第5回これからの労働時間制度に関する検討会 議事概要

労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年11月11日(木) 13:00~15:00

場所

AP虎ノ門 Bルーム

出席者(五十音順)

荒木尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
小畑史子 京都大学大学院人間・環境学研究科教授
川田琢之 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
黒田祥子 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
島貫智行 一橋大学大学院経営管理研究科教授
堤明純 北里大学医学部教授

議題

企業からのヒアリング

議事概要

1 C社(電気機械器具製造業/従業員数 約3,000名/裁量労働制適用者の割合:全体の約50%(専門業務型:約3割、企画業務型:約7割))
○当社における人材理念は、異なる個性を持つ一人一人と、多様な個を受け入れる当社とが、パーパスを中心に共に成長していくこと。こうした有機的な成長は、創業時から、社員と会社はお互いに覚悟と緊張感を持った関係で真剣に向き合ってきたからこそ実現できるもの。こうした人材理念を今後も大切にしていきたい。裁量労働制も、こうした理念等をベースに運用。
○当社では、時代の変化に伴い多様な制度をいち早く取り入れ、裁量労働制については、専門業務型は制度創設数年後に導入し、研究開発や設計業務を中心に適用。企画業務型は2003年改正を受けて導入。
○当社における裁量労働制の趣旨は、制度導入時の労使協議の結果、主体的に業務を進める、ゆとりや健康管理との調和、成果重視の報酬に移行、の3点とされ、これは今も変わらない。約30年前から時間ではなく成果との考え方の下、制度を導入しているため、社内では制度が定着し活用されている。管理職においても、自分自身も裁量労働制を適用されていたことがあるため、制度について十分理解しており、そのことも社内で制度がうまく運用されている要因。また、コロナ禍での在宅勤務においても、裁量労働制を活用していたこともあり、非常にスムーズに社員が順応できた。
○みなし労働時間は、1日あたり7時間45分(所定労働時間)。
○適用労働者の在社時間(在宅勤務時間・休憩時間を含む。以下同じ。)は、労働者が始業・終業時にPCで行うWeb打刻で把握。実態の労働時間としては、時間管理対象者(裁量労働制が適用されておらず実労働時間を管理されている労働者)との大きな乖離は生じていない。
○処遇制度(全社員統一)は、人ではなく現在の役割に格付するとの考え方の下、役割等級制度を適用。月額の給与は、市場水準に基づき一定の幅を設けた上で等級ごとに設定。評価方法(全社員統一)は、年度毎に上司部下で話合いの上で個人目標を設定し、1年の実績は、当該目標の高さとその達成度(実績評価)、会社が求める行動基準の実践度(行動評価)、この2評価を組み合わせたもの(役割遂行度評価)の3つの基準で評価され、月額給与、賞与及び等級改定に反映されていく。
○裁量労働制は、管理監督者等級の手前2つの役割等級の労働者に適用される。役割等級は所定要素(専門知識、事業の知見、リーダーシップ、対人スキル等)の所定水準をクリアできれば入社年次に関係なく認定できる。
○適用労働者に対しては、等級に応じて月額10~12万円の手当があるほか、年1回(夏の賞与時)、通常の賞与に加えて裁量労働制成果加算(最高200万円程度)がある。
○適用労働者に対する健康・福祉確保措置は、平日1日あたり7時間45分及び法定休憩時間を除いた在社時間が、直近1か月で80時間以上の場合、一律にWebによる健康調査を実施し、必要に応じて産業医等面談の実施、直近1か月で100時間以上の場合は、健康調査の結果にかかわらず、必ず産業医等面談を実施する仕組みを設けている。また、上記在社時間が単月100時間又は3か月平均80時間以上の場合、業務実態の確認等を行い、長時間労働が慢性化している場合等には裁量労働制の適用を解除する運用としている。解除後は月間フレックスタイム制で数ヶ月様子をみて、きちんと業務量が戻っていたら、裁量労働制に戻すプロセスに入る。なお、勤務間インターバル制度は導入していないが、自ら働く時間をコントロールできる社員に裁量労働制を適用しているため、インターバルについても、自らの裁量の中で実施している。
○労使委員会は年に2回開催し、決議内容は議事録と併せて全社員が閲覧可能な社内ポータルサイト上で公開。なお、労使委員会の各回終了後に、裁量労働制その他働き方全般に関する意見交換を実施し、労使双方でより良い働き方を実現していくための建設的な対話の機会を設けている。別途、労働組合とも労使委員会開催時期に合わせて労使協議を行っており、裁量労働制については、労使ともに、会社の中でも非常に重要、かつ会社のパーパスの実現に不可欠な働き方の根幹をなす制度であることを共有している。
○労使委員会決議の有効期間は1年で、毎年決議更新前に一斉に裁量労働制適用に係る同意確認のプロセスを丁寧に実施。具体的には、管理職に同意確認用マニュアルを配付し、部下の対象労働者との間で同意確認のコミュニケーションを必ず図らせている。その際、裁量労働制の理解を促すためのeラーニングを実施のうえで同意確認を行っている。実態として適用可能対象者のほぼ全ての労働者が同意している状況で、運用上いつでも同意撤回は可能だが、現時点で同意撤回を希望する者はいない。むしろ適用対象前の若手社員から適用を望む声が人事に届いている。
○裁量労働制の魅力の一つは、社員個人が自分の自由な時間をフル活用でき、男女問わずワークライフバランスの観点で非常に有効であること、また、グローバルに事業展開している中で、海外との時差関係なく時間に縛られずビジネスができることと考えている。
