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第19回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和3年8月4日(金)16:00~18:00
場所
専用第21会議室(17階)
出席者
(委員)(五十音順)
入山委員、大橋委員、岡本委員、川﨑委員、古賀委員、後藤委員、佐々木委員、武田委員、中野委員、守島部会長、山川委員、山田委員
(事務局)
土屋厚生労働審議官、山田総括審議官、伊原政策統括官(総合政策担当)、村山政策立案総括審議官、松本政策統括官付参事官、髙松政策統括官付政策統括室労働経済調査官、黒田人材開発統括官付政策企画室長、田中雇用環境・均等局総務課長、木嶋職業安定局雇用政策課雇用復興企画官、竹中労働基準局労働関係法課課長補佐
議題
- (1)部会長の選挙及び部会長代理の指名について
- (2)労働政策審議会労働政策基本部会運営規程等について
- (3)直近の雇用・労働情勢と労働政策について
- (4)「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」報告書について
- (5)その他
議事
- 議事内容
- ○松本政策統括官付参事官 ただいまから「第19回労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、委員改選後の第1回目でございますので、冒頭につきましては、私が司会を務めます。政策統括官付参事官の松本でございます。よろしくお願いいたします。
カメラの頭撮りはここまでといたしますので、御協力をよろしくお願いいたします。
では、まず、4月27日付で委員改選が行われましたので、御報告いたします。新しい労働政策基本部会委員名簿は、資料1のとおりでございます。
本日は、所用により、石山委員、冨山委員が御欠席でございます。また、所用のため、武田委員は途中参加、入山委員、大橋委員は途中退席される御予定と伺っております。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に関しまして、事務局から御説明申し上げます。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 オンラインでの開催に関しまして、留意事項を説明いたします。
まず原則として、カメラはオン、マイクはミュートとしてください。委員の皆様には、御発言の際は、参加者パネルの御自身のお名前の横にあります挙手ボタンを押して、司会者から指名があるまでお待ちください。司会者から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度、挙手ボタンを押して挙手の状態を解除してください。通信の状態等により音声での発言が難しい場合には、チャットで発言内容をお送りください。また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしております電話番号まで御連絡ください。
以上です。
○松本政策統括官付参事官 では、本日の議事に入ります。
最初の議題は、部会長の選挙についてでございます。部会長につきましては、労働政策審議会令第7条第4項に基づきまして、当該部会に所属する委員のうちから、委員の皆様に選んでいただくことになっております。いかがお取り計らいいたしましょうか。御意見ございませんでしょうか。
大橋委員、お願いします。
○大橋委員 前回の部会でも座長をやられて、労働政策にもお詳しい守島委員がよろしいのではないかと思います。
○松本政策統括官付参事官 大橋委員、御意見ありがとうございます。
ただいま、守島委員に部会長をという御推薦の御意見がございましたけれども、守島委員に部会長に御就任いただくということでよろしいでしょうか。御意見のある方は、挙手ボタンを押して御発言をお願いいたします。
(首肯する委員あり)
○松本政策統括官付参事官 御意見のある方がいらっしゃらないようですので、それでは、守島委員に部会長に御就任いただくことにいたしたいと存じます。
(守島委員部会長席に移動)
○松本政策統括官付参事官 以後の議事の進行につきましては、守島部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。
ただいま部会長に選出されました守島でございます。引き続き、皆さん方の御協力をいただきながら、部会を運営してまいりたいと思いますので、どうか、よろしくお願いいたします。
最初に、労働政策審議会令第7条第6項により、部会長代理は部会長があらかじめ指名することとされております。
部会長代理として、大橋委員を指名いたしたいと思います。
大橋委員、よろしくお願いいたします。
それでは、まず初めに議題(2)「労働政策審議会労働政策基本部会運営規程等について」事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○松本政策統括官付参事官 御説明申し上げます。
部会の運営につきましては、労働政策審議会労働政策基本部会運営規程で定められてございます。部会の庶務を処理する組織について第7条で定められておりますが、組織改編がございまして、労働政策担当参事官から政策統括室に変更になったことに併せて、組織名を政策統括室としたいと存じますが、よろしいでございましょうか。以上、資料2の関係でございました。
また、別途、労働政策審議会運営規程が改正されまして、労働政策審議会の本審議会、各分科会や部会における議事録に関しては、改正前は、会長、分科会長、部会長が指名した委員から署名をいただくこととしておりましたが、この署名の手続は廃止されましたので、併せて御報告いたします。今後は、本部会においても、従来どおり、事務局から委員の皆様に内容を御確認いただき、そのことのみをもって議事録を確定し、弊省ホームページにて公表したいと存じます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
基本部会運営規程の改正については、事務局から説明があったとおりでよろしいかと思います。
それでは、次の議題に移ります。議題(3)(4)の趣旨について御説明申し上げます。
本日の部会は、当部会の前回の報告書を受けて開催しておりました「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」について、報告書がまとまりましたので、その内容について報告を受けるものでございます。
併せて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた現下の雇用・労働情勢や直近の労働政策の状況についても、事務局に資料を用意させておりますので、委員の皆様と認識を共有させていただきたいと思います。その上で、報告書の内容や今後の課題について御意見をいただきたいと思います。
具体的な進め方ですけれども、まず事務局から、資料説明として議題(3)の「直近の雇用・労働情勢と労働政策について」に関して、資料3の「労働経済白書(骨子・概要)」について、資料4の「雇用情勢の概況」について、資料5の「経済財政運営と改革の基本方針2021」について、事務局からまず御説明いただきます。
それが終わりましてから、次に議題(4)の「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」について、事務局から御説明をいただきます。
皆様方、そこまでいろいろな説明を聞いていただくわけですけれども、最後にまとめて、検討会の報告書、それから、最近の雇用情勢、労働政策について、質疑応答、自由討議を行いたいと思っております。
それでは、事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 それでは、事務局から資料3から資料6-3まで通しで御説明いたします。まず、資料3を御覧ください。
資料3「令和3年版 労働経済の分析」でございます。いわゆる「労働経済白書」の概要でございます。
まず通しページの5/72ページを御覧いただければと思います。こちらの「労働経済白書」は、厚生労働省から例年、閣議配布・公表を行っておりますけれども、昨年の令和2年度につきましては、こちらに記載のとおり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が労働経済に多大な影響を及ぼしたこと等を踏まえまして、作成を見送っております。そして、令和3年版としまして、2019年及び2020年の2年間の労働経済の動きについて分析をしたというものでございます。こちらは7月16日に既に公表したものでございます。令和3年版につきましては、大きなテーマといたしまして、「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」としておりますが、その中でも3つの柱立て、御覧の5ページの目次にありますとおりでございます。これにつきましては、この前のページ、通し番号の3ページ、4ページで2枚にまとめてございますので、そちらのほうで御説明いたします。
通し番号の3ページ、3/72ページを御覧いただければと思います。
まず1つ目の柱が【新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響等】でございます。こちらで労働経済のマクロの状況について分析しております。
まず、1つ目の○にありますとおり、産業別で見ますと、「宿泊業、飲食サービス業」などの産業の雇用者数が減少しております。※のところ、リーマンショック期と比べておりますが、当時は「製造業」を中心に減少しており、それとは状況が異なるということでございます。
それから、2つ目の○の後段にありますが、こうした「宿泊業、飲食サービス業」では、特に女性の非正規雇用労働者を中心に雇用者数が減少してございました。他方で、同じ文の前段にありますが、「医療、福祉」こうした分野では、女性の正規雇用労働者が増加していたという状況でございます。人手不足を背景に積極的に採用されていたということが見て取れます。
それから次に、3つ目の○になります。今回の特徴といたしまして、子育て世帯の女性や学生のアルバイトへの影響が大きかったというところです。こうした方々が労働市場から退出して非労働力人口が増加したということでございます。※にありますが、特に2020年第Ⅱ四半期、最初の緊急事態宣言が出されていた頃に、非労働力人口が大きく増加したということでございます。しかしながら、その下の※にありますが、12月時点では、非労働力人口の水準は全体として見ますと、例年並みに戻っているということでございます。
続いて、4つ目の○ですけれども、一方で賃金のほうを見ますと、政策の下支え効果もございまして、リーマンショック期と比べると、総雇用者所得の減少は小幅なものとなっております。この政策の下支え効果につきまして、この矢印のところですけれども、特に大きな役割を果たしたと考えられます雇用調整助成金の特例措置につきまして、完全失業率の抑制効果を推計してございます。こちら、資料の8ページにございますので、そちらを御覧いただければと思います。通し番号で申しますと10/72ページでございます。
