第100回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第100回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和3年10月19日(火)14:00~14:22
 
2.場所 AP虎ノ門 会議室Bルーム(一部オンライン会議会場)
     (東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

3.出席委員
(公益代表委員)
○学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授 守島 基博
○明治大学法学部教授 小西 康之
○名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
○大阪大学理事・副学長 水島 郁子
○読売新聞東京本社編集委員 宮智 泉

(労働者代表委員)
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○UAゼンセン労働条件局部長 髙橋 義和
○全国建設労働組合総連合労働対策部長 田久 悟
○日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長 仁平 章

(使用者代表委員)
○日本通運株式会社人財戦略部専任部長 池田 祐一
○一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部上席主幹 坂下 多身 
○東京海上ホールディングス株式会社人事部専門部長 砂原 和仁
○セコム株式会社総務人事本部参与 二宮 美保
○鹿島建設株式会社安全環境部長 本多 敦郎
○日本製鉄株式会社人事労政部部長 山内 幸治

4.議題
 (1)特別加入制度に関する国民からの意見募集について(報告)
 (2)脳・心臓疾患の労災認定基準の改正について(報告)
 (3)その他


5.議 事
○守島部会長 定刻になりましたので、ただいまより第100回労災保険部会を開催いたします。本日の部会は会場及びオンラインの両方で、ハイブリッドで実施しております。
議事に入る前に、新しく本部会の委員に就任された委員を御紹介いたします。委員名簿を御覧いただきながらお聞きいただければと思います。今回新たに御就任いただく委員は、労働者代表として平川達斎委員です。なお、残念ながら本日は御欠席と伺っております。他の委員の出席状況は、武林委員、安原委員が欠席と伺っております。出席者は現在15名ですけれども、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がありますので、定足数は満たしていることを御報告いたします。それではカメラ撮影等はここまでとさせていただきます。
では早速議題に入ります。第1の議題は、「特別加入制度に関する国民からの意見募集について(報告)」です。事務局より説明をお願いします。
○労災管理課長 資料1です。この議題は、労災保険の特別加入に関してです。1ページ目は、直近の閣議決定、経済財政運営と改革の基本方針2021についてです。従来からもあったわけですが、改めてここにありますとおりフリーランスといった経済・雇用情勢の影響を特に受けやすい方へのセーフティネットについて、労災保険の特別加入の拡大を着実に推進するといったことが盛り込まれているところです。
2ページ目は、こういった動きも加えながら、これまで労災保険部会において、令和元年12月23日の建議において「社会経済情勢の変化も踏まえ、特別加入の対象範囲や運用方法等について、適切かつ現在に合った制度運用となるよう見直しを行う必要がある」とされたところです。その後、具体的なヒアリング等を受けて、昨今、芸能従事者その他について特別加入の拡大を進めているところです。下の段にありますとおり、令和3年4月1日付けの省令改正で、芸能従事者、アニメーション制作従事者、柔道整復師、創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者、更に9月1日には自転車配達員、ITフリーランスについて対象として追加をしたところです。
本日報告させていただくのは、その次の3ページ目です。業種は、労災保険部会において、また改めて特別加入を進めていく上で一般からの提案、募集、意見の受け付けをしたいということで、申入れをして御了解いただいたことを基に8月6日~9月17日まで募集をいたしました。様々な意見がありましたが、全体で72件となっております。表に並べておりますが、右のほうに提出件数とあるとおり、数が多かったものを単純に並べております。ただ、これは様々な表現や業界のいろいろな用語などがありましたので、ある程度事務局の判断でまとめたところもあります。この辺りは、今後よく実態を把握していきたいと思っています。
幾つか簡単に補足いたします。最初はイラストレーター、漫画家、アート従事者です。これは件数として非常に多かったわけですが、他にもいろいろな芸術、芸能関係の申出がありました。同じ漫画家でも同人漫画家やアート従事者等と様々でしたが、ここでは、こういった形でアート従事者ということで一応まとめております。災害の状況などもいろいろ書かれているものを参考に、ここに記載をしております。
