第1回働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会(議事録)

日時

令和6年2月13日(火)16:00~17:30

場所

東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 3階 第1会議室

出席者

会場出席委員

議題

  1. (1)座長の選出について
  2. (2)働き方の多様化と被用者保険の適用の現状について
  3. (3)今後の進め方について

議事

議事内容

○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第1回「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中で御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 本懇談会の座長が決まるまでの間は、事務局が進行役を務めさせていただきます。私は、年金局年金課年金制度改革推進官の芦田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本懇談会は、年金局長と保険局長の下で開催するものです。第1回の開催に当たりまして、年金局長の橋本及び保険局長の伊原より御挨拶申し上げます。 
○橋本年金局長 年金局長の橋本でございます。
 私のほうから最初に御挨拶させていただきます。
 本日お集まりいただきました皆様方におかれましては、大変お忙しい中、本懇談会の構成員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。御礼を申し上げたいと思います。
 被用者保険と呼んでおりますが、健康保険あるいは厚生年金保険といったサラリーマンが加入する仕組みである医療・社会保険制度、こういったものにつきまして、ずっと以前はフルタイム相当で働いている、いわゆる正社員と言われる方々を対象とする、そういった仕組みとして長らく運用されてまいりました。
 しかしながら、短時間労働者を含めて働き方の多様化というものが世の中で進行していく中で、そのままではよくないだろうということで、労働者にふさわしい保障を実現していく、そういう観点から、平成28年以降、適用範囲の見直しを順次進めてまいりました。
 適用範囲の在り方につきまして、年金制度改正のタイミングで検討を重ねてきておるわけでございまして、前回は令和2年の法改正を行っております。今年は5年に一度の財政検証を行う年でもございまして、これに合わせて社会保障審議会年金部会におきまして、既に昨年から適用拡大に関わる議論を開始いたしてきております。
 一方、適用拡大というのは年金制度のみならず医療保険制度にも関わることでございますし、これまで順次進めてまいりました拡大の経緯といった状況をよく見てみますと、そういった中での過去の実績あるいは雇用の現場の状況をよく踏まえ、そしてまた現場の状況をいろいろな方々からお聴きしながら丁寧に進めていくことが非常に大事であるということをこれまで痛感いたしてきております。そういったことから、関連分野の御知見を有する皆様方から、年金部会や医療保険部会における検討に資する御意見や御助言をいただきたく、別途、こういった場を設けさせていただきました。
 長らく議論を続けてきた大変難しい課題ではありますけれども、働き方に中立的な制度を考える上でも、また一人一人の働く人にとっての生活保障、社会保障というものを充実させていく上でも、非常に大事なテーマであると考えております。構成員の皆様方におかれましては、ぜひ率直に御議論いただきまして、忌憚のない御意見をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 私からの挨拶は以上でございます。
○伊原保険局長 保険局長でございます。
 今、年金局長のほうからもお話がありましたように、今回の懇談会、長い期間ずっと語り継がれて議論されてきたことでございますけれども、改めて今回、年金制度改革との関連でまたしっかり取り組むということで、構成員を引き受けていただきましてありがとうございます。どういう形で進んでいくかはまだ分からないところでございますけれども、最後までよろしくお願いいたします。
 先ほど年金局長のほうから、被用者保険の適用拡大の経緯あるいはこの懇談会の趣旨を御説明させていただきましたけれども、被用者保険を取り巻く状況を考えてみると、適用拡大の当初の議論にありました働き方の多様化といったテーマに加えまして、昨今の人手不足、こうした議論の中で状況もいろいろ変わってきたところがございます。いわゆる年収の壁による就業調整の問題とか、あるいは当面の対応策としての年収の壁・支援強化パッケージといった新たな動きも出てきているところでございまして、こうした動きの中で、今後さらに被用者保険の適用の在り方を考えるに当たりましてはどのように考えていくのかということについて、いろいろ多角的に考えていく必要があると、このように考えてございますし、年金制度に与える影響もさることながら、医療保険制度、やや年金と違うところもございます。こうした中で、この医療保険制度はどのように影響を受け止めていったらいいのか、考えていかなければいけないことも多いのではないかと思っております。
 次回以降、適用拡大の影響や課題、それから労働者の方々の就労の実態につきまして、関係する団体からのヒアリングも予定していると承知してございますけれども、構成員の皆様におかれましては活発に御議論いただきまして、このテーマについて多角的な検討を進めさせていただければと思っております。
 何とぞよろしくお願い申し上げます。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 続きまして、構成員の皆様を御紹介いたします。
 資料1として名簿の添付もしておりますけれども、本日御出席いただいている方のお名前を五十音順で御紹介いたします。会場の座席ではスクリーンのほうに向いて左手奥側からとなります。
 秋山構成員でございます。
 五十嵐構成員でございます。
 池田構成員でございます。
 伊奈川構成員でございます。
 海老原構成員でございます。
 川又構成員でございます。
 菊池構成員でございます。
 テーブル右側に回りまして、手前からです。
 佐久間構成員でございます。
 酒向構成員でございます。
 佐藤構成員でございます。
 佐保構成員でございます。
 嵩構成員でございます。本日、オンラインでの御参加でございます。
 土井構成員でございます。
 永井構成員でございます。
 松浦構成員でございます。本日はオンラインでの御参加です。
 最後に松原構成員でございます。本日はオンラインでの御参加です。
 ありがとうございました。
 構成員の皆様の御紹介は以上です。
 続きまして、事務局の紹介をいたします。保険局、年金局の順に紹介いたします。
 保険局長の伊原でございます。
 大臣官房審議官の日原でございます。
 総務課長の池上は、業務の都合で少し到着が遅れております。
 保険課長の山下でございます。
 総務課医療保険制度改革推進官の角園でございます。
 保険課課長補佐の小林でございます。
 続きまして、年金局長の橋本でございます。
 大臣官房審議官の泉でございます。
 総務課長の小野でございます。
 年金課長の若林でございます。
 事業管理課長の水野でございます。
 年金課課長補佐の道上でございます。
 事務局の紹介は以上です。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 本日の懇談会はペーパーレスで実施しております。傍聴の方は厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
 本日の資料は、資料1「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」の開催要綱と構成員名簿。
 資料2「働き方の多様化と被用者保険の適用の現状について」。
 資料3「今後の進め方について(案)」。
 資料4「御議論いただきたい事項」。
 資料5「ヒアリングの実施について(案)」。
 参考資料「年金部会の概要及び主なご意見について」。
 これらを御用意しています。
 続きまして、この懇談会の運営につきまして少し御説明いたします。
 本懇談会は、公開することにより個人等に不利益を及ぼすおそれがある場合など、特段の事情がある場合を除き公開いたします。
 また、資料につきましても原則公開とし、懇談会の内容については、厚生労働省のホームページにお名前も含めて議事録として掲載する予定です。あらかじめ御了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、これより議事に入らせていただきます。
 カメラの方はここで退室をお願いいたします。
 それでは、まず議題(1)「座長の選出について」でございます。
 開催要綱で構成員の互選により選出することとされております。どなたか御意見ございますでしょうか。
 伊奈川構成員、お願いします。
○伊奈川構成員 ありがとうございます。
