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- 第15回社会保障審議会年金部会(議事録)
第15回社会保障審議会年金部会(議事録)
日時
場所
全国都市会館 3階 第1会議室
出席者
- 会場出席委員
-
- 菊池部会長
- 玉木部会長代理
- 出口委員
- 小野委員
- 権丈委員
- 小林委員
- 駒村委員
- 是枝委員
- 佐保委員
- 島村委員
- たかまつ委員
- 永井委員
- 原 委員
- 平田委員
- 百瀬委員
- オンライン出席委員
-
- 堀 委員
議題
- (1)これまでの年金部会における議論の振り返り③
- (2)社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理について(報告)
議事
- 議事内容
○総務課長 ただいまより、第15回「社会保障審議会年金部会」を開催します。皆様、お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。
初めに、委員の出欠状況を報告します。
武田委員、嵩委員、深尾委員から御欠席の連絡をいただいております。堀委員は少々遅れての御参加、また、権丈委員は所用により途中で御退席されると伺っております。なお、堀委員はオンラインで参加される予定です。出席委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しております。
次に、資料の確認をいたします。
本日の部会はペーパーレスで実施しております。傍聴者の方は厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
本日の資料は、資料1「これまでの年金部会も踏まえて御議論いただきたい論点②」。
資料2「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理(概要)」。
参考資料1「第3号被保険者制度について(第7回年金部会資料1(一部修正))」。
参考資料2「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理」を事務局で用意しております。
また、権丈委員と是枝委員から資料の御提出がございました。
事務局からは以上でございます。以降の進行は菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、本日も大変お忙しい中お集まりいただきまして、また、足元の悪い中、御来場いただきましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
カメラの方はここで退出をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、議事に入らせていただきます。
本日は、これまでの年金部会における議論の振り返りの3回目、そして、社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理についての御報告、以上2つを議題とさせていただきます。
では、まず、議題の1つ目、これまでの年金部会における議論の振り返りにつきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。私からは、議事1「これまでの年金部会における議論の振り返り③」について御説明申し上げます。
まず今回、この議事を立てさせていただいた趣旨ですが、次期改正に向けた検討事項については、昨年末までに1巡目の議論という形でそれぞれのテーマの現状や課題について議論いただきました。他方で、時間的な制約もあり、十分議論いただけていないテーマもあります。また事務局としても、財政検証後に始まる2巡目の議論の前に、もう少し先生方の議論を深めていただきたい点もございます。
3月の年金部会では、同様の観点から遺族年金あるいは基礎年金の45年加入について議論いただきましたが、今回はそれに引き続き、1巡目の議論を踏まえてさらに議論をお願いしたい事項について「議論の振り返り③」として議事にしました。
具体的には、資料1を御覧いただくと、こちらに論点として4つ取り上げています。順次説明申し上げますが、テーマは多くあり、議論の時間を確保するため、駆け足の説明になることをお許しください。
資料1で最初のテーマは「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方に関連する論点について」です。こちらは昨年12月に議論いただき、3ページはその際の御意見を踏まえてまとめたものです。
年金の給付水準については、夫婦二人世帯を想定して、いわゆる「モデル年金」という形が様々な場面で使われてまいりました。特に平成16年改正では、この「モデル年金」を用いて所得代替率を計算することが法律で定義され、かつ下限が定められており、改正前後の給付水準の変化を示す物差しの役割を担うことになりました。昨年12月の議論では、こういう経年変化を観測する必要性を考えれば引き続き設定することは理解できる、あるいは変更は難しいという御意見をいただいたところです。
一方で、3番目の○ですが、この「モデル年金」の年金額だけを示すということが、財政検証で用いる物差しという意味を超えて、標準的な年金額と思うようなメッセージ性をもっているのではないか。そういう意味では、幾つかのパターンを使って見せ方を工夫する必要があるのではないかという御意見をいただきました。
具体的には一番下の○のところですが、様々な世帯を想定して世帯類型毎の年金額について分かりやすく示すことが必要という御意見や、所得代替率や年金額の違いは世帯類型ではなくて賃金水準の違いから生じる、という構造から賃金水準に着目することが重要という御意見を頂いており、これらを踏まえて整理したものが次ページになります。
4ページを御覧ください。これまでは夫婦世帯の例しか出しておりませんでしたが、単身世帯が増加していることから、新たに単身世帯のイメージを検討例としてお示ししています。
ここでは、いずれの例でも40年満額で計算していますが、一番下にある「国民年金のみ加入」では基礎年金6万8000円になります。その上は、男性あるいは女性の現在の厚生年金加入者の平均的な収入、あるいはそれを1.25倍か0.75倍したもので年金額を計算しています。このうち2番目にある「43.9万円」が現在の「モデル年金」で使っている数字になります。
続いて5ページでは夫婦世帯のイメージになりますが、夫婦世帯とは結局単身世帯を組み合わせたものになることから、単身世帯で示した1から8までの年金額の計算例を合わせたものになります。
5ページの上が「共働き世帯」で、その下には短時間労働者を含む様々な組合せ例を示しています。
真ん中辺りには「自営業者世帯」があって、こちらは国民年金のみに加入している前提となり夫婦で13万6000円になります。
その下は「片働き世帯」で、こちらも幾つかの例を組み合わせており、このうち上から2番目の「②+⑧」が「モデル年金」としてこれまで示してきた水準になります。
12月の御議論を踏まえて、今回私どもの方で検討例ということで示させていただきましたが、他にも考え方があると思いますので、本日議論頂いてさらにブラッシュアップしたいと思っております。
以降は参考資料でして、6ページ、7ページは、12月の部会の主な御意見の例、8ページは、単身世帯が増えているというデータです。9ページでは、特に高齢者単身世帯が1985年以来伸びており、その背景の一つとして、10ページにあるとおり未婚割合が上昇していることがあります。
それから世帯構造の変化では、11ページにあるとおり青のラインの専業主婦世帯が減少して共働き世帯が増加しています。
12ページでは、先ほどの検討例にもありました男女の報酬の差でして、赤が男性、緑が女性になります。
13ページになりますが、本日お示しした検討例は、あくまで現時点の加入者の状況をベースにした給付水準になります。ここは世代によって変わる面がありまして、この点については、2019年の財政検証のオプション試算で、世代ごとの将来の1号、2号、3号それぞれの加入期間の見込みを示しています。右側が適用拡大した場合になりますが、将来的には加入者の2号期間は延びて、女性の場合は3号期間が短くなるといった傾向があります。こういった点をどう扱うか、ということで今回お出ししました。
14ページも前回の財政検証の際にお示ししている資料です。今回お示ししているのは、あくまでも年金額の例でして、所得代替率を考えた場合には違う数字が出てまいります。14ページの資料はそれを表したもので、厚生年金の年金額あるいは所得代替率は、世帯類型によらず、世帯の賃金水準一人当たりで決まります。
したがって、その下のグラフになりますが、右側の賃金水準の高い世帯ですと、年金額が赤い線で示されて、それに対する代替率は緑の線となります。ここで賃金額が左側の方になって低くなっていくと、反対に所得代替率は上がっていき、年金額と所得代替率は逆の関係になります。こういう構造にあることを改めて確認するために14ページをお出ししました。
最後に15ページですが、今回は合計20を越える検討例を出しましたが、例示には限界がありまして、個人の年金額を知るためは、それぞれの方の加入期間あるいは報酬額を用いて計算することが必要です。そのために公的年金シミュレーターというものを開発しており、現在、利用件数は620万件を超えています。私どもとしては、こういったものを利用頂きながら年金額を示していきたいと考えております。
続いて、2つ目は障害年金の論点です。昨年6月の年金部会で議題として取り上げて、百瀬先生と福島先生からプレゼンテーションをいただきました。そこで提示された論点を今回お示ししております。
17ページ以降に、6つ論点がありまして、まずは「初診日に係る論点」です。
障害年金では、初診日で保険事故の発生時点を判断している結果、初診日時点で厚生年金の被保険者でなければ障害厚生年金は支給されないことになります。この点について、被保険者でなくなった後も、何らか保障の延長のような「延長保護」ができないかということと、あるいは保険料の納付済期間が一定以上あれば給付対象にする「長期要件」という考え方はどうかというのが1点目です。
2つ目は「障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱いに係る論点」でして、現在の仕組みでは障害年金の受給中は法定免除期間になりますが、障害が軽快して障害年金が停止された後の将来の給付を考えると保険料納付済期間とすべきではないかという論点です。
続いて18ページは「直近1年要件に係る論点」で、これは現行制度の特例措置に係わるものです。現在、障害基礎年金・遺族基礎年金の発生要件として保険料の納付を求めており、具体的には保険料納付済期間が3分の2以上というのが原則になっております。この部分について、現行制度の特例として3分の2を満たさない場合であっても、直近1年間に未納期間がなければ要件を満たすという扱いがあります。こちらは時限措置でして令和8年3月末で切れる予定になっており、これをどうするのかという論点になります。
続いて「障害基礎年金2級の年金額に係る論点」で、障害基礎年金2級の年金額については、老齢基礎年金の満額と同額に設定されています。したがって基礎年金の拠出期間を45年に延長して老齢基礎年金満額が増えた場合には、障害基礎年金の年金額も同じにするのかという論点です。
