第5回働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会(議事録)

日時

令和6年5月14日(火)10:00~12:00

場所

東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 3階 第2会議室

出席者

会場出席構成員
オンライン出席構成員

議題

短時間労働者の適用範囲の在り方について

議事

議事内容

○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 定刻になりましたので、ただいまより第5回「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 まず、構成員の出欠状況を報告いたします。佐保構成員、嵩構成員より、御欠席との御連絡をいただいております。また、海老原構成員は、途中退席される予定です。酒向構成員、松浦構成員は、オンラインでの御参加です。
 佐保構成員の代理として、日本労働組合総連合会の本多様に御出席いただいております。本多様の御出席につきまして、懇談会の御承認をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 ありがとうございます。
 なお、事務局につきましては、保険局長の伊原、年金局事業管理課長の水野が遅れての参加、保険局総務課長の池上が欠席となっておりますので、御了承ください。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 本日の懇談会は、ペーパーレスで実施しております。傍聴の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。本日の資料は、資料1「今後の進め方について」、資料2「関係団体へのヒアリングにおける主な意見」、資料3「短時間労働者に対する適用範囲の在り方について」、参考資料1「短時間労働者に対する適用範囲の在り方について(参考資料集)」、参考資料2-1「社会保険加入のメリット」、参考資料2-2「社会保険加入を考える3ステップ」、参考資料2-3「社会保険適用拡大のこんなとき!どうする?手引き」、参考資料2-4「社会保険加入に関するQA集」です。
 事務局からは、以上でございます。
 以降の進行は、菊池座長にお願いいたします。
○菊池座長 皆様、本日も、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。本日も、よろしくお願いいたします。
 カメラは、いらっしゃらないですね。
 それでは、本日の議題「短時間労働者に対する適用範囲の在り方について」に進みたいと思います。
 事務局から、御説明をお願いいたします。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 それでは、資料を御説明申し上げます。
 まず、資料1を御覧ください。
 本懇談会の進め方につきましては、第1回でお諮りいたしましたように、前回まで、関係団体からのヒアリングを進めてまいりました。ヒアリングの結果を踏まえまして、本日の第5回には、短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方、次回、5月28日の第6回におきましては、個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方、複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど、多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方、これらの点につきまして、意見交換をしていただくこととしております。第7回以降は、意見交換の結果も踏まえまして、論点整理や夏頃の議論の取りまとめを目指して進めていくイメージになっております。
 また、第1回での構成員の皆様からの御発言を受けまして、社会保障審議会年金部会の状況につきましても、随時、お知らせすることといたしておりました。年金部会では、昨年末にかけまして、多岐にわたる論点について、1巡目の議論を行ってきております。その後、1巡目の議論を振り返りながら、時間の制約上、十分に御議論いただけなかった点など、幾つかのテーマについては、追加での御議論もいただいておりまして、この適用拡大に関しましては、昨年5月に議題としたほか、関連する議題のときにも委員の方から御発言いただいている部分がございますので、今日の議題に関連する発言につきましては、資料3に盛り込んでいるところでございます。また、財政検証を行うに当たっては、適用拡大に関するオプション試算も行っていく方向になっております。今後、この懇談会における議論の取りまとめにつきましては、社会保障審議会の年金部会と医療保険部会にも報告するとともに、年金部会におきましては、財政検証、オプション試算の結果なども踏まえまして、2巡目の議論を進めていくという関係性になってまいります。
 次に、資料2を御覧ください。「関係団体へのヒアリングにおける主な意見」を取りまとめた資料でございまして、各団体の提出資料、実際の御発言を基に、事務局で取りまとめたものです。
 こちらは、内容が大部になりますので、説明は割愛いたしますが、適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、資料3を御覧ください。こちらが、本日のメインの資料になってまいります。
 「短時間労働者に対する適用範囲の在り方について」ということで、3ページ目から5ページ目までにつきましては、1回目の資料と同じでございます。これまでの経緯、概要、適用要件の考え方についての資料でございます。
 6ページ目以降が、短時間労働者に関する4つの要件について、それぞれ、要件の内容、考え方、これまでの議論の経緯、年金部会における委員の御発言、そして、この懇談会におけるヒアリングでの御発言の内容について、まとめた資料となっております。順次、御説明いたします。
 7ページ目をお開きください。労働時間要件についてです。1つ目の要件として、週の所定労働時間が20時間以上であることとなっております。こちらは、短時間労働者が被用者保険の適用対象にふさわしい被用者としての実態を備えているかどうかなどを判断する基準として、一定の労働時間を基準とするものでありまして、雇用保険法の適用基準の例も参考にしながら設定されたものです。
 8ページ目、9ページ目が、これまでの議論の経緯となっておりまして、少し御紹介いたします。まず、平成19年に検討された際には、年金部会の下にワーキンググループが置かれまして、そちらで議論がされております。かいつまんで御説明いたしますと、短時間労働者が厚生年金・健康保険の適用対象にふさわしい被用者としての実態を備えているか否かなどについて判断する基準としては、事業所における拘束時間、すなわち、労働時間の長短は、最も基本的な要素になる。こうした観点からは、労働時間が相当程度短いものについては適用を除外することが考えられるが、当面は、雇用保険の短時間就労者の取扱いを考慮して、週の所定労働時間が20時間以上の者とすることが適当。下のほうですけれども、事業所以外で過ごす時間も長くなってくることから、基本となる労働時間要件に、他の判断要素となる要件も組み合わせて、厚生年金の適用対象にふさわしい被用者であるかどうかを総合的に判断することも考えられるということが盛り込まれております。こうしたことを踏まえ、政府として提出した法律案においては、週の所定労働時間が20時間以上であることとなったところでございます。ただし、このときに提出された法案につきましては、廃案となっております。その後、平成24年、社会保障と税と一体改革の制度改正の中で短時間労働者への適用拡大が導入されてまいりましたけれども、その際、社会保障審議会に置かれた特別部会におきましては、平成19年の議論と同様に、雇用保険制度でも20時間を適用基準としていることなどから、20時間は一つのベースとなるのではないかといった御意見、また、短時間労働者といえども労働者であり、広く労働者にふさわしい社会保険の適用対象としていくことを基本とすべきといった御意見がございました。法案においては、週の所定労働時間が20時間以上であることという現在の要件となったところでございます。
