第7回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年12月16日(木) 10:00~12:00

場所

厚生労働省省議室

議題

  1. (1)これまでの裁量労働制等に係るヒアリング概要について
  2. (2)年次有給休暇の概要及び現状について
  3. (3)これまでの議論を踏まえた主な論点について

議事

議事内容
○荒木座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第7回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
本日の検討会につきましても、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式としております。
なお、本日は藤村委員から御欠席の連絡をいただいております。
オンラインで参加の先生方、音声、画像等は問題ないでしょうか。
(首肯する委員あり)
○荒木座長 ありがとうございます。
それでは、本日の議題に入りますので、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
初めに、これまでのヒアリング概要について、事務局で資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
議題1「これまでの裁量労働制等に係るヒアリング概要について」でございます。
まず、本検討会のこれまでの経緯でございますが、7月26日に第1回、8月31日に第2回を開催いたしました。
その際には、裁量労働制実態調査の調査結果を事務局から御報告し、第2回では東京大学の川口教授からも御報告いただきまして、これらを中心に御議論いただいたということでございます。
その後、第3回以降は、非公開でのヒアリングを実施することといたしました。
当初は企業の人事担当者、労働組合の担当者からのヒアリングを行うこととしておりましたが、この間、座長らと御相談する中で、裁量労働制が適用されている労働者からもヒアリングをすることといたしまして、第3回から第6回まで計4回にわたりヒアリングを行ってまいりました。
その概要をまとめたものが資料1の①から③になります。
資料1の①は、企業からのヒアリング概要でございます。
9月7日の第3回検討会におきまして、A社、B社の2社、11月11日の第5回検討会におきまして、C社、D社の2社の計4社からヒアリングした内容の概要をまとめたものでございます。
内容の説明は省略させていただきますが、電気機械器具製造業やその他金融業といった業種に属する企業の担当者からヒアリングを実施してございます。
資料1の②は、労働組合からのヒアリング概要でございます。
10月15日の第4回検討会におきまして、A、Bの2つの組合からヒアリングを行っております。
A組合につきましては、製造業等の組合が加盟する産別の労働組合となってございます。
また、B組合につきましては、情報通信業に属する企業の労働組合でございます。
資料1の③は、労働者からのヒアリング概要でございます。
11月29日の第6回検討会におきまして、AさんからDさんまでの4名の方にヒアリングを行っております。
Aさんは機械関連製造業で、専門業務型裁量労働制が適用されている方、Bさんは輸送用機械等製造業で、企画業務型裁量労働制が適用されている方、Cさんは化学工業で、専門業務型裁量労働制が適用されている方、Dさんは電気機械器具製造業で、企画業務型裁量労働制が適用されている方です。
これらのヒアリング概要につきましては、本日、第7回検討会資料として、初めて公表するものでございますが、今後、第3回から第6回までの検討会の議事概要といたしまして、厚生労働省のホームページにも掲載することを予定してございます。
説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの資料1関係の説明につきまして、委員の先生方から何か御意見はございますでしょうか。
なお、オンライン参加の先生方は、チャットに「発言希望」とお知らせください。「手を挙げる」機能は使わずに、チャットに書き込んでください。
いかがでしょうか。
では、川田構成員、どうぞ。
○川田構成員 川田でございます。
ありがとうございます。
特に意見ではなく、また、これまでの検討会の中でも、折に触れて各回のまとめの中でお話しさせていただいたことと重複いたしますが、改めて実態を確認したことで、例えば裁量労働制の趣旨の捉え方については、例えば企業ヒアリングなどで、いわゆる成果主義的な働き方との結びつきを強調していた企業がある一方で、お話を伺った限りだと、実労働時間に応じた割増賃金を払うのかどうかという点に意識の重点を置いた制度の設計・運用をされているところもあるなど、幾つかの捉え方があることが確認できたのかなと思います。
そうしたところが、例えばみなし労働時間数の設定の仕方とか、裁量労働制で働く方に対する手当の決め方などにも反映されていたかと思います。
最終的には、恐らく、今日の御議論の中での今後の論点につながっていくのかなと思いますが、一つは、実態として、裁量労働制の趣旨の捉え方にいろいろな点があることは確認できたと思います。
それから、いろいろな点が有意義な点として確認できたかと思うのですが、私なりにここは重要かなと思ったのは、一つは、特に企画業務型の制度の実施要件になっている労使委員会制度の使い方について、ある程度実態が確認できたことで、ここも確認できた実態に即して、検討すべき論点が出てきているのかなと思います。
もう一つは、裁量労働制の下での働き過ぎに対する歯止めをかけるやり方について、多くの企業、労働組合、労働者からお話を聞けたと思っております。
例えば多くのところで一定の基準を設けて、裁量労働制の適用対象から外す仕組みを設けていることがありました。この辺りも、分かった実態を基に、今後の議論の参考になると思います。
最後にもう一点、様々な立場から裁量労働制のメリット・デメリットについてのお話が聞けたところも、私としては参考になったところです。
メリットの点も生かす方向での議論ができると思いますし、とりわけデメリットという形で意見が出てきたところについては、今後の議論の中で対策を考える必要が特に大きいのかなと思っています。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、堤構成員、どうぞお願いいたします。
○堤構成員 ありがとうございます。
今、川田構成員から御発言がありましたが、私は健康管理のほうで同様の感覚を持ちました。
伺った範囲では、時間管理が確実にできていて、それに対してその後の健康確保措置といいますか、そういうものがきちんとできているところは、健康確保措置に関しては非常に安心感を持って伺えた感じがします。
そういった時間管理等を使って予防的に健康管理をしていくことは、長時間労働にならないような仕組みといいますか、そういうものがあると、安心して使える運用が進むのではないかと感想を持ったところでございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑構成員、お願いします。
○小畑構成員 ありがとうございます。