続いて、19ページは「障害年金と就労収入の調整」で、現行の障害年金の仕組みでは、二十歳前の障害基礎年金を除いて、就労して収入を得たとしても支給停止になる、あるいは減額になるという、言わば在職老齢年金のような仕組みはございません。この点について一定の調整を行うべきかどうかという論点になります。
最後、6点目は「事後重症の場合の支給開始時期に係る論点」です。
現行制度には事後重症という仕組みがあり、障害の状態がだんだんと悪化して、いわば事後的に障害等級に該当する方がいらした場合には、障害年金を請求することができて、認定されると請求した翌月から障害年金が支給されます。この点について、仮に障害等級に該当する日が請求前に遡って確認できるのであれば、遡って支給してはどうかという論点です。以上の点について御議論いただければと考えております。
以下は参考資料で、20から22ページまでは、6月部会での主な御意見です。
23ページ以降は、制度の目的や概要、受給権者数といった資料です。
次の32ページからは、第3号被保険者制度に関連する論点についてです。
第3号被保険者制度については、昨年9月の年金部会で議論いただきました。また、それに限らず様々な回で御意見をいただいており、今回、論点という形で提示するために私どもでまとめさせて頂いたのが32ページです。
最初の○では、女性の労働参加の進展あるいは共働き世帯の増加という環境変化の中で、被用者保険の適用拡大を進めるというのが、年金部会からいただいた道筋でして、2016年以来、適用拡大を通じた第3号被保険者制度の縮小・見直しのステップが進んでおります。他方で、昨今の人手不足と「年収の壁」を意識した就業調整が生じていることから、この問題は、働き方に中立的な制度の構築という観点からも指摘されています。こういった点を踏まえて制度の在り方をどう考えるのかというのが1つ目です。
2つ目では「一方で」ということで、先ほども御紹介しましたが、被用者保険においては、片働き世帯、共働き世帯、単身世帯とも、世帯一人当たりの賃金水準が同じであれば、どの世帯でも給付と負担が同じ構造になっています。また昭和60年改正で発足した第3号被保険者制度は、それまで任意加入だった専業主婦を制度に取り込んで、多様な属性の方に対する所得保障の柱として機能している側面があり、これは当時女性の年金権の確立と表現されましたが、こういう成り立ちがあることにも留意する必要があります。
また、仮に新たに保険料負担を求める場合には、被保険者としては第1号被保険者になるわけですが、その場合には第1号被保険者としての保険料免除、あるいは未納という形で将来低年金となる可能性があるという指摘があります。こういう点も併せて考える必要があるということで論点に入れております。
それから、一番下の○では幾つか検討の視点をいただいており、第3号被保険者の中には、育児や介護あるいは病弱といった理由で働きたくても働けない、就業に一定の制約を持つ方々がいらっしゃいます。そういった方々は、現行制度を前提に生活を設計しており、何らかの見直しを行う場合でも、こうした方々への配慮が必要という指摘がありました。また、こういった育児や介護、病弱等々の個別の事情に着目して見直しを行う場合には、個々の事情に応じた公平な線引きの技術的な難しさという御指摘もありました。
それから、育児、介護、病弱といった理由については、第1号被保険者の方であっても同じ事情にあるので、その方々の保険料負担とのバランスをどうするのかという指摘もあります。こういう点も踏まえて考えなくてはいけないということで挙げております。
その後ろの33から35ページまでは、年金部会でいただいた意見をまとめています。
最後、加給年金に関する論点について、37ページを御覧ください。
加給年金については、昨年7月に遺族年金と同じ回で議論いただきました。その際の意見を踏まえて、37ページに論点をまとめていますが、加給年金については3種類あります。
1つは、老齢厚生年金の配偶者加給年金で、一番規模が大きくて、受給者数は約100万人、支給額は約3700億円になります。
老齢厚生年金の配偶者加給は昭和29年に創設され、昭和60年改正で見直していますが、基本的に夫が年上、妻が年下といった当時の夫婦像をモデルとして想定しており、夫婦の年齢差で支給の有無や長短が決まる構造になっている点は見直しが必要ではないかというご意見がありました。今は、単身世帯が増加し、夫婦の形も様々ですので、社会に整合的ではないといったご意見もいただいています。
このほかにも、加給年金は、女性が専業主婦で働くことができないことを想定した制度で、独身者には支給されないなど不公平ではないか、今は60代前半あるいは50代の女性の就労が増えており、加給年金を支給する必要性は薄れているのではないか、さらに加給年金は、繰下げ受給の判断を鈍らせるもとであり、就労意欲に影響することがないような制度設計を行うべきだという御意見など、制度を見直すべきという意見をいただいており、これについてどう考えるのかというのが論点です。
残りの2つの加給のうち1つは老齢厚生年金の子供の加給年金です。
老齢厚生年金を受給する65歳の到達時点で、生計を維持している18歳までのお子様がいる場合に、この加給年金が支給されます。少し年の差がある親子ということになりますが、支給額は22万4700円となっており、受給者数が約2.5万人、支給額は70億円となっています。こちらの仕組みをどうするのかという論点です。
それからもう一つは障害厚生年金の配偶者加給年金という仕組みがあります。これは、障害厚生年金の受給者の方に配偶者がいらっしゃる場合、そこに着目して加給年金を支給するもので、受給者数は約8.1万人、支給額は182億円という規模です。
この2つについては、昨年7月の年金部会では特段の議論はありませんでしたが、同じ加給年金ですので、今回論点として挙げさせていただいております。
その際、障害厚生年金の加給年金については、※印にあるとおり、平成23年に施行された障害年金加算改善法という法律によって対象者が拡充されています。具体的には、改正前は、障害厚生年金の受給権発生時点で配偶者がいた方が加給の対象になっていましたが、改正後は、受給権発生後に配偶者となられた方も対象になることで拡充されたという経緯があります。
最後、37ページの下ですが、遺族年金あるいは加給年金に共通している点として、現行制度を前提として生活設計を立てている方が多くいらっしゃり、見直した場合に受ける影響は世代によって異なることから、これらの仕組の見直しを行う場合には十分な経過措置が必要という御意見もいただいています。
論点については以上で、38ページは公的年金制度における加算の一覧です。
39ページは、御紹介した平成23年の障害年金加算改善法の内容です。
40ページは、加給年金に関してこれまでにいただいた御意見です。
それから、第3号被保険者制度については、参考資料1として大部になりますがデータ集を用意しています。こちらは昨年9月の年金部会に提出したものと基本的に同じですが、51ページと55ページは数字のアップデートをした最新のものです。議論で必要がありましたらご参照ください。私からは以上です。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいま御説明いただいた議題につきまして、御意見、御質問などがございましたらお願いいたします。
最初に、権丈委員が途中退席と伺っていますので、よろしければ最初にどうぞ。
○権丈委員 では、始めさせてもらいます。
今日の提出資料が配付資料の一番最後のほうにありますので、御覧になっていただきたいのですけれども、これは小野委員と私からの遺言のような資料になっているわけですが、昨年11月の第9回年金部会で小野委員が「ここまでしても社会の理解が得られないのはなぜか」と問題提起をされた資料を提出しています。
私は、人が忘れてもらいたいこともいっぱい覚えているという特技があるので、本日もその特技を使わせてもらったのですけれども、小野委員には、昨年の「ここまでしても」というのは、2019年財政検証時の資料4にある16ページ、本日の資料の通し番号5ページでいいかと問い合わせ、「間違いないです」との返事をいただいています。説明する時間はありませんが、今日の通し番号5の意味をしっかりと理解しておいてもらいたいと思います。
前回の年金部会で、2019年財政検証のときに一番意味があった資料は資料4だったという話をしたのですけれども、みんな資料の存在を知らなかったです。「ここまでしても社会の理解が得られないのはなぜなのか」という小野委員の問いの答えというのは、社会はここまでされた資料を知らなかったということになるかと思うのですが、そうした事実をベースに公共政策周りで起こっていることは一体何なのかということを考えてもらえればと思います。
公的年金には認知バイアスが強く関わりますので、集団催眠にかかったような大衆騒動が頻発します。そうした題材の扱い方として大きく2つあるかと思います。
炎上している理由はどうあれ、騒動が起こっているのだから、それを抑えるために制度を変えるという方法。いま一つは、その騒動を抑えるために、広報活動を強化して正確な情報を発信するという方法です。
一昨年の全世代型社会保障構築会議の報告書は、例えば年収の壁騒動に対して、後者の、正確な情報を提供するという方針でまとめられています。日本の公的年金の歴史を長い目で見ると、大変な勢いで破綻論が言われ、関係者の多くが抜本改革を唱えていても、年金局は今の制度に自信を持って、よいところを守り、意味のある改革を漸進的に進めてきたと。そういう伝統が日本の公的年金、年金局の歴史にあると私は評価しています。
その意味で、年収の壁とか3号問題というレントシーカーたちが仕掛けて騒動に関しても、これを鎮静化していくプロセスが徐々に展開されていくのではないかと期待しています。そうした方向にある未来を準備するために役に立つかもしれない「東京都のくらし方会議」が試算した生涯所得の資料を今日は提供させてもらっています。
ただ、これまでの経験上、ブームに乗って大きく間違えた人たちは、そう簡単に論は変えず、どんどんアリ地獄に入っていって議論を混乱させるだけの存在になっていくという傾向があります。
先日も某テレビ番組で、東京都くらし方会議の試算が紹介されていたわけですけれども、過去に年収の壁があるために成長が阻害されているとか言っていた人は、年金という遠い先のことを言われても、目の前のお金が大切という人もいるわけでして「やはりこの崖は見直さなければならない」と発言したりして、認知的不協和というこのアリ地獄への道に陥り始めていたわけです。このくらし方会議の試算は、別に年金という遠い先の話だけではなく、就業調整をすると目の前の日々の生活で、今年も、そして、来年もこれだけの所得を失っていますよという試算なのですけれども、過去に発言したことと整合性を持たせようとして、そういう意識が人間は働きますので、試算が意味することを素直に読み取ることができなくなっているわけです。
世の中は大体、いつもそういうものだから、議論が収束するのには時間がかかるとは思うのですけれども、ただ、将来的には、壁だ、働き損だ、3号はお得だという話を真に受けて、年金局の人たちが苦労しながら進めてきた適用拡大の便益を放棄して、高齢期に後悔することになる人たちは減っていくと思います。年金局には正確な情報を世の中に示す活動を積極的に展開して、適用拡大をちゅうちょなく進めてもらいたいと思っています。