それから少し下になりますが、士業(技術士等)の個人事業主とあります。これは、いわゆる士業ということで、一定の法律等に基づいて資格を持っていることを前提に事業を営まれている方に、特別加入のカバレッジを広げるべきではないかといった御意見でした。具体的に実際に技術士という資格があるわけですが、これも例示として挙がっておりましたが、こういった意見が出ております。また、その2つ下に鍼灸マッサージと書いてあります。これは、あん摩マッサージ指圧師、鍼師、灸師等に関する法律に基づいて、こういったことを業として行う場合には、一定の免許を受けなければならないというのが、この法律で定められております。こういった方に対するカバレッジをという御意見です。その下にリラクゼーション業とありますが、これも今申し上げたような法律や免許ということではありませんが、こういった意見もありました。
また、その下に林業とあります。林業については、従前からこの特別加入の1類系として実は入っております。ただ、ここで挙げられているのは、林業というのは分かりやすく言えば林の中、森の中で木を伐採して運んで行くことについては従来からカバーをしておりますが、街中の小さい木であれば植木屋さんが対応するということもあるようですが、非常に大きな木になると、ある程度そういった技量がある方が対応しているというのが、どうも現場の実態としてあるというような御意見であったと承知をしております。その下の歯科技工士も、そういった資格を要する方となっております。その下はバレエ教室の助手、ピラティストレーナー・ヨガトレーナーなどの様々なトレーナーの方に関する要望、その他です。
これだけ御要望を頂いた中で、要望を頂いた個人の方、団体の方、あるいはそこから更にたどって団体も複数あるケースがありますので、その業界の動向というか、業界がどれぐらいの広がりをもっているのか、あるいは既存の職種との関係や団体としての意向の辺りを並行して、今、御意見を伺っている状況です。ですので、今日はこういった御意見が出たというところで報告をさせていただきますが、今後、事務局でいろいろ整理をしまして、まず業種の区分あるいは業界の中での位置付け、更には関係業種との関係で特段何か問題があるかどうかといったことを確認しながら、最終的には団体の意向も踏まえて昨年来同様、事務局で改めて整理をして、今後この審議会において団体からのヒアリングをさせていただいて、当該業種について追加をしていくことが適切かどうか、今後、御審議をお願いしたいと思っております。私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明、御発言について御意見、御質問等がありましたら、チャットのメッセージに発言希望と入れていただいても構いませんし、手を挙げていただいてもどちらでも構わないので、御意見を頂ければと思います。田久委員お願いします。
○田久委員 集計の意見をもらったということで、今、事務局から報告があったように、またヒアリングやいろいろな調整をしていくということですので、やはり補償がないところできちんと救済されるべきというのは従来の考えどおりですが、最大である安全対策は引き続きこういう観点で、きちんと進めていただければと思っています。
同時に、制度自体を、認可をもらっているところで、インターネット上が特に多いのですが、やはり原則としてが守られていないような。特に気になるのは毎月払いができるとか、特別加入は確か毎月払いができないような気がしたのですが、そのようなこともうたい文句にして加入をさせているようなところ。それは本当に安全対策ができているのかということもありますから、こういったところを、事務の対応も含めてきちんと見ていくようなことをこの機会に進めていただきたいという要望です。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかにありますか。大丈夫でしょうか。では、事務局からお願いします。
○労災管理課長 今、田久委員から御意見を頂きました。御指摘いただいた点は、これまでも繰り返しこの労災保険部会において、特別加入団体の役割、取り分け安全対策は非常に重要であると。また先ほどの御指摘では、きちんとした事務処理をやれるかどうかも重要であるということを繰り返し御指摘いただいていると、私も認識しております。今後、こういった団体に、私どもも並行していろいろと調整をしておりますが、この制度の趣旨をきちんと理解をしていただいて、その上で運用していくことが必要だということもうたいながら、制度を適正に遂行できるように対応してまいりたいと考えております。
○守島部会長 ありがとうございました。それでは次の議題に移ります。次の議題は「脳・心臓疾患の労災認定基準の改正について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○補償課長 補償課長の西村です。脳・心臓疾患の労災認定の基準について改正いたしましたので、この旨報告をいたします。第80回の本部会において、脳・心臓疾患の労災認定基準に関して、全般的な検討、いわゆる検証を行う旨を報告したところですが、今般、認定基準の改正をいたしました。資料2を御覧ください。前回改正から約20年が経過する中で、最新の医学的知見等を踏まえて、令和2年6月から計13回の専門検討会での議論を経て、本年7月16日に報告書が取りまとめられたところです。そして、取りまとめられた報告書を踏まえて認定基準の改正を行い、先月、9月14日に地方労働局に対して通達を発出したところです。