両構成員のお話と重なるところでございますが、裁量労働制の適用を外れるシステムは、非常に興味深くヒアリングの中でも聞きました。
資料1の①でいいますと、3ページになりますが、健康上、問題ありとの指摘や懸念があったら適用を解除するといったことをヒアリングで教えていただきました。
また、資料1の②の1ページでも、定量的な基準をつくりまして、自動的に適用から外すといった措置が取られているものもありました。
資料1の③におきましても、1ページにございますように、好ましくない状態が続いた場合に、適用が除外される運用となっていると指摘されており、同じように2ページでもそうですし、4ページにおきましても、適用除外の申出をして、承認されれば適用除外となる仕組みがあるということがいろいろな企業で行われている点が大変興味深く存じました。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、本日お示ししましたものを議事概要としてホームページに掲載することにさせていただきたいと思います。
次の議題になりますが、年次有給休暇について、事務局で資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
議題2の年次有給休暇につきましては、今後、本検討会で御議論いただきたいと考えておりまして、その前提として制度の概要、現状について御説明させていただくものでございます。
資料2-1をお願いいたします。制度の概要でございます。
まず「趣旨」でございますが、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度でございます。
「参考」で法的性格を書いてございますが、年次有給休暇の権利は、労働者が客観的要件を充足することによって、法律上、当然に発生する権利であり、労働者が年次有給休暇の請求をして初めて生ずるものではないとされてございます。
「要件・効果」でございますが、雇入れの日から起算して6か月継続勤務し、全所定労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、10労働日の年次有給休暇が与えられるということでございます。
その後、継続勤務年数1年ごとに、右の表にございますが、この日数の年次有給休暇が与えられることになってございます。
それから、発生日から起算して2年間の消滅時効に服するということでございます。
「取得単位」でございますが、原則として1日単位としており、これはできるだけまとまった休暇を取っていただくという趣旨でございますので、このようになってございます。
例外といたしまして、半日単位の取得がございます。これは労働者が半日単位での取得を希望して時季を指定し、使用者が同意した場合ということで可能とされております。
それから、時間単位の取得でございまして、労使協定の定めが必要になりますが、労働者が時間単位での取得を請求した場合に、年に5日を限度として可能とされてございます。こちらは平成20年の法改正により導入された仕組みでございます。
続きまして「付与に関するルール」でございます。
まずは付与のタイミングでございますが、原則としては労働者が請求する時季でございまして、それ以外のルールといたしまして、労働者の指定する時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合、使用者に時季変更権が認められる。
それから、労使協定で定めをした場合に、年次有給休暇のうち5日を超える部分については、計画的付与が認められるということで、計画年休という呼び方をしておりますが、こういう仕組みがございます。
2つ目のマルでございますが「年5日の確実な取得(使用者の時季指定義務)」は、平成30年の働き方改革関連法による改正によりまして新設された制度でございまして、平成31年4月から施行されているところでございます。
年次有給休暇が年10日以上付与される、管理監督者を含む労働者に対して、そのうち5日について、使用者が時季を指定して取得させなければならないということでございます。
「不利益取扱いの禁止」についても規定されてございます。
次のページをお願いいたします。
規制改革実施計画ということで、令和元年6月21日に閣議決定されたものでございます。
この中で「年休の取得しやすさ向上に向けた取組」という項目がございまして、その中で年休の時間単位取得について指摘されてございます。
平成20年の法改正から相当程度の期間が経過していることを踏まえ、労働者の年休の時間単位取得について、取得日数など利用の実態を調査する等の現状把握を行った上で、年休の時間単位取得の有効な活用の在り方について検討するとされてございます。
時期としては、令和元年度に調査を開始、調査結果を得次第、検討・結論ということで、検討することが求められているという状況でございます。
続きまして、資料2-2をご説明いたします。
「年次有給休暇の現状について」ということで、データをまとめております。
資料をお開きいただきまして、3ページをお願いいたします。
年次有給休暇の取得状況の年次推移でございまして、厚生労働省の令和3年就労条件総合調査から引用しているものでございます。
近年、取得率については上昇傾向にございまして、平成31年で52.4%、令和2年で56.3%、令和3年で56.6%となってございます。
4ページをお願いいたします。
年次有給休暇の取得状況について、企業規模別・産業別に見たものでございます。
まず、企業規模別に見ていただきますと、労働者1人の平均付与日数、平均取得日数、平均取得率のいずれにつきましても、企業規模が大きくなるにつれて数値が大きくなっている状況でございます。
業種別に見ていただきますと、最も割合が高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」で、平均取得率で見ますと73.3%で、この業種が最も割合が高くなっているということでございます。
次のページ以降は、年次有給休暇の取得に関するアンケート調査ということで、JILPTにお願いいたしまして調査したものでございます。
こちらが先ほど規制改革実施計画に出てまいりました「実態を調査」というところに対応している調査でございます。
6ページをお願いいたします。
この調査でございますが「調査期間」といたしましては、令和2年1月27日から令和2年2月7日でございます。
「有効回収数」といたしましては、企業調査が5,738票、労働者調査が1万5297票です。
次のページ以降は、企業調査と労働者調査にそれぞれ分けて整理してございます。
まずは企業調査の結果概要でございます。
8ページをお願いいたします。
「時間単位年休制度の導入有無」を企業にお尋ねしたものでございます。
左側の「導入している」と回答した企業が22%、「導入していない」と回答した企業が77.8%でございます。
「導入している」と回答した企業に、取得できる時間単位年休の日数、これは実績ではなく、制度上、何日取得できるかということでございますが、「5日」と回答した企業が83.1%と最も割合が高くなってございます。
9ページをお願いいたします。
時間単位年休の導入率について、従業員規模別・業種別に見たものでございます。