先月出た『ルポ年金官僚』では、私は制度指示派と評されているわけですけれども、今ある制度は、3号制度も応能原則に基づいた夫との共同負担から成る設計になっているわけで、それを応益原則にするような、何といいますか丸山眞男が言う引き下げ平等主義をここでやる必要はないということも含めて、この国の年金は世の中の人たちが批判するほどそんなに悪くはないと思っています。
抜本改革など口にしたことがない私が求めている改革というのは、政治的には難しいのだけれども技術的には容易で、論理矛盾も起こさないものばかりです。小野委員の以前の発言になるわけですが、年金側で汗をかくことが大切で、年金が汗もかかずに筋の通らないことをやろうとすると反対はしますけれども、レントシーカーたちと闘って来年の制度改正に向けて努力をしてくれるというのであれば大いにサポートしたいと思います。
以上になります。どうもありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、ほかの委員の皆様からもお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
出口委員から順次お願いできればと思います。
○出口委員 私からは2点申し上げたいと思います。
1つ目は、資料1の3ページにあります、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方に関連する論点のところでございます。
財政検証で用いられるモデル年金は、給付水準の変化を示すものさしとしての役割を担う。一方で、片働き世帯が多数派ではなくなっている上、モデル年金や所得代替率では、国民一人一人が老後生活を予見しにくいというのも分かりまして、ものさしは残しつつも老後の生活設計の目安として実感できる数字を提示することについては賛同いたします。
ただし、資料1の4ページあるいは5ページのように、わざわざ男女別に示しているところについては違和感がございます。性差関係なく一人一人に分かりやすく示すのであれば、例えば、公的年金シミュレーターの表示に合わせ、現役時代の年収と対比して将来の年金給付額を示してはどうかと思っております。これはシミュレーターの普及、広報にも資するのではないかと考えております。
2つ目でございますが、第3号被保険者制度に関連する論点、これは資料1の32ページにあったものでございます。
様々な論点がある中、目指すべき将来の姿をしっかり示すことがやはり大事だと思っていまして、まずは次期2025年改正で縮小するとの将来の姿、あるいは方針を明確にしてはどうか、というところが私の意見でございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、多分多くの皆様から御発言があると思いますので、よろしければ順番にということで、小野委員、お願いできますでしょうか。
○小野委員 ありがとうございます。私からは第3号被保険者制度に絞ってコメントさせていただきます。
結論的には、同制度は存置しつつ被用者年金保険の適用拡大を徹底し、なおかつ公的年金シミュレーターを使い、いわゆるインフォームドデシジョンによってこの縮小を図るという、現在の政策を強力に進めることが妥当だと考えます。縮小後の制度は、被用者保険の被保険者同士の夫婦のいずれかが、失職や転職によって一時的に収入が途絶えた際のシェルターとしての利用ということが考えられるのではないかと思います。
この問題は、当時の日経連の10年越しの要求を受けまして、常用的雇用という概念を異例な形で導入した1980年内簡によりまして、被用者保険の被保険者をフルタイムに近い労働者に限定したことが大きく影響していると考えます。その後の非正規労働者の増加とともに被用者保険が適用されない第1号や第3号の被保険者が増加して、この対策の一環として、被用者保険の適用拡大が進んでいると理解しています。
加えて、共通給付として基礎年金が導入された1985年改正以降は、国民年金保険料とのバランスというのを意識せざるを得ない状況になっています。ですので、このような状況の解決策というのは、セカンドベストにならざるを得ないということは既に申し上げたところです。
仮に、第3号被保険者から保険料を徴収する場合、例えば、第3号を廃止して第1号とすることが考えられます。しかし、その場合は、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について、当該被保険者が共同で負担したものであるという基本的認識の下に設計されている年金分割の理念を根底から見直すことになるのではないかと思います。
また、自営業者等、標準報酬を定義や捕捉ができない第1号被保険者へ、やむを得ず応益負担の保険料を課している現状を、被用者グループにまで拡大することには慎重であるべきだと考えます。
これに加えまして、下世話な話で恐縮ですが、減少しているとはいえ700万人存在する第3号被保険者と同数の配偶者、計1400万に対して、国民年金保険料を課すという政策の実現可能性というのも冷静な形で考慮する必要があるのではないかと思います。
私は、第3号被保険者問題と年金分割につきまして整理した2004年改正と、今までの年金局の説明は合理的だと考えていますし、支援強化パッケージを実施中の現在、手のひらを返したような政策を実施することには、政策的意義を見いだし得ないということでございます。
ただ、ここまでしても、恐らく事業主が利用できる、いわゆる労働者にとって見えない壁というものが、被用者が保険料を負担しなくてよい収入の範囲、ここに関しては何らかの手だてを打たないといけないなと思っております。
取りあえず以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小林委員、いかがでしょうか。
○小林委員 私のほうからは2点コメントさせていただきます。
1点目はモデル年金についてです。
資料1の4ページと5ページに複数の年金水準をお示しいただき、ありがとうございました。家族形態やライフスタイルが大きく変化する中、従来モデルの指標だけでは分からなかった、よりリアルな年金水準を知るための目安になったとは思います。
その上で、1点お願いがあります。
今回お示しいただいたモデルは、様々なパターンを幅広くカバーしていますが、いずれも、夫婦か単身かということと、企業勤めかそうでないか、ということで類型化した「平均的な収入」を基準として試算されています。
しかし、日本の企業社会の現状から見れば、所得は、やはり年齢が大きく影響しているため、所得に応じた給付額となっている公的年金については、特に若い世代にしてみれば、今回お示しいただいた類型のモデルはともかくとして、自分たちの世代の年金がどうなるのか、というイメージをつかみたいと考えるのではないかと思います。
このため、若い世代がイメージしやすくなるために、例えば20代、30代、40代と、特に家族形態やライフスタイルが大きく変化している年代別に、将来もらえる年金額や水準のモデルをお示ししていただくことが可能かどうか、御検討をお願いしたいと思います。
2点目は、第3号被保険者制度です。
人手不足が深刻化する中では、就業の抑制要因を見直し、働ける状況にある人が希望に沿った形で活躍できる環境の整備が重要です。
私どもの会社でもそうですが、短時間労働者においては、「年収の壁」を超えないよう就業時間を調整することが一般化しております。このため、賃上げ努力をすればするほど「働き控え」が増え、人手を要するメーカー等の中には、供給制約からビジネスチャンスを失う事態に直面している企業もあるほどです。
そうした状況で、専業主婦世帯の減少など時代の変化を捉え、被扶養者として特別の措置が講じられている第3号被保険者制度は、働き方や家族観についての多様性を包摂しつつも再構築していくべきであると考えます。
なお、政府におかれましては、「年収の壁」に対応する支援パッケージの一つとして、社会保険料負担相当分に充当できる「キャリアアップ助成金」を措置いただいております。しかしながら、制度の複雑さとともに、3年先の賃上げまで見通した取組が求められるなど、中小企業にとって、制度を理解し利用するにはハードルが高いとの声が寄せられておりますので、より使いやすい制度としていただくようお願いいたします。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
駒村委員、いかがでしょうか。
○駒村委員 ありがとうございます。
3号の問題について中心にと思います。
今日の参考資料1、59ページ以降の資料を見ながらなのですけれども、まず、いわゆる年収の壁と言われているものは、130万の前で必ずしもピークを迎えているわけではなくて、税制等々の影響があるので、年金だけの原因で調整を行われているわけではないというのがこれから読み取れるのかなとは思います。被扶養者に係るいろいろな制度が就労行動をゆがめている可能性があると。
次のページで60ページを見ますと、これも前回お話ししたのですけれども、女性の働き方で、昔からダグラス・有沢の法則というのがあって、夫の賃金が高い女性は就労率が低いということなのですけれども、これを見て分かるように、やはり国民年金3号は、夫の賃金の高いところにどうも分布があるのではないかということが読み取れるので、依然としてダグラス・有沢の法則が存在している。これは60も61も同様かなと。
標準報酬の上限を引き上げるという話がありましたけれども、この1000万のところは、実は65万円ぐらいのところなので、65万円以上のところが第3号が多いというならば引き上げていただいて、貢献していただくというのは一個の考え方かなと、この図からは読み取れると思います。
次に、63ページを見ると、なぜ働かないのかで、健康に自信がないと。でも、これは65ページを見ると、健康に自信がないというのは主観的なもので、65ページの50歳代を見ると、50代になると健康に自信がないが4割を占めるようになるのですけれども、その中で働けないほどというのは12%ということになると、非常にわずかかなとは思います。誰もがそうですけれども、年齢が達してくれば、3号であろうが何であろうが、だんだん体力が落ちて、いわゆる余暇選好が高まるので就労意欲がなくなってくるというのは経済学が教えているとおりなので、そういうことが起きているだけではないのかなと思いますので、特段健康に自信がない人が3号に多いとは、これからは解釈できないのではないかなと思います。
3号制度の評価なのですけれども、これが男女賃金の、いわゆるジェンダーギャップの再生産に仮に寄与しているならば、対象を縮小して、最終的には廃止していくほうがいいのではないかと。OECDのPensions at a Glance2023年版を見ると、日本の年金のジェンダーギャップは桁外れに先進国の中でトップになっていると。ほかの2位以下をぶち抜いて、物すごい差の年金のジェンダーギャップがあると。これは、厚生年金は現役時代の賃金と加入期間に比例しますので、そういうのは当然出てくるわけですけれども、女性のキャリア形成の中で、3号制度というのが、女性のキャリア形成に対して何らかのゆがめる影響があるならば、これは検証しなくてはいけないのですけれども、そういう人生のキャリア形成に影響を与えているならば、最終的にはこれを除外していく必要あるのではないかと思います。