10/72ページを御覧いただきますと、上のリード文にございますけれども、括弧に書いてあるように、一定の仮定の下に算出したものでございまして、相当の幅をもって見る必要はありますけれども、この結果によりますと、左の図の赤い矢印のところになりますが、2020年4月から10月の平均の完全失業率につきまして、2.6%ポイント程度抑制されたと推計してございます。実際のこの期間の完全失業率が、左に数字がありますが、2.9%という状況でございましたので、雇用調整助成金がなければさらに2.6%ポイント上昇した可能性があるという推計になっております。
一方で、上の文のところの※にありますが、雇用調整助成金等の支出は、成長分野への労働移動を遅らせる、それから、雇用保険財政の逼迫という影響ももたらすという指摘もしてございます。
次に、次のページ11/72ページを御覧いただければと思います。先ほどの資料の5つ目の○に書いてあることですけれども、新型コロナの影響とは別に、働き方改革の進展もデータに見られているというものでございます。上に説明文がございますが、労働時間の関係につきまして、2019年には働き方改革関連法によります時間外労働の上限規制や、年5日の年次有給休暇の確実な取得が施行されたというのを背景にしまして、下のグラフ、(1)左上のグラフ、月間総実労働時間や、その右、長時間労働者の割合が下がっているというところ、それから、左下のグラフ、年次有給休暇の取得率は上がってきているというところが見て取れております。
また、賃金の関係につきましては、2020年に同一労働同一賃金法制が大企業で施行されております。これを背景といたしまして、右下のグラフになります。こちらは現金給与総額、(一般労働者)と(パートタイム労働者)を分けてございますけれども、現金給与総額自体は折れ線になりますが、マイナスになっておりますが、この中の要素としまして、右のパートタイム労働者の特別給与といったところは増加している。パートタイム労働者のボーナス等が含まれますけれども、こうしたところは増加が見られたということでございます。
以上が1つ目の柱でございます。
また、資料戻っていただきまして、通し番号4ページ御覧いただければと存じます。4/72ページでございます。
次に2つ目の柱でございます。【感染拡大下で業務の継続を求められた労働者の分析】というところでございます。こちらはいわゆるエッセンシャルワーカーとして注目されました労働者の労働の実態につきまして、JILPTに依頼して行いました労働者と企業へのアンケート調査を基に分析したものでございます。
このうち1つ目の○ですけれども、感染拡大下で業務の継続を求められた業種のうちでも、医療業や介護事業、こうした業種におきましては、特に女性の労働者で肉体的・精神的負担が増大していったということが分かっております。
それから、2つ目の○になります。勤め先においてどういった取組をした場合に、労働者の満足度の上昇につながったかというところを見ております。そうしますと、業種別ガイドラインの遵守といった感染防止対策の徹底とか、人員体制の強化、それから、柔軟な働き方、ここでは具体的には、労働者の希望に応じたシフト勤務等に取り組んだというところですが、そうした勤め先では満足度が上昇した労働者の割合が高くなったということでございます。
続いて、3つ目の柱です。【テレワークを活用して働いた労働者の分析】でございます。こちらもJILPTのアンケート調査を基にした分析でございます。
1つ目の○ですけれども、テレワークについて、調査時点での継続状況を見ております。これについて、感染拡大前からテレワークを実施していた企業や労働者と、感染拡大下でテレワークを始めた企業と労働者を比べますと、感染拡大前、コロナ前からテレワークに取り組んでいた企業や労働者のほうが、調査時点での継続割合が高くなっていたということでございます。
次に2つ目の○になります。テレワークで仕事をする際の主観的な生産性や満足感について、労働者に聞いております。そうしたところ、オフィスで働く場合と比べると、テレワークで働く場合は一般的に、生産性・満足度がどうしても低下しているというデータが出ておりますけれども、これについて、感染拡大前、コロナ前からテレワークを実施していた労働者のほうが、感染拡大下にテレワークを始めた労働者よりも、生産性や満足感の低下幅が小さかったことが分かっております。
さらに、3つ目の○ですけれども、これは、企業がどのような取組をすると、テレワークをする際の労働者の満足度が高くなるか、これを分析しております。企業が、業務範囲・期限や評価基準を明確にする、それから、労働者に業務の裁量を持たせる、こういったマネジメント上の工夫に取り組むことや、テレワークのための環境整備に取り組むことで、労働者がテレワークで仕事をする際の満足感につながっているということが示唆されております。
以上が、資料3「令和3年版 労働経済白書」の概要でございました。
続いて、資料4を御覧ください。「雇用情勢の概況」という資料でございます。
こちらの2ページを御覧いただければと思います。先ほどの「労働経済白書」が2020年12月までの状況を示したものでございますので、その後の足下の雇用情勢について御説明するものでございます。
2ページ、直近の完全失業率が下のグラフになります。6月で2.9%、それから、有効求人倍率が上のグラフになります。6月で1.13倍となっておりまして、雇用情勢には厳しさが見られているという状況でございます。
次に4ページを御覧ください。4ページは、産業別の新規求人数についてでございます。4ページの上のほうの表の一番右のほうに青で囲ってある数字が2つあるかと思います。上の数字が「宿泊業、飲食サービス業」、下の数字が「生活関連サービス、娯楽業」の直近の6月の新規求人数につきまして、前々年の6月、コロナ前の6月と比較したものでございます。いずれも30%以上減少ということになっておりまして、こうした産業では厳しい状況が続いているということでございます。
次に5ページを御覧ください。5ページは、都道府県別の有効求人倍率になります。こちら、各県ごとに3列の数字がございます。一番左がコロナ前の令和2年1月、一番右が直近の令和3年6月の数字になります。1を下回るところに黄色で色をつけてありますけれども、見ていただきますと、東京周辺や大阪、福岡、沖縄、こういったところで1を下回っているという状況でございます。
続いて、9ページを御覧いただければと思います。9ページは、産業別、さらに雇用形態別の雇用者数の動向でございます。ここでは、右上の括弧で囲ってあります【参考】というところを見ていただければと思います。こちらに、産業別、それから、正規・非正規別に、雇用者数の動向、前々年の同月差が書いてございます。下から5行目が「宿泊業、飲食サービス業」になりますが、その一番右、非正規のところを見ていただきますと、5月で▲30万人、6月でも▲16万人ということで、引き続き、前々年の同月と比べた減少が続いているという状況でございます。
資料4については、以上でございます。
続きまして、資料5を御覧ください。資料5が「経済財政運営と改革の基本方針2021」でございます。こちらは6月18日に閣議決定されました骨太の方針のうち労働関係施策を抜粋したものでございます。
まず、1つ目の箱、第1章「経済好循環の加速・拡大」では、雇用と生活への支援としまして、在籍型出向の支援、トライアル雇用の助成、それから、人手不足分野への労働移動、さらには、求職者支援、働きながら学べる環境整備、人的投資支援といったところ、それから、右のほうへ行きまして、生活困窮者へのセーフティネット支援、それから、職業訓練の強化、さらには、雇用保険の財政運営の在り方の検討といったところ、それから、先ほどの雇用調整助成金の特例措置について、地域や企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減といった方針が示されております。
さらに次の箱、第2章ではデジタル人材の育成とか、その次の3つ目の箱では、中小企業の生産性向上支援に取り組みつつ、最低賃金の引上げに取り組むといったところ、さらには非正規雇用の処遇改善といったところ。それから、4つ目の箱では、子供を産み育てやすい社会の実現としまして、雇用環境の改善、改正育児介護休業法の円滑な施行といったところ。それから、5つ目の箱では、女性や若者の活躍といったところについて掲げられてございます。
次に、2ページを御覧ください。
2ページの1つ目の箱、セーフティネットの強化としまして、求職者支援制度の特例措置や高等職業訓練促進給付金の見直しといったところ、それから、非正規雇用労働者やフリーランス等のセーフティネットの関係も記載がございます。それから、右のところは共助社会づくり、さらには就職氷河期世代への支援といった記載がございます。
それから、真ん中の箱には、多様な働き方、フェーズⅡの働き方改革としまして、テレワークや、兼業・副業、フリーランスの関係等々、それから、右にはリカレント教育等人材育成の抜本強化といったところ。最後の箱には、外国人材の受入れ・共生といったところについて記載されてございます。
資料5につきましては、以上でございます。
続いて、資料6-1から6-3までについて、こちらが「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」の報告書の関係でございます。資料6-1が報告書の本文、資料6-2が報告書の別添となります取組事例集となります。資料6-3が報告書の概要をまとめたものでございます。この検討会につきましては、当部会からも守島部会長初めまして後藤委員、冨山委員、また、既に退任されてございますが、森戸委員、大竹委員にも検討に御参画いただいております。それ以外の委員の皆様には、今回、所見ということになりますけれども、時間の関係から、資料6-3を使わせていただいて説明したいと存じます。
資料6-3の1ページを御覧ください。1ページ「はじめに」のところになります。
「はじめに」の<検討の経緯>ですけれども、こちら前回の基本部会の報告書の中で、資料に記載のありますとおり、AI等の新技術が、生産性向上と経済成長の源泉となり、労働条件の改善等に資する、こうしたメリットがある一方、労働者の雇用の在り方に影響を及ぼし得る。こうしたことから、労使コミュニケーションについて議論が必要と指摘をいただきました。これを受けまして検討会を立ち上げて、技術革新が進展する中での労使コミュニケーションの実態や課題の把握、在るべき対応について検討したというものでございます。
<検討の手法・視点>としましては、実際にAI等の導入の際に、積極的に労使コミュニケーションに取り組んできました企業労使や有識者のヒアリングを行ってまいりました。また、検討に当たりましては、このポツにありますとおり、インターネットやデジタル技術の進展に伴いますコミュニケーションや働き方の変化、それから、2つ目にありますが、新型コロナの拡大に伴います急速なDX、こういった変化も労使コミュニケーションに影響を及ぼしております。こうしたところも視野に入れて検討をしております。
こうした検討を経て、労使コミュニケーションの重要性、それから、具体的な内容等について取りまとめた成果がこの報告書ということでございます。
続いて、2ページを御覧ください。
