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第20回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和4年2月1日(火)16:00~18:00
場所
厚生労働省議室(9階)
出席者
(委員)(五十音順)
岡本委員、川﨑委員、古賀委員、佐々木委員、武田委員、冨山委員、中野委員、春川委員、守島部会長、山川委員、山田委員
(事務局)
坂口厚生労働審議官、村山総括審議官、大島政策統括官(総合政策担当)、田中政策立案総括審議官、松本政策統括官付参事官、古屋政策統括官付政策統括室労働経済調査官、宇野人材開発統括官付人材開発政策担当参事官、源河雇用環境・均等局総務課長、溝口職業安定局雇用政策課長、石垣労働基準局総務課長
議題
- (1)部会の今後の進め方について(委員ヒアリング)
- (2)その他
議事
- 議事内容
- ○守島部会長 それでは、全員おそろいになったようですし、定刻にもなりましたので、ただいまより第20回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただき、誠にありがとうございます。
今回、委員の交代がありましたので御紹介いたしたいと思います。
後藤委員に替わり、春川委員が就任されました。
春川委員、一言お願いいたします。
○春川委員 皆さん、はじめまして。春川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 よろしくお願いします。
本日は、所用により石山委員、入山委員、大橋委員が御欠席でございます。
また、所用のため、冨山委員は遅れて御出席、古賀委員は途中退席されると伺っております。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に関して事務局から説明があります。
○古屋政策統括官付政策統括室労働経済調査官 労働経済調査官の古屋と申します。よろしくお願いいたします。
オンラインでの開催に関しまして、注意事項を御説明申し上げます。
まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしていただくようお願いいたします。
御発言の際は、参加者パネルの御自身のお名前の横にあります挙手ボタンを押して、御指名があるまでお待ちください。指名の後、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いします。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度挙手ボタンを押して挙手の状態を解除してください。
通信の状態などにより、音声での発言が難しい場合には、チャットで発言内容をお送りください。
また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず、本日の進め方について御説明いたします。
最初に、基本部会の今後の進め方(案)について事務局から御説明を差し上げます。
その後、山田委員から「経済社会変化と雇用システム改革」について、川﨑委員から「ドコモグループにおける人材育成」についてお話をいただきます。
お二人のプレゼンテーションが終了した後で、まとめて質疑応答と自由討議を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず資料1の「今後の進め方(案)」について事務局から御説明いただきたいと思います。
○松本政策統括官付参事官 事務局参事官の松本でございます。よろしくお願いいたします。
資料1「今後の進め方(案)」を御参照ください。
労働政策基本部会では、最初の報告書において整理されました「働き方を取り巻く新たな中長期的課題」に関しまして深掘りをしていただいたところでございます。
今般はこの第1期の進め方と同様に、労働政策上の中長期的な課題全般にわたる大テーマの下、論点となり得るカテゴリーごとに小テーマを設定し、課題の整理を行っていただければというのが案でございます。
資料1の1枚目の下半分からでございますけれども、まずは下半分にある2つの○のような現状をお示しし、2枚目にありますような小テーマを御議論いただくのかなと想定しております。
現状といたしましては、1つ目の○で「働き方の変化・多様化に大きく影響しうる社会・経済、ビジネスの変化」、または2つ目の○で「社会・経済の変化を受けた働き方の変化・多様化」、こういった点を現状として踏まえつつ、2枚目でございますが、マル1の労使に求められる対応、マル2の労働政策において検討すべきテーマ、こういったことを小テーマとして想定してございます。
事務局からの説明は、以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、委員ヒアリングに移りたいと思います。最初に、山田委員からお願いいたしたいと思います。山田委員、20分程度でよろしくお願いいたします。
○山田委員 日本総研の山田でございます。本日は、貴重な時間をいただきましてありがとうございます。
資料を共有させていただきます。かなり大部の資料になっているので、はしょってお話をさせていただきたいと思います。
主に3つの論点でお話をさせていただきます。
1つ目は、マクロの視点から見たときに経済・社会の変化というのは雇用の在り方、特に雇用システム全体にどう影響するかについて、です。
2つ目に、やはり労働政策を考える際に大きな争点となっています雇用の流動化ということに対して、実態がどうなり、どう考えていけばいいのかということです。
3つ目は、この労働政策基本部会の前からのテーマであります労使コミュニケーションについて、国際比較の視点から、その方向性に対するインプリケーションということをお話しさせていただきたいと思っております。
1つ目の経済社会の変化から見たときの雇用の方向性、雇用システムの方向性ということでいいますと、まず申し上げる必要があるのは、雇用というのは産業の派生需要という側面と、当然生活者の生活基盤だという、産業と生活の両面ということがあるわけですけれども、この両面から見て、従来のいわゆる日本型雇用システムというものが大きな見直しが迫られているということかと思います。
改めてここで整理をしておりますけれども、最初にその産業サイドから見ております。
1-1についてですが、産業とか企業の在り方を考えるときに市場マーケットがどう変化しているのかという問題と、あとは技術構造がどう変化しているかという、その2軸で考えることが必要かと思います。縦軸が市場の変化でして、モノ、プロダクトアウトというものからサービス、マーケットインという方向に大きく変化しているということかと思います。
一方で、技術のほうはインテグラル、熟練という方向性からモジュール化、スマート化のほうに変化しているということかと思います。
全体としては左下から、右上の方向に大きく、産業とか事業の在り方の変革というものが迫られているということかと思います。
ただ、日本の現状を見ると、この左下のところがやはりかなり大きなウエートをまだ占めているし、システムとしてはそちらのほうにウエートがあるということかと思います。全体としては右上にシフトしていかないということなのですが、ただ、ここで考えないとだめなのは、確かに方向性はそうなんだけれども、現実は日本の産業の在り方というのは左下のところに強みがある。非常に単純化すると、左下というのは品質力で競争力があるというところだと思いますけれども、これが右上の革新力を増やしていく方向への転換が求められているということなのですが、現実には品質力というところで1-2にあるように勝負している。
ですから、求められる大きな方向性というのは変わっていっているのですけれども、一方、現状として日本の産業とか企業の比較優位としては品質力に優れているという現実も無視してはいけないということかと思います。
ここでは具体的な、特に技術面での変化ということで、デジタル化と脱炭素化というふうなことを述べております。時間の関係で割愛をいたします。
全体としてみれば、1-6に国際比較の視点から、雇用システムというのは外部のショックがあるときに、大きく言うと雇用で調整するというやり方と、賃金で調整するというやり方があるわけですけれども、日本は賃金で調整するという傾向が非常に強い。
一方で、ヨーロッパは雇用で調整する。ですから、高失業の国が多いのですけれども、アメリカはある意味ミックスというふうな形になっているということかと思います。
この特徴が、昨今日本では賃金が伸びないという問題で、結果として失業率は低いのですけれども、産業構造の転換が遅い。そういう意味では、ここに書いていますように右上の方向へのシフトということが環境変化からは求められているということかと思います。
もう一方の生活サイドから見ても、実は従来の雇用システムの変革というのはやはり求められているということかと思います。
従来は、1-7にありますように男性現役世代が持続的に増えておりましたけれども、これを前提に男性現役世代が長時間労働で、残業あり、転勤は当然ということで、日本の企業を支えてきたということかと思いますけれども、その裏側では女性が家庭で子育て、育児をするという分業関係があったということかと思います。
ところが、2000年をピークに大きく男性現役世代がどんどん減る。女性に活躍してもらわないと企業は回らない、あるいはシニアにも活躍してもらわないと回らない。そうなってくると、当然家事とか育児といった家庭の機能というのは男女ともに協力してやっていく必要が出てくるわけですから、そういう意味でこれまでの在り方が限界にきている。
それから、多様な人材を生かすという意味ではやはりダイバーシティーという観点からいろんな問題が出ているということかと思います。