その後なのですけれども、国民年金の1号というのが今後どういう制度になっていくのかということも同時に考えておく必要があると思います。自営業の比重は非常に減ってきていて、無業あるいは非正規が非常に多いと。今後、適用拡大あるいは勤労皆保険といったものが出てくると、では、国民年金第1号は一体どういうところなのかというと、やはり人生の中で働かない期間に相当するところをシェルター的に担うというところを考えれば、3号については、国民年金1号の対象にして、収入がなければ免除、半額免除にするということも、このソリューションではないかなと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
では、是枝委員、お願いします。
○是枝委員 3点意見を申し上げます。
1つが、多様なライフコースに応じた年金の水準の示し方。2つ目が、第3号被保険者制度について。3つ目は、今回論点にありませんでしたが、先日出た資料から永住者の国民年金納付率について事務局にお伺いしたいと思います。
まず、1点目、私の提出資料を御覧いただきながら御説明を聞いていただければと存じます。
今日の資料1の4ページから5ページで、現役の報酬水準に応じて年金額が幾らになるかという例を幾つか示していただいたと思うのですが、こちらは、毎年の年金額の改定、今年は何%の改定でしたのでこうなりますといって示す際にはこういったものがいいかと思います。ただ、財政検証の参考資料などとして、遠い将来の年金水準が幾らになりそうだということを示す際には、先ほど小林委員から御指摘があったとおり、20代、30代、今の40代が将来年金を受給する際にはどのくらいの水準になるだろうかというものについては、私が示したような新モデル年金と呼ぶのがいいのか平均年金額と呼ぶのがいいのか分からないですけれども、その世代の平均的な世帯構成を踏まえた年金額というものをお示ししてはどうかと考えております。
特に、夫婦の世帯においては、現在のモデル年金というのは男性1人分の平均賃金しかない世帯というのを想定しております。このため、今後、夫婦とも正規雇用で働く世帯が多数派になっていくと、男性1人分の平均賃金しかない夫婦の世帯というのは、同世代の中でのかなり貧しい世帯を意味するようになってきます。大和総研では、就業の有無や形態は特に設定せず、より汎用的に、その世代における夫婦の年金額を想定できるものとして、各世代の男女それぞれの平均的な厚生年金加入期間を持つ夫婦世帯における年金額というのを新モデル年金として試算を行いました。
こちらを新モデル年金というのを用いますと、お示しした表の2つ、どちらも2019年財政検証時のケースIII、死亡中位、出生中位の年金額の見通しなのですが、左側のモデル年金の増え方よりも右側の新モデル年金、その世代の平均年金額というものはより多く増える形になっております。これはなぜかというと、女性や高齢者の就労期間というものが、将来、若い世代になるほど、後に生まれた世代になるほど伸びていくので、その期間を固定したモデル年金よりも実際の平均的な年金額の見通しというのはより多くなるということが示せるものです。この新モデル年金あるいは平均年金額というものを用いますと、厚生年金の適用拡大を行うと、基礎年金が充実するというだけでなく、厚生年金に加入する人が増える、平均加入期間が延びることによって、若い世代の平均的な年金額が増えるという見通しを国民に分かりやすく伝えることができるかなと考えております。こうしたものを、次の財政検証の参考資料に示すことにしていただければなと考えております。
2点目、第3号被保険者制度についてです。
これは、まず年収の壁にまつわる議論について、第3号被保険者制度を切り離して考えるべきではないですかと私は思っております。仮に、第3号被保険者制度を廃止したとしても、厚生年金や健康保険で短時間労働者や非適用業種などが残っていましたら、事業主側から見て就労調整させる、それ以下の働き方にさせるインセンティブが残ってしまいますので、年収の壁の問題は引き続き残ると考えております。ですので、年収の壁を解決するための策としての3号の縮小や廃止というのは、不十分あるいは不適切なものかなと考えております。
適用拡大で労働皆年金を実現して、少しでも働く人は厚生年金に入るという形にすれば年収の壁の問題はなくなります。その上で、なお3号を廃止すべきかどうかというのは再分配の範囲として何が適切なのかということなのだと思います。適用拡大を思い切り進めた上で、残る3号の人というのは、強い人なのか弱い人なのか、よく考えてみなければならないと思います。
先ほど駒村委員から御指摘があったとおり、ダグラス・有沢の法則などが働いて、適用拡大をずっと進めていった結果、残るのは、ある種世帯が豊かで、働く必要がなくて働かない人たちが残るものなのか、それとも、本当に短時間でも働くことができないような重い障害や病気などを持った人ばかりが残ってしまう形になるのか、適用拡大をよく進めた上で、最後、残る人たちが再分配に値する人であるのかどうかというのをその時点で判断すべきではないかと私は考えております。
最後、永住者の国民年金納付率について、事務局にお伺いしたいと思います。
先日、5月8日の国会、衆議院の法務委員会にてサンプル調査の結果ということですが、出入国在留管理庁より、永住者の国民年金の未納件数というのが、サンプルの中で213件あり、サンプル調査された方のうち10%近くの未納があったという国会答弁がございました。報道から見ると、外国人の未納が多いのではないかという見方もありましたが、国民年金納付率で言うと、日本人も2~3割の未納があるものですから、第1号被保険者であるならば1割の未納率というのはあまり高いものではないと思いますが、永住者のうち、第1号被保険者がどれだけいるのかということも分からない数字ですので、永住者の国民年金の納付実態につきまして、もし資料がございましたらお示ししていただきたいと思います。なければ、引き続き出入国管理庁などに問い合わせいただければと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
今の最後の点につきまして、いかがでしょうか。
○総務課長 年金機構で持っているデータに関しましては、受給者にしても加入者にしても、基本、国籍ごとのデータというのはないです。永住者以前に、そもそも外国人というくくりであっても統計データとしては持っていないということになります。
先般、出入国管理庁のほうで出した話についても、今回のサンプルの中で、1号と2号の割合がどうなっているかというところがちょっとよく分からないので、この1割という数字の評価も難しいかと思っております。
○菊池部会長 よろしいですか。
それでは、佐保委員、お願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
私からは、障害年金制度と第3号被保険者制度、それぞれの論点について発言させていただきます。
まず、障害年金制度について、第5回の年金部会において永井委員からも発言があったとおり、障害給付の目的に照らせば、同じ公的年金の枠組みの中で、障害給付の等級に差を設けることに必ずしも合理性や妥当性があるとは言えないと考えます。厚生年金保険の適用に係る様々な要件により、同じ障害の程度であっても、被用者間で受給できる障害年金に大きな違いが生じている現状、さらに、基礎年金の等級を厚生年金にそろえることで、初診日に係わる課題が解決できることを踏まえれば、基礎年金の等級を厚生年金と同じ3級からとすることを検討すべきと考えます。なお、等級をそろえることで想定し得る課題があるのであれば、2巡目の議論の際には、可能であれば資料として整理をいただきたいと考えております。
続いて、第3号被保険者制度について発言いたします。
第7回の年金部会でも申し上げたとおり、次期年金制度改革に向けて、本部会において将来的な方向性や結論を出すべきであり、その際、公平性だけではなく、働き方やライフスタイルなどに中立的な制度を目指す視点が重要だと考えます。その上で、次期制度改革における第3号被保険者制度の見直しの有無にかかわらず、2019年12月の議論の整理を踏まえ、各適用要件を大幅に見直すことで、少なくとも被用者である第3号被保険者については厚生年金保険の適用を進め、第3号被保険者の縮小を加速させていくべきと考えます。同時に、被扶養者の収入要件を引き下げることも検討すべきと考えます。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、サイドが変わって島村委員、お願いします。
○島村委員 ありがとうございます。
私からは、第3号被保険者について加給年金について一言ずつ述べさせていただければと思います。
まず、第3号被保険者については、決め切れていない部分もあるのですが、将来的には廃止するか、あるいは第1号被保険者に扶養される配偶者も同様の枠組みにするかも含めて検討する必要があるのではないかと考えています。仮に、第3号を廃止する場合、現行の仕組みを前提とすると、課長の御説明にもありましたが、第1号被保険者と整理することになるかと思います。
そうすると、それまで厚生年金勘定が見てきたもの、つまり、事業主が被保険者全体とともに被用者世帯のために財政負担してきたものが、第1号被保険者として国民年金勘定で見ることになるかと思います。そうすると、これまでとは、事業主負担や被用者負担の意味も変わる可能性というのもあるように思われます。世帯に対する保障か個人に対する保障かという点にも影響が及びそうであり、仕組みが大きく変わることは間違いないので、その代わりぶりについても、シミュレーションのようなものをお示しいただけるとありがたく、それを前提に、本当に第3号被保険者制度を廃止するかどうかについて、幅広い見地からの議論できる機会をいただけるとありがたいと思っております。
もう一つが、加給年金についてですが、配偶者に対するものについては、歴史的役割を終えたとして廃止する方向性でよいかと思います。経過措置を設けることというのは重要かと思いますが、今の社会になじまないものについては終了していくべきだと思います。
その一方で、子供に向けた加給年金については、最近の晩婚化や晩産化の影響で、年金受給者が18歳未満のお子さんを養うというケースは増えてくると思われます。そうすると、その部分については年金制度でフォローするというのもあるように思えて、存続してもよいのではないかと考えております。
以上です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、たかまつ委員、いかがでしょうか。
○たかまつ委員 まず、多様なライフスタイルに応じた年金の給付水準の示し方についてですが、示すことは私は大賛成です。自分の年金に対してイメージがそれは持てるからいいと思います。こちらは、男女の収入の平均だけではなく、例えば非正規の人の収入の中央値などについてもあるといいと思います。収入の0.75倍というのも高いと感じ、自分が将来どのくらい給付できるのか分からないという不安を招いては、せっかく多様なパターンを示しているのにもったいないと思いました。
続いて、障害年金についてです。
障害年金については、基本的に受給できる人を一人でも多くしていくようにすべきだと思っています。誰もが障害者になる可能性があり、そのときに、制度的な手続や初診日によって受給できないというのはとても不安なことですし、そこまで制度的な理解がそもそも追いついていないと思います。なので、現場での混乱や運用の難しさというのはあるとは思いますが、一人でも多くの人が受給できるように緩和していくということが必要だと考えています。
続いて、第3号被保険者制度の在り方についてです。