2ページ、1.「検討の前提」としまして、(1)「検討対象とした新技術」でございます。AI等の生産性向上につながるデジタル技術の実装が及ぼす影響というところを一義的な検討対象としましたが、2つ目の○のところにありますが、ICTツールによります社内のコミュニケーションの変化とか、ツイッター等ソーシャルメディアによります労使コミュニケーションへの影響、こういった新技術によりますコミュニケーション自体の変質の観点から、そうしたICTツールの影響についても検討の射程に入れてございます。
それから、(2)「検討対象とした労使コミュニケーションの枠組み・方法」でございます。下の表の左側①のところにあります、課題解決を目的とするフォーマルな組織や会議での労使交渉・協議、こういったところを一義的な検討対象としておりますけれども、右のところに記載のある、こうした労使の意見交換等につきましても、新技術の円滑な導入に資するものについては検討対象に含めたということでございます。
また、いずれの枠組みでも、オンライン会議等、デジタル技術を活用した取組にも注目して検討してございます。
それから、次のページを御覧ください。
2.「調査から見える労使コミュニケーションの現状と変化」でございます。(1)は、厚生労働省の継続的な統計調査「労使コミュニケーション調査」を見たものです。労使関係につきましては、「良好・安定的」と捉える傾向が労使とも強まっているところ。それから、労使の関心事項については、労使ともに「日常業務改善」と「作業環境改善」への関心が強まっており、「経営事項」については高くないということでございます。
次のページを御覧ください。
(2)になります。JILPTに依頼しました新技術導入の際の労使コミュニケーション調査についてです。この調査の対象企業の3割で過去5年間に新技術を導入していたと。そのうち半分では労使で協議をしていて、その他、協議していなかったところについては、経営判断を理由に協議をしていなかったということでございます。
2つ目の○、協議したところでは、約9割で効果があったということで、こちらに記載の効果が挙げられてございます。
それから、3つ目の○ですけれども、新技術導入の際に専門的組織を編成した場合に、様々な改善につながった割合が高い傾向にあったということでございます。
こうしたところから、新技術の定着・運用には、専門的組織を編成することが重要である、こうした可能性が示唆されてございます。
次に(3)、こちらはテレワークについての調査になります。多くの企業が感染拡大を契機にテレワークを始めておりまして、課題としては、労使ともにコミュニケーションの関係、それから、企業からは労務管理上の課題、労働者からはテレワーク環境の課題、こうしたところが挙げられております。
次のページになります。5ページ、3.になります。ヒアリング事例から見える課題についてまとめた部分でございます。
まず(1)、協議の内容になります。ここでは、多くの事例で、新技術導入の目的や必要性が共有されていたということです。枠内にありますとおり、生産性向上の成果によります働き方改革や負担軽減、これが目的であって、人員削減が目的ではないというところを前提として共有していた。それから、2つ目のチェックですけれども、成果を分配する視点も共有されていたというところです。また、業務の変更が生じるというところがありますので、それに対応するための人材育成とか、新たなチャレンジをする人を評価する人事制度とした企業、こうしたところも見られました。
こうした具体例につきましては、その上の※に書いてありますけれども、資料6-2としてございます「取組事例集」としてまとめております。事務局としましては、この事例集を含めまして、報告書の周知を図って、企業労使の取組を促していきたいと考えております。
続いて、(2)アの「個別の企業における枠組み」になります。1つ目は、労働組合がある企業の多くでは、経営側が、集団的な労使関係を不可欠な枠組みと積極的に評価して、この枠の中に書いてありますような積極的な取組がされていたということでございます。それから、その次の○、労働組合がない企業におきましても、集団的な労使コミュニケーションの枠組みを工夫して設けている事例が見られたというところです。この枠内の事例は、労働組合がない大企業の例ですけれども、労使で常設の協議体を階層ごとに設けて、課題解決を図っていたという事例でございます。
次のページを御覧ください。
6ページでは、新技術導入の際に、現場の労働者を巻き込んで、専門的組織をつくって、円滑な導入を実現していた事例です。枠内は総合スーパーの事例と書いてありますが、現場のパート労働者を含むチームをつくって、新システムの運用ルールをつくり、現場の納得感を得ながら全国展開を図った、そして、サービスレベルの向上につなげたという事例でございます。それから、その次の○、「個別的な」というところですが、定期的な個別面談等個別的な枠組みを活用した事例でございます。枠内は、金属製品製造企業の事例でございますが、昭和50年代の機械化の際の反省から、個別面談を通じたキャリア形成支援に注力してきたという事例でございます。
次に7ページになります。
イの「個別の企業を超える枠組み」については、地域単位、産業単位での労使コミュニケーションを図っている事例です。枠内には、県単位で会議体を設けておりますけれども、その下に、地域ごと、産業ごとの協議体を設けて、コミュニケーションを試みていたという事例でございます。いずれの事例も、6-2の「取組事例集」には入ってございますので、また、御参照いただければと思います。
それから、次の(3)になります。労使コミュニケーションのツールとして、ICTツールを使って労働者から自由に情報発信等をできる場を設定していた事例があったというところでございます。これには、情報が得やすくなるメリットがある一方で、一方通行になる懸念もあるということ、めり張りをつけて使い分けるというところが重要という議論がございました。
そして、(4)は非正規雇用労働者とのコミュニケーションを積極的に取っている事例もあったというところでございます。
続いて、8ページに参ります。8ページ、4.環境変化と労使コミュニケーションへの影響について分析した部分になります。
まず(1)は、近年の経済・労働環境の変化につきまして、90年代以降、雇用情勢が悪化して、若年層を中心とした非正規雇用労働者が増加してきた。同時に、企業の人事管理の見直しの中で、従来の年功型から業績・成果型に賃金制度を見直す動きがあった。さらに、経済のサービス化と産業構造も変わってきて、仕事や働き方の多様化、労働者の職業意識や価値観の多様化、これが進んだというものです。
そして、(2)で、こうした中で労働組合については、組織率が趨勢的に低下してきましたけれども、働きがいのある労働環境の実現など、重要な役割を果たしてきたというところ。また、3つ目の○ですけれども、諸外国に見られる常設の労働者の代表機関の設置義務がない中で、企業別労働組合が企業と対抗的な立場で有利な労働条件を獲得するといった本来の役割と併せまして、現場の実情の経営への反映、こうしたことに協調して取り組むという、経営上のパートナーとしての役割も果たしてきたという議論もございました。
そして、(3)労使コミュニケーションへの影響のアのところ「個別の労使コミュニケーションの拡がり」というところでございます。労使コミュニケーションがどう変わってきたかというところになります。業績・成果主義型の人事評価制度の定着に伴いまして、個別の目標評価が上司と部下の個別のコミュニケーションで決まって処遇に影響する傾向が強まってきたということ。それから、労働者の関心事項等が多様化して、個別の労使コミュニケーションを必要とする局面が拡大してきたということ。それから、ICTツールによって、企業から労働者への直接のコンタクトが容易になって、企業が積極的にそうした機会をつくってきたというところが示されてございます。こうしたところにはニーズや利点はあるものの、労使関係の不安定化とか、交渉力の差が危惧されるといった議論、それから、集団的な労使コミュニケーションの再構築や既存の労使コミュニケーションを補完する多様なコミュニケーションの在り方の検討が必要という指摘もございました。
次に9ページに参ります。
イの「労使コミュニケーションの主体の拡がり」です。こちらでは、非正規雇用労働者のほか、2つ目の○にありますが、管理職とか、3つ目の○のところ、フリーランス等の雇用関係によらない働き方をする者にも目配りが必要というところ。このフリーランスについては、その下に矢印がございますが、まずは、ガイドラインが策定されておりますので、こちらの周知徹底が必要であるというところ。それから、その次のポツですが、フリーランス等の雇用関係によらない働き方の者の声を拾い上げる取組も必要であるとの指摘があったというところでございます。さらにウのところ、「労使の関心事項の変化」としまして、労使とも、短期的な視点での利益を目指すようになっている中で、人材育成等の長期的課題に目が向けられにくくなっているという懸念について触れてございます。
次に(4)のアは、オンラインでのコミュニケーションの普及に伴う課題でございます。感染拡大を契機にテレワークが拡大しておりますが、対面等のコミュニケーションに揺り戻すという動きが見られるというところです。その中では、経営者、管理職、それから、若年層、それぞれ困難を抱えておりまして、労使コミュニケーションにおいても、デジタル、対面、それぞれの利点を生かしてバランスよく取り入れることが重要とされてございます。
それから、10ページに参ります。10ページのイ、ソーシャルメディアの進展に伴う課題というところでございます。
ここでは2つ事例が入ってございます。1つ目は、上の箱にありますが、職場での不本意な処遇や取扱いについて労働者がSNSに書き込んで、それが炎上するという事例が生じているということ。それから、2つ目の枠のところですが、ツイッター等のタイムラインを通じまして、労働環境に関する労働者の考え方に影響を与えているというところです。一番下の枠の黄色いところにありますけれども、これによって個人と企業との間で労働環境に関する考え方が乖離して、ディスコミュニケーションが生じやすくなっている。こうしたところについても触れてございます。
次に11ページ、5.「今後の課題や方向性」のまとめのところです。(1)は労使コミュニケーションの重要性と求められる内容についてでございます。新技術導入の際には、労使コミュニケーションが行われなければ現場の実態に合わない形で導入されることになり、労働者の納得感が得られない。こうしたところから生産性向上が達成されず、経済成長に影を落とす結果となることが懸念されるとしております。また、DX等によるイノベーションが、働き方自体の変化を必要とするので、労使コミュニケーションの重要性は増しているとしてございます。
それから、その下の<求められる労使コミュニケーション>としましては、労働者が乗り遅れることなく進めることが大切でございます。企業は労働者のキャリア形成支援や人材育成に取り組むことが重要としております。そのために、枠内にありますが、新技術活用の目的、成果の適切な分配、企業が求めるスキルや人材像等について認識共有が必要であり、労使がパートナーとして共通の利益を目指して、双方向のコミュニケーションを行うことが望まれるとしてございます。