左側が従業員規模別に見たものでございますが、いずれの階層におきましても2割前後という状況でございます。
右側は業種別でございますが、ばらつきはございますが、最も割合が高いのは「教育、学習支援業」で、35.8%になってございます。
10ページをお願いいたします。
「時間単位年休の取得状況(実績)」ということで、左側は時間単位年休制度が適用されている労働者の中で、1回でも時間単位年休を取得した方がどれぐらいいらっしゃるかという割合でございますが、「1割程度」と回答した企業が23.7%、「10割」と回答した企業が3%ということでございます。
右側は利用者が取得した時間単位年休の総計で、取得の実績でございます。
最も割合が高いのが「1日分以上~2日分未満」の区分でございまして、27.4%、3日分未満を足し上げますと約70%程度という状況でございます。
11ページをお願いいたします。
時間単位年休の取得限度日数について、増やしたほうがよいかどうかということをお尋ねしたものが左側でございます。
「増やした方がよい」と回答した企業が22.5%、「ちょうどよい」と回答した企業が67.9%でございます。
「増やした方がよい」と回答した企業に「希望する取得限度日数」を尋ねたものが右側でございまして、「6~10日」が34.2%、「年休付与日数の全て」と回答した企業が55.6%となってございます。
12ページをお願いいたします。
時間単位年休の限度日数を増やした方がよいかどうかを従業員規模別・業種別に見たものでございます。
左側は従業員規模別ですが、「1000人以上」規模で8.3%と、割合が相対的に少なくなっています。
右側は業種別に見たものでございます。
こちらもばらつきがありますが、最も割合が高いのは「教育、学習支援業」で36.8%となっています。
13ページをお願いいたします。
「時間単位年休制度を導入していない理由」でございます。
割合の高いものから、左側から3つ順に御紹介いたしますが、「勤怠管理が煩雑になる」と回答した企業が50.3%、「すでに半日単位の年休取得制度がある」が46.8%、「給与計算が複雑になる」が39.3%といった状況でございます。
次のページ以降は、労働者調査の結果概要についてまとめてございます。
15ページをお願いいたします。
「時間単位年休制度の導入・適用状況」ということで、労働者にお尋ねしたものでございます。
制度が「導入されており対象労働者である」と回答した労働者の割合は22.3%となってございます。
この方に、制度上、何日時間単位年休を取得できるかと尋ねたものが右側でございまして、「5日」と回答した労働者が74.6%と最も割合が高くなってございます。
16ページをお願いいたします。
時間単位年休を取得したことがあるかどうかという設問でございます。
「取得したことがある」と回答した労働者が56.7%、「取得したことがない」と回答した労働者が38.9%となってございます。
「取得したことがある」と回答した労働者に対して、その実績を尋ねたものが右側でございまして、最も割合が高いのが「2日分以上~3日分未満」で29.1%となってございます。こちらも3日分未満を足し上げますと、大体7割程度ということでございます。
17ページをお願いいたします。
「時間単位年休の利用用途」でございます。
こちらも左から3つ御紹介いたしますと「自身の病気などの通院」と回答した方が63.7%、「家事・育児・子供の行事参加」と回答した方が32.7%、「銀行や役所等の手続」と回答した方が26.1%となってございます。
18ページをお願いいたします。
労働者に時間単位年休の日数を増やしてほしいかどうかと尋ねたものが左側でございます。
「増やしてほしい」と回答した労働者は18.5%、「ちょうどよい」と回答した方が71.3%となってございます。
「増やしてほしい」と回答した方に、その希望日数を尋ねたものが右側でございまして「年休付与日数の半分程度」と回答した方が40.2%、「年休付与日数のすべて」と回答した方が40%という状況でございます。
19ページをお願いいたします。
「時間単位年休制度が導入されているが対象労働者でない」「制度が導入されていない」「わからない」と回答した労働者が赤枠の部分でございますが、この方に対して制度の導入・適用の希望を尋ねたものが右側でございまして、「導入・適用してほしい」が50.6%、「導入・適用してほしいとは思わない」が46.6%となってございます。
以上のようなデータを基にいたしまして、今後、本検討会におきまして、年次有給休暇制度についても御議論いただいてと考えているところでございます。
説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいま説明がありました資料2-1、資料2-2につきまして、御質問や御意見等があれば、御自由に御発言いただきたいと思います。
川田構成員、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
資料について、1点お伺いしたいことと、若干考えを述べたいと思います。
お伺いしたいことは、資料2-2の3ページで、近年、年次有給休暇の取得率が上がっているというデータが出ているわけですが、何か原因についての分析、特にいわゆる働き方改革関連の法改正で、使用者による時季指定の方式での年休取得の仕組みが入ったことの影響などがあると考えられるのかどうかをお伺いしたいと思います。
資料2-1の関係では、2ページ目を見ますと、年休の時間単位取得の有効な活用の在り方が一つの検討の焦点になるのかなと思っております。
そこのところは、まさに実態調査から把握される現場の企業あるいは労働者の方の制度に対するニーズ、希望等も踏まえて、かつ、年休制度の趣旨も併せて考えながら考えていくのが基本的な枠組みなのかと思っておりますが、一つは、年休取得の単位が、原則労働日単位というか、1日単位とされていることについては、恐らく、そうすることで十分に労働から離れてもらって、例えば休養を取っていただく、あるいは仕事以外のところでの生活を充実させることに年休を使ってもらいたいということがあるのではないかと思います。
一方、今回の調査結果を見ますと、特に上限なく時間単位の年休を取得させてほしいという希望も企業側、労働者側双方に一定程度あるようなので、その辺りを例えば最終的には労使協定の締結等が要件となっていますので、個々の企業の労使双方が関わる判断に委ねることをどこまで考えるのかといったことが基本的な課題になるのかなと思っています。
○荒木座長 ありがとうございました。
小畑構成員、お願いします。
○小畑構成員 ありがとうございます。
小畑でございます。
年次有給休暇の継続勤務要件について申し上げたいと思っております。
年次有給休暇制度の概要の資料2-1の「趣旨・要件等」の2番目の○の「要件・効果」の1行目、①で、雇入れの日から起算して6か月継続勤務をすることが要件となっておりますが、6か月という継続勤務要件につきましては、ほかの国と比べても長いのではないかと思います。
また、6か月年休が取れない、年休を取得するには6か月たたないと駄目だということは、本当にこれでいいのかということについて、やや疑問を持っております。
新入社員の方々にとっては、例えば行き詰まりを感じたときに、ちょっと休める日があることは大事なのではないかと思っていますし、また、お盆に有給休暇で帰省できないことが、6か月の継続勤務要件のせいで現実に起こっているわけでございます。