 9ページ目です。その後の年金制度改正におきまして、まず、平成28年の改正時でございますけれども、このときの年金部会の議論の整理におきましては、引き続き、現時点における考え方としては20時間以上が妥当ではないかという意見がございました。一方で、時間の長さよりも効率的に仕事を進めて成果を上げることが重要であるという認識が広がる中、最終的には時間要件を撤廃し、例えば、賃金要件に一本化することもあり得るのではないか、また、20時間未満で複数の仕事を掛け持ちするような人は適用対象から外れてしまう問題についても検討が必要ではないかという意見もございましたが、結論といたしましては、要件の見直しは行われておりません。また、前回、令和2年の改正時、5年前の同様の懇談会におきましては、被用者にふさわしい保障を確保する趣旨を踏まえつつ、他の論点との優先順位や短時間労働者の就業に与える影響なども慎重に考慮した検討の必要性が示され、その後の年金部会の議論の整理におきましては、労働時間要件については、まずは週20時間以上の労働者への適用を優先するため、現状維持とする結論となったところでございます。その後は、全世代型社会保障構築会議の報告書におきまして、週労働時間20時間未満の短時間労働者についても適用拡大を図ることが適当と考えられることから、具体的方策について、実務面での課題や国民年金制度との整合性などを踏まえつつ、着実に検討を進めるべきであるといった指摘が盛り込まれているところでございます。
 10ページ目は、先ほど少し言及いたしましたが、年金部会において、労働時間要件に関する委員の発言がありましたので、参考に記載しております。詳細は、割愛いたします。
 11ページ目が、前回までのヒアリングにおきまして、労働時間要件に関する御発言、御意見について、まとめたものでございます。上のほう、年収の壁との関係について、幾つか、御意見、御発言がありました。週20時間を仮に15時間に引き下げた場合、線引きをしても、新たな壁が生じる。勤務時間要件を15時間あるいは10時間に引き下げた場合には、さらに人手不足になることは明白。シンプルな仕組みとすることが、特に中小企業体においては、何よりの支援であり、「○○の壁」ができないよう、労働時間や企業規模を問わず、全ての就労者に対し一律の保険料を課す、あるいは、企業規模別、大手・中堅・中小企業の料率とすることで、余計なことを考えることが減るのではないか。その下、検討の進め方について、被用者保険に加入するメリット・デメリットは多様であることに加え、大変複雑な現行制度の下で、賃金要件や時間要件に着目して画一的に適用拡大を図ることでは、個々人の生活や企業の事業活動にとっても短期かつ中長期的に大きな影響を及ぼし、負担感も大きなものとなる。拙速に適用拡大を進めても持続可能であるか否かの疑問が大きく、慎重に検討すべきである。週労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大についても議論されているが、そのためには、まず、企業規模要件の撤廃、個人事業所の非適用業種の解消の課題を最優先して解決すべきである。適用拡大のスケジュールを早期に示すこと。例えば、法定最賃の引上げに合わせて、労働時間要件を拡大していく。法定最賃が時給1,500円になれば週15時間、時給2,000円になれば週11時間で8万8000円を超える。人手不足が加速する中で、多様な方々に働いていただけるよう、週20時間未満といった短時間でも働ける環境整備を進めているところ、そのような状況も踏まえながら慎重に検討を進めてほしい。こういった御意見が出ていたところでございます。
 続きまして、賃金要件についてです。
 13ページ目を御覧ください。2つ目の要件として、賃金が月額8万8000円以上であることといった要件となっております。こちらは、国民年金第1号被保険者の負担や給付の水準とのバランスを図る観点から、一定額以上の賃金を得ていることを基準としたものでございます。
 14ページ目、15ページ目が、同様に、これまでの議論の経緯をまとめた資料となっております。こちらも少し簡単に御紹介いたしますが、まず、平成19年の検討時、ワーキンググループにおきましては、国民年金保険料と厚生年金保険料の最低水準との均衡に留意し、また、所得再分配機能を持つ厚生年金制度において、新たに適用を受けるパート労働者が厚生年金が適用されている他の労働者との間で連帯感が保てるかどうかという観点からも、一定額以上の賃金を得ていることをメルクマールとすることも考えられるのではないか。賃金額が相当程度低い労働者から本人負担分の保険料を徴収すると、負担感は無視できない要素になる。保険料負担に関する事業主の納得を得る観点から、事業主の事業活動に一定以上貢献している者を対象とするという切り口も考えられ、賃金が労働の対償という性格を持つことに鑑みれば、事業主が一定以上の賃金を支払っていることを事業活動へのパート労働者の貢献のメルクマールとすることも考えられるのではないかといった様々な意見がありました。平成19年の法案におきましては、賃金が月額9万8000円以上という要件が盛り込まれておりましたが、こちらの法案は廃案となっております。平成24年の改正の際には、原則として全ての短時間労働者に適用拡大が行われるべきであるが、当面の対応として、労働時間や収入に基づいた適用基準により適用拡大を図っていくべきではないか。賃金水準は、就業調整を招くおそれがあるし、労務管理も煩雑になるので、基本的には設定しないほうがよいが、設定する場合には、最低賃金ベースである程度の時間就労すれば適用となるくらいの水準に設定するべき。厚生年金の標準報酬月額の下限を引き下げると、国民年金より低い保険料で、より多くの給付を支給することになり、不公平ではないか。こういった様々な御意見もありまして、最終的には、当初案では、月額賃金7万8000円以上とされておりましたが、3党合意も踏まえまして、月額賃金8万8000円という現在の要件となったところでございます。
 15ページ目です。平成28年の改正のときですけれども、平成26年財政検証のオプション試算において、月額5.8万円まで引き下げた場合の試算が行われまして、この試算結果を踏まえて、最終的にはこのような水準まで賃金要件の適用範囲を拡大していくべき、あるいは、最低賃金水準で週20時間働くとこの程度の収入になるので、そのような労働者も適用される水準とすべきという御意見がありました。一方で、定額の国民年金保険料よりも低い負担で基礎年金に加えて報酬比例部分の年金を受けられることは不公平ではないかといった意見が出ている点については、国民年金の第1号被保険者との間の公平論よりは、応能負担で保険料を負担している第2号被保険者の間での支え合いの問題として考えるべきものではないかという御意見があったところでございます。結論といたしましては、賃金要件の見直しは行われておりません。また、令和2年の改正時ですけれども、懇談会におきましては、就業調整の要因となるなど、課題も示された一方で、第1号被保険者とのバランスや短時間労働者の就業に与える影響、賃金要件と最低賃金の水準との関係を踏まえて、制度の見直しの緊要性の程度も念頭に置いた検討の必要性が示され、その後の年金部会の議論におきましては、月額賃金8.8万円の賃金要件は、最低賃金の水準との関係も踏まえ、現状維持とするといった結論となったところでございます。
 16ページ目は、同じように、年金部会における賃金要件に関する委員の発言を、参考までに、記載しております。
 17ページ目が、この懇談会におけるヒアリングにおいて、賃金要件に関する御意見、御発言をまとめたものです。上の部分が国民年金保険料との関係についてでございまして、賃金要件を大幅に拡大し、週10時間程度で賃金要件を超えるようになれば、就業調整は大幅に減少するのではないか。その際、第1号被保険者とのバランスの問題が生じるので、そちらも含めて検討すべき。賃金要件の引下げを行った場合、現行の国民年金保険料との関係で不公平を助長することになる。また、検討の進め方についても、御意見、御発言がありましたが、こちらは、時間要件と重複しておりますので、再掲ということで、割愛いたします。
 18ページ目からが、学生除外要件についてです。
 19ページ目を御覧ください。3つ目の要件として、学生を適用除外とすることとなっております。ただし、卒業した後も引き続き当該適用事業所に使用されることとなっている者、休学中の者、定時制課程及び通信制課程に在学する者、社会人大学院生等は被用者保険の適用対象となっております。学生はパート労働市場における重要な労働供給源であるものの、短時間で資格変更が生じるため、手続が煩雑となるという考え方から、適用対象外となっているものでございます。
