第16回社会保障審議会年金部会(議事録)

日時

令和6年7月3日(水)13:30~15:30

場所

東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 3階 第1会議室

出席者

会場出席委員
オンライン出席委員

議題

  1. (1)令和6年財政検証の結果について(報告)
  2. (2)働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会における議論の取りまとめについて(報告)

議事

議事内容

○総務課長 ただいまから第16回「社会保障審議会年金部会」を開催します。皆様、お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。
 初めに、委員の出欠状況を報告します。出口委員、嵩委員、永井委員は御欠席です。駒村委員は遅れて御参加される予定です。原委員、堀委員、百瀬委員は途中御退席、武田委員は途中で一時離席されると伺っております。
 御欠席の出口委員の代理として日本経済団体連合会の井上様に御出席いただいております。井上様の御出席について部会の御承認をいただければと思います。いかがでしょうか。
(委員首肯)
○総務課長 ありがとうございます。
 駒村委員、島村委員、武田委員、原委員、平田委員、深尾委員、堀委員、百瀬委員はオンラインでの御参加です。
 出席委員が3分の1を超えておりますので、本日の会議は成立しております。
 続いて、資料を確認いたします。時間の都合により資料番号のみ読み上げます。
 本日の資料は、議題1につきまして、資料1、資料2-1、資料2-2、資料3-1、資料3-2、資料4-1、資料4-2。議題2につきまして、資料5-1、資料5-2、参考資料1、参考資料2を事務局で用意しております。
 事務局からは以上です。以降の進行は菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、本日もお忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 カメラの方はここで退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、議事に入らせていただきます。本日は、「令和6年財政検証の結果について(報告)」「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会における議論の取りまとめについて(報告)」、以上2つを議題といたします。
 令和6年財政検証につきましては、今年4月に当部会において報告のありました経済前提の検討結果を踏まえ、厚生労働省において財政検証の公表に向けた作業を行っていただきました。今般財政検証の結果が取りまとめられましたので、まず議題1、令和6年財政検証の結果につきまして、事務局より御報告をお願いいたします。
○数理課長 数理課長でございます。
 ただいまありましたように、5年に一度の公的年金の財政検証が取りまとまりましたので、私のほうから報告させていただきます。資料は資料1から資料4-2まで大部になっておりますが、まず資料の構成から説明させていただきます。資料1が全体の概要となっております。資料2-1が現行制度に基づく財政検証結果。資料2-2がその収支見通し。資料3-1が一定の制度改正を行ったオプション試算の結果。資料3-2がその収支見通し。資料4-1が関連資料。資料4-2も関連資料でありますが、今回の財政検証で初めて実施した年金額分布推計となっております。この分布推計によりまして、モデル年金では確認できなかった実態が明らかになったと考えております。具体的には、近年女性や高齢者の労働参加が大きく進展しておりますが、これが将来の年金、特に女性の年金によい影響を与えているということが定量的に明らかになっております。詳しくは資料の中で御説明いたします。
 まず、資料1で概略を御説明いたしますので、資料1の1ページから御覧ください。こちらは財政検証の枠組みをお示ししたものであります。一番上が2004年に導入された財政フレーム。保険料水準を固定し、国庫負担、積立金と合わせて固定された財源の中で年金給付を行う仕組みとなっております。その中で今後100年の将来を見据えまして、長期的に財政が均衡するまで年金水準を調整する仕組みといたしましてマクロ経済スライドが導入されているというところであります。
 財政検証は2004年に導入された財政フレームの下、年金財政の健全性を検証する仕組みということで、少なくとも5年ごとに実施されるというものであります。具体的には、直近までの人口や経済の動向を織り込みまして、100年にわたる財政の見通しを作成し、マクロ経済スライドの調整がどこまで必要かという見通しを示すものであります。この財政検証はマクロ経済スライドの開始や終了の判断にも使われるというものでありまして、財政検証で直ちにマクロ経済スライドを終了しても問題ないという見通しが示されれば、実際にマクロ経済スライドを終了するということになるものであります。
 さらに、財政検証において継続的に公的年金の給付水準を示す資料として導入されましたのがモデル年金の所得代替率となります。定義式は一番下にあるとおりであります。
 このモデル年金におきまして、次の財政検証、つまり、5年以内に所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には給付と負担の在り方について再検討し、所要の措置を講ずることが法律に規定されているということであります。このため、財政検証におきましては、モデル年金の所得代替率において給付水準を示すということとされておりますし、これが50%を下回るかどうかというのが注目されてきているというものであります。
 続いて、2ページを御覧ください。財政検証の諸前提をお示ししております。基本的には既に年金部会で御紹介しているものであります。財政検証で重要な前提、人口、労働力、経済の3つでありまして、それぞれ専門家が客観的に設定したものを用いるということになっております。また、将来については、幅を持って見るために複数の前提を設定しているというところであります。人口につきましては、社会保障・人口問題研究所の将来推計を用いております。
 これまで出生率、死亡率のみ複数の仮定を置いていたということでありますが、今回外国人の入国超過が実績で大きな水準になってきているということで、日本の人口に大きな影響を与えるようになってきているということであります。このため、今回は外国人の入国超過についても複数の前提で実施しているというものであります。
 労働力につきましては、労働政策研究・研修機構、いわゆるJILPTの作成した労働力需給推計を用いております。3つのシナリオを用いているというものであります。
 経済の前提につきましては、本年金部会の下に専門委員会を設置いたしまして設定いただいたものであります。今回は労働力と組み合わせて4つのシナリオを設定しているというものであります。
 ここで4つのケースの名称でありますが、上3つのケースにおいて名称を変更しております。4月の年金部会で報告したとき、名前の意味が分かりにくいといった御意見もいただきましたが、このような御意見を踏まえまして、上から高成長実現ケース、成長型経済移行・継続ケース、過去30年投影ケースと名称を変更させていただきました。上3つのケースにつきましては、内閣府の長期推計で示された3つのシナリオとTFP上昇率や労働力について同様の仮定をセットしているというものであります。
 さらに、年金につきましては、最悪のケースも想定していくということで、1人当たりゼロ成長ケースを加えているというところであります。こちらはTFP上昇率は過去最低の水準がずっと続きまして、労働参加が現状から全く進まないというかなり控え目な想定を置いているというものであります。
 3ページは財政検証のメインの結果となります。経済・労働力について、4つのシナリオにおいて将来の所得代替率の見通しを示しております。人口につきましては中位推計を活用しております。足下の2024年度において所得代替率が61.2%となっております。5年前の2019年度の所得代替率は61.7%でしたので、この5年間マクロ経済スライド調整の影響によりまして0.5%低下しているというものであります。
 その下の枠内につきまして、マクロ経済スライドの調整の終了がいつになって、その後の所得代替率がどのような水準になるかをお示ししております。上2つのケースにつきましては、それぞれ56.9%、57.6%となっておりまして、50%を大きく上回っているというものであります。
 一番上のケースと2番目のケースで所得代替率が逆転しておりますが、この理由は注2に記載させていただいております。賃金を上回る実質的な運用利回り(スプレッド)が逆転しているためでありまして、同様の結果は前々回の財政検証においても生じていたというものであります。
 次に、過去30年投影ケースにおきましても50.4%となっておりまして、将来にわたり50%を上回る水準となっているものであります。
 一方、1人当たりゼロ成長ケースでは、2059年度に国民年金の積立金がなくなりまして、完全な賦課方式に移行せざるを得なくなるということであります。その後、保険料と国庫負担だけで賄うことのできる水準が37~33%程度となっているというものであります。
 なお、1人当たりゼロ成長ケースでこのような状況になるという大きな要因について、2つ目のポツに記載しているというところであります。このケースで物価や賃金の上昇率が低いため、マクロ経済スライドが十分に発動しない状態が続くというところであります。その結果、給付水準が高止まりしまして、積立金がなくなるという結果になるということであります。2059年度でマクロ経済スライドの未調整分、キャリーオーバー分、たまりということになりますが、これが21.7%になっているというところで、仮に名目下限措置を撤廃すれば2063年度に調整が終了して、50%は下回りますが、45%程度の所得代替率になると見込まれております。
 以上、見ていただきましたように、上3つのケースにおきましては所得代替率が50%を上回って、前回と同様のケースに比べても将来の所得代替率が大きく上昇が見込まれているということであります。ただ、1階の基礎年金と2階の報酬比例のバランスというものを見ていただきますと、前回と同様に調整終了年度が大きく乖離しているというところで、基礎年金の水準が大きく低下しているというところであります。1階、2階のアンバランスにつきまして、次の4ページで年金額の推移も踏まえながら確認したいと思いますので、4ページを御覧ください。
 こちらは所得代替率とモデル年金の見通しについて、成長型経済移行・継続ケースと過去30年投影ケースで確認したものであります。上段が上から2つ目のケースで、下段が3つ目のケースということになります。上段のケースのほうが図が少し大きくなっておりますが、このケースは目指すべき将来の姿と考えておりまして、そのために少し大きく示させていただいております。ただ、将来というのは不確実でありますので、年金制度を考えていく上では、上段のケースだけを見るのではなく、過去30年投影ケースのような将来も想定しまして幅で考えていく必要があるというところであります。この考え方は4月の年金部会でも御説明いたしましたが、そのときから全く考えは変わっていないというところであります。
 上段のケースで比例の終了年度を御確認いただきますと、2025年度以降は調整不要となっております。一方、基礎年金は2037年度までマクロ経済スライドが続きまして、基礎年金のみ13年間調整を続けるという見通しになっております。下の過去30年投影ケースにおきましても比例のマクロ経済スライドは2026年度には終了して、2027年度以降は調整不要というところになっております。一方、基礎年金は、2057年度まで基礎年金のみ31年間も調整を続ける見通しとなっているというところであります。いずれのケースにおきましても基礎年金のみの調整が長く続くという見通しになっています。
 比例につきましては、仮に今後制度改正が行われなかった場合は、両ケースとも2027年度には比例の調整は不要ということになっておりまして、これは2027年度の年金額改定において実際マクロ経済スライドの終了の判断が必要になってくるということを意味しているというものであります。
 続いて、モデル年金の見通しを御確認いただきたいと思います。こちらの年金額は物価で2024年度の価値に割り戻した実質額で表示しております。すなわち、この年金額が上昇しているということは、年金が物価を上回って伸びているということでありまして、年金の購買力が増加していることを示しております。以下、財政検証の資料で年金額をお示しする際は全て物価で割り戻した実質額でお示ししているというものであります。
 上段のケースは、実質賃金上昇率の仮定が1.5%というふうに高いということでして、実質賃金の上昇に伴って年金の実質額も上昇しているというのが見られるところであります。
 比例につきましては調整不要となっておりますので、実質賃金の伸びと等しく伸びているというところでありますが、基礎年金につきましては、マクロ経済スライド調整によって賃金の伸びより年金の伸びが抑えられることになるわけですが、ただ、調整期間中も物価の伸びを上回っておりまして、足下で夫婦2人13.4万円の基礎年金は、調整終了時の2037年度には13.6万円と増加しているというところであります。
 一方、過去30年投影ケースでは実質賃金の伸びは0.5%と低くなっております。このため、マクロ経済スライド調整中は、年金の実質額は低下するということになります。
