第172回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和4年1月12日(水)18:00~19:00

場所

厚生労働省職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)
厚生労働省仮設第4会議室(傍聴会場)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)

議事

議事内容
○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第172回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、使用者代表の馬渡委員が御欠席です。
馬渡委員の代理といたしまして、全国中小企業団体中央会事務局次長・労働政策部長の佐久間一浩様にお越しいただいております。
なお、使用者代表の小阪委員は遅れて御参加の予定です。
カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
(カメラ撮り終了)
○山川分科会長 本日の分科会は、Zoomによるオンラインでの開催も兼ねております。オンライン御参加の委員におかれましては、発言方法等につきまして、事前に事務局からお送りしている「職業安定分科会の開催参加方法について」に沿って御操作をいただきますようお願いいたします。
では、議事に入ります。
最初の議題は、雇用保険部会報告書についてです。本件につきましては、1月7日に開催されました雇用保険部会におきまして報告が取りまとめられております。では、事務局、雇用保険課長から御説明をお願いします。
○雇用保険課長 雇用保険課長でございます。本日はよろしくお願いいたします。
今、分科会長からお話がございましたが、1月7日の雇用保険部会におきまして、雇用保険制度の見直しの議論を行ってきましたけれども、その報告書が取りまとめられているところでございます。こちらが資料の1でございまして、こちらを今日主に御説明させていただきます。
この参考資料といたしまして、1-1、1-2という参考資料、給付関係、それから財政運営関係、それぞれ整理をしてございます。
今日は詳細の説明は省略いたしますが、雇用保険部会におきましては、こうした資料をお出ししながら議論を積み重ねてきたという経緯がございますので、その点、お含みおきいただければと思います。
それでは、資料1の雇用保険部会報告の御説明に移ります。
1ページ目から「第1 雇用保険制度等の見直しの背景」というところがございます。これは、この9月以降、雇用保険制度の見直しに関しまして、分科会でも途中経過などを御報告させていただきましたが、大きな問題意識といたしまして、1ページ目の、2つ目の○の最後の辺りからでございますけれども、雇調金特例措置などを行うに当たって、臨時特例法により、一般会計からの任意繰入れや、雇調金などに要する費用の一部の一般会計からの繰入れ、あるいは積立金からの借入れなどを可能にする財政運営上の特例措置などを講じてきたところでございます。
続いて、こうした一連の特例措置による多額な財政支出は、諸外国に比して我が国の失業率の上昇を一定程度緩やかなものにとどめるなど、大きな効果を発揮いたしましたが、その結果、雇用保険財政は、料率、国庫負担割合が令和3年度末まで暫定的に引き下げられていたこともあり、支出が保険料収入を大幅に上回り、その補填のために雇用安定資金残高は、令和2年度末でゼロとなり、積立金もほぼ枯渇する極めて厳しい状況に至ったというようなことがまず背景にございます。
2ページ目の1つ目の○、「このため」でございます。これは11月19日におきまして御報告をさせていただきましたが、いわゆる経済対策におきまして、当面の雇調金の財源や雇用保険財政の安定のため、一般会計から雇用勘定に2.16兆円の繰入れを実施するというような内容が取りまとめられているとともに、この経済対策におきましても、令和4年度以降の雇用保険制度の安定的な財政運営の在り方を検討し、次期通常国会に法案を提出する旨が記載をされてきているところでございます。
こうした背景の中で、今回、雇用保険部会で、財政運営を中心に雇用保険制度の見直しについて議論を行ってきたというところでございます。
各論に入ります。3ページの「第2 雇用保険制度等の見直しの方向」を御覧いただければと思います。
最初に、1番、基本手当でございます。
「(1)基本手当の水準について」というところでございますが、1つ目の○、基本手当の水準、いわゆる給付率・給付日数などにつきましては、この部会の取りまとめ時におきましては、改正を行うことはしないという旨のまとめを行ってございますが、ただし書きにありますように、近年の制度改正も含め、制度全体について不断にその施行状況を検証すべきであるというまとめを行ってございます。
「加えて」というところが、これは制度改正マターになってきますけれども、基本手当の受給期間は離職後1年間を原則としておりますけれども、被保険者が離職して受給資格を取った後に起業する場合というようなケースがございます。起業して、その後、やむを得ず廃業に至って、改めて求職活動に入るようなケース、このようなケースは従来基本手当が受給できないわけでございますけれども、こういった場合にも最大4年間までは、所定給付日数の範囲で基本手当を受給できるような受給期間の特例という仕組みを設けるべきであるというまとめをしているところでございます。
3ページ目の一番下から、幾つか令和3年度末で期限が到来する暫定措置等についての取扱いをまとめてございます。
4ページ、1つ目の○です。
リーマンショック時に講じられた、雇い止め離職者の所定給付日数を特定受給資格者並みの水準とするなどの暫定措置、それから、もう一つは、就職が困難な求職者に対して、雇用情勢が悪い地域にお住まいの方に関する延長給付(地域延長給付)、こういった仕組みが現在暫定措置として設けられているところでございます。これらに関しましては、令和3年度末までの期限のところを、2つ目の○にありますように、現在コロナ禍からの経済の回復途上にあることも踏まえ、3年間延長すべきであるというまとめをしているところでございます。
