第14回社会保障審議会年金部会(議事録)

日時

令和6年4月16日(火)14:00~16:00

場所

東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 3階 第1会議室

出席者

会場出席委員
オンライン出席委員

議題

  1. (1)令和6年財政検証について
  2. (2)財政検証の経済前提について(報告)
  3. (3)社会保障審議会年金数理部会の公的年金財政状況報告について(報告)

議事

議事内容

○総務課長 ただいまから第14回「社会保障審議会年金部会」を開催します。
 皆様、お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。
 初めに委員の出欠状況を報告します。島村委員、永井委員が御欠席、また、武田委員、百瀬委員から遅れて参加される旨の御連絡をいただいております。駒村委員、武田委員、嵩委員、平田委員、堀委員、百瀬委員は、オンラインでの参加となります。出席委員が3分の1を超えておりますので、本日の会議は成立しております。
 次に、事務方の異動がございましたので、紹介します。
 4月1日付で大臣官房審議官に着任した武藤でございます。
○武藤審議官 審議官の武藤でございます。よろしくお願いいたします。
○総務課長 続いて、資料を確認いたします。本日の部会はペーパーレスで開催しております。傍聴者の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。本日の資料は、資料1「令和6年財政検証の基本的枠組み、オプション試算(案)について」、資料2-1「令和6年財政検証の経済前提について(検討結果の報告)」、資料2-2「令和6年財政検証の経済前提について(参考資料集)」、資料3-1「公的年金財政状況報告-令和4(2022)年度-(ポイント)」、資料3-2「公的年金財政状況報告-令和4(2022)年度-の概要」、資料3-3「公的年金財政状況報告-令和4(2022)年度-より抜粋」、参考資料「年金部会における議論の進め方(案)」を事務局で用意しております。このうち参考資料は、昨年5月の第4回年金部会でお示しした「議論の進め方(案)」の資料を更新したものとなっております。また、本日は権丈委員から資料の御提出がございました。
 事務局からは以上でございます。
 以降の進行は菊池部会長にお願いします。
○菊池部会長 皆様、本日も大変お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ここでカメラの方は退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日は、「令和6年財政検証について」「財政検証の経済前提について(報告)」「社会保障審議会年金数理部会の公的年金財政状況報告について(報告)」、以上3つを議題といたします。
 では、まず議題1「令和6年財政検証について」、議題2「財政検証の経済前提について(報告)」。事務局から御説明いただき、その後、本報告書を取りまとめていただきました経済前提に関する専門委員会委員長でいらっしゃいます深尾委員から御発言いただきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、まず事務局からお願いします。
○数理課長 数理課長でございます。
 資料1を御覧ください。こちらは財政検証の枠組み、特にオプション試算について整理した資料となります。
 1ページは、財政検証の基本的な枠組みとなります。まず、財政検証に必要な将来の社会・経済の姿については重要な前提が3つあります。人口、労働力、経済となります。人口につきましては、社会保障・人口問題研究所が作成する将来推計人口を用いてきたところでありまして、今回は昨年4月に公表された推計を用いまして、高位、中位、低位と3つのケースで幅を持って行うということであります。
 労働力につきましては、労働政策研究・研修機構、いわゆるJILPTの作成する労働力需給推計を用いてきているというところでありまして、今回は先月公表されました推計を用いるというところであります。こちらも労働参加進展シナリオ、漸進シナリオ、現状シナリオと3つケースをもって幅を持って行うということであります。
 経済につきましては、経済・金融の専門家で構成されました専門委員会を本年金部会の下に設置いたしまして、専門家の議論により前提を決定するというところであります。こちらは4月12日の専門委員会で経済前提を決定いたしまして、報告書を取りまとめられたところであります。資料2-1、2-2がその報告書となりますので、後ほど御説明いたします。経済についても幅広く複数ケースを設定してきているというところでありまして、今回は4ケースが設定されているというところであります。
 次に、年金制度の前提といたしましては、こちらは現行制度で実施するというのが基本となっておりますが、制度改正の議論に資するために一定の制度改正を仮定したオプション試算も実施してきているというところであります。
 続いて、2ページを御覧ください。このオプション試算につきましては本年1月の年金部会でも御意見をいただいたところでありまして、そのときの資料となります。ここにオプション試算を実施するための必要となる条件を記載しているところでありますので、再度確認させていただきたいと思います。3つ目の丸となりますが、オプション試算につきましては、年金部会等で見直しの議論がされており、改正後の姿が想定できて、試算を行うための制度の前提を設定することができるもの。また、年金財政に対して、一定程度影響があると見込まれるものについて行うものとするとしているところであります。
 3ページは、先ほどのオプション試算の実施に必要な条件と1月の部会でいただいた意見を踏まえまして、今回のオプション試算で実施する内容をまとめたものとなります。上から順に、被用者保険の更なる適用拡大。こちらは企業規模要件や個人事業所における非適用業種の適用範囲を見直した場合に加えまして、賃金要件や労働時間要件等についても見直しを行った場合の試算も実施することを予定しております。さらに、基礎年金の拠出期間を45年に延長しまして、それに応じて給付増額した場合の試算。マクロ経済スライドの1階と2階の調整期間のズレをなくして一致させた場合の試算。在職老齢年金制度の見直しを行った場合の試算。標準報酬月額の上限65万円を見直した場合の試算というものを予定しているというところであります。
 さらに、1つ目の※印にありますが、マクロ経済スライドの名目下限措置を撤廃した場合の試算も実施したいと考えております。
 以上のオプション試算を予定しているというところでありますが、オプション試算については、あくまで制度改正議論に資するよう参考として実施するというものであります。したがいまして、オプション試算を実施したからといって必ずその制度改正を実施するというものでもありませんし、逆にオプション試算の対象外となったから、その制度改正を実施しないというものでもないということであります。この点は1月の年金部会でも御説明いたしましたが、改めて強調させていただきたいと思います。
 また、現時点で意見が多種多様でありまして、改正後の姿が想定できないような項目については、試算の前提を置くことができませんので、オプション試算の実施は困難ということで対象外としておりますが、今後の制度改正の議論の中で意見が集約されまして、財政影響の確認が必要になったという場合は、追加で試算を行うことも否定するものではないということも、申し添えておきたいと思います。
 続いて、資料2-1が経済前提に関する専門委員会の報告書となりますが、資料2-1の説明の前に、資料2-2を用いまして、今回設定した4ケースのシナリオの設定の考え方やそのシナリオの下、設定される経済前提の結果について御確認いただきたいと思います。従来、経済前提の複数ケースの設定につきましては、長期のヒストリカルなデータを参照しつつ、内閣府の10年程度の中長期試算やJILPTの労働力需給推計との整合性も踏まえて設定してきたというところであります。
 今回の設定に当たっての状況の変化といたしましては、経済財政諮問会議において内閣府より初めて2060年までの長期推計が示されたということがありますので、この長期推計とも整合性を取る必要が生じたというところであります。
 そこで、まずこの諮問会議で示された長期推計について御紹介したいと思います。資料2-2の10ページを御覧ください。こちらが4月2日の諮問会議において示された資料でありまして、マクロ経済の姿について2060年までの推計を行っているものになります。3つのシナリオが設定されておりまして、それぞれ「現状投影シナリオ」「長期安定シナリオ」「成長実現シナリオ」と名称がつけられているというところであります。
 前提を確認いたしますと、①の現状投影シナリオは、生産性の向上の前提を表しますTFP上昇率は、直近の景気循環の平均であります0.5%となっておりまして、労働参加は、労働力需給推計の真ん中のケースに相当するもの。出生率は1.36で、将来推計人口の中位推計に相当するというものであります。「現状投影」という名前のとおり、足下の現状の経済が続いた場合の試算ということで仮定されているものであります。
 経済財政諮問会議におきまして、人口減少を克服して持続的な成長を実現するためには、生産性の向上と労働参加の拡大、出生率の上昇というのが鍵になるとされているところでありまして、したがって、右のケースに行きますと、より生産性が向上して、労働参加が進んで、出生率も上昇するというケースとして仮定されているところであります。生産性につきましては、長期安定が過去40年平均の1.1%、成長実現がデフレ経済に入る前の平均を取って1.4%とし、そこまで向上すると仮定されているというところであります。
 労働参加は、5歳若返るというふうに仮定されておりますが、こちらは労働力需給推計の労働参加進展シナリオ、一番高いケースに相当する水準となっているところであります。出生率も高位推計や1.8まで上昇すると仮定されているというものであります。この仮定で潜在成長率を推計いたしますと、現状の経済が続く現状投影ですと、成長率は0%やマイナスまで落ち込むということになりますが、長期安定や成長実現のケースでは実質1%以上の成長を確保できるとされているところであります。
 さらに、諮問会議におきましては、この経済の試算に加えて、財政や医療・介護に関する社会保障についても2060年までの長期推計が示されまして、この長期推計で示された3つのシナリオに基づいて、財政や社会保障の持続可能性などの議論が展開されているというところであります。こういった状況を踏まえまして、今回のシナリオ設定に当たっては、この長期推計との整合性も踏まえて設定するというところであります。
 この長期推計も踏まえて設定したシナリオは68ページ以降にまとめておりますので、68ページを御覧いただきたいと思います。68ページが今回のシナリオ設定のイメージというものになります。基本的な考え方といたしましては、諮問会議で示された長期推計の3つのシナリオに相当するケースを3つ設定いたしまして、それに加えて、年金独自の視点といたしまして最悪のケースも見据えていく必要があるという観点から、労働力需給推計の1人当たりゼロ成長・労働参加現状シナリオに相当するケースを加えた4ケースを設定しているというところであります。
 69ページ以降にシナリオ設定の考え方についてまとめておりますので、御覧いただければと思います。基本的な考え方といたしましては、今、申し上げたとおり、長期推計で示された3つのケースに加えて、最も低い成長を仮定するケースを加えて4ケースを設定するということとしております。この結果、前回6ケース設定していたわけですけれども、4ケースに簡素化されるということになります。