そして、入社数か月のうちに若い方が過労自殺されたり、過労死してしまうといった状況もあることを考えますと、何らか自分で本当に疲れがたまってしまった場合に、年次有給休暇がもし取得できたならばという考えを持っております。
昔は、新入社員というと、最初はゆっくりと研修するものだといったこともあったかと思いますが、中途採用も増えておりますし、即戦力の中途採用の方は当初から激務をされているかもしれません。また、新入社員といえども、最初から研修もなしに、早速忙しく働くというケースも多くなっているのかと思っております。
そういったこととか、祭礼や行事とかが平日であることもありますし、そういった点では、例えば宗教を大切に考えている労働者などにとっても、6か月は全然年次有給休暇が取れないということでいいのかという点も、これから例えば外国の方が働いている場面で課題になっていく可能性もあるのではないかとも考えております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
6か月勤続要件についてのお話でしたが、出勤率の件は特に問題ないですか。
○小畑構成員 そうですね。出勤率要件と継続勤務要件を比較しますと、継続勤務要件は、ほかの国と比べて日本は特徴的であると思います。
ですから、出勤率要件よりは継続勤務要件の最初の6か月が全然年休が取れない状況をどう考えるべきということを申し述べさせていただきました。
○荒木座長 ありがとうございました。
島貫構成員、どうぞ。
○島貫構成員 ありがとうございます。
先ほど事務局から調査結果の御報告がございました。
その中で、労働者調査のところで利用頻度の回答結果があったかと思います。
拝見しますと、通院あるいは家事・育児の用件といったものが上位に挙げられておりました。そういった用件であれば、通常、フレックスタイム制度などで対応できるようにも思います。
したがいまして、回答されている方が柔軟な労働時間制度の下におられるのであれば、十分にフレックスタイム制度で対応できると思いますし、そういう制度がないのであれば、時間単位での年休は、その人たちにとっては重要な、必要な仕組みなのかなと思います。
今すぐは分からないかもしれませんが、フレックスタイム制度などの柔軟な労働時間制度と回答者の関係を調べていただけるとありがたいと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 ありがとうございます。
川田先生からのご質問に回答させていただきます。
資料2-2の3ページで年次有給休暇の取得状況の資料について、取得率が上がっている要因のご質問がございました。
精緻な調査分析ができているわけではございませんが、その前提で申し上げますと、この図を長期的なスパンで御覧いただきますと、制度改正もございますが、景気動向もそれなりに影響しているかと思っております。
制度改正のファクトとして申し上げれば、昭和62年に、基本的に5日を超える年次有給休暇につきましては、労使協定によりまして計画的付与を取得できる形を導入しておりまして、その後、平成5年には、勤続要件を1年から6か月に変えております。その後、平成10年に勤続年数による付与の増加ペースを増やすという改正を行いまして、平成20年には年休の時間単位取得を加えています。平成30年に、10日以上の年休が付与された労働者に年間5日の年休を、時季を指定して取得させることを使用者側に義務づけるという改正を行っております。
ですので、直近の年休取得率が上がっている結果を見た限りにおきましては、働き方改革の改正が一定の影響を与えているのではないかと考えてございます。
以上でございます。
○荒木座長 これまで労働者が時季指定をして取得時期を決めるのが原則だったのですが、今回の働き方改革では、使用者のほうで5日間は必ず取らせる、付与しなかったら罰則もあるということで、大きな転換があったところです。
この背景は、ヨーロッパが完全取得に近いのは、年休の取得時期についての最終決定権限は使用者が持っているのがヨーロッパですが、日本は労働者に時季指定権があるという判例が確立して、そのほうが労働者に望ましいであろうと考えてきたわけですが、結局、そうすると、労働者が年休を取ると言い出さない限りは、使用者は受け身で何をしなくても構わない、そうして使い残した年休は2年間で時効消滅していくことになります。
そういう制度をもう一度考え直そうというのが、平成30年の改正ということで、大きな転換となったところで、実際、我々の職場でも、使用者の5日の付与義務は労基法上の要請だということで、年休に対する取組が大きく変わったと実感しております。恐らくこの法改正が大きく影響しているのではないかと思います。
それから、資料2-1の「付与に関するルール」で、伝統的には、まさに労働者が自由年休ということで、時季指定をして、年休の時季が特定するという仕組み、これしかなかったのです。
それが昭和62年改正によって、計画年休が入りました。計画年休は、労使協定で付与時期を特定することが可能で、その場合には、労働者がそのときに取りたくないと言っても、その時期に時季が特定するというもので、第二の年休時季の特定方法が入りました。
そして、第三の時季の特定方法として、平成30年改正の使用者による付与義務。この場合は、この日に年休を取りなさいと指定できるわけですから、第三の方法として入ったということです。
川田構成員、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
先ほど時間単位取得のところに絞って少し考えを述べさせていただきました。
その後に、継続勤務要件といった話もございましたので、年休制度全般について、今回の議論の枠をはみ出してしまうかもしれませんが、この機会に日頃考えているところを述べたいと思います。
現在の制度設計が、今までの話の中にも出てきましたが、最も出発点にあるのが、労働者が年休を取得する時季を指定することがあって、その中で事実上、そんなに長い期間連続して休暇を取ることが想定されていない実情があります。労働基準法の条文上も、その点については、「継続し、又は分割した」年休が取得できるという形で、与えられた日数を連続して取るだけではなくて、例えば1日単位で取ることも許容する形になっています。
何が言いたいかというと、一方では時間単位取得のような細かい単位での年休取得の促進が課題になりますが、同時に外国の状況などを比較すると、ある程度まとまって休むような休みの取り方を考えていくことも、年休に関しては重要なのではないかと思います。
この点は、先ほど労働基準法の条文上に「継続し、又は分割した」という言葉が入っていることに触れましたが、以前に労働基準法39条について、少し詳しくいろいろと調べてみたことがあって、そのときに今の点も含めた労働基準法39条が、第二次大戦後に労働基準法が制定されたときにできる過程なども調べたのですが、そのときに印象深かったのが、確か想定問答集という形だったかと記憶していますが、当時の政府では、買い出し休暇に年休を使うことを想定した検討がされていました。