 比例につきましては調整が2026年度に終了するため、その後、実質賃金に伴いまして年金も増加しているというところですが、基礎年金は調整が終了する2057年度には夫婦2人で10.7万円。1人当たりで言いますと、5.3万円まで低下することが見込まれているというものであります。このケースでは所得代替率だけでなくて、購買力を示す実質額で見ても基礎年金は大きく低下するということが確認されております。改めて基礎年金の水準低下が大きな課題であることが確認されたと考えているところであります。
 5ページ以降はオプション試算の結果となります。5ページはオプションのメニューとなります。
 1ページ飛ばして6ページを御覧ください。まず、さらなる被用者保険の適用拡大を行った場合の試算であります。上の枠囲みにあるとおり、今回4通りの試算を行っております。順番に行きますと、①が下の図で黄色で示したAの部分を適用対象としたものとなっております。こちらは全世代型社会保障構築会議においても早急に対応を行うべきとされまして、7月1日に取りまとめが行われました適用拡大の懇談会でも優先的に対応すべきとされた部分であります。具体的には、週20時間以上の短時間労働者に対する企業規模要件を撤廃した場合。この場合は対象者70万人。加えまして、5人以上の個人事業所の非適用業種を撤廃した場合の対象者20万人。合わせて90万人を対象とした場合となります。
 ②のケースは、①のケースに緑色のBの部分を加えたものとなります。Bの部分につきましては、週20時間以上の短時間労働者に対する賃金要件を撤廃した場合の対象者となりまして、110万人となります。①と合わせて200万人が対象となるということです。この賃金要件の撤廃ですが、最低賃金の引上げによっても同等の効果が得られるということになります。つまり、最低賃金が引き上がって、全国全ての都道府県で1,000円を超えてくるようになってくると、週20時間働けば月8.8万円を超えるということになります。こうなると、実質的には賃金要件撤廃と同等の効果が得られるということでありまして、記載につきましても「賃金要件の撤廃又は最低賃金の引上げ」とさせていただいているというところであります。
 ③の部分は、②にCの部分を加えたものであります。Cの部分は5人以下の個人事業所で働く人が対象になりまして、70万人が対象となります。②と合わせて270万人を対象としたもの。
 最後の④は最も広く、週10時間以上働く被用者全てを対象としたものでありまして、860万人が対象となるということであります。ここまで拡大すれば、被用者のほぼ全てをカバーするということになります。
 7ページはその試算結果となります。現行制度と比べまして、90万人ベースの①の場合で所得代替率が1%程度上昇するということになります。適用拡大が進むほど効果が大きくなるということで、④では3.6%、5.9%の上昇となるということであります。
 いずれのケースでも基礎年金は全体の上昇以上に上昇しているということでありまして、報酬比例は変化がないか、または低下する見通しになっているということです。
 この結果、④の場合であれば、結果として基礎と比例の調整期間が一致しているということであります。ただ、これが一致しているのは結果的なものということでありまして、今後経済状況等が変われば、5年後の財政検証ではずれることもあり得るというものであります。
 8ページは基礎年金の拠出期間を45年間に延長しまして、それに応じて給付の増額を図る見直しをしたものということであります。現行制度と比べまして5年間保険料の拠出期間が延びますので、所得代替率もそれに応じて40分の45ということで、7%程度上昇しているというものであります。なお、40年分で比較しますと、所得代替率はおおむね同じということになっておりまして、年金財政への影響は軽微だということで、所得代替率の上昇は保険料の拠出期間の延長によるものということであります。
 9ページは45年化のイメージと試算の前提を整理したものとなっております。1号被保険者で言いますと、保険料の拠出が5年間延長されまして、現在の価格で計算しますと、5年間で約100万円の負担増となりますが、その分給付が増えて、年間約10万円の年金の増加ということを前提として計算しているものであります。また、延長した60~64歳の期間についても2分の1国庫負担はきちんと投入される前提としているというものであります。
 10ページはマクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合、1階と2階が同時に終了するようにした場合というものであります。上段のケースにつきましては、基礎・比例共に足下から調整不要となっているものでありまして、所得代替率は現行制度より3.6%上昇。足下の所得代替率61.2%が維持されるような見通しになっているというものであります。
 一方、下段のケースでは、2036年度で基礎・比例共に終了して、所得代替率は現行より5.8%上昇して56.2%となる見通しであります。
 比例の所得代替率は現行より2%程度低下するものの、基礎の上昇がそれを上回って、7.7%上昇しているというところであります。
 11ページは、65歳以上の在職老齢年金の仕組みを撤廃した場合の結果となります。在職老齢年金制度の仕組みを撤廃いたしますと、一定の収入以上で働く年金受給者の給付が増えまして、2030年度で5200億円、2040年度で6400億円といった給付が増加するというところであります。この部分はマクロ経済スライドの調整が長くなるということで、将来の所得代替率が低下いたします。その影響が▲0.5%ということになって、所得代替率が0.5%下がることになります。ここで基準額の引上げというものについては試算はしていないところでありますが、一番右側の2022年度末のデータで基準額の見直しによる給付増を示しております。こちらを確認いただければ大体の影響が推測できるようになっているというものであります。
 例えば65万円に基準額を引き上げた場合の給付増につきましては2600億円となっておりますが、撤廃した場合の給付増4500億円の約6割ぐらいになっているということで、所得代替率の影響も推測できるというものであります。
 12ページは標準報酬月額の上限を引き上げた場合の試算ということになっております。現在の上限は平均の2倍を基準として定められまして、65万円となっているところであります。この上限に該当する人が現在約6%ということであります。そこで、上限の設定のルールを見直しまして、上限該当者が4%、3%、2%となるようにした場合の影響を試算しているというところであります。この場合、足下の上限につきましては、それぞれ75万円、83万円、93万円になるということであります。上限を引き上げますと、上限該当者及びその事業主の保険料負担が増加する一方、その上限該当者の将来の年金給付の増加に加えまして、年金財政にもプラスの影響があって、マクロ経済スライド調整が短縮する。全体の給付水準も上昇するという効果があるというところであります。それぞれの影響を試算しておりまして、例えば75万円まで引き上げた場合ということで言いますと、保険料負担は労使計で4300億円の増。上限該当者の給付は、10年間該当した場合で年6.1万円増加します。さらに加えて、全体の給付水準の上昇が所得代替率で0.2%の上昇。こういった影響があるということであります。
 以上がオプション試算の結果となっております。
 13ページ、14ページは、今回の財政検証において初めて行った年金額分布推計の概要となります。こちらは65歳時点の年金額につきまして、その平均や分布が世代によってどういうふうに変化していくかというものを試算したものであります。初めにもお話ししましたが、これによってモデル年金では確認できなかった実態が明らかになったと考えております。モデル年金につきましては、年金の加入期間を固定しておりまして、どの世代も同じと仮定しているところであります。男性は厚生年金に40年間加入して、女性は3号として40年間加入する。女性には2階部分の年金は出ないという仮定であります。しかし、実態といたしましては女性や高齢者の労働参加は進んでおりまして、2号被保険者の数も増加を続けているということであります。この結果、厚生年金の加入期間は若い世代ほど長くなって、特に女性についてはその延伸が大きいと考えられるところであります。
 この労働参加の進展に伴う厚生年金の加入期間の延伸は、若年世代の年金の上昇要因、また低年金の減少要因となるものでありまして、年金額分布推計ではこの効果について具体的な数字で初めて確認できたというものであります。
 13ページが上から2番目の経済の前提で、成長型経済移行・継続ケースの結果であります。左上が男性と女性の1人分の平均年金額となります。2024年度で65歳、50歳、40歳、30歳の世代が65歳時点で受給する年金額について、こちらも物価で現在の価値に割り戻した実質額で見ております。なお、夫婦で考える場合は男性・女性それぞれの合計として見ることもできるかと思います。この場合で見ますと、実質賃金上昇率が1.5%となっておりますので、実質賃金の伸びに応じて男性・女性共に平均年金額は上昇が見込まれるということであります。
 左下のグラフでモデル年金や実質賃金の伸びを比較しておりますので、御覧ください。男性の平均は緑色の線のモデル年金とおおむね同じ伸びとなっているところでありますが、女性の平均はモデル年金の伸びを上回って、賃金と同じか、それを上回るような伸びを見せているというところであります。
 続いて、右側のグラフを見ていただきますと、こちらは2024年で65歳、50歳、30歳の世代が65歳時点で受給する年金の分布を確認したものです。男性・女性共に低年金は減少いたしまして、分布の山が高いほうにシフトしているというところであります。特に女性については低年金の減少に効果が大きくて、分布の山も大きく右のほうにシフトしているというところであります。1994年度生まれ、現在30歳の女性の分布を見ますと、厚生年金の加入期間の延伸によって男性の分布に近づいていくことも確認できるかと思います。
 14ページは上から3番目の過去30年投影ケースの結果であります。このケースでは実質賃金の伸びが0.5%と小さいことから、年金の伸びも先ほどのケースに比べては小さくなっているということであります。平均年金額で言いますと、男性は若干減少しているというところでありますが、女性の年金額はこの場合でも調整期間中も上昇して、購買力の増加が確認できるというところであります。
 左下のグラフでも先ほどと同じように、年金の伸びは男性の平均はモデル年金と同様の伸びということでありますが、女性はモデル年金を上回って、賃金とおおむね同様の伸びを示しているということであります。右側の分布を確認いたしますと、男性の分布は真ん中のほうに寄ってきているというところでありますが、女性については、この場合も低年金が減少して、分布の山が右にシフトして、男性の分布に近づいていることが確認できるというところであります。
 資料2-1を御覧ください。こちらは現行制度における試算結果となります。これ以降、概要で取り上げなかった部分を中心に補足的に資料を説明させていただきたいと思います。まず、前回の財政検証との比較を御確認いただきたいと思いますので、6ページを御覧ください。こちらは成長型経済移行・継続ケースで、前回のケースⅠ~Ⅲ、経済が高いケースと比較しております。前回と比べまして調整期間は短縮して、調整終了後の所得代替率も大きく上昇しているということが見られます。前回では一番高いケースでも51.9%だった所得代替率が、今回57.6まで上昇しているということです。
 7ページは上から3番目の過去30年投影ケースの結果となっております。前回のケースⅣ、Ⅴ。経済成長率がおおむね同じようなケースと比較しております。調整終了年度については大きく変化しておりませんが、調整終了後の所得代替率は、前回は45%前後であったものが、50%を上回って50.4%というところまで上昇しているというところであります。こちらは調整期間が変わらないのに所得代替率が上昇しているということですが、これは前回より女性・高齢者の労働参加が進展していることによりまして、公的年金の被保険者数の減少が緩やかになっているということが影響しております。公的年金の被保険者数が緩やかになりますと、マクロ経済スライドの調整のスピードが緩やかになるという効果がありまして、それでこういったことになっているということです。
 こういうふうに前回の同様のケースと比べまして将来の給付水準が大きく上昇する結果となっているというところであります。こういった結果になった要因としましては大きく2つあると考えておりまして、1つは女性や高齢者の労働参加が想定を超えて進展してきたということでありまして、保険料を納める被保険者が大きく増加しているということであります。もう一つが想定を超えた積立金運用の結果ということでありまして、将来の給付に充てる積立金が大きく増加しているということであります。
 ページを飛びまして、14ページを御覧ください。これまで人口につきましては中位推計で確認いただいておりましたが、人口の前提が変化した場合の影響を確認したものとなります。出生率が高位、低位となった場合。死亡率が高位、低位となった場合。あと、外国人の入国超過がより増えて年25万人となった場合。減少して前回推計ベースの年6.9万人となった場合について推計しております。当然どの要素につきましても高位になれば所得代替率は上昇して、低位になれば低下するということでありますが、上2つの高成長実現ケースと成長型経済移行・継続ケースで見ますと、どの要素で見ても、低位になったとしても所得代替率は55%を超えるような水準になっているというところであります。
 一方、過去30年投影ケースの場合は低位になりますと、いずれの要素も50%を下回りまして、46%台とか47%台となっていくということであります。
