーカスが当たっていくのではないかと。
だとすると、AIができることはAIでやっていくのですが、「人でなければできない」ことも仕事として残り続けるのではないかというので、人ならではの業務にシフトしていくモデルを想定しております。
では、人ならではの業務が一体どういうものになるのかを、我々の分析でこの3つにまとめております。
「創造的思考」と書いておりますが、コンテクストを把握・分析した上で、目的意識に沿って解を創出する能力というところで、例えば企業の経営的ゴールを設定するのは、分析によって出てくるというよりは、こういったものが今後の社会に必要なのだというところで社会的なコンテクストを分析したり、あるいは企業の存在意義を設定したり、そういったことを踏まえて行われるものでございますし、それはAIが勝手につくってくれるものではなかろうというところで設定しております。
また、抽象的な概念を扱ったり創出したりというところで、哲学であったり歴史学といった学問的分野についても「創造的思考」が当てはまります。
もう一つは「ソーシャルインテリジェンス」と書いておりますが、コミュニケーションとか協調性などの能力をこのように呼んでおりますが、他者とコラボレーションする能力であって、理解・説得・交渉といった高度なコミュニケーションをしたり、サービス志向性のある対応をしたりすることです。
これについては、AIが会話機能を代替すること自体は、チャットツール等でできるようになってはいるのですが、交渉するとか、共感しながら説得するといった人の心に訴えかけることは、そもそも人が相手でないと効果が出ないところもあると思いますので、こちらは人に残る業務として定義できるのかなと。
最後の一つは「非定型対応」で、学習できない業務は人間がやらなければいけないのではないかというところです。
なので、先例やマニュアルがなくても自律的に判断する能力、業務が体系化されておらず、多種多様な状況に適切な対処を自分自身で見つけ出すことを「非定型対応」として定義しているものでございます。
そういった人ならではの業務があるのですが、今後、そのことを踏まえて、単純自動化からデジタルを踏まえた業務と人員配置の最適化、プラットフォーム化に進んでいくというところで、我々の研究も、当初はAIという主語だったのですが、AIの「自動化の単位」は「タスクの束」と書いておりまして、最適化された業務プロセスの内容・手順を自動化していって「自動化により解放されるスタッフが生まれ、人員の最適化が可能に」というところを「効果」として見ていたのですが、DX時代となると、AIの存在を前提とした「全社での全体最適」に話が進んでいくのだろうというところで、より大きな枠組みで我々も研究しなければならないという意識になっているところでございます。
なので、DX時代は業務フロー全体を考えなければならないですし、場合によっては部門を超えて最適化する業務フローを考える必要があろうというところとか、新しい業務が可能になっていくのが、プラットフォームを前提として動いていくという思考回路になっていくのではないかと考えております。
では「AI時代の人材とは?」ということで、今後、人とAIがどのように働いていって、人材はどのようになっていくのかというお話をしていきたいと思うのです。
「AIはアルゴリズムにすぎず」と書いていますが「インプット」「データ処理」「アウトプットの意味づけ」「サービス」の活用の4ステップそれぞれに人が介在しないと使うことはできなかろうというところで、例えばこちらもよくやゆされるところではありますが、相関関係を正確に分析するAIでは因果関係が分からないというところで、例えばコーヒーを飲むことと年収が高くなるのは、相関があったところで、コーヒーを飲んだら年収が高くなるかというとそうではないというお話です。
また、データだけを正確に分析するところなので、その解釈とかそういった理論づけみたいなところは、虚偽のデータであることも考慮すると、人がやっていかなければならないところで、実務上の仮説を構築できる人材をつくっていく必要があろうというところでございます。
実際に、それはどういった形で分類されていくか、エキスパートのポートフォリオを考えておりました。
大きく分けて、冒頭より申し上げています「AI活用のエキスパート」と「AIが担えないことを得意とするエキスパート」という2種類となっておりまして「AI活用の業務」では「デジタル」と書いていますが「データサイエンティスト」とかそういった方々が必要になっていく。
AIができないことは「創造的思考」、もう少し具体的に言うと「業務マネージャー」とか「人財マネージャー」「プランナー」「デザイナー」のような方々です。
「非定型対応」でいうと、やりたい方はあまりいないと思いますが「火消し役」とか、非常に高度な意思決定が行われる必要があるときの「見極め役」。
「ソーシャルインテリジェンス」として「外との交渉人」とか「人望あるリーダー」「顧客向け相談役」といったところがエキスパートとして、今後、生まれてくるのではないかと考えております。
実際に、別の研究でもThe Future of Skillsという研究がございまして、こちらではオックスフォード大学が16種類の特に求められる能力を挙げていますが「Learning Strategies」という生涯教育における実践スキルとか、「Psychology」、他者による言動の背景事情を理解する体系的知識、といったソーシャルインテリジェンスやリスキル、スキルアップに関するところといったAI時代に適合するようなスキルも定義されつつある形になっております。
では、その人材をどのようにマネジメントしていくかという観点ですが、これまでのお話だとスーパー人材でなければいけないのかというのもあろうかと思うのですが、「機械による失業」と「AIとの共存」という2つの観点をまた挙げていますが、これまでは減点主義であったというか、総合職として大量採用されて、その中で総合的に能力が高い人たちが勝ち組になっていった形で、人とAIが同じ評価軸で競争するモデルが今後も続くのかというと、そうではないだろうと考えております。
というのは、知識やスキルだったりの効率化できる能力は、AIが担うところなので、人の能力はAIによって底上げされるだろうと考えております。そのときにはAIを活用しつつ、人それぞれで異なる評価軸に異なる価値を加えるところで、これまでのような六角形がきれいな形であればあるほどよい、大きければ大きいほどよいというのではなくて、AIがベースのスキルを補うので、それぞれ独自の評価軸で、加点主義で人を判断していくべきなのではないかと考えております。
人の評価が多軸化していくところがありますので、地頭のよいエリートを減点主義で評価するのではなくて、評価を多軸化していって、人ならではの能力を個別に加点主義で評価するエキスパートの時代になるのではないかと。
ケイパビリティを、組織を超えて、個人で管理する重要性が増していくのではないかというところで、例えばですが、交渉力の高い人、業務ノウハウに秀でた人、信頼構築力が高い人、その場対応力が高い人と、それぞれ得意分野があるというところなので、人ならではの得意分野を、どのように人材ポートフォリオを組んで評価していくのかが非常に重要になっていくのではないかと考えております。
お時間も近づいてきましたので、急ぎお話をさせていただければと思います。
人材も、各国とも未来人材、AI人材、イノベーション人材の観点で育成を急いでおりますが、3つのケイパビリティ群は、レスポンシビリティやミッションといったロール、その職業で課せられている目的意識に関して、それを遂行していく能力として「コンピテンシー」として、モチベーションとかレジリエンス。
それを土台として、実際にタスクを遂行していくためのジョブ型のスキルとして「機能的スキル」。
「機能的スキル」を組み合わせて運用していく「運用スキル」がケイパビリティ群として想定されることになりますが、これらのスキルがAI時代にどのように必要になっていくのかということを各国も重要なテーマとして捉えていまして、アメリカのO*netでは職業を軸として求められるスキル・知識の種類と深さを整理して、ジョブディスクリプション(JD)と連動させたり、EUについては、スキルを軸として、スキル相互の関係を整理して、各業界と連携していくような、国のサイズでこういった取組も行われてきている。
最後に、組織のお話で、AIが効率を支えて、人は創造性を担うことになってくると、もともと左側では「今までの選択型」と書いていますが、均質的な人材で効率を求めていくとイノベーションがなかなか生まれない。
イノベーション人材ばかりを集めると、多様な人材なのですが、コミュニケーションのコストが非常に高くて効率化できないジレンマがあったかなというところがあるのですが、そこを人とAIで役割分担をしてしまえば、組織全体としては両立するだろうというのが「AI時代の両立モデル」と考えております。
「多彩なエキスパートからイノベーションを生むため、組織デザインは人間関係重視に」というところで、「秩序」ある組織から、だんだんAIの効率が人による効率を上回ってきて、業務プロセスがデジタル化していく。
人には生産性を求めないようになってくると、AIが担えない価値が人に求められるというところで、イノベーティブで柔軟な決断を求められる業務が増えていって、効率よりイノベーションとか変化への適応が組織のKPIになって、人材活用や「人間関係」を重視した組織が求められるのではないかと。
人間関係は、グーグルの過去の研究でもありますが、うまくいくためには「心理的な安全性」とか「相互の信頼性」「チーム構成と明確さ」「仕事の意味」「仕事のインパクト」と、5つの鍵があるだろうと。エースをただ集めるのではなくて、心理的な要因が、組織が成功する決め手に非常に影響していることが研究されております。