私は、条件つきで3号制度を廃止すべきではないかなと思っています。本人が保険料を負担することなく受給を得られるという3号の制度は、女性の就労意欲というのをそぐことにつながると思っています。労働力不足が叫ばれる中で、専業主婦を前提とする3号制度というのは、今の時代に整合していないと考えています。3号制度は女性の社会進出を阻害しており、廃止すべきだと私は思います。
また、これは知人から聞いた話です。知人は、ある女子大生が「専業主婦になったら年金を払わなくてもいいらしい。だから就職せずに結婚したい」、そう話すのを聞いたと言っていました。年金についての制度的な理解が追いついていないとかいろいろな背景があると思うのですけれども、このように3号制度が残っているということが女性の社会進出の足を引っ張っているというような側面もあるのではないかなと思っています。
女性の経済的自立が進むということで、生涯所得の増加も維持できるため、高齢女性の貧困対策にも将来的につながると思います。また、東京くらし方会議の資料によれば、出産に伴って退職した人と、出産後、育業し、元の職場に戻った人、その生涯世帯収入の差は約1.9億円あるとされています。このように、3号制度というのは女性の経済的自立を阻んでいる要因になると思っています。
さらに、そもそも3号の制度は、働かない配偶者を保険料において優遇する制度だと思います。しかし、家事・育児・介護の負担を負うというのは専業主婦ばかりでありません。シングルマザーに限られませんが、ひとり親家庭において、その親は働きながら自分一人で子供を育てています。その場合、当然、その親は1号または2号の被保険者です。ひとり親が日々の労働と家事・育児を両立しているのに対して、1号・2号被保険者の配偶者である専業主婦のみが保険料に優遇を受ける3号の制度というのは不公平だと思います。繰り返しですが、3号制度を廃止して2号制度の適用を拡大すべきだと考えています。
さらに、3号制度を廃止する上で、働きたくても育児・介護により十分に働くことができない人への配慮というのは当然必要だと考えています。今の日本社会で、仕事や育児・介護を両立することは困難です。そのため、育児や介護に関わる人に対する給付や支援というのは別途考える必要があると思っています。したがって、3号廃止と引き換えに充実した支援策を手当することが求められています。あわせて、育児・介護者や学生などの無収入者、低所得者に対しては保険料の免除や延納などの措置を取るということが必要だと思っています。
最後に、加給年金の在り方についてです。
私は、加給年金は時代に合っていない制度だと思うので、廃止するべきだと考えています。専業主婦で働けないというようなことを想定してできた制度だと思うのですけれども、不公平な制度だと思います。年の差夫婦ほど支給期間が長かったり、独身者の人はそもそも出ない制度だったり、LGBTQカップルの人に出ないということは、私は公平だと思います。
また、支給要件も、年下パートナーの収入が850万以下というのは、金額が高過ぎて社会の実態に合っていないのではないかと思います。女性が社会進出し、独身者も増えるという中で、年下パートナーがいるということだけで年額40万ほど出るというのは時代に合っていないと思います。ただし、現在利用されている方というのは、加給年金を想定して生活されていらっしゃると思うので、制度移行の議論は慎重に行うべきだと考えています。
老齢厚生年金のこの加給年金や障害年金の配偶者加給年金についても、私は同様に廃止するべきだと思っています。年を取ってから生まれた子だけ給付されるのは制度的に不平等だと思いますし、高齢の人が、その時点での収入の額面は少なくても、資産が多くある場合など、本当に支給する必要があるのかという点を考えなければならないと思います。それは、年金制度ではなく収入に応じて奨学金を充実させたり、教育の無償化を推進するなど、ほかの側面から行うのがいいのではないでしょうか。
障害厚生年金の配偶者加給年金については、障害をお持ちの方で生活が苦しい方への支援というのは、もちろん社会的に必要でありますが、異性間のパートナーと結婚関係にあるという方や、年齢差がある障害者の方に限って支給されるというのは、時代に合っていないと思っています。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、永井委員、いかがでしょうか。
○永井委員 ありがとうございます。
私からは、多様な世帯構成を踏まえた年金水準の示し方について発言させていただきたいと思います。
第9回の年金部会で私から、それぞれの世帯類型での年金額について分かりやすく示していくことが必要と発言させていただきました。今回、検討例を提示いただいたことに感謝申し上げます。その上で2点、意見を申し上げたいと思います。
資料の最初の検討例マル1の単身世帯についてマル1からマル7まで示していただいておりますが、マル1からマル6の収入のパターンで年金額を示すことは、先ほど男性・女性の話はありましたが、異論はありません。
ただ、マル7の短時間労働者については、示された収入は、週所定労働時間20時間以上30時間未満、月額賃金8.8万円以上の要件を満たす方々の平均であるということで、月額賃金8.8万円にもっと近い収入で働く短時間労働者からすると、この収入で年金額のイメージが湧くのかと思っております。
年金があまりもらえない、つまり低年金であれば、保険料を払ってまで厚生年金保険の適用にならなくてもいいということにならないよう、マル7でお示しいただいている収入で働く短時間労働者のパターン、これよりも低い収入で働くパターンなど、複数の収入のパターンでの年金額の示し方も検討いただきたいと思います。
それから、検討例のマル2、スライド5ですが、多様な世帯が存在するため、多くのパターンで年金額を示す必要性は理解いたします。ただ、国民一人一人が自ら受け取ることができる年金額をイメージできるような分かりやすさも重要と考えます。特に、共働き世帯について、短時間労働者は相対的に収入が少ないこと、一般的には短時間労働者の定義は幅広いことを踏まえ、短時間労働者を含むか否かで分けるのではなく、世帯としての年金額が近くなるパターンについては一つにまとめることも、分かりやすさという意味で検討いただきたいと思います。
また、働き方の多様化や高齢期の就業率が上がっていることを踏まえ、それぞれのパターンにおいて、繰上げ、繰下げ受給した場合の年金額を示すこと、所得代替率を示すことなども検討いただきたいと思っております。
なお、年金水準を示すに当たっては、広報の仕方によって誤ったイメージを与えかねないため、十分な工夫が必要だと考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、原委員、いかがでしょうか。
○原委員 ありがとうございます。
私からは、それぞれについて触れたいと思います。
まず、論点の最初のところで、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方についてということなのですけれども、まず、事務局のほうからご説明もありましたが、いわゆるモデル年金というのは、財政検証時に、それをものさしに使って所得代替率等で将来の給付水準をチェックするためのものと理解しておりますが、この名称が誤解を生んでしまっているようですので、例えばですけれども「財政検証モデル」のような名称の変更なども検討してもよいのではないかと思っております。
その上で、毎年度の年金額改定の報道発表時については、現在は、このモデル年金の年金額を例として標準的な年金額ということで示されているために、また混乱要因となっているように思っています。こちらについて幾つかのパターンを示してあげるというようなことで、目安として受け止めてもらえるようになるかと思います。
示し方なのですけれども、4ページについて、先ほどもご発言がありましたが、これは男女別に細かく分かれていますが、私は男女に分けないほうがよいのではないかと思っております。単身のみで収入別、加入状況別に幾つかのパターンを示せばいいのではないかと思っております。
あまり細かくなってしまっても、本人のそのものズバリのものがその中にあるわけではないので、実際には、それぞれ年金シミュレーターなどを使って試算できますし、夫婦で考えるのであればそれを合わせて考えればよいので、最初から夫婦世帯、単身世帯などとあまり細かく分けてしまうと、その額が独り歩きしてしまって、また、決め打ちのような額になってしまうというおそれがあるのではないかなと思います。
いずれにしても、一般の方々に示す際は、ある程度、現役期の加入や収入に幅を持たせるとともに、このモデルという言葉は別の言い方で、例えば、収入・加入状況別あるいはパターン別の目安年金額のような、そこは何がいいかは今すぐは浮かびませんけれども、そういった形で示すのがいいのではないかなと思っております。
それから、障害年金なのですが、これは百瀬先生のほうがお詳しいかと思うのですけれども、やはり様々な論点がありますので、以前も話があったかと思うのですが、例えば関係者の方からいろいろヒアリングなどをしていく必要があるのではないかなと思いますし、もう少し議論を積み重ねるなど、丁寧に、慎重にしていったほうがよいのではないかなと思っております。
それから、第3号被保険者制度については、今の20代、30代の若い世代の方を考えたときに、この第3号被保険者制度、現在ではライフステージの中では一つの選択肢になっているものと考えられます。ただし、特に若い方、女性のほうになるのかもしれませんけれども、ライフプラン上において、その選択というものが、将来の自身の給付への影響のほか、就業、キャリアから離れること、あるいは、企業からは、人手不足、労働力不足の問題に影響するということなどから見ることも大切だと思っておりますし、そのことについての情報発信が必要かつ重要なことだと思います。
最終的に、では、どういう着地点を探っていくかというのは、今の段階ではなかなか難しいですけれども、やはり適用拡大をまず進めていって、第3号を縮小していく中で、先ほどもありましたけれども、残る人はどういう人かという視点も大事だと思います。最終的には限定的になるか、或はそもそもどうするのかということだと思いますが、将来像についての議論は必要かと思います。
ここはどうにか将来的には見直しはしていったほうがいいと思いますが、最終的にどうしていくかということについては、限定的なのか、或はそもそもどうするのかということだと思います。例えば、一定期間の間、育児などの期間については判定しやすく分かりやすいような期間でもありますがそういった考え方もできるかもしれません。いろいろ考えられると思いますので、ここはもう少し引き続きの検討が必要ではないかと思います。そして、将来の姿というのが少し見えるほうがいいのではないかと思います。
最後、加給年金なのですけれども、こちらは先ほどもご意見がありましたけれども、老齢厚生年金の配偶者加給年金については、特別加算というものがつきますし、まず夫婦単位ということと、夫婦の年齢差で支給の有無や支給期間の長短が決まるということから、公平性の観点からも、その役目というのは既に終えたのではないかと思っております。
現在、単身世帯も増加していますし、夫婦世帯では、共働き世帯も増加するなどライフスタイルが多様化しています。また、ちょっと細かい話で恐縮なのですが、60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金が男女ともに対象者がいなくなっていく中で、全ての人が老齢厚生年金も65歳支給となった際に、共働きで夫婦ともに20年以上厚生年金に加入しているとしても、加給年金が全くなくなるといった、つまり全額支給停止となるわけではなく、やはり年齢差があれば、配偶者が65歳となり受給するまでは、先に65歳になったほうに加給年金が加算され続けてしまうといった事態になって、本来の加給年金の扶養という考え方からは外れてしまう状況になってしまうことが想定されます。