 僭越ではありますけれども、私としては菊池構成員にお願いできればと考えております。年金と医療保険、両方またがる問題ですし、社会保障全般に関わりますので、そういった点で菊池構成員がいいのではないかと考えております。
 以上であります。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 それでは、伊奈川構成員より菊池構成員を推薦する御意見がございましたが、御異議などございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、特に御異議などございませんので、菊池構成員に座長をお願いすることとしたいと思いますが、菊池構成員いかがでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、菊池構成員に座長をお願いすることといたします。菊池構成員は座長席への御移動をお願いいたします。
(菊池座長、座長席へ移動)
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 それでは、よろしければ座長より一言御挨拶をお願いいたします。
○菊池座長 ただいま座長を拝命いたしました菊池でございます。大変身の引き締まる思いでおります。
 被用者保険の適用の在り方に関しては、両局長からお話がございましたとおり、かなり長きにわたって数度の制度改正を経て今日に至っているということで、なお重要課題と認識してございます。さらに全世代型社会保障構築会議におきましても重要な論点として挙げられておりまして、その意味でも政府にとっての重要政策課題であるということかと思います。
 今回、関係の皆様に御参集いただき、忌憚のない御意見を賜ることを通じまして、この課題について深めていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 ありがとうございました。
 それでは、これ以降の進行を座長にお願いいたします。
○菊池座長 それでは、僭越ながら進行をさせていただきます。
 まず、議題(2)「働き方の多様化と被用者保険の適用の現状について」、そして議題(3)「今後の進め方について」、これらに進みたいと思います。まとめて事務局から説明をお願いいたします。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 引き続き芦田のほうから資料の御説明を申し上げます。資料2から5まで、まとめて御説明いたします。
 まず、資料2「働き方の多様化と被用者保険の適用の現状について」を御覧ください。
 2ページ目が資料の構成となっておりまして、1にありますように、まず「被用者保険の適用拡大に関するこれまでの経緯」の資料になっております。
 2から4までが「短時間労働者に対する被用者保険の適用について」「個人事業所に係る被用者保険の適用について」「多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方」についてということで、概要資料などを載せております。
 参考1の関連するデータや参考2の年金制度・医療保険制度の概要につきましては、時間の都合上、説明を省略いたします。
 それでは、3ページ目から1のこれまでの経緯について御説明申し上げます。
 4ページ目ですが、被用者保険の適用拡大につきましては、そちらに記載のとおり、被用者にふさわしい保障の実現、働き方や雇用の選択をゆがめない制度の構築、社会保障の機能強化、こういった基本的な考え方の下にこれまでの取組が進んできております。
 5ページ目です。就労形態の多様化などを背景といたしまして、短時間労働者への被用者保険の適用に関する検討は2000年頃から行われてまいりましたが、負担増となる事業主側の経営への影響に対する懸念などもありまして、段階的に取組が進められてきております。検討が進められた結果として、平成19年に一度改正法案が提出されております。こちらは国会のほうで廃案となっておりますが、その後、社会保障と税の一体改革の中で、平成24年改正で従業員数500人超の企業などで働く週所定労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上、勤務期間1年以上、学生は適用除外といった要件を満たす短時間労働者への適用が実現いたしました。
 その後、平成28年改正において、従業員数500人以下の企業等についても、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大が可能となりました。
 そして直近の令和2年改正におきましては、勤務期間1年以上という要件を撤廃するとともに、従業員数につきましては2段階の施行となっておりますけれども、従業員数50人超の企業等まで適用が拡大されました。
 また、個人事業所については士業に適用が拡大されました。
 6ページ目を御覧ください。こちらは今申し上げた令和2年改正のときの改正法の附則や国会での附帯決議についての資料です。改正法附則第2条第2項におきましては、一番上の囲みのとおり、厚生年金保険及び健康保険の適用範囲について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとされております。
 その下が衆議院厚生労働委員会の附帯決議でございまして、さらなる適用拡大に向けて検討を促進すること、特に企業規模要件についてはできる限り早期の撤廃に向け速やかに検討を開始すること、こういったことが盛り込まれております。
 その下、参議院の厚生労働委員会の附帯決議におきましては、個人事業所に係る適用業種の見直しも含めたさらなる適用拡大に向け検討を促進すること、企業規模要件については、できる限り早期の撤廃に向け速やかに検討を開始すること、労働時間要件や賃金要件に係る適用拡大についても検討に着手し、早期に必要な措置を講ずること、また、複数の雇用関係に基づき複数の事業所に勤務する方についても、実務上の実行可能性も踏まえつつ、雇用保険の取扱いなども考慮し、該当する労働者にふさわしい保障の在り方について検討を行うこと、こういったことが盛り込まれております。
 7ページ目からが令和4年12月に取りまとめられました全世代型社会保障構築会議の報告書です。
 7ページ目は抜粋になっておりますけれども、8ページ目で幾つか御紹介いたしますと、まず週20時間以上勤務する短時間労働者につきましては、企業規模要件の撤廃について早急に実現を図るべきであるとされております。
 その下、個人事業所の関係ですが、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種については、そういった状況の解消を早急に図るべきであるとされております。
 その下、5人未満を使用する個人事業所についても検討すべきであるとされております。
 さらにその下ですけれども、20時間未満の短時間労働者についても見直し、適用拡大を図ることが適当と考えられることから、検討を着実に進めるべきであるとされております。
 一番下ですけれども、マルチワーカーの方について、いずれの事業所においても単独では適用要件を満たさないものの、労働時間などを合算すれば適用要件を満たす場合については、実務的な課題の解決を図った上で、被用者保険の適用に向けた具体的な検討を進めるべきであると、このようになっております。
 続きまして、9ページ目にフリーランス・ギグワーカーについてということで一番上に記載がございますけれども、こうした方々につきましては、被用者性の捉え方などの検討を深め必要な整理を行うとともに、より幅広い社会保険の在り方を検討する観点からの議論を着実に進めるべきであるとされております。
 具体的にはということで、現行の労働基準法上の労働者に該当する方々については、被用者性も認められ、適用除外の対象となる場合を除いて被用者保険が適用される旨を明確化した上で、その適用が確実なものとなるよう、必要な対応を早急に講ずるべきである。
 その上で、労働者性が認められない方々に関しては、新しい類型の検討を含めて、被用者保険の適用を図ることについて、フリーランス・ギグワーカーとして働く方々の実態や諸外国の例なども参考としつつ、引き続き検討を深めるべきであると、このような指摘がされております。
 10ページ目でございますけれども、こうした報告書の内容を踏まえまして、引き続き検討を進めるべきということが昨年末に閣議決定されているところでございます。
 経緯は以上でございまして、11ページ目からがそれぞれの各論についての概要資料になってまいります。
 11ページ目からが「短時間労働者に対する被用者保険の適用について」ということで、12ページ目、これまで進めてまいりました適用拡大の概要となっております。経緯のところで御紹介した部分が多いですので、重複になりますので具体的な説明は省略いたしますけれども、繰り返しになりますが、一番右側、令和2年の改正で、勤務期間1年以上の見込みについては撤廃となり、企業規模要件については、2022年10月の段階で100人超の企業等まで適用がされておりまして、本年10月に2段階目の施行ということで、50人超の企業等まで適用が拡大するという形になっております。
