第20回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録

医政局研究開発振興課

日時

令和3年3月3日(水) 16:00~18:00

場所

厚生労働省省議室(9階)

議事

○医政局研究開発振興課治験推進室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第20回「厚生科学審議会臨床研究部会」を開催いたします。
 本日は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からWebで開催いたします。会議全体でのお願いとなりますが、Webで参加されております委員の先生におかれましては、御発言される前に、システム機能から「参加者リスト」を表示していただき「手を挙げる」ボタンのクリックをお願いします。部会長の指名を受けてからマイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。御発言終了後は、再度、マイクをミュートにすると共に「手を挙げる」ボタンを再度クリックし、手を下げた状態にしてくださいますようお願いいたします。会議中に接続トラブル等発生しましたら、事前にお送りしたWeb会議のマニュアルに記載されている連絡先に御連絡をお願いします。
 本日は、部会の定数14名に対しまして13名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。
 なお、議題2の大阪大学医学部附属病院の業務に関する報告に関しまして、外部委員として関わられておりました山口委員に、議題2については御退席をいただくこととなっております。
 続きまして、本日の会議資料についてですが、会場に参加されております委員の先生におかれましては、お手元のタブレットを操作して御覧いただくようお願いいたします。Webで参加されている委員の皆様におかれましては、事前に送付しております資料あるいはWeb上で資料を投影いたしますので御覧ください。
 資料は、資料1「臨床研究法に関する検討について」、資料2-1「臨床研究法の見直しにかかる関係者ヒアリング」、資料2-2「花井委員提出資料」、資料3-1「大阪大学医学部附属病院の業務に関する報告について」、資料3-2「大阪大学医学部附属病院からの報告書」、資料3-3「臨床研究中核病院の承認要件(参考資料)」となっております。
 お手元で不足等がございましたら、事務局宛てにお申しつけください。
 円滑な議事進行のため、撮影、頭撮りはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
 以降の進行につきましては、楠岡部会長にお願いいたします。
○楠岡部会長 楠岡でございます。年度末のお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、早速、議事に入らせていただきたいと思います。
 議題1は、臨床研究法に関する検討でございます。まず、事務局より資料1の説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 それでは、事務局より資料1の御説明をさせていただきます。通し番号のページで4ページからになります。資料1を御覧ください。
 前回1月13日の臨床研究部会におきまして、臨床研究法の見直しに関する議論のスタートをさせていただきました。前回につきましては、特別研究班において課題とされた論点の一部について御紹介をさせていただいたところですが、本日は、現在、研究班で検討されている残りの論点に加えまして、もう一つ、法律制定時の附帯決議の状況について御説明をしたいと思います。
 おめくりください。5ページです。
 まず、特別研究班において課題とされた論点についてということになります。課題として挙げられている4点、5ページの下の四角でございますけれども、全体7つございまして、上4つにつきましては、前回御紹介をさせていただいた論点となります。今回、赤枠で囲っております3つの論点について御説明いたします。1つは医療機器の関係、それから、疾病等報告の範囲、CRB認定要件の3点になります。
 では、早速、医療機器に関する論点から御説明をしたいと思います。6ページからになりますが、まず周辺の状況から御説明をさせていただきたいと思いますので、7ページからを御覧ください。臨床研究/特定臨床研究の定義ということでございまして、これは前回も法律の定義を御紹介をしたところでございます。医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性・安全性を明らかにする研究のうち、治験などを除くことになっております。
 一方で「医薬品等を人に対して用いる」というところの定義になりますが、こちらは通知におきまして「人に対して投与または使用する行為のうち医行為に該当するものを行うことを指す」と通知で解釈をしております。この「医行為」ですけれども、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、人体に影響を及ぼし、または及ぼす行為のある行為ということで、医学的に専門性の高い行為を使用に限るという趣旨で「医行為」という言葉を使わせていただいておるところですが、この「医行為」という言葉について様々広い用いられ方がある中で、この部分が少し分かりにくい、あるいは、現場で混乱をもたらしているという指摘をいただいております。
 次に8ページを御覧ください。特に医療機器を用いた場合には、手術・手技などに関する研究も行われることから、そことの峻別が必要とされています。
 (答)の部分を御覧いただければと思いますけれども、医薬品、医療機器等そのものの有効性・安全性を明らかにすることを目的としておらず、手術または手技の研究をしているということであれば、特定臨床研究には該当しないと判断されますが、この手術・手技の成立・達成に対する当該品目の寄与が高い場合には、特定臨床研究に該当し得るということで、この部分もケース・バイ・ケースの判断が必要ということで分かりにくい部分もあろうかと思います。
 続いて9ページでございますが、この部分におきましては、医療機器の臨床研究のうち、非該当に該当する事例を個別に挙げさせていただいております。
 1つ目が放射線治療装置ということになりますが、承認された範囲で用いる場合には対象外になります。
 続きまして、次の事例については、医療機器そのものではなくて、アルツハイマー型認知症の自然経過を観察するということで、目的が異なる場合には対象外である。
 3つ目については、電極を装着して電位を測定するなど、非侵襲的に人に対して使用する場合については対象とならない。
 その次の事例につきましては、血液、組織の検体を採取するものの、その結果を独立した別の医療機器で測定・分析するような場合、直接患者さんに対して使用しないような場合については対象外とされております。
 最後のタブレット端末によるプログラム医療機器についても、同様に、患者さんに直接使用しないものについては対象外とされています。
 続きまして、10ページを御覧ください。クラスIの医療機器の例ということで、これは医行為の非該当に該当するということで列記をしたものでございます。ここで出ていますような医療機器については、アネロイド血圧計から始まって救急絆創膏までございますが、これらのものを用いる場合には、医行為には非該当の程度であるということで、対象外としております。
 続きまして、11ページ目を御覧ください。これは医療機器の特性に応じた特例を設けているという例でございます。医療機器につきましては、同じ医療機器を改善・改良して少しずつよくしていきながら使っていくという特徴がございまして、それに応じた対応をさせていただいているものになります。
 (11)⑲の(ア)のところを御覧いただければと思いますけれども、医療機器の構造・原材料またはその両方を変化することで、構造・原材料の最適化を図ることを目的とした研究の場合において、この構造または原材料について一定の範囲を設定しまして、その範囲内であれば、安全性に明らかな変化を生じないことが科学的に検証されているといった場合。さらに、そういった場合の検討においても、リスクの低いものから順番に適用をしていくというデザインを取る場合については、臨床計画の様々な多少異なるものを使ったとしても、一つの研究の中で評価ができるという特例を設けております。
 そして、12ページを御覧ください。こちらは医薬品・医療機器法における医療機器の分類と規制の状況になっております。医療機器は非常に多種多様なものがございまして、人に対するリスクについても様々なものがございます。こういった中で医薬品・医療機器等法におきましては、リスクに応じた薬事法の規制の分類をしておりまして、一番リスクが低いものは一般医療機器ということで、一部市販をされているようなものもありますし、必ずしも承認ではなくて届出のみで販売ができるというものがございます。
 クラスIIについては、一定の基準を設けて、第三者が認証するということで、必ずしも大臣承認ではなくて、基準に合致していることを第三者が認証することで販売することができるということになります。
 この一部がクラスIII、中等度のものまで広がっているということになりますが、クラスIVなどのリスクの高いものについては、個別に大臣承認が行われるという形で、医療機器につきましては、非常に多種多様なものがあるという前提で、この特定臨床研究が適用されている状況になっております。
 一度6ページまでお戻りいただければと思います。このような中で医療機器の適用に関する課題でございますけれども、特に大きな論点として、リスクの低い医療機器を特定臨床研究から除外すべきかということがございます。今申し上げたとおり、背景にもございますが、様々なものがある中で、非侵襲または低侵襲なものがあって、こういったものを対象にするのは過剰ではないかという御意見や、あるいは、今御覧いただいたように、医薬品・医療機器法においてはリスクに応じた取扱いがありますので、臨床研究法においても、リスクごとに取扱いを考えるべきではないかということがございます。
 また、先ほど、Design Spaceということで御覧いただきましたが、改良・改善を行って、ほぼ既に承認されているものと、性能上大きな違いがないものについても、未承認のものとして取り扱うことが適切なのかどうかということがございます。
 それから、工学の研究者の方が、使い勝手とか性能の一部を確認するような検討をする場合に、このルールの周知が必ずしも十分ではないため研究が進まないといった御指摘もいただいております。