終戦直後の状況ですので、都会に住んでいる方が例えば農村に行って、食料の買い出しに行くという年休の使い方が想定されていたわけで、そうしたことからすると、戦後の生活が苦しい時期であれば、連続休暇は考えられなくて、まさに労働者が取りたいと思ったときに、短くても、1日や2日でもいいから、取れるようにしようという制度が、当時は非常に強く必要とされていたことだと思います。
そういう形で出来上がった条文に、裁判所の判例も同じように短期の年休を主として想定しつつできるだけ労働者の希望が反映された年休取得を図る方向性で確立されていって、今の年休制度ができてきているわけですが、改めて外国と対比しながら、そもそも年休とはどのようなものなのかと考えたときに、先ほども言いましたが、細かい単位で取っていく仕組みを考えると同時に、まとまった期間休むものとして年休を使うことも課題になるのかなと思います。
年休制度全体の在り方としては、長期の休暇の可能性といったものも視野に入れながら考えていくこともまた必要なのかなと思いまして、意見として述べさせていただきました。
○荒木座長 ありがとうございました。
ILO条約でも、分割しても、1つの年休は2週間よりも短い期間の付与となってはならないということで、継続的な休暇として取ることを要請していることがございます。
時間年休を入れるときも、5日に上限を限ったのは、恐らくは、長い一定期間仕事から離れるという年次有給休暇の制度の趣旨を生かすことへの考慮があってのことであったと思っております。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、時間単位年休については、引き続き検討することにいたしまして、次の議題に移りたいと思います。
「これまでの議論を踏まえた主な論点について」ということで、これも事務局から資料を用意いただいております。
説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局です。
資料3-1をご説明いたします。
「主な論点(案)」ということで、この資料は、今後、本検討会におきまして、こういった論点で御議論いただければということで整理したものでございます。
4点ほど掲げさせていただいております。
1点目、それぞれの労働時間制度の意義をどう考えるか。2点目、裁量労働制が、その制度の趣旨を踏まえたものとなるための方策についてどう考えるか。
1ポツ目に、労働時間、健康・福祉確保措置、処遇・評価、2ポツ目に対象業務、対象労働者、本人同意、同意の撤回、3ポツ目に集団的労使コミュニケーション、導入後の運用などといった論点がございます。
3点目、時間単位年休を含む年次有給休暇の取得促進の在り方についてどう考えるか。これは今ほど議題2でお示ししたような背景の下に御議論いただきたいと考えている事項でございます。
4点目、経済社会の変化、デジタル化による働き方の変化、コロナ禍等による労働者の意識変化の中、アフターコロナの働き方を見据えた労働時間制度等についてどう考えるか、ということでございます。
続きまして、資料3-2をお願いいたします。
「これまでの構成員の主なご意見」として、検討会でのこれまでの御議論の中で、各構成員の皆様方から御発言をいただいたことをまとめているものでございます。主に裁量労働制についての御意見ということで御理解いただければと思います。
読み上げる形にて御紹介させていただきます。
まず「総論(制度の意義等)」に関する御意見でございます。
1点目、個々の労働者が自らの知識、技術や創造的な能力を活かして具体的な成果に反映させていくことが求められる業務における、自由度の高い働き方に対応した制度の在り方という視点で考えていくことが必要。そのような自由度の高い働き方は、適切な制度の下で行われると、働く側、企業・事業者双方にメリットがあるのではないか。
2点目、裁量労働制のほかに、管理監督者あるいは高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制、事業場外労働に対しても、例えば、テレワークみたいなものを視野に入れると、その他の裁量的な働き方との関わりはそれなりに深いので、そのような制度も視野に入れた上で全体として内容的にも適切で、全体的な整合性の取れた制度を考えるという視点が大事ではないか。
3点目、裁量労働制の位置づけを労働時間制度の全体の中で考えていく必要があるのではないか。労働法上の位置づけや整理とは別に、企業の立場からすると、裁量労働制は様々な労働時間管理の中の一つのオプションであり、どういう人にこの裁量労働制を使ってほしいのか、フレックスタイム制度よりもさらに自由度の高い働き方であるなど、労使に対して裁量労働制の位置づけを分かりやすく示す必要があるのではないか。
4点目、裁量労働制の趣旨としては、労働者自身の健康状態に合わせることができる、また、家庭の事情などに合わせることができるという意味で、マイペースを大事にする労働者にとっても魅力的な制度ではないか。
5点目、労使ともに裁量労働制の本来の趣旨をちゃんと理解し、きちんと使っているところと、少し逸脱してしまっているところがあるのではないか。本来の裁量労働の働き方とは違う働き方を強いられている人たちに対して、何らかの支援、ある種の歯止めをかけていく必要があるのではないか。
6点目、働き過ぎによる健康被害の防止という点はしっかり確保する、その中で効率性の高い働き方を実現していく、濫用的な使い方に適切な規制をかけるといった点などが重要ではないか。メリットがあること、大きなデメリットを生じさせないようにするというところを意識することが必要ではないか。
2ページに参りまして、1点目でございます。
対象になる労働者に関する要件、裁量性の要件が特に重要ではないか。自由度が十分に発揮できなくなる可能性なども視野に入れた上で裁量性の要件を考えるとともに、健康確保措置の在り方、賃金等についての額や決め方なども検討の対象ではないか。
2点目、手続に関しては、集団的な合意の枠組み、個別的な同意の枠組み、記録の作成・保存、関係する様々なものの行政機関への届出、周知などが課題ではないか。
3点目、今後は、コロナ前には想定していなかった大きな変化が現在の労働市場に起こっていることを踏まえた上で、どのような法制度の整備が必要になるかを考えていく必要があるのではないか。
次に「労働時間」に関する御意見でございます。
1点目、健康を害するような労働時間にならないように、そういうことが起こらない制度を基本に考えていくことが大切ではないか。
2点目、みなし時間制度、とりわけ、裁量労働制のみなし時間制度の場合は、実労働時間ではなくてみなし労働時間制を取ることによって、自由度の高い働き方を認めようという考え方から導入されたことは念頭に置くべきではないか。
次に「健康・福祉確保措置」に関する御意見でございます。
1点目、労働者の健康確保については、労働者自身も、正しい知識、認識、自律的な行動が必要ではないか。
2点目、健康確保を行っていくことと労働生産性の向上は必ずしも背反しないのではないか。
次に「処遇・評価」に関する御意見でございます。
労働意欲、モラルといったものも労働者の健康と関連するということが分かっており、例えば、一生懸命頑張っているが十分な評価が得られないといったことが心身の不調が発生するストレス要因になることが示されている。健康問題に関わることとして、正当な評価がなされるかどうかという視点もあるのではないか。