また、シーメンスの過去の講演資料等を見てみますと、これまでは「秩序」立った形で「組織単位」で「ヒエラルキー」があって「プロセス」をしっかりと進めていって「業務の進め方」は「遂行」という形なのですが、AI時代は「信頼によるエコシステム」で、組織は「ネットワーク」化していって「人間関係」は「オープン」になって「業務の進め方」は「アジャイル」的になって「業務の決め方」も「参加」型という形に変わっていくだろうと分析されております。
シーメンスは、AI時代、DX時代で非常に先進的な企業ですが、6つのエキスパートを定義しております。アントレプレナーやコーディネーター、コーチング役、スカウト、トランスレーター、アーキテクトと6つ定義されておりますが、我々が分析した3つの求められる特徴にそれぞれ当てはまると捉えておりまして、こういった観点でほかの先進的企業も検討されていると分かっております。
DX成功の姿のパターンも複数ありまして、4つの象限で我々は整理していますが、デジタル変革が到来しているか、していないかという軸が上下にございまして、自律性を重視している組織か、秩序を重視している組織かというところで、グーグルであったりネットフリックスのようなインターネットベースの非常に先進的な組織と、これまでインフラを担ってきた組織では、全てが同じゴールを目指すべきではないだろうというところで、組織の在り方も、人材の在り方も、行動の在り方も、これまではみんなでグーグルを目指そうみたいな単純化された言説もあったのですが、そうではなくて、企業の提供価値は何かということをベースに、いろいろなパターンがあるのではないかと考えております。
なので、これまでの人材も、自社の組織はどういった目標を持って、何を提供する組織なのかということによって在り方を変えていかなければならないのではないかと考えております。
「まとめ」といたしまして、ホワイトカラーに大きな影響を及ぼすことと、人とAIの共存では、得意分野に応じた役割分担が生じてくること、AIの登場で求められる人材は変わるということであれば、評価の方法も、組織の在り方もそれに適した在り方に変わっていく必要があろうと考えております。
すみません。最後は駆け足でしたが、以上とさせていただきます。
ありがとうございます。
○荒木座長 光谷様、「AIと共存する未来」ということで、将来の労働の在り方について、大変興味深い御報告をありがとうございました。
それでは、質疑応答に移りたいと思いますが、委員の皆様、音声等は問題ないでしょうか。
(首肯する委員あり)
○荒木座長 それでは、委員の皆様より質問等がございましたら、お願いいたします。
藤村委員、どうぞ。
○藤村構成員 法政大学の藤村と申します。
光谷様、どうもありがとうございました。
AIを使うことによって、労働時間が短くなっているという事実は、既にいろいろなところで出てきていると思うのです。
例えば損害保険会社で、自動車の事故に対する保険金の支払いをどうするかというところで、AIを入れることによって、これまで少なくとも5回ぐらい交渉しなければいけなかったのが、2回ぐらい交渉すれば成立するようになってきているという事実があります。AIは労働時間の削減に割と貢献しそうだということがわかってきています。
まだそういう段階だと思うのですが、この先、何か新しいものを生み出していく、まさにイノベーションとの関係で、恐らくAIとうまく共存できる人と、そうではない人が二極化していきそうな感じがしていまして、光谷さんはその辺りはどのようにお考えでしょうか。
○光谷参考人 AIと共存できる人という単位で捉えるか、それとも組織という単位で捉えるかというところがあるかと思っていまして、AIが適切である業務をAIに振って、人が適切である業務を人に振るという形で組織設計を行うのであれば、1人の人間がAIとそうでない業務を共存しながら進めるというよりは、業務の振り分けの段階でAIと人向けの業務を分けてしまうのは、一つ手としてあるのかなとは思っております。
共存がうまく行えないというところというと、御質問の意図としては、AIを操作する人みたいなところで、得意、不得意が出てくるみたいなところですか。
○藤村構成員 私が考えておりますのは、この間、各企業がIT化に取り組んできたけれども、成果があがっていないという声がしばしば聞かれます。コンピューターには、不得意な部分と得意な部分があります。それをあまり考慮せずに、今やっている仕事をそのままコンピューターに乗せようとしてやってきた。
そうすると、いわゆるソフトウエアのカスタマイズが必要で、相当お金もかかります。そういう形でIT化を進めてきたことによって、日本企業のIT化は、あまり効果をもたらしてこなかった感じがするのです。
次にAIを利用するときに、同じことをやってしまうとあまり意味がない。だから、AIが得意とする部分は、AIに任せるけれども、そうではないところは人間がやる。まさに今日のお話の内容だと思うのですが、人間がやる部分について、それをうまくできる人とそうではない人と差が出てくるのではないかという問題意識です。
○光谷参考人 我々もそこは同じ問題意識を持っていまして、先ほど挙げた13ページの「創造的思考」と「ソーシャルインテリジェンス」等を誰もが今、何もせずに、人だから発揮できるかというと、やはり得意、不得意あろうかと思っています。
例えばAIがこれまで担ってきたような単純作業みたいなところこそ得意だという方ももちろんいらっしゃいますし、「創造的思考」を発揮することが非常に不得手だという人もいる中で、どのようにしていくかという観点で、先ほどのスキル開発が必要になってくるのだろうと思っています。
単純に人に残る業務だから、人がやってねというだけではなくて、そこは人が力を発揮できるように、どういうスキルセットをどういうプロセスで身につけていくのかということを考えていかなければならないのかなと思っております。
○藤村構成員 どうもありがとうございました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
川田委員、どうぞ。
○川田構成員 筑波大学の川田と申します。
本日は、貴重なお話を大変興味深く聞かせていただきました。ありがとうございます。
かなり幅広くAIと共存する未来における働き方のお話を伺ったかと思うのですが、我々の検討会は、労働時間に関する制度に関心の重点を置いていることから、それに関連することについて、理解が十分ではないかもしれませんが、私なりに理解したところにを踏まえて更にお伺いできればと考えたことを質問させていただきます。
今日のお話の中では、特にDX化の時代には、業務プロセス自体をAIと人が共存する形に変えていくという大きなバックボーンでお話ししていただいたと思うのですが、その中で、特にAIが担えないところを得意とする人、あるいは働き方が出てくるときに、そういう人たちの仕事の中身の決め方について、今までの働き方と変わるところがどのぐらいあるかについて、光谷様のビジョン等があれば伺いたいと思います。
今の労働時間に関する制度は、具体的な仕事の中身については、例えば上司からの指示がある、あるいは契約した段階であらかじめある程度決まっているとか、個々の働く側からすると、あらかじめ決まって、あるいは自分以外の人が決めるという色彩が強いもので、一部、例えば裁量労働制などだと、時間配分とか仕事の手順、何をどういう順番で進めていくのかについては、働き手の自由度に委ねる制度設計になっていますが、仕事の中身そのものは、多分、労働者本人以外の人が決めるという制度設計なのではないかと思います。
そういう辺りが、本日のお話の中では、労働者の個性が今まで以上に大事になってくるのではないかというお話などもあったかと思うので、例えばそうしたこととの関係で、個々の労働者ごとに、労働者と指示を出す側、上司等が話し合いながら具体的な仕事の中身を決めていく、あるいは仕事の中身自体の決定もある程度働き手の側に委ねてしまうなど、働き方、特に仕事の中身の決定に与える影響について、何かこう変わっていくのではないかということがございましたら、追加的にお話を伺いたいと思います。
○光谷参考人 ありがとうございます。
これまでの仕事の仕方との大きな違いとしては、人の働き方が多様になっていくところが大きな違いかと思いますので、マニュアルで決められたとおりに、このように作業してくれて、それは時間をこれぐらいかけたら、これぐらいの価値があるので、時給制ですみたいな発想にはあまりそぐわない世の中になっていくのではないかと思っております。
そういった個人に裁量を与えてというところになるので、プロセスが決められた仕事をこなしていくのではなくて、ある程度抽象度の高い目標を与えられて、それの進め方に関しては、ある程度自主性を持って検討してもらうという仕事の振り方になっていくのだろうと思っています。なので、例えば売上げを何パーセント上げろというミッションは、達成の仕方が分かっていれば、別にその人に任せる必要はないわけで、ある程度抽象度の高い目標を与えることになるだろうと思っています。
ただ、一人一人、全く放置されるかというと、そういうわけではないかなと思っています。
先ほどマネジャーのお話もさせていただいたかと思うのですが、マネジャー側の期待も変わっていくだろうというのがありまして、中間管理職は一部業務がスリム化できるとお話しさせていただいたと思うのですが、そうなってくると、人一人をそれぞれ見て、それぞれの人たちが持っている特徴とか個性を踏まえた上で、アドバイスをしたり、指針を与えたりといったマネジメントをできる人が必要になってくるだろうというので、そういったマネジャーとの関係性において業務を決めていく形になるのではないかと考えております。
○川田構成員 どうもありがとうございました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
東京大学の荒木でございますが、お聞きしたい点が幾つかございます。