 また、医療機器の特殊性から、必ずしも全てのAROやCRBが詳しく中身について御存じないがために、適切な判断がなされてないケースもあるのではないかといった御指摘があります。
 こういった点を踏まえまして、リスクに応じた取扱いをどのようにできるのか。具体的な提案としては、先ほど申し上げたようなところについて、特定臨床研究の範囲をどう考えるのかという点が大きくありますが、その点について今後検討が必要という御指摘をいただいております。
 続きまして、13ページまで飛んでいただければと思います。「疾病等報告の範囲に関する論点」になります。「背景」にございますけれども、臨床研究法におきましては、試験の実施の中で臨床研究の実施に起因するものと疑われる疾病については、CRBに届け出るとともに、重篤、未知なものについては、厚生労働大臣にも届け出ていただくという仕組みになっております。
 このうち、マル1の主体についてですが、多施設共同試験で実施する場合におきましては、それぞれ各医療機関で起こったものについては、その医療機関の責任医師の御判断で因果関係を決めて、報告の要否を判断しているということになります。
 一方、ICH-GCPでは、前回、スポンサーの概念ということを御説明しましたけれども、試験全体を取りまとめる、研究全体を取りまとめる、そういう立場の方が、各医療機関から、因果関係を問わず全ての有害事象の報告を受けた上で、一元的に因果関係を判断して、報告の要否を決めているというようなことがございます。現在の臨床研究法のやり方になりますと、施設ごとに多少判断が変わってくるというようなことがありますので、研究を代表する方が一律に判断できるような仕組みを考えてはどうかという御指摘がございました。
 それから、疾病等の報告期日については14ページを御覧ください。現在の報告期日についてまとめたものになってございます。このうち、真ん中の委員会に報告する部分、黄色のセルに色がついている部分になりますが、これはいずれも医薬品の既知で重篤な疾病等に対しての報告期日となっております。未承認・適応外については定期。この定期というのは、おおむね年に1回程度を目安に行われていることになります。
 一方で、既承認の医薬品については、30日ごとの報告が必要であるということで、一般に未承認・適応外のほうがリスクとしては大きい部分が多いかと思いますけれども、報告期日からすると、未承認・適応外のほうがインターバルが長くなっているという課題が指摘されております。
 これにつきましては、次の15ページでございますけれども、もともとこの規則を制定するに当たって、医薬品・医療機器等法の規則を引用させていただくということをしておりました。このうち、未承認・適応外については、治験を行う際の有害事象、副作用等の報告を引用してきており、既承認につきましては、市販後の安全対策で行われる副作用等の報告を引用してきているということで、このような齟齬が出てきているということになりますが、臨床研究法の現状では、リスクと報告期日が合ってないということもございますし、同様な対象にもかかわらず期日が違って混乱もあるということで、この辺りの見直しが必要という指摘をいただいております。
 続きまして、16ページを御覧ください。CRBの認定要件に関する見直しという点についてです。「背景」にございますとおり、臨床研究審査委員会(CRB)につきましては、法令で、事務局の体制とか業務規程の作成、委員の構成などの体制を整備することをもって認定を受けることができるとなっております。
 また、認定の有効期間は3年となっていまして、更新要件につきましては、今申し上げた認定要件に加えて、年11回以上の開催実績が必要とされております。この点につきましては、少なくとも一定の回数の審査の経験が維持できないとおのずと質の担保も難しいであろうということから、最低限定められた規定となっております。
 一方、現状のCRBの状況になりますが、次の17ページなどを御覧いただきますと、これは昨年6月の段階ですけれども、全国で98のCRBが認定をされているという状況になります。
 そして、19ページを御覧いただきますと、これ、前回御紹介をしたものになりますが、特定臨床研究が、施行当時は非常に少なかったのですけれども、今は大体年に400ぐらいが行われていることになりますが、特定臨床研究の全体の数とCRBの数を比較したときに、実際にはなかなか年11回の開催が困難なCRBも出てきているという状況がございます。
 また、認定の要件が年11回の実績でございますので、審査基準や能力など、その中身に踏みこんだ基準となってないという指摘もございます。こういった点につきまして、16ページでございますが、更新要件も含めて、年の開催件数ではなく、機能などを評価できるような認定要件が設定できないか。この見直しの必要があるのではないかという御指摘をいただいております。
 また、これまでもそういった検討もしておりましたけれども、能力や質を直接評価をして要件にすることがなかなか困難ではないかといった指摘もありまして、CRBの審査の質を均質化し、また、よりよきものとしていくための取組として、専門委員会による評価とか、模擬審査、模擬的な事例をそれぞれ評価していただくような取組、また、CRB間のピアレビューなど、事業を通じて質の向上を図る取組が必要ではないかといった御指摘がされております。
 ここまでが特別研究班で、今、御検討いただいている論点とその内容になります。
 続きまして、法律制定時の附帯決議につきましては、20ページからを御覧ください。少し小さな字になって恐縮ですけれども、衆議院・参議院とも、法律の制定に際して附帯決議ということで幾つか宿題をいただいております。
 21ページを御覧いただければと思いますけれども、このうちかなりのものについては既に対応をしておりますが、なお検討中または検討継続中の項目がございまして、これも併せて、今回の見直しの機会に検討をさせていただければということで、先ほどの20ページから対応継続中のものをピックアップしたものが21ページでございます。
 衆議院の分につきましては、三番の事項になりますけれども、臨床研究で得られた情報を医薬品・医療機器等の承認申請に係る資料として利活用できる仕組みについて速やかに検討することということで、これ、前回、山口委員からも御指摘いただいた論点となっています。
 それから、七番目になりますけれども、これは企業等からの資金提供に関するものですけれども、本邦の公表の対象外とされている情報提供関連費あるいは接遇費を公表の対象とすることについて検討をすべきとされています。
 それから、九番については、患者申出療養、評価療養に関して、保険外併用療養費制度で行われている行為について、保険収載に向けて必要な措置を講じることとされておりまして、参議院もおおむねこの三番、七番に対応する宿題が出ているという形になります。
 これらの詳しい中身については、次回の部会で御説明をさせていただければと思いますけれども、こういったものについて、今後、また、見直しの御検討をお願いできればと思います。
 続いて、臨床研究法見直しの関係者ヒアリングについて御説明をさせていただきます。22ページを御覧ください。今後、臨床研究法の見直しに当たって必要となる臨床研究推進あるいは信頼性確保、被験者保護などの観点に係るヒアリングとして、関係者から御意見を頂戴したいと考えております。
 今回は、被験者の立場からということで、花井委員にお願いをいたしております。次回につきましては、山口委員から御意見をいただくとともに、今回まで御紹介をしました特別研究班について、前回御指摘もいただきましたので、直接研究者から御発表いただきたいと考えておりまして、このようなスケジュールで御意見を賜りたいと思います。
 事務局からの御説明は以上でございます。
○楠岡部会長 ありがとうございました。
 それでは、資料5ページの課題として挙げられている論点の下3つまで囲んでいただいている点に関して御議論いただきたいと思います。
 まず1番目が「医療機器に関する臨床研究の適用範囲」で、6ページに研究班における議論(案)で、具体的な提案が出されておりますが、これらにつきまして、まず御意見をいただきたいと思います。御発言の方は「手挙げ」をしていただきましてお願いしたいと思います。
 いかがでしょうか。
 藤原委員から、まずお願いいたします。
○藤原委員 機器のところについては、国際整合性を改正のときには考えていただきたいと思います。欧州あるいはアメリカについても、特に欧州の制度は、医薬品については臨床試験を規制する法律がありますけれども、医療機器は対象外になっています。アメリカでも、医薬品と比べて医療機器の規制は、リスクの高いものは別ですけれども、リスクの低いものについてはそれほど厳しくないですし、そのあたり、改正の臨床研究法においては、研究班の議論と同様に、介入や侵襲の程度の低いものについては特定臨床研究から外すというのが、国際整合性という意味を考えても、適切かなと私は思います。
 以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。先ほど事務局から提案されたような、リスクに応じてということでといいという、そういう御意見とでよろしゅうございますか。
 ほかに御意見はいかがでしょうか。機器に関しまして御発言のある方、「手挙げ」をお願いしたいと思います。
 それでは、藤原先生、報告の日数の関係のところを、もう一度お願いできますでしょうか。
○藤原委員 疾病報告、13ページからのところについての私の意見を申し上げます。
 1つ目は、これはここで検討する話ではないかもしれませんけれども、臨床試験を長くやってきている身としては「疾病等報告」という名前が非常に不自然で、臨床研究法の改正のときには、普通の「有害事象」という名前に変えてほしいと思います。
 そことは別に具体的な案件としては、疾病等報告の報告対象と報告期限についての意見を申し上げます。