3ページでございます。
「処遇・評価」の2点目、本来割増賃金を支払うべき労働時間を経営側が減らしたいというときに、裁量労働制が使われているという実態も一部あるようであり、その点をどう考えるかも課題の一つではないか。
3点目、裁量労働制の特別手当というものがどういう趣旨の手当なのかという整理が必要ではないか。
4点目、裁量労働制の労働者の不満の内容が、みなし時間と実働で乖離があり、その分の割増賃金をもらっていないということなのか、そうでないのかということが重要ではないか。
5点目、裁量労働制の理解の仕方がいろいろと違っているようだ。時間外手当の簡便な払い方を可能とする制度だと理解して、実働時間に対する時間外労働は幾らとなるかを逐一チェックすることなくざっくり決めることを許容する制度と受け取る向きもある。これは実働時間に比例して割増賃金が支払われるべきことを前提としているが、もともと裁量労働制を導入したときには、時間比例で賃金を支払うのが合理的でない働き方に対して、時間の縛りを取り払ったほうが労使双方にとってよい制度となるのではないかという議論であった。裁量労働というのはどういう目的の制度なのかということを改めて確認する必要があるのではないか。
次に「集団的労使コミュニケーション」についての御意見でございます。
自由度の高い柔軟な働き方の導入過程について、この導入過程をうまく進めないと、その後で柔軟な働き方を現場で実践するのは難しいのではないか。裁量労働制に関しても、経営にとっては生産性が向上する、労働者にとってはワーク・ライフ・バランスが実現するといった双方にとってのメリットは指摘されているが、そもそも裁量労働制を何のために導入するのかというところが、労使の間できちんと合意できていないといけないのではないか。
次に「導入後の運用」についての御意見でございます。
労働時間管理の重要なところは職場での運用段階ではないか。実際に職場も変わるし、取引先も変わる、仕事の内容も変わっていくという中で、事前の想定とは違った状態になったときにそれをチェックできる、それに気づいて是正していく仕組みが必要ではないか。例えば裁量労働制であれば、当初想定されていた裁量が実現できていない、あるいは想定していた労働時間を超えているなど、そういったことを把握したら放置せず、適用対象から除外する、そして問題を解決したらまた戻すなど、運用段階でのチェックとその改善策が必要ではないか、ということでございまして、こういった御意見をこれまでの検討会で構成員からいただいたということでまとめております。
説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。
川田構成員、お願いします。
○川田構成員 ありがとうございます。
資料3-1の論点案の1つ目の○と2つ目の○で1点ずつ述べさせていただきたいと思います。
資料3-2の意見の中にも出てきますが、裁量労働制がメインであるとしても、労働時間制度に関連するもの全体を視野に入れながら、そこにおける裁量労働制の位置づけを考えていくべきと思います。
その中で、裁量労働制は、ほかの制度と比べてどのような特徴を持ち、どういう趣旨の制度なのかを確認しながら検討することが大事だと思いますが、特にこの間、ヒアリングの結果なども踏まえますと、フレックスタイム制との関係が特に重要な点になるのではないかと思っております。
ヒアリング調査においても、裁量労働制の適用対象になり得る労働者が、仮に適用されないとしたらどうなるかという場合に、フレックスタイム制の適用対象になるケースが多かったように思いますし、フレックスタイム制も、いわゆるコアなしフレックスとかスーパーフレックスと呼ばれていますが、実労働時間を管理する制度ではあると思いますが、その中でかなり自由度の高い働き方を実現しようとする動きも顕著に見られるようになってきているのではないかと思います。
例えば現行の制度の下で、コアなしフレックスとかスーパーフレックスがどういう形で、どこまで働き方の自由度を高められる制度なのかという点も確認しながら、それと比べた場合の裁量労働制の特徴、意義がどういうところにあるのかを確認することが重要なのかなと思っております。
2番目のマルですが、ここは事務局に論点をまとめた趣旨も確認しながら意見を述べさせていただきたいと思うのですが、挙がっている論点は、これまでの議論を踏まえたものが的確に整理されているのではないかと思います。
検討課題、論点として、裁量労働制が制度の趣旨を踏まえたものとなるための方策についてということですが、ここで方策というときに確認したかったのが、最終的には法制度の在り方が一つの焦点になるのかと思いますが、必ずしも法制度に反映されるようなものに限られずに、ここに挙がったものについては、裁量労働制が趣旨を発揮する形で運用されるために、どういう点が重要かも議論して、法制度に関して考える場合にも、このような必ずしも法制度にとらわれない、運用面なども視野に入れた形での議論を踏まえて、法制度的に対応するとしたらどういうことなのだろうということを議論するのがよいのかなと考えています。
例えば処遇・評価などは、裁量労働制の実施要件として、成果主義的な処遇とか評価の制度を導入しなければならないことには、多分、必ずしもならないのだろうと思いますが、制度の趣旨を踏まえてうまく運用する際には、これも聞き取りの企業調査の中で、一定の期間、ある程度自由に働いていただいて、その中で成果を出していただく。それを評価する仕組みと、裁量労働制をうまくマッチさせて使っているのではないかと思われるようなケースなどもありましたので、制度にとらわれない議論としては重要なところになってくるのかなと思っている次第です。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 川田構成員の御指摘のとおりだという認識でおります。
書き方として、方策についてと書いておりますもので、現行の制度の枠内といいますか、法制度という御認識を持たれたかと思います。裁量労働制の制度としてどうあるべきかということでございますので、先生が今おっしゃっていたような評価とか処遇につきましても、検討会で御議論いただく対象になると考えてございます。
○荒木座長 よろしいですか。
○川田構成員 ありがとうございます。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
堤構成員、どうぞお願いします。
○堤構成員 ありがとうございます。
主な論点の中の最後の経済社会の変化等を見据えたということに関して、固まった意見があるわけではないのですが、恐らく将来を見据えた論点ということで、少し意見を述べます。
働き方がかなり多様になってくる部分が出てくると思います。裁量労働制とまたちょっと離れる部分があるかもしれませんが、例えばフリーランスの方やギグワーカーの方々とか、そのような方々の働き方も、恐らく今後検討していかなければいけないものになるのかなと考えています。
この委員会の中で解決する問題ではないかもしれませんが、多様な働き方という部分では、少し視野を持ちながら検討できればという意見を持っております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