もう一つ、雇用保険臨時特例法におきましては、いわゆる、コロナ延長給付を創設しておりまして、令和2年度の支給実績は1000億円を超えるなど、多くの受給者に適用されているところでございます。
こちらに関しましては、当面は制度として存続をさせる必要があるというまとめをしている一方で、緊急事態宣言の発令ごとに、各都道府県における緊急事態措置が終了してから1年経過後は、コロナ延長給付を行えないというような形の整理を行っているところでございます。
4ページの下から3行目からが教育訓練給付でございます。
教育訓練給付に関しましては、5ページ以降、一定の整理がなされておりますけれども、「今後」のところでございます。こちら制度見直しに直結する部分ではございませんが、制度周知を図り、制度利用を促進する。指定講座については、オンライン・土日開催を進めるなど利用しやすい環境整備を図る。市場ニーズ、雇用の安定性、労働条件向上の効果などを基にその内容の充実を図る。教育訓練支援給付金の指定講座の偏りの是正を図るといったものがまとめられているところでございます。
ただし、雇用保険制度は、いわゆる失業に対する支援を最も基本的な目的としているということを考えますと、教育訓練給付につきましても、この失業予防・早期再就職の制度趣旨に沿って運営される必要があるということで、いわゆる効果検証をしっかり行うべきというのが次の○でまとめられているところでございます。
制度の見直しに係る部分が次の○でございまして、平成26年度に創設され、29年度に現行の制度に改正された教育訓練支援給付金でございますが、令和3年度までの暫定措置につきまして、コロナ禍からの経済の回復途上にあることも踏まえ、3年間延長すべきであるとまとめているところでございます。
ただし、この給付金は、支給期間も長期にわたる、あるいは制度利用の前提となる専門実践教育訓練給付の指定講座、及び実際の利用者に偏りがある現状に鑑みまして、費用対効果の観点も踏まえつつ、対象資格の取得状況、受講後の労働条件、雇用継続・再就職状況の面から効果検証を行い、指定講座の偏りを含め、しかるべき制度改善につなげるべきである形でまとめているところでございます。
6ページからは、求職者支援制度でございます。
求職者支援制度に関しましては、先般も省令改正を行いまして、世帯収入要件、出席要件等々の特例措置に関しまして、省令改正で講じてきているところでございます。こうした特例措置につきまして、令和4年度以降の取扱いを御議論いただいてきているところでございますが、こちらに関しましては、2つ目の○にありますように、コロナ禍からの経済の回復の途上にあることや、要件緩和により必要な方が受講できる環境整備に取り組んでいる途上であることを踏まえ、令和4年度末まで延長すべきであるとまとめているところでございます。
次の○が、いわゆる法律、制度改正に絡む部分でございます。
求職者支援訓練につきましては、雇用保険の受給者も受けるケースがございます。こういった場合に、雇用保険受給者が、いわゆる公共職業訓練を受ける場合は受講指示という仕組みの対象といたしまして、結果として、訓練延長給付や技能習得手当の対象とされているところでございますが、この雇用保険受給者が求職者支援訓練を受ける場合は、受講指示の対象と制度上なっていないという課題がございます。
こうした現状につきまして、受給者の訓練受講選択肢の拡大、あるいは早期かつ安定的な再就職を促す観点から、求職者支援制度についても上記の受講指示の対象とすべきであるというまとめをしているところでございます。
その上で、この職業訓練受講給付金の水準などの制度の枠組みは維持しつつ、当面、制度利用の周知を図る、あるいは利用者が大幅に増加しない要因について、不断に調査・検証する。就職率や職場定着といった効果検証を行うというようなまとめをされているところでございます。
1から3までが、いわゆる給付の関連でございますが、この3つの共通事項でございますが、この後ろにまとめているところでございます。これらについて、制度利用のボトルネックや、制度趣旨に沿った効果を上げているかを含めて、令和4年度に効果検証を行い、その結果を踏まえて必要な見直しを検討すべきである旨のまとめをしているところでございます。
続いて、雇用調整助成金の特例・休業支援金などについては、大きな4番目のテーマでございます。
雇用調整助成金につきましては、雇用保険部会におきましても何度か御議論をいただきまして、また、いわゆる対象となる休業の期間に関しまして諮問をさせていただいたりした関係で、幾つか大きな議論がございます。
7ページに関しましては、おおむね制度の創設から、その見直しに係る経緯を書いてございますけれども、7ページ目の下から2つ目の○でございます。こちらが現状でございまして、雇用調整助成金などの支給決定額は、いわゆる雇用勘定で実施している部分に限定いたしましても、雇調金が累計で4兆7644億円、これは12月末時点、休業支援金は累計で792億円に至っているというところでございまして、いわゆる感染症対策のために社会経済活動を制限した中での国の雇用対策として、極めて重要な役割を担ったと言えるという形で整理したところでございます。
この雇調金の特例措置につきましては、この部会の議論の中では、業種によっては、いまだ厳しい状況にある企業が多いことから、当面の特例措置の継続が必要、感染状況や感染対策の内容が雇用に与える影響にも十分留意しつつ、今後の特例措置の取扱いを検討すべきとの意見がございました。
一方で、長期にわたる特例措置が産業の新陳代謝を遅らせている可能性は否めず、また、労働者のスキルや労働意欲の低下が懸念されることから、経済回復のブレーキにならないよう、エビデンスに基づいて縮小を議論する段階に来ているという、いわば両論の意見がございました。
こうした議論を踏まえまして、雇調金の特例措置につきましては、いわゆる昨年の骨太方針に沿って、これを踏まえて実施するという形でまとめてございます。
これに伴いまして、当面の措置といたしまして、2つの制度的な対応についてまとめているところでございます。
これは令和4年度における措置といたしまして、1つ目のポツでございますが、休業支援金について、制度としては存続をさせる。一方で、雇調金の特例措置の取扱いなどの対応に合わせて制度の在り方を検討するというのが1点。