 15ページで、臨床研究法の疾病等報告の基準を設けるときの一つの背景になった薬機法の施行規則の話が書かれています。ここの左端に「未承認・適応外」あるいは「既承認」と書いてありますけれども、こういうふうに区分けると非常に分かりにくいので、こういうそごが生まれているのではないかと思います。「未承認・適応外」は、施行規則で規定するのは、これは治験にかかわる副作用、感染症情報の話でして、この治験にかかわるというのは、臨床試験、臨床研究をやっている際に、副作用、感染症報告を、既知・重篤については1年間に1回のPMDAへの報告でいいですよと規定しているものでして。下のほうは、既承認というよりも、市販後の診療の中で使用されている医薬品について、既知・重篤な事象があらわれたときには30日以内に報告しなさいというもので、それはなぜかというと、恐らくは、診療の中でやっているものですから、いろいろな副作用が出てきたときに、あまり間を置いて報告されても、市販後の安全性の担保ができない。つまり、臨床研究というのは、ある程度管理された環境下でやられていますので、きちんと報告が常に上がってきてなくても、患者さんは管理されているとは思いますけれども、診療ではなかなかそうもいかないということからこういう規制がされているので、これは既承認ではなくて、市販後の診療の中の使用の場合の報告基準というふうに、この施行規則228条の20はなっているはずなので、今度、臨床研究法を変える際には、既承認であっても、特定臨床研究下でやっているものについては、治験と同じように、既知・重篤については年1回の定期報告でいいというふうにしても、薬機法との齟齬は何も生まれないと思います。
 以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。
 続きまして、近藤委員から御意見いただきたいと思います。
○近藤委員 ありがとうございます。近藤でございます。
 藤原委員の御発言に加えまして、未承認・適応外のところに記載されていますところは、治験で言いますと、実施医療機関では、責任医師からIRBに直ちに報告するという形で盛り込まれているかと思います。スポンサーの概念を議論されるときは、多分、その考え方も重要になってくるかと思いますので、御考慮いただければと考えます。
  以上でございます。
○楠岡部会長 ありがとうございました。では、花井委員、お願いいたします。
○花井委員 ありがとうございます。今、藤原委員からのお話があって、薬機法の規定の文脈はおっしゃるとおりですけれども、管理された、いわゆるクリニカルトライアルに準じて新薬の臨床試験と臨床研究を同じように横並びという御意見があったのですが、そうとは言え、研究中に、その各研究機関がシェアすべき情報である場合にはきちんと委員会に届いて、その共同研究施設が全部、その情報を患者さんの安全性確保するために利用できるという立てつけが用意されているのであれば、ルール上はリーズナブルにしていただいてもいいと思うのですけれども、そこのところが、規定して、定期なのか30日なのかということよりも、研究中に起きた何か有害事象がほかの共同研究機関にシェアして、こういうことが起こったよということを伝える必要がある場合は、それはきちんと伝わるようになっていればいいと思いますが、その辺との関係はどうなのでしょうか。教えていただけますでしょうか。
○楠岡部会長 今の点に関しましてお願いします。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 事務局から御説明をさせていただきます。特定臨床研究に関しましては、多施設共同治験で実施をするときには、CRB経由が多分ルールとしてはなっていると思います。これとは別途、計画の中で決まりがあればということになりますが、一般的にはこの委員会を経由していく形になっておりますので、仮にそういう形で市販後のマーケットのものと治験のものとの違いを整合していくときには、確かに、治験の研究者内での情報共有についてきちんと規定する必要があるかと思います。
○花井委員 要は、既承認か未承認かは、臨床研究法上は関係なくて、薬機を引っ張るから、根拠としてちょっとややこしくなっているのかなという気もしますけれども、その辺を整理していただけたらと思います。以上です。
○楠岡部会長 それでは、掛江委員、お願いいたします。
○掛江委員 これは質問ですけれども、273条にある1年ごとの定期報告は厚生労働大臣への報告ですよね。ここは委員会報告についてまとめた列なのかなと思いますので、この未承認・適応外の既知の重篤のところの黄色の箇所の定期の根拠が、年1回の大臣報告の273条を根拠としていること自体が、そもそも適当なのかどうかがよく分からなかったのですけれども、そのあたり、御説明いただけますでしょうか。
○楠岡部会長 事務局、お願いします。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 ありがとうございます。GCPのほうはちょっと確認が必要になりますけれども、IRBのほうに通して、速やかにという形で、また、研究者のほうに何日以内にということは決まっていなかったと思います。そういう意味で特定臨床研究においては、CRBを通して、そこの審議をいただくというようなことで、厚生労働省に対する報告も限られていますので、当時、規定のない中で何かを参照するということで、御指摘のとおり、必ずしもぴったり合ったものではなかったのですけれども、既存にあるものを参照したということではないかと思います。
 ただ、御指摘のように、ちょっと枠組みが違うものをそのまま持ってきているところはあるかと思いますので、その辺は再度、確認なりが必要かと思います。
○楠岡部会長 よろしいですか。
○掛江委員 はい。
○楠岡部会長 藤原委員、どうぞ。
○藤原委員 この治験等の報告義務とか報告先というのは、立てつけが薬機法であるとかそんなことはいいのですけれども、国内で行われている試験については、なるべく統一的に動かすのが僕は筋だと思っています。患者さんを守るためには、きちんと機能しているところに報告が行って、第三者がきちんと評価するという体制が大事で、今の日本の体制を見てみると、薬機法の傘下でやっている治験がそれに関して一番しっかりしている。特定臨床研究あるいは疾病等報告は、海外に通用しないような日本語が入ってきたり、後から議論されると思いますが、倫理審査委員会の機能とかクオリティについてもまだまだ発展途上であることを考えると、今きちんと動いていて、被験者の安全性が一番保たれている薬機法に並んだような感じで動かしていくというのがとてもきれいかなと思うので、多分こういうところで薬機法の言及がされているのだと思います。
 それから、先ほど花井委員がおっしゃっていた多施設からの安全性情報の交換ですけれども、これが、佐藤暁洋先生のようなご自分でたくさんやっている先生に聞いていただいたほうがいいかもしれませんが、通常のプロトコールであれば、そういう情報交換をきちんとするような記載は入ってくるでしょうし、それから、試験の内容のリスクの大きさによっても、有害事象が起きないような臨床試験についてそういうことをいちいち規定する必要はなくて、抗がん剤とか免疫抑制剤とか、重篤な副作用が割と高い頻度で出てくるものについては、効果・安全性評価委員会を設定するとか、モニタリング等で頻回にそういう情報を共有するとかということは、今でも普通のように行われていますから、そこをきちんと守っていただければ、被験者さんをしっかりと守れるのではないかと思いますし、そういうところを、今から走っているものを次の臨床研究法の疾病等報告については、私は使うべきだと思っています。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに、御意見はございますでしょうか。佐藤暁洋委員、お願いいたします。
○佐藤(暁)委員 佐藤でございます。藤原先生にコメントをいただいたことで、多施設共同試験のグループとかでやっているものであれば、IRBに対して出す出さないにかかわらず、全体を管理している効果安全性評価委員会とかには提出されてディスカッションもされるので、そういうしっかりしたことをやれば、そういった懸念されているようなことは起こらないのかなとは思っております。
 臨床研究はしっかりしたところでないとできないので、委員会を通さないと全部情報が行かないということはそんなに起こらないのかなと個人的には思います。ただ、抗がん剤を受けている人からすればそれは分からないので、それ以外のところだとちょっと分からないこともありますけれども、臨床としてはそんな感じかなと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございます。今、疾病等報告に関しましては何人かの委員の方々から御意見いただきましたので、これを、事務局で整理して、次回以降、お返しするようにしたいと思います。
 次、CRBの認定要件に関しましてはいかがでしょうか。藤原先生、お願いいたします。
○藤原委員 これは研究班での議論にも上がっていますけれども、CRB、もともと審査審査委員会は3,000ぐらいあるとか言われていましたけれども、それがこのぐらいの数に減ってきた中で、そこのクオリティをどういうふうに担保するかというのは今後の大きな課題だと思います。私が臨床研究法ができる前の特別研究班で全世界の主な先進国を回って、臨床研究審査委員会のコントロールをどういうふうにしているかというのを見ましたけれども、フランスとかイギリス。特にイギリスはすごく熱心だったのですけれども、模擬プロトコールとかIC文書をつくって、何年かに一度は必ずその地域の研究倫理審査委員会にそのプロトコールとIC文書を送って、どのような結果が出てくるようなことを確認するということを、公的機関ですね、日本で言えば、医療研究開発機構かなと思いますけれども、そういうところがきちんとコントロールしているということがなされていました。
 CRB同士のピアレビューに関しては、私としては、各委員会のクオリティの格差が著しく、CRBの負担も大きくなり過ぎるので、それはきちんと模擬審査を見ていくみたいなほうが適切かなと思います。
 それから、CRBが今どういうふうにきちんと機能しているかということを実地調査を、臨床研究法の改正に向けてしっかりしていただいて、その結果をこういう部会などに報告していただくほうが、よりクオリティに関しては分かりやすいかなと思います。
 以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは、ほかに御意見がございましたら、挙手をお願いいたします。花井委員、お願いいたします。
○花井委員 今、藤原委員から発言があったとおりで、1つは質というものをなかなか定性的なところが見えてないということがあって、外形要件だけを定めているわけですよね。法律上の政省令的にはそういう外形要件になりやすいのでしょうけれども、藤原委員が言ったように、質的なところをきちんとするということがまず必要なので、大変だろうということはあるのですけれども、実は、1つは要件とともに政策課題が何か。つまり、人材を集約化して質を上げる。ただ、数がただ広がってしまうというのは、最初、政策誘導的に不整合とは言えないところがあると思います。そこに集約することによって二重審査のようなものをなくしていこうという、いわゆる政策課題としての誘導を考えたはずなので、現状、必ずしもそれがうまくいっていないということを考えると、ある程度ちょっと踏み込んだ質的評価というものを導入するというのは一つの考え方ではないかと思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はいかがでしょうか。掛江委員、お願いいたします。