それから、(2)アのところ、そのための個別の企業での取組になりますが、まずはその必要性や有用性について労使が改めて認識を共有すること。また、1つ目のポツですが、非正規雇用労働者、管理職、職業意識が変化する若者層、それから、新しい働き方の方々、こうしたところにも目配りするコミュニケーションの模索が必要とされております。また、労働組合への期待、それから、労働組合がない企業でも、この枠内にありますけれども、様々な意見を吸い上げる関係構築が求められるとしております。
それから、12ページになります。イの個別の企業を超える課題になります。そうした課題については、業種・産業別、地域レベル、全国レベル、こうしたレベルでの取組が求められるというところ。また、従来の労使コミュニケーションの枠組みではカバーできていない労働者やそのような枠組みから距離を置くもの、こうした方々を社会全体として、どのように労使コミュニケーションの主体としていくかも課題とされております。
それから、ウのところ、労働組合への期待としまして、新技術への対応が難しい労働者の雇用やキャリアへの対応について、組合の果たす役割が今後とも期待される等々とされてございます。
それから、(3)では、デジタル技術によるコミュニケーションの変化というところですが、SNSの炎上の事例もある中で、社内の労使コミュニケーションを実効性のあるものにすることが求められるとしております。
最後、13ページの「おわりに」というところでまとめております。
1つ目の○は、新技術導入を通じた生産性向上のためには、集団的・個別的な労使コミュニケーションの活性化が重要であり、その改善・深化に向けた取組が期待されるというところ。
それから、2つ目の○のところ、同時に、新型コロナが不連続な変化をもたらしまして、テレワーク等の働き方の変化、それから、産業をめぐる技術環境の変化、こうしたところへの対応が課題となっていくということ。それから、非正規雇用の方やフリーランスの方など、セーフティネットに関する課題も指摘される中で、これらの人々の声を拾い上げていくことも重要な課題であると締めてございます。
資料6-1から6-3までの検討会の報告書については、以上のとおりでございます。
事務局といたしましては、技術革新の進展の中での労使コミュニケーションのテーマにつきましては、以上のとおり、検討会の委員各位の御尽力によりまして、検討を深めていただくことができたものと考えております。この場をお借りして、御礼申し上げたいと存じます。
事務局からの説明は以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
検討会の報告書、御説明、今あったのですけれども、私も検討会に座長として入っておりましたので、私が見た限りどういうふうな報告書だったのかということについて、ちょっとお話を差し上げたいと思います。
タイトルを見ていただければ分かるように、この報告書は労使コミュニケーションとAI等の技術という、その2つのポイントを取って始めた検討会でした。だけれども、実際問題として、AIの部分をちょっと深掘りしたり、それから、労使コミュニケーション、いわゆる企業内コミュニケーションという部分をちょっと深掘りすると、物すごく多くの変化というか、物すごく多くのいろいろな要因がその裏には関わっているのだということが明らかになりました。
したがって、この報告書はそういう意味で言うと、確かに、AI、新技術と労使コミュニケーションというタイトルにはなっているのですけれども、多分、今、日本の企業もしくは経済社会の中で起こっている様々な変化をその2つの結節点というかポイントを通じて見た、その結果になっているように思います。したがって、フリーランスの話もあったし、地域への展開の話もあったし、それから、いわゆる非正規労働の話もいろいろな意味でいろいろな変化が日本の社会、日本の経済社会の中で起こっている変化がこの中にぎゅっと詰め込まれているという、そういう認識でございます。
ですから、そういう意味で言うと、きれいな報告書にはなっていません。そう言うとちょっと怒られてしまうかもしれませんけれども、一生懸命厚生労働省の方々はきれいな報告書にしようと思って、最後まとめていただいたのですけれども、結果として見ると、いろいろな雑多な要素が、雑多という言い方がいいかどうか分かりませんけれども、いろいろな要素がこの中に含まれているという、そういう認識でございます。
ですから、多分、これからこの報告書の一つの使い方としては、この報告書をさらに皆さん方に読み込んでいただいて、その中からこの変化とこの変化を見るとこういうことが言えるのではないかとか、こういうふうなことをやっていくといいのではないかという一種のリードラインとして使っていただけるといい報告書ではないかなと思っています。それが第1点です。
それから、第2点は、それでもやはりコミュニケーションは、企業内のコミュニケーション、社会におけるコミュニケーションは物すごく重要なんだということがこの報告書を通じて明らかになったように思います。ただ、この報告書で労使コミュニケーションという言葉は、最初にこの検討会に入るときに持ったイメージは、私が労使関係の勉強を始めた頃にあったような、いわゆる労働組合がしっかりとあって、企業のほうも労働組合をきちんと尊重してという、その体制の中でずっと行われてきた労使コミュニケーションというものを前提として、そのイメージは壊れてしまったのですけれども、そういう形で入っていったのですけれども、実は開けてみると、企業内コミュニケーションは、それだけでなくて、いろいろなものが実はある。つまり、直接経営者から労働組合を経由しないで働く人たちにコミュニケーションが行われるであるとか、地域を通じて何らかのまとまりがあってコミュニケーションが通じていくであるとか、あと、産業レベルでコミュニケーションが行われているであるとか、そういういわゆるコミュニケーションが重要だというときに、コミュニケーションが行われる場といいますか、会社であるとか、職場であるとか、あとは、そういうものが、今、結構変わっているのだという認識も持ちました。そういう場で多面的なコミュニケーションをこれから展開していくために、日本の国は何をやっていかないといけないのか。日本の経営者、労働組合はどういうことを考えていかないといけないのかということが明らかになりそうだというのが、私はこの報告書の一つの大きな得たところではないかなと思います。ですから、私だけなのかもしれませんけれども、労使コミュニケーションというものの実態が、今はかなり変わっている。そのところでどうやってそれぞれのアクターたちはそれに関わっていくのかということが分かってくればいいかなということがあります。それが2番目。
3番目。これで終わりますけれども、皆さん方は、先ほど「事例集」がついているという御説明がありましたけれども、そこが実は重要なところで、企業によっては、そのいろいろな動きを自分の会社の戦略とかドメインとか事業構造に応じて、ある意味ではうまく使ってきちんと労使コミュニケーションと呼ばれる今の新しい時代の労使コミュニケーションをつくり上げている幾つかの企業があるのだということが分かったというのは、私にとっては非常にいい喜びでした。
つまり、日本の企業は頑張っているのだと。それだけAIを使って、ITを使って、いろいろな技術を取り入れつつ、労使コミュニケーションの場が変化する中で、新たな労使というか社内コミュニケーションをつくっていく。それをやっていらっしゃる、頑張っていらっしゃる、イノベーティブにやっていらっしゃる企業があるということが分かったことは、私は非常にいいことではないかなと思います。ですから、先ほどおっしゃっていただきましたけれども、いわゆるそういう事例をできるだけ横展開して、先ほど申し上げたようないろいろな変化の中で、コミュニケーションの場も変わる中で、企業内のコミュニケーション、社内のコミュニケーション、労使のコミュニケーションを活発化していく。それを使ってこれから日本の企業をさらに高みに持っていくことが非常に重要であろうな、そこの出発点に立てた。あくまでも出発点ですけれども、そういうような報告書であろうという気が私はいたしております。
すみません。ちょっと長くしゃべり過ぎましたけれども、私の雑感、所感はそんな感じでございます。ありがとうございました。
それでは、皆さん方しゃべりたい方々ばかりだと思いますので、お待たせいたしました。質疑応答・自由討議に入りたいと思います。御意見・御質問等がおありになる方は、Webexの挙手の仕組みの中で手を挙げていただければ、私のほうから指名いたしますので、指名したら御発言いただければと思います。
では、よろしくお願いいたします。
後藤委員、お願いいたします。
○後藤委員 御説明ありがとうございました。守島先生からも報告書についての所感をいただき、ありがとうございました。私も検討会に参加させていただきましたので、報告書については特段申し上げることはないのですが、議題3の「労働経済白書」についてより理解を深めるため、教えていただきたい点がございます。
通し番号の10ページのところに、雇用調整助成金の内容が書かれていまして、緑色の囲みの中に、※で、「一方、雇用調整助成金等の支出は、成長分野への労働移動を遅らせる云々」と書いてあるのですが、この1年半以上続いているコロナ禍において、成長分野への労働移動が行われてきたのかどうか。その場合の成長分野とは、どういった分野を指しているのかを教えていただきたいということ。また関連して、雇用調整助成金は労働者の雇用の維持を図ることが目的で支給されると理解しており、コロナ禍による未曾有の経済危機の中、まさしく労働者の雇用維持のために雇用調整助成金が果たしてきた役割は、非常に大きいのではないかと思っております。コロナ禍で雇用不安が高まっている局面で発表される「労働経済白書」において、労働力の移動を強調するこの表現は適切ではないのではないかという印象を受けたのですが、どういう議論が背景にあったのかを教えていただきたいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 御質問ありがとうございます。
実際、このコロナで雇用維持が図られていた1年間で、成長分野への移動が図られたかというところになりますけれども、この白書の中で申しますと、通し番号の7/72ページに、労働移動の状況につきまして、転職者数の推移のグラフを入れてございます。こちら見ていただきますと、左が転職者数の推移になりますけれども、転職者数ここ近年増えてきたわけですけれども、2020年、コロナの中で転職者数が減っているという状況が見て取れます。この転職者数自体は、経済状況がいいときに増えるというところ、悪くなると減るという、そういう傾向がございまして、例えば2008年のリーマンショックのときも、2008年、2009年、2010年と減っているように見て取れるかと思いますが、実際に、この2020年の労働移動は、動きが低かったという状況でございます。
この内訳が右のところにありまして、特によりよい条件の仕事を探すために転職された方は減っている。一方で、上のところ、人員整理のために辞めた方、転職された方が増えているという、こういうふうな状況になってございます。なかなか景気が悪い状況ですので、こういったよりよい条件の仕事を探すという方が減ってきているという状況でございます。そうした意味で、コロナの1年で労働移動というのが停滞していたというのがデータから見て取れるかと思います。
