第6回これからの労働時間制度に関する検討会 議事概要

労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年11月29日(月) 10:00~12:00

場所

厚生労働省省議室

出席者(五十音順)

荒木尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
小畑史子 京都大学大学院人間・環境学研究科教授
川田琢之 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
黒田祥子 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
島貫智行 一橋大学大学院経営管理研究科教授
堤明純 北里大学医学部教授
藤村博之 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授

議題

労働者からのヒアリング

議事概要

1 A氏(所属企業:機械関連製造業(勤続年数:約3年)/専門業務型裁量労働制(適用年数:約2年)/業務内容:研究開発)
○みなし労働時間は、1日当たり9時間。労働時間の状況は、1日当たり9~10時間程度で、時季による変動あり。深夜・休日労働はほぼ無い。有給休暇も取得できている。
○業務の遂行方法や時間配分、出退勤時間の裁量はある。業務量については、元々過大な設定はされておらず、上司と毎週面談して進捗等共有しているが、過重になることが予測される場合には上司とコミュニケーションをとり調整している。
○勤務時間は、PCの起動・停止時間や、カードリーダーでの入退場時間により管理されている。健康確保に関しては、みなし労働時間を超過する時間が、単月で80時間を超える場合、2か月連続で45時間を超える場合、6か月で合計270時間を超える場合に、強制的に健康診断を受診することになっており、また、こうした状態が続くと裁量労働制が適用除外される運用となっているが、このような状態となったことはない。
○裁量労働制の適用については、労働者個人の意思で毎年申請する仕組み。その際、上司と労働時間等を相談するなど、しっかり内容を理解した上で適用となる。労働者からの適用除外の申出も可能。
○裁量労働手当は、基準賃金の25%を毎月支給されている。
○企業内コミュニケーションとしては、業務負荷に関しては上司に相談している。労組においては、定期的に全体の負荷や裁量労働制適用者の状況を確認しており、社内に労務ニュースとして展開されている。
○裁量労働制の適用については満足しており、今後も継続希望。自分は製造ラインとは異なる技術者であり、一般的な時間管理では仕事の進め方が少し難しくなるため、時間配分等に裁量があることをポジティブに捉えており、また、自社ではしっかり健康管理がなされているので、安心して働けている。
○裁量労働制のメリットは、時間で成果を測るものではない点、業務状況等によりメリハリをつけて働いたり、取引先に時間を合わせて働くことが可能な点。デメリットは、設計や製造現場など他の業務との兼務ができず、自分自身の経験や成長につながらない点。制度の適用条件を少し緩和しても良いのではと考える。
○コロナ禍では在宅勤務やテレワークが増加(現在は週1~2日在宅勤務)。出社等対面でのコミュニケーションを併せて行い、従前より良好に開発を進められている。テレワークは今後も続けたい。
2 B氏(所属企業:輸送用機械等製造業(勤続年数:10~15年)/企画業務型裁量労働制(適用年数:約3年))
○みなし労働時間は、1日当たり8時間。労働時間の状況としては、みなし労働時間を超える時間は1日当たり長いときで4時間程度。時季による変動あり。深夜・休日労働はほぼ無い。有給休暇も取得できている。
○業務の遂行方法や時間配分、出退勤時間の裁量はある。業務量が過大な場合には、課内で業務配分を見直したり、上司が他部門と調整し、業務配分の見直しや人員補充を行っている。
○健康確保に関しては、1日8時間を超えた勤務時間が1か月で60時間以上または2か月連続で45時間以上の場合、健診票が発行される。また、半年の在場(勤務)時間が月平均220時間以上の場合、原則、次の半年は裁量労働制が解除される。
○裁量労働制の適用に当たり、パンフレットや労使委員会の議事録にて詳細説明があった。適用前に不同意とすることはできる。
○裁量労働制に伴う特別の処遇としては、手当が月額で基準賃金の16%支給されるほか、賞与でも成果に応じた加算がある。
○企業内コミュニケーションとしては、業務等について困難を感じた際には上司や人事部門(所定の相談窓口)に相談。労組は、労使委員会を通じて関与していると感じている。
○裁量労働制の適用については大きな不満は無く、今後も継続希望。自由度の高い働き方の中で、成果で評価されること自体は納得感が高い。ただ、最近社内でコア無しフレックス制度が導入されたため、時間配分の裁量という点ではメリットは減少しているのではないかと思う。
○裁量労働制のメリットは、時間にとらわれず質や成果を追求できる点であり、能力発揮・向上や生産性向上につながっていると感じている。また、企画のフェーズに応じて労働時間を自分自身で決定できる点。デメリットは、恒常的に忙しい職場の場合、過重労働が懸念されること。上司の仕事の与え方やマネジメントが重要。
○企業に対する要望としては、引き続き適正なジョブや期待役割の付与、適正な業務量・人的リソースの付与を行っていただきたい。裁量労働制でも、個人の力量ではコントロールできない部分もあり、この部分についてはマネジメントをしっかり行って欲しい。
○コロナ禍によりテレワークが中心となり、現在は週に2日程度実施。労働者にとってメリットが大きく、通勤時間の削減によりプライベートに割ける時間が増加し、業務も集中したい場面でしっかり集中でき生産性が上がった。上司がPCの稼働時間を確認するシステムも入っているため過重労働の抑制にもなっている。個人的には今後もテレワークを認めていくという風土が続くことが望ましいと感じている。