24ページのスライドで、組織が成功する決め手は人間関係だということで、5つの鍵が並んでおりますが、これを拝見しますと、ややもすると、これは日本のメンバーシップ型雇用で大事なファクターが並んでいるようにも見えるのです。
ジョブ型雇用の諸外国で、AIと人の共存で議論されている事柄は、日本のメンバーシップ型雇用のような雇用関係に置き換えた場合に、どの程度妥当するのかという観点で見たときに、何かコメントをいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
○光谷参考人 日本もジョブ型雇用の観点も必要なのではないかという議論が最近、ニュースサイト等でも多く挙げられていますが、逆に、海外においても、これまでのジョブ型雇用ではなくて、一人一人ジョブが完全に決められた状態ではなくて、ロール型の働き方と呼ばれる、先ほどの抽象度の高いミッションを与えて、実際の業務の進め方に関しては、それぞれが自分なりに考えて進めていく働き方みたいなものも必要になっているのではないかという揺り戻しのような議論もなされていると伺ったことがあります。
そういったロール型の仕事を進める上では、役割分担が明確に決まっていて、自分の仕事だけをしていればいいということではなくて、誰かと協力しながら進めていかなければならないことになりますので、こういった心理的安全性に関する指標が、高い付加価値を出すためには重要になるのではないかと。
こういった成果を出せるやり方が、メンバーシップ型にしかない特徴かどうかは、私は分からないのですが、こういった特徴を持った働き方がジョブ型においても必要になるのは、より高い目標を達成するためには重要度が高いのではないかと考えています。
○荒木座長 ありがとうございました。
それから、もう一点、AI化にむいた業務と、そうでない業務ということで、最初にコメントもございました。
まさにテレワークの時代に、テレワークが不可能なエッセンシャルワークがございますが、このように業態によってAI化がどんどん進んで、それと違う分野で能力を発揮することが期待されるような業務と、そうではなくて、AIに任せずに、人がやらなければいけない業務という新しい社会の分断が生じかねない問題があると思うのですが、そういう問題について、AIを導入した将来、どう対応すればよいかについて、何か御知見がございましたら、伺えればと思います。
○光谷参考人 今回の議論ではなかなかフォーカスが難しいところというか、人に残る業務は創造的なものであったり、ソーシャルなものなので、どうしてもエッセンシャルワークはどう位置づけられるのかが抜け落ちてしまうのはあるかと思っております。
それでいうと、エッセンシャルワークに関しても、例えばリスキリング、スキルアップの文脈の中で明確にスキルを掲げて、エッセンシャルワークについても、適切な人材が適切な形で進められるように、フレームを定義していくのは、一つの効率化の観点であるのかなと思っております。
○荒木座長 ありがとうございました。
諸外国でも、この問題は非常に課題だと認識されているのではないかと思いますが、お答えありがとうございました。
島貫委員、どうぞお願いいたします。
○島貫構成員 一橋大学の島貫と申します。
御報告をありがとうございました。
先ほど13枚目のスライドで、AIによる自動化が難しい3分野ということで見せていただきましたが、どういった特徴があるのか、なるほどと思ってお伺いしておりました。17枚目のスライドで「AI活用のエキスパート」も含めると、全部で4種類の人材のタイプ、あるいは仕事ということで表示されているのですが、このような人でなければ担えない仕事を考えていくときに、このような業務に就いている人たちに、どの程度企業あるいは上司からの労働時間管理が必要になるでしょうか。逆に管理は必要なくて、それぞれの労働者の方、従業員の方の裁量に任せてしまってよいものでしょうか。業務によって濃淡があるような感じがいたしまして、その辺りはどのようにお考えなのか、教えていただければありがたいです。
その点に関連しまして、ここにあるような仕事は、評価についてはどのように考えていくのが良いのでしょうか。例えばこの業務は労働時間と成果が連動しないから、基本的に成果で評価していきなさいということなのか、連動しないけれども、能力を重視して評価しなさいとか、この業務は労働時間と連動しているので、労働時間をきちんと管理していかなければいけませんねとか、労働時間管理と評価の在り方に関して、ここに表示されている4つのタイプに違いがあるのかどうか、教えてください。
○光谷参考人 ありがとうございます。
労働時間管理でいいますと、業務時間によって、たくさん時間をかければ、たくさんアウトプットが出るのは、もちろん一般論としてあるのですが、時給的な考え方がそぐわない方々ではありますので、労働時間に関しては、ある程度の裁量が必要なのであろうといいます。それを達成するためにかかる時間、あるいは評価にも絡むところではあるのですが、時間をかけてというよりは、先ほどの抽象度の高い目標が与えられて、それに対してどのように達成していくかは、それぞれで考えるところになってくると思います。
時間で管理するというよりは、目標設定したものに対してどれぐらい進捗したかという観点によって評価が行われていくところになりますので、逆に個々人に振り分けられた目標設定が企業の戦略的な目的意識とちゃんとひもづけられた状態で管理されて、それがそれぞれの役割を持っているエキスパートの方々に振り分けられていって、そのエキスパートがそれを達成できる度合いによって評価されていく形になるのかなと思っております。
その評価の仕方として、例えば「デジタル」の人たちは、改善ポイントを複数掲げるとなったときに、個数によって管理できるものであれば定量評価をすればいいですし、もっと定性的な評価が必要なのであれば、評価者がどのように評価するのかによってくるところなので、評価の手段が定量か、定性かはいろいろとあると思うのですが、目的意識をどう設計するかは、企業がそれぞれ考えなければいけないことかと思います。評価者がそれをどのような基準を持って評価を行えるのかは、企業ごとにしっかりと定義しておく必要があるので、少なくとも、これまでよりも評価の難易度は上がるのかなと思っています。なので、評価と労働時間管理については、企業としての目標設定と個人の目標設定の設計をどのようにしていくかによって、企業ごとに変わってくるのかなというところです。
評価と労働時間の管理は、若干今、表裏一体でお話ししてしまいましたが、回答になっているのかというのはあるのですが。
○島貫構成員 ありがとうございます。
○荒木座長 それでは、続いて、黒田先生、お願いいたします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
本日は、とても貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。この10年ぐらいの流れを20分ぐらいに凝縮して、ダイジェストでお話ししていただき、とても勉強になりました。
ほかの先生方とも重複してしまうのですが、私も労働時間絡みで少し質問させてください。
ご説明は、AIに代替されて失業者が増えるというよりは、最近ではAIにできない業務を行うことによって、失業ではなく協働になることが全体のメッセージだと理解しました。
最終的な方向性は人間に対する需要と供給がどのように働くかによって、大きく違ってくるのではないかと思っています。今後は、AIの進歩が人との協働をより促進するようなものとしてどんどん進んでいくのでしょうか。それとも、補完関係にあったものが、さらにAIが進歩して、代替関係に変化していくのかによって違ってくるかと思います、この10年ぐらいのAIの進歩を見ていましても、10年前は考えられなかったことをAIがかなりできるようになってきている。そういうことを考えると、今は協働だと思っていても、代替されるような技術も生まれてくるのではないかと思います。
一方で、人間の供給側は「創造的思考」「ソーシャルインテリジェンス」「非定型対応」が供給できる人材をどれぐらい育てていくかというまさに需要と供給との関係だとお話をお伺いしていて思いました。
そこでお伺いしたいのは、御社でそういったシミュレーションのようなものをされていらっしゃるか、もし何か開発されていらっしゃるようでしたら教えていただきたい。
例えば今、必要だとおっしゃっていた3つの新しい仕事の内容に関しても、創造的な仕事のほうが例えば「非定型対応」よりもより多くの人材が供給できるような場合を仮定する、あるいはその逆の可能性もあるかもしれません。日本の教育制度にも関係すると思うのですが、日本の教育制度でどの程度のどういった層の人材供給が可能で、技術がそれに追いついていけるかどうかというシミュレーションなどがあったりすれば、教えていただきたいと思います。
どの部分が需要超過になるかによって、労働時間が長くなる人と、むしろ短くなる人との差が大きくなるのではないかと考えています。
それが冒頭に藤村委員がおっしゃった二極化にも関係してくるかと思うのですが、その辺りのことをもしお考えであれば、教えていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○光谷参考人 ありがとうございます。
それでいうと、シミュレーションのようなことは、まだ行われていません。
この3つの特徴は、先ほどの代替される分析をしたときに、代替されないと判断された職業が持っている特徴から逆算するとこの3つにまとめられたという形なので、この3つを最初に定義して、これについていろいろな分析をしたわけではないので、これをベースにシミュレーションは、まだ行えていないのです。
付随するところで示唆になればというところなのですが、これら3つの特徴に関しては、今後、新しい仕事というお話を冒頭でさせていただいたと思うのです。