以上は、もう皆様方に御説明するまでもないということかと思いますが、ただ、問題は、方向としては恐らくいわゆる欧米型の昨今で言いますとジョブ型というふうな方向への変革が求められているということなのでしょうけれども、実は日本の人事とか雇用の仕組みを歴史的に見ると、絶えずその変革の波があり、実は経済状況が、景気が悪くなると、今の言葉で言うとジョブ型ですが、欧米型の仕組みのほうに変革しようという動きがあるわけですが、なかなかそれが一気にはいかずに、1-10にあるように大体景気がよくなってくると揺り戻しが生じる。
ただ、ジョブという言い方がいいかは分かりませんけれども、ゆっくりと従来の日本型の変化というのは生じている。ただ、そう簡単に一気に変わるということではないというのがこれまでの歴史だったということかと思います。
原理的に考えても、今まさにジョブ型への転換、あるいはかつてから欧米型への転換ということが何度も何度も繰り返されてきているわけですけれども、それが簡単にいかない理由というのが1-11に書いてあるところであります。人材活用の仕組みというのは採用があり、育成し、評価し、配置をするという一連の流れの中でされていくわけですけれども、左の就社型というのは日本型です。ジョブ型は欧米型ということですけれども、ここに書いていますが、かなり仕組みが違うということであります。
特に大きいのは、人材育成のところだと思います。日本はOJTが中心で、必ずしも十分な経験とかがない人を採用して企業内で育成する。ところが、特にヨーロッパはそれを学校教育の段階で育成して、一定程度技能がある人を、職種を決めて採用する。
一番下にMakeとBuyと書いていますけれども、日本はやはりMakeの原理が強い。ヨーロッパはbuyの原理が強い。アメリカも、どちらかというとやはりヨーロッパに近いということです。ですから、ジョブ型をワークさせるには育成の仕組みを企業の外に社会的に、特に教育機関との連携の中でつくっておくことが必要なわけですけれども、その部分がそう簡単に進むわけではない。あるいは、労働市場というものが職種を軸に一定程度の賃金相場があるとか、職業能力が一定程度標準化されているということがあってジョブ型というのはワークするわけですけれども、現実に日本には一部にはそういう部分がありますが、全体にはそういうところではないということになっている。それがゆえに、欧米型のジョブ型にするといっても、そう簡単にはできないという現実があるということかと思います。ですから、先ほど見たようにいわばらせん状にぐるぐる回ってきているということかと思います。
現実には、1-12にありますように組合せということではないかと思います。特にここで人材的に今、必要になっているのは、この右上の、職務は限定されるんだけれども、その技能の高い人たちですね。いわゆるプロフェッショナルな人たちですが、こういう人材をどれぐらい増やしていくのか。これは、本来企業の外に人材育成の仕組み、あるいは転職する中でキャリアアップ化していくという仕組みがないとだめなわけですけれども、日本は一部そういうものも出ていますが、なかなかまだ一部にとどまっているという中で、全体にこちらにするのは一気には難しいところがあるということかと思います。ですが、現実にはこういうものの組合せの中で、いわばハイブリッドということですね。
それからもう一つ重要なのは、方向的には革新力を上げていく欧米型に近いシステムということのメリットは出ている一方で、現実には日本は品質力に強さがありますから、この品質力を維持するにはやはり長期雇用、年功的な部分というのが貢献しているということがありますので、一気にこれを捨ててしまうというのは必ずしもいい選択ではないということもあると思います。そういう意味でも、結果的に1-12の産業別とか企業別の中で最適なポートフォリオですね。それをつくっていくことになっていくということだと思います。そこの概念図を示したのがここの部分であります。
それで、このデジタル化のところは時間の関係でちょっと割愛をいたします。
2つ目の論点の流動性のところですが、ざっとデータを示していますけれども、まとめは今、御覧いただいているところなのですが、よく日本は流動性が低いとは言われるのですけれども、実は男女で違う、あるいは企業規模によっても違うということであります。これがファクトとして重要な部分です。
流動性が低いこと自体が実は問題ということではないんだと思います。そうではなくて、ある意味、よい流動化と悪い流動化があって、よい流動化が少ないということがやはり問題だと思います。よい流動化というのは、衰退産業から成長産業に人が移動し、かつ個人から見ると能力がキャリア開発につながるものですが、こういうものが少ない。
一方で、よい雇用維持も必要だということです。そういう意味では、日本は残念ながら悪い流動化がある。それは、具体的に言うと中小企業の一部では簡単に解雇するということもありますし、非正規のところもそういう部分があるわけです。そういう意味では、悪い流動化は実は結構ある。
一方で、悪い雇用維持もあるわけです。どうしても日本の場合は企業内組合ということがあって、雇用維持というところを優先する労使関係が特に大手企業の中で存在する。そうすると、どうしても事業構造の転換というのが遅れてしまって、必ずしも産業競争力のないところで、言葉は悪いんですけれども、人が塩漬けになっているケースもあるということで、そういう意味では悪い雇用維持というのもある。
ですから、大事なのは、企業は事業構造を時代の変化に応じて変え、同時に新しい技能を既存の従業員が身につける。いわゆる最近の言葉で言うとリスキリングですね。こういうことができれば、これはよい雇用の維持の形でもありますし、あるいは実際に転職してそうなるケースもあるということで、あまり流動化そのものということの問題よりは、本質的な問題というのは事業構造を時代に応じて転換して、それに必要なスキルをどう全体で習得を進めていくのか。それが本質な問いということではないかと思います。
そういう観点から見ると、中小企業部門ではむしろ問題は人材育成のインフラということが非常に脆弱になっているということだと思います。ここをどう強化するのかというのが第1の大きな政策的な課題ということかと思います。
それから、全体としては既に申し上げましたけれども、人材ポートフォリオのところでいいますと、やはりプロ型の人材、自律型の人材をボリュームとしてどう多く育てていくかというのが第2の大きな課題になっているということかと思います。
それから、3つ目は非正規労働者に対してのセーフティーネットですね。これも結果として方向としてはいろんな事業再編等が増えてきていまして、ここのセーフティーネットが不十分な部分がありますから、ここをどう充実したものをつくっていくのか。大きく言うと、事業の外部に人材育成のインフラをどうつくるのかということと、一部それとも関わりますけれども、そのプロの人材をどう育てていくかという環境をつくるか。それから、最後にセーフティーネットの拡充です。以上が政策的な3つの大きな課題ということだと思います。この後のページに具体論をいろいろと書いていますので、後で御参考までに見ていただきたいと思います。
最後の論点で、労使コミュニケーションのところをコメントさせていただきたいと思います。
まず4-1のところを御覧いただきたいのですけれども、これは労働生産性の伸び、就業率、実質賃金の伸び、それから賃金格差について、主要な国で示しています。特に労働生産性の伸びと賃金格差というところは、最近のテーマになっている成長と分配に関わる部分ですが、成長について生産性、分配について賃金格差として見ていただくと、左側は労働生産性ですけれども、これは過去20年ですが、アメリカがやはり最も高い労働生産性の伸びを記録しています。
ただ、それにほぼ匹敵するに近い成長をしているのが実は北欧の国、特にスウェーデンということになっています。
右側の図表というのは賃金格差を線で示していますけれども、御案内のようにアメリカは確かにダイナミックな経済ではあるのですが、格差問題がやはり非常に大きな問題になって、かなり今、政治的な不安定にもつながっているという問題があります。
一方で、北欧は移民等の問題はあるのですけれども、総体的にみれば安定しているということです。ですから、企業と労働の両方の共存共栄ということで言うと、国際比較をしていきますと、北欧というのがうまくいっているということではないかと思います。
では、北欧のそういう特徴というのはどういうところにあるかというと、実は北欧というのは組合の組織率が非常に高いということが有名なわけですね。
ただ、日本ではこれはいろんな見方があるわけですけれども、昨今はどちらかというと組合というのは改革の抵抗勢力という見方があって、組合はあまり強いとよくないのではないかという見方が比較的あるということではないかと思います。
ただ、北欧の事例は実はそうではない。必ずしもそういうことは言えないよということを雄弁に物語っているのではないかと思います。
ただ、北欧の組合の重要性というのは、生産は協力するけれども分配は緊張関係でやる。要は、賃上げに関してはしっかり要求するけれども、場合によっては事業再編に対しては協力し、労働者の能力育成に対しては非常に積極的に自主的に取り組んでいく。そのように生産は協力関係で分配は緊張関係という労使関係というのが大きな特徴になっているということかと思います。
実は、こういうふうに見ると、労使関係の在り方というのは結構経済とか社会のパフォーマンスに大きな影響を及ぼしているということになっております。そこを見ているのがこの後なんですけれども、4-3ということを見ていただきます。これは、労働生産性の伸びと組合組織率というものの関係を見ています。実は、過去、CalmforsとDriffilの仮説というのがありまして、要は労働組合の組織率が低いか、高いか、どちらかのときに経済のパフォーマンスが上がるというテーゼというのがあったのですけれども、そういう傾向というのが今でも比較的見られるかたちとなっています。