○掛江委員 もちろん見直しをしていただくのはいいことかなと思うですけれども、以前、別の部会だったと思うのですけれども、後向き研究の案件がそもそも臨床研究法で定めている要件、例えば、説明文書にはこういうことを記載しなさいとか、そういった要件を全く満たしていないものが特定臨床研究として承認をされて、たしか先進医療技術評価部会だったと思うのですけれども、そちらのほうに出てきたのを拝見して、特定臨床研究なのに、CRBは何を審査しているのだろうかと驚いた経験があります。今はまだ、もしかしたらそういうレベルなのかなと。外形的要件とかというお話のもう少し手前で、臨床研究法上、自分たちCRBがどういう役割を担っているかということすらきちんと認識していないCRBが稼働しているのかなと。そういった意味では、非常に怖いなと思ったものですから、藤原委員も御指摘されていますが、まずは、きちんと現状でどういう形でCRBが機能しているのかいないのかも含めて把握していただいた上で、見直しを検討していただきたいなと思いました次第です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。では、渡辺委員、お願いいたします。
○渡辺委員 日本医師会の渡辺です。今の掛江委員と基本的には同じですけれども、CRBの現状を見たときに、審査基準と審査能力をもって必ずしも適正な審査がなされていない場合がある。主観的な表現ですけれども、客観的なデータをお示しいただきたい。そうしないと議論になりにくい。いろいろサマラティを出した話は確かによく聞くのですけれども、アドボカシーのことが分からなければ、何が起こったという話に至らないのではないかなと思いますので、理解いただけるのかどうか分かりませんけれども、そのあたりの情報がないと議論にならないと思いますので、御考慮いただきたいと思います。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 事務局でございます。ありがとうございます。今、私どもがやっている事業ですけれども、なかなかまだ実態の調査といったことまで手が届いてないところがございまして、このあたり、御指摘を受けまして、調査などに着手できるように進めてまいりたいと思います。見直しの議論もございますので、できるだけ可能なことから手をつけて、早めにというふうに考えております。
○楠岡部会長 それでは、佐藤(典)委員、お願いいたします。
○佐藤(典)委員 北海道大学の佐藤です。
 調査されるということであれば、こういうことを申し上げる必要はないのかもしれませんけれども、私が現場でやっていることの定量的な話を少しさせていただきます。先ほどの参考資料にあるように、1年間100の申請があって、審査が4件ですね。これがあるのとないのとありますので、厚生労働省の事業で、CRBのネットワークにしていただいておりますけれども、本当に年に1件あるかどうかというCRBが合わないなというのが実態です。ですけれども、1件2件でも、疾病等報告とか若干の伸展報告とかございますので、年に1件か2件の新規の審査の申請をしていただければ、あとは、11回の開催はやろうと思ったらできるのですね。ですから、今、通知として年11回の開催は、本当にそれぞれのCRBの質を示す必要はないということがございますので、調査されるのはそれはよろしいですけれども、今日の時点で、もし情報ということでお伝えできるとすれば、実態はそういうものだということは理解をしていただければと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。国立がん研究センター東病院の佐藤(暁)委員、お願いいたします。
○佐藤(暁)委員 佐藤(典)先生がおっしゃったことはもちろんそうなのですけれども、CRBは審査料で運営するということが言われていて、この件数で、専従の人もいますので、CRB側の判断としてなかなか難しいという意見としてはあるのかなと。我々ももちろん審査能力向上も大事だと思いますけれども、審査件数が少ない中で審査料で運営し、質も向上していくというのは、なかなか体制としては苦しいところがあるということは御理解いただきたいなと思っております。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。よろしいでしょうか。そうしましたら、機器に関してはあまり御意見はなかったのでありますが、疾病等報告及びCRBの要件に関しましては、ただいまいただいた意見をまとめまして、また、次回以降、フィードバックをさせていただきながら進めていきたいと思います。
 それから、臨床研究法の国会の附帯決議に関しましては、次回以降、また、検討させていただきたいと思っております。
 次に「臨床研究法の見直しにかかる関係者ヒアリング」で、資料2-1です。
 今日は花井委員に御意見をいただくという予定になっておりますので、花井委員、お願いできますでしょうか。
○花井委員 では、23ページですね。患者、被験者側からの意見をということで、被験者を代表して話せるかというところもありますが、そのために割と総論的な話になると思いますけれども、資料をつくりました。
 24ページ目をお願いいたします。まず基本原則として申し上げておきたいのは、臨床研究は必要ですけれども、被験者もそれは絶対必要としている。それは、新しい医薬品や医療機器・医療技術の開発もそうですし、それから、既存の治療法が評価というか、こういう薬が使えるのではないかとか、A薬のほうがいいのではないかとか、そういうことも心配しておりますし、病態の同定と診断法の開発は、今回のクリニカルスタディではないのかもしれませんが、新しい病態の同定とか、あと、疾病の原因究明とか、疾病予防方策の探索とか、いわゆる臨床研究という観点から言えば、この研究が進んでくれればいいというか、被験者にはいいのかなということです。
 次のスライド、25ページです。当然、臨床研究法が価値ある臨床研究の足を引っ張るのはまずいということについては、皆さん、総論賛成ではないかと。とは言えということで、被験者の安全確保をどう思いますかとか、被験者が自由意思でもって参画をしているのでしょうかとか、あと、ヒトを対象とする研究だから、それに見合った価値のあるリサーチクエスチョンなのかということですね。もちろん普通の研究であれば、研究者の興味とかが先行しがちですけれども、ヒトを対象とする限りは、ヒトを使ってまでやる価値があるのだと。かつ、それがプロトコール上、実証可能な計画になっているかというところですね。あと、倫理審査委員会の質の担保ですね。先ほど、有害事象報告のときに出ていましたけれども、CRBがきちんとしていれば、プロトコールに書いてあって、複雑な手続きがなくとも、現場の研究者グループが普通にシェアして行えば問題は起こらないはずです。それが、結局、委員会の質というのが最終的には問題になってくるかなと思います。それから、さらには、そうやって真面目にやったつもりなのだけれども、実はこれではデータは信用できませんとなったことがあるので、研究結果は、国際的な信頼できるようなアウトカムになっているような体制ができますかという問題があるわけですね。
 次、26ページです。患者の同意や被験者の安全確保、研究の質の確保などは、専門家にとっては本来自明なことであるわけです。当たり前のことなので、研究チームの一人ひとりはそれを分かっているから、相互にチェックして確保すれば、それは実はある意味での効率性をうるさく言う必要はない。
 もう一点は、患者の立場からすると、臨床研究の現場というのは、病院、治療の現場でもあるということです。なので、実際、臨床研究ということですけれども、実は、法律だけではなくて、例えば、土台となる治療施設とか、専門家が多いとか、専門家に対する信頼感、もしくは医療施設に対する信頼感が土台となっていて、そこで行われるという話なわけです。なので、ある日、こういう法統制をする以前に、医師法があり、医療法があり、薬剤師法があり、薬機法、健康保険法がある訳ですね。そういったものでもって日本の医療の形というものがあって、その中で臨床研究が行われているというところがあるわけですね。臨床研究法というのは、日本の医療の形の上に法律の網をかけるというふうになっていて、研究機関自体は患者側の治療施設を使うわけだから、そこで行われることで患者の被験者保護ができてないはずは本来はないはずですよね、極論すればですけれども。そういうところで、臨床研究法は、それでも実際に問題が生じてしまったという歴史的経緯に依存しているというところです。
 27ページ目です。具体的に言うと、一番上の治療への包括同意。治療に同意しているのだったら研究も同意だよねと。これは90年代後半のことですね。それぞれ事例を具体的には言いませんけれども、そういうことが多くて、患者同意といっても、同意していればいいのだという形であるわけですね。
 それから、研究仮説よりも臨床研究の「ため」にする研究ですね。これは2000年代以降に、メーカープロモーションがいわゆる接待漬けみたいなことが批判されることによって、ある種の研究費とかそういう別の形で、そういうずさんな資金提供がされることによって、資金をもらうから研究するみたいな、そういうようなことですね。だから、リサーチクエスチョン自体は最初に生じていないという研究とかですね。もっとひどいのは、データ操作みたいなことがありました。これは本当に駄目ですけれども、実際には起こって、裁判になって、裁判所で一応改ざんについては認定されたということがあります。これは2000年代の後半から2010年代にかけての出来事ですね。
 さらには、知的成果。さっきちょっと申し上げましたけれども、知的成果よりも個人的経済利益を目的として、それから研究してしまうということがあるはずはないのだけど、現実に起こってしまっている。それから、それを促進したような企業のプロモーションという野心ですね。野心が以心伝心、お金とかいろいろな形に変えて研究をゆがませていた。