もう一つは、中小企業の基本手当日額の上限を超える部分につきまして、一般会計から直接雇調金を負担するという仕組み。これにつきましても令和4年度延長するというような形で整理をしているところでございます。
さらに、当面の雇用保険二事業の安定的な運営を図るため、二事業に、積立金から借り入れる仕組みについて、3年間継続するということをまとめているところでございます。こちらについては財政運営について、また、後述されることになります。
なお書きでございますが、雇調金などと併せて、在籍型出向を通じて雇用維持などを支援する産雇金の活用促進、あるいは職業訓練と再就職支援を組み合わせた労働者のスキルアップ、労働移動を図る事業の強化、離職者のトライアル雇用への助成などによって、労働移動を望む方への支援を着実に実施するということの重要性なども指摘をしているところでございます。
その際、中小企業におきましても、こうした支援策がしっかり活用されるように、ノウハウの提供、マッチング事例の紹介、横転換などの配慮をきめ細かく行うべきであるというまとめをしているところでございます。
5番が財政運営でございまして、今回の部会の大きなテーマであります。
9ページの(1)から保険料率についての記載がございます。1つ目の○は、失業等給付の保険料率でございますが、こちらは部会でも整理をして御議論いただいた前提について書いているところでございます。
この平成28年の雇用保険法改正時に、当時の過去10年平均の受給者実人員である61万人に単年度で対応し得る率として、1,000分の8というものを原則、すなわち本則の料率として規定をしたところでございます。
その上で、雇用情勢、積立金残高などを踏まえて、令和3年度まで暫定的に1,000分の2を引き下げて、さらに弾力倍率が2を超えていたことを踏まえて、さらに1,000分の4引下げ、つまり、この間、1,000分の2とされてきたということがまとめられているところでございます。
その次の○でございますが、雇用保険料率は、中期的な財政バランスを念頭に設定すべきであるが、雇用情勢が良好な時期と悪化した時期における受給者実人員の水準などに鑑みると、原則の保険料率1,000分の8は引き続き妥当な水準であると考えられる。
その上で、いわゆる先ほど申し上げた1,000分の2、1,000分の4の引下げについては、来年度以降、ほうっておくと原則の1,000分の8に戻るということになります。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の経済への影響もいまだ残っている状況を鑑み、労使の負担感も踏まえた激変緩和措置として、令和4年度の対応として、4月から9月まで1,000分の2、10月から令和5年3月までは1,000分の6とすべきであるという形でまとめているところでございます。
この点に関しまして、使用者代表委員からは、年度途中での料率の変動に事業主が円滑に対応できるよう、丁寧な周知をはじめとしたきめ細かな方策を行うべきとの意見を付記されているところでございます。
次の○は、育児休業給付の保険料率でございます。
結論といたしましては1,000分の4のままとすべき旨のまとめをしているところでございますが、その上で、育児休業給付の在り方などにつきましては、4年度から検討を開始していくと。令和2年の雇用保険部会の報告に関しまして、今後の育児休業給付の在り方を検討すべき旨のまとめがされているところでございますが、その検討の開始時期、それから、令和6年度までを目途に進めていくべきという方向性が、併せてこちらで記載がされているところでございます。
次の○が、雇用保険二事業の雇用保険料率は、原則1,000分の3.5、令和3年度までは弾力条項に基づき1,000分の3でございましたが、令和2年度の弾力倍率に基づきまして、原則の1,000分の3.5に戻すことが適当であるというまとめをしているところでございます。
なお、雇用保険料全般につきまして、こちらは労働者代表委員と使用者代表委員からは、特にコロナ禍において、労使の負担が過大とならないよう配慮すべきであるとの御意見がございました。
10ページの(2)、国庫負担についてでございます。
1つ目の○は、これまでの経緯をまとめているところでございますが、国庫負担は、失業等給付、育児休業給付、求職者支援制度、この大きく3つがございます。平成19年度に、当分の間55%水準、平成29年度から令和3年度までは10%水準とされてきて、いわゆる一体的な引下げが行われてきましたが、これらについて個別に整理を行った形でございます。
11ページからは失業等給付になります。
1つ目の○は、国庫負担の趣旨を記載してございます。
雇用保険の保険事故である失業は、政府の経済政策・雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきとの考えによるものであり、具体的な国庫負担割合について変更を加える場合は、国の責任の観点から合理的かつ十分な説明が求められる旨の記載がございます。
一方で、今般のコロナ禍における財政運営では、当面の雇調金などの財源確保、雇用保険財政の安定のため、雇用保険臨時特例法に基づきまして、令和3年度補正予算について、失業等給付の部分に対して1.7兆円の国庫負担の繰入れが行われました。こうした機動的に国庫を繰り入れる制度は、今後における雇用情勢の急激な変動による財政悪化などに備えるための枠組みとしても有効であると考えることから、常設的な仕組みとして雇用保険法に位置づけるべきであるという形で整理をしているところでございます。
次の○、「その上で」でございますか、失業等給付に係る国庫負担については、本来、現行制度の原則的な負担割合である4分の1に戻すべきであるが、国の厳しい財政状況下において、雇用情勢などに応じて機動的な財政運営ができる枠組みを強化することで、これまでと同様に国の雇用政策に係る責任を果たし、雇用保険財政の安定を図ることができるよう、以下のような新たな国庫負担の仕組みとすることもやむを得ない状況であると認識すると整理をしてございます。
以下のような枠組みというのが(1)から(3)まででございまして、雇用情勢、雇用保険の財政状況が悪化している場合は4分の1。
(2)、上記以外の場合は40分の1。