 20ページ目、21ページ目が、これまでの議論の経緯です。平成19年の検討の際には、まず、年金部会の下のワーキンググループでは、学生などの労働者の属性や業種などの事業主の属性によって適用拡大の対象から除外するという考え方は、市場にゆがみをもたらすおそれが強く、基本的に取るべきではないといった意見もあったところではございますけれども、最終的には、学生については、長期の所得保障を行う必要性は必ずしも高くないことから、新たな適用基準においては、学生を適用除外とするとなっております。ただ、この際は、国民年金制度の学生納付特例制度と同様として、定時制、通信制の方なども、全日制の方と区別することなく、適用対象外とする形になっておりました。その後、平成24年の改正の際、特別部会におきましては、学生がアルバイトを終了するたびに資格変更が生じる可能性があり、企業にとっても本人にとっても手続が煩雑となるおそれがあることから、例えば、昼間学生は適用除外とする考え方はあるのではないか、学生を適用除外とすることは実務上煩雑であると考えられ、一定の労働時間があるのであれば、学生でも被用者であると言うことができるのではないか、現行の4分の3基準においては学生を対象外としていないこととの均衡を考慮すべきと、様々な御意見がありましたが、結論としては、現在の要件となったところでございます。
 21ページ目です。平成28年の改正時におきましては、年金部会において、学生像が多様化している実態を踏まえれば、一律に適用除外とする必要はないのではないかという意見もございましたが、要件の見直しは行われておりません。また、令和2年改正時、懇談会におきましては、事業主の事務負担への配慮という制度趣旨を念頭に置きつつ、近時の学生の就労状況の多様化や労働市場の情勢なども踏まえ、見直しの可否について検討する必要性が示されたところでございます。
 22ページ目を御覧ください。まず、上の部分が、年金部会における関連する委員の御発言でございます。こちらも、参考ということで、説明は割愛いたします。ヒアリングにおきましては、1つの団体のヒアリングの際に、構成員の方から御質問がありまして、それに対して、学生の短時間労働者を適用するかどうかについては、学生の考えをもう少し聞いてみる必要があるという回答があったところでございます。
 23ページ目からが、企業規模要件についてでございます。
 24ページ目を御覧ください。4つ目の要件といたしまして、企業規模要件として、従業員100人超の企業などで月額賃金8万8000円以上などの要件を満たす短時間労働者が適用対象となっております。前回改正によりまして、令和6年10月、本年10月には、従業員50人超の企業などまで適用範囲が拡大されます。こちらは、中小の事業所への負担を考慮して、激変緩和の観点から、段階的な拡大を進めていくために設定されたものです。このため、本要件につきましては、法律本則に規定されたほかの要件と異なりまして、改正法の附則に当分の間の経過措置として規定されたものとなっております。
 25ページ目、26ページ目が、これまでの議論の経緯です。まず、平成19年のワーキンググループにおきましては、事業主が人材配置の仕組みや賃金水準の見直しを行うための時間を確保するために、施行までに十分な期間を設けることが考えられる。また、全ての被用者が適用を受けることが望ましいが、規模の小さい企業のほうが相対的に影響が大きいと考えられることから、適用拡大に当たっては、一定規模未満の中小企業について、一定期間、適用を猶予する措置を設けることが考えられる、といった様々な意見がございまして、最終的には、従業員300人超の企業を対象とする法律案が提出されましたが、こちらは廃案となったところでございます。平成24年の改正時にも、特別部会におきまして、中小企業については適用除外とするべき、全ての企業を対象とするべき、激変緩和の観点から段階的な拡大があり得るのではないかと、様々な御意見がございましたけれども、最終的には、まずは従業員500人超の企業となったところでございます。
 26ページ目を御覧ください。その後でございますけれども、平成28年改正時におきましては、年金部会における議論を踏まえまして、従業員500人以下の企業などについて、労使合意に基づき、適用拡大が可能となりました。また、前回の令和2年の改正時におきましては、懇談会の議論、また、年金部会の議論も踏まえまして、本来全ての被用者に被用者保険が適用されるべきとの要請と中小企業の経営に配慮すべきという2つの要請を調和させる観点から、政府・与党内でも議論・調整が行われ、最終的に、令和4年10月から、従業員100人超、本年10月から、従業員50人超の規模まで、適用拡大をすることとなったところでございます。その後、全世代型社会保障構築会議の報告書におきましては、週20時間以上勤務する短時間労働者にとって、勤め先の企業の規模によって被用者保険の適用に違いが生まれる状況の解消を図るべきであり、企業規模要件の撤廃について早急に実現を図るべきであるといった指摘がされているところでございます。
 27ページ目は、年金部会における委員の発言ということで、これまでと同様に、参考としていただければと思います。
 28ページ目を御覧ください。こちらが、この懇談会のヒアリングにおける関連の意見・発言でございます。企業規模要件について、同じ制度の中で差をつけるのは不公平である。規模要件にかかわらず適用した上で、零細企業など負担感が大きい企業には助成を行う形のほうが、競争条件をゆがめない制度になるのではないか。企業規模により適用要件が変わることで、転職により年金の適用が変わることは、労働者にとって不合理である。年金制度の趣旨を考えると、企業規模要件をいつまでも設けていることは、憲法14条の法の下の平等の観点からも問題である。企業規模要件の撤廃は、小規模・個人店に大きな影響を及ぼすことから、慎重に議論すべきである。その次の2つは、再掲でございます。下の2つですけれども、小規模店への影響に鑑み、いきなり企業規模撤廃ではなく、25人または20人など、段階的に進めてもらいたい。小規模事業者が多い業種においては、適用拡大による新たな事業主負担に対応できない脆弱な事業者も多いため、慎重な検討と有効な支援策の実施を求めるといった御意見・御発言があったところでございます。
 最後、30ページ目に記載のとおり、本日御議論いただきたい点でございます。関係団体へのヒアリングで指摘された、働き方・働く場所にかかわらない制度設計の必要性、適用拡大が労働者の働き方に与える影響、人手不足により人材確保が喫緊の課題となっている状況、適用拡大に伴う事業所の事務負担の増加・経営への影響などに留意しつつ、短時間労働者の適用要件について、どのように見直すことが適当と考えられるか、ぜひ構成員の皆様に御議論いただきたいと思います。
 説明は、以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に基づきまして、御意見、御質問などをお願いしたいと存じます。今日は多くの皆様から御発言いただけると思いますが、いかがでしょうか。
 それでは、秋山構成員から、お願いいたします。
○秋山構成員 健康保険組合連合会の秋山でございます。
 今回、これまでのヒアリングを踏まえた短時間労働者に対する適用範囲の在り方について、事務局から御議論いただきたい点が示されて、労働者の働き方に与える影響、事業主の経営に与える影響に留意する必要性に言及されています。それぞれ大切な観点であると認識しておりますが、健保連といたしましては、さらなる適用拡大により、特に短時間労働者を多く抱える業種の健保組合の財政的な負担が増えることを危惧しています。適用拡大の在り方を議論するに当たっては、保険者への財政影響も留意する必要があり、詳細な財政影響の試算とともに、必要な財政支援等を含めて、検討していただく必要があるのではないかと考えております。
 その上で、勤労者皆保険の実現が政府方針として掲げられている中で、例えば、労働時間要件については、被用者としての実態を備えているかどうかが判断基準とされていて、一定の雇用関係を基礎として、被用者保険は成立すると考えております。そこで、事務局に、今回、お尋ねしたいと思いますが、本日議論となっている適用範囲について、これまでの経緯を踏まえて、被用者保険とはどういうものであるかというお考えについて伺いたいと思っております。
 以上でございます。
○菊池座長 御質問が出ておりますので、事務局から、お願いします。
○山下保険局保険課長 ありがとうございます。保険局保険課長でございます。