さらに、昨今、実はOECDが興味深い分析を示していまして、かつては先ほど申し上げました通り、CalmforsとDriffillの仮説だと組合組織率が高ければパフォーマンスは上がるということだったのですが、実はこれは北欧がほとんどなわけですね。北欧というのはかなり特殊なケースであって、そういう意味では組合組織率が低いほうがやはり市場原理がうまく働いてうまくいくのではないかという考え方をOECDはかつて取っていたわけです。ですから、労働市場の規制緩和ということが非常に声高く言われたということかと思います。
ところが、確かに80年代、90年代辺りというのはそういう状況も言えたんだと思うのですけれども、私自身は経済活動に対して市場原理は非常に重要だと思いますが、労働市場のことを考えるときには、必ずしもそれだけはうまくいかない部分が出てくる。特にどうしても格差の問題が出てくるということで、実は昨今OECDは見方を修正してきているということなんです。
OECDの2018年のエンプロイメントアウトルックでは、かなりこの見方を修正してきています。ここでやっているのは、詳細はこの右側にありますけれども、要はOECDの各国を幾つかの労使関係から見たときのパターンに分けているんです。それで、結論だけ言いますと、かつてのいわゆるアングロサクソン型のパターン、要は労使関係でいうと分権型であり、さらには労使関係の個別化が進んでいる国というのは、そのパターンで見るとばらつきはあるんですけれども、必ずしも全てがうまくいっているわけではない。それよりはむしろ、例えばフィンランドとかベルギーというのはそうですけれども、中央集権的に例えば賃金を決めるが、各レベルで全体を調整する仕組みがあります。あるいは、スウェーデンなどの北欧とかドイツなどはそうですが、企業別・事業所別の自由度が高いが基本は産業別、セクター別に決まり、全体の調整をする仕組みもつくられている。そういう意味では、全体調整型の集団的労使関係をうまくつくっている国が、長い目で見ると経済成長の持続と同時に、格差を一定程度に押さえるという意味で、社会の安定性という面でもうまくいっているのではないか。そういう見方を、実は最近取ってきているということです。
それともう一つは、我々はやはりどうしてもアメリカのやり方をよく見るんですけれども、ヨーロッパというのは実はかなり労働の経営参画ということをいろんな仕組みで進めております。従業員代表組織というものとか、あるいは実は取締役会の中に従業員代表が入っていくとか、そういうことですね。そういうことを見ると、労働の経営参画が積極的な国ほど、これはあまりロバストではないのですけれども、労働生産性を高める可能性がある。
一方で4-6ですけれども、賃金格差に関してはやはりこういう労働の経営参画が強い国というのは小さくなる。ですから、総合的に見ると労働の経営参加ということはプラスに働くのではないかということです。
ただ、労働の経営参加というときにやはり重要なのは、これが経済成長に結びつくには働く人たちが変化に対して非常に前向きなスタンスを持っているということですね。実は北欧がそうなのですけれども、人材マネジメントの世界で最近はアメリカ中心に新しい人材マネジメントの在り方が工夫されてきて、従業員のモチベーションを上げるということができるようになってきています。
これも非常に有効なやり方なわけですけれども、ただ、そうは言うものの、ある意味、企業の論理というのは労働者全体の底上げというところではどうしても足らない部分が出てくる。そういう意味では、これは労働組合だけではないんですけれども、いろんな形の職業協会も含めて、いわば働く人たちが共助の世界で自分たちの能力育成をしていくようなコミュニティーを持っている。北欧は典型的にこういうものを持っているわけですけれども、そういうふうなことがうまくいくということが言えるのではないかということであります。
こういうふうに見ていくと、では日本の現状はどうかというと、労働者の経営参画という意味でいうと、大手企業では結構これはできているところが多いと思います。労使協議制などが置かれている。それから、組合も基本的には経営に対して協力的という意味では望ましい関係にあると思います。
ただ、問題はどうしても企業内組合ですので、ヨーロッパのような産別の連携が弱くなる。結果として一企業での雇用保障を優先して、特に非正規労働者の人たちの処遇改善というのは後回しになりがちになっている。
一方で、組合が形成されない中小企業というのは経営者の考え方によってかなりばらついてくる。その結果、労働者の経営参画を促すような望ましい関係というのがどうしても形成が、だからこそ最初に申し上げました人材育成が遅れてしまう。
そんなことを考えると、日本の方向性としてヨーロッパの在り方を参考にすると産別組織の強化というようなことが重要ではないか。その上で、従業員代表制を法制化して、産別組織の支援の下で中小企業にそれが導入されるような仕組み、かつ産別組織というのは正社員組合、正社員だけのことではなくて当然その産業全体、あるいは職種全体の公正代表として行動するということが大事ではないか。
ヨーロッパの例を見ていますと、それのカウンターパートとして使用者サイドのほうも産業別の使用者団体ということを機能強化していく。そういうことで、個別企業の枠を超えた労使関係をつくっていくことが今後の方向性ではないかと思います。
時間がありませんでしたので不十分ですけれども、後ほどいろいろ御意見なり質問をいただければと思います。どうもありがとうございました。
○守島部会長 山田さん、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして川﨑委員の発表に入りたいと思います。川﨑委員、よろしくお願いいたします。
○川﨑委員 承知しました。川﨑です。
それでは、「ドコモグループにおける人材育成」というタイトルで、一企業の事例ということになりますけれども、御紹介をさせていただければと思います。
前段は山田委員のほうから、マクロ的に見たときの雇用環境とか経済のお話がありましたけれども、一企業の事例ということになろうかと思います。
今はドコモシステムズということで、IT系のドコモのグループ会社というところに所属しておりますが、もともとはドコモの中でもダイバーシティー推進室長などもやってきておりまして、人材育成に関わることも多かったですし、今も業務の所掌の中には人材育成もやっておりますので、少しお話ができたらと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいいたします
では、次のページにいきまして、今のドコモの事業の状況というところなのですけれども、皆さんドコモという名前を聞くと、主には携帯電話やスマートフォンの事業をやっている会社というふうなイメージで捉えていただけるかと思うわけですが、ただ、携帯電話の市場そのものはかなり成長が難しいという領域になっておりまして、これから下の赤で書いてありますスマートライフ事業領域ですとか、その他の事業というふうに書いておりますけれども、法人、IoT、そういったところの領域に事業を転換させていきたいというふうに今は考えており、それをやっている真っ最中という状況になります。
通信事業の領域は、本当にネットワークをそれこそ品質として磨いていくとか、またはその機能、それに付随するようなところでサービスを磨いていくといことでやってきたわけですけれども、なかなかそこも限界にきていますというところでは、新たな革新が求められるところにどうチャレンジしていこうかというふうなフェーズに差しかかっているところです。
次のページになりますが、その事業規模としてなのですけれども、全体で4兆6000億超というような状況ですが、従業員が2万7500人です。これは連結グループを含めてということなのですが、主にはほとんどが日本人です。日本の国内で事業をやっていて、日本人という状況になっております。それで、女性の管理職比率は6.9%という状況です。課題感は、女性の管理職比率が大きくなっていかないというところでして、私がダイバーシティー推進室をやっていたのは10年以上前になりますけれども、そのときから比べると3倍から4倍近いような伸びではあるのですが、世の中の平均値から比べても、同じ業種から比べても、非常に低いというところが課題感です。
それで、下に2022年1月に子会社にしたということを書いてありますが、これが大きく新しい変革を狙ってやっている事業構造の転換としての子会社化の一つということになります。
次をお願いします。
そういうふうな事業転換をしていこうという中で、中期戦略を発表しました。これは対外的にも発表してやっているものなのですが、社内の社員たちに対しても従来の高品質なネットワークというふうなネットワークを磨いていく通信事業にとどまらず、その上のものとして社会全体を支えるDXとか、新たなライフスタイル、こういったところへの事業構造の転換、変革をやっていこうじゃないかということで、こういったキャッチフレーズで全社員を引っ張っていきたいというふうに進めてやっているものです。これは、去年の10月に発表しまして、大きく事業戦略としても方向転換をしましたというところです。
次をお願いします。
そういった中で、ここはもう簡単な数字になりますので御覧いただければと思います。お客様の会社の数は8,000万ということで大きいですが、これから金融決済の取扱いなども増やしていかなければいけないというようなことで、従来型の事業とは違う変革が求められるというフェーズになってきたということになります。
次ですが、そういった変化をここにまとめてみたところです。常にイノベーションが求められるということで、事業環境の競争の激しさの中からどうやって変革していくのかというところが求められていますということです。