(3)、(1)または(2)とは別枠で、機動的に国庫からの繰入れができる新たな繰入れ制度の導入、この3本を新たな国庫負担の仕組みとして整理をいたしているところでございます。
12ページでございますが、この点、いわゆる国庫負担の新たな整理に関連いたしましての御意見で、労働者代表委員及び使用者代表委員からの御意見をまとめてございます。
いわゆる失業等給付に係る国庫負担については、労働者の雇用に大きな影響を及ぼす雇用政策に係る国の責任を示すものであって、令和元年の当部会報告及び令和2年改正時の衆参厚生労働委員会の附帯決議などを踏まえれば、本来、国の財政の状況などに左右されることなく、現行制度の原則的な負担割合である4分の1に戻すべきであるとの御意見がございました。
また、労働者代表委員からは、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合以外の国庫負担割合を40分の1とすることに関して、合理的かつ十分な説明が求められるとの御意見がございました。
この新たな国庫負担の仕組みを導入するに際しましての、一定の要件につきましても整理が行われているところでございます。
まず、12ページの1つ目の○でございます。
いわゆる4分の1に該当する雇用情勢、雇用保険の財政状況が悪化しているか否かの判断基準といたしましては、雇用情勢は、受給者実人員の平均で見ることといたしまして、それが70万人に達しているかどうか。財政状況については、いわゆる弾力倍率1を下回っているかどうかという形で整理をしているところでございます。
この判断基準に基づきますと、受給者実人員が70万人以上、かつ、弾力倍率1を下回る場合、国庫負担割合4分の1となりますが、新たな国庫繰入れ制度による繰入れを行うことによって、事後的に弾力計算が再計算される仕組みを導入することにより、同制度の実効性を担保するとともに、当該繰入れにより積立金の規模が一定程度回復する結果、保険料率の弾力条項による引上げを発動させないことも可能とするということが適当であるというまとめを整理しているところでございます。
もう一つが、(3)の要件、これは新たな国庫繰入れ制度の要件となってまいります。
こちらは機動的な財政運営の観点から、保険料率が1,000分の8以上、あるいは翌年度に1,000分の8になる見込み、これはすなわち、前の年の弾力倍率が2以下になるということでございます。
これらに加えまして、積立金の状況や財政状況に照らして必要と認める場合。これは、仮に弾力倍率が2を超える場合であっても、雇用情勢などが急速に悪化しているケースを想定しております。こうした場合に、新たな国庫繰入れ制度を発動できる仕組みとすることが適当であるとまとめているところでございます。
なお、こうした仕組みを導入することに伴いまして、求職者給付につきましては、現行の雇用保険法附則13条、これいわゆる55%の水準を規定したものでございますが、こちらの対象からは外れる形で整理をされているところでございます。
13ページの2つ目の○でございます。
これらの新しい国庫負担の仕組みを制度趣旨に沿って運用するためには、この新たな国庫繰入れの実効性を可能な限り担保することが必要というようなことでございます。
それぞれ具体的なケースに応じて、制度がこのように運用されるべきというような形でまとめておるところでございます。
まず、1点目は、受給者実人員70万人を下回りますが、弾力倍力1未満、かつ、積立金の残高が不足しているなどのケースでございます。
直近の雇用保険の状況などがこれに該当し得るというところでございますが、失業等給付の支払いに支障が生ずるおそれがある場合は、この、当面必要な国庫繰入れが行われるべきである。
もう一つ目、受給者平均70万人以上、かつ弾力倍率1未満、この場合は、国庫負担4分の1の要件を満たしますが、このような場合は、特に安定的な財政運営の確保が求められるため、弾力倍率が1を超えるように国庫繰入れが行われるべき。。
弾力倍率が1を超える水準というのは、簡単に申し上げますと、積立金の水準が単年度の給付の水準程度、あるいはそれ以上を保有している状況であると言えます。単年度の失業等給付費は1兆数千億程度ございますので、そのぐらいの水準の積立金の確保が可能となるような繰入れが行われるべきであるという趣旨の御提言になってございます。
3点目、雇調金の支出額が増加いたしまして、貸出額を増加しなければ、雇調金などの支払いに支障が生ずるおそれがあり、かつ、積立金の残高が不足している場合、そういうケースでございます。
これは、いわゆるコロナ禍における、現在においてかなり念頭に置くべきリスクであろうというところでございまして、こうした場合にも当面必要な国庫繰入れが行われるべきである旨の整理をしてございます。
ⅰからⅲに該当しない場合であっても、雇用情勢の急激な悪化などの場合に、機動的な対応といたしまして、国庫繰入れが行われるべきであると。
この4つについて、具体的な繰入れが行われるべき時期などについて整理がされております。したがって、厚労省におきましては、ⅰからⅳに該当し、または該当するおそれがある場合には、決算確定後などの時点を問わず、まずは雇用保険部会に、余裕を持った適切な時期に雇用保険財政などの状況を報告し、その上で、当部会において、財政安定化のために必要な財源の内容や、その確保策を含めて議論を行い、その意見を踏まえ、必要な対応を取るべきであるというまとめがなされているところでございます。
13ページの一番下の○、この新しい国庫負担の仕組みの趣旨でございますが、いわゆる財政悪化した局面などにおきましても、保険料率を引き上げるよりも迅速に、必要に応じた金額を繰り入れられることにより財政の安定を図ることが可能となるというところでございます。
14ページ、このことによって、この国庫負担の考え方、これは先ほど御説明した内容でございますが、こういった考え方が変わるものではない、今後の財政運営に当たっては、この点を十分認識する必要があるという整理がなされているところでございます。
以上が失業等給付の国庫負担のまとめでございます。