 13ページ目です。短時間被保険者数と対象事業所数の推移です。左側が短時間被保険者数ということで、適用拡大の取組が始まって以降、増加してきておりますけれども、一番新しい数字、2023年9月末の時点で、強制適用分は87万4405人、任意適用分は1万2048人となっております。
 右側、特定適用事業所数ですけれども、こちらも同じ2023年9月末の時点で、強制適用分は8万1243事業所、任意適用分は1万950事業所となっております。グラフ上、大きく伸びている部分があるかと思いますけれども、こちらは先ほど御説明いたしました2022年10月に企業規模要件が広がったところで、大きく数が伸びています。
 14ページ目を御覧ください。適用拡大の効果ということで、人数についての規模感を表しております。雇用者全体が5700万人という中で、この絵は横に労働時間、縦が適用事業所かどうかとなっておりますけれども、週30時間以上適用事業所で働く方、適用拡大前からの従来の適用対象となりますが、こちらは4500万人となっております。同じように週30時間以上働く方で適用事業所以外の方々が200万人くらいいらっしゃると見ております。
 真ん中の辺り、週20時間から30時間までで働く方につきまして、この辺りが適用拡大による対象となっておりますけれども、青い部分が適用拡大を既に実施済み、企業規模要件で言いますと101人以上という範囲の方々が90万人です。
 その下、本年10月から企業規模要件51人以上に拡大された後の対象となる方が20万人程度と見込んでおります。
 その下、310万人というのが、企業規模要件や非適用業種などによって、なお対象とならない方々でありまして、その右側、週20時間未満で働かれている方も560万人ということでございます。
 15ページ目を御覧ください。現行の短時間労働者に対する被用者保険の適用要件の考え方について整理をした資料となっております。
 まず1つ目、週の所定労働時間が20時間以上あることという考え方ですけれども、短時間労働者が被用者保険の適用対象にふさわしい被用者としての実態を備えているかどうかを判断する基準ということで、当時、雇用保険法の適用基準の例も参考にしながら設定をされたものです。
 2番目が、賃金が月額8.8万円以上であること。こちらは国民年金第1号被保険者の負担や給付の水準とのバランスを図る観点から定められたものです。
 3番目、学生を適用対象外とすることですが、こちらは短期間で資格変更が生じるため手続が煩雑になるというような考えから、適用対象外となっているところでございます。
 一番下、4つ目、一定規模以上の企業を強制適用対象とすること。こちらは中小の事業所への負担を考慮いたしまして、激変緩和の観点から段階的な拡大を進めていくために設定されたものです。こうした考え方のものでございますので、この要件につきましてはほかと異なりまして法律本則に規定されているものではなく、改正法の附則に、当分の間の経過措置として規定されているものです。
 続きまして、16ページ目でございます。短時間労働者の適用拡大の関係で、令和2年改正における議論の経緯です。上側の枠が5年前の「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」における議論の取りまとめの抜粋でございます。その下が年金部会における議論の整理となっておりまして、先ほど御説明した制度改正につながる議論が行われておりますけれども、今回との関係で申し上げますと、年金部会の議論の整理の下のほうを御覧いただければと思いますが、今後、令和2年改正後の年金制度改革の方向性ということで記載がございます。今般、令和2年の改革としては、短時間労働者に対する適用拡大は、中小企業への負担に配慮する観点からまずは50人超の企業までの適用となったが、本来は企業規模要件を撤廃し、50人以下の企業に対しても被用者である者には被用者保険を適用すべきである。したがって、今後は、今回の50人超規模までの適用拡大により生じる影響の検証を行った上で、さらなる拡大をどのように進めていくかを議論すべきである。検証の際は、今回の適用拡大で中小企業や従業員がどのように行動したか調査するとともに、企業経営にどのような影響を与えたかなどについて、関係者からの意見を聴くことも必要であるとされているところでございます。
 以上を踏まえまして、17ページ目でございますけれども、短時間労働者の適用拡大に関しましては、イメージ図のとおり、企業規模要件、時間要件、賃金要件などについて検討を行うことが考えられるところでございます。
 続きまして、18ページ目以降、3の「個人事業所に係る被用者保険の適用について」でございます。
 まず、19ページ目を御覧ください。こちらに記載のとおり、法人事業所であれば常時1名以上使用される者がいる場合には強制適用となりますが、個人事業所の場合には、常時5名以上使用される者がいて、法定17業種に該当する場合に強制適用となります。これら以外につきましては強制適用外ということで、ただ、労使合意により任意に適用事業所となることは可能です。法定17業種についてはこのページの下のほうに記載をしております。
 20ページ目です。今の適用業種・非適用業種につきまして、日本標準産業分類に基づいて、その区分について整理した資料となっております。
 21ページ目が被用者保険の強制適用事業所の変遷でございます。先ほど申し上げた法定17業種との関係で申し上げますと、士業を除く16業種につきましては、真ん中辺り、昭和28年改正のときまでに対象となった業種でございます。
 令和2年改正において、先ほど申し上げましたとおり17番目の士業について追加となったところでございます。
 22ページ目が先ほどと同様に、令和2年改正の際の前回、5年前の懇談会、また年金部会における議論の取りまとめ、整理についてまとめた資料となっております。こちらも年金部会の枠の下のほう、今後の年金制度改革の方向性というところを御覧いただければと思いますが、本来、被用者には全て被用者保険を適用すべきとの原則からすると、この適用業種についても、その他の業種への拡大を引き続き検討すべきである。さらに労働者にとって少しでも早期に保障が確保されることが望ましいことから、各業界の任意包括適用の活用を促す取組状況を適宜聴取・把握していく必要があると、このようにまとめられているところでございます。
 続きまして、23ページ目以降が4の「多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方」についての資料です。
 24ページ目は、先ほど御紹介しました全世代型社会保障構築会議の報告書のマルチワーカーに関係する部分の抜粋の再掲です。
 次の25ページ目を御覧ください。こちらが複数事業所で適用要件を満たす方の適用関係について整理した資料です。厚生年金保険・健康保険の適用に当たりましては、適用要件を事業所ごとに判断しております。これが現行の制度です。複数事業所に勤務する場合、それぞれの事業所で適用要件を満たす方については、各事業所において適用となります。保険料につきましては、適用となる各事業所における報酬を合算して決定しております。
 イメージを持っていただくよう、下に事例を4つほど挙げております。合計週40時間で複数事業所に勤務した場合の適用事例ということですが、左上の事例1は事業所A、Bにつきまして、Aのほうでは30時間働いているけれども、Bのほうでは10時間しか働いていないという場合には、事業所ごとで見た場合にAのほうで要件を満たすということになりますので、A事業所について適用、標準報酬月額についても事業所Aの報酬から算定ということになります。
 右側の事例2は、企業規模要件を満たす事業所C、Dにおいて、週20時間ずつ働いているというケースでございまして、このような場合には、いずれの事業所についても適用となりますので、標準報酬月額についてもそれぞれからの報酬を合算して算定となります。
 左下、事例3ですけれども、事業所Fのほうが企業規模要件を満たしていないというケースでございますので、企業規模要件を満たす事業所Eとの関係でのみ適用となり、標準報酬月額も事業所Eの報酬から算定となります。
 事例4につきましては、事業所G、Hともに企業規模要件を満たさないというケースでございまして、このような場合はいずれも非適用ですので、国民年金・国民健康保険の適用となってまいります。
 マルチワーカーの方の関係で26ページ目、同様に令和2年改正における議論の経緯についてまとめた資料です。
 まず、5年前の懇談会におきましては、下線のところですけれども、複数事業所で就業する方については、該当する労働者にふさわしい保障を確保する方策について、実務上の実行可能性も踏まえて引き続き議論していく必要性や、現行の適用の仕組みの効率化を図る必要性が指摘されたと記載されています。
 下の年金部会における議論の整理におきましては、下のほうを御紹介しますけれども、兼業・副業を含め、適用基準を満たさない就労を複数の事業所で行う方に対する保障の在り方について、事業主の責任で適用事務を行うという被用者保険の基本的枠組みや実務上の実行可能性、適用拡大の進展状況なども踏まえつつ考えるべき課題であると、このように取りまとめられております。