 さらに、シナリオの意味を分かりやすくする工夫といたしまして、前回ケースには名称がついておりませんでしたが、今回は成長率の高いケースから順に「成長実現ケース」「長期安定ケース」「現状投影ケース」「1人当たりゼロ成長ケース」と名称をつけるということといたしております。これによってシナリオの意味が明確化されたと考えております。
 また、今回4ケースに簡素化されることとなりましたが、TFP上昇率については前回より幅広く設定しているというところでありまして、前回より幅広い経済の姿を想定するものとなっております。
 下の2.のシナリオ設定の基軸となりますTFP上昇率の具体的な設定について御覧ください。まず、長期推計の3ケースに相当するケースは、長期推計の前提により設定いたします。したがって、成長実現がデフレに入る前の平均で1.4%、長期安定が過去40年平均で1.1%、現状投影が直近の景気循環の平均で0.5%となります。
 加えて、下2つのケースにつきましては、直近30年の実績の分布も踏まえて保守的に設定するということとされているものであります。現状投影ケースの0.5%は80パーセンタイル値となります。ゼロ成長ケースは最低値の0.2%で設定しているということで、最悪のケースを見据えているというものであります。
 70ページは、実質運用利回りの設定の基礎となりますGPIFの運用実績の設定ということになります。運用実績については、時価の変動を均す観点から、10年移動平均の分布より設定するということとしております。
 また、保守的に設定する観点から、5年前と同様なのですが、全て70パーセンタイル値以下で設定するということとなっております。
 下2つのケースにつきましては、シナリオ設定の意味を明確化という観点から、TFP上昇率と同じパーセンタイル値で設定するということとなっております。具体的には記載のとおりというところであります。
 消費者物価上昇率についても長期推計との整合性から成長実現と長期安定は2%、現状投影は0.8%と設定いたします。一番低いゼロ成長ケースは、前回と同様に直近30年の平均より設定するということで、0.4%となっております。
 71ページは、足下の中長期試算との接続や労働力需給推計の前提となります。こちらも長期推計や労働力需給推計との整合性などを踏まえて設定しているというところであります。
 72ページがこのように設定したシナリオをまとめた一覧となります。
 続いて、78ページを御覧ください。このように設定したシナリオに基づきまして、経済モデルを用いて推計される実質成長率ということになります。右上の四角囲みの中を見ていただきますと、成長実現は1.6%、長期安定は1.1%、その次は79ページになりますが、現状投影はマイナス0.1%となっております。こちらは諮問会議の長期推計とおおむね同じ水準となっております。若干数値が異なっておりますが、これは平均を取っている期間が異なっているということと、成長実現、長期安定については人口の前提も異なるためというふうに考えております。また、1人当たりゼロ成長ケースは、1人当たり0.1%成長で、名称どおり1人当たりで、おおむねゼロ成長という結果となっているということであります。
 また、現状投影や1人当たりゼロ成長ケースではマクロの成長率はマイナスとなっておりますが、こちらは人口減少の影響でありまして、1人当たりで見るとプラスとなっているというものであります。つまり、将来の生活水準が低下していくことを想定しているというものではないということであります。
 続きまして、87ページを御覧いただきます。こちらは長期の経済前提の結果となります。真ん中辺り、実質賃金上昇率を御覧いただきますと、上から2.0%、1.5%、0.5%、0.1%と幅の広い設定になっていると考えております。
 その隣の運用利回り。実質運用利回り、対物価の実質運用利回りですが、こちらが3.4%から1.4%ということで、こちらも幅広く設定されているというところであります。
 対賃金のスプレッドと言われる、「実質的な運用利回り」と呼んだりするものですけれども、こちらは実質運用利回りと実質賃金上昇率の差から計算されるということになりまして、結果、1.4%、1.7%、1.7%、1.3%という設定となっているところであります。
 88ページは、前提の設定との比較となります。今回4ケースに簡素化されたということから、前回と対応するケースが必ずしも設定されているというものではありません。ただ、ここでは便宜上、上半分と下半分に分けてそれぞれ前回と比較しているということであります。前回より幅広く設定したということでして、TFP上昇率、物価上昇率、実質賃金上昇率については、上半分の成長実現、長期安定ケースでは、前回のケースI~IIIと比較しまして上方修正となっておりますが、下半分の現状投影ケース、1人当たりゼロ成長ケースでは、前回のIV~VIと比較しまして下方修正となっているところであります。
 その下の実質運用利回りは上方修正となっておりますが、こちらは実績が上方にシフトしている結果と考えられます。
 対賃金のスプレッドについては、下2つのケースについては、実質賃金が下方修正となったという影響もあって上方修正となっているというところであります。
 89ページが足下の設定となりまして、物価上昇率、賃金上昇率は、内閣府の中長期的試算に準拠しておりますし、運用利回りについては、GPIFの実績から設定する方法に変更しているというものであります。
 以上、今回の見直し案に基づく経済前提の特徴を申し上げますと、まず4ケースに簡素化した。あと、名称をつけたことによってシナリオの意味の明確化を図ったということがあります。ただ、4ケースに簡素化しましたけれども、前回より幅広い経済の姿を想定するというものになっておりまして、TFP上昇率は前回の1.3から0.3であったのが、今回1.4から0.2に幅が拡大しているということであります。
 このため、5年前はTFP上昇率や実質賃金上昇率の設定が甘いのではないかという御批判も受けたわけですが、上2つのケースについては前回より高めとなっておりますが、下2つのケースは前回より低めになっているというものであります。
 また、今回の設定は、長期安定と現状投影、真ん中2つの間は結構離れておりますが、今後の制度改正の議論に当たってはこの4つのケースを見ていくわけですが、特に真ん中、中庸的となります長期安定ケースと現状投影ケースを中心に、この2つの幅を持って見ていきたいと考えております。5年前の財政検証でもケースIIIとケースVで幅を持って示すというやり方を行っておりましたが、ケースIIIを中心に考えるということも多かったわけですけれども、今回は前回以上に幅を持って確認していくということを行ってまいりたいと考えております。このように幅を持っていくということは、これまでの専門委員会の議論にも沿いますし、この年金部会の議論にも沿ったものになると考えているところであります。
 続いて、資料2-1を御覧ください。こちらが専門委員会の報告書となります。1月に設定方法の考え方を整理いたしました経過報告というのを行わせていただきましたが、この経過報告に、ただいま御説明いたしました経済前提の複数ケースのシナリオ設定と、その結果出てくる経済前提の結果を加えて取りまとめたものとなっております。簡潔に説明させていただきたいと思います。
 ページをめくりまして、「1.報告の趣旨」というところにつきましては、専門委員会の検討結果を取りまとめて報告する旨を記載しているものであります。
 「2.財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」は、昨年末に取りまとめた経過報告と同様の記載となっているというところであります。(1)(2)は財政検証の枠組みについて記載しているというものであります。
 (3)は、財政検証は予測ではなく投影であるという性格についての記載となります。そのため、財政検証の将来見通しは一定のシナリオを基に、長期の平均的な姿を描いたものと解釈すべきであることや、経済前提は、複数ケースを幅広く設定すべきことや、結果についても幅広く解釈すべきと。また、100年にわたる推計であることを踏まえて、経済前提は足下の一時的な変動にとらわれずに設定すべきであることを記載しているというものであります。
 (4)は、国民に分かりやすく伝えるという視点の重要性について述べておりまして、設定方法はできるだけシンプルに、シナリオの意味を分かりやすく伝えるよう工夫すべきとしております。
 (5)は、将来見通しの積立金や経済前提の運用利回りについては、短期的な時価の変動を平滑化したものと整理する旨の記載となります。
 3.がこれまでの財政検証で設定した経済前提についての一定の評価と今回の設定に当たっての視点を記載しております。こちらも1月に年金部会に報告しました経過報告と同様の記載となっております。(1)は、公的年金や財政にとって重要な経済要素について記載しております。
 (2)は、この重要な経済要素について、長期の実績と財政検証の前提を比較しているというところでありまして、実質賃金上昇率につきましては実績が前提を下回ったものの、実質的な運用利回り、スプレッドにつきましては逆に上回っていることを記載しております。
 (3)はその要因についての記載となります。財政検証では、労働生産性向上に伴って実質賃金も上昇するという仮定を置いておりましたが、労働生産性が向上する一方、実質賃金は横ばいで推移したことが乖離の要因となったということ。一方、実質的な運用利回りについては、実質賃金が低迷したことが逆に働いて、実績が前提を上回る要因となったことなどが記載されているというところであります。
 次のページの(4)は、今回の実質賃金上昇率の設定に当たっての視点を記載しているというところになりまして、先進諸国の実質賃金の伸びについて要因分解を行ったところ、多くの先進諸国では労働生産性の向上に伴って実質賃金も上昇しているということが確認されたこと。また、注に記載しておりますが、女性や高齢者の就業率が高まる中で労働力不足が続くことが見込まれることを踏まえますと、日本においても状況が変わる転換点にある可能性も視野に入れる必要があるということも留意が必要としております。
 一方、全要素生産性上昇率や労働生産性上昇率については、前提は実績に比べ高めの設定であったことも留意が必要としております。
 (5)が実質的な運用利回りの設定に当たっての視点を記載しております。市場運用を行っている諸外国の年金基金の長期の運用実績を調べたところ、財政検証の前提を上回っていたということ。また、将来日本の実質賃金が上昇に転じますと、スプレッドについてはマイナスの影響がありますが、実質賃金の上昇が見られていた先進諸国の年金基金においても財政検証の前提を上回っていたということがあります。さらに、GPIFは海外の年金基金と同様に長期分散投資によってグローバルな運用を行っていることも考慮する必要があると記載しております。
 4.は経済モデルの建て方についての記載。5ポツは実質賃金上昇率と実質運用利回りの設定についての記載になります。こちらも1月に行った経過報告と同様の記載となりますが、書き方を若干整理しております。4の(1)に続く(2)は、基本的にはこれまでに用いられてきたモデルを用いるというところですが、改善が可能な点については改善していくことを記載しております。
 (3)が総投資率の設定方法の見直しを改善点の一つとして記載しておりまして、(4)は利潤率の算定方式の見直しについての記載となっております。
 (5)(6)はモデルに投入するパラメータについての記載となっております。
 5.の(1)(2)は、労働生産性上昇率を基礎に実質賃金上昇率を設定することを記載しております。その際の実質賃金上昇率と労働生産性上昇率の差については、デフレーターの差のうち作成方法の違いによるところのみ考慮することを記載しているというものであります。
 (3)は実質運用利回りの設定についての記載となります。GPIFの運用実績に利潤率の変化率を乗じて設定するということを記載しております。
 また、前回のケースVIにつきましては、イールドカーブから算出したフォワードレートを用いておりましたが、今回は全てのケースで実績を基礎にする方法が適当というふうにしております。