残るのは、生計維持要件といった支給要件はありますが、年齢差による支給の有無と支給の長短の問題となってしまいますので、これはやはり、不公平感が今後ますます大きくなるのではないかと思います。
ただし、中高齢の人などは特にだと思いますが、現行制度を前提として老後の生活設計を立てている、あるいは考えている人もいらっしゃるでしょうから、制度の仕組みの見直しをする場合は、十分な経過措置は必要だと思います。
一方、障害厚生年金の配偶者に対する加給年金、これは老齢年金とは額は異なりますが、これについてと、老齢厚生年金の子に対する加給年金については、分けて考えたほうがよいのではないかと思っております。
以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、平田委員、お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
私からは、年金水準の示し方について、障害年金について、そして、第3号被保険者について申し述べたいと思います。
まず、年金水準の示し方について、検討例1は、年金があくまで現役期の報酬加入状況による個人の年金の合算であることが端的に分かり、とてもよいなと思いました。ただし、1のほうですけれども、現役期の報酬の並べ方、これは、今のように男女で分けるのではなくて、現役期の報酬が高い順に並べるようにしたほうがいいかと思います。報酬が多いほど厚生年金が増えることが視覚的にもよく見えると思います。
一方で、それが、今の男性の平均的な、あるいは女性の平均的な、を根拠に出していることは、残したほうがむしろよいと思っております。これまでのいろいろな歴史の中で、こういった差ができていることが見えることは、一つ大事なことではないかなと思います。これに関しては非正規も同じです。
その非正規に関して、非正規というか短時間労働者に関しては、平均的な収入だけではなく、1.25、0.75なのかは分かりませんが、少し幅を持たせて出したほうがいいのではないかと思います。実際の報酬に近い額の方が、当人にとって、よりリアリティが出やすいのではないかということです。
加えまして、これは現役期の平均ですので、今の収入がずっと続くかどうか分からないということで、収入が上がれば、あるいは、若い人でもこれから収入が上がるというようなことが示唆されるとよいかと思います。
2について、細かくシミュレーションを出していただいたことをすごくありがたく思います。これはとても分かりやすいです。ただ、さらに分かりやすいためには、もう少し整理をして、イラスト化したりチャート化したり、自分たちはどれかなとイメージしやすく提示をすると、国民一人一人が興味を持って、自分はどの辺かなと探したくなりそうだと思いました。
モデル年金という言葉に関しては「検討指標年金」など、実態に即した名称にするとよいと思います。
続きまして、障害年金についてです。
障害年金、公的年金は生きる土台となる仕組みだと思います。誰もが社会参加をして自己肯定感、自己効力感を感じながら生きられるものであることが重要だと思います。ですので、障害を負った人が安心して暮らせたり、年金があるために短時間の就労でも自分の生活が成り立つということは、そういった方々の社会参加につながるという面でとてもよく、その意味で、例えば障害厚生年金における延長保護、長期要件は認めたほうがよいと私は思っております。
その他論点に関しても、障害者の社会参加の観点を大事に考えたいと思っております。
最後に、第3号被保険者制度に関してです。
こちらについては、3号被保険者制度が、意図せず女性の働き方を不就労や短時間労働へ導いたこと、その結果として、先ほどの年金水準のところでも確認された男女差というものが出ている可能性もあるということを自覚して、ありたい未来のための制度として、今後どうやるべきかを検討することが大事だと思っております。
そのためには、まずは2号を増やして、3号あるいはこれは1号もですけれども、縮小していくというやり方。その縮小した、最後残った方が、先ほど是枝委員が、その人が強い人なのか弱い人なのかとおっしゃっていましたが、これはとても的確な表現だと思いましたけれども、その残った方々について、どのように対応していくかつまり対策が、よりクリアに見えてくるのではないかと思いました。
ただ、2号を増やす適用拡大について、時間要件をさらに拡大することに関しては、使用者責任とはどういうものかという国民的な議論が大事ではないかと私は思っております。
また、これは年金制度ではないですが、働きたくなる職場、仕事がもう少し働く人にとって働きたいと思えるような、社会全体や企業側の努力も必要なのではないかとも思っております。
一方、本当に支援が必要な人を切り分けて、3号ではない制度で支援していくということも、これは、本来的にはこうあるべきだと思うのですが、誰が支援対象なのかという見極めが非常に難しいということと、ここに関しては資産に踏み込まないと完全には実態に合わせられない難しさがあると思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、百瀬委員、お願いいたします。
○百瀬委員 私からは障害年金について意見を述べさせてください。
まず、直近1年要件についてです。
この措置というのは、85年改正前の旧法の規定を引き継いだものです。そこから40年が間もなく経過するわけですが、40年経過すると被保険者は全て入れ替わります。以前にも発言しましたが、この直近1年要件という特例措置は、歴史的な意義を終えたと思います。
また、この特例措置は、保険料を、過去に長期間滞納していたとしても、直近1年間さえ保険料を納付していれば年金を支給するという仕組みです。そのため、保険料を欠かさず納付している方から見れば、この特例措置は不公平だと受け取られる可能性もあります。
しかしながら、この特例措置によって受給につながるケースが、今も存在しています。また、これまで延長が繰り返されており、見直しの議論すらほとんどありませんでした。こうしたことから、少なくとも、次の改正では10年間の延長をすべきだと思います。
次に、初診日に関わる論点と事後重症の支給開始時期に関わる論点についてです。
第5回の年金部会で報告したように、現行制度の課題を解消するためには、この2つに関わって何らかの制度上の見直しが必要だと思っています。その一方で、見直しに伴う実務上の課題があり、慎重な検討が求められることも事実です。この点については、社会保険労務士、障害年金認定医、年金機構職員など、障害年金の実務に関わる専門家の意見を聞くことが重要です。先ほど原委員も発言されていたように、事務局で独自にヒアリングを進めて、実務上の課題を整理し、2巡目の議論のときに御提示いただきたいと思っています。
以上が今回御提示いただいた論点に関する意見です。
さらに、中長期的な課題を2つ挙げさせてください。
1つが、障害認定の基準とその認定方法についてです。
現行の基準は、医学モデルに偏っているのではないかという批判がございます。こうした批判も踏まえた見直しの可能性について御検討いただきたいと思います。
2つが、保険事故の発生時点についてです。
現行制度では保険事故の発生時点を初診日に置いています。そのことには一定の合理性があります。その一方で、初診日が20歳前にある方が20歳時点では障害要件に該当せず、厚生年金の被保険者として何年間も働いた後に症状が悪化し、障害年金の支給対象になるケースなどもございます。厚生年金の加入期間中に症状が悪化して、障害の状態に至ったとしても、初診日が20歳前にあれば、事後重症請求で受給できるのは30条の4、つまり所得制限付の障害基礎年金だけになります。
厚生年金の加入中に症状が悪化した場合などについて、保険事故の発生時点を初診日以外で捉えることはできないのか、実務上の課題は非常に大きいと思いますが、その可能性について御検討いただきたいと思います。
今お話しした中長期的な課題というのは、いずれも年金部会の守備範囲を超えているかもしれません。年金部会以外でも構いませんので、どこかで御議論いただきたいと思っています。また、もし、そのような議論の場があるならば、障害当事者の参加を御検討ください。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、途中から御参加いただいております、オンライン参加の堀委員から何かございますでしょうか。
○堀委員 どうもありがとうございます。
私からも3点申し上げたいと思います。
まず、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方ですけれども、今回示していただいて非常に分かりやすく国民がイメージしやすくなったのではないかと推測をしております。ただ、独り歩きする可能性もありますので、モデル年金という名前ではなく、何か名称を御検討いただければと考えております。
第2点目は、3号の件なのですけれども、適用拡大を進めるというのが、まずは現実的だと考えておりますけれども、3号のこの制度が持続可能かというと、それも大変難しいだろうと推測しておりまして、思い切って今般廃止し、手厚い経過措置や支援などを拡充して、ほぼ現状と同じような状態を保ちつつ、しかる後に、実質的に5年先、10年先に廃止状態とするといった方法も考えられるような気もしております。
その際には、先ほど資料にもございましたけれども、子育て支援の観点から、例えば末子が未就学児に限って免除するなどの子育て支援の観点からの検討も必要ではないかと考えております。
3点目ですけれども、加給年金の件ですが、委員の皆様もおっしゃっておられるように、基本的には廃止の方向に私も賛成なのですけれども、確かに、晩婚化などを踏まえますと、子供については一定の配慮も必要なのではないかと考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、最後に玉木部会長代理からお願いします。
○玉木部会長代理 ありがとうございます。
私からは、まず多様なライフコースにつきまして、1つコメントをいたしたいと思います。
資料の4ページに単身世帯の表がございます。私はこの表を見まして、改めて基礎年金の所得再分配効果が強いなと思ったところでございます。報酬は、①の54.9万円と⑦の14.2万円、4倍ぐらい違うわけですけれども、基礎年金があるがために年金額は1対2ぐらいに収まっているといった辺りは、低所得の方々へのよりよいメッセージとして使えるところかなと思うところでございます。
こういったいろいろな例を示すということの本来の目的、究極の目的というのは、報酬比例というもの、それから、固定額の基礎年金がある、この2つのパーツから年金は出来上がっているという基本的なメカニズムの理解の浸透にあるわけでございますので、何らかの形で年金の数字の出来上がり方といったものが分かりやすく伝わるような工夫がなされるとよろしいかと思います。