 将来につきまして、それぞれの要素がどう動くかと確定的なことを申すことはできないわけですが、一番下に直近の実績がどうなっているかということを示しておりますので、御確認いただきたいと思います。出生率の2023年の実績1.20となっておりますが、2023年の仮定値は1.23となっておりまして、こちらは下回っているというところでありますが、死亡率については逆に、2022年の実績は仮定値より高位のほうにずれているということであります。
 また、外国人の入国超過も中位の仮定より高く推移しているということで、2023年は24万人といった入国超過があるということであります。
 年金財政との関係で見ますと、足下の実績は、出生率はマイナスの方向に動いておりますが、死亡率と外国人の入国超過はプラスの方向に動いているということであります。
 続いて、参考資料となりますが、16ページを御覧ください。先ほどから申しております労働参加の進展による厚生年金の被保険者数の増加をデータで見ております。一番下の赤い部分が厚生年金の被保険者数の実績と将来の見通しとなります。こちらは実績で厚生年金の被保険者数が増加しているということが確認できるかと思います。公的年金の中で厚生年金の被保険者の占める割合というのは、2000年には53%だったわけですが、直近では70%弱まで上昇しているということであります。
 さらに、この傾向を将来に織り込んで推計した結果、2040年には労働参加進展シナリオでは79%、漸進シナリオでは76%まで上昇が見込まれているということであります。これを反映して今後受給者となる世代の65歳時点での厚生年金期間の延伸というのが見込まれるということで、年金額の上昇要因となっているものであります。
 17ページ、18ページは、先ほど御紹介した年金額分布推計の概要となります。こちらは16ページで見てもらった被保険者数の実績や見通しと整合的に推計しているというところであります。これを反映して女性の年金の充実や低年金の減少という結果が示されているというものであります。
 19ページを御覧ください。今回、所得代替率が上昇した要因を確認できるものであります。上段を御覧いただきますと、こちらは2023年度において前回の財政検証の見通しと、今回の財政検証の足下として使用いたしました実績見込みを比較したというものになります。被保険者数を比較いたしますと、女性や高齢者の労働参加の進展によりまして、厚生年金の被保険者は前回の見通しより約260万人増加しているということになっておりまして、3号被保険者は約60万人減少しているということになっております。
 この結果、収支状況も改善しておりまして、運用収入を除いた収支差引残を見ていただきますと、1.5兆円の赤字と見込まれておりましたが、実際には0.3兆円の黒字に転化しているということで、足下では積立金を活用しなくても、保険料と国庫のみで支出を賄うことができるという状況になっているというところであります。
 さらに積立金運用が好調でありました結果、2023年度末の積立金は前回の見通しを約70兆円上回っているということであります。これらの要素を今回の財政検証に反映した結果、前回よりも所得代替率の改善が確認されたというところであります。
 ページを飛びまして、28ページを御覧ください。今回改善要因になりました労働参加の状況と将来のシナリオについて御確認いただきたいと思います。就業者数と65歳以上人口の見通しを示しております。灰色の点線が前回の最も労働参加が進むケースの就業者数の見通しであります。これに対して、黒の実線で示された実績の推移が前回の見通しを上回って推移してきたということから、今回の見通しは前回を上回って、真ん中のケースでも前回の最も高いケースを上回る見通しとなっているというところであります。
 また、左下の65歳以上高齢者1人当たりに対する就業者数、何人で1人の高齢者を支えるかというものですが、これを見ていただきますと、2023年では1.9人で1人を支える姿でありますが、労働参加進展シナリオでは2060年でも1.5人で1人を支えるということになっております。高齢者1人当たりの支え手は約2割減という見通しとなっております。人口で見ますと、よく2人で1人を支える御神輿型が2060年頃には1人で1人を支える肩車型になるといったことが言われておりますが、労働参加の進展によりましてその影響は緩和されているということが確認できるということであります。
 次に、29ページを御覧ください。今回の労働参加のシナリオにつきまして、人口と比較してその意味するところを確認したものであります。2023年の就業者数を御覧いただきますと、20~64歳人口とほぼ同じ大きさとなっているというところであります。つまり、現在、均してみますと、20~64歳まで全員が働くような社会になっているというものであります。ただ、過去に遡って10年ぐらい前の就業者数を見ますと、20~59歳人口とおおむね同じとなっているということであります。つまり、この10年間で就業期間が5年延びるという変化が生じたということであります。
 一方、労働参加進展シナリオの2040年での就業者数を見ますと、おおむね20~69歳の人口と同じとなっているということでありまして、すなわち、労働参加進展シナリオというのは、2040年は均してみると、20~69歳全員が働くような社会になっているということを意味しておりまして、就業期間が今から5年ぐらい延びるようなシナリオになっているということであります。
 30ページは性・年齢階級別の就業率の変化を示しております。真ん中が2023年で、一番上が労働参加進展シナリオの2040年の見込みです。2040年の就業率はかなり高い水準になっているということが確認できるかと思います。ただ、一番下の2012年、10年ほど前のものを見ていただきますと、過去10年の変化も相当大きいということも確認できることであります。
 労働参加進展シナリオというのは、過去10年で起きた変化が2040年ぐらいまで生じることを想定しているシナリオとも考えられるものであります。
 36ページを御覧ください。今回の改善要因ともなっております積立金運用の長期的な実績を確認したものとなっております。GPIFを含めて、国内外の市場運用を行っている年金基金につきまして、実質的な運用利回り、賃金を上回る運用利回りにつきまして、10年移動平均を取って分布を見たものであります。今回財政検証の前提は赤い点線、1.7%以下で設定しているというところでありますが、国内外の年金基金の実績はおおむねこの水準を上回っているということも確認できるということであります。
 以上が資料2-1であります。
 続いて、資料3-1を御覧ください。こちらも概要の説明を補足して説明していきます。こちらはオプション試算の結果となります。
 まず、4ページを御覧ください。こちらは適用拡大によって年金額にどのような変化があるかを確認したものとなっております。現在30歳の世代につきまして、65歳となる2059年に受給する年金額の変化をモデル年金と平均年金額と年金額の分布で確認しているというものであります。モデル年金で言いますと、適用拡大が進むほど上昇しているということでありますが、内訳を見ると、基礎年金が上昇する。一方、比例については、過去30年投影ケースでは低下しているということであります。こちらはマクロ経済スライド調整が、基礎年金が短縮して、比例が延長する効果がそのまま現れているというところであります。
 真ん中の平均年金額は適用拡大が進むほど上昇するということであります。
 また、右側の年金額分布を見ましても、適用拡大が進むほど低年金が減少しているということも確認できるということであります。平均年金額と年金額分布は、今回初めて行った年金額分布推計からの結果となっております。こちらにより、改正の影響につきましてもモデル年金では見ることのできなかった効果を確認することができると考えております。モデル年金につきましては適用拡大の対象者を仮定しているというわけではありませんので、現れてくる効果は、マクロ経済スライドの調整期間の変化によるものだけとなりますが、一方、平均年金額とか年金額分布につきましては、調整期間の変化の影響に加えまして、適用対象者の2階の給付が充実するといった影響も含まれるというものであります。適用拡大の本来の効果を確認できるようになったというふうに考えております。
 10ページを御覧いただきたいと思います。こちらは基礎年金の45年化につきましても、先ほどと同様に年金額の変化を確認しているということであります。こちらは基礎年金が増加する効果によりまして、モデル年金、平均年金額、いずれも増加しますし、分布推計を見ますと、こちらも低年金が減少しているということが確認できるというところであります。
 12ページを御覧ください。45年化につきましては、国庫負担が増加することは課題となっておりますが、その動きを確認しております。上から2つ目、3つ目、いずれのケースであっても制度施行後緩やかに増加していきまして、最終的には2070年で1.3兆円の増加が見込まれるものであります。
 14ページを御覧ください。調整期間の一致についても年金額の変化を同様に確認しております。モデル年金は基礎年金が上昇して、比例が低下するということですが、基礎の上昇幅のほうが大きくて、全体で年金額が上昇しています。
 下段のケースの場合、基礎年金は2059年には夫婦2人で10.8万円まで低下しているということでありますが、調整期間一致によりまして14万円、1人当たり7万円まで上昇するということになります。平均額で見ても上昇が見られますし、また、分布を見ても基礎年金の上昇によりまして低年金の減少の効果が大きいことが確認できるというところであります。
 17ページを御覧ください。厚生年金の受給者につきまして、賃金水準別に年金額がどのように変化するかを見たものであります。調整期間の一致による効果を見たものであります。上から2つ目のケースですが、こちらによりますと、比例の低下がなくて基礎が上昇するという結果になっておりますので、全ての受給者について年金額は上昇するということになります。
 18ページを御覧ください。こちらは過去30年投影ケースでの同様の結果となっております。この場合は極めて高所得の方のみ比例の低下が基礎の上昇を上回るということで、年金額が低下しますが、その対象は1人当たり年収1080万円以上の方ということであります。年収1080万円というのは、ボーナス2回の場合の標準報酬の上限に該当いたします。したがって、このような方はほとんど存在しないということで、現在厚生年金の受給者の中で該当するのは0.1%未満と推計しております。
 19ページを御覧ください。こちらは調整期間一致の場合、国庫負担の増加ということが課題になりますので、その規模を確認しております。左側の成長型経済移行・継続ケースでは最大1.4兆円、過去30年投影ケースで最大2.6兆円の国庫負担の増加が見込まれるということであります。
 20ページを御覧ください。こちらは昨年の年金部会でもお示ししておりますが、調整期間一致による財政均衡の考え方の変更について改めて確認したものとなります。調整期間の一致につきましては、財政均衡の考え方を変更することによって実現されるものというものであります。現行は上のケースですが、基礎年金の水準は第1号被保険者の財政均衡により決定されまして、そこで決まった基礎年金が2号や3号の被保険者にも適用される。それで厚生年金の財政均衡で2階の給付水準が決定されるという、二段階方式になっているというものであります。これを下のような形で、公的年金全体の財政均衡によりまして基礎年金も報酬比例も同時に決定する。そういった方法に変更するというものであります。
 このように変更いたしますことによって基礎年金の水準は、1号被保険者の財政状況のみで決定されていたものが、公的年金全体の財政状況で決定されるということになりまして、共通の基礎年金を全体で支えるという基礎年金の趣旨にも沿ったものになるのではないかと考えているものであります。
 21ページから24ページは適用拡大、基礎年金45年化、調整期間一致の組合せ試算の結果を示しておりますが、説明は省略したいと思います。
 ページを飛びまして、29ページを御覧ください。こちらでマクロ経済スライド調整の名目下限措置撤廃と平成28年改正で導入されましたキャリーオーバー制の効果について試算しております。上2つのケースにつきましては、物価・賃金の上昇率が高くて、マクロ経済スライドが十分に発動される環境となっております。この場合は効果が確認できないということになりますが、一方、過去30年投影では名目下限措置撤廃により1.7%、キャリーオーバー制導入により1.6%所得代替率の上昇効果が確認できたものであります。また、一番下の1人当たりゼロ成長ケースのような極めて成長率の低いケースでも、名目下限措置を撤廃すればマクロ経済スライド調整により財政均衡を図ることができて、所得代替率は45.3%となったというところであります。賃金・物価が低い状況では名目下限措置の撤廃の効果があることが確認されたというものであります。
 続いて、資料4-1を御覧ください。財政検証に関連する資料を集めております。ピックアップして御説明したいと思います。
 5ページを御覧ください。モデル年金につきましては、20~59歳まで年金に加入して、65歳で受給するということを前提としておりますが、公的年金は個人の選択により就労を延長して受給開始時期を繰り下げますと年金額を増加させることができるという仕組みであります。この効果を確認した資料となります。モデル年金で年金額が低下していきます右側の過去30年投影ケースで御覧いただきたいと思います。比例は就労延長と繰下げの効果によって、基礎は繰下げの効果によって増加することが確認できます。マクロ経済スライドが調整終了する2057年度でモデル年金は21.1万円となっておりますが、75歳まで就労して繰下げを選択すると39.3万円まで増加するということであります。基礎年金も夫婦2人で10.7万円だったのが19.6万円、1人当たり9.8万円まで増やすことができるということであります。所得代替率も年金額の増加に応じて上昇して、94%まで上昇します。