一方で、産業ごとのところで言いますと、13/72ページを見ていただければと思いますけれども、下の図になります。こちら、産業ごとに雇用者が前年同期とどう変わったかという、2020年の四半期ごとに書いてあります。先ほど言いました右から3つ目のところ、「宿泊業、飲食サービス業」では、ここは男性の正規・非正規と女性の正規・非正規で分けて書いてありますけれども、全体的に見ますと、業の中で減っているというところもある一方で、一番右の「医療・福祉」の分野とか、左から3つ目のところ「情報通信業」こうしたところで雇用者の方が増えているというところでございます。
こうしたところから、全体としての労働移動自体は減っておりますけれども、業種によっては増えているところもあるということになります。移動したところが成長分野というか、人手不足の分野というところはありますけれども、実際、データとしてはこうしたところが白書のほうで取り上げているところでございます。
こうしたところもありまして、殊さら、ここで労働移動を強調したといったところについて御指摘いただきましたけれども、どちらかというと雇用調整助成金といいますか、雇用維持を図ったというところで労働移動が動かなくなっていたというところを捉えてそういった状況になっているということであって、その中でも動かすべきだったというような、そういったメッセージというわけではないと考えていただければと思います。
ざっと私のほうからは以上でございます。
○後藤委員 ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに何人か手を挙げていらっしゃる方がいらっしゃるのですけれども、入山委員と大橋委員が早く退出をされるということで、まず、入山委員から御発言いただければと思います。
○入山委員 守島先生、御配慮いただきまして、ありがとうございます。
どうも皆様、入山でございます。すみません。前回というか、前シリーズのとき、出席率悪かったのですけれども、大変反省しておりまして、今シリーズはなるべく真面目に顔を出そうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
今の御報告ありがとうございました。御報告も守島先生の雑感も、本当にそのとおりだなと思っているので、全く異論はございません。
個人的に私自身は経営学者なのでいろいろな企業さんとおつき合いしているのですけれども、本当にこの前のときから今回で、物すごい変化が一気に来たなというのが、皆さんには釈迦に説法だと思うのですが、まさに守島先生が雑多にいろいろなものが今回のには入っているというのは、本当にそうだと思うのですよね。きれいにまとめることは、多分、これからできないはずで、今回、オンラインコミュニケーションがこれだけ入って、もともとデジタル技術があったわけですけれども、コロナのおかげで、それが一気に10年先に来るはずだったものが去年来てしまったので、そういうときに何が起きるかというと、多分、これからさらに変化するのだろうなと理解しています。
私個人が、これは講演で最近よく言っているのは、多分、これから5年以内にもう一個でかいのが絶対来ると。それは何かというと、今日もこうやって、例えばCiscoのWebexで議論させていただいているのですけれども、こういうのがコロナで入ってしまったわけですよね。ここに、例えば多分自動翻訳が絶対入るので、そうすると、多分サービス業などが、僕はちょっと脅す意味で崩壊すると言っているのですけれども、サービス業は結構言語に守られた業界ですので、今までは日本という一億のガラパゴスに日本語で守られていて何とかなっていたのですけれども、これからオンラインコミュニケーションでドイツ人としゃべるときも、ドイツ人がドイツ語でしゃべったことが日本人に日本語で伝わって、日本人が日本語でしゃべったことがドイツ人にドイツ語で伝わるという時代が多分、早晩来るみたいな。例えばそういうことがあるとサービス業が大変なことになって、一番最初に潰れるのは、ちょっとすみません、大学関係者がいっぱいいるのですけれども、僕は大学ですと言っている。大学はほとんど日本語で守られている業界なので。
というふうに思っていまして、いずれにせよ、何が言いたいかというと、今回のレポートとかは本当に全く異論はないのですが、多分、この審議会のこの部会の役割はさらに大きくなるのではないかなと理解しています。その変化のスピード感が物すごく増すので、来年には全然違うテクノロジーが入ってきて、全然違う労使関係になっているかもしれないみたいなことが起きる時代に入ったので、デジタルツールはこれからもっともっと進化しますから。
なので、まさに守島先生がおっしゃったように、何かきれいにまとまるというよりは、いろいろなことがいっぱい起きてくるだろうし、逆に言うと、この審議会や部会もその中で本当に社会に取り残されない方をつくって守っていくというためには、なるべく未来志向でこういうことが起きるのではないかという、起きていますと言っていると結構もうあれなので、こういうことが起きますよ。さっきみたいな話なのですね。自動翻訳は絶対入るので、大学はなくなりますよねみたいな。そのくらいの感じの方を呼んで、いろいろ議論したりしていくことが重要なのではないかと、個人的には思っておりますという、すみません、という、ただの感想ですけれども、そういうスタンスで個人的には臨みたいと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。ぜひお願いします。
○入山委員 はい。
すみません。この後、私は抜けますけれども、音だけはスマホで聞いておりますので。
○守島部会長 分かりました。ありがとうございます。何かあったら、チャットでも入れていただければと思います。
○入山委員 ありがとうございます。
○守島部会長 では、続きまして、大橋委員何かございますでしょうか。
○大橋委員 ありがとうございます。
私も17時45分ぐらいに出るので、まだあと1時間ぐらいいますけれども、早めにありがとうございます。
まず最初に、白書について御説明いただいて、非常に丁寧な分析をしていただいて、大変勉強になりました。
ここでもサーベイのメインをJILPTにやってもらっていて、この分析も含めて非常に参考になるなと思っていますし、後ほどにも、たしかJILPTの分析があったと思います。AIのところの分析を御紹介いただいたと思うのですけれども、JILPTは御省の研究機関として継続的な研究ができる非常に貴重な組織だと思っていますので、当面、アンケート調査のご発注だと思うのですけれども、どちらかというと、アンケート調査は主観的なことを聞き取るのだと思いますが、もう少し客観的なアウトカムを取っていくようなことを分析としてやられるといいのかなと思っています。
今後も、AIの影響とかは引き続き調べていかなければいけない中で、アンケートの積み上げはなかなか経年比較ができないような調査になってしまうと思うので、もう少ししっかりアウトカムを取っていくような分析を、ある意味JILPTならではの分析をしっかりやっていただきたいのと、雇用調整助成金がちょっと減っているというのと関係したのかもしれないですが、研究にはしっかりお金をつけていただくようにしていただきたいということの2つほどお願いであります。
2点目はAIについての報告書、これはこの部会で発注をした形になっているのかもしれませんけれども、大変勉強になりました。今回、多分、切り取った範囲である労使コミュニケーションは、これは労働組合がなくても労使コミュニケーションが成り立っていたというのを事例集の中でもいただいている形ではありますけれども、もう少しいろいろな変化が多分起きるのだろうなというのは、先ほど入山先生がおっしゃったところもあるのかなと思います。既に、在宅でもZoomの授業でオンデマンドができてしまう姿になっていって、授業の代替わりができてしまうわけですね。そうすると、我々、何度も教える必要はまさになくなってくる可能性があって、オンデマンドは、一人の人が複数の場所で仕事をするようなことが実はできてしまう状況に実際なってきているのかなと思います。この会議に出ながら別の会議にも出ているというのは、まさにそういうふうな姿に近いものと思います。
そうすると、労使コミュニケーションというふうな枠よりももう少し広がりのある議論にならなければいかんのかなという感じもいたします。多分、去年思いもよらなかった状況が今生じていて、また、来年も全然我々が想像つかないような技術の使われ方がされたりするのだと思いますけれども、そういう意味で言うと、走りながらしっかり真っ当な議論に反映させていくような、そうした労働政策の立案の在り方も今後志向していかなければいけないのかなという気もいたします。
以上です。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
大橋委員、時間があったら、また、後で御発言いただければと思います。
それでは続いて、山田委員お願いいたします。
○山田委員 ありがとうございます。今回から参加させていただきます日本総合研究所の山田と申します。よろしくお願いします。
私のほうから3点、基本的にはコメントになるのではないかなと思うのですけれども。1点目は、「労働経済白書」の雇用調整助成金の、先ほど少し出ていましたけれども、ここの部分に関してですけれども、試算がされていて、私の理解ですと、ざっくりこれは雇用調整助成金の支払額が何人の賃金に相当するかということを計算して、失業率の低下効果を試算しているということなのだと思います。労働経済学の世界で、デート・ウエート・ロスという議論があって、要は、実はこれがなくても雇用が維持されていたのではないかという話があるので、これはあくまで試算ですので、はっきりここに書かれているとおりですけれども、今回はこれはとりあえずの試算ということなのでしょうけれども、恐らく今後、改めて一定程度時間がたってから、今回非常に大きなある意味結果的にいろいろな実験的な政策というのもされていますので、時間がたってから政策の評価ということをしていかないとだめなのではないかと、そういう印象を持ちました。
これは労働政策上の、雇用を維持するのか労働移動するのかという、非常に大きな考え方が変わるところで、やはりここはファクトの分析を積み重ねていって、しっかりしたロバストな政策をとっていくということが大切だと思うので、こういうのは一定程度時間がたてば、改めて分析を行うということが大事ではないかと思います。JILPTがたしか以前雇用調整助成金に関してはかなり精緻な分析をされていると思うので、そういうことを改めてするということが重要ではないかと思います。
それと関連して言うと、今回の雇用調整助成金に関しては、教育・訓練とか、在籍出向みたいなものとセットでやっているケースが結構出てきていると思うので、こういうふうな実態も含めての分析ということで、将来のあるべき政策につながる分析をしていくことが重要ではないかなというのが1点目のコメントです。
