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- 第25回社会保障審議会年金部会(議事録)
第25回社会保障審議会年金部会(議事録)
日時
場所
全国都市会館 2階 大ホール
出席者
- 会場出席委員
-
- 菊池部会長
- 小野委員
- 小林委員
- 是枝委員
- 佐保委員
- 島村委員
- たかまつ委員
- 武田委員
- 永井委員
- 原 委員
- 平田委員
- 堀 委員
- 百瀬委員
- オンライン出席委員
-
- 権丈委員
- 駒村委員
- 嵩 委員
議題
- (1)社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律について(報告)
- (2)社会保障審議会年金数理部会の公的年金財政状況報告について(報告)
議事
- 議事内容
○総務課長 それでは、ただいまより、第25回「社会保障審議会年金部会」を開催します。皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
まず、委員の御異動について報告いたします。
出口委員が御退任となりまして、御後任として、日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長の泉俊郎様に、新たに委員として御就任いただいております。
なお、本日、泉委員は御欠席でございます。
続いて、本日の委員の出欠状況を報告いたします。
先ほど申し上げましたように、本日は泉委員が御欠席でございます。
また、権丈委員、駒村委員、嵩委員は、オンラインで参加されています。
出席委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しています。
次に、資料を確認いたします。
傍聴者の方は厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
本日は資料1、2、3、4-1、4-2、また、参考資料を事務局で用意しております。
また、是枝委員から資料の提出がございます。
なお、本日、備えつけのマイクに不具合がございまして、御発言いただく際は、ハンドマイクをお回しいたしますので、そちらから御発言いただくようにお願いいたします。
事務局からは以上です。
以降の進行は、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、おはようございます。
本日も大変お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。約半年ぶりの開催となります。
カメラの方は、ここで御退室をお願いいたします。おられませんね。
それでは、早速議事に入らせていただきます。
本日は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律について(報告)」。それから「社会保障審議会年金数理部会の公的年金財政状況報告について(報告)」。いずれも報告ということで、以上2点を議題といたします。
年金制度改革につきましては、本部会において委員の皆様から御議論いただきまして、昨年12月末に議論の整理を行ったところでございます。御協力ありがとうございました。
その後、御案内のとおり、厚生労働省で社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案を5月16日に国会に提出し、紆余曲折ございましたが、国会での審議を経て、衆議院で修正の上、無事6月13日に成立し、6月20日に公布されたところでございます。
本日は、この法律について事務局から御報告いただき、その後、委員の皆様から御意見を頂戴したいと思ってございます。
それでは、議題1にまとめて事務局から御報告をお願いします。
○年金課長 年金課長でございます。よろしくお願いいたします。
私の方からは、議題1に関連して資料1の御説明をします。資料1を御覧ください。
まず、表紙は先ほど御紹介があった成立した法律の名称でして、その概要が2ページになります。年金部会で御議論いただいたものをベースに法案化して、与党のプロセス、国会審議を経て成立したものです。
概要となっており、真ん中辺りのI番とIII番が公的年金関係、それから年金部会ではなく企個部会で議論頂いた私的年金の見直しがII番で入っております。
黒い部分と赤い部分がありますが、黒い部分は内閣の閣法として提出した部分で、皆様も御案内の項目が入っています。
赤い部分を先にこの資料で御説明すると、これは衆議院による修正で盛り込まれたものでして、いわゆる基礎年金の給付水準の底上げというものです。修正で盛り込まれた条文を、ほぼそのままこの赤い部分で記載しています。
2つに分かれており、冒頭は「政府は」となっており、次期財政検証、これは2029年になりますが、ここで基礎年金と厚生年金の調整期間の見通しに著しい差異があって、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、3行目ですけれども、2つのスライドを同時に終了させるための法制上の措置を講ずるものとしています。また、この場合においては、給付と負担の均衡が取れた制度にするとなっており、基礎年金の水準が上がるということは給付が上がりますので負担との均衡を図るという規定も入っています。
それから②ですが、その措置を講ずる場合においてということで、1行目の後半から2行目辺りですが、基礎年金と厚生年金の額が、①の措置を講じなかった場合と比べて下回る場合には、その影響を緩和するための措置を講ずるというものです。
これは、マクロ経済スライドの終了期間を一致させる場合には、当面は厚生年金のマクロ経済スライドが継続されるので、それによって給付額が下がることを念頭に置いて、その影響を緩和する措置を講ずるという規定です。
この両者が衆議院の修正として入りまして、参議院でもそのまま賛成多数で成立しております。
それから施行期日が一番下に入っており、これは各項目で御紹介してまいります。
3ページを御覧ください。
各項目のうち、まずは被用者保険の適用拡大です。左側が短時間労働者の要件、右側は個人事業所の非適用業種の解消です。
拡大の方向性については、年金部会からもいただきましたが、その具体化として、左側の短時間労働者について、賃金要件については、最低賃金の状況を見極めて公布から3年以内の政令で定める日で撤廃することとしています。
それから、企業規模要件については、左の下の赤で囲っておりますスケジュール、施行期日によって撤廃をすることを法律に盛り込んでいます。
それから、右側の個人事業所についても見直しの方向性をいただいておりましたが、具体的には、常時5人以上の場合、今は法定業種というのがございますが、これをなくして適用にすることで赤い箱で囲っています。
ただ、吹き出し部分にあるとおり、施行日について2029年10月とした上で、経過措置として、施行時に現に存在する事業所については当面適用除外という規定もございます。
それから、右の真ん中ですが、就業調整を減らすための保険料調整という仕組みを入れています。
こちらは、年金部会では、労使が任意で負担割合を変更できるという形で議論いただきました。それについては様々な御意見があったところで、その後、調整を重ねて最終的な法律に盛り込んだのがこの形になります。
事業主が労使折半を超えて多めに保険料を負担するという構造になっておりまして、表にあるとおり、標準報酬の月額に応じて、例えば8.8万円ですと、労働者の負担割合が本来は労使折半50%であるところ25%に軽減すると、こういう措置になっております。その分、事業主に多くを負担いただく仕組みになりますが、その部分については制度的に支援するということで保険料をお戻しするという仕組みです。
これは3年間の特例的、時限的な措置として法律に盛り込んでおり、利用される事業者の方に手を挙げていただいて、簡便な方法で利用いただける仕組みとなっています。
続いて、4ページ、在職老齢年金制度です。
こちらも見直しの方向性は部会のほうからいただいておりましたが、具体的な額として、左側の赤で囲っているとおり、現在の数字を62万円に引き上げます。年金部会では3案を御提案していましたが、そのうちの62万円の引上げになります。
これは、50代の平均的な賃金と平均的な厚生年金の額を念頭に置いて設定した数字になります。
こちらは来年4月の施行となっており、右にあるとおり、法改正で新たに20万人の方が老齢厚生年金の受給が可能になると見込んでおります。
続いて、遺族年金の見直しです。5ページです。
遺族厚生年金については左側、遺族基礎年金については右側でして、年金部会の議論でいただいたものを条文化した形で措置しています。
遺族厚生年金の見直しについては、現在、20代から50代でお子さんがいらっしゃらない場合の男女差というものを解消して、原則5年の有期給付とし、ただし、低所得あるいは配慮が必要な方については、65歳までの給付を継続します。
それから、有期給付の加算措置や、死亡分割を盛り込んでおり、左の下の赤字で書いた部分が配慮措置として今回改正に盛り込んでいます。
また、中高齢寡婦加算という寡婦のみを対象とした加算については、25年かけて段階的な縮小を盛り込んでいます。
遺族基礎年金、右側になりますが、現在、生計を維持する場合には子に対する遺族基礎年金は支給停止となっています。これについて部会でも御議論いただき、今回は支給停止措置を廃止して、新たに支給するということで盛り込んでおります。
国会では、今回の改正の影響を受けない方についての確認する議論などもありまして、5ページ右の下では、既に受給権を有する方あるいは御高齢の方、18歳未満のお子さんがいる場合のその期間中の給付など、今回の改正の影響を受けない方について記載しています。改正項目というよりは、改正しない項目になります。
続いて、6ページ、標準報酬の上限の段階的引上げです。
こちらも見直しの方向性をいただいていましたが、具体的な額として、赤で囲っていますが、今回改正では現在の上限65万円を75万円に引き上げることとしています。
ただ、一度に引き上げるのではなくて、段階的な実施を予定しており、施行時期は※で書いていますが、2年後の2027年9月に68万円、以降1年ごとに71万円、75万円と引き上げることとしています。
それから、赤で囲っているのは、保険料あるいは給付の変化を記載しています。
右の方は現在の分布で、厚生年金では上限等級65万円の方が9.6%、男女計では6.5%となっておりますが、この上限等級の追加ルールの見直しもしており、上限が4%を超えた場合には新たな等級を政令で追加できるという規定も盛り込んでいます。現在の、いわゆる2倍ルールというものを見直して、新たに4%ルールで今後運用していくことになります。
続いて、7ページと8ページは私的年金の見直しです。
こちらは、企個部会で御議論いただいた内容を法案に盛り込んでおり、7ページは、iDeCoの加入可能年齢の引上げで、70歳まで継続して加入できるという規定です。