 6ページを御覧ください。今、見ていただいたとおり、公的年金は個人の選択で給付水準を引き上げることができるわけです。こちらは過去30年投影ケースで見ておりますが、この場合だと今20歳の世代の所得代替率は50.4%まで低下していくわけです。このようにモデル年金で見ますと所得代替率の低下する若年世代におきまして、何歳まで就労して年金を繰り下げると今の高齢者と同じ水準の年金を受け取ることができるかというものを試算したものであります。赤囲みにあるところでありますが、66歳10か月まで就労して、その時点で受給を開始すればよいという結果になったものであります。
 また、一番下にあるとおり、現在20歳の世代で言いますと、65歳の平均余命は3年延長することが見込まれているということであります。そうしますと、受給開始時期を66歳10か月まで遅らせたとしても、平均的な年金受給期間は今の65歳の世代より1年延長されるということであります。つまり、同じ水準で受給期間が1年延長されるということとなっているということであります。このように考えますと、マクロスライド調整がされたとしても、平均余命の伸びに応じて就労を延長すれば、若年世代の年金は必ずしも貧弱なものになるとは限らないと考えております。
 ページを飛びまして、29ページを御覧ください。調整期間一致に関して補足説明の資料をつけております。過去30年投影ケースで調整期間一致の効果を分解して見ております。所得代替率の変化で見ますと、基礎年金が7.7%上昇して、比例が2.0%低下して、全体で5.8%上昇しているということであります。基礎の上昇が大きいわけですが、この上昇分の半分3.9%は国庫負担の増加により賄われるということであります。残りの網かけ部分が保険料と積立金で賄われる部分ですが、2階から1階に財源が移転されるということによりまして、1階が3.9%上昇して、2階が2.0%低下し、差引き1.9%の上昇となっております。ここで所得代替率が上昇しておりますのは、調整期間の一致には世代間の分配を調整する機能もあるということであります。すなわち、2階の調整が長引くということによりまして、足下の受給世代の2階の給付に充てていた財源が将来の受給世代の1階に充てられるということになりまして、この結果、調整後の給付水準が上昇しているというものであります。
 30ページを御覧ください。こちらは調整期間一致により1階と2階の給付と財源がどのように変化するかを見たものであります。100年にわたる給付と財源を2024年度の価格に換算して一時金で見ております。給付については、2階が65兆円減少して、1階は135兆円増加するということであります。財源について見ますと、まず保険料は固定されているため全く変化がないというところであります。また、1階の給付増の半分は国庫で賄われるということでありますので、70兆円国庫負担が増えているということになります。半分より少し多いのは、免除期間の給付など特別国庫負担があるためとなっております。1階の給付増の残りの半分は2階に充てられていた積立金を1階に充てるということで賄われるということであります。つまり、2階から1階に積立金を充てることによって、それと同じ金額の国庫負担が増加して、全体の給付が増加するということを示しております。
 また、こちらは別の見方をいたしますと、保険料が不変で、かつ国庫負担2分の1という制約の中で基礎年金の充実を図るためには、積立金を充てる以外の方法はないということになります。
 31ページは昨年の年金部会にもお示ししましたが、賦課方式における積立金の性質をまとめた資料であります。そのときも説明いたしましたが、賦課方式の積立金というのは、給付に充てた残余が積み立てられたものでありまして、個人の持ち分という考え方はないということであります。したがって、1号、2号期間を個人が移動しましても積立金は移動しないということであります。また、近年、保険料の残余はないという状況でありまして、過去の被保険者の保険料の残余が積み立てられて、運用により増大してきたものというものであります。したがって、厚生年金、国民年金それぞれの積立金は必ずしも今のそれぞれの制度の被保険者が積み立てたものではないということでありまして、その性質を考えると、積立金について全体で使っていくこと、特に共通の基礎年金に重点的に使っていくというのは一定の合理性があるのではないかと考えているものであります。
 32ページ、33ページは既に示している資料ですが、多くの受給者、被保険者が1号と2号、3号の間で移動していることを確認しております。
 続いて、資料4-2について御説明したいと思います。2ページを御覧ください。こちらは年金額分布推計の詳細資料となりますが、まず推計方法について説明させていただきたいと思います。基礎データにつきましては、2021年度末の個人単位で1号、2号、3号の経歴を通算した被保険者記録を新たに年金機構より5分の1抽出でいただいたものであります。1号、2号、3号を通算した記録を初めて入手できたことにより、今回このような推計を行うことができるようになったものであります。推計対象は、2024年度に65歳の世代から20歳の世代まで。65歳に到達したときに受給する個人の老齢年金を推計しているというものであります。
 ※印を御覧いただきたいと思います。この際、老齢年金として計算しているのは、繰上げ・繰下げを選択せずに65歳で裁定された場合の本来額を推計しているというものであります。したがって、繰下げするとさらに年金額が増えるというものであります。また、この本来額は世帯に着目して支給される加給年金は除外しているというものであります。
 推計方法について3ページ、4ページで御覧いただきたいと思います。3ページですがこちらは、財政検証本体、マクロ試算と連携して整合的になるように計算しているというものであります。被保険者数を例に挙げてみますと、左側のグラフは、近年、2号被保険者の割合が上昇し、将来さらに上昇が見込まれるというものであります。財政検証ではこれを織り込んで、若年世代ほど2号期間が延伸していくということが織り込まれるわけですが、年金額分布推計においてもこの財政検証の枠組みの中で計算しているということであります。具体的には、総枠がこのマクロ計算で決まっている中で、誰が制度間を移動するかというのを決定していまして、個々人の加入履歴をシミュレーションしているということであります。したがって、マクロ計算と整合性を取ることによって2号期間が延伸する結果になって、平均年金額の上昇や低年金の減少要因となっているというものであります。また、被保険者数だけでなくて、標準報酬総額や1号の納付月数の総数もマクロ試算と整合性を取るということを行っておりまして、その結果、年金総額につきましても財政検証と基本的に同じになるように計算されているというところであります。
 分布推計は、あくまで個々人の年金額がどういうふうに割り当てられるか、総額が決まっている中でどう割り当てられるかを計算しているというものであります。
 4ページを御覧ください。具体的なシミュレーションの方法であります。まず、出発点としては2021年度の実績があります。2021年現在でどういう制度に加入しているか、また、それまでの加入履歴がどうなっているかという実績があります。したがって、このとき50歳の方で考えますと、20~50歳までの30年間は実績が既にあるということであります。その実績の加入履歴を基に、65歳までの残りの15年間をシミュレーションして推計して、加えて65歳時点の年金額を計算するということとしております。したがって、加入履歴のうち30年分、約3分の2は実績から計算されるということになっております。
 シミュレーションにつきましては、当年度の加入履歴を基に、1年後、制度間をどういうふうに移動して、報酬がどうなるかをシミュレーションして、1年後の加入履歴を推計するということを繰り返していくということです。こうやって1年ずつ繰り返して65歳到達地点の加入履歴を基に個々人の年金額を計算して、その分布を集計するという方法を取っているというものであります。
 次ページ以降、概略で紹介できなかった分、結果を紹介したいと思います。7ページを御覧ください。こちらは現役時代の加入類型を男女別に見たものであります。青が厚生年金期間中心で、20年以上厚生年金期間がある者を指します。紫が1号中心、黄色が3号中心で、緑がどの期間も20年に満たない者であります。男性につきましても厚生年金中心の方が増えておりますが、女性の変化は顕著となっております。65歳の世代では厚生年金中心と3号中心がほぼ同じとなっておりますが、若年世代になるほど厚生年金中心の方が増えていきまして、上の労働参加進展ケースでは8割近くまで達するということであります。逆に3号中心の方は1割に低下する。こういった変化により女性の年金が充実していくということが見込まれます。
 9ページ、10ページを御覧ください。厚生年金の加入期間の分布を御覧いただきたいと思います。9ページが男性になります。9ページの右側のグラフを見ていただきたいと思います。こちらは現在65歳の1959年度生まれ、50歳の1974年度生まれ、30歳の1994年度生まれの方について比較しております。男性はもともと厚生年金期間が長い方が多かったですが、さらに長い方が増えて、短い方が減っているということであります。この結果、男性につきましても低年金は若年世代ほど減っているということが見込まれるものであります。
 10ページ、女性のグラフを御覧いただきたいと思います。こちらで見ますと顕著に変化が見られまして、65歳の世代につきましては1~10年という短い方が多いのですが、30歳の世代になると30年以上という長い方が多くなっているということであります。こういった変化によって女性の低年金が減少して、比較的高い年金を受給する方が増えるということであります。
 以下、年金額の分布など、先ほど見ていただいたものがついております。
 15ページ以降は制度改正によって平均年金額や分布がどう変化するかも示しております。こちらも先ほど見ていただいたものの詳細な結果となっております。
 長くなりましたけれども、私からの説明は以上となります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 この際、今回の財政検証の結果の公表に当たりまして、年金局長から御発言のお申出がございますので、よろしくお願いいたします。
○橋本局長 年金局長の橋本でございます。
 今回の財政検証の結果につきましては、今ほど数理課長のほうから御説明させていただきましたとおりでございます。
 私のほうからは、今回の検証結果に関する事務当局としての基本的な受け止めについて、若干お時間をいただいて申し上げたいと思っております。先ほど御覧いただきましたとおり、現行制度ベースの将来見通しを前回2019年の検証結果と比較いたしますと、経済が順調に推移するケースで見て、前回検証では一番高いケースⅠでも所得代替率は51.9%にとどまっておったわけでございますが、今回は上の2つのケースで所得代替率が56ないし57%程度確保されるという見通しになっております。
 また、デフレ経済の影響が強く残るケースで見て、前回検証のケースⅤでは所得代替率が50%を切り、機械的にマクロ経済スライドを続けると44.5%まで低下する見通しになっておりましたが、今回はそれに相当する上から3つ目のケースで見て、所得代替率が50.4%と、50%のラインを上回る見通しになっております。
 次に、基礎年金に限った所得代替率で比較した場合、前回検証では経済が順調に推移するケースⅠからⅢの3つのケースで26%台となっておりましたが、今回は上の2つのケースで32%前後確保される見通しでございます。
 また、デフレ経済の影響が強く残る前回検証のケースⅤでは21.9%となっておりましたが、今回はそれに相当する上から3つ目のケースで25.5%が確保される見通しであり、これは前回のケースⅠからⅢにおける基礎年金の水準にほぼ匹敵します。このように所得代替率全体で見ても、また基礎年金に限った所得代替率で見ても、今回の検証結果では大きく水準が上がっているということが見てとれます。これは前回検証以降の5年間の中で、先ほど数理課長から御説明しましたとおり、高齢者や女性を中心に国民の労働参加が予想を上回って進展したことや、積立金で予想を上回る運用益が得られたことが主な要因であり、これらの要素によって年金財政における保険料や積立金といった財源の規模が拡大し、マクロ経済スライドによる調整を経てもなお比較的高い給付水準を将来にわたって確保できる見通しになったと考えております。
 令和2年の前回改正からの経緯で振り返ってみますと、基礎年金の水準の低下が年金制度上の大きな課題として強く意識され、国会で附帯決議なども行われましたし、これを踏まえて、当年金部会においても、基礎年金の45年化、マクロ経済スライドの調整期間の一致、被用者保険の適用拡大など、基礎年金の所得代替率の改善に効果が大きい施策を幅広く御議論いただいてまいりました。
 それぞれの施策に一長一短がありますので、一概には申し上げられませんけれども、とりわけ基礎年金の45年化ということについて見ますと、健康寿命の延伸、働く高齢者の増加、年金制度の支え手と受け手のバランスといった様々な観点から見て最も自然なやり方であり、これによって年間約10万円年金額が増加する優れた方策であるという評価をいただいてまいりました。同時に、第1号被保険者の方々について見ると、免除制度はあるものの、60歳を過ぎても引き続き年金保険料を納める必要が生じ、月々約1万7000円、5年間で約100万円の保険料を追加的に支払っていただくことになります。このことを捉え、5年間で100万円の保険料負担の増加だけを切り取った報道や、ネット上での批判が絶えず行われてきました。私ども厚労省としては、45年化はあくまでも基礎年金の給付水準を確保するための方策であり、負担増と給付増はセットであるということをあらゆる場を通じて繰り返し説明し、アピールしてまいりましたが、残念ながら今日の時点に至ってもそのような批判を一掃できているとは言えません。力不足をおわびしたいと思います。