○労働時間制度への意見としては、現状、時間という概念が根強く残る現行の労基法に縛られて働かざるを得ず、グローバルで事業展開している中でも、36協定の対象の時間管理されている労働者は、夜中の海外とのビジネスに携わりづらいことから、時間管理をもう少し柔軟にし、成果という形で考えるようにしてほしい。激化する海外企業との競争において、日本の労働者のみ労働時間に関する様々な制約が課せられることで、国内企業の競争力が低下することを大変危惧している。
○なお、高度プロフェッショナル制度も導入しているが、この対象者は、非常に専門性が高く、より柔軟で研究者的な働き方が適し、高額な報酬を会社としても提供したいという特別な社員に限定し、役割等級制度とは異なる別個の人事制度を作った上で、約1年前から運用している。但し、裁量労働制と比較して、高度プロフェッショナル制度が、本当に有効なのかどうかについては引き続き検証していく。
2 D社(電気機械器具製造業/従業員数 約30,000名/裁量労働制適用者の割合:全体の約17%)
○成果主義を推進するため、労働時間の多寡にかかわらず、成果をより報酬に反映させる仕組みとして、約20年前に専門型裁量労働制を導入。現在は専門業務型(研究開発職、SE、システムコンサル担当等)と企画業務型(マーケティング職、事業スタッフ(戦略企画、人事等))のいずれも導入。
○当社では等級(グレード)制度をとっており、等級毎に求められる能力や業務内容を定めている。一般社員の最高位の等級(定員制。昇格後4年経過以降、毎年当該等級としての資質を業務内容やコンピテンシー評価で確認して価値を維持)及びその直下の等級に該当する者が裁量労働制の適用対象。対象者については、裁量労働制の適用基準(労働時間を報酬の基礎とすることがふさわしくない職務についていること、所属長の推薦があること、本人に本制度により勤務する意思があること)を確認した上で適用。
○みなし労働時間は7時間45分(所定労働時間)。
○労働時間の状況については、休日及び深夜時間はWebの勤怠管理システムで打刻させ、これ以外の時間帯はPCのログイン・ログオフ時間により把握している。裁量労働制の適用労働者における1か月あたりの時間外勤務時間(法定労働時間の総枠を超えた時間)数は、非適用労働者に比べて数時間長い程度。
○適用労働者に対しては、業務手当(基本給の約35%相当)を毎月支給。なお、休日・深夜が業務手当を超えた場合、超過分を時間外勤務手当として支給。そのほか、通常賞与に加え、年2回、評価に連動して業績賞与を支給。
○評価方法は、裁量労働制の適用者・非適用者ともに、半期ごとに成果の大きさで評価。
○適用労働者に対する健康・福祉確保措置については、本人が希望する場合、1か月の所定外労働時間が100時間を超過した場合、2か月~6か月で月平均の所定外労働時間が80時間を超過した場合、のいずれかに該当した際に、産業医等の面接を実施。このほか、本人が希望する場合、1か月の所定外労働時間が40時間を超過した場合、2か月~6か月で月平均の所定外労働時間が60時間を超過した場合、のいずれかに該当した際に、システム上で問診票を提出することとしている。更に、1か月の所定外労働時間が45時間を超過することが見込まれる者に対しては、個別に所属長に勤務実態のヒアリングを実施した上で、裁量労働制の適用可否を検討している。
○労使委員会は年1回開催し、その際に裁量労働制の適用の定期見直し(適用者の継続可否、新規対象者の適用要件該当の確認)を実施。そのほか、必要に応じて随時開催している。議題は、制度の適用状況、適用休止者の時間外労働状況、年間休日や休暇取得促進に向けた取組みなど。なお、労使委員会だけでなく、毎月労使で労働時間に関する協議会を実施しており、その中で、長時間労働が見込まれる者の状況確認等を行っている。
○適用に当たっては、対象労働者本人に対し、成果主義に賛同し、制度の趣旨と仕組みをよく理解した上で、裁量労働制により勤務する意思を持っていることの確認を実施。
○当社における裁量労働制の魅力は、特別の報酬(業務手当、成果に応じた業績賞与)があること、裁量を持って業務を実施でき、自分がやりたい仕事でパフォーマンスをしっかり発揮できること、と認識している。社員のマインドが成果主義に対して非常に理解があり、これを具現化しているのが当社の裁量労働制であるため、社員は非常に魅力的に感じていると考えている。
○現行の裁量労働制に対する意見としては、企画型で事業所ごとではなく本社一括申請を可能とすること等の手続面の見直しや、裁量性をもって創造性を発揮して働きたいという社員に対し、もう少し広く適用したいと考えているため、適用業務の拡大、明確化をお願いしたい。
○コロナ禍では、一気に在宅テレワーク中心の働き方になった。ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた働き方について社内で検討した結果、「働く」ということだけでなく、仕事と生活をトータルにシフトし、Well-beingを実現していくというコンセプトの下、まず、場所や時間を柔軟な働き方にし、その中で、新たな創造性や生産性の価値向上を図っていくこととした。具体的な施策としては、テレワークの推進やコアなしフレックスタイム制の導入のほか、社員が目的に応じて俊敏に集まれて、そこでイノベーションを発揮できるような場作りができるオフィスの見直しなど。
○労働時間管理については、打刻等で厳格に行うことは社員にとって煩わしさがある一方で、コロナ禍でのメンタル疾患の増加等を鑑みると、社員の健康や会社としてのコンプライアンスを守るために、一定の時間管理は必要だと考えている。このため、社員に裁量をもって働いてもらえるよう、健康面の観点から、客観的で社員の負担にならないような時間管理は担保していきたい。