また、社員の意識も随分変わってきたのかなと思います。従来は新卒一括採用で育ててきたところがあるわけですけれども、終身雇用そのものも大分崩れてきているのではないかと感じています。通常、私たちの場合は年に新卒社員を何人採用するというふうな目標を決めて採用活動をやっていくわけですけれども、その目標のときに新卒採用だけではなくて中途採用の目標の数字をつくって、それも大体2割から3割くらいになるんですけれども、新卒採用の人数の2割から3割は中途採用で採っていこうという形になってきていまして、社員もそういった環境の中で比較的、自分の職場の中に中途採用の人たちが何人か入っているという環境になってきており、従来よりも転職していく。特に若い層に関して言うと、転職していくということに対して意識は変わってきているということが起きてきています。一つの会社の中で育っていくということだけではなくて、自分自身のキャリアをどうつくっていくのかという動きも出てきているのかなというところです。
あとは、デジタル人材へのニーズの高まりというものは御案内のとおりですし、ESG、ここも環境、エネルギー、そういったところの配慮にとどまらず、人権とか、そういったようなものもまた出てきているのかなというところです。
それで、このベースになるのがコロナ禍でリモート型の社会に大きく転換したなと、コロナで2年間、在宅勤務やステイホームで家の中での時間の過ごし方、あるいは働き方も変わりました。それを踏まえた上で、人事の仕組みや人材育成をどう変えていこうかといったようなところをこれから少しずつ御紹介していこうと思います。
次のページをお願いします。
そういう変革の中で、ジョブ型の人事制度、2020年7月になりますけれども、管理職の担当部長以上ということで管理職の一部に導入しました。全管理職に対しては、去年の10月にジョブ型の人事給与制度ということになっています。従来の職能型からジョブ型に変わって、ポストごとにジョブを決め、ジョブグレードを決め、会社をまたがってもジョブグレード間で移行できるという形にしています。
一般社員はまだ導入されていませんけれども、まずは管理職から導入していってジョブ型の人事給与制度のほうにシフトさせています。
もう一つ、コロナ禍になってから大きくリモートワークのやり方を変えました。従来からリモートワークはあったのですけれども、ベースは出社して働く。それで、リモートワークには回数制限があり、基本的に通勤費も定期で、フレックスもコアタイムがあるというところがあったのですけれども、それも全部取り払ってリモートワークが基本、出社したときに合わせて通勤費を払い、リモートワークの手当を出していくということで、コアタイムをなくしてスーパーフレックスに今なっています。
さらにこれを推し進めて、2022年度からですけれども、転勤ですとか単身赴任しなくても全国のいろんなロケーションで仕事ができるというふうなリモートを前提とした社員をつくっていくですとか、本社の機能あるいは開発の機能を地域のほうにも分散させていくような制度もこれから先つくっていこうという動きになってきています。リモートワークを前提とした制度からさらに踏み込んで、より長期にわたって従業員の働き方の柔軟性を上げていくという試行をしてきているというタイミングになってきています。
実は、このリモートワークが前提となる働き方になってから大きい転換があったものが、育児休職から復帰してきたときの働き方になります。育児休職から復帰してきたときなのですけれども、従来は短時間勤務を取得する場合がほとんどでして、通常のフルタイムで戻ってくるというのは非常に少なかったというところです。それで、キャリア形成という意味合いから通常勤務で戻ってくるという社員も徐々に増えましたけれども、それでも3割止まりだったのがコロナの前の状況でしたが、実はコロナ禍でリモートワークが前提になってからこれが逆転しました。短時間勤務で戻る社員が3割くらい、残りの7割の社員は通常勤務で戻ってくるというふうな働き方になってきています。
今後、リモートを前提として、より長いスパンにわたっての働きやすさの柔軟性を増していくことによって、こういったことにとどまらず、いろんな社員が活躍できる環境がつくられてくることは期待したいと思っています。
次をお願いいたします。
ここからは、少し具体的なドコモグループでの人材の育成の方針というところをお話ししようかと思います。
これからイノベーションというところを指向していくに当たって、従来の枠にはまった、型にはまった育成ではとても太刀打ちできないということで、個人一人一人が自分自身の能力ないしはやりたいことをさらに伸ばしていくという方向にかじを切っています。そういう意味では、従来より個人を重視し、自分自身でどういうキャリアをつくりたいか。そして、社員がそう思うところの自律的なキャリア開発を支援していくのが会社だというふうな育成の方針の転換を行いました。
次をお願いいたします。
その中の仕組みとしてここにお示ししているものを社員と、その社員の上司にも示しています。社員が自らどういうふうなキャリア形成をしたいのか、自分もどういう個性を伸ばしていきたいのか、何をしたいのかということを考えるといっても、ある程度の枠がないと考えにくいということですし、やはりOJTを通しての育成、能力の開発というところもありますので、そこは上長にもきちんと理解をしてもらうということで、キーワードとしてこういったものを示し、これをベースとしたコミュニケーションを社員と取っていくということを求めています。
次ですが、ここもその例の一つになります。コンピテンシーと専門スキルというふうに二分しまして、幾つかの事例を示しながら、自分にとってどういうコンピテンシーが望ましいのか、専門スキルならば何を育てていきたいのかというふうなことを考える軸として示しているものになります。
次をお願いいたします。
さらに、こういったものをブレークダウンしたものということで、社員が自分自身のキャリアを考えるためのサポートの仕組みとしてのものと、あとはオンラインを活用した学びの場の提供ということで、従来の集合型の研修のプログラムから、より自分の現状のスキルに合致したようなものをどう伸ばすのかに合ったデジタルの学習ツールも準備しているところになってきています。
次をお願いいたします。
ここは「施策の全体像」になります。階層別もやっておりますし、選択型、あるいは自己啓発というふうなところもやっておりますが、大体の規模感をここで御紹介したいと思います。年間ですけれども、1万人くらいの社員がこの中のどれかのoff-JTに参加をしている状況でして、研修費用になりますが、1人当たり年間13万円前後、時間にすると40時間、こういったところをこれらの研修のプログラムの中で当てているところです。
次をお願いします。
ここから少し、ダイバーシティーのことに関しても触れておきたいと思います。人材育成の中でも大きいテーマの一つというところになろうかと思います。ここでお示ししておりますのは、NTTグループ全体での目標の数字になります。女性の役員の比率として11%、女性の管理職としては7.3%で、この7.3%をさらに上げていくためにということですけれども、新任の女性の管理職の比率を上げていこうということで、今は12%ですが、これを2021年度ですから今年度、今ということになりますけれども、30%までにしたいというふうにしています。新卒で採用するときに約3割、30%は女性というふうに採用活動をやっていますので、新任の課長の段階でもそのような数字をというふうなことでやっております。
あとは、その隣に外部人材の比率というふうに書いてありますが、これは新卒ではなく中途の採用の比率ですけれども、今27%まできています。2023年3割という目標を掲げていますけれども、大体今3割は外部の人材でやっているということになります。
次をお願いいたします。
女性のキャリア開発、女性の管理職、特に課長の比率が低いというふうに御説明しましたけれども、階層に分けまして、それぞれその階層に該当する社員の動機づけ、あるいはキャリア開発のための研修プログラムと、またはそこに該当する社員たちが後輩の育成、Give Back活動というふうに私たちは呼んでいますけれども、その両方の活動を回すことによって本人たちの自己啓発にとどまらず、一つのパイプラインとして役員、組織長から一般社員のところにまで育成の裾野を広げていくということを目指してずっとやっているものになります。
最後のページになりますが、LGBTQに関しても御紹介をしておきたいと思います。2018年ですから、もう3年程度になりますか、NTTグループ全体の社員に対して配偶者の性別を問わないということで、配偶者と同等の関係にあるというふうなことですと、そのまま性別を問わずパートナーとして認定し、給与を含む福利厚生、海外勤務、こういったもののルールを適用していくというふうに変わりました。いろんな方が働くに当たって、こういったところの差がないようにというふうにして取り組んでやってきているところです。
一つの会社の事例ということの御紹介になりますが、大きいイノベーションを一企業の中で起こしていくに当たって、人材育成の仕組みと制度の仕組みを変えていこうとしているということの御紹介になりました。
どうもありがとうございます。
○守島部会長 川﨑委員、どうもありがとうございました。
それでは、皆さん方の質疑応答と自由討議に入りたいと思います。山田委員、川﨑委員からの御説明、もしくは事務局からの今後の方向性等についての説明もありましたけれども、それらを総合して御質問、御意見のある方はどうぞ、挙手をお願いいたしたいと思います。
では、古賀委員が手を挙げていらっしゃいますね。古賀委員は途中退席ということなので、早い時間にどうぞ。
○古賀委員 どうもありがとうございます。どうしても後の日程がありまして、途中退席をいたします。
山田さん、そして川﨑さん、貴重な御報告をありがとうございました。大変勉強になりました。私は、今後の進め方についての関連を幾つか御意見、要望を申し上げたいと思います。