2つ目の育児休業給付、それから、介護休業給付の国庫負担につきましては、冒頭の考え方に照らせば、速やかに8分の1に戻すべきであるが、国の厳しい財政状況下におきまして、失業等給付に対します国庫からの繰入れにより積立金の一定水準の確保が可能となっていること、あるいは、先ほども御紹介いたしましたが、育児休業給付の在り方を令和6年度までを目途に検討を進めていくというようなことが背景としてございます。これらを前提に、令和6年度まで、いわゆる原則負担割合の10%水準とする暫定措置を継続することもやむを得ないという形で整理をしているところでございます。
ただし、育児休業給付の今後の財政運営におきまして、給付の増加率が高い水準で推移した場合には、令和6年度までの間において、安定的な財政運営が図られないリスクがあると。これは、いわゆる国庫負担の水準が、現行水準を維持した場合に、給付の増加率が上回りますと、区分経理をした育児休業給付の収支が、当初想定していた令和6年度までの財政運営というものが場合によっては果たされなくなるおそれがあるのではないかという、このリスクを書いておるところでございます。
こうした場合に備えまして、育児休業給付における積立金からの借入れの仕組みを令和6年度までに継続することとすべきであると。その歳、借入れが生ずる事態となった際には、その返済の在り方についても検討することを法律上明記するという形で整理がされているところでございます。
その次の育児休業給付のくだりは、制度そのものの在り方を改めて規定をしているところでございます。あわせて、労働者・使用者代表委員から、育児休業期間中の経済的支援は、国の責任により一般会計で実施されるべきであるなどの御意見がございました。
14ページ、一番下から、求職者支援制度の財政運営でございます。
求職者支援制度につきましては、15ページでございますが、いわゆる骨太2002におきまして、さらなる拡充も見据え、その成果や課題を検証した上で、財源の在り方を含めて見直すとされてございます。
この国庫負担につきましては、雇用保険被保険者でない者を対象とする制度であるというそもそも論に加えまして、非正規に対するセーフティーネットの充実が求められて、各種の特例を講じている経緯も踏まえますと、速やかに2分の1に戻すべきであるが、国の厳しい財政状況にも鑑み、まずは原則的な負担割合の55%水準に引き上げることが適当であるというまとめをしているところでございます。
この点に関しましては、労働者代表・使用者代表委員からは、本来は全額国庫負担とすべきである旨の御意見が付記されているところでございます。
次の○でございますが、これらの暫定措置を実施するといたしましても、育児休業給付、介護休業給付、求職者支援制度に対する国庫負担割合を法律上の原則に戻すべきであるとの考え方が変わるものではない、このことから、附則15条を踏まえまして、令和7年度以降、安定した財源を確保した上で、いわゆる国庫負担の暫定措置を廃止することを改めて法律に規定すべきであるとまとめているところです。
最後の15ページの(3)、コロナ禍の財政運営でございます。
臨時特例法の枠組みといたしまして、大きく4つの財政運営の特例的なスキームが設けられました。
1つ目が、失業等給付に対する国庫からの任意の繰入れ。
2つ目が、雇調金などの特例で、中小企業に対する基本手当日額の上限超えの部分の国庫負担。
3つ目が、育児休業給付に係る積立金からの借入れ。
4つ目が、雇調金の特例などに係る積立金からの借入れでございます。
それぞれにつきましては、既に述べている部分もございますが、改めて16ページの一番上でございます。
まず、マル2、これは雇調金の中小企業上限超えの部分の国庫負担についてでございますが、令和4年度の延長。
それから、マル4、こちらは雇調金の、いわゆる積立金からの借入れの部分、令和6年度まで延長と。
それから、マル3、こちらは、育休の積立金からの借入れでございますが、こちらも令和6年度まで延長した上で、借入れが生ずる事態となった際には、その返済の在り方について検討するというところで、ここは従前の表記を繰り返しているところでございます。
この点に関しまして、労働者代表・使用者代表委員からは、本来借入れが生ずる事態となる前に、返済の在り方について検討すべきとの御意見がございました。
次の○のマル1、これはいわゆる国庫からの臨時特例法にのっとった任意繰入れ制度でございますが、(2)に御説明いたしましたように、新たな国庫繰入れ制度を導入するところでございますが、この任意繰入れ制度につきましても、コロナ禍における財政運営に万全を期す観点から、当面の措置として、令和4年度の延長というところで整理をしています。
16ページの、次の○の「加えて」以降が、いわゆる累積債務、つまり、雇調金に要する費用に関する積立金からの借入れの累計額の問題でございますが、令和3年度末時点で見込みが2.6兆円に達しており、今後もさらに増加することが見込まれると。現行の規定では、こうした借入額は、雇用保険二事業収支に剰余が生じた場合、その全額を積立金に返済するという仕組みでございます。
この点でございますが、全て返済に充てることとしては、長期にわたり安定資金の積立てが全くなされず、機動的な雇用対策を講じることが困難となります。そのため、当面、二事業収支の剰余の2分の1の範囲内で安定資金にも積立てができるようにすること。
それから、この2事業の貸出し原資である積立金には、労使が拠出した保険料が含まれていることを踏まえた上で、財政状況、二事業の実施の状況を勘案して、返済必要額から控除することができるようにすべきという制度的な整理をいたしているところでございます。
さらに「借入額に係る返済の在り方については、今後も借入額が増加していくことが見込まれる状況も踏まえれば」でございますが、先ほどのくだりでもございました、この積立金には労使が拠出した保険料が含まれていること、あるいは積立金、雇用安定資金の状況などを踏まえて、令和6年度までを目途に、改めて検討することを法律上明記すべきという形で整理をいたしているところでございます。
この点に関しましては、まず使用者代表委員から御意見がございます。
16ページの一番下の段落でございますが、雇調金の特例措置が想定以上に長期化したこと、休業支援金の創設により、二事業では異例の個人給付を行っていることなどがございまして、失業等給付に係る労使や国庫の負担などを実質的に肩代わりしている側面があり、受益者全体で負担すべきであって、この返済を全額使用者負担である雇用保険二事業の剰余のみで負担するのは不適当。二事業に対する一般会計からの直接的な繰入れなども対応も必要との御意見がございました。