最後の4つ目のマルについては、非常にいろいろな議論に発展していくような論点だと思いますが、現在、労働者とはみなされていないような「労働者類似の者」の働き方と、その境界が非常に不鮮明になってきていることも踏まえて、労働時間制度をどう考えるかという論点を御指摘いただいたと思います。
そういう労働者でない方の働き方も重要ですが、もう一つ、コロナ禍という中で、現在、多くの労働者が一番経験されているのがテレワークといいますか、リモートワークです。通常、事業場に出勤して、そこで働く。労働時間の管理もそういう形で現認できるような働き方が当たり前だったところが、多くの方が在宅での勤務と、直接的な指揮命令から離れた中での働き方を経験されておられることがございます。
現在、テレワークのガイドラインでは、現状のどの労働時間制度の下でもテレワークは可能であるとされているところですが、そういう前提に立ったといたしましても、実際のところの労働時間の管理は、目の前で働いてはおられないということで、いろいろと新しい問題は出てくるようにも思われます。
テレワークのような働き方、そこでの労働時間の把握をどう考えていくかは、検討すべき問題もあるような気もいたしております。
川田構成員、どうぞ。
○川田構成員 今の4つ目のマルの点に関しましては、一つは、堤先生がおっしゃったように、働き方が多様化して、従来の雇用の枠に収まらないような働き方が重要な課題として出てくることがあると思います。
もう一つは、テレワークで特に在宅勤務のようなケースを念頭に置くと、これまで以上に人が生きているというか、活動している時間の中で、働いている時間とそれ以外の生活時間の間の境界が曖昧というか、はっきりしない形になって、やり方次第ではうまくワーク・ライフ・バランスを実現できる可能性が高まっているけれども、他方で、生活時間が仕事に侵食される危険も従来以上に大きくなっているところが、検討すべき状況の背景として重要なところかと思っています。
そのようなケースは、これまでも例えば今の労働基準法の枠組みの中で、例えばマンションなどに住み込みで働いている管理員の方について、労働基準法上の労働時間の規定がどのように適用されるかという形で問題になったりなどのケースが、最高裁の判決も含めてありますので、今の労働基準法の枠の中で考えていくことがある程度できる問題であると思います。先ほどの話に出てきましたように、受皿になる制度もそれなりに用意されていると思います。
ただ、より個人的な感想に近いものですが、今の労働基準法の枠の中で考えていく、解決していく問題とは別に、少し違う次元で考えることがより適切な問題もあるように思います。例えば今の労働基準法の枠組みに必ずしもとらわれない形で考えるなら、今の労働時間概念を使った規制とは別に、テレワークのような働き方について、恐らく重要になるのは、仕事からの解放をどういう形で保証していくかという点ではないかと思います。
それについては、労働時間規制の下で、労働時間に枠をはめることで、それ以外の時間を確保しようとするやり方以外にも、例えば業務外の時間についての連絡を制限するとか、いろいろな切り口があり得るのかなと思いますので、この検討会の論点にどこまで収まるのかはあると思いますが、個人的には、新しい状況に対しては、場合によっては今の労働基準法の仕組みとは違う切り口での仕事からの解放の確保の仕方について考えていくことも重要なのかと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
大変重要な御指摘で、実労働時間を規制するという観点からの規制はもちろん重要ですが、そうではない、労働からの解放をどう確保していくか。
これは今、示唆されたように、いわゆるつながらない権利も議論されておりますが、とりわけテレワーク、リモートワークの場合は、家庭が職場となる状況でもございますので、そこが新しい次元でのワーク・ライフ・バランス、仕事の時間と生活の時間の長さのバランスというよりも、仕事が家庭の中に入ってくる融合的な状況が生ずる中で、それをどう適切にコントロールするかという新たな課題にもつながる御指摘だと思いました。
小畑構成員、どうぞ。
○小畑構成員 ありがとうございます。
コロナが終わったときに、社会はどうなるか、特に職場はどうなるかと考えた際に、コロナが終わった途端に、前の状態に一刻も早く帰りたいと考えている経営者もおられることは耳にしております。
しかしながら、コロナによって、労働者は通勤をしなくて済むことのありがたさ、メリットを知ってしまった。通勤しないことによって、通勤地獄と呼ばれるようなストレスから解放されたり、通勤に充てていた時間が浮いたりすることが大変大きなメリットと受け止められていて、元の状態に戻ることについては、またあの通勤地獄を味わわなければいけないのかという受け止め方があると思います。
それから、コロナのせいで家庭にいる時間が長くなったことは、自分の足元、自分に非常に近い身の回りに関心が向くようになったという変化もございます。
そうすると、1日のうちの大半を職場で過ごしていた労働者が、実は自分の生きている空間は、職場だけに限らないのだということに気づく機会となったとも思います。そして、地域の中の自分、または家庭の中の自分を見つめ直す機会にもなったと思います。また、コロナ禍は世界的な状況でございますので、世界の中に自分がいることを意識するような機会にもなったと思います。
そういうことを考えますと、自分が職場で働いている姿以外にも、多面的な存在であることを意識せざるを得ない状況になったことから、自分が一人の人間としてどう生きていくか、また、会社と自分との関係はどういうものなのか、そして、会社や職場はどうあってほしいものなのかということを考える契機になっていると思います。
それから、自分の空いた時間の中で、今勤めているところ以外の兼業や副業を考えたり、もしくは転職を考えたり、実際に空いた時間がもったいないからということで、ギグワークもありますが、兼業・副業やちょっとした自営などを始めたという変化が労働者の中では起こっていると思います。
特に若い方々の中では、そうした変化に大変敏感である方も多うございますので、その方々がどういう社会を展望しているのだろうかという点は、そろそろいろいろな議論や論文などが出始めているところでございますので、アフターコロナの社会がどのようなものであり、それと労働法がフィットしているのかを大きな目で考え直さなければいけない問題がいろいろと出てくるように思っております。
それは、堤先生や川田先生が御指摘になった点、荒木先生が御指摘になった点をはじめとして、いろいろな点がこれから問題になってくるように感じております。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
今回のコロナ禍による働き方の大きな変化が多様な局面に影響しているのではないかという大変貴重な御指摘だったと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
島貫構成員、お願いいたします。
○島貫構成員 ありがとうございます。
再び裁量労働制の論点に戻るのですが、2つ目に記載されている本人同意は、これからの働き方あるいは労働時間管理を考えていく上で重要な論点だと思っております。