 6.が今回新たに加わったところで、シナリオ設定についての記載となります。先ほど資料2-2を用いて説明した内容を記載しておりますので、説明は割愛したいと思います。
 11ページ、7.は足下の経済前提の設定についての記載となります。こちらも経過報告と同様の記載となりますので、説明は割愛いたします。
 8.も経過報告と同様の記載となりますので、説明は割愛したいと思います。
 13ページ、14ページは、先ほど見ていただいた経済前提の結果を示しております。
 15ページ、16ページは、委員名簿、開催状況を付しております。
 長くなりましたが、私からの説明は以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、深尾委員、よろしくお願いいたします。
○深尾委員 私のほうからは、今の佐藤数理課長の御説明に2点補足したいと思います。
 1点目はマクロの長期経済成長に関する試算ですが、配付資料2-2の72ページにまとめてあるとおり、内閣府の長期試算の3つのケースにほぼ対応する。特にTFPの上昇のところがほぼ対応する形で試算した場合の経済成長のケースと、それから内閣府の試算というのは経済財政諮問会議の議論等でも使われて、TFPを上昇させたらどうなるか、労働参加率が変わったらどうなるかという政策的な指向の高い議論だと思います。一方で、我々のほうはもう少し保守的なことも考えて、一番下のケース、1人当たりゼロ成長ケースというのが内閣府の試算にほぼ対応している上の3つのケースに付け加わる形で試算を行っていることになります。これによって、かなり幅広めに明るい見通しからかなり悲観的な見通しまでカバーするような試算になっているということになります。
 この点に関して1点付け加えたいのは、TFPの上昇が上の3つのケースは内閣府とほぼ同じで、労働参加についても同じような仮定を置いて、結果のGDPの成長率も同じような結果になっているわけですが、背後にあるマクロのモデルは違うわけです。つまり、我々は資本の収益率が決まると、そこから投資が決まって資本蓄積が決まるという形になっているのですが、内閣府の2060年までの長期試算の場合には、OECDの推計方法に準拠してもう少し簡便な方法で推計しています。したがって、ここに出てきた結果についてはあまり違いませんが、例えば資本係数の動きといったことは少し結果が違ってくる可能性があるということ、つまり、全く同じモデルを使っているわけではないということを確認しておきたいと思います。
 もう一つは、年金に関する経済前提の場合には実質賃金の動向が重要なので、その点についてもう一度確認しておきたいと思います。
 今度は資料2-1の8ページを見ていただきたいのですが、これも既に佐藤課長から御説明があったとおり、実質賃金の将来については、8ページに書いているような前提を置いています。基本的には労働分配率は技術が変わらなくて不変であると考えて、労働生産性の上昇にほぼ対応する形で実質賃金が変わっていくと。ただし、物価の問題については過去の趨勢の要因を考慮に入れて、労働生産性の上昇よりも実質賃金の上昇のほうがやや少なめに出る推計になっています。
 その点を数値上で過去の実績値と比較しながら簡単に確認しておくと、資料2-2の27ページに労働生産性と実質賃金の推移の国際比較の図があります。厚労省にOECDの統計等に基づいて国際的に標準的なデータから作成していただいたわけですが、経済学者としては非常に驚いたことに、日本だけは労働生産性と実質賃金の上昇の間に過去27年ぐらい大きな乖離があって、労働生産性は上昇したけれども、実質賃金は上昇しないということが起きたわけです。これについて要因分解も厚労省の方にしていただきまして、それが同じ資料の25ページにあります。
 28年間の変化で見て、25ページの一番左ですが、日本というのは労働生産性は青い棒グラフぐらい上昇したのに、実線で表されている実質賃金はほとんど上昇しなかった。それはなぜかというと、GDPデフレーターとCPI上昇率の乖離の部分が非常にマイナスに働いた。つまり、労働生産性というのは、名目の生産をGDPデフレーター、国内で生産された最終生産物の価格で割っているわけですが、CPIのほうには輸入品が含まれ輸出品が含まれないなど対象が違うので、その動きも異なるわけです。
 これは後でもう少し詳しく見ますが、GDPデフレーターとCPI上昇率の差の部分が一番大きな乖離を生んだ原因であって、それ以外に間接税・補助金。例えば消費税が上がることで実質賃金は伸びないといった間接税・補助金の要因。あと、労働分配率の変化はほとんどなかったので、ここに表れていません。それから、自営業者等が被雇用者よりも生産性が違うと。自営業者の割合が変わっていくといったことによる要因がグレーの要因。それから、雇主の社会負担というのは、技術で決まってくると考える労働分配分の中には、企業が負担する雇主の社会負担分が入っていますので、社会保障費の企業側の負担が増えれば、この部分が、仮に労働分配率が不変であれば、実質賃金の引下げに働くことになります。それが紫の要因です。そういった要因によって過去実質賃金というのは労働生産性の上昇に比べて伸びなかったわけです。
 最後に、GDPデフレーターとCPI上昇率の乖離、一番大きなオレンジ色の要因についてはさらに詳しい分解がありまして、それが今の資料の57ページにあります。これは毎年結構変化しているわけですが、28年間平均で見ると、57ページの一番右のように、先ほどの年率0.6%。これは年率だと少ないわけですが、28年足せば17%ぐらいの結構大きな割合になるわけですが、そのうちの半分は輸出入の企業、いわゆる日本が交易条件が悪化したことによる要因。最近ウクライナ戦争で原燃料価格が国際的に上がった、円安になったということで、非常に大きなマイナスの交易条件が2022年に生じていますが、これを長期でならすとマイナス0.3%ぐらいの要因であった。
 もう一つは、家計最終消費デフレーターと、SNA統計の家計最終消費支出のデフレーターと、消費者物価指数の変化の乖離の部分。これは統計の作成方法とかいろいろ微妙な問題で生じているわけですが、その要因に分解できるということになります。
 先ほど見ていただいた資料2-1の8ページに書いてある我々の前提というのは、このうちの家計最終消費支出デフレーター変化分と消費者物価指数変化率の乖離の部分、マイナス0.3%部分は今後も続くということを仮定する。だけど、それ以外の要因、今、お話しした交易条件の要因とか、25ページに戻っていただいて、雇主の負担分とか、税・補助金の要因とか、先ほど見ていただいた他の要因については、今後さらにマイナスの効果が働き続けるということはないということを仮に前提にして実質賃金の動きを求めているということになります。マクロで経済成長が決まっていて、技術で労働分配率が決まっていて、労働分配から決まってくる実質賃金と労働分配の乖離の部分というのはこういう要因になるわけですが、そのうちの今お話しした物価統計の要因以外については、今後不変ということを仮定して前提にしているということになります。これが現実に変わってくれば、例えば雇主の社会負担が増えていけば、実質賃金の伸びは停滞するということになるかと思います。
 私からの補足の説明は以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただきました議題1、2につきまして、皆様から御意見・御質問などございましたらお願いいたします。まず、会場からいかがでしょうか。では、是枝委員からお願いします。
○是枝委員 4点申し上げます。
 最初の2点は中間報告時にお願いした点です。まず、インフレが起こることによりCPIと家計最終消費支出デフレーターの差が大きくなる可能性について、資料2-2の103ページで丁寧に検討いただきありがとうございます。現段階ではお示しのとおり、日本においてインフレ率とCPIと家計最終消費支出デフレーターの差について明確な関係がないようですので、一律に0.3%を差し引くという方法で妥当だと思います。
 2点目が資料2-2の104ページに示していただいた男女の賃金格差の傾向についてです。こちらも足下の実績に基づく投影を財政検証の際にぜひお願いいたします。その際、2019年の財政検証では、男女の賃金格差の縮小が2030年までしか続かないと仮定しておりましたが、2024年財政検証では仮定の置き方を変えるべきではないかと考えております。財政検証において過去のトレンドを今後20年程度しか織り込まない考え方としては、今回の経済前提の資料にも高齢者の労働力率の将来推計があります。高齢者の労働力推計については日本が世界トップを走っていますので、世界で未知の領域に踏み込んでいく中、未来永劫労働力率が上がり続けると仮定するのはちょっとやり過ぎなのではないかということなのだと思います。
 しかし、男女の賃金格差については、日本は発展途上国と比べても遅れた状況にあります。日本よりはるかに男女の賃金格差が少ない北欧諸国でも、現在もなお男女賃金格差の縮小トレンドが継続していることを踏まえると、少なくとも現在の男女賃金格差が北欧程度の水準に達するまでは今のトレンドで男女賃金格差の縮小が続くと仮定しても、現段階の投影としては妥当なのではないかと思います。男女の賃金差によって年金支給額の見通しが変わってまいります。今回モデル世帯だけでなく、多様な世帯において所得代替率や年金の水準など見通しを示すということとされますので、その際の前提条件としては男女賃金格差の縮小がかなりの期間続くという前提で試算するべきではないかと考えております。
 3点目はケースの名称についてです。資料2-1の報告の9ページにあるとおり、シナリオの意味を分かりやすく工夫するとしてケースに名称をつけるということはとてもよいことだと思います。ですが、内閣府が行った長期試算におけるシナリオ名は、あくまで国家財政を検討するためのシナリオ名にすぎませんので、そのまま年金の財政検証で同じ名前を使うべきかということはよく検討しなければならないと思います。特にマル3の「現状投影シナリオ」という名称ですが、1つのシナリオだけに「投影」という言葉を使うことが果たして妥当なのか、誤解を招きやすいのではないかと考えております。
 経済前提については、考え得るケースを複数設定した上で、それぞれのケースにおいて年金の長期財政がどのような姿になるのか、投影を行うものであり、その意味ではマル1からマル4まで全て投影であることに変わりはございません。例えば私が名前をつけるならば、1は高成長実現ケース、マル2は国家財政安定ケース、マル3は低成長継続ケースというような呼び方も考えられるのかなと思います。マル4の1人当たりゼロ成長ケースは、このままでよいかなと思っております。
 ぜひほかの委員からも各ケースのシナリオの意味が明確に伝わるような名づけの案をいただきたいと思います。
 最後に、経済前提の数値と財政検証の結果の評価の方法についてです。先ほど数理課長から御説明があったとおり、今回の財政検証の数値についてはかなり幅を持って見るべきということだろうと思います。この年金部会の場はどのケースが最も蓋然性が高いかという議論をする場ではないのかもしれないのですが、今回ケースマル2で用いるTFPの年率1.1%という数字は、私としては大分高めの数字だなと思っております。
 2019年財政検証のケースIIIでは、直近30年の60パーセンタイル値としてTFPを年率0.9%と置いたのですが、当時と比べて直近30年の60パーセンタイル値は下がっているわけで、2019年のケースIIIと今回のケースマル2を比べて、仮に所得代替率が最終的に上がったとしても、それによって年金の見通しがよくなったという話ではないということには留意しなければならないと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、佐保委員、お願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
 私からは経済前提について2点の質問と、オプション試算について発言したいと考えております。