あと2つは、労使コミュニケーションと技術革新の関係ですけれども、労使コミュニケーションと新技術の関係に関しては、私も、コミュニケーションはすごく大事で、特に新しい技術なり、変革のときは特にしっかりコミュニケーションをとっていくのが、特に長期的にプラスになると考えているのですけれども、恐らく経営者の中には、そういう考えをお持ちでない方も現実は結構いらっしゃるのではないかなと思います。ですから、ここに関しても、一つのファクトというか、これも今後の分析とかということになってくると思うのですけれども、少し参考になるのは、以前、2000年代の半ばぐらいに、これもJILPTがアンケート調査をされていまして、要は経営スタイルですね。ワンマン経営者なのか、すごく労使対応を重視する経営者かによって、実は企業業績とか、その企業が企業危機に陥るかというふうな、そこに結構違いが出てくるというような分析をされているのですけれども、これ非常に興味深く見たのですね。実は企業業績自体は、ワンマン経営者は結構いいのですけれども、経営危機が起こる確率が実はコミュニケーションをしっかり取っているところのほうが確率が落ちるという、そういうふうな調査だったと思います。今の段階で改めてこういう調査をしていくことが大事なのではないか。特に中小企業の様々なデータを取ってやっていくということは大事ではないかなということです。
それから最後に、労使コミュニケーションに関して、これは守島先生がまさにおっしゃった多面的な視点ということが入っているということに関してですけれども、私自身は、多面的な個別ケースを整理して、一応幾つかの次元に分けて考えることが大事ではないかなと思います。要は、大きくは個別的労使と集団的労使に分かれるということだと思うのですけれども、特に重要なのは集団的労使のコミュニケーションですね。これがどんどん小さくなっていったけれども、だからと言って、これの重要性がなくなっているかというと、実は、これをもう一回再構築することが必要になっているのではないかと、私はそういう認識を持っています。
というのは、単に従来型の労働組合との間ということだけではなくて、例えば非常に大きく取れば、最近はESGとかSDGsというふうな話の中で、コーポレートガバナンスの在り方が問われている。広い意味での従業員の経営参画みたいなところの重要性を、世界的に再評価するような動きも出てきていると思います。元来、ガバナンスの在り方も、アメリカは少し違いますけれども、ヨーロッパはそういうことをやってきたわけですね。そういうふうな在り方をどう考えていくのかとか、あるいは、新しくフリーランスが増えてきているわけですけれども、これが単純に労使関係ではないということかもしれませんけれども、広い意味でのもうちょっと拡張された形の労使関係にはなっていると思います。こういうことをどう考えていくのか。そういう幾つかの次元を分けていって、それぞれの考え方を整理していくというプロセスがこれから重要になってくるのではないか。ですから、今後の部会の方向性として、その辺り私は大事ではないかと、今日の御報告を聞いて、半分雑感ですけれども、そのように考えました。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは続いて、古賀委員お願いいたします。
○古賀委員 ありがとうございます。古賀でございます。
まず、雇用調整助成金の問題については、雇用維持のための雇用調整助成金政策と労働移動政策をどのように組み合わせていくのか、ということだと思います。労働移動政策の中身については、マッチングや能力開発をどう組み合わせるか、もう少し厚生労働省も具体的に議論をしていただきたいと思います。雇用調整助成金を多く支出したため労働移動が進みませんでした、というような文言は少々紋切り型かと私も思います。
報告書については、基本部会の提起を受けて、2年にわたる様々な議論を経て今回報告書として取りまとめていただいたこと、検討会委員や厚生労働省の皆さん方に心から敬意を表したいと思います。
守島先生からございましたように、私は、社会や職場のコミュニティをこれからどうしていくのかということは、大きな課題だと思います。意識や価値観が多様化し、一方では技術が益々進展していく中で、社会や職場のコミュニティを我々はどう捉えるべきかという課題に、どうしても向き合っていくことになると思うのです。そしてその一部は、労使コミュニケーションになるのだろうと思います。そういう意味では、コミュニケーションを密に取ることによりコミュニティを再活性化し、それが職場への積極的な参画を促すことになるのは間違いないと思いますし、そのことを実現していくための具体的な手法の幾つかが、この報告書に書かれているのではないかという受け取り方を私はいたしました。
その上で、2点御意見申し上げたいと思います。1点目は、この報告書を今後どのように活用するか。先ほどから、横展開であるとか、事例集を様々な場で検討いただきたいというような表現はあるのですが、具体的にこの報告書を次の検討にどうつなげていくのか。あるいは、横展開をどう図っていくのか。お考えをぜひお伺いしたいと思います。
2点目は、個別の企業の労使を超える課題についてでございます。これは、今後、極めて頻繁に取り上げられ、また広範囲にわたっていく課題だと私は思います。この報告書の中にも、業種や産業レベル、地域レベル、全国レベルの労使コミュニケーションの必要性であるとか、その活性化を期待したいということが示されており、この点は部会の報告書から引き継がれる重要な視点ではないかと思いますので、対応の方策などについて深掘りした議論が必要ではないかと私は思います。
検討会の中では、1例として長野県の事例が報告されていますが、現在、産業雇用安定助成金に関する支援協議会が全国に設置されている事実があり、これを特定の課題や一時的な対応だけではなく、中長期的な地域社会における対応や合意形成の場として発展させていくことも考えられるのではないかと私は思っています。従って、地域における社会対応の枠組みの在り方や、実際にその枠組みを構築する方策、関連・関係者における意識醸成の取組などについて、より深掘りした議論が必要ではないかと思います。この点について、何かお考えがあれば、ぜひお伺いをしたいと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
村山さんお願いします。
○村山政策立案総括審議官 大変貴重な御意見をありがとうございます。
後段の御質問にわたる2点について、現時点で考えているところについて申し上げたいと思います。
まず、今、古賀委員からお投げかけのあった1点目、この報告書の活用でございますけれども、先ほど高松調査官からも御説明申し上げ、また、守島座長、委員の皆様からも言っていただいているように、横展開あるいは参考にしていただき、積極的な活用につなげていただければと思っております。この検討会自身も、委員には労使団体の方々あるいはまた公益の関係の方々に入っていただいておりますので、そういうパイプも生かしながらいろいろなところで御説明したり、関連する議論をさせていただければと思っております。本日も、関係の事務局の方も御同席いただいており、これからも連携を深めながら、いろいろな機会に発信していきたいと思います。
同時に、この検討会の報告書は、テーマを投げかけていただいた、この基本部会にまずお返しをして、本日の御議論を踏まえた上で発信をしていきたいという思いもあります。今日いただく御意見も含めてそうした発信につなげていきたい。あるいはまた、関係省庁等いろいろなところにもこういった成果について働きかけを行っていきたい、こういうふうに考えております。
2点目でございます。在籍出向等支援協議会が現在、労使の皆様方の積極的な御参画の下に、全国で着実に立ち上げられ、活発な議論が行われております。これは労使の御参画とともに政府の中でも厚生労働省だけではなくて、官邸の総理補佐官ができるだけ参画するなど、政府を挙げて雇用を維持しながら、一方で個々の労働者の能力が陳腐化しないように、休業ではなくて、良い形で在籍出向をマッチングしていける取組として進められているところでございます。
古賀委員からは、こうしたものを単発ではなくて、いろいろ質的にも面的にも広げていくことが大事だという御指摘、まさにそのとおりだと思っております。かつて、働き方改革の推進に当たりましても、同様の協議会を都道府県単位の労使団体の皆様とともに立ち上げ、また、そうした取組の実績の上に労働施策総合推進法に、国会修正の形だったと思いますけれども、そうした施策を推進する体制を整備するべきだという基本的な理念規定も盛り込まれております。今回の在籍出向の支援協議会の取組は、中央での政労使の合意を基に各都道府県で一つ一つ積み上げ、実績を出す実践的なスタイルの連携でございますが、これを、また、一つのいい事例としてより発展的な方向に質的にも面的にも広げていくことができればと思っておりますし、その際には、労使の皆様と御理解と御協力をいただきながら進めていきたいと、このように考えております。
雑駁でございますが、今考えていることは以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、続きまして、川﨑委員お願いいたします。
○川﨑委員 どうもありがとうございます。
私のほうからは3点ほどコメントを差し上げたいと思います。
まず1点目は、資料6の報告書の関係です。技術革新と労使コミュニケーションをテーマにコロナ禍で非常に大変な中、とても時宜を得たいい報告書の内容になっていると思いました。参考になる内容も盛り込まれており、よかったかと思います。取りまとめに当たっていただいた守島先生初め皆さんに本当に感謝したいと思います。ありがとうございます。
中身を聞いていて感想になるわけですけれども、このコロナ禍、労使のコミュニケーションだけにとどまらず、職場内でのコミュニケーション、大きくやり方が変わってきたと思っています。そのときにコミュニケーションを一くくりにせず、少し役割に分けて考えていく必要があるのではないかということを最近思っているところです。コミュニケーションを大きく分けると、1つは業務の報・連・相に当たるようなものになってくると思っていまして、これは比較的ITも技術も簡単に使えるWeb会議のようなものが台頭していくと思っているのですが、先ほど古賀委員のほうからのお話もありましたけれども、職場自体はコミュニティの役割も大きく持っているなということを昨今感じます。コミュニケーションを取ることによって従業員間のいわゆるヒューマンタッチな人としてのつながり、コミュニティ、そういったものがあったわけですけれども、これが結構失われつつある。しかも、これがITですぐに代替して担保できているかというと、今のWeb会議を使っている中ではなかなか難しいところがあるのかなということを懸念しています。
そういう意味では、今後、このコミュニケーションという切り口で、コミュニティの役割を果たすコミュニケーションをどういうふうに取れていくのか、これがコロナ禍のリモート型のシステムの中でどうやって取れていくのかということは、今後、検討が深められればいいのかなと思っています。この職場のコミュニティがあること自体は従業員のメンタルヘルスの維持にも非常に役立っていると思っていますけれども、ここがなくなることによる危機感も大きいものがあります。