また、そういった示し方が一番強く訴求せねばならないのはどういった方々かなというと、例えば単身高齢者のような方々ではないかと思います。どうしても世の中に平均と言われるのは夫婦の場合が多いのですけれども、単身の方というのは、こういうことなのですよということが、より強く伝わるべきではないかと思います。いろいろな資料で、これからどんどん増えるということが出てございますけれども、高齢になってフレイルということが出てきたときに、夫婦でいる場合と単身でいる場合では、やはり弱さが違うのではないかと思いますので、年金に関して、単身高齢者になりそうな方は、事前により明確にビジョンを持っていただければと思うところでございます。
あと、3号について1つ申し上げますと、やはり適用拡大が行き着いた後、やるだけの適用拡大をした後の3号の姿といったものをまず考えて、そこから議論に入っていかないといけないのだろうと思います。短絡的に「3号はずるい」「不公平」といったところから出発して議論というのは、あまり生産的ではないでしょうし、なるべく早い段階で、それはよくないですよといったことが世の中に伝わってほしいところでございます。
また、参考資料1の27ページに、就業率の推移がコーホートごとに全然違うというのがございます。この折れ線グラフが色別で出ているものでございますけれども、これだと、今、60歳ぐらいの女性が生きてきた過去40年ぐらいの社会人生活と、今、20代、30代の女性がきた社会人生活は全然違うものになって、まるで日本という国が2つあるかのような感じがいたすところでございます。
また、資料1の32頁に3号についての論点が3つ出ています。中でも、3号になっている方が、どうして3号になっているのか、家事、育児、介護などの問題とか、いろいろな人の弱さが出ているところがございましたけれども、そういったところに十分着目した上で議論を進めていく、不公平だからシンプルに廃止とか、そういう議論ではなくて、適用拡大が行われることを踏まえた上での将来の3号の姿といったものを考えていくことが必要です。その際に、3号といっても、どなたからか「強い3号」と「弱い3号」という話がございましたが、強い3号への対処等につきましては、税とか、あるいは標準報酬の上限を上げるとかいろいろなやり方がありますが、弱い3号の救い方といいますか、包摂の仕方としては、今の3号という制度はなかなか効率的かなとも思うところでございます。
あと、障害年金なのですけれども、障害の発生の仕方が、かつては工場で機械に手を挟まれてしまったというように、非常に分かりやすいといいますか、単純な形で、しかも、加入している保険と牽連性がつきやすい形で発生することが普通だったのかもしれません。ただ、最近ですと、精神障害のように、働いている場所と障害の発生とがどのようにつながっているのか、少なくとも他人にはなかなか分からないといったところがございます。こういうのを見てみますと、ある程度、障害年金については、インクルージョン、包摂ということに少しウエートをかけて、今後の制度を考えていかなくてはいけないかなと思うところです。
ただ、そういうことをやりますと、無用のバッシングといいますか、どこかで線を引けば、そこからちょっと外れた人は、どこに線を引こうと必ずいるわけでございますので、線の内側の方々に対するいろいろな言説が飛び交いやすいところでございますので、こういったものを、なるべく可能な限り抑制して、安心な社会をつくっていくという点では、様々な広報が必要でありまして、それにつきましては、厚労省と年金機構にお任せというわけにはなかなかいきません。幅広い主体の粘り強い努力が必要かなと思うところでございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
これで一当たり皆様から御発言いただきましたが、追加で何か御発言がおありの方がおられましたら。
小野委員、お願いします。
○小野委員 手短にお話ししますと、せっかく権丈委員から何回も名指しされましたのでコメントさせていただきますと、権丈委員の資料の中の4ページを見ていただくと、財政検証の結果として、現在の年金給付水準というのが表示されています。このパターンというのは、今日御提示いただいているパターンの基本型に既になっているわけです。ですから、財政検証については、多様といいますか、年金給付水準ごとの給付額の示し方というのは、もう既になされているということで、論点としては、毎年度公表される今年の年金額はこうですと示される、その年金額をどのように示すかというのが具体的な論点になってきたのかなと私は理解いたしました。それが1点です。
それから、ついでで恐縮ですが、その次の5ページを御覧いただきたいと思います。
数字が細かくて恐縮なのですけれども、表の真ん中の下のほうに夫婦世帯の世帯構成というのがあります。これを横軸に沿っていきますと、収入の水準の低いほうから高いほうに並んでいるわけです。おやっと思うのは、この片働き世帯、これは実は収入の水準の低いグループのほうが片働き世帯の割合が高い。一番上に行きますと、むしろ片働き世帯よりも共働き世帯のほうが多いということになっておりまして、これは2016年の結果なのですけれども、これについては一点御留意いただきたいなということで指摘させていただきました。これを見るとダグラス・有沢の法則?というようなことをちょっと考えてしまう次第です。これに限らず、この資料は非常に興味深いことが入っていますので、ぜひ皆さん御覧になっていただいて、いろいろな発見があると思いますので、お勧めをしたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかには御発言のおありの方はいらっしゃいませんか。
よろしいですか。
では、駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 資料の追加をぜひお願いしたくて、女性の就業率は上がっているのですけれども、参考資料1の39ページを見ると、依然としてというか、これはどうなっているのか、トレンドがどうなっているのか知りたいのですが、L字カーブが依然と存在するわけですので、このL字部分がこれまでどうなってきたのかをデータで補ってもらいたいなと。過去のトレンドですね。L字が上に上がってきているのか、安定してしまっているのか。女性のキャリア形成に関して変わっているのかどうなのかを見たいと思います。非正規のままにとどまろうという人が依然として多いのか。このギャップがまさに非正規の部分ということになりますので、そこのところを時系列的にデータをそろえていただきたいなと思います。
あとは、先ほど、山田先生の分析で、高所得のところに3号がいるという話で、これはデータセットがどうつくられたのかというところがやや気になるところで、ダグラス・有沢がまだ残っているかどうかは、本来は機構の持っているデータで本当の姿をチェックできるのではないかなと思うのです。だから、これは数理部会でも本当はマイクロデータを使った分析が一番いいのではないかという話もありましたので、なかなか制約があるかもしれません。サンプルデータになるかもしれませんけれども、本当はどうなのかを見ていただきたいなと思います。
以上です。
○菊池部会長 是枝委員、どうぞ。
○是枝委員 この高所得な人ほど3号が多いというのは、コーホートによる影響と所得の影響が混ざっているように思います。年齢層の高い、前に生まれた世代、コーホートほど女性の就業率が低く3号の割合が高いのですけれども、今、50代である方、男性の賃金水準がライフサイクルの中で高い時期にあるがために、年収の高い人ほど3号の比率が高く見えるのですが、世代が下になればなるほど、ダグラス・有沢の法則の再現率が弱くなってきているようではありますので、コーホートで見るということが大事だと思います。
先ほども、駒村先生がL字カーブの形状についておっしゃっていたのですけれども、実際としては、若い頃、正規で働いていた女性が非正規に転じているというよりは、初職から正規雇用で働けるようになる世代が生まれてきていて、その世代は、子供を持ったり結婚したりしたとしても正規雇用で働けるようになってきているということなので、L字カーブは異なるコーホートの就業率を線でつないだものにすぎないので、コーホートごとに直面している状況は大きく異なる。若いコーホートにおいては、今のLの頂点の60ぐらいの水準が横にどんどん進んでいくという見通しを持っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
今のお二方の御意見、資料のおまとめもございましたが、いかがでしょうか。
○年金課長 御指摘、ありがとうございます。
データを確認しまして、それから、機構のほうもどれぐらい取れるのかという確認をしまして、御関心のもの、出せそうなものを用意したいと思っております。
○菊池部会長 よろしくお願いします。
この辺でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
今日も様々な御意見、御指摘等をいただきまして、ありがとうございます。これらを踏まえて、また事務局としてまとめに向けた資料づくり等をお願いできればと思います。
給付水準の示し方、男性、女性という捉え方自体の問題性について、多くの方から御指摘がございました。これをどう受け止めるかということもお考えいただきたいと思います。
あとは、百瀬委員からは、年金部会の範疇を超えるかもしれないけれどもという御指摘がありましたけれども、第5回の部会では、百瀬委員と福島参考人に広く、障害年金の障害の捉え方から御議論いただいたところで、今日は今回改正に向けての差し当たっての論点という形で示していただいたと思うのですが、障害年金の在り方という面では、百瀬委員がおっしゃられたような大きな視点も含めて検討が必要だと私も思っていますので、今後に向けた御指摘ということで受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
それでは、続きまして、もう一つ議題がございます。「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理(報告)」について御説明をお願いします。
○企業年金・個人年金課長 企業年金・個人年金課長の海老でございます。
資料2を使いまして、社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理の概要について本日御報告をさせていただきたいと思います。お手元の資料2を御覧ください。
資料2のは社会保障審議会企業年金・個人年金部会の中間整理の概要ということで、1ページめくっていただいて、まず2ページのところに目次があります。次のスライドで概要ということでまとめておりますので、こちらの3ページのスライド、概要を使って御説明できればと思います。
社会保障審議会企業年金・個人年金部会においては、働き方やライフコースの多様化、高齢期の就労拡大や企業年金の実施状況など、制度を取り巻く現状等を踏まえまして、令和5年4月から令和6年3月にかけて合計13回開催いたしまして、私的年金の検討課題について議論を行ってきているところでございます。先日、令和6年3月28日に中間整理という形で、これまでの議論を、一旦、各意見を取りまとめる形で整理をしておりますので、その内容について御紹介できればと思います。
3ページの項目、大きく4つ挙げております。
今回挙げている項目というのは、公的年金等も関わるようなお話について企業年金・個人年金部会において御議論がありましたので、そちらに関する項目を中心に概要を御紹介いたします。