 今秋山構成員からいただいた被用者保険の在り方の考え方について、私から、説明をさせていただきたいと思います。
 私は健康保険のほうにいますけれども、被用者保険は、事業主の方と、被保険者、実際には働く方々との関係性を基盤として、構築されてきていると理解しています。特にこの健康保険は、医療のほうなのですけれども、保険者が国ではございません。国ではなくて、中心としては企業単位で保険者が構成されている中で、先ほど言ったように、事業主と従業員とのつながりが重要な役割だと認識しております。その上で、事業主と労働者との間の関係性については、短時間労働者の適用拡大を検討した際に、週20時間以上または月額8.8万円の収入以上の要件を満たす方を、健康保険、厚生年金の被保険者としますという認識でございます。こうした中、今回、企業規模要件も含めて4要件について議論することになっていますが、法律上も、特に企業規模要件については、法律的には、本則ではなくて、附則で規定されている経過措置になっております。一方で、先ほど言った週20時間・月8.8万円は、法律の本則に書かれていて、経過ではなくて本則として位置づけられていること、これを基に事業主への負担を考慮しつつ段階的に適用拡大を進めてきていると認識しているということです。被用者保険の在り方は、現在、法律に基づいて、このようになっていると理解しております。
○菊池座長 秋山構成員、いかがでしょうか。
○秋山構成員 よく分かりました。ありがとうございました。
○菊池座長 川又構成員、お願いします。
○川又構成員 保険者の関係ということで、協会けんぽの川又でございます。
 今回のこの適用拡大の基本的な方向性については必要なことと考えておりますけれども、各団体のヒアリングの結果などを見ましても、様々な意見があって、事業経営あるいは人材確保をはじめ、メリット・デメリットが多様である、判断が難しい、慎重に検討すべきという御意見も多くあったと考えております。被用者保険の今回のような適用拡大が行われた場合は、恐らく新たな対象者の多くは協会けんぽに加入することになると思われますけれども、医療保険の保険者機能を確保するという観点から、3点、重要であると考えております。
 1点目は、今も御議論がありましたけれども、被用者としての実態を実質的に備えているかどうかという点。年金と異なって、医療保険については、被扶養者を含めた保険給付を行う、あるいは、健診や保健指導といった保健事業を行っておりますので、そうしたものをいかに円滑に実施していくかという観点は欠かせないだろうと思います。
 2点目は、適用や保険料徴収などの実務が円滑に実施できるかどうかということ。
 3点目は、医療保険の保険財政、保険者の保険財政への影響という観点でございます。
 今回の論点であります短時間労働者について、企業規模要件については、これまでの拡大の効果や実務への影響を見極めながら、なくしていく方向が適当と考えますが、一方、労働時間の要件あるいは賃金の要件については、先ほどの被用者としての実態をどう考えるかというところに密接に関わっている問題だと思いますので、慎重な検討が必要ではないかと思います。
 また、今後の具体的な見直し案を検討する前提としては、健保連からもお話がありましたが、医療保険の保険財政への影響、保険者への財政影響も、今後、お示しいただければと考えております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 伊奈川構成員、お願いします。
○伊奈川構成員 ありがとうございます。
 今、保険者論の話が出ました。私も、少しその辺りが気になっておりますので、発言させていただきたいと思います。
 適用拡大については、全体としては、拡大すべきということだとは思いますけれども、被用者保険の場合に限りませんけれども、社会保険の場合は、負担と給付の関係、特に給付と負担の牽連性といった問題があるわけであります。そういった点からいうと、少し年金と医療は違うのかなと思っております。例えば、保険者論ということからいいますと、年金の場合は、労働保険と同じように、全国で一本、政府管掌ということですけれども、医療はむしろ健康保険をなくして協会けんぽをつくったといった経緯もありますので、その辺りも考えながら保険者をどうしていくかということも考えないといけないのかなと思っています。
 その際、今言いました牽連性といった点からいいますと、給付面は、年金と違いまして、医療保険の場合、その中心となる現物給付である療養の給付は、実際上、制度間の違いはほとんどないわけです。そういう点からいうと、傷病手当金あるいは出産手当金のような現金給付をどうしていくかということが恐らく問題になるのだろうと思います。そういった中で、被用者保険の場合、保険集団の一体性、先ほどの資料を拝見しますと、たしか「連帯感」という言葉も使われておりましたけれども、その辺りも含めて考えていく必要があるのかなと思っています。特に、医療保険の場合は、昨今、いろいろな拠出金あるいは類似の制度が増えておりますので、その辺りの一体感も考えないといけないのかなと思います。これは恐らく次回の検討対象だと思いますけれども、複数事業所の勤務者の適用を考えますと、20時間未満の人たちまで適用していきますと、恐らく複数の適用をどうするかという問題が出てきて、その場合に、給付面において療養の給付を2倍給付にするわけにはいきませんので、そういった点も、財政面を含めて、考えないといけないのかなと思っております。
 そういう点でいきますと、20時間にそれなりの意味があると思ったのは、偶然か必然か分かりませんけれども、週40時間労働と考えますと、ちょうど半分でありますので、保険集団への帰属という点を考えると、半分以上はそこで働いて寄与している、それとの関係での適用ということかと思っております。
 現金給付の問題に先ほど言及したわけですけれども、コロナの感染拡大時に国保でも傷病手当金を出したこともありますので、技術的には不可能ではなさそうですけれども、財政面の影響もありますので、その辺りも含めて考えていく必要があると思いました。
 標準報酬の下限の問題も考えなければいけないわけでありまして、今も健康保険と厚生年金で違うわけですけれども、その辺りは、今後の最低賃金の引上げの関係で、どのように日本全体の賃金水準が上がっていくのか。下がることはあってはいけないと思いますので、そういう中で、今の標準報酬を見ると、割と下のほうに一つの固まりがありますので、その辺りの分布も踏まえて、エビデンスに基づいて、議論していく必要があるかと思いました。
 取りあえず、以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、五十嵐構成員、お願いします。
○五十嵐構成員 ありがとうございます。商工会議所です。
 参考資料1、23ページ、25ページ辺りによれば、以前にも御説明があったと思いますが、適用拡大は法律で決まったことだから、ということで受け入れる事業者が多かった一方、対応に消極的だった場合の理由は従業員が希望しないからだ、という回答が8~9割ということでありました。人手不足に困っている事業者側の立場からすれば、年収の壁を意識して就労時間を調整・減らすという動きが出るのは働き手側のほうなのかなということもあり、改めて何とかしなければいけないと思っております。賃金要件の額を下げるという議論については、先ほども説明がありましたように、国民年金保険料との関係が整理されていない状況ではなかなか難しいのだろうと思いますので、きちんと議論しなければいけないと思います。それが、1点目。
 次に、適用拡大の方向性については理解しているという立場で申し上げますが、事業者側として、50人以下のところに拡大することを一気に進めて大丈夫かという懸念はあります。個人事業主も含むのですけれども、340万社・者中、290万社・者が小規模事業者です。小規模事業者は、中小企業基本法の定義で、製造業その他は20人以下、商業・サービスなどが5人以下と定義されています。ここが、実際、290万社もあるわけです。今、賃上げを迫られている中で、さらに保険料負担は大丈夫だろうか、あるいは、事務負担が大丈夫かという懸念があります。企業経営には、予見性が非常に重要です。先ほど(適用拡大の)方向性は理解していると申し上げましたが、企業がその方向性をきちんと認識、理解したうえで、労働者とのコミュニケーションを取る等、時間的な余裕をもって対応できるまでは、一気に進めるわけにはいかないのではないかと思います。