3 C氏(所属企業:化学工業(勤続年数:5~10年)/専門業務型裁量労働制(適用年数:約4年)/業務内容:研究開発)
○みなし労働時間は、1日当たり9時間程度。労働時間の状況は、所定労働時間を超えた時間では、1日当たり30分~1時間程度。時季による変動はあまり無いが、業務状況により突発的に業務量が増えることはある。深夜・休日労働はほぼ無い。有給休暇も取得できている。
○業務の遂行方法や時間配分、出退勤時間の裁量はある。自分は他の労働者の定時に合わせて、基本的に定時出社している。
○業務量が過大な場合には上司に相談するほか、労組で労働時間の状況を把握しているので、多い月が続く場合には、労組から会社側に要望することもある。
○健康確保については、所定労働時間を超えた労働時間の状況が月80時間以上の場合に上司からの産業医面談の促進等のほか、努力義務だが勤務間インターバル(退社時刻と出社時刻の間を11時間空ける)がある。
○裁量労働制の適用前には事前説明があったほか、制度運用の手引(社内ネットワーク上に掲載)を併せて確認し、十分に理解できた。同意の撤回も可能。
○裁量労働手当としては、みなし労働時間のうち所定労働時間を超えた時間分程度が毎月支給される。
○企業内コミュニケーションとしては、業務上困難を感じた場合、まずは上司に相談するが、改善されない場合には裁量労働制に関する苦情相談窓口がある。また、労組は、毎月30時間以上の残業をしている者のリストを取得・確認しており、以前は、みなし労働時間のうち所定労働時間を超える時間は月15時間に設定されていたが、実労働時間との乖離が非常に大きかったため、労組から企業に働きかけて、数年前に月30時間に変わった経緯もあり、労組は裁量労働制の運用にしっかり関与している。
○裁量労働制の適用については満足しており、今後も継続希望。
○裁量労働制のメリットは、みなし労働時間内で効率良く仕事しようと色々考えて進める意識が働くこと、業務状況により没頭するところは没頭し、しないところはしない、とメリハリつけて働けること、裁量労働手当があり収入が安定して入ること。率直なデメリットは、働く時間が多いと労働単価が下がり損をした気分になること。
○企業に対する要望としては、現在、自社では専門業務型しか導入していないが、裁量を活かせる部署があれば企画業務型も積極的に導入したら良いと思う。
○コロナ禍によりウェブ会議を積極的に実施するようになった。移動時間が無いため会議の時間を十分にとれ、交通費もかからず、本当に議論したいことのみを集中して議論できて会議の効率が良いことがメリットだが、顔が見えにくいため、少しコミュニケーションが取りにくいと感じる部分はある。なお、テレワークは自分は実施していない。
4 D氏(所属企業:電気機械器具製造業(勤続年数:15~20年)/企画業務型裁量労働制(適用年数:10年以上))
○実労働時間は、1日当たり9時間程度。労働時間の状況は、所定労働時間とみなし労働時間(どちらも1日当たり7時間45分)を超えた時間としては、月平均で20~30時間程度。時季による変動は無いが、業務状況により繁忙感に少し波はある。深夜・休日労働は無い。有給休暇も取得できている。
○業務の遂行方法や時間配分、出退勤時間の裁量はある。
○業務が忙しくなってきた場合には、上司に相談し、業務配分の見直しや進め方の助言を得て一緒に検討し、スケジュール調整等を行いながら進めている。過去、繁忙期で月の所定外勤務時間が60~70時間となり、自身の裁量がなくなったと感じた際、上司と相談し、一時的に裁量労働制を2~3か月離脱してフレックスに切り替えたことがある。
○健康確保に関しては、所定労働時間を超える勤務時間が月80時間を超える場合、産業医の面談が必須になるが、自分は対象となったことは無い。また、PCの起動・終了時に自動的に時刻が記録されるシステムとなっており、22時以降の深夜労働禁止ルールもある。時間管理についてはここ数年でツールが整備されて「見える化」され、上司だけでなくチーム間でもどのくらい仕事しているか相互に確認でき、仕事の調整がし易くなった。
○裁量労働制の適用に当たっては、まず、入社時の社員研修で裁量労働制に関する説明があり、その後、適用対象となった際に、上司から改めて制度の詳細や処遇について、制度マニュアルを使って説明を受け、十分に理解できた。また、適用後、業務を遂行する上で、自身の今の働き方に裁量が無いと感じた場合には、労働者から上司に適用除外の申出を行い、承認されれば適用除外となる仕組みがある。
○裁量労働手当はある。
○企業内コミュニケーションとしては、業務上困難を感じた場合には上司に相談しており、もし話が進まない場合には、さらに上の職制に相談することも可能。また、労働組合役員に相談できる仕組みもある。労組では定期的に組合員向けのアンケートを実施しており、勤務実態の確認や、課題等があれば労使委員会に提起している。
○裁量労働制の適用については満足しており、今後も継続希望。時間というよりは、どれだけ成果を効率良く出せるかという気持ちを持って勤めている。
○裁量労働制のメリットは、自分の裁量で業務ができ、プライベートとのスケジュール調整にも裁量があること。また、裁量労働制で働くことで、成果の出し方や段取り、プロセスについても自分で考えながら取り組めるため、このような業務知識以外の能力開発にもつながると感じている。デメリットは特に感じていない。
○コロナ禍により働き方は変わり、現在はほぼテレワークで、出社は月1回程度。業務効率や自身の働くモチベーションは上がっていると感じており、テレワークに対する不安は特に無い。直属の上司と仕事以外のテーマで1対1のミーティングを月に1回実施しており、そうした機会は、自分にとっては非常に安心できる材料になっている。