 それから、さらに一番問題だったのは、いろいろな研究がされていますけれども、多くの人がかかわるわけだから、多くの専門家集団がその周りにいるのですね。だから、大事なことは不正を見逃しているひとが存在するということです。研究チームに参加した専門家が見逃したか、もしくは、逆には積極的に隠蔽する事実が存在したわけです。これは実例から言うのですけれども、なので、いわゆるプロフェッショナルオートノミーという意味でも完全に機能してないというふうに不信感を被験者からは持ってしまうということになります。確かに臨床研究法という名前が、臨床研究法という名前の法律で、臨床試験を規制するみたいな形に今はなっているのですけれども、法律としては、臨床研究というちょっと広いものであるのに対しての不信感を喚起しているということを社会背景としていることは間違いなくて、その辺の臨床研究と臨床研究法と、トライアルとスタディとリサーチの国際的な整合をとりたいということでも、疑問の状況がそうさせているのかなというところもあるのかなということであります。
 28ページです。具体的なことになりますけれども、私からは申し上げにくいのですが、手続の合理化については、基本的には、今言ったことを、目的はそういうものですね。被験者保護であるとか、資金提供が目的にされないとか、何よりも日本の研究の信頼性を回復しなければいけないということが目的であるから、それが達成されるようなものである必要がある。なので、不合理で煩瑣になっているところは当然見直すべきです。
 それから、問題は、日本における臨床研究資金の民間依存の比率が高いわけですね。公的研究費不足は、いうのは致命的ですし、それから、もっと言えば、研究する人たち、特に臨床医ですね。臨床医の臨床研究エフォート率は国際的に下がっていて、忙しくて、要するに、爪に火をともすような資金で、爪に火をともすような時間配分で研究しているという人がいて。それが価値ある研究を、そういう人たちはリサーチクエチョンを自分たちの臨床の現場から出しているわけですが、ところが、これは研究資金が足りないからといって断念するとなると、これは問題であると思うので、そこは、お金の問題なのか、今日言われている話なのかは、法律的問題だと思いますけれども、価値ある研究にきちんとできるようにしてほしい。
 それから、COI管理については、技術的課題であって、さっき言ったような昔で言えば癒着的というか、本来研究という純粋さよりもお金のためにやっているとか、メーカーはメーカーで何となくそういうのはプロモーションにできるのではないかと思ってということを前提にするので、合理的なCOI管理は考えていただきたいということです。
 それから、29ページです。適応外薬についてですが、適応外薬を特定臨床研究の要件に定めたことは、過去の事例からも一定の合理性があると考えます。ただし、小児用に用量を少なくして一般的治療の比較研究などは、特定臨床研究としつつ、これが特定臨床研究ではあるということだから、特定臨床研究だから、何らか支援するか、臨床研究法上適応外とせずに特定臨床研究から外すかというどっちかの選択肢だと思うのですけれども、これは法技術の問題であって、私からはどちらかというとちょっと言いにくいのではないか。ただし、日常の臨床行為から構想される貴重な研究仮説に関する研究が後退しないということは必須なので、あとは法律的な問題は検討いただきたいと思います。
 30ページです。観察研究は、基本的には、臨床研究法に定められる臨床試験の概念から外すということですね。これは臨床研究法の名前を移せばよろしいと言えるのですけれども、しかし、臨床研究全体に網をかけるという法律名になっていて、臨床試験を強行規定で統制するという設計になっているわけですね。なので、そうなると必然的に観察研究も若干かかる可能性はあるのですね。それは何かというと、特に、例えば研究目的で、何時から何時まで何時間毎採血するとか、それは観察研究を一応超えているのではないか。観察研究ではないと言うのか、観察研究だけど、これは治療と言うのかは説明の仕方の問題ですが、具体的に何かそのようなものとか、追加通院を求める場合などは、特定かどうかということはともかく本法の適応範囲になるかというふうに私個人としては考えます。
 それから、31ページです。これは先ほど意見を申し上げたのですけれども、質というところを考える必要がある。政策課題としている集約化という問題もありますし、全体件数との兼ね合いとか、優秀なメンバーの集約化、コストも先ほど出ていましたけれども、適正な数というのがあるのではないかと思います。数誘導に対して、効率上どうするかというのは課題ですけれども、そういうのはあるのかなと思います。
 32ページ、これは最後のスライドになります。薬事申請への利活用という論点が出ましたけれども、先ほど幾つか規制で薬事法と連動するわけですけれども、モノの仕様を規制する薬機法と行為を規制する臨床研究法は、そもそも立てつけが違うので整合しにくいというのが先ほど言われたとおりであります。本来販売されている医薬品を適応外で使用することは、これは医師の裁量の範囲です。保険適用するのは別として、売られているものを使うことは医師の裁量ですよね。間接的に健康保険によって規制しているという部分があるわけです。なので、基本的には、医師の裁量が大きなものですが、薬事承認という考え方とHTAの問題とする考え方ですね。いわゆる評価ですね。有用性と有効性。これは医療政策上の整理ですね。例えば、薬機法上の適正使用ガイドラインの保険統制上の課長通知とかいろいろ取り入れながら、日本固有のややこしい統制システムによって全体が統制されているということなのですね。なので、本邦においては、薬機法以外の医療関係法や日本の医療の実態と密接に関連しながら機能しているということで、そこをやはり考えるべきだと思います。ちょっと踏み込んだ言い方をすれば、病院の信頼とか、医師の信頼とか、専門家への信頼、専門医制度とか講じられていますけれども、いろいろなものがあって、それはある程度緩い規制で、そこが緩んでしまうと、厳しくしなければいけないのではないかという気がしてしまうというところなので、日本の実態に合わせて、総合的に判断して、いわゆる合理的な制度を検討いただきたいということであります。私の話は以上です。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。
 ただいまの花井委員の御発表に関しまして、ほかの委員から、御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。渡部委員、お願いいたします。
○渡部委員 ありがとうございます。私は研究者と患者さんの間で臨床研究を支援するという立場になるのですけれども、今の花井委員の御意見は、本当にそのとおりだと思いながら話を聞きました。ありがとうございます。
 どうしても研究にかかわる者は、GCPとか臨床研究法とか、それから、指針とかといろいろ縦割りで、それぞれの研究を分けて考えがちなのですけれども、患者さんの立場からしますと、どれもこれも同じ臨床研究であって、GCPだからとかで対応に違いがあることはちょっと理解できないかなと思いますし、安全性のこととか情報公開とか、そういうところに研究により差があっては絶対いけないことなのかなと思っております。
 なので、どの研究であれ、基本的なところでは同じような対応が必要になるのだと思うのですけれども、どうしても臨床研究法とかハードルが上がってくると、そちらのほうに集中して、観察研究とかそういったものがなおざりになってしまうこともあり得るのかなということを非常に危惧しております。
 一方で、附帯決議がありますけれども、患者申出療養は、一部では観察研究でできるような記載もありますけれども、今、臨床研究法下で実施されているものが大半だと思いまして、患者申出療養評価会議では相談内容等も公開されているかと思うのですけれども、準備に時間がかかってしまったりとか、費用が相当かかって諦めているケースもありますが、こういったものも、患者さんのために速やかに実施できるようにすることが必要なのかなと思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますか。花井委員から何か追加したいようなこととかあれば。
○花井委員 もう言い切ったのですけれども、今もありましたように、患者申出療養とか先進医療のような評価療養というのは、保険上の話ですけれども、こういうのが密接に関係しているところで成立しているということで。臨床研究法自体は、それはちょっと変だという意見が出ているのですけれども、日本の医療の現実というところからスタートしているというところは、これだけ臨床研究法単体での国際整合性を考えることがに難しいというところをちょっと考えていただきたいというのが一つ思うところです。
 それから、もう一点は、一つの国としての大きな目的として、新薬とか新しい開発は日本は先細っていて、今のままでは、日本の薬品の開発環境自体も駄目になってしまうのではないかというところを解決したいという政策的意義も承知しているところですので、その土台の部分をどうなっているかというところは考えつつ、考えていただけたらと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。この臨床研究法をつくる検討会での一番最初の議論は、いわゆる被験者保護法のような、患者さんを中心にした法律にするのか。それとも、臨床研究を実施するための規制をつくるような法律にするのかというのが、入り口の議論であったわけですけれども、結果的に、法律をつくるきっかけになったのが、今、花井委員からいろいろ指摘されたような問題があったので、まずは体制といいますか、規制づくりのほうが主眼であって、被験者の立場から見てどうなのかというのは、どちらかというと法律をつくった後で考えようみたいな方向で来たのは事実であります。そういう意味では、もう一度原点に戻って、そして、今の日本の医療制度の中でこの法律がどういうような位置になってくるのか。その位置づけを確認するためにどのように手を加える必要があるのかというのを、もう一度考え直す必要はあるかと思います。
 ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 次回以降もいろいろな方から御意見をいただく予定ですので、それと併せて、いろいろ御意見をいただければと思います。
 それでは、花井委員、どうもありがとうございました。
(山口委員退室)
○楠岡部会長 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 議題2は「大阪大学医学部附属病院の業務に関する報告」でございます。事務局より資料3の説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 それでは、資料3について御説明をいたします。
 まず33ページ、資料3-1を御覧ください。「経緯」から御説明をいたします。