 もう一点、時間要件について申し上げます。20時間という時間要件につきまして、短時間労働者を多く抱える飲食サービス業の方で、従業員が勤務時間を選べるシフト制を敷いている会社から聞いたのですが、もし、働く時間が週10数時間や10時間の労働者まで適用されることになったら、収益が全部吹き飛び、経営が成り立たたないということでありました。その会社は、中規模の会社です。小規模な事業者であれば、なおその負担には耐えられないのではないかとも考えられます。先ほど予見性の話を申し上げましたが、労務管理という経営の根幹に関わる話をする場合には、その先々の予見性を確保して、事業者が「分かった」という状況から話を進めていくことが重要なのだろうと思います。
 長くなりました。以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 海老原構成員、お願いします。
○海老原構成員 皆さんのお話とかぶるところもあるので、お許しください。
 伊奈川さんの話は、すごく納得感が高かったのです。健保の件は、確かに、国全体が保険者になっているわけではなくて、各企業や各地域になりますよね。そう考えると、逆に、その事業所の仲間かどうかという概念に近くなると思うのです。とかく、僕ら雇用の世界から見ていると、正社員とそれ以外の人たちと、ここのところに線が引かれていたものをどこまで大きくしていくか。これが、近来の流れだと思うのです。均等・均衡法も、パートタイム労働法も、この趣旨に沿っていると思います。伊奈川さんのおっしゃるとおり、労働時間で週の半分以上働いているなら四捨五入で仲間に入れてもいいではないかという、この線の引き方は、非常にクリアで分かりやすく、いいところに置いたのではないかなということが、1つ目のお話です。
 2つ目、私は、企業規模要件の撤廃はやはり必要だなと思っております。労働時間だけではなくどこかに線を引くと、労働者が選ぶとき、今度は企業規模の壁になると思うのです。だから、これはゆくゆく撤廃する必要がある。確かに小規模企業はつらいかもしれないのですけれども、逆に言うと、個人事業主もしくは家族専従者までで経営している超零細企業にとっては、社保加入義務はないままですから、得になると、そういう考え方もあると思っております。収入要件については、「この際、壁がなくなるぐらいまで下げてくれ」という団体もかなりあったわけなのですよ。そうすると、収入面でシームレス化が進んでいく中で、まだ規模要件云々というものが残っていると、分かりづらくなるのではないかと思っています。
 3つ目ですが、私は細かい不公平感のあるところをちくちくとずっと話してきた人間なのですけれども、今、標準報酬5万8000円という枠が残っている。ご説明の中で何度か出てきましたけれども、この不公平感に関しては、かなり違和感を持っている。普通に、従業員で考えたら、最低賃金で働く限り、8万8000円以上になるから、この要件一本でいいのではないか。5万8000円は、多分ですけれども、私の周りにもいますけれども、よこしまな経営者が、もうかっているのに、経営者報酬を月5万8000円に抑え、標準報酬を低くして入っていて、払った以上に得をしている人たちだろうかと、私は思っています。こういうところも、公平性の観点から、潰していくべきではないかと思っております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 池田構成員、お願いします。
○池田構成員 ありがとうございます。
 私どもは、国民健康保険の保険者ではございませんけれども、国民健康保険の保険者の代弁者として、発言をさせていただきたいと思います。
 本日は、短時間労働者に対する適用範囲の在り方が議論の対象となっておりますけれども、第1回懇談会の資料4にありますとおり、本件の議論に当たりましては、医療保険者に与える影響も踏まえながらという前提があったはずでございます。その関連で発言をしたいと思いますが、働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用拡大につきましては、国民的要請が強い年金保障の充実という観点から、その意義は理解できるところでございます。しかしながら、第1回の懇談会で申し上げましたとおり、被用者保険の拡大には懸念される点もございます。被用者保険の適用拡大が進められた場合、一定の勤労所得を有する市町村国保の被保険者が被用者保険に移ることとなります。そうした場合、国保におきましては、無職者の割合が一層増えることになりまして、国民皆保険制度を支える地域保健であります市町村国保の財政基盤や保険者機能に与える影響が懸念されるところでございます。また、国保制度の一翼を担う国保組合につきましても、財政基盤、事業基盤に与える影響が懸念されます。
 そこで、議論の大前提といたしまして、適用拡大を進めた場合の国保に対する影響を、様々な観点、例えば、財政的な影響はもちろんでございますが、被保険者の年齢構成あるいは所得の状況がどうなるのか、あるいは、様々な規模の保険者がいらっしゃいますので、そういった保険者規模がどう変わっていくのかという分析をしていただく必要があるかと思っております。こうした結果を踏まえて、今後、国民皆保険をどのように堅持していくのかといった本質的な議論をしていくことが、被用者保険の適用拡大の議論の前提となると考えております。よろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、土井構成員から、お願いします。
○土井構成員 ありがとうございます。
 今回いただいたお題の4要件についてお話しするのですが、これまでの議論で非常に重要だなと思うところが、特にヒアリングを通じて、前回にこの懇談会をやったときに比べて、就業調整の問題が非常に大きくなっているということです。御承知のとおり、昨年、政府がパッケージをつくるぐらいまで、この問題が大きくなっているということを前提に、適用拡大の方向性を考えなければいけないなと思います。前回のこの懇談会の際に就業調整の議論はどうだったかというと、パート労働者を大きく抱えてやっている規模の大きいところが少し困るねと、その程度の議論だったかなと思うのですが、今回は、あらゆる層にわたってこの就労調整の問題が深刻になっています。就業調整をされている方たちの属性等のデータが少ないので、私どもで、去年の暮れから今年の頭について、我々の組織ですので、地方の町村部の短時間労働者という観点で、調査をしてみました。大体4,000企業を調査して、70%の企業は短時間労働者の方がいらっしゃいます。在籍数でいうと2万2000名、性別ですと、女性が70%、男性が30%、属性でいうと、やはり女性のいわゆる主婦層が40%超で、次いで女性・男性の高齢者が10%ずつなので、これだけで6割を占めています。年代では、女性の40代と50代で約43%、高齢者がかなりの数でいるということです。就業時間は、女性は20時間以上30時間未満が30%、10時間以上20時間未満が25%、これで半数を超えるということです。男性は、逆に、30時間以上が半数いるところです。年収でも、女性は、100万以下が40%、150万以上が20%。男性は、逆に、150万以上が50%、100万円未満が30%という状況で、この適用拡大を考える上では、特にボリュームゾーンであるいわゆる主婦パートの皆さんがこの適用拡大によってどのような考えを持たれるのかなというところが、非常に大きいところかと思っております。これを踏まえて、各要件について、意見を述べさせていただきたいと思っております。
 まず、時間要件と給与の要件ですが、御承知のとおり、最低賃金が非常に上がっております。資料にもありましたが、10年前比でいうと30%近く最低賃金が上がっているということで、既に、東京の最低賃金ですと、80時間というか、週20時間働くと、合計8万円を超えてしまう。今の水準でいうと、79時間ぐらいが上限となる。私は最賃の委員もやっていますので、あまり上がることを前提にはしたくはないのですが、最低賃金が上がる流れを前提とすると、時間要件と給与の要件で適用にならない方の範囲は自動的に狭まってくると考えております。そのため、ここをあえて今見直す必要があるのかと思っています。この要件を動かすと、今回の議論のメインテーマである50人以下の企業たけではなくて、全ての層の短時間労働者に影響が出てくるわけですので、この人手不足の時期に、しかも就業調整の問題がある中で、この2つの要件を動かして、企業活動、働く方の働き方に、あえていろいろな石を投げ込む必要があるのかなとは思っております。