 まず、財政検証の基本的枠組みについて、以前の部会でも発言したとおり、将来推計人口や2020年法改正での参議院附帯決議を踏まえ、現実的かつ多様な経済前提の下で、より実態に即した検証を行うことを念頭に置いた経済前提を設定していただくことが重要と考えております。
 今回4つのシナリオに簡素化したということですが、どういった議論に基づき附帯決議にある「多様な経済前提の下での検証」を充足するという結論に至ったのか、前回検証時の6つのシナリオを踏まえ、今回の4つのそれぞれのシナリオの位置づけをどのように理解すればよいのかについて、専門委員会における議論の御紹介も含め、補足があれば御説明をお願いしたいと思います。
 2点目ですが、「内閣府の中長期の経済財政に関する試算」では、成長実現ケースについて、「官民連携の下、新しい資本主義に基づく重点分野の投資促進等により、イノベーションの活性化や生産の効率化等を通じて、TFP上昇率が2027年度にかけてデフレ状況に入る前の期間の平均である1.4%に到達する」とされています。そのようなことを踏まえてシナリオを設定されていると思いますが、資料2-1の14ページの成長実現ケースについて、想定され得る現実的なシナリオであると理解してよいのか、専門委員会での実際の議論で御紹介いただけるものがあれば、御説明いただきたいと考えております。
 次に、オプション試算についてですが、詳細な条件については今後の事務局の御検討・御判断に一任することは理解した上で、試算の内容について幾つか要望を申し上げておきたいと考えております。
 1点目は適用拡大について、「個人事業所における非適用業種の適用範囲を見直した場合」とありますが、非適用業種だけでなく、5人未満の個人事業所にも適用拡大した場合の試算をいただきたいと考えております。
 2点目も適用拡大についてです。賃金要件の試算について、5.8万円以上に引き下げた場合とともに、賃金要件を撤廃した試算を御検討いただきたいと考えております。また、労働時間要件についても、現在国会で議論されている雇用保険の加入対象に基づき週労働時間10時間以上に拡大した場合と併せて、労働時間要件を撤廃した試算も御検討いただければと思います。
 3点目は拠出期間延長について、この間の発言の繰り返しになりますが、延長期間分の給付に国庫負担がない仕組みは国民の理解が得られるものではないため、国庫負担がある場合のみの試算でよいと私は考えます。
 4点目は、試算に入れていただきたい趣旨ではございませんが、今後の第3号被保険者制度に関する議論に当たり、例えば第3号被保険者制度を廃止して、3号が全て1号に移動した場合の財政への影響のシミュレーションなどを御検討いただければと思います。
 最後に、今回のオプション試算では、在職老齢年金制度や標準報酬月額の上限など、まだ年金部会として結論が出ていない内容が含まれています。試算の条件に設定されていることが結論であると誤認されないよう、検証結果の広報には十分留意いただきたいと考えております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、御質問に対しましてお願いいたします。
○数理課長 経済前提について御質問があったかと思います。前回の附帯決議でもあった多様かつ現実的なという点ですけれども、こちらについては、前回より幅を広くということで多様なものであるということ。かつ現実的というのは、下2つについては、前回よりかなりTFP上昇率等を引き下げて設定しているということで、一番下はTFP上昇率の過去の最低値ですし、現状投影についても直近30年です。直近30年というのは、5年ずれていますので、5年ずれることによってバブル期も外れるということで、実績がかなり低くなっている中での80パーセンタイル値ということですので、かなり低めの設定になっているというふうに理解しております。こういった形で附帯決議にも沿ったような結果になっていると考えております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。佐保委員、いかがでしょう。
○佐保委員 専門委員会の具体的な議論で紹介できるものがあれば教えていただけないでしょうか。
○数理課長 専門委員会でも今のように実績をきっちりと、過去30年の実績分布を踏まえるべきという議論がありましたし、内閣府の長期推計に整合性も取る必要があるだろうという議論があって、こういった設定になっているというところであります。
○佐保委員 ありがとうございます。
 将来の人口や経済の動向は不確実であり、あくまでも想定の上での減少ということですので、必要であればシナリオの追加も検討する必要があると思っております。
 2019年の財政検証でも経済前提の甘さに対して多く指摘があったと理解しております。あくまでも試算の前提であることは理解しておりますが、どのような位置づけのシナリオであるかについて、国民への丁寧な周知が求められると思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 では、たかまつ委員、お願いします。
○たかまつ委員 私からは2点あります。
 第1に、是枝委員が指摘されていましたが、2024年の財政検証では、男女の賃金格差の縮小をどこまで想定するのかということを議論したほうがいいなと考えております。理由としましては、専業主婦をモデルとした年金の考え方というのはやはり古く思いますし、女性の多様な働き方に合わせて男女の年金の格差がどのように変化するのかを正しく認識するということが必要だからです。そのことによって男女の年金の受給額や遺族年金、加給年金、第3号被保険者の制度をどうするかということを具体的に議論できると思っています。
 第2に、3号被保険者を廃止した場合のオプション試算をしたらどうかという提案です。3号被保険者の制度は女性の就労意欲を阻む原因になっているなど、時代に合っていないと思います。どのように維持するのか、廃止するのかも含めた議論を深めるためにも試算をしたほうがいいと考えています。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 同じ列でほかにいらっしゃいませんか。原委員、どうぞ。
○原委員 ありがとうございます。
 私からは最初にオプション試算について。数理課長からもお話がありましたとおり、前回もそうだったと思うのですが、オプション試算はいろんな可能性でもって、どちらかといえば量的な試算をすることができるテーマで行われるものだと思っておりますが、ここでオプション試算の内容にあるからといってそのまま改正が行われるというものではないということは確認させていただきましたので、そうだと思いますし、一方で、このオプション試算の内容にないものについては、改正の検討はしないということでもないということも数理課長からお話しいただいたので、そのように確認しました。確かにオプション試算にないものについては、改正の検討事項からこぼれ落ちてしまうのではないかとちょっと不安に思っておりましたが、今日ご説明いただいたので、その辺りは確認させていただいたと思っております。
 そういった中で、資料1の「オプション試算の内容(案)」というところでご発言もありましたけれども、こういった内容、大枠は良いかと思います。やはり適用拡大のところに注目が集まっているかと思いますし、また、短時間労働者の被用者保険の適用で、もともとは、労働時間とか労働日数で適用になるのかということを定められたものですので、プラスアルファで言えば、週の時間単位での刻みというものを前回よりも少し広げてもいいのではないかと思っております。それは検討いただいてということになるかと思います。
 あと、全体として先ほどの本体試算の中で国民に分かりやすく伝えるという視点も重要ということでありましたが、それはそのとおりだと思いますし、以前より行われているかと思うのですけれども、財政検証は、財政検証時に使用するモデル年金といったものを物差しに使って、所得代替率と年金の実質価値とで将来の年金の水準をチェックしているということだと思いますので、それをきちんと伝えていただいて、特に所得代替率に注目が集まりがちだと思いますが、年金の実質価値、つまりは、将来の年金額を物価上昇率を用いて現在の価値に割り戻した額ということになるかと思うのですが、時間軸で考えるということになるかと思いますけれども、そういったことも併せて発信していただきたいと思います。そして、結果として出てきたときに、誤解のないようにご説明いただき、皆が理解できるような情報を提供していただいて発信していただくことが大切なのではないかと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、よろしければ反対側のサイドから。では、出口委員からお願いします。
○出口委員 私からはオプション試算に関わりまして2点申し上げたいと思います。
 1点目に、総論的なコメントとしてですが、オプション試算に掲げられております項目の多くというのは、所得再分配の機能強化につながる内容になっているのではないかと思います。したがって、所得再分配の機能強化に資するオプションにつきましては、それぞれの見直しによる影響を標準的な収入水準の層だけでなく、収入の低い層、あるいは高い層も含めて分かりやすく示していただく必要があると思っております。
 2点目は標準報酬月額の上限についてでございます。資料上の記載では、ほかの項目と異なり具体的な引上げ幅のイメージがよく分かりません。しばしばこの件について引用される健康保険の上限という話がありますが、厚生年金よりも2割超も高いということですので、このような大幅な引上げが現実的な選択肢になるのかというところは疑問を持っております。財源ありきではなくて、一定のルールに基づいて今後の建設的な議論に資する試算をぜひお願いしたいと思っております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
 経済前提の御報告とオプション試算につきましては、私は了承させていただきます。
 私からはオプション試算の位置づけを中心に2点申し上げたいと思います。まず、オプション試算というのは、他の条件を同一とした上でオプションである、主に制度設計の変更を行った効果を確認するものだということです。一方、公的年金の在り方というのは社会経済にも影響を与えますので、政策を考える上では、オプション試算の他の条件を同一という前提を十分に意識する必要があるのではないかと思います。
 ただ、設計変更による経済社会への影響というのは不確実ですので、そこは経済前提の専門委員会に参画された委員を中心にしまして、専門家の知見とかスキルというものを活用することが重要であると思っております。
 もう一点はお願いになります。財政検証に伴う制度改正というのは、御説明のとおり、必ずしもオプション試算どおりにはならないということです。本日は年金数理部会からの報告もあるようですので、年金数理部会の委員としての発言になってしまうかもしれませんけれども、最終的な制度改正を反映した結果を事後的にも公表していただけると、年金数理部会が公表する財政状況報告との平仄が合います。たまたま前回は追加試算というのがありましたので、一部の経済前提についてですが、改正後の現行制度というのが公表されていましたが、現状はこれが必ずしも担保されていないと思います。この辺りは御検討いただきたいなと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、権丈委員、お願いいたします。
○権丈委員 今日は資料を1つ提出させてもらっています。資料の一番後ろにあります。これは5年前に書いた文章でして、当時新聞で年金に関する誤報、誤った記事が出ていたわけですが、そのとき年金部会で当時の数理課長、本日出席されている武藤審議官が、当方の広報力不足でこういうことになって申し訳ありません、修正されていくようにさらに努力を続けてまいりたいと思いますという発言がこの文章の中にありまして、5年たっても努力不足だよ、みんなというような話が書いてありますので、見ておいてください。
 前回2019年の財政検証の後、私が一番活用したのは、法律で要請された試算とかオプション試算ではなくて、資料4という。これはもう「資料4」と呼んでいましたが、2019年財政検証関連資料でした。あの資料にある足下、2019年度の所得代替率を確保するために必要な受給開始時期の選択とかいうような資料というものは、若い人たちの年金不安を緩和するために不可欠の試算です。
 加えて、小野委員も以前この会議で触れられていた多様な世帯類型における所得代替率というあの資料も、この国の年金は世帯類型、片働きとか専業主婦とかいうのも全く関係なく、独立したものとして設計されていることを実証されている力作でした。残念ながらあの資料4の知名度は高くなくて、ぜひ今回はあのときの資料をアップデートするとともに、新たにいろんな工夫をして財政検証関連資料を作ってもらえればと思っています。
 例えば1年半ほど前から収入の壁騒動が起こりまして、先日数理課長と話していて、なるほどなと思ったのですが、法律では片働き世帯をモデル年金として給付水準をずっと定点観測していくということが求められているわけですが、法律の要請に基づく財政の現況及び見通し、要するに、財政検証の本体試算では女性が就業すれば世帯の年金が増えることを示すことができないというところがあるのです。しかし、今の制度は世帯類型と中立に設計されているので、2人で働いて1人当たり賃金を増やしたほうが年金が増えること。昔からそういう制度になっているわけですが、ただ、2009年に当時の野党民主党の要請で年金局はそういう試算をしています。モデル世帯の男性賃金を1として、配偶者である女性の平均賃金を、当時の男性に対する平均比率0.62として、共働き世帯の試算を年金局がいたしますと、当然共働きのほうが1人当たりが高くなっているので、年金も高くなるのですけれども、片働き世帯よりも共働き世帯の所得代替率が低く出ます。
 そこで、相も変わらず制度を知らない人たち、制度を知らない有識者がいっぱいいるのですが、あのときは八代さんが中心となって日本の年金は専業主婦世帯優遇であることを年金局が明らかにしたと大騒ぎしていました。だから、家計における1人当たり賃金が増えると年金額は増えて、所得代替率が下がるのは当たり前で、そうしたことを知らない人たちが有識者には大勢いるという辺りも前提として丁寧に説明しながら、新しい関連資料をいろいろと工夫して作ってもらえればと思っています。
 東京都のくらし方会議というところでは、年収という1年単位の視野ではなくて、女性が継続就業した場合、生涯収入を試算して、世の中で壁と言われている話などを真に受けないで働き続けたほうがいいよということを示す試算もしていますので、いろんな工夫をしながら、関連資料の中でやってもらえればと思っています。資料4を楽しみにしています。
 ここで本題の資料1に入りたいと思いますが、3ページの下の1つ目の※印に「(名目下限措置の撤廃)について試算をする」と書かれています。これはとても重要だという話をしておきたいと思います。人間というのは面白くて、名目運用利回りが高過ぎると言って公的年金を批判していた人に、間違えているよ、スプレッドが重要だろうと教えると、彼らは過去の過ちを認めることなく、それでも名目運用利回りが大切だという論をでっち上げていくのです。私は何人も見ています。これを「認知的不協和」と呼んでいます。同様に、昔から支給開始年齢の引上げを言っていた人に、マクロ経済スライドが導入された後は支給開始年齢の引上げは必要なくなっているのですよと言っても、そうですかと言って論を変えるようなことは決してしません。昔から言っている支給開始年齢の引上げを言い続けていくための理屈をつくっていきます。
 先週『ルポ年金官僚』という本が出たのですけれども、本の最終章で吉原健二さんは、めったに発動されることのないマクロ経済スライドで給付を減らす仕組みだけで乗り切れるという誤った認識を早く改めるべきと言って、原則支給開始年齢を70歳にすべきと言い続けられています。今の吉原さんがキャリーオーバーとか賃金徹底を理解した上で発言しているかどうか分からないのですが、どうして支給開始年齢の引上げではなく、名目下限措置の撤廃を言わないのか不思議であります。
 名目下限措置が存続する限り、彼らの言うことは100%おかしいと言えない側面はある。この会議でも名目下限撤廃とかマクロ経済スライドのフル適用というのは、東京商工会議所の小林さんとか経団連の出口さんとかも言われて、そして小野委員とか私も言い続けてきたわけですが、これは極めて重要な意味を持っていると思います。
 私の本にも書いていますが、2017年には日本退職者連合は政府要望の中で、それまでにあった「名目下限措置を堅持する」という文言を削っていて、名目下限撤廃を支持するという流れになっているのです。立派なものだと思うのですが。
 令和2年の年金改革のときに、与野党の協議の中で、野党がマクロ経済スライドの見直しというのを完全に放棄させようとしたのですけれども、与党はそこを踏みとどまって、何とか名目下限の撤廃も含むマクロ経済スライドの見直しの文言を残して、基礎年金の低下に対しては王道としての被保険者期間の延長、そのための財源確保を与野党で共に進める修正、附帯決議を与野党でまとめ上げています。
 ということで、不確実な将来に向けたリスクマネジメントの観点からも、そしてキャリーオーバー実行時のショックを緩和するためにも、インフレを経験している今だからこそ名目下限措置の撤廃。小野委員の以前の発言を借りると、年金制度は汗をかく改革。マクロ経済スライドの完全適用という改革というのは、支給開始年齢の引上げを言う昔の世代の人がいるわけですが、そういう世代の人たちに隙を与えないためにも、来年の年金改革の中で優先順位が最も高いのではないかと私は思っています。
 ということで1つ付け加えさせてください。資料2-2の25ページ、先ほど深尾先生が説明してくださったところの補足ですけれども、生産性の伸びに対して実質賃金が上がっていないというところで、GDPデフレーターとCPI上昇率の間、この部分は交易条件の悪化ですね。ほぼ。
○深尾委員 半分ぐらいが交易条件になるかと思います。
○権丈委員 この半分ぐらいがですね。これはある程度仕方がないところ、我々はなかなか動かすことができないところがあるわけで、下のほうに足を引っ張っている税・補助金とか雇用主の社会負担という社会保険料のところ、これは評価するのがなかなか難しいところがあって、この前も話しましたけれども、これが下のほうにあるからといって生産性の伸びが低くなっているという傾向があるわけでもないようなところがあると同時に、今日も国会で子育てのところの財源の話をしていますが、我々からお金を持っていって若い人たちのところにお金が回るわけですね。だから、賃金というものを見なければいけないのは年金の使命ではあると思うのですけれども、我々が生活水準とか社会のウェルフェアを考えていくというときに、消費税が上がったから賃金が下がった、だからよくないのだ、社会保険が上がったから賃金が下がった、だからよくないのだという流れ、一方というのはなかなか厳しいところがあって、所得再分配に使われているので、ある人からある人に所得が流れているというその側面ということを、このデータは年金の財政検証のデータとして読んで、ほかの全体のことを考えていく上では、税・社会保険料、そして消費税を含めたようなところは、所得再分配国家においては少し評価、見方というものを我々は注意しておかないといけないかなと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、小林委員、お願いします。
○小林委員 オプション試算について、被用者保険の適用拡大や在職老齢年金の見直しといった前回と同様の試算に加え、新たに標準報酬月額上限の見直しについても試算を追加していただき、誠にありがとうございます。
 私の方から、1点お願いしたいことがございます。財政検証により、所得代替率の見通しや、諸制度の改革により年金財政に与える影響等が具体的に示され、年末に向けて議論を深めていくものだと考えております。様々なオプション試算も予定されておりますが、あくまで国の財政の観点からの状況チェックになっているものではないかと思います。しかし、事業者の立場からしますと、企業や就労者の負担がどうなるかという観点も、非常に重要なポイントと考えております。
 財政検証の趣旨からは少しずれるのかもしれませんけれども、1月の部会でも申し上げさせていただいておりますように、各試算における社会保険料の負担の変化についても、併せてお示しいただくようお願いしたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、オンライン参加の皆様にお願いしたいと思いますが、挙手機能でお示しいただければ幸いです。いかがでしょうか。駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
 まず、オプション試算の案は、これでおおむね賛成です。ぜひこの柱立てでやっていただければと思います。
 経済前提のほうですが、関連した皆様に御負担をかけて、立派なものができたと思います。ありがとうございます。今回4ケースということで、幾つか大きなばらつきをあえて取っているということで、それはそれで納得できるのですけれども、ちょっと確認したい部分がございます。資料2-2の89ページで、賦課方式の年金においてはスプレッドが非常に重要な役割を果たしてくるということですが、95ページ、前回と比較すると、悲観的なケースにおけるスプレッドの回帰がやや高く出てきているようにも思います。これはどうしてこういう結果になったのか。実質賃金上昇局面に入ると、なかなかスプレッドを稼ぐのが難しくなるのではないかなと思ったのですけれども、割と悲観ケースでも高めに出ているという、この理屈をちょっと説明いただければなと思います。
 関連してP51のところで、従来から外挿されていた投資について、総投資率が利潤率との相関性があるというふうに整理していますけれども、ちょっと見ると、これは年代によってかなり相関がないようにも見える部分があって、単にこの相関係数だけでよかったのか、構造的な変化まで考慮した議論が行われたのか、この辺を少し確認させていただきたいなと思います。できましたら36ページのフローチャートを使って御説明いただくと分かりやすいと思います。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 御質問ということで、お願いいたします。
○数理課長 まず、運用利回り、スプレッドが今回高めになっているということですが、前回のケースVIというのはスプレッドが極めて低い設定になっていたかと思いますが、こちらは設定方法がGPIFの実績から設定するのではなくて、金利のフォワードレートから設定するというやり方を取っておりました。その結果、金利がゼロ金利ということで、低い前提になっていたというところです。ケースVIを金利から設定するというのは、GPIFのポートフォリオでも金利と関連の深い国内債券は4分の1しかないということもありまして、やめるということになりましたので、その点、極端に低いケースがなくなったということであります。
 あと、今回4ケースともGPIFの実績を基に設定するということになっておりますが、実績を確認していただきたく、資料2-2の30ページを御覧ください。30ページは世界各国の年金基金の長期的な運用利回りということで、10年移動平均の分布を見ておりますが、今回も一番高いケースが1.7%となっておりますが、GPIFは一番左側にありますが、10年移動平均の実績の最も低い水準でも1.7%を上回っているということになっておりますし、各国どの年金基金の実績も1.7%より高い水準にあるということであります。
 そういった中で、今回の設定というのは、まず実績がこの5年間、好調であったということで上方にシフトしてきているということと、一番低いケースは、10年移動平均の最も低い水準をベースに設定しているということですので、決して高いものではなくて、非常に保守的に設定しているというものだと考えております。
 もう一点は総投資率と利潤率の相関のお話であったかと思います。この点につきましては、長期的には相関があるのですけれども、実は足下、直近は投資は高い水準を維持しているのですが、コロナ禍で利潤率が下がって、それ以降も下がったままという結果が出てきて、相関から結構外れて、外れ値になっています。こちらについては専門委員会でも議論のあったところであります。
 この要因といたしましては、資本価格の上昇にあるというところでありまして、資本係数が足下で大きく上昇しているために利潤率が下がっています。その資本係数が上昇している要因というのが、資本価格がほかの価格より大きく上昇しているので、キャピタル、評価額が高くなっているということで、資本係数の上昇と利潤率の低下というのが発生しているということです。この点はいろいろ議論になったのですが、まだデータも少ないということですし、今後の推移ももうちょっと見る必要があるだろうということで、今後の課題ということで残されていると考えております。この点はこれからも注視していって、次の財政検証のときに考えていきたいと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 駒村委員、いかがでしょうか。
○駒村委員 P51の想定を変えるか変えないかでどう影響が出るのかなというのに関心がありました。今、まだ議論が残っているというところで、今後どう考えていくか、また教えていただければと思います。
 それから、各基金の実質利回り、29ページの資料です。ぱっと見た瞬間に世界第2位の韓国の積立金がなかったりするのですけれども、選んだ積立金というのは、何か支障があってこの年金基金を選んでいるのでしょうか。そこだけお願いできればと思います。
 以上です。
○数理課長 これは2001年~2022年の運用利回りを見ております。基本的考え方としては、まず実績が20年以上取れた基金しかここに載せていないということで、その中で運用の世界で頻繁に参照されるような基金を選んでいるというものであります。韓国については、たしか20年の実績が取れなかったということだと承知しております。
 以上です。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
○駒村委員 分かりました。結構です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。私からは2点申し上げたいと思います。
 まず、オプション試算をこれから行っていくに当たって、様々に広報されていくと思います。その際に、そもそものところから伝える広報をすることで、国民全体が年金について議論をしていく、その土壌を整えるような、そんな効果を期待したいと思っております。
 年金は所得再分配機能を持ち、国民全体の生きる安心を担保する、広く安心をもたらすものであると思います。その安心を高めるためのオプション試算、ということだと思うのですが、どうしても個人に落としていくと、自分にとって損か得かということとなり、反応的になりやすいものだと思うのです。反応と反応が闘ってしまうと、本来的な議論になりづらいと思います。そもそも年金とは、そしてオプション試算はなぜやるのか、ということ。今、ここで話されているようなことが、ちゃんと厚労省さんからも、マスコミさんの報道によらずに、真っすぐ広報していくようなことが、とても大事なのではないかなと思いました。
 2点目は、まだオプション試算ができるほどの議論の深まりはないと思うのですけれども、非常に増えているフリーランスの方に対することです。具体的なことではないのですが、ここも忘れてはいけないなと思いまして、声にだけ出しておきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 堀委員、お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。私からはオプション試算につきまして3点お願いいたします。
 1点目、適用拡大ですけれども、これはたくさんの委員の方から御指摘がございましたが、以前も申し上げたのですが、雇用保険の適用が20時間から10時間に下がるということに伴いまして、年金ではどうなるのかということにつきましても試算をお願いできればと考えております。
 第2点目の基礎年金の拠出期間延長なのですけれども、これも40年から45年に延長した場合のオプション試算はやる価値があるのではないかと思うのですが、非常に影響が大きいことから、オプション試算をしたからこれがそのまま制度改正につながるのだという形で捉えられないようにお示しいただければと思っております。
 3点目、先ほど権丈委員から御指摘がございましたように、日本は今、世帯類型が多様になってきておりますので、多様な世帯類型も加味したオプション試算をお願いできればと考えております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 武田委員、お願いします。
○武田委員 どうもありがとうございます。
 1点目、経済前提についてですが、経済前提に関する専門委員会には私も参加しており、内容については承知していますので、賛成の立場です。
 先ほどどなたかから過去にはシナリオが甘いという御指摘があったというコメントもいただきましたが、課長からの御説明にもございましたとおり、今回TFPの範囲は前回よりも若干幅広く設定されており、下限という意味でも前回より少しですが、保守的に見ているという点はコメントさせていただければと思います。
 2点目ですが、オプション試算に上げていただいた項目は基本的に賛成の立場です。本日御意見が出ていた第3号被保険者制度の見直しの試算については、制度改革という観点からはぜひオプション試算にも入れていただきたいと思います。一方で、その効果は数字で表しにくい要素もあるように思います。したがって、オプション試算に最終的に入れる入れないにかかわらず、冒頭に課長から御説明いただいたように、オプション試算を仮に行わない場合も、必要な改革メニューとして検討していくことについて、改めてお願いしたいと思います。
 在老の話も出ておりますが、これだけ人手不足の中で、働き方に中立な制度にすることの意味は、本来制度が邪魔をしない設計になっているとしても、人々の意識や行動の結果として就労抑制にきいているのであれば、阻害しない形に変えていくことが重要なのではないかと考えています。
 3点目は、全体としての考え方です。今回オプション試算を行うとしますと、どうしても試算自体に目が行きがちだと思います。オプション試算を行うことによる改革の効果、改革後の姿を想定し、それも踏まえて制度改革を行うことは極めて重要ですが、最終的には今、申し上げたように、社会を中長期的に変えていく、あるいは実態に合わせて制度を見直していく、そうしたことも必要な部分になってくると思います。オプション試算としてしっかり行うと同時に、経済、社会、そして年金財政を考えたときに、どういう改革が必要なのかということを体系的に幅広く議論をしていければと考えます。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 オンラインからはよろしいでしょうか。
 よろしいようですので、最後に玉木部会長代理からお願いします。
○玉木部会長代理 ありがとうございます。
 私からは資料2-2の27ページにあります労働生産性と実質賃金の推移の国際比較の表の左上、日本の部分だけ、ワニの口のように開いているということに関連してコメントを申し上げます。なぜ開いているのか。これははっきり分かっていないのだろうと思います。コロナが広がったときに、日本で何で死者や患者が少ないのかについて、「ファクターX」という言葉は出ましたが、結局、分からないままだったと思うのです。まだこのワニの口が日本だけ開いているといったことについては、ファクターXの部分があるわけですが、これについては、もしかすると我が国が本格的に労働力希少社会に入りつつあるといったことが変化をもたらすかもしれません。したがって、これからの作業を国民に御説明していくに当たりましては、我々が長期にわたって物事を見通そうとしているという姿勢はにじませていただければと思うところでございます。
 さらにコメントを付け加えますと、先ほど権丈委員から資料2-2の25ページの表、寄与度分解しているものですけれども、雇主の社会負担などが下向きに利いているという御指摘がございました。それはそのとおりですが、これは国民に戻っていくわけでございますので、労働の分配の形が実質賃金という形を取るのか、それとも政府を経由した移転の充実という形を取るのか、それは国民の選択の結果でございますので、その点も含めた、我が国という政府を経由した移転が割と大きい国においてこういうことなのだという説明を加えていくと、年金制度あるいは年金制度を含めた社会保障の制度の意味が国民によく伝わるかなと思うところでございます。
 もう一点、ケースの名称について先ほど是枝委員から御指摘がございました。これについては、国民への説明を円滑ならしめるという点で名称のつけ方はなかなか大事なものがあると思いまして、この点では是枝委員に全く同感でございます。これについて考えた場合、内閣府のケース3つは全要素生産性で分けています。どういう世の中になるかといったことはかなりの程度全要素生産性に集約されるという面もございますし、また、年金に関する分析らしさという点では、保守的な一番下のものを加えたといったこともございます。
 あとは、年金らしさという観点から凝った4つの名称にするか、あるいは数字的には同じなのに内閣府が出すものと厚労省が出すもので名前が違うということはちょっと勘弁してくれよという反応が国民からあるかもしれないことに配慮するか、事務局におかれては、国民への説明の円滑という観点から名称については工夫を凝らしていただければと思うところでございます。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 先ほど資料2-2の25ページのところで、確かに1995年から2022年の間に日本における国民所得統計上の労働分配率というのは、95年ぐらいのときに高くて、1回下がってきますね。そしてまた上がってきてという形で、その差というものはほぼないという形で、日本の場合は労働分配率に差がないというのがあるのですけれども、どうも我々の実感として、非正規が増えてくる、低賃金層が増えてくるというと、何かぴんとこないものがあるなと思うわけですが、法人企業統計のほうの公営が入っていませんが、法人企業統計のほうを見ていくと、95年ぐらいから日本の場合は下がってきているというのがあるわけで、その辺りのところも考慮して我々は25ページを見ておく必要があるのかなというのがあります。
 だから、これだけ非正規が増えてきて、低賃金層が増えてきたときに、労働分配率が変わらずにというところは、確かに国民所得統計ではそうなるのですね。だから、それをどう解釈していけばいいかというのは我々のほうで解釈していかないと、玉木部会長代理が言ったように本当はまだ分かっていないというのがあるのかなと思っております。
 以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ほかにございませんでしょうか。よろしいですか。それでは、数理課長、お願いします。
○数理課長 オプション試算、経済前提についていろいろと御意見をいただきありがとうございます。これから事務局のほうで財政検証に向けて計算をしていくということになりますが、特にオプション試算について、できる限り皆さんの御意見を取り入れていきたいと考えているところです。ただし、資料1の2ページのところに戻ってくるわけですが、オプション試算をやるためには、改正後の姿を想定して様々な前提を置く必要があるというものであります。そのため、どういう前提を置けばいいか、事務局としては決められないもの、つまり改革の方向性がある程度決まっているものでなければ、なかなか試算は難しいということがありますので、その点は御理解いただきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 深尾委員をはじめ、経済前提専門委員会委員の皆様におかれましては、専門的な見地からおまとめいただきまして、本当にどうもありがとうございました。引き続き議論を重ねてまいりたいと思います。
 それでは、もう一つ議題がございます。議題3「社会保障審議会年金数理部会の公的年金財政状況報告について」、事務局から説明をお願いいたします。
○首席年金数理官 首席年金数理官でございます。
 3月22日の社会保障審議会年金数理部会で令和4年度の公的年金財政状況報告がとりまとめられましたので、御説明させていただきます。
 まず、資料3-1はポイントでございます。この報告は、年金数理部会が、公的年金の毎年度の財政状況につきまして、各制度・各実施機関からの報告に基づき、専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果をとりまとめたものでございます。
 ポイントの1つ目は、令和4年度の公的年金の収支状況です。ここでは厚生年金の実施機関である国共済、地共済、私学共済のデータも用いまして、共済組合等を含めた厚生年金全体の数値をとりまとめておりまして、それがこの表の厚生年金計の欄の数値になります。また、一番右の欄に公的年金制度全体の数値もとりまとめております。
 賦課方式を基本とする財政運営が行われていることを踏まえまして、運用損益分を除いた単年度収支残と運用損益に分けて分析しておりますけれども、令和4年度は公的年金制度全体でみますと、運用損益分を除いた単年度の収入総額が54.6兆円、支出総額が53.7兆円であったことから、運用損益分を除いた単年度収支残は0.9兆円のプラスでございました。
 また、運用損益は時価ベースで3.5兆円のプラスとなっております。
その結果、時価ベースの年度末積立金は4.4兆円の増加となっておりまして、全体で250.5兆円となっているということでございます。
 2ページは、ポイントの2つ目、公的年金の財政状況の評価でございます。長期的な財政の均衡の観点から評価しております。
評価の結果は枠囲みの中になりますけれども、まず、国民年金第1号被保険者数は、令和元年財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者数は上回る状況が続いていること、それから、令和2年度、3年度を中心に高い運用収益となった結果、積立金の実績が将来見通しを上回っていることが確認されました。
 一方で、令和元年以降の合計特殊出生率ですが、こちらは平成29年人口推計の出生中位と低位の仮定値の間に位置しておりまして、出生中位の仮定値との乖離がさらに拡大していることが確認されました。
 これらの乖離が中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなる。そして、年金財政の観点からは、短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきである。こちらが公的年金の財政状況の評価となります。
 ポイントについては以上になります。
 続いて、資料3-2を御覧ください。こちらは公的年金財政状況報告の概要となっております。分量が多いので、適宜ピックアップして御紹介いたします。
 まず、2ページを御覧ください。こちらは年金数理部会についてまとめておりますけれども、年金数理部会の審議内容は、被用者年金制度の安定性及び公平性の確保に関し、財政検証時における検証、いわゆるピアレビューを行うことと、それから毎年度、各制度の財政状況の報告を求めることでございます。
 被用者年金制度が一元化された後も、制度の安定性の確保の観点から財政検証の結果や各年度の決算の報告を求め審議しております。
 次の3ページに年金数理部会の役割について図示しておりまして、上側に公的年金各制度が行っていること、下側に年金数理部会が行うことをまとめております。
 公的年金各制度では少なくとも5年ごとに財政検証が行われ、その間には毎年度決算が行われるわけですが、年金数理部会では、まず財政検証の後に財政検証のピアレビューを実施しておりまして、財政検証の結果や手法の検証とか、今後の財政検証への提言といったことを行っています。
 また、毎年度の決算の後には財政状況の分析・評価を行いまして、公的年金財政状況報告をとりまとめており、これらの結果について次回の財政検証につなげていく、フィードバックしていくということになります。
 では、中味について御紹介ですが、まず7ページ、項番1を御覧ください。近年の被保険者数の推移をみますと、国民年金第1号被保険者と第3号被保険者が減少し、厚生年金被保険者が増加する傾向が続いています。令和4年度は、公的年金制度全体で0.2%の増加、厚生年金が1.8%の増加となっていますが、今年度の特徴としまして、短時間労働者が44.9%と大きく増加しています。この増加には令和4年10月の被用者保険の適用拡大が影響しております。
 次のページから被保険者の年齢分布の変化などがございますが、こちらは適宜見ていただくとしまして、ちょっと飛んで14ページの項番8を御覧ください。今年度はトピックとして令和4年10月の適用拡大前後の状況をみておりまして、短時間労働者についてどんな集団的特徴の変化があったかといったものを分析しております。
 項番8は短時間労働者の年齢分布の変化をみたものです。折れ線で示した構成割合をみていただきますと、男女共に分布が年齢の高いほうにシフトしたことが分かるかと思います。
 次のページの項番9は標準報酬月額別分布の変化をみたものです。こちらも構成割合をみていただきますと、男女共に山となっている等級に変わりはないのですけれども、分布が標準報酬月額が低いほうにシフトしていることが分かります。こちらは令和4年10月の適用拡大によりまして、企業規模の小さい事業所の短時間労働者が加入した影響と考えております。
 続いて、17ページの項番10を御覧ください。こちらは受給権者の年金総額になります。令和4年度末は公的年金制度全体で1.1%減少しておりますが、こちらの要因としましては、男性及び共済組合等の女性において報酬比例部分の支給開始年齢が64歳に引き上げられたこと、それからまた、令和4年度は年金額が0.4%の引下げであったこと等が影響していると考えられます。
 この後、項番11から14で受給権者の年齢分布や平均年金月額をみておりまして、その後、項番15から17で財政収支の現状などをみておりますので、こちらは適宜御覧いただければと思います。
 ちょっと飛んで、27ページの項番18を御覧ください。ここからは実績と令和元年財政検証の前提や結果との比較を行っています。ポイントでも取り上げましたように、合計特殊出生率の実績は、令和4年には出生中位の仮定値との乖離がさらに拡大したということがみてとれるかと思います。
 右側に65歳平均余命について書いてありますが、こちらはこれまでずっと大体死亡中位のところで推移してきていたのですが、令和4年は実績が前年よりも低下しておりまして、男女共に死亡高位の仮定値を下回るという状況になっています。
 次の項番19は物価上昇率についての比較になります。令和4年の実績は2.5%の上昇ということで、前回の財政検証の成長実現ケース、ベースラインケースのいずれの前提も上回っている状況でございます。
 次の項番20は実質賃金上昇率の比較でございます。対物価上昇率でみた賃金上昇率になりますが、令和4年度の実績は、先ほど前のページでみた物価上昇の影響によりまして、財政検証における前提を下回っているという状況でございます。
 続いて、項番21は実質的な運用利回り、スプレッドの比較でございます。対名目賃金上昇率でみた運用利回りになりますけれども、下の緑のところにも記載しましたように、運用利回りについて比較する際には、長期的な観点からはスプレッドで比較することが適当と考えておりまして、スプレッドで比較しております。令和4年度の実績は、2つの前提のちょうど間にあるような状況ですが、過去5年度分を平均した5年移動平均でみますと、黄色の線になりますが、いずれの前提も上回って推移しているという状況でございます。
 32ページの項番23は被保険者数の比較です。ポイントにもありましたけれども、令和4年度は厚生年金計では実績が将来見通しを大きく上回っております。国民年金第1号被保険者では実績が下回っている状況となっています。
 34ページの項番25を御覧ください。ここから収支の主な項目について比較しています。将来見通しの対象範囲が決算ベースと異なる場合には、財政検証ベースの実績というものを作成しまして、比べられる形で比較しています。保険料収入につきましては、令和4年度は厚生年金計、国民年金勘定共に実績が将来見通しを上回っております。厚生年金については標準報酬総額の実績が見通しを上回ったこと、それから国民年金につきましては納付率の実績が高かったこと、そういったことが影響しております。
 37ページに飛んでいただきまして、こちらは積立金の比較になります。令和4年度末は厚生年金計、国民年金勘定、いずれも実績が将来見通しを上回っている状況です。また、平滑化後の積立金額でみても同じように将来見通しを上回っている状況となっています。
 40ページ、項番30からは積立金の乖離の分析を行っています。人口要素、経済要素に係る実績が将来見通しと乖離することによって、各収支項目の実績が将来見通しと乖離します。その結果、収支残の実績も将来見通しと乖離することになりますが、そういった累積が全て積立金の実績と将来見通しとの乖離のところにあらわれてくるということで、積立金の乖離分析を行っているものです。
 ここに書いてあるように、令和4年度末における乖離について、乖離の発生年度ごとの寄与に分解し、さらに発生要因別に分解するといったことをしております。結果については後でご覧いただければと思います。
 ちょっと飛びまして、44ページの項番34をご覧いただきたいのですけれども、項番34からは厚生年金の財政状況の評価をしております。厚生年金では、今後の保険料収入や新規裁定の給付費が名目賃金上昇率を基本として増減することから、積立金の将来見通しを、賃金上昇率及び物価上昇率の実績と財政検証における前提との乖離に対応する分だけ補正して、「評価の基準となる積立金額の推計値」というものを作成し、それと積立金の実績を比較しています。その差額について、財源と対比するという形で財政状況の評価をしております。
 評価の結果が次のページ、項番35になります。積立金の実績と「評価の基準となる積立金額の推計値」の差額、表で言うとマル3になりますが、こちらはマル4の財源との対比でプラス2.2~2.4%という規模でございました。また、時価評価による変動を平滑化した場合にもプラス2.1~2.2%ということで、いずれにしても積立金の財政検証からのプラスの乖離、こちらが財源の2%程度に相当するということが確認されたということです。
 概要についての説明は以上になります。
 次に、資料3-3を御覧ください。こちらは概要に掲載されたもの以外で、年金数理部会の委員より年金部会でも共有してほしいと御要望があったものなどを報告書から抜粋してお示ししております。
 まず、1ページと2ページは、厚生年金の標準報酬月額別の構成割合をみたものです。実施機関によって分布の形が異なっておりまして、例えば男性の第4号厚年では65万円の割合が大きくなっていますけれども、注に記載しましたように、実施機関により人数の規模が大分異なっておりまして、厚生年金計でみますと、黒の線になりますが、第1号厚生年金被保険者とほぼ同じ形の分布になっております。
 ちなみに、厚生年金計における65万円の割合は、男性が9.0%、女性が1.9%となっております。