AIに置き換えられるというお話と、既存の仕事のうち「創造的思考」だったり、この3つに該当するものが残るというお話のほかに、AIがこれまでやれなかった仕事をどんどん代替できるようになることで、人がやらなければいけないことがAIに置き換えられていって、そのAIをある企業しか使えないのであれば、競争力になるのですが、今、いろいろな企業が自分でカスタマイズして使えるAIも出てきているので、競争力はAIが担うことではなくて、人が担うことになっていくので、新しい仕事が今後、どんどん出てくるのではないかと考えています。
新しい仕事についても、「創造的思考」だったり「非定型対応」「ソーシャルインテリジェンス」とかに該当する何かしらだと思うのですが、新しい仕事にどんなものがあり得るのかを机上でシミュレーションするのはなかなか難しいところもあって、そういったシミュレーションを行っていないのですが、考えるとしたら、新しい仕事はどう生まれ得るのかも考慮に入れる必要があるのかなと、付随的な示唆としてお話しさせていただければと思って、お話しさせていただきました。
○黒田構成員 ありがとうございました。
○荒木座長 続いて、小畑委員、お願いいたします。
○小畑構成員 本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。
京都大学の小畑でございます。大変勉強になりました。
私から質問させていただきたいのは、先ほどの黒田先生の問題意識とつながってくるかとも思っているのですが、こうした新たな世界が到来することで、働く人たちに適応し切れない人たちが出てくるのではないかと。
例えば非常に追い詰められた気持ちになってしまって、メンタルが非常に弱ってしまう方々が出てくるといったことを心配しているのですが、そういったことにならないための工夫として、どのようなものがあり得るだろうかということに関しまして、もしお考えがありましたら、お教えいただけませんでしょうか。
よろしくお願いいたします。
○光谷参考人 ありがとうございます。
それでいうと、AIの登場にどれぐらいの人が適合できるかはもちろんあるのですが、今、適合できないと思い込んでいるだけの人たちも恐らく一定数いるだろうと思っていまして、それは自分が得意であったりできることがスキルの定義等で言語化されていないケースも多々あるのではないかと思っています。
なので、今の働き方は、総合職としてがばっと採用されて、総合力として優れているかどうかというところで、人が評価をしている形になると思うのですが、自分のスキルとしてどういったものが世の中的に定義されているものに該当して、それがどの程度なのかをしっかりとちゃんとした軸で把握できている人は一体どのぐらいいるのだろうと思うと、そんなにいるわけではないのだろうと思っています。
そういったときに、自分としてはできていないと思うことであっても、ちゃんと計測して評価すれば、こういうことまではできるというので、スキルを再発見するものも恐らくあるのではないかと思いますし、あるいはこの仕事をするためには、何のスキルを身につけなければいけないのかは、性格的な得意、不得意で判断するのではなくて、このプロセスを踏んで、こういうスキルを身につけることができれば、AI時代においてもこの仕事に就くことができるという道筋をちゃんと示してあげることができると思います。
要は、それを身につけるべきスキルと身につける方法という形で整理することができれば、できないと思っている人たちであっても、その道のりに乗ることができることはあると思いますので、そういった形での対処が今後、必要になってくるのではないかと思っております。
○小畑構成員 どうもありがとうございました。
○荒木座長 それでは、ほぼ予定した時間となりましたので、次の方のヒアリングに移りたいと思います。
入替え制で行いますので、光谷様にはここで退出をお願いしますが、本日は、AIと労働の未来について、大変示唆深い御報告をいただきまして、大変勉強になりました。
どうもありがとうございました。
○光谷参考人 ありがとうございました。(光谷参考人退室)
(山田参考人入室)
○荒木座長 それでは、次のヒアリングに移ることといたします。
こちらは対面で御出席いただいております。
御出席の方を御紹介させていただきます。
株式会社日本総合研究所副理事長の山田久様でございます。
本日は、大変御多忙のところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。それでは、20分程度御説明を伺って、その後30分程度質疑をさせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
○山田参考人 先ほど御紹介いただきました、日本総合研究所の山田でございます。
本日は、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
私からは、マクロな話から入らせていただいて、論点が多岐にわたるのですが、テーマをいろいろとお話しさせていただきたいと思います。
最初に、非常にマクロに見たときに、今、経済社会のいろいろな変化がどういう形で起こって、それが雇用システムにどうインパクトを及ぼしているのか。
特にデジタル化は今、テーマになっていますので、そこに対しても少しコメントさせていただきます。
その後、個人サイドから見たときに、今、非常に大きなテーマになっているのは、キャリア自律という話が出ていると思うのです。恐らく、デジタル化の社会の中でそれが大事になってくると思うのですが、ここの現状と課題です。
それを踏まえて、労働法制に対して私が考えているところ、特に労働時間ということですので、最後にそれに対してのコメントを幾つかさせていただきたいという流れでございます。
今ご覧いただいているのは、非常にマクロな話なのですが、雇用は言うまでもないのですが、産業の派生需要だと言われるわけですから、当然、企業サイド、経済サイドにどういう変化が起こっているのかは、大きなインパクトを与えると思います。
図表1-1は、労働需要を決める背景にある企業のビジネスに対して、特にマーケット構造がどうなっていくのかという問題と、もう一つは技術がどう変わっているのかが非常に大きな2つの要素だと思いまして、縦軸にマーケットの変化、横軸に技術の変化を示しております。
単純化していますが、例えば市場は、かつての「モノ、プロダクトアウト」が「サービス、マーケットイン」に変化している。それから、技術でいうと「インテグラル、熟練」と言われたのが、だんだんと「モジュール、スマート化」に変化しているということです。ですから、全体で見ると、左下から右上に大きな流れが進んでいるということかと思います。
ただ、環境が大きく変わることは大事なのですが、自分たちの強みは何なのか、日本の強みは何かということを捨ててしまうと、結局、二番煎じで競争に負けるわけです。
そこから見ると、昨今、両利きの経営が経営学の中で議論されています。私なりにこれを非常に単純化して言うと「革新力」の問題と「品質力」の問題という両利きが問われているのではないか。日本は品質力に強みがある。インテグラル、熟練、長期雇用を中心とした、物作り中心。そこに競争力があるのが実態です。
なぜ日本が今、苦しんでいるかというと、まさに今申し上げたような変化が起こっているからです。
ところが、まさに申し上げたような状況は、図表1-2を御覧いただくと分かります。はっきりと日本は品質力に競争力があるのですが、革新力はどうしても劣っている。
もちろん、この変化に対応しないと駄目ですから、全体としては革新力を上げていかないと駄目なのですが、日本の現状を無視してやってしまうと、競争力を失ってしまって問題が起こることは、しっかりと考えておかないと駄目だということだと思います。
次のページは、特に今起こっている技術の変化は何かと、もうちょっと具体的に言うと、デジタル化と脱炭素化です。
時間の関係であまり詳しく申し上げませんが、この2つが大きなビジネスモデルの変革を求めているのは、従来は、単純化すると「大量生産・大量消費・低価格」のビジネスモデルだったのですが、これを適量生産し、適量消費し、適正価格をつけていく。言わば量から質への経済に転換していかないと、多分、やっていけない構造になっている、非常に大きなメガトレンドが起こっているということかと思います。
もう一つは、生活面も当然そうです。産業だけではなくて、我々が生活していく雇用は、一方では生活の糧です。実は、そういう面からしても、従来の在り方はかなり見直しを迫られているということかと思います。
一番そのインパクトが大きいのは、図表1-5にありますが、労働力の属性の変化が大きく進んでいるということです。
日本のいわゆる長期安定雇用、いわゆるメンバーシップと昨今言われている働き方の前提は、そこの中核労働力は、男性の現役社員を想定していたかと思います。
一方で、言うまでもないですが、女性は裏側で家事・育児に専念するのが原則でしたから、働くにしても、周辺的な仕事。あるいはシニアになると引退する。
ある意味それは、そういう家族モデルと表裏一体の中で、それなりにうまくいっている部分はあったわけですが、ここにありますように、言うまでもないのですが、男性の現役世代、ここでいうと25~54歳ですが、劇的に減っているわけでありまして、今後はもっと減っていく。
今後は、女性は当然のこと、シニアも含め、多様な人材の人たちが、多様な生活のバックグラウンドを持ちながら能力を発揮していかないと駄目だと。残業とか転勤は当然だった日本の雇用システムを根底から問われているということだと思います。そういう意味で、人材の変化からも、大きなシステムの変動を問われているということです。
大きな方向性で言うと、これも詳しくやると時間がないのですが、国際比較をするときに、図表1-8を御覧いただくと、もう釈迦に説法だと思いますが、日本で何か経済ショックがあり、人件費を調整するときに、賃金調整をする傾向が強いようです。雇用調整を抑えるわけですが、その結果として、昨今、賃金が伸びない。