 大阪大学医学部附属病院(以降「阪大」と呼ばせていただきます)の先進医療B17「周術期カルペリチド静脈内投与による再発抑制療法」(JANP study)の試験を実施している経過の中で、この試験の参考論文に特定不正行為(ねつ造・改ざん)が認定されたということで、昨年の8月に公表をしております。
 この際に、複数の論文について調査が行われておりますが、阪大で作成された論文のうち2編に特定不正行為が認められておりました。
 なお、この不正行為が認められた論文の掲載時期が平成25~26年になっておりまして、阪大が医療法に規定する臨床研究中核病院に指定されたのはその後、平成27年でございます。
 一連の経過の中で、この研究者が国立循環器病研究センター(国循)にも所属しているということで、この研究者が筆頭著者として関与をしていたほかの論文についても、この8月以降も調査が実施されたところでございまして、このうち、JANP studyの科学的な根拠となった論文の基礎部分に、特定不正行為がまた認められたということで、令和3年1月30日、先日、公表がなされたところです。
 また、この根拠論文の特定不正行為を受けまして、2月28日になりますが、阪大の臨床研究総括委員会、これは病院長を補佐して特定臨床研究などを管理する院内の委員会になりますが、そこで臨床研究の中止が決定されました。
 今回、臨床研究部会にこの事案を御評価いただくという経緯ですけれども、3つ目のポツにございますように、先進医療の臨床試験そのものの取扱いについては、先進医療技術審査部会で御審議をいただいております。この中で、このJANP studyに関する取下げの申し出がなされるとともに、阪大から報告書ということで、不正の概要、試験への影響、試験の参加者への対応、これに加えまして、事案の原因分析と再発防止に関する報告書が提出されました。
 先進医療技術審査部会の中で、阪大につきましては、臨床研究中核病院ということもございますので、特に、この臨床研究の実施体制が適切であったのかどうかという点については、臨床研究中核病院の取組を評価する、こちらの臨床研究部会で御議論いただいてはどうかという方針が示されましたことから、今回、御審議をお願いするものとなっております。
 なお、先進医療部会の議論に基づきまして、阪大に対しては、再発防止策の徹底と実施状況については、先進医療部会とこちらと定期的に報告を求めることとしております。
 この後、阪大の報告書の概要を御説明をさせていただきますが、特に臨床研究部会で御議論いただきたい点を3番にまとめてございます。
 もともと臨床研究中核病院におきましては、承認条件において不適正事案の防止のための管理体制を整備することとされております。これが条件となっております。
 今回の事案につきましては、特定不正行為そのものは法律に基づく臨床研究中核病院に指定される前のことではありますが、この試験が行われているさなか、根拠となる、あるいは参考となる論文に特定不正行為が認められたということで、この2番目の丸のポツにございますように、このような形で不正が発覚したときに、まさにそれを根拠として実施している臨床研究について適切な対応が取られたのかどうか。組織としての対応がどうだったかという観点が1つございます。
 それから、臨床研究中核病院として、原因分析と再発防止ということで、阪大から検討の内容が御報告されておりますが、こういった中身に不足する点がないのかといったあたりについて御議論を賜ればということで、今回、議題とさせていただいたものでございます。
 それでは、資料3-2に沿いまして、阪大からの報告書について御説明をさせていただきます。
 34ページからとなっておりますけれども、目次の後、少し進めていただいて、38ページ、<概要>から始まる部分がございますので、非常に大部なものになっておりますので、概要の部分を中心に御説明をさせていただきたいと思います。
 まず冒頭のところからでございますけれども、もともと平成12年8月に公表された特定不正行為につきましては、平成29年の12月に、これは大阪大学の本部にあります研究公正
委員会と国循にそういった申立があったことを契機に調査がなされたものでございます。
 先ほど申し上げましたとおり、両機関による調査の結果、ねつ造・改ざんという特定不正行為があったということで認定をされておりまして、このときには合計5編の論文がその対象となったということになりまして、8月に公表をしております。この5編のうち1編が、先ほど申し上げた先進医療として実施をしているJANP studyの参考論文ということで取り扱われていたものでございます。
 その後も、引き続き、この研究者が著者となっております論文について確認をしたところ、新たに2編の特定不正行為が認定されました。これが1月30日ということになっております。
 少しページを進めていただいて、39ページを御覧ください。先ほど申し上げましたとおり、このJANP study、実施されている試験について、根拠に不正が認められた後の対応ということで、この経緯の部分を御説明させていただきたいと思います。
 40ページを御覧いただければと思います。
 40ページの下のほうに「3: JANP studyへの対応」という部分がございますので、この辺りについて御説明をさせていただきたいと思います。
 この試験、実施の途中で臨床研究法が施行されたということから、規制の対象となったということで、改めて、実施計画を提出されて、研究が継続をされてきたというものになっております。
 41ページに進んでいただきまして、2段落目の「大阪大学および国循は、」という辺りからになりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、8月に一度特定不正行為に関する公表を行っておりまして、その際に、研究の参加者への対応として、ここにありますように、お詫び、それから、研究計画立案時の参考論文の1つに特定不正行為が認められたこと。また、元医員が当該研究の立案に関与していた事実などについて、文書で送付をしております。
 この研究の取扱いということで、その後になりますけれども、阪大病院としては、研究対象者保護の観点から、特定臨床研究としてこの研究を継続することで研究対象者の健康観察を同じ形で継続することが妥当であると判断をし、研究対象者に対して、この臨床研究を継続する旨を説明した上で、再同意を取ったという対応が取られました。
 こういう形で一度継続をすることになったのですが、中ほどにございますように、令和3年1月に、また、そのほかの論文に関する確認の中で、JANP studyの立案の根拠となる論文に特定不正行為が認められたということがございましたので、研究代表施設として本研究を中止するという判断に至りました。
 また、これを受けて、研究対象者に対して、お詫びと本研究を中止することを記載した書面をお送りをしたということになっています。
 少し飛んで「また、」というところになりますけれども、先ほどは被験者保護の観点から継続して観察をするために続けるという形になっておりましたが、今回は中止になるということがございました。しかしながら、ハンプという薬を適応外で使っているということがございまして、引き続き、安全性をきちんと検証する必要があるということから、新たな枠組みの中で研究対象者の健康観察を継続する方針ということで、具体的には、一度この研究そのものは閉じるものの、新たな観察研究ということで、同じ対象の方々を引き続き健康の状況を見守っていくという取組をするということになっております。
 続きまして「4:特定不正行為の発生要因」について御説明をしたいと思います。
 先ほど御説明したとおり、大阪大学で認定された不正論文については、25年から26年に行われたものということで、その当時の状況を含めて評価をしているというものになります。
 まず1つの要因として、組織としての臨床研究の信頼性確保の取組が不完全であったことということがあります。ここでは、これまで阪大病院が整理をしてきた臨床研究に対する体制整備については、主に前向きの介入研究を対象としていたということがございました。今回、特定不正行為が認められた研究は、後向き観察研究ということで、必ずしも前向きの介入研究に対して取られた体制整備が適用されなかったということで、システムが十分に機能していなかったというようなことを示しております。
 それから、組織として特定不正行為に関する教育機会が不十分であったということで、これは25~26年の当時になりますけれども、阪大として、ねつ造・改ざんなどの特定不正行為に関する研究が強化されたのが27年以降ということになりますので、これについては、25~26年については不十分であったことが書かれております。
 それから、③といたしまして、元医員が所属していた呼吸器外科教室における研究指導体制が不十分であったということで、この研究者につきましては、阪大の教室に所属するとともに国循の研究員を兼務していたということがございまして、特にこの特定不正行為が行われた論文執筆において、この教室において指導を受けることがなかったということがございます。
 そして、④として、元データの共有・確認が実施されてなかったということがございます。特にこの特定不正行為が認められた多くの論文について、筆頭著者と責任著者を同じこの研究者が兼ねているということがございまして、そういった中で指導教官との元データの共有や確認が十分に行われなかった。このような中で起こったこととなっております。
 また、5:におきましては、医学部・医学部附属病院、組織としての対応とその課題についてということで、先ほど申し上げましたとおり、29年に申立があってから事案の公表まで2年半かかっているということがございました。ヒトを対象とする臨床研究に影響を与えるような不正であったものの、大学内の情報伝達が迅速に行われていないことから、大学本部では認知していたものが、医学部あるいは医学部附属病院には知らされないまま臨床試験が継続してしまったという問題がございました。
 6:については、関係者の処分ということで、8月に処分が行われておりまして、今後、また、先進医療部会あるいは臨床研究部会等からの御指摘も踏まえて、再度、検討を進めることになっております。
 続きまして、7:として、今までの取組と新たな再発防止策ということで、ここから、再発防止に対する対策が記載されております。特定不正行為再発防止策として、まず、データの共有、保存に関する組織としての体制整備ということがございます。
 平成28年の8月より、データの共有、保存に関する組織としての体制整備を行うということで、論文に使用した図表などのデータについて責任著者が確認をし、バックアップデータを保管するという体制の整備をしているということになります。しかしながら、今回につきましては、筆頭著者と責任著者が同一人物であったということで、責任著者が確認をするという体制では複数になりませんので、こういった場合には、他の教官が確認し、署名をするように、必要なガイドライン等を改訂することになっております。また、その実効性を担保するために、年に1回、研究倫理教育副責任者が確認し、医学系研究科長、附属病院長に報告をするということが定められております。