まず、提案の中にもあるように技術革新、デジタル化、あるいはカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーと、これからの社会構造とか産業構造などをどう中長期的に展望していくのかということが労働政策についても極めて重要な課題になると思います。もちろん100%明確にすることはできませんけれども、これらのことについてやはり部会として一定の共通認識を持って議論を進めることが重要ではないか。これがまず第1点でございます。
2点目は、山田さんの報告の中にもありました労働移動の問題ですね。私は、労働移動がないから産業構造の改革が進まないとは思っていなくて、成長分野が出てこず産業構造が変化しないから労働移動が起きないと思っています。
それは置いておきまして、社会構造とか産業構造の変化の中では労働移動は必ずおこるわけですけれども、先ほど山田さんから御指摘のありましたパート、有期、派遣などの非正規労働者や中小企業の労働者も含めた能力開発ですね。能力開発のみならず、例えば社会保険の問題とか、最低賃金の問題とか、もっと言えば社会制度、社会保障みたいなことも関わってくるかも分からない。そういう重層的な雇用対策とか社会的セーフティーネットの整備と一体的に取り組む必要がある。この辺りを総合的に議論していくことが非常に重要ではないかと思います。
3点目は、前回のこの部会の中でも発言をいたしましたけれども、社会対話ですね。私は、取り分け地域における対話のさらなる深化が重要ではないかと思っています。前回の部会では、在籍型出向の検討協議会というものを一例に発言をしましたけれども、アドホック的なものだけではなくて、中長期的な社会対話と合意形成の場として、この地域の社会対話をどういうふうに深化させていけばいいのか、枠組みの在り方、実際に進める上での方策、あるいは関連者の意識の醸成、こんな取組なども本部会で検討を深めてみるのも一つの手ではないかと思っております。
また脇道にそれますが、コロナ禍で進展した在籍型出向については、私は一定の効果があったと思います。厚労省でこの政策評価をどのように考えておられるのか。今の時点でまだ無理であれば、後日で結構ですから評価の総括も聞かせていただければありがたいと思います。
最後になりましたけれども、近年の日本の社会経済の最大の課題は人的投資も含めた明日への投資が全く停滞していることではないかと思っています。とりわけ、もう付加価値を生む源泉というのは設備、土地などから人の知識とか知恵とかノウハウに移っているわけです。そういう意味では人への投資、人的投資というものをどういうふうに好循環させるのか。これは日本社会全体にとっても重要なことであり、雇用労働者であり、加えて言えば、ほとんどの人が働くことを通じて社会に参画をしている。人的投資をどうしていくのか。これこそが、私はこの部会でも議論をすべき中長期的な課題ではないかと思っているところでございます。
以上、少し偏った意見にもなったかとは思いますけれども、私の意見とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 古賀委員、どうもありがとうございました。
それでは、ほかにどなたか御意見ございましたら。
春川委員が手を挙げていらっしゃいますので、どうぞ御発言ください。
○春川委員 御指名ありがとうございます。私からも、今後の進め方(案)ということで、それぞれのテーマをお示しいただいている中で1点、意見提起をさせていただきます。
やはりこのような労働政策の課題を様々に論じていく中では、就業能力の開発、能力開発の観点というものは本当に欠かすことのできない論点だと捉えております。昨年12月に取りまとめられた人材開発分科会の報告の中では、外部労働市場及び内部労働市場の双方の関係者の協業による学びの好循環といったものが示されていまして、長期的な雇用の安定につながる方向性といったものがその報告の中にもございました。能力開発といった観点は、まさに労働政策を論じていく中では必要不可欠だということをまず意見提起させていただきます。
特に、現在不足されていると言われているデジタル人材といったところに関しましては、ますますこれからDXが加速化していくという中では、デジタル産業、IT産業といった特定の分野にとどまらず、あらゆる産業の中でDXというものが進んでいくということが想定されております。デジタル人材は、特定の産業だけということではなくて、あらゆる産業において必要とされる人材というところで、このような専門人材を労働移動で補填を図るということではなく、各企業、各産業の中でもデジタル人材の育成をしていくといったようなことは視点の中に含めていく必要があるのではなかろうかと考えておりますので、この点も意見として付言させていただきます。
私からは、以上です。
○守島部会長 どうもありがとうございました。
では、ほかに冨山委員が手を挙げていらっしゃいます。どうぞ。
○冨山委員 どうもありがとうございます。冨山です。
皆さんの意見とほぼ同じなのですけれども、この直前に実は今、別の会議をやっていまして、そこでいわゆる人的資本への投資の議論ですね。新しい資本主義という脈絡での議論をちょうどしていました。
それで、人材版伊藤レポートというのが一昨年出ていて、日本企業は実は人材投資を国際的に見ると欧米よりもしてこなかったという定量データ、あるいはエンゲージメントが低いというデータがあって、これはある意味、裏返して言うと、皆さんから御指摘があったように、閉鎖的労働市場を前提とすると、当然のことながら企業固有のスキルに対してはOJTで動機づけは働くけれども、企業横断的なスキルにOJTで投資をするインセンティブは本来働かないわけです。
そういった意味合いでいうと、今のようなイノベーションの時代になって、さっき古賀さんが言われたように、新しい産業に人が移動しなければいけないときにこの仕組みというのはやはり合っていないし、実はそこですごく投資をしてこなかったということが明らかになっているわけです。
ですから、その脈絡においては、要は企業の枠を超えた労働市場のセーフティーネットなりシステムを整備し、その中でどれだけ人材というものに投資をしていくのか、あるいはその権利、利益を守っていくのかというのは今、問われている基本テーマだと私は思っているので、そこは日本の産業構造のかなり根幹的なところの転換に労働市場改革があるということなので、これはかなり腰を据えて、やはりこういう話というのは急には変えられませんから、長期的に取り組む必要があると思います。
それから、これは企業の側の問題かもしれないのですけれども、人材というのは日本はこれから人が減っていくわけです。一方で、設備から人的資本というものを軸にした経済成長モデルにはますますなっていくわけです。そうすると、ある種、人材というのは一番貴重な公共財でもある。まさに社会的共通資本の最たるものは人材ということになりますから、それをどういうふうに社会全体で育んでいくかという視点で、企業経営者もそこはある種の割り切りを持って取り組んでいかないと、けつの穴の小さいことを言うことになってしまうので、そういった議論が今後大事になっていくということを改めて皆様の御意見を伺っていて思いました。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか御意見ございますでしょうか。
では、岡本さんよろしくお願いします。
○岡本委員 岡本です。よろしくお願いします。
前回も発言しましたが、クラウドワーカー、ギグワーカーなどの働き方についてちょっとしつこいようですが、発言させていただきます。
昨日の朝日新聞でも大きく取り上げられていましたが、欧州委員会が2021年12月にギグワーカーの権利保護に関する法案を公表しました。雇用類似の働き方の法的保護については、社会的に見ても一定の前進が図られていると思います。
一方、日本国内では曖昧な雇用で働く者への対応については、昨年3月にはフリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが策定されましたが、ガイドラインは従来の考え方をまとめたものにとどまっています。
また、いわゆるフリーランス新法の動きや労災保険特別加入制度の対象業務を拡大するなど、取組が行われているものの、労働関係法令では対象とならない就業者の保護というのは喫緊の課題ではないかと思います。社会の実態や、就業形態の多様化などを踏まえた労働者概念の早急な見直しと拡充が必要ではないでしょうか。世界の潮流も踏まえつつ、社会保障の分野も含め、厚生労働省の専門部会で検討を進めるべきだと思います。
川﨑委員への質問も、併せてよろしいでしょうか。
○守島部会長 どうぞ。
○岡本委員 ありがとうございました。
大変興味深い御報告で、私も現役であれば参考にさせていただいて経営に要求したいと思える制度が幾つもありました。
幾つか質問をさせていただきたいのですけれども、1点目は自律的なキャリア開発について資料が書かれています。それで、先ほどの報告でも1万人以上の方でしょうか。研修を受けていらっしゃるということで、それなりに時間も大変かけていらっしゃるというふうに伺いました。それで、個人のキャリア開発を促すために研修メニューなどについて労働組合と協議したりするなど、労使が協働して取り組んでいることなどがあれば伺いたいと思います。
2点目は、先ほど山田委員より、OJTに依存しない人材育成の仕組みが必要との指摘がありました。自社内にとどまらない人材育成や外部人材と協業するため、政策的にどのような人材の育成システム、学びのシステムがあればよいと思うか、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
併せて、社員のPDCAサイクルにある成長を客観的、主観的に実感するため、どのような取組や工夫をドコモグループにおいてされているのか、好事例があればお聞かせください。