まさに今、政権でも大きな問題になっているわけですが、先ほど申し上げました量から質の成長を考えますと、もうちょっと賃金が伸びていく方向に変えないと駄目だというのも、国際比較から言えるかと思います。
その中で、ジョブ型は昨今のはやり言葉になっているわけですが、ここは皆様専門家ですので、言うまでもないのですが、結局、ジョブ型へのシフトということはいろいろと言い方が変ってきていますが、昔から言われている話です。
いわゆる最近の言い方で言うとメンバーシップ型か、ジョブ型かというと、右の図表1-10にあったように、歴史的に繰り返してきたものです。ただ、恐らくは、少しずついわゆるジョブ型と言っていいのか、職務をもう少し明確化していく方向の緩やかな変化は起こっているということだと思うのです。
ただ、これは繰り返して起こっている話であって、何ら本質的なところは新しい話ではないのではないかと思います。
結局、そうすると、どういう方向に行くのかというと、その前提も、図表1-11にありますように、雇用システムは社会の中に組み込まれているわけですから、その周辺にある、特に教育システム、あるいは賃金設定の相場。
昨今は、賃金の決定というと、人材マネジメントの話になってしまいますが、欧米全体で見ると、そうではなくて、もうちょっと社会的な大きな仕組みの中で決まっているわけであります。
そのように考えますと、社会に組み込まれている以上、社会は残念ながらそう簡単に変わりませんので、そう一気に変わるわけではない。だからこそ繰り返し、揺り戻しが生じているということかと思います。
ただ、申し上げたように、少しずつ変化はしているし、方向性は、大きく言われると、いわゆるジョブ型をどう定義するかとなりますが、冒頭に申し上げましたように、革新力を生み出すという意味では、人材のリソースを内部リソースだけではなくて、外部からの人材も組み合わせていったほうが革新力を生みますから、そういう方向に変えていかないと駄目なのは事実です。ただ、既に申し上げたように、それだけやってしまいますと、日本の強みがなくなってしまいます。
ですから、図表1-12にありますように、結局、人材のポートフォリオをどう組み替えていくのかという問題になります。
日本の問題は、このポートフォリオでいいますと、縦軸に熟練の技能の水準とか賃金レベル、横は、左側は職務が決まっていない、いわゆるメンバーシップ型か、あるいは右側はジョブ型ということになりますが、日本は、右上の、ジョブが明確だけれども、技能水準が高い人は、いないわけではないですが、総じて少ない。ここの問題があるのだろうと。だから、全体を右に全部持っていくという話ではなくて、ここの部分をどう意識的に増やしていくのかという問題と考えるべきではないかと思います。
細かい話で、どう接続するのかはいろいろとあるのですが、後ほどもし議論になれば、お話しさせていただきたいと思います。これが後ほど出てくるキャリア自律の必要性にもなっています。
次のページは、非常にラフなイメージで、よくゼロサムの議論というか、デジタル的に、日本はメンバーシップではなくてジョブだとか、メンバーシップというわけですが、実際は分布しているわけです。
これは、ジャコービィの十数年前の書籍から引用していますが、非常に単純化すると、就社型というか、メンバーシップ型とジョブ型と分けたときに、日本は左側のメンバーシップ型に分布しているわけです。
でも、実際は、例えば外資系企業の人たち、あるいはベンチャー企業の人たちは、違う働き方をしているわけです。欧米でも、非常にメンバーシップに近いような働き方はあるわけですから、その分布の問題だろうと。
それがここに書いているような変化で、全体としては右にシフトしていくのだけれども、まだ当面はメンバーシップのほうに残るということではないかと思います。
以上が、非常に大きなマクロな話なのですが、では、デジタル化の影響をどう考えるかという話でいうと、これも数年前にAIが雇用を奪うという非常にディストピア的な議論があったと思うのですが、その後、いろいろな議論の中で、特にOECDなどの分析がされたことによって、重要なのは、AIとかいわゆるオートメーションが奪うのは、ジョブではなくて、タスクだろうということです。
ですから、ジョブはタスクの束ですので、中にはジョブが単タスクのものがあり、それは簡単に奪われるわけですが、そうではないのは仕事のやり方が変わっていくのが本質で、考えてみれば、我々の仕事はずっと変わり続けているわけです。だから、そういう話だと思います。
ただ、だから仕事がなくならないという話ではなくて、仕事の中身が変わりますから、まさにそれに対応できない人と、そうではない人も問題に出てくるということです。
これは、アメリカの事例はよく引用されるのですが、アメリカの分析が多いので、アメリカの分析を見ていると、非常に雇用が二極化しているのが実態です。図表2-1です。
ただ、これは非常にラフなものですから、単純に賃金水準の職種別に、傾向的に高いところと低いところと真ん中ということで見ると、図表2-1の一番右にありますように、アメリカは、高賃金職種が増えていっているのですが、一方で、低賃金のところも増えている。一方で、中賃金職種には変化がない。シェアで言うと低下しているということで、まさに中抜けが起こっている、よく言われる議論が起こっている。
マクロのラフな数字ですから、限界はありますが、例えばスウェーデンを見ると、低賃金職種も減っている。全体として高賃金にシフトしている。
日本は、アメリカに若干似ているところがあるのですが、要は、国によって対応が違うということなのです。
恐らく、スウェーデンは、分析は詳しくしていく必要があると思うのですが、よく言われていますように、かなり人材育成に対して意識的にやっていますし、キャリア自律は、アメリカ人とある意味同じぐらいできている中で、デジタル化のマイナスに対していろいろな対応ができている。
もともとデジタル化の雇用に対するインパクトは、労働を代替していくものと補完的に増やしていく両方があるわけで、これは勝手に起こるわけではなくて、経営者とか現場、場合によっては労働組合があれば、その交渉の中で主体的に決めていくものであって、その決め方によって結果が変わってくることが大事ということではないかと思います。
もう一つ大きなインパクトは、今回、雇用そのものに対してギグエコノミーがインパクトを及ぼしていることです。
これは世界的に起こっている現象ですが、ここではヨーロッパの分析を少し引用しておりますが、ヨーロッパでは結構増えているのですが、一つ言えるのは、ギグワークというか、プラットフォームで働く人たちが増えているといったときに、みんながフリーランスではないということなのです。
統計的に見ると、実は副業のような人がかなり多くて、その副業も非常に多様だということです。非常にマイナスで捉えられる、なかなか仕事がなくて、複数仕事を受け持ちしながらやっている本当に生活が苦しい人もいれば、あるいはかなりスキルの高い人もいる。あるいは年金生活をしていて、あるいは何らかの資産の収入があって、付随的に働いている人もいるということで、非常に多様な状況になっているということかと思います。
ここに関しては、実態調査を継続して行っていくことが大事だと思うのですが、重要なインプリケーションは、今日の関係でいうと、伝統的な労働法が想定しているものとは異なるタイプの働き方がどんどん増えていくのだということです。これは必ずしも典型的なフリーランスではなくても、いわゆるマルチプルな働き方や年金との併用とか、いろいろなそういう働き方が増えていくことが大きなインプリケーションではないかと思います。
もう一つデジタルの関係でいうと、今、テレワークが非常に大きなトピックスになっておりますが、テレワークの実態ということで、図表2-7は、JILPTの調査で、直近のこの1年はまだ入っていませんが、恐らくその後の傾向もそんなに変わっていないのではないかと思うのです。要は、最初の緊急事態宣言のときは、否応なしにみんな入れたわけです。入れざるを得なかった。
ところが、その後、感染症のいろいろな抑止のやり方もある程度分かってきたこともあって、一旦下がるわけです。足元でも、恐らく最初のピークには戻っていないということです。
それと、重要なのは、非常にばらつきがあるところです。大手では普及しているのですが、中小ではなかなか普及していない。それから、職種でもばらつきがある。ホワイトカラーは当然そうですが、現場での仕事は、テレワークができない部分はかなりあるわけです。
そういうのが実態なのですが、もう一つ重要なのは、生産性が上がるかどうかは大きなテーマです。
図表2-6は、生産性本部の調査を見ていますが、これはアンケート調査ですが、最初の頃は、テレワークで生産性が下がったと答えている人が6割ぐらいあって、ある程度慣れてきて減ってきているのです。ただ、ざっくりと半分ぐらいしか「上がった」と答えていないということであります。
これをどう捉えたらいいのかというと、これも生産性本部の調査を見ていると、当初は、デジタルにも慣れていなかったり、判子を押さないと駄目だとか、もともと資料がウェブを通じて取れないとか、テレワークを想定した業務プロセスになっていないわけです。ところが、これはある程度整備されてきたわけです。
ところが、一方で大きな問題になって、なかなか変わってこないことでいうと、大きく言うと時間の使い方という話だと思います。
要は、仕事のオン・オフがはっきりしないとか、結果としてオーバーワークになってしまう。これはみんながみんなそうではないのですが、そういう傾向は無視できない形で生まれているということです。
恐らく、この背景には、前のページに書いていますが、アドビがテレワークとオフィス労働を比較して、生産性が上がっている、仕事がはかどるというのを各国で比較すると、アメリカとかヨーロッパは高いのですが、日本は低いということです。