また、労働者代表委員からでございますが、この累積債務の返済の在り方に端を発して、この二事業が縮小されるべきではない、労働者が拠出した保険料が含まれる積立金からの貸出額が保全されるべきである。二事業に対する一般会計からの直接的な繰入れなどにより対応されるべきである、こういう御意見がありまして、それぞれを付記いたしているところでございます。
(4)の弾力条項でございます。
いわゆる保険料計算に当たっての弾力倍率でございますが、臨時特例法により設けられた貸借、貸出しに関しましては、全額が返済された状態を前提として行うのが現行の仕組みとなってございます。この点でございますが、この積立金からの借入累計額が多額に上る現状、あるいは、この借入れに関しまして、返済の猶予あるいは返済の在り方についての検討を行うこととするのであれば、全額返済された状態を前提とした積立金の額と実勢に即した額、これらに大幅な乖離が生ずるということでございます。
これを踏まえて、この弾力倍率の計算におきましては、返済されていない貸借額は考慮せず、実勢に即した積立金、雇用安定資金の残高に応じて計算することとすべきである形でまとめているところでございます。
この点に関しまして、労働者代表委員からは、二事業に剰余が発生する見通しが立たない状況に変わりはなく、返済されていない貸借額も引き続き考慮に入れるべきであるとの御意見がございました。
これらのコロナのいわゆる財政運営の特例措置、(3)、(4)、全体を通じての意見が最後でございまして、労働者代表委員からは、本来、失業等給付、二事業に係る財政運営に関する仕組みを複雑化させるべきではないというような御意見がございました。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 説明、ありがとうございました。
それでは、この点につきまして、御質問、御意見がありましたら、手を挙げるボタンをクリックして、こちらで指名させていただいた後に、お名前をおっしゃっていただいて御発言をお願いいたします。
では、先に手が挙がったのは佐久間代理でしょうか。お願いいたします。
○佐久間代理 ありがとうございます。全国中小企業団体中央会の佐久間と申します。本日は、委員の馬渡に所用がありまして、本分科会に出席することができませんので、代わりに私から意見を述べさせていただきたいと存じます。
まず厚生労働省の事務局におかれましては、御説明、御報告、ありがとうございました。雇用保険財政問題につきましては、雇用保険部会において、使用者側、そして、労働者、双方が一般会計からの繰入れを依頼し、厚生労働省としても、財政当局との折衝を重ね、最大限の努力をしていただきました結果として、補正予算や令和4年度予算において、一般会計からの繰入れ、激変緩和措置、そして、各種制度の改定等につなげていただいたものとして感謝しております。
しかしながら、感染拡大が見られるオミクロン株をはじめ、今後も新たな変異株により、コロナの感染再拡大のおそれや予測できない災害の発生、景気の変動などといった不安材料を踏まえれば、雇用保険財政は今回の改正によっても安定するものではありません。
雇用保険は保険制度であることは十分承知しておりますが、以前から申し上げておるとおり、コロナウイルス感染症は、景気対策や保険制度を超えた自然災害による激甚災害として考えていただく必要があると思います。
本来なら、まず、コロナの影響で増加の一途をたどった雇用調整助成金等による使用分など、借入れ先である失業等給付積立金の借り入れ部分については、国からの一般財源で充当していただき、使用者と労働者が積み立てた雇用保険財政の安定化を図った上で、今後の保険料と、現在検討している国からの繰入れの在り方を決定すべきであろうと思います。
報告書の中では、基本手当についての離職後期間の延長、求職者支援制度の要件緩和、財政運営については、国庫からの借入れの在り方、受給人数の要件、そして、弾力条項計算式に関わる部分も記載がされています。雇用保険部会の審議を尊重し、おおむね妥当と考えておりますが、特に、雇用保険財政を支えていただいている国庫負担率については、従来から本則への引上げを要望してきましたが、計算式からすると、本則である4分の1になるにはかなりハードルが高いようです。
また、失業等給付の弾力倍率計算式において、対象年度末積立金から、雇用安定資金への貸出し分を・・・・(通信不具合)。
今回決定する国庫負担の繰入れ規定に達した後、どのように一般会計から繰入れが行われるのか。一般財源からの充当がどのような状態の下に実施されるのか、その実行に当たっての方策というのがまだまだ不明確であると思います。
私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
佐久間様、「雇用安定資金への貸出し分を」とおっしゃった後、接続状況が不安定でして、その「雇用安定資金への貸出分」の後をもう一度おっしゃっていただけますでしょうか。申し訳ありません。
○佐久間代理 申し訳ございません。
雇用安定資金への貸出し分を除外することについては、除外することによって、倍率の値は小さくなることになるので、保険料引上げの可能性が高くなるのではないかと懸念しております。
二事業財源が枯渇し、借入れ先である失業等給付積立金も底をつく状況の中で、今回決定する国庫負担の繰入れ規定に達しても、どのように一般会計から繰入れが行われるのか、また、一般財源からの充当がどのような状態の下に実施されるのか、その実行に当たっての方策が、まだ不明確であると思います。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
○佐久間代理 長くなりましてすみません。ありがとうございました。
○山川分科会長 それでは、新田委員、お願いいたします
○新田委員 経団連の新田です。
詳細な御説明をありがとうございました。
冒頭に、この雇用保険部会の報告書の取りまとめに御尽力された部会関係者の皆様方、そして、長良課長をはじめ事務局の方々に敬意を表したいと思います。お疲れさまでございました。 その上で、今し方の御説明に対して少しコメントをさせていただきたいと思います。