 続きまして、27ページ目は先ほどと同じように全世代型社会保障構築会議の報告書について、フリーランス・ギグワーカーについてという部分の再掲です。
 28ページ目は、フリーランスやギグワーカーと呼ばれる方々がどういった方々かということで、ガイドラインなどの記載ぶりについて御紹介をする資料としております。
 29ページ目を御覧ください。健康保険法・厚生年金保険法における「使用される者」の考え方について整理した資料です。健康保険法・厚生年金保険法におきましては、被保険者は適用事業所に使用される者となっております。こちらの「使用される者」の解釈・運用といたしましては、適用事業所に労務を提供し、これに対し事業主が一定の報酬を支払うという使用関係がある者であると解釈・運用されております。
 その下の枠ですけれども、労働基準法の労働者は「使用される者」に含まれると解釈されております。
 また、その下ですけれども、請負関係にある者につきましては、原則として「使用される者」ではないため被保険者とされないところではございますが、事実上の使用関係にあると言えるような方については、その事業主に使用される者として、被保険者となる場合がございます。
 30ページ目を御覧ください。社会保険行政と労働行政の連携についての資料です。社会保険行政におきましては、従来から、雇用保険被保険者情報の活用など労働行政と連携した取組を進めてきておりますけれども、昨年発出した通知におきまして、現行の労働基準法上の労働者に該当する方々につきましては、被用者性も認められるという旨を明確化しております。
 その上で、右側のほうですけれども、労働基準監督署において労働者であると判断した事案につきましては、日本年金機構などに情報提供が来るようになっておりまして、日本年金機構のほうでは提供された情報を活用して、厚生年金保険・健康保険の適用要件に該当するか事業所調査を実施いたします。適用要件に該当すると判断された場合は、事業所に対して加入指導などを行っているところでございます。
 31ページ目、32ページ目は、諸外国の年金制度の適用範囲、特に自営業者の扱いについて、分かる範囲で整理をした資料となっております。
 まず、年金制度の適用範囲につきましては、稼働収入のある方に課せられているのが一般的でございまして、我が国のように無収入の方についても強制加入の被保険者として適用している制度設計というのは例外的です。
 そうした中で、自営業者の方への適用につきましては、アメリカ、フランス、スウェーデンのように報酬比例の年金制度に組み込まれている国や、イギリスのように基礎年金のみを対象とする国、また、ドイツのように原則として対象外とする国、こういったような3つくらいの分類をすることができます。
 33ページ目、医療保障制度について同じように諸外国について整理をした資料です。例えばフランスについて見てみますと、国民の99.9%が加入する国民皆保険となっておりまして、職域ごとに被用者制度、非被用者制度などに加入するとともに、強制適用の対象とならない方については、普遍的医療給付制度の対象となっております。
 スウェーデンやイギリスにおきましては、全居住者を対象として、税方式によるサービスが提供されています。
 一番右側、ドイツでは被用者は職域や地域ごとに公的医療保険に加入をしておりますが、一定所得以上の被用者、また自営業者、公務員などは強制適用の対象とはなっておりません。ただ、強制適用の対象でない方に対しては、民間医療保険への加入が義務づけられておりまして、そういった意味で事実上の国民皆保険となっております。
 34ページ目を御覧ください。フリーランス・ギグワークの関係で、同様に5年前の懇談会、そして年金部会の議論について整理した資料です。
 まず上半分の懇談会についてですけれども、こちらのほうでは、雇用類似の働き方への対応については、被用者性の高い個人事業主の保護を図る観点から、制度上・実務上の課題も踏まえつつ、働き方の多様化の進展に応じてどのような対応ができるか、引き続き議論していく必要性が指摘されたとなっております。
 下の年金部会でございますけれども、フリーランスやギグワークなどで働く方につきましては、実態は雇用に近い働き方をしている方への保障の在り方についての問題提起がされており、こうした問題は労働法制上の整理とともに、保険料を賦課する報酬や保険料負担、納付を行う方の定義などの従来の被用者保険にはない困難な論点をはらむ問題であるが、働き方の広がりなども踏まえつつ検討していく必要性が指摘されたとなっております。
 先ほど申し上げたとおり、35ページ目以降の参考1、2につきましては、説明を省略いたします。
 このまま資料3以降も説明をいたします。
 お手元、資料3「今後の進め方について(案)」を御覧いただければと思います。
 まず、こちらの紙の一番上、第1回、本日でございますけれども、キックオフの回ということで、制度の現状について今御説明申し上げました。そしてこの後、今後の進め方についてお諮りし、そちらの進め方でよろしければ、次回以降に進んでいくことになってまいります。
 イメージといたしましては、次回、第2回から第4回まで、3回ほどかけて、時期としては春頃までになってまいりますが、関係団体へのヒアリングを行ってはどうかと考えております。その上で第5回以降、本年夏頃にかけましてヒアリングなどの結果の整理、意見交換、論点整理、そして議論の取りまとめと進めていってはどうかと考えております。
 続きまして、資料4を御覧ください。
 改めまして、こちらの懇談会で御議論いただきたい事項についてでございます。短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方、個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方、複数の事業所で勤務する者、フリーランス・ギグワーカーなど多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方、こうした論点につきまして、労働者の就労実態、事業所や医療保険者に与える影響、過去の適用拡大施行時の状況などを踏まえながら御議論いただきたく存じます。
 続きまして、資料5「ヒアリングの実施について(案)」を御覧ください。
 先ほど申し上げましたとおり、次回以降、3回くらいに分けて、関係団体からのヒアリングを実施してはどうかと考えております。
 「1.趣旨」でございますけれども、今回の検討に資するよう、労働者の就労の実態、被用者保険の適用拡大の影響・課題、働き方の多様化が進展することに伴う課題などを聴取するため、関係団体からのヒアリングを実施するというものでございます。
 ヒアリング先につきましては、先ほど御議論いただきたいと申し上げた3つの点に関係する団体、そして労働者の団体からヒアリングを実施してはどうかと考えております。
 ヒアリング事項などにつきましては、1団体当たり30分程度を目安として行いまして、具体的なヒアリング事項につきましては、2ページ目の別紙でございます。
 まず、1の労働者の就労実態についてということで、短時間労働者の雇用・就労状況、短時間労働者の雇用・就労を取り巻く環境変化、個人事業所における雇用の状況、こういったようなことが考えられるかと思います。
 2の被用者保険の適用拡大の影響・課題についてですが、過去の適用拡大が短時間労働者や企業に与えた影響、現在の短時間労働者の適用要件に関する課題、現在の個人事業所の適用範囲に関する課題、さらなる適用拡大が行われる場合の影響見込み、そして適用拡大への対応を行う上で、有効と考えられる取組・支援、こういったようなことが考えられるのではないかと思っております。
 最後に3、働き方の多様化が進展することに伴う課題についてということで、多様な働き方を行う労働者の実態、働き方が多様化することで生じる被用者保険の適用に関する課題、こういったことについてヒアリングを行ってはどうかと考えております。
 長時間かつ駆け足の説明になりましたが、事務局からの説明は以上でございます。
○菊池座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明も踏まえまして、本日キックオフの回でもあり、自己紹介も兼ねまして、できましたら各構成員全員の皆様から一言いただければと思ってございます。お時間の都合で恐縮ですが、お一人につき2分程度でお願いできれば幸いでございます。先ほどの構成員紹介の順番に沿った形で、五十音順で秋山構成員からお願いできますでしょうか。
○秋山構成員 それでは、健康保険組合連合会として、3点ほど意見等を述べさせていただければと思います。
 1点目ですけれども、今後、本格的な人口減少が進む中で、経済・社会の両面から労働力や就業者の減少が懸念されます。社会保障制度維持の観点からも、担い手を増やしていくことが必要と考えます。
 また、働き方の多様化の進行を踏まえると、働き方や勤め先の規模や業種にかかわらず社会保障を享受できる制度の構築は、皆保険の充実につながると考えるため、さらなる短時間労働者の適用拡大や多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方を検討することについては、総論として異論はございません。