あと、コミュニケーションの種類としてあるのが、いわゆる業務をやっていくところの中で何気なく会話されるところの暗黙知、業務のノウハウ、こういったものがあろうかと思っていますが、この暗黙知やノウハウをどういうふうにリモート下で蓄積をして人材育成につなげていくのかというところも課題としてあるのかなと思いました。これから、技術革新が進んでくれば、音声認識、言語認識で翻訳する技術が進んでいけば社会が変わってくるというお話もありましたけれども、こういういろいろな認識技術を使うことによってデータベースの蓄積と、それをAI解析やDX化をどう進めていくのかというところにつながろうかと思いますけれども、こういったところでの役割も技術革新とコミュニケーションの切り口の中で検討が進められればと思いました。いろいろな示唆に富んだ報告書の内容で明らかになったと思います。ありがとうございます。
2点目は資料5についてです。これは骨太の方針ということでありましたけれども、報告書の内容を踏まえても、これからはデジタル人材を日本の中でどう育てていくのかというのは重要な課題になってくると思います。リカレント教育とも併せて人材の活用とこういうコミュニケーションの取り方、そんなところまで今後皆さんと一緒に検討できればと思いましたし、もう一つ、コロナ禍で、最近あまり考課されにくくなってきているかと思いますが、外国人労働者の問題。これは日本の中でずっとあり続けるものだと思っています。世界中でこのコロナで変わってきているわけですけれども、その中で、日本は今後、外国人労働者をどういうふうに扱っていくのかということも非常に重要な課題になろうかと思っているところです。今後の検討のテーマかなと思いました。
3点目は、今後、皆さんと一緒にこの基本部会の中でどういうふうに検討が進んでいくのかというところの中で思うところですけれども、コロナによって技術革新、いわゆるコミュニケーションツールあるいはITが一気に社会の中での使われ方が変わってきたのだと思います。さらに、これからももっと変わっていく本質的な社会の変化につながっていくと思うわけですけれども、その中でどういう働き方が生産性の向上と働く人間一人一人の幸せにつながっていくのかと、そういうふうな観点での検討が進められたらいいのかなと思いました。コロナもいずれの段階かでは収束するのだと思いますけれども、そのときの社会の在り方は今と全然違っていると思います。その中でも、日本の社会が発展できるようなありようというところにつながる提言を検討できれば、未来志向の提言ができればというふうなところを感じたところです。
報告書を伺いながら、以上のようなことを感じました。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
続きまして、岡本委員お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。今期から委員になりました岡本です。よろしくお願いいたします。私からは、検討会の報告書を受けて、2点意見を申し上げたいと思います。
1点目は、本文の15ページから始まる「技術革新が進展する中での労使コミュニケーションの促進」や、17ページからの「おわりに」の部分で課題提起されていましたギグワーカーやクラウドワーカー等を含む、いわゆる曖昧な雇用として働く者の声をいかに拾い上げて労使コミュニケーションの主体としていくのかという視点で、話をさせていただきたいと思います。
曖昧な雇用で働く者への対応については、3月に策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」で整理されたり、また、労災保険特別加入制度の対象業務を拡大するなどの取組は行われています。ガイドラインは省庁横断的にまとめられたことや、フリーランスの方が自分のことだと思える事例が挙げられていて、法律的に何が問題となるのか理解できるという意味ではよいのですが、その後どうすればよいのかは、これではまだよく分からないと思います。
例えば、労働者性の判断についても、結局は労働組合をつくっても、発注者やフランチャイザーから団体交渉を拒否されれば泣き寝入りをするか、または労働委員会に判断を仰ぐしかありません。労働委員会での命令が確定されるまでは四、五年かかるというのが実態です。労働者性や使用者性の判断の判例はこれまでも幾つか積み上がってきましたが、結局のところ、今のところは個別に判断するしかありません。コロナ禍も含めた社会の実態、それから、就業形態の多様化を踏まえて、労働者概念の見直しと拡充が必要なのではないかと思います。なお、世界の潮流としても、欧州のみならず、例えば韓国でも、プラットフォーム労働の拡大を受けて、政労使間の対話が重ねられ、その中で政府が保護対策を打ち出すとか、プラットフォーム配達労働に関する労使の協約が導き出されるなどの動きもあると聞いています。日本において、従来の労使コミュニケーションの枠組みではカバーできていない、こうした曖昧な雇用で働く者に対してどう対処していくのか。報告書の課題意識を受け止めて、実効性ある政策を検討していく必要があるのではないかと思います。
2点目は、中小企業における良好な労使コミュニケーションの推進についてです。私はこの2月まで中央労働委員会で委員を務めていたのですが、その際に担当した事件の中には、職場で労使コミュニケーションがきちんと取られていれば、紛争は未然に防げたのではないかと思える事件も幾つかありました。そこで、この報告書を活用して、特に労使コミュニケーションが低調な中小企業等での取組を推進して、状況をフォローアップしていくことも重要なのではないかと思っています。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは続きまして、佐々木委員お願いいたします。
○佐々木委員 ありがとうございます。佐々木です。よろしくお願いいたします。また、このたびの非常に全てを網羅していただいている報告書、どうもありがとうございます。非常によく分かったと思います。
一方で、報告書というのは、今日現在、そして、過去の出来事についてまとめるというものになっていくので、これを活用すると、これが記録あるいは今日時点の分析ということで、研究材料としてはいいのかもと思うのですけれども、先ほどもお話があった大学は半分なくなるかもしれないとか、未来にこんなことが起きるよという意味で、企業がこの報告書をどう使うのかというと、別に今日現在、日本で全体がどうなっているかを知っても、そこは企業の経営者にはなかなか利用はしにくい。それが事例集というところになっているのかなと思うのですけれども、今後の考え方としては、もう少し、つくり方というか構成や調査の内容も踏み込んでいって、少し未来志向になると、研究材料としてだけでなく、実際に本当に雇用している企業側も雇用される側の働き手も活用できる、そんなものにもっともっとよくなっていくのかなと思った次第なのですね。
そうすると、この事例集に加えて、例えば労働者の声としてなかなか拾いにくいのがポジティブな意見だと思うのですね。労働組合を含めて出てくるものは、ネガティブなこんな問題があって困っているとか、こんなひどい目に遭ったので助けてくれとかそういうようなところがどうしても声が大きく出てくるわけですけれども、例えば私はこんなふうに家で働かせてくれたら、あるいは夜中だってこのぐらい30分パソコンを開かせてくれたら子育てしながらもっと働けるのにとか、その意欲があるところでの改革とかという、そういうポジティブな声を拾う仕組みとかヒアリングの仕組みというのが加わったらいいのではないか。
それから、もう一つはAIと労使の関係は、ITの技術が進むというのは本当に毎日進化するのですね。このWeb会議も1年前は、みんな「え、どうやって使うの」「何ですか、それ」と、こういうような人たちが多くて、私たちイー・ウーマンでも国際女性ビジネス会議を9月にやるときに、1,000人以上が23か国から全部10時間同時通訳付の会議に入りましたけれども、その中では一部、例えば前日にリハーサルというかアクセステストですね、お客様、参加者のテストをして、zoomってこうやって使うのよとかというふうに教えなければならなかった。多分、今はそれをほとんど教えなくても皆さん使える。このぐらいITはどんどん毎日変わるのですが、そこをどう使っていくのかは経営者次第になってくるので、この事例というのが、ITでこういう技術ができるということに加えて、どれだけ経営者が新しく学習をしているかとか、どのぐらいの意識やマインドを持っているかで、これから企業が伸びるか潰れてしまうかという分かれ道になるのだと思います。
そうすると、この報告書で、こういう企業がこんなことをやっていたという事例というだけにとどまらず、その会社の経営者はどんな学習をしていて、どんな行動やライフスタイルをしていて、どういうマインドを持っているとこういうことの発想や仕組みを動かそうという気になるのかという、そういった労働者のポジティブを大きくする、それから、経営者の分析をする志向の分析というのが加わるといいなと。
3つ目に加わるといいなと思うのが、今度は働き手の意識で、在宅勤務をしている人が多くなったり、テレワークになってくると、先ほどから出てくる、それを使う技術とかそういったものとか、精神的にモチベーションが上がる・下がるという話は出てくるのですが、企業として一番の課題は、その人たちがつまずいたときに見えないので、研修の仕組みが、研修みんな集まって、ただ、ここで聞いていると思ったら聞いていないとか、それは分からないので、あるいは、肩たたいてあげることもできないとかとなってくるので、個人の人たちで、先ほどの経営者と同じように意欲を持って働きや技術や意識がどんどん高まっていく人とそうでない人の見分け方だったり、研修の仕方みたいなものも特化した調査が今後行われていくと、活用しやすいのかなと思った次第です。
ちょっと参考までですけれども、私どもイー・ウーマンでは、ダイバーシティインデックスというのを多分日本初というか世界初でつくっておりまして、3年目でこの前レポートをまとめて御報告をしているところですけれども、これは組織の中に多様性があるということがどれだけ経営の戦略だったり利益につながっているかということを数値で分析していくものですけれども、女性が何人かとか、役員に何%外国人がいるかとかという外形的なデータではなくて、実際に一人一人の従業員や経営者がどう考えて、何を知っているのかということのテストまで、アンケートだけでなくて、テストをして、偏差値を出して、かなりクロスで分析して、それをCEOにレポートをしているのですけれども、CEOにレポートをするということを始めて2年目ですが、そうすると、CEOに直接そういった組織の多様性について1時間報告をして、議論をすると、経営者が組織というものを変えることがイノベーションに変わる。多様性というのは、多様な視点が入る組織になっていくというのは健全であるということが分かると、物すごく変革のスピードが上がっています。
なので、こういった報告書の中にも、「労働経済白書」という今までのスタイルのものから経営戦略と労働環境の関係がアライメントしていると企業が伸びているということまでつながっていくような、そういった報告書になっていくといいなと思った次第です。