今回の雇用保険部会の報告書については、まず、この新型コロナウイルス感染症の拡大という、これまで経験したことない状況下で、雇用情勢や雇用保険財政に与える影響といった先行きを見通せない状況を踏まえて、雇用の安定、就業の促進、そして制度の安定的な運営を図ることを意図した見直し内容になっていると受け止めています。したがいまして、この報告書の内容の取りまとめで、全体的には異論はございません。
ただ、3点ほど注目をしている点があります。その点について少しコメントしたいと思います。
まず、1点目は、雇用保険料率についてです。
先ほどの説明にもあったとおり、今年度の末で、本来であれば暫定措置並びに弾力条項が発動できなくなり、本則に戻ることが想定されていたところ、労使に対しての激変緩和措置が講じられたという点については非常にありがたいと思っています。
一方で、年度の途中で保険料率が変わるという、極めて異例の措置とも言えます。報告書の中に使用者代表の委員からの少数意見がついているとおり、丁寧な周知をはじめとしたきめ細かな方策を行うべきということは、私からも重ねてお願いをいたします。
年度の途中で変更となりますと、例えば、通常1つである申告書の雇用保険料の欄が2つになる、あるいは、後日追加徴収があるといった通常とは異なる対応が必要になってくると思っています。そうしますと、システム化している大手企業は対応しやすいと思いますが、中小企業においては、早めの手当てが必要になると思います。丁寧な周知はもちろん、年度途中で保険料率が変わることに対する実務面での負担の軽減策をぜひ御検討いただきたいと思っております。
具体的には、例えば納付期限を少し延長するとか、追加徴収のときには何日以内という徴収期限を延長することなどが考えられます。せっかく激変緩和措置を取っていただくのに、実務面での負担が増えることは好ましくないと思います。現時点でもし何かイメージがあれば教えていただきたいと思います。ないようであれば、今後、丁寧な御対応をご検討いただきたいというお願いでございます。
2点目は、国庫負担についてです。
使用者側としては、本則に戻すべきという主張をしてきたところでございます。非常に厳しい財政状況に陥っているのは、先ほどの御説明にもありましたし、参考資料からも、うかがえるところでございます。特に雇用安定資金については、このままでいくと2年度連続で残高がゼロとなります。しかも、それは積立金から巨額の借入金をした上でのゼロということです。実質上は枯渇どころか赤字という、極めて危機的な状況にあると理解しています。
こうした状況を踏まえれば、今回報告書に書かれている、雇用情勢等が厳しい場合の負担割合は4分の1、それ以外の場合には40分の1というスキームは致し方ないと思っています。他方、臨時特例法で規定している国庫からの任意繰入れを、きちんと雇用保険法に規定をして、常設化するという点はありがたいと思っております。
ただ、この報告書に記載されているとおり、様々な発動の条件がありまして、雇用保険部会で、きちんと必要な対応を早期に行っていただくというようにとも書かれておりますので、この点、ぜひ、実効性の担保をお願いしたいと思っております。
今回、機動的に対応できる仕組みへ見直すというところが、この国庫負担の、特に国庫の任意繰入れ規定の肝だと思っておりますので、ここが絵に描いた餅にならないように、ぜひ実効性の担保については、今後、関係者全員で努めていただければと願っているところでございます。
最後、3点目は、積立金からの巨額の借入れの累積債務の扱いについてです。
先ほど御説明があったとおり、すでに約2.6兆円の債務がある中で、今後も雇調金が月に2000億ぐらい支出され、これからまだ債務が増大することを考えると、この金額が確定した時点で、どのように累積債務を扱っていくのかについては非常に大事な論点だと認識しています。例えばアフターコロナ、ポストコロナの社会を見据えれば、成長分野への円滑な労働移動も必要になってきます。その前提は雇用のセーフティーネットであり、 その核になるのは、失業等給付を中心とした雇用保険制度だと考えておりますので、その財政基盤を安定させることは非常に大事だと思っております。こういった観点からも、まさに雇用安定資金の財政状況の改善が求められており、累積債務の扱いについて、今後、全体像が見えた後に検討を行うということが報告書には明記されておりますので、非常にありがたいと思っております。
検討を始めるタイミングについては、全体の金額が確定する時点で速やかに行うことに加え、使用者からの意見として表明があったと思いますが、いわゆる受益者全体での負担の分担についても、今後の課題としてぜひ検討しながら議論していければと思います。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
事務局、よろしいですか。
○雇用保険課長 はい。
○山川分科会長 それでは、続きましては大下委員、お願いします。
○大下委員 ありがとうございます。
部会報告の取りまとめ、また、御説明どうもありがとうございました。感謝申し上げます。
全体として大きな異論はございません。その上で「雇用保険料率と国庫負担の見直し」について少しコメントを申し上げます。
まず、今回の見直しに当たっての基本的な考え方ですが、コロナ禍で雇用調整助成金の特例措置が果たした役割は非常に大きいと思っています。厚生労働省の御対応並びに現場窓口での支給事務に改めて感謝を申し上げます。
その結果としての雇用保険財政の危機的な状況を踏まえれば、今回報告にあるとおり、将来にわたって安定的な運営を確保し、また、予期せぬ景気変動に伴う雇用情勢の悪化に十分対応できるものにしなければなりません。そのため労使及び国庫の負担をそれぞれ応分に増やすということを考えなければならない状況であることは理解しています。
他方、コロナ禍で企業業績はいわゆるK字回復の状況にあり、日商調査でも中小企業の3割が依然として売上げがコロナ前の3割減という厳しい状況が続いています。これに加えて、昨年の秋の最低賃金引上げ、足元の原材料価格高騰、オミクロン株による第6波の影響も懸念されます。これらを踏まえると、中小企業にとって雇用保険料率の引上げによる負担増は、現実として極めて厳しい状況である実態だけは御理解いただきたいと思います。
こうした状況下で雇用保険料率を引上げるとなると、賃上げ税制などの政策効果も薄まり、労働者側にとっても同様に、企業が賃上げしても雇用保険料率が上がれば手取り額が十分に増えず、岸田政権が掲げる「成長と分配の好循環」にもつながらないと考えます。
財政の健全化は非常に大事なことであることは論を待ちませんが、企業の業績がしっかり回復し、賃金が上がれば税収も増えるわけですので、コロナ禍の影響が依然として残る現状においては、まずは国の負担を増やし何とか雇用を支えて、労使の雇用保険料率はできる限り抑えて、景気の回復とその先にある雇用の回復につなげることが、ひいては雇用保険財政の安定化にもつながるのではないかと考えます。
こうした考えにのっとれば、今回お示しいただいている見直しの内容、雇用保険料率の当面の1,000分の2での据え置きは妥当と考えますし感謝を申し上げますが、10月からの1,000分の6への引上げに当たっては、経済や雇用の状況をよく見て、悪化した場合にはちゅうちょなく見直しのお取り計らいをお願いしたいと思います。
また、年度途中の料率変更は、事務負担の増加につながるため、本来は避けるべきであると思っていますので、丁寧な周知、対応をお願いします。
他方で、国庫負担については、本来は労使の雇用保険料率の引上げに先んじて、現行の原則的な負担割合である4分の1、もしくは、それに近い水準まで戻すべきと考えています。今回、新たな枠組みとして「雇用情勢及び雇用保険の財政状況等が悪化している場合以外は40分の1」とし、あわせて、危機に備えた「新たな国庫繰入れ制度」を常設的な仕組みとして導入するとされています。
コロナ禍の経験を踏まえた適切な措置と言えますし、国庫負担割合の引上げとは別の形で、政府としての責任を担う仕組みとも考えられると思っています。国の厳しい財政状況も踏まえれば、ある程度、使用者側としても理解できる措置と考えています。
資料13ページの最後に、失業について「政府もその責任を負うべきとする国庫負担の考え方が変わるものではない」と改めて記載をされていますが、記載されているとおり、政府の役割をしっかり果たすためにも、国庫繰入れが行われる場合として4つ挙げられています。
今回のコロナ禍のような危機に際して、4番目の「雇用情勢の急激な悪化などの場合の機動的な対応」が確実かつ実行性を持って講じられることが非常に大事です。今後の運用に当たっては、この点を十分に留意した運用が行われるように留意をいただきたいと思っています。
私からは以上です。ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、それでは、津村委員、お願いします。
○津村委員 労働委員の津村でございます。
まず、報告書がまとめられました1月7日の雇用保険部会においても、労働者の代表委員より発言をさせていただいておりますが、職業安定分科会の労働者代表委員として改めて意見を申し上げます。
今回の雇用保険部会において、雇用保険財政の運営に関する極めて重要な議論が、時間的余裕のない中で拙速に進められたこと、とりわけ、失業等給付の国庫負担割合について、「本則に戻すべきである」と、労使の意見が繰り返し発言されている中で、その声が直接に反映されていない報告書が決定されるということは、大変遺憾であると思います。労働者側の委員として改めて申し上げておきたいと思います。
その上で、雇用保険の財源などに関する議論について、報告の取りまとめで終わるものでは当然なく、雇用や経済情勢、そして、新型コロナウイルスの感染拡大状況などを踏まえた議論が継続をされるものと認識しております。
今後は、より丁寧な運営と、当分科会との連携にぜひ努めていただきたいと要望したいと思います。ありがとうございました。
 
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、久松委員、お願いします。
○久松委員 私鉄総連の久松です。どうぞよろしくお願いいたします。
雇用調整助成金の特例措置と休業支援金について、意見させていただきたいと思います。
前回の分科会で、1月から3月の措置内容を審議した際には、原則的な措置の取扱いについても、今後、雇用情勢が悪化した場合には、それに応じて措置内容を機動的に変更できることが大前提であると労働者側より申し上げたところです。
感染拡大の第6波が全国的に広がる状況になっており、既に広島・山口・沖縄ではまん延防止等措置が発令されています。こうした足元の雇用情勢の状況や、兆候を見極めながら給付水準も含めて、今後の措置について、迅速に審議できるようにしておく必要があると申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
様々な御意見をいただきました。今後の運用に関わる御意見、将来の検討課題に関する御意見、それから、政策形成のプロセスに関わるような御意見と、様々な御意見をいただいたところですけれども、この報告につきましては、雇用保険部会の報告ということで了承してもよろしいでしょうか。御異議はございませんでしょうか。
御異議がございませんようですので、それでは、当分科会として、この雇用保険部会の報告を了承したということにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
それでは、事務局から今後の手続について説明をお願いします。
○雇用保険課長 雇用保険課長でございます。
ただいま御了承いただきました雇用保険部会報告を踏まえまして、関連する制度改正が必要となります。その関係で、早急に法律案の要綱を作成いたしまして、改めまして諮問をさせていただければと存じているところでございます。
諮問に当たりましては、雇用保険部会で御議論をいただいて、それを踏まえて、改めてこちらの分科会のほうにもお諮りをさせていただければと存じます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、本議題につきましては以上とさせていただきます。
本日予定の議題は以上でございますが、この際、委員の皆様方から何か御発言等はございますか。
よろしいでしょうか。
それでは、本日の分科会はこれで終了をいたします。委員の皆様方、お忙しいところ大変ありがとうございました。
これで終了いたします。