 それから、研究倫理に関する教育、指導の徹底ということがございます。平成20年から研究者に対して研修の講習会の受講を必須としており、29年からは系統的に臨床研究を学ぶことができるe-learningシステムを使って教育をしてきました。
 また、平成27年度から、文部科学省の事業による研修プログラムについて、9単位を3年ごとに受講することを義務づけるということで、これは27年度以降にかなり対応が強化されるということで、この取組を継続していくとなっております。
 それから、3番目として、共同研究実施機関における適正な臨床研究実施支援体制の強化ということがございます。今回の複数の医療機関からのデータの中で、一部一致率が低かったというようなことが分かってきたということで、阪大としては、阪大が持っている「大阪臨床研究ネットワーク」がございますけれども、そこでこの事案を共有するとともに、教育研修を強化するというようなことを考えております。今後、こういったものはどういうふうに展開するかということは課題として残るという指摘がございます。
 それから、開発戦略に対応したデータの収集と確認ということで、今回、参考論文として阪大で特定不正行為のあった後向き観察研究のデータについては、エクセルで管理をされていたということで、修正履歴が残されておらず、確認が困難であったということがあります。今後、こういった開発戦略に対応したデータについて、データの収集と記録については、方針を定めて通知をする予定となっております。
 それから、この呼吸器外科教室に対しては、研究監視指導員を2年間の予定でこの4月1日から配置をして、研究の指導をするというようなことを検討しております。
 それから、2番目といたしまして、医学系研究科・医学部附属病院の改善対策についてということでございます。先ほど申し上げたとおり、この大学本部と医学系研究科・附属病院との情報共有が迅速になされないということで、3者の情報伝達について問題があったとされております。特に、生命科学における論文については、その結果が、また、新たな臨床試験、被験者の方に御参加いただく研究につながり得るということで、特に影響が大きいということがございますので、大学内のマニュアルなどを改訂して、臨床研究に結びつき得るそういった不正については、早期に大学の中での共有をすることになっております。
 特に、当初、本部では、研究不正の調査などに対する守秘義務などから外への情報を出さなかったというようなこともあったようですが、今回、ヒトに対する研究に関する影響を考えてマニュアルなどを改訂する。このような形での対応は図られるとなっております。
 以降、本文の細かいところですので、御説明は省略をさせていただきます。
 なお、先ほど申し上げましたとおり、この報告書につきましては、外部の先生方の御意見を踏まえてまとめるというような手続が取られておりまして、本臨床研究部会の委員であられる山口先生も委員として入っておられるということですので、この議事については退席をしていただくことになっております。
 事務局からの説明は以上でございます。
○楠岡部会長 ありがとうございました。
 ただいまの説明に関しまして、御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 藤原委員、お願いいたします。
○藤原委員 私は先進医療の親会議と先進医療技術審査部会の委員でもありますので、部会等でも同じことを申し上げたので、ここでも申し上げたいと思います。この特定不正行為で一番問題があったのは、この論文の悪いところは基礎研究部分であります。これは皆さん方にしっかりと認識しておいていただきたいのですけれども、その後行われたJANP studyという臨床試験については何ら瑕疵がない。本来なら粛々と行われていたけれども、根拠となった論文の後向き研究のところと、後向き研究は結果を覆すほどの不正はなかったのだけれども、基礎研究は明らかにねつ造があったということで、それがおかしいということで、臨床試験の問題、あるいは臨床研究中核が所管している臨床研究の問題ではなくて、文部科学省であったり、文部科学省は一番所管かもしれませんけれども、この研究は、論文も、文部科学省の科学研究費を使ってやっていますから、基礎研究の不正の話。つまり、STAP細胞と同じですね。臨床試験が厳しくなったのは、あの当時いろいろなことが起きた臨床試験の問題であったのですけれども、それは今回の不正とはほとんど関係ない話であります。したがって、臨床研究部会というよりも文部科学省のライフサイエンスとか、あるいは、基礎研究についても、STAP細胞の問題が起きた2014年以降、文部科学省はその頃はガイダンスをつくって、マニュアルも改訂したり、いろいろなことをしなさいという、ソフトな規制をしているわけですけれども、こういう基礎研究の不正が起きるのであれば、臨床研究並みの厳しい規制を本当にやるのかということの議論をしていかなければいけないと思うのですけれども、それは臨床研究部会の仕事からは外れることなので、もう一つのほうで申し上げたいと思います。これは基礎研究のせいであって、臨床研究中核病院の認定要件とかとはあまり関係ない話ではないかと私は思います。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、花井委員、それから、掛江委員、そして、近藤委員の順でお願いします。まず、花井委員、お願いいたします。
○花井委員 花井でございます。この説明だけでは何の問題だったかというのはすぐには分からないのですけれども、1つ懸念されるのは、いつもこういうほかの事案を見ても、組織のガバナンスの動脈硬化というか、今も幾つかの大学で、大学もしくは学部ごとに、そういうところで何かそこでそういうことがまま起きているし、それが結局、病院で研究している患者とか、もしくは治療する患者さんに迷惑をかけているというところがままあるわけですね。臨床研究中核だからどうということではないのかもしれませんが、組織自体のガバナンスの在り方を、これを機にきちんと。今回見直して、いろいろ情報の伝達を考えると言っているのですけれども、これからもそういうことは起こり得ることで、大学は巨大な組織でもありますからね。そこのところは患者の臨床研究だけを規制して、そういうところに着目しないとこういうことは防げない。これまでの歴史を見ても、そういったガバナンス的な問題によって発覚が遅れたりとか、不正がねつ造されたというのがままありますので、そのへんは反省点としてあるかと思います。
 それ以外に、阪大が悪いとかということは今すぐには言えないと思いますけれども、少なくとも外部から見た臨床研究中核病院でこんなことが起こったというのは普通に思ってしまう話で、そこのところは臨床研究中核病院の信頼性をどうしてもかかわってしまうことなので、ぜひ、その点も含めて検討をいただけたらと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。掛江委員、お願いいたします。
○掛江委員 藤原委員がおっしゃっられた通り、これはあくまでその基礎論文の不正の問題なのですが、私がちょっと引っかかっているのは、一連の対応についてで、この共著者のほかの方たちが全く処分されていない、現段階では処分の対象になっておられない。資料70ページの「関係者の処分」の箇所を拝見しますと、元医員は懲戒解雇で、その指導教授は訓告処分なのですね。ほかの方は特に記載がない。処分の予定がないということのようですけれども、これは、基礎研究の論文にしろ、臨床研究の論文にしろ、どちらにしても、その研究に対する共著者の責任の考え方とか、そういったところの組織としての考え方に問題があるのではないのかなと思っていまして。結局、不正がなかった場合には、それが共著者の皆の業績としてカウントされるわけですよね。つまり、良いときの利益は享受するけれども、こういう何か不正があったときの責任は負わないという、そのアンバランスさを強く感じるのです。研究を、基礎研究にしろ臨床研究にしろ、全てつながっていると思いますし、研究実施体制として、こういった研究不正がない、公正な研究を推進するという中核病院の体制としては、今回の処分はバランスを欠いているのではないかと感じています。もちろん、今後の対応等についていろいろと検討されていることについては評価しますし、今後に期待していますけれども、その点についてだけ少し。
 ICMJEのガイドラインの中でも結構きちんと書いてあります。少しだけ抜粋したものを持ってきたのですけれども、ICMJE、医学雑誌編集者国際委員会というところのガイドラインですけれども、その中で、「著者となることは功績であり、学術的、社会的な意味でも重要な意味合いがある。同時に、著者は出版された研究に対する実行責任および説明責任も負うことになる」というような記載があって、そのすぐ後、「著者は4つの基準に基づいて判断されるべき」というようなことで書いてあるのですけれども、それを拝見すると、その中の1つに、「研究のあらゆる部分について、その正確性または公正性に関する疑義が適切に調査され、解決されることを保証し、研究の全ての側面に対して説明責任を負うことに同意した」という、そういったことを踏まえて著者であるとされていて。あと、別の箇所でも「共著者の担当部分の公正性についても確信していることが求められる」と書いてあります。また、「グループのメンバー全員が最終原稿の承認を含む著者の資格の4基準を満たす必要があり、その研究に対する公的責任を負うとともに、他の著者のその担当部分についてもその正確性および公正性に確信がなければならない」というような文言の記載があるのですね。こういったことを踏まえると、もちろん共著者が全て細かいところまで確認できるのかというような現場の御意見もあるかもしれませんが、共著者であるというのはそれだけ重い責任がある、だからこそ共著者として評価も受けるのではないのかなと思っていますので、その点だけちょっと発言させていただきました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは、近藤委員、お願いいたします。