最後なのですが、女性のキャリア支援についてです。多くの企業で女性のキャリア支援をしていると思います。私も現役時代にはいろいろと取り組んできたのですけれども、このときに男性への働きかけをどうしたものか、悩みました。支援策に、総論賛成でも、いざ具体的な人事として見えてくると、男性陣から逆差別だという不満の声が寄せられます。
一方で、女性の側も管理職を増やすための数合わせだったのではないかというふうに悩む方もいます。こうした声にどのように対応すればよいのか。特に男性へのアプローチで具体的な施策があれば伺いたいと思います。
何点もあって申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。
川﨑委員、お答えになりますか。
○川﨑委員 分かりました。御質問どうもありがとうございます。順番にお答えできればと思います。
まず自律的なキャリア開発に関して、労使とどういうコミュニケーションを取っているか、どう協調しているのかという御質問がありました。こちらに関しては、労働組合とも、特に人材に関わるところで、ここは育成にとどまらず処遇も含めて常に議論をしているという状況でして、どういうプログラムでやっていくのかということに関しても労使でコミュニケーションを取っています。そちらに関しては、いろんなレイヤーでの組合ともコミュニケーションを取っているという形です。
また、社員の成長実感をどういうふうに伝えていくのかというところがありますが、社員とその社員の上司と年に定期的に業績の確認、目標の設定ということをコミュニケーションするようにしています。それで、目標の設定のときに併せてどういうところを伸ばしていきたいのかということをコミュニケーションするようにしておりまして、そのコミュニケーションした内容について上司は育成をした中身とどうコミュニケーションしたのかを人事の記録として残さなければいけないということをシステム的に担保することによって、実際にそれがなされていくということを担保しようとしています。
さはさりながら、全ての上司と部下がきちんとそのコミュニケーションが取れているのかというと、なかなかそうでもない場合もありますので、そこに関しては上司の360度調査の中で社員の育成について熱心かどうかというところも一つのチェック項目として確認できるような仕組みを取っているというところです。
あとは、女性のキャリアの支援のところに関して男性へのアプローチはどうなのか、男性の理解をどう取っていくのかという御質問だったかと思います。女性のキャリア開発ということで、女性というふうにしてしまうと男性対女性というふうになりがちですけれども、ここは多様な人材の働きやすさ、ダイバーシティーの必要性というところを経営課題に据えて、どう必要なのかということを管理職も含めて社員全体に腹落ちさせていく。企業の風土として担保していくことが必要なのではないかと思っています。
男女ともに能力のある人たちが、いかに実際にその業績に結びつけた活動を取れていけるのかということは会社の業績を考えても非常に必要なことで、特定の性別が働きにくい、あるいは活躍しにくい企業風土を持っているということ自体が非常に旧来型の働き方、旧来型のカルチャーだと考えていまして、それをどう払拭するのかという話になろうかと思います。
それで、なかなか女性が管理職になりたがらないという声もないわけではないですけれども、実際に細かく見ていきますと、入社して3年目までにどれだけ育成の投資をしていくのか、育成に対しての動機づけをしていくのか、管理職としての働き方の魅力をちゃんと伝えていけるのかというふうなことが、後々の成長にも影響しているということもデータとして分かってきています。そういったものを一つ一つ解決していくことによって、男女問わない活躍できる環境をつくり、その結果として従来以上に女性の、より上位職への任用が進んでいくということになるのではないかと考えているところです。
私からの回答は、以上になります。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、続きまして佐々木委員が手を挙げていらっしゃいます。
○佐々木委員 ありがとうございます。
川﨑さんには私も別途伺いたいことがあるのですが、今日はここではこの会議のお話、これからの論点のところにちょっと集中していきたいと思うのですけれども、私のほうからは論点としては大きく分けて2つ議論ができたらいいなと思いました。
1つは、働き方がこれだけフレキシブルになった。コロナになって、あんなに大手の企業が拒んでいた在宅勤務がこれだけ普及して、そして東京でなくても住む場所も選べたり、様々なことが起きてきたという、この大きな2年間の変化をベースに雇用のルール、様々な雇用に関する私たちの慣習もありますし、そもそも様々な日本国での労働基準法をはじめとしたいろんな法律があるので、可能なのであればそういったところの不具合ですね。このルールがあるがために、本当はもっとこういうふうにしたいんだけれども、なかなか従業員の言うことを聞いてあげられないとか、そういう制限が出てきているところもあるだろうと思いまして、少し法律上の点検と今のライフスタイル、これからのライフスタイル、働き方との不具合というものを研究してリストアップするとか、議論をするとか、事例に触れていくというような研究、勉強がこの部会でできたらいいなということが1点です。
それからもう一つが、スキルマトリックスの考え方かなと思っています。先ほどのお二人の発表の中にもコンピテンシーとスキルのところがありましたけれども、今、CGコードの改定などで社外取締役に私も含めてスキルマトリックスが出てきて、まあまあちょっといいかげんだなと思いながら、役員の名前とスキルマトリックスで、大体みんな3個ずつになるようにバランスをやって、こちらが多いからこちらでいいですかねというような企業のお話もありながら、今どの企業も社外取に関してはスキルマトリックスを埋めていっているわけですけれども、私はもうそろそろ全従業員というか、社会人が自分の新しい時代でのスキルマトリックスみたいなものを厚労省のこの部会からお示しできるような基本案があるといいのではないかと思っているのです。
今までであると、履歴書に何とか中学校、高校、大学を出てどうした、こうしたと、こうなるといろんな事件もありますけれども、何とか大学を出た人がいいとか、悪いとか、そこでその人を見るようになるわけですが、当然学歴ではなくて学力というのは必要なものだと思いますけれども、私たちが社会で働いていくときにどういったコンピテンシーやスキルがあったらよいのかということが、もっと若いときのエデュケーションから含めて、あるいは就職課の方も含めて、それから転職のアドバイザーの方も含めて、みんながまあまあ共通となるような基本の社会人のスキルマトリックスがベースのものをお示しできたら、それが絶対でもないですし、完璧でもないですし、最終版でもないと思いますが、そんなことができて、そしてなおかつその育成にはこういうような学びの仕方があるんだということまでお示しできるようなことになれば、横断的な労働移動も含めて、あるいは自分のいわゆる本当の意味でのキャリアアップだったり、人生の選び方や、住むところや、働く分野の選び方、学び方というところに役立つのかなと思うので、この次のテーマというところでは1つは働き方や雇用のルールが時代に合っていないのではないかということの点検、もう一つは一般社会人全員の必要な、スキルマトリックスという言葉がいいかどうか分かりませんが、そういったもののリスト出しとその育成方法、学び方法みたいなものが整理できてお示しできたら、いろいろな省庁も、あるいは企業も、個人も、この基本部会でアウトプットしたものが使われやすいのではないかと思った次第です。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、続いて武田委員お願いいたします。
○武田委員 ありがとうございます。
本日は、山田委員と川﨑委員にすばらしい発表をいただきまして本当にありがとうございます。まずはお礼を申し上げます。
その上で、お二人の発表も踏まえて、改めて今後の進め方に関し意見を3点申し上げます。
1点目は、最初に古賀委員もおっしゃられたように、私もDXやカーボンニュートラルの進展に当たり、どのくらい大きく変化しなければいけないのか、正解というのはなかなか難しいと思うのですけれども、労働市場、雇用の面から、どのような変化が起きようとしているか、いい意味での危機感を共有していかなければならないと思います。どこかで議論ができればと思います。
2点目は、人的投資の必要性です。先ほど冨山委員の御発言にありました伊藤レポートの件、私も経産省の本レポートを提言した委員会に参加していまして、経営戦略と人材戦略の関係を重視する必要があります。そもそも企業に人材戦略がなかったという言い方ができるのかもしれませんけれども、経営戦略と人材戦略が一体になっていなかったことが問題です。古賀委員は人的投資と表現されましたけれども、これは無形資産への投資です。ハードの設備に依存した社会から、既に起きているように、DXが進み知で勝負していかなければいけない社会にシフトするもとでは、創造的人材を育成し、社会で生かしていくことが重要と思います。
以前に基本部会では、2軸4象限の分析を御紹介したことがございますが、主に創造的、定型的なタスクに従事する方の割合を改めて申し上げると、我々の分析では日本は2割対8割になっています。もちろんこれは様々な前提を置いた手法によるため多少幅を持って見ていただきたいのですが、同じ前提に基づいて欧米の分析をしますと、創造的が3、4割で、定型的タスクの比率は日本より少ない結果になります。