 続いて、学生要件についても、あまり御発言する方がいらっしゃらないので、一応申し上げますが、正直、データがないというところだと思います。個人的には、年金については、非常に苦労されて働かれている方もいらっしゃいますので、将来の備えとしての加入はあり得ないことではないのかなと思います。ただ、あえて、若い方に、ある意味、強制的に、医療保険に加入をさせる意義が、どこまであるのか。例えば、20歳になって、それから2年間、あえて入れるということに、どういう意味があるのか。そういったところも含めて、御本人たちの意見をもう少し聞くべきなのかなと思っております。
 最後に、人数要件でございます。先ほど五十嵐構成員からお話があったこととほぼ同じでございますが、我々事業者側の立場からも、従業員によい環境で働いていただくことは大変重要であると思っておりますが、一方で、企業として安定した雇用を提供して、存続していくことも大事だと思っておりますので、この適用拡大の影響がどの程度出るかということは慎重に見極めていただきたいと思っています。特に、従業員50人以下の企業は、経営基盤が非常に脆弱であります。経営環境的にも、今、物価・賃金がかなり上がっておりますが、上昇分をなかなか価格転嫁できていないことは世の中にいろいろとお認めいただいているところでございます。価格転嫁ができないことで、利益のバッファーが少ない状況です。このような状態のところで、企業によって負担額は異なりますが、事業主負担が増えることで、かなり財政的な余力が圧迫されることは十分に懸念されるところでございます。また、仮に、事業主負担はしようがない、従業員のためだと割り切ったところで、先ほどお話ししたデータからは、就業調整によって利益を生み出す源泉の事業にも差し障りが出てくる可能性も十分に考えられます。今回は、事業主負担あるいは事務負担だけではなくて、就業調整の影響についても、もう少しデータを集めた上で慎重に検討していただくことが必要ではないかと思っております。仮に、それをやって、事業者として大丈夫であろうと、これぐらいの負担であればお願いできるだろうとなったとしても、我々がアンケートを取ると、規模が小さい事業者ほどこの適用拡大について御存じないという結果になりますので、実施するに当たっては、十分な準備期間を確保していただくとともに、中小企業・小規模事業者に対して十分な支援策を講じる必要もあるのかなと思っております。加えて、ヒアリングでも要望が一部団体からありましたけれども、先ほど五十嵐構成員からも御発言がございましたが、適用拡大を一気にやるのか段階的に実施するのかというところも検討すべきであると思っております。その場合、人数的にどこで区切るのかといったところを明確に私から申し上げられるわけではございませんが、先ほどの五十嵐構成員の小規模事業者は20人以下といったところを参考にしていくこともよろしいのかなと思っております。
 以上、長くなりましたが、私からの意見でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 永井構成員、どうぞ。
○永井構成員 ありがとうございます。連合を構成する産業別組織のUAゼンセンに所属しています、永井と申します。
 細かいところを含め、3つ、意見を申し上げたいと思います。
 まず、働き方やライフスタイルなどに中立的な社会保険制度を目指す上では、全ての労働者への社会保険の完全適用を目指すことが極めて重要だと考えております。したがって、次期年金法改正におきましては、企業規模要件、個人事業所に係る非適用業種の撤廃により、勤務先によって社会保険の適用有無が変わらない制度を目指すべきと考えております。
 その上で、UAゼンセンとして懇談会のヒアリングで発言させていただきましたとおり、労働組合としては、法定最低賃金をスピード感を持って引き上げ、同時に、労働時間要件を拡大する必要があると考えております。5月10日に成立した改正雇用保険法により、雇用保険の加入要件が2028年10月から週10時間以上となること、また、公的年金の財政検証は5年に1回であることを踏まえれば、次期年金法改正において労働時間を週10時間以上に拡大することを検討していく必要があると考えています。
 最後に、資料3の30ページには、「適用拡大に伴う事業所の事務負担の増加」という記載もございますが、ヒアリングで申し上げたとおり、デジタル化が進む中で、事業所の事務処理能力を理由に社会保険の適用の有無が変わるべきではないと考えております。仮に新たに特定適用事業所となる事業所の事務負担の増加が懸念されるのであれば、適用拡大に係る各要件の見直しとは切り離した上で、課題解消に向けた検討を進めるべきと考えております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、本多参考人、お願いします。
○本多参考人 佐保構成員の代理として、発言をさせていただきます。
 大きく2点、意見を申し上げたいと思います。
 第1回懇談会でも触れましたが、雇用形態や企業規模の違いによって社会保険に適用されるかどうかが異なる現行制度は不合理であること、また、2020年年金法改正時の附帯決議において、企業規模要件はあくまで経過措置であり、できる限り早期の撤廃に向けて検討するとされたことを共通認識とし、速やかに企業規模要件の撤廃を行うべきであると考えております。そのことを踏まえると、50人以下の規模の法人への影響は理解しますが、段階的ではなく、次期改正において要件の撤廃を行うべきと考えております。その上で、年収の壁・支援強化パッケージのような、既に社会保険に適用となっている労働者と新たに適用となる労働者の不公平感を生みかねない仕組み、また、労働時間の延伸により労働力不足を解消することを目的とした、社会保険料を国が肩代わりするような新たな支援策は実施すべきでないと考えております。誤解による就業調整を防ぐためにも、社会保険制度は、働き方やライフスタイルなどに中立的、かつ、できる限り分かりやすい制度とすべきであり、そのことを前提とした支援策の在り方を検討すべきと考えます。
 2点目です。労働時間要件や賃金要件について、それぞれの要件を見直すことも重要ですが、どちらも満たした人を適用対象とするのではなく、いずれかに該当すれば社会保険が適用となる制度に見直す検討も必要と考えております。また、賃金要件を見直す際には、同時に、社会保険の被扶養者となる収入の基準も併せて見直す必要があると考えております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 松原構成員から、お願いします。どうぞ。
○松原構成員 ありがとうございます。
 本懇談会におけるヒアリングの感想として、適用拡大を拒否する職員がいるということですが、正しい情報が届いているのかなという疑問を感じました。当該職員に限らず、国民全体に適用拡大のメリットが理解されているのか。情報を取りに行かない人にも届くような仕組みも重要なのではないかと思いました。
 人口がどんどん減少し人手不足の時代になった今、ビジネスのマネジメントそのものが変革する必要があると考えています。たとえば人件費に対して、それを負担と捉える時代ではなくなっているのではないかと思います。そもそも、労働者のおかげでビジネスが成り立ちますし、資本主義社会のおかげでビジネスができるということを考えれば、資本主義社会を支える社会保障のことも、負担ではなくて未来に対する投資、需要をつくる投資だといえるのではないか。たしか介護事業者の方々がおっしゃっていたのではないかと思いますけれども、そういう捉え方、認知の変革が求められていて、それは、事業者側だけではなくて、国として、もっと推していくべきではないかと思います。
 今回の議題に関しましては、特に企業規模は撤廃していく方向であるべきだと思います。また、今の状況で、なるべくこの社会保障の負担を企業が逃れたいために非正規を雇うような仕組み・制度があること自体が問題ですので、そういうことが起きないように仕組みを変えていく取組が求められると思います。当然、そのためにいろいろな支障が出るでしょうから、その支援策もセットで考えていく必要があると思います。特に、シングルマザーのお話を伺いましたけれども、適用拡大でシングルマザーの手取りが減るという事態に対しては、きめ細かく対応していっていただきたいと思います。先ほど国保の話も出ましたけれども、国保の制度をどのように捉えるかということは大変重要ですので、この会議とはまた別にぜひしっかりと御検討いただければと思います。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 会場から、いかがですか。
 佐藤構成員、どうぞ。