 2点目です。ただし、個々の保険者への財政影響に注視する必要があると考えております。資料2、ページ36の短時間被保険者の性別・年齢階級分布図を見ますと、適用拡大によって短時間被保険者となった者は、60歳以上の男性や中高年以上の女性が多いということが分かります。短時間被保険者の給付費と保険料収入を考えると、状況によっては健保組合の負担が増えるのではないかと危惧しております。
 短時間労働者の適用拡大による負担増は、業種による偏りが大きく、資料2のページ41のグラフにあるように、非正規の職員・従業員の割合が高い卸売業、小売業や宿泊業、飲食・サービス業などの健保組合は大きな影響を受けております。現実問題として、既にチェーンストア関係の健保組合の多くは協会けんぽの保険料率である10%を超えており、その他の業種の健保組合も同様の状況にございます。さらなる適用拡大の検討に当たっては、詳細な財政影響の試算とともに、必要な財政支援等を含め、慎重に検討すべきではないかと思っております。
 また、資料2、ページ81の適用拡大に伴う医療保険における加入者移動では、国保から被用者保険への加入者移動が想定されると思われます。これにより一部の公費が削減されるため、国策である適用拡大の推進により、負担増になる保険者に対する財政支援をお願いしたいと思っております。
 最後になりますが、短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲や個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方を検討していく上で、被扶養者の要件についても同時に検討していく必要があると思っております。被扶養者の認定が審査請求の対象となったことや年収の壁・支援強化パッケージ、いわゆる130万円の壁への対応などにより、健保組合の現場では、被扶養者の認定において苦労しているとの声も聞かれます。被扶養者認定についてはいまだに昭和52年の通知「収入がある者についての被扶養者の認定について」によって運用しており、実態に見合った内容となっているのかを含め、検討が必要ではないかと考えております。本懇談会や医療保険部会において、被用者保険における被扶養者の取扱いについても議論すべきではないかと考えております。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 五十嵐構成員、お願いします。
○五十嵐構成員 ありがとうございます。商工会議所の五十嵐でございます。
 初回ですので、総論的なことでお話ししたいと思います。
 被用者保険の適用拡大の方向性につきましては理解をしております。ただし、重要なことは、適用拡大によって社会保険料負担が増加し、あるいは就業調整による人手不足が深刻化するというようなことに関して懸念があるので、働き手と雇用主双方における懸念にどう対処していくかということを議論しなければいけないと思います。
 資料によりますと、適用拡大の影響は数百万人にも達するというような可能性があります。その要件の拡大は、労使双方への影響をしっかり把握して、その結果を踏まえた丁寧な議論を行っていただきたいと思います。
 その際、ヒアリングは団体に行うとのことですが、例えば事業者にもお聞きしてはどうかと思います。例えばJILPTの調査に御回答いただいた事業者、あるいは任意包括適用を既に選択した事業者などであります。保険適用に際して、労使間でのコミュニケーション、事務手続、人件費、就労調整、採用といったことなどに関して、適用の前後に見られた変化、あるいは制度導入をしたメリット、さらには新たに生じている課題などを把握することが重要なのではないかと思います。こうしたことを含めて議論の基礎とすべきは、現行の社会保障制度の中で、時代の流れに合っていない部分を、制度設計のあり方を含めて検討することではないかと思います。
 年収の壁問題の根っことなっております今の社会の実情、共働きがメジャーになっている社会の実情、あるいは年金保険料負担のない第3号被保険者という制度のあり方なども議論して、誰にも公平で公正性のある制度とすべきだと思います。何といっても国民の間に制度の仕組みの正しい理解が浸透して、制度自体の信頼性を高めていく努力が不可欠であります。そのためにも制度をできるだけシンプルなものにする努力も必要だと思います。そういう議論が行われることも望みます。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 池田構成員、お願いします。
○池田構成員 ありがとうございます。国民健康保険中央会でございます。
 国保中央会は、47都道府県国民健康保険団体連合会を会員とする組織でございます。具体的には国保中央会は、国保保険者の委託を受けまして、47都道府県国保連合会が実施をしております診療報酬の審査・支払い業務や、保健事業等の業務に係るシステムの開発や運用等が主な業務となってございます。このように都道府県や市町村等の保険者や国保連合会とともに、国保事業の普及、健全な運営に携わっているという立場から、被用者保険の適用拡大について発言をさせていただきます。
 働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用拡大につきましては、国民的要請が強い年金保障の充実という観点から大切なことでありまして、このこと自体の意義は理解をできるところでございます。しかしながら、国民健康保険の運営に関わっている立場からは懸念される点もございますので、意見を述べさせていただきます。
 市町村国保の現状ですけれども、被保険者の年齢が高く、低所得者や所得がない方が多いという状況にございます。そして、医療費が高いといった構造的な課題を抱えておりまして、財政状況は極めて脆弱なものとなっております。
 そうした中で、年金制度と同時に、医療保険制度においても被用者保険の適用拡大を進めていくことは、一定の勤労所得を有する市町村国保の被保険者が被用者保険に移ることを意味しております。市町村国保におきましては、現状でも世帯主の4割以上、令和3年度で言いますと45.5%が無職者でございます。このまま被用者保険の適用拡大が進められた場合は、無職者の割合がさらに一層増えることとなりまして、国民皆保険体制を支える地域保険であります市町村国保の財政基盤や保険者機能の発揮に与える影響が懸念されるところでございます。
 また、国保制度の一翼を担う国保組合につきましても、被用者保険の適用拡大を進めた場合の財政基盤・事業基盤に与える影響が懸念をされます。
 こうしたことから、被用者保険の適用拡大の議論の大前提といたしまして、適用拡大を進めた場合の市町村国保や国保組合に対する影響を様々な観点から、まずはしっかりとシミュレーションしていただきますようにお願いをしたいと思います。
 また、その結果を踏まえて議論を行いまして、国保制度関係者の理解と納得を得た上で、我が国の国民皆保険体制が将来にわたり堅持される形で適用拡大の具体的な対応が行われるべきものと考えております。
 私からは以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございました。
 伊奈川構成員、お願いします。
○伊奈川構成員 ありがとうございます。伊奈川でございます。
 今回の資料を拝見しますと、法律の検討規程であるとか、あるいは国会の附帯決議を見ますと、一定の方向性が出ているように思います。ただ、重要な点は、こういった問題については多様な視点から物事を考えるということではないかと考えておりまして、そういう点でもヒアリングは重要だと考えております。
 多様な視点という点から言いますと、今回もお示しいただいています全世代型社会保障改革の中では、働き方に関する中立性ということが特に強調されておりますけれども、それ以外の考慮要素もあるのではないかと私は考えております。例えば社会保険の場合は、社会連帯と言われますように、いろいろな相互扶助に依拠しながら保険集団を形成しているわけでありますので、その間で被保険者、事業主、保険者の保険関係、そして権利義務関係が生じてくるということの中でこの問題をどのように考えるかが重要ではないかと考えております。言い換えれば、どのような保険集団が望ましいかといったような視点も重要ではないかと考えます。
 次に医療保険、そして年金保険においては国民皆保険・皆年金になっておりますので、労働保険とは少し状況が違うのではないかと思っております。つまり、被用者保険から外れたからといってセーフティーネットがなくなるわけではありませんので、そういったことも踏まえてどう考えていくか、ソフトランディングしていくかということが重要だろうと思います。とりわけ医療保険におきましては、この間の改革を見ておりますと、特定健診・保健指導といったような問題、あるいは医療費適正化、そしてそういった点も含めた保険者機能が重要性を増しておりますので、そういった取組も含めて例えば事業主にも一定の役割や義務がかかってまいりますので、その辺りに対応できるのかどうかといったような視点も重要だろうと思います。
 そういった点で、社会保険の場合は、歴史性とともに、今後を考えますと非常に動きが激しいわけですので、果たして今、ギグワーカーとかいろいろなものが出ておりますけれども、持続可能性という点でどのように考えたらいいのかという点が特に重要になってくるのだろうと思います。