まず、1つ目「公的年金と私的年金の連携」というところですけれども、こちらに関しましては、昨年12月、年金部会と企業年金・個人年金部会を合同で開催いたしまして、制度や広報・教育の在り方等について御議論を行っていただいたところでございます。こちらの議論の内容として、2つ目の○になりますけれども、公的年金と私的年金の役割分担、位置づけについて、連携・役割の在り方は柔軟に考えてよいという御意見であったり、あるいは公的年金をベースに議論するべきという御意見、あるいはその両者の関係についてさらに議論を深めていくべきという御意見がございました。こういったことについて中間整理に盛り込まれております。。
それから2つ目「拠出の在り方」に関してです。
拠出の在り方に関しては、資産所得倍増プランにおいて、iDeCoの拠出限度額の引上げについて検討し結論を得るということとされております。こういったことも踏まえまして、老後の所得確保の拠出限度額のために拠出限度額を引き上げるべきだというような御意見であったり、あるいは、若いときになかなかその枠を使い切れないという実態があるので、マッチング拠出の制限の撤廃やiDeCoの拠出の限度額の穴埋め型、あるいはキャッチアップ拠出、こういったようなものが有効であるのではないかといったような御意見。あるいは、企業・労働者間での格差の拡大の懸念や税の公平性といった観点から、この拠出引上げに関する水準について慎重に検討するべき、こういったような御意見が出ておりました。
また、3つ目「iDeCoの加入可能年齢の引上げ」でございます。
こちらも資産所得倍増プランにおきまして、iDeCoの加入可能年齢を70歳まで引き上げるために必要な措置を講ずるということとされていることも踏まえて議論を行っているところでございますけれども、iDeCoの加入可能年齢については、現在、iDeCoの加入者というのは、国民年金の被保険者であるというのが一つの要件として入ってございますので、こういった要件も踏まえつつ、公的年金制度の改正の議論も踏まえて検討すべきであるといったような御意見、あるいは、私的年金と公的年金の関係に関する踏み込んだ議論が必要なのではないかといったような御意見がございました。あるいは私的年金制度を、働き方や勤め先の違い、あるいは年金の加入状況といったものによって有利・不利が生じないようなシンプルな制度にしていくべきではないか、このような御意見が出ていたところでございます。
4点目「健全化法への対応」でございます。
厚生年金基金は、現在、4基金となっておりますところ、健全化法の附則第2条において、同法の施行から10年を経過する日、本年の3月31日までに存続厚生年金基金の解散等について検討し、速やかに必要な法制上の措置を講ずるものとされていたことを受けまして部会で議論を行ったところでございます。
2つ目の○になりますが、部会での検討の結果といたしましては、存続する厚生年金基金については受給者等の権利にも配慮しつつ、存続厚生年金が解散し、または他の制度に移行することを検討するよう求めている健全化法附則第2条の趣旨を踏まえて、諸課題に対する検討をさらに深めていくということとされております。
その際に、ほかの企業年金への移行等の在り方に関して、各厚生年金基金を設けている企業の労使自身が十分な時間をかけて話し合うことが重要であり、今後そのような取組を促すことが必要であると、このようなことが盛り込まれているところでございます。
参考資料2に中間整理の本文全体もつけております。企業年金・個人年金部会において、この中間整理を踏まえて、今年度年末に向けてさらに議論を深めていくこととしております。
概要の御説明としては以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
中間整理の中で公的年金についても言及をされているようですし、また、12月に合同部会も開催しているところでございます。皆様からの御関心もおありかと思いますので、報告事項でございますが、御意見・御質問などがございましたらお願いいたします。ここは個別に挙手で。
小野委員、駒村委員、お二人ですか。よろしいですか。まず、小野委員からお願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
健全化法の整理に関しまして、コメントさせていただきます。
私は合同部会で、自身の過去の発言を反省しつつ相当な覚悟を持って発言したつもりでしたので、中間報告のまとめ方というのは非常に意外だったということです。また、マスコミをはじめ多くの皆さんにとっても意外だったのではないのかなと思っております。必ずしも廃止というのを明示していないということですね。
恒久的な制度ではなくて、あくまでも経過的な存続にとどめるべきであるということは御認識いただいていますので、諸課題の検討というのは、計画を公表した上で制度廃止に向けて着実に実施していただくようお願いしたいということでございます。
あわせまして、過去の経済の混乱や低迷の中で、代行給付と免除保険料及び最低責任準備金の在り方については紆余曲折がありました。厚生年金本体との間で将来的に不都合なことが発生しないように、現在の設計や運営のフレームワークで十分なのかというのは、不断に検討をお願いしたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員 健全化法のところで、本則では残存基金を解散してとなっているのですけれども、今回の結論は、労使で十分な時間話し合ってということで、もう少し見守るという結論だということで、社会保険は税とは違いまして、給付と負担の対応関係が求められるとともに、やはり、社会保険自治という労使がきちんとこれに関わるということなので、この労使自治を大事にしているということはそうなのかなとは思います。
実際に、健康保険組合も、あるいは企業年金、DC、DBで労使の関わり方というのはそれぞれ違う部分があるとは思いますけれども、きちんと労使が現実において、そこにきちんと理解して関わっているならば、そこは非常に大事にしなくてはいけないところなのですが、厚労省は労使自身の議論というのは一応把握してモニターしているという理解でよろしいのでしょうか。そこだけ教えてください。
○菊池部会長 いかがでしょうか。
○企業年金・個人年金課長 今回の中間整理の健全化法の部分においても、労使で十分な時間をかけた話合いを進めていくということ、そういった取組について促していくということが書き込まれているところです。また、今回の中間整理で、先ほど小野委員からも御発言があったような、歴史的な役割をもともと終えているという点も記載されているところであり、こうした点も含めて各基金にきちんとお伝えをし、厚生労働省としても、検討の状況等についてウオッチをしていくということになろうかと思います。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
○駒村委員 ちゃんとその議論を把握した上で最終的には判断をしていくということであれば、単に任せてくれというだけではなくて、どういう議論が行われて、まだ残していただきたいというようなことになっているか把握されているならば、それは適切だと思いますので結構です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはよろしいですか。
玉木部会長代理、お願いします。
○玉木部会長代理 1点だけ。
企業年金・個人年金に関しましても、国民への広報は非常に大事だと思うのですけれども、これは広報を受ける国民からしますと、公的年金と企業年金あるいは個人年金、これはばらばらに説明されましても、受け止める側としまして非常にハードルが高くなってしまいます。人々に老後は1つしかございませんので、それに対して総合的に対処するという観点から様々な広報等を行っていきませんと、例えば労働組合の現場で、自分の会社の企業年金の説明をするだけでも大変でしょうし、それをさらに公的年金と相まってという形で説明しても非常に難しいところがあるかと思います。
さらに、公的年金はインフレ連動だけれども企業年金はどうなのかという辺りで、労働者の皆さんにとって非常に難度の高い説明をしなくてはならない面も多くなってくるのではないかと思います。
そういうことで、今回、様々な御議論をいただいてありがたいところなのですけれども、今後、公的年金と私的年金を併せた説明の方法、スキルあるいは公的年金だったら年金シミュレーターというイノベーションがあったわけですが、そういったものができてこないと、国民の老後への不安というのを解消するような広報というのはなかなか難しくなってくるのではないかと思いますので、これにつきましては、皆様にお願い、特に厚労省へのお願いなのですけれども、何とか両者にまたがったような方法、最近、金融経済教育推進機構のような制度的な新しい器もできておりますので、その辺を、使えるものは使って、新しいやり方を開発していただければと思います。これは私の全くの希望でございます。以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
原委員、お願いします。
○原委員 ありがとうございます。私からは参考資料に詳細がありましたが、2点簡単にコメントいたします。1つは継続投資教育についてです。
ここのところは、もちろん書いてありますけれども、継続投資教育については、例えば企業型DCで、企業で入っている方が、今後、離転職されることが途中であったとした場合に、その後、企業型DCをやっていない会社に行くと個人型に移るというわけで、そこで、結構現場などでは、事業主さんも、事業所登録などの手続き関係が伝わっていないということもあるかもしれません。そういったことも含めて教育・周知・広報というところとiDeCoの投資教育というところ、もちろん、今もやられているかと思うのですが、それにプラス公的年金というものも加えていただきながら、あわせて年金の教育というところにも絡んできますので、そこの部分もぜひお願いしたいと思います。
次に、これはちょっと離れるのですが、自動移換のところで、いわゆる塩漬け問題というものもあると思います。額も増えているとお聞きしておりますので、この辺りもどうするかというのは、やはり離転職・雇用の流動化というのもありますので、周知・徹底・広報ということもあるかもしれませんけれども、それも一段階やっていただいていると思いますので、もう少し踏み込んだところも考えていただければと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
よろしいですね。
ありがとうございます。幾つか御意見いただきましたので、今日事務局に来ていただいていますので受け止めていただき、企業年金・個人年金部会のほうに持ち帰っていただきたいと思います。
私も、以前の健全化法をめぐる議論から年金部会に参加させていただいておりまして、一連の経緯は承知しているところでございますが、それも踏まえ、今日も小野委員、駒村委員から御意見がありましたので、そういう意見が出たということは持ち帰っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
それでは、予定しております議事は以上で終了といたします。今後の御予定につきまして、事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や日時につきましては、追って連絡をいたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議は、少し早いですがここで終了させていただきます。大変お忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございました。