第7回働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会(議事録)

日時

令和6年6月11日(火)10:00~12:00

場所

東京都港区新橋1ー12ー9
新橋プレイス AP新橋 3階 Aルーム
 

出席者

会場出席構成員
オンライン出席構成員

議題

意見交換を踏まえた論点整理

議事

議事内容

○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 定刻になりましたので、ただいまより、第7回「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、本日もお忙しい中で御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 まず、構成員の異動につきまして御報告いたします。
 本日までに、酒向構成員が御退任され、新たに清家構成員に御就任いただいております。清家構成員、よろしければ一言御挨拶をお願いいたします。
○清家構成員 経団連の清家と申します。
 本日よりこの会に参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 ありがとうございました。
 次に、構成員の出欠状況を報告いたします。
 佐保構成員より、御欠席との御連絡をいただいております。
 伊奈川構成員、海老原構成員、清家構成員は途中退席される御予定です。
 嵩構成員、松浦構成員、松原構成員はオンラインでの御参加です。
 佐保構成員の代理として日本労働組合総連合会の本多様に御出席いただいております。本多様の御出席につきまして、懇談会の御承認をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 ありがとうございます。
 なお、事務局につきましては、保険局長の伊原は公務により欠席しております。
 また、大臣官房審議官の武藤、保険局総務課長の池上、年金局事業管理課長の水野は遅れて参加する予定となっておりますので、御了承ください。
 続きまして、資料の確認をいたします。
 本日の懇談会はペーパーレスで実施しております。傍聴の方は厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
 本日の資料は、資料「意見交換を踏まえた論点整理」。
 参考資料1「関係団体へのヒアリングにおける主な意見」。
 参考資料2「被用者保険の適用拡大 参考資料集」でございます。
 事務局からは以上でございます。以降の進行は菊池座長にお願いいたします。
○菊池座長 皆様、おはようございます。
 本日も、大変お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 カメラの方はおられないですね。
 それでは、早速、議事に入らせていただきます。
 本日は「意見交換を踏まえた論点整理」を議題といたします。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 お手元の資料「意見交換を踏まえた論点整理」を御覧ください。
 第5回、第6回で、ヒアリングを踏まえた意見交換を行っていただきました。2ページ目から10ページ目まで、いただいた意見を整理して記載をしております。こちらの説明は省略いたします。
 11ページ目を御覧ください。
 「被用者保険の適用に関する基本的な視点」ということで、意見交換でいただいた御意見などを踏まえまして、おおむね共通認識となっていると思われる基本的な視点についてまとめたのがこのページでございます。
 3つ挙げておりまして、1つ目は「被用者にふさわしい保障の実現」です。短時間労働をはじめとした様々な雇用形態が広がる中で、特定の事業所において一定程度働く労働者については、被用者による支え合いの仕組みである厚生年金保険・健康保険に包摂し、老後の保障や万が一の場合に備えたセーフティーネットを拡充することが重要ということです。
 2つ目は「働き方に中立的な制度の構築」です。短時間労働者の方が、いわゆる「年収の壁」を意識した就業調整をすることなく、働くことのできる環境づくりが重要。
 また、被用者保険への加入は、保険料負担が生じるものの、労働者にとってメリットがあることを分かりやすく発信していくことが必要ということです。
 3つ目は「事業所への配慮等」です。適用拡大の対象となる事業所においては、事務負担が増加するとともに、新たな社会保険料発生に伴い経営の影響があると懸念されることから、そうした点に配慮しつつ、円滑な適用が進められる環境整備が必要。
 また、保険者の事務負担や保険者が分立する医療保険制度の在り方に与える影響も踏まえながら検討を進める必要ということです。
 12ページ目を御覧ください。
 12ページ目は「短時間労働者に対する被用者保険の適用の在り方」についてです。
 短時間労働者に関する4つの要件ごとに論点を整理しております。
 まず、「労働時間要件」につきましては、最低賃金の引上げや雇用保険の適用拡大などを踏まえ、本要件の引下げが必要との意見がある一方、事業主と被用者や、被用者同士の関係性に基づく、相互の支え合いの仕組みである被用者保険において保障すべき被用者をどのように捉えるかという論点も指摘されている。また、事業所における事務負担増加など、実務面での課題も想定される。こうした点も踏まえ、見直しの必要についてどのように考えるか。
 2つ目が「賃金要件」です。さらなる適用拡大を進める観点から、本要件の引下げが必要との意見がある一方、国民年金保険料とのバランスを懸念する意見もある。また、短時間労働者にも賃上げの動きが広がる中で、本要件を意識した就業調整が行われていることや、最低賃金の高い地域においては週20時間働くと本要件の水準も既に超えている状況にあることも留意する必要がある。こうした点も踏まえ、見直しの必要性についてどのように考えるか。
 3つ目が「学生除外要件」についてです。短期間で資格変更が生じるため手続が煩雑になるとの考えの下、適用除外としている取扱いに一定の合理性があるとの意見や、学生を被用者保険の適用対象とする意義がどの程度あるかという論点が指摘されている。一方で、学生にとって、国民年金の学生納付特例制度を活用した後、数年分の保険料を追納することは負担が大きいのではないかとの指摘もある。こうした点も踏まえ、見直しの必要性についてどのように考えるか。
 このページ最後が「企業規模要件」についてです。働き方に中立的な制度を構築する観点から、経過措置である本要件は撤廃の方向で検討する必要があるとの意見が多い一方、中小事業所への経済的・事務的負担や人材確保への影響が懸念されるため、必要な支援策(例えば、専門家による事務支援、準備期間の確保等)を併せて講じる必要性も多く指摘されている。こうした点も踏まえ、見直しの必要性や、仮に見直しを行う場合に必要な具体的支援についてどのように考えるか。
 このページは以上でございます。
 13ページ目を御覧ください。
 「個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方」についてです。
 こちらは、働き方に中立的な制度を構築する観点や、日本の産業構造が変化してきたことなどから、非適用業種を解消する方向で検討を進める必要性が多く指摘されている。一方で、新たに適用となる事業所の事務負担・保険料負担が懸念されるため、仮に見直しを行う場合には十分に配慮しつつ進めることが肝要であり、特に5人未満の事業所への適用は、対象となる事業所が多く把握も難しいことや国民健康保険制度への影響が大きいことなどが懸念されるため、慎重な検討が必要との意見もある。こうした点を踏まえ、見直しの必要性をどのように考えるか。
 最後、14ページ目を御覧ください。
 「多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方」についてです。
 まず、「複数の事業所で勤務する者」についてですが、複数事業所での勤務時間等を合算すれば適用要件を満たす者について、事業所側で複数事業所勤務の状況を把握するのが困難であること、医療保険者の事務負担が大きいことなど、実務的な課題が多く指摘されている。この点については、雇用保険での試行状況を踏まえて検討するべきとの意見や、マイナンバーやIT技術の活用なども視野に入れて検討するべき、まずは現行の適用事務の合理化を進めるべきとの意見がある。
 また、事業主が保険料を拠出する責務があるか、被用者としての実態を備えているか検討する必要性も指摘されている。こうした様々な論点についてどのように考えるか。
 最後が「フリーランス等」についてです。フリーランスの働き方や当事者のニーズは多様であることから、まずは、労働者性の概念をどう整理するかが必要であることが多く指摘されており、労働法制における議論の状況などを注視し、それを踏まえて検討を進めるべきとの意見がある。労働者性が認められる場合でも、フリーランスは雇用の流動性が高く、医療保険では保険者の確定が難しくなる可能性や、従来、労働者性の判断には時間がかかっている点に課題があるとの指摘もある。
 また、労働保険と異なり、皆保険・皆年金であることに着目して、労災保険の特別加入のような別途の仕組みは慎重な検討が必要とする意見や、国民健康保険や国民年金を充実させる方向も併せて検討していく必要との意見、制度間を有利に移動することのない仕組みを構築する必要があるとの意見なども挙げられている。こうした様々な論点についてどのように考えるかということでございます。
 こちらの論点整理の資料も踏まえながら、本日、さらに議論を深めていただきたいと考えております。
 事務局からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして御意見、御質問をいただきたいと存じます。本日、取りまとめに向けて御議論の時間を長く取らせていただいておりますので、どうぞ御自由に御発言ください。
 先ほど御紹介がございましたように、清家構成員、伊奈川構成員、海老原構成員が途中御退席を御予定ということですので、よろしければお三方からまず口火を切っていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 清家構成員、よろしければどうぞ。
○清家構成員 本日からの参加でございますが、最初に発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私からは2点申し上げたいと思います。
 まず、11ページ目、先ほども御説明がありました基本的な視点でございます。共通認識ということにつきまして、我々もその認識でありますが、3つ柱が立っているうちの、上の2つ「被用者にふさわしい保障の実現」「働き方に中立的な制度の構築」は、今後目指すべき姿という受け止めをしております。さはさりながら、その具現化に当たりましては、3つ目にあります「事業所等への配慮」と、この点は今までも申し上げてきましたように、対象となる事業所や保険者の皆様方の事務負担であったり、経営への影響であったり、様々配慮すべき事項があると、そういった受け止めをしております。
 その上で、2点目として個別の論点、12ページから14ページ目でございますが、個々の中身というよりは、例えばこういう整理の仕方をしてはどうかという点でコメントをさせていただきます。
 5年前、2019年、働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会の取りまとめの当時と比較しまして、先ほどの基本的な視点にもあります、さらに適用拡大を進めることへの理解はされてきているのではないかという認識を持っております。こういった状況も踏まえますと、より現実的な対応も一層意識して、今回幾つか個別の論点がございますが、ある程度濃淡をつけて取りまとめてはいかがかと考えております。例えば1つ目に今回の改正で取り組むべきもの、2つ目として、現行の実務であったり様々な角度から懸念や課題等が指摘されておりますので、中期的な検討が必要なもの、さらに3つ目として、より本質的な課題がある、労働分野での制度改正の施行とか検証、あるいは検討状況を見守る必要があって、さらに時間をかけて検討すべきものといった形で整理していただくというのも一案なのではないかと考えております。
 なお、繰り返しになりますが、仮に今回の改正で取り組む事項であったとしても、対象となる事業所等への十分な配慮が必要であるという点は改めて申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 伊奈川構成員、いかがでしょうか。
○伊奈川構成員 ありがとうございます。
 論点が幾つかありますけれども、まず基本的な視点、論点整理1に関してであります。今回の検討は恐らく働き方に中立ということがキーワードだと思いますけれども、それをどう実現するかということに関しては、いろいろな選択肢があるのではないかと思っています。そういう点から言いますと、労働者あるいは被用者を1つの制度、今回の場合であれば被用者保険のほうに寄せていくというのが第1の選択肢ではありますけれども、負担と給付の水準や、その範囲というものをそろえていけば、実質的には制度間の差はなくなるわけですので、考え方によっては、制度間の格差縮小というのも中立的な方向に沿うのではないかと考えています。
 次は文言に関してなのですけれども、11ページを拝見しますと「被用者による支え合い」というふうに冒頭書いてありますけれども、私が思いますには、被用者保険というのは被用者だけではなくて、事業主も含めた支え合いではないかと思いますので、被用者、事業主の連帯といいましょうか、支え合いという点で、事業主も入っていたほうがいいのではないかなと思いました。
 あと、適用拡大そのものにつきましては、政府管掌でない医療保険の特質ということについては既に発言しておりますけれども、今後重要だと思いますのは職場を通じた健康の維持・増進ということで、特に特定健康診査や保健指導に関してはインセンティブ制度というものも入ってきておりますので、そうなりますと職域、事業主を通じたいろいろな働きかけ、取組というものが重要となると。その辺りも意識しておく必要があるのではないかと考えております。
 次に、資料では短時間労働者、あと個人事業主、そして複数事業所といったように論点が分かれていますけれども、相互に関係する部分があるのではないかと考えています。例えば労働時間要件と賃金要件の関係について言いますと、現在、最低賃金の引上げが大きな政策の方向、流れとなっていることからすると、同じ労働時間であれば、就業調整がなければ標準報酬も上がっていくわけでありますので、健康保険の場合ですと5.8万円という、もともと最賃とか、あるいは4分の3基準との関係で設定されたと承知しておりますけれども、その辺りのことも踏まえて考えておく必要があるのではないかと思います。
 そうなりますと、年金の場合もそうかもしれませんけれども、下げるというよりは、標準報酬の下限については、むしろ最低賃金が上がっていくのであれば上がっていくということもあるわけでありますので、そういったいろいろな政策の全体の中で考えていくべきだろうと考えます。そうなりますと、特に今ある5.8万円の辺り、参考資料を拝見してもそれなりの数がありますので、その辺りの実態もよく検討する必要があるのではないかと思っております。
 もう一つ、労働時間の関係も、それを引き下げるとなりますとさらなる就業調整ということになり、そして複数事業所勤務も増える可能性もあります。複数事業所の場合は標準報酬の合算という問題がありますので、もしそういうことになれば、最低賃金を上げたとしても低いままの標準報酬の人が出てきてしまうということで、人の行動に関することなのでなかなか先は読めませんけれども、雇用保険の労働時間の引下げという法改正もすぐ施行ではないと思いますので、少し状況を見極めたほうがいいのかなと思っています。
 あと、企業規模要件の関係ですけれども、資料にもありますように、影響を受ける業界に対する支援とか配慮というものが必要だと思いますが、中立性という点から言えば撤廃していく方向が筋なのだろうと思っております。その場合、労働時間要件も同時に見直すとなりますと影響がかなりあるということで、何を優先すべきかといえば、企業規模要件かなと思います。
 個人事業所の適用業種についても、前回も述べましたように解消していくのが時代の流れであるわけですけれども、5人未満の適用の改正のときもそうですが、何をどの順番でやっていくのか、その辺り業界の事情を踏まえて丁寧に対応していく必要があるのではないかと考えております。
 以上であります。
○菊池座長 ありがとうございます。
 海老原構成員、いかがでしょうか。
○海老原構成員 今回の会議は非常に勉強になりました。
 幾つか話をさせていただきたいのですけれども、私はやはり納得いかないことに関してなくしていくべきだとは思っております。伊奈川先生の意見とはかなり重なるのですけれども、まず1個目は、何度も出ていますけれども、標準報酬5万8000円という枠です。8万8000円以上というくくりがあって、最低賃金の関係もあって、時間要件もあって、5万8000円というのがなぜ出てくるのか、ここが分からないのです。事務局の方に質問したいのは、5万8000円~8万8000円までのところにどんな方が入られているのか、一度見せていただきたいです。内容が納得いかないものであったら、これは早急に変えるべきだとは思っています。
 2つ目は、何といっても伊奈川先生とやはり重なるところですけれども、個人事業主の方で5人以上なのになぜか社会保険に入らないで済んでいる事業所がかなりある。これは納得がいかないので、話の中でも相当出てきたので、これはすぐにでも変えていってほしいところだなと思っています。
 3つ目も納得いかなかった点ですけれども、多様な働き方という言葉をうまく使って、義務を逃れるのか、このような考え方をする人たちがいるのではないかなというのは私のすごく不安になっているところです。特にフリーランスの件で考えれば、フリーランスは被用者性の強いフリーランスと事業者性の強いフリーランスの2つに分かれるのに、これがごっちゃになって多様な働き方でという話になっているのは違うだろうと思っています。被用者性の強いところに関しては、被用者として権利を持つべきだし、事業者性の強いところは、事業者としての義務を負うべき、当然のことがごっちゃになっているのは非常に納得がいかなかったです。
 あと、今の世相や今後のことも考えての話で、皆さんと同じ話ですけれども、規模要件のところは、今回、撤廃を非常に前向きに進めていただきたいなと思っています。将来的にシームレスな仕組みができるときの一つのネックになる土台がここにできてしまうといけないから、そういう意味でも、ここはなくしておくべきではないかなと思っております。
 最後に、これは蛇足なのかもしれないのですけれども、もともと日本は、というか世界中、労働者が多くて、企業が少なくて、だから企業を保護しないと失業者があふれてしまうという観点で、政策は結構強めに企業保護があったと思うのです。今は労働者が不足して、企業のほうが余っている状況になってきています。労働者が企業を選択する時代になってきているときに、社会としての責任を果たせない企業をどう守るかという話は少し古くなっているのではないかなとは思っております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 5万8000円~8万8000円のところでお尋ねがありました。いかがでしょう。
○山下保険局保険課長 保険課長でございます。
 今、海老原構成員からありました標準報酬月額の下限5.8万円のところにつきましては、確かに厚生年金と違って健康保険の標準報酬月額の最低等級は5.8万円になっています。これは平成18年の健康保険法の改正におきまして、労働日数や労働時間が正社員の4分の3であるパートタイム労働者を想定して、当時、平成17年の最低賃金水準を踏まえて設定されました。ちなみに平成17年に最低賃金だった都道府県は佐賀県などでありまして、実際そのときの時給は608円という前提で計算をしておりました。
 一方で、今となっては、令和5年度の都道府県別の最低賃金の最低額は岩手県、893円ということで、結構上がっております。昨今の最低賃金の上昇を踏まえますと、5.8万円という額についてどう考えるのかというのは、まさに海老原構成員の御指摘のとおりだと思っております。
 参考資料の46ページにありますけれども、こういった方々は26.4万人いらっしゃる。協会けんぽのほうには25.6万人、健保のほうには7,000人いらっしゃるということなので、この方々が一体どういう方々なのか、これはしっかりと把握して、その上で検討をしていきたいと思っています。ですので、今は人数だけしか資料がないのですけれども、御指摘を踏まえて、どういう方がいらっしゃるのか少し調べさせていただきたいと思っています。
 御指摘ありがとうございます。
○菊池座長 海老原構成員、いかがですか。
○海老原構成員 期待しております。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、恐らく全員の皆様から御発言いただけると思うのですが、どなたか口火を切ってくださる方がいらっしゃればと思います。
 それでは、五十嵐構成員、そして秋山構成員、池田構成員といった順番でお願いできればと思います。五十嵐構成員、お願いします。
○五十嵐構成員 今日は、これまでのおさらいのようなことを申し上げる形になってしまいますが、よろしくお願いいたします。
 我が国の社会保障は保険制度ですので、保険料を負担する支え手を増やすことは制度の安定性確保の観点から重要であり、被用者保険対象者の拡大という方向性を理解しております。他方、適用拡大によって、中小・小規模事業者において保険料や事務の負担が増えるため、事業者にどう納得のいく説明をして、理解してもらうかを考えることが重要だと考えています。
 まず、規模要件について、厚労省の資料によれば、従業員50人以下の企業にこれを拡大すると、対象となる従業員数は130万人ほどと推定されているようですが、それは従業員数であって、その方々の勤務先である事業者数も相当な数になるのではないかと思われます。そうした事業者への負担の影響度合いを測りながら進める必要があるのだと思います。何より経営の予見性の観点から、改革するのであれば先々のスケジュールを示して進めることが必要です。
 また、いま申し上げた規模感も重要だと思っております。中小企業基本法における小規模事業者の定義は、製造業は20人、小売・サービス業は5人で線引きされています。段階的な拡大も視野に入れて、丁寧に検討を進めるべきではないかと思っております。
 次に、週20時間となっている時間要件についてです。消費者が求めるサービスは今、細かく個別化されています。それに対応しようとする事業者側と労働提供側である人々の働き方の多様化が相まって、サービス業界では、労働者の就業時間管理はかなり煩雑になっています。そうした中、時間要件を引き下げた場合には、手取り収入減を避けたい人の就労時間調整が増え、また、事業者においては、人手不足感が強まってさらに人を雇わなければいけないというような悩みや、労務管理業務が増えることになります。事業者の中には、そのために利益が吹き飛ぶような事態が生じるということを聞いております。一部かもしれませんが、そういう会社が確実にあります。時間要件の引下げは慎重に検討していただくほうがいいのではないかと思っております。
 これと同じような問題は、マルチワーカーやギグワーカーなど、複数事業所に勤務する人への保険適用に関しても生じています。現行の適用事務の仕組みを大幅に改善することが優先課題だと思います。そのために、例えばこれまでもお話が少し出ていましたが、マイナンバーの活用が有効であるのかどうかを、まずは検討してみるということが必要なのではないかと思います。
 次に、賃金要件です。年収の壁と関わる問題ですけれども、壁の額は、引き上げても引き下げてもそれによって生じる不整合をなくすことはなかなか困難なのだろうと思います。以前の会議でも意見が出ていたと思いますが、今、額を動かす積極的な理由は見つからないと思っております。
 さらに個人事業所の適用・非適用については、その業種が定められた当時と現在とで各業界の状況がどう変わったのか、あるいは変わっていないのか、それを明らかにして検討することが必要なのだと思います。
 社会が変化しているということで言えば、被用者性の問題も同じです。他の研究会で議論されているようですので、ぜひその議論を待ちたいと思います。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございました。
 それでは、秋山構成員、お願いします。
○秋山構成員 健康保険組合連合会の秋山でございます。
 今回の懇談会を通じまして、改めて全体的な捉え方として、今後の本格的な人口減少に伴い、就業者の減少が懸念される中で、社会保障制度維持の観点からも、担い手を増やしていくことが必要であると考えます。また、働き方の多様化の進行を踏まえると、勤め先の規模や業種にかかわらず社会保障を享受できる制度の構築は皆保険制度の充実につながると考えられますので、こうした点から、企業規模要件を撤廃すること、また、常時5人以上雇用する個人事業所の非適用業種の解消の方向性は理解できるものと考えます。
 ただし、繰り返しにはなりますが、さらなる適用拡大によって、特に短時間労働者を多く抱える業種や非適用業種の解除によって、対象となる健保組合の財政的な負担が増えることを危惧しております。適用拡大を進めるに当たっては、詳細な財政影響を試算するなど、けんぽ組合の財政影響に十分留意し、必要な財政支援が不可欠であると考えます。
 また、労働時間要件については、被用者としての実態が備わっているのかどうかが判断基準とされると整理されておりますけれども、被用者保険におきましては、保険集団としての連帯感という観点からも、週40時間労働の半分以上、そこの事業所で働いているという現行の要件は妥当であると考えています。
 これと関連しますが、複数事業所で勤務する者の適用については、事業所を単位として、被用者としての実態を備えていると言えるのか、また、保険者が労働時間を合算するなど事務的な課題も多いことから、これについては慎重に検討していただきたいと考えております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 池田構成員、いかがでしょうか。
○池田構成員 ありがとうございます。国民健康保険中央会の池田でございます。
 ただいま本日の資料につきまして事務局から御説明がありましたけれども、前回の懇談会で申し上げました、私ども国保サイドからの重要な問題提起が書き込まれていないようなので一言申し上げたいと思います。
 前回の懇談会で申し上げましたのは、被用者保険の適用拡大がなし崩し的に進められた場合、地域の連帯感を基礎とした国保の保険者機能の発揮が困難となることが強く懸念されるということであります。そこで、少なくとも医療保険制度においては、保険者機能の発揮という観点から、被用者保険の適用拡大には一定の歯止めが必要であるということを申し上げたところでございます。
 しかしながら、今、申し上げましたことですけれども、被用者保険の拡大をなし崩し的に進めるのではなく、どこかで歯止めをかけるべきという国保サイドからの重要な主張が本資料に記載されていないことについて、大変遺憾に思っております。ぜひ、こうした主張がなされたことはきちんと受け止めていただきたいと思っておりますし、この資料にも書き込んでいただきたいと思います。
 また、これも既に申し上げてきているところではありますけれども、どこで歯止めというものをかけるのかということについての議論が必要だと思います。そのためには、例えば国保に対する財政的影響だけではなく、被保険者の年齢構成がどうなるのか、あるいは被保険者の方の所得の状況がどうなるのか、あるいは、国保の場合は大変大きな規模の保険者から小さな規模の保険者まで様々でございますけれども、個々の保険者の規模がどうなるのかといった国保に対する影響分析をしっかりとやっていただくことが前提になるということを申し添えたいと思います。
 さらに適用拡大の具体案の取りまとめに当たりましては、国保の関係者への十分な説明と協議を行っていただくということを要望させていただきます。このまま適用拡大の議論がなし崩し的に進んでいくことには重大な懸念を持たざるを得ず、慎重な検討をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 以前の御発言がこのまとめに反映されていないという点は、大変失礼いたしました。受け止めさせていただきます。
 それでは、川又構成員、お願いします。
○川又構成員 ありがとうございます。協会けんぽの川又です。
 本日お示しをいただきましたこの論点整理につきましては、これまでのこの懇談会での議論を適切にまとめられているものと考えております。
 その上で、適用拡大の対象者は、主として我々協会けんぽのほうに加入することとなると思われますけれども、その際、医療保険の保険者として、先ほど国保の話もありましたが、協会けんぽとしても保険者機能というものを十分確保できる仕組みとしていくという論点が非常に重要であると考えています。
 被用者を対象とする医療保険でございますが、事業所を単位として、事業主と加入者との一定の関係性を基礎として成り立っているということで、そういう意味で、被用者としての実態があるということは重要なところと考えております。
 医療保険の保険者としても、医療費の適正化でありますとか、加入者の健康づくりという観点から、保険者機能を発揮するということで、努力をしているところでございます。レセプトの点検、医療費通知、ジェネリックの使用促進などに加えまして、事業主の協力を得て、特定健診や特定保健指導などのフォローアップをさせていただいておりますし、最近では健康宣言の事業所ということで推進をしたり、あと我々協会としては事業所健康度診断カルテというものをつくっていまして、その事業所の従業員の健康状態、医療費の状況などをチャート化して、例えばその業界の平均でありますとか、その都道府県の平均と比較できるようにするとか、そうした取組を行っておりまして、事業主と保険者が協働して健康づくりを進める、コラボヘルスと呼んでいますけれども、そうした取組を進めて効果が現れていると思っておりますので、こうした保険者機能としての意義は非常に大きいと考えています。
 そうした観点から、各論についてコメントさせていただきます。
 まず、1点目の短時間労働者への適用拡大でございますけれども、現在進められている拡大の効果、あるいは実務への影響を踏まえて、企業規模要件については撤廃する方向で検討することが適当ではないかと考えております。
 ただ、一方、労働時間要件、20時間の要件、あるいは賃金の要件については、先ほどの御意見にもございましたが、被用者としての実態、そういう観点から慎重な検討をお願いしたいと思います。
 2点目の個人事業所については、常時5人以上を使用する個人事業所については適用拡大の方向としつつ、ただ、対象となる様々な業種のそれぞれの事情とか御意見にも留意して、丁寧な対応をお願いできればと思います。
 3点目、複数事業所で勤務する者、あるいはフリーランス等につきましては、業務の形態が非常に多様であります。また、保険者としては適用、徴収、あるいは給付といった実務的な負担を考えますと、現段階におきましては、一律に対応を進めることはなかなか難しいのではないかと考えております。
 なお、全体を通じまして、今後具体的な制度の見直し案を策定するに当たりましては、それぞれの保険者への財政影響をお示しいただくように、重ねてお願いをさせていただきます。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、サイドが替わりまして、土井構成員からお願いします。
○土井構成員 ありがとうございます。
 資料の11ページ以降の論点整理について、過去の発言と重複してしまう部分もございますが、1つずつコメントをさせていただきたいと思います。
 まず、冒頭書いてある被用者にふさわしい保障の実現ということにつきましては、我々事業者サイドにとっても非常に重要であるということを今回の懇談会を通じて改めて認識させていただいたところでございますし、規模の大小、経営形態にかかわらず、これからの経営についてこういったことを意識する必要性が増していると思います。
 ただ、その前提として、それを企業としてやっていくためには、社会保障のほうがしっかりとした制度になっているということが必要だと思います。事業者としても、従業員に対して新たに適用するに当たり、入ったほうがいいよと勧められるということが重要かなと思っております。
 その点では、次の働き方に中立な制度の構築といったところは、まだ道半ばかなと思っております。こちらには「『年収の壁』を意識した就業調整をすることなく」と書いてありますが、残念ながら5年前に比べて、ヒアリングを通じても就業調整の影響が非常に増していると感じています。これについて、適用拡大をしたときにさらに就業調整が多くなり、人手不足の折、かえって労働時間が短くなるといったことにならないように検討する必要があると思っております。
 また、適用拡大に当たっては、今は適用されていない方に入りたいと感じていただくことが大きいと思っております。年金制度についてはメリットが大きいとは思っておりますが、医療保険制度については、残念なことに、扶養を外れて適用となったときのメリットをどの程度、我々事業所としても説明できるのかという点は甚だ疑問でございます。つまり、傷病であるとか出産の手当、被用者保険ではこれが増えるということですが、就業調整されている方の年代、収入を考えると、それをどこまでメリットと感じていただけるのかなといったところもございます。
 また、現役世代から見ると、今、支払っている保険料のかなりの部分が高齢者の支援に回っていて、わざわざ扶養を外れて入ろうと本当に思う制度になっているのかといったことについては、先ほどから保険者の方からいろいろ発言もいただいておりますが、医療保険側できっちり検討していただきたいと思っております。
 続いて、事業所への配慮でございます。適用拡大がどのようになるのかといったところはございますが、いずれにしろ適用拡大をするのであれば、先ほど五十嵐構成員からもお話がございましたとおり、一番規模の小さい層への適用といったことになりますので、こちらに書いていただいているように、十分な配慮をいただきたいと思っております。
 十分な配慮の内容でございますけれども、3つに分かれるかなと思っております。1つには、実質的に新たに適用される方の分の保険料の負担、事業主負担が当然増えますので、企業はその原資を捻出しなければいけないといったことになります。そうなってくると、生産性の向上といったところが欠かせないと思っております。国のほうの支援策ということで、適用拡大をするとキャリアアップ助成金等で御支援をいただいているところでございますが、単純に適用だけということではなくて、原資を稼ぎ出すための支援ということで、例えば業務改善助成金のような生産性向上のための支援も拡充をいただきたいと思います。何とか適用拡大の対象となる企業が、新たに負担に耐えるための原資を稼ぐような形の御支援をいただければと思います。
 続いては事務負担の面でございます。負担については、新たに初めて適用になる事業所、それから、今いられる方で適用の範囲が増えて事務量が増える、この2種類あると思います。適用の範囲が増えるところについては、既存でも事務を実施しているため、それほど大きい事務負担ではないように見えますが、昨今、人手不足で、その事務を行う人員の増員であるとか、そういったところはかなり難しくなっておりますので、その点の支援をお願いしたいことと、新たに適用になる事業所については、一からこの事務をやらなければいけないということになりますので、それに対する専門家の方であるとか、年金事務所さんとか、保険者の皆さんとか、そういったところの支援の強化をお願いしたいと思います。
 十分な配慮についての最後でございますが、現状、新たに適用を検討されている層に対して、まだ認知度が非常に低いなと思っております。そういった意味では、仮に適用拡大をするに当たっても、十分な周知期間というか適用までの期間をできるだけ長く取っていただきたいということと、先ほど五十嵐構成員からもあったように、段階的に適用していくことも御検討いただければと思っております。
 続いて、ちょっと長くなっておりますが、個別論点についても申し上げたいと思います。
 労働時間、要件賃金要件、この2つについて先ほどから、お話しが出ておりますように、最低賃金が非常に上がっております。数字で申し上げますと、平成26年~令和5年までの10年間で約29%上がっております。もう一つ申し上げると、実質賃金はもっと上がっているわけです。例えば東京の最低賃金は1,113円ですけれども、その額では今、パート労働者の方は来てくれない。先日、中央最低賃金審議会委員で、ちょっと前まで、最低賃金額が全国最低だった県に視察に行ってきたのですが、そちらでも、今、パートさんを募集するときは、基本時給1,000円は行きますよということで、最低賃金プラス100円以上の相場になっている状況でした。そういったことを考えると、自動的にこの二つの要件で適用とならない方の範囲は狭まってきたし、政府の最低賃金を2030年代半ばまでに1,500円するという目標を考えると、これからも狭まってくると思います。その中でこの2つの条件をいじると、ただでさえ就業調整で混乱している現状を、制度の改正によって更に悪化させてしまうといったことになりますので、この2つの要件をいじるということは、今回は非常に慎重に考えなければいけないなと思っております。
 続いて、企業規模要件でございます。先ほどと重複いたしますが、50人以下の層への適用の検討をしているわけですが、これぐらいの規模であると、いわゆる総務部門があるかないかといった規模となります。年金・医療保険の事務を担当されている方も、経理からいろいろな業務を全て独りでやられている場合も多く、そういった企業の規模であるといったこと。あるいは、専門家にお願いをするといったことについても、費用の面、それから実質的にお願いできる専門家が世の中にはそれほど多くないという状況も考慮するべきだと考えます。例えば、社会保険労務士さんがこの分野では専門家ですけれども、士業の中でも絶対数は少ない方ですし、そのうえ、企業内社労士さんが多いので、これだけ多くの数が適用拡大になったときにどこまで御支援いただけるのかといった点については、事業者側からは大きな懸念を持っております。こういったことも含めて、先ほど申し上げたように、適用拡大については、慎重に検討していただければなと思っております。
 最後に、個人事業主に関する話でございます。5人以上にもかかわらず適用されていない業種があるといったことで、これについてどうするのかといったときには、歴史的な経緯、それから現状、我々もよく分からない部分がございます。そういったことについて、もうちょっと深掘りをしていただいて、その上で適用拡大を判断していただきたいなと思っております。
 すみません、最後と言いましたが、もう一点でございます。フリーランスに関することですが、フリーランスというより、いわゆる個人事業主の方で被用者性がない方の保障を考えた場合に、この懇談会で議論しております年金、医療保険だけではない支援制度もございます。例えば小規模企業共済のように、社会保障の範囲ではないのですけれども、積立てをしておいて、事業をやめられたときにもらえるといった制度もございますので、社会保障の枠に入っていないような制度も、税制上の優遇とかも含めて考えるべきかなと思っております。
 長くなりましたが以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、本多参考人、お願いします。
○本多参考人 ありがとうございます。
 佐保構成員の代理として、この間の懇談会での発言と重複するものもありますが、取りまとめに向けて、現時点で改めて強調したいことについて発言をさせていただきます。
 繰り返しになりますが、被用者であれば、それにふさわしい被用者保険が適用されるべきであり、勤務先の企業規模あるいは業種によって被用者保険の適用有無が変わる現行制度は不合理だと認識しております。特に短時間労働者が適用となる特定適用事業所の企業規模要件や個人事業所の非適用業種について、歴史的経緯は理解しておりますが、本懇談会においてほかの構成員からも意見として挙げられたとおり、働き方に中立的でなく、合理的な説明ができないと考えております。したがって、前回の年金法改正時の附帯決議を踏まえ、次期改正では最低限、特定適用事業所の企業規模要件を撤廃するとともに、個人事業所に係る非適用業種と常時雇用する人数の要件は撤廃し、少なくとも同じ労働時間、同じ賃金で働く労働者でありながら、その勤務先によって適用有無が変わってしまう制度は是正すべきと考えております。
 その上で、被用者であれば例外なく被用者保険が適用されることを目指すことも重要と考えております。ただ、健康保険の保険者への財政的な影響、被用者保険が適用されるべき労働時間の水準、第1号被保険者との保険料のバランスなど、引き続き検討を要する事項も多いため、当面は労働時間要件と賃金要件どちらかに該当すれば被用者保険に適用される制度に見直すべきと考えております。その上で、将来的には労働時間要件や賃金要件を撤廃していくべきと考えます。
 また、単一事業者では要件を満たさないが複数事業者では満たす労働者についても、被用者保険が適用されるべきとのスタンスに立ち、実務的課題の解消に向けた議論を進めるべきと考えております。
 なお、社会保険は強制加入、かつ、適用すべき事業所は全て強制適用事業所であることが大原則であり、個々の労働者の希望、つまり、社会保険に入りたいか入りたくないかであるとか、事業主の事務負担などを理由として、その適用有無が変わるべきでないと考えております。まずは要件を撤廃した上で、新たに適用となる小規模事業所や個人事業所について支援の在り方を検討すべきと考えます。
 同時に、前回も触れましたが、適用逃れや適用漏れを防ぐための取組も重要と考えます。適用されるべき労働者が確実に適用されるよう、日本年金機構による事業所調査や労働基準監督署との連携など、取組を強化すべきと考えます。
 また、本日の資料には、11ページに、「いわゆる『年収の壁』を意識した就業調整をすることなく、働くことのできる環境づくりが重要」とありますが、以前の懇談会でも申し上げたとおり、いわゆる「年収の壁」の解消、特に企業における労働力不足の解消を一義的な目的にするべきではないと考えております。本懇談会の取りまとめ、またその後の年金部会においても、あくまでも労働者がふさわしい社会保障を享受し、雇用の在り方に対して中立的な社会保障制度を目指す視点で議論を進めるべきであることを強調しておきたいと思います。
 最後にフリーランス等への社会保険の適用について、曖昧な雇用で働く方の中には、労働者性が高い働き方をしているにもかかわらず、フリーランスとして扱われている方が一定程度存在します。そうした方が十分な社会保障給付を受けられるよう、まずは労政審において労働者概念の早急な見直しを行い、こうした「曖昧な雇用」の中で労働者性が高い方に対し、現行の労働者と同様に、被用者保険によるセーフティーネットを広げていくことが不可欠だと考えます。その上で、労働者性が低く、独立性や事業者性が高いフリーランスに関しては、従来の自営業者との違いも少ないと考えられることから、そうした方を対象に、新たな被用者保険の枠組みをつくる意義は高くないと考えております。社会保険制度において新たな類型の議論を行う前に、労政審などにおいて、「曖昧な雇用」に対する対策を講じることを優先すべきと考えます。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 永井構成員、お願いします。
○永井構成員 ありがとうございます。
 論点整理1を中心に、大きく2点申し上げたいと思います。
 まず、この間の懇談会で申し上げてきたとおり、働き方やライフスタイルなどに中立的な社会保険制度を目指す上で、全ての労働者への社会保険の完全適用を目指すことが極めて重要と考えます。また、事務負担などを理由に社会保険の適用有無が変わるべきではなく、少なくとも次期改正では、特定適用事業所の企業規模要件の撤廃、個人事業所に係る非適用業種や常時雇用する人数の要件は撤廃すべきと考えます。
 その上で、要件の撤廃とは切り離し、新たに適用となった小規模事業所や個人事業所に対しての支援策を検討すべきと考えます。また、労働時間要件や賃金要件については、最低賃金が引き上がっていることと併せて、将来的な撤廃も含めて検討すべきであると考えます。
 続いて2点目ですが、制度の誤解による就業調整についてです。正しい制度理解のための取組は、法改正を待たず取り組むべきであると考えます。先月、連合が公表した年金に関する調査では、様々な収入の壁のうち、年収103万円を意識している人が5割を超えるという結果となっております。税制、社会保険制度、企業における配偶者手当など、様々な壁が複雑に存在し、壁についての理解が追いつかない中で、「一定の収入を稼ぐと損になるため、取りあえず給与所得控除と基礎控除の合計額である年収103万円に抑えておく」という労働者の心理が働いていると推察されます。このような結果を踏まえれば、この間加盟単組から聞いている限りにおいても、現場においてはいまだ誤解による就業調整が発生していると考えております。
正しい制度理解に向けては、労働組合としての取組を進めておりますが、本来的には事業主が責任を持って労働者に説明すべきであり、労使ともに進めるべきと考えております。 ただ、事業主が十分に理解されていない場合は契約する社会保険労務士などに相談することも多いと思いますが、要件の撤廃により新たに適用となる小規模事業所や個人事業所にとって、どこに相談してよいか分からない場合も考えられると思います。日本年金機構などの問合せ窓口の整備や体制強化に加え、厚生労働省におかれましては、現場労使が制度を正しく理解するためのさらなるツールの提供、ホームページなどを通じた分かりやすい情報提供や経営者団体へのさらなる働きかけなどを行っていただきたいと思います。
 また、労働者個人のいわゆる「収入の壁」に対する意識を変えるための取組も重要であると考えます。そもそも年収103万円や年収106万円を壁と呼称することに違和感があります。特に106万円については、実際は基本給などの月額賃金で適用が判断され、社会保険に加入すれば給付が充実するにもかかわらず、106万円の壁という言葉や手取り減少だけが注目され、ミスリードを引き起こしております。これは、政府をはじめ様々な場面で106万円の壁という言葉が多用されていることが大きな要因であると考えますが、本来は適用されるべき労働者が被用者保険に加入するということだけであります。
 以上から、行政や関係者団体においても106万円の壁という言葉をできるだけ使わず、労働者の壁に対するイメージを払拭する努力が必要ではないかと考えます。まずは厚生労働省において、そのような広報の強化に取り組んでいただきたいと思います。我々労働組合も、組合員が正しく制度を理解するための取組を行っていきたいと考えております。
 最後に、この懇談会は被用者保険の適用拡大が主な論点ですが、その対象となる、被用者である第3号被保険者について、今以上に働くことに躊躇し、就労を抑制してしまうことがないように、引き続き、年金部会における第3号被保険者制度についての議論をお願いしたいと思っております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございました。
 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員 ありがとうございます。
 私のほうからは11ページの論点整理を中心に、4要件についての考えをもう一度、重複するところもありますがお話しできればと思います。
 まず、11ページの被用者に「ふさわしい保障の実現」「働き方に中立的な制度の構築」「事業所への配慮等」の内容は、おおむね同意できるものばかりです。今だけでなくて、長期的にもっとこれから働き方が多様化していって、高齢者や女性、外国人なんかが職場に来るということを考えると、いろいろな働き方が今以上に、今も出ていないものも今後出てくるかもしれないということを考えると、ベースとしては、どんな働き方をしても被用者保険のほうに寄せていけるように土台をつくっていくということが重要だと思います。セーフティーネットに入っていればいろいろな施策も届くというところで、この拡充というのは重要だなと改めて思っています。
 その中で、私の社労士としてや、FPとして家計を見る立場から、2点大きく申し上げたいと思います。
 まず、2つ目の働き方に中立な制度というところなのですが、年収の壁ということがどうしても報道などで強調されがちですけれども、手取りだけでなくて、その方がキャリアを自分で抑制してしまうキャリアの機会損失ですとか、あとは生涯賃金といったような無形資産や中長期的なライフプランをもう少し意識してもらうことで、この取組がその方の今だけではなくて将来をよくするということをもっとしっかり伝えていくことが重要ではないかと思っています。公的年金シミュレーターなどを通じて中長期の家計に目が行くようになれば、社会保障としては、今だけでなく老後まで国民が安心して暮らせるというようなための制度でもあるので、その理解も深まりますし、これをきっかけにキャリアアップですとか就労延長しようとなってもらえたらいいと、そんなふうな広報や取組が重要ではないかと思っています。
 3つ目の「事業所への配慮等」のところです。これは社労士として感じるところなのですけれども、短時間の労働者が増えると、まず適用するかしないかの判断や、毎年、算定基礎届をするときに、何日勤務していればカウントするんだっけとか、そういう細かいところで小規模の事業所では対応し切れないということが想定されます。また、複数事業所に勤めた場合の把握や適切な適用についても今後さらに労働時間要件などが緩和されていくとしたら、今しっかりとした基盤をつくって実務をできるようにしないと、制度はあるけれども実態として回っていない状況になってしまうと思うので、ここに関しては、年金事務所で行政窓口の支援を強化するとか、社労士も社労士連合会という組織があるので、全国に広がっているそういった組織と協力をして、適切に進められていくような環境整備ができたらいいのではないかなと思います。
 ちょっと言いづらいですけれども、インボイスとか、定額減税とか、あと最近の助成金の中でも、何でこういうやり方になってしまったのだろうと思うような複雑な形になってしまうケースを感じて、それが小規模事業所にとっては結構負担になってくると思うので、そういったところがシンプルにできたら一番いいのですけれども、できないのであれば専門家の支援が身近に取れるような体制をつくってほしいと思います。
 その上で、12ページ目の論点整理の4要件についてなのですが、これはほかの構成員の皆様の意見と私も同じく、優先順位をつけて、まだ検討事項が多いところはもう少し先延ばしにして、重要なところから進めていくことが現実的かなと思いました。
 労働時間や賃金要件は、国民年金のバランスですとか実務面から、今すぐ取り組むというところは難しいと。最低賃金の状況なども見ながら、今後検討していけばいいのではと思っています。
 学生の要件に関しましては、前々回少しお話しさせていただきましたが、103万円の税の壁のほうが問題になっていると思いますので、この要件自体は特に今回どうということはないのですが、人手不足という観点から、学生の特定扶養控除とか、あとはシングルマザーの児童扶養手当など、ほかの制度のところの壁を上げて、もう少し労働力を確保できるような取組が並行して進んだらいいかなと思いました。なので、企業規模要件を、今回はじっくりと実務面とか働く人のキャリアというところも含めて理解とか体制づくりができたらいいのではないかなと思います。
 私からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 佐久間構成員、お願いします。
○佐久間構成員 ありがとうございます。
 皆さん方の御意見を拝聴させていただきまして、本当にもっともだな、というところ、多々ございます。適用拡大の方向性については、資料の2ページに書かれている、皆さん方の意見をまとめていただいたところですけれども、方向性は同意できると私も認識しております。事業者団体の私ども中央会組織の性格、また日商さんとか全国商工会連合会さんの性格もそれぞれにあり、適用拡大をすぐに図っていくというのはやはり難しいのだろうと考えております。
 まず、企業規模要件についてですけれども、今年の10月から拡大される50人超の企業への影響、特に企業の支払い能力、それから短時間労働者の労働時間や賃金額の調整具合など、まず1年程度でも経過を踏まえて、その影響度合いを調査してから結論を出す必要があるのではないかと考えます。
 今回、ヒアリングに呼んでいただいた団体、影響を受ける可能性の強い事業者団体の提出された資料とか御説明を伺いますと、50人以下の中小企業まで適用されるようだと、現在の支払い能力を超えた過度の負担となるという声が届いています。現行、厚生年金、社会保険料の負担だけではなく、子ども・子育て、これからの支援金の関係とか、それから子ども・子育て拠出金も今後も残っていきます。また、雇用保険料の増加、最低賃金、また賃金の引上げ、その支払総額をトータルで考えていく必要がある思います。そのため、私としては、現段階では「現状のままの制度」としていただきたいと思っております。
 次に学生の関係ですけれども、今回の御意見の中ではあまり触れられていませんでしたが、学生は修業年数も限られています。学生の収入要件も十分議論されていないものですから、今回は現状のままが望ましいと考えます。ただし、適用になっている方たち、日本人、留学生等外国人問わず、適正に徴収をしていただきたいと思います。
 個人事業主の適用拡大ですけれども、今回、仮に現状の個人事業所の拡大を図っていくとしたら、5人以上の者を使用する事業者を対象としていくというのが焦点になると思います。でも、実際、個人事業主の多くが、家族で事業を営み始め、少しずつ順調に来て、2人、3人、また1つでも支店を設けたいなと思えば、すぐ5人になってしまう。そこまで発展をしていく中で、5人をちょっと超えたからといって社会保険料などの負担が出てくるとなると、もちろん一人法人というのも、経営者自身も適用対象になるのですけれども、実際に支払い能力の観点から、負担に耐えられない事業所も多く、これを拡大していこうということがなかなかできない。今、倒産件数も増えてきている中で、経営を維持していくことは非常に厳しい状況になってきますので、まず、任意包括適用となる業界団体と厚生労働省さんが少し目標を決めていただいて、年金加入の依頼とか加入促進策を打ち出していくということを、もう一段やっていただきたいと思います。
 フリーランスの働き方を行う者については、「労働者性」をちゃんと見極めなければいけないなと思っています。1つ目として、他人の指揮監督下において業務が行われている場合、2つ目には、報酬が成果物ではなく、その監督下で働くことが対象として支払われている場合、3つ目には、労働条件や労務の内容を発注側が一方的にとか、また定型的に決定している場合、4つ目には、相手方からの個々の業務の依頼に対し、原則として断ることができない関係にあるなど、これが「労働者性」を判断する材料になると思うのですけれども、裁判になって決めるとなると費用がかかってきますので、労働局をはじめ公的に、判断して相談できるところがあれば、そちらに委ねて、決定できる組織体をつくっていただきたいと思います。
 フリーランスを含め、法人化組織になっていない全ての個人事業主に対しても、将来の生活の保障、安定のために、任意包括適用として厚生年金や協会けんぽ、または業界団体の保険に加入して、事業主の負担分とか被保険者の負担分として、現状、法人化すると事業者分と本人負担分と二重に支払うということになっているのですけれども、実際には支払い能力はかなり厳しいですので、加入を躊躇してしまうとことが多いと思います。そうはいいながらも、将来の生活の安定のためには、組織体分を「1」として、それから本人として「0.5」、トータルで「1.5」とか、そういう仕組みで保険料を支払っていく。保険料としては1.5になることで、給付としても1.5になるかもしれません。しかし、基礎年金だけではなく、厚生年金として、より多くを受けられるような仕組みを考えていくことも必要なのではないかと思います。
 最後になりますけれども、企業規模の撤廃とか、個人事業主の適用対象の拡大が図られていくのであれば、それに対して、今回設けていただきました年収の壁・支援強化パッケージのように、短時間労働者の社会保険料に直接充てられるよう、その支払い能力を確保できるような中小企業等への支援策を継続的に実施していただきたいと思います。これは前回申し上げましたけれども、設備投資、それからコンサル費用、また講習会の開催費用等、そういうものももちろん必要なのですけれども、企業の社会保険料の負担を直接賄えるような、例えばその企業の工程を変えて生産性が上がるのだとか、そういうものにも直接使えるような、そして簡便に申請ができるような助成策をセットでぜひお願いをしたいと考えております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございました。
 これでひとまず会場の皆様の御発言をいただきましたが、オンライン参加の皆様からいかがでしょうか。
 松原構成員、お願いします。
○松原構成員 ありがとうございます。
 働き方に中立な制度の実現という意味で、規模とか、法人か個人かということで適用が変わるという制度は早急に変えていく必要があると思います。前回も申し上げましたけれども、人手不足の中で、社会保険について企業側がコストと捉えるのではなくて、これは避けて通れない必要な投資だという捉え方、マインドチェンジが求められていると思います。こうしたマインドチェンジができない企業は、人手不足が進む中で生き残れないという危機感を持って取り組んでいただければと考えます。
 人口が減るということは、消費者が減っていくということですので、一人一人が豊かな消費者になる取組が必要で、これにはやはり社会保険の適用拡大が社会全体にとっても重要だという認識が必要だと思います。先ほどほかの構成員からも御指摘がありましたように、豊かなキャリアをつくり、豊かな老後をつくっていくためにも、この適用拡大は必須だということですが、今のマスコミの誤報を見ていますと、ただ適用拡大するというだけでは混乱を招くおそれもありますので、適用拡大とか、特に年金に関する誤解を解いていく必要があると思います。
 そのためにも、説明するためのツールをもっと積極的に出していくとか、社会保険労務士を利用しやすくするとか、特に中小企業に対する支援とか、あと誤解を解く支援というものが必要だと思います。あとは、シングルマザーをはじめとした子育て世帯が一時的に手取りの収入が減って生活に困るということがないような、きめ細かい対応が求められると思います。
 最後に、国保への影響は多大なものがあると思います。ここで議論をするには大き過ぎる問題だと思いますので、適用拡大が進むということはこの問題がすぐに起こるということでもあり、国保に対する影響、国保の今後の在り方はしっかりと早急に別途手をつける必要があると考えます。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 嵩構成員、お願いします。
○嵩構成員 ありがとうございます。
 私から、12ページ以下の具体的な論点について幾つかお話しさせていただきます。
 まず、短時間労働者に対する適用拡大ですけれども、一番下の企業規模要件についてです。中小企業への影響についていろいろとお話もありまして、十分配慮していく必要があり、十分な準備期間が必要になってくると思いますけれども、企業規模要件については適用拡大が行いやすいところから漸次実施するために設けられてきたのかなと思いますので、制度の本質的要請から求められているものではないと思います。そうしますと、勤務先に中立的な制度としていくために、企業規模要件の撤廃を第一に検討していく必要があると思っております。
 その上で、その次の労働時間要件ですが、雇用保険法が今年の法改正で週20時間以上から週10時間以上に適用基準が引き下げられましたけれども、年金保険と医療保険、あと雇用保険との違いに照らせば、年金、医療についても同様に引き下げることについてはさらなる慎重な検討が必要だと思っております。
 違いの一つは、既にお話がありましたように、雇用保険は失業に対する唯一の社会保険であるというのに対して、年金、医療については、被用者保険に加入しないとしても国民年金、国保による保障があるので、被用者保険の意義が相対的であるということです。
 また、もう一つの違いは、雇用保険では、適用要件としての労働時間要件が、保険事故の発生を確認するための失業認定における労働時間要件と連動しており、労働時間要件の雇用保険制度における位置づけというか意味づけが厚生年金や健康保険とは異なるのではないかと思っております。
 そのように考えますと、まずは今回、雇用保険の適用における労働時間要件が引き下げられましたけれども、その引下げに当たって、失業認定との連動などについてどのような議論がされていたのかを確認した上で、厚生年金、健康保険の労働時間要件との共通点や違いなどを、一定期間をかけて検討していく必要があると思っております。