改正のポイントは4点です。1点目は、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して、労災認定することを明確化したことです。2点目は、労働時間以外の負荷要因を見直したことです。3点目は、短期間の過重業務、異常な出来事について、業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化したこと。4点目は、対象疾病に「重篤な心不全」を新たに追加したことです。以上4点が大きなポイントなのですが、この改正については検討会報告書を踏まえたものです。
2枚目の資料を御覧ください。これは専門検討会の報告書の概要です。左側は、現行基準を維持することが適当と判断された事項です。発症前1か月間に100時間又は2ないし6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い。月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる。それから、発症前1か月ないし6か月間平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性は弱い。このように、いわゆる過労死ラインは引き続き維持することが適当と結論付けられたところです。
一方、現行基準に新たに取り入れることが適当と判断された事項は右側です。まずは、長期間の過重業務についてです。左記の水準、いわゆる過労死ラインの水準には至らないが、これに近い時間外労働、更にこれに加えて一定の労働時間以外の負荷要因があった場合には、業務と発症との関連性が強いと評価することを明示する。2点目として、労働時間以外の負荷要因、勤務間インターバルが短い勤務や身体的負荷を伴う業務などを新たに対象として追加すること。3点目は、短期間の過重業務、それから異常な出来事について、業務との関連性が強いと判断できる場合を明確化すること。4点目は、「重篤な心不全」を追加することです。これらの報告書の内容に沿って、今般、改正をしたところです。
次のページを御覧ください。こちらは認定基準改正時のプレスリリースです。その次のページは、認定基準改正の概要をまとめたものですが、先ほど御覧いただいた報告書の概要とほぼイコールです。次のページは、改正通達の本文となります。一番下の所のなお書ですが「なお、本通達の施行に伴い、1063号通達及び昭和62年10月26日付け基発第620号は廃止する」と書かれております。旧基準の1063号通達は、今回改正したことに伴い、全面廃止をするということです。もう一つ、昭和62年の通達を廃止するということですが、これは負傷による脳・心臓疾患の認定基準、すなわち、負傷によって損傷を与えた場合の認定基準を示していたもので、実は平成7年から残っていたものです。現時点においては、負傷によるものは、あえて認定基準がなくても認定手続に支障がありません。今回の改正を契機として廃止をしたものです。これまでの取扱いとは何ら変更はないことを報告させていただきます。今回の改正に当たり、今後については各労働基準監督署において改正通達に基づいて、適切に労災認定を進めてまいりたいと思っております。説明は以上です。よろしくお願いします。
○守島部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問等がありましたら、チャットから発言を希望でも手を挙げていただいても、どちらでも構いません。仁平委員お願いします。
○仁平委員 基発620号の廃止の話も含めて、御報告ありがとうございました。時代の変化に対応して20年ぶりに脳・心臓疾患の労災認定基準が見直されたことは1歩前進だと思っています。今回の改正で、過労死ラインの数値を重視して、機械的に判断するのではなくて、それに近い時間外労働があれば、他の負荷要因も勘案して総合的に労災認定できるということが明確になったということで、これまでよりも判断がしやすい認定基準になったということだと思いますので、その辺りを評価したいと思っています。
説明にもありましたが、既に9月に通達が出されております。労災を申請する方々や、中央・地方で労災保険審査会の参与の方々にも、今回の改正内容の詳細なところもきちんと伝わるように、是非ともお願いしたいと思っております。連合としても、関係者に説明の場をもって周知に取り組んでまいりたいと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか御意見や御質問がありましたらお願いします。特にないようですので、この議題はこれで終了いたします。
そのほか何か、より広い範囲で御意見、御質問等がありましたらお伺いいたしますが、いかがでしょうか。よろしいですね。それでは、本日予定した議題は以上ですので、部会を終了いたします。次回の日程については、事務局より追ってまた御連絡いたします。それでは本日は以上といたします。皆様方、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。これで終了いたします。