他の先生からも御指摘がありましたが、制度を適用する段階での同意の有無だけではなくて、制度が適用されて以降の運用段階での同意の在り方や、その同意をどの程度重視するのかを今後、考えていければいいかと思っています。
既に記載されていますが、同意を撤回するという本人の意思はあると思うのですが、全て本人の意思に委ねていいのか、あるいは上司と御本人との間に委ねていいのかというところは一つの論点かなと思っていまして、特に先生方から御指摘のあった健康管理あるいは健康確保という観点から、何らかの客観性のある基準で、むしろ働き過ぎてしまうという問題があることを分かった上で外してあげることも必要なのかなと個人的には思っています。
ですので、本人の同意と何らかの客観基準のある仕組みとのバランスを今後、議論できればと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
本人同意の件については、ヒアリングでも何度も話題となったところで、大変重要だと思います。
自由な働き方あるいは裁量労働制は、労働時間をどう使うかということの主権を会社ではなくて、個人に取り戻すという点で大きなメリットがあるわけですが、そういった労働時間主権を労働者に与えるのが本人の希望どおりであればよいのですが、そうでない場合が生じることは非常に問題で、それをどうコントロールしていくか。
本人が外れたいと思えば外れることを制度上、認めるという議論もあるのですが、それに関連して、裁量労働制から外れると、実労働時間管理、定時には出勤し、定時までは会社にいなければいけないというシステムに戻るかというと、そこには戻りたくない。そうすると、裁量労働制から希望すれば外れられるという制度があってもうまくワークしないのではないかという議論もあったところでした。
そういう中で、スーパーフレックスとかコアなしフレックスタイムを導入している企業もございまして、そこでは裁量労働制を外れた場合に、スーパーフレックスに移行する。
裁量労働制はみなし労働時間ですが、フレックスタイム制の場合は、始・終業時刻は労働者が選択できますが、実際に働いた時間をカウントして、時間外労働があれば、それに対しては割増賃金も払う。他方、労働者は、契約した時間は働かなければいけない義務を負っているというのがフレックスタイムですが、非常に自由度が高いコアなしフレックスであれば、裁量労働制からコアなしフレックスに移りたいという希望は相当程度実現しやすいのではないかとも思われます。そうすると、裁量労働制から外れたいという希望も、より実質的に申し出ることができるという関係になるのではないかというのが、ヒアリングの過程で私などは感じさせられた点でございました。
本人同意が裁量労働制に入るとき、それから外れたいと思ったときに、どう実質的に確保されるかという非常に重要な点に関わる御指摘だったと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
黒田構成員どうぞ。
○黒田構成員 ありがとうございます。
大枠に関しては、今後、詳細を詰めていくことになると思いますが、主な論点として、事務局がまとめてくださったことで、私としては異存ありません。
既にほかの委員がおっしゃった点と多少重複するのですが、私からは2点です。1点目は、裁量労働制に関しては、今回、いろいろとヒアリングを重ねてきて、適用から外れるオプションの確保が重要という点は、委員の間でコンセンサスがかなり取れてきていると認識しています。さらに、一度適用から外れてしまうと二度と非適用の状態に戻れないのではなく、一時的に外れて、また戻ることも可能とするといったように、仕事の状況に応じて制度の行き来も可能にするような枠組みがあればよいと思います。先ほど島貫委員がおっしゃった点は、私も同感です。本人が申出をするのは当然のことですが、人間は今日健康で何とかなったから、あしたも何とかなると考えがちな認知のゆがみがあることが行動経済学などでも分かってきているところです。働き過ぎに関しては、第三者が歯止めをかけてくれるものを用意しておかないといけない面もあるかもしれません。その意味で、何らかの客観的な基準を元に一時的・自動的に適用から外れる健康確保の措置の在り方なども議論していくのが重要なのではないかと思いました。
2点目は、この検討会は、もともとは主に裁量労働制について議論するという立てつけで始まったと理解していますが、先ほど小畑委員がおっしゃっていたように、コロナ禍で一気に労働市場が大きく変化しているという点も含めて、今後の働き方の法制度の在り方を我々は考えなくてはいけないフェーズになっていると思います。
これまで裁量労働制といった枠組みは、ごく限られた方々しか対象ではなかったわけですが、コロナを機に自由度の高い働き方を経験した人が急増し、そうした自由度の高い働き方へのニーズは非常に高まってきていると感じています。
そういう意味では、先ほど小畑委員がおっしゃった、新しい働き方と従来の労働法がフィットしているのかについては、広く中長期的な視点で考えていく必要があるのではないかと私も思っています。
今の労基法のどこの部分をモディファイするかということにとどまらず、多様なニーズに対応しつつ、自由度の高い働き方と健康確保が両立できる仕組みについて、昨今のニーズに合わせ、国民のウエルビーイングが高まるような働き方や労働市場に変えていくことができないかを、もう少し中長期的な視点で検討していくことが必要なのではないかと考えています。
以上です。
○荒木座長 大変重要な御指摘をありがとうございました。
島貫先生の御指摘もありましたが、裁量労働制に限っても、今回のヒアリングの中で、本人が希望しているとか、そういう主観的な問題も重要だけれども、他方で、今、黒田先生から、第三者あるいは客観的な観点から、それをきちんとコントロールする仕組みという中での本人の希望でなければ、問題が生ずるのではないかという御指摘もあったところであります。
そういう意味で、ログオン・ログオフの時間などは客観的な指標、実労働時間と必ずしも整合していないことがあり得るのですが、実労働時間ではない別の客観指標も使いながら管理することもあり得るのではないかと示唆されていたように思ったところでございます。
それから、今回、まさに自由度の高い働き方を国民が経験している。そういう中で今後の働き方、労働時間の仕組みがどういうものであるべきかは、恐らく企業も、個人も再検討している状況だと思いますので、中長期的に検討する大変重要な視点をご指摘頂いたと考えております。
ほかには何か御指摘はございましょうか。よろしいでしょうか。
それでは、非常に多様な論点について、示唆深い御指摘もいただきましたが、ほかに特に御発言がないようでありましたら、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。
最後に、事務局より次回の日程等についてお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 次回の日程、開催場所につきましては、追って御連絡をさしあげます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、今回、第7回の検討会は以上といたします。
本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。