では、どうしてそうなったのか。働く側に何か問題があったというよりも、産業構造が大きく変化しない中では確実に同じことを定型的にしっかりできる労働者が求められていたわけで、山田委員がおっしゃった品質を重視する雇用が中心だったことと同じであると思います。結果的に表現を他の委員と揃えると革新型、新しい産業が生まれないので革新型人材を育てないでよかったのですが、結果として、革新型人材を育てなかったゆえに革新的な産業も生まれてこなかった。鶏と卵と思います。
ここをどうやったら変えられるか。人的投資の議論をするのは大賛成ですが、人的投資の方向性をしっかり見定めて、経営戦略と人材戦略の在り方、そして人材戦略の中でも革新型の人的投資、無形資産投資を企業がどうしたら進めるのか、しっかり方向性を持って議論できたら良いと思います。
最後に、山田委員が32ページでご説明された点に関してです。企業と従業員の改善を両立させる重要な鍵は「変化を前向きに捉える労働者」というのは、確かにそうだと思いますが、もし山田委員から御意見がございましたら後ほど回答いただきたいのですが、これを実現していくために何をしたらいいのか。それには、先ほども申し上げたように、企業戦略と人材戦略をセットで議論していかなければいけないということに加え、本日はあまり話題には出ておりませんけれども、エンゲージメントをどう高めていけるかも重要になってくるのではないかと思います。
個社でできることは限られると思いますので、労働市場の流動化を通じて、よい意味で他の分野にも挑戦する風土、仕組み、制度をどうつくっていけるかも大切です。つまり、労働移動に中立な制度へと、慣習や制度を見直していくべきではないかとは思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、続きまして中野委員お願いいたします。
○中野委員 ありがとうございます。
今日お話をいただいたお二人の委員への質問をさせていただいても大丈夫ですか。
○守島部会長 どうぞ。
○中野委員 山田委員と川﨑委員からは、興味深いお話をどうもありがとうございました。
まず山田委員にお伺いしたいのは、資料の30ページでOECDによる労使関係システムの分類について御紹介をいただいているのですけれども、労使関係が集権型か、分権型かというのは組合組織率の高低による分類だと理解したのですけれども、協約の全体調整というのが具体的にどのようなことを意味するのか、もしよろしければ補足をお願いしたいと思います。
また、聞き逃していたら申し訳ないのですけれども、この分類だと日本は組織率が低いので分権型になり、かつ、協約の全体調整も行われていないシステムに分類されるというふうに理解してよいのかというのが山田委員への質問になります。
続けて川﨑委員にお伺いしたいのですけれども、川﨑委員の資料のたしか7ページのところで、リモートワークの拡大により育児休業からの復帰時にフルタイム勤務を選ぶ女性社員が増えたというお話があったかと思います。これは、リモートワークを利用することで育児との両立がしやすいということが理由かと思われるのですけれども、このことは結局、女性が在宅で働くとともに、育児の主たる部分を担っているということが背景にあるのではないかと思われます。
それで、山田委員の御報告の資料の4ページにもあったように、男女の性別役割分業が依然として根強い日本において、女性が例えば管理職を目指そうとするときに、家事、育児の負担が従来と変わらないのであれば、男性労働者と同じような形で管理職を目指すことはできません。
しかし、これはいわば各家庭の中での在り方、あるいは社会全体の在り方の問題でもあって、一つの企業の中だけで解決ができることではないとも言えます。
先ほど岡本委員からの御質問に対する回答の中で、ドコモの社内で性別にかかわらず働きやすい環境づくりを進めているというお話があったのですけれども、幾らそのような改革を一つの企業の中で進めても、結局それを利用するのが女性労働者のみになってしまう。つまり、そのパートナーの働き方が変わらなければ、女性労働者だけがそういう仕組みを利用するということになってしまうのではないかということをちょっと懸念します。
それで、女性のキャリア開発を進めるための取組としては、資料の15ページでも御紹介があったのですけれども、漠然とした質問になるのですが、具体的にどのような取組をしているのかということをもう少しお聞かせいただければと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、山田委員からお答えください。
○山田委員 御質問ありがとうございます。
30ページのOECDの分類ですね。この詳細はレポートが公開されていますので後で御確認いただければ細かいところが載っていると思いますけれども、例えば日本に関してはここで言うと調整がなくて分権化されているというふうに分類されています。特に労働条件のところの調整がどうされているかということですから、日本の場合は春闘はあるんですけれども、昔はある程度横並びだったかもしれませんが、今はほとんどそれぞれの連関がなくなってきていますから、それは実はパフォーマンスはあまりよくないパターンになっているんです。
ところが、例えばさっき言いましたように、集権化されている事例で具体的に挙がっているのはベルギーとフィンランドですね。私もこの部分の具体的な細かいところは知らないんですけれども、多分、中央労使でかなり全体の枠を決めて、賃金でも一定の枠で決めていくという集権的になっているということだと思います。
それに対して、例えばスウェーデンなどは分権ですね。全部セクターごとにやるんですけれども、スウェーデンの場合は実はパターンセクターみたいなところがあって、ここが事実上の全体の方向性を決めるんです。そこをまさにベンチマークにしながらほかのところが決まる。
だから、国によって様々なやり方があると思うんですけれども、要は、形はセクター別の労使で決めるが、全体の調整をするような仕組みというのが存在している。それで、具体的に言うとスウェーデンとか、あとはデンマーク、ドイツも入っています。それから、ネイザーランド、オランダも入っています。オランダは政労使の合意というのは有名ですけれども、結構中央でいろんな調整をしているということだと思うのですが、イメージはそんなところです。もうちょっと詳しいのはホームページで取れますので御確認いただければと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、川﨑委員どうぞ。
○川﨑委員 では、まず1点目のところから御説明をしたいと思います。
男女別の役割分担意識に関しては、一企業だけで日本のそういったものに関して解決できるというものではないと思います。ここは企業に入る前から、学生時代から、あるいは家庭の中で培われたものをどうやって払拭していくのかというのは日本の社会全体で問われているものなのではないか。それがあるがゆえに少子化というところも進んでいる背景もあろうかと思いますし、国を挙げてやっていかなければならないところではないかと思うところではあります。
それで、先ほどリモートワークが増えることによって短時間勤務ではなくてフルタイムで戻ることができるようになってきているということ自体が、育児をずっと女性が担い続けることにリンクしていくのではないかというコメントだったかと思いますが、この短時間勤務ですが、今、産休の後の育児休職に関しては男性も取りましょうということで、男性社員も100%を目標にしてやっています。それで、男性の妻に子供が生まれますというふうな情報が入りますと、人事のほうから、その男性とその男性の上司に育児に参画していきましょうというふうな働きかけを企業としてはやっています。
そういうこともあって、育児休職を取る社員もぽつぽつ出てきていますし、子供が小さいときに下の子供が生まれたタイミングである程度の休暇を取るような男性社員も増えてきているという現状になっています。
今のところ、育児に絡んで男性が休職ないし休暇を取っている割合は、日数はいろいろありますけれども、今は8割くらいまできている状況になってきています。
ただ、通勤時間がなくなる、あるいはコアタイムがなくなることによって、育児と両立しやすいということ自体は女性にとどまらず男性にとっても、お父さん、お母さん、どちらにとってもそれは働きやすいやり方だと思っていますし、特に男性のほうも従来よりも子育てに関わってきている人たちは増えてきているかと思います。
いずれにしても、これは一企業だけのものでなくて、それこそこういった審議会、基本部会などの検討の場の中でも、社会全体の課題としても男女別の役割分担意識をどう払拭していくのかといったようなところも今後の議論の中の一つとして取り上げていただけるとありがたいかと思います。
2点目は、具体的な女性のキャリア開発の育成の中身についての御質問だったかと思います。
まず、組織長クラスに関してはグループ横断的な大学をつくろうという動きになっていまして、そういった企業内研修施設というところでトップの育成をしていく。そこに女性を所定の割合を含めてやっていくということを今、決めています。また、これまで役員によるメンタリングというふうな形も明確にすることによって、特に課長層に対して同じNTTグループの中の副社長レベルがメンタリングしていくということで、トップとしての目線を浴びていく、あるいはトップとしてのリーダーシップ、人となりはどういうものかということを知ってもらうことによって、よりトップを身近に感じることでチャレンジしやすいものもつくっていくということをやっています。
あわせて、そういったメンタリングで研修を受けた社員が今度は、より若い社員たちに対して座談会等を通して本人たちへの動機づけやリーダーシップの説明をしていくといったようなこともやっています。
私からは、以上になります。大丈夫でしょうか。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、最後というか、お待たせしました、山川委員お願いいたします。