 次に賃金要件ですけれども、現在の8.8万円という基準は、国民年金保険料との均衡を保つために設けられていると思いますが、保険料の均衡という観点からすれば、厚生年金保険に払い込む保険料額が国民年金との均衡を保つような仕組みを工夫していけばある意味済むということで、加入自体を8.8万円で区切る必要は必ずしもないように思います。
 また、従来フルタイムの労働時間の4分の3という形で、労働時間のみで適用対象となる被用者を決定してきたことからしますと、労働時間要件のほうが被用者保険にとっては加入要件として本質的に重要なものだと考えられます。今日もお話がありましたけれども、近年、最低賃金が引き上げられていて、労働時間要件を満たせば、多くの場合、賃金要件も自動的に満たすようになっているという事情からしましても、短時間労働者の適用拡大として賃金要件を見直すというか、場合によっては廃止するという選択肢も検討してよいと思っております。
 あと、学生の除外要件ですけれども、学生にも多様な年齢層の者が含まれていて、ニーズも様々だと思いますが、一般的には年金については20歳以上になれば国民年金に強制加入しますし、被用者保険については、特に厚生年金については将来労働者として就労したときに加入するということで、ニーズとしてはある程度保障できると思います。また、医療についても、国保もありますし、あと親が被用者保険に加入しているということであれば、被扶養者として保障を受けられることも多いと思いますので、本人として被用者保険に加入するニーズは高くはないと思います。また、学生さんですと雇用関係も短期間になりやすいかなと思いますので、適用の実務が煩雑になりやすいということも考えますと、現状維持が望ましいのではないかと思っております。
 次に、個人事業所の業種の制限ですけれども、前回の懇談会でも申し上げましたが、適用業種については、かつては歴史的な経緯や産業構造の特徴によって決められていたのだと思いますけれども、現時点では、恐らく適用業種を限定する積極的な理由はないように思いますので、働き方に対して中立的制度になるよう、適用業種の制限についても撤廃に向けて検討していく必要があると思っております。
 複数の事業所に勤務する者とフリーランスについては前回意見を申し上げまして、それより強調するところは特にございませんので、前回のとおりとさせていただきます。
 最後に全体として、被用者保険である厚生年金、健康保険については、適用拡大を進めていくという方向性については賛成いたしますけれども、考慮すべきであるのは、国民年金や国保があるということと、あと被保険者だけでなく使用者も半分保険料を負担する仕組みであるということです。また、先ほどの話では、医療保険では財源負担だけでなく、保険者機能においても事業主の役割が重要であるというお話を伺いまして、なるほどと思ったのですけれども、そういった制度の特徴に照らしますと、被用者以外の人と区別して、特別に被用者としてくくり出して保障すべきニーズを抱える人という形で保障するわけですが、その範囲は一定程度に枠づけられていくのかなと思います。
 また、年金と医療とを比べましても、先ほど来お話がありましたけれども、保険者の態様が大きく違っていまして、特に医療保険は複数の保険者が並列する仕組みで、特に国保については被保険者を取り合うというか、一方が増えれば一方は減るという関係にありますので、年金とは異なった配慮が必要となってきまして、被保険者の範囲を年金とは別に区別して検討していく必要もあるかと思います。
 ただ、他方で、制度ごとに異なる基準が設定されますと運用上の困難も生じますので、いたずらに複雑化しないという視点も重要だと思います。両方の視点を満たすのは結構難しいところではあるのですけれども、実務の運用への影響を常に意識した制度設計も必要だと思っております。
 私からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 松浦構成員、お願いします。
○松浦構成員 ありがとうございます。
 企業規模要件につきましては、これまで段階的に拡大をしてきた経緯もありますし、5年に一度の見直しの機会に、企業規模要件を撤廃する意義は大きいのではないかと考えております。
 もちろん新しく適用される事業所については、社会保険の適用に伴う事務を適切に行えるような支援は必要だと思っておりますが、企業規模要件の撤廃によって、少なくとも企業規模という世界の中では、シームレスな社会保険の適用が実現することになります。
 一方で、労働時間要件については、8.8万円という賃金要件がほぼほぼ20時間以上に近似しているという実態のもと、それをたとえば10時間に引き下げることにどういう意味があるのか、どういう影響が出てくるのかということをもう少ししっかり検討したほうがいいのではないかと思っております。いたずらに管理が複雑になることも回避すべきだと思いますし、労働時間要件については、20時間以上を当面は維持して、賃金要件との関係性も考慮しながら、今後さらに検討という位置づけなのではないかと考えております。
 もう一つ、学生の適用除外につきましても、実態としては103万円という特定扶養控除の範囲内での就業調整が行われることが多い中で、あえて学生に適用する意味合いが明確でないように思いますので、引き続き適用除外でよいのではないかという考えを持っております。
 私からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 以上、本日御出席いただきました皆様全員の御意見、御発言を頂戴いたしました。まだ少し時間がありますので、次回は取りまとめの議論に入ることになると思いますので、これは言い残した、あるいはここは強調しておきたいといった御意見があればぜひいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 会場からはよろしいですか。
 オンラインの皆様もございませんか。
 ございませんようですので、少し早いのですが本日の議論は以上とさせていただきます。
 様々な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。かなりの皆様から、取りまとめに向けての優先順位をつけて、言わばメリ張りをつけてといった御要望もございました。その辺も含めて取りまとめの作業をしていただきたいと思います。
 1点だけ御発言をお許しいただければ、今回の論点にはなっていませんので、別に取りまとめに反映していただく必要はないのですけれども、皆様の御発言から私も様々学ばせていただきまして、1つ出てきていない論点として思い浮かんだのが、健康保険の被扶養者制度というものをどう考えるのかということが、将来的に検討の余地があるのかもしれないと思った次第でございます。これだけ被用者保険と地域保険の流動化が進んできた中で、流動化・相対化が進んだからこそ、被扶養者制度というものをどう見るかということも、ひょっとすると今の時代に考える必要があるのかなと考えました。
 年金のほうで、国民年金の第3号被保険者制度がもう四半世紀以来、議論の対象になっていますが、被扶養者制度についてはほぼ議論がないところだと思います。健康保険という制度内ではそれなりの合理性があって、そういう立てつけになっていますが、制度の流動化・相対化が進む中でどう見るかという論点があるのではないかと思いました。先ほど伊奈川構成員から、それぞれの制度としての合理性というか公平性という視点を御提示いただいたところですが、例えば国保の傷病手当金制度を実質化していくとか、そういったものも一つの公平な制度の在り方になっていくでしょうが、もう一つ、被扶養者制度を見るかというようなことも、とそういう視点につながる部分があるのではと感じた次第でございます。
 座長の発言としてはいかがなものかということではあるのですが、一社会保障研究者の発言としてお許しいただければ幸いでございます。
 それでは、今後の懇談会の予定につきまして、事務局からお願いいたします。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 本日は、多岐にわたる論点につきまして、様々な貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
 座長からもお話がありましたけれども、次回は、本懇談会における取りまとめの議論をお願いしたいと考えております。
 次回の開催日程につきましては、追って御連絡申し上げます。
 事務局からは以上です。
○菊池座長 それでは、これをもちまして、第7回「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」を終了いたします。
 本日、御多忙の折、お集まりいただき、誠にありがとうございました。
 お疲れさまでした。