 基礎年金の給付水準が依然として年金制度上の大きな課題であり、それに対する一定の対応が必要とされている状況に変わりはないと思いますし、被用者保険の更なる適用拡大など種々の方策を通じた改善は必要だと考えておりますが、先ほど申し上げたように、全体的に所得代替率に大きな改善が見られる今回の財政検証及びオプション試算の結果を踏まえますと、今回検証結果を踏まえた次期年金制度改正において、基礎年金の拠出期間を45年に延長し、国民に追加的な保険料負担を求めてまで給付水準を改善する必要性は乏しい状況になったと受け止めております。
 45年化以外に有効な方策がなく、「どうしてもやらなければならないので、5年間約100万円の保険料をどうか支払ってください。」と国民の皆様にそのようにお願いしなければならないほど切迫した状況とは言いがたい、そういう財政検証の結果が出た中で、絶えず強い批判にさらされることが避けられない45年化を盛り込んだ状態でこのまま進んでいけば、そのことが次期年金制度改正全体にとっての足かせになるのではないかと私は懸念しております。
 たとえこの先、年末に向けて45年化の議論を続けていったとしても、それを最終的に法律案として取りまとめて閣議決定し、国会に提出して成立させることができるのか、年金当局の責任者として確たる見通しを持つことができません。そのような点も含めて総合的に考えた中で、苦渋の判断として先ほど申し上げたような認識を持つに至りました。
 年金部会の委員の先生方におかれましては、これまで基礎年金の45年化をどうやったら実現できるか、熱心に御議論いただいてきておりまして、そのお気持ちに応えられていないということに大変申し訳なさを感じております。また、健康寿命の延伸等を考えれば、基礎年金の拠出期間の延長を行うことが最も自然な対応策であることも、所得代替率を確保する上で有効性の高い意義のある方策であることも間違いないと思っており、45年化という政策手段が何ら否定されるべきではありません。たとえ今のこの状況の下で次期制度改正に盛り込めなかったとしても、それで45年化の議論が終わりということではなく、将来再び45年化の議論の必要性が高まることも十分考えられると思っております。
 以上、年金局長としての私の率直な思いを申し上げさせていただきました。
 委員の皆様方におかれましては、どうか今、私が申し上げた趣旨をお酌み取りいただき、今後とも次期制度改正に向けた活発な御議論をいただければと思います。何とぞよろしくお願い申し上げます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 局長から大変重い御発言があったかと存じます。
 それでは、御説明いただきました議題1につきまして、皆様から御意見・御質問などをお願いしたく存じます。基本的にはいつものように、まず対面参加の皆様、そしてオンライン参加の皆様の順でお願いしたいと思いますが、本日途中退席御予定の委員、百瀬委員、原委員、堀委員がいらっしゃいますので、まずオンライン参加の百瀬委員から御発言をお願いできればと思います。お願いします。
○百瀬委員 御説明ありがとうございました。確認と意見が1つずつございます。
 まず、オプション試算について確認をさせてください。所得代替率の分母は、男子被保険者の平均的な標準報酬額から公租公課を控除した額になっています。そのため、被用者保険の適用拡大というのは若干ですが、代替率の分母を小さくする方向に作用します。一方で、標準報酬月額の上限の見直しは若干ですが、代替率の分母を大きくする方向に作用します。このような分母の変動にも代替率は影響を受けます。財政検証で行われたオプション試算では将来の代替率を推計していますが、その際にこのような分母の変動による影響というのは除去していると理解していますが、それで間違いないのか、確認をしていただければと思います。それが1点です。
 次に、意見です。今回の財政検証でも前回検証と同様に将来的には基礎年金部分の所得代替率の大きな低下が見込まれます。特に今後出生率が下振れした場合や入国超過が下振れした場合でも報酬比例部分の代替率の低下は1%ポイント程度にとどまりますが、基礎年金部分の代替率の低下は著しくなります。確かに経済前提が過去30年投影ケースでも代替率は50%を上回る推計となっています。しかしながら、基礎年金部分の代替率の低下を和らげる見直しについては、先ほど年金局長から45年化は難しいというお話がございましたが、それが難しいのであれば、別の方法を通じてぜひとも今回の改正で実施をしていただきたいと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、御質問に対してお願いします。
○数理課長 所得代替率の分母が制度改正で変化する影響ですが、こちらは先生おっしゃるとおり、全て除去しております。ですから、制度改正の所得代替率の変化というのは全てマクロ経済スライド調整が伸びたり縮んだりする、そういった影響を表しているものということであります。
○菊池部会長 百瀬委員、いかがでしょうか。
○百瀬委員 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、原委員、お願いします。
○原委員 お先にすみません。ありがとうございます。
 全体的にとても分かりやすい資料、御説明、ありがとうございました。
 私からはオプション試算について総括的に少しだけコメントをさせていただきます。まずは、この結果をきちんと伝えていくといったことが重要かと思います。情報発信というところですけれども、オプション試算で言えば、この試算結果を受けて、すぐこのとおりに改正するということではないので、情報を発信する際にはそこは誤解のないよう気をつけていかなければいけないと改めて思いますし、正確に伝えていくことが重要だと思いました。
 また、オプション試算にないテーマについても同様に、これから本格的に議論していくものと思います。そこもきちんと伝わることが大事かと思います。
 テーマとしてはいろいろありまして、試算も様々なものがありました。これを受けてこれからより具体的な議論をしていくということかと思いますが、本体試算の結果を受けてどういうことをやらなければならないかということも大変重要かと思いますし、また、これまで議論の中でも出てきましたけれども、現在のライフスタイルや状況の変化と年金制度内容とのずれ、違いなどを考慮して、今回のオプション試算の結果から今後の改正に向けた議論を進めていければと思っています。
 その中で1つ挙げるのであれば、適用拡大につきましては、狭義の意味での社会保険としてできる段階までは、最初の資料の6ページのところで言えば、①からになるかと思いますけれども、具体的な議論を進めていくということが必要だと思っております。
 今後これを基に、一つ一つオプション試算にあるもの、ないものも含めて、まとめに向けて具体的な議論をしていかなければならないと改めて思ったところでございます。本日は財政検証の結果が出てきたところでございますので、コメントとしては以上ということにさせていただければと思います。
 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、堀委員、お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。先に発言をさせていただきます。
 私からはオプション試算の内容について幾つか御検討いただければと思っております。
 まず、1点目の被用者保険の適用拡大につきまして、懇談会で企業規模要件の廃止というものが合意されたということで、ぜひこちらにつきましてはこのままお進めいただけると大変ありがたいと思っております。
 第2点目としまして、ただいま局長から御指摘がありました45年化は大変難しいという状況だということを伺いましたけれども、ぜひ次々回以降にむけて引き続き御尽力いただければとお願いすると同時に、60代前半の免除の在り方について御検討いただくというのも一つの案かと思いますので、御検討いただければと思っております。
 在職老齢年金につきましても詳細な試算をいただきましてありがとうございます。こちらにつきましては基本的には廃止の方向でと考えておるのですが、全体としてマイナスになるということを考えますと、今回は完全な廃止というよりは、どこかで上限を上げるといったような方法も現実かなと今回の試算を見て感じた次第であります。
 標準報酬月額の上限でございますけれども、今回の試算、上限のパーセントで3つ出していただいておりまして、これを見る限りはマル2の83万円辺りが妥当なようにも見えるのですが、この金額というのはインフレの状況によっても変わってくると思いますので、どこで定めるかということにつきましてもう少し議論ができればと感じた次第です。
 今回組合せ試算というのを出していただいておりまして、これは大変イメージがしやすく、勉強になりました。引き続き先生方の御議論、御意見が固まってきた段階で再びこの組合せ試算というのを御検討いただければと思っております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、会場参加の皆様からお願いしたいと思います。是枝委員、お願いします。
○是枝委員 まず、経済の前提につき、年金の財政検証にふさわしい呼び名をつけていただいたことと、本日の資料1の13ページ、14ページの財政検証結果概要のメインの資料の中に平均年金額の将来見通しをお示しいただいたことにつき、年金局に感謝申し上げます。
 私からは財政検証本体、次にオプション試算につき意見を述べます。まず、資料1の13ページ、14ページを御覧いただきながらお話をさせていただきたいと思います。今回の財政検証の結果は13ページと14ページに凝縮されており、ぜひこの2枚のメッセージについて大きく伝えていただきたいと思っております。今年、来年のことならともかく、10年、20年先の見通しを考える際には、平均年金額の見通しをメインに据えて、片働き世帯ベースのモデル年金はもう参考程度のもの、50%を守れるかどうかを確認するだけのものというぐらいの扱いでよいのではないかと思います。
 今回の財政検証結果を総括しますと、日本がこれまで十数年頑張ってきたことが数字に表れていると理解しております。橋本局長がおっしゃったように、労働市場の包摂を進めて女性や高齢者の年金加入を進めたこと。さらに株式市場を成長させて運用成果を年金に取り込んだことの成果が現れているものと思います。
 今後も現在のペースで労働参加と適用拡大を進めていくこと、市場の成果を取り込んでいくということを続ければ、経済成長率が過去30年投影ケースにとどまったとしても、物価で割り戻した実質賃金額は男女合計、夫婦ベースで見ればほぼ現状維持となりますし、少しでも経済成長率を高め成長型経済移行・継続ケースに近づくことができれば、実質年金額を増やしていくこともできるというのが今回の財政検証の一番大事なメッセージだと私は考えております。
 橋本局長もおっしゃったとおり、過去30年投影ケースですと、特に基礎年金のみによる実質年金額や代替率が大きく減るということになります。それでもなお、14ページに示されているとおり、年金額分布推計によりますと、厚生年金の加入期間を持つ者がどんどん増えてきますので、基礎年金のみで暮らす人というのが将来の世代になるほど少数派になってまいります。ですので、今の若い人たちについてはあまり心配していないのですが、マクロ経済スライドは今の年金受給者にも及ぶこととなります。14ページの表において、今、65歳ぐらいの方のうち男性の1割ほど、女性の2割ほどが年金額が月7万円未満ということ。ほぼ基礎年金のみという方となっておりますので、過去30年投影ケースでこのままマクロ経済スライドを続けることとなると、この方々の年金を実質2割削っていくということになり、これは対処が必要なことだと思います。若い世代のためということもありますが、今、50~60代の方の基礎年金を削り過ぎないようにするためにも底上げ策が必要になってくると思います。
 その点、今回のオプション試算によって来年の年金改正の最大のテーマというのは適用拡大であるということが明確になったものと思います。
 資料3-1の3ページを御覧ください。今の高齢者にも影響が及ぶ基礎年金の底上げ策というのは被用者保険のさらなる適用拡大であろうと思いますし、これによってマクロ経済スライドの調整期間の一致を実現すべきと考えております。週10時間以上働く被用者全員を厚生年金に入れる適用拡大マル4というのを実現できれば、過去30年投影ケースにおける基礎年金のマクロ経済スライド調整期間が、現在の試算では一致するということになります。厳密に一致までしなくても、かなりそれに近い水準に近づけることができれば十分なのではないかと考えております。
 もちろん、適用拡大によって年金額が充実する効果は現在の高齢者よりも現役世代のほうが大きくなります。資料3-1の4ページを見ると、その効果が明らかです。適用拡大によって厚生年金加入期間が延びる人が増え、より若い世代ほど平均年金額が大きく増え、特に低年金者の割合が大きく減るということとなります。ぜひとも適用拡大マル4を目指していきたいと考えております。
 本日まとめられた懇談会の報告書では、まず企業規模要件と非適用業種の撤廃が優先だとされましたが、これだけでは適用拡大マル2までしか行けませんので、週20時間要件の見直しまで踏み込んだ議論をこれから年末にかけてしていきたいと思っております。報告書には保険集団の一体感や連帯感、あるいは国民年金保険料とのバランスなどについて課題があるとされていますが、これらを乗り越えるためのアイデアもあるところでございます。ぜひとも適用拡大マル4を目指した議論をこれから進めていきたいと思います。