恐らく、それは、日本はいわゆるメンバーシップ型のチームを重視するやり方をしているので、自主的に仕事をしていくことが、全体としてはまだまだできていない問題がある。
それが次の問題のキャリア自律に係ってくるのですが、そういうことが一つ影響しているということだと思うのです。
ただ、欧米でも、テレワークの限界はかなり指摘されています。例えば有名なのは、グーグルのCEOがオフィスに出てくることの重要性を説き、ハイブリッドな働き方になっているわけです。
あるいは図表2-7にもありますが、アメリカの研究者の分析ですが、御案内の方もいらっしゃると思うのですが、御興味があれば(Source)に書いてあるところをお読みいただければいいと思うのですが、いろいろな問題があります。
ここでは、例えばコミュニケーション、コーディネーション、コラボレーションのコストが上がる。要は、人材育成とかコミュニケーションはマイナスだと。
だから、恐らくは、テレワークとオフィスワークをどう組み合わせていくのかが、これからの課題だということだと思います。
一方で「自律的な働き方」が大事になっているのですが、企業がそこに対してどう考えているのかですが、企業もキャリアに対しては自律してもらおうということです。
その結果、人材育成に対して選抜的な傾向がある。これは前から高まっているのですが、そういう傾向が継続されているということだと思います。
昨今、リカレントとか、特にリスキリングということで、人材能力の組替え、新しくするという話はされていますが、結構いろいろな取組をしていて、企業によってばらつきがあり、全体の統計から見ると、図表3-1の右側ですが、若年層とか中堅層に対してはやりますが、シニアとかミドル以上は、自分でやりなさいということなのだと思います。
ただ、これは人口動態的に見ると、非常に問題です。ここが増えてきて、ここをどう再活性化していくのかがないと、まさに社会的に言うと二極化の問題とかが起こってくる。企業が悪いというよりは、合理的に判断しているわけですから、これは事実として踏まえておく必要がある。
それから、では、個人はどうかというと、ざっくり言うと、キャリア自律といろいろと言われるので、みんなそれは意識しているのですが、実際にできている人は少ないのが実態だと思います。
この背景にあるのは何かというと、今日は労働時間のことが中心ですが、そこと関連しているのですが、キャリア自律とか、本当の意味でデジタルの時代になって、自主的に働いていく中では、恐らくタイムマネジメントはすごく大事になってくると思います。
ところが、日本の働き方あるいは家族の在り方も含めて、これをあまり促進する方向にしてこなかったということではないかと思います。長時間労働が前提になってくると、仕事をやっていればいいという話なのです。逆に、女性に関しては、家事中心になってしまっていた。
欧米は、家事も育児も、要は、生活時間の中に仕事時間をどう位置づけているか。そうなると、当然、主体的に自分の時間をどうマネージするかという発想が生まれてくるわけですが、日本は結果的にそういうところが弱かったということではないかと思います。
ですから、労働時間を一定程度に抑えることの意味合いは、単純に過重労働を防ぐことを超えて、日本人のより主体的な生き方をどう進めていくのかに対して、非常に重要な意味合いがあるのではないかということだと思います。
その中で、具体的には、裁量労働制とか高度プロフェッショナル制度の議論があるわけですが、要は、これは理念としては正しいと思いまして、進めるのは重要だと私は思うのです。
重要なのは、ここに書いていますが、労働者が主体的に生活時間と労働時間を選択する能力を持っている、かつ、上司とか顧客との関係で、そのような環境が一定程度整備されていることが重要であって、果たしてそれがどうなのかということが問われている。
この厚生労働省の調査を見ていますと、一定程度はそういう人たちに適用されているのが原則なのだと思うのですが、ちょっと気になるところがあるのが実態ではないかということだと思います。
時間の関係で省略しますが、労働法制の今後については、ここに書いているとおりです。
これも一つは、ギグワークとかフリーランスに対しての見直しをしていく。
それから、時間管理の在り方です。
もう一つは、改めて個人の自立が求められるが、実は個人だけの問題ではない。先ほど言いましたが、企業が合理的に判断すると、みんなを底上げするのは限界があるわけです。
そうすると、自己責任になってしまって、そこから漏れてくる人が出てくるので、そこをどう救うかという問題があって、改めて労働組合を中心とした、いわゆる労使のパワーをどうバランスさせていくかは、非常に大きなテーマになっていくということではないかと思います。
最後に、労働時間法制に関しましても、ここに書いているとおりです。
全体としては、労働基準法が想定する典型的な働き方に必ずしもなじまない就労者が増えている。例えば成果型というか、知識労働者。それだけではなくて、働く人たちの環境の中で、ある程度主体的に時間を設定したいという人たちです。
ただ、現実は、そうは言うものの、先ほど見てきたように、主体的に労働時間なり生活時間を決めていく能力と環境を備えている人は、日本に必ずしも多くないわけです。ですから、単純にこれを外してしまうと過重労働になってしまうということだと思います。
結局、方向としては二面作戦ではないか。
まずは、例えば裁量労働制に関して、趣旨を改めて徹底する。あるいはしっかりとした運用ができるようなチェックリストを含めた仕組みづくりをする。あるいは一方では健康管理措置をちゃんと講じる。
もう一つ重要なのは、実態調査を定期的にやっていくことではないかと思います。
最後に、長期的には、キャリア自律を進めていくような、様々なものがありますが、例えば人材育成の在り方もありますし、もうちょっと労働移動が円滑になるようなものがある。あるいは先ほど申し上げたように、集団的労使関係みたいなことを改めて再構築していくことも大事なのではないかと思います。
取りあえず、駆け足ですが、以上、私からの問題提起ということでお話しさせていただきました。
ありがとうございました。
○荒木座長 社会経済の変化の中での労働法制の今後の課題について、大局的な観点から具体的な問題まで、大変示唆深いお話を伺いました。ありがとうございます。
それでは、質疑に移りたいと思います。
委員の皆様から何か御質問があれば、挙手あるいはチャットに書き込んでお願いいたします。
堤先生、お願いいたします。
○堤構成員 ありがとうございます。
北里大学の堤と申します。
山田様、本日は、非常に貴重なお話をありがとうございました。大変勉強になりました。
私は、途中、スライド8の辺りでお話しいただきました雇用の二極化に少し興味がありまして、途中でも御紹介がありましたが、スウェーデンは、言ってみれば、ある一定の成功事例というか、高賃金グループを引き上げて、低賃金グループは少なくしていると。
こういう事例は、最後のほうにも御紹介いただきました主体的な考え方の醸成や文化とかは、日本でも少しずつ変えていかなければいけない部分が発生するのではないかと思うのですが、そういうことに対して非常に参考になる事例ではないかという感じで伺っていました。
スウェーデン等は、社会福祉のところも、国としての形も違う部分もありますが、そういった面を含めて、どうしてこのような形ができているのかに関して、何か示唆といいますか、お考えみたいなことをいただければありがたいと思って、御質問させていただきました。
以上です。
○山田参考人 ありがとうございます。
いろいろとあると思うのですが、例えばアメリカとかとの一番の違いは、組合の組織率がものすごく高いところなのです。
もう一つは、労働組合の考え方が、変化に対してすごく前向きです。
例えば私は何回か行ったことがありますが、その中でよく組合の人が言うには、我々が恐れているのは、古い技術である、新しい技術は恐れていないと言うのです。だから、逆に言うと、我々が典型的にイメージする組合は、むしろラッダイト運動で新しい技術を恐れるのですが、逆なのです。要は、小さな国ですし、こうやっていかないと生き残れなかったといういろいろな背景があると思うのですが、変化に対して物すごく前向きな組合です。
ですが、基本的な組合の考え方は、平等主義を持っていますから、賃金も、一定程度はばらつきを認めていっているのですが、ある程度底上げしようというのもあります。
それから、人材育成は、スウェーデンは長い歴史があって、労働組合をベースにした政権は、基本的にずっと長くやってきていますので、人材育成のところの教育とか積極的労働市場政策は有名です。
こういうものは、必ずしも成功しているわけではないのですが、トライ・アンド・エラーを繰り返しています。例えばデジタル技術の普及はすごく速いです。最近、日本でも始まっていますが、例えば図書館でシニアに対しての使い方を指導するようなことをやっているとか、そういうことをかなり繰り返してきている。
一方で重要なのは、キャリア自律というか、個人の人生は自分で切り開くという感覚が強いです。転職に対してもすごく前向きです。
ですから、ある意味主体的に自分たちの働き方とか生き方を考える部分と、それだけではなくて、そこをお互いに支え合っていこうというものが、スウェーデンの場合は組合がたまたまそうだったということなのですが、恐らく、そういう自助と共助のバランスを公助という形で制度をサポートしている。その形が、結果としてだと思うのですが、うまくいっている。そんな在り方には結構主体的な部分があるのではないかと考えております。
○堤構成員 ありがとうございました。
大変参考になりました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
○藤村構成員 法政大学の藤村です。
今日はどうもありがとうございました。
日本人の時間の使い方がちょっと変だというのは私も同感でして、私も25年ぐらい社会人向けの大学院で教えています。
20年前ぐらいの学生たちは、会社に内緒で来ていると言っていたのです。半分ぐらいはそうでした。どうして上司に話さないのかと聞くと、上司が知ると、「君、そういう余裕があるのだったらもっと働け」と言われたそうです。だから、平日の就業時間後、自分の時間をどう使うかは、本来は自由なはずなのに、もっと仕事をしろと言われるのが20年前の実態でした。最近は大分変わってきたとは思うのですが、自分の時間をどう使うかについては、上手になっていないと思います。
そこで質問なのですが、どのようにしたら日本人の時間の使い方が変わっていくでしょうか。労働組合に対して、組合が率先してそういう活動をしていくことが必要だということを申し上げたりしていますが、いかがでしょうか。
○山田参考人 日本人も、我々などの世代はそういうのが染みついているのですが、仕事に対する価値が、特に男性はすごく高いのだと思うのです。
これが日本の強みでもあるのですが、そこのバランスを変えていかないと駄目で、一つは、労働時間は、例えばこの数年の働き方改革の中で、価値観として早く帰るほうがカッコイイのだと、若い世代はそのように変わってきている。そこは継続してやっていくことが必要です。
それと、単純に労働時間を短くするだけだと、その後の時間をどう使うかがあって、図表3-5にありますが、欧米の人は、キリスト教のチャーチに行くとかもあると思うのですが、地域活動とかを結構されていると思います。
それから、多分、ヨーロッパの人たちは、労働組合に対してのアイデンティティーがもうちょっと強いですし、アメリカでも、労働組合ではないのですが、いわゆるアソシエーションということで、例えば人材マネジメントをやっている人たちは、人材マネジメントのアソシエーションがあります。ああいうところでお互いに切磋琢磨している。
だから、何か企業以外のコミュニティーみたいなもので、今、いい流れがサードプレースというコンセプトの中で少し出てきていると思うのです。あるいは社会人大学に行くのもそうだと思うのです。
あるいは労働組合がそのような仕事以外の生活を豊かにするようなところの運動なり、ネットワーキングを意識していくことによって、意識が変わってくるということではないかと思います。
○藤村構成員 ありがとうございます。
要は、働く者だけが変わろうとしても、なかなか変わらない。企業の従業員に対する接し方も変わっていく必要があると思います。
人間は、自分が痛い目に遭うとなると頑張るところがあって、それを人事制度に組み込む必要があるのではないかと考えています。新しいものをどんどん吸収していく活動をしておかないと、等級が下がって給料が減るという仕組みです。
私は、能力の価値で等級をつける仕組みがいいのではないかと思っているのですが、企業側の従業員に対する働きかけも何か必要ではないかと思っています。そこはどうでしょうか。
○山田参考人 それはおっしゃるとおりです。
結局、企業が働き手が長く働くことを結果としては進めてきたことがあると思うのです。
ですから、早く帰るということ自体、あるいは労働時間の長さではなくて、成果だったり役割をどう果たしていくかということだし、意識的には、例えば昔、QCサークルがあったのです。あれも少しやり方を変えないと駄目なのですが、例えば社内勉強会みたいなものを早く終わってからやるみたいな形、あるいは中にはそういうこともやっているところもあると思います。
あるいは、外部の活動を少しサポートしていく。NPOに参加すると、そこをある程度優遇するとか、外部の経験値が上がると優遇するとかは、人事制度の中で工夫していく余地は、先生がおっしゃるようにいろいろとあるのではないかと。
でも、その前に、そうすることが人材をこれから活用し、長い目で見たときの企業価値を上げるのだというのは、企業側が気づくことが大前提なのではないかと思います。
○藤村構成員 どうもありがとうございました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。○川田構成員 筑波大学の川田と申します。
本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。
いろいろなお話を大変興味深く聞かせていただいたのですが、その中で、特にキャリア自律の進展なども含めて変化が必要だというときに、その変化を誰がどうやって実現していくのかという点について、少し興味を持って考えたところがあり、それに関連して伺わせていただきたいと思います。
一つは、順番でいうと後から出てきた話ですが、集団的な労使関係の枠組みが出てきていて、スウェーデンの話も先ほど出てきましたが、私なりにここはどういうことになるのだろうと思った点として、特に例えばキャリア自律を進めることになると、必ずしも企業の枠に収まらないような働き方を進めていくことになって、スウェーデンのような社会全体で労働組合の組織率が一定程度ある、あるいは企業の枠を超えた労働組合が広く存在している状況と比べると、日本の労使関係は、どうしても企業ごとという色彩が強いものであるので、労働組合、それから恐らくそれ以上に企業別の従業員代表制とか労使協議制についてこうしたことが強く言えると思いますので、そうした枠組みの中で、どこまで対応できるのだろうかと思っています。
例えば日本の場合には、スウェーデンだったら労働組合で対応しているところを、例えば政府の政策を通じて補完していく可能性なども含めて、何らかのビジョンがあれば、さらに伺いたいのが一つです。
もう一つは、伝統的な、特に大企業の少し古い時代を考えると、その状況の変化への対応は、どちらかというと企業が主導するような形でやってきた。例えば新しい仕事をつくり出して、必要な教育・訓練等も行うことを企業が主導してやってきたところがあるだろうと思います。
そういうやり方は現状では合わなくなってきているところが多いのかとも思うのですが、一方で、当面はというか、比較的短いタイムスパンでは、企業間、組織間の連携とか出向などを通じて対応していくことを書かれていたところが本日のお話の中でもございました。
ただ、例えば出向などは昔から取られていた手段であるわけですが、昔と全く同じではないのではないかと考えると、同じ出向でも注意すべき点が違ってくるところがあるのかなと思いまして、そういった点などを含めて、企業の役割の変化についても、併せて追加的に伺えればと思っております。
以上です。
○山田参考人 ありがとうございます。
1点目は、いろいろな論点もあるので、取りあえず労働組合だけに絞って言いますと、方向としては、先生が御指摘のように、もうちょっと産別というか、少し欧米型に変わるような誘導はできないのかと私は思っています。
個別の企業内組合のよさはあるのです。それがあるからこそ、ヨーロッパでいうと、まさにいわゆる従業員代表制がそもそもあるみたいなもので、これは経営をよくしていこうという発想の中にありますので、それを全部否定する必要はないと思うのです。ただ、団体交渉というか、賃金とか労働条件を改善していこうということについて、どうしても企業を優先してしまって弱くなる面があります。
だから、産別の連携を増やしていくようなものは、日本の場合は、どこまで入れるかはあるのですが、例えば従業員代表制をオプションで入れるようにしたときに、そこのサポートを産別組合ができるようにする。
そこで例えば本来、従業員代表制は、ヨーロッパの場合は、運営費は企業が全部負担するわけですが、なかなか入らないので、一定の割合を産別組織が支援したときには何か政策的に支援するとか、何かの形でそういう産別組織をもう少し強化していく。あるいはそこの人材のスタッフをもっと強化していくようなやり方を少し考えてもいいのではないかと考えます。
それから、企業ができるところでいうと、これも幾つかあるのですが、例えばスウェーデンの例でいうと、日本でいうと産業雇用安定センターに近い、ジョブセキュリティカウンシルという組織なのですが、要は、再就職の支援で、日本で言っているアウトプレースメントがやっていることはそうなのですが、労働組合が関わっているのです。
残念ながら、日本の場合は結局、リストラの単なる切捨てに使われているような残念なケースもありますが、スウェーデンの場合は組合が関与するので、そういうことは基本的に起こらないのです。そういう意味で、企業を超えてキャリアを保証していく。
しかも、ジョブセキュリティカウンシルは、いわゆる日本でいうとキャリアコンサルタントというか、キャリアアドバイザーが1人ずつついて、その人たちがキャリアをどう展開していくのかという支援をしております。だから、そのようなことをもう少し拡充してみることも考えられるのではないかと思います。
それから、企業としても、例えば出向制度の話が出ましたが、出向制度は、かつては中高年になってなかなか活躍できない人のための制度だったのですが、社外に経験の幅を広げるという意味では、すごくいいわけです。
今、コロナ禍でそういう動きも出ているわけですが、企業とか企業グループの枠を超える仕組みをもっと進めていくことによって、結果として変わってくる。
それから、さっき申し上げたキャリアコンサルタントを使って、キャリアのアドバイスをする制度は、今、日本に入っていますが、これは運用上の問題とかがあると思いますから、ここをもっと継続的に見直していって、変えていく。その辺りは、例えば数年に1回は、企業にキャリアカウンセリングを受けることを原則にしていくようなことは考えられるのではないかと思います。
○川田構成員 ありがとうございました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
それでは、私から1点お伺いしたいと思います。
15ページで、自主的な労働時間決定の仕組みのためには、労働者が主体的に労働時間、生活時間を選択できる能力があることが非常に重要だという御指摘がありました。
それと関連して、今回、強制的にではありますが、テレワーク、在宅ワークをコロナ禍で多くの労働者が経験することになりました。一旦減ったのですが、また40%台ぐらいに実施率が上がってきております。
コロナ禍での在宅ワークを経験した人々は、会社の中で使用者の指揮命令を直接的に受けながら働くのとは違う働き方を経験したわけです。このことが、労働時間に対する意識に大きな変化をもたらす可能性があるのかなという気もしております。
労働時間について、そもそも自己決定をするチャンスがなかった人たちが、生活時間と労働時間を自宅において調整しながら働くことをかなり経験している。これが労働時間に対する意識の変化をもたらし、多くの人はまさにそういう能力を磨くべきだし、使用者もそれを尊重する方向に動いていければ、随分労働時間の仕組みも変わってくるような気もするのです。
そういう点について何かコメントをいただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○山田参考人 ありがとうございます。
先生がおっしゃるように、これはある意味大きなショック療法でそういう可能性を広げているのだと思います。
ただ、現実には、かなり個人差があるのではないかなと。逆に言うと、仕事のやり方を主体的に進めてきた人は、今の環境をすごくうまく使えている。
ただ、現実には、仕事の性格とか企業の仕事の進め方によって、そうではないところで働いている人もたくさんいらっしゃると思います。その人たちは、例えばコミュニケーションが低下してしまって、メンタルの問題が増えている、あるいは若い人が育たないとか、そういう負の問題が一方でたくさん出てきているのだと思います。
ですから、そこはこれからテレワークでどういう問題が出てきて、どういうケースで問題が出てくる、あるいはどういうケースでいるとうまくいっているのかという事例なりをもうちょっと具体的に見ていきながら、問題をいろいろとカバーしていくような制度設計とかやり方、あるいはベストプラクティスの紹介とかをすることによって、先生がおっしゃっているように、かなり前向きに変えていけるのではないかと思います。ですから、そこは両方あるのではないかという印象を持っています。
○荒木座長 5ページで、方向性としてはだんだんジョブ型的なものにシフトしてきているのではないかということで、日本人はジョブ型の働き方にまだ慣れていないのかもしれないのですが、これを上手にコントロールすれば、まさに生活時間と労働時間のよいマネジメントができるかもしれないかなとも思いますが、それは何か影響しますでしょうか。
○山田参考人 ジョブ型と言うときに、本当に制度そのもののジョブ型の話と、運用的にもうちょっと職務を明確化する、あるいは賃金の決定で、日本的にかなり長期で判断してきたのを、もうちょっと短期で今の仕事に連動させるとか、そういうジョブ的なものというか、運用的なものと全体の制度と2つの次元に分けて考える必要があると私は思っているのです。
制度的なところは、言うまでもないのですが、いろいろな関連システムの中で生まれているわけなので、そこを完全にジョブの制度に持っていくのは難しいと思います。
ただ、運用のところは、実態的には、例えば仕事の内容が専門化していると、どうしてもジョブ的にならざるを得ないことがあって、徐々にそっちのほうに変わってきている。
ジョブ的というか、職務範囲が一定程度明確になっていて、裁量の高い仕事がテレワークに向いているわけですから、結果として、細かいところはあるのですが、今、企業がやろうとしている方向、あるいはこれまでやってきた大きな方向性としては、整合的な方向になっているのではないかと。
ただ、今日見てきましたように、企業のロジックは、どうしても優秀な人材を獲得し、業績を上げることになるので、そこから漏れてくる人たちが出てくるので、ここはいろいろな仕組みの中でどう底上げをしてくのかが組合のこれからの役割の一つなのだと思いますし、政策的にそこを考えていくということなのではないかと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
○島貫構成員 今日はどうもありがとうございました。非常に勉強になりました。
労働者自身がどのように自分自身の働き方を選んでいくのかが大事であるというお話ですとか、ハイブリッドワークという言葉が途中に載っていたと思うのですが、オフィスで働くこととリモートで働くことを最適化していくことが必要であるということは、私も本当にそのとおりだと思いまして、共感しています。
このことに関連して、この検討会では労働時間を労働者自身が決めていく、コントロールしていくことが重要であると考えているのですが、働く場所の選択について、どのようにお考えかを質問させていただきたいと思っています。
今はハイブリッドワークで働いておられる方がたくさんいらっしゃると思うのですが、中には、今日はリモート、明日はオフィスと自分で選んでいる方もいらっしゃれば、週3日はオフィスに来なさい、それ以外の日は家でやってくださいと、ある程度場所を決められてハイブリッドワークをなさっている人もいらっしゃるのかなと思います。
働く場所の選択は、労働時間を自由に決めていくこととセットで進めていくべきなのか、あるいは労働時間を決めていくことと働く場所を決めていくことは別で考えていったほうがいいのか、労働者による働く場所の選択についてどのようにお考えか、教えていただけるとありがたいです。以上です。
○山田参考人 ありがとうございます。
大変重要な視点をありがとうございます。
恐らく、できるだけここで言っているデジタルの時代に対応し、主体的に働ける人を増やしていくという意味では、労働時間もそうですが、働く場所も主体的に選択する両方があるのが望ましいというのは、言うまでもないと思います。そういう意味では、今回、テレワークが入ったことは、そういう可能性、少なくとも問題意識を生んだということではないかと。
ただ、では、これが全部一体的でないと駄目かというと、恐らく、労働時間が最初ということではないかと。逆に言うと、労働時間の裏側では、仕事の与え方等と表裏一体だと思います。
だから、労働時間だけを自由にしても、上司なり、あるいは顧客のケースもありますが、本人から見ると仕事の与えられ方ですが、それが非常に硬直的であれば、形だけ労働時間が短いとか、在宅にしてもということですから、本質的なのは、仕事の与え方みたいなところとの連動ではないかと。そこで、まずは労働時間の自由度を上げていって、その後、場所も自由にしていくということではないかと。
逆に言うと、それがないと、仕事の与え方が変わらずに、かなり使用者中心の一方的なもので、特に働く場所を自由化してしまうと、かえって危ないというか、非常に見えないということで過重労働になってしまうということですから、本質的には、仕事の与え方なのではないか。
順番的には、労働時間を進めながら、条件が整った形で、働く場所も自由にしていくことで望ましいものになっていくのではないかと。それがないと、逆に問題が生じることがあるのではないかという印象であります。
○島貫構成員 どうもありがとうございます。
○堤構成員 ありがとうございました。 16枚目のスライドで「今後の労働法政策」について御示唆いただいている部分の上から2つの「雇用類似の働き方」と「『副業』『テレワーク』の労働時間管理」に関して、それぞれ3つ目のポツでワークするための制度についてコメントいただいているのではないかと伺いました。
簡単で結構ですので、少しだけ解説をいただければ、勉強させていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
○山田参考人 ありがとうございます。
雇用類似に関しては、前提にあるのは、すごく多様だという話なのだと思います。
だから、何か決め打ちで一気につくることは難しいので、ここで書いているのは、まず、例えば雇用者と自営業者の違いを前提にしたときに、そこで入ってくる項目としては、例えば労働時間規制や最低賃金規制、社会保険の有無とかです。
もう一つ重要なのは、団結権があると思うのです。取りあえず、今、やりやすいやり方として、労組法がありますから、これを使えば団結権は使えるので、まずはその辺りから考えていったらどうかというのがここの趣旨です。だから、これはあくまでも入り口ということです。
次に、裁量労働制の制度そのものは、趣旨とかはいいと思うのですが、問題になっているのは運用ですので、運用次第で評価がどんどん変わってしまう。
そういう意味では、ここには書いていないのですが、実態調査を継続的にやりながら、これはトライ・アンド・エラーになると思うのですが、どうやれば適正運用ができるのかというノウハウとか、できればチェックリストみたいなものが何かの形でできていき、適正運用がされてくれば、いろいろなそれに対しての無用な議論というか、反対論とかがなくなってきて、より適正に運用されていくのではないかというイメージでございます。
○堤構成員 ありがとうございます。
○荒木座長 それでは、時間となりましたので、質疑応答はここまでとさせていただきたいと思います。
山田様には、今後の労働時間制度についてはもちろん、労働法制全体についても大変貴重な御指摘をいただきまして、大変勉強になりました。
どうもありがとうございました。
○山田参考人 どうもありがとうございました。
○荒木座長 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。
最後に、事務局から次回の日程について、説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 次回の日程、開催場所については、追って御連絡いたします。
○荒木座長 それでは、第8回「これからの労働時間制度に関する検討会」は、これで終了とさせていただきます。
本日は、お忙しい中御参加いただきまして、どうもありがとうございました。