○佐藤構成員 働き方が多様化して、シングル世帯も増える中、適用拡大によって社会全体として老後や万が一の保障におけるセーフティーネットを拡充することは必要だと認識しています。
 今回の4要件の中では特に企業規模要件ですけれども、規模による適用・不適用の差が出ることは、転職市場においても不合理ということはそのとおりだと思いますし、知らずに適用のないまま働き続けることで老後の生活設計が難しくなることからも、撤廃する方向で見直すべきだと思っています。
 その上で、中長期的な生活設計、ライフプランという視点と、社労士としての実務の面から、3点、意見を申し上げます。1つ目が将来像の明確化、2つ目が実務支援、3つ目が事情のある家計への配慮です。
 まず、1つ目の将来像の明確化が、適用拡大でどのような社会にするのかというビジョンを明確にして進めることの重要性です。ヒアリングでは就業調整による人手不足と社会保険料負担や事務負担による経営悪化を懸念する声が多く上がっていました。壁を越えて働いてもらうと、社会保険料負担が増えてしまい、就業調整が行われると、人手不足になる。そのジレンマの中で、経営を維持するためにどうしたらいいか。各団体特有の御事情もある中で、対応の方向性を定めかねているように見受けられました。ヒアリングの中でも、働き方に中立な制度となる将来ビジョンを示すこと、適用拡大のスケジュールを早期に示すことという意見がありましたが、ビジョンを明確にすることで、各団体様が取るべき方策や必要な支援も明確になり、よりよい形で進められるのではないかと思います。これに関しては、昨年10月より、年収の壁・支援強化パッケージとして、106万円の壁、130万円の壁への対策が打ち出されました。ヒアリングでもパッケージに対する意見が出ましたが、106万円の壁における手当に関しては、既に適用した社員との調整が取れないため、社労士としても実態として有効な支援にはならなかったと感じてしまいました。130万円の壁に関しては、人手不足への対応とはいえ、社会保険の適用をしないほうが家計にメリットがあるような印象を与えてしまったようにも思います。適用拡大は、個人が貧困に陥らないために、制度の維持の面で、今後必要な取組だというメッセージは、ぶれずに発信していくこと、短期的な視点ではなく、中長期的なビジョンをもって、適用拡大をしても十分な経営ができるようになるような支援が必要で、スケジュールを明確にしながら、実務対応にかかる負担補助、人材育成やDXという声も多く上がりましたが、そういったことを目的とした取組、中小企業が自社でも申請できるような、シンプルで使いやすい支援をすることが重要だと思います。
 2点目は、実務的な事務面の懸念なのですけれども、今後、もし企業規模が撤廃となると、小規模事業所には管理部門がありません。事務処理が適切にできないことが想定されます。短時間労働者は労働契約の内容により社会保険の適用が決まるので、労働契約や労務管理、社会保険の適用事務、労働者への社会保険制度の説明といった支援がないと、現実問題として、適切に進めることは難しいと思います。今回、資料などにもありますが、当該マニュアルなど、今年10月の適用拡大におけるコンテンツの制作も進んでいます。ほかに、年金事務所などの地域の行政窓口や社労士などによる実務面の支援と職域の社会保険教育を進めることで、実務的にも無理なく進められるようにしていければと感じました。
 最後、3点目なのですけれども、これは家計の面ですが、特に配慮されるべき属性の方には規制を少し緩めるような措置も並行して進めることが、家計負担という面でも、企業の人手不足という面でも、緩和になるのではと思いました。適用拡大を進めることは大事だと思うのですが、企業や家計に短期的な負荷がかかることはやはり事実だと思います。近年、最低賃金が上がっていることや並行して子育て支援策が進められていることから、例えば、シングルマザーの母子扶養手当、ヒアリングでもありましたが、所得制限を引き上げる、学生へのシフトに頼るところがあるので、せめて特定扶養親族に係る控除は103万円ではなくて、配偶者特別控除みたいな感じで、もっと引き上げて、社会保険以外の制度の壁を緩和することで家計への配慮ができないかなと。そうすれば、少し労働力の確保にもつながるのではと思いました。こういった税制に関しては、ここで意見を言うものではないかもしれませんが、在職老齢年金なども含めて、社会の変化に伴って、要件を緩和する方向で見直しをするケースも生じると思っています。働き方が多様化して、女性や高齢者が社会進出をする中で、どんなふうに安定した生活設計を担保しようとしているのか、その全体的な中長期のビジョンが伝われば、適用拡大を推進する上での理解も得られると思いました。
 長くなりましたが、私からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、佐久間構成員、お願いします。
○佐久間構成員 ありがとうございます。
 まず、事務局に対しまして、本懇談会と並行的に開催されている年金部会の協議事項の報告、進捗について説明を賜りまして、お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 私からは、少々発言が長くなりますこと、お許しいただきたいと存じます。
 短時間労働者への適用拡大は、いよいよこの10月から50人超に拡大がなされようとしていることは周知のとおりでございます。私どもは、令和2年度、前回の改正におきまして、企業規模要件については、501名から一挙に50名超では影響が大き過ぎるということから、最低でも100名超、これ以上には拡大しないでいただきたいということを主張してまいりました。その結果というわけではないでしょうけれども、中小企業への影響を考慮していただいて、激変緩和措置として、その開始時期をずらして段階的に導入していただくということで、2022年10月から100名超、2024年10月から50名超の適用拡大が図られてきたということになると思います。この5年間の経済情勢において、コロナの影響により落ち込んだ経済が、2022年だと言っていいと思うのですけれども、その後半から、また2023年において回復してきて、現在ではコロナ前の水準に戻りつつある状況にあると思います。短時間で働いていただいているパート等の労働者が、いわゆる「年収の壁」を意識して就業調整をすることから、特に昨年の年末等も、人手不足の状況が続き、多くの業種で就業調整が発生していたことも事実でございます。そのため、事業者からは、社会保険料負担が増えたとしても人手を確保したいという声が聞かれるようになってきたことも事実でございます。前回改正時の衆議院厚生労働委員会、また、参議院でも、適用拡大をしていくように、撤廃に向けて進むようにという附帯決議をいただきまして、適用拡大の認識は私どもも重々認識しているところでございます。
しかしながら、「中小対中小」の取引における原材料や人件費分の価格転嫁がいまだ十分ではなく、また、最低賃金、賃上げによる人件費の引上げ、物価高騰、価格設定というか、消費者の商品を見極める目がかなり厳しくなっています。給与や賞与の引上げだけでなく、社会保険料の負担が規模の小さい50人以下の中小企業まで適用されるようだと、現在の支払い能力を超えた負担になると思われます。各業界団体、特に事業者団体からのヒアリングを第2回から第4回までで実施していただきまして、事業者団体からは現状のままを望む声が多くあったかと思います。各団体から、この5年間の経過を踏まえて、適用拡大やむなしとする説明があるのではないかと思いましたが、それほど多くはなかった。他方で、逆に、人数の規模を、これはないのでしょうけれども、もっと多く、100人を超えるものにしてほしいという声もなかったということであります。そこで、本年10月から拡大される50人超への企業の影響、特に企業の支払い能力や短時間労働者の労働者の調整具合など、まず、1年程度でも経過を踏まえて調査をしていただく必要があると考えます。いただいた資料の中の調査結果は予想値や意向ということになりますので、現時点での予想値や意向ではない、実態の検証を図る必要があると考えます。その上で、短時間労働者に対して、労働時間要件や賃金要件を外し、適用拡大を図ることも考えられるのではないでしょうか。