 45年化についてですが、橋本局長からお言葉がありましたが、今回のオプション試算を見ますと、平均年金額や年金額分布で見ると意外と効果が小さいということも示されたものかと思います。資料3-1の10ページを見ますと、モデル年金ベースでは大きく増えるように見えるのですが、実際にはそこまで平均年金額が伸びるわけではありません。左側のモデル年金で増えるように見える部分は、就労期間が延びていることの影響で、現行制度においても厚生年金の加入期間が増えれば、その分だけ比例は増えることとなります。さらに経過的加算もありますので、現行制度でも基礎年金的なものに結びついている方が結構いらっしゃるということとなります。また、低年金者が減る効果も意外と大きくないということも示されております。国年1号被保険者の半分ほどが保険料未納としていたり、免除を受けていたりしますので、こうした方々の年金額はあまり伸びないということとなり、思ったほど低年金の方が少なくならないという面もございます。
 基礎年金45年化はいずれ実現すべきものとは思いますが、今回実現できないということであるならば、プランBとして厚生年金における経過的加算の上限を撤廃して、60歳以後厚生年金に加入して働く者全員に厚年の独自給付として基礎年金相当の定額部分をつけると。それによって低年金を減らしていくということも選択肢なのではないかと思います。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。小林委員、お願いします。
○小林委員 御説明ありがとうございました。
 まず、第一印象として、それほど悲観すべき状況ではない、ということを感じました。公的年金の最大の課題は、制度が難しく、正しい理解が進みにくいこと。そのため無用な不安が蔓延していることだと思います。「年金制度は破綻しているのではないか」、「保険料を払っても、将来、年金をもらえないのではないか」といった不安や誤解を払拭するにあたり、今回、以前の想定より「良い数字」が出たことは、国民の理解促進を進める上で、ある意味で良いチャンスが訪れたと言えるのではないでしょうか。
 ぜひ、検証結果を踏まえて、公的年金とはどういうものなのか、将来の暮らしにどんなプラスがあるのかの広報をきめ細かく行っていただきたいと思います。特に「100年を見越して設計しているものである」ということは、一般的には知られていないわけですが、政府がそうなるようちゃんと計算しているのだといったことを国民に分かりやすく広報することが何よりも大切だと思います。
その上で、3点コメントをさせていただきます。
 1点目です。被用者保険のさらなる適用拡大により所得代替率の上昇が見込まれるという試算を、今回、御提示いただきました。所得代替率が上昇することは極めて重要なのですが、それが社会保険の支え手を増やす適用拡大により結果として実現するというのは、痛しかゆしの面があります。なぜなら、中小・小規模事業者においては、保険料や事務の負担が増える等、非常に大きな影響が出るからであります。今後、各部会等で、検討テーマごとに具体的な検討が行われることと存じますが、ぜひ、中小・小規模事業者の実態を踏まえた丁寧な議論をお願いしたいと思います。
 2点目は標準報酬月額制度についてです。今回のオプション試算で設定された上限引上げ額は、上限該当者の割合から機械的に設定されたものだと理解しておりますが、上限を追加できる法律上の条件は、「既存の上限額が平均標報額の2倍を上回った状態が継続するとき」であります。重要なことは「状態が継続する」ということであり、見極めるには少し時間が必要ということだと思います。それを踏まえると、やや一足飛びの感が否めません。
 なお、資料1の12ページで示された試算のうち一番低い見直し額(75万円)でも、事業主の保険料負担の増加分はかなり大きいな、という印象です。具体的な議論を進めるにあたり、より現実的な数字、例えば68万円、71万円といった額での試算も御提示いただければと思います。
 3点目はちょっと重複するところもありますが、適用拡大についてです。今後、この部会で具体的な検討を行うにあたりましては、この後、御報告があると思うのですけれども、「被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」での議論に引き続き、中小・小規模事業者の実態を十分に踏まえてお進めいただくようお願いしたいと思います。
 取りまとめの資料に記載されていますとおり、適用拡大の対象となる事業者においては、事務負担や保険料負担が新たに発生または増加します。より小規模の事業者であればあるほどその負担は大きく、経営に与える影響が相当に大きなものとなります。このため、適用を拡大することにした場合にも事業者が予見性を持てるよう、実施までの時間を十分確保するとともに、実務現場の実情・実態に寄り添った支援が必要であることは、改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 標準報酬月額の上限見直しについてのより細かな刻み、もし可能であればというお求めがございましたが、今後の議論の中で可能であればお出しいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○数理課長 はい。
○菊池部会長 それでは、小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
 まずは前回の財政検証に引き続きまして御報告の内容に敬意を表したいと思います。
 今回は特に資料4-2の年金額の分布推計が秀逸だったと感じました。この資料というのは、是枝委員が以前から指摘されているコーホートで見ることの重要性ということを教えてくれますし、ライフコースを踏まえずにモデル年金だけで議論することの危うさについて考えさせられるということでございます。
 保険料水準固定方式の下での給付の十分性の確保というのは、就労の促進と被用者保険の包摂というのが最重要となりますので、まずは引き続き被用者保険の適用拡大の徹底を意識して議論していきたいと思っております。
 その上で、今後の議論も意識しまして2点コメントをさせていただきます。まずはオプション試算の前提、制度変更による就労の変化は見込んでいないとの注釈が散見されますけれども、これは前回申し上げました他の条件を一定にした場合ということになっております。例えば高在老の件ですが、高在老の仕組みを撤廃した場合、高在老の就労抑制効果は確認できないとする前回の財政検証でお示しいただいた、慶應義塾の山田先生の2009年を調査対象年度とした調査結果の結論のままでよいのかという思いがございます。
 現在の労働力希少社会の下で撤廃によって就労が増加しても限界生産性は落ちないだろうと思いますけれども、経済前提の資料によれば、法人企業の労働分配率というのは約3分の2ですので、就労の増加による付加価値のうち3分の2を人件費としても、3分の1は企業ないし株主の取り分になるということになろうかと思います。これを取りに行かないという手はないと思いますし、この結果、就労の増加があれば、その増加による保険料は厚生年金の財政にとってプラスに作用するために、マイナス0.5%の水準低下の一部を埋め合わせるはずだと考えております。
 2点目は標準報酬月額の上限改定の件ですが、以前事務局から標準賞与と標準報酬月額との配分についての裁定行為が疑われるような資料を御提示いただきました。私は、社会保険の実務は素人ながら、マルチワーカー等の就労の変化、多様化を含めて、標準報酬に関する現在の実務で柔軟な対応が可能なのかというところに疑問を感じております。一方で、海外でも多くの国が公的年金の対象となる報酬については上限を課している一方で、賃金の払い方というのは、日本のような月給を想定したものばかりではないのではないかと思っております。そういうことを考えますと、マルチワーカーを含む報酬の特定に関わる海外の実務やその柔軟性につきまして必要であればお調べいただきまして、将来的な課題の立て方の見通しをつけていただきたいと考えております。
 以上です。
○菊池部会長 最後、お求めがございましたので、これも可能な限り御対応いただきたいと思います。お願いします。
○数理課長 はい。
○菊池部会長 いかがでしょうか。佐保委員、どうぞ。
○佐保委員 ありがとうございます。
 以前に公表が遅れないようにということの発言、お願いをさせていただいておりましたが、2019年の財政検証と比較して早期に作業いただいたことについて、事務局に感謝申し上げたいと思っております。
 その上で、3点の意見・質問と1点の御要望を述べたいと思います。1点目は結果に対するコメントですが、以前に説明いただいたとおり、2019年財政検証のケース3、4の物価上昇率や賃金上昇率と比較すると、今回の成長型経済移行・継続ケースは高く、過去30年投影ケースは低く設定されており、成長型経済移行・継続ケースと過去30年投影ケースをベースに今後の検討を進めることが妥当であると考えております。
 その上で、2019年財政検証と比較すると、基礎年金の将来の所得代替率はおおむね上回っておりますが、経済の不確実性も踏まえれば楽観視できる状況にはなく、とりわけ基礎年金の給付水準は過去30年投影ケースでは2057年度に25.5%まで下がる見通しであることから、早期に給付水準を引き上げるための改正を行うべきと考えております。
 2点目は、資料1の7ページの適用拡大を行った場合の所得代替率と8ページの拠出期間延長を行った場合の所得代替率について、どちらも基礎年金の将来の給付水準の引上げにつながっており、これは1号被保険者も含めたセーフティネットの拡大にも資するものであると考えます。このことを踏まえ、企業規模要件や非適用業種の撤廃だけでなく、労働時間要件の引下げや賃金要件の撤廃、次期改正に向けて年金部会において前向きな議論をお願いしたいと思います。
 なお、拠出期間の延長について先ほど橋本局長から御発言がございましたが、これからさらに議論をしたいと思っておりました私にとっては、残念に考えております。1点質問ですが、今後年金部会で議論はしないのかということについてお尋ねしたいと思います。
 3点目は、資料3-1の13ページ、マクロ経済スライドの調整期間の一致を行った場合についてです。確かに2つのケースとも基礎年金及び報酬比例部分を合計した所得代替率が上がっていますが、これをもって調整期間の一致に向けて拙速に議論を進めるべきではないと考えております。まずは社会保険の適用拡大や保険料拠出期間の延長に優先的に取り組み、障害厚生年金受給者、一定期間年金水準が低下する可能性がある受給者への影響、厚生年金の独自給付の今後の改正による基礎年金への影響などについて丁寧に検証した上で、拠出者の納得性と合理性を追求すべきであると考えております。
 最後に御要望です。先ほど述べた意見にも関連いたしますが、労働参加の進展による2号被保険者の増加が年金財政にプラスの影響を及ぼしていることは理解した上で、この間段階的に進められてきた適用拡大について、それぞれの要件の見直しが年金財政にどの程度影響を及ぼしたと理解すればよいのか。財政検証の公表資料に入れなくても差し支えございませんので、可能であれば今後資料として御提示いただきたいと考えております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 最後、御要望がまたございました。質問がございますが、事務局としての御見解を。
○橋本局長 先ほど佐保委員から45年化の関係の御質問をいただきました。先ほど事務当局としての立場で所感を述べたわけでございますけれども、これから年末に向けた年金部会の中で、45年化の関係を次期改正において措置する事項として検討の議題にするということは現時点で考えておりませんけれども、ただ、実際の部会の運営につきましては、菊池部会長のほうと御相談しながら進めてまいりたいと考えております。
○菊池部会長 現時点ではそういうことでございますが、今後に向けた課題であるという御認識は局長からもございましたので、ここでの議論から全く排除されるということではないだろうと思いますが、次期改正に向けた優先課題とするかどうかという点については、事務当局のお考えは受け止めざるを得ないと思っております。現時点での私のコメントになりますので、また今後御意見をいただければと思います。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。権丈委員、お願いします。
○権丈委員 財政検証の公表に至る本日まで、年金局の皆さん、本当にお疲れさまでした。今の年金局の体制でしかできないいい仕事ではなかったのかなと思っております。
 あと、局長、いろいろとお疲れさまでした。
 2019年の第3回財政検証で資料4が出てきました。ようやく3回目で。資料4とその後に生まれた公的年金シミュレーターで初めてみんなの生活と具体的なつながりを持つ材料がそろったかなと思っております。
 これらが出そろうまでは年金論は財政検証の資料1の法定試算に基づいて、将来はこんなに下がるぞという怖いストーリー、ホラーストーリーで論じられてきていたのですけれども、実際には法定試算である資料1は年金不安をあおるばかりで、何十年も先のみんなの将来の生活とあまり関係はありませんでした。
 今回は資料4-1と2。2のところは、本当に数理課長をはじめ、ありがとうございます。それがあるために、今のワークロンガー社会において、厚生年金加入期間が長い男女の報酬比例部分が将来の給付水準の引上げに相当のパワーを持っていることが具体的にイメージできるようになりました。加えて、共働きともなると、そのパワーは圧倒的です。それはいい資料が出てきたなと思っております。ただ、それは厚生年金の世界の話で、したがって、政策課題としては厚生年金の適用拡大が最も優先順位が高いことに必然的になってきます。