○山川委員 すみません。こういうことを言うと感じが悪過ぎて最後まで待ったのですけれども、この全体的な議論の中で日本の解雇規制はこのままでいいのかという問題を丸ごと無視してしまっていいのかというのがすごく疑問で、私は解雇規制を緩めろということではないんだけれども、もうちょっとちゃんとしたほうがいいということです。
どういうことかというと、これは今、議論になっている自律的な働き方、雇用の流動性、成長分野への人材の移動と、すごく両輪をなすことだと思うんです。
例えば、個人レベルで言っても、ここの新しい会社でキャリアアップしたいと思っても、そこの会社は本当にやる気のある人が欲しいんだけれども、ちょっと上のほうで腰かけみたいな人がいて、その人を辞めさせられないから新しい人が採れない。これは小さい問題です。大きな問題としては、例えば成長分野に行きたいんだけれども、整理解雇ができないから機動的な企業運営ができないというところが実際問題として全く影響がないわけではないし、そこを丸ごと無視するとなかなかうまくいかないのかなと思います。
すごく分かりやすいのが私は整理解雇だと思っていて、もちろん今の日本の多くの整理解雇が別に裁判所で争われていなくて事実上うまくいっているのは分かっていますけれども、でも裁判所に行けばそれこそ赤字部門で2、3年くらい赤字じゃないと整理解雇というのはできないですね。でも、2、3年くらい赤字を出さないと事業を閉じられないというのは今の競争社会の中では本当にあり得ない話で、当然それは整理解雇できてしかるべきだと思うんです。
でも、整理解雇するのであれば、当然そこには労使の対話という手続保障も必要ですし、当然金銭補償も必要ですね。でも、そこを担保する制度というのは今の日本法は全くなくて、日本の労働者というのはすごく保護されているというんだけれども、それは整理解雇が不当だと言って2年も3年も裁判所で訴えて戦って、復職しましたというのが果たして保護なのか。
そうすると、やはりこういう整理解雇であったり、それこそ能力不足でも解雇があり得るよねということは大前提にした上で、それをきちんとやるための手続保障、金銭補償、そういったことも一緒に考えていかないと、何となく流動性が高まれば解雇規制も何とかなるかなと考えたいところではあるけれども、エグジットを考えないでエントリーだけ考えてもやはりすごくバランスを失するので、なかなか言いにくいことではあるんだけれども、そこを丸ごと無視するのもすごく私としては不自然的かなと思うので、最後に勇気を持って発言させていただきました。
○守島部会長 ありがとうございます。
冨山委員が大分、大きな手を挙げていらっしゃいますのでどうぞ。
○冨山委員 最後にそれを言おうと思っていたら先に山川さんに言われてしまったのですけれども、産業構造が変わっていくときには、いや応なしに必然的に産業がなくなる企業の退出が起きるんです。
それで、私は日本の社会は過剰に企業内共助に依存し過ぎてきたと思っていて、この国はあらゆる社会システムが企業内共助型になっているんです。それは少なくとも高度成長期で、産業構造が今ほど激変しなかった時代には物すごくよく機能したし、それは成長にも貢献したし、人々の幸せにも貢献したのですが、少なくとも90年代以降、これだけの勢いで産業構造が世界的に変わり始めた。
それから、ここへきてGXも起きていますから、この後、ますます自動車産業もかなり破壊的なイノベーションに対峙するんですね。そこで、今の形で企業内共助、専らそれ一本足打法でやっていると、恐らくさっき山川先生が言われたような不幸なことがあちこちで起きます。私はそれと一番対峙してきたタイプの仕事をしてきたので、多分一番たくさんこの手である種のリストラといいましょうか、労働移動をやってきた立場なので、毎回、毎回思いましたが、今の形というのは決して労働者も思っていないです。
それで、結果的に何が起きるかというと、本当に何年も何年も赤字を垂れ流して倒産寸前、あるいは事業が廃業寸前で、仕方ないから事業撤退をやるんです。そこで、とにかく仕方ないからお金があれば退職金を上乗せして辞めてくださいということが始まる。だから、実は非自発的労働移動はもう既に起きているわけです。
そのときに、先生が言われたようにちゃんとした手続がないんです。特に中堅中小企業になってしまうと事実上、労働組合とかはないので、2年、3年、絶対訴訟なんか戦えないから、実際問題としては労働審判か何かに駆け込んで30万か40万くらいもらっておしまいですよ。
こんなことをやっている先進国は、はっきり言って日本だけです。もちろんアメリカ型は全く解雇自由の仕組みだとは私も決して言いません。でも、ヨーロッパは明らかに少なくとも企業間労働移動が起きる、非自発的失業が起きる前提で労働者を守るという仕組みは完備しているわけで、そういう意味で不当解雇に関して金銭解決、あるいは金銭救済の仕組みはちゃんとあるんです。
ここはやはりさすがに整備しないと、結局、企業内共助に過度に依存していると会社を潰せないんです。だから、仕方ないから今回のコロナもそうだし、前のリーマンショックもそうだけれども、めちゃくちゃに国が金を出して会社、ゾンビ企業を守るんですね。とにかくすごい勢いで助成金などを出して会社を守るんです。この国は、むしろ古い産業構造をこういった金で固定化しちゃうんです。
その結果として何が起きたかといったら、長年にわたる賃金の低下です。だから、やはり産業構造の新陳代謝、あるいは企業の新陳代謝というのはもうあるんだ。新陳代謝を前提として、どうやったら包摂的に働く人たちを守るような仕組みをつくるかということを真面目に議論すべきで、私はこの論点を外してしまったら正直言って一番本質的な問題から逃げることになると思っています。
ですから、今日のお二方の話の裏側ですよね。表、裏の関係に立つので、最後の山川先生の問題提起は200%大賛成で、やはりこれからこの問題から逃げずに議論して、初めて真の意味で前向きに働いている人の幸福は実現できるような流動的な労働市場になるので、私はそこは絶対逃げるべきではないと思いますし、とにかく何度も申し上げますけれども、やはり非自発的な労働移動が起きるときにどうやって本当に労働者を守るのかということはこの国の大きな穴です。だから、私は全面的にこの問題に対峙するというのはこの基本部会の使命だと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか御発言されたい方はいらっしゃいますか。
私からも一言よろしいですか。この【小テーマ案】というところのマル1で「変化に対応するために労使に求められる対応」となっているんですけれども、今の皆さん方のお話を伺っていると、労使という言葉を使ってしまうと結構、労使関係的な中で労使に求められることとなってしまうのですけれども、そうではなくてやはり労と使それぞれがやるべきこと、武田委員が言われた人材戦略と経営戦略を結びつけていこうよという話も含めて、山田委員が言われた変化を前向きに捉える労働者がこれからは必要なんだよということも含めて、労がやるべきこと、使がやるべきこと辺りを分割して考えていかないと、今は労使関係というコンテクストの中だけで多分この問題というのは議論できない時代に入ってきたように私は思うんです。ですから、労・使くらいがいいかと思います。
さらに、皆さん方のお話を伺っていると、やはり政府がやるべきことも変わっていかないと、今の解雇規制の問題も含めて、政がやるべきこともできればこの場で議論をしていきたいと思っています。
ですから、全体感で言うと、確かに2つ目の●にも労使コミュニケーションという言葉は入っていますけれども、そうではなくて労がやるべきこと、使がやるべきこと、あとは政府がやるべきことというようなことで、少し議論が拡散してしまうかもしれませんけれども、そういう議論をやはりしていかないと、なかなかこれからのいろんな意味での日本が抱えている閉塞感であるとか、新しい産業が生まれないとか、そこに人材移動が起こっていかないというのは、結局解決ができないかなり難しい問題になるように思います。
せっかく第1回ですので、労使関係の中でできることというフレームワークを一旦外して、もうちょっと大きな視点からそれぞれのパーティーが何をできるか、何をするべきかという議論ができれば、そのときに何度も言いますけれども、政府が何をやるかというところですね。それは今お話のあったような、例えば雇用調整助成金みたいな問題をどういうふうにこれから考えていくのかということも含めて、私は多分皆さん方が提起なさっていることというのはそういう根本的な改革をしていかないと日本の社会はだんだんこれからだめになってしまうよという話だと思います。川﨑委員は非常にすばらしい個別の企業の中の御発表をなさいましたけれども、そういうような発表が日本の国についてできるといいなと皆さん方のお話を伺っていて私は思いました。勝手なことばかり申し上げてすみません。
それでは、ほぼ時間が来ているのですけれども、何か御意見がおありになる方がありましたら、最後にこれだけは言っておきたいということでも、これだけは言っておきたいということが何かありましたらどうでしょうか。大丈夫ですか。
ありがとうございました。そろそろ終了時刻となりますので、非常に活発な議論があって、私も非常に勉強させていただいて、かつわくわくして聞いておりましたけれども、皆さん方の御議論どうもありがとうございました。
当部会で今後検討を深めるテーマについては、本日いただいた御意見を十分に勘案しまして、私と事務局で検討して、また皆様方と御相談の上で決めていければと思っています。
最後に、事務局から次回の日程についてお願いいたします。
○松本政策統括官付参事官 次回の日程については、また追って御連絡申し上げます。ありがとうございました。
○守島部会長 それでは、ちょっと早いのですけれども、以上で本日の労働政策基本部会は終了させていただきたいと思います。御多忙の中、お集まりいただき、かつ活発な御議論をいただいた皆様に感謝して終わりにさせていただければと思います。
どうもありがとうございました。