企業規模を20人や30人に下げたとしても、「年収の壁の根本的な解決要因」にはなってはおらず、新たに人数拡大による「壁」が存在することになります。労働者の確保、定着の安定や業界企業のイメージアップにつながることから、社会保険の適用は非常に重要だと思います。ヒアリングを行った業界団体等に対して、現在も勧められていますけれども、任意適用として保険に加入することを、厚生労働省、各地の労働局からも、より積極的に加入を勧めていくことも必要なのではないかと思います。また、企業規模の拡大だけでなく、20時間から10時間、あるいは全ての労働時間へと拡大するのであれば、それに応じた賃金要件も、今は月額8万8000円ですけれども、引下げも考慮しなければいけません。
 学生については、現状維持が望ましいのではないかと考えます。大学においては、入学時とかに説明が行われ、加えて、外国人の留学生も結構多くなってきていますから、そういう方々にも社会保険の説明をしていただいていると思うのですけれども、保険料の支払いについて不正がないように、厳しく見ていただくとよいのではないかと思います。適正な徴収をしていただきたいと思います。
 なお、企業規模の適用拡大が図られるのであれば、それに対して、今回設けられました年収の壁・支援強化パッケージのように、短時間労働者の社会保険料に直接充てられるよう、その支払い能力を確保するような中小企業等への支援策を継続的に実施していただく必要があります。厚生労働省の支援策は、設備投資やコンサルタント費用、講習会の開催費用など、いろいろなメニューを用意していただいていますが、似たような費目の支援策もありますから、企業の外に出ていくような助成策だけではなく、なるべく企業の社会保険料増額の負担を直接賄える、また、簡便に申請ができるような助成策を望みたい。適用拡大を図るのであれば、それに合わせたセットで支援策を行っていただきたいと思います。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、オンライン参加の松浦構成員から、お願いします。
○松浦構成員 ありがとうございます。
 私からは、2点、申し上げたいと思います。1点目は週20時間以上のお話で、2点目は学生についてのお話です。
 まず、週20時間以上の基準については、いろいろと御意見があったかと思いますが、私も相対的には慎重な立場を取っております。具体的には、週20時間以上の根拠になってきた「被用者の実態」についての考え方を、もう一度しっかり整理をしたうえで、改めてご検討頂いたほうがよいのではないかと思っております。これまでの議論を拝見すると、「被用者の実態」については、時間そのもので評価している場合と、雇用保険をメルクマールとしている場合の、両方の観点があったかと思います。このうちの雇用保険の要件が週10時間以上に変更される中で、今後雇用保険と社会保険で基準をたがえるのかどうかですが、たがえるのであれば、たがえる理由をしっかりと整理しておく必要があるのではないかと思っております。今後の議論の中で、そこはもう少し深掘りしていただいたほうが良いという気がしております。
 2つ目として、学生については、現在の適用除外という取扱いに一定の合理性があると考えております。学生の意見や実態を聞くべきだというお話もありましたので、学生と身近に接している立場から少しだけ補足をさせていただきますと、学生たちからは、社会保険よりも所得税上の103万円の壁を強く意識している様子がうかがえます。
なお、103万円の壁については、別の議論になってしまいますが、最低賃金の上昇に応じて時給も上がっている中で、人手不足なのにシフトに入れないとか、就職活動に必要な有給のインターンに行けないというケースも出てきているので、そういう観点から課題意識を持っています。
繰り返しになりますが、学生にとっては103万円が一番の壁になっていて、社会保険の適用の壁までは行き着いていない場合が多いのではないかと思います。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 それでは、酒向構成員、お願いします。
○酒向構成員 ありがとうございます。
 まず、今回のヒアリングで現場の実態を踏まえた貴重なご意見をいただいてきたと思っております。経営への影響や人手確保の大変さといったところは十分ヒアリングで受け止めた上で、適用拡大の重要性はご認識されていらっしゃるとお見受けいたしましたし、入り口論から反対ではないのかなと、私は理解しております。その上で、働き方に中立な制度に向けて、対象となる企業や短時間労働者の働き方への影響などに留意しつつ、基本的な考え方として、被用者保険の更なる適用拡大を進めていくことが重要と考えます。
 まず、短時間労働者の4要件の中でいきますと、今回の制度改正では、既に「改革工程」等政府の方針で方向性が示されておりますが、企業規模要件を撤廃することに優先的に取り組むということではないかと考えております。今回のとりまとめの中にもそういった方向性についてきちんと明示していき、その上で、現場の負担感や人の確保にも留意してはどうか。例えば、書類の簡素化・電子化など、事務負担の軽減策を後押しするとか、現場の生産性の向上といったものにも何らかの手当てをするとか。もちろん大企業のビヘービアも非常に重要だと理解しております。そういったことを総合的に考えながら、次の改正では、何らかの形で企業規模要件の撤廃を打ち出していくのではないかと思っております。
 その他の要件でございますが、将来的な適用拡大の方向性として、次の段階ということで、労働時間や賃金等の要件見直しも併せて検討していくといった順番ではないかと受け止めております。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 これで、今日御出席の構成の皆様、全員から、一通りお話をいただきましたが、追加で何か御発言がおありの方がいらしたら、合図をいただきたいと思います。いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。
 ありがとうございます。
 特にないようですので、この辺にさせていただきます。
 私は、意見ではないですけれども、今日のこの議題が決まっていましたので、先週の社会保障法の授業で、この学生適用について少し詳しく説明して、100人ぐらいいる中で、現状でいいか、少し制度改正してもいいか、挙手をしてもらったところ、3分の1ぐらい、改正してもいいというほうに手が挙がって、意外と多いなと思ったのです。多分厚生年金につながることをメリットと感じたのだと思うのですが、逆に、医療保険の保険料を取られることをどこまで認識していたかは分からないことと、松浦構成員からお話がありましたように、実際に、自分の働き方、アルバイトが、そこまで達しているか、直接の利害関係のある人はどれだけいるかということもあるので、これは単なる一つのエピソードですが、今日も、土井構成員から、学生はデータがないのでもう少し調べたらどうかという御趣旨の御発言もありましたので、その辺も今後の課題かなと思った次第です。
 今日は、様々に御議論いただきまして、最初に事務局からお話がございましたが、年金部会では1巡目で議論をやっておりまして、そこで出た意見も今日はお出しいただいておりますが、医療保険部会ではまだ本格的には議論していない状況です。明日も医療保険部会はありますが、今、専らマイナ保険証のほうに注力している状況でございます。ただ、今日、様々な御意見を伺う中で、被用者保険の適用拡大は医療保険と年金保険の両者がある、双方の適用関係とか、考え方とか、必ずしも同じではない、それぞれに考えるべき部分があるということは、私自身も学ばせていただいたと思ってございます。審議会での議論となりますと年金部会と医療保険部会に分かれる形になってしまうので、その意味でも、こちらの懇談会での御議論は非常に重要になると思います。取りまとめに向けて、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
 それでは、予定している議事は以上で終了とさせていただきます。
 今後の懇談会の予定につきまして、事務局から、お願いいたします。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 次回の開催につきましては、資料1でも御説明いたしましたとおり、5月28日、火曜日を予定しております。詳細につきましては、追って御連絡さしあげます。
 本日も、誠にありがとうございました。
○菊池座長 それでは、これをもちまして第5回「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」を終了させていただきます。
 本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。