 そこで、まず年金論のコメントをしておきたいと思います。適用拡大は、政府が掲げる勤労者皆保険の名にふさわしいように可能な限り進めてもらいたい。次に、年金は保険なのだから繰下げが合理的だよと素直に人に勧めることができるように高在老は見直してもらいたい。その際、資料1の11ページ、12ページの高在老撤廃と標準報酬月額の引上げによる合わせ技、それぞれの改革で所得代替率が上下する相殺効果も検討してもらえればと思っています。そうすると、高所得者優遇という声を封じることができるかなというのもありますので。加えて、繰下げを選択することを人にちゅうちょさせている加給年金も見直してもらえればと思っています。
 また、今回は参考試算として試算してくれたことにお礼を言いたいのですが、調整期間にずれが生まれたのは、大きな原因はマクロ経済スライドのフル適用を進めるという汗を年金制度がかかなかったからです。だから、45年化という年金自身で汗をかく道を諦めるとするのならば、せめてフル適用という汗は今もかいてもらいたいと思っています。
 次に、年金論ではなく政治論という話をさせてもらいます。今回の資料4で面白かったのは、資料4-1に初めて出てきた積立金の性質です。ここに書いてある積立金の性質という話は、実は適用拡大にもそのまま当てはまります。適用拡大というのは、実は積立金による財政調整なのです。1号から2号に移行する際に、その人は1号から積立金を抱えていくことはありません。だから、物すごく多くの人に適用拡大をすると、適用拡大をしないままに厚生年金の積立金を国民年金に移す調整期間の一致と財政的にはどんどん近づいていきます。そのことを今回の試算でも示されたと思います。是枝委員も先ほど指摘されていましたけれども、例えば過去30年投影の場合、資料1の7ページの860万人適用拡大の調整期間の終了が、比例・基礎共に2038年。10ページの調整期間一致では調整期間の終了が、比例・基礎共に2036年です。経済前提にもよりますが、似たような財政効果にどんどん近づいていく。もちろん、860万人の適用拡大というのはある種夢の世界ではあるのですけれども、適用拡大を使っている政策技術は積立金による財政調整だということは分かっておいていいと思います。
 ただ、適用拡大は厚生年金を利用できる人が増えることと、国保の関係で追加的な国庫負担はあまり考えなくてもいいという2つの長所があるために、適用拡大のほうが調整期間の一致よりも年金論としては圧倒的に優れています。この適用拡大と45年被保険者期間延長を合わせれば資料3-1の21ページになり、これが2013年の国民会議から言われていた王道の改革路線です。しかし、45年化のアドバルーンを上げると、「100万円の負担増」という報道で世の中は盛り上がる。年金の宿命とはいっても、この王道を進むのはきついと。財政検証の結果もホラーストーリーではなくなっている今、わざわざやる必要があるのかという政治判断がなされるのは理解できないわけではない。
 ところが、この王道の改革路線と比べて、調整期間の一致というのは年金論と言うと、私はえっと言いたくなるところがあるのですが、政治論としては長所があるというのがある。王道の改革を進もうとすると、マクロ経済スライドは厚生年金ではすぐに終わって、基礎年金では続いていきます。そのとき政治の世界で、5年前もそうだったのですけれども、基礎年金のスライドはやめるべきという話が出てくることが予想される。そのときどうするというのがあるのです。
 この5年間ぐらいはこうした政治問題を表に出さずに、これを長く低年金問題、基礎年金の水準問題、厚年と報酬比例と基礎年金のバランス問題という年金論に置き換えて論じてきたわけだけれども、その辺りはまあいいとしようと。ただし、適用拡大以外は基礎年金の給付水準が上がるためには、2分の1国庫負担問題が出てきます。兆円単位の額を国庫に押さえられていたら、あとは政治に委ねられるということになるのは仕方がないと思う。
 果たしてこれからの事態というのが、今回の試算、投影どおりに進んでいくのか。政治の投影というのはできませんので、予測をするしかないかもしれないけれども、今後の年金に関する予測という意味ではどういう展開になっていくのか。本日のコメントとしてはその辺りにしておきたいと思います。
 以上。どうも。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 会場から。たかまつ委員はよろしいですか。
○たかまつ委員 はい。
○菊池部会長 それでは、オンライン参加の皆様から挙手機能を使って。駒村委員からお願いします。
○駒村委員 よろしくお願いいたします。
 今回の財政検証は、非常によい材料が出てきていると思います。材料というのは資料4-2です。大変重要な情報が出されたと思いますので、年金局にはこういう大事な情報を出していただいて、お礼を申し上げたいと思います。
 従来はモデル年金の変化だけを見て、持続可能性のチェックと政策効果を見てきたわけで、これは持続可能性をチェックするためにはよかったのですが、年金の十分性などを見ることはできなかった。そういう意味では、分布に関する情報が出てきて、非常に政策的にも使える余地が増えたと思います。これを見て、さらに様々な組合せ、オプションを考えていくと、適用拡大が効果があるのは間違いないとは思います。ただ、団塊ジュニア世代に対してはこの適用拡大の効果はかなり限定的だということも言えるのではないかと思います。
 この4つのストーリーは幅を持って考えていく必要があると思いますので、これだと決め打ちする必要はないと思いますが、真ん中と30年ケース辺りを中心に議論していくべきだと思いますが、それを見ても適用拡大で効果があるのは、未来の世代にはあるけれども、団塊ジュニア世代にはやや間に合わないのではないかと思います。それを考えると、調整期間の一致は、団塊ジュニア世代の基礎年金の低下を抑えるためには有効なツールであるということがここから読み取れるということでございます。これが総体に対するコメントです。
 個別に幾つか簡単に申し上げます。45年については、60歳から64歳の厚生年金加入期間が報われないと。60歳から64歳に加入でも給付でもない期間が存在するという隙間の問題です。これは制度発足からおかしなことだったわけです。
 それから、寿命が延びている中で本当に40年加入でいいのかということは、やはり骨太の議論としてはちゃんとやるべきだろうと思います。ただ、局長や皆様がおっしゃったように、政策優先順位と考えたときには今回は劣後になるのかなと思います。その点はそうだろうと思います。
 資料1について1つコメントがあるのですけれども、7ページに適用拡大によって基礎年金の代替率が上昇するということが確認されていますが、基礎年金の代替率が上昇すれば、この場合でも国庫負担が発生するのではないかと思いますけれども、この辺の数字はどうなっているのだということが示されていないので、これは情報がもう少し欲しいなと思います。
 資料3-1ですけれども、先ほど小野委員がおっしゃったように、1ページ目において細かい注がありますが、これは本来は在職老齢年金の制度が変更したことにおいても就労変化を見込んでいないという注は入れるべきだと思います。これは小野先生がおっしゃるとおりだと思います。
 資料4-1の31ページの積立金の性質については、今の被保険者のものではないと書いてありますけれども、では、受給者まで考えてそういう表記で本当に言えるのかどうかというのは少し議論してみたいなと思いました。
 すみません。かいつまんでコメントいたしました。以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 一部質問ということではないかもしれませんが、資料についてのコメントをいただいたかと。
○駒村委員 座長、それは質問です。適用拡大でも基礎年金のほうに国庫負担が発生するのではないかという質問になります。
○菊池部会長 失礼しました。
 いかがでしょうか。
○数理課長 駒村先生がおっしゃるとおり、適用拡大においても基礎年金の水準が上昇すれば、当然2分の1国庫負担は増えるということになります。ただ、適用拡大の効果としては、年金以外の医療のほうも考えなければいけなくて、医療のほうで言いますと、国保の加入者が減って、健康保険の被保険者が増加することになります。その動きによって、国保に入っている公費、国庫負担が減少するという効果もあるということであります。
 そういったこともありまして、適用拡大については国庫負担の増について財政当局のほうから財源を求められていないということであります。このようなこともあって、資料としては今回つけていないというところでありますが、必要であれば用意してみたいとは思います。
○菊池部会長 いかがでしょうか。駒村委員。
○駒村委員 今のお話は、よく説明していただいてすっきりしたと思います。ただ、まだ事務方は全体的な調整もいろいろあると思いますが、私も本来は適用拡大はマル4まで、究極まで目指してもらいたいと思いますけれども、とはいうものの、それにも国庫が発生するのだということは意識して、どのタイミングでどのくらい出てくるのか。ただ、それが本当に国民健康保険のほうでキャンセルアウトできているのか。この辺は気になるところでありますので、事務局、可能な範囲で資料があれば用意いただければと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。宿題とさせていただきたいと思います。
 それでは、深尾委員、お願いします。
○深尾委員 資料1の2ページと3ページのところ、経済前提、4つのケースについての試算の結果のまとめについてコメントしたいのですが、1人当たりゼロ成長ケースだと、書いてあるように、3ページですかね。積立金がなくなって、非常に壊滅的なシナリオが予想されているわけです。経済前提に関する専門委員会で4番目の1人当たりゼロ成長ケースを考えたのは、別にホラーのストーリーとして考えたわけではなくて、こういうこともあり得て、それに備えるべきだという意味で考えているわけです。
 今日の御報告はこの部分についてほとんど議論がなかったと思うのですが、結局、ここういう壊滅的な状況を回避するためには、1人当たりゼロ成長ケースの場合だと、マクロ経済スライドを名目下限措置について撤廃するというのが非常に重要な対策になり得るということが今日の資料からうかがえるのだと思います。その意味で、マクロ経済スライドの名目下限撤廃問題は真剣に考えておくべきであると思います。1人当たりゼロ成長シナリオというのは、わざわざあり得ないことを仮定して今回試算が行われたわけではなくて、一番悲観的な場合にはこういうこともあり得ると。日本は実際に実質賃金がほとんど上がっていない、下落していますし、デフレにまた落ち込む危険もあると思いますので、この問題について真剣に考えておく必要があると思います。
 2番目は、小野委員も既にお話しになったことですけれども、オプション試算の意義というのは、人々の働く選択をできるだけ年金制度がゆがめないように改革していったらどうなるかということが重要なので、在職老齢年金の撤廃の問題にせよ、または被保険者の適用拡大の問題にせよ、いかにそのゆがみが減っていくかということ。在職老齢年金の撤廃だと、既存の研究だとあまり効果がないという話がありましたが、これはここで真剣にもう少し議論していただきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、井上参考人、お願いします。
○井上参考人 ありがとうございます。
 財政検証及びその御報告、ありがとうございました。3点ほどコメントを申し上げたいと思います。
 まず1点目、これは全般的なことですけれども、今回の財政検証結果を通じて、年金制度の持続可能性確保には安定的な経済成長と労働参加の拡大が重要であるということが改めて確認された、そうしたことが今回結果として示されたと思います。もちろん、デフレから完全脱却して成長型経済に移行するというのが現下の最優先課題で、我々も取り組んでいるところでございます。けれども、年金制度改革に当たっては、将来世代の安心をより確かなものとする観点から、あまり楽観視し過ぎることなく、必要で効果のある改革をしっかり行っていただきたいと思います。
 2点目は、それにも関連しますけれども、被用者保険のさらなる適用拡大について。オプション試算の②の前提として、「最低賃金の引上げにより同等の効果が得られる場合」というのが「賃金要件の撤廃」と同列で並んでいますが、最賃が上がったとしても、賃金要件や労働時間要件が残ってしまいますと、就業調整の行動は起こり得ると思います。ですので、今後もさらに適用拡大を行う方向でしっかりと取り組むべきだと考えております。
 3点目、今回、資料1の13、14ページで年金額の将来見通し、非常に有用な資料をモデル年金に加えてお示しいただきました。これは社会の変化、年代も含めたもので、特に若い世代にとって非常に現実感を持って受け止められる大変有意義な資料、数値だと思います。既に専業主婦世帯は3割以下になっていますので、これからもモデル年金として据えておくのがいいのかどうかも含めて、そこは検討する必要があると思いますけれども、ぜひ今回の年金額の将来見通しのような資料を積極的に広報いただいて、現役世代の安心感の醸成に努めていただきたいと思います。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、平田委員、お願いします。
○平田委員 まず、資料のおまとめとご報告、どうもありがとうございました。