 続いて、3ページは繰上げ・繰下げの状況をお示ししております。令和4年度末時点で70歳の老齢厚生年金受給権者の繰下げ率をみていますが、旧厚生年金が2.1%、国共済が同じぐらいで2.0%、地共済が若干低くて1.1%、私学共済が高めの5.1%となっております。ここで言う「旧厚生年金」は、いわゆる民間被用者の方の厚生年金のことで、事業統計ですと、「厚生年金(第1号)」と呼んでいるものの数値でございます。
 また、基礎のみの老齢基礎年金受給権者についてみますと、繰上げ率が14.2%、繰下げ率が3.3%となっています。
 最後、4ページは厚生年金の総合費用率の推移になります。総合費用率は、下のところにも書いてありますように、保険料賦課ベースでみた給付費用の大きさを表す指標となってございまして、積立金を持たない完全な賦課方式で財政運営を行う場合の保険料率に相当するものでございます。令和4年度の総合費用率は、一番左の下になりますが、17.9%となっておりまして、前年度に比べて0.4ポイント低下しています。こちらを保険料率18.3%と比較しますと、これまで総合費用率が保険料率より高い状況が続いていたのですけれども、令和4年度では総合費用率のほうが0.4ポイント低くなったという状況でございます。
 私からの説明は以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 ただいま御説明いただいた事柄につきまして、御意見・御質問などございましたらお願いいたします。それでは、小野委員、是枝委員ですね。まず、小野委員からお願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
 コメントさせていただきましたとおり、年金数理部会の委員ということでございますが、部会長もかつては年金数理部会の部会長をされていたということで、大変僣越ではございますけれども、ちょっとコメントします。
 重複になりますけれども、年金数理部会の役割の一つというのは、公的年金の実施機関からの報告に基づいて公的年金制度全体の実績を分かりやすい形でまとめるということで、これが資料3-1の1ページに該当するということです。
 もう一つの役割は、公的年金の財政状況の評価を行うというもので、これが2ページになりますけれども、評価を言葉にしますと、至極当然の内容だということになりますが、重要なのは、長期的な財政の均衡の観点から評価するということでございまして、本文にもアンダーラインが付されています。詳細につきましては、資料3-2の概要とか本体をぜひとも御参照いただきたいということでございます。
 それと、先ほどの権丈委員の提出資料に関係することですけれども、積立金の名目運用利回りというのは、年金財政にとって何の意味もありません。だから、本日の資料でも公表されておりませんし、この点は年金数理部会も十分認識しているところでございまして、財政の評価に当たっては、実質的な運用利回り、つまり、スプレッドのみで分析をしているということは、改めて指摘をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、是枝委員、お願いいたします。
○是枝委員 2点指摘をさせていただきます。
 1つ目は、資料3-2の27ページにありますが、足下、65歳の平均余命の落ち込みが一時的なものでなく、長期的に続く可能性についても留意していかなければならないということだと思います。2023年についても、まだ簡易生命表が出ていませんが、人口比での死亡率は高い状況が続いておりますので、死亡高位に近いような形で推移するような可能性についても含みおきしておく必要があるだろうと思っております。
 人口推計を見ると、どうしても出生低位のほうに近づいているように見えることから、年金の見積もりについてはかなり甘いのではないかと言われるところですが、死亡についても今度は高位のほうに近づいているようであるので、死亡高位、出生低位といったようなケースも注意深く見ていかなければいけないのかなと考えております。
 2点目は積立金の運用実績についてです。45ページの資料にあるとおり、2022年度末の厚生年金の財政検証において、積立金の実績と評価の基準となる積立金額の差額が財源、年金制度全体の積立金及び将来の保険料との対比でプラス2.2~2.4%程度となっているということですので、ざっくり言うと、最終代替率50%程度と考えると、最終所得代替率が4ポイント程度上振れするような積立金の状況であるということだろうと思います。今回平滑化も行いますので、必ずしも全部足下の運用実績がよいことを織り込むわけではないのでしょうけれども、財政検証において、TFPは過去の実績と比べて高めに設定しているものの、年金の運用利回りや将来のスプレッドについてはかなり保守的に見ているということを述べさせていただきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。オンライン参加の皆様も含めてどなたかおられませんでしょうか。それでは、百瀬委員、お願いします。
○百瀬委員 百瀬です。勤務校の会議の都合で遅れてしまって申し訳ありません。
 非常に基本的なことで、1点だけ質問させてください。今回の説明を受けて、厚生年金の被保険者が想定よりも大きく増加していて、そのことが年金財政にとってプラスになっていると理解しました。その一方で、マクロ経済スライドの調整率は、足下で見た場合、被保険者が増えれば小さくなります。直近で見ても、公的年金の被保険者総数の変動率分はマクロ経済スライドがほとんど利いていない状況になっています。そのことは、長期的には特に大きな影響はないのでしょうか。
○菊池部会長 お願いします。
○数理課長 数理課長です。
 マクロ経済スライドについては、公的年金の支え手の大きさに応じて調整をしていくと。つまり、財政力に応じて調整していくという仕組みが組み込まれているところでして、支え手が増えれば調整が緩やかになっていくという構造になっております。
 支え手が増えれば、確かにマクロ経済スライドが緩やかになるということは、将来の給付水準にその部分だけを見ればマイナスになるわけですが、やはり支え手が増えるということは公的年金にとってプラスの影響が大きくて、トータルで見ればプラスになっていると考えております。
○百瀬委員 長期的にはマイナスがあり得るということなのでしょうか。現状、マクロ経済スライドの調整率がかなり低くなっています。そのことの影響をもう一度教えてもらえますか。
○数理課長 マクロスライドの調整が緩やかになること自体は、長期的には将来の所得代替率を低下させる要因にはなりますが、その一方、被保険者が増えることはプラスの影響があります。どちらが大きいかというと、プラスの影響のほうが大きいと考えております。
○百瀬委員 分かりました。ありがとうございます。
○菊池部会長 駒村委員、お願いします。
○駒村委員 これを参考に、ぜひとも委員の皆様も報告書本体もぜひ読んでいただきたいなと思います。まだ数理部会のホームページではファイナルが載っていませんけれども、その前の部会では素案が出ておりますので、そちらに目を通していただいて、特に先ほどの運用の話については、3-2-9というところで運用利回りが非常によかった理由について評価していますので、そこを踏まえてよく読んでいただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。数理部会のメンバーとして発言しました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。是枝委員、どうぞ。
○是枝委員 先ほど最終代替率の見込みについて4ポイントぐらい上がると言いましたが、年金財源が2~2.4%で、最終代替率が50%ぐらいですので、50%に対して2%ぐらい上がるということですので、1ポイントぐらい上がるという見通しに訂正させていただきます。失礼いたしました。
○菊池部会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。権丈委員。
○権丈委員 今の件とは違うのですけれども、2点ほど。1つは、2004年の年金改革のときに寿命の伸び、余命の伸びと同じように、定数としてのスライド調整率みたいなものを就業者数というところでも考えることはできるわけですが、社会のインセンティブとか前向きにみんなが働いていこうよとかいうこととか、そして長期的に見ていくと就業者数が増えるということは、やはりプラスになるということです。だから、心配されることはよく分かりますけれども、最後ゴクンと来るのではないかというのがよく分かるわけですが、そういう判断であの辺りは実績値に基づいて反映させていくということがあったかなというのがあります。
 もう一つ、今日いろいろな話を伺って、佐藤数理課長が最後に発言されていたことに対する付け加えのような話になるのですが、これまで何回も年金部会で議論をしてきた中で、1人当たりの賃金が同じであれば、負担と給付というものも全く同じになるという日本の年金の根本原則とか、あるいは厚生年金の中に応益原則を加えようというような議論は一度もやっていないのです。そういう議論をやり始めるといろんな大変なことになってくると思いますし、ただ、そこに抵触するようなオプション試算というのはちょっとあり得ないなと今日の話を聞いて思っておりました。
 相当部分は、資料4の2019年財政検証関連資料の中にある「多様な世帯類型における所得代替率」という資料をバージョンアップしていき、そして5年前の数理課長が広報力不足ということを言っていたのですが、年金局はいつも広報力不足なのですけれども、審議官を中心に広報力の強化を図っていくことによって、日本の年金というものがどういう原理で動いているのかということをもう少し徹底した形でやっていく必要があると思っておりますし、先ほどそういうことを全く理解しないままに日本の年金を批判していた八代さんとかいう話をしましたが、誤解している人たちに合わせた形で年金局が試算とかいろんなところで動く必要はないと思っております。ここで必要なのは試算ではなく広報努力だと思いますので、広報努力のほうで誤解している人、間違えている人には対応していってもらえればと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ほかには。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 私も以前年金数理部会委員をやらせていただいていましたので、委員の皆様が地道に毎年度議論されて、この財政状況報告をまとめておられるということは体験してまいりましたので、ぜひ本体部分を御覧いただければと私からもお願いしておきたいと思います。
 それでは、予定しておりました議事は以上で終了といたします。
 本日いただいた御議論で経済前提、オプション試算の内容について、今、権丈委員からも御意見がございましたが、先ほど数理課長からも発言がありありましたけれども、一定の枠組みの中でやってきておりおりますので、方向性としては定まったかとおり考えております。様々な御意見をいただきまして、それも踏まえながらこれからの作業となりますけれども、一応方向性は定まったかとおり考えております。
 これで財政検証に必要な前提は整うことになりますので、事務局におかれましては、財政検証の作業を進めていただき、作業が終わりましたら年金部会に御報告をお願いいたします。
 年金部会といたしましても、財政検証結果、オプション試算の結果を出されましたら、これらを踏まえて実りある議論を進めていければと考えてございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今後の予定について事務局からお願いします。
○総務課長 本日もありがとうございました。
 次回の議題や日程につきましては追って連絡をします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議はこれにて終了させていただきます。大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。