 そういったこととも関係しますけれども、年金の場合ですと、適用拡大の問題は厚生年金案の報酬比例が支給されるかどうかという点が特に重要になるわけですが、医療保険の場合は、給付面について言いますと、現金給付を別にしますと、療養の給付などにおいては制度間の差というものは実際上なくなっておりますので、問題は先ほど来出ておりますように財政問題なのだろうと思うわけであります。そういった多様な視点から検討することが我々の役割ではないかと申し上げておきたいと思います。
 以上であります。
○菊池座長 ありがとうございます。
 海老原構成員、お願いします。
○海老原構成員 雇用ジャーナリストをやりながら大学2つで教鞭を執っている海老原と申します。
 皆さんのお話に納得しております。今回の件は、もともとその時代時代の特殊事情があっていろいろな特例ができていたと思うのですけれども、時代背景がだんだん変わってくる中で似つかわしくないから、そこをどうしようかという話だと思うのです。抜本的に変えなければいけないのではなくて、小さな部分を丁寧に変えていかなければいけないのだろうと思っています。
 ただ、その際に、働く側の負担も多くなるだろうし、事業者側の負担も多くなるだろうから、両側に対しての激変緩和措置はちゃんと考える。そうした意味で、年収の壁などの助成金はとてもいいと思います。数年たったら、例えば今言われている年金ハーフなどという形で、シームレスな制度に変わっていく。それまでの間のつなぎなのだと思うのです。
 つなぎだとすると、助成金とかはそこそこ取っておいても、じきなくなるものだからできるのではないでしょうか。ということで、過去の特例がそのままで明らかにおかしくなっている分がございます。たとえば、ある分野の事業については5人以上の個人事業主でも全然払わなくていいとか納得いかないところがあるから、そこは徹底的にやっていくべきだと思っています。
 それから、ギグワーカーに関してなのですけれども、1つだけこれはぜひとも団体の人や経営者の人たちを呼んでほしいなと思っているのが、夜の歓楽街のビジネスです。飲み屋の話もありますし、風俗の話もあります。銀座のホステスさんたちは、1つの店で扱われているのに、雇用ではなく業務委託であり、みんなギグワーカーなわけなのです。近年、憤りを感じたのは、コロナのときに、持続化給付金もしくは雇用調整助成金の対象にならないと言ったら、マスコミが醜業扱いで対象にしないのか!という話になったわけです。醜業だからではなくて、雇用逃れしているから払えないわけです。もしホステスさんが個人事業主なら、きちんと確定申告をしているべきだし、雇用なら店舗側が雇用保険を支払うべきです。そうしたことをしていないから、給付されなかった。このような抜け落ち部分を徹底的に潰していくと、多分先ほどご提示いただいた拡大適用の構成図にも出ていない人たちが、何万人も出てくると思うのです。ここには超高額収入を誇る人たちもいると思うのです。ここは徹底的に潰してほしいと思っています。ぜひ呼んでほしいと思っています。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 川又構成員、お願いします。
○川又構成員 全国健康保険協会、協会けんぽの川又と申します。
 資料でも御説明がありましたが、全世代型社会保障構築会議の報告書での御提言、すなわち勤労者がその働き方や勤め先、企業規模、業種にかかわらず、ふさわしい社会保障制度を享受するようにする、それから、雇用の在り方に関して中立的な社会保障制度にしていく、こうした方向性については、今後必要なことであると考えております。
 一方、被用者保険の適用拡大について、恐らく新たに適用の対象となる方の多くは私ども協会けんぽに加入することになると思われます。それによって協会全体の財政収支がどうなるのか、あるいは適用とか徴収に係る実務上の課題もあるかと思います。さらには、伊奈川構成員からも御指摘がございましたが、特定健診・特定保健指導など、保険者機能としての健康づくりの取組などをどのように今後進めていくのかといったような課題もあると思っています。
 今後の検討におきましては、こうした想定される影響や課題を十分踏まえた上で、実態に即した議論をお願いできればと考えております。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 佐久間構成員、お願いします。
○佐久間構成員 ありがとうございます。全国中小企業団体中央会の佐久間でございます。
 前回のこの懇談会に私は参加させていただきまして、例えば士業の関係の拡大とか、いろいろな項目、観点からの議論を設けてこられたと思います。適用拡大につきましても100人超、また50人超への引下げについて、前回当時の経済情勢と比べて、今回は人手不足感が強くなってきたと、いろいろな情勢で変わってきていると思います。
 ただ、50人超というのも、令和6年10月から開始されるということで、いまだスタートされないまでに、また見直しの論議もしなければいけなく、非常に大変な作業だな、非常に大変な項目が多いなと感じたところでございます。
 今、年金部会のほうも同時並行的に進められておりますけれども、ぜひこの懇談会と年金部会の連携というか、協議をどのようにしているかというのは情報を入れていただきたいと私は思います。この懇談会でも、議論をしている部分が年金部会のほうでどのように用いられたとか、そのようなこともぜひ教えていただきたいなと思います。
 特に個人事業者の適用の協議になってきますと、前回は士業ということで拡大されました。そこに働く方々、そして個人経営者というか、運営されている士業の方々が厚生年金保険にはまだ入れないということがあります。一人親方の問題も、特別加入制度の場合もありますけれども、それがどのようなもので加入していくかとか、従業員や職員は入れたけれども自分は入れないのだとか、そのようなものについても話し合わなければいけないのではないかなと思っています。
 拡大になると、本日提出いただきました調査関係の資料でもよく分かるとおり、厚生労働省の所管業種の関係も、今度はそういう議論もしていかなければいけないということになると思いますので、非常に今までの、長年の歴史的なものもあると思うので、その辺も難しいところだと思いますけれども、協議をお願いしたいと思います。
 全体的にこの懇談会、いいスタートというか、新たな時代に向けての懇談会になっていくと思いますので、これからヒアリング等も行っていただきながら進めていただけると思いますので、ぜひ皆さん方と協議をしながら進めていきたいと思います。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 御質問という趣旨では必ずしもなかったかと思いますが、医療保険部会ではまだ議論していないという状況だと私も委員として認識していますけれども、年金部会ではもう2巡目まで議論しているというところで、この懇談会と年金部会との議論の進み方、今、御要望もございましたが、その辺、今後どうなっていく予定なのかという辺り、差し支えない範囲でお答えいただければと思うのですけれども、年金局のほうでいかがですか。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 今の点につきまして、まず、座長からお話がありましたとおり、年金部会のほうでも1巡目の議論といたしまして、適用拡大などについての議論も既に行われているところでございます。
 本日、説明は割愛させていただきましたが、参考資料ということで、年金部会における概要やそちらでの主な御意見につきましては御紹介をしておりますので、御参照いただければと思います。
 そうした中で、前回、5年前の同様の懇談会のときにもそうだったのですけれども、こちらのほうで取りまとめていただきました議論の結果につきましては、年金部会に御報告をするような形になり、年金部会でもそれをしっかりと踏まえた形で御議論いただくような形になるのではないかと、現時点ではそのように考えております。
○菊池座長 現時点ではそのようなことだそうです。
 それでは、お待たせいたしました。酒向構成員、お願いします。
○酒向構成員 ありがとうございます。経団連の酒向と申します。
 佐久間構成員同様、令和元年の懇談会にも参加させていただきました。働く人々の安心感を高めるという点からも、適用拡大をさらに進めるということは非常に重要な課題だという認識で臨みたいと思っております。
 ヒアリングの進め方につきましては、基本的に事務局の御提案でよいと考えます。ただ、丁寧に実態を把握し、現実的に対応できる方策を検討するという点で、先ほど五十嵐構成員からの御提案もありましたが、丁寧にヒアリングをしていただければと思っております。これが1点目です。
 2点目でございますが、被用者保険とは同一視できませんけれども、雇用保険では20時間から10時間への適用範囲の拡大について御議論されていると。また、労災保険ではフリーランスの方への適用について先行して適用拡大の議論がされていて、実行されているとも聞いております。実務面での課題や審議の過程でのポイントで共有できるものがあれば、整理いただけるとありがたいと思っております。事務局へのお願いでございます。