○近藤委員 ありがとうございます。私が気になりましたのが、不正行為に対しての申立がありましてから、組織として対応判断を行うまで約2年半くらいかかっている。対応改善策のところでも記載いただいているのですけれども、被験者に好ましくない影響を及ぼす可能性は十分考えられますので、場合によっては早期に対応しないといけないということで、対応改善策の中に記載されているように、申立早期に、臨床研究総括委員会で組織として検討されるということが、今後、こういうことでは非常に重要な点になるということだと思いますので、それが十分機能していくことを期待しております。一応感想になりますけれども、以上でございます。
○楠岡部会長 ありがとうございます。渡部委員、お願いいたします。
○渡部委員 同じ大学病院の立場ですけれども、恐らく、阪大では、研究不正への対応のシステムを考えるときに、こういったことが起きることは想定外だったと思います。起きてしまったときに、どれだけ速やかに改善して、システムを変えるのかというのが大事なのかなと思いますし、こういった事例はすごく貴重だと思いますので、例えば、ほかの中核病院にも同じようなことが起き得ることですから、ぜひ、情報共有して、確認することが大事だと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。藤原委員、お願いいたします。
○藤原委員 先ほどは論点を絞ってお話ししましたけれども、部会でも一番問題になっていたのは、この不正事案が申し立てられてから2年半も放置していたところが多分一番問題点であると思います。それが臨床研究中核病院につながるかと言うと、臨床研究中核病院というより、国立大学法人の立てつけであったりとか、あるいは阪大は旧帝大ですから、一般の大学に比べたら、予算とか体制はしっかりしているわけですから、これは国立大学法人としての有り様の問題です。今回の場合は、大学の本部と大学病院との間のコミュニケーションがよくなかったというところが問題ですので、国立大学法人を所管しているところからしっかり指摘するというのが、私は筋論ではないかと思いますし、臨床研究中核病院だからというのではなくて、大学全体の問題、大学本部と大学病院、あるいは医学部研究科とのコミュニケーションの問題ですから、そこをしっかりと所管の部署がいろいろな指摘をして、再発防止策を検討していただくのがいいのではないかと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はいかがでしょうか。佐藤暁洋委員、お願いいたします。
○佐藤(暁)委員 臨床研究中核病院の立場としてお伝えすると、一般的にはJANP study自体は独立して運営されていているのではないのかなと思います。あまり影響がなかったとは言え、JANP studyがあって、例えば、基礎研究の根拠になったデータとかについて、臨床研究中核病院がそれをチェックすることは難しいかと思います。また、東病院だけかもしれないのですけれども、観察研究をやる場合には、必ず複数体制で、自分たち医師だけでやるのではなくて、各診療科の秘書さんたちも一緒にチェックするような体制を作っています。そういう体制だからと言って完璧ではないかもしれませんけれども、前向き研究ほどしっかり出来ているわけではないですけれども、そういった形で臨床研究中核病院としては、バランスを取りながら管理を行っているというのが臨床研究中核病院側としての立場です。ほかの臨床研究中核病院も多分一緒だと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。事実認定に関しましては、最初に藤原委員から御指摘ありましたように、根拠論文になった中で、臨床部分に関しては検証委員会で問題はなかったということ。それから、後向き研究、観察研究において一部データの不一致があって、論文の中では有意差が出ていたものが、検証してみると有意差がなくなったということはあるのですが、ただ、それは途中の経過データであって、最終的な結論、ハンプが効いたか効かなかったことと予後との関係があったかどうかに関しては、結論はあまり変わらなかったという報告だったと聞いております。
 今の実態、実情に基づきまして、阪大から出されている再発防止策で、今後、これもきっちり実施されているかどうかを見ていく必要があるとは思うのですが、この再発防止策に関して、これで了とするのか。あるいは、何かさらに追加を求めたほうがいいのか、この辺りについては何か御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、今回、阪大病院から出ている報告書に記載されているような再発防止策の実施状況については、先進医療部会並びに臨床研究部会のほうにある一定の定期的な報告をいただく、それにおいて何か追加の問題が発生しない限りは、それの結果を見るという、そういうような判断でよろしゅうございますか。花井委員、お願いいたします。
○花井委員 座長がおっしゃったようなことしかないとは思うのですね。根本的問題が出されていて、先ほど私も発言したように、もともと大学組織が内在している欠点というものがあるのではないかというところを幾つかの大学で見てきているのですよね。今回、このような防止策でそれが改善されるかというのは、なかなかそこまで届かない。藤原委員がおっしゃるとおり文部科学省の仕事なのかもしれませんが、これだけの情報で、再発防止策ですという責任を負えるかというと微妙なのですけれども、そこのところは重ねて申し上げたい。
 それから、先ほど掛江先生がおっしゃられた話もずっと気になっていて、あるプロジェクトで研究する場合に、私は人文系のチームが人文系の学会へ報告する場合は、汗をかいている人間以外は共著者には実際入らないです。ところが、医学系の論文を出すときには、ボスの名前を落とすなんて考えられないという作法の違いがあるのですね。これは医学系の作法だと現場では思っているのですけれども、先ほど掛江先生がおっしゃったような話とは違う話で、こういったことで国際的にもそういうものなのか。日本固有の何とか忖度、こういうことが本当にあるとすれば、これはおかしな話だと思うので、そういうところも今後、この場でどうと言うわけではないですけれども、問題としては解決してない問題はあるのであって、そこは指摘しておきたいと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。
 藤原委員、お願いいたします。
○藤原委員 STAP細胞が起きて、文部科学省が様々なガイドラインを改訂したときに、日本学術会議で、科学研究における健全性の向上についてというような諮問を受けた回答が出されていて、その際には、日本のそういうブラック環境としてギフトオーサーシップが行われてきた長い歴史はあるけれども、特定不正行為という、ねつ造・改ざん・盗用と同様に扱うには、まだ日本では難しいのではないかという議論がされています。
 したがって、共著者の責任は間違いなくありますし、これは個人的な責任は非常に問われると思いますし、あと、PNASは特殊な雑誌ですから、アカデミーの人が推薦しないと掲載されない仕組みになっていますから、その人の責任はどうなるのかとか、非常に大きなことになりますけれども、それは論文取り下げがされたときに、科学のコミュニティの中でいろいろな議論がされると思いますし、この後にいろいろなことが文部科学省とか学術会議とかで議論されるのかどうかを注目すればよいのかなと思います。
 それから、オーサーシップ以外に、この試験、JANP studyは、AMED等の研究費を取ってやられていますが、小生、厚生科研、AMEDの評価委員などをやっていましたけれども、共著者になられている高名な研究者の先生が臨床試験の代表医師になっていたりとか、その人が申請者になって研究費が取られているわけですから、その辺りも今後はいろいろなところで批判がされるのではないかと思いますので、見守っておけばいいのではないかと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。よろしいでしょうか。
 もし御意見がないようであれば、一応今回報告書に記載されている再発防止策の実施状況につきまして、大阪大学から定期的に本部会に報告をいただくということで、今回についてはその結論ということで、よろしゅうございますか。
 特に反対の方はいらっしゃらないようなので、とりあえず、今回はこの段階でということで、今後、もしほかの事案とか、あるいは再発防止策に不手際があるようなことがあれば、さらに、改めて御議論いただく。それから、定期的な報告もいただくということで、今回の結論にさせていただければ。掛江委員、どうぞ。
○掛江委員 臨床研究部会や先進医療技術評価部会での議論を踏まえて、さっき申し上げましたことにちょっとこだわっているのですけれども、そういったことも再検討するというような御回答がたしか阪大からあったと思うのですけれども、今日の議論はもちろん私個人の意見は申し上げましたけれども、再検討していただくという情報としては、今日いろいろ出てきた意見の全てを阪大にお伝えいただいて、御検討いただくという、そういう理解でよろしいのでしょうか。
 今、大筋認めましたというところだけが阪大に行くとすれば、私がご指摘申し上げました点の再検討は恐らくされないだろうなと思ったものですから、ちょっとそのあたりだけ確認させていただければと思いました。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 事務局でございます。御意見ありがとうございました。本日の御議論、御指摘につきましては、きちんと阪大にお伝えして、それも踏まえた上で対応を取っていただくようにいたします。
○楠岡部会長 今日御議論いただいたところで、どのような質問にするかという点に関しましては、事務局でまとめていただきまして、部会長と相談の上、場合によっては、それぞれの質問された方にももう一度検討いただいた上で、阪大に提出するということ。これは、再発防止策の実施状況の報告と併せてこれも報告いただくということで進めていきたいと思います。
 ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、この議題につきましては、ただいまのような形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、山口委員にもお入りいただいていいかと思います。
(山口委員入室)
○楠岡部会長 これで、本日の予定された議題は終了しておりますけれども、事務局から何かございますか。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 次回の開催につきましては、改めて御連絡を申し上げます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。
 これにて閉会させていただきます。