 お聞きして、見させていただいて、労働参加が進んで2号被保険者が増えて、年金財政に好影響を与えたということが明確になったということは、とても大きかったかなと思います。その上で、1点だけ申し上げたいと思っております。それは全体を通じて基礎年金の充実がとても大事になってくるのではないかと思ったということです。3号と1号から2号への移管が進むということは、2号に含まれる人が非常に多様化してくるということだと思います。同時に、1号にとどまる人も二極化が進むのではないかと懸念しております。具体的には潤沢な収入がある人、あるいは資産がある人とない人ということです。以前に比べて収入の格差が非常に進んでいるのではないかと思います。最低賃金が上がったとはいえ、最賃で働く人と景気のいい会社、あるいはそういう職種で働く人の賃金差というのは物すごく大きくなっているなという実感があります。
 その上で、年金はそれが命綱の人にとってより重要な意味を持つのではないか。具体的には、働くことが難しい人、資産形成ができてこなかった人、あるいは資産を受け継ぐ環境になかった人です。そういった方々も国民全体で支える、社会保障機能という側面から、基礎年金の充実がさらに大事になるのではないかと思いました。
 その意味から、細かい実施方法とか整合性とか国庫負担の問題ということはさておいて、年金本来の意味・役割という側面からは、マクロ経済スライドの調整期間の一致というのは一つの選択肢なのではないかと感じた次第です。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 武田委員、お願いします。
○武田委員 ありがとうございます。
 このたびは経済前提及びオプション試算共に幾つかのシナリオを置いた上で、データに基づきしっかり整理いただいており、妥当な財政検証が行われたのではないかと思います。特に今回初めての試みとして年金額の分布推計を行っていただきました。以前はモデル年金だけでしたが、分布を出していただいたことによって、さらに多くの示唆が得られ、大変すばらしい取組だと存じます。事務局の御尽力、御努力に敬意を表するとともに、感謝を申し上げたいと思います。その上で、今後に向けての意見として3点申し上げます。
 1点目は労働参加と経済成長の重要性です。女性やシニアの労働参加が進展したことが今回プラスに働いた2つの要因のうちの1つであるとの御説明をいただきました。また、分布で見ても、特に女性の就労が促進され、共働き世帯が増えたことの効果の大きさを実感できると思います。
 ここから得られる重要なメッセージは、年金制度はもとより、本部会の対象でないものも含め、就労抑制的な制度や税制は今、見直すべきときに来ているということと思います。これまで女性やシニアの労働参加が趨勢的に増えてきたわけですが、足下ではそうした労働参加率の伸びは少々頭打ちになってきている側面もございます。こうした中で、労働の供給制約が今後日本の成長に向けての取組の制約になることがあれば、経済前提で示している、成長型経済移行・継続シナリオ、さらには高成長シナリオが供給制約によって実現しなくなる点にも留意が必要です。つまり、就労抑制的な制度や税制を撤廃することは、マクロ経済にとっても、年金財政にとっても、そして国民の暮らしにとっても極めて重要ということが今回の年金財政から明らかになったことを強調させていただきたいと思います。
 今後この部会で検討を行うに当たっては、就労を制約している制度の見直しを行う必要があり、オプション試算にかかわらず、制度改革全般にわたっての議論をぜひお願いしたいと思います。
 2点目、今回は確かに良い結果は出ていますが、深尾先生もおっしゃられたとおり、1人当たりゼロ成長ケースも経済前提の一つとして置いています。それを避けるための生産性上昇に対する取組が年金制度とは別に必要ですが、そうしたケースになる可能性も念頭に置いた改革はしっかり行うべきと思います。
 3点目は将来不安に関してです。我が社で毎年生活者3万人に対して、様々なアンケート調査を行っております。その中の一つに今後予想する社会不安として何が挙げられますかという質問がありますが、2011年からの調査開始以来、必ず1位になるのが、社会保障費の拡大により財政の持続性が懸念されることが1位です。年金への懸念と言っているわけではなく、年金はむしろ調整機能がついていますが、将来不安の理由として、社会保障や財政の持続可能性について一定程度懸念を持っていることが示唆されます。
 今回、分布図を見ますと、女性が就労するようになり、共働き世帯が増え、そうした状況が解消に向かう方向性が見えていますが、そういったことも含めてデータで説明をすることにより、不安を和らげていく必要があると思います。同時に持続可能性について確信を持てるような制度改革につなげなければならないと思います。広報だけすれば良いわけではなく、併せて改革を行っていくことの両方が重要と思っていますお。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 会場のスクリーンには映っていないのですが、今日御事情があって画面なしということですが、御参加の島村委員からお手が挙がっていますので、どうぞ。
○島村委員 体調が悪くて画面オフで申し訳ございません。
 前回の結果に比べて代替率や調整期間の点で改善が見られたのはこれまでの成果でして、尽力されてきた事務局をはじめとする皆さんに厚く御礼申し上げます。
 その上で、制度をよりよくするためにこれを持続していくことが大事かと思いまして、とりわけ基礎年金水準の低下に歯止めをかけていくことが必要かと思います。現状では60歳以降の方の就労というのが、厚生年金には意味があるものですけれども、国民年金の財政には貢献していないということもあるかと思いますので、基礎年金拠出金の算定方法の変更を積立金割りの導入も含めて改めて検討していきたいと思いました。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、会場から玉木部会長代理、お願いします。
○玉木部会長代理 まず、今回の財政検証作業、経済前提の作業を含めまして、事務局の優れたパフォーマンスに対しまして敬意を表したいと思います。その上で3点申し上げたいと思います。
 まず、適用拡大ですが、これがオプション試算の1番として掲げられている点、大変心強く思ったところでございます。また、その効果として代替率が上がる、年金財政が強化されるという点。これも詳しく説明されている点は大変いいことかと思います。
 それに加えて申し上げたいことが1つございます。といいますのは、適用拡大の対象にまだなっていない方、例えば非適用業種の個人事業主の下で働いておられる方の中にはフルタイムで働いていてもまだ被用者年金の適用を受けておられない事例があります。こういった方々に、何としても防貧のための制度である公的年金の連帯の輪に入っていただきたいと思うところでございます。
 こういった方々を被用者年金の制度に入れるということは、特に今は適用されていない方々の間に経済的に弱いお立場の方がおられるのであれば、そういった方々をも無理なく、ごく自然な形で包摂していくという方向に公的年金という制度が機能するように、今、物事が変わりつつあるということはぜひ国民に伝わってもらいたいなと思います。
 また、基礎年金につきまして、その水準が下がり過ぎることを何とかしようという努力が今回もたくさんなされているわけでございますが、基礎年金というのは公的年金制度を通じた、特に厚生年金保険制度を通じた再分配の大きさを規定するものでございますので、基礎年金に係る議論は我が国の所得再分配の議論でもあるといったことは、今後の議論においてもきちんと意識されるべきかと思います。
 続きまして、在老について申し上げます。かつて在老廃止というのは、高齢者の就業を促進するためという位置づけがしばしばなされていたかと思いますけれども、実態として過去十数年の間に猛烈な勢いで高齢者の就業が進んだという事実がございます。先ほど小野委員からかつての実証研究についての言及がございましたが、それはそれとして尊重すべきかとは思いますけれども、過去十数年の高齢者の就業増加といった事実はきちんと踏まえた上で考えるべきかと思います。そうなってくると、在老を廃止するということの意味としては、高齢者の就業の促進もさることながら、労働市場と制度の間にそごが生じないようにする、言わば制度の中立性を高めるという観点から、その目的が明確に意識されるべきかと思われます。
 最後に国民との関係、あるいは国民への伝え方について一言コメントを申し上げます。今回分布推計が初めて提供されまして、大変情報量の多いものが入ってきたと思います。また、これと加えて、しばらく前から年金シミュレーターが大活躍をしているかと思います。これらを踏まえますと、多くの国民、個々人として年金を自分事として捉えることが非常にやりやすくなったのではないかと思うところでございます。こうすることによって、年金に関する漠たる不安、年金破綻お化けとでも言いたくなるようなものを何としても早く追い払って、もう少し冷静な議論、合理的な議論、建設的な議論をしたいと思うところでございます。
 もし建設的な議論をするとすれば、あるいは年金破綻お化けを追い払った後に見えてくる風景とすればということで申し上げると、90年代半ば以降、生産年齢人口、15歳から64歳の人口は恐らく1000万人を超えて減少しておりますけれども、だけども、2010年代以降就業者数は非常に増えているということは、本日の資料でもたくさん出ております。日本という国はこういったことが起きる国なのだといったことが国民の間に浸透していくことは、国民に対して公的年金保険制度が不安ではなく安心を与えるというふうに作用するきっかけとなるのではないかと思うところでございます。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 皆様から様々な御意見をいただきましてありがとうございます。所定の時間を過ぎておりまして、二巡目の議論というわけにはまいりませんが、今後しっかり議論してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 もう一つ議題がございます。「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会における議論の取りまとめについて」でございます。本日時間がございませんので、文字どおり報告という形になろうかと思いますが、ご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○年金課長 年金課長でございます。
 資料5-1、5-2と参考資料の1と2が議題の関連資料になります。資料5-2が取りまとめの本体で、20ページ弱ですので後ほど御覧いただければと思います。本日は資料5-1の概要を用いて簡単に御報告いたします。
 5-1の2ページが今回の懇談会の検討テーマ等になります。年金部会とは別の場として設けられ、3点の検討テーマについて議論いただきました。2月に第1回を開催した後、8回議論を行い、本日取りまとめたものになります。ヒアリングを何回か行っており、下にある13団体の方々から話を伺いました。
 3ページからは、取りまとめの内容になります。まず基本的な視点ということで「被用者にふさわしい保障の実現」「働き方に中立的な制度の構築」「事務所への配慮等」の3点になります。
 4ページは、短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方について、企業規模要件など4点について議論いただいたものです。取りまとめの中で、方向性としておおむね一致した部分の記述を抜き出しております。取りまとめ本体ではこのように記載されているということで御覧ください。
 個人事業所については5ページからになります。こちらも本文の表現をそのまま抜粋しておりまして、5人以上、5人未満の個人事業所への適用の在り方や、必要な配慮措置、支援策についてです。また複数の事業所で勤務する方、フリーランス等についても記載の形で取りまとめをいただきました。
 二巡目の議論でこの適用拡大を取り上げる際には、もう一度御説明をして議論いただきたいと思います。
 時間の関係で駆け足になりましたが以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 以上でございまして、先ほども複数の委員の皆様から御意見をいただきましたが、今日は時間の関係もございまして、今後また議論の機会を設けさせていただきますので、今日のところは速報と申しますか、簡単な御報告ということで御容赦いただければと存じます。よろしくお願いいたします。
 それでは、予定している議事は以上で終了でございますが、実は本日で年金局に人事異動がございまして、橋本年金局長が今回の部会限りということになります。そこで、これまで事務局トップとして御尽力いただいたということもございますので、最後に一言御挨拶をいただければと存じます。
○橋本局長 今、部会長から御説明がありましたように、7月5日付をもちまして内閣官房のほうに異動することになりました。年金部会の委員の皆様方には大変お世話になりまして、誠にありがとうございました。最後の機会において先ほどのようなことを申し上げることになりましたけれども、これも一つの巡り合わせかなと思っております。
 私の後任には老健局長をしております間が着任することになっております。次の改正に向けては、また引き続き活発な御議論をいただければと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
○菊池部会長 ありがとうございました。大変お世話になりました。引き続きの御活躍を祈念しております。
 それでは、今後につきまして事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や日程につきましては追って連絡をいたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議は終了とさせていただきます。御多忙の折、お集まりいただきましてどうもありがとうございました。