 もう一点でございますが、医療保険制度への影響ということで、先ほども複数の構成員から御指摘いただいておりますが、適用拡大によって国民健康保険等から被用者保険の加入者が移動するということに伴いまして、各保険者の財政や実務的な負荷、公費支出への影響などもいろいろあるところでございます。この辺りの整理も必要であると思います。
 また、複数の事業所で勤務ということになりますと、どの保険者に加入するのかといった問題も出ております。現状でも、複数事業所で20時間超の業務に従事している、先ほどの資料2の25ページ目の事例2のようなケースがあるかと思います。保険者の選択やそのときの徴収方法などについて、実務上での煩雑さも指摘があるところでございますので、併せて足元の議論の整理についても御検討いただければありがたいです。これも事務局の皆さんへのお願いでございます。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございました。
 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員 株式会社ウェルスプラン代表取締役の佐藤と申します。
 ふだんは社会保険労務士として、企業の労務管理や人事制度づくり、退職金制度の導入支援などを行っているほか、短期大学での社会保障教育などの仕事をしております。
 働き方の多様化を踏まえた社会保険の適用の在り方に関しましては、誰もがどんな働き方を選択しても無理なくライフプランが描ける社会になるよう、主に中小企業の働き方の変化、現場で感じたことや今のライフプランをベースに議論に参加できればと思っております。
 若い世代を中心に将来不安を感じる方も増えていると思うのですが、働き方の選択肢が広がる中で、特に女性や非正規雇用の方など賃金が低い環境にある方が、出産・育児などのライフイベントをきっかけに低収入になったり、将来、高齢期になった際に貧困に陥らないように、どのような制度設計であればよいか、私自身の経験からも課題感を持っております。
 個人がどんな働き方をしても、一定のセーフティーネットが担保されることと、あとは年金制度が将来にわたってよい形で維持されることの両面において、適用拡大は重要な取組であると認識しております。
 また、私、適用拡大の広報に関するアドバイザー会議にも参加させていただいておりますが、企業や国が制度を整備しても、個人が制度を理解して活用できなければ、生活を担保することは難しいと思っています。個人が中長期的な視点を持ってライフプランを考え、生活設計ができるように、金融教育の推進と併せて進めていくことが必要だと感じています。
 今の現役世代やこれから社会に出る次世代が希望を持てるライフプランを描けるように、今の時代に合った被用者保険の適用の在り方について前向きな議論ができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○菊池座長 ありがとうございました。
 佐保構成員、お願いします。
○佐保構成員 日本労働組合総連合会の佐保です。よろしくお願いいたします。
 私からは2点の意見と1点の要望を申し上げます。
 公的年金は高齢期の生活の柱であり、労働者にとって退職後も安心して生活を続けていく上で、厚生年金や健康保険など社会保険の役割は非常に大きいと言えます。高齢期の貧困を防ぐとともに、働き方に中立的な社会保険制度を構築するために、全ての労働者への社会保険の完全適用に向けた前向きな議論が必要です。
 その実現のために、雇用形態や企業規模の違いにより社会保険に適用されるかどうかが異なる現行制度は不合理であること、労働者であれば労働時間や収入、勤務先などにかかわらず労働者としての社会保険が適用されるべきであることをまず本懇談会の共通認識とし、前向きな議論を進めていただきたいと考えます。
 また、議論を進める際には、いわゆる年収の壁の解消、特に企業における労働力不足の解消を一義的な目的にするべきではないと考えます。丁寧にヒアリングを行っていただきながらも、全世代型社会保障構築会議の基本的方向にもあるとおり、あくまでも働き方の多様化が進む中で、全ての労働者にとってふさわしく、働き方に中立的な社会保障を目指す観点で議論すべきであることを強調しておきます。
 2点目は、多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方について、この懇談会における議論では、いわゆるフリーランスやギグワーカーだけでなく、曖昧な雇用で働く全ての労働者を対象とすべきと考えます。従来の雇用関係によらない働き方をしている人が社会保険の適用となり、十分な給付が受けられる枠組みの在り方について、使用従属性や被用者保険適用の実態を調査・把握した上で、労働関係法令における保護や労働者性の概念の見直しも踏まえつつ、議論を進める必要があると考えます。
 最後に要望です。
 今年夏頃に懇談会としての議論の取りまとめを予定しているとのことですが、同時期に財政検証の公表が予定されていることを踏まえると、そのオプション試算などにおいて、この懇談会での取りまとめが十分に反映されないことが懸念されます。事務局におかれては、取りまとめを待つことなく、適宜、懇談会の議論内容を年金部会に報告し、財政検証の試算などへの反映につながるようにしていただくようお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから嵩構成員、お願いします。
○嵩構成員 東北大学の嵩でございます。よろしくお願いいたします。
 御説明ありがとうございました。
 まず、適用拡大については、本日の資料にもありましたけれども、現在、正規労働者であっても、個人事業主に雇用されている場合には非適用業種や被用者の人数要件によって被用者保険に強制加入しない方が少なくないということから、働き方や雇用先の状況にかかわらず平等に保障するため、総論としましては、そうした要件の見直しにより適用拡大を進めていく必要があると考えております。
 また、短時間労働者についても企業規模要件の緩和撤廃を早期に進めていく必要があると思っております。ただ、これまでの構成員からのお話にもありましたけれども、適用拡大については、労働者本人だけでなく事業主の負担も増加しますので、施行までに時間を取って、あと適用拡大の意義について十分に周知して理解を得ていく必要がありますし、また、いかなる業種に大きな影響が生じるのかについて、今回の懇談会で関係者からのヒアリングにより把握していく必要があると思っております。
 また、適用業務を担当する日本年金機構の意見も聴取して、実務面でも無理のないスケジュールで進めていく必要があると考えております。私自身、適用拡大については年金制度を中心に検討することが多いのですけれども、今回医療保険の関係者の方々もいらっしゃいますが、現在、医療保険と公的年金制度が連動していることについてどう考えるかという点が、今後さらに適用拡大を進めていく上で重要な論点になってくると考えております。
 例えば短時間労働者の適用要件である月額賃金8.8万円の要件は、国民年金の第1号被保険者が負担する保険料額を踏まえて、第1号被保険者との公平性を確保するために設定されてきているわけですけれども、健康保険でもその要件を維持する必要があるのかについては検討の余地があるのではないかと思っております。
 また、より大きな話としては、先ほどから複数の構成員から御指摘がありましたけれども、年金制度と医療保険制度とでは制度や保険者の構造が大きく異なりますし、適用拡大による給付面や負担面での効果というか影響も異なってきますので、誰をどの保険の被保険者として割り振っていくべきかについては、年金と医療によって異なる考慮が必要になってくる局面がそのうちやってくるように思います。
 公的年金制度は、保険者が政府のみで、かつ1階部分が全居住者共通の国民年金制度で2階部分が被用者対象の厚生年金保険という階層構造にあるので、適用拡大によって片方の保険へと被保険者が完全に移動するということにはなりませんし、適用拡大によって給付面でのメリットが生じるというものになっています。
 また、政策決定する主体と保険者とが重なっているので、保険者の利害の配慮への必要性は、それほど高くないと言うとあれですけれども、そこは同じ政府ということで、個別の保険者の利益を考える必要性が少ないかなと思います。
 これに対して医療保険では、保険者が組合も含めて併存する縦割りの構造のため、適用拡大により片方の保険者に被保険者が移動することになります。また、給付面では、傷病手当金のように健保と国保とで給付差があるところがありますけれども、現在より大きな違いというのは保険料の違いかなと思います。適用拡大によって被保険者構成が変化すれば、各保険者の財政、ひいては各被保険者の負担する保険料額にもより一層大きな影響を与えて、場合によってはその差が広がるということもあると思います。