8ページは、企業年金の運用の見える化ということで、現在厚生労働省に提出頂いている情報には、公開されているものと、されていないものがございますが、一定の事項を公開することについて法律の措置を設けています。
続いて、9ページからは「その他事項」となり、最初は加算の見直しです。
こちらも方向性はいただいていましたが、具体的な金額が入りまして、9ページの左の上、子供に関わる加算については、現行、第2子と第3子と分かれているのを一律にした上で、24年度価格で年額28万1700円と、約2割の引上げとしています。
それから、左の下は配偶者に係る加給年金の見直しで、36万7200円と約1割の見直しとしています。ただ、既に受給されている方については維持します。
一方で、子供に関わる加算については、その時点から増額する予定で、施行日はともに2028年4月になります。
それから、10ページは脱退一時金の見直しで、こちらも議論いただいた内容を規定しており、見直し内容について2点を赤で書いておりますが、1つ目は再入国許可つきで出国した方について、その期間内は一時金を支給しないというもの。施行は公布から4年以内の政令で定める日としております。
それから、支給上限について5年から8年にするということで、政令で措置予定です。
11ページは、その他のやや細かい事項ですが、これも年金部会で議論をいただいた事項が入っております。
最初の①から③は、期限が切れる事項について延長するものです。
①は、障害年金の、いわゆる直近1年要件を10年延長するものです。
②の納付猶予制度については、部会で議論いただき、様々な御意見がありましたが、今回は5年の延長としており、次期改正においても議論いただくことにしています。
それから、高齢任意加入、これは65歳以上の方が特例的にできるものですが、10年分の期間を延長して利用できる方を増やしています。
それから④は厚生年金のマクロスライドについて措置するものです。真ん中に現行の仕組みがありますが、去年の財政検証によると、令和10年に厚生年金のマクロ経済スライドは終了する見込みになっています。
こちらについて、前回改正法附則の検討等を踏まえて、右のほうですが、この措置を2年間延長して、次期財政検証の翌年度、つまり令和12年度まで継続するものです。
ただし、これに伴って不利益をこうむる方がいらっしゃらないように配慮措置を設けておりまして、具体的には、マクロ経済スライドの調整率を本来の3分の1にするという規定を盛り込んでいます。
それから、⑤は離婚時分割の請求期限についてで、2年から5年、民法の改正に伴い延長することとしています。
それから、12ページの⑥では、遺族厚生年金の受給者の繰下げを許容する仕組みについてで、部会での議論を踏まえて繰下げを認める仕組みを措置しています。2028年4月の施行です。
それから、私的年金関係については時間の関係で省略しますが、3点改正項目を入れています。
13ページ、改正法の附則の検討規定です。これは、年金部会の「議論の整理」で今後の検討事項としていただいたものと共通しているものがあり、附則第2条として4つ規定しています。
第1項は、前回の改正法でも同じものが入っておりました。下の参考1に平成25年プログラム法というのがございますが、ここで検討すべき事項というのが4点挙げられておりまして、こちらについて引き続き検討を加えるというのが第1項です。
第2項は、適用拡大についてで、国民健康保険制度の在り方に留意しながら、被用者保険の適用範囲について引き続き検討を行うというものです。
第3項は、いわゆる基礎年金の拠出期間の45年化と言われるものです。被保険者期間の延長について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるという規定になります。
第4項は、第3号被保険者について、国民的議論が必要であるという認識のもと、実情に関する調査研究を行い、在り方について検討を行うとしています。この第3項、第4項辺りは、年金部会での「議論の整理」で引き続き検討が必要な事項とされたものと共通の事項です。
それから、国会審議の過程で附帯決議が付されています。その御紹介が14ページ以降となります。
14ページから、左側が衆議院の厚生労働委員会の附帯決議、右側が参議院の厚生労働委員会です。
各項目は私どもで振り分けた分類ですが、最初は被用者保険の適用拡大あるいは保険料調整制度についてです。
参議院は衆議院と同じ部分が多いので、衆議院のほうをご覧いただきますと、適用拡大については事務負担の軽減であるとか、周知広報に努めることといった話。
2番目は、保険料調整制度について支援対象者の整理を行うこととなっています。
3番目は、適用拡大についてさらに検討を深めること。雇用保険の見直しに触れてまして、時間要件の10時間への引下げ等々の検討を行うというものです。
それから遺族年金については、右側の参議院の4番を御覧いただくと、特に国会の議論では、今回見直しの対象になっていない方々から不安等々があるということがあり、しっかりと制度内容についての周知広報を行い、不安の解消に努めると、こういった指摘になります。
15ページは、障害年金についてで、5番目は、障害認定に際する様々な問題や等級の認定について検討する、特に医学モデルのみならず、社会モデルも踏まえて、といった指摘になります。
6番目は、年金部会で議論いただいた、いわゆる「長期要件」あるいは「延長保護」といった厚生年金の被保険者資格の喪失後の保護について検討を行うというものです。
7番目は、クローバック等、これは昔から議論としてございますが、高所得者については老齢基礎年金のうち国庫負担相当分の支給を停止するというものです。
8番目は、今回の基礎年金の底上げ措置に伴う財源確保についての指摘です。
16ページに移って9番目は、先ほど御紹介した45年化の話と、3号制度についてです。
それから、その下は財政検証の関連で、経済等の前提について現実的かつ多様な前提の下で結果を示すことという指摘です。
その他は、細かいので割愛しますが、16ページの右側、参議院の15番目には、日本にある大使館で働くスタッフに対する適用について検討を行い、速やかに必要な措置を講ずるという指摘になっています。
以上、御紹介した内容で、法律として成立しており、私どもとしては、まずは、これらの施行日に向けて政省令事項などしっかりと準備を進めてまいります。また、周知広報についても指摘いただいておりますので取り組んでいく考えです。
資料1は以上になります。
○数理課長 数理課長でございます。
引き続き、私のほうから資料2の「制度改正案を反映した試算結果」について、御説明させていただきたいと思います。
こちらは、審議に先立ちまして、もう既にホームページのほうに公表しているものでありまして、したがいまして、衆議院の修正の内容については反映していないものになります。
具体的に言いますと、適用拡大、在職老齢年金の見直し、標準報酬月額の上限見直し、あと遺族年金の見直しについて反映すると、どういった試算結果になるかというものをお示ししているものであります。
表紙をめくりまして、2ページを御覧ください。
現行制度の結果については、昨年の財政検証で既にお示ししているというものでありますが、これについて、先ほど申しました政府案に入ってきた制度改正を反映していきますと、モデル年金の所得代替率で見ていただきますと、成長型ケースでありますと1.3%程度、過去30年投影ケースでありますと1.4%程度、所得代替率が上昇するという見通しになっているところであります。
それぞれ個別の制度改正の影響は、注2のほうに、少し小さい字で恐縮でありますが、記載させていただいております。
主に適用拡大の影響により所得代替率が上昇するという結果になっているものでありまして、適用拡大によって1.4%の上昇。
あと、在職老齢年金の見直しでマイナス0.2%、標準報酬月額上限の見直しでプラス0.2%と、その他の遺族年金の見直しなどによって0.0%といった影響になっているというところであります。
ページが飛びまして恐縮ですが、7ページを御覧いただきたいと思います。
今回の制度改正案の結果で、先ほど人口については、中位推計で結果を見ていただいたものでありますが、人口の前提が変化した場合、どういった影響があるかというものも試算しているものであります。
出生率については、2024年では1.15という実績が出ておりまして、中位推計の見通しよりも低位推計に近いという実績になっておりますが、もし、出生率が低位推計になるとどうなるかというものを示しております。
過去30年投影ケースでありますと、48.5%まで所得代替率が下がるという見通しであります。
ただ、足元の実績を確認いただきいただきますと、一番下にありますが、出生率は、前提を実績が下回っているというところでありますが、平均余命、こちらについては決していい話ではないのですけれども、前提ほど余命が伸びていないということで、年金財政から見たらプラスの効果があります。
また、外国人の入国超過は、実績が前提を上回っているということで、前提では毎年16.4万人ぐらい外国人の入国超過があるという見通しですが、直近の実績では34.2万人ということで倍ぐらいになっています。
出生率だけではなくて、死亡率や入国超過についても、年金財政に大きな影響があるというのは、この資料からも見て取れるというところでありますので、総合的に影響を見ていく必要があるのではないかと考えているところであります。
続いて、8ページを御覧ください。
昨年、財政検証で分布推計を新しく公表しましたが、この分布推計の結果が制度改正によってどうなるかというものを確認したものになります。
8ページですと、女性でありますが、65歳の女性について見ますと、厚生年金に20年以上入っている方は、全体の37.7%ということでありますが、これが30歳の方で見ますと、女性については、労働参加が進んで、厚生年金の加入期間が長くなっていくことが見込まれますので、現行制度のままでも70%台まで上がっていくということでありますが、これが制度改正案になりますと、適用拡大がさらに進みますので、ピンクの厚生年金20年以上の方がさらに増加していくと。平均年金額についても、これに伴って上昇していくと、そういった結果が見られるというところであります。
続いて、9ページについては、男性についても同様の試算をしておりまして、こちらも同様の結果になっているところであります。
この後、分布推計等について詳細の資料を付しておりますが、説明については割愛させていただきたいと思います。
私からは以上であります。
○総務課長 続いて、資料3について説明いたします。2ページを御覧ください。
今回の制度改正について、しっかりと周知広報を行うようにということにつきましては、これまで、この年金部会でも繰り返し御指摘をいただいております。
また、国会の審議におきましても同様の御指摘を受けております。
それを受けまして厚生労働省では、法案を国会に提出した5月16日、あるいは法律が成立した6月13日以降随時、制度改正に関する情報発信を行っております。
2ページで言いますと、左側のほうは、本日、資料1としてお配りをしている制度改正の概要資料でございます。こちらは、既にホームページでも公表されています。
また、右側のほうは、より一般の方にも分かりやすくということで、インフォグラフィックスを活用した制度改正の資料を作成しております。
こちらも、順次、公表しているところでございます。
次の3ページも同様に、分かりやすい資料の例となっております。
右側のほうを御覧いただきますと、国会の審議におきましても、例えば国民年金と基礎年金の違いがよく理解されていないのではないかと、その辺を混同した議論が多いのではないかといった御指摘が多数ございました。
それを受けまして、今回の資料の中では、加入するときの国民年金と受給するときの基礎年金を意識的に書き分けるような、そういう工夫も行っているところでございます。
続いて、4ページ、こちらはショート動画になります。適用拡大、在職老齢年金の見直し、標準報酬の上限の引上げなど、制度改正の項目ごとに、簡単な動画を作成いたしまして、こちらは本日から公表しております。
次に5ページです。
こちらは、厚生労働省の公式Xを活用した情報発信でございます。ここに出ておりますのは、6月3日、ちょうど法案の審議をしている最中でしたけれども、遺族年金の見直しに関しまして、ネット上などで様々な情報が流れていたと、中には一部不正確な情報もあったという中で、厚生労働省から正しい情報の発信を行った事例でございます。
内容といたしましては、今回の遺族厚生年金の見直しで、直接見直しの対象となる方はどのような方なのかということや、あるいは原則は5年の有期給付としつつ、必要に応じて継続給付などの配慮措置があるといったことを発信したものでございます。
次の6ページは、新しいものではなくて昨年の財政検証の際に公表した資料や動画となっております。
財政検証の結果、特に分布推計などについては、より広く国民に知っていただく必要があるという御指摘をいただいておりますので、こうしたものも引き続き活用しながら一層の周知広報に努めてまいります。
それから、7ページは、社会保険適用拡大特設サイトとなっております。
これは、前回の令和2年改正のときに作成したものでして、例えば、昨年の10月に企業規模要件を50人超に見直した際にも、チラシとか動画あるいは事業所向けの手引などを作成して公開したところでございます。
今回の制度改正でもさらなる適用拡大を行うことにしておりまして、その際には、これまで以上に小規模の事業所が対象になっておりますので、一層きめ細かな広報を行っていきたいと考えております。
また、適用拡大以外の改正項目につきましても、それぞれの施行日に向けて、改正の対象となるような方を中心とした広報を、しっかり実施をしていきたいと考えているところでございます。
あとは、資料の後ろは大部になりますけれども、今回作成したインフォグラフィックスを活用した分かりやすい資料を掲載しております。それぞれの項目ごとに分類をして、ホームページで公表しているところでございます。
私からは以上になります。
○首席年金数理官 首席年金数理官でございます。
資料4-1、4-2により、説明をさせていただきます。
本年3月27日の社会保障審議会年金数理部会で、令和5年度の公的年金財政状況報告が取りまとめられまして、資料の4-1は、年金数理部会において令和5年度の公的年金財政状況報告として取りまとめた内容のうち、ポイントとなる点を取り上げたもので、資料4-2は、年金数理部会の役割や、もう少し細かい分析結果をまとめた概要となっています。
順番が逆になりますけれども、まず、資料4-2で年金数理部会の役割について説明をさせていただきます。
この資料の3ページを御覧ください。
ここでは、年金数理部会の役割を図示しておりますけれども、上側に公的年金各制度が行っていること、下側に年金数理部会が行うことをまとめております。
公的年金各制度では、少なくとも5年ごとに財政検証が行われ、その間には毎年度決算が行われるわけですが、年金数理部会では、まず、財政検証の後に、財政検証のピアレビューを実施しまして、財政検証の結果や手法の検証や今後の財政検証への提言といったことを行っております。
また、毎年度の決算の後には、財政状況の分析・評価を行いまして、公的年金財政状況報告を取りまとめておりまして、今回の御報告は、令和5年度の公的年金財政状況報告についてとなります。
そのポイントについては、資料4-1で説明をさせていただきます。
資料の1ページを御覧ください。
この報告は、年金数理部会が公的年金の毎年度の財政状況について、各制度、各実施機関からの報告に基づきまして、専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果を取りまとめたものでございます。
ポイントの1つ目は、令和5年度の公的年金の収支状況でございます。ここでは、共済組合等を含めた厚生年金全体の数値を厚生年金計として取りまとめておりまして、一番右の欄に公的年金制度全体の数字を示しています。
賦課方式を基本とする財政運営が行われていることを踏まえまして、運用損益を除いた単年度収支残と運用損益に分けて分析しております。令和5年度は、公的年金制度全体で見ると、運用損益分を除いた単年度収支残は0.1兆円のマイナス、運用損益は時価ベースで53.6兆円のプラスでした。
その結果、時価ベースの年度末積立金は前年度末から53.5兆円の増加となりまして、304兆円となっております。
裏面、2ページを御覧ください。
こちらは、ポイントの2つ目、公的年金の財政状況の評価でございます。
年金数理部会では、実績と財政検証の前提や将来見通しとの比較だけでなく、長期的な財政の均衡の観点から評価をしております。
評価の結果は、枠囲みの中にありますが、まず、国民年金第1号被保険者は、財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者数は上回る状況が続いていること、令和5年度は高い運用収益となった結果、積立金の実績が将来見通しを上回っていること、令和5年度における65歳の平均余命は、平成29年将来推計における死亡高位の仮定値を下回っていることが確認されました。
また、令和5年度は、現行の年金額改定ルールが全て発動していることが確認されております。
一方で、令和元年以降の合計特殊出生率は、平成29年将来推計における出生中位の仮定値を下回る水準で推移しておりまして、令和5年は出生低位の仮定値を下回っていることや、実質賃金上昇率は、令和元年財政検証におけるいずれのケースの前提も下回っていることが確認されました。
これらの将来見通しからの乖離が一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなりますが、いずれにせよ、年金財政の観点からは、人口要素や経済要素等について、いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであるというのが結論になっております。
報告書では、より詳細な分析をしており、厚生労働省ホームページに掲載しておりますので、こちらも御覧いただければと思います。
御報告は以上となります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御意見等いただければと思いますが、本日は久しぶりの開催ということもあり、また、法案成立後でもあるということで、恐らく、皆様から何か御発言をいただけるのではないかと推察してございます。
そこで、よろしければ、手挙げ方式ではなく、順番にといいますか、お願いできればと。まず会場、そしてオンラインの皆様ということでお願いできればと思います。
いつも五十音順でお願いしているので、今日は、恐縮ですが、逆に百瀬委員から時計回りでということで、よろしければ、お願いできれば幸いでございます。
それでは、百瀬委員、よろしいでしょうか。
○百瀬委員 私からは、遺族年金と障害年金について意見を述べたいと思います。
まず、遺族年金についてです。今回の遺族年金の見直しについては、経過措置や配慮措置が多数組み込まれています。そのこと自体は適切だと思っておりますが、その結果として、やや複雑な構造になっています。
特に今回新たに導入される死亡時分割については、具体例を示さないと、理解することが難しいのではないかと思っております。
一方で今回の改正により、これまで遺族年金を受給できなかった方でも新たに受給できるようになるケースもございます。そうした点も含めて、改正法に関する広報について、引き続き力を入れていただきたいと思います。
また、制度面では、中長期的な課題として、遺族の収入要件について改めて御検討いただきたいと思っております。
具体的には、子供のいる配偶者で収入要件を超えている場合の取扱いについてです。
改正法では、子供のいる配偶者で収入要件を超えている場合について、他のケースに比べて著しく不利にならないような調整が行われます。
ただし、その調整方法というのが少し複雑になっています。制度をシンプルにするという観点から収入要件そのものを見直すことができないか、御検討いただきたいと思います。
最後に障害年金についてです。昨年の第15回の年金部会におきまして、障害認定の基準とその認定方法について検討してほしいということを発言いたしました。今回、改正法の附帯決議には障害認定に関する内容が含まれております。
一方で、年金制度全般について取り扱う年金部会は、そのような議論をする場としては適切ではありません。附帯決議を尊重して、障害年金の障害認定について、実務家や当事者を中心に議論する場をつくっていただきたいと思っております。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、堀委員、お願いいたします。
○堀委員 ありがとうございます。
このたび、年金改革法案が無事に成立いたしましたこと、心よりうれしく思っております。法案の成立に向けて尽力された事務局の皆様に深く敬意を表しますとともに、多様な意見が交わされる中で、部会を取りまとめられた菊池部会長の御尽力に対しまして、改めて感謝申し上げたいと思います。
さて、本法案は大きな一歩であると同時に、なお幾つかの課題を残しているかと思います。私からは3点申し上げたいと思います。
1点目ですが、附帯決議にありますように、拠出期間の45年間につきましては、引き続き財源も含めて御検討をいただきたく存じます。
また、第2点目、適用拡大につきましては、年金部会の案よりもやや後退しまして、企業規模要件に10年の経過措置が設けられました。この点につきましては、10年と言わず、できるだけ早く実施していただきたく存じます。
最後に3点目、現在、第3号被保険者制度の大半を占める女性の就業環境は、この10年で大きく変化しています。多様な働き方が広がり、就業率も上昇している一方で、制度や社会の批判は依然として旧来の枠組みのままにとどまっていて、結果として子育て世代の女性に過重な負担が集中している現実があります。年金制度の持続可能性を考えるとき、こうした世代への視点は欠かせないと考えます。将来的に、3号制度の見直しや廃止について附帯決議に述べられておりますが、こうしたことが議論される際には、子育て支援の観点を十分に踏まえ、子育て世帯に配慮しながら進めていただきたいと強く願っております。
本法案が、次の世代にとって、希望ある年金制度の礎となることを心より期待しております。
ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
まずは、厚生労働省の方々、そして、表に出て積極的に意見表明をしてくださった委員の皆様がいらっしゃるかと思います。その方々に心から感謝いたします。ありがとうございます。そして、お疲れさまでした。
全体として、本審議会での議論が踏まえられた改正になったと感じています。その上で、今後について幾つか意見をしたいと思います。
第1に、今回の改正に含まれなかった障害年金について、次回改正時、より深い議論を行って、現場に即した改正を早急に行う必要があると思っています。
続いて、短時間労働者の適用拡大についてです。将来的な企業規模要件の撤廃が決まったことは大きいなと思っています。反面、雇用されている1号にとって最長10年は長いので、ぜひ広報等で力を入れて任意加入の推奨をぜひお願いしたいと思います。
また、常時5人以上を使用する17業種以外の個人事業所の加入についてですが、2029年の施行時点で既に存在する事業所は、当面の間対象外となっています。これについても同様の理由から、当面の間とはというものを明確にする必要があるのではないかと思っております。
最後に、就業調整を減らすための保険料調整に関してです。こちらは小規模企業に対する支援にはなっていると思うのですけれども、社会全体の働き控え対策にはなっていないのではないかと思っております。
夫婦ともに2号になったほうが、生涯年収も将来もらえる年金も格段に多いと分かりながら、なお3号で居続けようとするのはなぜなのかということです。それは、家庭が機能するための様々な仕事、具体手的には日々の料理とか、洗濯とか、掃除、ごみ出し、保育園の送り迎えはもとより、見えない家事、例えば夏冬の衣替えだったり、クリーニングに出すものの仕分けとか、子供の勉強を見てあげるとか、学校や塾をどうやって選ぶとか、その送り迎えとか、学校や塾とのやり取りとか、お受験の準備とか、親戚づき合いとか、いろいろなものが家庭の維持には必要なのですが、そういったものの負担が、30代など若い世代でも、なお、女性に偏っている状況というものがある。だから3号で居続けようとしているのだと思います。
こんな負荷の高い状態なら、低収入であっても3号にいて、その分、少しでも手取りの減少を抑えられたほうがいい、ということです。
もちろん、20代など若い世代や、夫婦の価値観や考え等によって、本当に半々を担っている例も見聞きします。でも、やはりまだまだ少数派だと思います。東京など都市部と地方の意識差も大きいと感じますし、夫婦の親とか、地域全体の女性がやって当たり前というような意識が、見えない重石となっていると感じます。
これらは、年金部会で何か決められることではないと思うのですけれども、3号被保険者制度に関して考えるとき、やはり意識しておかないと、制度だけ変えても実態は変わらないということになるのではないかということです。
3号制度は短時間かつ責任の軽い労働を女性に選びやすくさせることで、こうした価値観や慣習を助長してきた面があると思います。
これを継続させず、女性活躍ということを真に推進するには、3号制度そのものの議論よりも、むしろこうした社会全体の見えない空気、意識を変えていくほうが重要だなと考えているところです。
最後と言いましたけれども、もう一点です。
2号になって新たに支払う保険料は、厚生年金保険料だけではなくて健康保険料がセットです。年金部会は年金のことだけを議論しますけれども、広報等では両方をセットにして、このぐらい保険料負担が発生するということを、ちゃんと説明することが必要だと思います。
その上で、そもそも公的年金は死ぬまでの生活を支えてくれるものであり、社会保険というものは、より困難な状況に陥った際に、国民全体で支え合うためのものだということを強調していくことが必要であり、そのことが社会の分断というものを減らしていってくれると思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、原委員、お願いします。
○原委員 ありがとうございます。
今回の改正ですけれども、その趣旨にもありますけれども、社会経済の変化に対応することと、働き方や男女の差などに対して公平で平等にするということ、それから、ライフスタイルや家族構成が多様化している社会に対応するということ、そして、高齢期における生活の安定を図るということとありますので、そういうことに集約されることだと思います。
昨年末にまとめられた「年金部会における議論の整理」の中の最後の部分にも、やはり基礎年金制度導入以後の40年間、その変化というものを見れば、単身世帯や共働き世帯の増加といった家族構成やライフスタイルの多様化、それから、女性や高齢者の就業の拡大などなど、年金制度を取り巻く社会や経済の状況は大きく変化したとありまして、そして、基礎年金の導入から40年という節目のタイミングで、こうした幅広い議論を通じて、多くの事項について現状や課題見直しの方向性を整理したとありましたが、この改正法の内容についても、これまで議論してきたとおり、適用拡大、在老、標準報酬月額上限引上げ、そして、遺族厚生年金など、盛りだくさんの内容になっているかと思います。
一つ一つの内容というよりも、私からは、以下、2点、コメントを簡単にさせていただきます。
まず、1点目については、やはり十分な広報、周知、説明といったものが非常に重要だということを痛感いたしました。今回の改正で様々な情報が飛び交ったことがあったと思います。常日頃からの広報活動はとても重要だと感じました。
昨年末にまとめられた、議論の整理の中にも年金広報の在り方など、そういった中に「公的年金制度は老後生活の柱であり、国民生活の安心につながる重要な機能を有している」ということで、「特に若い世代には、公的年金制度に対する漠然とした不安」がありと書かれていて、「公的年金制度への信頼を揺るがすことにつながっている」ともありましたけれども、実際、年金額の見える化など、様々な取組を行っていらっしゃるかと思います。
また、年金の教育についても、議論の整理の中では「子供の頃から生涯を通じた年金教育の取組を進める必要がある」とありましたけれども、こちらについても分かりやすい広報活動をされているかと思います。
やはり若い方への取組というものも非常に重要ですけれども、今回の改正を通じて、今後については、それとは別の流れとして、全世代に向けての日頃からの広報活動というのも、もっともっと行っていかなければならないのではということを、今回の改正においての世の中の反応ですとか、動きを見て痛感いたしました。
気が早いですが、5年後に向けて活動をどう行っていくかということは、とても重要だと思います。もちろん、今回の改正全体について分かりやすい周知や広報をもっともっと行っていき、国民の皆様に不安を与えることのないようにしなければいけないと思います。
さらには、日頃から誤った情報が拡散され、不安をあおってしまうことがないよう、全世代向けの広報戦略あるいは広報手法といったものも、再度精査、検討していただき、広報活動はより積極的に行っていかなければいけないのではないかと思っております。
2点目については、今後に向けた附則の検討規定に盛り込まれた部分になります。引き続きの検討事項として、幾つか盛り込まれた中にありますが、その中で第3号被保険者の在り方についてということで、国民的議論が必要であるという認識のもと、その議論に資するような第3号被保険者の実情に関する調査研究を行い、その在り方について検討を行うものとするとあります。
これまでの議論の内容の継続性というものが保持されて、とりあえずよかったと思っております。適用拡大をしていって第3号の人数が減少するというところで、実際とどまっていると言えるわけですが、その先の議論というものは、まだまだ必要なのではないかと思っております。
その前の検討規定としてありますけれども、45年化を考えるときも議論の対象になってくるところだろうと思っております。
一般的に見ると、制度があることによって、さらにこれまでの歴史によってつくられた制度概念というものが、いつまでも残ってしまうということがあるのではないかと考えます。
一方で、世代が変わっていけば、そこで変化していくこともあるだろう、とも思います。
ただ、やはり言えることは、制度があることによって人の心理面や行動に何らかの影響を与えることを完全になくすことは難しいだろうと考えます。
したがって、制度自体もその時代に合ったものに変化させていくということは必要だろうと思っております。
年金部会では議論し切れないところだろうと思っておりますので、その実情に関する調査研究や、その在り方についての検討会等をしていただき、引き続きの検討をお願いしたいと思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、永井委員、お願いします。
○永井委員 ありがとうございます。
この改正法の成立過程における厚生労働省の皆様の取組、大変お疲れさまでした。
私からは、就業調整を減らすための保険料調整のところと、第3号被保険者制度について意見を申し上げたいと思います。
1つ目の被保険者への支援としての就業調整を減らすための保険料調整でございますが、ここにつきましては、年金部会で議論の整理が取りまとめられた以降に検討された内容と認識しております。確かに適用拡大の対象とする企業や被用者への支援に関する議論は、年金部会でも行っておりましたが、そうした議論の中で財源を保険料から拠出するという説明を受けた記憶がないところでございます。
中小企業への支援は必要であるものの、保険料を財源とするということについては、支援を受けない被保険者との公平性を確保できるか疑問に感じているところであります。
適用拡大の推進が議論の整理から後退していることを含め、本来は法案提出前に、この部会で議論すべきことだったと考えております。
保険料調整につきましては、保険料の安易な使途拡大とならないよう、今後における前例にならないようにお願いしたいということでございます。
2つ目に、第3号被保険者制度でございます。
第3号被保険者制度につきましては、改正法の附則の検討規定で、第3号被保険者制度の実情に関する調査研究を行うとされました。
そこで、第3号被保険者制度の在り方の検討や調査研究の進め方について、伺いしたいと思っております。
1つ目には、この調査研究は、いつ頃より開始する想定であるのか。
2つ目に、検討に当たっては、会議体を設置する想定であるのか、もしくは年金部会で議論を行うのか、議論の開始の想定時期なども含めて確認をしたいと思っております。
調査を行ってから議論の場を設けるといった対応になりますと、議論の場の設置が遅れるのではないでしょうか。どういったメンバーで検討するのかによっては、その人選やスケジュール調整に時間がかかると、議論のスタートが遅くなってしまうのではないかなど懸念も多くございます。
調査と並行して議論の場を設置していけるように、早期の対応をお願いしたいと存じます。調査研究はいつ頃からやるのか、国民的議論にいつ頃からなるのか、お考えが今の段階であれば、教えていただきたいと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、事務局からお願いします。
○年金課長 御指摘ありがとうございます。
第3号被保険者制度の検討の進め方については、国会でも随分と議論がございまして、大臣のほうからもお答えしています。内容は議事録等でも確認できますので御覧いただければと思いますが、具体的な進め方については、これから少し整理をして検討させていただきたいと考えています。どういった形で調査するか、あるいはどういった場で議論をするのかという点も含めて、大臣のお答えや御指摘も踏まえて、決して何か遅らせようという意図があるわけではないのですが、なかなか大きなテーマでもありますので、しっかりとよく検討して進めてまいりたいと考えております。
○菊池部会長 永井委員、よろしいですか。
ありがとうございます。
それでは、武田委員、お願いします。
○武田委員 法律の成立に御尽力いただきました事務局、そして、関係者の皆様に心より敬意を表します。本当にありがとうございました。
今回の法律改正は大きな一歩と存じます。しかしながら、足元の人手不足の深刻化、社会構造の変化、さらには今後の人口動態等々を踏まえますと、さらなる改革が必要と考えます。
具体的には、3点ございます。
1点目は、今回40年から45年への拠出期間の延長が、早期に撤回されたことは、残念に思っております。5年後を考えますと、次につなげていくことが重要と思います。
2点目は、他の委員もおっしゃった第3号についてです。調査、研究を行うということですが、この問題はこれまでも繰り返し議論されていますので、可及的速やかにお願いしたいと思います。
また、当事者の意見を聞くとのことですが、当然ながら、マクロ環境の変化や社会の変化を踏まえるべきと考えます。そして、むしろ当事者以外の方々のご意見もしっかり聞く必要があると考えます。社会のアンコンシャスバイアスにも関わる制度と思います。
したがって、この点については、これまでも十分に議論されてきた課題として、可及的速やかに改革に向けた議論が進むことを期待しております。
3点目は、将来の基礎年金の給付水準の問題に関してです。今回は、給付と負担の均衡まで議論を進めることは、時間的にも難しかったと思いますが、次期財政検証を踏まえて検討を進める必要があると考えます。
しかし、そのときになって給付と負担の問題を議論することは、やはり難しいと思います。
したがいまして、それまでの間に、国会、政府において、こうした検討や議論を進めることは可能と思いますので、ぜひその点も具体的に話が進むことを望みます。
最後に、今回の議論を通じて痛感しましたのは、皆さんもおっしゃったように、広報の重要性です。ショート動画の作成など、前向きな御説明をいただきましたが、最も大切なことは、改めて透明性を確保した議論、データに基づく財政検証を継続していくことと思います。これまでもそうしてきたわけですが、それをしっかり続けていくことと、社会の変化に合わせて制度を常に見直し、改革していく姿勢と実行。ここが本質的に重要なことと考えます。
国民の不安、疑心暗鬼を払拭するために、引き続き、できるだけこうした議論をオープンな場で公平、公正に行っていくことが、一番重要なことと思います。今回の議論を次につなげ、改革を進めていく意志や姿勢を、ぜひ、年金部会としても示し続けていきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、サイドを代わりまして、たかまつ委員からお願いします。
○たかまつ委員 まずは、法案の成立に当たり御尽力された皆様、お疲れさまでした。
私からは、今後検討していただきたいことについて述べていきたいと思います。
まずは、適用拡大のスピード感というのが遅いのではないかということ。そして、低年金や無年金の人を年金の制度外でどう支えていくのかということ。年金制度だけではなくて、年金の外のことも議論する必要性があるのではないかということ。そして、3号被保険者制度をどうしていくのか。私自身は、やはり時代に合っていない制度ではないかと考えています。女性の就業調整につながって、男女格差を生む制度になっていると考えます。
検討する際は、子育てや介護などをしている人に対して、やはり十分な配慮をし、議論を進めていくことが必要だと思います。
そして、学生納付特例の追納率が悪いことに対して、どう対応していくのか。年金の負担の開始年齢を引上げていく検討をするということもあるのではないかと思います。
また、障害年金の論点をどう整理していくのか。私は、この部会だけではなくて、新たな会議体を設けて当事者の方や実務家の方を交えたほうがいいのではないかと考えています。
そして、LGBTQ+のカップルの権利をどう保障していくのかという点、この点は、あまりこちらの部会でも議論できなかったので、議論を引き続きしていただきたいと思います。
そして、外国人労働者の方が増える中で、脱退一時金の制度をどう利用していくのか、どう改善していくのかということについてです。
また、年金の広報をどうしていくのか、学生だけではなく、広く誰でも参加できるような年金の対話集会みたいなものですとか、厚生労働省のアカウントで、年金についての投稿でインプレッションが多いものに対して、積極的に返信していったりですとか、大きなテーマが広がった際に、それに反応していくということ、積極的な攻めの広報というのが必要ではないかと考えています。
そして、制度改正の際に、障害者当事者の方、遺族の方、子供、子育て世代の人、若者世代などを、制度の声をどう制度に反映していくのかという点についてです。
私自身は、実際に自分がやってみて、若者がもう少し部会の中に入ってほしいなと、3割ぐらいは若者がくださると心強いなと思いました。
そして、基礎年金の拠出期間の延長、45年化をするのかどうか、こちらも国会のほうで議論になっていましたが、もう少し検討をして進めていただきたいなと思います。
そして、現役世代の社会保険料の負担軽減の声とどう向き合うのかということについてです。
例えば、子供ができたら負担を軽減するということとか、そういうことができないかとか、その具体策を検討するみたいなことをしていただきたいなと思います。
こちらは、法律で決まっているからということもあると思うのですけれども、そもそもなぜ議題に上がっていないのかとか、そういう声というのも多くの若者世代とか、現役世代の方からいただいたので、御検討いただきたいなと思っています。
以上のことを検討していただきたいと思います。
また、私のほうから皆さんに共有させていただきたいことがあります。私は、年金について情報発信をしたところ、殺害予告というものが届きまして、事務所の郵便受けが壊されるということも発生しまして、事務的にも精神的にも金銭的にも相当の負担が生じるということがありました。
寄り添ってくださった審議会の委員の皆様、厚生労働省の方、メディアの皆様、ありがとうございました。
これから、こども基本法により、子供の意見表明の機会を確保するということが必要になってくると思います。子供たちが政策的な議論に関わっていく中で、子供たちの安全を守る必要があると思います。
これを機に、そのような子供たちに限らず、審議会の委員の安全をしっかり守っていくことについても検討していただきたいなと思っています。
今回、厚生労働省の方とも密に連携し、対応していきましたが、担当課の方というの、やはり法案の折衝もあると思いますので、誹謗中傷や、そういう暴力に対しては毅然とした態度を示すということができるような支援体制みたいなものを、ぜひ設けてほしいなと思っています。
例えば、開示請求の予算をプールするということですとか、相談できる窓口を政府の中で別途、独立して設立するなど、そういうことがあるとすごく助かるなと思いました。
また、より一層広報に尽力していただき、厚生労働省の考えや意図をしっかりとお伝えしていただき、正確な知識を基に議論できるよう、体制があるといいなと思いました。
最後に、私自身がそういういろいろな批判とか、ネットの声とか、若者とお話ししてお伝えしたいなと思ったことについてお話しします。
若者は、漠然とした将来不安や年金不安というものを抱えていることが多いなと感じます。それらを知識不足とか誤解だと決めつけるのではなくて、若者世代の不安に寄り添って制度改革を進めることが重要だと考えています。
せっかく財政検証なども通して、年金制度というものが、しっかり持続可能性があるというものなのに、年金制度があるのに将来不安が多いと、今、使えるお金が使えないと考えてしまったりですとか、そのことから、結婚や出産をしたいのにためらうということにもつながってくるのではないかと思います。
例えば、若者の中ですごくあった声としては、高齢者の中での支え合いがもう少しできないのかということですとか、子育て支援を、やはりもっと充実した上で、こういうことを議論してほしいという声とかがありました。
さらに、そういう若者の不安とかに寄り添うために広報を強化するなど、いろいろな考え方ができると思いますので、ぜひ若者の不安に寄り添っていただけるとうれしいです。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
今、たかまつ委員からお話のあった点ですが、この部会としては、今期、できるだけこの部会の議論の中身を広く公開しようという方向で一歩踏み込んだと思っております。
そうした中で、委員の発言の自由、言論の自由が脅かされる事態に至ったというのは、私自身も責任を感じてございますし、また、今後、どうしていったらいいのかという辺りは、ここは、年金部会だけの検討ではなく、やはり政府全体として、たかまつ委員から御提案もあったところでありますけれども、今後に向けて、ぜひ、真剣にお考えいただきたいというところで、私からもお願いをしておきます。どうもありがとうございます。
それでは、次に、島村委員、お願いします。
○島村委員 どうもありがとうございます。
昨年の12月の年金部会の後、最中もそうですけれども、その後もとてつもなく大変な作業だったと思います。改めて、法律の成立まで御尽力くださった皆様に感謝申し上げます。
年金基礎年金の給付水準の底上げについては、先ほどの小野課長からも丁寧な御説明がありましたが、厚生年金と国民年金の関係、別制度ではあるけれども、基礎年金拠出金を通じて連動した制度であるということですとか、積立金の性質ですとかについて、しっかり国民の皆さんに理解いただけるよう、ますます説明をしていくべきだと思っています。
今、国民と言ってしまいましたが、外国人の方も、もちろん制度には加入できますので、改正の内容については、外国人の方にもちゃんと届くように、分かるように情報の周知を徹底していただければと思っております。
最後に、障害年金や第3号被保険者などの重要課題については、私も個別の研究会などをつくっていただいて、次の改正まで時間があるので、その自由時間を有効に活用していただきたいと思っています。
審議の過程というのを明確にしていくというのも重要かと思いますので、積み残された課題というのが、一つ一つ明確に整理されていくことというのを強く希望いたします。
以上でございます。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、佐保委員、お願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
昨年末から改正法の成立までの間の厚生労働省事務局をはじめ、皆様の御対応、お疲れさまでございました。
私からは被用者保険の適用拡大と、将来の基礎年金の給付水準の底上げについて発言いたします。
最初に、被用者保険の適用拡大についてですが、企業規模要件の完全撤廃の時期を2035年とされたことや、5人以上の個人事業所の非適用業種への適用を新設、既存という概念で区分した上で、既存事業所は、当面見送りとされたことは、部会の議論の整理から後退した内容と考えており、給付水準の底上げが重要であるからこそ、早期に少なくとも2030年までに適用拡大を進めることに徹するべきだったと考えております。
これに対し、資料に掲載されているとおり、衆・参両院の厚生労働委員会で、早期の任意適用を進める方策を講じていくことを求める附帯決議が採択されております。また、参議院の厚生労働委員会では、国内の外国公館で働く日本採用の多くの人が長年にわたり、被用者保険に加入できていない状況への対応を求める附帯決議も採択されております。
勤労者皆保険を目指している政府として、これらの附帯決議に基づく対応を早期かつ着実に行っていただきたいと考えております。
次に、将来の基礎年金の給付水準の底上げについてですが、改正法に書かれた措置について、経済情勢によって発動する場合、しない場合があると理解しておりますが、発動要否は、財政検証後に年金部会で議論すべきであると考えておりますし、発動する場合の具体的な方法についても、年金部会で議論すべきであると、これは言わずもがなだと思いますが、これらはお願いしたいと思います。
連合としては、給付水準の底上げは極めて重要な課題と認識しておりますが、例えば、基礎年金への拠出ルールに厚生年金積立金を活用することは、従来の拠出ルールの大きな変更であり、底上げに伴い必要となる国庫負担財源確保の方策が明らかになっていないことや、国民の理解も十分とは言えないと考えております。
基礎年金の給付水準の底上げに向けては、国民年金保険料の拠出期間の延長を次期年金制度改革において確実に実施するほか、被用者保険のさらなる適用拡大など、基礎年金拠出ルールの変更以外の他の方策による底上げについても改めて検討すべきと考えております。
なお、5年以上前に厚生年金と国民年金の積立金を統合するという内容の報道がありました。これを受けて2019年12月の第15回年金部会において、積立金統合に対する厚生労働省の見解を当時確認させていただきました。その際には、積立金の統合といったことが先取りとして、答えとしてあるというものでは一切ないこと、積立金の統合というものは、通常は制度統合でもない限りは、議論の俎上にも上がらないようなものであることなどの御見解をいただいております。この見解は、現時点でも変わっていないのかどうか確認をさせてください。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
確認のお求めがございましたが、いかがでしょうか。
○数理課長 今回の年金部会での議論では、調整期間をそろえる方法としては、積立金割というものを御提案したというものでありまして、積立金統合というのは検討していなかったと、そういったところだと考えております。
次回どうなるかというのは、これからの議論かと思いますが、いずれにしろ、国民に広く御理解を得るということは大事だと思いますので、そういった観点から検討を進めていくものだと考えております。
○佐保委員 回答をいただきまして、ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、是枝委員、お願いします。
○是枝委員 私からは、前回の年金部会から法律成立に至るまでの検討経緯及び今後の政省令の定め方などにつき、5点、意見と事務局への質問をさせていただきます。
まず、調整期間の一致について意見いたします。調整期間の一致については、年金部会でも意見が割れたものであり、国民からの負託を受けた国会議員に御判断いただくしかなかったものと思います。
その上で、衆議院により追加された改正法附則第3条の2については、先ほど佐保委員からも指摘があったとおり、あくまで4年後の財政検証においても、基礎と比例の調整期間に著しい乖離があり、基礎年金水準の低下が見込まれる場合に、何らかの法制上の措置により調整期間を一致させるものということとなりましたので、必ずしも積立金割を導入することに限らず、そもそも、基礎年金45年化や大幅な適用拡大によって基礎年金水準が低下しなくなる可能性なども含めて、総合的な議論をさせていただきたいと思います。
2点目、遺族厚生年金の継続給付の男女差について質問いたします。
詳細は、私が配付した遺族年金継続給付の手取り額試算という資料を見ていただきたいのですが、遺族厚生年金の継続給付を判断する際、遺族厚生年金の支給停止を開始する第1所得基準額につき、大きな男女差を設けるように読め、この規定に私は法律を見て大変驚きました。
このような重要なことが、年金部会でも国会でも全く議論されないまま法律成立に至ってしまったことは、政策検討プロセスとして望ましいものではなかったのではないかということを指摘いたします。
さて、改正後の厚生年金法第65条には、遺族厚生年金の継続給付の第1所得基準額につき、国民年金全額免除の所得基準額を勘案して定めるということとされており、これには、寡婦、障害者、ひとり親に関する住民税非課税者への免除規定も含まれております。
障害者や、ひとり親はよいとしても、なぜ、女性の寡婦は男性の寡夫よりも高い基準を設ける必要があるのでしょうか、税制に男女差があるとしても年金制度において必ずしも踏襲する必要はなかったと考えております。法律では、あくまでこれらの免除規定を勘案して政令で定める額とあり、政令において男女差の規定はなくす余地もあると思いますが、政令でどのように規定するつもりなのか、事務局のお考えを聞かせてください。
3点目に、死亡時分割の請求について質問いたします。
なぜ、職権での裁定ではなく、請求に基づいて分割することとしたのか、また、請求に基づいて行うとしても、なぜ、遺族厚生年金の請求と同時に行うのではなく、申請時期を有期給付終了後としたのか、事務局の考えを聞かせてください。
私は、死亡時分割の申請漏れが大量に生じることや、年金事務所に申請勧奨させるとしても、その事務負担が過大になることを懸念しております。
申請漏れや年金事務所に負荷がかからないよう、せめて遺族厚生年金の受給申請時に、死亡時分割により年金額が増えることとなる場合には、その申請を行う旨をあらかじめ申し出ることができるよう、政省令や運用によってカバーしていただきたいと思います。
4点目に、年収の壁の支援のための保険料減額措置について質問いたします。
永井委員からも発言がありましたが、今回の改正法の保険料減額措置の財源というのは、厚生年金については厚生年金財政全体で、健康保険においては協会けんぽや健保組合など各保険者の財政全体で負担するものと理解しましたが、合っているか事務局の見解を伺います。
最後に、老齢基礎年金の繰下げ支給とiDeCoの加入対象者の関係について意見をいたします。
今回の法改正で老齢基礎年金を支給開始していないものにつき、70歳までのiDeCoの加入が可能となります。
ただし、老齢基礎年金は事後的に繰下げを取り止めることが可能です。つまり、繰下げ待機をしていたものが、後から繰下げを取り止めて、繰下げ増額のない年金を65歳分から遡及して一括で受け取るということが可能です。
このような場合において、65歳以後のiDeCoの加入実績について、遡及して取消すということもあり得るとは思いますが、遡及する期間が長期にわたり、かつ、還付する金額も多額になりますので、実務上の負担が大変大きくなることを懸念しております。
そもそも企個部会の議論の整理では、公的年金への保険料を納めつつ、上乗せとしての私的年金に加入してきたものが、引き続き老後の資産形成を継続できるよう、60歳から70歳までのiDeCoを活用した老後の資産形成を継続するものに対して加入を認めるとしており、結果的に69歳で大病を患うなどして、繰下げを取り止めるということとなったとしても、その要件は満たされているかと思いますので、遡ってiDeCoの拠出を取り止めるということはしなくてもよいのではないかと思います。
この点につき、事務局に御検討をお願いいたします。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
質問としては3点で、男女差の問題、それから死亡時分割につき請求を要件とする、そして、保険料の減額に関して、お願いします。
○年金課長 御指摘ありがとうございます。
まず、遺族厚生年金の男女差について、法律上は解消しておりますが、継続給付の定め方において、単純に国民年金の全額免除なりの基準を用いると男女差が残ってしまうのではないかと、そういう御指摘だと思っております。
この点は、我々も同じ認識を持っています。部会のほうには継続給付を設けるということ、それから、継続給付については国民年金の免除基準を用いて緩やかに低減していくということについては資料を出していますが、この免除基準が幾らになるのかという点については、所得基準を勘案して政令で定めると規定しています。この点に関連して、今の税制では寡婦控除があることから、単純に適用すると男女差が残る点をどう考えるのかということになりますが、そこは政令で対応できる仕組みにしています。
例えば単純に寡婦控除を考慮しないとする場合には、実務として所得の把握ができるのかという点について相談する必要がありますが、問題意識としては持っており、2028年4月の施行ということもあるので、しっかりと検討して適切に対応するとともに、必要に応じて御報告させていただきたいと考えております。
それから、2点目の死亡分割については請求という行為を介在させています。これは、検討の過程において、部会の先生方からも、本来個人に帰属する年金の記録について、死亡とはいえ、分割できる根拠は何なのかについて、法的整理をしっかりするようにという指摘がありまして、御相談する中で離婚分割をベースに考えていくということで整理しました。
離婚分割は、合意があるものについては合意分割、3号については3号分割という形で、請求を前提にしておりますので、今回の死亡分割についても、個人の記録を分割するということに鑑みて、請求行為を介在させることとしました。
ただそうすると、おっしゃるとおり、請求漏れであったり、あるいは知らなかったということが起きるのではないか、という御懸念が出てきます。
この点については、やはり施行時期は同じ3年後になりますので、しっかりと遺族の方への御案内であったり、あるいは請求漏れがありそうな場合にどう対応するのかというものをしっかり準備して、死亡分割を適切に利用いただけるような形にしたいと考えております。
それから、3点目の保険料調整措置の財源ですが、これは御指摘のとおりで、年金については厚生年金の保険財政、健康保険についても同様の仕組みが導入されており、健康保険については健康保険組合あるいは協会健保の財政のほうで対応することとしています。
以上です。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、小林委員、お願いします。
○小林委員 まずは、御説明ありがとうございました。
改正法の成立について、社会保障制度改革の進捗の一環として評価いたしております。事務局の皆様には、改めて謝意と敬意を表したいと思います。
私は、中小企業を代表する立場として参加させていただいております。改めて、年金制度に関する商工会議所の基本的な考え方を申し上げますと、次の2点に集約されます。
1点目は、就労抑制要因の排除です。深刻な人手不足、人材不足が中小企業や地域経済の成長の足かせとなっております。そのため、就労抑制の誘因となる制度は、極力排除していただきたいと考えております。
2点目は、現役世代や中小企業の負担抑制の観点です。社会保険料の増加は、消費低迷の原因となるほか、企業の賃上げや成長投資の阻害要因となっております。小規模な事業者ほど経営に与える影響は甚大です。改革の実行は必要ですが、中小企業の負担への配慮が必要と考えております。
今回の法改正では、106万円の壁の撤廃、在職老齢年金制度の見直しなど、就労抑制要因の見直しに取り組んでいただけたと思っております。
なお、在職老齢年金については、将来的には廃止することも見据え、引き続き検討をお願いしたいと思っております。
また、被用者保険の適用拡大において、時間的猶予を設けた段階的な実施及び保険料調整制度をはじめとした支援措置など、中小企業に過度な負担がかからないよう、御配慮いただいたと思っております。
しかしながら、中小企業にとっては、保険料負担ももちろんのこと、事務手続も大きな負担です。事務手続面での簡素化や対象事業所への丁寧な周知広報についてもお願いしたいと思っております。
次期制度改正に向けて、基礎年金の底上げ措置、拠出期間の延長、第3号被保険者制度の見直しなどの課題が積み残しとなっております。
今後も、改革の継続が必要ですので、データに基づいた検証、検討をお願いしたいと思っております。
加えて、商工会議所では、名目下限措置の廃止によるマクロ経済スライドの完全実施についても提言しております。改めて、今後の検討をお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
多くの点で評価させていただいているのですけれども、時間の関係で課題と考える問題を2点だけ申し上げたいと思います。
まず、適用拡大です。今回の中心テーマは、「働き方に中立的な制度」の実現であったと考えています。その点、企業規模要件の撤廃に関して、お隣の日商の小林委員の御主張を受け入れた当初案などを中心に、ずるずると後退したのは、非常に残念だと感じました。
私としては、働き方に中立的な世界を実現するには、雇い方に中立的であることが重要と指摘しましたけれども、恒久的な仕組みの構築を今後に向かっての課題としていただければ幸いです。
次は、調整期間の一致です。先ほども話題になりましたが、まず、資料3の69ページを見ると、「基礎年金は、国民年金加入者と厚生年金加入者が、負担能力に応じて支え合う仕組みです」とありますけれども、「ん?」と思ってしまいました。
これまでは、厚年被保険者の標準報酬に対応する収入が定義できないために、国民年金は定額負担、定額給付とされたと理解していました。つまり、この2つの制度は、もともと設計思想が異なるわけです。また、基礎年金の給付水準の低下問題は、2009年の財政検証から分かっていたわけですけれども、歴代事務局は、調整期間の一致は財政統合であるために慎重だったようです。
しかし、今回事務局は、その方針を転換したと理解しています。いろいろ難しい説明はありましたけれども、私は、調整期間の一致は国民年金と厚生年金の財政及び積立金を統合すれば実現可能だと考えます。なぜなら、スライド調整の終了時期というのは、公的年金全体で財政均衡期間終了時の積立て度合いが1となるように求めるだけで済むからです。
仮に統合してしまえば、基礎年金勘定、基礎年金拠出金等々の、勘定や勘定間の複雑なやり取りは不要になると思います。
これは結果として、調整期間の一致が実現した後に分別管理を維持することの根拠は、積立金按分を用いる厚生年金の実施機関間の負担調整という、厚生年金全体の財政には影響を与えない運営の枠組み、これが根拠になるという非常に際どい状況になるのではないかと思います。
公的年金は、歴史上の経緯を経て緻密に設計されております。したがいまして、私は、コンセプトが異なる制度の安易な統合には反対しますが、本件がそうしたことに通じないか、十分な検討が必要と思っております。
次期財政検証は、議論の整理とか、法律の検討規定及び国会の附帯決議で提示された難しい問題が山積しております。事務局におかれましては、ぜひとも綿密に御検討いただきたいと思います。今度は、一国民として期待しております。
最後に、年金数理人として、今回の財政検証における数理課のすばらしい仕事に敬意を表するとともに、法改後の数理計算結果をお示しいただいたことに感謝を申し上げます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、オンライン参加の皆様からお願いします。
まず、嵩委員、お願いします。
○嵩委員 ありがとうございます。
まず、今回の法改正について、成立した法律を拝見しまして、複雑な改正内容を条文に的確に反映させる作業、大変な労力であったと思います。
また、部会での検討から法律成立まで各方面の方々と時として困難な調整をなさり、大変な御苦労をされたことと存じます。改めて、事務局の皆様に敬意を表したいと思います。
また、菊池部会長をはじめ、様々な議論を御一緒させていただいた委員の皆様にも改めて御礼申し上げます。
今回の法改正の意義については、まず、適用拡大が、スケジュールが当初の予定よりも遅くなりましたけれども、内容面では企業規模要件の撤廃とか、非適用業種の廃止など、適用拡大が大幅に前進したということが意義として挙げられると思います。
また、給付の目的とか性質という面で言いますと、それを大きく変更したのは、遺族厚生年金の見直しだったと思いまして、それも大きな意義がある改正だと思いました。
いずれの法改正も、実は結構複雑だと思いますので、今後、法改正の内容をちゃんとスケジュールに沿って正確に実務で適用していただくということが必要だと思いますので、日本年金機構等の関係機関との密な連携をお願いしたいと思います。
また、先ほど来ありますけれども、広報も既に十分に力を入れていただいておりますけれども、引き続き、迅速に、また、各改正の段階に合わせてきめ細かい周知をお願い申し上げます。
基礎年金の給付水準底上げについては、最後の最後に修正法案として挿入されまして、その法制上の措置が次期の財政検証を踏まえて講ずるということにされましたけれども、次期改正では、恐らく調整期間の同時終了の措置を取る可能性が高いという想定のもと、どのような措置を講じるべきかとか、あと、国庫負担の確保も含めて基礎年金の底上げのための財源の在り方について、早目に検討を開始することが必要かと思います。
また、基礎年金の底上げに向けて、例えば調整期間の同時終了の措置とか、あとは、被保険者期間の45年化などについて、今後検討することとなると思いますけれども、基礎年金の給付水準として現在の財政状況を前提にしつつも、どのような水準が妥当であるのかという根本的な検討も必要ではないかと思います。高齢者世帯の消費実態などのデータも踏まえながら、また、年金生活者支援給付金制度との関係も含めて、基礎年金として目指すべき水準を再定義する、あるいは確認するということが、そのための財源の必要性についての理解を得るためにも必要かと思います。
あと、先ほど来から多くの委員の方から御指摘がありましたけれども、附則の検討規定について、特に第3号被保険者制度の在り方については、今後の進め方について、先ほど事務局より、今後提示されていくということでしたので、そちらを待ちたいと思いますけれども、ライフスタイルに大きく影響を与える課題となりますので、多様な立場の方の意見を収集しながら集中的に議論を進めて、次回の改正では、一定の改正案あるいは方向性を示すということを目指す必要があると思います。
あと、先ほどもありましたけれども、障害年金の在り方についても専門の検討会をぜひ設置していただいいただいて、次期改正に向けた議論を早目に開始していただきたいと思います。
以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
年金局並びに関係者の皆様、大変難しい改革だったと思います。無事成立して大変よかったと思います。改めてお礼を申し上げたいと思います。
特に、マクロ経済スライドの適用期間の違いによって、基礎年金の給付水準が大幅に下がるということに対して、対応措置が一応組み込まれたというのは、大変よい結果だったと思っています。
もう多くの委員の皆さんと重なる部分がありますので、シンプルに申し上げますと、附則、附帯決議についている一つ一つのテーマはね大変重いテーマがあると思います。障害年金についての社会モデルの議論、それから45年加入、それから3号制度改革と適用拡大が指摘されていました。特に3号あるいは適用拡大については、指向性のある、予見性のあるようなものでなければいけないので、早めの議論をしていただきたいなと思っております。
広報については、今回の年金改革の議論を拝見しておりますと、国民の間で国民年金、厚生年金、基礎年金の関係性が、必ずしも十分理解されていないと、基礎年金導入から40年たったのに理解されていなかったという点については、厚労省におかれては十分反省していただきたいと思っております。
今後、国民から様々な議論が出てくることになると思います。一方方向の発信ではなくて、SNS時代の、そういう広報戦略というのは、双方向で機動性のあったものにしていただきたいと思っております。
時間ももう来ているかと思いますので、私の発言は以上とさせてください。どうもありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、権丈委員、お願いします。
○権丈委員 いろいろとお疲れさまでした。この間、結構楽しませてもらいました。
本日の議題に関する全体的な意見に関しては、小野委員、是枝委員と、基本ではなくて全体的に全く同じです。小野委員の働き方に中立的な制度の実現、雇い方に中立的な恒久的な仕組みの構築、そして是枝委員の意見は、参考人として参議院のほうに出席されたときの発言がありますけれども、これは、ぜひ皆さん参考にされるといいと思います。特に、本日の資料1の2頁、赤字で書かれた衆議院による修正部分をどう解釈していくかというのは同じであります。
さて、法律が成立した後に言うのも何ですけれども、少なくとも次の2つは年金部会で議論してもらいたかったかなというのがあります。
1つは、厚生年金のマクロ経済スライドは止めるべきか否か。もう一つは、基礎年金の底上げに資する手段として、適用拡大、45年化、国民年金と厚生年金の一元化という少なくとも3つがあるわけですが、いずれを採るべきか、これは、やはり年金部会で議論してほしかったというのはあります。
先週は、生活保護をめぐり違憲判決が出ていました。その際、専門家の知見が十分に踏まえられていなかった点が指摘されていました。そう考えると、今回の年金改正は大丈夫かなというのはあります。
この間の報道では、調整期間の不一致はマクロ経済スライドが効かなかったためとの説明がなされていたのですが、実際には名目下限つきの、言わば偽マクロ経済スライドで運用されていたことが原因だったんですね。それをよしとする人たちは、この年金部会の事務局にも、委員にも、そして傍聴席にもいないはずです。ただ、この偽マクロ経済スライドを容認する人たちは、中小企業に一定の負担を求める適用拡大とか、自営業者や農業者に長期加入を求める45年化という王道の改革を進んで担うインセンティブはほとんどありません。むしろ反対する誘因のほうが強いかなと。
私は、これまで20年近く適用拡大は絶対正義であると言ってきました。しかし毎回様々な形で妨げられてきました。今回もまた、あんこのないあんパンなどの話を含め、議論が本質から逸れていく様子を眺めていたのですが、将来の低年金対策に真摯に向き合うのであれば、適用拡大と45年化こそが有効な手段であって、それ以外の方向へ議論を誘導する人たちの姿は、どうしても私には、いつも邪魔ばかりするばいきんまんと重なって見えてしまうわけです。
適用拡大、45年化こそが大切と考えている人は、年金で汗をかいてもらう方法しか口にしません。政治、政策というのが、易きに流れるのが見えているから、ほかの抜け道はつくらないという姿勢でいるわけです。
ここ数年、国民年金と厚生年金の財政調整方法について、積立金割の導入が議論されていました。これは実質的な制度の一元化なのですが、私は覆面テーマと呼んでいまして、正体が見えないようなテーマで議論されていた。
厚生年金というのは、賃金比例、労使折半の仕組みで再分配機能を備えています。一方、国民年金は所得捕捉の困難な層を対象としているため、定額拠出、定額給付により公平性を保っている。両者は全く異なる設計思想を持っている。小野委員も先ほどその設計思想という言葉を使っていましたが、これらを一元化しようとすると、公平性の問題が多面的に生じてきます。
それらの公平性の問題を回避するために、国民年金で基礎年金の給付水準を先決する方式が考案されたのであって、それを変えるために両制度を一元化しますという話には、普通ならないですね。
皆保険、皆年金政策を展開している日本で、異なる設計思想を持つ制度の間の財政調整は、加入者割までというのは大原則だったわけです。その根幹に関わる変更は、丁寧かつ公開の上で行うべきだったのではないかと思っています。
それで、制度を一元化すると国庫負担が兆円単位で追加され、みんなの給付は増えるのだから、損得論に持ち込めば、労使は最終的には支持をするだろうと考えられていたのか、長く年金は損得論一辺倒になって、制度への信頼を損なう言葉が蔓延して、以前から言っていますけど、年金世論はぼろぼろになっていった。
しかし、労使は損得の話ではなく、これはルールと制度への信頼の話だとして、積立金割の導入を一貫して反対してきました。そうした労使の見識には、私は敬意を表すべきだと思っています。
先ほど佐保委員も言っていた、2019年12月の第15回年金部会で、使用者もこの段階で遠回しだけど、強い表現で明確に反対しています。
積立金割は、被用者間の一元化だからこそ成り立つ仕組みであって、それを今の国民年金と厚生年金の間に適用するのは、制度の本質から逸脱するというのが、私とか、小野委員とか、是枝委員とかが考えていることではないかと思います。
報道では、「国民年金と厚生年金の財政統合にほかならず、理解を得られない」とされていましたが、その理解の得られなさの1つが流用批判として現れているのだろうし、実は一元化への批判点はほかにも幾つもあります。
2004年の小泉内閣時代から旧民主党とその応援団は、一元化を主張してきましたが、年金制度への理解が十分でなかったことから、年金局とか専門家の批判を受けて、次第にその主張は影を潜めました。
そして、今回同じ役者がそろって、就職氷河期世代の低年金というスローガンを掲げて再登場してきたわけですね。
しかし、昨年の分布推計は将来の年金額は世代に例外なく、改善傾向も見られることを示していて、彼らのスローガン自体が疑わしいものでした。
だけど、議論は旧来のモデル年金に基づいて進められ、分布推計が示した明るい未来の視点は無視されました。
言わば、年金においてもポスト真実政治が影を落としていたと言えます。
2019年のいわゆる2000万円の騒動のとき、基礎年金が3割減るという表現が登場した頃、当時の年金担当審議官は、国会で野党議員に3割減るのですねと問われて、算数に弱いのでぱっと割り算できないのですと答えて、審議が一旦中断してSNS上で炎上していました。
年金局としては、不用意な言質を避けようと努力していたと理解しており、私は、その姿勢は評価されるべきだと思います。
他方、公的年金保険の防貧機能を強化して将来の生活保護費の膨張を避けるためにも、労使は45年化には、もう長く理解を示していて、労働側は適用拡大も長く主張してきました。
ということで、今後は分布推計の成果を踏まえて、モデル年金の限界を乗り越えて、若い人たちが将来は年金があるからと安心して働き、将来の生活に展望が持てると感じられるような、少しは希望を描ける制度、社会を実現していくことが重要だと思いますし、実際そのような将来像のほうが、現実に即した姿でもある。
年金制度は賃金システムの欠陥を補完するサブシステムであって、それを支えているのは、労使の拠出による安定財源です。労使による制度への信頼が支えているからこそ、持続可能な年金制度を我々は次の世代に引き継ぐことができるのだと思います。
注目、アテンションを集めるセンセーショナルな言葉で、人々のルサンチマンや敵意を刺激して分断をあおるほうが、メディアも取り上げるし、政治を動かしやすいという現実はあると思います。しかしそれでもなお、メディアをはじめとする全ての関係者が、それぞれの立場において責任ある判断を行って、アテンション・エコノミーの誘惑に流されることなく、事実を尊重し、社会の連帯を育む姿勢を意識するということが大切なんですね。
そうすることが難しい時代であることは分かっていますけど、そのような姿勢を共有していかなければ、社会の根幹が壊れてしまうなと、そういうことを日々考えていて、今回の件を眺めながら、年金も事実を離れた政治の一例になってしまったなと危惧していたことを伝えておきたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 それでは、最後に、玉木部会長代理から、お言葉をいただければと思います。
○玉木部会長代理 ありがとうございます。
皆様の御意見を拝聴しまして、様々な意見が闘わされていることにつきまして、大変心強く思ったところでございます。
私からは、簡単なポイントを3つ申し上げます。
1つは、適用拡大についてでございます。今回適用拡大が法制化されて、前進したことは大変喜ばしいことだと思うのですけれども、やはり今後の進め方につきましては、労働市場への中立性ということをしっかりと踏まえた、着実な進め方をしていただきたいと思います。
適用拡大には、セーフティネット社会の隅々まで広げるという機能がありますけれども、これは世の中がどんどん多様化して、セーフティネットを求める方々の状態も多様化する中にあって、大変重要なポイントだろうと思います。
それから、基礎年金の底上げにつきましては、底上げということ自体につきまして、法律にきちんと規定されたといったことは、大きな前進と考えてよろしいかと思います。
この後、何年間か時間があるわけでありますし、また、財政検証もあるわけでございますけれども、どういったやり方がベストであるのか、議論を尽くしていただきたいと思うところでございます。
最後に申し上げますのは、年金制度というのは、様々な、思いのほかな状況にしばしばさらされているということでございます。また、そういったものに対しまして、年金制度をイムリーに適合させていくことが仕事かと思います。
例えば、どういうことがあるかと言えば、出生数がどんどん下がっていくとか、あるいは、最近、児童、生徒の不登校が増えておりますけれども、こんなことだと精神障害への対処といったものはどうなるのだろうか、あるいは最近、外国人の入国者数が出国者数を大きく上回っている、この辺はどうも経済前提の想定を超えているかもしれない、といった話がございます。
これらの点は、それぞれ年金制度そのものよりも、はるかにはるかに広い間口の議論を要するところでございまして、こういったことを踏まえたオープンな議論を、なるべく早めに進めていただきたいと思うところでございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
皆様から、大変多くの御意見を賜りまして、ありがとうございました。
予定の時間をかなり過ぎてございますので、本日は、ここまでとさせていただきますことを御了承ください。
御質問とともに様々な観点から、感想、コメントあるいは御意見などを賜りまして、誠にありがとうございます。
事務局におかれましては、法の施行に向けての準備、さらに、次回改正に向けて、本日の御意見等を参考にしていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、今後の予定について、事務局からお願いします。
○総務課長 本日もありがとうございました。
本日いただいた御意見を受けまして、まずは、今回の制度改正を円滑に施行していくとともに、今後の検討課題につきましても、議論の進め方などを整理していきたいと思います。
年金部会の今後の開催につきましては、必要に応じて、また連絡いたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議は、これにて終了とさせていただきます。
お忙しい中お集まりいただきまして、誠に本当にありがとうございました。