あと、最後に1点だけ。この「労働経済白書」が、今までは日本の国の日本人の働き方みたいなデータ分析というか、そういう頭で外国人がどうだろうみたいなことが時々入るということだったのですが、このオンラインの世界になりましたらば、先ほど私たちの会議、去年やった国際女性ビジネス会議は23か国からアクセスがあったわけですけれども、労働市場も本当にボーダーレスになっています。社外取締役も、今、日本に住んでいない人たちがどんどん参画するようになりましたし、役員会も株主総会もオンラインになってきている。そうすると、この「労働経済白書」が一体どの辺のところをターゲットにして何を分析すると、本当の日本の企業が成長していくのかというところが分かるのかなと思うので、この調査範囲というか、事例の範囲も含めて、ここも今後検討が必要ではないかなと思っています。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、続きまして、武田委員お願いいたします。
○武田委員 ありがとうございます。
皆様、大変御無沙汰しております。武田でございます。本日は、他の予定により、参加が遅れましたことを、まずは深くお詫びいたします。
報告書に関しましては、事前に拝読いたしましたけれども、皆様おっしゃったとおり、大変すばらしい報告書であり、特に事例がよかったと思いました。コロナ禍で取りまとめに御尽力いただきました部会長初め委員の皆様の御尽力に、改めて、この場を借りて、敬意と感謝を表したいと思います。ありがとうございます。
今後に向けて意見を2点述べたいと思います。
1点目ですけれども、今回の問題意識は、コロナ前からAI等の技術が進展する中で、労働市場で拡大する可能性の高い人材のミスマッチの解消、それに向けて今から何をすべきかであると考えます。この問題意識を私どもはコロナ危機前から持っておりまして、この部会でもそうした観点から分析結果等を紹介させていただいたことがございました。労働市場で将来起きるだろうミスマッチの解消に向けて、FLAPサイクルをしっかり回していくことが大切というお話をいたしました。今回初めての方もいらっしゃいますので、改めて申し上げますと、FLAPのFはFind、気づきということです。LはLearnで、学び直し、リカレント教育、そして、AがAct、PはPerformで、学んだ後にしっかり活躍し、成果を上げていくことが大事であるという考え方です。
学び直しやリカレント教育は、極めて重要であり、政府としても近年力を入れられ、多くの支援制度、補助金がございますけれども、残念ながら民間企業に勤めマネジメントしている立場からみておりますと、活用する人は活用するのですが、活用しない人はいつになっても活用しないという状況で、広がりを見せているかといえばそんな感じはしておりません。企業の中でもスキル取得に向けて様々な支援・制度があり、昔に比べれば環境は整ってきていると思います。したがって、学び直しやリカレントは、資金支援では解決しないのではないかというのが私の感覚です。Fの部分、それから、AとPをどう進めていくかが課題と思います。Fとしては、コロナ禍で産業構造の転換が進む中、先ほど佐々木委員もおっしゃったことですけれども、経営の姿勢、経営として改革に取り組むこと、そして、それをしっかり従業員に伝えられているのか、が大事な部分と思っています。
経営のパーパスを明確にし、経営戦略を伝えること、さらには、自社の描く事業戦略、これとセットで、人材戦略を経営者が従業員にしっかり伝え、「あなたにはこういうことを学び直してほしい」ということを伝えられるかが、企業の生き残りを左右する時代になってきていると思います。先ほども御意見出ましたけれども、この観点からも、労使でのコミュニケーションは重要と思います。職業情報や求められるスキルをデジタルを活用し見える化していくことも重要と考えます。デジタルによりできることも増えてきていますので、その面でも官民で協力して進めていければ、今申し上げたFの部分がより強化されていくと思います。
また、AとPということですが、学び直した後でも職場で活躍できない、報酬も上がらないというのが日本企業の特徴です。年功的な制度の下では、留学しても変わらないということがよくあります。FLAPサイクルは、AとPがあって、次のFにつながっていく。つまり、1割の人がFLAPを回った状況を見た、次の2割、3割の人たちがどう動いていくかが大事です。
2点目は、コロナ禍での危機対応から、ポストコロナを見据えた動きへどう移行していくかという点です。現状のままですと、スイッチングが遅れるリスクがあるのではないかということを危惧しております。雇用調整助成金については、失業率の上昇を食い止める効果がありますが、長引く中で、企業にとどまっている従業員のモチベーションの低下が懸念されるほか、ポストコロナを見据えた動きとして、残る需要と失われてしまう需要がある中で、学び直しや異動に財源の使い方の軸足を徐々にシフトさせていく必要があると考えます。ポストコロナに向けた世界の動きに、日本だけが取り残されてしまうと、これは働く人々にとっても非常にネガティブです。ポストコロナを見据えたアクションは、働く人々にとってもプラスになるということを踏まえ、政策のかじ取りをお願いしたいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
手を挙げていらっしゃる方はこれで一巡したのですけれども、山川委員と中野委員、何かございますでしょうか。労働法関係の方がどちらも御発言をなさってないので、ちょっと惜しいなという感じを私個人的にはいたします。
○山川委員 では、私のほうからよろしいですかね。
ちょっと感想めいた話ですけれども、私のほうはこの報告書、労使対話のほうを非常に興味深く読んでいます。ちょっと不勉強で申し訳ないですけれども、私も個人的に、私、ふだん使用者側の代理人をしているのですけれども、集団的労使関係は非常に重要だなと思うし、しかも、これから雇用が流動化していくと、会社員の帰属意識はどうしても下がってきてしまうから、企業別の労働組合の組織率をこれから上げようと言ったって、率直に言ってちょっと難しいのかなとも思うし、でも、他方で集団的労使関係はすごく重要だし、あと、産業別とかそういうところも非常に重要なのだけれども、では、それに対して何か積極的な検討はしているのかな。例えば、分からないですけれども、ヨーロッパのワークスカウンシルみたいとか、ちょっと義務づけをするとか、そういう検討はされているのかなというのがちょっと一つ前から個人的にかなり興味があったのが1つ。
それから、今、それを言っていて自分で思ったのですけれども、結局、若い人がどう感じているのかなというのを非常に興味があって、私も若いつもりではいたのだけれども、団塊ジュニアなので、もう全然若くないし、ちょっと皆さんの年齢を存じ上げないけれども、ここにもそんなに若い人は多分いないと思うのですけれども、集団的労使関係にしても何にしても、若い人はこれからちょっとかわいそうなのだけれども、職業年齢めちゃくちゃ長いので、仕事に対する考え方、労働組合に対する考え方、今後のキャリア形成に対する考え方、会社に求めるものは、多分、私なんかとは全然違うと思うので、そういう若い人の視点とか考え方みたいなことも、今後、御紹介いただけると大変参考になるかなと思いました。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
中野先生、何かございますでしょうか。
○中野委員 名古屋大学の中野と申します。私は労働法の専門ではなくて、社会保障法の専門でして、この中では、恐らく一番門外漢の人間になるのかなと思います。
○守島部会長 ごめんなさい。誤解しておりました。
○中野委員 なので、労使コミュニケーションという話題に関しては、私のほうからあまり申し上げることはないのですけれども、御議論の中にも出てきておりました雇用調整助成金の問題に関しまして少し述べさせてください。本日は皆さん、雇用保険の雇用調整助成金そのものを念頭に置かれて御議論をされていたと思うのですけれども、今回のコロナ禍では、例外的に雇用保険の対象とならない週20時間未満の労働者であるとか、そもそも雇用保険が適用されないフリーランサーや中小事業主に対しても国庫で特別な対応を図っていたかと思います。
それはコロナという未曾有の危機だということで、そういう特別な対応がなされたのだと思うのですけれども、社会保障法の視点等からしますと、そもそも雇用保険に加入せず、保険料を払ってこなかった者に対して、国民の負担でその所得の補償をするということに整合性があるのかという問題が今回提起されたのではないかと思います。そういう方たちに給付金を出すなということではなくて、そもそも雇用保険が短時間労働者やフリーランサー等を除外しているということ自体を考える必要がある、そういう機会なのではないかということです。
今日、資料に出ておりました骨太の方針とか検討会の報告書等でも、非正規雇用の人やフリーランスへのセーフティネットの拡大等、そういったことが問題提起としてはされているのですけれども、そこで挙げられている解決策としては、被用者保険の適用の拡大とか、労災保険の特別加入の拡大等で、いわばアドホックな対応が述べられています。
先ほどご提案がありましたように、労働者概念を見直すという方向で考えるのでもいいでしょうし、被用者とそれ以外という分け方をしている社会保険の在り方自体も、今後5年間の間に大規模な技術革新で大学がなくなるような世界が来るのであれば、この機会に大きな視点で考えていくということが必要になるのではないのかなというのが、本日のご議論を伺いながら私が思っていたところです。
すみません。以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。すみません。御専門のことを間違っておりました。
これで一応一巡したのですけれども、もうそろそろ終わりですけれども、どなたか、これだけは言っておきたいということがおありになれば、簡単に受け付けますけれども、大丈夫ですかね。
ありがとうございました。
それでは、間もなく終了時刻となりますので、この辺りで今回の議論は終了させていただきたいと思います。
皆さん方に議論していただきました「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」の報告書につきましては、本部会として了ということにさせていただければと思います。
当部会で今後検討を深めるテーマにつきましては、大分意見をいただきましたけれども、報告書で示された課題とか、本日頂戴した意見を基にいたしまして、私と事務局、それから、皆さん方にも御相談差し上げるかもしれませんけれども、秋以降、皆さん方との御相談の上、どういうテーマでこれから進めていくかということについては決めていきたいと思います。また、御相談に上がると思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
本日は、活発な御議論をどうもありがとうございました。
最後に、次回の日程等について、事務局からアナウンスをお願いいたしたいと思います。
○松本政策統括官付参事官 次回の日程につきましては、調整の上、追って御連絡申し上げます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、以上で本日の「労働政策基本部会」は終了とさせていただきたいと思います。御多忙の中、御出席いただいて、どうもありがとうございました。