 すなわち、医療保険では保険者分立の制度体系でありますので、適用拡大による被保険者の割当ての変更は、保険者自治の基盤である被保険者の構成そのものを変化させ、財政面では各保険における被保険者の集団的利益に影響を及ぼすことになりますので、適用拡大を進展させる際には、医療保険については公的年金とはまた異なり、そうした保険集団における自治や連帯の在り方とか、あと被保険者の集団的利益を踏まえた議論が必要になってくるのではないかと思います。場合によっては年金と異なる制度設計を取っていくということが必要となってくるかもしれないと考えていまして、そうした方向性も視野に入れて、この懇談会で議論を行っていく必要があると考えております。
 長くなりましたが、以上になります。
○菊池座長 ありがとうございました。
 土井構成員、お願いします。
○土井構成員 全国商工会連合会の土井でございます。
 商工会というのは、商工会議所さんと地域を分けて、主に地方の小都市、それから農林水産業が主体の地域、あるいは中山間地域、離島、そんなエリアが中心の経済団体でございます。
 会員は約79万人おりますが、そのうち個人事業主が56%、従業員が50名以上いる企業は会員で2%程度です。ということで、会員の多くがまさに今回の適用拡大の議論の中心層となりますので、そこに対する影響という点に関心を持って我々の実情を発言してまいりたいと思っております。
 人手不足が深刻なエリアでございますので、適用拡大によって従業員の処遇改善を図っていくといった大きな方向性についての必要性を感じております。ただ、今、大手企業の業績が非常にいい中で、中小・小規模企業者の業績はそれほどコロナの時期から回復をしておりません。なおかつ、今、一番苦しんでおりますのが価格転嫁というところで、特に労務費の価格転嫁ができないといったところが現状の課題でございます。
 短時間労働者ということであれば、最低賃金はこの10年間で約30%近く上がっておりますし、それに付随する社会保険の負担も非常に厳しいといったところでございます。そういった中小企業・小規模事業者の実情についてもぜひこの懇談会でしっかり議論をしてまいりたいと思っております。
 また、次回以降ヒアリングが予定をされております。短時間労働者の多いといったところで、今までの議論では皆さんが想像するような業種がある程度あったわけですが、50人以下の規模になると、影響する業種が今までと異なってくるのかなと思っております。我々のところで短時間労働者の層を見てみると、意外に食品加工業など製造業なども結構短時間労働者の雇用数が多くて、そういったいろいろな今までヒアリングしていなかった業界等についても、影響の大きいところにはヒアリングを丁寧にやっていく必要があるかなと思っております。
 最後になりますが、どうしても社保の適用拡大については年金の5年検証の枠組みで議論するため、特に年金部会の議論などを見ていますと、適用拡大は比較的簡単ではないかみたいな論調があるやに思っております。ただ、今日、ほかの構成員の方からたくさん御意見いただきましたが、医療保険のほうが課題はよほど大きいのかなと思っておりますので、そちらについても、前回私もメンバーでしたが、あまりそこに議論は行かなかったかなと思いますので、今回は医療保険についてもしっかり議論してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○菊池座長 ありがとうございます。
 永井構成員、お願いします。
○永井構成員 ありがとうございます。
 連合に加盟する労働団体のUAゼンセンの永井と申します。
 年金部会の発言と重複する内容もありますが、意見を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まずもって本懇談会では、第3号被保険者制度も含め、年金部会における社会保険制度の被扶養の在り方などに関する議論は踏まえつつも、令和2年年金改正法の附帯決議や、「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」における議論の取りまとめも踏まえ、全ての労働者への社会保険の適用に向けて、各適用要件の見直し・撤廃などについて不断に議論を進めることが必要だと考えます。
 また、資料4にあるとおり、本懇談会における今後の議論では、複数の事業所で勤務する者の被用者保険の在り方についても重要なテーマであると理解しています。まずは資料2のスライド25の事例4のような、勤務先の企業規模や業種などにより社会保険の適用とならない事象は早期に解消すべきであり、そのためにも企業規模要件や非適用業種の撤廃が急務であると考えます。
 さらに、兼業・副業が増加する中で、単一事業所では満たさず複数事業所の合計で労働時間等の要件を満たす場合であっても社会保険が適用されるべきであり、その実現に必要となる、マイナンバーなどを活用した仕組みの構築についても、本懇談会においてぜひ議論・検討いただきたいと思います。
 なお、次期制度改正に向けた本懇談会での直接的な議論テーマではないかもしれませんが、昨年5月の第4回年金部会の資料では、令和元年度末推計で、適用義務のある未適用者がフルタイムで92万人、短時間労働者が13万人いるとのことでした。日本年金機構では事業所調査などを通じて適正化に取り組んでいると理解していますが、今年10月の企業規模要件の引下げや、仮に次期制度改正で企業規模要件や非適用業種が撤廃されれば、さらに増加する懸念があります。適用義務のある未適用者の発生の原因の一つには、事業主、労働者の制度の理解不足や誤解があると考えており、ヒアリング事項(案)にある「有効と考えられる取組・支援」においては、現場の正しい制度理解が進むために必要と考えられる取組についても、関係団体からぜひヒアリングを行うことを検討いただきたいと思います。
 以上です。
○菊池座長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから松浦構成員、お願いします。
○松浦構成員 ありがとうございます。法政大学の松浦と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 人事管理や雇用政策の専門家ですので、被用者保険のことを勉強させていただきながら、雇用の観点から意見を述べられればと考えております。
 適用拡大がさらに推進された場合も、制度の逸脱ですとか、就業調整によって雇用が細るといった事態にならないようにするために、他の構成員の方々からも御発言がありましたように、制度に対する理解や信頼をどう確保していくのかということが非常に大事だと考えております。
 その中で、別の制度というか取り組みなのですけれども、大阪大学感染症総合教育研究拠点による風疹の予防接種に関する啓発動画について、昨年度の視聴が100万回を超えたというお話を伺いました。多くの方々に視聴されたという意味で好事例ですので、必ずしもヒアリングという形でなくてもよいと思うのですけれども、参考にしていただけないかと思い、情報共有させていただいた次第です。御検討いただければ幸いです。
 私からは以上です。
○菊池座長 ありがとうございます。
 最後になりますが、松原構成員からお願いします。
○松原構成員 早稲田大学の松原です。
 社会保障の重要な機能の一つが、再分配による格差是正だと言えます。それにもかかわらず、働いている場所が大企業か中小企業かとか、雇用形態が正規なのか非正規なのかといった、働く場所や雇用形態などで受けられる社会保障の内容に大きな格差がある現状では、社会保障によって格差が拡大されてしまうという問題を内包していると考えております。
 その意味で、こうした格差を是正する今回の検討会の方向性に対して、大いに賛成しております。特に非正規は女性が多く、働いている段階だけではなくて、老後の女性の貧困問題や、その格差拡大の是正に関わる問題でもあると考えております。
 なお、選択肢がありましても被用者保険に加入しない方々がいらっしゃいますけれども、これはマスコミなどの誤報で加入するメリットを十分知らない可能性があると思われますので、高齢期の貧困問題を回避するためにも、ぜひ引き続きPRする必要があると考えます。
 一方で、どのような制度にしましてもよい面もあれば、課題もございます。今回のこの検討回の議論が現実化した場合に、数少ない勤労者が出て行った後の国保の在り方も、これとは別に総合的にしっかりと検討していただきたいと考えております。
 以上です。
○菊池座長 どうもありがとうございました。
 ちょうど予定していた時間になりました。御協力ありがとうございます。
 様々な御意見、御要望を頂戴いたしました。事務局におかれましては、引き続き調整を図っていただき、次回以降の議論に向けて御準備いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これをもちまして本日の議事は終了とさせていただきます。
 今後の予定について、事務局からお願いいたします。
○芦田年金局年金課年金制度改革推進官 次回は、先ほどお諮りいたしましたとおり、関係団体からのヒアリングを実施することを考えておりますけれども、正式な議題、開催日程につきましては、追って御連絡さしあげます。
 以上です。
○菊池座長 それでは、これをもちまして第1回の懇談会を終了いたします。
 本日、大変お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。